第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

当社グループが提供する本質的な価値は、「お客様にとって専門性が高すぎるため対応が難しい『お客様にとってのノンコア業務=お客様のニッチな業務』を『当社のコア業務』として置き換え、当社の専門性をもって遂行し、お客様が本来行うべきコア業務に集中頂ける時間を創出して差し上げること」と考えております。

このような考えのもと、当社はこれまで事業会社並びに金融商品のディスクロージャー・IR実務支援を主たる事業とし、お客様企業から投資家への適正かつ迅速な情報開示を支援するため、高い専門性を基盤としたコンサルティングサービスと、開示実務の精度と効率を高める独自のシステムサービスを中核に、印刷、物流等を含めトータルなサービスを提供してまいりました。

2020年12月に創業90周年を迎え、様々な分野で専門性を磨き、他の追随を許さないところまで高めていくこと、そして、新たなビジネス領域へチャレンジすることが、当社グループのさらなる発展に繋がることから、事業ドメインがディスクロージャー・IR領域に限定されていた経営理念を見直し、「情報コミュニケーション」、「ドキュメンテーション」の領域で、「世界で類のない、専門性に特化したニッチトップ企業グループ」を目指す新たな経営理念に刷新いたしました。

<<プロネクサスグループ 新・経営理念>>

< MISSION >当社の社会的使命と存在意義

私たちプロネクサスグループは、情報コミュニケーションとドキュメンテーションを支えるプロフェッショナルとして社会・経済の永続的発展に貢献いたします。

< VALUE > MISSION実現のために追求し発揮すべき価値

① PROfessional(専門性) 専門性でお客様の実務を支える

② PROper(適正性)    正確かつ適正なサービスを提供する

③ PROmpt(迅速性)    お客様のニーズにいち早く応える

④ PROgress(革新性)   革新的なサービスを創造する

⑤ PROsocial(社会性)   社会と共生する視点をもつ

< VISION > 当社の本質的価値と目指すべき姿

世界で類のない、専門性に特化したニッチトップ企業グループへ

当社グループは、上記の経営理念に加えて、企業市民としての社会・環境面における行動基準、事業会社としてのビジネスにおける行動基準を定め、当社グループ内への経営方針の浸透を図るとともに、今後も社会・経済の永続的な発展に貢献してまいります。

(当社グループのビジネスモデル:事業を通じた社会的価値・経済的価値の創造プロセス)0102010_001.jpg

 

(2)経営環境とそれに対応する経営戦略

当社グループの事業と関連性の強い資本市場においては、市況の好不調や関連法制度の改正等、当社グループに影響を与える環境変化が常に起こります。これに対して、市況の影響を受けにくいサービスの強化や新たな制度に対応するサービスの開発を通して、事業領域の拡大を続けてまいりました。

近年においては、ディスクロージャーの電子化が大きく進みました。金融庁の電子開示システム「EDINET」は一定期間ごとにバージョンアップを実施しており、同システムにおける開示書類専用データ「XBRL」も順次高度化や適用範囲の拡大が行われています。これらに対応したお客様の開示実務をインフラとして支えるシステムサービス・コンサルティングサービスが、当社事業の大きな柱となっています。

今後もディスクロージャーの電子化は、一層進んでいくことが想定されます。2019年12月に改正会社法が公布され、2023年3月開催の株主総会から当社の主力製品のひとつである株主総会招集通知が電子化されました。またこれ以外にも、金融商品ディスクロージャー分野における開示書類等、当社が取り扱う製品の電子化は今後も拡大していくものと考えております。これらの電子化により、当社の印刷製品の需要が今後減少する可能性があります。

一方、2015年6月に上場会社に適用されたコーポレートガバナンス・コードに基づき、株主・投資家と企業の対話の充実が求められております。加えて、2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂においては、東京証券取引所の市場再編と関連して、特にプライム市場の上場会社は英文開示や非財務情報開示の充実等、さらなる対話の充実が求められております。

また、「働き方改革」が推進される中、コロナ禍により当社のお客様の実務の効率化及びアウトソーシングニーズはより一層高まっております。当社グループでは、システムインフラやコンサルティングサービスの提供に加えて、BPOサービス、Webを通じた情報提供の拡充や英文での情報開示等、電子化時代に対応した「非印刷」サービスを引き続き拡張し、お客様ニーズに応えるサービスを提供してまいります。このように、今後も想定される経営環境の変化に対応して、事業の変革を続けることが当社グループの最重要の経営課題と認識しております。

 

(3)新中期経営計画の基本方針と数値目標

当社は、上記(2)に記載した経営環境の変化に対応するため、「新中期経営計画2024」(以下、本計画)を2022年5月に発表し、推進しております。

創業当初の株券専業からの脱却、決算開示の電子化に伴うシステムサービスプロバイダーへの転換、そして2022年3月期において連結売上収益の55%を占めるに至った「非印刷事業」の拡大等、当社は常に環境変化に対応した事業変革を実現してきました。これは当社が創業以来保持し続けている企業文化です。

当社は2020年の創業90周年を機に、「ディスクロージャー・IR」領域に限定されていた経営理念を見直し、「情報コミュニケーション」、「ドキュメンテーション」を事業ドメインとして再定義しました。本計画は、創業100周年に向け、これらの領域の拡大にチャレンジするものです。

これまでも当社は株券の電子化や有価証券報告書における電子開示の導入等、環境変化に対応した事業の変革と成長を実現してまいりました。前述の招集通知の電子化・投資信託分野のペーパーレス化は、当社中核事業における大きな変化です。この変化に伴うお客様ニーズに的確に対応し、新たなサービスを提供して機会に変えていくことでさらなる成長につなげていきます。一方、印刷売上の一定の減少は不可避であることから、事業環境の変化に対応したWeb・英文翻訳・BPO等の「非印刷分野」のさらなる拡大と収益力向上により利益確保を目指します。

また、サステナビリティ情報をはじめとした「非財務情報開示」の充実に対応し、システム・コンサルティング機能を強化します。これによって開示周辺のドキュメント支援等、新たなビジネス領域に挑戦することで、中長期的な成長を実現してまいります。

なお、本計画の3年目にあたる2025年3月期の業績目標については、株主総会招集通知の電子提供制度をはじめとしたマイナス影響は当初想定よりも緩和され、英文翻訳サービスやイベント事業等の「非印刷分野」の増収が引き続き堅調であるとともに、持分法適用関連会社であった株式会社ミツエーリンクスの株式売却益を当該第1四半期に計上することから上方修正しております。

 

0102010_002.png

 

0102010_003.png

 

0102010_004.png

 

 

(4)会社の対処すべき課題

事業環境が大きく変化するなかで、事業領域の拡張、競争力・収益力・顧客満足の向上に努めてまいります。

① 株主総会プロセスの電子化・開示制度の変化に対応した中核ビジネスの強化と拡張

② 制作・製造プロセスの電子化対応と生産性向上・収益性改善

③ DX・働き方改革に対応したシステム・コンサルティング・BPOサービス強化

④ 非財務情報開示の充実に対応したコンサルティング・英文開示・Webサービスの拡大と体制強化

⑤ グループ事業の強化と新たなビジネス領域の拡大

⑥ ESG・サステナビリティ経営への取り組み

 

(5)中長期的な会社の経営戦略

当社は経営の基本方針に基づき、当社が果たすべき基本的使命の確実な遂行によりお客様の高い信頼を得るとともに、事業環境の変化に対応して持続的な成長を実現するために、以下の戦略を実行いたします。

①  コンプライアンスの徹底と情報セキュリティ体制のさらなる整備

②  開示制度の変化に対応した、新たな実務支援サービスの開発

③  システムサービスの強化による顧客支援領域の拡張

④  M&A、資本・業務提携を含めた外部リソースの活用による事業領域の拡張

⑤  生産性の向上と競争力の強化による収益力の拡大

⑥  資本効率の向上と高い水準の株主還元策の遂行

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)ガバナンス

当社グループは、経営理念に当社が発揮すべき価値のひとつとして「PROsocial(社会性)社会と共生する視点をもつ」を掲げており、その具体的な行動基準として、以下のとおりプロネクサスグループ「社会・環境行動基準」を定めております。本行動基準は、社会的な要請が高まっているESGの各課題と、継続的な情報開示にそれぞれ対応しています。当社グループはこれらの経営理念・行動基準に基づいた事業活動を推進することで、当社グループの成長力とともに、事業の持続可能性を高めてまいります。

<<プロネクサスグループ「社会・環境行動基準」>>

① 法令遵守と機密保持(事業の基盤に係る最重要基準)

② フェア&オープン(公平な開示、対反社会的勢力)

③ 人権と人財の尊重(グループ内外の人権・人財尊重と安全衛生)

④ 環境配慮と社会貢献(環境対策と災害援助・社会文化貢献)

⑤ コーポレートガバナンスの追求(企業価値を高める最適なコーポレートガバナンスを追求)

また、当社グループは今後事業を拡大していくにあたり、サステナビリティの視点に立った当社の社会的責任もより大きくなっていくと考えています。経営環境や社会課題の変化に対し、当社の事業特性を踏まえた重点課題を特定して確実に取り組み、中長期的な成長力と持続可能性を高めていくこと、また当社グループの事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを目的に、2022年4月に「サステナビリティ委員会」を設置いたしました。

本委員会は当社取締役会・経営会議の下に設置され、当社グループの気候変動を含むサステナビリティをめぐる課題や方針の決定・各部門における取り組みの横断的な検討・検証、必要に応じて取締役会への報告を行います。本委員会は代表取締役社長を委員長とし、委員は各担当部門の執行役員により構成されています。

当連結会計年度におけるサステナビリティ課題に対する主な取り組みにつきましては、「サステナビリティ委員会」を中心に各種方針の整備を行っております。まず、パリ協定や労働者の人権に関する国際規範等の遵守を当社グループの経営方針に反映・明文化するため、2023年8月に「環境方針」を改訂するとともに、「人権方針」・「安全衛生方針」を新設しました。また、サプライチェーンを含めたサステナビリティへの取り組みを推進すべく2024年3月に「サプライヤー倫理行動規範」を新設しました。加えて、TCFD (気候変動関連財務情報開示タスクフォース)提言やパートナーシップ構築宣言へ賛同しました。

なお、CDP(Carbon Disclosure Project)など国際的なESG評価機関への対応を含め、サステナビリティ情報の開示を継続的に行っており、当社Webサイトにて確認することができます。当該Webサイトでは、現在、当社単体のスコープ1・2の温室効果ガス(GHG)排出量について算定・開示を行っておりますが、今後はグループ会社やスコープ3へ算定・開示対象の拡充を検討してまいります。

〇当社Webサイト「サステナビリティページ」URL https://www.pronexus.co.jp/sustainability/

 

(2)戦略

 当社グループは、上場企業や金融商品のディスクロージャー・IR支援を主たる事業とし、システムとコンサルティングをサービスの柱としております。当社のディスクロージャー支援事業は会社法・金融商品取引法等に基づく法定開示を支援するもので、気候変動の影響によって、顧客ニーズが大きく左右されるものではありません。また、任意開示であるIRについては、国内外の投資家の関心の高まりを受け、気候変動に関する情報を含めた非財務情報の充実が求められております。このように、当社事業の特性上、現時点において、気候変動の影響を直接的に受けにくく、当該リスクは総じて低いと認識しております。

一方、気候変動情報に関するIRニーズの高まりは間接的な収益機会として捉えており、「新中期経営計画2024」においてサステナビリティ情報をはじめとした非財務情報開示の充実に対応し、システム・コンサルティング機能を強化しております。また、お客様向けコンサルティングサービスを当社自身でも導入し、ノウハウを蓄積することで、お客様向けサービスの改善も図っています。

今後も当社グループでは、サステナビリティ委員会において気候変動に関する直接・間接的な影響や対応について、引き続き検討を行ってまいります。

当社グループにおける、人財の多様性確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針として、「人権と人財の尊重(グループ内外の人権・人財尊重と安全衛生)」を掲げております。

グループ内外の人権と社員一人ひとりの個性を尊重し、会社の財産である社員(人財)の成長を支援し、社員が安全に健康的にいきいきと働ける職場環境の整備に努めます。また、事業領域の拡大やビジネスモデルが大きく変化している中、多様な人財がその意欲、能力を最大限発揮することで当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上につなげるという考えのもと、多様な個性、経験、能力を持つ社員一人ひとりの「多様な個の力」を活かす企業文化、職場づくりに向け、人財および働き方や雇用におけるダイバーシティを推進しております。

取り組みの詳細については、以下当社ウェブサイトに開示しております。

サステナビリティサイト (社会)→ https://www.pronexus.co.jp/sustainability/social/

(3)リスク管理

 当社は、代表取締役社長を委員長とする「リスク・コンプライアンス委員会」を設置し、気候変動を含む全社リスクの識別及び評価ならびに対策の立案を行っております。気候変動に係るリスクについては、TCFD提言に定める「移行リスク」、「物理的リスク」の両面から想定されるリスクを特定、評価を行いましたが、前述のとおり、その影響は少ないと認識しております。

 一方、気候変動に係る機会については、サステナビリティをテーマとした非財務情報開示の充実等によって、プラスの財務的影響が期待でき、結果としてリスクよりも機会による影響が大きくなると見込んでおります。

 

(4)指標及び目標

 当社グループでは、現時点において気候変動のリスクが総じて低いと認識しておりますが、サステナビリティ・ESGに関する取り組みを重要な経営課題として認識しております。2050年にカーボンニュートラルを実現することを目標として、印刷工場での環境マネジメントシステムの推進やゼロエミッション、オフィスでの電力・エネルギー使用量の削減、再生可能エネルギーへの移行等を推進するとともに、当社事業が資本市場のインフラ的な役割を果たしているという認識のもと、安定したサービスを持続的に提供するための環境整備を進めております。

 また、当社は上記「(2)戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する実績及び概要は、次のとおりであります。

 なお、具体的な目標数値につきましては検討を進めてまいります。また、当社グループではグループ全体の取り組みについて整備を進めているところであり、本報告では単体の取り組みを公表いたします。

 

 

指標

実績

(2023年度)

概要

管理職に占める女性労働者の割合

4.9%

現在の全社員に占める女性の割合は29%程度ですが、新卒の入社者は近年男女ほぼ同数であり、管理職候補となる人財層も厚くなってきているため、優秀な人財を性別問わず管理職へ登用をすすめます。

また次期管理職候補となる役職に積極的に登用した結果、女性の次期管理職候補となる役職者が11名在籍しており、今後女性の管理職者の増加を見込んでいます。

男性労働者の育児休業取得率

55.6%

育児介護休業法に対応し社内に育休相談窓口を設置し、過去取得事例の収集と取得事例を相談者へ提供することで育休取得啓発を行った結果、配偶者が出産した男性労働者のうち、昨年度を上回る過半数が育児休業を取得する結果となりました。

今後も同運用を継続することで男性労働者の育児休業取得率向上に努めます。

労働者の男女の賃金の差異

(男性の賃金に対する女性の賃金の割合)

74.0%

労働者の男女の賃金の差異は、下記の計算式に基づき算出しています。

女性の平均年間賃金/男性の平均年間賃金×100%

※賃金とは、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず労働の対象として使用者が労働者に支払うすべてのものを対象とする。

当社では、男女において賃金規程等の制度上、昇進・昇給等の運用上及び採用基準上の差を設けておりません。

賃金差異の主な要因としては上位役職者が少ないことと、近年女性社員の採用数が増加した結果、平均勤続年数が男性より約6年少なく相対的に賃金単価の低い労働者が多いことが挙げられます。

(平均勤続年数 男性労働者:14.1年 女性労働者:8.3年)

従業員エンゲージメントスコア

56.3

㈱リンクアンドモチベーションの提供する「モチベーションクラウド」を用いたエンゲージメントサーベイを実施し、その結果分析から求められる課題の共有、課題解決のためのアクションプランの実施、課題にフォーカスしたサーベイ実施による定点観測というPDCAサイクルを回すことで、全社的な職場環境改善を推進しています。

課題を「洗い出す・解決する・評価する」ことに継続して取り組み、よりよい環境づくりを実現してまいります。

※具体的なエンゲージメントスコアについては別表をご参照ください。

(注)実績及び概要は、主要な事業を営む提出会社の従業員の状況となります。

0102010_005.png

(注)エンゲージメントスコア=従業員の企業に対する愛着や相互理解、相思相愛度合いを数値化した偏差値です。

「50」が全参加企業・組織の平均となります。

3【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスク及び変動要因と、その他重要と考えられる事項は以下のとおりであります。

当社グループでは、これらリスクの発生を十分に認識した上で、発生を極力回避し、また発生した場合に的確な対応を行うための努力を継続してまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)インサイダー情報等機密情報の取り扱いに関わるリスク

当社グループはインサイダー情報を始めとした顧客企業の開示前機密データを取り扱うため、「機密保持」は最重要課題であります。万一これらの情報漏洩や情報流出が発生した場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループでは、こうした事態の発生を抑止するため、別項の「情報セキュリティと事業継続に関わるリスク」への対応を推進するとともに、インサイダー情報の全社的管理体制を構築し推進しています。誓約書の提出、定期的な教育とテストの実施、厳格なルールの制定と運用監視、取り扱いスペースの隔離、関与者の制限、トレーサビリティ体制の整備、定期的な情報セキュリティ委員会の開催と啓発活動等様々な防止策を行っています。

 

(2)情報セキュリティと事業継続に関わるリスク

当社グループが提供するシステムサービスにおいては、その安定稼働の維持及び重要システムの冗長化に努め、不測の事態に備えたコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を策定しております。しかしながら、人的過失、事故、サイバー攻撃、災害や停電等の要因によりシステムサービスに重大な障害が発生する可能性があります。

特に、近年のサイバー攻撃手法の巧妙化により、コンピュータウイルスへの感染等による情報漏洩やサービス妨害のリスクが高まっています。当社グループではサイバーセキュリティ対策を経営の重要課題として、経営主導のもと、情報セキュリティ基本方針及び経済産業省の「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」に従い、多層防御及びCSIRT(Computer Security Incident Response Team)を中心とした設備面、組織面の施策を実行し、定期的な第三者機関によるリスクアセスメントにて実効性を評価しています。

 

(3)関連する法律・制度の変化による受注影響リスク

当社グループは、企業のディスクロージャーに係わる法定書類の作成を支援するためのシステムサービス・コンサルティングサービスと周辺の各種サポートを主業務としておりますが、それらの開示書類の多くは会社法と金融商品取引法に規定されております。したがって、法律や関連する諸制度の改正によって、提供する製品とサービスの需要・仕様・内容が変化することがあります。2019年12月に公布された改正会社法に基づき、2023年3月開催の株主総会から導入された株主総会書類の電子化や、2024年4月施行の金融商品取引法に基づく四半期開示制度の変更はその一例であります。制度改正の結果として法定書類のページ数増や新サービスの導入などのプラスの影響もありますが、反面では、印刷物の一部または全部の電子化による印刷需要の減少、ページ数の減少や特定製品の受注量減少等、当社グループの売上にマイナス影響を与えるケースもあります。こうしたリスクを軽減するために、法制度の影響を受けにくいサービス・ソリューション、新たな事業領域の開拓を中期経営戦略の重要課題として掲げ、重点的な投資・開発を行っています。

 

(4)証券市場の変動による受注影響リスク

当社グループが受注する製品・サービスのうち、株式の新規上場(IPO)やファイナンス、投資信託に付随する目論見書・販売用資料等の売上は、証券市場の好不況によって受注量が変動するため、証券市場の変動は業績に影響を与える可能性があります。当社グループはこうしたリスクを軽減するため、株主総会招集通知、有価証券報告書、四半期決算短信等の継続開示書類や、お客様の業務効率化や正確性の向上に資するシステムサービス・コンサルティングサービス、IR関連製品・サービス等、証券市況の影響を受けにくい製品の受注拡大に取り組んでいます。

 

(5)事業の季節変動リスク

当社グループ売上収益の約75%を占める事業会社向け製品・サービスの顧客のうち、約65%が3月決算会社であるため、決算及び株主総会関連製品の受注が集中する第1四半期の売上収益が、以下の表のとおり最も多くなっております。このため、第1四半期の受注動向は通期業績への影響が大きく、対応する生産キャパシティの確保は重要な課題です。また、その他の四半期においては受注量が第1四半期よりも少ないことから、過剰な生産キャパシティの保有は収益を悪化させるリスクがあります。当社ではこうした受注量の変動に対して、自社製造ラインの生産効率を高めて内製率を向上させるとともに、最繁忙期に有力な業務委託先を活用することで、キャパシティの確保とコスト低減のバランスをとった生産体制を構築しています。加えて、金融商品関連、開示支援システム、BPO、データベース等、比較的季節変動が少なく、通年の需要が見込まれるサービス領域の拡大にも注力しています。

 

 

 

 

 

(2024年3月期)

 

第1四半期

(4-6月期)

第2四半期

(7-9月期)

第3四半期

(10-12月期)

第4四半期

(1-3月期)

年度計

売上収益  (百万円)

11,800

5,916

6,275

6,126

30,117

構成比       (%)

39.2

19.7

20.8

20.3

100.0

 

(6)他社との競合による収益影響リスク

当社の中核事業である上場会社ディスクロージャー・IRや金融商品ディスクロージャー分野においては、それぞれ競合会社が存在します。当社の提供する製品・サービスに対して競合会社も対抗する製品・サービスを提供しているため、新たなお客様の受注といった場面において、ソリューションの差別性、品質の優位性、サポートの充実度、価格の優位性といった面で競争が日々行われています。その結果シェアの変動や受注単価の低下等の変化が起き、当社の売上や利益の変動につながる可能性があります。こうした不可避の状況を踏まえ、当社は提供サービスの品質・機能の向上を図るとともに、お客様の業務をより幅広い視点から支援する新たなソリューションの開発、BPOサービスの提供、競合が少なく当社の強みが生かせる新たな事業領域の開発等によって、競合リスクからの回避と成長・収益機会の拡大を図っています。

 

(7)自然災害やパンデミックによる事業継続リスク・収益影響リスク

大規模地震及び風水害等の自然災害や、新型コロナウイルス感染症を始めとしたパンデミックが発生した場合、当社事業の中核である開示書類作成支援業務の停止・中断の発生リスクがあります。株主総会招集通知や有価証券報告書等の法律で定められた書類作成の停止は、お客様企業の重要な意思決定や資金調達等に影響し、ひいては資本市場の機能にも影響する可能性があります。

当社グループではこうしたリスクに対し、事業継続に係る各種規程に基づいた物的・人的両面での対策を講じております。物的対策としては、上記(2)に記載のとおり、システムの冗長化等を通じて、不測の事態においても情報システムの中断・停止を最小限に留めるための体制を構築しております。また、人的対策としては、社員の安全確保を図りつつ、リモートワークの推進や他拠点への業務移管等により、リスク分散を行い、お客様の開示を確実に遂行いただくための支援体制を構築しております。

当社の書類作成プロセスの多くはデジタル化・ペーパーレス化されていますが、印刷工程等社員の出勤が不可欠なプロセスもあります。当社グループでは、今般の新型コロナウイルス感染症への対策として、前述の施策のほか、時差出勤や交代制勤務・オフィスの分散等の感染防止施策を立案・推進することで、開示支援業務の継続と社員の安全確保の両立を図っております。

また、大規模な自然災害やパンデミックが発生した場合、株式会社シネ・フォーカスを中心としたイベント事業において、イベントが中止になるなど事業機会を失う可能性があります。当社グループではこうしたリスクに対し、上述の開示書類支援同様に従業員の安全確保を図りつつ、株主総会等の継続性の高いイベントの受注拡大や、オンラインイベントに対応できる設備・インフラの強化に努めております。

 

(8)M&A及び資本業務提携等に関するリスク

当社グループは事業領域の拡張及び外部リソースの活用等を目的として、他企業の買収、他企業への出資、他企業との提携及び協力体制構築等を行うことが考えられます。M&A等を実施する場合には、事前の精査等によって、対象企業又は事業等のリスク及び収益性、投資回収の可能性等を検討しておりますが、特にIT分野では需給の関係により売主の希望額が高騰することがあります。そうした要因等によってM&A等が実施された場合、一時費用の増加などが見込まれ、一時的に業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、何らかの理由により、当初見込んだとおりの収益や投資回収が進まなかった場合、のれんの減損等によって当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(9)人財の確保・育成に関するリスク

当社グループは、受注量の増大や事業領域の拡大に対応するため、人財の確保や育成が今後の成長において重要であると考えております。特に「非印刷分野」を中心とした成長領域においては専門的な知識・経験を持ったプロフェッショナル人財の確保が急務となっており、これに対応した人事制度の見直しや社内での教育制度の整備等に注力しておりますが、優秀な人財の獲得や育成が計画通りに進まなかった場合、長期的視点から、当社グループの事業展開、業績及び成長見通しに影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に対する行動制限が解除されたことにより、個人消費に持ち直しの動きがみられ、企業業績は総じて改善しました。一方、ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源価格の高騰、為替相場の円安進行、物価上昇に加え、中東情勢の悪化等、景気の先行きは依然不透明な状況が続いております。当社事業と関連性が強い国内証券市場においては、国内の景気回復への期待等を背景に、日経平均株価が一時41,000円台まで上昇し、バブル経済崩壊後の最高値を更新しました。当連結会計年度の日経平均株価は概ね33,000円台を中心に推移し、前年同期の当該株価水準(27,000円台中心)を上回る結果となりました。

このような状況の中、当連結会計年度におきましては、2023年3月にイベント映像機材・運営支援会社である株式会社シネ・ホールディングス及び株式会社シネ・フォーカスを連結子会社化したことが業績に大きく寄与しました。また、当社の主力製品である株主総会招集通知は、2023年3月開催の株主総会から電子提供制度が導入されたこと等により印刷ページ数が減少したものの、個人株主数の増加による部数の増加、印刷用紙代等コスト上昇に応じた適正価格での受注推進、制度変更に対応した新サービスの受注促進等により増収となりました。一方、債券と金融派生商品を組み合わせた仕組み債の起債がなくなったことで、外国債券関連製品が大幅減収となりましたが、他製品による増収がこれを上回った結果、当連結会計年度の連結売上収益は、前年同期比3,313百万円増(同12.4%増)の30,117百万円となりました。なお、連結売上収益は初めて30,000百万円を突破し、過去最高を更新するとともに、2023年5月11日付で公表した連結業績予想を上回る結果となりました。

売上原価は、株式会社シネ・ホールディングス及び株式会社シネ・フォーカスの連結子会社化に加え、株主総会招集通知の電子提供制度の導入による作業工程の変更や工数増加、新サービス開始に伴い労務費を中心に初期コストが発生したこと等により前年同期比1,962百万円増(同11.5%増)の19,074百万円となりました。一方、売上原価率は増収効果により前年同期比0.5ポイント減の63.3%となりました。この結果、売上総利益は前年同期比1,351百万円増(同13.9%増)の11,044百万円となりました。販売費及び一般管理費は、主に営業体制強化に伴う人件費増加等により前年同期比1,148百万円増(同15.4%増)の8,599百万円となり、販売費及び一般管理費率は前年同期比0.8ポイント増の28.6%となりました。この結果、営業利益は前年同期比223百万円増(同10.1%増)の2,435百万円となりました。

また、金融収益を53百万円、金融費用を48百万円、持分法による投資利益を89百万円それぞれ計上し、税引前利益は前年同期比138百万円増(同5.8%増)の2,529百万円となりました。これらの結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は前年同期比161百万円増(同10.0%増)の1,779百万円となり、利益面においても連結業績予想を上回る結果となりました。

なお、2023年3月31日に行われた株式会社シネ・ホールディングスとの企業結合について前連結会計年度において暫定的な会計処理を行っておりましたが、当連結会計年度に確定しております。この暫定的な会計処理の確定に伴い、前連結会計年度については、遡及適用後の数値で比較分析を行っております。

当社グループの事業セグメントは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表  連結財務諸表注記 6.セグメント情報」に記載のとおり、ディスクロージャー関連事業の単一セグメントでありますが、取扱製品を区分した売上収益の概況は、次のとおりであります。

<上場会社ディスクロージャー関連>

主力製品である株主総会招集通知については、2023年3月開催の株主総会から電子提供制度が導入されるとともに、前年同期に当該制度対応のため多くの上場会社が定款変更を実施した反動減により、印刷ページ数が減少しました。一方、電子提供制度導入初年度においては、株主総会招集通知を従来通り印刷する(フルセットデリバリー)上場会社が7割を超えたことに加え、個人株主数の増加による部数の増加、印刷用紙代等コスト上昇に応じた適正価格での受注推進、制度変更に対応した新サービスの受注促進により、株主総会招集通知は増収となりました。また、働き方改革による業務効率化ニーズが根強く、開示書類作成アウトソーシングサービスの受注が増加しました。これらの結果、上場会社ディスクロージャー関連の売上収益は前年同期比365百万円増(同3.1%増)の12,098百万円となりました。

<上場会社IR・イベント関連等>

2023年3月にイベント映像機材・運営支援会社である株式会社シネ・ホールディングス及び株式会社シネ・フォーカスを連結子会社化したことで、株主総会支援を始めとしたイベント事業が業績に大きく寄与しました。また、株主との対話促進や、サステナビリティ情報開示や英語での情報開示の充実等を求めるプライム市場向けのコーポレートガバナンス・コードが2022年4月に適用されたことを背景に、Web・非財務情報関連ツール作成支援・英文翻訳サービスの受注が増加しました。これらの結果、上場会社IR・イベント関連等の売上収益は前年同期比2,813百万円増(同37.9%増)の10,226百万円となりました。

なお、当該製品区分の名称につきましては、イベント事業の売上収益構成比が増加したことから、当連結会計年度の第1四半期より「上場会社IR関連等」から「上場会社IR・イベント関連等」に変更しております。

<金融商品ディスクロージャー関連>

投資信託関連においては、前年度下期の大型の新規受注が寄与し、主力製品である目論見書が増収となりました。また不動産証券関連では、前年同期に比べて資金調達件数が増加したことに伴い、ファイナンス関連製品の受注が増加しました。一方、債券と金融派生商品を組み合わせた仕組み債がなくなったことで、外国債券関連製品が大幅減収となりましたが、他製品による増収がこれを上回った結果、金融商品ディスクロージャー関連の売上収益は前年同期比129百万円増(同1.9%増)の6,755百万円となりました。

<データベース関連>

データベース関連では、既存顧客との契約更改に際し、一部解約や単価ダウンがあったものの、大学や金融機関などの新規顧客の受注獲得に努めました。その結果、データベース関連の売上収益は前年同期比6百万円増(同0.6%増)の1,038百万円となりました。

 

   (製品区分別売上収益)

区分

   前連結会計年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

   当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

増減

(△印減)

金額

(千円)

構成比

(%)

金額

(千円)

構成比

(%)

金額

(千円)

増減率

(%)

 上場会社ディスクロージャー

 関連

11,732,711

43.8

12,097,670

40.2

364,959

3.1

 上場会社IR・イベント関連等

7,413,206

27.7

10,226,243

34.0

2,813,037

37.9

 金融商品ディスクロージャー

 関連

6,626,635

24.7

6,755,447

22.4

128,811

1.9

 データベース関連

1,031,487

3.8

1,037,896

3.4

6,409

0.6

合計

26,804,039

100.0

30,117,256

100.0

3,313,217

12.4

  (注)金額は販売価格によっております。

 

② 資産、負債及び資本の状況

当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,666百万円増加し、38,584百万円となりました。

流動資産は1,809百万円増加し、15,343百万円となりました。主な要因は、現金及び現金同等物の増加1,878百万円と、営業債権及びその他の債権の減少33百万円等であります。非流動資産は143百万円減少し、23,241百万円となりました。主な要因は、使用権資産の減少273百万円等であります。

当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ519百万円増加し、13,001百万円となりました。

流動負債は861百万円増加し、7,482百万円となりました。主な要因は、営業債務及びその他の債務の増加87百万円と、その他の流動負債の増加501百万円等であります。非流動負債は341百万円減少し、5,519百万円となりました。主な要因は、リース負債の減少230百万円と、退職給付に係る負債の減少38百万円等であります。

当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末に比べ1,147百万円増加し、25,583百万円となりました。主な要因は、親会社の所有者に帰属する当期利益1,779百万円の計上による増加と剰余金の配当918百万円による減少等であります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ1,878百万円増加(前年同期比24.8%増)し、当連結会計年度末には9,452百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は5,325百万円(前年同期は3,600百万円の獲得)となりました。収入の主な内訳は、税引前利益2,529百万円に対し、非資金損益項目等の調整を加減した営業取引による収入6,108百万円、利息及び配当金の受取額73百万円であり、支出の主な内訳は、法人所得税の支払額835百万円等であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は1,713百万円(前年同期は6,478百万円の使用)となりました。支出の主な内訳は、無形資産の取得による支出1,234百万円等であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は1,750百万円(前年同期は1,762百万円の使用)となりました。支出の主な内訳は、リース負債の返済による支出771百万円、配当金の支払額918百万円等であります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

当社グループ(当社及び連結子会社8社)の事業セグメントは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表  連結財務諸表注記 6.セグメント情報」に記載のとおり、ディスクロージャー関連事業の単一セグメントでありますが、生産、受注及び販売の実績については、上場会社ディスクロージャー関連、上場会社IR・イベント関連等、金融商品ディスクロージャー関連、データベース関連の4製品区分で示しております。

 

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績を製品区分別に示すと、次のとおりであります。

 製品区分別の名称

 当連結会計年度

(自  2023年4月1日

  至  2024年3月31日)

 前年同期比(%)

上場会社ディスクロージャー関連

(千円)

12,097,670

103.1

上場会社IR・イベント関連等

(千円)

10,226,243

137.9

金融商品ディスクロージャー関連

(千円)

6,755,447

101.9

データベース関連

(千円)

1,037,896

100.6

合計

(千円)

30,117,256

112.4

(注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績を製品区分別に示すと、次のとおりであります。

製品区分別の名称

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

上場会社ディスクロージャー関連

12,232,808

105.7

2,641,675

105.4

上場会社IR・イベント関連等

10,566,270

137.3

2,183,798

118.4

金融商品ディスクロージャー関連

7,088,051

106.3

2,011,507

119.8

データベース関連

1,033,425

99.6

186,205

97.7

合計

30,920,555

114.6

7,023,186

112.9

(注)金額は販売価格によっております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績を製品区分別に示すと、次のとおりであります。

 製品区分別の名称

 当連結会計年度

(自  2023年4月1日

  至  2024年3月31日)

 前年同期比(%)

上場会社ディスクロージャー関連

(千円)

12,097,670

103.1

上場会社IR・イベント関連等

(千円)

10,226,243

137.9

金融商品ディスクロージャー関連

(千円)

6,755,447

101.9

データベース関連

(千円)

1,037,896

100.6

合計

(千円)

30,117,256

112.4

(注)主要な販売顧客については、該当するものはありません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 経営成績等の分析

当社グループの当連結会計年度の売上収益は前年同期比3,313百万円増(同12.4%増)の30,117百万円となりました。その要因や市場背景を含めた各製品分野の特記事項についてご説明いたします。

<上場会社ディスクロージャー関連>

当分野の売上収益は、前年同期比365百万円増(同3.1%増)の12,098百万円となり、これは主に株主総会招集通知の増収によるものであります。2023年3月開催の株主総会から株主総会招集通知の電子提供制度が導入されたことで印刷ページ数が減少したものの、制度変更に対応した「招集電子化対応サービス」の受注推進、印刷用紙代等のコスト上昇に応じた適正価格での受注促進、個人株主数の増加による印刷部数の増加により、株主総会招集通知の受注単価が上昇しました。

また、開示書類作成アウトソーシングサービスの受注拡大も増収に寄与しました。当社の主たる事業領域であるディスクロージャー・IR分野においては、非財務情報開示の一層の拡充が求められ、上場会社の開示実務負荷が増加しております。そのため、業務効率化を目的としたアウトソーシングサービスの受注件数が増加しております。

当社は今後も制度変更やお客様ニーズに対応するサービスの提供に取り組むことで、顧客数の増加と1社当たり売上収益の増加による成長力の向上を図ってまいります。

 

0102010_006.png

 

 

<上場会社IR・イベント関連等>

当分野の売上収益は、前年同期比2,813百万円増(同37.9%増)の10,226百万円となりました。主な増収要因は、イベント映像機材・運営支援会社である株式会社シネ・ホールディングス及び株式会社シネ・フォーカスを連結子会社化したことより、イベント事業の業績が大きく拡大したことによるものです。イベント事業はアフターコロナにより事業環境の回復が続き、株主総会をはじめ各種イベントの受注が増加しております。

また、非財務情報関連コンサルティングや英文翻訳サービスの受注の増加も増収に寄与しました。これは2022年4月にプライム市場向けコーポレートガバナンス・コードが適用され、気候変動等のサステナビリティ情報開示の充実や英文開示の促進がさらに求められたことが背景にあります。

一方、株主総会招集通知の情報内容の充実やカラー化の進展により、株主通信の受注量が減少したことから当該製品は減収となっております。

上場会社による投資家との対話や非財務情報開示の充実は今後も継続することを想定しております。さらに2025年4月から東京証券取引所がプライム市場の上場会社に対して、決算短信等の重要情報の和英同時開示の義務化を予定していることから、当社では需要増に対応するサービスの提供体制の強化に取り組んでまいります。

 

0102010_007.png

 

 

<金融商品ディスクロージャー関連>

当分野の売上収益は、前年同期比129百万円増(同1.9%増)の6,755百万円となり、これは主に国内投資信託関連製品の増収によるものです。国内投資信託関連製品においては、前年度下期に大型の新規受注があり、当社主力製品である目論見書の受注件数が増加しました。加えて、印刷用紙代等のコスト上昇に応じた適正価格での受注促進が増収に寄与しました。

その他、不動産証券市場においては私募REITやSTO(Security Token Offering いわゆるデジタル有価証券)による資金調達が増加したことで、ファイナンス関連製品の受注が増加しました。

一方、債券と金融派生商品を組み合わせた仕組み債に係る外国債券関連製品の受注がなくなったことで、大幅減収となっております。

今後、投資信託分野の目論見書や運用報告書等については、ペーパーレス化がさらに進むことが想定されます。このような中、金融商品の開示実務を効率化するシステムサービスの導入促進・機能拡張を進めるとともに、Webサービス等のデジタルサービスの拡大等、新領域への拡張に引き続き取り組んでまいります。

 

0102010_008.png

 

<データベース関連>

当分野の売上収益は、前年同期比6百万円増(同0.6%増)の1,038百万円となりました。これは、企業情報データベース「eol」及び経済統計・ファイナンスデータベース「INDB」ともに、既存顧客との契約更改に際し、一部解約や単価ダウンがあったものの、ターゲットである大学・金融機関等の新規顧客の受注獲得に努めたことが要因となります。

 

0102010_009.png

 

 

当連結会計年度が前年同期比3,313百万円の増収となったことに対し、営業利益が前年同期比223百万円の増益になった主な要因についてご説明いたします。

コスト面につきましては、売上原価が前年同期比1,962百万円増加となりました。売上原価の主な増加要因は、株式会社シネ・ホールディングス及び株式会社シネ・フォーカスの連結子会社化によるものです。加えて、株主総会招集通知の電子提供制度の導入による作業工程の変更や工数増加、新サービス開始に伴い労務費を中心に初期コストが発生しました。また、販売費及び一般管理費は主に営業体制強化に伴う人件費増加等により前年同期比1,148百万円増加となりましたが、増収効果により営業利益は前年同期比10.1%増の2,435百万円となりました。

 

0102010_010.png

 

0102010_011.png

 

 

② 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの当連結会計年度の営業キャッシュ・フローは5,325百万円であり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、9,452百万円保有しております。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、資金調達は自己資金を基本とし、必要に応じて金融機関からの借入を行っております。強固な財務基盤を維持しつつ営業キャッシュ・フローにより得られた資金を、開示実務支援システム及びM&A等の成長投資や配当等の株主還元へと配分しております。

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資等によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は借入金及びリース負債を含む3,077百万円となっております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。