第2【事業の状況】

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 中長期的な会社の経営戦略並びに会社の対処すべき課題

当社グループは、2022年4月に長期経営計画「Atelier2050」ならびに6ヵ年の中期経営計画「Vista2027」を始動しました。

 

Vista2027では、「新製品開発の更なる強化」、「事業計画の精緻化」、「業務効率の改善・強化」を課題として捉え、4つの基本戦略に基づき各種の施策を実行してきました。

 

第1の戦略「事業領域の深掘りとマーケティング力の向上」では、食品事業などで生じる廃棄物中の油脂を分解処理する、微生物製剤「ビーナスオイルクリーン」が、微生物死骸の不溶物や油脂が固形化したオイルボールを分解する機能も有することを新たに見出し、食品用途以外への提案を開始しました。需要拡大が期待される二次電池分野では、電気自動車向け二次電池で、その構成材料として当社製品が採用されました。

第2の戦略「サステナブル経営の推進」では、レスポンシブル・ケア活動の継続的強化として、2022年設置の気候変動対策委員会を中心に、気候変動対策に関する組織横断的な取り組みを進めております。2023年度は、GHG(温室効果ガス)排出量を費用として捉えるインターナル・カーボンプライシング(ICP)を活用した管理会計を開始しました。当社での設備投資計画の策定においては、損益に加え、GHG排出量の削減も考慮し、投資に対して総合的な経営判断を行う仕組みへと転換しました。また、サステナブル調達に関しては、サプライヤーに対するアンケート調査を実施する中で、当社が定める自主基準に未達の取引先に、改善の協力を仰いだ結果、基準未達企業数は減少しました。

第3の戦略「価値創造・共創プロセスの強化」では、人的資本経営の拡充に向けて、価値の創造・共創を促す基盤・環境づくりを推進しております。「誠実」という当社の強みを維持しながら、多様な人材が目標に向かって挑戦し、自己の成長を図る組織を実現するため、人材育成や環境整備を進めることを目的としています。具体的には、人材育成の強化として、職域別の人材開発会議およびキャリア対話を開始するとともに、イントラプレナー(企業内起業家)育成プログラムや10% Challenge(年間労働時間の10%を用い、通常業務外などのテーマ領域へ挑戦する仕組み)での取り組みを行いました。とくに、キャリア対話の中では、キャリア志向に配慮した人材の適正配置を推進し、生産性や定着率の向上を目指します。

第4の戦略「現有事業のシェア・利益の拡大」では、化学品セグメントは、高純度硫酸設備の増強工事が順調に進捗し、需要拡大に呼応する増販体制を構築しました。機能性材料セグメントは、視野角特性と色再現性に優れる光IPS(In-Plane Switching)式液晶ディスプレイ用配向材「レイアライン」が、スマートフォン、IT(情報技術)、そして車載向けで引き続き高い市場シェアを堅持しました。また、半導体向け前工程用材料を製造する韓国子会社NCK Co.,Ltd.の第2製造拠点が完成し、顧客承認用の製品製造を開始しました。農業化学品セグメントは、製品の供給体制強化のために設立したインド子会社Nissan Bharat Rasayan Private Limitedにおける殺菌剤「ライメイ」および殺虫剤「グレーシア」のプラントが稼働し、原体の出荷を開始しました。また、国内では、稲作農家を悩ませる難防除水田雑草に対し優れた効果を有する除草剤「ベルダー」の原体工場が完工しました。農薬登録を受け次第、販売をスタートします。ヘルスケアセグメントは、新たなジェネリック原薬のプロジェクトが本格始動し、当社による原薬製造に向けた協業先との技術協力合意に至りました。また、核酸創薬でも大きな進展があり、2024年4月の当社ニュースリリースのとおり、株式会社三和化学研究所との間で核酸創薬の戦略的提携に合意しました。当社の独自技術で設計された核酸化合物を、知見や経験の豊富な提携先が薬効および安全性評価を行うことで、新規医薬品の候補化合物創出を加速します。

 

上記のとおり、当社グループにおける中期経営計画は着実に進捗し、その成果は実を結んでいます。

 

一方、2023年度は、そのVista2027の前半3ヵ年となるStageⅠの2年目にあたりましたが、ある特定の事業や領域で計画に対する乖離がありました。財務指標では、4つの重要業績評価指標KPIのうち、3項目となる売上高営業利益率(目標20%以上)、配当性向(目標55%維持)および総還元性向(目標75%維持)は、いずれも目標を達成しましたが、自己資本当期純利益率ROEは目標18%以上に対し17%にとどまり、未達となりました。収益では、前期比減収減益となり、売上高や営業利益の最高値連続更新が途切れる結果となりました。これは、需要、原材料、為替など、著しい外的環境の変化や自然災害の影響に加えて、業績をけん引する事業の偏りや利益率向上に貢献する成長エンジンとなるべき新製品の創出の遅延によるものと、重く受け止めております。

2024年度は、Vista2027の後半3ヵ年となるStageⅡの計画を見直す年になります。当社グループが社会に選ばれ、求められる会社であり続けるため、StageⅠの乖離要因の解析や課題の抽出を徹底的に行い、戦略や施策、そしてその行動計画を丁寧に見直し、持続的成長に向けた計画を策定いたします。

 

当社は、企業理念である、「社会が求める価値を提供し、地球環境の保護、人類の生存と発展に貢献する」を事業活動の基本とし、コーポレートスローガンとして、「未来のための、はじめてをつくる。」を掲げ、変革する志のもと、新製品創出および事業拡大に注力しております。これからも、当社グループは、経営の健全性と透明性の向上、経営意思決定の迅速化、コンプライアンスの徹底、リスク管理や内部統制システムの強化を推進することで、すべてのステークホルダーから信頼される企業グループの実現に総力を挙げて取り組んでまいります。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、株主からの受託資本の運用効率を示す指標である「自己資本当期純利益率(ROE)」、高付加価値企業としての指標となる「売上高営業利益率」を最重要指標と認識し、今後も収益力の一層の強化に向けた事業展開を推進してまいります。

自己資本当期純利益率(ROE)につきましては、2022年4月に始動した中期経営計画「Vista2027」のStageⅠにおいて2022年度以降は18%以上を維持することを目標としております。

なお、2022年4月に始動した中期経営計画「Vista2027」では、重要業績評価指標(KPI)を以下のように定めております。

 

財務指標(2022年~2027年)

売上高営業利益率

20%以上

自己資本当期純利益率(ROE)

18%以上

配当性向

55%維持

(2021年度44.9%から引き上げ)

総還元性向

75%維持

 

 

非財務指標(2027年)

日産化学サステナブルアジェンダ

(社会課題解決に貢献する製品・サービスの合計売上高/全体売上高)

55%以上維持

GHG排出量の削減

2018年度比30%以上

(2030年度目標を3年前倒し)

社員意識調査の人材育成に関する質問への肯定回答率

65%以上

研究所女性総合職比率

18%以上

 

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ推進体制

当社グループは、「社会が求める価値を提供し、地球環境の保護、人類の生存と発展に貢献する」を企業理念としています。この企業理念に基づき、2050年のあるべき姿「人と自然の豊かさを希求し成長する未来創造企業」「強い情熱で変革に挑む共創者集団」を定めた長期経営計画『Atelier2050』を策定し、「事業領域の深耕と拡大」「サステナブル経営の深化」「経営・業務基盤の変革」を基本戦略として進めています。また、『Atelier2050』に定めたあるべき姿へ至る通過点として、2027年の姿を示し、持続的成長の道標とする中期経営計画『Vista2027』を策定し、その達成に向けた基本戦略の1つとして、サステナブル経営を推進しています。

 

①ガバナンス

当社グループは、企業理念の実践であるサステナビリティ活動をより一層充実させるために、「社会動向に合致したサステナビリティ戦略の立案と社内啓蒙ならびに情報の発信」をミッションとするサステナビリティ・IR部サステナビリティグループを設置しています。また、グローバルな社会課題により戦略的に取り組むため、サステナビリティグループを事務局とし、部門担当役付執行役員をメンバーとするサステナビリティ委員会を年2回定期的に開催し、サステナビリティに関する方針、マテリアリティの選定、長中期計画および年次計画、活動結果の評価および評価に基づく改善および検討すべき課題について審議しています。審議の結果は経営会議の承認を経て、取締役会に付議されます。

サステナビリティ推進体制として、サステナビリティ委員会のほか、気候変動対策委員会、リスク・コンプライアンス委員会、環境安全委員会、品質保証委員会を設置し、各委員会で審議した内容について取締役会で議論し、決議することで、取り組みを監督しています。

 

 

 


 

②リスク管理

リスク管理活動全般について継続的改善を推進する専門組織として、経営企画部リスク・コンプライアンス室を設置しています。また、リスクマネジメントの実効性をより高めるとともに、コンプライアンスを維持向上、推進するための機関として、リスク・コンプライアンス委員会を設置し、年2回定期的に開催しています。

リスク・コンプライアンス委員会は取締役会が指名するCRO(チーフ・リスクマネジメント・オフィサー)を委員長とし、CROが指名する各部門、箇所および国内連結子会社のリスク・コンプライアンス責任者から構成されています。

部門の事業特性やグローバルな政治・経済・社会情勢等、ビジネスを取り巻く環境を考慮して、リスク・コンプライアンス委員会の枠組みのなかで気候変動関連リスクを含むリスクの洗い出しを実施しています。洗い出したリスクについて、発生可能性と事業への影響度の観点からリスク評価を実施したうえで、リスク評価結果に基づくリスクマップを作成し、「グループ重要リスク」を選定しています。

「グループ重要リスク」やその対策等、リスク管理に関する重要事項については、リスク・コンプライアンス委員会で審議し、取締役会で決議されます。

 

③戦略

<マテリアリティの見直し>

長期経営計画『Atelier2050』にて定めた、2050年のあるべき姿「人と自然の豊かさを希求し成長する未来創造企業」「強い情熱で変革に挑む共創者集団」を実現するため、取り組むべきマテリアリティを2022年度に見直しました。その結果、「人々の豊かな暮らしに役立つ新たな価値の提供」「自社の事業基盤の強化」「レスポンシブル・ケア活動の継続的強化」の3つのマテリアリティに分類される、20のマテリアリティ要素を特定しました。社会と当社グループの持続的発展を目指し、中期経営計画『Vista2027』で設定した2027年度までのKPIをサステナブル経営の指標として、その進捗を毎年管理しています。

 

<マテリアリティ特定プロセス>


 


 

 

④指標と目標

<マテリアリティへの取り組みとKPI>


※GHG排出量および産業廃棄物・汚染物質最終処分割合については、2022年度の実績を記載しております。2023年度の実績については2024年夏頃に当社webサイトにて掲載予定です。

 

 

(2)気候変動

①ガバナンス

深刻化する気候変動問題が与えるリスク・機会を的確にとらえ、より強く経営戦略に結びつけ包括的な気候変動対策を強化するため、独立した組織として取締役社長を委員長とし、各事業部、企画本部、購買部、経営企画部、サステナビリティ・IR部、財務部、生産技術部、環境安全・品質保証部の部長を委員とする気候変動対策委員会を2022年6月に新たに設置しました。

本委員会は年1回定期開催のほか、必要に応じて開催され、気候変動に関するリスク・機会の分析、方針・目標・計画検討を行っています。経営会議の承認を経て、以下の事項については取締役会に付議されます。

・シナリオ分析と対策

・気候変動対策に特化した長中期計画、年次計画 

 

②リスク管理

「(1)サステナビリティ推進体制 ②リスク管理」をご参照ください。

 

③戦略

TCFD提言では、気候変動に起因するリスク・機会が企業の財務にどのような影響を及ぼすかを把握するため、シナリオ分析*を行うことを求めています。

当社は2020年に、脱炭素社会への移行が実現する2℃シナリオ(移行リスクが顕著)と気候変動が進展する4℃シナリオ(物理的リスクが顕著)における事業リスク・機会の選定、重要性の検討を行い、当社への影響と戦略等について整理しましたが、2021年に行われた国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において、平均気温の上昇を1.5℃に抑える努力を追求することが合意されたことをうけ、2023年7月にシナリオ分析の見直しを実施しました。

1.5℃シナリオを用いたシナリオ分析・財務影響の定量化を行った結果、カーボンプライシング導入による操業費の増加、低炭素製品を提供できないことによる売上減少などを重要なリスクとして特定しました。カーボンプライシング導入やライフサイクルCO2排出量の多い製品の需要減少に対しては、これまで取り組んできた工場の原燃料転換や再生可能エネルギーの導入を一層推進するとともに、インターナルカーボンプライシングの活用によりGHG排出削減を考慮した脱炭素投資をさらに推進し、リスクの低減を図ります。

また、環境配慮要請の高まりに伴うマーケットの変化を、環境への影響が小さい農薬や生物農薬、および二次電池材料などの低炭素製品の需要が拡大する機会と考えています。生物農薬については、2022年4月に生物科学研究所農薬研究部にバイオロジカルグループを立ち上げ、事業化に向けて研究開発を進めています。また、環境エネルギー分野において、二次電池材料や環境発電材料、CCS・CCUS材料の開発を加速し、実需化を目指します。

一方、4℃シナリオにおけるリスクとして認識している水害リスクについては、主要な生産・物流拠点の浸水の可能性を重要リスクとして特定しました。本リスクに対しては、工場および主要製品のBCPの策定および随時見直し、工場設備の高基礎化/高フロア化や、製品在庫の確保、重要原料の複数購買などを引き続き行っていきます。

また、気温上昇・異常気象に伴うマーケット変化において、害虫・雑草などの増加、水不足や感染症の拡大により、農業化学品や、飲料水などの殺菌消毒剤などの需要が増大すると考えています。

市場成長の見通しを踏まえ、当社の機会の拡大を目指します。さらに、気候変動の影響を受けにくい事業ポートフォリオを構築することで事業活動のレジリエンスを高め、リスクの最小化・機会の最大化に努めます。

 

*シナリオ分析/地球温暖化や気候変動そのものの影響や、気候変動に関する長期的な政策動向による事業環境の変化等にはどのようなものがあるかを予想し、その変化が自社の事業や経営にどのような影響を及ぼしうるかを検討するための手法。

 

 

●参照したシナリオ

1.5℃シナリオ*1

4℃シナリオ*2

・IEA-WEO*3 ETP*4 ネットゼロシナリオ(NZE)

・IEA-WEO 公表政策シナリオ(STEPS)

・IPCC SSP 5-8.5

・IPCC SSP*5 1-1.9, 1-2.6

 

*1 産業革命以前と比較して、気温上昇を1.5℃以下に抑えるために必要な対策が講じられた場合のシナリオ

*2 産業革命以前と比較して、21世紀末に世界の平均気温が4℃上昇するシナリオ

*3 国際エネルギー機関「World Energy Outlook」(2022)

*4 国際エネルギー機関「Energy Technology Perspectives」(2023)

*5 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「Shared Socio-economic Pathway」

 

 

分析対象範囲および分析対象期間

●分析対象範囲:化学品・機能性材料・農業化学品・ヘルスケア・企画本部

●分析対象期間:2030年および2050年

 

●リスク・機会の特定プロセス

Step1

バリューチェーンやステークホルダーを明確化し、当社事業に影響を及ぼす要因を整理

Step2

上記シナリオやその他外部情報に基づくリスク・機会の洗い出しを実施

Step3

洗い出したリスク・機会から、発生の可能性、事業へのインパクト(人的損失、財務的インパクトなど)を踏まえ、特に重要なリスク・機会を特定

 

 

④指標及び目標

当社グループは、「気候変動の緩和」をマテリアリティ要素のひとつと位置づけており、GHG(Scope1+2)排出量の約95%を占める日産化学本体の排出量削減が気候変動関連リスク低減に重要であると考えています。このため、日産化学本体のGHG(Scope1+2)排出量削減の長期目標として「2050年カーボンニュートラル」、中期目標として「2027年度までに2018年度比30%以上削減」を掲げています。これらは、長期経営計画『Atelier2050』、および中期経営計画『Vista2027』の非財務目標として位置づけ、進捗を管理しています。また、本削減目標に対する達成度は、役員の業績報酬のESG連動部分に反映する仕組みとしています。

富山工場における天然ガスへの燃料転換、2017年度に実施した硝酸設備能力の適正化工事による反応器からの一酸化二窒素(N2O)の発生量の抑制、設備の能力向上、老朽化設備更新等による省エネルギー化などにより、GHG排出量を着実に減らしています。2021年度はアンモニア系製品の生産量増加などに伴い2020年度より増加しましたが、2022年度は硝酸プラントトラブルなどによる排出量の増加の一方で、メラミン製造停止や小野田工場ボイラー燃料転換などにより排出量が減少した結果、2021年度より減少しました。

当社はGHG排出量およびエネルギー消費量について、2018年度分から第三者検証を受審しており、今後も引き続きGHG排出量削減の取り組みを進め、環境負荷低減を推進していくとともに、信頼性の高い情報の開示に努めていきます。

 

●レスポンシブル・ケア中期計画(2016-2021年度)中期目標および長期目標

カテゴリ

指標

対象範囲

2027年度目標

2050年度目標

GHG排出量

Scope1+2排出量

総量

単体

2018年度比30%以上削減

カーボンニュートラル

 

 

 

●気候変動関連データ

 

範囲

単位

2018

2019

2020

2021

2022

目標

(目標年)

Scope1

単体

t-CO2e

245,469

221,264

216,276

231,713

223,388

Scope2

単体

t-CO2e

117,926

105,390

102,182

113,623

104,275

Scope1+2

単体

t-CO2e

363,395

326,654

318,458

345,336

327,663

254,377

(2027)

GHG排出量原単位*1

単体

t-CO2e/

2.33

2.04

1.96

2.03

1.79

(Scope1+2)

100万円

Scope3*2

単体

t-CO2e

703,562

767,799

763,007

803,461

885,046

エネルギー原単位*3

単体

*4

82.8

70.8

67.9

72.6

63.3

Scope1

連結*5

t-CO2e

253,785

228,791

220,243

238,958

230,424

Scope2

連結*5

t-CO2e

128,647

116,724

116,516

124,663

115,893

Scope1+2*6

連結*5

t-CO2e

382,432

345,514

336,759

363,621

346,316

Scope1+2 の連結に

 

%

95.0

94.5

94.6

95.0

94.6

占める単体の割合

*1 排出量/売上高

 

 

 

 

 

 

 

*2 カテゴリ別データ:https://www.nissanchem.co.jp/csr_info/index/esg_data.html

 

*3 エネルギー使用量/売上高

 

 

 

 

 

 

*4 2013年度を100とする

 

 

 

 

 

 

*5 日産化学本体および、製造施設を有する連結子会社(日本肥糧、Nissan Chemical America Corporation、NCK Corporation)

*6 四捨五入の関係で、上段のScope 1, Scope2 の和と一致しないところがあります。

なお、2023年度の実績については2024年夏頃に当社webサイトにて掲載予定です。

 

 

 

(3)人的資本に関する考え方

「社会が求める価値を提供し、地球環境の保護、人類の生存と発展に貢献する」という企業理念のもと、当社が「未来創造企業」として成長し、社会とともに発展するためには、事業基盤である人的資本の拡充が最重要課題の一つです。長期経営計画「Atelier2050」においては、2050年のあるべき組織の姿を「強い情熱で変革に挑む共創者集団」と定め、社員の基本姿勢を「誠実を力に」「志で踏み出す」「協働を超えた共創へ」の3つとしました。「誠実」という当社の強み・アイデンティティを維持しながら、多様な人材が目標に向かって挑戦し、自己の成長を図る組織を実現するため、当社は人材育成や環境整備に向けて様々な取り組みを行っています。各取り組みに対しては、中期経営計画「Vista2027」StageⅠ最終年度である2024年度を通過点とし、定量的目標を定めて人的資本経営を推進していきます。

 

<各取り組みの位置付け>


 

「人材育成に関する取り組み」

1) 価値向上に「挑戦」し続ける牽引人材の輩出

当社が今後も継続的な成長を続けるためには、価値向上に繋がる改善や提案を、「志(内発的動機)」に基づき、主体的に考え、自ら挑戦することで事業を牽引する人材を輩出することが課題であると捉えています。そのために、課長・係長相当職への昇格前研修では、新たな事業・製品・サービスを発想し、周囲を巻き込むリーダーシップを発揮しながら、数か月かけて検証・軌道修正する仮説検証型研修を実施しています。

また、2023年度より、各人が志に基づく判断で、通常業務の領域外や、部門方針では明示されていない領域等のテーマへの挑戦に対し、年間労働時間の10%を充てて取り組むことができる仕組みとして「10%Challenge」を新たに導入しました。成果の有無にとらわれず挑戦を楽しむ文化の醸成や、新しいことに挑戦する経験を通じて自身の可能性を広げることを期待しています。

加えて、各工場においては、ほぼ全ての操業員等が参加し、毎年改善活動を実施するAi運動(1978年にスタートした、当社独自の小集団活動をベースとする改善提案活動)を推進しています。現場起点で価値向上に繋がる改善を継続するスタンス、前例にとらわれない提案力の向上を目指します。

指標

実績(2023年度)

目標(2024年度)

挑戦に関する従業員意識調査肯定回答者割合

71.0%

70.0%

 

 

 

2) 領域を超えた「共創」人材の輩出

社会課題解決に貢献するための新たな製品・サービス、技術の種を継続的に生み出していくには、自らの領域(技術、部門)に閉じることなく、境界を越えた連携をすることによって、新たな価値を「共創」できる人材を輩出することが課題と捉えています。仮説検証型研修、10%ChallengeおよびAi運動などにおける共創テーマ提案数の増加を図ります。

また、自社技術の新たな獲得、価値向上、および展開に向けて、社外関係者を巻き込み共創できる状態を目指し、他社との共同研究・共同特許出願や、社外への人材の出向・転出・輩出など、一つの領域に固執しない、境界を越えた連携を促進していきます。

指標

実績(2023年度)

目標(2024年度)

共創テーマ提案数

144

160

 

 

3) ビジネスのポテンシャルを見極め実需化する「目利き」人材の輩出

次世代の成長の源泉となる新製品・サービスを育成するには、市場ニーズを踏まえながら、代替が利かない「Must-Have」な製品ニーズを見出し、そのバリューチェーンの成長性も見据えた「目利き」のできる人材を輩出することが課題であると捉えています。「目利き」人材を輩出するため、起業家の持つ能力の開発と社内起業家の育成を目的としたイントラプレナーシッププログラムを実施しています。社内起業家としての行動スキルの実践、情報収集・仮説検証を短サイクルで繰り返すことで、有望テーマを磨き上げ、イノベーターとしての行動の体得を目指します。

また、研究・製造・営業といった職域を横断する人事ローテーションを積極的に実施することにより、研究職・技術者が顧客と直接対話する機会をできる限り設け、技術起点だけでなく顧客・市場・社会課題起点でビジネスを見定める力を育てます。

 

 

「社内環境整備に関する取り組み」

4) 個人の意志が尊重される『多様性』ある風土づくり

価値向上に「挑戦」し続ける人材を育成するためには、ともに働くすべての人の多様性が尊重され受け入れられると同時に、その多様な個人が有する意志(異見)を交わすことができる風土づくりが課題であると捉えています。従業員と人事担当役員が直接対話できる機会の設置や、個々の個性を生かし仕事に対するやりがいを育むよう、キャリアプラン構築のためのキャリア対話を全従業員が年1回以上実施しています。さらに従業員一人ひとりのライフスタイルに合わせた働き方を推進するため、フレックスタイムや時間単位年休など、様々な制度を導入しています。

指標

実績(2023年度)

目標(2024年度)

多様性・キャリアプランに関する従業員意識調査肯定回答者割合

66.0%

70.0%

 

 

5) 企業理念への理解・共感を生む風土づくり

社会課題解決に貢献し、当社が社会と共に成長するためには、一人ひとりの従業員が企業理念と「生きがい」とを重ね合わせ、事業活動の根幹である企業理念への共感度を高めていくことが課題であると捉えています。個々の従業員が、企業理念・ビジョンの実践に貢献しているという実感を伴って働くことができる風土を醸成するため、サステナビリティ・IR社内説明会の開催や、社長自らが毎年各拠点を訪問し、従業員への講話や直接対話の機会を設けるといった取り組みを進めています。

指標

実績(2023年度)

目標(2024年度)

企業理念への共感度に関する従業員意識調査肯定回答者割合

64.9%

70.0%

 

 

6) 従業員の心身の健康推進

当社は、従業員の心身の健康を「健全な企業の成長を支える基盤」と考えており、その健康の維持・増進を目的に様々な施策を実施しています。具体的には、高ストレス者割合の低下、適正体重者(BMI(肥満度)指数が18.5以上25.0未満)70%以上、年次有給休暇取得率80%以上を目指し、定期健康診断の受診の推進、ストレスチェックの実施、全従業員対象の健康管理能力向上セミナーの実施などの取り組みを進めています。

また、レスポンシブル・ケアマネジメントシステムを通じて、労働災害の防止、労働者の健康増進、快適な職場環境の形成につとめ、各事業所の安全衛生レベルの向上を図っています。

これらを含む取り組みの結果、プレゼンティーイズムによる生産性損失低減や、「ホワイト500」等、健康経営に関する総合的、客観的認証取得を継続することを目指します。

指標

実績(2023年度)

目標(2024年度)

高ストレス者割合

7.8%

7.0%以下

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 体制
 リスクマネジメント活動全般について継続的改善を推進する専門組織として、経営企画部リスク・コンプライアンス室を設置しています。また、リスクマネジメントの実効性を高めるとともに、コンプライアンスを維持向上、推進するための機関として、リスク・コンプライアンス委員会を設置し、年2回定期的に開催しています。
 本委員会は取締役会が指名するCRO(チーフ・リスクマネジメント・オフィサー)を委員長とし、CROが指名する各部門、箇所および国内連結子会社のリスク・コンプライアンス責任者から構成されています。リスク・コンプライアンス責任者は、定期的に、リスクの洗い出し・評価・対策計画立案、リスク対策実施状況、課題の自己評価、改善案の策定を行う他、計画的に各部門、箇所および国内連結子会社にて教育、訓練等を行います。

 リスクマネジメントに関する重要事項、対策計画等は本委員会の審議を経て、取締役会で決議します。

 

(2) リスクアセスメント
 各部門の事業特性やグローバルな政治・経済・社会情勢等、ビジネスを取り巻く環境を考慮してリスクを洗い出し、各部門、各箇所および国内連結子会社のリスク・コンプライアンス責任者からの意見集約などを通じて、発生可能性と事業への影響度を評価、その後当社取締役へのヒアリングを実施した上で、リスクマップを作成し、「グループ重要リスク」を選定しました。その内容はリスク・コンプライアンス委員会での審議を経て、取締役会で決議しています。


(3) グループ重要リスク
 当社グループの経営成績、財政状態等につき、投資者の判断に重大な影響を及ぼす可能性のある事項は以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、以下に記載したリスクは主要なものであり、これに限られるものではありません。

1) 事業ポートフォリオ戦略の失敗
①化学品事業部
 工業薬品類などの基礎化学品をさまざまな産業に提供する一方で、先端分野に対応する製品の生産・供給にも努めており、限界まで不純物を除去した高純度薬品、さらには電子材料用途で需要が伸びていますシアヌル酸由来の高機能化学品などを市場に投入しています。
 これら製品は、天然ガスを出発原料とするアンモニアの誘導品であることから、原燃料価格の影響を受けるほか、中国市況等の変化により、世界の需給バランスが崩れ、当社販売にも影響が波及する可能性があります。
 また、IoT、AIなどのデジタル技術導入による工場保全技術の高度化に努めてまいりますが、近年、設備老朽化に伴うプラントトラブルが発生し、一定期間の操業停止および損失が生じています。

②機能性材料事業部

 「ディスプレイ材料」「半導体材料」「無機コロイド」事業を通じて、スマート社会の実現に貢献しています。

 ディスプレイ材料は、液晶分子を一定方向に揃えるための配向材を主幹材料とし、現在は主にスマートフォン、タブレット向けに供給していますが、今後はTVなどの大型ディスプレイ向けにも展開してまいります。一方で、液晶より薄型軽量で高速応答などの特長を有し、フレキシブル化などの意匠性にも優れた有機ELが、スマートフォン、高画質・大型のテレビなどに採用されるケースが増えてきました。当社は、有機EL関連材料、有機ELに続く次世代自発光ディスプレイ向け材料の開発も進めておりますが、開発状況、企業間競争の激化などによっては、採用未達となるおそれがあります。

 半導体材料は、光照射によりフォトレジストを微細加工する際に、光の乱反射や干渉、塗布不良などのトラブルを防止するコーティング材料からスタートし、半導体回路幅のさらなる微細化に対応する材料を開発、現在はEUV(極端紫外線)露光技術の実需化、微細化の限界に備え、それぞれEUV用材料、三次元実装用材料にも注力しています。しかし、開発状況、企業間競争の激化などによっては、採用未達、シェア喪失のおそれがあります。無機コロイドは、ナノシリカの水分散液を販売して以来、現在では有機溶媒分散液、無溶剤で使用できる製品を提供し、光学フィルムのコーティング材、電子記録媒体の研磨剤などに使用されています。最近では、シェールオイル・ガスの採掘効率向上剤などへの用途展開を図っておりますが、原油価格の変動によりシェールオイル需要に変化が生じ、当社剤の販売にも影響が及ぶ可能性があります。

③農業化学品事業部

 新規薬剤の探索から開発・製造・販売までの一貫した事業活動と、他社剤の買収や共同開発による幅広い製品ラインアップの拡充を通じて、安定した食料の供給に貢献しています。2018年には殺虫剤を上市・発売、2019年、2020年には殺菌剤を他社より買収し、製品ポートフォリオを充実させました。また、農業用殺虫剤の開発を進めるなかで、農作物の害虫だけでなく、イヌ・ネコに寄生するノミ・マダニの駆除にも効果がある化合物を発見し、動物用医薬品分野にも進出しました。現在は殺虫剤・水稲用除草剤の開発、次製品の研究を続けています。増加する原体ラインナップ・需要増に対応すべく、生産・供給にまつわる各種対策を実施しておりますが、完了までに時間を要した場合、一時的に販売機会を逸する可能性があります。

④ヘルスケア事業部

 当社化合物を原薬とする高コレステロール血症治療剤は、現在世界30ヵ国で承認を受け販売されていますが、国内の物質特許が2013年8月に満了となり、ジェネリック医薬品によるシェア低下、薬価改定の影響を受け、国内では厳しい状況が続いています。新薬創出が急務となっているなか、低分子医薬ではAIの活用に取り組むとともに、核酸医薬に注力、さらにはヘルスケアという総合的な視点で、生体界面制御材料や化粧品材料などの医療材料の実需化や拡販を進めます。また、顧客のニーズに合わせて医薬品原薬開発をトータルにサポートする課題解決型受託事業および共同開発型事業では、海外でのビジネスおよびペプチド事業への展開を図ります。しかし、自社創薬の成果獲得には研究開発費と時間を要することから、その結果次第では、中長期的に経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

2) 新製品の開発、外部の技術革新
 当社グループは、これまで培ってきた「精密有機合成」「機能性高分子設計」「微粒子制御」「生物評価」「光制御」の5つのコア技術に、「微生物制御」、「情報科学」という新技術を育成することで、「情報通信」「ライフサイエンス」「環境エネルギー」「素材・サービス」の事業領域で、社会課題の解決に貢献すべく、新製品の開発を積極的に進めています。新製品の開発には、高度な技術と多くの資金、人的資源が必要であり、長い時間を要します。当社では、近年、年間売上高の7~9%を研究開発費に投じるとともに、総合職人員の約40%を研究に従事させるなど、研究開発に経営資源を傾斜配分、さらには最新技術情報を踏まえた研究テーマの設定、定期的評価に基づく継続または改廃などを行っておりますが、当社がターゲットとする市場環境や技術動向の急激な変化が生じ、開発の成否、ひいては経営成績および財務状況に影響を受ける可能性があります。

 

3) 原料調達、製品供給
 当社は、原料および資材の調達に関する方針(購買方針)を定め、重要な原料、中間体、製品の製造などを委託する際は事前に、またその他新規および既存のサプライヤーに対しても必要に応じ、サステナビリティ調査票への回答を求め、当社の基準を満たす企業との取引を優先的に進めるとともに、取引先に対する啓蒙・改善活動を行っています。

 さらに、国内外のサプライヤーおよび業務委託先を訪問監査し、サステナブル活動、とくに、環境・健康・安全(EHS)への取り組みを詳細に確認し、サステナブル調達の推進を図るなど、コスト・品質等を考慮の上、安定的な調達先の確保に努めております。しかし、高度な技術により合成された化合物など、供給元が限定されている原料があることに加え、中国をはじめ、海外からの輸入に頼る原料もあり、何らかのトラブル、調達先所在国における突如とした法規制の強化等により、調達先からの供給が滞った場合、製品の安定的な製造・販売体制に支障をきたし、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4) 法的規制、法令違反
 当社グループは、事業の特性上、化学物質の取り扱いに関する国内外の法令等により規制を受けています。近年の環境問題、生体への影響に対する世界的な意識の高まりなどから、各種規制はますます強まる傾向にあり、現行規制の改正や強化等がなされた場合、事業活動が制限される、その対応のための費用を要する、あるいは当該製品が対象国にて販売できなくなるなど、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループでは、コンプライアンスを法令および広く社会規範に従うことと認識し、コンプライアンス規則を策定し、コンプライアンス基本方針を定めています。さらに、内部通報制度を設置し、コンプライアンス違反の未然防止、早期解決のための体制を整えるとともに、役員・社員等に対し、各種研修、コンプライアンスマニュアルの周知などを通じて、知識向上、啓蒙に努めておりますが、法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動等を取った場合、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受ける可能性があります。
 

5) 労働災害、事故災害、自然災害
 当社グループは、化学物質の開発から製造、物流、使用、最終消費を経て廃棄・リサイクルに至る全ての過程において、自主的に「環境・健康・安全(EHS)」を確保し、活動の成果を公表し社会との対話・コミュニケーションを行うレスポンシブル・ケア(RC)活動に、取り組んでいます。

 RCマネジメントシステムを通じて、化学製品の研究開発、製造、販売、変更などに至る各段階で、リスク評価(事前評価)を実施し、その結果に基づき、法規制順守対応、製造現場での作業者ばく露低減のための設備改良、作業方法の改善、手順の明確化・文書化や教育訓練などの適切な対策を講じるなど、労働災害の防止、労働者の健康増進、快適な職場環境の形成に努め、各事業所の安全衛生レベルの向上を図っています。また、安全確保と安定操業、保安力向上を目指し、製造事前評価によるリスクの洗い出し、プロセスKY(危険予知)、設備KYを実施し、必要な設備投資を行うとともに、毎年の各種訓練等を通じ、緊急時あるいは事故発生時に確実な対応が取れるように備えております。

 地震をはじめとする自然災害に対しては、工場および主要な事業拠点を対象に災害対策、事業継続計画(BCP)を策定しており、今後も強化と充実を図ってまいります。

しかしながら、不測の大規模地震や台風等の自然災害による生産設備への被害、工場における事故、輸送・外部保管中の事故等により、工場の操業や顧客への供給に支障が生じることで、当社グループの信用、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

6) 製品品質
 当社グループは、各工場で品質マネジメントシステムの認証取得および維持・更新を行うとともに、製造部門とは独立した品質保証部門の設置、顧客の商品に関する声(苦情情報)を迅速に収集、評価し、必要な是正を実施するための社内ネットワークを構築するなど、品質保証体制の確立に努めています。また、昨今大きな社会問題となりました品質管理に関わる不正・改ざんに対しても、防止ガイドラインを策定・運用を開始、監査を実施し、潜在リスクが発見された場合は改善を行ってきました。しかし、製造・輸送・保管等の過程において予期せぬトラブルが発生、品質への影響が生じ、顧客または当社材料が使用された製品ユーザーにて人的・物的損害が起こった場合、損害賠償請求を提起され、経営成績および財務状態のみならず、当社グループへの社会的信用が失墜し、事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
 
7) 知的財産
 当社は、研究成果と知的財産が事業の根幹であるとの考えのもと、知的財産権保護は極めて重要な経営課題と認識し、知的財産の取得にとどまらず、訴訟による権利行使も実施しています。当社は国内外で事業を展開し、世界各国で特許を出願・申請、取得していることから、グローバルに知的財産の権利確保を図り、侵害を監視する体制を強化しております。

 しかし、他社との間で知的財産を巡って係争が生じた場合や、他社が当社の知的財産権を侵害した場合において、当事者間での和解交渉、法定での係争結果次第では、賠償金の支払いや売上計画の見直しを余儀なくされ、経営成績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

8) 情報セキュリティ
 当社グループは、研究開発、生産などに関する機密情報、販売促進等に用いるお客様の個人情報を保有しています。また、将来的に予想される労働力不足に備え、IoT、AIなどのデジタル技術を工場に導入することで、生産性の引き上げ、保全体制の確立を進めています。

 当社グループでは、情報管理規則、各種ガイドラインを定めるとともに、定期的な研修を実施して社員のセキュリティ意識を高めるなど、ハード、ソフト双方のセキュリティ対策を実施しておりますが、外部攻撃、不正アクセス、コンピューターウィルスの感染等により、制御系・基幹システムの障害、保有する機密情報・個人情報の漏洩が発生した場合、当社グループへの信用、経営成績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 
9) 人材確保
 当社グループでは、多様化・高度化する市場の要求への対応力を高めるために、研究開発力の強化や製品品質の向上に取り組むとともに、多様で優秀な人材の確保・育成や働きやすい職場づくりなどの取り組みを通じて、事業基盤の強化を目指しています。
 人材開発の本質は「社員一人ひとりが自発的に自己研鑽を積み、自己の成長を図ること」にあるとの考えのもと、望む社員のために、さまざまな人材育成制度を整備しています。
 また、多様な人材が、生産性の高い働き方を実現し、仕事と生活の調整(ワーク・ライフ・バランス)を図るとともに、職場で多様な意見を発信し、才能を最大限に発揮できるよう、各種取り組みを推進しています。
 しかしながら、雇用情勢の悪化等により、必要な人材を確保できない場合、経営成績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

10) 海外展開
 当社グループは、各事業分野において、アジア、欧州、北米などを中心に世界各地に生産・販売拠点を設け、より市場に密着した形での事業展開を進めていることから、進出先の政治、経済、社会情勢の変化などにより、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 また、各拠点において有効な内部統制システムの構築に努めているものの、従業員等の悪意あるいは重大な過失による行為、もしくはシステムが十分に機能しなかったことに伴い、将来的に法令違反等の問題が発生し、行政処分による課徴金、刑事・民事訴訟による罰金、損害賠償金等の支払いに加え、当社グループへの社会的信用が失墜し、事業に悪影響が生ずる可能性があります。

 

11)気候変動
 気候変動の深刻化に伴い、同変動による事業活動への影響について、投資家等ステークホルダーからの関心が高まっています。当社は、パリ協定を支持するとともに、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同、インターナルカーボンプライシングを導入し、温室効果ガス(GHG)排出削減および省エネルギー化を考慮した脱炭素投資をさらに推進するとともに、異常気象の増加により工場やサプライチェーンが影響を受けることも想定し、主要製品のBCPの策定、BCPの随時見直しおよび重要原料の複数購買等を実施しています。

 しかし、当社グループが事業展開する各国において、GHG排出規制が導入された場合、また当社グループの拠点がある地域にて気候変動による自然災害が増加した場合、経営成績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)の国内景気は、円安を追い風とするインバウンド需要が増加したほか、年度前半では個人消費や自動車の輸出が回復基調を示しましたが、期末に向けて、個人消費が低迷したことに加え、自動車減産等が影響し、回復は限定的となりました。このような状況のもと、当社グループの事業につきましては、化学品セグメントは、基礎化学品、ファインケミカルともに減収となりました。機能性材料セグメントでは、半導体材料は減収となりましたが、ディスプレイ材料が好調でした。農業化学品セグメントは、増収となりました。ヘルスケアセグメントは、減収となりました。

この結果、当期間における業績は以下の結果となり、売上高、各利益ともに前年同期を下回りました。11月に発表した業績予想に対しては、経常利益は上ぶれたものの、売上高、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益は下ぶれました。

 

(単位:百万円、百万円未満切捨て)

 

2023年3月期

(実績)

2024年3月期

(実績)

前年比増減

 

2024年3月期

(業績予想)

業績予想比

増減

売上高

228,065

226,705

△1,360

 

227,500

△795

営業利益

52,283

48,201

△4,081

 

48,600

△399

経常利益

55,793

51,629

△4,164

 

51,300

+329

親会社株主に帰属する

当期純利益

41,087

38,033

△3,053

 

38,400

△367

 

 

セグメント別概況は以下のとおりであります。

 

化学品セグメント

基礎化学品では、硝酸製品(金属溶解・表面処理剤等)が増収となりました。メラミン(接着剤等)は、構造改革に伴い昨年度第3四半期に販売を終了した結果、減収となりました。ファインケミカルでは、環境化学品(プール・浄化槽用殺菌・消毒剤等)と「テピック」(粉体塗料硬化剤、封止材等)が、市況下落の影響を受けて減収となりました。

この結果、当セグメントの売上高は355億62百万円(前年同期比34億71百万円減)、営業利益は48百万円(同13億30百万円減)となりました。業績予想比では、売上高は30億円、営業利益は8億円の下ぶれとなりました。なお、基礎素材であるアンモニアの生産量は前連結会計年度を下回りました。

 

機能性材料セグメント

ディスプレイ材料では、「サンエバー」(液晶配向材用ポリイミド)が増収となりました。半導体材料では、半導体用反射防止コーティング材(ARC®*)及び多層材料(OptiStack®*)が顧客の稼働低調を受けて減収となりました。無機コロイドでは、「スノーテックス」(電子材料用研磨剤、各種表面処理剤等)やオイル&ガス材料(シェールオイル・ガス採掘効率向上材)が減収となりました。

この結果、当セグメントの売上高は845億67百万円(前年同期比19億61百万円増)、営業利益は225億30百万円(同29億19百万円減)となりました。業績予想比では、売上高は1億円の上ぶれ、営業利益は8億円の下ぶれとなりました。

* ARC®、OptiStack®はBrewer Science, Inc.の登録商標です。

 

農業化学品セグメント

フルララネル(動物用医薬品原薬)は増収となりました。国内向け農薬では、「グレーシア」(殺虫剤)は堅調に推移しましたが、「ラウンドアップ」(非選択性茎葉処理除草剤)が減収となりました。海外向け農薬では、「グレーシア」は伸長しましたが、「ライメイ」(殺菌剤)は減収となりました。

この結果、当セグメントの売上高は821億13百万円(前年同期比5億29百万円増)、営業利益は233億98百万円(同2億67百万円増)となりました。業績予想比では、売上高は19億円の下ぶれ、営業利益は1億円の上ぶれとなりました。

 

ヘルスケアセグメント

「リバロ」(高コレステロール血症治療薬)原薬は、海外向けを中心に減収となりました。「ファインテック」(課題解決型受託事業)では、ジェネリック原薬販売が減少しました。

この結果、当セグメントの売上高は63億円(前年同期比3億73百万円減)、営業利益は28億14百万円(同1億75百万円減)となりました。業績予想比では、売上高は4億円、営業利益は2億円の上ぶれとなりました。


卸売セグメント

当セグメントの売上高は1,037億94百万円(前年同期比47億28百万円増)、営業利益は37億1百万円(同0百万円減)となりました。業績予想比では、売上高は29億円、営業利益は4億円の上ぶれとなりました。

 

その他のセグメント

当セグメントの売上高は301億67百万円(前年同期比37億82百万円増)、営業利益は5億72百万円(同3億7百万円減)となりました。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績

当社グループの生産品目は、広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため、生産実績については、「(1) 経営成績」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。

 

② 受注実績

当社グループは原則として、受注生産方式を採用しておりません。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前連結会計年度比
(%)

金額(百万円)

化学品セグメント

35,562

△8.9

機能性材料セグメント

84,567

2.4

農業化学品セグメント

82,113

0.6

医薬品セグメント

6,300

△5.6

卸売セグメント

103,794

4.8

その他のセグメント

30,167

14.3

セグメント間の内部売上高(消去)

△115,801

7.9

合計

226,705

△0.6

 

(注) 上記の金額は外部顧客に対する売上高とセグメント間の内部売上高の合計であります。

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末の総資産は、商品及び製品、建物及び構築物、機械装置及び運搬具が増加したことなどにより、前連結会計年度末比247億42百万円増3,234億58百万円となりました。

負債は、短期借入金の増加により、前連結会計年度末比153億65百万円増925億54百万円となりました。

また、純資産は前連結会計年度末比93億76百万円増2,309億3百万円となりました。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末比2.8ポイント減少し、70.3%になりました。
 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益、減価償却費、運転資金の増減などから法人税等の支払額を控除した結果、337億1百万円の収入(前連結会計年度は352億26百万円の収入)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、工場などの設備投資を中心に187億41百万円の支出(前連結会計年度は196億43百万円の支出)となりました。

また、財務活動によるキャッシュ・フローでは、配当金の支払、自己株式の取得による支出、長期借入金の増加などにより221億1百万円の支出(前連結会計年度は250億30百万円の支出)となりました。

現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、換算差額の増加額2億31百万円を調整した結果、227億38百万円(前連結会計年度末は296億47百万円)となり、前連結会計年度末に比較して69億9百万円減少しました。

 

以上の営業活動・施策により、中期経営計画「Vista2027」の前半3ヵ年(2022年度~2024年度)のStageⅠにて掲げた以下の経営目標に対し、ROEは達成していないものの、他の指標は順調に推移しました。

 

 

経営目標

2023年度実績

売上高営業利益率

20%以上

21.3%

ROE

18%以上

17.1%

配当性向

21年度:45%、22年度以降:55%維持

60.1%

株主総還元性向

19年度:72.5%、20年度以降:75%維持

86.2%

 

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、新長期経営計画Atelier2050、および新中期経営計画Vista2027を2022年度より開始いたしました。「未来のための、はじめてをつくる。」をコーポレートスローガンに掲げ、精密有機合成、機能性高分子設計、微粒子制御、生物評価、光制御の5つの従来のコア技術に更に磨きをかけるとともに、事業領域の拡充に向け、新たなコア技術の修得を目指しています。

現在、新たなコア技術として情報科学と微生物制御の修得に注力しています。具体的には、材料と農薬の分野で機械学習や人工知能を用いるマテリアルズ・インフォマティクスの検証を進めており、研究開発の高速化、高度化とともに、研究員のデジタルリテラシーの向上に取り組んでいます。また、生物科学研究所を中心に微生物の活用を始めとする微生物制御技術の育成を進めており、微生物由来の農業資材や有用化合物探索への適用を検討しています。

当社グループは、物質科学研究所、材料科学研究所、生物科学研究所の3つの国内の研究所を中心に、これら国内の研究所と、韓国、台湾、中国のR&Dセンターにおいて研究活動を行っています。それぞれの研究所、R&Dセンターが連携し、既存事業拡大に向けた開発や新技術の開発を進めております。

2023年度の研究開発活動の概要につきまして、化学品セグメントでは、自社製品や技術をベースとして独自エポキシを半導体実装用途や高周波基板用途に展開しております。また、SDGsへ貢献可能な微生物製剤「ビーナス®オイルクリーン」は、優れた油脂分解力で食品工場の産業廃棄物削減に寄与しております。

機能性材料セグメントでは、ディスプレイ材料、半導体材料、無機コロイドで既存製品の高品質・高性能グレードに向けた検討を、また、多様化する顧客ニーズに応えた将来の主要事業とすべく新規材料の研究開発を進めております。ディスプレイ材料では光配向材の更なる高性能化に加えて、OLEDやマイクロLED、フレキシブルデバイス用材料の開発を、半導体材料では既存製品の高品質化とともに今後の世代で必要になる微細加工技術や実装技術の積極的な開発を、無機コロイドではシリカゾルの持つ強みを活かした材料開発を行っております。

農業化学品セグメントでは、当社オリジナルの殺虫剤原体「フルキサメタミド」を含有する製品において、野菜、茶、芝向けに続く、果樹用の「フロアブル」を上市しました。水稲用除草剤原体「ジメスルファゼット」、「イプトリアゾピリド」の開発も進めております。スマート農業関連では、ドローン散布への農薬登録の拡大やAI病害虫雑草診断でスマートフォン用アプリケーションへの参加などに取り組んでおります。

ヘルスケアセグメントでは、中分子医薬品の技術開発の取り組みを拡大しており、独自の核酸構造を用いた創薬基盤技術について、数社の製薬企業や国内外のアカデミアとの共同研究により、核酸創薬研究を広く展開しております。また、ペプチド医薬品原薬の供給については、独自の製造技術 SYNCSOL®を活用して安価で高品質な長鎖および環状ペプチドの大量製造が可能となり、顧客ニーズや課題に合致したソリューションを提案しております。更にジェネリック医薬品原薬や再生医療材料の開発に注力し、事業の拡大を図ってまいります。

 

なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は17,334百万円であります。

 

セグメント別の主な内訳は以下の通りであります。

 

(1) 化学品セグメント

化学品事業では、成長分野の市場ニーズを見据え、自社製品・技術をベースとした新しいファインケミカルの創出、高機能化、用途拡大に取り組んでおります。機械物性と耐熱信頼性を両立する液状エポキシ「TEPIC®-VL」、「TEPIC®-FL」を半導体実装用途に、低誘電正接エポキシ「FOLDI®」を高周波基板用途に展開しております。樹脂添加剤「スターファイン®」は金属基材との密着力を高めることができ、塗料、接着剤、樹脂成型品など採用シーンが拡がっております。

また、SDGsへ貢献可能な製品の市場開発も進めております。油脂分解力に優れる微生物製剤「ビーナス®オイルクリーン」の採用件数を増加させており、食品工場の産業廃棄物削減に寄与しております。

当セグメントに係る研究開発費は256百万円であります。

 

(2) 機能性材料セグメント

機能性材料セグメントは、船橋、袖ケ浦、富山の3拠点を有する材料科学研究所において、ディスプレイ材料、半導体材料、無機コロイドの研究開発、および将来の事業の柱となる新規材料の研究開発を実施しております。

ディスプレイ材料では、市場・顧客動向を的確に把握し、これまで培ってきた独自技術をもとに、高性能化、多様化に対応した材料開発に取り組んでおります。特に、IPS/FFS用光配向材では、各種用途での要求に応じ、更なる高性能化を進めております。また、韓国,中国,台湾にR&Dセンターを設置しており、材料開発,評価技術,解析能力の充実度を高め、顧客ニーズにタイムリーに対応できるよう体制強化を図っております。

半導体材料では、半導体デバイスの高集積化の進展に伴い、既存製品の高品質化を進めるとともに、先端リソグラフィー技術のEUVに対応した下層膜材料開発、および実装技術に対応する製品・材料の研究開発に注力しております。また、このような新製品・新材料の創出に向け、各種コンソーシアムへの参加や、産官学およびベンチャー企業との連携に取り組んでおります。

無機コロイドでは、シリカゾルの持つ機能を活かし、研磨、金属表面処理、ハードコート等向けの製品開発や市場開拓を展開しております。シリカゾル以外では、ジルコニアやチタニアのゾルをスマートフォンやタブレット用の光学フィルムの屈折率調整用途や眼鏡用ハードコート用途向けに開発しております。また、近年はオイル&ガス分野での製品開発に取り組んでおり、米国のみならずアジアや中東地域等への展開を図っております。

新規材料については、当社のコア技術を深化・発展させると同時に、社外との共同研究を活用して、本格的な市場拡大が進んでいるOLED向けの材料やディスプレイの表示性能を向上させる材料、フレキシブルデバイス向けの材料など、次世代につながる材料の研究開発を進めております。

当セグメントに係る研究開発費は8,172百万円であります。

 

(3) 農業化学品セグメント

当社が独自に創薬開発した殺虫剤原体「フルキサメタミド」を含有する製品としては、日本では、野菜および茶向けの「グレーシア®乳剤」、芝用の「イザナミ®フロアブル」に続いて、果樹用の「グレーシア®フロアブル」も上市しました。海外では、アジア・中東・西アフリカ地域での登録を進めており、ここ最近では、2023年12月にはベトナム、2024年4月にはバングラデシュでも登録されました。また、更なる販売拡大を目的に、インドでは混合剤も2剤を登録致しました。

抵抗性、難防除雑草に卓効を示す水稲用除草剤「ベルダー®(原体名:ジメスルファゼット)」は国内を中心に、韓国でも開発を行っております。グローバルな展開が期待される新規水稲用除草剤「NC-656(原体名:イプトリアゾピリド)」についても、アジア・米州中心に開発が進んでおり、更に評価・開発国を拡大しております。

水稲用除草剤「アルテア®(原体名:メタゾスルフロン)」は、国内においては、高性能な混合剤「ディオーレ®」および「流星®」を一発処理剤第3世代製品として2021年より販売を開始し、次世代製品も開発も進めております。海外においては、2021年度に本格上市した台湾では、抵抗性カヤツリグサを対象として、販売は順調に推移しています。2022年2月には水稲面積(延べ栽培面積)が11,692千ヘクタールのバングラデシュで登録を取得し、2022年11月に販売を開始しました。更にインドでも登録申請し、東南アジア諸国ならびに中東地域では評価試験を継続します。

非選択性茎葉処理除草剤「ラウンドアップ®マックスロード」は、散布水量を低減させるULV5(Ultra Low Volume 5 Litter)散布技術の開発を進め、使用場面に応じた各種ノズルを販売して作物生産や緑地管理の省力化に貢献しております。

その他海外開発では、殺ダニ剤「スターマイト®」がベトナム、殺菌剤「ライメイ®」がホンジュラスで認可されました。

また、スマート農業関連では、ドローン用散布への農薬登録拡大を進めるとともに、AI病害虫雑草診断「レイミ―*」にも参加しています。

当社発明化合物フルララネルを含む、MSD Animal Health社(またはMerck Animal Health社)の製品は外部寄生虫ノミ・マダニ防除用のイヌ・ネコ用経口投与錠剤(ブランド名:Bravecto®**)を中心に日本を含め世界100か国以上で販売されております。近年では、内部寄生虫薬とのネコ用混剤「Bravecto® PLUS」や8週齢以上の子犬向けの「Bravecto® 1-Month Chews」をはじめ、犬用注射剤「Bravecto® Quantum」等ペット向け製品ラインアップを充実させています。家畜向け製品(ブランド名:Exzolt®**)としては、ニワトリに寄生するワクモ(吸血ダニの一種)防除用飲水添加剤が、日本を含むアジアのほか、欧州、南米、アフリカ、中東で承認され、登録国数は70か国を超えました(2024年4月現在)。また、ブラジル、メキシコを中心としたウシ向けノミ・マダニ防除剤、オーストラリア、ニュージーランドでのヒツジ向けシラミ防除剤としても販売されています。

当セグメントに係る研究開発費は4,306百万円であります。

*レイミ―:日本農薬株式会社発表のスマートフォン用アプリケーション。当社は他2社と共に参加。

**ブラベクト®、Bravecto®、Exzolt®およびエクゾルト®は、Intervet International B.V.およびIntervet Inc.の登録商標です。

 

(4) ヘルスケアセグメント

当社独自の核酸構造を用いた創薬基盤技術を活用した製薬企業数社との共同研究が順調に進捗し、複数のプロジェクトでテーマが進展するなど、提携を拡大させております。2019年より実施してきました株式会社三和化学研究所とのアンチセンス核酸創薬共同研究においては開発候補化合物の選定に成功するとともに新たに包括的提携契約を締結、戦略的に複数の新規核酸医薬品の創製に取り組んでまいります。また、国内外のアカデミアと新規標的遺伝子に対する共同研究を進めているとともに、ルクサナバイオテク㈱の保有する修飾核酸群(XNA)について、創薬研究利用に関するライセンス許諾を受けるなど、その提携の範囲を拡げております。

安価で高品質な直鎖状および環状ペプチドの製造技術 SYNCSOL®の実用化を目的として、それらを駆使した医薬品原薬および周辺医療用材料への展開を図っております。本技術をペプチスター㈱との協業に活かしていくとともに、顧客の抱える課題を解決することで事業を拡大してまいります。

モジュラス㈱との低分子医薬品に関する戦略的業務提携では、モジュラス㈱の開発化合物について当社の原薬開発・製造技術およびノウハウを提供し、協働してその開発を推進しております。今後、共同で製薬企業への導出を目指します。

更に高生理活性やペプチドジェネリック医薬品原薬の新規開発、および生体物質付着防止材料 prevelex®や細胞培養材料 FCeM®などの再生医療材料の開発に注力して、事業の拡大を図ってまいります。

当セグメントに係る研究開発費は440百万円であります。