当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、経営理念「印刷事業を核に、生活・文化・情報産業として社会に貢献する」のもと、将来ありたい姿として、グループ経営ビジョンに「誠実なコミュニケーションと市場をリードする技術力でお客さまの思いをカタチにし、新たな価値を創出し続ける企業グループ」を掲げております。
その実現に向けて、現中期経営計画(2021年度から2024年度までの4ヵ年計画)では、方針及び目標数値を次のとおりとし、全社視点での重点施策と各事業における施策を遂行して計画達成に邁進しております。
■中期経営方針
「豊かな社会と新たな価値を創造するために未来起点の変革に挑戦」
■経営目標数値(2024年度)
連結営業利益 |
ROE |
配当性向 |
31億円 (当初計画38億円) |
5.0% |
30%以上 |
現中期経営計画における2024年度の目標値のうち連結営業利益について、38億円から31億円へ変更いたしました。これは、コロナ禍の長期化やこの間に加速したデジタル化による出版印刷市場の縮小などの事業環境変化に加え、当初想定していなかった原材料価格やエネルギーコスト等の上昇影響、これまでの施策の進捗を総合的に勘案したもので、連結営業利益については当初目標を変更することが適切と判断いたしました。
(2) 経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
2023年11月に当社グループは、サステナビリティ経営と連動したDX推進の方針と取り組みを「DX戦略」として策定しました。代表取締役社長をトップとした全社推進体制のもと、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上をめざす取り組みを強化しております。
当社グループを取り巻く経営環境は、旅客やインバウンド需要の好調を受けて回復がみられた一方、原材料価格や物流コスト高騰の影響により、収益性の面でリスクが懸念され、この状況が続くことが予測されます。こうした中、当社グループは、中期経営方針に則り、既存事業の利益改善と新規事業の育成をめざす各施策を推進しております。
情報系事業においては、紙媒体の需要減少を踏まえて生産改革を一層進めるとともに、コンテンツを生かした事業機会の獲得や、顧客業務のデジタルシフトを支援するサービス提案などを強化しております。教育分野では企業や自治体向け教育コンテンツを開発・提供する体制を拡充、金融分野では相続支援サービスを拡販するなど、生活者のより豊かな暮らしと安心・便利な社会の実現をめざす取り組みを加速しております。
生活・産業資材系事業においては、環境に配慮した包材の開発や使用済みプラスチックの再資源化など、循環型社会の実現に向けた取り組みを強化しております。紙製チューブやフードロングライフに貢献する機能性フィルムなど、社会課題の解決と消費者の利便性向上に役立つ製品を開発、拡販するとともに、生産工程の省エネルギー化にも努め、サステナブルな未来の実現に貢献してまいります。
こうした取り組みと同時に、中長期戦略の策定に向けた検討も重ねております。ポートフォリオ見直しによる事業構造の抜本的な変革や成長分野・研究開発への積極投資、人材の確保・育成などの施策で収益力を向上させ、成長への道筋を明確化してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般
社会・環境問題をはじめとするサステナビリティ課題について、当社グループは収益機会や成長性につながる重要な経営課題であると認識し、持続可能な社会の実現及び当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上をめざす「サステナビリティ経営」を推進しております。
社会課題の解決を通じた新たな価値創造に取組むとともに、価値創造の源泉となる人的資本への取組は、多様性の確保や労働環境の整備を柱に対応を進めております。また、環境や人権課題などESGへの取り組みはサプライチェーンへの展開を含め、着実に実行します。
ガバナンス
サステナビリティ経営の実現に向けた総合施策を推進すべく、取締役会の指示のもと、必要な事項を協議し、その内容を取締役会に報告・提言するサステナビリティ推進会議を設置しております。取締役会は、気候変動や人的資本への取り組みを含むサステナビリティ課題について年2回、サステナビリティ推進会議より取組方針や目標・計画案の内容、各施策の進捗状況などの報告を受けることとし、意思決定やマネジメントレビューを行っております。
サステナビリティ推進会議は、代表取締役社長を議長とし、常務執行役員以上で構成され、必要に応じて社外有識者等を招聘します。本会議では、外部から受ける経営への影響を評価し、当社グループ全体のサステナビリティに関する重要な方針やマテリアリティ(重要課題)、総合的施策等についての協議を行っております。取締役会への定期的な報告・提言を通じて、サステナビリティの取り組みをグループ全体に反映しております(2023年度の開催実績は8回)。
当社グループのサステナビリティ経営推進に関するガバナンス体制は、以下のとおりであります。
2023年度開催の取締役会におけるサステナビリティに関する主な議論は以下のとおりであります。
■マテリアリティの重点取り組みテーマ・KPI
■共同印刷グループの重大リスク
■人権尊重及びサプライチェーンマネジメントのガバナンス体制強化
■TCFD賛同表明、モニタリング
戦略及び指標・目標
当社グループでは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上をめざし、社会課題に与える影響を考慮したうえで、中長期的な価値創造能力に重大な影響を与えるものをマテリアリティとして特定しております。2023年度は、マテリアリティの重点取り組みテーマ及びKPIを取締役会で決議しました。取り組み状況については取締役会で定期的にモニタリング・評価を行い、今後の取り組み強化につなげていきます。
重点取り組みテーマ及びKPIの2023年度実績は以下のとおりであります。
◆価値創造領域
多様なライフスタイル ~情報コミュニケーションで、豊かさと幸せを実感できる暮らしをつくる |
||
重点取り組みテーマ |
KPI |
2023年度実績 |
誰もがやりがいをもって働ける環境の提供 |
スマートな働き方支援ソリューションの提供数 (2030年度までに300社以上) |
サービス開発及びテストマーケティングの実施、営業体制の整備 |
誰もが自らが望む形で生涯学び続けられる機会の提供 |
生涯学習向けソリューションの提供数 (2030年度までに250社以上) |
外部提携によるノウハウ獲得及び市場調査の実施 |
多様なライフスタイルに合わせたさまざまな体験価値の創出 |
体験価値創出ソリューションのコンテンツ数 (2030年度までに400本以上) |
コンテンツ事業拡充に向けた企画体制の整備 |
スマート社会 ~情報セキュリティで、誰もが安心・便利な社会をつくる |
||
重点取り組みテーマ |
KPI |
2023年度実績 |
いつでもどこでも簡単に手続きや決済が可能な環境の提供 |
次世代金融ソリューションのサービスラインアップ数 (2030年度までに5本以上) |
2本 |
いつでもどこでも簡単に行政手続きが可能な環境の提供 |
スマート自治体向けソリューションの提供数 (2030年度までに導入自治体数20以上) |
3団体 |
すべての人が健康に暮らせる社会への貢献 |
ヘルスケアソリューションのサービスラインアップ数 (2030年度までに10本以上) |
3本 |
循環型社会 ~革新的なパッケージとサービスで、サステナブルな未来をつくる |
||
重点取り組みテーマ |
KPI |
2023年度実績 |
環境配慮製品の提供 |
環境に配慮した包材・容器の売上高比率 (2030年度までに100%) |
38.7% |
資源循環システムへの貢献 |
プラスチック資源循環システムの構築 (2030年度までにPIR※確立とリサイクル材の本格的利用開始) |
使用済みプラスチックの再資源化事業への参画 |
フードロスの削減に貢献 |
食品向け包材・容器におけるフードロスソリューションパッケージの売上高比率 (2030年度までに20%以上) |
9.9% |
※PIR(ポストインダストリアルリサイクル):市場に出る前の製品製造工程で発生した廃棄物をリサイクル・再利用すること
◆経営基盤領域
地球環境との共生 |
||
重点取り組みテーマ |
KPI |
2023年度実績 |
気候変動の緩和と適応 |
GHG排出量削減率 (2030年度までに2022年度を基準とし42%以上) |
14.7% |
生物多様性の保全 |
FSC認証紙の調達率<重量ベース> (2030年度までに30%以上) |
22.1% |
原材料木材の合法性が確認された用紙の調達率 <購入金額ベース>(2030年度までに100%) |
76.2% |
|
価値創造人材の活躍 |
||
重点取り組みテーマ |
KPI |
2023年度実績 |
・多様な価値観の活用 ・価値創造人材の確保と強化 ・能力を最大限発揮できる環境の整備 |
( |
|
デジタル人材※比率 (2030年度までにデジタルを活かせる人材15%以上、デジタルを作れる人材15%以上) |
教育コンテンツの展開及びスキルマップの策定、達成状況把握の仕組み作りを推進 |
|
( |
|
|
( |
|
|
責任ある企業行動 |
||
重点取り組みテーマ |
KPI |
2023年度実績 |
企業倫理と公正な事業慣行 |
|
|
人権の尊重 |
|
|
人権デュー・デリジェンス(人権DD)の推進 (2024年度までにDD体制の構築、以降人権DDを継続実施) |
・推進体制として「人権尊重分科会」を新設 ・人権項目を拡大した「グループサステナブル調達基準」を策定 |
|
情報セキュリティとプライバシー |
情報セキュリティ教育の受講率(毎年100%) |
100% |
サイバーセキュリティ訓練の実施(1回/年) |
1回実施 |
|
統合的なリスクマネジメント |
サステナブル調達アセスメントのサプライヤーカバー率<取引金額ベース> (2030年度までに90%以上) |
54.3% |
リスクマネジメント活動の高度化 (2030年度までにグループ重大リスク対応の有効性向上及びリスクマネジメント領域の拡大/全従業員のリスク感度向上) |
・全社リスクマネジメント(ERM)体制を再構築 ・経営層の討議等を踏まえ9つの重大リスクを選定し、対応策を策定・開示 |
(注)経営基盤領域の各KPIの対象範囲は、共同印刷株式会社及び国内の連結子会社としております。ただし、「GHG排出量削減率」、「人権デュー・デリジェンスの推進」、「サステナブル調達アセスメントのサプライヤーカバー率」、「リスクマネジメント活動の高度化」については、海外の連結子会社を含みます。なお、「FSC認証紙の調達率」、「原材料木材の合法性が確認された用紙の調達率」、「女性管理職比率」については、グループ全体の取組について整備を進めているところであり、本報告では共同印刷株式会社単体としております。
※当グループのデジタル人材の定義
・デジタルを活かせる人材:ビジネスモデルやビジネスプロセスの変革をリードする人材
・デジタルを作れる人材 :市民開発者や部門アナリスト(各部門)、システム開発者やデータサイエンティスト(IT系部門)など
リスク管理
当社グループにおけるリスクの識別・評価は、外部から受ける経営への影響や、通常の業務を通じて特定した影響をもとにリスク及び機会の検討をおこないます。サステナビリティ推進会議では、識別されたリスクについて影響度を評価し、重要度に応じて対応策を検討・協議のうえ、取締役会に報告します。
2023年度は、サステナビリティに係るグループに重大な影響を及ぼすリスク及び機会への対応に向け、マテリアリティの重点取り組みテーマ及びKPIを設定しました。取り組み状況については、取締役会で定期的にモニタリング・評価を行い、今後の取り組み強化につなげていきます。
(2)気候変動への対応
当社グループは「地球環境との共生」をマテリアリティの一つとして特定し、気候変動が及ぼす影響を重要な経営課題と捉え、脱炭素社会の実現に向けて2050年カーボンニュートラルを掲げております。2023年5月にはTCFD提言への賛同を表明し、TCFD提言に基づき気候変動が当社グループにもたらす影響を分析したうえで情報開示しております。
ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ全般に関するガバナンスに組み込まれております。詳細については、「
戦略
当社グループでは、TCFD提言に基づく気候変動のシナリオ分析を、事業部門を対象に2つのシナリオ(1.5℃/2℃及び4℃)を用いて実施しました。今後想定されるリスクと機会を幅広く洗い出したうえで、経営層や各セグメントを中心とした協議・検討を経て、最終的に当社グループの事業にとって影響を及ぼす可能性が高い事象とその影響度合いの評価と、その評価に基づく対応策の検討・策定を行いました。
◆対象シナリオ
シナリオ |
想定事象 |
主な参照シナリオ |
1.5℃/2℃ シナリオ |
・日本を含む世界各国でカーボンプライシングの導入が進み、世界的に炭素税が上昇する ・消費者の嗜好の変化により、低炭素・脱炭素の製品・サービスへの需要が拡大する ・ステークホルダーからの脱炭素化要求が高まり、対応できない企業が淘汰される ・サプライチェーン全体における脱炭素化の加速により、操業及び製造コストが増加する |
IEAWorldEnergyOutlook2021 (SDS,NZE2050) IEAWorldEnergyOutlook2018 (SDS) IPCC (SSP1-1.9,SSP1-2.6) |
4℃シナリオ |
・日本を含む世界各国でカーボンプライシングの導入が進まない ・気温上昇に伴い、衛生ニーズなどの新たな消費者ニーズが創出される ・自然災害が激甚化し、生産拠点の被災による操業停止などのリスクが高まる |
IEAWorldEnergyOutlook2021 (STEPS) IEAWorldEnergyOutlook2018 (NPS) IPCC (SSP5-8.5) |
シナリオ分析の結果、1.5℃/2℃シナリオでは炭素税の導入による操業コストや、エネルギー価格の変動による原材料コストへの影響が大きいことが確認できており、こちらに関しては温室効果ガス(GHG)排出量削減及び事業活動の効率化を進めます。一方で、環境配慮型製品・サービスの販売拡大など、環境負荷低減に貢献する新たな顧客需要を捉えることにより、事業成長につなげることが可能であることも確認しております。
また、4℃シナリオでは自然災害の激甚化に伴う物理リスクが事業継続の阻害要因となりますが、今回の分析の結果では、各生産拠点におけるリスクが比較的大きくないことが確認できました。今後もリスク分析の精緻化及び災害などへの事前対応を実施し、影響を最小化していきます。
2024年度以降も定期的かつ継続的にシナリオ分析を実施することでその精度を高め、想定されるリスクに柔軟に対応しながら、不確実な将来におけるいずれのシナリオにも耐えうるレジリエントな経営体制を構築していきます。機会については、気候変動の状況や市場動向、顧客との対話を重視しながら、持続的な企業価値向上につながるよう、柔軟に戦略を検討・展開していきます。
◆リスクと対応策
種別 |
ドライバー |
概要 |
期間 |
1.5℃ シナリオ 影響度 |
4℃ シナリオ 影響度 |
対応策 |
物理リスク |
サイクロン、洪水などの異常気象の激甚化 |
洪水・浸水による生産拠点操業に影響するリスクの増加 |
中長期 |
小 |
中 |
・BCPの高度化によるリスクマネジメントの推進や重要拠点における災害対策の実施 ・サプライヤーとの関係強化による生産協力体制の構築 ・在庫管理や分散調達、代替品の検討・準備による製造の安定化 |
降雨パターンの変化、気象パターンの極端な変動性 |
降水・気象パターン変化による災害対策コストの増加 |
中長期 |
小 |
小 |
||
移行リスク |
GHG排出の価格付け進行 (カーボンプライシング) |
炭素税や排出権取引制度の導入によるコストの増加 |
短期 |
大 |
小 |
・GHG削減・省エネ機器導入による炭素税回避とエネルギーコストの削減 ・物流子会社及びサプライヤーと協働し輸送効率化の実施検討 ・ICP導入の検討及び各種クレジット動向調査 |
GHG排出量の報告義務の強化 |
省エネ政策の強化による設備投資の増加 |
短期 |
中 |
中 |
・省エネ関連設備投資の早期計画化を実施(乾燥装置・照明のLED化、空調機の更新など) |
|
既存製品/サービスに対する義務化/規制化 |
環境低負荷プラスチックへの切替によるコストの増加 |
短期 |
中 |
中 |
・プラスチック使用量の削減、リサイクル、廃棄削減などムダのない設計を推進 ・コスト抑制が可能な代替素材を調査・検討、サプライヤーとの連携による低コストな新素材の開発 |
|
既存製品/サービスの低炭素オプションへの置換 |
低炭素化への対応遅延による市場の喪失と収益の減少 |
短期 |
小 |
- |
・低炭素化製品の開発による既存製品の置き換え加速化 ・顧客との対話などを通じた低炭素化が必要な製品群や時期の見極めによる効率的な開発推進 |
|
原材料コストの高騰 |
サプライチェーン全体における脱炭素化の加速 |
短期 |
大 |
小 |
・太陽光発電設備の新設・増設などによるエネルギーコストの低減 ・サプライチェーンでの連携強化による製造コストの適切な価格転嫁 |
|
顧客行動の変化 |
CO2排出を伴う既存ペーパーメディアの減少 |
短期 |
中 |
中 |
・顧客行動の変化に合わせたデジタルメディア拡充及び、顧客のDX化支援の推進 ・印刷物を製造するビジネスから、BPOやコンテンツそのものを提供価値とするサービスへの転換 |
種別 |
ドライバー |
概要 |
期間 |
1.5℃ シナリオ 影響度 |
4℃ シナリオ 影響度 |
対応策 |
|
ステークホルダーの不安増大、又はマイナスのフィードバック |
投資対象からの除外、株価下落、資金調達の困難化 |
中長期 |
中 |
- |
・ステークホルダーとのコミュニケーション強化と適時適切な情報開示の推進 ・SBT※1認定取得の検討 |
機会 |
効率的な生産及び流通プロセスの使用 |
エネルギー使用量削減及び製造コストの削減 |
短期 |
大 |
小 |
・より低炭素で製造できる印刷機など、低炭素の生産機器導入及び生産工程効率化の推進 ・製造ラインの見直しや自動化設備の導入による稼働率向上・効率的な生産体制の構築 |
低排出商品及びサービスの開発・拡大 |
環境要件への適合や製品ライフサイクルにおけるCO2排出量算定による市場優位性の確保 |
短期 |
中 |
- |
・製品LCA※2の見える化を進め、低炭素製品の開発活用 ・出版商業印刷物のCFP算定における1次データ比率を高めた取り組みの推進 |
|
消費者によるサステナブル志向な購買行動の拡大 |
短期 |
大 |
小 |
・環境負荷低減した原材料の情報収集及び、環境配慮製品の開発推進 |
||
消費者の嗜好の変化 |
デジタルメディア需要の拡大 |
短期 |
中 |
中 |
・自社コンテンツの拡大による配信事業全体の成長とIP事業化の検討 |
|
新しい市場へのアクセス |
気温上昇による消費者ニーズの変化 |
短期 |
中 |
中 |
・食材の鮮度保持につながる形状や酸素吸着などの機能を持ったフィルム、ボトルの開発 ・感染予防などのニーズに応える衛生材料の研究開発 |
|
低炭素型ビジネスモデル開発の推進 |
短期 |
中 |
中 |
・低炭素を志向する生活様式に適応したサービス開発及び事業化の検討 |
期間 短期:2023~2030年頃まで 中期:2030~2050年頃まで
影響度 リスク:基準=営業利益に対する影響額 5億円超(大)/ 2億円超(中)/ 2億円未満(小)
機会:基準=売上高に対する影響額 10億円超(大)/ 3億円超(中)/ 3億円未満(小)
※1 SBT:「Science Based Targets」の略、「科学的根拠に基づく目標」の意味。
SBT認定とは、パリ協定と整合性のある温室効果ガス排出削減目標を立てていることを示す国際認証です。
※2 LCA:資源採取から廃棄、リサイクルまでのライフサイクルを通じた環境影響評価手法。
リスク管理
気候変動に関するリスク管理は、サステナビリティ全般に関するリスク管理に組み込まれております。詳細については、「
指標・目標
当社グループでは、2023年4月にカーボンニュートラル宣言を掲げました。
2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、事業活動に伴うGHG排出量(Scope1+2)について、2030年に2022年度を基準とし42%削減する目標を掲げております。
Scope3においては、Scope1+2と同様にSBTに準拠した目標設定を検討しており、2023年6月に認定取得に向けたコミットメントレターを提出しております。
◆GHG排出量削減ロードマップ
GHG排出量(Scope1+2)[t-CO2]
◆GHG排出量実績(海外含むグループ全体)
GHG排出量 (単位:t-CO2) |
2022年度(基準年) 排出量 |
2023年度 排出量 |
基準年比 削減率 |
||
Scope1+2+3 |
|
|
8.4% |
||
|
Scope1+2 |
|
|
14.7% |
|
|
Scope3 |
|
|
7.8% |
|
|
|
Scope3_カテゴリー1 (購入した製品・サービス) |
291,213 |
273,123 |
6.2% |
|
|
Scope3_カテゴリー4 (輸送、配送 上流) |
27,870 |
25,568 |
8.3% |
|
|
Scope3_カテゴリー9 (輸送、配送 上流) |
12,286 |
9,234 |
24.8% |
|
|
Scope3_カテゴリー12 (販売した製品の廃棄) |
86,408 |
79,249 |
8.3% |
|
|
Scope3_その他 |
26,886 |
22,867 |
14.9% |
◆施策の実行状況
2023年度におけるScope1+2のGHG排出量は、基準年度2022年度比14.7%削減を達成しております。これについては、2022年度末に導入した和歌山工場の太陽光パネルの全面稼働、オフセット印刷時の乾燥廃熱再利用及び空調設備・生産支援設備の過剰運用見直しなどによるものです。
また、Scope3のGHG排出量は、基準年度2022年度比7.8%削減を達成しております。これについては、輸配送の効率化や分別活動の徹底による有価物化の推進などによるものです。
今後は、製造ラインの見直しや自動化設備の導入による稼働率の向上、効率的な生産体制の構築などさらなるGHG排出量削減に努めるとともに、低炭素製品・サービスの開発・拡大による価値創出を進めていきます。
(3)人的資本への対応
当社グループでは、「人材」を企業の競争優位性を高め持続的な成長を実現するための重要な経営資産と位置づけております。すべての従業員が、自らの能力を発揮し、価値を創造する「価値創造人材」として活躍できるよう、人材への投資を積極的に行っております。
ガバナンス
人的資本に関するガバナンスは、サステナビリティ全般に関するガバナンスに組み込まれております。
詳細については、「
戦略
当社グループでは、「価値創造人材の活躍」をマテリアリティとして特定し、めざすべきビジネスモデルや経営戦略に沿った多様な価値観を持つ人材の確保と活用、価値創造に向けた能力強化に取り組むとともに、個が持つ能力を最大限に発揮できる職場環境を整備していきます。
◆人材育成及び社内環境整備方針
共同印刷グループは、TOMOWELの理念である「関わるすべてと共に良い関係であり、未来を創り拡げていく」を実現すべく、多様な人材が活躍できる環境の整備を行っていきます。 持続的な企業価値向上に向け、従業員一人ひとりがその能力や個性を生かし、自律的に成長するよう育成に取り組みます。 |
◆重点取り組みテーマ① 多様な価値観を持つ人材の確保と活用
当社グループが、将来にわたる社会や事業環境の変化に対応し、新たな価値を社会に提供し続ける企業であるためには、多様な価値観を持つ人材が、それぞれの視点や経験、能力を企業の成長に活かしていくことが重要です。当社グループでは、新たな価値創造と事業変革を牽引する多様な人材の確保と活用、定着に向けた施策を推進しております。
a.多様な人材の確保と活用
人材の確保に向けて、新卒採用だけでなく、自社にはない能力や経験を持つ経験者採用や再雇用制度等を通じた人材獲得チャネルの多角化に取り組んでおります。人材の活用に向けては、2023年度に昇格制度を改定し、年齢を問わず、潜在能力と意欲、変革力を持つ人材の早期登用を進めております。また、これにより、従業員のモチベーションを向上させ、離職防止にもつなげております。
b.女性活躍
事業変革の実現には、多様な価値観を持つ人材が企業の意思決定に関わることが重要です。特に、管理職をはじめとする中核人材への女性登用については目標値を設定のもと、キャリア形成を支援する施策の導入や研修プログラムの刷新などの取り組みを推進しております。その取り組みは、2023年度に、「えるぼし認定※」の最高位である3つ星を取得するなど、外部評価を獲得しております。
※女性活躍推進法に基づき女性の活躍推進に関する取組の実施状況を評価する認定
◇女性管理職比率の推移(共同印刷単体)
◆重点取り組みテーマ② 価値創造に向けた能力開発
当社グループを取り巻く環境は、社会全体のデジタル化や生活者の価値観の変容など大きく変化しております。当社グループでは、こうした変化にしなやかに対応し、新たな価値を創造する人材を企業の持続的な成長を支える重要な経営資産として捉え、能力やスキルの開発と育成を推進しております。
a.DX人材の育成
当社グループでは、デジタルを活用して自社の「変革」を促進することで競争力を強化し、企業の成長性を高めることを目的として「共同印刷グループ DX戦略」を策定のもと、「ビジネスプロセス変革」による事業基盤強化と「ビジネスモデル変革」による新規事業領域の探索を推進しております。推進に必要不可欠なのが、デジタルリテラシーを持つ人材です。各種DX推進スキルの教育により、グループ全体のデジタルリテラシー向上を図るとともに、変革を自分ごととして捉え、それまでの慣例や風土から脱却して新たな価値を創造するためのマインドセットに力を入れております。
◇共同印刷グループのDX戦略の概要
|
|
|
b.能力開発基盤の強化
当社グループでは、従業員本人と組織のパフォーマンスの最大化に向けた人材マネジメントを推進しております。2023年度には、推進基盤を強化するためキャリア開発プログラムの刷新を行い、従業員の自律的なキャリア形成を支援しております。また、事業環境の急速な変化に対応するには、リスキル・専門性の強化が必要不可欠との認識のもと、推奨資格取得の補助を拡大しております。
(補助対象を2022年度比2.3倍(156件)に拡大)
◇キャリア開発プログラム(共同印刷単体)
プログラム名称 |
対象 |
実施頻度 |
内容 |
2023年度実績 |
キャリアデザイン (自己申告制度) |
全従業員 |
年1回 |
「ありたい姿」「出来ること」「求められること」を整理し、キャリア形成に関して自らの意志を上長・組織に表明する制度 |
実施率99% |
キャリアチャレンジ (社内公募制度) |
希望者 ※現職務経験2年以上 |
年2回 |
新たな取り組み(プロジェクトや新規事業など)や専門性の高い職務等について、社内から人材を募集する制度 |
募集職場11件 応募者11名 |
キャリアデザイン セミナー |
対象社員 |
年7回 |
28歳、44歳、57歳を対象に、自身のキャリアについて改めて振り返り、今後のキャリアプランを考える機会を提供する施策 |
受講者161名 |
キャリア面談 |
対象社員 |
通年 |
人事担当者と対話を通して、面談者自身のキャリア解像度を高め、社員の自律的なキャリア形成の支援を行う施策 |
面談者393名 |
◆重点取り組みテーマ③ 能力を最大限に発揮できる職場環境
企業の生産性と競争力を向上させるには、従業員が働きがいを持てる職場環境を構築し、従業員エンゲージメントを高めることが重要です。当社グループでは、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方の促進やワークライフバランス、健康と安全といった、職場環境の整備に向けた取り組みを推進しております。
a.生産性の高い職場環境づくり
長時間労働の是正や年次有給休暇の取得促進、健康経営の推進によって、従業員のエンゲージメント向上と組織の活性化につなげております。特に、年次有給休暇については、グループ全従業員が年10日以上取得することを目標に掲げ、進捗を管理しながら取得促進に取り組んでおります。また、テレワークの導入をはじめとするハイブリッドワークの推進を通じて柔軟な働き方を促進し、働きやすく生産性の高い職場環境の整備に努めております。
b.仕事と家庭の両立支援
従業員の仕事と家庭の両立を支援することで、優秀な人材の確保と定着、生産性向上を図るだけでなく、従業員自身が多様な価値観を獲得する機会と認識のもと、個の創造性向上につなげております。2023年度からは、次世代の育成支援に重点を置き、特に、男性の育児休業取得については目標値を設定し、グループ全体で推進しております。具体的な取り組みとして、従業員が望む両立が実現できるよう、マネジメント層への研修の実施や配偶者が出産予定の男性社員と人事部の面談を進めております。また、新たに導入した「ライフサポート休業制度」では、不妊治療や子の不登校時にも休業を認めるなど独自の両立支援を行い、離職防止と、従業員エンゲージメントの向上を図っております。
リスク管理
人的資本に関するリスク管理は、サステナビリティ全般に関するリスク管理に組み込まれております。詳細については、「
指標・目標
人的資本に関する指標・目標は、マテリアリティの重点取り組みテーマ及びKPIに組み込まれております。詳細については、「
[基本的な考え方]
企業を取り巻くリスクが増大かつ多様化する中、製品・サービスを安定的に供給し、事業の継続に努めることは、当社グループの社会的責務であると認識しております。その責務を全うするには、リスクを正しく認識して可能な限り低減すると共に、万が一発生した際には損失を最小限にとどめることが重要です。事業計画達成を阻害する経営リスクを未然に防ぐ「リスク管理体制」と不測の事態に対処する「危機管理体制」により、能動的かつ機動的なリスクマネジメントを行っております。
[体制]
当社グループのリスク管理については、通常の業務執行におけるリスクの顕在化を防ぐため、各部門が日常的なマネジメントを行っておりますが、2023年度は、マテリアリティ「責任ある企業行動」の重点取り組みテーマである「統合的なリスクマネジメント」強化の観点から、全社の推進体制を再構築しました。取締役の監督のもと、新設したTOMOWEL-ERM事務局が中心となり、「内部統制委員会」「品質保証委員会」「製品安全委員会」「情報セキュリティ委員会」「環境委員会」などの担当執行役員を委員長とする専門委員会と連携して課題解決に努めております。
不測の事態が発生した場合は「危機管理委員会」が中心となって情報を管理・共有し、関連部門と連携して対応にあたります。代表的な危機局面における対応フローをまとめた「危機管理マニュアル」を策定し、事業環境の変化に応じた見直しを随時行いながら有事に備えております。
<リスク管理体制図>
[リスク]
当社グループの経営目標実現及び財政状況に影響を及ぼす度合いと現在の対応状況を踏まえてリスクを洗い出し、重要度の高い項目を絞り込んで、「重大リスク」と定めました。
当社グループの重大リスクは以下のとおりです。いずれも関係部署が密接に連携して管理し、対応状況をTOMOWEL-ERM事務局を通じて取締役会へ定期的に報告することとしております。重大リスクのうち、中長期的な側面も含めて課題への対応と改善の必要性がより高く、一層の注意が当面必要と判断したリスクについては、主管部署を定めて重点的に管理しております。
なお、これらのリスクは当社グループに発生し得る全リスクを網羅したものではなく、文中の将来に関する事項は本書提出日現在において入手可能な情報に基づいて判断したものです。
(1)当面の注意を要するリスク
① 人材基盤
当社グループは、価値創造人材を確保及び強化する仕組みと環境の整備に努めております。しかし、少子化や雇用環境の変化等で労働力の確保が年々困難さを増す中、事業環境に即した多様な人材の確保・育成・定着が図れなかった場合は、必要な人材リソースの不足や人材の能力発揮不足による競争力低下などで企業成長が阻害され、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 気候変動
当社グループは、「第2 事業の概況 2サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への対応」に記載のとおり、複数の気候変動シナリオに柔軟に対応できるレジリエントな経営体制の構築を進めております。しかし、気候変動に伴う脱炭素社会への移行リスクへ適切に対応できなかった場合は、炭素税や排出権取引制度の導入によるコストの増加、投資対象からの除外と株価下落、資金調達の困難化などの影響を受け、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、気候変動による大規模自然災害の発生などの物理リスクについては、「③災害・パンデミック」においてリスク認識をしております。
③ 災害・パンデミック
当社グループでは、BCP基本方針を定めると共に、データ処理事業を対象とした「事業継続マネジメントシステム(ISO22301)」の認証取得や協力工場等と連携した生産協力体制による事業継続体制の整備、建物や製造設備に対する防火・耐震対策を実施しております。こうした対策で危機の事前回避と有事における対応力強化を図り、経営への影響を最小限にとどめるよう努めております。しかし、大規模自然災害の発生や感染症の流行等で従業員や施設・設備等が予想を超える被害を受けた場合、事業活動停滞による製品供給への支障、設備等の修復にかかる多大なコスト負担などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 法的規制・コンプライアンス
当社グループは事業を行う上で、環境法、下請法、製造物責任法、独占禁止法等、さまざまな法的規制の適用を受けております。従業員教育や内部監査等を通じた法令順守の徹底と企業風土への定着、内部通報窓口の適正運用によるモニタリング体制の確保、コンプライアンス・リスクの全社統合的管理に努めておりますが、規制の改廃や新設、適用基準等の変更があった場合や、ガバナンス体制の形骸化等で法的規制に抵触する事態が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)その他のリスク
① 事業環境
当社グループは、情報系事業においてはコンテンツやソリューションを中心としたビジネスへのシフト、生活・産業資材系事業においては環境に配慮した製品及び高機能包材等の開発強化を進め、既存事業の収益性改善に向けた構造変革と新規事業領域の探索に努めております。しかし、デジタル化や少子化、技術革新、消費行動の変化等の環境変化が想定を上回るスピードで進展し、当社グループの対応が大きく遅れた場合は、事業規模の縮小や競争力の低下など業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 情報セキュリティ
当社グループは、プライバシーマークや情報セキュリティマネジメントシステム(ISO27001)などの外部認証の維持と運用徹底を通じて個人情報や機密情報を安全かつ正確に管理すると共に、危機管理委員会の下部組織である「TOMOWEL-CSIRT」を中心に、不正アクセスや情報の紛失・改ざん、漏洩などへの予防対策を講じて情報セキュリティにおける管理レベル向上と対応力強化へ恒常的に取り組んでおります。しかしながら、サイバー攻撃などを含む意図的、又は過失による情報の紛失・改ざん及び漏洩が万が一生じた場合には、当社グループに対する信用低下や事後対応などのコスト増加により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 原材料の調達
当社グループの事業を維持するためには、サプライチェーンマネジメントの強化と原材料の安定的な調達による製品供給の安定化が必要です。サプライヤーとのパートナーシップをより強め、協働・共創して社会課題の解決をめざすために、従来のCSR調達を「サステナブル調達」とし、新たに策定した「グループ調達基本方針」及び「グループサステナブル調達基準」に基づく取り組みを推進しております。しかし、調達競争の激化で主要原材料の価格が高騰し、コスト削減や販売価格への適正な転嫁が不十分な場合や、社会課題・災害等によるサプライチェーンの停滞で調達遅延が発生した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 人権
当社グループは「すべての事業活動は人の上に成り立つ」という考え方のもと、各種国際規範を支持し、関わるすべての従業員、顧客、取引先の人権を尊重することで、企業の果たすべき責任を担っていくことを基本的な考え方としております。「グループ人権方針」に基づき人権デューデリジェンスや救済窓口の整備を推進し、人権マネジメント体制の整備に努めておりますが、当社グループ及びサプライチェーンにおいて、差別や過剰・不当な労働、ハラスメントなどの問題が生じた場合、労働環境悪化による健康被害、人権侵害の事実発覚による取引停止などで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 製品品質
当社グループは「グループ品質方針」のもと、製造物責任及び製品安全(PL)に関する全社施策や製品含有化学物質情報伝達スキーム「chemSHERPA」に準じた製品含有化学物質の管理を、製品安全委員会を中心とした製品安全推進体制のもとで推進しております。ISO9001など製品安全や品質に関する各種外部認証を取得し、徹底した品質管理下で製品を製造しておりますが、設計上あるいは製造工程上の不備によって製品・サービスに欠陥が生じた場合、損害賠償や売上の低下により当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績の状況
当期におけるわが国の経済は、経済社会活動の正常化が進む中で諸政策による効果もあり、景気回復の動きが緩やかに続きました。しかし、景気の先行きは、世界的な金融引き締めに伴う影響に加え、ウクライナや中東をめぐる情勢、金融資本市場の変動など、十分注意が必要な状況となっております。
共同印刷グループを取り巻く環境も、デジタルシフトの加速やコロナ禍を契機とする環境の変化、原材料費の高騰など、依然として厳しい状態が続きました。
このような状況の中で当社グループは、競争力のある事業領域の確立と高い利益率の実現を目指し、中期経営方針「豊かな社会と新たな価値を創造するために未来起点の変革に挑戦」に基づく各施策を推進しました。
情報系事業では、「印刷事業で培った強みを軸とし、新たな価値創出を実現」するため、既存事業のデジタルシフト対応やコンテンツを生かした事業機会の獲得、業務支援サービスの提案強化に取り組みました。
生活・産業資材系事業では、「パッケージソリューションベンダーの地位確立」に向け、環境配慮製品の開発や提案を強化するとともに、食品・日用品向けのパッケージやラミネートチューブ、機能性包材の受注拡大を図りました。
また、2024年3月に、サーキュラーエコノミーの実現に向けて経済産業省が立ち上げた産官学パートナーシップである「サーキュラーパートナーズ」に参画しました。当社グループはマテリアリティの一つに「循環型社会 ~革新的なパッケージとサービスで、サステナブルな未来をつくる」を掲げております。社会課題の解決に貢献する環境配慮製品や機能性包材の開発に取り組み、持続可能な社会の実現と事業領域拡大の両立を目指します。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高969億9千2百万円(前期比3.9%増)となり、営業利益は15億7千7百万円(前期比103.4%増)、経常利益は20億8千3百万円(前期比61.6%増)となりました。また、特別利益に投資有価証券売却益3億8千4百万円を計上したことなどから、親会社株主に帰属する当期純利益は14億9千5百万円(前期比19.4%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
情報コミュニケーション部門
出版印刷は、教科書などの教育分野やデジタルコミックスなどは堅調でしたが、雑誌をはじめとする定期刊行物の部数減少が続いたほか、書籍もコミックスを中心にシリーズ作品の重版が減るなど全般的に低調となり、前期を下回りました。
一般商業印刷は、パンフレット・リーフレット類が好調に推移、また、Webサイトやコンテンツ制作に関する売上も伸長しました。しかし情報誌は部数やアイテム数の減少で伸び悩み、POPなどの店頭販促関連もキャンペーンの減少やEC加速による規模の縮小で前期を下回りました。
以上の結果、部門全体の売上高は347億1千4百万円(前期比1.2%減)、営業損失は2億8千6百万円(前期は営業損失1億9千7百万円)となりました。
情報セキュリティ部門
ビジネスフォームは、データプリントが地方自治体関連などの既存事業において堅調に推移しました。BPOは記述式試験の採点作業をWebブラウザ上に移行して業務を効率化する新サービスの提供などで需要拡大に取り組みましたが、金融系・医療系の新規受注が伸び悩み、前期を下回りました。証券類とカードは、行動制限解除を受けた旅客需要の増加により乗車券類や交通系カードが好調で、前期より大幅に伸長しました。
以上の結果、部門全体での売上高は286億9千7百万円(前期比10.6%増)、営業利益は13億4千7百万円(前期比77.5%増)となりました。
生活・産業資材部門
紙器は、業務用やPB商品用のラップカートンが伸長し、前期を上回りました。軟包装は、即席めんのフタ材が「パーシャルオープン」を中心に増加、リキッドパッケージも「Tパウチ」などが好調で前期を上回りました。
チューブは化粧品向けの復調もあり増収、ブローボトル・ブローチューブはPB商品用の好調により前期を上回りました。産業資材は「モイストキャッチ」など医薬品向けが好調で前期を上回りました。
以上の結果、部門全体での売上高は314億6千4百万円(前期比4.6%増)、営業利益は11億3千8百万円(前期比559.9%増)となりました。
その他
物流業務が低調となり、売上高は21億1千6百万円(前期比4.2%減)、営業利益は2億3百万円(前期比30.6%減)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ4億4千3百万円増加し109億4千4百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動により得られた資金は、31億7百万円(前期比203億5百万円減)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益22億3千3百万円、減価償却費56億1千5百万円の計上があった一方、売上債権の増加16億9千2百万円と仕入債務の減少23億5百万円があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動により使用した資金は、29億8百万円(前期比15億1千2百万円減)となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出33億6千1百万円があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動により得られた資金は、2億6千6百万円(前年は173億5千9百万円の使用)となりました。これは主に、社債の発行による収入49億8千7百万円、長期借入による収入30億9千9百万円があった一方、社債の償還による支出30億円、長期借入金の返済による支出24億6千5百万円、自己株式の取得による支出11億9千9百万円、配当金の支払7億9千万円があったことによるものです。
生産、受注及び販売の状況
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前期比(%) |
情報コミュニケーション部門 |
34,783 |
99.0 |
情報セキュリティ部門 |
28,811 |
109.6 |
生活・産業資材部門 |
31,044 |
102.8 |
その他 |
2,118 |
96.5 |
合計 |
96,758 |
103.1 |
(注)金額は販売価額によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。
(2) 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前期比(%) |
受注残高(百万円) |
前期比(%) |
情報コミュニケーション部門 |
34,136 |
94.5 |
6,656 |
92.0 |
情報セキュリティ部門 |
30,322 |
111.3 |
9,462 |
120.7 |
生活・産業資材部門 |
30,783 |
99.7 |
7,519 |
91.7 |
その他 |
2,126 |
98.5 |
32 |
146.4 |
合計 |
97,369 |
101.0 |
23,670 |
101.6 |
(3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前期比(%) |
情報コミュニケーション部門 |
34,714 |
98.8 |
情報セキュリティ部門 |
28,697 |
110.6 |
生活・産業資材部門 |
31,464 |
104.6 |
その他 |
2,116 |
95.8 |
合計 |
96,992 |
103.9 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.相手先別販売実績は、総販売実績に対する割合が10%以上の販売先はないため、記載を省略しております。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
(1) 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
①財政状態の分析
総資産は、1,318億1千5百万円(前連結会計年度末1,234億7千1百万円)となり、83億4千4百万円増加しました。これは主に、投資有価証券が77億4千7百万円増加したことによるものです。負債は、686億9千5百万円(前連結会計年度末657億5千1百万円)となり、29億4千3百万円増加しました。これは主に、社債が20億円増加した一方、支払手形及び買掛金が22億8千2百万円、独占禁止法関連損失引当金が8億3千8百万円減少したことによるものです。純資産は、631億2千万円(前連結会計年度末577億2千万円)となり、54億円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益14億9千5百万円、その他有価証券評価差額金55億円の増加と、配当金の支払7億9千万円、自己株式の取得11億9千9百万円があったことによるものです。
②経営成績の分析
当社グループは、情報コミュニケーション部門における出版印刷と商業印刷、情報セキュリティ部門におけるデータプリントやBPO受託、証券類やICカード製造、生活・産業資材部門におけるチューブ・軟包装・紙器等のパッケージ類と、産業資材等の製造を主な事業としております。
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ3.9%増の969億9千2百万円でした。行動制限解除を受けた旅客需要の増加による乗車券類の好調など市況回復の影響もあり、全体として前期を上回りました。
売上原価は前期比2.3%増の778億2千3百万円、対売上高比率は80.2%となり、前期の81.5%から1.3ポイント低下しました。
販売費及び一般管理費は前期比6.5%増の175億9千1百万円となりました。対売上高比率は18.1%で人件費の増加や竣工した本社社屋の不動産取得税納付による租税公課の増加などにより、前期の17.7%から0.4ポイント上昇しました。この結果、営業利益は前期比103.4%増の15億7千7百万円となり、売上高営業利益率は1.6%と、前期から0.8ポイント上昇しました。また、税金等調整前当期純利益は前期比11.6%増の22億3千3百万円となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比19.4%増の14億9千5百万円となりました。また、自己資本利益率(ROE)は、前期の2.1%から2.5%へ0.4ポイント上昇しました。
なお、セグメントごとの経営成績については「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績の状況 」に記載のとおりです。
(2) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金のうち主なものは、製造費、販売費及び一般管理費等であります。また、投資を目的とした資金需要は、設備投資、M&A等によるものであります。
当社グループは、運転資金及び設備資金については、安定的な資金調達、調達コスト抑制及び調達方法の分散・多様化を基本方針としております。
当連結会計年度は、株式会社みずほ銀行などの金融機関から、運転資金として30億円の借入を実行し、さらに社債償還資金30億円(2023年10月償還)と設備投資資金20億円を目的とした50億円の社債の発行を行っております。
なお、当連結会計年度末における借入金、社債及びリース債務を含む有利子負債の残高は155億8百万円、現金及び現金同等物の残高は109億4千4百万円となっております。
(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用している重要な会計方針については、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
(共同印刷マーケティングソリューションズ株式会社の吸収合併)
当社は、2023年11月29日開催の取締役会において、2024年4月1日を効力発生日として、当社の完全子会社である共同印刷マーケティングソリューションズ株式会社(東京都文京区、資本金20百万円、代表取締役社長 今大路 猛)を吸収合併することを決議し、同日付けで合併契約を締結しました。
合併の概要は次のとおりであります。
(1)合併の目的
一般商業印刷、店頭販促関連事業に係る経営資源を集中し組織運営を効率化することで、製品・サービスの品質及び収益性の向上を図るためであります。
(2)合併の方法
当社を存続会社、共同印刷マーケティングソリューションズ株式会社を消滅会社とする吸収合併であります。なお、共同印刷マーケティングソリューションズ株式会社は債務超過となっておりますが、本合併に先立ち、当社が共同印刷マーケティングソリューションズ株式会社に対して有する債権の一部を放棄し、債務超過状態を解消した後に本合併を行っております。
(放棄する債権の内容)
債権の種類:売掛金
債権の額 :1,200百万円
実施日 :2024年3月31日
(注)同社に対する売掛金の債権放棄により、2024年3月期の当社の個別決算においては1,200百万円の特別損失を計上しております。なお、2024年3月期の連結決算においては相殺消去されるため、本債権放棄による連結業績に与える影響はありません。
(3)合併期日
2024年4月1日
(4)合併に係る割当ての内容
本合併に際して新株式の発行及び金銭等の交付はありません。
(5)合併に伴う新株予約権及び新株予約権付社債に関する取扱い
記載事項はありません。
(6)引継資産、負債の状況
当社は、合併の効力発生日において、消滅会社の一切の資産、負債及び権利義務を承継しております。
(7)吸収合併存続会社となる会社の概要
代表者 :代表取締役社長 藤森 康彰
住所 :東京都文京区小石川四丁目14番12号
資本金 :4,510百万円
事業内容 :総合印刷業
当連結会計年度の研究開発活動は、連結財務諸表提出会社の技術開発本部を中核として、技術部門の総合力を発揮できる体制のもと、新技術及び新素材の研究と蓄積技術を有機的に結びつけ、市場ニーズを先取りする新技術、新製品の開発に努めました。
なお、セグメント別の主な研究開発活動を示すと次のとおりであり、当連結会計年度の研究開発費の総額は
情報コミュニケーション部門
・高付加価値印刷・加工技術の開発
・サステナブル印刷の開発
・デジタルコミック関連技術
・偽造防止などセキュリティ関連技術
・生産効率化関連技術
について研究開発を行いました。研究開発費の金額は
情報セキュリティ部門
・標章媒体の開発
・抽選券の応用開発
・屋内測位関連技術
・生産効率化関連技術
について研究開発を行いました。研究開発費の金額は
生活・産業資材部門
・液体包材の開発
・高機能蓋材の開発
・チューブ製品の開発
・高機能材料の開発
・偽造防止などセキュリティ関連技術
について研究開発を行いました。研究開発費の金額は
その他
・上記のほか、特定のセグメントに関連付けられないセグメント間に共通する基礎研究等の研究開発費の金額は487百万円であります。