第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループでは、グループの存在意義である企業理念として「地域とともに生き、広く社会の発展に貢献する」を掲げております。常に新しい領域への進出の可能性を求めるとともに、進出した地域の人々や社会と融和し、地域文化の発展に尽力しております。当社グループは、お客さまの物流部門の一翼を担う企業として、お客さまに喜んでいただけるサービスを提供し続け、事業を通じて地域の社会や経済の発展に貢献してまいります。

 

 今後のわが国経済は、物価上昇による個人消費の停滞と、製造業における生産調整など、景気回復の停滞が予想されます。また引き続き世界各地で地政学的リスクが懸念されるなど、先行き不透明な状況が続くと予想されます。

 物流業界におきましては、国内では生産活動の悪化が予想され、輸出入貨物についても世界的な景気減速により不透明感が増し、また燃料費および資材費の高騰など、物流を取り巻く環境につきましては、引き続き変化への対応を求められる状況が続くと思われます。

 このような状況のもと、当社グループでは、「中期経営計画」に掲げる、スローガン『Grow with the Next Value』の下、基本方針1.収益基盤の拡充によるトップライン向上 2.TRANCYグループ経営基盤の強化 3.ESG経営/サステナビリティの取組み推進 に基づき、様々な施策を実施してまいります。

 1.収益基盤の拡充によるトップライン向上といたしまして、特殊化学品の取扱拡大に向け、積極的な営業展開を図るとともに、新規拠点整備および機能拡充の検討を進めてまいります。また、新分野における物流取扱いの創出に向け、社会的ニーズが高まるスマイルケア食について、ECでの取扱いも含めて事業拡大を図り、倉庫自動化等の省人省力化を実現した取扱い開始に向けて取り組んでまいります。

 2.TRANCYグループ経営基盤の強化といたしまして、グローバル物流事業の強化・拡大に向け、タイ現地法人における自社倉庫の増床による拠点拡充を図るとともにグローバルに連携可能なフォワーディングシステムの活用によりサービスの安定化を図ってまいります。また、持続可能な輸送スキームの再構築に向け、モーダルシフト・モーダルコンビネーションの展開や経営基盤である四日市港へのRORO船誘致にも取り組むとともに、四日市港の物流機能の更なる拡充に向け、引き続き四日市港におけるコンテナ用耐震岸壁の拡張ならびに港湾機能の最適化に向けて行政と連携して取り組んでまいります。更には、中長期的な企業価値向上の実現に向けて策定した新たな経営指標に基づき、収益性の向上や最適資本構成の実現を図ってまいります。

 3.ESG経営/サステナビリティの取組み推進といたしまして、GHG排出量削減に向け、算出したSCOPE1・2・3の分析を進め、太陽光発電設備の更なる導入や水素を活用した燃焼効率の高い荷役機器の導入など具体的な施策を検討するとともに、四日市港におけるカーボンニュートラルポートの実現に向け、水素やアンモニアなどの新たなエネルギーの取扱いの研究、検討を進めてまいります。また、人的資本の重要性を認識し、多様な価値観を尊重し多様な人財が活躍できる環境の整備を図ってまいります。更には、社会インフラである物流サービスを安定的に提供するため、防災およびBCPのより一層の充実を図ってまいります。

 

[経営指標目標]

項目

指標

現中計最終年度(2025年度)目標

中長期目標

業績目標

売上高

1,300億円以上

-

経常利益

(経常利益率)

80億円以上

(6.0%以上の維持)

-

資本収益性

ROE

6.0%以上

8.0%以上

株主還元

配当性向

DOE

配当性向40%もしくはDOE2.0%の
いずれか高い金額を目安に配当実施

業容拡大、収益性改善とともに
更なる株主還元の拡充を目指す

自己株式取得

金額上限20億円
発行済株式総数5%を目途

B/S

コントロール

自己資本比率

中長期的に自己資本比率50%台を目安としてB/Sのコントロール

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)ガバナンス

 当社グループはより長期的な視野で当社グループのサステナビリティ経営をけん引するため、2021年12月1日付で従来の企業価値向上委員会から改編し、サステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会は、サステナビリティ方針の策定やマテリアリティの特定ならびにその見直しなど、重要な事項を審議・議論し、取締役会への付議・報告を行う体制となっております。また、サステナビリティ委員会の下部組織には、全社的にサステナビリティ活動を推進していくために、サステナビリティ推進委員会を設置しており、マテリアリティの評価、当社グループのサステナビリティ課題・計画を検討・立案し、サステナビリティ委員会に上程するとともに、計画を実行し、その進捗管理を担っております。

 さらに、サステナビリティ推進委員会の下部組織には、サステナビリティ推進委員会の役割を実働的に実行する三分科会を設置しております。具体的には、CO2排出量の削減や廃棄物削減、生物多様性への対応等の環境課題に取り組む「環境分科会」、働き方改革、安全な職場づくり、地域社会との関係性、人権問題、ダイバーシティ等の社会課題に取り組む「社会分科会」、企業倫理、経営の透明性、監査体制、株主との対話、リスクマネジメント等のガバナンス課題に取り組む「ガバナンス分科会」を設置しており、各分科会は課題解決に向けて実動的な活動を行うとともに、課題・計画の原案・進捗等を取りまとめ、推進委員会に上程する役割を担っております。

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(2)戦略

 当社グループは、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向け、短期、中期および長期にわたり当社グループの経営方針・経営戦略等に影響を与える可能性があるサステナビリティ関連のリスクおよび機会に対処するための取組みとして、経営に影響を与える可能性および影響度を考慮のうえ、マテリアリティ(重要課題)を次のとおり特定しております。

①環境に配慮した事業推進

 事業活動を行ううえで、地球環境や貴重な資源を守ることは企業としての使命です。当社グループは、地球環境の保全を図るため、これまで同様に温室効果ガス削減や省資源活動などに取り組むとともに、環境に優しい物流サービスや物流施設の充実に取り組んでまいります。

②人財の尊重

 当社グループの事業基盤は人であり、社員は当社グループの財産です。その人財を尊重することが、一人ひとりが能力を最大限に発揮することに繋がり、更にはグループ全体の成長に繋がることから、働き方改革や健康経営を推進するとともに、人財育成制度の更なる充実に取り組んでまいります。

③安全で高品質なサービスの提供

 事業活動を行ううえで、パートナー会社を含めた社員の安全を守ることは企業としての使命です。当社グループでは、安全を最優先に考え、高品質な物流を持続的かつ安定的に提供するための最新技術を活用しながら、安心で安全な職場環境の構築に取り組んでまいります。

④地域への貢献

 地域への貢献は、地域の社会的、経済的活動の活性化、発展に寄与するものであり、また将来を担う子供たちを地域社会と一緒に育てるとともに、地域で暮らす人達の幸せに繋がるものであります。当社グループは、地域に根付いた事業活動を営む中で、これら地域貢献に積極的に取り組んでまいります。

 これらの重要課題は、中期経営計画に基づき、取組みを進めております。

 <中期経営計画のホームページサイト:https://www.trancy.co.jp/about/plan/ >

<人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針>

 当社グループは、当社のグループ企業倫理要綱の行動規範に「様々な人材育成手段や公正で適切な処遇方法の構築により、一人ひとりが持つ能力を最大限に発揮できるよう相互に理解し合い、その多様な資質を尊重する」こと、「一人ひとりが、働きがい・やりがいを持って働くことのできる職場作りに努めていくとともに、各自のワークライフバランスを支援する」こと、ならびに「「安全は全てに優先する」の理念に基づき、すべての関係者の安全衛生レベルの維持向上に努めること、また共に働く人達の心身の健康維持に充分留意する」ことを定めております。様々な視点や価値観を有した従業員が能力を最大限発揮し、企業理念を実現していけるよう、人材育成体制を整備し、充実させていくことが重要であると考えております。そのため、多様性に応じた雇用形態の導入、従業員の自立と能力開発を促進するキャリアアップ支援、働きがい・やりがいを持って働くことのできる職場等の構築を基本として、環境を整備してまいります。また、健康宣言とその推進体制、さらには安全・品質方針のもと、いきいきと、働きやすい職場環境の整備、健康増進支援政策の充実、安全技能の向上、現場力の向上に取り組んでまいります。これらの取組みは、中期経営計画の基本方針「ESG経営・サステナビリティの取組み推進」の重点施策「会社の財産である“ヒト”の確保・育成」における、“人財のグランドデザインを策定し、個と組織を活かす人事制度の確立”、“社員のエンゲージメントを高める諸施策を実施し、魅力ある職場づくりの推進”に基づき、取組みを進めております。

 

<マテリアリティ>

重 要 課 題

環境に配慮した

事業推進

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 0102010_004.png0102010_005.png

人財の尊重

 

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安全で高品質な

サービスの提供

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地域への貢献

 

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 0102010_014.png0102010_015.png

 

当社グル|プにとって

・利用エネルギーの削減

・輸送の高効率化

・将来のエネルギー転換への準備

・生物多様性への対応

・ダイバーシティの推進と雇用の安定

・風通しのよい、活力ある職場環境の実現

・社員満足度の向上

・ゼロ災害の実現

・労働環境の改善

・社員の意識向上

・企業と地域のつながり

・持続可能な地域社会づくり

社会にとって

・環境負荷の低減

・共生社会の実現

・災害のない職場環境の実現

・高品質で持続可能な物流サービスの提供

・地域の経済と文化の発展

 

 

(3)リスク管理

 当社グループは、事業活動に影響を及ぼすリスクを適切に識別・評価のうえ効果的に管理・除去し、可能な限り被害を極小化することが重要であると認識し、リスク管理委員会を設置しております。委員会の下にはリスクの種類に応じた委員会を設置のもと、全社的・体系的なリスク管理体制の整備・強化を図っています。

 サステナビリティに関するリスクや機会については、サステナビリティ委員会の下部組織であるサステナビリティ推進委員会において、マテリアリティをもとにモニタリング・評価をしており、その内容については、リスクに応じてリスク管理委員会の各委員会にも共有され、審議されております。併せて、サステナビリティ推進委員会での評価はサステナビリティ委員会での議論を経て取締役会に報告が行われることとなっております。

 サステナビリティに関するリスクや機会として、マテリアリティの各項目のうち、環境リスクは当社グループの事業に与える影響が大きいと判断し、環境に配慮した事業推進としてCO2排出量の削減に関するKPIを設定しております。また、当社グループの事業基盤は人であることから、人財の尊重や安全で高品質なサービスの提供に関してもKPIを設定しております。地域への貢献については、KPIは設定しておりませんが、環境や人財への取組みを含め様々な取組みを複合的に行うことで、当社グループの機会に繋がるものであることから積極的に取り組んでおります。なお、気候変動に関連するリスクは、中長期で当社グループの事業における各リスクを発生または増幅させる要因となるリスクであることから、TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)への賛同や気候変動に伴う外部および内部環境の変化のモニタリング、具体的な気候変動リスク・機会の特定を行うとともに、全社的なリスク管理体制の再構築にも取り組んでおります。

TCFD提言に基づく情報はホームページに掲載しておりますので、ご参照ください。

<ホームページサイト:https://www.trancy.co.jp/csr/environment/ >

 

(4)指標及び目標

 「(3)リスク管理」に記載のとおり、指標および目標としてKPIを設定しております。

 

マテリアリティ

KPI

取組み

当連結会計年度末実績

環境に配慮した事業推進

①GHG削減 2020年度比25%

 (2030年度まで)

※省エネ法をベースとした数値

・太陽光発電設備の設置

・LED照明への切替え

・環境負荷低減機器の導入

①GHG排出量 15,502tCO2

※2020年度比

△747tCO2(△4.6%)

人財の尊重

女性管理職比率5

 (2027年3月末まで)

障がい者雇用3

 (2027年3月末まで)

年間有給取得日数 全職種12以上 (毎年度)

健康診断受診率100

喫煙率16(2025年3月末まで)

・人事制度見直しの推進

・障がい者の新たな役割の創出

・職場環境整備の推進

・社員の健康支援体制の強化

②女性管理職比率 2.6

 

③障がい者雇用 2.0

 

④年間有給取得日数 16.6

 

⑤健康診断受診率 100

⑥喫煙率 20.7

安全で高品質なサービスの提供

⑦労働災害 0件(四半期ごと)

・ヒヤリハット・気がかり報告収集

・KYT実践研修の実施

・強化月間の取組み

⑦労働災害 0件

地域への貢献

 

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※①は省エネ法

※海外を含め連結グループ全体での目標設定には時間を要するため、②は単体の管理職数、③~⑦は単体の社員数

 としております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状況、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識しているリスクは、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営環境の変化によるリスク

 当社グループでは、倉庫業、港湾運送業、陸上運送業、国際複合輸送業、その他の5つの事業を中心とした総合物流事業を主たる事業としていることから、国内外景気の動向には、少なからず影響を受けることとなります。国内外の景気が低迷する場面においては、顧客企業による在庫調整や一般消費の落ち込みが発生することから、倉庫業では、保管貨物および取扱量が減少いたします。港湾運送業では、輸出入の落ち込みに伴い、コンテナ貨物や原料貨物等の取扱量が減少いたします。陸上運送業、国際複合輸送業においては、荷動きの停滞や輸出入の低迷に伴い全般的に貨物輸送量が減少いたします。また、荷主からの物流合理化要請や同業他社間の競争の激化により収支が悪化することが予想されるなど、当社グループの経営成績および財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。しかしながら、当社の取扱貨物は非常に多岐に及んでいることから、特定の業界や特定の国、地域において景況の落ち込みが発生した場合において、その影響が限定的に留まったケースも過去にはございます。

 

(2)規制・法令違反リスク

 当社グループでは、「企業理念」、「行動指針」および「行動規範」を定めた「日本トランスシティグループ企業倫理要綱」を役員および従業員に周知することで、法令・社会倫理の遵守を企業活動の基盤としております。また、行動規範では、「企業の事業活動に適用される日本および他の国の法令等を遵守し、また、企業活動に関わる国・地域の社会と共存していくために、その文化・慣習を尊重します。」と定めており、法令遵守の強化に努めております。しかしながら、コンプライアンス上のリスクを完全には把握できない可能性があり、当社の主たる事業である総合物流事業では、各種業法をはじめとして様々な法規制を受けていることから、法令違反等により営業停止などの処分が課せられれば、当社グループの社会的信用の失墜、企業イメージの低下ならびに発生した被害等への損害賠償の発生等が想定され、当社グループの経営成績や財務状況等に多大な影響を及ぼすこととなります。当社では、コンプライアンスを確実に実施することを支援・指導する組織として、コンプライアンス委員会を設置し、同委員会の下、コンプライアンス相談窓口の設置や社員への啓蒙活動など、コンプライアンス体制・施策等の充実を図っております。また、全国で7弁護士事務所と顧問契約を締結し法令違反リスクに対応しております。

 

(3)安全衛生に関するリスク

 当社グループでは物流事業の遂行上で重大な労働災害が発生した場合、従業員への補償の発生はもちろんのこと、当社グループの社会的な信用を失墜することになるため、当社グループの経営成績や財務状況に多大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、重大な労働災害の発生を未然に防止するため、安全品質管理部を設置し、日常的な安全教育等の啓蒙活動を実施するほか、定期的なパトロールの実施や労働災害の原因究明、再発防止策の徹底、職場環境の改善を図っております。また、当社グループで伝染病の流行などにより従業員が罹患し、稼働等が困難となった場合は、経営成績、財政状態、キャッシュ・フローに影響を及ぼすことが想定されます。当社グループでは定期的に安全衛生委員会を開催するとともに従業員への安全衛生管理活動の推進および教育・啓発活動を実施し、衛生管理を徹底しております。

 

(4)大規模災害等リスク

 当社グループでは、倉庫業、港湾運送業、陸上運送業、国際複合輸送業、その他の5つの事業を中心とした総合物流事業を主たる事業としており、倉庫等の物流施設のいずれかが地震や火災、伝染病の流行などの大規模災害により罹災し、稼働等が困難となった場合は、経営成績、財政状態、キャッシュ・フローに影響を及ぼすことが想定されます。特に、地震等の自然災害に対しては、当社グループの倉庫等の物流施設をはじめとする経営資源が中部地区、関東地区、関西地区に集中していることから、これらの地域において発生した場合には、会社経営に多大な影響が生じる事態が想定されます。当社グループにおいては、近い将来、東海地震、東南海地震、首都直下地震、中部圏・近畿圏直下地震等の大規模地震の発生が懸念されていることも鑑み、災害発生時初動マニュアルを定め、倉庫施設や建物の耐震化、非常用電源設備の導入、災害発生時の被害報告体制の強化、防災訓練を通じて社員の意識高揚や被害の軽減を図るとともに、物流施設のスクラップ・アンド・ビルドを計画的に実施しております。

 

(5)財務・会計リスク

 当社グループの通常の取引においては、売掛債権への担保の設定や信用保証といった債権の保全はなされていないことから、万が一、顧客に対する多額の売掛債権の回収が困難となった場合には、経営成績、財政状態、キャッシュ・フローに多大な影響を及ぼすことが想定されます。当社グループにおきましては、債権の保全を図り、与信管理を強化するため、与信管理委員会を組織し、与信管理規程の定めに従い、取引先の信用情報に基づき与信ランク・与信額を設定・管理することで、不良債権の発生の防止に努めております。また、平素より売掛債権の回収サイトの短縮や立替金の早期回収に注力しており、営業債権が不良債権化しないよう管理を徹底しております。

 なお、当社グループにおいては、多数の物流施設等を資産として保有しており、その中には特定の大口顧客専用の物流センターも存在します。当該物流センターの顧客との契約は有期契約となることもあり、万が一、契約更新がなされない場合には、収益の悪化に加え、固定資産の減損損失が発生するリスクがあります。このようなリスクに対しては、契約期間満了後の物流センターの汎用的な活用方法を含め検討してまいります。

 

(6)海外リスク

 当社グループでは、中国、東南アジア、北中米、ヨーロッパにおいて海外拠点を有しております。物流事業をグローバルに展開していく上では、言語、地勢的要因、法・税制度を含む各種規制、自主規制期間を含む当局による監督、経済的・政治的不安、インフラ・通信環境や商慣習の違い等、様々な潜在的リスクが存在し、また、伝染病の流行、テロ行為、戦争・紛争の発生といった予測困難な事態の発生するリスクも存在します。これらのリスクに対しては、国際本部を中心にグループ内の情報収集を行い、顧問弁護士や外部コンサルタントの起用等を通じ、その予防、回避に努めておりますが、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの経営成績や財務状況に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)オペレーショナル・リスク

 総合物流事業を主たる事業とする当社グループは、同時に得意先のサプライチェーンの一端を担う社会的に重要な役割を果たしております。当社グループにおける物流事業の遂行上で貨物事故、交通事故、労働災害事故などの重大な事故が発生する、あるいは、事故の発生が度重なるようなことがあれば、得意先への損害賠償の発生はもちろんのこと、当社グループの社会的な信用を失墜することになるため、当社グループの経営成績や財務状況に多大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは物流業務全般の品質に関するリスク(オペレーショナル・リスク)を把握、分析し、適切な品質管理体制、品質管理プロセスを保持するため、品質管理委員会を常設機関として設置し、物流品質の強化に努めております。

 

(8)情報リスク

 当社グループでは、総合物流事業を遂行する上で必要な各種物流システムの構築・運用を行っております。また関係先企業とのデータ連携や管理系システムの運用等も企業活動上不可欠となっており、情報システムの安定的な運営は当社グループの企業活動の基盤となります。当社グループにおいて、自然災害の影響やコンピュータウイルス、外部からの侵入等により、各種システムが長時間にわたり使用出来ない事態が発生した場合、企業活動の継続に大きな支障が生じるおそれがあり、当社の経営成績や財務状況に多大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループにおきましては、これらのリスクに対応するため、重要な情報資産に関してはセキュリティの確保と安全性を兼備した外部データセンターに設置し、運用しています。また情報セキュリティの維持・向上や安全性確保のため、複数段階でのウィルス対策、外部からの侵入対策を施している他、社内ネットワークの二重化や、重要データのバックアップなど、データ保全を行っております。さらに情報セキュリティ管理規程等、各種ルールを定めるとともに、情報セキュリティ委員会を設置し、当社グループ内の情報セキュリティ体制の維持・向上や社員教育等を実施しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

(1)経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、半導体の供給制約の緩和による自動車生産の増加やインバウンド需要の回復を背景に緩やかな回復傾向となりました。一方で、エネルギーや原材料などの価格高騰による物価上昇、円安の継続などにより、個人消費や設備投資などの内需は停滞するなど、依然として先行き不透明な状況が続きました。

 こうした経済環境下におきまして、物流業界では、物価上昇による個人消費低迷や、製造業における生産調整などが影響し、荷動きは鈍化しました。加えて燃料価格や資材費などの高騰が影響し厳しい状況が続きました。

 このような事業環境のなか、当社グループにおきましては、「中期経営計画」で掲げた経営戦略に基づき、様々な施策を実施いたしました。

 具体的には、

 1.収益基盤の拡充によるトップライン向上[重点(産業)分野への取組み]といたしまして、化学品物流への取組み強化として、輸出入におけるコンテナラウンドユースのサービス実用化に向けトライアルを実施いたしました。また、自動車産業関連物流の国内およびグローバルでの更なる拡大として、昨年8月に三重朝日物流センターを竣工、安定稼働させるとともに、半導体関連材料および高機能素材の取扱い拡大として、昨年7月に亀山低温危険品倉庫を竣工、安定稼働させました。更には、新分野における物流取扱いの創出として、スマイルケア食分野への積極的な営業展開に取り組んでまいりました。

 2.TRANCYグループ経営基盤の強化[事業基盤の強化・拡大]といたしまして、持続可能な輸送スキームの再構築として、取引先との協業により、半導体の製造過程で使用される特殊化学品のトラックによる輸送手段に鉄道輸送を組み込むなどのモーダルコンビネーションの運用を本稼働するとともに、化学品物流では拠点間輸送におけるRORO船、鉄道の本格的な活用も開始いたしました。グローバル物流事業の強化・拡大として、タイ現地法人における自社倉庫の拡充について検討を重ねてまいりました。基盤とする四日市港の物流機能の更なる拡充として、四日市港におけるコンテナ用耐震岸壁の拡張ならびに港湾機能の最適化に向けて行政と連携して取り組んでまいりました。DXを活用したBPR(Business Process Re-engineering)の推進として、ペーパーレスピッキングシステムおよび車両の受付システムを導入するとともに、継続的に新技術の研究・検討などに取り組んでまいりました。また、財務体質の強化として、グリーンローンの実行、グリーンボンドの発行など資金調達の多様化を図りました。更には、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応の一環として、資本・財務戦略について検討を重ねてまいりました。

 3.ESG経営/サステナビリティの取組み推進における[物流事業を通じた環境への取組み(E=Environment)]といたしまして、TCFD提言に基づく情報開示に向けてSCOPE1・2・3の算出を進めるとともに、複数の大型物流センターに太陽光発電システムを敷設し、発電電力を当社グループの他拠点においても再生可能エネルギーとして利用できるスキームを導入するなど、環境に配慮した事業の推進に取り組んでまいりました。

[会社の財産である“ヒト”の確保・育成(S=Social)]として、グローバル人財を育成するために、若手社員全員を対象とした短期海外出張研修を導入するとともに、多様な人財が活躍できるよう新たな職群を新設する人事諸制度の整備を実施しました。

[ガバナンスの強化および地域社会への貢献(G=Governance)]として、地域住民等の安心・安全に寄与するため、当社施設を災害発生時の避難施設として開放する協定を自治体と締結するなど、地域社会への貢献に取り組んでまいりました。また、企業風土の醸成を図るため、従業員全員が参加型のサステナビリティ活動に取り組んでまいりました。

 当期の事業の概況は、総合物流事業におきましては、倉庫業では、取扱いが全般的には低調に推移したものの自動車部品関連商材の回復により、入出庫にかかる取扱量が増加し、期中平均保管残高は前期に比べ減少しました。港湾運送業では、四日市港における海上コンテナおよび完成自動車の取扱量は輸出・国内ともに増加したものの、石炭・オイルコークスおよび原料関係の取扱量は前期に比べ減少しました。陸上運送業では、鉄道輸送の取扱量は増加したものの、主力のトラック輸送およびバルクコンテナ輸送の取扱量は前期に比べ減少しました。国際複合輸送業では、海上輸送および航空輸送の取扱量は前期に比べ増加したものの、海外現地法人における取扱量は減少しました。このような状況により、総合物流事業全体の売上高は、前年同期比8.8%減の1,205億3千9百万円となりました。

 その他の事業におきましては、依然として厳しい環境下ではありましたが、業務の効率化や収支改善に努めました。

 

 以上の結果、当期の連結売上高は、倉庫業は自動車部品関連商材の取扱増加ならびに連結子会社の本格稼働が寄与したことにより好調に推移し、港湾運送業は業務の一部を倉庫業へ区分変更した影響により減少したものの順調に推移しました。一方で国際複合輸送業においては、海上運賃の正常化に伴い、極めて低調に推移したことにより、前年同期比8.6%減の1,225億5千5百万円となりました。連結経常利益は、大型新拠点の稼働に伴う一時費用の増加、販売費及び一般管理費の増加、持分法による投資利益ならびに為替差益の減少などにより、前年同期比18.3%減の73億5千2百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、自社利用のソフトウェア開発にかかる固定資産の減損もあり、前年同期比24.7%減の46億3千3百万円となりました。

 

  セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 

① 総合物流事業

 総合物流事業全般の外部顧客への売上高は、1,205億3千9百万円と前年同期に比べ115億9千5百万円(△8.8%)の減収、セグメント利益(営業利益)は56億8千万円と前年同期に比べ10億1千7百万円(△15.2%)の減益となりました。

 

<倉庫業>

 当部門におきましては、期中平均保管残高は前年同期比6.3%減の56万3千トンとなりました。期中貨物入出庫トン数につきましては、前年同期比3.8%増の864万3千トンとなり、保管貨物回転率は63.0%(前期58.4%)となりました。

 以上の結果、当部門の売上高は、前年同期比10.9%増の484億4千5百万円の計上となりました。

 

<港湾運送業>

 当部門におきましては、四日市港における海上コンテナの取扱量は、前年同期比3.9%増の20万3千本(20フィート換算)と増加しました。また完成自動車の取扱量も輸出・国内ともに増加したものの、石炭・オイルコークスおよび原料関係の取扱量は前年同期に比べ減少しました。

 以上の結果、当部門の売上高は、前年同期比6.4%減の212億4千5百万円の計上となりました。

 

<陸上運送業>

 当部門におきましては、主力のトラック輸送の取扱量は、前年同期比2.0%減の629万4千トン、鉄道輸送の取扱量は前年同期比0.9%増の15万トン、バルクコンテナ輸送の取扱量は前年同期比1.0%減の21万2千トンとなりました。

 以上の結果、当部門の売上高は、前年同期比0.7%増の183億6千6百万円の計上となりました。

 

<国際複合輸送業>

 当部門におきましては、海上輸送における輸出入の取扱量は前年同期比6.3%増の182万4千トンとなり、航空輸送における輸出入の取扱量は前年同期比0.9%増の1,537トンとなりました。一方、海上運賃の正常化や為替の影響を受けました。

 以上の結果、当部門の売上高は、前年同期比32.7%減の308億1千万円の計上となりました。

 

<その他>

 当部門におきましては、場内作業の取扱量が減少しました。

 以上の結果、当部門の売上高は、前年同期比4.5%減の16億7千万円の計上となりました。

 

② その他の事業

 その他の事業では、自動車整備業における車検取扱台数は前年同期比4.6%の減少、ゴルフ場の入場者数は前年同期比6.2%の減少、不動産事業の完成工事件数は前年同期比17.1%の増加となりました。

 以上の結果、当部門の外部顧客への売上高は、20億1千6百万円と、前年同期に比べ8千6百万円(4.5%)の増収、セグメント利益(営業利益)は6億8千2百万円と前年同期に比べ9千万円(15.3%)の増益となりました。

(2)財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ231億5千6百万円増加し、1,603億2千3百万円となりました。流動資産は、現金及び預金の増加21億7千9百万円を主な要因として24億2千8百万円増加し、固定資産は、有形固定資産の増加128億3千8百万円を主な要因として207億2千8百万円増加しました。

負債は、社債の発行および長期借入金の増加を主な要因として136億9千3百万円増加し、711億1千7百万円となりました。

また、純資産は前連結会計年度末に比べ94億6千3百万円増加し、892億5百万円となりました。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の55.9%から53.3%となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、有形及び無形固定資産の取得による支出180億9百万円などがあったものの、長期借入れによる収入113億円および社債の発行による収入79億5千6百万円などによる増加により、前連結会計年度末に比べ19億9千2百万円増加し、当連結会計年度末には215億7百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、営業活動の結果増加した資金は、72億8千2百万円(前年同期比43億1千2百万円の収入減)となりました。これは主に、法人税等の支払額29億5千3百万円などがあったものの、税金等調整前当期純利益70億1千8百万円、減価償却費50億9千7百万円の資金留保等による増加の結果であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、投資活動の結果減少した資金は、180億3千5百万円(前年同期比150億6千9百万円の支出増)となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出180億9百万円等による減少の結果であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、財務活動の結果増加した資金は、122億3百万円(前年同期比154億6千2百万円の収入増)となりました。これは主に、長期借入れによる収入113億円および社債の発行による収入79億5千6百万円による増加の結果であります。

 

 

(4)生産、受注および販売の実績

セグメント別営業概況

① 総合物流事業

 最近における倉庫保管貨物入出庫高ならびに期末保管残高を示せば次のとおりであります。

期間

入庫高

出庫高

期末保管残高

屯数(屯)

金額

(百万円)

屯数(屯)

金額

(百万円)

屯数(屯)

金額

(百万円)

2023年4月1日から

2024年3月31日まで

4,297,982

1,129,398

4,345,965

1,119,490

542,868

188,570

前年同期比増減(%)

2.4

3.7

5.1

5.4

△9.5

3.2

 

 保管貨物残高を品目別に示せば次のとおりであります。

品目

2024年3月31日現在

屯数(屯)

前年同期比増減

(%)

金額(百万円)

前年同期比増減

(%)

農水産品

21,359

△46.7

6,979

△34.0

金属

5,851

△23.2

2,690

△28.3

金属製品・機械

126,148

43.7

46,685

48.3

窯業品

114

△11.6

17

△78.5

化学工業品

208,451

△9.0

78,332

△11.9

紙・パルプ

11,299

△13.0

4,149

△21.9

繊維工業品

516

△65.2

165

△64.6

食料工業品

25,243

△34.0

8,489

△28.9

雑工業品

58,124

△12.4

22,685

24.4

雑品

85,763

△26.1

18,374

54.7

合計

542,868

△9.5

188,570

3.2

 

 港湾運送業の最近の貨物取扱高を示せば次のとおりであります。

期間

船内荷役(屯)

前年同期比増減

(%)

沿岸荷役

(内 輸出貨物)

(屯)

前年同期比増減

(%)

2023年4月1日から

2024年3月31日まで

12,430,536

2.5

4,173,221

(1,034,551)

0.2

(1.0)

 

 貨物自動車運送業および鉄道利用運送業の最近の貨物取扱高を示せば次のとおりであります。

期間

貨物自動車運送業

(屯)

前年同期比増減

(%)

鉄道利用運送業

(屯)

前年同期比増減

(%)

2023年4月1日から

2024年3月31日まで

6,294,077

△2.0

150,893

0.9

 

② その他の事業

 保険代理店の契約実績を示せば次のとおりであります。

期間

契約件数(件)

前年同期比増減

(%)

契約保険金額

(千円)

前年同期比増減

(%)

2023年4月1日から

2024年3月31日まで

3,509

10.7

501,696

△11.7

 

 ゴルフ場の入場者数を示せば次のとおりであります。

期間

メンバー(人)

前年同期比増減

(%)

ビジター(人)

前年同期比増減

(%)

2023年4月1日から

2024年3月31日まで

6,801

△5.6

30,462

△6.3

 

 自動車整備台数を示せば次のとおりであります。

期間

車検台数(件)

前年同期比増減

(%)

2023年4月1日から

2024年3月31日まで

1,288

△4.6

 

③ 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示せば次のとおりであります。

セグメントの名称

売上高(百万円)

前年同期比増減(%)

総合物流事業

倉庫業

48,445

10.9

港湾運送業

21,245

△6.4

陸上運送業

18,366

0.7

国際複合輸送業

30,810

△32.7

その他

1,670

△4.5

その他の事業

2,016

4.5

合計

122,555

△8.6

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

売上高

(百万円)

割合(%)

売上高

(百万円)

割合(%)

住友電装株式会社

13,501

11.0

    (注)前連結会計年度については、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

 

経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1)今期の経営成績の分析

 (営業収益)

 当期の事業全体およびセグメント別の分析につきましては、「経営成績等の状況の概要(1)経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

 (売上原価)

 売上高が減少したことなどから、1,090億5千7百万円(前年同期比9.2%減)となりました。

 

 (販売費及び一般管理費)

 WEB会議システム等のIT技術の利用促進など、継続的な業務改善により、一般管理費の増加抑制に努めたものの、物価上昇や営業活動などの活発化等により費用が増加したことなどから、72億5千6百万円(前年同期比7.4%増)となりました。

 

 (営業利益)

 継続してコスト管理の徹底や、業務の効率化、収支改善、働き方改革へ取り組んでおりますが、売上高が減少したことなどから、62億4千1百万円(前年同期比13.9%減)となりました。

 

 (経常利益)

 大型新拠点の稼働に伴う一時費用の増加、販売費および一般管理費の増加、持分法による投資利益ならびに為替差益の縮小などから、73億5千2百万円(前年同期比18.3%減)となりました。

 

 (親会社株主に帰属する当期純利益)

 自社利用のソフトウェア開発にかかる固定資産の減損などにより、46億3千3百万円(前年同期比24.7%減)となりました。

 

 上記のとおり、当期の当社グループの経営成績につきましては、営業収益は3期振りの減収、営業利益は4期振りの減益、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は6期振りの減益となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容ならびに資本の財源および資金の流動性に係る情報

 当社グループの資金調達は、安定的な資金調達と調達コストの抑制を両立させ、自己資本比率や資産構成ならびに営業キャッシュ・フローの各種指標に配慮して、財務リスクを最小化することを基本方針としております。この基本方針に則り、資金調達の手段はその時々の市場環境を考慮したうえで、当社グループにとって最善の手段を選択しております。

 当社は長年にわたり、主要な取引先金融機関と良好な関係を維持しており、経常的な資金調達の他、当座貸越契約により、緊急時の流動性を確保しております。さらに、多様な調達手段を確保するため、直接金融による資金調達も見据え、格付投資情報センターの格付けを取得、維持しており、現時点において、Aマイナス(安定的)となっております。

 当連結会計年度においては、社債(グリーン・ボンド)発行により80億円、シンジケート・ローン(グリーン・ローン)により30億円、相対取引の銀行借入れにより83億円を調達し、主に事業用資産の新規投資や維持更新に充当いたしました。

 この他、流動性マネジメントの一環として、キャッシュ・マネジメント・システムを国内で導入し、グループ内の企業相互間の余剰資金を当社が集中管理することで資金の効率化を推進しております。また、海外においては、各拠点の資金需要に対応するため、当社を起点にしたグループ内金融により必要な資金を供給する一方、余剰資金を当社へ還流させる体制を構築しております。

 

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2020年

3月期

2021年

3月期

2022年

3月期

2023年

3月期

2024年

3月期

自己資本比率

(%)

48.5

51.5

54.1

55.9

53.3

時価ベースの自己資本比率

(%)

24.7

28.7

30.0

28.6

26.7

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

(年)

5.0

3.8

4.2

2.5

5.8

インタレスト・カバレッジ・レシオ

(倍)

44.0

60.8

62.2

104.6

50.2

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(注)1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

2 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

3 キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

4 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている借入金等を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

 当連結会計年度末の有利子負債残高は422億6千7百万円となりました。借入金の計画返済を進めておりますが、前連結会計年度末に比べて社債が80億円、借入金が60億3千8百万円増加したこと等により、有利子負債残高は138億3千1百万円の増加となっております。

 

 

(3)重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

 当社においては、従業員の退職給付に備えるため、確定給付型の退職給付制度を設けておりますが、将来の退職給付見込額は、割引率や予想される昇給及び従業員の退職率、死亡率など、さまざまな変動要因を加味して見積られております。これらのうち、昇給及び退職率や死亡率は経済情勢による大きな変動は予想されませんが、割引率については、退職給付の支払見込期間を反映した国債の利回りに基づき決定しておりますので、外部の経済環境により大きく変動する要素だと考えております。

 

割引率の変動による感応度は次のとおりです。

 

当連結会計年度末における退職給付債務への影響額

割引率が0.5%上昇した場合

377百万円の減少

割引率が0.5%下降した場合

411百万円の増加

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。