当社グループの企業ビジョンはKAYAKU spirit「最良の製品を不断の進歩と良心の結合により社会に提供し続けること」です。また当社グループのありたい姿は、「KAYAKU spiritのもと、存在感をもって、永続的に環境、社会、全てのステークホルダーに幸せやうれしさを提供できる会社であること」です。2022年4月1日に制定したサステナブル経営基本方針に基づき、コーポレート・ガバナンス、コンプライアンスをベースに、事業活動を通じて持続可能な環境と社会の実現に貢献するサステナブル経営を実践しております。このサステナブル経営の実践が、当社グループの経済的価値及び環境・社会的価値を向上し、ありたい姿、またその先のKAYAKU spiritの実現につながると考えております。
2022年4月より4ヵ年中期事業計画" KAYAKU Vision 2025(KV25) "をスタートいたしました。モビリティ&イメージング事業領域、ファインケミカルズ事業領域では2025年を、ライフサイエンス事業領域では2030年を「ありたい姿=Vision」の到達点とし、そのゴールに向けてのロードマップを策定しております。
本中期事業計画では、そのロードマップを着実に実行し、最終年度の2025年度に売上高2,300億円、営業利益265億円、ROE8%以上、ROIC 10%以上の目標を確実に達成すべく取組んでおります。そのために、全社重要課題として「新事業・新製品創出」、「気候変動対応」、「DX」、「仕事改革」、「働き方改革」の5つを定めました。これらの課題に対して、全社横断的組織を作り、課題解決に取組んでおります。
「新事業・新製品創出」では、4事業と連携し既存組織の壁を越えて新事業・新製品の創出をより一層加速してまいります。「気候変動対応」では、温室効果ガス排出量削減やカーボンニュートラルの取組目標を設定し、気候変動リスク対策を進めてまいります。「DX」では最新ITを活用し、業務プロセス変革により売上拡大やコストダウンを実現してまいります。「仕事改革」では、A3 (KAIZEN)活動を通した仕事の効率化や生産性向上により資産効率と稼ぐ力を高めてまいります。「働き方改革」では、従業員一人ひとりが活力をもって仕事ができるよう働き方改革と人事制度改革を進め、従業員のエンゲージメントを高めてまいります。
これらの取組と合わせて、各事業のありたい姿到達に向けて、引き続き積極的な研究開発投資と設備投資を続けてまいります。特に新事業・新製品創出はモビリティ、環境エネルギー、エレクトロニクス、ライフサイエンス領域で自社技術にこだわらずオープンイノベーションや製品導入、事業提携、M&Aなどの外部経営資源を取り込むための戦略的投資も精力的に検討してまいります。
当期の世界経済は、燃料・資源価格の上昇は抑えられているものの高止まりをしており、またロシアのウクライナ侵攻など地政学リスクが依然高く、不透明感が続いています。
モビリティ&イメージング事業領域においては、当期は世界的な半導体をはじめとする部品供給不足が緩和されたことにより、自動車生産の回復が見られました。自動車市場では新興のEVメーカーの台頭や新しいEV技術の発展によりサプライチェーン全体が大きく変化する一方で、中国やグローバルサウスと呼ばれる地域を中心に自動車の安全部品の需要はより一層旺盛になると期待されます。
ファインケミカルズ事業領域においては、急速なデジタル技術の進歩により、次世代高速通信(5G/6G)デバイス等のデジタル機器の高機能化、AIサーバをはじめとするデータセンター向けサーバの普及拡大及び自動車の高度電装化に伴う半導体関連部材のニーズが高まっております。また、世界的な省エネ・省資源の流れの中で、カーボンニュートラルに貢献する新素材やリサイクル技術の開発が求められております。一方で、こうした環境の中、当期の半導体市場は物流の混乱による在庫調整等による市況の低迷が見られました。市況の変動の影響を受けにくい事業体として安定した収益の確保が課題となっております。
ライフサイエンス事業領域においては、革新的創薬により我が国の健康寿命の延伸に寄与するとともに、医薬品の品質確保・安定供給を通じて、国民が安心して良質な医療を受けられる社会を次世代へと引き継いでいくことが求められています。これらの実現のために、医薬品の研究・開発・製造・供給をいかに迅速かつ安定的に行うことが期待されています。一方で、医療費等の社会保障費増加により財政が逼迫し、薬剤費を含む医療費の抑制政策が更なる厳しさを増す中、持続可能な医療の実現が課題となっています。また、世界人口が増え続け、食の安全保障の重要性が叫ばれる中で、食糧の増産と農業の環境負荷低減の双方に寄与する製品が求められています。これらの実現のために、環境にやさしい優れたアグロケミカルを、その技術・サービスとともに提供し、食糧供給を支え、持続可能な農業の発展に貢献し続けることが求められています。
このような状況の中、当社グループは前期より開始した中期事業計画“KAYAKU Vision 2025”が2年目に入り、引き続き事業ごとに定めた「ありたい姿=Vision」に向けたロードマップを実行するとともに、ありたい姿実現に向けて定めた全社重要課題に対し取組を進めています。
セイフティシステムズ事業は、エアバッグ用インフレータやシートベルトプリテンショナー用マイクロガスジェネレータ、スクイブ、歩行者保護ボンネット跳ね上げ装置用アクチュエータ等の新製品開発に努めてまいります。
また、電気自動車をはじめ自動運転技術の急速な進化に対応した安全部品の開発にも注力してまいります。
ポラテクノ事業では車載領域で求められるヘッドアップディスプレイ用高耐久偏光板、高出力のX線分析装置部材といった特徴ある製品の開発に取組んでまいります。
機能性材料事業では次世代高速通信システム(5G/6G)の普及や自動車の高度電装化に向けた基板用高機能樹脂、炭素繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂、半導体クリーナー・製造装置、色素材料事業では産業用インクジェットインクをはじめ車載・イメージセンサー用機能性色素、調光ガラス用二色性色素、触媒事業では省エネ・省資源に貢献するアクリル酸やメタクリル酸製造用高収率触媒、水素社会の実現に貢献する太陽光を利用した完全グリーンな水素製造用触媒といった特徴ある製品の開発に取組んでまいります。
医薬事業は、肺がんに対するバイオ医薬品「ポートラーザ®」、血液がんに対する「ダルビアス®」、光線力学診断用剤「アラグリオ®」等の新薬の市場浸透を図ります。抗体バイオシミラーと製剤工夫した特徴のあるジェネリック医薬品を含めたがん関連領域での製品ラインアップの拡充と、安定供給、品質保証体制の更なる強化に取組んでまいります。
アグロ事業は、フロメトキン製剤の販売数量拡大に注力し、新規工夫製剤・新規殺虫剤の開発、バイオスティミュラントの開発と導入に取組んでまいります。
コーポレートガバナンス・コードへの対応をはじめ、グループ経営の強化やコンプライアンスの徹底など内部統制の充実に努め、健全で透明性・公正性の高い経営を実行してまいります。また、女性、外国人、キャリア採用者の活躍促進を含めた人材の育成・活用を推進し、多様な意見が尊重され、働きがいのある、心理的安全性の高い職場を作ってまいります。併せて、2022年4月1日に定めた日本化薬グループ人権方針に則り、全ての取引関係者とともに人権を尊重した責任あるサプライチェーンを築いてまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナブル経営基本方針
私たち日本化薬グループは、企業ビジョンであるKAYAKU spiritのもと、経営の透明性・公正性を確保し、事業活動を通じて持続可能な環境・社会の実現に貢献することで、全てのステークホルダーの信頼に応えるサステナブル経営を実践します。
(2) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社グループは取締役会の直接監督のもと、代表取締役社長を議長とするサステナブル経営会議を設置し、グループ全体でサステナビリティの取組を推進しております。サステナブル経営会議は、原則として週1回開催しており、企業・社会・環境のサステナビリティ全般に関わる事項の審議及び報告を受けております。審議事項はサステナブル経営会議の承認を経て、取締役会に審議・報告しております。コーポレート・ガバナンス体制の一環として、倫理委員会、危機管理委員会、環境・安全・品質経営推進委員会、研究経営委員会の4委員会を設置しております。各委員会は定例かつ必要に応じて開催し、サステナブル経営会議へ審議及び報告することにより、経営の透明性・公正性を確保しております。
(3) 重要なサステナビリティ項目
上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。
① 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応
当社グループは化学製品を創出する企業として気候変動を国際社会の重要な課題と認識し、地球環境への責任を積極的に果たしていくべきと考えております。2020年7月には温室効果ガス削減の中期環境目標を定め、サステナブル経営を一層推進する中期事業計画KV25の開始に合わせて、2022年3月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明しました。
気候変動対応チームは、2050年のカーボンニュートラル達成を基本的な方針として、全社的な温室効果ガス削減の取組を進めております。計画の推進にあたっては、従来からの省エネルギー活動を深化させるとともに、新たに分散型電力を導入する環境投資や、エネルギー転換のための技術的調査などを、計画的かつ着実に実施する必要があります。また、生産部門だけではなく、事業部門はもとより調達や情報開示に係る間接部門を含めて、全社一丸となって取組むことが重要と考えております。
当社グループは気候変動対応の活動を通じて、持続可能な社会実現と将来の事業機会創出の双方を追求することにより、更なる企業価値の向上を目指しながら、グローバルな環境問題の解決に貢献してまいります。
当社グループは、代表取締役社長を議長とするサステナブル経営会議において、将来の気候変動対応を含む事業計画等の審議及び活動状況の総括・評価を行っております。これらの審議、総括・評価の結果を取締役会へ報告し、取締役会の監視・監督を受ける体制としております。また、気候変動対策の推進を統括する環境・安全・品質経営推進委員会(委員長:テクノロジー統括管掌役員)を組織し、グループ横断的な視点から、気候変動に関する課題についてより深めた議論を行っております。
当社グループでは、複数の事業をグローバルに展開しており、事業分野ごとに様々なリスクと機会を有しております。気候変動がもたらす各事業への影響を特定するため、TCFD提言に沿ってグループ全体の気候関連のリスクを評価し、さらに事業分野ごとの機会を検討しました。気候関連のリスクと機会を特定するにあたっては、リスクが出現する時期を以下のように定義しております。
気候関連の事業リスクについては、2℃シナリオと4℃シナリオの二つのシナリオに関して、国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による代表的濃度経路に関する将来シナリオ(RCP2.6,8.5シナリオ)、並びにIEA(国際エネルギー機関)によるSDS(持続可能な発展シナリオ)及びSTEPS(公表政策シナリオ)に基づき特定しました。
2℃シナリオにおける脱炭素経済への移行のリスク
4℃シナリオにおける物理的影響リスク
当社グループは、気候変動関連のサステナビリティ重要課題として「エネルギー消費量と温室効果ガス排出量の削減」を特定しております。取締役会、サステナブル経営会議、環境・安全・品質経営推進委員会で構成されるガバナンス体制のもと、気候変動対応チームが中心となって、気候変動リスクの特定・評価を行うとともに、省エネや環境投資を積極的に推進するなど、具体的な計画を実行しております。
当社グループでは、2020年度に新たな中期環境目標として2019年度比で2030年度に温室効果ガスを32.5%削減する目標を掲げ、順調に削減を推進してまいりました。一方、世界的に脱炭素社会実現への取組みが加速する中、日本でも温暖化防止、脱炭素化への取組みの加速が求められるようになっています。以上のような状況を鑑み、当社グループでは、気候変動のリスクに対する指標を、2050年度カーボンニュートラルを最終目標とした新たな目標の見直しを行い、2030年度にグループの温室効果ガス排出量(Scope1及び2)の2019年度比46%削減(1.5℃目標)をKPI(長期環境目標)といたしました。この達成のためにまず、KV25中は毎年対2019年度4.2%の排出削減率を目指します。2030年以降、更なる削減を推進するために、サプライチェーン全体で削減を目指すための検討や、水素やアンモニアといったグリーンエネルギーへの転換に向けた事前調査などを行動計画に加えて、2050年のScope1および2のカーボンニュートラルを目指します。
Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
※2023年度は第三者検証中であり、速報値となります。確定値は第三者検証後に当社ホームページ(https://www.nipponkayaku.co.jp/)のサステナビリティサイトにて公開されます。
日本化薬は中長期的な企業価値の向上及び持続的な成長に向けて、中期事業計画 KAYAKU Vision 2025(KV25)を掲げ、「ありたい姿」の実現を目指し取組んでいます。その「ありたい姿」実現のためには経営戦略と連動した人材戦略により人的資本の拡充を進めていくことが重要課題であると考えます。強化すべき人的資本として「自ら主体的に行動できる自律型人材」、「失敗を恐れず果敢にチャレンジできる人材」、「世界で活躍できるグローバル人材」の確保を重視しその育成への取組を進めています。
中期事業計画 KAYAKU Vision 2025(KV25)での全社重点取組の1つとして展開するM-CFT 働き方改革において、「活き活きとした強い会社いい会社」を目指し、従業員一人ひとりが活力をもって仕事ができる環境を作るために各種施策を実践し人的資本の拡充に努めていきます。
また、2023年度に策定した「人材育成方針」及び「社内環境整備方針」に基づき、多様性や心理的安全性が確保された生産的で柔軟な組織風土を醸成し、競争力の源泉であるイノベーションを創出する“人”の育成に努め、当社グループの人材戦略を構築し、経営基盤強化を支えていきます。
当社グループは、代表取締役社長を議長とするサステナブル経営会議において、人的資本経営の取組等の審議及び活動状況の総括・評価を行っています。これらの審議、総括・評価の結果を取締役会へ報告し、取締役会による監視・監督を受ける体制としております。
当社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりです。
(注) 人材育成方針及び社内環境整備方針は提出会社となります。
当社では従業員のワーク・ライフ・バランスを推進し、柔軟な勤務時間や在宅勤務制度の導入、年次有休暇制度の取得促進等、仕事とプライベートのバランスを整えて従業員の充実した生活を支援しております。
昨年度よりエンゲージメントサーベイを行い、浮き彫りとなった課題や問題点に対し事業場毎に対策を講じより良い職場づくりに向けた改善活動を行っています。今後も定期的に従業員エンゲージメントを調査し、従業員活力最大化に向けて取組んでいきます。
上記、人材育成方針及び社内環境整備方針についての取組は以下のとおりです。
[取組1:キャリアの自律支援]
自ら「成長したい」「学びたい」従業員をサポートすることを通じて、従業員一人ひとりの自律的な成長を促し、キャリアの自律と自ら学ぶ能力開発を重視し、個人の希望に沿った多彩なキャリアの実現を支援していきます。
従業員自らが目指すキャリアを考え、そのために必要な能力を獲得していくことは重要です。人材育成方針を実現するために、各種研修プログラムにより専門スキルの習得やリーダーシップ能力の向上に至るまで人材の育成強化を推進しております。リーダーシップやマネジメントトレーニングを充実させることで優れたリーダーシップが組織内に育成されます。
[取組2:チャレンジできる人材の育成]
多彩なチャレンジによる従業員一人ひとりの成長を支援しております。従業員の多様なチャレンジを認め、その成長を支援し、個人の能力を最大限に活かすことで組織の活力につなげていきます。
キャリアプランニングのサポート、社内公募、異動希望シートを活用した人事異動やプロジェクト参加の機会の提供などを通して、個々の従業員のニーズや目標に合わせた開発支援を柔軟に行っています。
年齢や性別、キャリア、学歴等にこだわらない職務配置と処遇を可能にする人事制度として「ポジションクラス制度(職務等級制度)」を導入しております。年功序列などによって単純に職位が決まるのではなく、能力に応じた担当業務に基づき責任を明確化し、人事評価の根拠とする制度です。業績評価制度では組織のミッションを個人の目標に落とし込んだ通常の評価のほかに、自身で目標を設定するチャレンジ評価や、業務遂行の過程を評価するプロセス評価があり、従業員一人ひとりが個性を磨きながら知識と能力を伸ばす仕組みづくりを導入しております。
また、管理職への昇格時には、自ら設定した挑戦的なテーマに対し計画的に取組み、当社グループの管理職として相応しい創造性を発揮し成果を出すことができたかが審査されます。
[取組3:グローバル人材の活躍推進]
日本化薬グループは日本を含め海外12ヵ国・地域に拠点を持ち、国内従業員よりも海外従業員が多数となっています。このような環境の中で素早く的確に企業としての活動を進めるために、国内外という意識を取り払いグローバルな視点を持ち、世界中どの場所でも活躍できる人材の育成が重要と考えております。
M-CFT 働き方改革において新たにグローバル人材育成プログラムを策定し、活躍する人材の質・量の充実を目指しております。若手社員、海外勤務経験者及び日本化薬経営スクール(NBA:Nippon Kayaku Business Academy)受講者等から海外志向性の強い人材をリストアップし、英会話スキルのボトムアップや、業務別実務英語の研修などによってグローバル業務推進力を強化しております。また海外駐在員・出向者向けに、赴任前教育や異文化、商習慣についての教育などのサポート体制を拡充しました。
OJTや拠点ローテーション、複数の海外赴任を組み合わせるなど効果的な教育を立案するとともに、グローバル人材の新卒採用も検討していきます。さらに、海外グループ会社の現地採用者の中からもグローバル人材を育成するために、当社グループの経営方針の浸透と理解を進め、サーベイ等でキャリア志向を調査・分析しなら必要な育成をサポートしていく予定です。KV25の重点課題として、グローバル人材の活躍に向けた採用・育成体制の確立に注力していきます。
[取組4:適切な人材配置 タレントマネジメントシステムの運用]
人材情報を見える化し、タイムリーで的確な人員配置を可能にすることを目的として、タレントマネジメントシステムを導入しました。2022年9月から運用を開始し、人材に関する必要な情報を簡単に素早く把握できる特徴を活かして適宜人事関連活動への運用を拡げています。2024年度からはシステム上で業績評価を開始します。メリットとして、システム上で業績評価を完結でき、業績評価の結果がタレントマネジメントシステム上に蓄積され、過去のデータを容易に確認することができます。また、従業員の意識調査を行う手法の1つであるパルスサーベイによる従業員満足度・健康度の可視化などもシステム上で完結できるようになります。ペーパーレスですので、環境への負荷の軽減や収納スペースの節約にも貢献します。
さらに、タレントマネジメントシステムの人事情報を一元管理することで、「働きやすく働きがいのある職場風土の醸成やグローバル人材の育成」とのスムーズな連携ができるようになると考えています。
[取組5:次世代の経営幹部候補の育成 日本化薬経営スクールの実施]
次世代経営幹部の育成を目的とする日本化薬経営スクール(NBA)を実施しております。次世代の幹部候補を育成するプログラムとして第7代社長中村輝夫の発案で始まり、2001年を第1回として2023年度は第13回を実施しました。経営企画部及び人事部を事務局として、海外グループ会社を含めた全ての部門から受講者を選抜し、月1回の集合研修を軸として約1年間かけて実施します。ワークショップを通じて、経営戦略の策定や、社会課題から将来のビジネスをイメージするなど必要なスキルを身につけながら、KAYAKU spiritを礎とした経営者マインドを醸成します。第14回目の開催となる2024年度は、KV25後の中長期的な事業戦略立案という意欲的なワークショップを盛り込むほか、一人ひとりの経歴に合わせて習得するスキルをカスタマイズするなど、より効果的な学習方法を導入しております。これまで受講者から多くの経営幹部を輩出しており、経営に関わる人材の育成に有効な教育として継続していく予定です。
[取組6:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進]
多様な人材、多様な働き方が受け入れられ、従業員が活き活きと働き、それぞれの能力を発揮し、活躍できる組織風土や働く環境づくりに取組んでいます。性別、年齢、国籍、人種、宗教、障がい、民族、肌の色、文化、思想、信条、政治的見解、性的指向などの多様性を認め、また育児期、介護期など、多様な属性を持った方たちをダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの視点で活躍を推進しています。意思決定の場に多様な視点が入るよう、異なる背景を持った人材の活用を推進していきます。
ダイバーシティ推進のKPIとなる女性管理職比率は、2024年度目標10.0%以上に対し2023年度は8.7%になりました。今後も女性活躍に向けた異業種交流・研修等の実施や継続的な勤務制度見直しによって、女性の管理職へのチャレンジ啓蒙を進めるとともに女性が活躍し働きやすい環境を整備していきます。また、男性の育児休業取得率は継続的な取得向上に向けた働きかけの結果、2023年度は78.5%に到達しました。
[取組7:柔軟な働き方の実現]
2020年の新型コロナ感染症拡大を契機として在宅勤務制度の導入や時差勤務制度の適用範囲拡大が実施され、働く時間だけでなく働く場所や環境も多様となりました。業務の効果としては、リモートワークの導入により、地理的な制約がなくなり、会議や商談等も目的に応じて開催することが可能となりました。従来の定型的な勤務形態にとらわれず、個々人のニーズやライフスタイルに合わせてより柔軟に働くことで、生産性の向上につながりました。
[取組8:ワーク・ライフ・バランスの充実]
ワーク・ライフ・バランス充実のKPIとしての有給休暇取得率は、目標70%以上のところ2023年度は72.3%となりました。一方で管理職及び男性の有給休暇取得率が低いことから、5日以上の有給休暇取得プランを個人毎に作成し職場内で共有するなど管理職、男性の取得率向上を目指します。また、社内報やイントラネット等を活用し定期的に取得促進を呼びかけるなど、2024年度は取得しやすい風土・環境づくりによって従業員の生産性・モチベーションの向上や、優秀な人材の獲得に結び付くように努めます。
[取組9;心理的安全性の向上]
日本化薬グループは心理的安全性の高い企業風土の醸成が重要と考えています。KAYAKU spiritを体現する健全な企業であり続けるためには、良好なコミュニケーションを実践することが重要です。トップダウンという一方通行のアクションだけでなく、現場の声をよく聞き、双方向の密接なコミュニケーションを実現することによって、お互いの考えをありのままに発言し議論できる健全な職場こそが、心理的安全性を確保し、組織の生産性を高められると考えています。
コンプライアンス活動の継続によって、パワーハラスメントやその他のハラスメントは減少傾向にありますが、その撲滅は役員・従業員に共通する関心の高い課題です。内部統制推進部と人事部が中心となりセミナーや研修をとおして心理的安全性が確保された安心して働くことができる職場風土の醸成に取組んでいきます。
[取組10:生産性を高める企業風土の醸成 A3活動(KAIZEN)]
A3活動(KAIZEN)は「いつも(Always)3%の原価低減を意識しよう」の意が活動名称の由来です。全グループの従業員が日常的かつ能動的に、業務効率化や生産性向上を通じて、「常にムリ・ムダ・ムラを省き原価低減を意識する価値観の定着」を目的に意識改革に取組んでいます。各事業場や工場・研究所で活動を推進するメンバーと、全社横断的に取り組むコアメンバーが一体となって推進し、情報発信やキャンペーン、情報交換会の開催など多角的な活動によって考え方・習慣の浸透を図っています。
<リスク管理>
人材の流動化が高まる中、採用競争力が低下して計画通りの人材獲得が進まなくなること、離職により組織力が低下することが最大のリスクと考えております。当社グループの活動の主役は“人”であるとの考えのもと、サステナビリティ重要課題として従業員一人ひとりの人権を尊重し、安心して働ける職場の中で仕事を通して成長することができる会社を目指して、働き方改革を推進することでリスク低減に努めています。
また、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進により、異なるバックグラウンドや視点を持つ人材を積極的に活用し、多様性を尊重し、包括的な職場環境を整備し、人材の意欲や生産性を向上させることやテクノロジーを積極的に活用し、人材データの分析や予測、効果的な人材配置に取組むことでリスクの軽減を図っています。
<指標及び目標>
前述の<戦略>において記載した当社の人材育成方針及び社内環境整備方針に係る指標の管理と具体的な取組は当社では行われているものの、当社グループ全体としての記載は困難であり、指標に関する目標及び実績は提出会社のものを記載しております。
当社において、指導的立場にある女性人材の割合を示す「女性管理職比率」をダイバーシティ推進のKPIとして追跡しております。少子化が進む日本においては、女性活躍の場を増やすことが社会的な課題です。女性が働きやすい環境を整備し、女性管理職を増やすことを目指し女性管理職比率は2024年度の目標を10.0%と定め、2023年度実績は8.7%でした。
男女共同参画のKPIとして、男性の育児休業取得率を追跡しております。男性の育児休業取得率は女性に比べて低いのが実情ですが、男性の育児休業取得を促進することが従業員の働き方やキャリア人材の獲得等へ良い効果をもたらすと考えられますので積極的に促進しております。プラチナくるみんの特例認定基準である50%を目標に設定しましたが、男性の育児休業取得を推進するための社内整備を更に進めた結果、2023年度実績は目標を超える78.5%となっています。
また、ワーク・ライフ・バランスの充実のKPIとして、有給休暇取得率を追跡しており2023年度は目標としている70%を超え72.3%の取得率となっています。従業員の生産性及びモチベーションの向上、また優秀な人材の獲得に向け更なる有給休暇取得率の向上を目指していきます。
今年度よりエンゲージメントサーベイを開始しました。2024年度のエンゲージメントスコアの目標値を全国平均のスコア50と定め取組を進めています。
女性管理職比率、男性の育児休業取得率、有給休暇取得率及びエンゲージメントスコアの目標は以下のとおりです。
「男女間賃金格差」の実績につきましては、第一部「企業情報」第1「企業の概況」の5「従業員の状況」に記載しております。
当社グループの事業を運営するにあたり、発生する可能性のあるリスクを把握し、対策を行うことでリスクの低減に努めております。
当社グループの経営状況(経営成績、株価及び財政状態等)に重要な影響を与えうるリスクには重要項目ごとに以下のようなものがあります。ただし、これらは当連結会計年度末現在において当社グループが判断したもので、将来的に予想を超える事態が発生する場合もあり、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません。
① 経営戦略に係るリスク
当社グループの経営戦略に係るリスクには、次に示すような経営状況(経営成績、株価及び財政状態等)に直接影響を与える可能性のあるものがあります。
②自然災害・気候変動対応に係るリスク
当社グループの自然災害・気候変動対応に係るリスクには、次に示すような人的、物的被害が生じ、事業
継続に影響があり、経営戦略に著しく影響を及ぼす可能性のあるものがあります。
③コンプライアンスに係るリスク
当社グループのコンプライアンスに係るリスクには、次に示すような企業の予期せぬ損失や信用の失墜を
招く可能性のあるものがあります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されておりますが、その作成には経営者による会計方針の選択・適用と、資産・負債及び収益・費用の報告金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りにあたっては過去の実績等を勘案し合理的な判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性によりこれらの見積りと異なる場合があります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループは、2022年度より中期事業計画“KAYAKU Vision 2025”をスタートしました。事業ごとに定めた「ありたい姿=Vision」に向けたロードマップを実行するとともに、ありたい姿実現に向けて定めた全社重要課題に対し取組を進めております。
当連結会計年度の連結売上高は、ファインケミカルズ事業領域が前連結会計年度を下回ったものの、モビリティ&イメージング事業領域、ライフサイエンス事業領域が前連結会計年度を上回り、2,017億9千1百万円となり、前連結会計年度に比べ34億1千1百万円(1.7%)増加しました。当社の業績と比べると、当連結会計年度の連結売上高は当社の1.67倍となりました。
連結売上総利益は、613億1百万円となり、前連結会計年度に比べ54億5千万円(8.2%)減少しました。
販売費及び一般管理費は、539億6千4百万円となり、前連結会計年度に比べ87億1千7百万円(19.3%)増加しました。
連結営業利益は、原材料価格高騰の影響、ファインケミカルズ事業領域の売上高減少に加え、医薬事業のアンハート社への契約締結一時金60億円の支払いに伴う販管費の増加により、73億3千7百万円となり、前連結会計年度に比べ141億6千8百万円(65.9%)減少しました。営業利益率は、前連結会計年度に比べ7.2ポイント低下し、3.6%となりました。
営業外損益は、前連結会計年度に比べ37億4百万円増加し、52億2千4百万円の利益となりました。主な営業外損益の増加は為替差益25億2千3百万円であります。連結経常利益は、125億6千2百万円と前連結会計年度に比べ104億6千3百万円(45.4%)減少しました。
特別利益は、前連結会計年度に比べ7億9千3百万円増加し、21億7千1百万円となりました。主な増加は投資有価証券売却益8億8千万円であります。特別損失は、前連結会計年度に比べ40億9千6百万円増加し、75億2千7百万円となりました。主な増加は投資有価証券評価損36億8千2百万円、減損損失5億2千万円であります。税金等調整前当期純利益は、72億5百万円と前連結会計年度と比べ137億6千6百万円(65.6%)減少しました。
法人税等は、前連結会計年度に比べ29億3百万円減少し、30億2千6百万円となりました。法人税等の負担率は、前連結会計年度の28.27%から41.99%に増加しました。
非支配株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ8百万円増加し、6千6百万円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、41億1千3百万円となり、前連結会計年度と比べ108億7千1百万円(72.5%)減少しました。
経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
セグメントの業績は次のとおりであります。
売上高は812億1百万円となり、前連結会計年度に比べ93億3千2百万円(13.0%)増加しました。
セイフティシステムズ事業は、国内は当期後半の一部自動車メーカーの生産停止等により、エアバッグ用インフレータは前期を下回ったものの、総じて国内の半導体不足等の影響が緩和し自動車生産が回復したことにより、シートベルトプリテンショナー用マイクロガスジェネレータは前期を上回り、国内全体としては前期を上回りました。また、海外は欧米、中国及びASEAN地域とも総じて堅調な需要に支えられたことに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、エアバッグ用インフレータ、シートベルトプリテンショナー用マイクロガスジェネレータ、スクイブは前期を上回りました。この結果、セイフティシステムズ事業全体としては前期を上回りました。
ポラテクノ事業は、染料系偏光フィルムは車載用需要が低迷したものの、X線分析装置用部材は堅調に推移したことにより、前期を上回りました。
セグメント利益は原材料価格高騰による製造原価の上昇により、80億2千8百万円となり、前連結会計年度に比べ1億8千7百万円(2.3%)減少しました。
売上高は570億7千2百万円となり、前連結会計年度に比べ69億7千4百万円(10.9%)減少しました。
機能性材料事業は、民生向け及び半導体関連部材の市況低迷を受けエポキシ樹脂をはじめ各製品群が低調に推移したことにより、機能性材料事業全体で前期を下回りました。
色素材料事業は、感熱顕色剤が堅調であったものの、コンシューマインクジェットプリンタ用色素が低調に推移したことにより、色素材料事業全体で前期を下回りました。
触媒事業は、顧客プラントの触媒交換時期の端境期のため低調に推移し前期を下回りました。
セグメント利益は原材料価格高騰による製造原価の上昇により、51億8千3百万円となり、前連結会計年度に比べ50億3千7百万円(49.3%)減少しました。
売上高は635億1千8百万円となり、前連結会計年度に比べ10億5千4百万円(1.7%)増加しました。
医薬事業の国内向け製剤は、光線力学診断用剤「アラグリオ®顆粒剤分包」の市場浸透、2022年度に上市した抗体バイオシミラー「ベバシズマブBS」が伸長し、前期並みとなりました。診断薬は前期を下回ったものの、国内向け原薬、輸出、受託事業は前期を上回り、医薬事業全体としては前期を上回りました。
アグロ事業の国内向け販売は低調に推移したものの、輸出が前期を上回り、アグロ事業全体としては前期並みとなりました。
不動産事業は、前期並みとなりました。
セグメント利益は医薬事業のアンハート社への契約締結一時金の支払いに伴う販管費の増加により、24億1千万円となり、前連結会計年度に比べ82億5千8百万円(77.4%)減少しました。
なお、当連結会計年度より、組織変更に伴い「機能化学品事業」、「医薬事業」、「セイフティシステムズ事業」としていた報告セグメントを「モビリティ&イメージング事業領域」、「ファインケミカルズ事業領域」、「ライフサイエンス事業領域」に変更しており、各セグメントの前年同期比につきましては、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた上で算出しております。
(生産、受注及び販売の状況)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 生産金額は販売価格をもって算出しており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b. 受注状況
当社グループ(当社及び連結子会社)では、受注生産によらず見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
(中期事業計画の成果)
4ヵ年中期事業計画 KAYAKU Vision 2025 の第2年度となる当連結会計年度は、売上高は過去最高の2,017億円となりましたが、営業利益は73億円となり、計画を下回りました。来期の売上高は計画どおりに伸長する見込みですが、原材料価格の高止まりを始めとしたインフレによるコスト増などにより営業利益につきましては計画との差異が生じており、本中計期間内での数値目標への到達は難しくなりました。しかしながらKV25後を見据えた医薬事業における新薬導入や市場の需要拡大に備えた積極的な設備投資により、進捗の遅れを取り戻し、早期にKAYAKU Vision 2025 の数値目標を達成すべく取組んでまいります。
4ヵ年中期事業計画 KAYAKU Vision 2025の第2年度の成果は以下のとおりであります。
(単位:億円)
(2) 財政状態
総資産は3,631億7千3百万円となり、前期末に比べ403億1千5百万円増加しました。主な増加は投資有価証券133億3千4百万円、現金及び預金86億9千8百万円、建設仮勘定69億4千万円、売掛金56億7千5百万円、有価証券31億3千2百万円、退職給付に係る資産28億8千9百万円であり、主な減少は商品及び製品46億5千6百万円であります。
負債は926億2千4百万円となり、前期末に比べ247億9千3百万円増加しました。主な増加は長期借入金98億円、未払金80億7百万円、支払手形及び買掛金27億7千9百万円、繰延税金負債26億7千6百万円、短期借入金20億6千9百万円であります。
純資産は2,705億4千8百万円となり、前期末に比べ155億2千1百万円増加しました。主な増加は為替換算調整勘定89億9百万円、その他有価証券評価差額金84億8千5百万円であり、主な減少は利益剰余金37億6千2百万円であります。
セグメントの財政状態は次のとおりであります。
セグメント資産は、現金及び預金、売掛金、建設仮勘定の増加により1,241億7千9百万円となり、前期に比べ136億6千4百万円増加しました。
セグメント資産は、売掛金の増加により825億5千5百万円となり、前期に比べ43億8千5百万円増加しました。
セグメント資産は、投資有価証券の増加により847億6千5百万円となり、前期に比べ10億9千1百万円増加しました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、232億4千2百万円の収入(前期は200億3千9百万円の収入)となりました。これは主に法人税等の支払額が63億6百万円、売上債権の増加が49億9千6百万円あったものの、減価償却費が138億7千3百万円、税金等調整前当期純利益が72億5百万円、棚卸資産の減少が60億2千6百万円あったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、194億9百万円の支出(前期は151億5千8百万円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出が150億3千6百万円、投資有価証券の取得による支出が60億8千3百万円あったことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、38億2千3百万円の収入(前期は79億5千万円の支出)となりました。これは主に長期借入による収入が160億円あったものの、配当金の支払額が78億5千5百万円、長期借入金の返済による支出が40億4千8百万円あったことによるものです。
以上の結果、当期における現金及び現金同等物の期末残高は、前期末に比べ116億8千1百万円増加し、647億7千7百万円となりました。
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループの財務戦略は、経営目標・事業戦略に基づいて策定しており、事業が将来にわたり持続的に成長できる強い財務基盤を維持することを基本方針としております。資本コストを考慮しながら投資に必要な資金調達を行い、安定的な自己資本比率となる最適な財政状態を常に意識した財務活動を行います。企業ビジョンを実現するため、市場ニーズを的確に捉え、経営資本を投入する事業・製品領域を明確化し、グローバルな成長市場で既存ビジネスの拡大と新事業・新製品の展開を加速させ、企業価値の向上を図ってまいります。また、サステナビリティ経営の観点から特定した重要課題(マテリアリティ)のもと、持続可能な開発目標(SDGs)を意識した運営を行い、全てのステークホルダーの満足を高め信頼される会社を目指します。
なお、今後の資本的支出の内容は、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(3) その他の契約
当社グループは、研究開発を事業成長の原動力と捉え、積極的な研究開発活動を行っております。これまで培ってきた要素技術や基盤技術をさらに深化させ、新しい技術開発を加えて、生命と健康を守り、豊かな暮らしを支える新製品・新事業を創出し続けることで、社会に貢献し続けてまいります。
当連結会計年度における研究開発費は
当連結会計年度におけるセグメントごとの活動状況及び研究開発費は次のとおりであります。
(モビリティ&イメージング事業領域)
セイフティシステムズ事業では、サイドエアバッグ用インフレータにおいて次世代品の設計を完了し、製品ラインアップの拡充に向けた開発を推進中です。また新たな自動車用安全デバイスに使用される火工品の開発にも着手しております。
ポラテクノ事業では、車載用高耐久染料系偏光フィルム、ヘッドアップディスプレイ(HUD)用光学部材、液晶プロジェクター用無機偏光板、X線検査装置部材等の開発を進めています。特に染料系偏光板に関しては二色性色素の設計・合成からフィルム化まで一貫した製品開発を行っており、近年電気自動車などで搭載されているHUD用途での採用が増えています。
当事業領域に係る研究開発費は
(ファインケミカルズ事業領域)
ファインケミカルズ事業領域では、豊かな暮らしと持続可能な社会に貢献する製品の開発に取組んでいます。次世代高速通信に向けた各種基板用材料、特に高周波の伝送損失を低減する低誘電樹脂素材や低誘電異種接着剤、イメージセンサー向けの高性能なMEMS用ドライフィルム、高画質かつ高速印刷を実現するための産業用インクジェットインク、染料合成技術を活かした新規機能性色素、高活性でより長寿命なアクリル酸、メタクリル酸製造用触媒を開発しており、さらにバイオ素材及びグリーン触媒への取組も開始しました。
当事業領域に係る研究開発費は
(ライフサイエンス事業領域)
医薬事業では、複数の画期的新規がん治療薬を導入して開発パイプラインを拡充しました。これらの早期の承認取得を目指しております。また、社外研究機関との共同研究により新規技術の構築にも取組んでおり、特にバイオ医薬品の製造・品質管理に関する技術が充実してきています。一方、患者負担の軽減や医療保険財政の改善に貢献するジェネリック抗がん薬及びバイオシミラーでは利便性を向上させた工夫製剤を継続的に開発し、製品ラインアップの更なる拡充に努めております。さらに治療薬だけでなく、体外診断薬の新製品開発も順調に進んでおり、臨床性能試験に向けた準備を進めております。
アグロ事業では、新規殺虫剤を創薬し、本年度より公的試験を開始いたしました。また工夫製剤・機能性展着剤といった製剤技術を基本とした研究活動でも成果があがっており、複数の製品で農薬登録申請を行いました。現在は研究DXにも力を入れており、創薬活動やデータ解析に幅広く応用をはかっています。さらには農業関連の新規分野として、環境負荷を低減させる資材やバイオスティミュラント(植物刺激剤)などの研究を精力的に行うとともに、新規事業の探索にも力を入れております。
当事業領域に係る研究開発費は
(その他)
テクノロジー統括ではスタートアップ企業やアカデミア(大学・産学連携の研究機関)とのオープンイノベーションを積極的に実施して競争優位性の獲得に努めています。2023年度はスタートアップ企業1社と共同研究を開始しました。また、産業用ドローンは空撮、点検、防犯、物流など多岐にわたる分野での普及が見込まれており、それに伴う公共の安全の確保が急務となってきています。このため産業用ドローンパラシュート安全装置事業の立ち上げを推進するべく2023年11月にエアロ事業推進部を新設しました。2023年3月には当社のドローン用パラシュート安全装置「PARASAFE®」を搭載したドローンが日本初のドローン認証第一種型式認定を取得するなど社会実装に向けた取組も強化しています。
その他の研究開発費は