文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、「開拓者精神を貫き 社会に貢献しよう」の社是のもと、北海道寒地農業の振興と国内甘味資源自給率確保の社会的使命を企業理念として掲げ、安全で高品質の砂糖の安定的供給を主たる目標に事業を遂行しております。
当社グループでは、2022年1月に当社グループが目指す道標として「日甜アグリーン戦略」を掲げ、「てん菜糖業」から「てん菜産業」への飛躍を図り、農業を基盤とした成長事業への展開を図ることといたしました。
(「アグリーン」は「アグリカルチャー」と「グリーン」を掛け合わせた造語)
「日甜アグリーン戦略」
調達作物・各種作物栽培方針並びに新たな製品開発方針
・栽培作物中CO2吸収能力の極めて高い“てん菜”を、引き続き当社事業の核とし、『持続可能なてん菜産業』実現のため、従来からの砂糖製造に加えて、てん菜を原料とした新たな製品・用途開発(健康食材・食品以外の素材開発など)を目指す。
・原料てん菜及び他作物の栽培方法において、減農薬・減肥料・省人省力化(スマート農業)を目指し、生産者の生産費の低減に資する。
・有機農業を視野に入れた製品群・栽培方法を開発・製造し、国内外に普及させる。
・大量の炭素を長期間貯蔵する林業事業に当社技術(紙筒移植ほか)を活用し国内外に普及させる。
・牛の健康に良い飼料を開発・製造し、牛の長命連産を目指す。
・メタン発生量を減少する家畜用飼料の開発を目指す。
生産から流通までの全工程における取り組み方針
・原料輸送・貯蔵・製造・製品保管・製品輸送・販売において、効率化を目指し、省エネ・省人省力・省資材化を図り、製造費・販売費を低減する。
カーボンニュートラル・環境負荷低減の取り組み方針
・各工場・各事業所・不動産事業等で使用する電力・燃料の脱炭素化を目指す。
・各工場・各事業所から排出される産業副産物の有価物利用を促進(資源の循環利用)。
・社用車、社用農業機械などの使用燃料の脱炭素化を目指す。
・当社製品に使用される化石燃料由来のプラスチック・ビニールなどの包装・容器資材類について、削減並びに代替資材類の使用を促進する。
「日甜アグリーン戦略」で諸課題にチャレンジし、持続可能な食料システム構築と新たな価値の創造を目指し、多くの方に支持され続ける企業グループに成長してまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社の主業である砂糖事業の収益は、原料であるてん菜の収量・糖分・品質、及び国内糖価の指標である砂糖の国際価格の変動などの様々な要因から年度により大きく変動するため、一層のコストダウンの推進を図り、外的変動要因を受けにくい経営基盤の構築を目指します。また、より付加価値の高い事業への多角化等により収益の向上を図ります。
当社グループは、株式価値の向上及び企業体質の強化・充実を図るため経常利益の確保を目指しており、売上高経常利益率を経営指標として設定し、売上高経常利益率4.0%を目標としております。
(3) 対処すべき課題及び中長期的な経営戦略
砂糖業界におきましては、消費者の低甘味嗜好や、異性化糖、輸入加糖調製品等の代替甘味料の増加等により砂糖消費量は減少傾向にあり、依然として厳しい状況が続いております。
2022年12月、政府は2026年度までに、てん菜・てん菜糖に係る政策支援数量を砂糖量にして64万tから55万tへ漸減させることを決定しました。砂糖を主な事業とする当社グループにとりましては、非常に厳しい決定となっております。
さらに、猛暑等の影響を大きく受けた2023年産てん菜の記録的な低糖分も相まって、てん菜栽培に不安を抱く生産者のてん菜離れが進み、作付面積が急減しております。
てん菜の作付面積確保は、当社の主業であるビート糖事業の根幹であるてん菜生産力の確保であることから、現在の作付面積減少に歯止めをかけるべく、気候変動や病害虫に耐えうる新たなてん菜品種の導入や、農作業の省人・省力化に資する栽培技術の開発など、生産者所得の向上によりてん菜栽培を選択してもらうための取り組みを進めております。
当社グループは、このような著しい外部環境の変化に適応する経営戦略の再構築が急務と捉えており、今まで以上のコスト削減への努力に加え、適正価格での販売を含めた事業基盤の強化に取り組んでまいります。
「第2次日甜グループ中期経営計画」(2024年3月期~2028年3月期)
砂糖消費の減少や燃料等の価格の高騰は継続しておりますが、この状況下での業績の回復、そして成長を図っていくことを目指し、2024年3月期から5年間の「第2次日甜グループ中期経営計画」を策定しております。計画の最終年度となる2028年3月期の営業利益24億円、経常利益28億円の達成を目指しております。
中期経営計画の初年度となる2024年3月期は、原料てん菜が猛暑等により著しく低糖分となり、砂糖生産量が減少しました。加えて、燃料等の製造コストの高止まりにより、営業利益は910百万円と非常に厳しい状況となりました。
計画2年目となる2025年3月期は、作付面積減少によるてん菜生産力の縮小、製造コストの高止まりが計画推進の大きな足かせになるものと危惧され、営業利益は6億円の見込みにとどまっております。この危機的状況から脱却するため、適正価格での販売と一層のコストダウン、飼料事業・農業資材事業での海外展開(DFAⅢ、有機農業対応紙筒)の早期実現等により、業容拡大に取り組み、計画達成に向けて邁進してまいります。
基本方針 「持続可能なてん菜産業の創造にチャレンジし、安全・安心で幸せな社会の実現に貢献していく」
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「畑から、食卓へ。てん菜から広がる可能性を見いだし、人と環境にやさしいものづくりで、北海道、そして日本の未来に貢献します。」とのパーパスを2023年10月に策定しました。ここには100余年に亘りてん菜糖事業を通じて発展してきた当社事業について、今後てん菜のさらなる付加価値を探求し「てん菜糖業」から「てん菜産業」への飛躍を図るとともに、持続可能な社会の実現に向けてサステナビリティ関連の課題解決にも取り組むとの思いが込められております。
サステナビリティ関連の課題解決に向けた取組みを推進するため、経営会議の下にサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会は、委員長を社長、副委員長をSDGs担当役員と経営企画室担当役員、委員を社内取締役及び執行役員とし、これに関連部門の従業員からなるサステナビリティ推進チームを加え、構成しています。さらに、委員会の下部組織として、具体的な取組みの検討や実績の検証を行う分科会を設けております。
サステナビリティ委員会は、年2回以上開催し、サステナビリティ関連の重要課題(マテリアリティ)についての目標設定や結果の検証、今後想定される気候変動の影響や対応等について検討を行い、経営会議に報告提言し、当社グループの経営方針に反映しております。
当社グループは、サステナビリティ委員会での検討審議を踏まえ、サステナビリティ関連の重要課題(マテリアリティ)を以下6項目に特定しております。
・持続可能な農業への貢献
・気候変動への対応
・資源の有効活用
・食の安全・安心
・働きやすい環境の実現
・地域社会への貢献
重要課題については、毎年度具体的な目標を策定し、当社ウェブサイト(https://www.nitten.co.jp/)で開示し、取り組みを推進しております。
このうち「気候変動への対応」に関連して、当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言を参考に、当社グループの事業に影響を与えうるリスクや機会について以下を想定しました。
(想定される主なリスクと機会)
想定するシナリオは、今世紀末に世界の平均気温が産業革命前と比較して4℃又は1.5℃上昇する、としました。想定条件の詳細は下記のとおりとなります。
4℃ :温暖化対策が徹底されず、2100年時点で、世界の平均気温が産業革命前と比べて4℃程度上昇する想定。
1.5℃:温室効果ガス排出量の削減に向けた厳しい規制措置が取られ、2100年時点で、世界の平均気温の上昇が産業革命前と比べて1.5℃以内に収まる想定。
当社グループにおける主要なリスクのうち、影響が大きいものとして深刻な気温上昇に伴う原料てん菜の生育不良による製糖工場の生産効率の低下が想定されます。一方、機会については、1.5℃上昇の想定において、てん菜の用途開発による、新たな市場参入等の機会があると想定しております。
これらの影響額及び対策の具体化について、今後サステナビリティ委員会において審議検討を進めて参ります。
<人材の育成方針>
「日甜アグリーン戦略」を実現する為には、多様性確保を含む人材の採用と育成は重要な事項と捉えております。
採用については、インターンシップ等の実施を通じ新規学卒者に対し当社の魅力や業務の特性を伝えると共に、若手社員、女性従業員の視点を取り込み、また当人達の想いを伝えることで、当社の企業価値向上につながる人材の確保と、在籍人数が少ない女性総合職の採用増に繋げることに取り組んでおります。また人員構成の改善のみならず専門技能を有する人材獲得を目的にキャリア採用を実施し、組織の中心的立場を担う層を厚くし、継続的な発展を目指します。
育成については、それぞれの分野で長年にわたり蓄積された知識やノウハウを引き継いでいくと共に、多様な視点から新しい技術を取り込み、従業員一人ひとりが成長し、柔軟な発想を持って業務に取り組んでいくことが重要ですので、時代に合わせ研修内容を変化させると共に従業員への教育機会を増加させ、自身の判断で学びを進める仕組みを整えます。また中期的な視点に立ち経営人材育成の為の研修にも取り組んでおります。
なお女性総合職の昇進・昇格については、特に育児休業取得者や育児短時間勤務実施者において、勤務日数や時間に関わらず成果と資質、能力を重視して実施することとし、将来の幹部候補の育成に取り組んでおります。
<社内環境整備方針>
多様な価値観を持つ従業員一人ひとりがやりがいを持って業務に取り組めるよう、「働きがいのある」「働きやすい」「安心できる」環境整備に努めてまいります。
まずは「安全な職場づくり」を最優先とし、「労働災害ゼロ」を関係会社や協力会社と共に実現いたします。その為、リスクアセスメントをはじめとする各種活動を推進すると共に、教育研修や安全審査等の充実を図ってまいります。
また、ハラスメント防止や差別の禁止などコンプライアンス意識の向上に資する教育研修も実施いたします。
さらに、育児や介護、病気療養との両立に資する社内制度を充実させ、安心して働き続けることができる環境を整えると共に、ダイバーシティ、キャリアデザインや評価制度などについての教育研修を充実させることで、多様な人材の活躍を促進し、また若手や当社での経験年数の浅い従業員との対話を充実させることで、定着を促し早期戦力化を図ります。
そして「人材への投資」を重視する視点に基づき、適切な成長機会の提供によるキャリア形成、DX推進による業務改革と効率化を執り進め、本人の希望によって多様な働き方を選択できる制度の普及を図ります。
リスク管理推進委員会において、リスクの洗い出し及び評価を行い、取締役会にて報告・審議を行っております。気候変動に関するリスクに対応する各施策について、サステナビリティ委員会のマテリアリティ「気候変動への対応」にて個別に目標設定を行い、経営戦略に組み込んでいきます。
また、エネルギーの使用については、エネルギー管理委員会において、当社グループの工場又は事業所等及び貨物の輸送に係るエネルギーの使用を管理し、エネルギーの使用の合理化を総合的に進めております。今期においては2事業所に太陽光発電設備を設置しました。
なお、2023年5月12日開催の取締役会で決議された第2次日甜グループ中期経営計画(2024年3月期~2028年3月期)において、サステナビリティ委員会にて目標設定した内容に基づき、非財務目標として、気候変動に対する計画を策定しております。
当社はてん菜から砂糖をつくることを主業としております。大量のエネルギーを消費し、工場を動かすことで製品を作り出す企業にとって、環境への配慮は欠かすことのできない重要な責務です。自然環境に配慮しながら、今後もお客様に安心な製品をお届けし続けるため、環境数値目標として、以下の3項目を設定しております。
<人材の育成及び社内環境整備に関する方針における指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績>
当社では上記(2)戦略において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。
※対象範囲 当社
(注) マネジメント層とは、女性活躍推進法による管理職(課長以上の階層)に、当社で管理職として処遇している参事・副課長を加えたものを指します。
なお、当社においては関連するデータの管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。サステナビリティに関する当社グループの取組の詳細は、当社ウェブサイト(https://www.nitten.co.jp/)内のサステナビリティ情報にて発信しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社グループは、リスク管理体制の構築をリスク管理推進委員会で行っており、その内容につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)砂糖事業への依存に関するもの
当社グループでは、売上高の約7割を砂糖事業が占めており、他の事業におきましても、ほとんどが砂糖事業に付随、又は関連する事業から成り立っております。このため、消費者の低甘味嗜好や代替甘味料の増加等による国内の砂糖消費量の減少が、当社グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。
(2)農業政策の影響に関するもの
主力のビート糖事業は、国が策定する食料自給率の達成、北海道寒地農業の振興、砂糖の安定的な供給を使命として遂行されており、「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」等、国の農業政策に大きく関わっております。
また、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)等の国際経済協定の進展が、農業政策にも大きく反映される可能性が高く、砂糖事業の業績に影響を及ぼすリスクがあります。
(3)原料てん菜の生産状況に関するもの
ビート糖の原料であるてん菜は、農産物のため、生産量、糖分、品質は天候に大きく左右され、その結果、工場の操業度等に影響を与え、砂糖事業の業績に影響を及ぼすリスクがあります。
(4)燃料等製糖資材の調達に関するもの
ビート糖の製造に必要な燃料などの資材については、多くを海外から調達しております。このため、資材輸出国の地政学事象を要因とした国際的な需給の逼迫や相場の高騰、さらに為替及び物流事情等により、調達コストに大きな影響が生じ、砂糖事業の業績に影響を及ぼすリスクがあります。
(5)輸入粗糖及び輸入穀物の価格変動に関するもの
精製糖の原料である輸入粗糖、配合飼料の原料である輸入穀物は、海外商品相場や為替相場の影響を受け、調達価格が大きく変動することがあります。また、当該製品の販売価格は、基本的には輸入原料の調達価格の変動に準じた動きをしておりますが、相場の急激な変動を適宜販売価格に反映できない場合、当社グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。
(6)製品の販売価格に関するもの
主力のビート糖事業において、ビート糖は国の糖価調整制度のもと国内産糖交付金の交付を受け、一般顧客向けの白糖と国内精製糖企業向けの原料糖に区分し販売されており、原料糖には入札価格に応じて複数の価格帯が存在しております。その製品販売価格は、海外砂糖相場等の影響を受け大きく変動することがあり、相場が急落し製品の販売価格が下落する場合、砂糖事業の業績に影響を及ぼすリスクがあります。
(7)食品の安全に関するもの
当社グループでは、安心安全な製品を提供するため、「品質保証規程」に基づく管理体制を整えております。加えて、当社の製糖工場は国際的な食品安全マネジメントシステムである「FSSC22000」を取得しており、品質管理体制を継続的に改善し続けていく仕組みを導入しております。しかしながら、万が一、食品安全に影響を及ぼすような事態が起きた場合には、製品回収、再発防止対策等の費用が発生するなど、当社グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。
(8)災害、感染症による生産停止等に関するもの
当社グループは、北海道の生産拠点を中心に全国へ製品供給を行う事業活動を行っておりますが、台風や地震等の大規模自然災害や火災・停電等の事故災害、北海道の冬期の悪天候等により、製品生産や物流機能に支障が生じるリスクがあります。また、製糖工場等では大規模な装置を保持し稼働させているため、感染症の蔓延、労働災害の発生、重要な設備の故障等による生産停止等が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)気候変動に関するもの
当社グループは、気候変動に伴う深刻な気温上昇により、主要な原料であるてん菜が生育不良となり、製糖工場の生産効率が大きく低下する等の影響を受ける可能性があります。また、脱炭素社会に向けた政府等の規制強化により炭素税等のコストや脱炭素化の進展に伴う省エネ設備導入や燃料調達コストが増加する可能性があります。
気候変動により想定されるリスク等の詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。
(10)情報システムに関するもの
当社グループでは、生産、販売、管理等の業務にコンピュータシステムを利用しております。これらを適切に管理するため、情報セキュリティ対策を講じておりますが、サイバー攻撃等により想定を超える事態が発生した場合、大規模なシステム障害や機密情報・個人情報の漏洩により、正常な事業運営が困難となり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクを踏まえ、当社としては安定した経営基盤を築くため、高品質原料の調達及び製糖工場の製造能力を最大限に発揮できるよう取り組むとともに、環境に配慮し省エネや製糖資材使用の抑制や調達等のリスクマネジメント等を推し進め、製造コストの削減に努めてまいります。
それらに加え、砂糖以外の事業についても、経営の多角化を推進しグループ全体の事業の事業基盤の強化に努めてまいります。
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症対策の規制緩和、訪日外国人旅行者数の回復に伴うインバウンド消費の増加等により景気回復の兆しがみられたものの、世界的な金融引き締め、不安定な為替相場等、先行きが非常に不透明な状況が継続しております。
このような状況のもと、当社グループでは、第2次日甜グループ中期経営計画(2023年4月~2028年3月)を策定し、「持続可能なてん菜産業の創造にチャレンジし、安全・安心で幸せな社会の実現に貢献していく」を掲げるとともに、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、企業価値の一層の向上に取り組んでおります。
また、DM三井製糖ホールディングス株式会社との資本業務提携の一環として、2023年10月から、同社の連結子会社である北海道糖業株式会社が集荷する原料の一部を芽室製糖所へ搬入し、砂糖等の製造を受託しております。
当連結会計年度は、主に砂糖事業における販売価格の上昇により、売上高は前期比6.6%増の69,297百万円となりましたが、経常利益は、主に砂糖事業及び飼料事業の減益により、前期比9.6%減の1,802百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券の売却益を特別利益に計上したため、前期比43.7%増の1,811百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
海外市況につきましては、ニューヨーク市場粗糖先物相場(当限)において1ポンド当たり期初22.35セントで始まり、レアル高によるブラジルの輸出減退観測や干ばつによるインドの砂糖輸出禁止見通しにより28セント台まで上昇しましたが、主要生産国であるブラジルの生産見通しが引き上げられたことや、不作が見込まれていたタイの供給懸念の後退により、22.52セントまで下落し、当期を終えました。
一方、国内市況につきましては、期初227円~229円(東京精糖上白現物相場、キログラム当たり)で始まりましたが、海外粗糖相場上昇の影響を受け、7月に239円~241円に上昇、さらには1月に249円~251円に上昇し、そのまま当期を終えました。
2023年産の原料てん菜による製糖作業は、10月上旬より開始いたしました。昨年の原料てん菜は、猛暑等により著しく低糖分となり、収量・品質に影響を受けました。品質管理の徹底による原料てん菜品質の維持・劣化抑制、製糖資材の使用量の抑制に努めましたが、エネルギー価格の高止まり等により、製造コストは著しく増加しました。
ビート糖は、清涼飲料、菓子向け等の需要回復に加え、販売価格も上昇したことから、売上高は前期を上回りました。
精糖は、業務用販売数量の回復と販売価格の上昇により、売上高は前期を上回りました。
砂糖事業の売上高は、47,294百万円(前期比10.5%増)となりましたが、製造コストの著しい増加により、552百万円の営業損失(前期は243百万円の営業損失)となりました。
<食品事業>
イースト、オリゴ糖等食品素材は、適正価格での販売に努めたこと等により、売上高は前期を上回りました。
食品事業の売上高は、2,615百万円(前期比3.4%増)となり、固定費削減等により、188百万円の営業利益(前期比280.5%増)となりました。
<飼料事業>
配合飼料は、牛乳消費減退の影響を受けて一時落ち込んだ販売数量が、生産抑制解除と営業努力により回復傾向になり、売上高は前期を上回りました。
ビートパルプは、販売数量、売上高ともに前期並みとなりました。
飼料事業の売上高は、12,673百万円(前期比1.1%増)となりましたが、原材料価格やエネルギーコストの影響により、121百万円の営業利益(前期比72.3%減)となりました。
<農業資材事業>
紙筒(移植栽培用育苗鉢)は、ビート用・そ菜用ともに販売数量が減少し、売上高は前期を下回りました。
農業機材は、移植機材・播種機材等の売上減少により、売上高は前期を下回りました。
農業資材事業の売上高は、3,847百万円(前期比11.6%減)となり、営業利益は179百万円(前期比13.8%減)となりました。
不動産事業は、一部賃貸物件の稼働率低下により、売上高、営業利益ともに前期を下回りました。
不動産事業の売上高は、1,462百万円(前期比3.2%減)となり、営業利益は903百万円(前期比6.5%減)となりました。
その他の事業は、石油類及びスポーツレジャー施設の売上が増加したものの、コスト増加により、営業利益は前期を下回りました。
その他の事業の売上高は、1,404百万円(前期比11.0%増)となりましたが、営業利益は65百万円(前期比6.6%減)となりました。
②財政状態
当連結会計年度末の資産の合計は103,022百万円で、前連結会計年度末に比べ127百万円の減少となりました。
一方、負債の合計は30,487百万円で、前連結会計年度末に比べ4,528百万円の減少となりました。
純資産の合計は72,535百万円で、前連結会計年度末に比べ4,401百万円の増加となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ2,263百万円増加し、12,853百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、13,044百万円の収入(前連結会計年度は1,825百万円の支出)となりました。
これは、主に棚卸資産の減少7,145百万円、税金等調整前当期純利益2,633百万円、未収入金の減少978百万円等による資金の増加があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、1,315百万円の支出(前連結会計年度は1,704百万円の支出)となりました。
これは、主に有形固定資産の取得による支出4,129百万円等による資金の減少があったものの、投資有価証券の売却による収入945百万円、国庫補助金等の受入による収入943百万円等による資金の増加があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、9,465百万円の支出(前連結会計年度は2,969百万円の収入)となりました。
これは、主に短期借入金の収支差による支出7,700百万円、自己株式の取得による支出1,001百万円等による資金の減少があったことによるものであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、期中の平均販売価格に生産数量を乗じて算出しております。
3 不動産事業の主な内容は、不動産賃貸等のため、記載しておりません。
4 その他の事業の主な内容は、輸送サービス等のため、記載しておりません。
一部受注生産を行っておりますが、受注生産高の売上高に占める割合の重要性が乏しいため、記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(経営成績の分析)
当連結会計年度の売上高は、主に販売価格が上昇したことにより前期比6.6%増の69,297百万円となりました。
売上原価は、エネルギー価格の高止まり並びに原材料等の値上がりによる製造コストの上昇により、前期を上回りました。
販売費及び一般管理費は、主に昨年の原料てん菜が猛暑等により著しく低糖分となり、ビート糖等の生産数量が減少したことに伴う保管費・運送費の減少により前期を下回りました。営業利益は前期比39.5%減の910百万円となりました。
営業外収益は受取配当金の増加により前期を上回りましたが、営業外費用はほぼ前期並となったため、経常利益は前期比9.6%減の1,802百万円となりました。
特別利益には、投資有価証券の売却益902百万円を計上した一方、特別損失には、固定資産の減損損失88百万円を計上しております。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比43.7%増の1,811百万円となりました。
砂糖消費量の減少や燃料等の価格高騰が続き、当社グループを取り巻く環境は厳しい状況にありますが、この状況下での業績の回復、そして成長を図っていくことを目指し、当社グループでは2024年3月期から5カ年の「第2次日甜グループ中期経営計画」を策定いたしました。
「持続可能なてん菜産業の創造にチャレンジし、安全・安心で幸せな社会の実現に貢献していく」を基本方針とし、砂糖事業の更なるコスト低減、及び食品事業、飼料事業、農業資材事業の成長により売上の増加と利益の回復を目指し、計画最終年度となる2028年3月期までに、営業利益24億円、経常利益28億円を達成することを目標としております。当社グループ一丸となり、持続可能なてん菜産業の実現を図るべく取り組んでまいります。
「第2次日甜グループ中期経営計画」の初年度となる当連結会計年度では、原料てん菜が猛暑等により著しく低糖分となり、砂糖生産量が減少しました。加えて、燃料等の製造コストの高止まりにより、営業利益は910百万円と非常に厳しい状況となりました。
なお、当社グループは「売上高経常利益率」を目標とする経営指標に設定しております。
当連結会計年度の売上高経常利益率は2.60%(前期3.07%)で、製造コスト増加が利益を圧迫し、前連結会計年度に比べ0.47ポイント下落いたしました。引き続き、目標とする4%の達成を目指してまいります。
セグメントごとの経営成績は「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりであり、セグメントごとの経営成績の分析は以下のとおりであります。なお、各セグメントの外部顧客に対する売上高の連結売上高に占める割合は、砂糖事業が68.2%、食品事業が3.8%、飼料事業が18.3%、農業資材事業が5.6%、不動産事業が2.1%、その他の事業が2.0%であります。
<砂糖事業>
砂糖事業を取り巻く環境は、消費者の低甘味嗜好や輸入加糖調製品等の代替甘味料の増加等により砂糖の消費減少が続くなか、2020年以降はコロナ禍における経済活動抑制の影響が重なり、深刻な砂糖の消費低迷に直面しております。
ビート糖はコロナ禍前の水準までには戻っていないものの、清涼飲料や菓子向けの業務用出荷で回復が見られ、販売価格も上昇したことから、売上高は前期を上回りました。販売価格の基準となる国内砂糖相場は、海外砂糖相場の上昇等を受けて2023年7月に12円、2024年1月に10円上昇しております。製造面では、品質管理の徹底による原料てん菜の品質維持・劣化抑制、製糖資材の使用量抑制に努めましたが、エネルギー価格の高止まり等により、製造コストは著しく増加しました。
精糖は、業務用販売数量の回復と販売価格の上昇により、売上高は前期を上回りました。
<食品事業>
イーストは価格競争による市場の奪い合い等が激しく、厳しい状況にあります。機能性食品の市場は、健康志向の高まりから成長しているものの流行があり、また新規参入しやすい市場でもあり、安定成長が難しい状況にあります。
このような中イースト、オリゴ糖等食品素材は、適正価格での販売に努めたこと等により、売上高は前期を上回りました。
フラクトオリゴ糖等のオリゴ糖含有液状甘味料の拡販により、売上確保に努めております。
<飼料事業>
北海道の乳牛向け配合飼料の市場規模は約160万トンで、価格競争が激化しており、またビートパルプは需要の落ち込みが懸念されております。
配合飼料の売上数量は、牛乳の生産抑制解除と営業努力により回復傾向になり、売上高は前期を上回りました。
ビートパルプは、てん菜の収量減少に伴い生産数量が減少したことで販売数量が減少し、売上高は前期を下回りました。
飼料事業では、当社が製造している機能性食品素材を配合した製品の開発にも力を入れており、付加価値の高い配合飼料「カウライザー」、「コウシのミカタ」等の拡販に努めております。
海外展開へ向けた取り組みの一環として、当社で製造しているオリゴ糖「DFAⅢ」をEurope Committee(欧州委員会)に飼料添加物として申請しており、現在審査を受けています。
<農業資材事業>
農業用資材は農業人口・戸数の減少に伴い、市場は減少傾向にあります。
紙筒(移植栽培用育苗鉢)は、てん菜の生育方法が移植栽培から直播栽培に変わってきており、ビート用の販売は減少傾向にありますが、ネギ用を主としたそ菜用は国内をはじめ輸出が拡大傾向にあり、ビート用の売上減少をカバーしております。
海外展開についても注力しており、育苗資材のペーパーポットが数珠状に連結した「チェーンポット」と、それらを簡易的に移植する移植機「ひっぱりくん」を一連のシステムとして展開しています。動力を使わない安価で確実な移植システムとして、欧米などの有機農業に採用されており、更なる拡販に努めております。
農業用機械は年により受注台数に変動がありますが、紙筒と同様、ビート用だけでなく、タマネギ等そ菜用の開発・販売に努めております。
<不動産事業>
社有の遊休地を有効活用し、不動産事業は着実に売上を伸ばしてきましたが、当連結会計年度においては一部賃貸物件の稼働率低下により、売上高は前期を下回りました。
高度利用可能な遊休地は少なくなってきており、既存テナントとの友好的な関係維持に努めております。
<その他の事業>
その他の事業は、貨物輸送や石炭等の燃料の販売、ボウリング等のスポーツレジャー施設の営業等で構成されております。
当連結会計年度においては、主に原料てん菜の収量減少に伴い貨物輸送が減少したものの、スポーツレジャー施設の売上が回復したことにより売上高は前期を上回りました。
(財政状態の分析)
資産の合計は103,022百万円で、前連結会計年度末に比べ127百万円の減少となりました。このうち流動資産は50,931百万円となり、主に棚卸資産の減少により、前連結会計年度末に比べ6,122百万円の減少となりました。また、固定資産は52,090百万円となり、主に投資有価証券の時価の上昇により、前連結会計年度末に比べ5,995百万円の増加となりました。
一方、負債の合計は30,487百万円で、主に短期借入金の減少により、前連結会計年度末に比べ4,528百万円の減少となりました。
純資産の合計は72,535百万円で、主にその他有価証券評価差額金の増加により、前連結会計年度末に比べ4,401百万円の増加となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりです。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
債務償還年数:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
(注)1 各指標は、いずれも連結ベースの財務指標数値により算出しております。
2 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。なお、2023年3月期の債務償還年数及びインタレスト・カバレッジ・レシオについては、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスのため、記載を省略しています。
4 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
5 利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
当社グループが事業を行う上で必要となる運転資金、設備投資、借入金の返済及び利息の支払い並びに配当金及び法人税の支払い等に資金を充当しております。
運転資金等の資金需要に対しては、営業活動によるキャッシュ・フローと金融機関からの借入により資金を調達しており、金融機関からの借入金額は年間の資金計画に基づき適切な水準とし、資金繰りを考慮し返済方法を決定しております。また当社及び子会社の余剰資金を、当社グループ内で融通し合うことにより資金の効率化を図り、グループ外部への資金流出を抑えております。
設備投資については、過剰な投資とならないよう当社グループの現況に見合った年間の投資計画を策定し、老朽化した設備の更新のほか、製造コストの削減、製造工程の改善、製品の品質向上、環境対策等を目的とした設備投資又は将来の利益獲得のための先行投資を行っております。設備投資計画の詳細については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。なお、設備の新設・更新は主として自己資金によっております。
配当については、当社グループは主業のビート糖事業を中心に公益性の高い事業を営んでおり、長期的かつ安定的な事業継続が求められるため、財務体質の強化と経営基盤の拡大を図ることを重視するとともに、株主の皆様への適切な利益還元を経営上の重要な政策と位置づけ、安定的な配当を継続することを基本方針としております。なお、株式価値の向上及び株主還元の充実を図るために、2024年3月期以降の配当方針を変更し、配当を1株につき50円以上とすることに加え、必要に応じて自己株式を取得することとしております。
資金の運用については、比較的安全な譲渡性預金で運用しております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は12,853百万円となり、大型工事の実施による有形固定資産の取得や自己株式の取得等により資金が減少した一方、当期純利益の増加、棚卸資産や未収入金の減少等により資金が増加し、前連結会計年度末に比べ2,263百万円増加いたしました。なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は12,632百万円となりました。
将来発生し得る資金需要については、営業活動によるキャッシュ・フロー及び手許資金により充当が可能であると判断しており、資金の不足が見込まれる場合には、金融機関からの借入により対処する方針であります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては会計上の見積りを行う必要があり、期末日現在の資産・負債の金額、偶発的な資産・負債の開示及び報告対象期間の収益・費用の金額に影響を与える様々な見積りや仮定を用いており、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
④経営成績に重要な影響を与える要因と今後の方針について
(経営成績に重要な影響を与える要因)
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「対処すべき課題」及び「事業等のリスク」に記載のとおり、当社グループの売上高の約7割を砂糖事業が占めており、他の事業におきましてもほとんどが砂糖の原料となるてん菜(ビート)由来の製品事業、又は砂糖に関連する事業から成り立っていることから、国内の砂糖消費量及び海外砂糖相場の動向、国の農業政策や砂糖業界を取り巻く国際情勢、てん菜の生産状況など砂糖事業に特有のリスクが、当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
また昨今のエネルギー価格及び輸入穀物価格の高止まりの当社事業への影響は大きく、外部環境の急激な変動を販売価格に転嫁できない場合、当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
(今後の方針)
砂糖業界におきましては、消費者の低甘味嗜好や輸入加糖調製品等の代替甘味料の増加等により、国内の砂糖消費量が減少傾向にあるなど大変厳しい状況にあり、2020年以降はコロナ禍における経済活動抑制の影響が重なり、当社グループを取り巻く環境は一層厳しさを増しております。また、ウクライナ情勢等を受けたエネルギーコスト及び原材料等の高止まりにより、砂糖を始めとする各製品の製造コストは上昇しており、このような急激な外部環境の変化に適応できる経営戦略の再構築が急務と捉えております。
当社グループでは「開拓者精神を貫き 社会に貢献しよう」の社是のもと、当社グループが目指す道標として「日甜アグリーン戦略」を策定し、「てん菜糖業」から「てん菜産業」への飛躍を図り、農業を基盤とした成長事業への展開を図ることといたしました。当社グループが抱える諸課題にチャレンジし、持続可能な食料システム構築と新たな価値の創造を目指し、多くの方に支持され続ける企業に成長してまいります。
「対処すべき課題及び中長期的な経営戦略」に記載のとおり、てん菜・てん菜糖生産量の漸減が決定され、ビート糖事業を主業とする当社グループを取り巻く環境は一層厳しさを増すものと捉えております。このような厳しい経営環境に対処すべく「第2次日甜グループ中期経営計画」を新たに策定し、計画達成に向け取り組みを始めております。本計画では、砂糖事業の更なるコスト低減、及び食品事業、飼料事業、農業資材事業の成長により売上の増加と利益の回復を目指しており、基盤事業として砂糖事業の確固たる構造を維持する一方、成長分野としてフラクトオリゴ糖等の販売強化や農業資材等の海外展開、てん菜の用途拡大を図ることとしております。また新たな資本政策や、環境対策・人材への投資・社会貢献等の非財務目標を掲げるなど、持続可能なてん菜産業の実現を図るべく、当社グループ一丸となり取り組んでまいります。
「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおり、当社は2024年2月22日開催の取締役会において、当社が保有する固定資産(当社本社ビル、以下「本物件」)の譲渡について決議をし、同日、本物件の売買契約を締結しております。
なお、本物件譲渡と同時に、本物件の一部につき譲渡先と賃貸借契約を締結し、本物件譲渡後も当社による本物件の使用は一定の期間継続する予定であり、本社所在地に変更はありません。
また、当社は3月22日開催の取締役会において、固定資産(オフィスビル)の取得を決議し、3月29日に売買契約を締結しております。
詳細は「第3 設備の状況 3設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設等」のオフィスビル購入のとおりであります。
当社は、総合研究所(北海道帯広市)及び農技開発部(北海道芽室町)において、てん菜と製糖技術を中心とした基礎研究のほか、各種の応用研究、開発研究に積極的に取り組んでおります。
2022年1月には「日甜アグリーン戦略」を策定し、てん菜の可能性を見い出し、持続可能なてん菜産業を実現するため、てん菜を活用した幅広い製品・用途の研究開発を進めております。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。
てん菜関連では、気候条件の変化も踏まえ、主として耐病性品種の育成や、高温対策や減農薬・減肥料・省人省力化に向けた栽培技術等の研究開発に取り組んでおります。また、製糖技術に関係する研究も継続して行っています。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
食品関連では、フラクトオリゴ糖などの新規オリゴ糖開発に加え、てん菜副産物であるラフィノース、ベタイン、ビートファイバーなど、当社製品に関して付加価値を高めるべく利活用研究に継続的に取り組んでおります。
イースト関連では、主としてパン用新菌株の開発を進めるとともに、各種の醸造用途向け乾燥酵母や乳酸菌などの微生物を活用した製パン用副資材の商品化開発を進めております。また、微生物技術の応用として、油脂生産向けの微細藻類及び酵母の糖蜜を使った培養技術の研究にも取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
飼料関連では、製糖副産物のほか、イーストやDFAⅢ等の自社製品を有効利用するとともに、利用可能な天然資源の飼料価値を科学的に評価し、家畜の生産性向上や健康改善に有用な機能性の高い飼料の開発を進めております。さらには、地球温暖化への対応として牛が排出するメタンガスの抑制効果のある新飼料の研究にも取り組んでおります。また、ユーザーに対する技術サポートの観点から、飼養管理技術の体系化と飼料分析を行っております。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
農業資材関連では、そ菜や花卉、てん菜など各種作物に利用可能な紙筒移植システムの普及を目的に、各種紙筒や土詰播種機・移植機などの農機具、紙筒移植用苗の栽培に不可欠な培土や下敷紙の開発・改良を進めております。さらに、有機栽培に使用可能な新型紙筒の研究開発も積極的に進めております。また、製糖副産物の作物栽培への利用についても研究に取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は