当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、1923年12月に印刷用インキの製造・販売からスタートし、各種プラスチック着色剤や機能性製品、特殊な成形加工技術を駆使した樹脂加工品へと事業範囲を拡大しながら、暮らしの中でなくてはならない製品を提供し続けております。企業理念である「暮らしを彩る、暮らしに役立つものづくりで、社会に貢献する。」と、目指すべき企業像として「色彩を軸に、市場が求める価値をお客様と共に創造、実現し続ける企業。」を掲げ、日々活動しております。
このような中、2023年12月に創立100周年を迎え、2030年に目指す姿として長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」を策定いたしました。
これからの持続可能な社会(サステナビリティ)のために何ができるのかの観点から、改めて「東京インキグループのパーパス(存在意義)」を問い直し、以下のとおり、理念体系の整理を行いました。
当社グループのパーパス(存在意義)には、印刷物やプラスチック容器等を通して、人と人との間をつなぎ、「伝える」ことで暮らしに貢献する、多種多様な色材の提供により、身の回りを「彩る」ことで生活を豊かにする、バイオマス製品や様々な機能性製品および防災・減災用途に使用される土木資材等の提供により、地球や生活を「守る」ことで社会に貢献するという想いを込めております。
パーパス(存在意義)とバリュー(行動指針)の浸透を推し進めることで、新たな価値を創造できる人材を創出し、マインドの醸成を図り、高効率で安定した企業基盤構築を目指してまいります。また、製品・サービスを通じて持続可能な価値を提供し、環境・社会と共存共栄できる企業経営を推進してまいります。
この度、持続可能な社会(サステナビリティ)実現に向け、実行力を高める目的で、2024年4月1日より当社グループのコーポレート・ガバナンス体制を見直しました。代表取締役社長の下にサステナビリティに係る委員会を設置し、活動内容について、取締役会が監督することといたしました。
(2)経営環境
2023年度のわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が解除されたことにより、社会経済活動正常化への動きが一段と進み、企業業績・個人消費ともに緩やかな回復基調が継続されました。一方で、原材料価格の高止まり、円安とエネルギーコスト上昇等による物価高は依然として続いており、今後も不安定な国際情勢や世界的な金融引き締めによる影響が懸念され、景気の先行きは不透明な状況が継続しております。
また、近年のデジタル技術の急速な進化により行動様式に変化が見られることで、商業・出版印刷のデジタル化へのシフトが加速していることや、サステナビリティへの意識の高まりによる環境対応の流れが加速していることにより、当社グループ製品の需要動向全体に影響が及んでおり、環境規制等による原材料の供給面等にも影響が生じております。
持続的に成長できる企業になるため、環境問題への長期的な取り組みや、外部環境変化に対応できる企業構造への変革を進めてまいります。
(3)経営戦略および優先的に対処すべき課題
①長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」
イ.マテリアリティ(重要課題)の決定
持続可能な社会(サステナビリティ)の観点からみたメガトレンドと当社グループのパーパス(存在意義)を踏まえた上で、2030年に目指す姿である「持続可能な価値を提供し続ける企業グループへ」からバックキャストし、優先的に対処すべき課題として、マテリアリティ(重要課題)を4つに集約いたしました。
ロ.マテリアリティ(重要課題)達成に向けたアプローチ
長期ビジョン(2030年に目指す姿)達成に必要な4つのマテリアリティ(重要課題)を達成するために、事業領域拡大に向けたビジネスアプローチ、企業基盤構築に向けたプラットフォームアプローチ、人材育成と企業文化醸成に向けたマインドセットアプローチの3つのアプローチを以下のとおり設定いたしました。
ハ.2030年目標
サステナビリティへの対応や、マテリアリティ(重要課題)に沿った事業活動を通じて、当社グループは2030年に目指す姿として「持続可能な価値を提供し続ける企業グループへ」を設定いたしました。目指す姿の実現に向け、サステナブル対応製品比率の向上や、温室効果ガス排出量削減などに取り組んでまいります。また、具体的な施策や指標などは期間中の中期経営計画の中で決定し推進してまいります。
ニ.価値創造プロセス
当社グループは、長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」策定の際、環境・社会問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題への対応が経営の重要課題であると認識いたしました。持続的成長実現の源泉となる「6つの資本」を投入し、4つのマテリアリティ(重要課題)を、3つのアプローチにて推進することで、暮らしに役立つものづくりで社会に貢献できる価値を創造してまいります。
※2023年12月11日公表 長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」資料より抜粋
②中期経営計画「TOKYOink 2024」
当社グループは、2022年度から2024年度までの3カ年の中期経営計画「TOKYOink 2024」を策定し、計画に沿った取り組みを進めております。中期経営計画「TOKYOink 2024」の概要は以下のとおりとなります。
また、中期経営計画「TOKYOink 2024」における、各事業セグメント別の優先的に対処すべき課題は、以下のとおりとなります。
(インキ事業)
・ 主力インキ事業領域のポートフォリオ変革を進め、環境対応製品、デジタル化への転換を推進
・ 高バイオマスインキ、環境対応インキ、産業用インクジェットインクの開発推進で収益獲得
(化成品事業)
・ 主力合成樹脂市場での成長機会を追求し、サーキュラーエコノミー参画を推進
・ 機能性マスターバッチ、自動車用着色材を主力に環境対応製品の拡大による成長を目指す
(加工品事業)
・ 市場の伸長が期待できる水処理用資材や防災減災資材を主力に特長ある新規製品の開発を推進
・ ネトロン®・土木資材を軸に各製品セグメントの特徴を活かし、ニッチトップ戦略により高収益化を目指す
(注)ネトロン®は三井化学株式会社の登録商標です。
中期経営計画「TOKYOink 2024」の進捗状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 財務状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容 ニ.中期経営計画「TOKYOink 2024」2023年度までの取り組みについて」に記載のとおりであります。
③資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
当社グループは中期経営計画「TOKYOink 2024」の最終年度を迎えております。2024年度の営業利益目標は20億円に設定しておりましたが、計画策定当初に比べ、当社グループを取り巻く環境は想定以上に変化していることから、目標達成は難しい状況となっております。このような状況の中、長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」の実現に向けて、持続的成長と中長期的な企業価値向上を図るべく、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について現状分析・評価を行い、改善に向けた今後の方針・目標や具体的な取り組みについて策定いたしました。具体的な取り組みは下記のとおりとなります。
『具体的な取り組み』
イ.成長戦略:事業ポートフォリオ変革
ロ.資本政策:財務戦略
ハ.資本政策:キャッシュアロケーション
ニ.非財務施策:コーポレート・ガバナンス体制の強化
ホ.非財務施策:サステナビリティ経営の推進
ヘ.非財務施策:IR活動の強化と通じた企業価値向上
詳細につきましては、当社ホームページもしくは下記URLより、ご覧ください。
「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」掲載URL
https://www.tokyoink.co.jp/ir/ir_library/management_plan/
(1)サステナビリティに関する考え方
当社グループは、『「伝える」「彩る」「守る」ことで、豊かな未来を実現する』をパーパス(存在意義)として掲げ、幅広い市場や分野、用途への製品供給を通じて地球環境を守り、人々の暮らしを豊かに支え続けることを存在意義と位置付けております。
また、持続可能な社会(サステナビリティ)の観点から、経営環境の変化によるリスク・機会の適切な把握を経営の重要な要素として捉え、環境変化の中で従来事業の枠を越えた変革を進めることに取り組んでおります。
(2)マテリアリティ(重要課題)
長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」では、パーパス(存在意義)と共に地球環境や人権尊重など持続可能な社会(サステナビリティ)のメガトレンドとリスク・機会を踏まえ、「持続可能な価値を提供し続ける企業グループへ」という2030年に目指す姿(長期ビジョン)からのバックキャストにより、マテリアリティ(重要課題)を4つに集約しました。気候変動に関連するものはマテリアリティ1および2、人的資本に関連するものはマテリアリティ4になっております。
長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」の詳細につきましては、「
(3)ガバナンス
当社グループは、持続可能な社会(サステナビリティ)実現に向け、実行力を高める目的で、2024年4月1日よりコーポレート・ガバナンス体制を見直しました。当社グループのサステナビリティについては、代表取締役社長を最高責任者とし、サステナビリティ経営推進委員会において、サステナビリティ関連のリスク・機会への対応に関する審議や、関連取り組みの進捗状況の確認を行い、取締役会へ報告しております。
取締役会は代表取締役社長を通じ、サステナビリティ経営推進委員会の監督や意思決定を行っております。また、経営会議へ同委員会の審議内容を連携することで、サステナビリティ関連のリスク・機会を踏まえた全社的な経営計画・事業戦略の検討や、社内各部門・子会社等の計画策定・取り組み推進を実行いたします。
リスク・コンプライアンス委員会につきましては、下記「(4)リスク管理」に記載のとおりであります。環境・安全委員会はサステナビリティ経営推進委員会との連携の下、温室効果ガス排出量削減や安全衛生に関する取り組みの審議や、関連取り組みの進捗状況の確認を担当いたします。
体制図
関連会議体と役割
実施事項 |
会議体 |
サステナビリティに関する主な役割 |
サステナビリティ関連の監督・審議 |
取締役会 (議長:代表取締役社長 / 月1回以上開催) |
・サステナビリティ経営推進委員会の監督・指示 ・サステナビリティ関連の審議・進捗状況の確認 |
サステナビリティ経営推進委員会[新設] (委員長:代表取締役社長 /年4回開催予定) |
・サステナビリティ関連のリスク・機会への対応に関する審議 ・下記の具体的対応・取り組みに関する審議、進捗確認 □サステナブル製品検討 □TCFD対応(気候変動リスク対応含む) □地域・社会貢献活動 ・取締役会への報告 |
|
連携先 |
経営会議 (議長:代表取締役社長 / 月2回開催) |
・サステナビリティ関連のリスク・機会を踏まえた全社的な経営計画・事業戦略の検討 ・社内各部門・子会社等の計画策定・取り組み推進の指示 |
リスク・コンプライアン ス委員会[新設] (委員長:管理部門長 /年4回開催予定) |
※下記「(4)リスク管理」および「 |
|
環境・安全委員会[新設] (委員長:生産・技術部門長 / 年4回開催予定) |
・下記の具体的取り組みに関する審議、進捗確認 □安全衛生活動 □省エネ活動推進 □温室効果ガス排出量算定 □再生可能エネルギー導入検討 ・サステナビリティ経営推進委員会との連携 |
なお、上記の体制見直しを踏まえ、旧会議体からの変更点は、下記のとおりになります。
旧(2024年3月31日廃止) |
新(2024年4月1日発足) |
ESG経営推進会議(開催回数3回) |
ESG経営推進会議およびソーシャルレスポンス委員会は 廃止 新たにサステナビリティ課題全般を検討する「サステナビリティ経営推進委員会」を設置 |
ソーシャルレスポンシビリティ委員会 (開催回数4回) |
|
リスク管理委員会(開催回数4回) |
両委員会を「リスク・コンプライアンス委員会」に統合 両委員会の役割は引継 |
コンプライアンス委員会 (開催回数4回) |
|
環境負荷低減委員会(開催回数5回) |
両委員会を「環境・安全委員会」に統合 両委員会の役割は継続 |
中央安全衛生委員会(開催回数2回) |
(4)リスク管理
サステナビリティ経営推進委員会が審議・検討したサステナビリティ関連のリスク・機会に関する内容は、当社グループの全社的リスク管理体制を推進するリスク・コンプライアンス委員会へ連携いたします。サステナビリティに関するリスク・機会のうち、経営に影響を与える可能性のあるリスクについては、リスク・コンプライアンス委員会においてアセスメントの候補とし、重要度の評価、リスク低減に向けた活動の推進・モニタリング等を行います。
また、リスク・コンプライアンス委員会の管理対象のうち、サステナビリティに関するリスク・機会と関連するリスクの状況については、サステナビリティ経営推進委員会へ連携いたします。
リスク・コンプライアンス委員会を中心とした全社的リスク管理の詳細は、「
(5)戦略
①気候変動への対応
気候変動への対応は、長期ビジョンのマテリアリティ(重要課題)「2.環境・社会と共存共栄する企業経営の推進」のひとつとして位置付けており、2050年のカーボンニュートラル実現を目標に、再生可能エネルギーの有効活用、生産エネルギーの低減、省エネ設備の積極的導入を通じ、脱炭素社会・循環型社会への貢献を進めております。2023年度には、下記の具体的取り組みを実施いたしました。
イ.温室効果ガス排出量の削減目標の設定
長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」において、当社グループの温室効果ガス排出量の削減目標を設定いたしました。詳細は、「(6) 指標及び目標 ① 気候変動に関する指標及び目標」に記載のとおりであります。
ロ.TCFDコンソーシアムへの加盟
2024年3月より、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言の賛同企業や金融機関が議論する場であるTCFD コンソーシアムに加盟いたしました。
ハ.株式会社アールプラスジャパンへの出資およびコンソーシアム加入
共同出資会社である株式会社アールプラスジャパンは、米国のバイオ化学ベンチャー企業であるアネロテック社とともに、環境負荷の少ない効率的な使用済みプラスチックの再資源化技術開発を進めております。本共同出資事業への参画により、使用済みプラスチックの再資源化を推進し、バリューチェーンの一員として持続可能な社会の実現に向けて貢献してまいります。
ニ.「DBJ環境格付」の取得
株式会社日本政策投資銀行が開発した格付システムにより企業の環境経営度を評点化し、優れた企業を選定する「DBJ環境格付」を取得し、同格付に基づく融資を受けました。全社的な環境マネジメント体制のもと、環境経営を推進している点、および製品を通じた環境負荷低減を含む顧客の幅広いニーズに対応すべくバイオマス原料を含むインキ製品やリサイクル性を高めた樹脂製品等の高付加価値製品の開発に取り組んでいる点が高く評価されました。
ホ.「東京都北区SDGs推進企業認証制度」の取得
当社の本社所在地である東京都北区が推進している、「東京都北区SDGs推進企業認証制度」を取得いたしました。環境に配慮した原材料の使用、温室効果ガス排出削減等の気候変動対策を含むSDGs目標達成に向けた取り組みを行っている点が高く評価されました。
ヘ.気候変動に関するリスク・機会の分析
1.5℃シナリオ、および4℃シナリオ下の気候変動に関連するリスク・機会を網羅的に洗い出し、当社の主要3事業にもたらし得る財務的影響を定性的に分析した上で、各リスク・機会への対応の方向性を検討いたしました。分析結果は、経営計画・事業戦略の検討等に活用する予定でおります。
(分析の前提)
分析対象の事業 |
インキ事業、化成品事業、加工品事業 |
主な使用 シナリオ |
1.5℃:IEA Net Zero Emissions by 2050 Scenario、IPCC 第6次報告書 SSP1-1.9(※) 4℃ : IEA Stated Policy Scenario (STEPS)、IPCC 第5次報告書 RCP8.5、IPCC 第6次報告書 SSP1-2.6、同・SSP5-8.5 |
分析対象期間 |
短期(2025年)、中期(2030年)、長期(2050年) |
※該当するシナリオが無い場合は、2°C未満シナリオ(IEA Sustainable Development Scenario、 IPCC 第5次報告書 RCP2.6、IPCC 第6次報告書 SSP1-2.6)等で代替
(分析結果)
主な中期・長期のリスク・機会と対応策は、下記のとおりになります。
|
概要 |
影響する事業 |
シナリオ |
財務的影響 |
対応策 |
||
中期 |
長期 |
||||||
移行リスク |
政策・法的 |
温室効果ガス排出削減の強化 |
全般 |
1.5℃ |
大 |
大 |
・再生可能エネルギーの有効活用 ・生産エネルギーの低減 ・省エネ設備の積極的導入 ・製品販売価格への転嫁 |
炭素税導入に伴う操業コスト増加 |
全般 |
1.5℃ |
大 |
大 |
|||
技術 |
工場エネルギー源の低炭素化、および設備投資 |
全般 |
1.5℃ |
中 |
中 |
・再生可能エネルギーの有効活用 ・生産エネルギーの低減 ・省エネ設備の積極的導入 |
|
原料・製品の輸送手段(トラック・船舶・航空など)の低炭素化 |
全般 |
1.5℃ |
中 |
大 |
・物流業界の低炭素化動向のモニタリング ・モニタリング結果に沿った低炭素化に繋がる輸送手段検討 |
||
デジタル社会への移行による印刷需要の低下 |
インキ |
1.5℃ |
中 |
大 |
・関連情報・市場のモニタリング ・事業内ポートフォリオ見直し |
|
概要 |
影響する事業 |
シナリオ |
財務的影響 |
対応策 |
||
中期 |
長期 |
||||||
移行リスク |
市場 |
原油価格の上昇 |
全般 |
4℃ |
大 |
大 |
・原材料としての原油へ依存度の低下(バイオマス原料の活用等) |
電力価格の上昇 |
全般 |
1.5℃ |
大 |
中 |
・自社発電割合の増加(太陽光発電設備導入等) ・自社工場・施設における節電意識の醸成 ・電化設備の高効率化による消費電力の低減(照明、空調設備の高効率タイプへの更新等) |
||
取引先からの環境負荷低減の要請 |
全般 |
1.5℃ |
中 |
大 |
・取引先の調達ポリシーの調査 ・環境負荷の低い製品の開発 |
||
評判 |
気候変動対策の遅れに伴うステークホルダーの信頼失墜、ブランド力低下 |
全般 |
1.5℃ |
小 |
小 |
・気候変動関連の法令改正や業界団体の方針等のモニタリング ・積極的な気候変動推進と情報開示 |
|
若い世代の気候変動への危機感の上昇による人材獲得競争での遅れ、およびGX人材の不足 |
全般 |
1.5℃ |
中 |
中 |
・若い世代の意識に関するモニタリング ・環境取り組みに関する広報活動の強化 ・採用活動を通じて、環境取り組みをアピール |
|
概要 |
影響する事業 |
シナリオ |
財務的影響 |
対応策 |
||
中期 |
長期 |
||||||
物理的リスク |
急性 |
風水害による工場・営業所への影響 |
全般 |
4℃ |
大 |
大 |
・主要拠点の水災リスク評価 ・代替生産可能な体制構築に向けた拠点の分散、特定の製品製造拠点の分散およびグループ全体のBCP(事業継続計画)の継続・推進 ・建物および重要設備の止水対策 |
風水害によるサプライチェーン(上流)途絶 |
全般 |
4℃ |
中 |
中 |
・サプライチェーンを通じたBCPの構築 ・リスクの高いサプライヤーの代替調達方法の検討 |
||
水使用制限による事業活動の制限 |
全般 |
4℃ |
小 |
中 |
・水ストレスの状況調査の実施・継続 ・各工場における水リスク評価の実施 ・製品製造過程での水の循環使用 |
||
慢性 |
海面上昇による沿岸部工場・営業所への影響 |
全般 |
4℃ |
中 |
中 |
・主要拠点の水災リスク評価 ・代替生産可能な体制構築に向けた拠点の分散、特定の製品製造拠点の分散およびグループ全体のBCP(事業継続計画)の継続・推進 ・建物および重要設備の止水対策 |
|
気温上昇による空調や温度管理の費用の増加 |
全般 |
4℃ |
小 |
中 |
・高効率な空調設備への入れ替え |
|
概要 |
影響する事業 |
シナリオ |
財務的影響 |
対応策 |
||
中期 |
長期 |
||||||
機会 |
市場 |
紙製包装容器の普及によるインキ需要の増加 |
インキ |
1.5℃ |
中 |
中 |
・関連情報・市場のモニタリング ・市場要求を満たす製品開発 |
自動車(EV車)需要増加に伴う製品需要増加 |
化成品 |
1.5℃ |
小 |
大 |
・製品需要のモニタリング ・市場要求を満たす製品開発 |
||
食品包装容器への機能性付与 |
化成品 |
1.5℃ |
中 |
中 |
・製品需要のモニタリング ・市場要求を満たす製品開発 |
||
災害復旧・防災用途の土木資材の需要増加 |
加工品 |
4℃ |
中 |
大 |
・A-PLAT等によるデータ、動向をモニタリング ・現工法のNETIS登録推進、市場要求を満たす新工法開発
A-PLAT:気候変動適応情報プラッ トフォーム NETIS:国土交通省新技術情報提 供システム |
||
慢性 |
気候変動への適応機能を付与する技術の需要増加 |
加工品 |
4℃ |
小 |
中 |
・気候変動による災害被害や、適応機能の需要をモニタリング ・モニタリング結果に対応する製品開発 |
②人的資本への対応
長期ビジョンのマテリアリティ(重要課題)「4.新たな価値を創造できる人材の創出とマインドの醸成」のひとつとして位置付けており、行動指針を体現できる人材の育成と企業文化の醸成を図るべく、新たに導入した人事制度の安定運用を重要課題として取り組んでおります。
人事戦略については、中期経営計画における経営方針、基本戦略、事業戦略と連動した4つの柱を軸とし、「多様な人材の育成・確保」、「リーダーシップ」、「変化に応じた再配置」、「キャリア構築」を掲げております。
人材の多様性や健康経営等に関する取り組みを進めることで、従業員の労働意欲の向上と個人の成長を図り、経営方針を達成すべく取り組んでまいります。
イ.社内環境整備方針
従業員一人ひとりが、日々の業務を通じて成長を感じ、チャレンジ精神を持って最大限のパフォーマンスを発揮できるように、安心して働き続けることができる社内環境を整備しております。
将来のキャリアが選択できる柔軟な人事制度、困難な課題にチャレンジした人を処遇する評価制度、場所や時間に縛られない柔軟な働き方、心身の健康を守る健康経営、多様な人材が活躍できるようなダイバーシティ推進、生活と仕事の両立を支援する育児・介護支援施策に力を入れてまいります。
ロ.人材育成方針
成長戦略を描ける人材を獲得・育成するために、個々人の活躍・成長を促進することを人事制度の基本方針に掲げ、自己成長や自己実現の機会を提供しております。
新入社員から管理職までの階層別研修、人材ポートフォリオに基づいた人材配置、社員の異動希望を考慮した社内公募制度、実務を通じて成長を感じられる目標の設定を進め、市場の変化に柔軟に対応していくために、今後も従業員の成長・活躍を後押しすべく、人材育成施策に力を入れてまいります。
具体的な取り組みとして、2023年度には、下記の具体的取り組みを実施いたしました。
a.行動指針の浸透
行動指針に共感し、日々の業務の中で行動として実行できているかについて、人事評価の一環であるバリュー評価として進めております。従業員への行動指針の浸透については、「人事制度の改定目的」、「行動指針として求められる行動」、「目標の設定と自己成長」等について管理職への研修と動画の配信を行うことで、理解度の向上に努めてまいりました。
詳細は、「(6) 指標及び目標 ②人的資本に関する指標及び目標」に記載のとおりであります。
b.多様な人材の育成と確保
企業として成長するためには、多様性のある意見や考え方が重要であると考えております。多様な人材の育成に関しては、企画や開発等の女性が活躍できる職域を広げるとともに、将来的に管理職を担うアシスタントマネジメント職の女性比率向上を進め、管理職に求められる研修等の実施を進めております。
多様な人材の確保に関しては、新卒採用における外国籍の採用や、専門性を有した中途社員の採用を行っております。また、障がい者雇用の促進等についても、引き続き、将来に向けた継続的な取り組みとして進めてまいります。
c.健康経営の推進
従業員の健康維持に向けた取り組みとして、時間外労働の削減や有給休暇取得率の向上に加え、禁煙・睡眠・食事・花粉症等のセミナーを開催いたしました。また、病気や怪我に備えて有給休暇を残存させる必要が無いように、特別休暇制度の拡充を図ることで、従業員が安心して働ける環境に向けて取り組みを行いました。
詳細は、「(6) 指標及び目標 ②人的資本に関する指標及び目標」に記載のとおりであります。
d.その他の取り組み
少子高齢化における労働力不足への対応を考慮し、定年退職後も高い専門性を活かして活躍する人材を処遇するため、シニア人事制度の策定を行いました。個人のライフスタイルに合わせ、柔軟な働き方も選択できる制度として導入に向けて取り組んでまいります。
社会貢献活動として、本社所在地である王子地区の職業体験イベントや、チャリティ活動へ参加いたしました。連結子会社東京インキ(タイ)㈱においては、子供施設への訪問などにも積極的に参画いたしました。また、1月に発生した令和6年能登半島地震に関し、義援金の寄付および支援物資の提供を行いました。
(6)指標及び目標
①気候変動に関する指標及び目標
温室効果ガス排出量の削減目標達成に向けた取り組み状況は下記のとおりになります。なお、当社グループに属する全ての会社では指標及び目標の設定が行われていないため、当社グループにおける記載が困難です。このため、指標に関する目標および実績は、当社国内グループのものを記載しております。
(削減目標)
2030年 |
温室効果ガス排出量50%削減(2013年度対比 / Scope1、2) |
2050年 |
カーボンニュートラル実現 |
(取り組み状況) 単位:t-CO2
|
2013 年度 |
2019 年度 |
2020 年度 |
2021 年度 |
2022 年度 |
|
温室効果ガス排出量 |
|
|
|
|
|
|
|
(Scope1、2計) |
|
|
|
|
|
(Scope3計) |
|
|
|
|
|
|
Scope1、2削減率(2013年度比) |
- |
△10.0% |
△19.6% |
△18.0% |
△21.2% |
※対象組織:当社国内グループ 温室効果ガス排出量:環境会計公表値
当社国内グループの2022年度温室効果ガス排出量は、2013年度比で21.2%減となりました。
今後も、具体的な削減取り組みの推進等を講じることで、温室効果ガス排出量の更なる削減を含む気候変動対策に取り組んでまいります。
②人的資本に関する指標及び目標
社内環境整備における人事施策の浸透度を定量的に図るため、以下の重要業績評価指標(KPI)を設定しております。なお、当社グループに属する全ての会社では指標及び目標の設定が行われていないため、当社グループにおける記載が困難です。このため、指標に関する目標および実績は、提出会社のものを記載しております。
INPUT/OUTPUT |
OUTCOME |
||||
カテゴリ |
KPI |
2023年度実績 |
目標値 |
前年との 評価比較 |
|
行動指針 |
バリュー評価 達成率 |
|
|
-※1 |
経営方針の達成 ↑ 社員個人の成長 労働意欲の向上 |
育成 |
|
|
|
|
|
成長実感 |
エンゲージメント スコア |
5.6(10点中) |
7(同) |
|
|
満足度 |
5.7(10点中) |
7(同) |
|
||
健康経営 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
||
労働環境 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
||
労働災害 |
強度率※2 |
0.00 |
0 |
|
|
度数率※3 |
0.83 |
0 |
|
※1 バリュー評価達成率に関しては、本年度が初年度の実績となるため、前年との評価比較は
記載しておりません。
※2 強度率とは、実労働時間当たりの延べ労働損失日数で災害の重さを示す指標となります。
※3 度数率とは、実労働時間当たりの労働災害による死傷者数で労働災害の頻度を示す指標と
なります。
2023年度の人的資本に関する結果は上記のとおりとなりました。
従業員が行動指針に共感し、日々の業務において行動として実行できているかを人事評価のバリュー評価として実施し、2023年度の結果は60.2%となりました。バリュー評価は、経営方針を実現するための重要な定義と位置付け、人事制度における昇格・降格の指標として進めております。
今後も、行動指針の浸透を推進するために、行動として最も模範となる従業員を表彰する制度等の導入を講じることで、人的資本に関する目標達成に向けて取り組んでまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
(1)当社のリスクマネジメント体制
当社グループは、2024年4月1日よりコーポレート・ガバナンス体制を見直し、取締役会の監督の下、代表取締役社長の下にリスク・コンプライアンス委員会、サステナビリティ経営推進委員会、環境・安全委員会を設置しております。リスク・コンプライアンス委員会は、各委員会と連携し、様々なリスクを網羅的に把握し、定期的に報告がなされる体制の整備と運用にあたっております。
全社重要リスク決定プロセスは、リスク・コンプライアンス委員会にて、経営に影響を与えるリスクを幅広く検討したリスクアセスメント項目について、各部長職者が回答し、そのデータを分析後、全社重要リスク候補案を取締役会に答申し、取締役会が決定しております。
選定しました全社重要リスクにつきましては、各リスクオーナーが、中期経営計画に沿った3カ年計画および単年計画を推進しております。また、2020年度より設置されました全社BCM(事業継続マネジメント)事務局を中心に、2020年度は本社、2021年度は吉野原工場および各支店・営業所、2022年度は羽生工場・土岐工場・大阪工場、2023年度は国内連結子会社にBCPを構築いたしました。前年度に引き続き、今年度におきましても着実に全社BCP構築の実行推進を行ってまいります。
(2)当社のリスクマネジメント体制の運用状況
リスク・コンプライアンス委員会では、全社的リスクマネジメント(ERM)を推進するにあたり、中期経営計画策定年度に当社リスクの見直しを伴うリスクアセスメントを行い、全社重要リスクを特定し、中期経営計画策定年度以降においては全社重要リスクについて変更するべきリスクが無いか、社内外の環境変化等を踏まえた精査を行っております。
2021年度においては、リスクアセスメントにより97項目について精査し、リスクの重要度(影響度×発生可能性から決定)上位30項目を中心に、内容を鑑みて全社重要リスク4項目を選定いたしました。2022年度においては、中期経営計画策定年度以外としてリスクアセスメントを行い、全社重要リスクの状況確認、全社重要リスクへの追加項目の検討およびその他重要リスクの状況確認を行いました。その結果、2021年度と同様に新たな全社重要リスクの追加はありませんでした。2023年度におきましても2022年度と同様に、中期経営計画策定年度以外としてアセスメント後に全社重要リスクの状況確認、全社重要リスクへの追加項目の検討およびその他重要リスクの状況確認を行い、その結果、2022年度と同様に新たな全社重要リスクの追加はありませんでした。
このため、前年度に引き続き、全社重要リスク4項目およびその他重要リスクにつきまして、その対応策を評価・検証し、リスク低減活動の推進を図るとともに、対応策の効果のモニタリングを行っております。
(3)事業等のリスク
当社グループの経営環境における事業等のリスクとしては、全社重要リスクのほか、その他重要リスク等多岐にわたるものがあり、記載事項以外に予測し難いリスクも存在するため、当社グループの想定を超えた予測不能な事態が発生した場合、十分な対応がとれない可能性があります。
当該リスクの顕在化する可能性の程度(発生可能性)を鑑みた上で、顕在化した場合の経営成績等に与える影響度を考慮し、当該リスクの発生回避および発生時の対応に努める所存であります。
◆全社重要リスク
全社重要リスク ① 事業継続リスク |
前年との 評価比較 |
|
||
全社重要リスク選定理由 |
中長期取り組みの必要性 |
自然災害の頻発・激甚化に伴い、永続的な全社取り組みが必要と捉えております |
||
経営戦略への影響 |
操業停止による収益圧迫、人材の確保など、適切な備えが無いと甚大な影響を及ぼす可能性があります |
|||
企業理念・目指すべき企業像との関係性 |
会社存続には、事業継続力の向上は不可欠であると認識しております |
|||
体制構築・リソース投入の 必要性 |
事業継続には全社的・組織横断的な取り組みを展開する必要があると認識しております |
|||
リスク認識 |
災害発生時の従業員の安全確保、近隣への漏出事故等の回避、早期復旧による顧客・取引先・株主の信頼維持は、企業にとって生命線であり、全社的な取り組みを継続する必要性があります |
|||
リスクへの対策 |
目指すべきリスクへの 対応状態 |
災害発生時、人命保護を目的とした緊急時対応計画(ERP)が実施され、危機管理計画 (CMP)に基づく指揮命令系統を確立し、事業継続計画活動の発動実施ができるようにいたします |
||
具体策 |
2020年度は本社、2021年度は吉野原工場および各支店・営業所、2022年度は羽生工場・土岐工場・大阪工場、2023年度は国内連結子会社にBCP構築を行いました。2024年度は吉野原、土岐および大阪工場の工場間BCPおよびIT-BCPへの展開を行います。 ・安否確認訓練での早期回答の意識づけ ・全社での緊急時備蓄品(3日間)の整備 ・電源、通信等のインフラ(IT-BCP)整備 ・教育および訓練の推進、長期休暇中の安否確認への対応 |
事業継続リスクに関連する 個別リスク |
前年との 評価比較 |
リスクへの対策 |
原材料の供給途絶 |
|
・仕入先の複数化 ・調達先の変更 ・フォーキャスト精度の向上および在庫量の調整 |
コンピュータシステムダウン /ネットワークのダウン |
|
・IT-BCP構築への着手 ・システム構成の最適化を実現 ・検証環境を用いたシステム復旧訓練の実施 ・バックアップ回線の高速化 |
台風、豪雨、高潮、洪水、 豪雪、地震、噴火 |
|
・BCP策定による対応強化 ・生産機能の相互補完 ・防災訓練の実施、従業員安否確認システムの活用、長期休暇中の安否確認システム範囲外移動への対応 |
感染症(パンデミック) |
|
・在宅勤務(テレワーク)の推進、Web会議システム、社内ネットワークへのアクセスツール等インフラの整備、活用促進 ・電子契約システムの整備、受注FAXのメール転送機能の整備等の推進 |
第三者による盗取、不正アクセス・ウィルス感染等 |
|
・脱PPAP※対応の実現 ・既知・未知の脅威侵入への対応強化の実現 ・セキュリティに関する社内教育の実施 |
※PPAP:メールでパスワード付きZIPファイルを送り、その後別のメールでファイルを開くためのパスワードを送ること
全社重要リスク ② 人材戦略リスク |
前年との 評価比較 |
|
||
全社重要リスク選定理由 |
中長期取り組みの必要性 |
・企業の持続可能性および価値創造のための主要因子と捉え中長 期的な取り組みを要すると捉えております ・2022年度に人材戦略構築プロジェクトチームを発足させ、3カ 年計画にて仕組みを整えます |
||
経営戦略への影響 |
経営戦略と人材戦略の連動が不可欠と考えております |
|||
企業理念・目指すべき企業像との関係性 |
企業理念に掲げている社会への貢献には、それを体現するための人材が不可欠と認識しております |
|||
体制構築・リソース投入の 必要性 |
従来の枠に捕らわれない人材発掘・育成のため、複合的な取り組みを展開する必要があると認識しております |
|||
リスク認識 |
・前中期経営計画「TOKYOink 2020」において、人事戦略・整備す べき基盤・行動の原則等を掲げ対応してきましたが、人材価値 向上の成果が不足していると認識しております ・「採用・能力開発・適材適所」の実現等、競争力向上のための 人事機能強化は、全社的な取り組みを継続する必要性がありま す |
|||
リスクへの対策 |
目指すべきリスクへの 対応状態 |
人事機能を強化し、経営層において経営戦略と連動した人材戦略を検討できる体制を構築することで、必要な人材像を設定し、創出・確保するための各種制度の導入および見直しを行います |
||
具体策 |
・人事制度の定着に向けた制度の修正 ・ハイパフォーマー育成制度の実施 ・コンサルティング会社活用による人事機能の補完 ・シニア人事制度の導入 |
人材戦略リスクに関連する 個別リスク |
前年との 評価比較 |
リスクへの対策 |
人材の過不足・人件費の上昇 |
|
・多様な労働力に対応可能な仕組みの強化 ・社員教育制度の拡充、ダイバーシティへの対応 |
過労、ストレス、メンタルヘルス |
|
・時間外労働の管理の徹底による過重労働の抑止 ・ストレスチェックを実施し、ストレス、メンタルヘルスを管理、および必要に応じ産業医の面談を実施 ・メンタルヘルスの教育研修の実施 |
技術等の伝承の失敗・途絶 |
|
・設計変更に係わる、試験方法の拡充・開発 ・工程変更に係わる時の試験検討の徹底 ・工程に係る顧客要求事項の再確認 ・技術等伝承の人材育成の教育プログラム導入 ・多様な労働力に対応可能な仕組みの強化 |
従業員の士気・モラール低下 |
|
・働きやすい職場環境整備 ・行動指針の従業員への浸透強化 ・従業員サーベイを実施し、個人と組織の課題対策強化 |
人材の流出・喪失 |
|
・働きやすい職場環境整備 ・人事制度改革の定着 ・中途採用の強化 |
全社重要リスク ③ サステナビリティ課題考慮不足リスク |
前年との 評価比較 |
|
||
全社重要リスク選定理由 |
中長期取り組みの必要性 |
・2030年、2050年に向けた取り組みが求められると認識しており ます ・長期に渡る取り組みとなるため、温室効果ガス排出量削減に向 けた検討を継続し、統合報告書および環境会計の基礎構築を継 続いたします |
||
経営戦略への影響 |
サステナビリティが今後の経営戦略の中核的な要素になることは、世界情勢から認識しております |
|||
企業理念・目指すべき企業像との関係性 |
「持続可能な社会の実現を目指し、環境・社会課題の解決に貢献し続ける企業」を目指します |
|||
体制構築・リソース投入の 必要性 |
幅広い知識・対応・人材が必要なため、組織横断的な取り組みを展開する必要があると認識しております |
|||
リスク認識 |
持続可能な社会を支え、環境と共生する企業となることが求められる中で、石化由来原材料を多く取り扱う当社としては、環境負荷低減を含むサステナビリティ関連対策は重要なリスクとなっており、全社的な取り組みの継続が必要と認識しております |
|||
リスクへの対策 |
目指すべきリスクへの 対応状態 |
・当社グループの成長発展に寄与する環境負荷低減を含むサステ ナビリティ関連課題に対する取り組み方法や実行体制の確立を 図ります ・ステークホルダーに対して定性・定量情報を開示できる体制・ 方法の整備を行います |
||
具体策 |
・サステナビリティ関連マテリアリティ(重要課題)への取り組 み推進 ・環境負荷低減を含むサステナビリティ関連課題対応に向けた方 策立案・整理 ・温室効果ガス排出量集計方法確立 ・情報開示体制、方法の整備 ・2024年9月発行予定の統合報告書にて開示予定 |
サステナビリティ課題 考慮不足リスクに関連する 個別リスク |
前年との 評価比較 |
リスクへの対策 |
原材料市況の変化 |
|
・複数の仕入先からの原材料購入による安定調達 ・原材料仕入先の新規探索 ・価格高騰への対応 ・代替品の検討 |
顧客ニーズの変化 |
|
・顧客との継続的なコミュニケ―ションによる顧客要求のタイムリーな把握および継続的な技術改善 |
技術革新、陳腐化 |
|
・市場要求を理解し、課題解決のためのテーマ設定を行い、取り組む ・技術人材育成の教育プログラム導入 ・技術投資の維持、増額 ・産学連携、同業種、異業種企業との協業 |
研究開発の失敗 |
|
・研究人材の育成強化 ・産学連携の推進 |
規制強化・法令改正 |
|
・環境関連規制、労務規制等の監視体制強化とアラート発出による法規制遵守意識の向上 |
温室効果ガスの排出量削減の失敗 |
|
・温室効果ガス低減に係わる規制監視体制強化と対応製品の拡充 |
全社重要リスク ④ 労働災害リスク |
前年との 評価比較 |
|
||
全社重要リスク選定理由 |
中長期取り組みの必要性 |
・安全は、企業活動の全てにおいて優先されるべきものと考えて おります ・安定的な事業継続の観点から中長期的な取り組みを継続いたし ます |
||
経営戦略への影響 |
直接・間接的なマイナスの影響が甚大であります |
|||
企業理念・目指すべき企業像との関係性 |
従業員の安全確保は最重要と認識しております |
|||
体制構築・リソース投入の 必要性 |
工場部門だけの問題とせず、全社一丸となる取り組みが必要と認識しております |
|||
リスク認識 |
当社が取り扱う化学品の危険性や有害性が多様化し、重要なリスクとなっており、全社的な取り組みを継続する必要性を認識しております |
|||
リスクへの対策 |
目指すべきリスクへの 対応状態 |
労働災害を防止するための基本事項を定め、従業員の職場における安全と健康を確保し、快適な作業環境の形成を促進することを目的といたします 1)5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)ができていること 2)安全基準の策定 |
||
具体策 |
・危険予知活動の強化 ・手順書整備、見直しによる安全性確保 ・健康管理 |
労働災害リスクに関連する 個別リスク |
前年との 評価比較 |
リスクへの対策 |
技術等の伝承の失敗・途絶 |
|
・設計変更に係わる、試験方法の拡充・開発 ・工程変更に係わる時の試験検討の徹底 ・工程に係る顧客要求事項の再確認 ・技術等伝承の人材育成の教育プログラム導入 ・多様な労働力に対応可能な仕組みの強化 |
火災、爆発・破裂リスク |
|
・危険物の取扱、管理教育の徹底 |
職業性疾病 |
|
・自律的な化学物質管理 ・適切な保護具の着用 ・化学物質の管理と取扱い手順の教育 |
◆その他重要と認識しているリスク
リスク項目 |
影響度 |
発生 可能性 |
前年との 評価比較 |
リスク内容 |
リスクへの対応策 |
① 景気変動、市況変化 |
中 |
中 |
|
・景気変動に伴う需要減退に対応できない利益減少リスクまたは需要増加に生産対応できない機会損失リスク |
・事業環境の変化に対し、市場動向に迅速かつ的確に対応できる企業体質の構築 |
② 特定顧客・市場への依存 |
中 |
中 |
|
・特定顧客・市場への依存度の高さにより、関係悪化・取引停止等にて事業継続への影響に発展するリスク |
・取引先の経営状況の把握 ・新規顧客の開拓 ・周辺領域の探索 |
③ 製品検査・試験のミス(製品事故要因) |
中 |
中 |
|
・原材料不良の影響から、品質異常が発生し、得意先からの信頼を失うリスク ・製品の品質異常による顧客からの訴訟や損害賠償が発生するリスク |
・手順書整備、見直しによる検査方法、出荷条件等の更新 ・ISO9001マネジメント活動の継続的推進 |
④ 製造プロセスの欠陥・瑕疵(製品事故要因) |
中 |
中 |
|
・不純物混入や製造プロセス瑕疵等による品質低下、製造機器不具合によって規格外品が増加し、改修費用が増大するリスク |
・機器および原材料回りの整理整頓 ・機器メンテナンスや工程管理能力の向上 |
⑤ 為替等の変動 |
中 |
中 |
|
・為替市場、金利等の変動等により外貨建取引(債権・債務)への為替変動が生じ、業績に影響を及ぼすリスク |
・外貨変動リスクの事前回避、金融機関や専門機関等からの情報把握、分析(国際金融・社会情勢・地政学) ・外貨建債権・債務残高の適正管理、バランス ・先物為替予約等実施によるヘッジ |
⑥ 貿易ルールの変更 |
中 |
中 |
|
・原材料調達国が輸出を規制し、原材料を入手できなくなるリスク ・製品輸出先が関税変更し、業績に影響するリスク |
・仕入先の複数化 ・原材料調達国および製品納入国の法令研修の拡充 ・法令に基づく関係省庁情報の入手、選別、アラート発出 |
⑦ 設備・機器・情報システム等の不稼動 |
中 |
中 |
|
・生産設備のメンテナンス不足原因によって設備が故障し、生産活動が停止するリスク ・基幹システムにトラブルが発生し、生産・営業活動が一時停止するリスク ・設備またはシステム停止によって、事業が停滞するリスク |
・生産設備の定期メンテナンス徹底 ・障害発生時のマニュアル更新整備 |
⑧ 顧客・協力会社の倒産・支払遅延 |
中 |
中 |
|
・取引先倒産による債権回収不能リスク ・製造協力会社倒産により、代替先が見つからず一部製品の生産中断となるリスク |
・債権保証契約による債権保全 ・与信債権管理運用基準による取引先状況の定期的なモニタリング ・製造協力会社の新規検討および自社内での生産対応強化 |
⑨ 設計の欠陥・瑕疵(製品事故要因) |
中 |
低 |
|
・設計変更の試験検討等で見抜けないような予期せぬ機能低下が発生するリスク ・生産工程効率化一辺倒による作業工程を変更した結果、品質が低下するリスク |
・設計変更に係わる、試験方法の拡充・開発 ・工程変更に係わる時の試験検討の徹底 ・工程に係る顧客要求事項の再確認 |
⑩ 生産・在庫管理の失敗 |
低 |
中 |
|
・原材料・仕掛品・製品在庫管理の失敗による、製品の過不足が発生するリスク ・在庫管理不足による保管料増加や在庫処分費用増大による損益低下のリスク |
・生産管理方法の適宜見直し ・費用発生のモニタリングによる抑制方法の検討 |
⑪ 製品回収、クレーム対応の失敗 |
中 |
中 |
|
・製品不具合、クレームが発生した際の判断の遅れや不適切な対応により、不具合製品による事故が発生するリスク ・顧客からのクレームへの対応失敗により、顧客の信用を失い、取引停止となるリスク |
・不具合発生時の正確な情報共有の徹底 ・クレーム原因の追究、対応策の有効性評価 ・信用の失墜を防ぐためのアフターフォロー実施 |
⑫ 納期・性能未達 |
低 |
中 |
|
・生産管理問題等から、期日に納品できないリスク ・製品ロットごとに品質差が発生し、顧客からクレームを受けるリスク |
・生産管理方法の適宜見直し ・生産性向上、不適合品の発生防止に資する活動推進 |
⑬ 政情不安(戦争・テロ・政治体制や政策の変更等) |
中 |
低 |
|
・海外政情変化に伴う、原材料調達対応および高騰対応の遅れによる事業活動の停滞や治安悪化などにより、輸出入ビジネスからの撤退を余儀なくされるリスク |
・地政学情報に対してのアラート発信強化および情報共有 ・原材料調達状況の早期把握、在庫の見直し、原材料変更対応等にてリスク低減 |
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績等の概況
当連結会計年度の業績は下記のとおりであります。
(単位:百万円)
区 分 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
増減額 |
増減率 |
売上高 |
43,406 |
43,922 |
516 |
1.2% |
営業利益又は営業損失(△) |
△21 |
768 |
790 |
- |
経常利益 |
4,783 |
986 |
△3,797 |
△79.4% |
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
1,645 |
881 |
△764 |
△46.4% |
当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が解除されたことにより、社会経済活動正常化への動きが一段と進み、企業業績・個人消費ともに緩やかな回復基調が継続されました。一方で、原材料価格の高止まり、円安とエネルギーコスト上昇等による物価高は依然として続いており、今後も不安定な国際情勢や世界的な金融引き締めによる影響が懸念され、景気の先行きは不透明な状況が継続しております。
このような状況の中、当社グループは、競争力強化と顧客満足の向上および事業領域の拡大を進め、また、原材料等の価格上昇分について、製品の販売価格改定を実施してまいりました。
この結果、上記の表に記載のとおり、当連結会計年度の業績は、売上高が439億2千2百万円で前年度比5億1千6百万円の増収(1.2%増)、営業利益は7億6千8百万円で、製品の販売価格改定等の交易条件の改善により、前年度比7億9千万円の増益(前年度は2千1百万円の営業損失)、経常利益は9億8千6百万円で、前年度における米国連結子会社の出資分配益の計上がなくなったこと等により前年度比37億9千7百万円の減益(79.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は8億8千1百万円で、前年度における減損損失の計上がなくなったこと等により前年度比7億6千4百万円の減益(46.4%減)となりました。
なお、2023年12月に連結子会社である荒川塗料工業株式会社(決算日2月末日)で発生した火災により、99百万円を災害による損失として特別損失に計上しております。
今後のわが国の経済については、雇用・所得環境の改善を背景に個人消費の持ち直しが進むことで、緩やかな回復基調が継続すると見込んでおります。一方で、原油価格や為替の動向等による当社グループの業績への影響が不透明な状況は継続すると見込まれるため、引き続き市況を注視しながら競争力強化と顧客満足の向上および事業ポートフォリオの見直しを進めてまいります。
「売上高年度別推移」 (百万円) 「営業利益(損失▲)年度別推移」 (百万円)
「経営成績の四半期推移」 (百万円)
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
当社グループの報告セグメントはインキ事業、化成品事業、加工品事業、不動産賃貸事業から構成されており、当連結会計年度の売上高とセグメント利益又は損失(△)の構成は以下のとおりであります。
また、前連結会計年度の期首より全社費用の区分を見直しております。それに伴い、各事業のセグメント利益または損失については2022年3月期からの数値を記載しております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
(インキ事業)
(単位:百万円)
区 分 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
増減額 |
増減率 |
売上高 |
14,026 |
14,529 |
503 |
3.6% |
セグメント利益又は損失(△) |
△673 |
288 |
962 |
- |
インキ事業における各製品の当連結会計年度の概況をご報告いたします。
商業印刷を主要市場としているオフセットインキおよび印刷用材料は、産業構造の変化に伴う市場縮小が継続する中、行動制限解除に伴い各種イベント等が増加したことで、需要が回復いたしました。そのような状況下、原材料価格およびエネルギーコストの上昇に対して製品販売価格改定が一定程度進捗したことに加え、重要顧客への販売活動を強化したことにより、前年度に比べ売上高は増加いたしました。また、売上高の増加に加え、前期末に実施した固定資産の減損処理に伴う減価償却費の減少等により、利益は大幅に改善いたしました。
グラビアインキは、原材料価格およびエネルギーコストの上昇に対する製品販売価格改定が進捗したことに加え、持続可能な社会の実現に貢献できる製品(以下、サステナブル製品)である機能性インキが伸長したものの、物価高に伴う消費意欲低下の影響等により、売上高・利益ともに減少いたしました。
インクジェットインクは、建材用途等の自社製品が低調に推移したものの、欧米向け受託製品の需要が徐々に回復してきた結果、前年度に比べ売上高・利益ともに増加いたしました。
この結果、上記の表に記載のとおり、インキ事業の当連結会計年度の業績は、前年度に比べ増収となり、利益は損失を計上した前年度から黒字転換いたしました。
今後のインキ事業につきまして、オフセットインキは産業構造の変化に伴う市場縮小が今後も継続することが考えられますので、サステナブル製品開発および重点顧客への販売活動を強化し、今後更なる事業構造改革に努めてまいります。グラビアインキは軟包装分野の需要が堅調に推移し、インクジェットインクは中長期的には産業用途の需要拡大が見込まれますので、サステナブル製品開発および販売活動を強化してまいります。また、引き続き、事業全体を通じて収益力向上に向けて製品ポートフォリオの再構築を進めてまいります。
「売上高・セグメント利益の年度別推移と四半期推移」 (百万円)
(化成品事業)
(単位:百万円)
区 分 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
増減額 |
増減率 |
売上高 |
21,283 |
21,350 |
67 |
0.3% |
セグメント利益 |
419 |
190 |
△228 |
△54.5% |
化成品事業における各製品の当連結会計年度の概況をご報告いたします。
自動車用マスターバッチおよび樹脂コンパウンドは、第4四半期に国内自動車生産台数が一時的に減少した影響を受けましたが、通年では、国内自動車生産台数が増加したことにより、前年度に比べ売上高は増加いたしました。
包装材・容器用マスターバッチは、物価高に伴う消費意欲低下および環境対応の影響等により、前年度に比べ売上高は減少いたしました。
この結果、上記の表に記載のとおり、化成品事業の当連結会計年度の業績は、原材料価格およびエネルギーコストの上昇に対して製品販売価格改定が一定程度進捗したことにより、前年度に比べ増収となりました。一方、タイ国連結子会社が好調であったものの、包装材・容器用マスターバッチの減収影響が大きく、減益となりました。
今後の化成品事業につきまして、自動車用マスターバッチおよび樹脂コンパウンドは、一時的に減少した国内自動車生産の回復に伴い、需要が堅調に推移することが見込まれます。包装材・容器用マスターバッチは、環境対応の加速化による市場縮小の継続が考えられますが、新たな用途・分野への進出を目指してまいります。事業全体を通じて、サステナブル製品開発および販売活動を強化し、サーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みを進めてまいります。これらの方針に基づき、持続可能な製品開発と販売を推進してまいります。
「売上高・セグメント利益の年度別推移と四半期推移」 (百万円)
(加工品事業)
(単位:百万円)
区 分 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
増減額 |
増減率 |
売上高 |
8,014 |
7,953 |
△60 |
△0.8% |
セグメント利益 |
524 |
516 |
△8 |
△1.6% |
加工品事業における各製品の当連結会計年度の概況をご報告いたします。
ネトロン®(注)は、工業材料である水処理用資材の輸出需要が一服した結果、売上高は前年度に比べ減少いたしました。また、原材料価格およびエネルギーコストの上昇に対して製品販売価格改定が一定程度進捗したものの、十分ではなく、利益は減少いたしました。
一軸延伸フィルムは、ダンボールカットテープ用途および一般食品包装用途が低調であったものの、直進カット性フィルムの販売が好調に推移したことに加え、原材料価格およびエネルギーコストの上昇に対して製品価格改定が進捗したことにより、前年度に比べ売上高は増加いたしました。一方、販売構成差により前年度に比べ利益は減少いたしました。
土木資材は、豪雨災害の復興需要の影響等により、防災・減災用途に使用されるジオセル工法の採用が引き続き増加していることで、前年度に比べ売上高および利益ともに大幅に増加いたしました。
農業資材は、好調であった燃油使用量削減に寄与する保温資材等の高機能製品需要が一服したことに加え、国内農業における産業構造の変化に伴う市場縮小により汎用製品の需要が低迷した影響が大きく、前年度に比べ売上高は減少いたしました。一方、高付加価値製品の比率が向上したことにより、利益は前年度並みになりました。
この結果、上記の表に記載のとおり、加工品事業の当連結会計年度の業績は、前年度に比べ減収減益となりました。
今後の加工品事業につきまして、ネトロン®の水処理用資材は、徐々に需要が回復し、中長期的には市場拡大の継続が見込まれ、土木資材は、豪雨等の災害に対応するため、政府が「国土強靭化計画」を推進していることから、防災・減災用途製品の需要の高まりが見込まれます。一方、包装資材や農業資材は、環境対応の加速化および産業構造の変化に伴う市場縮小の継続が考えられますが、環境に配慮した製品需要の高まりが期待できます。需要の増加が見込まれる分野は生産能力を強化し、事業全体を通じて、サステナブル製品開発および販売活動を強化してまいります。
「売上高・セグメント利益の年度別推移と四半期推移」 (百万円)
(不動産賃貸事業)
(単位:百万円)
区 分 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
増減額 |
増減率 |
売上高 |
82 |
88 |
6 |
7.8% |
セグメント利益 |
48 |
55 |
6 |
14.1% |
不動産賃貸事業は、賃貸戸建て住宅「パレットパークタウン」および本社ビル賃貸オフィスの稼働が堅調に推移いたしました。
この結果、上記の表に記載のとおり、不動産賃貸事業の当連結会計年度の業績は、増収増益となりました。
「売上高・セグメント利益の年度別推移と四半期推移」 (百万円)
②財政状態の状況
(単位:百万円)
区 分 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
増減額 |
増減率 |
資産 |
47,797 |
52,466 |
4,669 |
9.8% |
負債 |
20,531 |
23,067 |
2,535 |
12.4% |
純資産 |
27,265 |
29,398 |
2,133 |
7.8% |
当連結会計年度末の総資産は524億6千6百万円となり、前連結会計年度末に比べ46億6千9百万円増加いたしました。主な要因は、現金及び預金の増加3億6千万円、受取手形の減少2億6千万円、売掛金の増加4億1千1百万円、電子記録債権の増加13億5千5百万円、棚卸資産の増加3億6千8百万円、投資有価証券の時価上昇に伴う増加9億1千5百万円および退職給付に係る資産の増加11億6千6百万円等によるものです。
負債合計は230億6千7百万円となり、前連結会計年度末に比べ25億3千5百万円増加いたしました。主な要因は、支払手形及び買掛金の増加14億1千5百万円、短期借入金の減少1億3千万円、1年内返済長期借入金の減少1億2千7百万円、未払法人税等の増加1億4千5百万円、長期借入金の増加2億5千万円および繰延税金負債の増加7億1千万円等によるものです。
純資産の部は293億9千8百万円となり、前連結会計年度末に比べ21億3千3百万円増加いたしました。主な要因は利益剰余金の増加5億6千6百万円、投資有価証券の時価上昇に伴うその他有価証券評価差額金の増加等、その他の包括利益累計額の増加14億4千万円等によるものです。
③キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
区 分 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
増減額 |
営業活動によるキャッシュ・フロー |
△893 |
1,989 |
2,883 |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
2,461 |
△1,281 |
△3,743 |
フリー・キャッシュ・フロー |
1,568 |
708 |
△860 |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△2,014 |
△398 |
1,616 |
現金及び現金同等物の期末残高 |
3,374 |
3,734 |
360 |
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は37億3千4百万円で、前連結会計年度末に比べ3億6千万円の増加(10.7%増)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、19億8千9百万円の収入となりました(前連結会計年度は8億9千3百万円の支出)。主な要因は、税金等調整前当期純利益11億3千9百万円、減価償却費13億2千8百万円が計上され、売上債権の増加14億2千万円、棚卸資産の増加3億5千7百万円、仕入債務の増加14億8百万円等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、12億8千1百万円の支出となりました(前連結会計年度は24億6千1百万円の収入)。主な要因は、有形固定資産の取得による支出12億6千1百万円、無形固定資産の取得による支出3億2千万円、投資有価証券の売却による収入4億4百万円等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、3億9千8百万円の支出となりました(前連結会計年度は20億1千4百万円の支出)。主な要因は、短期借入金の純減額1億3千万円、長期借入による純増額1億2千2百万円、配当金の支払額3億1千4百万円等によるものです。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
生産数量合計(トン) |
前年同期比(%) |
インキ事業 |
26,896 (5,315) 〔1,506〕 |
93.8 (86.5) 〔92.0〕 |
化成品事業 |
40,753 (161) 〔17,269〕 |
96.5 (124.0) 〔95.4〕 |
加工品事業 |
4,506 (-) 〔1,796〕 |
93.2 (-) 〔86.3〕 |
不動産賃貸事業 |
- (-) 〔-〕 |
- (-) 〔-〕 |
合計 |
72,156 (5,476) 〔20,572〕 |
95.3 (87.2) 〔94.2〕 |
(注)1 ( )内数字は自家消費分を示し、かつ内数であります。
2 〔 〕内数字は外注分を示し、かつ内数であります。
b.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
仕入高(百万円) |
前年同期比(%) |
インキ事業 |
1,326 |
80.1 |
化成品事業 |
192 |
89.1 |
加工品事業 |
2,957 |
90.0 |
不動産賃貸事業 |
- |
- |
合計 |
4,476 |
86.8 |
c.受注実績
当社グループは主として見込生産を行っております。なお、化成品の一部で受注生産を行っているものもありますが、特に受注残高を示すほどのものではありません。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
インキ事業 |
14,529 |
103.6 |
化成品事業 |
21,350 |
100.3 |
加工品事業 |
7,953 |
99.2 |
不動産賃貸事業 |
88 |
107.8 |
合計 |
43,922 |
101.2 |
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ.当社グループの当連結会計年度の財政状態
当連結会計年度末の総資産は524億6千6百万円となり、前連結会計年度末に比べ46億6千9百万円増加いたしました。分析・検討内容は、以下のとおりであります。
◆資産の部
(単位:百万円)
摘要 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
増減額 |
主な内容分析 |
|
流動資産 |
現預金 |
3,375 |
3,736 |
360 |
流動性資金確保 |
売上債権 |
15,634 |
17,141 |
1,506 |
当年度末休日の影響による債権増、販売価格改定効果他 |
|
棚卸資産 |
9,494 |
9,863 |
368 |
商品及び製品+361、仕掛品△51、原材料及び貯蔵品+58他 |
|
その他 |
394 |
370 |
△24 |
未収法人税等減△37他 |
|
計 |
28,899 |
31,111 |
2,212 |
売上債権、棚卸資産の増加 |
|
固定資産 |
有・無形 固定資産 |
12,584 |
12,943 |
359 |
減価償却費見合いの新規設備投資 |
投資 その他 |
6,312 |
8,410 |
2,098 |
・保有株式評価増+999、同株式売却による減△127 ・退職給付に係る資産増+1,166 |
|
計 |
18,897 |
21,354 |
2,457 |
|
|
資産合計 |
47,797 |
52,466 |
4,669 |
|
セグメント資産の状況
(単位:百万円)
|
2023年3月期 |
2024年3月期 |
増減額 |
主な内容分析 |
インキ事業 |
14,858 |
17,027 |
2,169 |
売上債権、棚卸資産の増加 |
化成品事業 |
22,072 |
23,547 |
1,474 |
売上債権、棚卸資産、米国連結子会社の出資 分配金の増加 |
加工品事業 |
7,036 |
7,517 |
481 |
売上債権、棚卸資産の増加 |
不動産賃貸事業 |
647 |
626 |
△21 |
|
報告セグメント合計 |
44,615 |
48,719 |
4,104 |
|
当連結会計年度末の負債合計は230億6千7百万円となり、前連結会計年度末に比べ25億3千5百万円増加いたしました。分析・検討内容は、以下のとおりであります。
◆負債の部
(単位:百万円)
摘要 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
増減額 |
主な内容分析 |
|
流動負債 |
仕入債務 |
9,713 |
11,128 |
1,415 |
当年度末休日の影響による債務増 |
短期借入金 (1年内含) |
4,752 |
4,495 |
△257 |
運転資金確保 |
|
その他 |
2,032 |
2,481 |
448 |
未払法人税等増+146他 |
|
計 |
16,498 |
18,105 |
1,606 |
|
|
固定負債 |
長期借入金 |
2,631 |
2,881 |
250 |
約定返済減、新規借入 |
その他 |
1,401 |
2,081 |
679 |
繰延税金負債増+710他 |
|
計 |
4,033 |
4,962 |
929 |
|
|
負債合計 |
20,531 |
23,067 |
2,535 |
|
純資産の部は293億9千8百万円となり、前連結会計年度末に比べ21億3千3百万円増加いたしました。分析・検討内容は、以下のとおりであります。
◆純資産の部
(単位:百万円)
摘要 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
増減額 |
主な内容分析 |
株主資本 |
26,033 |
26,705 |
672 |
利益剰余金増+566、自己株式減少+95 |
その他の 包括利益累計額 |
1,060 |
2,501 |
1,440 |
保有株式評価増+702、為替換算調整勘定増+161 退職給付に係る調整累計額減+572 |
非支配株主持分 |
171 |
191 |
20 |
|
純資産合計 |
27,265 |
29,398 |
2,133 |
株価上昇の影響によりその他の包括利益累計額の大幅増加 |
ロ.当社グループの当連結会計年度の経営成績
当連結会計年度の業績は、売上高が439億2千2百万円で前年度比5億1千6百万円の増収(1.2%増)、営業利益は7億6千8百万円で、製品の販売価格改定等の交易条件の改善により、前年度比7億9千万円の増益(前年度は2千1百万円の営業損失)、経常利益は9億8千6百万円で、前年度における米国連結子会社の出資分配益の計上がなくなったこと等により前年度比37億9千7百万円の減益(79.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は8億8千1百万円で、前年度における減損損失の計上がなくなったこと等により前年度比7億6千4百万円の減益(46.4%減)となりました。
なお、2023年12月に連結子会社である荒川塗料工業株式会社(決算日2月末日)で発生した火災により、99百万円を災害による損失として特別損失に計上しております。
各事業セグメント別につきまして、インキ事業では、グラビアインキが物価高に伴う消費意欲低下の影響で低調に推移したものの、オフセットインキが行動制限解除に伴い各種イベント等が増加したことによる需要増、製品販売価格改定が一定程度進捗したこと等により売上高増加、利益は改善となっております。
化成品事業では、タイ国連結子会社が好調であったものの、包装材・容器用マスターバッチが物価高に伴う消費意欲低下および環境対応の影響等により、増収減益となっております。
加工品事業では、土木資材の防災・減災用途に使用されるジオセル工法の採用が増加しているものの、ネトロン®の工業材料である水処理用資材の輸出需要が一服したこと、農業資材の保温資材等の高機能製品需要が一服したことに加え汎用製品の需要低迷等により減収減益となっております。
原材料価格とエネルギーコストは今後も高止まりが継続することが予測されておりますので、それらの動向を注視し、適宜製品販売価格への反映を継続することが課題であると認識しております。
また、中長期の市場環境として、デジタル技術の急速な進展によるライフスタイルの変化、商業・出版印刷市場のデジタル化へのシフト、サステナビリティへの意識の高まりによる環境対応の流れ等、当社グループ製品の需要動向全体に影響を及ぼす市場環境変化が加速していることも当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす要因と認識しております。
ハ.長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」策定について
当社グループは、2023年12月に創立100周年を迎え、2030年に目指す姿として長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」を策定いたしました。
長期ビジョン策定にあたり、これからの持続可能な社会(サステナビリティ)のために何ができるのかの観点から、改めて「東京インキグループのパーパス(存在意義)」を問い直しました。
パーパス(存在意義):「伝える」「彩る」「守る」ことで、豊かな未来を実現する
パーパス(存在意義)とバリュー(行動指針)の浸透を推し進めることで、新たな価値を創造できる人材を創出し、マインドの醸成を図り、高効率で安定した企業基盤を構築するとともに、製品・サービスを通じて持続可能な価値を提供し、環境・社会と共存共栄できる企業経営を推進してまいります。
2030年までのビジョンとして、「持続可能な価値を提供し続ける企業グループへ」を掲げ、サステナブル対応製品比率向上、温室効果ガス排出量削減などを目標とし、期間中の中期経営計画で具体的な施策を実行してまいります。
長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」の詳細につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針 および (3)経営戦略および優先的に対処すべき課題」に記載のとおりであります。
ニ.中期経営計画「TOKYOink 2024」2023年度までの取り組みについて
中期経営計画「TOKYOink 2024」の基本戦略に対応した2023年度までの主な取り組みの成果と今後取り組むべき課題については以下のとおりとなります。
基本戦略 |
取り組み・成果 |
今後取り組むべき課題 |
ESG経営の推進 |
人事戦略策定 |
環境課題解決に向けた取り組み の実施 |
人事制度の運用・定着 |
社会課題解決に向けた取り組みの実施 |
|
理念体系再構築(行動指針策定) |
|
|
各種ガイドライン制定 :リスク、コンプライアンス、安全衛生 品質、サステナビリティ、環境、BCP |
|
|
大阪工場再エネ電力導入 |
|
|
グリーン預金実施 |
|
|
株式会社アールプラスジャパン出資 ⇒プラスチック再資源化検討への参画 |
|
|
株式会社日本政策投資銀行「環境格付」 取得 |
|
|
「東京都北区SDGs推進企業認証制度」取 得 |
|
|
健康経営優良法人2023・2024認定 |
|
|
子育てサポート企業「くるみん認定」取得 |
|
|
能登半島地震被災地への義援金および支援物資寄付実施 |
|
|
フードドライブへの寄付実施 |
|
|
新製品・環境・社会対応製品等 |
環境・社会対応製品ラインナップ拡充 |
更なる環境・社会対応製品開発 |
主な製品群 |
|
|
・高バイオマスオフ輪インキ GAIA®VLC |
|
|
・環境調和型グラビアインキ ライスインキ |
|
|
・モノマテリアル対応インキ |
|
|
・蒸気抜けインキ(食品包装用途) |
|
|
・液状マスターバッチ リキッドカラー HiFormer® |
|
|
・生分解性プラスチック用マスターバッチ |
|
|
・結晶核剤マスターバッチ サイクルヘルパー |
|
|
・ジオセル(グランドセル/テラセル)のり面保護工法 |
|
|
・EKエナジーキーパー® (農林水産省「みどりの食料システム戦略」における基盤確立事業実施計画認定) |
|
|
・生分解性樹脂・バイオマス パウダーレジン |
|
|
高効率運営体制の実現 |
ITツール導入による全社的な業務合理化 推進 |
効率向上に繋がる取り組み実施 |
(RPA導入拡大、クラウド化推進) |
|
|
自動化生産ライン構築検討(化成品) |
|
|
成長投資 |
各工場における生産設備更新および 省エネ対策設備更新 |
主要製品生産増強に向けた設備投資 |
株式会社T&K TOKAグラビアインキ関連事業譲渡契約締結 (事業承継完了予定:2025年3月) |
|
|
資本効率・株主還元 |
財務効率化:有利子負債圧縮による健全 性確保 |
資本効率・株主還元に繋がる取り組み実施 |
株主還元策の充実化:普通配当の他、記 念配当による配当 |
|
|
最適資本構成:機動的な資金需要に対応 した調達環境の確保 |
|
中期経営計画「TOKYOink 2024」目標達成に向け、様々な取り組みを実施してまいりましたが、新型コロナウイルス感染症の流行により人々の生活様式が変化し、消耗材の需要が低迷したことにより、当社グループの主要市場である包装資材の業績が悪化した等、計画策定当初に比べ、当社グループを取り巻く環境は想定以上に変化していることに加え、設備の修繕費やシステム関連費用等の増加が見込まれることから、2024年度経営目標(連結営業利益20億円、ROE5.0%以上等)の達成は難しい状況となっております。
ホ.資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
上場企業は東京証券取引所より、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の
要請を受けております。当社グループは先述のとおり、中期経営計画「TOKYOink 2024」目標達成
が難しい状況であることから、長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」の実現に向けて、持続的
成長と中長期的な企業価値向上を図るべく、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対
応について現状分析・評価を行い、改善に向けた今後の方針・目標や具体的な取り組みについて
策定いたしました。具体的な取り組みは下記のとおりとなります。
『具体的な取り組み』
イ.成長戦略:事業ポートフォリオ変革
ロ.資本政策:財務戦略
ハ.資本政策:キャッシュアロケーション
ニ.非財務施策:コーポレート・ガバナンス体制の強化
ホ.非財務施策:サステナビリティ経営の推進
ヘ.非財務施策:IR活動の強化と通じた企業価値向上
詳細につきましては、当社ホームページもしくは下記URLより、ご覧ください。
「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」掲載URL
https://www.tokyoink.co.jp/ir/ir_library/management_plan/
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源および資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は37億3千4百万円で、前連結会計年度末に比べ3億6千万円の増加(10.7%増)となりました。
この資金の増加の要因は、製品の販売価格改定等の交易条件の改善による営業利益獲得による、営業キャッシュ・フローの増加にあると考えます。
なお当社グループは、営業活動により獲得されたキャッシュ・フローと投資活動に支出されたキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローにつきまして、今後の事業展開に備えた設備等の投資や金融機関からの借入等負債返済へ充当可能な資金としての純額、若しくは、外部からの資金調達等の借入依存度を定量判断する目的として捉えており、基本的な考え方は、事業活動により獲得したキャッシュの創出額をベースに、投資の意思決定を経営判断していることから、当社の事業運営にとって有用な指標と認識しております。
中期経営計画「TOKYOink 2024」においては、成長性が見込まれる環境・社会貢献製品や特長ある新規開発製品により創出した営業キャッシュ・フローをベースに、新製品開発・新規事業の探索、省力化生産設備の導入、高効率化に向けたIT投資、安全・セキュリティ対策投資等、事業成長へ向けた必要な投資に振り向けることで企業価値の向上を目指します。
また、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」において、今後の具体的なキャッシュアロケーション方針を策定いたしました。創出したキャッシュを成長・サステナ投資、維持投資、R&D、戦略投資等の成長戦略としての事業ポートフォリオ変革を実施するのに必要な投資や株主還元に振り向けることで、更なる企業価値の向上を目指します。
フリー・キャッシュ・フローの概況(5期分)
(単位:百万円)
区分 |
2020年 3月期 |
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
2023年 3月期 |
2024年 3月期 |
営業活動による キャッシュ・フロー |
661 |
1,942 |
1,428 |
△893 |
1,989 |
投資活動による キャッシュ・フロー |
△442 |
△1,668 |
△1,040 |
2,461 |
△1,281 |
フリー・キャッシュ・フロー |
218 |
273 |
387 |
1,568 |
708 |
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費、売上債権の増加、棚卸資産の増加および仕入債務の増加等により、19億8千9百万円の収入となりました。当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出等により、12億8千1百万円の支出になったため、フリー・キャッシュ・フローは、7億8百万円の収入となりました(前連結会計年度は15億6千8百万円の収入)。
なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりですが、分析や検討内容は以下のとおりであります。
連結キャッシュ・フローの主な分析
(単位:百万円)
項目 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
増減額 |
主な内容分析 |
|
営業活動CF |
税金等調整前当期純利益 |
2,749 |
1,139 |
△1,609 |
前年度における大幅な出資分配益計上がなくなったことにより、当期純利益減少 |
減価償却費 |
1,499 |
1,328 |
△170 |
前年度インキ事業固定資産減損による減少 |
|
減損損失 |
1,908 |
- |
△1,908 |
前年度インキ事業の固定資産減損実施 |
|
出資分配益 |
△4,584 |
- |
4,584 |
前年度米国連結子会社出資先からの出資分配益計上 |
|
災害損失 |
- |
99 |
99 |
荒川塗料工業火災発生による損失 |
|
売上債権の増減額 |
△919 |
△1,420 |
△500 |
当年度末休日による売上債権の増加 |
|
棚卸資産の増減額 |
△697 |
△357 |
339 |
原材料単価上昇による増加 |
|
仕入債務の増減額 |
652 |
1,408 |
755 |
当年度末休日による仕入債務増加 |
|
法人税等の支払額 |
△1,199 |
30 |
1,229 |
前年度米国連結子会社の法人税納税額大幅増加 |
|
その他 |
△303 |
△237 |
65 |
|
|
小計 |
△893 |
1,989 |
2,883 |
交易条件改善に伴う営業利益獲得 |
|
投資活動CF |
有形固定資産の取得 |
△1,225 |
△1,261 |
△36 |
新規設備投資実施 |
投資有価証券の売却 |
89 |
404 |
315 |
CGCに基づく政策保有株式売却継続 |
|
出資分配金による収入 |
3,668 |
25 |
△3,643 |
米国連結子会社の出資先からの分配金減少 |
|
その他 |
△71 |
△449 |
△378 |
無形固定資産の取得 |
|
小計 |
2,461 |
△1,281 |
△3,743 |
|
(単位:百万円)
項目 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
増減額 |
主な内容分析 |
|
財務活動CF |
短期借入金の純増減額 |
△60 |
△130 |
△70 |
運転資金確保 |
長期借入金による収入 |
- |
1,370 |
1,370 |
長期資金調達実施 |
|
長期借入金の返済 |
△1,549 |
△1,247 |
302 |
約定弁済による返済 |
|
自己株式の取得による支出 |
△1 |
△0 |
0 |
|
|
その他 |
△404 |
△390 |
13 |
配当金支払、ファイナンスリース債務返済 |
|
小計 |
△2,014 |
△398 |
1,616 |
|
b.資本政策の基本的な方針
当社グループは、株主価値を中長期的に高めるために、持続的な成長が必要と考え、「資本効率の向上」、「強固な財務基盤の確保」、「株主還元」の3つのバランスを取ることを資本政策の基本としており、安定的かつ継続的な配当実施を基本方針として連結業績に応じた利益配分を踏まえ持続的な株主価値の向上に努めてまいります。また、中期経営計画「TOKYOink 2024」における配当方針は、配当性向30%以上を目標としております。
当連結会計年度の配当性向は29.8%と前連結会計年度と比較し、4.3ポイント上昇しております。
今後については、更なる株主価値向上への取り組みとして「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」において、配当性向40%以上またはDOE1.0%以上とする新たな配当方針を策定いたしました。また、自己株式の取得と消却についても計画し、より一層の株主還元の充実を図ってまいります。
次期の連結業績予想に基づく配当性向は40%以上となる見込みであります。
決算年月 |
2020年 3月期 |
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
2023年 3月期 |
2024年 3月期 |
自己資本利益率 (ROE) |
2.8% |
2.5% |
2.9% |
6.3% |
3.1% |
総資産経常利益率 (ROA) |
1.8% |
1.4% |
1.9% |
10.1% |
2.0% |
売上高営業利益率 (ROS) |
1.4% |
0.7% |
1.6% |
△0.1% |
1.8% |
配当性向(連結) |
32.8% |
34.9% |
28.9% |
25.5% |
29.8% |
自己資本利益率 (ROE):親会社株主に帰属する当期純利益/(純資産-非支配株主持分)
総資産経常利益率 (ROA):経常利益/総資産
売上高営業利益率 (ROS):営業利益/売上高
配当性向(連結):1株当たり配当金/1株当たり当期純利益
c.財務戦略の基本的な考え方
中期経営計画「TOKYOink 2024」の基本戦略において、「資本効率の向上と財務の健全性確保」、「事業成長を支える財務基盤の最適化」である財務戦略を掲げ、高効率な運営体制を実現することで、更なる企業価値の向上を目指します。
〇資本効率の向上および財務健全性の確保により、コンパクトな経営の実現
・保有資産の最適化推進
・事業特性に応じた財務レバレッジ活用とコストを上回る生産性の実現
・資本コストを意識した持続的な成長・基盤投資
・最適資本構成を意識した機動的な資金需要への対応
当連結会計年度における財務戦略の主な取り組み、成果は以下のとおりです。
・財務基盤の最適化・効率化 …… 機動的な資金需要に対応した調達環境の確保
・株主還元策の充実化 …………… 普通配当の他、創立100周年記念配当の実施
当連結会計年度は、引き続き現預金等手許資金を月商の過半数超の水準で維持しつつ、事業展開に伴う資金調達、また急激な売上減少等事業環境悪化に備えた対応として、短期借入金や長期借入金の金融機関に対する信用枠を十分確保しております。
また、長期ビジョンのマテリアリティ(重要課題)「2.環境・社会と共存共栄する企業経営の推進」へのアプローチである気候変動への対応として、株式会社日本政策投資銀行が開発した格付システムにより企業の環境経営度を評点化し、優れた企業を選定する「DBJ環境格付」を取得し、同格付に基づく融資を受けました。持続可能な成長を支える資本効率性の改善を推進し、財務戦略面からも持続可能な社会(サステナビリティ)実現に向けた取り組みを実施しております。
今後については、従来までの健全性を重視した方針から前進し、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」において新たに以下の財務戦略を策定いたしました。
・株主資本の活用を最大化
・強固な財務基盤の確保
・株主還元の充実
詳細につきましては、当社ホームページもしくは下記URLより、ご覧ください。
「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」掲載URL
https://www.tokyoink.co.jp/ir/ir_library/management_plan/
d.資金調達の基本的な方針
当社グループの主な資金需要として、短期的な資金需要は主として製造費用、販売費および一般管理費等運転資金であり、営業活動により獲得したキャッシュ・フローをベースに金融機関からの短期借入金により資金調達を行っております。また、長期的な資金需要は主に生産性向上や新規拡充を目的とした設備投資や素材を活かす要素技術・加工技術の拡充等研究開発費用、事業戦略としてのコア事業の更なる強化/拡大…基盤強化戦略、コア事業周辺領域の事業拡大…成長戦略に向けた投資および株主還元としての配当支払い等であり、主として内部留保資金の活用や金融機関からの固定金利による長期借入金により資金調達を行っております。
当連結会計年度は、引き続き現預金等手許資金を月商の過半数超の水準で維持しつつ、事業展開に伴う資金調達、また急激な売上減少等事業環境悪化に備えた対応として、短期借入金や長期借入金の金融機関に対する信用枠を十分確保しております。
また、当社グループは、財務戦略の一環として親会社、子会社間においての資金効率を高める目的で、グループ内キャッシュ・マネジメント・システムを実施しております。グループ全体の資金状況を可視化し、外部からの調達は親会社主導による一元化、資金需要のある子会社へ最適配分する一方、余剰資金のある子会社から資金調達を行うことで資金効率化、流動性管理の高度化を図っております。
さらに、資金需要に柔軟に対応したバックアップラインの強化を図るため、コミットメントライン(短期借入金)形態によるシンジケートローンの取り組み(極度設定額20億円)を引き続き実施し、手許流動性の確保に努めました。
なお、当連結会計年度末のコミットメントライン設定額は50億円であり、内訳は相対契約30億円、シンジケートローン契約20億円であります。
同年度末の借入実行残高は16億5千万円、借入未実行残高は33億5千万円であります。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
|
2020年 3月期 |
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
2023年 3月期 |
2024年 3月期 |
自己資本比率(%) |
54.9 |
54.7 |
54.0 |
56.7 |
55.7 |
時価ベースの自己資本比率(%) |
11.3 |
12.4 |
12.6 |
14.7 |
17.6 |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
10.9 |
4.6 |
6.4 |
- |
3.8 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
19.3 |
54.7 |
43.1 |
- |
67.3 |
D/Eレシオ(倍) |
0.30 |
0.35 |
0.36 |
0.28 |
0.26 |
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
D/Eレシオ:有利子負債/自己資本
(注1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
(注2)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
(注3)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
(注4)有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。
(注5)2023年3月期におけるキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオは営業キャッシュ・フローがマイナスであるため記載を省略しております。
2024年3月31日現在の自己資本比率は55.7%と前連結会計年度末と比較し、1.0ポイント下回っております。月末休日の影響による売上債権の増加や、投資有価証券の時価上昇に伴う増加等、総資産の大幅な増加によるものであります。
2024年3月31日現在のD/Eレシオは0.26倍、ネットD/Eレシオは0.13倍であります。借入額の減少および純資産増加に伴い、前連結会計年度より低下いたしました。
なお、中期経営計画「TOKYOink 2024」においては、目標とする経営指標として、D/Eレシオ0.3倍以下を現時点で達成しております。今後は有利子負債の水準を適正にコントロールしつつ、成長戦略に基づく投資計画実行のため、資本構成の最適化を進めてまいります。
2024年3月31日現在、短期借入金、長期借入金およびリース債務の内訳は以下のとおりであり、有利子負債の合計は75億3千3百万円となっております。
(契約債務)
2024年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
|
年度別要支払額(百万円) |
||||
契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超3年以内 |
3年超5年以内 |
5年超 |
短期借入金 |
3,430 |
3,430 |
- |
- |
- |
長期借入金 |
3,946 |
1,065 |
1,885 |
968 |
27 |
リース債務 |
156 |
61 |
72 |
21 |
0 |
(注) 連結貸借対照表の1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づ
き作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及
ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異な
る可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理
の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載し
ております。
当社は、2023年9月29日開催の取締役会において、株式会社T&K TOKAのグラビアインキ関連事業との事業譲渡契約を締結することについて決議し、同日付で締結いたしました。
(1)事業承継の理由
当社は、事業戦略として「市場動向に合わせた既存製品の競争力強化」、「周辺事業領域の探
索」を掲げております。また、当社の主力事業のひとつであるインキ事業に関してはポートフォ
リオ変革を推進し収益力の向上を図る計画としており、グラビアインキ製品群の事業領域拡大が
必要であると判断したためであります。
(2)対象事業承継の概要
①グラビアインキ・フレキソインキの設計、製造販売に関する事業を対象とします。
②対象事業の直前事業年度における売上高及び経常利益
|
対象事業 |
売上高 |
1,729百万円 |
※当該事業は報告セグメントである「インキ事業」の一部であるため、当該事業のみを切り出して
費用を算出することが困難です。そのため、当該事業にかかる営業利益及び経常利益について記
載を省略しております。
③対象事業における資産・負債の項目及び金額
a. 承継する資産の項目及び金額
営業権 470百万円
b. 承継する負債の項目及び金額
該当事項はありません。
④承継価額及び決済方法
承継価額 470百万円
決済方法 現金決済
当社グループは、「顔料分散技術」、「材料配合技術」、「混練技術」、「成形加工技術」、「分析評価技術」を基盤技術とし、これまで永年にわたり印刷インキおよびプラスチック用着色剤とその関連製品の生産に携わってまいりました。
これらの基盤技術に新規技術の調査・探求、研究成果を融合させて改良を加え、暮らしに役立つより良い製品の創出に努力を重ねております。近年、情報通信伝達技術の目覚ましい発達により、新たなサービスの利用が可能となってきており、更に踏み込んだ製品の評価・解析技術力の向上と知的財産権の保全強化に注力した研究開発活動を継続しております。
生産・技術部門では、原材料から製品に至る過程での化学物質管理を一層強固にするため、設計・生産段階への化学物質に関する最新情報を一元管理するデーターベースによる審査・承認の仕組みの整備も積み重ね、安全・安心を提供する「ものづくり」に力を注いでおります。
次世代事業の製品創出にはサステナビリティ活動が必須となる中で、日本および国際社会の一員として各企業、研究機関等との連携・共同研究による技術開発に努め、環境負荷低減を意識した新製品開発を進めてまいります。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は
セグメント別の研究開発活動概要は次のとおりであります。
(インキ事業)
オフセットインキにつきましては、当社の主力製品であるヒートセットオフ輪プロセスインキ「ガイア®」、枚葉プロセスインキ「ニューセルボ」に加え、新聞用高濃度インキ「ニューズメジャー」、高感度UVインキ「ジップキュア®UV OL」の製品性能向上に引き続き注力いたしました。具体的には印刷作業性を向上させる製品や幅広い用紙に適応できる製品を重点的に開発し、顧客満足度の向上を狙った製品開発を進めました。また、油性枚葉印刷がLED-UV印刷にシフトするトレンドが一段落する中、顧客の使い易さに磨きをかける事で製品の魅力を向上させた結果、「ジップキュア®UV OL」の販売は堅調に推移いたしました。更に業界の流れや環境に配慮した製品として高バイオマスオフ輪インキ「GAIA®VLC」、バイオマスマーク対応の高感度UVインキ「ジップキュア®UV OL BVM」、水なし印刷用製品「UV OLアルックス®」の開発・改良にも注力してまいりました。印刷市場の変化縮小による販売競争の激化に対応するべく、需要家である印刷会社からのニーズを確実に製品に反映した結果、顧客内シェアを確保できました。
また、大幅な原材料高に対して、生産効率化と安価原材料への置換の推進や上記既存製品群の改良を行い、収益改善に寄与しました。
新聞インキにつきましては、新聞発行部数が減少する中で、積極的な開発・改良設計に取り組み、高濃度新聞輪転用プロセスインキ「ニューズメジャークロマ」、高漆黒新聞墨インキ「ニューズメジャークロマブラック」の性能向上を図りました。
その他、オフセット用印刷用補助剤につきましては、顧客の生産性を向上させるために印刷機の停止回数を極力減らす製品づくりや環境負荷低減対応を第一優先に考えた無処理版対応製品の拡充により、使い易さだけでなく安全で環境に貢献する製品の提供に努めてまいりました。今後も、環境に配慮した高収益メーカーとなるべく、地球と人にやさしい設計による製品の提供により、需要家の要望に応えてまいります。
グラビアインキにつきましては、食品包材向けフィルム用インキ、成型品用インキの開発・改良を進め、環境負荷低減製品や機能性、意匠性を有する製品の開発に取り組んでまいりました。環境負荷低減製品につきましては、バイオマス由来材料を使用したインキの品種拡大を進め、バイオマスマーク登録を行ってまいりました。更に非食用米ぬか由来材料を使用したインキの開発にも取り組み、開発したライスインキの拡販を進めました。
機能性製品につきましては、自動蒸気抜け用インキ、遮光性インキ、バリアインキ、マットインキ、ヒートシール剤、モノマテリアル対応インキ、蒸着用コーティング剤等の開発を行ってまいりました。意匠性製品につきましては、電子レンジ用途での金インキや銀インキの採用が広がり、拡販が達成できました。更に輝度を上げた銀インキを開発し、パスター加工代替を狙った新たな製品提案を行い、徐々に販売を増加させております。
今後もさまざまな包装材料分野への展開を進めるとともに、環境負荷低減製品および機能性、意匠性を有する高付加価値製品を充実させてまいります。
インクジェットインクにつきましては、受託製品の獲得と自社製品の開発に取り組んでまいりました。受託製品では、できるだけ多くの新規獲得を目指しております。
自社製品につきましては、建材塗料代替となる外壁用・内壁用UVインクジェットインク、マーキング用や加飾用等の機能性UVインクも順調に推移しております。今後も機能性UVインクを中心とした開発に取り組み、さまざまな分野、用途において採用を目指してまいります。
当連結会計年度におけるインキ事業の研究開発費は
(化成品事業)
マスターバッチにつきましては、主力のポリオレフィン用カラー・添加剤マスターバッチに加え、汎用エンプラ用、バイオプラスチック用各種マスターバッチ製品の拡充、およびサステナブルな製品開発と環境規制への適合を重視し製品開発を進めてまいりました。これらの活動において、フッ素化合物PFAsの使用規制に対応するために非フッ素系加工助剤「プラヘルパー®」を上市しました。これにより、製品の持続可能性を高めることが期待できます。
また、製造プロセスの効率化とエネルギー消費の低減に貢献する、成型サイクル短縮に寄与するマスターバッチ「サイクルヘルパー」を上市しました。これにより環境負荷低減が期待できます。
さらに、既存のマスターバッチに加え、加工時の熱エネルギーを削減できる液体タイプのマスターバッチ「リキッドカラー HiFormer®」は、供給機に高度な制御技術を適用した専用の供給機システム開発により、成形品の品質安定性を向上させました。環境性能を求める顧客ニーズに沿ったシステムを開発することで、新規分野への拡販を継続して行ってまいります。
今後も環境負荷を低減する製品開発への取り組みを継続するとともに、更に外部環境変化に対応し、新規開発テーマの推進を掲げ事業領域の拡大により、目標利益獲得を目指します。脱プラスチックの動きにより縮小分野もありますが、引き続きシェアの拡大と戦略製品の開発を進めてまいります。
樹脂コンパウンドにつきましては、機能性製品の開発として、各種機能性フィラー等の分散検討に引き続き取り組み、分散・配合技術を駆使した生産技術を確立し、新たな製品開発を目指してまいります。
土岐クリーン工場のクリーン環境下における新製品立ち上げも継続して取り組んでおります。引き続き、差別化製品の確立に向けた量産試作を継続して行い、食品、医療、電子、エネルギー、光学フィルム関連材料を中心に、顧客との共同開発テーマを積極的に進めてまいります。
また、新たな生産プロセスとなる、自動化、省人力化に寄与できる生産技術の導入も進めてまいります。
東京インキ(タイ)㈱の工場につきましては、化成品事業の海外主力工場として、引き続き東南アジア市場でのニーズに応える製品開発を目指し、取り組んでまいります。
今後も生産・販売・技術が一体となり、マーケット情報を共有してニーズに沿った製品開発を進めてまいります。
当連結会計年度における化成品事業の研究開発費は
(注)HiFormer®はAVIENT社の登録商標です。
(加工品事業)
ネトロン®につきましては、水処理用資材の製品改良・開発を実施し、内製化による収益拡大を図り、安全な水の提供に貢献してまいりました。市場の拡大に伴い、生産設備1系列の増設を計画し、また生産に必要な金型の一部を内製化することを目指し、当期に加工機を導入いたしました。このように製品設計、金型作製、ネット試作、性能評価を一貫して実施できる環境が整い、トップメーカーとしての責務を果たすべく設計開発活動を継続してまいります。
土木資材につきましては、民間、公共工事の大型案件の順調な受注、災害復旧案件などの継続、再生エネルギー事業(太陽光発電、風力発電など)における市場拡大の中、これまで海外で生産していた土木資材の基軸製品であるジオセルの国内生産に取り組んでまいりました。今後の営業生産開始に向け、1工程で製品化できる設備を設計し、導入を進めてまいります。
農業資材につきましては、市場からのニーズが高い農業用ハウスに用いる遮熱資材、保温資材の開発を継続してまいりました。昨今の生産者はサステナビリティ対応もあり、化石燃料に依存しない栽培への対応のため、燃油対策事業など補助金を活用したハウスの高機能化を目指しております。当社の「エナジーキーパー®」「エナジークロス®」は、生産者のニーズと合致し、各補助金活用によりイニシャルコスト削減で普及拡大しつつあり、「エナジーキーパー®」を用いたエネルギー削減の取り組みは、農林水産省の「みどりの食料システム戦略」における基盤整備事業実施計画に認定され環境負荷低減に寄与してまいります。当期は農業用ハウスの内張カーテン資材としての遮熱シートと遮熱織物の開発を完了し、事業所内に設置してある小型ハウスや大学の試験農場で試験展張を実施してまいりました。得られた各種データを解析し製品改良を行い、来期からは農家の方々にも協力いただき製品評価を継続してまいります。これらの活動を通じて、環境負荷を低減し、食料の安定確保に貢献できる製品開発を継続してまいります。
当連結会計年度における加工品事業の研究開発費は
(その他)
当社の研究開発は、新製品開発、新規事業探索を目的に活動を行っております。当社の事業展開と共に獲得してきた基盤技術を基に競争優位性のあるコア技術を確立し、差別化製品の開発を進めております。サステナブル対応製品をキーワードに、今後成長が期待されるモビリティ領域、ヘルスケア領域、デジタルデバイス領域へ展開し、機能性材料の設計へとその活動範囲を徐々に広げております。
このような中、近年の自動車のEV化や自動運転に伴う電子機器類の熱対策、モーター等の産業用電気機器における放熱性の要求の高まりに対して、放熱材ギャップフィラーの製品開発に注力し、事業化に向け組織的な活動を行っており、ノンシリコーンタイプの2液硬化型ギャップフィラーの製品ラインアップが完成しました。また、コア技術として濡れ制御技術、微細化技術を駆使した開発においては、研究機関との共同研究開発により、金属ナノ粒子充填プラスチックシンチレータの開発が完成しました。医療用X線診断装置や一般X線分析装置等に搭載している検出器内の部材としてサンプル提供の環境を整えました。配合設計技術をコア技術とした取り組みでは、燃料電池用導電性インキの開発を行っており、商品化に向けた活動を継続しております。今後も従来の基盤技術を応用し研究開発の中で確立したコア技術を融合し、サステナブル対応製品の拡充を軸に新製品の開発を進めてまいります。
一方、既存製品の生産プロセスにつきましても「省力化」、「自動化」、「安全性」を考慮したモデルラインを構築中であり、新規生産プロセスおよび新規混練機の開発を行い、合理化された将来の生産ラインを検討しております。今後も液系混合プロセスラインを含め、新規プロセスの検討にも注力してまいります。また、当社グループ事業に関わる合理化の検討および生産コスト削減に寄与できるよう努めてまいります。
当連結会計年度におけるその他の研究開発費は236百万円であります。