文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、企業理念「表面処理技術から未来を創造する」のもと、創業以来、装飾・防錆めっき技術から発展した様々な表面処理技術の提供で、自動車、エレクトロニクスなどの産業の成長を支えてまいりました。これからも、長年培った知見と研究・開発力で、新たな表面処理技術を追究し、ものづくりを支え、世界中の人々の豊かな生活に貢献してまいります。
当社グループの主要分野である電子分野では、半導体関連市場における、AIやIoTの普及及び自動車の自動運転など様々なデジタル技術の革新に伴い、中長期的には当社事業に関連するプリント基板、半導体パッケージ基板の需要が拡大すると予想されます。一方、装飾分野では、主な対象となる自動車部品において、デザイントレンドの変化や電気自動車の普及による需要の低迷が影響しており、今後も横ばい基調で推移するものと予想されます。
このような状況を踏まえ、当社グループは中長期の方向性として「2035年に目指す姿」を「独自の強みを最大限に活かし、環境や社会に貢献することで、社会とともに成長し続けるグローバル企業」と定め、日々変化し続ける社会環境に対応しつつ、常に技術・サービス体制を強化していくことで、社会価値と経済価値の追求による企業価値向上を図ってまいります。
また、これを実現するため、当社グループは中期経営計画「JCU VISION 2035 -1st stage-」(2025年3月期~2027年3月期)を策定し、「成長分野への積極的な投資」、「経営基盤の強化」、「DX推進によるデータの利活用」、「既存市場における収益性強化」、「サステナビリティ経営の推進」及び「人的資本、知財・無形資産の活用」を基本方針に、取り組みを推進してまいります。
① 成長分野への積極的な投資
当社グループは、研究開発型企業として継続的に高付加価値な製品を開発し、常に市場へ投入していくことが求められているため、成長が著しい「半導体パッケージ基板を対象とする重点領域」、「半導体アドバンスドパッケージを対象とする次世代領域」に対し積極的な投資を続けてまいります。今後につきましては、既存の総合研究所に加え新設する熊本事業所との2拠点体制とすることで研究開発を加速し、世界をリードするニッチトップ企業を目指してまいります。
② 経営基盤の強化
当社グループは、持続的な企業価値向上を実現させるため、更なる経営基盤の強化に取り組んでまいります。コンプライアンスを中心としたグループガバナンスの水準をさらに高めるとともに、成長分野への積極的な投資の推進と株主の皆様への安定的な利益還元を両立することにより、資本効率の更なる向上を図り、企業価値の向上に努めてまいります。
③ DX推進によるデータの利活用
当社グループは、事業活動をより効率的に進めていくためにもDX化を推進してまいります。特に、研究開発に関わるMI(マテリアルズインフォマティクス)の活用強化は必要不可欠であり、迅速かつ効率的に新製品を創出していくことで、競合他社の追従を許さない質の高い製品を提供してまいります。
④ 既存市場における収益性強化
当社グループは、各地域で得られた情報及び知見をグローバルに設立した拠点間で最大限に活用することで不確実性の高い環境下においてもお客様や社会からのニーズに迅速かつ的確に応えてまいります。また、そのために必要な人材や情報を効率的に活用し、環境に配慮した製造体制を構築するなど事業活動の基盤強化を推し進めてまいります。
⑤ サステナビリティ経営の推進
当社グループは、中長期的な視点に立ち、持続的に成長を続けるための経営課題に取り組むことでグループの継続的かつ安定的な成長による企業価値の向上を目指してまいります。
特に、気候変動対策においては、「2031年3月期に国内拠点におけるCO2実質排出量を46%削減(2014年3月期比)」を経営目標とし、さらには、主要工場でもある生産本部では、「2031年3月期にCO2実質排出量ゼロ」を目標とし持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
⑥ 人的資本、知財・無形資産の活用
当社グループは、外部環境や経営戦略に沿った人的資本の活用を推し進め、会社と従業員がともに持続的な成長ができる経営を実現してまいります。また、企業価値に占める知的・無形資産においてもその重要性が高まっており、技術を重視する企業として創造した価値を適切に保護・活用するために体制を強化し、企業価値の向上に繋げてまいります。
当社グループにおいては、持続的な成長を続けていくためにも「急成長する市場×不透明な経営環境」に対応していくことが必要不可欠であります。このような状況のなか、上記の基本方針を軸に各施策をバランスよく実行し、当社事業の「質」を高め、世界中のお客様に必要とされる企業を目指してまいります。
当社は、「世界中のお客様に必要とされる企業」を目指す姿とし、持続的な成長を続けていくためにも「急成長する市場×不透明な経営環境」に対応していくことが必要不可欠であると考え、中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)において「サステナビリティ経営の推進」を基本方針のひとつに掲げております。当社が目指す「世界中のお客様に必要とされる企業」になるために、マテリアリティの特定と対応を通じてサステナビリティ経営を推進し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言の開示フレームワークに基づく、当社の気候変動課題を含むサステナビリティに関する考え方及び取り組みについては次のとおりであります。
当社では、中期経営計画の策定からPDCAを推進するフォローアップ会議を開催し、サステナビリティに関する活動についても、代表取締役会長兼CEOを責任者としたフォローアップ会議の議題としております。執行役員を含む経営陣全体で、「サステナビリティ経営の推進」のための具体的な対策を協議・決議し、これらの進捗状況及び結果を取締役の職務執行状況報告として3か月ごとに取締役会へ報告しております。
また、代表取締役会長兼CEOが委員長を務めるリスク管理委員会で、サステナビリティに関する事項を含む当社のリスク対策の実施状況をモニタリングし、取締役会へ年に1回以上報告しております。
気候変動課題については、取締役がリーダーを務める「TCFDプロジェクト」「CO2削減プロジェクト」を設置し、各プロジェクトで協議された内容をフォローアップ会議及びリスク管理委員会と情報共有しております。
① 気候変動課題に関する戦略
当社では、リスクと機会の抽出にあたり、中期・長期に分類し、中期については、中期経営計画の最終年度である2027年3月期をターゲット年とし、長期については2035年3月期をターゲット年としております。
また、シナリオの分析と検討にあたっては、
当社における、現在の取り組み状況は以下のとおりであります。
影響評価プロセス
STEP1:リスク・機会の抽出と評価
当社事業における世界観の想定、この中でのリスクと機会の抽出・評価
STEP2:シナリオ分析
重要度の高いリスクと機会についてのシナリオの考察(影響度・発生時期も想定)
STEP3:財務インパクト評価
重要度の高いリスクと機会についての想定される財務インパクトの算定
イ.気候変動課題に関するリスク
(a) 1.5℃/2℃未満シナリオ 低炭素経済への移行に関するリスク *RCP2.6を想定
(b) 4℃以下シナリオ 物理的変化リスク *RCP8.5を想定
ロ.気候変動課題に関する機会 *IEAのSDS、RCP2.6・4.5を想定
(注)1.影響度
小:1億円未満、中:1億円以上10億円未満、大:10億円以上と設定
*年度の決算に与える影響度として評価
2.発生時期
中期:中期経営計画の最終年度である2027年3月期、長期:2035年3月期をターゲット年と設定
3.財務インパクト
2024年3月期の実績を基準に、2035年3月期に想定される売上、利益、時価総額等の最大影響額を算定
② 人的資本に関する戦略
イ.人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
当社は、「世界中のお客様に必要とされる企業」を目指す姿とし、持続的な成長を続けていくためにも「急成長する市場×不透明な経営環境」に対応していくことが必要不可欠であると考え、中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)において「人的資本、知財・無形資産の活用」を基本方針のひとつに掲げております。
この基本方針を軸に「環境、戦略に合わせた人材獲得・育成」「労働環境、働き方の最適化」を具体的な戦略としており、これらの施策を確実に実行し、企業としての「質」を高めてまいります。
当社では、サステナビリティに関する事項を含む当社のリスクの識別、評価、管理については、代表取締役会長兼CEOを委員長とするリスク管理委員会で行っております。本委員会を構成するリスク管理委員及びリスク管理推進者が、各部署から抽出されたリスクの内容を精査し、その対策を担当部門に指示し、対策実施のモニタリングを行い、取締役会へ報告を行っております。
気候変動課題に関するリスクについては、取締役をリーダーとするTCFDプロジェクトで1.5/2℃未満シナリオでの移行リスクと、4℃シナリオでの物理リスクにおける項目に基づき事業インパクト(リスク)・機会を識別し、さらにこの影響度と発生時期を同プロジェクトにて評価を行い、リスク管理委員会と情報を共有しております。
① 気候変動課題に関する指標と目標
当社は、中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)で定めた2024年3月期までに国内のScope1・2の排出量20%減(2014年3月期比)を達成することができました。
また、新たな中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)において、気候変動課題に関する指標と目標に引き続きCO2削減目標の達成を定めております。
イ.2027年3月期までに、国内のScope1・2の排出量35%減(基準年度:2014年3月期)
(注)新事業所分は除く
ロ.2031年3月期までに、国内のScope1・2の排出量46%減
新潟工場のScope1・2の排出量をゼロまでオフセットする「CO2ゼロ」を実現
ハ.2051年3月期までに、国内のScope1・2のカーボンニュートラルの実現
Scope1・2に関するCO2排出量につきましては、2023年3月期よりグループ全体で算定いたしました。当社グループ全体の削減目標値は設定後、あらためて開示する予定です。
また、Scope3に関するCO2排出量につきましては、2024年3月期より国内の全てのカテゴリーの排出量を算定いたしました。当社グループ全体のCO2排出量及び削減目標値は算定後、あらためて開示する予定です。
なお、GHG7種類のうち、CO2のみを算定対象としており、それ以外の6つのガスについては、排出量が僅かであることが明らかであるため算定から除外しております。
ハ.Scope1・2 CO2排出量(t-CO2)
(注)1.算定の対象範囲は、当社及び海外子会社となります。
2.算定には、各電力又はガス事業者、LPガス協会などの各排出係数を使用いたしました。
3.精度向上のため海外の一部数値を再計算しております。この変更は過去にさかのぼり適用しております。
ニ.新潟工場 CO2排出量(t-CO2)
ホ.Scope3 CO2排出量(t-CO2)
(注)1.算定の対象範囲は、当社のみとなります。
2.算定には、LCIデータベース IDEAv2.3 (サプライチェーン温室効果ガス排出量算定用)(国立研究開発法人産業技術総合研究所、一般社団法人サステナブル経営推進機構)又は環境省排出原単位データベースなどの各係数を使用いたしました。
② 人的資本に関する指標と目標
当社は、多様性を尊重し、機会の均等を図っており、人的資本に関する指標と目標に以下の項目を定めております。
社外取締役に加え、2022年4月に新しく女性の執行役員を1名選出いたしました。経営に女性の意見を取り入れることで、多様性が確保される体制の強化を実施してまいります。
イ.管理職に占める女性労働者の割合
2027年3月期までに、管理職に占める女性労働者の割合を15%とする。
(a) 管理職に占める女性労働者の割合
(注)1.対象範囲は当社のみとなります。
2.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
3.2024年3月期におけるグループ全体の管理職に占める女性の割合は19.0%です。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。
また、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの売上の大部分は、表面処理薬品関連資材及び装置に係るものであり、主に自動車業界とエレクトロニクス業界、特にプリント基板業界で使用されており、その市場動向により当社グループの業績は大きく影響を受けます。
自動車業界における当社グループの表面処理薬品は、自動車前面部のラジエータグリル(樹脂製化粧部品)やドアハンドル(樹脂製)等高級車に採用される部品のめっき工程等で使用されます。そのため、自動車生産量の推移及び自動車のEV化等に伴う意匠や機能の変化により影響を受けます。また、自動車業界の設備投資の動向により、装置の受注活動は大きな影響を受けます。
プリント基板業界における当社グループの表面処理薬品は、回路形成用の銅めっき工程等で使用され、プリント基板の需要先は主に電子機器メーカーであります。なかでもスマートフォンやタブレット端末、ゲーム機、パソコン、デジタル家電市場の生産量推移が、当社グループの業績に大きな影響を及ぼします。また、プリント基板業界の設備投資の動向により、自動車業界と同様、装置の受注活動は大きな影響を受けます。
当社グループの薬品事業の主要製品に使用されている原材料は、薬品類や貴金属等種類としては多岐にわたります。これらの原材料の市況において大幅に左右されないように対応はしておりますが、市況の大きな変動により原材料価格が上昇し、製造コストの削減や製品価格に転嫁できない場合には、当社グループの業績は影響を受けます。
当社グループは国内のみならず、海外においても幅広く事業を展開しております。当社グループは外貨建て決済を行う場合、必要に応じて為替予約等により短期的な影響を最小限にする努力をしておりますが、予想を超える大幅な為替変動があった場合には、当社グループの業績は影響を受けます。また、海外の連結子会社において現地通貨にて作成される財務諸表は、連結財務諸表作成のため円換算されており、換算時の為替レートの変動により当社グループの業績は影響を受けます。
当社グループは、東・東南アジア、北米地域にて生産及び販売活動を行っております。しかし、海外での事業活動においては、予期しない法律又は規制の変更、政治・経済情勢の悪化、テロ・戦争等による社会的混乱、産業基盤の脆弱性、人材の確保困難、自然災害、感染症等のリスクが潜在しております。これらの不可抗力要因が顕在化し、事業活動に支障が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。なお、当社グループでは、海外の子会社と情報交換を行い、リスクの早期把握に努めております。
当社グループの技術情報には、表面処理薬品の開発経緯、薬品の成分・組成、装置の開発経緯、仕入商品情報、当社グループとお客様間の技術データ等があります。これらの技術情報は、外部への持ち出し、複写等を禁じ、外部漏洩に備えております。しかしながら、万一、これらの情報が外部へ漏洩した場合には、他社において類似品の製造等が可能になると考えられ、当社グループの業績は影響を受けます。また、退職者が、退職後の守秘義務契約にも関わらず、一部の技術・情報等が流出したときには、当社グループの業績は影響を受けます。
(6) 情報システム障害
未知のコンピュータウイルス感染により、個人パソコンはもとよりネットワークに繋がる全てのパソコンが停止した場合、社内業務が停止します。データを保管しているサーバーまで影響が及んだ時には、サーバー内の重要データが全て消失するおそれがあります。また、ウイルス感染による集団感染となれば社内業務が滞り、当社グループが起因となりお客様等へ被害が及んだ場合、損害賠償等の請求が発生し、当社グループの業績は影響を受けます。
(7) 人材の確保・育成
当社グループは、持続可能な成長を続けるためグローバル人材の確保・育成は必須であり、採用活動の強化、教育・研修の拡充等の施策を行っております。しかしながら、優秀な人材の確保・育成が想定どおりに進まない場合、又は事業活動に不可欠な人材、技術や語学力をもった優秀な人材の流出等が生じた場合には、当社グループの業績は影響を受けます。
(12) 保有有価証券の価格変動
当社グループは、取引先等との関係構築・維持のために株式を保有しておりますが、株式相場の大幅な下落又は株式保有先の業績悪化等により保有する株式の価額が著しく下落し、しかも回復の可能性が認められない場合は、保有する株式の減損処理を行うこととなり、当社グループの業績は影響を受けます。
(14) 品質管理体制
当社グループでは、国内外の自社工場すべてでISO9001認証を取得完了し、品質マネジメントシステム(QMS)に従って品質管理体制を構築しております。品質方針を実現すべく、品質管理や工程管理、計測器管理等を行い製造し、製造等での不具合発生時の対応も整備しております。しかしながら、管理項目の不備等により不適合品がお客様に納品され、信用が低下した場合には、当社グループの業績は影響を受けます。
(15) 他社との競合、新技術の開発遅れ
当社グループにおける薬品事業においては、技術変革、ニーズの変化に伴い表面処理方法も変更されることがあり、これらに対応するため当社グループ及び競合各社は常に新製品開発を行っております。当社グループにおいて新技術の開発及び表面処理方法の変化への対応の遅れにより、開発競争に打ち勝つことができない場合には、当社グループの業績は影響を受けます。
(16) 知的財産の擁護、侵害
当社グループでは多数の知的財産を保有しており、それらを保護・維持し適正な管理に努めております。さらに、第三者の知的財産権についての侵害等は行わないようにしておりますが、万一、他社特許等に抵触した場合には、損害賠償等も考えられ、当社グループの業績は影響を受けます。また、当社グループの製品において、模倣品が市場に出回り、価格競争に巻き込まれ、当社の競争力が低下した場合には、当社グループの業績は影響を受けます。
(17) 固定資産の減損会計
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。大幅な業績の悪化が一定期間続き、かつ将来キャッシュ・フロー減少等の一定の条件を満たすと見込まれた場合には、減損損失が発生し当社グループの業績は影響を受けます。
当社グループは、各国の税法に準拠して税額を計算し、適正な納税を行うように努めておりますが、税務調査により不適切な処理が発覚した場合や各国の税務当局と見解の相違が生じた場合には、申告所得漏れとして法人税等を追徴される可能性があり、当社グループの業績は影響を受けます。
当社グループは、社内ルールに基づき与信管理を徹底しているものの、お客様の経営状況の悪化等により売上債権等の回収が不能になるおそれがあります。回収不能見込額については、財務諸表に貸倒引当金を適切に計上しておりますが、予測を上回る回収不能額が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受けます。
当社グループでは、新潟県上越市の工場及び海外の工場において表面処理薬品を生産しております。有事への対応としては、事業継続計画を策定し、情報の共有化を図り、非常事態に備えております。しかし、これらの地域にて大規模な地震その他の自然災害、事故及び感染症等が発生した場合には、生産活動の停滞や、輸送上の障害等が生じるおそれがあります。また、このような非常事態の長期化により、お客様の稼働状況が低迷した場合には、当社グループの業績は影響を受けます。
当社グループは、中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)「JCU VISION 2035 -1st stage-」において、「世界中のお客様に必要とされる企業」を目指す姿とし、持続的な成長を続けていくためには「急成長する市場×不透明な経営環境」に対応していくことが必要不可欠であり、「成長分野への積極的な投資」、「経営基盤の強化」、「DX推進によるデータの利活用」、「既存市場における収益性強化」、「サステナビリティ経営の推進」及び「人的資本、知財・無形資産の活用」の6つの基本方針を掲げております。かかる戦略を実行するため、当社グループは、ここに多くの経営資源を投入し、今後も継続していく予定ですが、この戦略のための取り組みが成功しない又は期待した効果を得られない場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度における国内経済は、経済活動は正常化したものの物価高の影響を受け個人消費が低迷し、景気の回復に一服感が見られました。製造業では、輸出の増加により緩やかな回復基調が継続しているものの、当第4四半期においては自動車産業の出荷停止の影響を受け、一時的に減速しております。企業の投資状況においては、製造業、非製造業ともに増加しており、企業はデジタル化や生産能力増強に向け、積極的な投資姿勢を維持しております。
海外では中国において、景気減速の影響を受け、個人消費、製造業ともに成長が鈍化いたしました。欧米諸国においては、インフレ圧力の緩和を受けて景気は持ち直しましたが、エネルギーの供給不安による資源価格の高騰、世界的な製造業の不調が継続しており、引き続き注視が必要な状況にあります。
当社グループを取り巻く事業環境は、エレクトロニクス産業において、コロナ禍の巣ごもり需要などが終息したことに伴い、スマートフォンやパソコンをはじめとする様々な高機能電子デバイス向け電子基板の需要が世界的に低水準で推移いたしました。自動車産業は日本、中国において、部品供給不足が緩和されたことにより、生産台数が増加いたしました。
その結果、当社グループの経営成績は次のとおりとなりました。
セグメントの経営成績は、次のとおりであります。
(薬品事業)
電子分野
中国 一部のプリント基板メーカーにおいて回復基調が見られたものの、スマートフォンをはじめとする高機能電子デバイス向けプリント基板の需要が低迷し、薬品売上高は前年同期比で横ばいに推移いたしました。
台湾 サーバー、高機能電子デバイス向け半導体パッケージ基板の需要が低迷し、薬品売上高は前年同期比で減少いたしました。
韓国 半導体市場の不調が継続したため半導体パッケージ基板の需要が低迷し、薬品売上高は前年同期比で減少いたしました。
装飾分野
日本 半導体・部材不足が緩和されたことにより自動車の生産台数は増加したものの、自動車の部品構成の変更に伴う薬品需要の低下及び当第4四半期においては自動車産業の出荷停止の影響を受け、薬品売上高は前年同期比で減少いたしました。
中国 半導体・部材不足の緩和に伴い自動車の生産台数は増加したものの、当社が対象とする自動車部品の需要が低下し、薬品売上高は前年同期比で減少いたしました。
(装置事業)
経済活動の正常化に伴う新規投資需要の増加により、売上高及び受注残高は増加いたしました。
(その他)
その他におきましては、売上高は0百万円(前年同期比57.0%減)となり、セグメント損失は17百万円(前年同期はセグメント損失17百万円)となりました。
生産、商品仕入、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は、販売価格によっております。
2.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は、仕入価格によっております。
2.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
3.装置事業においては、商品仕入は行っておりませんので、該当事項はありません。
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は、販売価格によっております。
2.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
3.上記の金額は、機械装置の製作・据付に関する請負契約等の受注状況を記載しており、表面処理薬品及び商品に関する受注は、売上計上までの期間が短期間であるため、記載を省略しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の財政状態は以下のとおりであります。
資産合計は、前連結会計年度末に比べ4,740百万円増加し、49,641百万円となりました。流動資産は、主に現金及び預金、売掛金の増加により4,185百万円増加し、40,831百万円となりました。固定資産は、主に工具、器具及び備品(純額)、投資有価証券及び繰延税金資産の増加により554百万円増加し、8,810百万円となりました。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ351百万円増加し、7,391百万円となりました。流動負債は、主に未払法人税等が減少したものの、支払手形及び買掛金、契約負債の増加により499百万円増加し、6,664百万円となりました。固定負債は、主に長期借入金の減少により148百万円減少し、727百万円となりました。
純資産合計は、利益剰余金及び為替換算調整勘定の増加により、前連結会計年度末に比べ4,388百万円増加し、42,250百万円となりました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、24,587百万円と前連結会計年度末に比べ2,589百万円増加いたしました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは6,029百万円の収入となり、前年同期と比べ収入が1,810百万円の減少となりました。これは主に売上債権及び契約資産の増減額が増加したこと等によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは781百万円の支出となり、前年同期と比べ支出が456百万円の増加となりました。これは主に定期預金の払戻による収入が減少したこと等によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは3,061百万円の支出と、前年同期と比べ支出が203百万円の増加となりました。これは主に短期借入金の純増減額が減少したこと等によるものです。
資金の流動性については、運転資金としては将来予測可能な資金需要に対して十分な流動性資産を確保しております。
これらの資金基盤を背景に、当社グループは、収益性・事業効率の向上に向けて、研究開発体制の強化や、中国・米国・インドといった海外市場への戦略的投資機会を追求することで、薬品事業の競争力強化、海外市場での更なる成長、次世代技術開発と新製品の早期市場投入や新市場・新分野への挑戦を図ってまいります。
株主への利益還元策につきましては、持続的な成長を達成するため手元流動性の確保を重視し、安定した財務基盤を維持しつつ、増配継続をしてまいりました。新たな中期経営計画「JCU VISION 2035 -1st stage-」においては、株主価値向上のため引き続き安定的な増配を維持し、機動的な自己株式の取得を検討することで、総還元性向50%を目安としてまいります。
「事業等のリスク」に記載のとおり、当社グループの事業等は様々なリスクを伴っています。事業展開にあたっては、自己資金の充当が望ましいと考えておりますが、将来、それを上回る資金需要が発生した場合にも必要資金を円滑かつ低利で調達できるよう財務基盤の健全性は常に維持していくよう努めてまいります。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りのうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社グループは、事業セグメントの垣根を乗り越えて、「表面処理技術から未来を創造する」を企業理念に、研究開発活動を推進しております。新製品及び新技術の開発はもちろんのこと、従来技術の改良開発等も随時行うことで、顧客満足度の向上を図っております。自動車・建材・水栓金具からエレクトロニクス・デバイス・半導体に至る幅広い業界の最先端技術に対応すべく、顧客との共同研究も視野に進めております。
当連結会計年度における研究開発費は、
薬品事業における研究開発活動は、表面処理技術をコア事業とし、既存事業のさらなる拡大に向け、当社中期経営計画「JCU VISION 2035 -1st stage-」にて掲げる6つの基本方針「成長分野への積極的な投資」、「経営基盤の強化」、「DX推進によるデータの利活用」、「既存市場における収益性強化」、「サステナビリティ経営の推進」及び「人的資本、知財・無形資産の活用」に則り、市場開発や新製品開発に注力しております。また、当社グローバルネットワークを活用し情報を共有することで、事業環境の変化や顧客ニーズを捉えた新たな価値を提供するための研究開発活動を行っております。
装飾・機能分野においては、自動車部品や水栓金具などに使用されるめっき薬品が中心であり、意匠性や耐食性能の向上に加え、6価クロム等の環境負荷物質を使用しない薬品の早期市場投入を目指し、研究開発に取り組んでおります。また、近年では、環境負荷物質を使用しない薬品のラインナップの拡充に加え、競争力のある製品開発を主眼に研究開発を推し進めております。
電子分野では、スマートフォン、PC、サーバーなどの用途を中心とした、高密度プリント基板及び半導体パッケージ基板向けの薬品プロセスである「ビアフィリング硫酸銅めっき」、「微細配線形成用の各種エッチング液」など、主力製品の更なる強化に取り組んでおります。特に、当社が「次世代領域」と位置付けている半導体アドバンスドパッケージ分野及び「重点領域」と位置付けている半導体パッケージ基板分野においては、IoTの普及やAIをはじめとする電子機器の高機能化が進むにつれ今後も需要の拡大が期待されております。今後設立を予定している熊本事業所においては、次世代領域の研究開発に特化した最新鋭研究施設の導入を予定しており、これまで培ったノウハウを基に、研究開発をさらに加速してまいります。
装置事業における研究開発活動では、当社薬品を継続的にご使用いただくため、高品質で高機能な自動車部品用めっき装置や、プリント基板・半導体パッケージ基板向けめっき装置、プラズマ技術を用いたプリント基板のエッチング及び洗浄装置等において、お客様の多様な要求に応えるべく努力を続けております。なかでも、当社の設立以来の考え方である「装置と薬品の一体販売」に基づき、薬品の研究開発に装置部門が参画することで、薬品性能を最大限に引き出す装置の開発、販売を推進しております。薬品だけでは達成できない技術的課題を装置機構の側面から検証し、最高のパフォーマンスを提供する差別化された装置の市場投入を目指してまいります。今後も薬品の性能を最大限に引き出すめっき装置の開発に加え、近年要求が高まっている環境に配慮しためっき、洗浄装置等の研究開発を行ってまいります。