文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
当社は、2023年5月に2026年3月期(2025年度)を最終年度とする「中期経営計画2023」を策定いたしました。「樹とともに、人と暮らしをつなぎ、はぐくみ、彩りある未来をつくります」を社会的存在意義と定義し、地球温暖化対策として重要な役割を担う森林資源の循環利用に向け、当社のルーツであり、エコマテリアルである木材の利活用の推進等を通じて、経済価値のみならず、社会価値及び環境価値の向上と社会課題解決の一翼を担うべく、本計画に掲げた諸施策を確実に実行していくことで、持続的な成長及び更なる企業価値の向上を実現してまいります。
本中期経営計画は、主要事業である建築資材事業における国産木材比率の上昇を見据えた強固なサプライチェーンの構築や住宅事業における免震マンションの供給拡大等により、本計画最終年度である2026年3月期は売上高2,800億円、営業利益80億円、経常利益75億円、親会社株主に帰属する当期純利益50億円を定量目標としております。
ROICについてはWACCを超える水準値である5%以上を目標としております。
※1 D/Eレシオ:(社債+借入金)/(株主資本+その他の包括利益累計額)
※2 ROIC:(営業利益―法人税等合計)/(社債+借入金+株主資本+その他の包括利益累計額)
(3) 成長牽引策
基本方針
① 素材
我が国の潤沢な資源であり、地球温暖化対策として重要な役割を担う木材の取扱いを強化するほか、建築物の省エネ化・ゼロエネ化に資する商品やサービスの提供を推進し、温室効果ガスの排出削減に努めます。
② 暮らし
ストック型社会の形成に向け、耐震・健康・省エネに配慮した良質で長寿命な住まいづくりを推進し、「横浜」を基盤とする住宅ストックサービスの拡充と既存住宅流通に係る事業の比重を高めます。
③ 人
従業員の自主性・主体性の向上、更には、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進するとともに、「働きがい」と「働きやすさ」を高め従業員エンゲージメントの向上に努めます。
経営環境の変化に対応し「成長と進化」を遂げるべく、収益基盤である既存のコア事業の深化とともに、非住宅木造建築や、建材・住宅設備機器及び木材以外の建築資材等、コア事業の周辺収益事業領域への進出を図ってまいります。更には、事業領域を住まいから拡大し、暮らしにおける木材の活用等、将来的な成長基盤の創造に取り組んでまいります。
(4) 創立100周年となる2050年を見据えた環境目標の設定
※1 国産木材の利用による炭素貯蔵量等の「削減貢献量」や、社有林の二酸化炭素吸収量によるオフセットを含みます。
※2 社有林の二酸化炭素吸収量によるオフセットを含みます。
2050年にバリューチェーン全体でカーボンニュートラル実現を目指してまいります。その足掛かりとして、2026年にナイスグループの事業活動における二酸化炭素排出量の削減等を通じて、Scope1(直接排出)・Scope2(エネルギー使用に伴う間接排出)のカーボンニュートラルの達成を目指します。そして、2030年にScope3(サプライチェーンで発生するその他の間接的排出)を含め、ナイスグループのサプライチェーンにおけるカーボンニュートラルを目指します。
木材の取扱い強化、建築物の木造化・木質化の推進などに注力するとともに、これらの利益を山元に還元することで再造林を推進し、森林資源の循環利用を実現します。また、社有林「ナイスの森」の保有面積及び植林面積の拡大による二酸化炭素吸収量の増大、再エネ由来電力への切り替え等を推進してまいります。環境目標を具現化に導くPDCAを回す軸としてサステナビリティ委員会を設置し、環境経営への取組みに努め、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
(5) 設備投資
2022年10月に運用を開始した当社グループにおける首都圏最大の物流センター「関東物流センター(埼玉県入間郡越生町)」を皮切りに、首都圏物流体制の中核施設である「越谷物流センター(埼玉県越谷市)」を改修し、機能の改善及び運用効率の向上により現場物流機能を強化し、広域ビルダーとの取引拡大を図ります。
また、YOUテレビ株式会社では、2021年より進めてきた、光ファイバーを幹線として大容量・超高速通信を可能とするFTTH(ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)の敷設工事が完了し、サービスを提供する全てのエリアでインターネット光回線「Netyou光」をご利用いただけるようになりました。これにより、同社の情報配信及び通信環境の充実を図るとともに、住宅事業における住宅ストックの活用及び既存住宅流通に係る事業等とのシナジーに活かしてまいります。
(6) 会社の対処すべき課題
住宅・建築業界においては、少子高齢化による人口減少や単身世帯の増加、2024年問題と言われる建設・物流業界における労働環境の変化、建築資材価格や人件費の高騰等、経営環境に関与する外的要因の変化が著しく、その対応が求められています。
当社は、こうした経営環境の変化を新たな企業価値創造の機会と捉え、経済価値のみならず、社会価値及び環境価値の向上と社会課題解決の一翼を担うべく、2025年度を最終年度とする「中期経営計画2023」(以下「本計画」といいます。)において到達目標と成長牽引策を掲げています。また、「樹とともに、人と暮らしをつなぎ、はぐくみ、彩りある未来をつくります」を社会的存在意義と定義し、地球温暖化対策として重要な役割を担う森林資源の循環利用を推進し、環境経営を強化するべく「2050年・バリューチェーン全体でのカーボンニュートラル実現」を環境目標として掲げました。
本計画に基づき、建築資材事業におきましては、当社のルーツであり、エコマテリアルである木材の利活用の推進及び省エネルギー建材・設備等の販売拡大を目指します。また、徳島県においては、構造用集成材の材料の製造工場の建設に着手しており、地域材の活用促進と構造用集成材の供給体制の強化を図ります。住宅事業におきましては、「住まいは命を守るもの」という使命のもと、耐震・健康・省エネに配慮した良質な住宅をエリアの特性に合わせて安定的に供給していくとともに、ストックビジネスを強化し、より安定した収益基盤の構築を図ってまいります。
更に、事業領域を住まいから暮らしへと広げ、宮崎県産飫肥杉の大径木を利用した高耐久赤身材「ObiRED®(オビレッド)」や独自の表層圧密技術「Gywood®(ギュッド)」を施した無垢国産材について、家具や雑貨、車両用床板への採用等、脱プラスチックに資する無垢国産材の新素材開発を通じた非建築物分野におけるウッドチェンジの推進等に取り組んでまいります。また、建材・住宅設備機器のEDI「ナイスアドバン®」や販売店様向けの経営管理システム「木太郎®」の販売を強化し、設計から物流まで住宅建築を支える受発注プラットフォームの構築等のDX投資を推進してまいります。これらの諸施策を着実に実行していくことで、持続的な成長及び更なる企業価値の向上を実現してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ
① サステナビリティに関する考え方
当社は、持続的な成長及び更なる企業価値の向上を目指し、社会的存在意義として「樹とともに、人と暮らしをつなぎ、はぐくみ、彩りある未来をつくります」を掲げております。役職員をはじめとしたステークホルダーの「彩りある未来」の実現を目指し、社会的存在意義をサステナブル推進方針と位置付けることで、サステナビリティへの取組をより一層強化するとともに、経営の中核にサステナビリティ視点を導入し、事業成長と社会のサステナビリティへの貢献の両立を実現してまいります。
当社は、人と環境に優しい自然素材である「木」の普及と、地震に強い構造の住まいづくり及び健康、省エネに配慮した快適な住まいづくりを推進しております。これらの活動を通じて、環境問題をはじめとする様々な社会課題の解決に取り組むことで、会社の持続的な成長の実現及び更なる企業価値の向上を目指しております。このような方針のもと、当社の取締役会は、サステナビリティに関するリスク及び機会について監督を行うこととしております。
また、当社代表取締役社長を委員長とし、取締役等により構成される「サステナビリティ委員会」を設置しております。同委員会は、原則毎月1回開催され、コンプライアンスやリスク管理、労働安全衛生等を含めたサステナビリティに関する事項全般を統括し、当社グループのサステナビリティに関する基本方針や戦略、事業活動等に関する計画及び進捗について審議し、重要事項は取締役会へ報告・提言を行います。
a サステナビリティの推進体制(概略)
b サステナビリティ委員会の活動の概要(2024年3月期)
当社グループは、持続的な成長に向けて優先的に取り組むべき課題として、下記のとおり「素材」「暮らし」「人」の3つのテーマからなる9つのマテリアリティを特定しております。本マテリアリティへの取組を通じて、環境・社会・経済の持続可能性に配慮したサステナビリティ経営を一層推進し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。
a 当社グループのマテリアリティ(重要課題)と関連するSDGs
b マテリアリティの特定プロセス
イ ESG課題の抽出
マテリアリティを特定するに当たり、国際的なサステナビリティ・フレームワークとなる、GRIスタンダード、SDGs、ISO26000、SASB、ESG評価機関の評価項目などを踏まえて、検討すべきESG課題を500項目以上抽出しました。
ロ ESG課題の重要度評価
マテリアリティを「企業経営において最も重要視すべきESG課題」と定義し、ステークホルダー視点及び自社の事業インパクトの大きさ、産業特性などの視点から重要度評価を行い、数あるESG課題から対応優先度の高い項目を抽出しました。
ハ ESG課題の妥当性評価
「ロ ESG課題の重要度評価」で抽出した優先度の高い項目を、更に「事業インパクト及び企業価値への影響」と「社会及びステークホルダーからの期待/ニーズ」の2つの視点から再度整理し、当社にとっての重要度の高いESG課題をマッピングして選定しました。これらのESG課題について、外部有識者を含めて社内で妥当性の議論を行い、マテリアリティを特定しました。
ニ マテリアリティの決定
特定されたマテリアリティについて、取締役会を経て2023年5月に決定しました。
ホ 目標設定と見直し
マテリアリティと経営戦略との統合を行うとともに、社会の変化に合わせてマテリアリティや目標を定期的に見直すことで、継続的な企業価値向上を果たしていきます。
サステナビリティ委員会は、サステナビリティに関するリスクと機会について、当社グループの事業や財務状態に対する影響を検討し、その重大性の評価を実施しております。また、評価したリスクの最小化と機会の獲得に向けた施策を策定するほか、その施策に関わる各部署の実施状況について報告を受け、実施状況の監督を行っております。なお、同委員会において検討されたリスクや機会及びそれらに対する施策のうち、重要事項は取締役会に報告することとしております。
当社のリスクマネジメントの詳細につきましては、
当社は、マテリアリティの達成に向けて、KPI及び目標を設定し、達成度についてモニタリングを進めております。各マテリアリティにおける2024年3月期の主要な活動及び目標は以下に記載のとおりです。
※1 詳細については、「(2)重要なサステナビリティ項目 ②人的資本への対応」に記載しております。
※2 詳細については、「(2)重要なサステナビリティ項目 ①気候変動への対応(TCFD)」に記載しております。
※3 ナイス株式会社が主体となって供給するマンション・一戸建住宅が対象。強耐震構造は耐震等級2を取得した構造のことです。
※4 「死亡災害及び負傷または疾病により障害等級1~7級に該当する労働災害」を「重大な労働災害」と定義しています。
(2) 重要なサステナビリティ項目
① 気候変動への対応(TCFD)
a 気候変動に関する考え方
当社は、マテリアリティに係るテーマとして「素材 カーボンニュートラル社会の実現に向けて」を掲げるなど、気候変動への対応を経営上の重要課題として認識しております。木材流通をルーツとする企業として、国内の豊富な森林資源の循環利用によって課題解決に貢献すべく、住宅・建築物の木造化・木質化の推進等を通じて木材の利用促進を図っております。併せて、住宅・建築物の省エネ化・ゼロエネ化に資する環境配慮型商品やサービスの提供により、温室効果ガス排出量の削減に貢献するなど、事業活動による気候変動対策を推進しております。
当社のTCFDに関する開示情報の詳細については、
URL https://www.nice.co.jp/sustainability/tcfd/
b ガバナンス・リスク管理
気候変動に関するガバナンス・リスク管理は、サステナビリティのガバナンス・リスク管理に組み込まれております。詳細については、「(1) サステナビリティ ②ガバナンス 及び ④リスク管理」に記載しております。
c 戦略
イ シナリオ分析
当社グループにおいて主要な売上高を占める、当社の木材の販売、建材及び住宅設備機器の販売、マンション・一戸建住宅の販売の3分野における2030年の気候変動の影響について、シナリオ分析を実施しております。
当社が採用したシナリオ及び参照したデータは、以下のとおりです。
ロ シナリオ分析の結果
(ⅰ)分析結果の概要
上記シナリオ分析の結果、2℃未満シナリオについては、企業活動に伴う温室効果ガスの排出量に応じて税金を課す炭素税の導入や、エネルギー価格の上昇が、主なリスクになると認識いたしました。これらは、再エネの導入促進や自社施設の省エネ化の推進等により、温室効果ガス排出量を削減することでリスクの軽減が可能です。一方で、ZEHの普及に伴う創エネや省エネに資する建材・設備機器の需要や、木材の需要の増加、既存住宅市場の活性化など、リスクを上回る事業拡大の機会が発生することを見込んでおります。
4℃シナリオについては、温室効果ガスの排出量規制への対応コストが生じない一方、自然災害の激甚化によるサプライチェーンの分断や、平均気温の上昇による森林の生態系の変化などを、大きなリスクとして認識しました。また、今回のシナリオ分析においては事業インパクトの特定ができなかったため、「(ⅱ)気候変動リスク・機会」の表に記載していないものの、防災集団移転やインフラ強靭化、災害からの復興需要といったニーズが新たに発生する可能性があります。
(ⅱ)気候変動リスク・機会
当社における重要度が高い気候変動リスク及び機会は以下のとおりです。
顕在化時期は短(2025年まで)・中(2026年から2030年まで)・長(2031年以降)の3段階、事業への関連度合いは●(大いに関連がある)、▲(関連がある)、―(あまり関連がない)の3段階、影響度は財務へのインパクトの大きさを鑑みた1~5の5段階で評価しております。
d 指標と目標
イ 環境目標
当社は、事業活動を通じた社会全体の環境負荷の低減に向けて、自社の事業活動における温室効果ガス排出量の削減に取り組むとともに、木材の循環利用やZEHの普及促進などを通じて社会全体の温室効果ガス排出量を削減するなど、「削減貢献量」の創出を推進してまいりました。
取引先様やお客様をはじめとしたステークホルダーとの連携によって、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量について、2050年までに実質ゼロに挑戦することを宣言し、以下のとおり「ナイスグループ環境目標」を策定しております。
ナイスグループ環境目標
※5 国産木材の利用による炭素貯蔵量や、太陽光発電等の再生可能エネルギー由来電力の提供量など、ナイスグループの事業活動等によって社会全体で削減された温室効果ガス排出量を「削減貢献量」と定義しております。本目標は、上記削減貢献量及び社有林の二酸化炭素吸収量によるオフセットを含みます。
※6 社有林の二酸化炭素吸収量によるオフセットを含みます。
このうち、2026年目標につきましては、以下「ロ 温室効果ガス排出量の実績」「ハ 社有林「ナイスの森」の二酸化炭素吸収量の実績」に記載のとおり、2024年3月期のScope1・Scope2の合計が7,800t-CO2、同社有林「ナイスの森」の二酸化炭素吸収量が10,071t-CO2となったことから、排出量を吸収量が上回り、早期にカーボンニュートラルを達成いたしました。
今後、継続してScope1・Scope2のカーボンニュートラルを維持するとともに、2030年目標である「森林育成と木材利活用によるカーボンニュートラル社会実現への貢献(Scope1・Scope2・Scope3のカーボンニュートラルの達成)」の達成に向けて取組んでまいります。
ロ 温室効果ガス排出量の実績
当社は、GHGプロトコルに則り、当社グループの事業活動に伴う温室効果ガス排出量の算定をしております。2024年3月期における当社グループの温室効果ガス排出量は、以下「Scope1・Scope2の実績推移」に記載のとおり、7,800t-CO2(Scope1:2,705 t-CO2、Scope2:5,095 t-CO2)となりました。
Scope1・Scope2の実績推移(t-CO2)(※7)
※7 ナイス株式会社及び国内にある連結子会社を対象に算出した温室効果ガス排出量となります。
ハ 社有林「ナイスの森」の二酸化炭素吸収量の実績
森林は、土砂災害の防止、生物多様性の保全、水源のかん養などの多面的機能を有しています。更に、大気中の二酸化炭素を吸収し、炭素を貯蔵しながら成長することから、地球温暖化の原因である二酸化炭素の吸収源・貯蔵庫としても重要な役割を発揮しています。
当社は、木材流通をルーツとする企業として、利益の一部を山林取得に充て、社有林の保全・育成を通じて地球環境保護に貢献していきたいとの考えから、1980年より社有林「ナイスの森」の取得を開始しております。現在では全国8カ所、総面積は2,032.2ヘクタールとなっております。
2024年3月期における二酸化炭素吸収量は、以下「社有林「ナイスの森」の概要と2024年3月期の二酸化炭素吸収量」に記載のとおり、合計10,071t-CO2となりました。
社有林「ナイスの森」の概要と2024年3月期の二酸化炭素吸収量(※8)
※8 社有林「ナイスの森」の二酸化炭素吸収量は、2024年5月末時点で入手している最新の森林簿に基づき計算しております。二酸化炭素吸収量は、小数点第一位を切り捨てしているため、合計の数値は一致しません。
② 人的資本への対応
a 人的資本に関する考え方
当社は、人材こそが当社グループの最大の財産であり、人材の成長がグループの成長につながるという考えのもと、「働きやすさ」と「働きがい」を高めるための人材への投資を通じて、従業員一人ひとりの仕事を通した幸せと成長を実感できる経営の実現に努めております。持続的な成長及び更なる企業価値の向上に向けて、自律的なキャリア形成と成長をサポートすることで、多様な人材一人ひとりがそれぞれの個性を活かし、自らの能力や強みを発揮し活躍する「主体的な風土の確立」を目指してまいります。また、キャリア採用の強化を通じて多様な経験やスキルを持った人材を獲得していくことでケイパビリティを高め、コア事業の成長と将来的な成長基盤の創造への原動力にしてまいります。
b ガバナンス・リスク管理
人的資本に関するガバナンス・リスク管理は、サステナビリティのガバナンス・リスク管理に組み込まれております。詳細については、「(1) サステナビリティ ②ガバナンス 及び ④リスク管理」に記載しております。
c 戦略
イ 従業員の処遇面の見直し
当社は、従業員が活力をもって、安心して仕事に取り組めるよう、2024年4月には、消費者物価指数の上昇及び世間動向を踏まえた水準の賃上げ(ベースアップ及び定期昇給)を実施いたしました。加えて、従業員が安心して長く働きたいと思えるような魅力ある会社づくりを進めるため、ナイスグループ労働組合と協議を重ね、各種の処遇改善を実施いたしました。また、働き方の多様化に向けた取り組みとして、子育て、家族の介護、自身の病気治療を目的に取得できる「ライフサポート休暇」制度を導入し、従業員のワークライフバランスとウェルビーイングの向上を支援いたします。
ロ エンゲージメントスコアの向上
当社は、従業員の企業理念や経営方針への共感度並びに企業価値の向上に対する貢献意欲を可視化することで課題を特定し、その解決に向けた施策を検討するために、2024年3月期よりエンゲージメントサーベイを実施しております。本サーベイの結果は、重要な経営指標として取締役会に報告し、フラットな組織風土の醸成に向けた組織開発や人事戦略の策定に活用しております。今後も定期的なエンゲージメントサーベイの実施を通じて、各組織の結果を確認・検証し、組織風土の継続的な改善活動に取り組んでまいります。
ハ タレントマネジメントシステムの構築並びにサクセッションプランの策定及び実践
新年度よりタレントマネジメントシステムを導入し、従業員一人ひとりのスキルや強み、経験等の情報を一元管理し、分析及び活用できる仕組みを整備するとともに、従業員が自らのスキルや強み、経験等の活用といったキャリア志向について自己申告できるようにすることで、キャリアの自律を進めてまいります。これらを通じて、キャリア開発や戦略的な人員配置を行い、多様な人材が適材適所で活躍できる基盤を整備してまいります。また、会社の持続的な成長のために、サクセッションプランを策定し、次世代の経営者または幹部となり得る候補者の人材プールを形成し、継続的に育成してまいります。
ニ 健康経営の実践
当社は、会社が健全であるためには従業員一人ひとりが心身ともに健康であることが重要であるという考えのもと、従業員とその家族のこころとからだの健康づくりを推進し、健康意識を向上させる「健康経営」の実践に取り組んでおります。なお、「健康経営優良法人2024」において、当社は大規模法人部門、ナイスコンピュータシステム株式会社及びナイス沖縄株式会社は中小規模法人部門の認定を受けております。
ホ 人材育成の取り組み
当社グループが目指す成長に向けて、従業員のスキルアップとリスキリング、キャリア自律を目的としてグループ共通のeラーニングによる自己啓発ツールを新年度から導入いたします。基礎から応用までレベルに合わせたビジネススキル全般に加えて、IT・DX等の最新知識やリベラルアーツ等の周辺知識など、幅広いコンテンツを網羅的に提供することで、自分が学びたい分野について自律的かつ主体的に学習できる環境を整えております。
d 指標と目標
当社は、多様な人材の活躍を推進する取り組みの一環として、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)に基づき、2021年4月に公表した行動計画において、2026年3月までに女性の採用比率を40%以上にすること及び女性管理職比率を2021年3月末時点の2倍にすることを目標として定めております。このうち女性の採用比率については、既に2022年3月期から2024年3月期まで3期連続で達成しております。
健康経営においては、健康診断受診率100%、ストレスチェック受検率90%を目標に掲げ、今後、中長期的には健康経営優良法人「ホワイト500」の認定取得を目指し、取り組みを進めてまいります。
(1) リスクマネジメントの考え方
当社は、当社グループ全体の企業価値を持続的に向上させるため、事業活動に関連する内外の様々なリスクを適切に管理するための体制を構築しています。また、事業活動に重大な影響を及ぼすリスクが顕在化した際の損失を低減させるための活動を行います。
(2) リスクマネジメントの体制
当社は、下図のとおりリスクマネジメント体制を構築しております。
当社グループにおけるリスク管理に関する取組は、取締役会が監督するサステナビリティ委員会(委員長:代表取締役、委員:取締役、原則毎月1回開催)が統括し、当委員会がリスク管理の基本方針を定めております。当委員会は、専門部会としてコンプライアンス・リスク管理部会を設置し、当部会がリスク管理に関する取組を所管し、必要に応じてマテリアリティ部会と連携して当社グループのリスクを識別・評価し、必要な対策をサステナビリティ委員会に報告しております。両部会からの報告に基づき、サステナビリティ委員長は、必要に応じてリスク管理の状況及びリスク対応計画の進捗状況を取締役会に報告します。
コンプライアンス・リスク管理部会は原則毎月1回開催され、当社の各拠点及びグループ各社に配置したリスクマネジメントリーダーから事業に係るリスクを集約し、評価・把握のうえ、対応計画の作成と進捗管理を行うほか、各リーダーの教育を行うなど、現場部門視点でのリスク管理を推進します。
マテリアリティ部会は、原則毎月1回開催され、外部環境や各種モニタリング指標の分析等を通じて、中長期的な全社レベルのリスクを特定し、対応計画の作成と進捗管理を行うなど、管理部門視点でのリスク管理を推進します。
(3) 主要なリスク
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に及ぼす影響については、具体的な内容を見積もることが困難であるため、記載しておりません。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 住宅・不動産市場の動向に関するリスク
当社グループの事業は、国内における経済及び住宅・不動産市場の動向に大きく依存しております。何らかの要因により国内の経済状況が悪化し、需要の後退等につながった場合や、将来的に市場構造が大きく変化した場合等には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、より広い市場を見据えた積極的な木材利用の促進及び付加価値の高い良質な住宅の提案・供給等により需要の喚起に努めるとともに、経済価値・社会価値・環境価値を創出し、持続可能な社会の形成に貢献するサステナビリティ経営への取組を強化し、収益性の向上を図ることで、当該リスクの軽減に努めてまいります。
② 木材、建材・住宅設備機器等の調達及び価格変動に関するリスク
当社グループは木材の仕入れを国内外から行っており、建材・住宅設備機器についても仕入先メーカーの一部では部品調達や製品生産を海外拠点にて行っております。そのため、国内外の自然災害や、社会不安(戦争、感染症の流行、地政学的リスク等)などにより仕入れが困難になる可能性があります。また、取扱商品の市況並びに需給の急激な変動、為替等による仕入価格の大幅な変動が生じた場合等には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、国内外における調達力を生かし、木材製品や建材・住宅設備機器等の商品について、複数の産地、メーカーからの仕入れを通じて、安定的かつ適正価格での調達に努めているほか、全国にある物流拠点を活用してストック機能を発揮し、安定的な供給に努めております。なお、短期間での急激な価格変動が生じた場合には、一時的に影響を受ける可能性があります。
③ 法令違反等に関するリスク
当社グループは、宅地建物取引業法、建設業法、建築士法等の法令に基づく許認可を受けるとともに、建築、労働、環境その他事業の遂行に関連する各種の法令及び条例に則り、事業活動を行っております。これらにおいて、外部協力事業者を含めて法令違反や不正行為、労働災害等が生じた場合、改善に向けて多額の費用が発生すること、または業務停止等の行政処分を受けることで、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、損害賠償金の支払いや訴訟等により、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
当該リスクに対応するため、当社グループは人権方針や腐敗防止方針等を定め、役職員に対してコンプライアンスに関する研修を継続的に実施しているほか、内部通報制度を整備し運用しています。また、取締役会直属のサステナビリティ委員会配下のコンプライアンス・リスク管理部会では、コンプライアンス体制の維持及び向上を図るための施策の計画立案及び実施について監督を行い、コンプライアンスに関わる事案等の情報共有、分析並びに発生防止や対策に関する検討、指導及び監督等を行うとともに、必要に応じて同委員会を通じて取締役会に報告及び提案を行っております。さらに、安全委員会・衛生委員会とは別に、安全衛生活動を強化するため、物流・製造・施工管理に関連する各部署、グループ会社が連携し、3カ月ごとにナイスグループ中央安全衛生委員会を開催し、労働災害の予防に向けた定期点検、発生事案に対する検証及び再発防止策の推進等を行っております。そのほか、専門分野の異なる複数の法律事務所と顧問契約を締結しており、事案の内容に応じて的確な助言を受け、迅速に対応できる体制を整えております。
④ 人材に関するリスク
当社グループの持続的成長及び企業価値の向上は、有能な人材の確保に拠るところが大きく、何らかの理由により継続的な人材の採用及び育成が不十分となった場合や人材の流出が続いた場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、エンゲージメントサーベイを定期的に実施し、各職場の結果を確認・検証し、課題解決に向けた施策を実施してまいります。ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進するほか、社員の多様な働き方に対応した施策を取り入れていくことで、多様な人材一人ひとりがそれぞれの個性を活かし、自らの能力や強みを発揮し活躍できるよう、役職員の「働きやすさ」と「働きがい」の向上に努めてまいります。また、健康経営の実践を通じて、役職員が安全で心身ともに健康的かつ安心して働ける健全な職場環境づくりを推進するとともに、タレントマネジメントシステムを導入し、キャリア開発や戦略的な人員配置などを通じて計画的かつ継続的な人材育成に努めてまいります。
⑤ 建設技能者の減少に関するリスク
建設業界における建設技能労働者は長期的に減少傾向にあります。今後、当社グループ及び施工協力会社を含めて必要な建設技能労働者の確保が困難となり、施工能力の低下による施工の遅れや長期化につながった場合、労務費の高騰につながった場合等には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、新年度に当社グループの建設業関連の部署・連結子会社を再編し、施工機能の強化・合理化を図ることとしております。また、協力会社を含め、中長期的な建設技能者の育成・確保に向けた働き方改革等の処遇改善策を推進してまいります。
⑥ 自然災害及び感染症に伴う事業継続に関するリスク
大規模な地震や風水害等の自然災害が発生し当社グループの施設・設備等に甚大な被害が生じた場合や、感染症等の急激な拡大等により事業活動に大きな制約を受けた場合等には、当社グループの役職員や業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、事業に影響を与えかねない災害等が万が一起こった場合を想定し、事業の継続を可能とするための事業継続計画(BCP)を策定しております。具体的には、安否確認等のマニュアルを作成し、定期的に訓練を行っているほか、避難場所の周知や防災備蓄、計画的な設備の改修を進めるなど、災害による被害や業績等への影響を抑えるよう努めるとともに、感染症の流行も踏まえた事業継続体制の整備を進めております。
⑦ 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、事業上の重要情報及び事業の過程で入手した個人情報や取引先等の機密情報を保有しております。当社グループのITシステムへのサイバー攻撃やウイルス感染等により業務が停滞した場合、また、個人情報等が漏洩した場合等には、社会的信用の低下や損害賠償の発生等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、情報資産を安全かつ適正に管理、運用し、情報の漏洩や紛失、不正なアクセスや破壊・改ざん・盗難などが起きないよう「情報セキュリティ方針」を定めております。また、外部からのサイバー攻撃や不正アクセス、ウイルス等を防止するセキュリティ対策に努めているほか、情報資産を利用する全ての役職員に対し必要な教育訓練を定期的に実施するなど、情報セキュリティ対策を徹底しております。
⑧ 品質保証に関するリスク
マンション事業及び一戸建住宅事業において、予期せぬ重大な品質問題が生じた場合には、多額の費用発生や当社グループの評価を大きく毀損することになり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、当社グループでは、地盤調査、設計、基礎工事から上棟、竣工まで、進捗に合わせて建築基準法及び住宅の品質確保の促進等に関する法律に準じた自社検査に加え、第三者機関による検査を実施することで、設計・施工上の品質において万全を期すとともに、長期保証制度及び定期的な点検を実施しております。また、住宅や建築などを専門分野とする法律事務所と顧問契約を締結しており、事案の内容に応じて的確な助言を受け、迅速に対応できる体制を整えております。
⑨ 保有する資産に関するリスク
当社グループは、全国に木材市場や物流センター、山林等の有形固定資産を保有しております。経営環境の変化や施設・設備の老朽化等により当該資産から得られる将来キャッシュ・フローの見積もりが著しく減少した場合、当該資産の市場価格が下落した場合及び用途が変更された場合等には減損損失が発生する可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、当社グループでは、中長期の改修計画を策定し、施設・設備の適切な管理を推進しております。また、固定資産の減損に係る会計基準に基づき、適正な会計処理を実施しております。
⑩ 取引先への信用供与に関するリスク
当社グループは、取引先に対する売上債権等の信用供与を行っております。従って、何らかの要因により取引先の経営状況が悪化した場合には、貸し倒れ等により突発的な不良債権等が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、信用リスクの顕在化を防ぐために適切な債権限度額を設定するなど、与信管理を徹底するとともに、信用リスクが顕在化した場合の損失に備えるため、一定の見積もりに基づいて貸倒引当金を設定しております。
⑪ 資金調達に関するリスク
当社グループは、主として金融機関等からの借入金により、事業に必要な資金を調達しております。そのため、金融市場の混乱や当社格付の引下げ、または金融機関や機関投資家等の融資及び投資方針の変更等により、当社グループの資金調達が制約される可能性があるとともに、将来において金利が上昇した場合には、資金調達コストが増大するおそれがあり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、長期での資金調達や金利の固定化のほか、コミットメントラインの活用による十分な資金の流動性確保に努めるなど、安定的かつ効率的な資金調達に努めております。
⑫ 為替に関するリスク
当社グループは海外から木材及び建材を輸入しており、為替変動により想定以上のコストが発生する場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、輸出入契約額の一定程度を先物為替予約によりヘッジすることで、為替相場の変動が経営成績に及ぼす影響を軽減するよう努めております。
⑬ 気候変動に関するリスク
当社グループは、取締役会において気候変動に関する主要なリスクについて監督を行うこととしており、取締役会直属のサステナビリティ委員会において検討した事項について、必要に応じて審議を行い、重要事項を決定していくこととしております。
当社グループは、環境方針に基づき、企業活動を通じた環境負荷の低減に努めております。このうち、気候変動への対応については、TCFDのフレームワークに基づいてまとめており、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 重要なサステナビリティ項目 ① 気候変動への対応(TCFD)」に記載しております。
⑭ 設備投資及び企業買収、研究開発等に関するリスク
当社グループは、事業拡大の有効な手段の一つとして、設備投資や企業買収、研究開発等の推進を掲げております。市況の変化や新たなリスクの顕在化等により、設備の稼働率や対象企業等の価値が大幅に低下するなど、想定した効果を得ることができなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、取締役会等における十分な議論を踏まえた慎重な検討に加え、マーケット調査、対象企業の財務内容、契約内容の十分な事前調査を実施しているほか、新規投資の妥当性の判断に用いるハードルレートはWACCを上回る水準に設定するなど、リスクの回避に努めるとともに、資本コストを意識した経営を推進していきます。
⑮ 業務委託先の倒産等に関するリスク
マンション事業及び一戸建住宅事業において、設計会社及び建設会社等の外部業者に対して各種業務の発注及び委託等を行っております。発注した各種業務が適切に履行されているか逐次確認しておりますが、外部業者が当該業務を履行しない場合や倒産した場合等には、当社グループが設定したスケジュールや品質基準・法令等に従って当該業務が履行されないおそれがあります。特に、顧客に販売するマンション及び一戸建住宅等の工事完成前に売買契約を締結し、顧客に対して引渡義務を負う場合において、所定のスケジュールや品質基準・法令等を満たした工事が履行されない場合には、売主として顧客に債務不履行責任を負い、また、規制当局による是正指導の対象となるおそれがあります。これらにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、売主として保証金の供託または保険の加入をしております。また、他の事業者により各種業務が適切に履行されるよう、当社品質基準を共有できる複数事業者と与信等の一定の取引条件基準を設定した体制を構築するなど、リスクの最小化に努めております。
⑯ 新株式第三者割当増資に関するリスク
当社は2021年7月16日開催の取締役会において、新株式第三者割当増資及び当該割当先との資本業務提携契約の締結を決議しております。当該割当先が、当社株式を売却する場合には、当社の株式の需給に影響を及ぼす可能性があり、また、当社の株価に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、当該資本業務提携契約に基づき、緊密かつ相互的な協力関係を構築することにより、両社の発展に貢献するよう努めていきます。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要は以下のとおりであります。
当連結会計年度における我が国経済は、物価上昇の影響を受けつつも雇用・所得環境の改善等により個人消費は底堅く推移した一方、地政学的リスクの長期化や円安の進行等が下振れリスクとなっております。
住宅関連業界におきましては、アフターコロナの行動変容や建設コストの増加、住宅ローン金利の上昇懸念等により、新設住宅着工戸数が累計で前年同期比7.0%減少の800千戸となりました。当社の連結業績に影響を与える持家の一戸建住宅は前年同期比11.5%減の219千戸、分譲一戸建住宅は前年同期比7.4%減の133千戸といずれも大きく減少するなど、経営環境は不透明な状況が続いております。
このような状況の中、当社グループの当連結会計年度における売上高は2,258億69百万円(前期比4.4%減少)、営業利益は44億3百万円(前期比16.8%減少)、経常利益は43億32百万円(前期比12.5%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は42億4百万円(前期比11.2%増加)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
a 建築資材事業
建材・住宅設備機器については、住宅の省エネ性能の見直しが加速する中、環境配慮型商品の提案営業や工務店様のZEHへの取り組みのサポートに努めたことなどにより、受注が堅調に推移しました。
木材については、昨年12月に木材の利用促進と住宅・非住宅木造建築の普及に資する総合展示会「木と暮らしの博覧会」を開催し、森林資源の循環利用と木材のサプライチェーンにおける当社グループの取り組みを広くPRするとともに、国産材の需要拡大に努めましたが、木材価格が低調に推移したことに加え、木造住宅の新設着工が低迷したことなどにより販売量が減少しました。
これらの結果、売上高は1,699億49百万円(前期比8.0%減少)となり、営業利益は28億69百万円(前期比29.5%減少)となりました。
b 住宅事業
マンション事業については、「住まいは命を守るもの」という使命のもと、1997年より免震マンションの供給に努めており、仙台市、宇都宮市の新築免震マンションは全戸完売となりました。また、2025年3月期に売上計上予定の「ノブレス横濱鶴見ミッドパーク」(横浜市・59戸)は既に全戸完売となるなど、次期以降の販売も順調に推移しました。また、一戸建住宅事業については、当社の主力エリアである「横浜・川崎エリア」のほか、仙台市、新潟市、宇都宮市、浜松市、豊田市の各営業拠点における販売が堅調に推移いたしました。
既存住宅流通事業については、不動産仲介事業における法人向けサービスの拡充や、首都圏15カ所のネットワークを生かした中古マンションの買取再販事業の推進を図ったほか、マンション総合管理事業では、ナイスコミュニティー株式会社における管理マンション等の修繕工事の完工等が順調に推移しました。
これらの結果、売上高は455億93百万円(前期比9.8%増加)、営業利益は29億円(前期比65.1%増加)となりました。
c その他の事業
その他の事業については、ソフトウェア開発事業及びシステム提供事業を行うナイスコンピュータシステム株式会社で、販売店様向け経営管理システム「木太郎®」のサブスクリプション型サービス「木太郎®6」の提供を開始しました。また、一般放送事業(有線テレビ放送事業)や電気通信事業等を行うYOUテレビ株式会社では、2021年より進めてきたFTTH(ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)の敷設工事が完了し、サービスを提供する全てのエリアでインターネット光回線「Netyou光」をご利用いただけるようになりました。
これらの結果、売上高は103億26百万円(前期比1.6%増加)、営業利益は4億32百万円(前期比67.5%減少)となりました。
総資産は、前連結会計年度末に比べ45億86百万円増加し、1,613億8百万円となりました。これは、現金及び預金、有価証券、棚卸資産及び有形固定資産が増加しましたが、売上債権が減少したことなどによるものです。
負債は、前連結会計年度末に比べ9億97百万円減少し、1,043億35百万円となりました。これは、仕入債務が増加しましたが、借入金が減少したことなどによるものです。
純資産は、前連結会計年度末に比べ55億83百万円増加し、569億73百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上、その他有価証券評価差額金及び非支配株主持分の増加などによるものです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ41億52百万円増加し、415億1百万円となりました。
営業活動による資金の増加は、101億3百万円(前期は129億56百万円の増加)となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益50億91百万円、仕入債務の増加38億5百万円、売上債権の減少27億53百万円及び固定資産除売却損益△22億97百万円です。
投資活動による資金の増加は、6億14百万円(前期は23億44百万円の減少)となりました。主な内訳は、有形固定資産の売却による収入24億73百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入11億61百万円及び有形固定資産の取得による支出31億79百万円です。
財務活動による資金の減少は、66億24百万円(前期は59億77百万円の減少)となりました。主な内訳は、借入金の純減少額56億78百万円及び配当金の支払額7億3百万円です。
④ 仕入及び販売の状況
a 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績等をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(ⅰ)建築資材
(ⅱ)住宅
販売用不動産の受払状況
(注) 当期減少額欄の( )は内数で、保有目的の変更による有形固定資産への振替額であります。
(ⅲ)その他
事業の内容が多岐にわたるため、記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容等
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績
当連結会計年度における売上高は2,258億69百万円(前期比4.4%減少)となりました。住宅事業の全部門及び建築資材事業の建材・住宅設備機器の売上高は増加しましたが、木材の売上高が大きく減少したことが主な要因であります。
利益面では、売上総利益は住宅事業の増収等により323億52百万円(前期比0.9%増加)となりましたが、販売費及び一般管理費も増加したため、営業利益は44億3百万円(前期比16.8%減少)、経常利益は43億32百万円(前期比12.5%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は固定資産売却益の計上等により42億4百万円(前期比11.2%増加)となりました。
連結売上高、連結営業利益等をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
② 財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析
財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析は「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」及び「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは現在、必要な運転資金及び設備投資資金については、自己資金のほか、借入金、社債及び増資等により調達することとしております。今後も営業活動により得られるキャッシュ・フローを基本に将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達していく考えであります。来年度以降の建築資材事業における経常運転資金や住宅事業における販売用不動産の取得といった資金需要等に対応し、機動的な資金調達の実現を図るため、2024年3月31日までに主要取引金融機関との間で、総額188億円のコミットメントライン契約を締結しております。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
⑤ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 定量目標」に記載しております。
中期経営計画の最終年度である2026年3月期の目標は、売上高2,800億円、営業利益80億円、経常利益75億円、親会社株主に帰属する当期純利益50億円であります。
該当事項はありません。
該当事項はありません。