当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、グループ経営理念である「ミッション・ビジョン・基本的価値」を指針とし、“つなぐ”テクノロジーを通じて「顧客価値創造型」事業へ積極的に展開し、収益性重視のスピード感ある積極経営で豊かな社会づくりに貢献してまいります。
(2) 経営環境
当社グループを取り巻く外部環境は、国内外において、主要先進国におけるインフレ抑制を目的とした金融引き締めの継続、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢といった地政学的リスク、中国経済の回復の鈍化など、今後の状況に注視が必要な状況です。
情報通信事業分野においては、2023年度後半からの生成AIの普及・拡大を背景にデータセンタへの設備投資が2024年度も加速すると見込まれる一方、欧米においては金利高や補助金政策などの経済的・政治的要因により通信事業者の設備投資が先送り傾向にあり、需要回復は第4四半期頃になると見込んでおります。通信インフラ投資は中長期的には成長軌道に戻ることが期待され、将来の需要回復を見据えて生産体制の整備や拡販活動を継続して進めてまいります。
エレクトロニクス分野においては、当社FPC(フレキシブルプリント配線板)、コネクタが多く使用されている主要顧客のスマートフォンの需要は堅調に推移すると見られます。ただし、主要顧客向け製品における競争環境の激化や、一部の電子部品の在庫調整の長期化には注意が必要です。
自動車分野は、グローバル生産台数が回復した前年度に続き、全体としては堅調に推移すると見られます。また、CASE(Connected:コネクテッド、Autonomous:自動運転、Shared & Service:シェアリング&サービス、Electric:電動化)が主要なテーマとなるなど、自動車は100年に一度の変革期にあり、新エネルギー車の需要拡大、自動車の電子化・情報化への取り組みが一層進展するものと見込まれます。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
・2025年中期経営計画
①概要
当社は、当社グループの持続的な成長を図り、更なる企業価値の向上を実現するために、2023年度を初年度とする3か年の中期経営計画「2025年中期経営計画」(以下、「25中期」と言います。)を策定し、昨年5月に公表いたしました。
25中期では、当社が培ってきた“つなぐ”テクノロジーを軸に、基盤技術やコア技術を存分に活かせる「情報インフラ」「情報ストレージ」「情報端末」の3つを、核心的事業領域として位置付け、経営資源を集中的に投入し、高収益な企業グループを目指してまいります。
また、SDGs(持続可能な開発目標)に示された社会課題の一つである「カーボンニュートラル」は、新たなビジネス創出の好機であると捉えており、核融合発電への利用が見込まれている超電導線材を始め、ファイバレーザやEV(電気自動車)などの分野において、当社の技術力を活かし技術開発・製品開発を進めてまいります。
②情報インフラ
情報インフラの分野では、革新的な光技術をベースとした光配線ソリューションと将来の高速無線通信技術によって、高度情報化社会実現のためのインフラ基盤の構築に貢献します。
[新規市場・新規顧客の開拓]
当社の戦略商品である「Spider Web Ribbon®/Wrapping Tube Cable®」(以下、「SWR®/WTC®」といいます。)を始めとする光配線ソリューションを基軸に、北米でのビジネス深耕を図るとともに、新規市場として、欧州大陸や中東・アジア・オセアニア地域でのビジネス拡大に注力してまいります。
米国では、金利上昇等を背景に、2023年度下期以降、通信会社の投資抑制傾向が続いております。しかし、今後、連邦政府の主導のもと、デジタルデバイドの解消を目的とした超高速ブロードバンド基盤の整備・拡大が進められる見込みです。この動きは2024年度後半以降に本格化すると見込まれており、当社では、米国内でのSWR®/WTC®の生産体制構築と、米国企業との戦略的提携等による拡販を推進いたします。
新規市場開拓では、中東の大手通信会社のブロードバンドネットワークに当社のSWR®/WTC®が採用されることが決定しました。また、市場における競争力向上の観点から台湾での現地ケーブルメーカーとの技術提携によるWTC®多心化を推進しております。2024年度以降も、技術開発や生産性改善により、顧客のニーズに合致した競争力のある製品を創出し、ビジネス拡大につなげてまいります。
[新たなビジネスモデルへの挑戦]
当社は、光ファイバ・光ケーブル・光部品・光融着接続機の製造から、ネットワーク設計・施工までをワンストップで提供できる強みを活かし、北米での新規ビジネスモデルに取り組んでおります。
具体的には、カナダにおいて、過去10年間で延べ85万回線のファイバ網を構築した実績をもとに、ダークファイバ・プロバイダ事業*1の開始を決定いたしました。カナダにおいてもデジタルデバイドの解消は喫緊の課題であり、本事業は、当社と現地の有力な通信事業者が共同で広く投資家の出資を募って立ち上げた事業体によって光ネットワークを構築し、通信事業者にネットワークを貸し出すことを含む事業であり、当地での課題の解消と超高速ブロードバンド普及に貢献します。また、米国では、スタジアムや屋内スポーツ会場、空港など大勢の人が集まることが想定されている限られたエリア内での高速・高品質のデータ通信を可能とするDAS*2-Local5Gビジネスを推進します。
*1 敷設されたまま活用の進んでいない光ファイバ網を貸し出すこと等により活用を進める事業を指します。
*2 Distributed Antenna System(分散型アンテナシステム)の略で、基地局から届く電波を光ケーブルによって分配してより広いエリアを通信対象に含めることができるシステムです。
③情報ストレージ
情報ストレージの分野は、近年、生成AIの普及・拡大により、設備投資が活況である「データセンタ市場」を対象とした事業領域となります。当社は、データセンタの高度化・大型化により、対策が急務となっているデータセンタ内のスペースやエネルギーの効率化に対して、当社が保有する超高密度光配線技術やユニークな電子部品技術で課題解決に貢献してまいります。
まず、データセンタでは、サーバやストレージの増加に伴い、小型多心光コネクタを始めとする光部品の需要が拡大しております。当社は、そうした需要増加に対応すべく、生産体制を強化してまいります。具体的には、メキシコのモントレーにある工場を拡張したほか、欧州のデータセンタ市場の需要を取り込むべく、ポーランドに光配線部品の生産工場を立ち上げ、2024年初旬から稼働を開始いたしました。また、日本国内においても生産能力向上を目的とした投資を行ってまいります。
次に、データセンタにおける省電力・大容量の記憶媒体として注目が集まるHDD製品に関しては、「熱アシスト磁気記録方式」や「マイクロ波アシスト磁気記録方式」等、新たな磁気記録方式を用いたHDDに対応する技術開発を推進いたします。加えて、データセンタの発熱量の増加に伴う効率的かつ高性能な冷却システムの需要増加に対しては、新型の積層型コールドプレートの開発を進めるなど、当社の技術を活用したソリューション提案を強化し、当社のシェア拡大につなげてまいります。
④情報端末
情報端末の分野は、スマートフォンやPCを始め、AR(Augmented Reality:拡張現実)やVR(Virtual Reality:仮想現実)、ドローンなどを対象とした事業領域となります。また、「走る情報端末」と言われ、高度な自動運転の社会実装を視野に様々な技術革新が進む自動車も、当分野に含めております。
当社は、基盤技術やコア技術となる配線・実装技術を有しており、これらを活かした付加価値の高いコネクタ、電子ワイヤ、各種センサ類などの高精細な電子部品を取り扱っております。これらはPC・ウェアラブル機器、産業機械や医療機器など幅広い分野で使用されております。
情報端末は、今後、さらに高密度・高精細・多機能化へのニーズが高まると考えており、当社の高度な製造技術によりこれらのニーズに対応してまいります。
また、自動車業界では、CASEと言われる100年に一度の変革期を迎えております。当社は、これまで培ってきた優良な顧客基盤と世界に広がる生産拠点を有効に活かしながら、CASEによる次世代車を新たなビジネスプラットフォームとして位置づけ、「技術のフジクラ」による新規事業の創出に挑戦してまいります。
⑤Beyond2025
当社は、25中期の先を見据え、超電導・ファイバレーザ・EVの3つのテーマにおいて、新たな事業の創出に取り組んでおります。特に超電導の分野では以下の取組みを進めております。
当社は、レアアース系高温超電導線材において世界トップレベルの性能と量産技術を保有しています。超電導線材を用いたコイルは、次世代のクリーンエネルギーとして各国で実用化に向けた取り組みが進む核融合発電における重要な部材であり、当社は、核融合発電の実現に貢献すべく、この分野において様々な取組みを推進しております。具体的には、京都大学発のスタートアップ企業「京都フュージョニアリング株式会社」に資本参加いたしました。同社と共同して核融合発電の技術実現に取り組み、英国原子力公社(UKAEA)から受注した「核融合炉用高温超電導マグネット領域の研究推進」において、当社がマグネットの設計・製造を担当するなど、同社との協働を進めております。また、内閣府主導で発足した産官学の連携組織「一般社団法人フュージョンエネルギー産業協議会(通称:J-Fusion)」に発起人として参画いたしました。
今後は、核融合発電の取組みが進むにつれ、超伝導線材の需要が増加すると見込まれることから、生産能力の増強を進めてまいります。
⑥新事業創生・研究開発部門
当社が持続的に成長していくためには、経営戦略・事業戦略に沿って常に事業や製品・技術の新陳代謝を続けていくことが不可欠です。この部門では、革新的な情報通信ネットワークの構築や環境負荷低減などにより社会に貢献することを目指して、当社事業と親和性が高い「次世代光通信」、「ミリ波応用」及び「次世代エネルギー」を中心とした技術分野で研究開発を進めています。
次世代光通信の分野では、生成AIに代表されるデジタル技術の革新によりデータ通信量が指数関数的に増大しているため、情報ネットワークの更なる高速化及び大容量化が求められています。加えて、データセンタ等での消費電力増大への対応も必要です。これらの課題を解決するためにIOWN®構想*3 に代表される次世代通信技術が求められており、当社でも、マルチコアファイバ(Multi-Core Fiber;MCF)とその接続技術の開発やデータセンタ等での消費電力低減に貢献できる光電融合領域での研究開発に取り組んでおります。
ミリ波応用の分野では、高速・大容量・低遅延の無線通信技術として、5Gモバイル基地局や固定無線アクセス(FWA)向けに使用される28GHzミリ波ICとモジュールの開発を、また鉄道、高速道路、空港、港湾、工場、工事現場などの事業者向けに使用される60GHzミリ波通信モジュールの開発を進め、顧客への試作品の提供を開始しております。ミリ波は通信以外の用途でも有望な技術であり、その応用技術の開発にも幅広く取り組んでおります。
次世代エネルギーの分野では、ファイバレーザのさらなる高性能化・高出力化を推し進めるとともに、エネルギー伝送や情報伝送に応用する研究開発も行っております。
*3 Innovative Optical and Wireless Network構想の略であり、日本電信電話株式会社(NTT)が提唱する光を中心とした革新的技術を活用した大容量・低遅延・低消費電力を兼ね備えたネットワーク基盤・情報処理基盤の構想です。当社は2021年より、同構想の実現と普及を目指すIOWN® Global Forumに参加しています。
⑦資本政策
25中期では、今後の財務戦略の核となる中期キャピタルアロケーションポリシーを策定いたしました。
当ポリシーに基づき、将来の成長に向けた事業投資・戦略投資の実行、財務の健全性確保、並びに株主還元のバランスを図り、資本効率を意識した経営を実行してまいります。
<キャピタルアロケーションポリシー>
・成長投資:核心的事業領域3分野を中心に1,050億円
・戦略投資:300億円を目途に新規事業などに機動的に投資
・株主還元:連結配当性向30%を目安
・財務の健全性確保:自己資本比率50%以上を目標
⑧2025年中期経営計画の定量目標
25中期最終年度(2026年3月期)の定量目標は、売上高8,250億円、営業利益850億円、営業利益率10.3%、株主資本利益率(ROE) 16.5%、投下資本利益率(ROIC) 12.8%、自己資本比率51.7%を定めております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
[サステナビリティ全般]
当社は、グループ経営理念に基づき、サステナビリティ実現のためには「持続可能な企業経営」のために必要とされる活動と「持続可能な社会」の構築に役立つ活動の両輪が必要と考えております。
(1)ガバナンス
当社は、サステナビリティ推進委員会(旧サステナビリティ戦略会議)規程に基づき、サステナビリティガバナンスの整備を進めています。サステナビリティ推進委員会(以下、本委員会)は、ステークホルダーが要請するESGの視点を盛り込んだサステナビリティ戦略の立案及びその業務執行の監視・監督のための報告・討議と情報共有を行っています。本委員会の議長は取締役社長CEOが務め、取締役(一部の取締役および社外役員除く)および執行役員で構成されております。
本委員会では、サステナビリティ目標2025(2021年度~2025年度)の進捗確認、顧客や機関投資家・ESG評価機関などからのサステナビリティに関する要求事項の共有および対策検討などを行っております。また、気候変動ガバナンスは、本委員会の環境側面部会である地球環境委員会(委員長は環境担当役員)がグローバルに統括しています。
本委員会で協議されたサステナビリティに関する戦略や施策については、取締役会・経営執行会議への討議を行っております。
・2023年度の開催実績と討議内容
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開催実績 |
討議内容 |
サステナビリティ推進委員会 (旧サステナビリティ戦略会議) |
2023年8月 |
サステナビリティ推進体制およびマテリアリティ見直しの進め方についての議論 |
2023年11月 |
サステナビリティ推進体制検討・マテリアリティ見直し進捗報告 |
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2024年2月 |
マテリアリティ見直しについての議論(2024年度も継続) |
(2)戦略
当社は、サステナビリティに関する戦略としてサステナビリティ目標2025(以下、同目標)を掲げております。同目標は、ダブルマテリアリティの視点から、ESGにF(財務・将来)を加えた4テーマを定め、16の重点方策を設定しております。同目標は、国内外の社会課題や国際的なガイドライン、ESG評価機関の評価項目やステークホルダーからの声を参考にするとともに、フジクラグループ長期ビジョン(2030年ビジョンやフジクラグループ環境長期ビジョン2050)と連動させた目標としております。同目標の進展および達成を通じて、当社の企業価値向上に寄与することを目指しております。
・特定のプロセス
マテリアリティの特定にあたっては、「フジクラグループCSR基本方針」と「4つの重点課題」をベースに、マテリアリティマップを策定しております。策定にあたっては、ステークホルダーインクルーシブを念頭に「マテリアリティマップ分析」を行い、「ステークホルダーの関心事」と「自社事業への影響度」の2つの視点から評価・検証を行いました。その結果を踏まえ、各部門との協議を重ねた後、サステナビリティ戦略会議(現サステナビリティ推進委員会)で進捗報告および審議が行われ、2021年8月の2021年度第2回サステナビリティ戦略会議において承認されております。
(3)リスク管理
当社は、サステナビリティ目標2025(以下、同目標)で掲げた各項目の進捗確認を毎年行うことをリスク管理の一環としております。同目標は、フジクラグループ環境長期ビジョン2050と連動しており、GHG(温室効果ガス)排出量の削減目標やTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)対応などを重点施策として設定しております。毎年の進捗確認と今後の対策検討を行うことで適切な対応が図れる体制を整備しております。
・リスクマネジメント
当社は、管理すべきリスクを事業機会に関連するリスク(戦略リスク)と事業活動の遂行に関連するリスク(業務リスク)に分類しております。戦略リスクは取締役会および経営執行会議のトップマネジメントの合議により管理し、業務リスクは「フジクラリスク管理規程」に基づきリスク管理委員会が管理する体制をとっております。
業務リスクは、コンプライアンス、品質保証、環境管理、安全衛生、情報セキュリティなど、現代社会における企業活動に伴い発生する多様な事象を、それぞれの専門組織が日常的に管理しております。当該事象を専門的に取り扱う組織は、各事業部門に対して、企業が求められている社会的要件を充足し、かつ企業の存続発展のためにとるべき行動を指し示し、最も適切な行動を選択するよう促しております。当社は単に法令遵守にとどまらず社会的な要請を意識しながら、社会、顧客、消費者、従業員、取引先、株主などの多様なステークホルダーから信任を得られるよう活動をしております。
(4)指標及び目標
・サステナビリティ目標2025
サステナビリティ目標2025では、ESGFの4テーマから、F(財務・将来)で3項目、E(環境)で5項目(4つのチャレンジ含め)、S(社会)で3項目、G(ガバナンス)で5項目の設定をしております。2025年度の目標達成へ向けて毎年目標と実績を評価しております。
テーマ |
重点方策 |
2025年度及び将来の達成目標 |
財務将来(F) |
“つなぐ”ソリューションの提供により、快適で持続可能な“みらい”社会の課題を解決し、継続的な企業価値を高める |
1.2030年ビジョンで想定する4つの分野から新規事業を探索 ①既存事業におけるコア技術の進化と発展 ・コア技術を発展させて、社会的価値の高い製品・サービスの開発 ・WTP(Willingness To Pay:支払意思額)が高い製品・サービスの販売 ②新たな技術や事業分野の探索 ・オープンイノベーションも考慮 ・モノ売りに加え、コト売りによる事業の探索 |
地球環境に配慮された安心して使える製品の開発 |
1.2050年に、フジクラの全製品を環境配慮型製品(グリーン関連製品)に置き換える 2.2030年にグリーン製品創出活動を全グループ会社に展開する |
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データやデジタル技術を活用した既存事業の効率化と新たなビジネスモデルの創出 |
1.製造現場でのDX (スマートファクトリー化、AI活用) 2.営業部門でのDX (デジタルマーケティング) |
テーマ |
重点方策 |
2025年度及び将来の達成目標 |
環境(E) |
[チャレンジ1] 工場CO2排出総量 「2050年ゼロチャレンジ」 |
1.CO2排出量の削減 [対象範囲:フジクラグループ(国内外)] ・2025年度目標:2020年度比16.5%以上削減 (289千トン/年以下) ・2030年度目標:2020年度比33%以上削減 ・2050年目標:工場からのCO2排出ゼロ 2.生産効率の向上(省エネの推進) [対象範囲:フジクラグループ(国内外)] ・生産エネルギー原単位:2025年度において、2020年度比5%以上改善 3.製品物流効率の向上 [対象範囲:フジクラグループ(国内)] ・製品物流のエネルギー原単位:2025年度において、2020年度比5%以上改善する |
[チャレンジ2] 工場の水使用の最小化と排水管理 |
1.水リスク低減への貢献 ・水の使用量原単位:2025年度において2020年度比5%以上改善する |
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[チャレンジ3] 工場の人と自然の共生 |
1.事業所内自然を有効活用し、生物多様性の拡大に貢献する 2.地域の自然環境保全活動を推進する |
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[チャレンジ4] 資源の有効活用と資源循環 |
1.投入資源を減らし、資源の効率的な利用を推進する [対象範囲:フジクラグループ(国内外)] 2.事業活動に伴う廃棄物排出量の削減 [対象範囲:フジクラグループ(国内)] ・廃棄物排出量原単位:2025年度において、2020年度比5%以上改善する 3.廃棄物ゼロエミッションの達成 [対象範囲:フジクラグループ(国内)] |
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気候変動ガバナンスの構築 (TCFD対応) |
1.気候変動リスクと機会の把握 2.戦略および財務への影響の把握 |
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社会(S) |
働きがい変革 (エンゲージメント強化) |
1.社員一人ひとりが自己実現を通じて人として成長し、公私ともに充実している ・社員の自発的貢献意欲の向上 ・時間、場所にとらわれない働き方の環境整備 ・健康経営によるモチベーション向上 ・労働生産性の向上 |
グローバルに活躍できる人財育成
ダイバーシティ&インクルージョン(社員の人権配慮) |
1.フジクラグループ全社員がグローバルな視点で活躍をしている ・会社の成長と社員の成長がシンクロする組織風土 ・イノベーション創出をリードする人財の育成、発掘、獲得 ・自律的なキャリア構築の支援、成長機会の提供 ・社員同士が互いを認め・高め合う組織(個の尊重・信頼) 2.多様な背景・考え方を持つ人財が活躍している ・多様な個人が活躍できる環境 ・国籍・人種・性別・宗教・年齢などにとらわれないキャリア機会の提供 ・身体的または性的マイノリティへの配慮 |
テーマ |
重点方策 |
2025年度及び将来の達成目標 |
ガバナンス(G) |
取締役会の機能整備 |
1.中長期の企業価値向上 ・取締役会の実効性向上と監督機能強化 ・経営の透明性・公正性を高め、迅速な意思決定を図る ・取締役会の多様性の確保 2.最高経営責任者(CEO)等の次代を担うリーダーが成長している ・後継者計画の策定・運用 ・育成計画の適切な監督 |
グループ経営理念MVCVの実践 |
1.私たち一人ひとりが社会の一員として正道を歩むこと ・グループ経営理念実現のために新行動基準の実践 |
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グループガバナンスの構築 (リスクマネジメント強化) |
1.戦略的経営に資するリスクマネジメント体制の構築とリスクコントロール(PDCA) 2.投資管理の強化 |
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サプライチェーンマネジメント (責任ある鉱物調達含む) |
1.社会課題(児童労働や強制労働など)に配慮したサプライチェーンマネジメントの確立 2.責任ある鉱物調達の体制確立 (3TGを中心にコバルト、マイカなどのデューデリジェンスシステム) 3.NGOなど外部からの指摘ゼロ (または指摘があった際の早期の是正) 4.他社との連携 (他社の取組みを学び自社の取組みに活かす) |
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安全保障輸出管理の徹底 |
1.輸出管理法令順守 ・重大な法令違反件数 0件/年 |
[気候変動]
(1)ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ全般のガバナンスに含まれております。詳細については、「
(2)戦略
・気候変動リスクと機会の特定
当社では経営計画に影響を与える可能性が高い気候変動リスクを特定しております。気候変動がフジクラグループの事業成長にどのような影響を与えるのかを分析するために、OECD(経済協力開発機構)、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)等の長期予測や社会的な関心事、顧客からの気候変動対応要請などを踏まえております。特定したリスクは適宜見直しを行っていきます。
・リスク |
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分類 |
気候変動リスク |
今後の対応 |
2℃シナリオ (移行リスク) 短期・中期 |
[政策・法律リスク] ・炭素税の導入など各国地域におけるCO2排出規制強化 -炭素税による財務への影響を試算 ・顧客や操業国からの温室効果ガスやカーボンフットプリントの削減要請義務 |
・環境長期ビジョン2050に基づく、再生可能エネルギー100%へのロードマップによって、徹底した省エネ、再エネ導入、クレジット等の活用を進める。 ・事業活動における再生可能エネルギー利用の推進(本社・工場など) ・RE100加盟やTCFD賛同による対応強化・ESG評価指標の定期的なモニタリングと対応 ・SBTi(Science Based Targets initiative)の認定取得 |
[技術リスク] ・既存技術のディスラプト ・製品製造時のエネルギー使用量の最小化や再生可能エネルギー利用等の要求 |
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[市場リスク] ・商品、サービスに対する需要の変化 ・顧客や社会からの気候変動対策による一時的な設備投資コストの増大 ・気候変動関連要因による原材料価格の上昇や調達先の分散 |
||
[評判リスク] ・顧客や投資家、各種評価機関からの気候変動に関する情報開示と対応要請 |
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4℃シナリオ (物理リスク) 中期・長期 |
[急性リスク] ・洪水や大型台風など自然災害による操業への影響 -生産設備に被害を受けた場合、生産能力の低下や設備修復など、業績への影響 -サプライチェーンの分断などによる生産計画への影響 →フジクラグループは2011年にタイ洪水によりグループ会社が甚大な被害を受け、復興まで5年を要した |
・対象拠点の防災対応 -2011年のタイ洪水被害を教訓に、BCPの観点からも拠点の分散化や事業所周辺の防水壁の建設などを実施 ・事業所の法面整備や海辺に近い工場における高潮、津波対応 * 洪水や海面上昇で影響を受ける国内拠点 本社、フジクラハイオプト(東京都江東区木場)、沼津熔銅(静岡県島田市金谷泉町)、西日本電線(大分県大分市春日浦) ※各行政のハザードマップを調査 |
[慢性リスク] ・気温上昇等による操業地域で働く社員の健康配慮 ・降雨量増加による従業員の安全性の確保 ・将来的な海面上昇における操業への影響 |
・機会 |
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各事業 |
社会動向 |
機会 |
情報通信 |
・デジタル化の進展により、データ流通・蓄積・解析量が指数関数的に増大 ・ビッグデータ、IoT、5G、AIなどのデジタル技術を活用した新サービス事業が急速に拡大 ・CASE/MaaSの進行 ・ミリ波(無線通信) ・4℃シナリオ下での自然災害対応懸念 |
[製品/サービス] 高密度/細径構造の光ケーブル(SWR®/WTC®)を中心とするソリューションの展開 [市場] グリーン関連製品拡大 ・高効率ITシステム関連製品 ・デジタル技術活用の推進 ・社会インフラとしての通信線レジリエンス強化 |
エレクトロニクス |
・産業用ロボットの増加 ・医療用製品への参入 ・車載用電子部品の増加 ・ミリ波対応部品の増加 |
・CASE対応研究開発の推進 ・デジタル技術活用の推進 ・グリーン関連製品拡大 ・産業用、自動車用コネクタの需要増 |
自動車 |
CASEの進行 ・電子部品の増加に伴うワイヤハーネスの増加 ・2℃シナリオでのEV化の進展 ・ワイヤハーネス軽量化の需要増加 |
・軽量化ワイヤハーネス ・CASE対応研究開発の推進 ・自動車事業に情報通信やエネルギー事業などの知見を組み合わせ、EV関連の新規事業創出 ・ワイヤハーネス以外の自動車部品やEVへの対応強化 ・グリーン関連製品拡大 |
エネルギー |
・経済成長、都市化、人口増加により、途上国を中心にエネルギー需要、特に電力需要が増加 ・デジタル技術の活用による、電力供給の安定化、効率化、2℃シナリオでの省エネ進展 ・企業、個人などのエネルギー供給・需要双方の多様化、2℃シナリオでの再エネ増大 ・4℃シナリオ下における自然災害の増加懸念 ・無電柱化推進法への対応(防災など) |
[市場] 再生可能エネルギーの普及拡大 [製品/サービス] グリーン関連製品拡大 [エネルギー源] 高効率電力システム関連製品 ・デジタル技術活用の推進 [レジリエンス] 電線/ケーブル等社会インフラのレジリエンス強化 |
(3)リスク管理
気候変動に関するリスク管理は、サステナビリティ全般のリスク管理に含まれております。詳細については、「
(4)指標及び目標
・フジクラグループ環境長期ビジョン2050
当社は、1992年に制定した「フジクラグループ地球環境憲章」にはじまり、2016年にはフジクラグループ環境長期ビジョン2050を制定しております。2050年の未来を見据え、環境負荷の最小化に向けた4つのチャレンジに取り組んでおります。
当社は、フジクラグループ環境長期ビジョン2050のチャレンジ1で掲げた2050年度までに工場からのCO2排出量ゼロを目指しております。
・CO₂排出量ゼロロードマップ
対象項目 |
目標 |
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Scope1 |
事業者自らによる温室効果ガスの直接排出 |
2030年度33%削減 (2020年度比) |
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Scope2 |
他者から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出 |
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Scope3 |
Scope1・2以外のサプライチェーンに関連する排出 |
2030年度15%削減 (2020年度比) |
・CO₂総排出量(Scope1+2)の削減(2023年度の目標と結果)
2023年度目標:2020年度比 9.9%以上削減(SBTバウンダリ*1)
2023年度結果:2020年度比 28.6%削減
・CO₂排出量(SBTバウンダリ)
フジクラでは2023年7月のSBT認定取得を機に、Scope3の算定・開示範囲を国内グループから海外グループにまで拡大しました。
(単位:t-CO2)
Scope |
2023年度 |
2022年度 |
Scope1 |
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Scope2 *2 |
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Scope1+2 |
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Scope3 |
集計中 |
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*1組織境界にGHGプロトコルの支配力基準の考え方を適用し、フジクラグループの算定範囲を定めました。そのためAFLグループの排出量を算定に含めていません。
*2 Scope2の排出量は、2023年度分として購入(予定を含む)する環境証書によるオフセットをした数値。
・2023年度の主な取り組み
①自社の排出するCO₂排出量の削減
・省エネ:生産性向上と事業競争力を高める革新的なものづくりの開発、従来型省エネ活動の積極展開
・創エネ:太陽光発電を用いた再生可能エネルギーの導入を決定(3拠点)
・購エネ:RE100等の要件を満たす適切な環境証書と再エネの調達
②サプライチェーンで発生するCO₂排出量の削減
・資源の再利用を推進
・主要原材料メーカー数社に二酸化炭素排出量削減に関するアンケートを実施
③製品のカーボンフットプリント削減
・一部の製品にてライフサイクルアセスメントを開始
・環境配慮型製品の開発
(環境に関する独自の取り組み)
①環境配慮型製品の拡大(グリーン関連製品)
当社は、製品の企画・開発・設計の段階で製品環境アセスメントを実施し、環境性能の向上に取り組んでおります。使用する資源(樹脂,金属)の使用量や、製品の製造・使用時など製品のライフサイクル全般にわたる廃棄物や二酸化炭素発生量の削減に関する自主基準を満たした製品を、グリーン製品、またはグリーンマインド製品として認証し、両者を合わせたグリーン関連製品を年間60件以上登録しています。
また新たな取り組みとして、「グリーンプラス」を制定しました。グリーンプラスは、お客様が当社製品を選び、使用することによって解決される環境面・社会面両方の課題に注目した新制度です。当社製品がどのように社会に貢献するのか、との視点で認証する制度であり、2024年度に複数製品の登録を予定しています。
②生物多様性確保への決意と地域コミュニティのシンボル「フジクラ 木場千年の森」
当社は、自らの事業活動が地球環境と密接な関係にあることを深く認識し、地球環境を保護するために最大の努力を尽くすことを目指し、“人にやさしい、地球環境にもやさしい企業グループ”を掲げております。当社は、2013年に「フジクラグループ生物多様性長期ビジョン・ロードマップ2030」を策定し、生物多様性保全に取組んでおります。2010年11月に、自然空間であるビオガーデン「フジクラ 木場千年の森」を本社敷地内に創設しております。広さ2,200㎡、2つの池とそれをつなぐ小川、浮島、遊歩道などがあり、生きものたちが優先される空間として、数百年前の武蔵野台地の豊かな森や林を再現するために、在来種にこだわり設計しました。現在では、カルガモやカワセミの雛が巣立つほどに森が成長しております。
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・東京都「江戸のみどり登録緑地(優良緑地)」に登録、環境省 自然共生サイトに認定
「フジクラ 木場千年の森」では、在来種を積極的に植栽し、生物多様性保全に取り組んでいる緑地を東京都が登録・公表する「江戸のみどり登録緑地」制度の「優良緑地」として、2017年に登録されています。
また、当社は、環境省の生物多様性のための30by30アライアンスへの参加、経団連の生物多様性宣言イニシアチブへの賛同を行い、生物多様性の保全と向上を推進しています。
環境省の令和5年後期「自然共生サイト」認定審査において、「フジクラ 木場千年の森」(深川ギャザリアW3棟敷地内緑地)が「自然共生サイト」に認定されております。
[人的資本・多様性]
(1)ガバナンス
人的資本・多様性に関するガバナンスは、サステナビリティ全般のガバナンスに含まれております。詳細については、「
(2)戦略
フジクラグループは、人財価値とエンゲージメントの向上が社会的価値を創出し、企業価値の最大化につながるという確信に立ち、社員が良質な体験を得られる組織を実現していきます。また、当社が持続的に成長していく上で、人財への投資は最も優先すべき最重要テーマであり、以下の4つの人財マネジメントの方向性を基軸とし、必要な施策や取り組みを通じて会社と社員双方の“ウェルビーイング”の実現を目指します。
(人財マネジメントの方向性)
①多様な価値観や考え方を受け入れ、お互いを尊重し合う職場環境と柔軟な働き方を追求します
②キャリア形成に必要な学習機会を提供し、社員の成長を後押しします
③担う役割と貢献および成果に応じて公正に評価・処遇します
④「一人ひとりが主役」となれる組織づくりと適所適材の配置を行います
(3)リスク管理
人的資本・多様性に関するリスク管理は、サステナビリティ全般のリスク管理に含まれております。詳細については、「
(4)指標及び目標
(当社における具体的取り組み)
①多様な人財の受容及び柔軟な働き方の実現
当社はキャリア採用(経験者採用)、障がい者雇用を積極的に実施し、多様な属性や異なる考えを取り入れることで組織の成長を加速させます。また、多様な人財が働きやすい環境の整備の一例として、テレワーク勤務規程、副業・兼業規程を制定しております。柔軟な働き方を実現することで、社員のエンゲージメントと生産性・創造性の向上に寄与いたします。
項目 |
指標等 |
22年度実績 |
23年度実績 |
ハラスメント |
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99.3% |
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ワークライフバランス |
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21.6時間/月 |
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64.3% |
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目標: |
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54.4% |
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56.1% |
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7名 |
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採用 |
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25.0% |
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2.6% |
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(注)1.当社グループにおける記載が困難であるため、各指標は当社のみの内容を記載しております。(障がい者雇用率を除く)
2.女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主において定める目標値で、2025年度までの達成を目指しております。
3.テレワーク勤務可能な従業員の労働日数を分母とし、テレワーク勤務を実施した日数を分子として実施率を算出しております。
4.当社は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づく特例子会社である株式会社フジクラキューブを運営することでグループ一体として雇用促進を図っております。雇用率については、グループの取組結果を記載しています。
②キャリア形成に向けた支援
社員一人ひとりの成長が会社の持続的成長と企業価値向上をもたらすという考えの下、社員の自律的なキャリア形成を支援するための機会提供に取り組んでおります。具体的な取り組みとしては、自己啓発学習メニューの拡充、階層別キャリアデザイン研修の実施、若年層の昇格者を対象とした人事部門による面談の実施等を推進しております。上記に加え、次世代の経営者となり得る経営人財を継続的に輩出することが企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するとの考えに立ち、選抜型の経営人財育成プログラムを実行しております。
項目 |
指標等 |
22年度実績 |
23年度実績 |
人財育成 |
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1,233名 |
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85名 |
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107名 |
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(注)1.当社グループにおける記載が困難であるため、各指標は当社のみの内容を記載しております。
2.2020年度以降に本プログラムを受講した人数の累計であります。
③評価と処遇について
当社の人事制度においては職種と役割に応じた評価・報酬制度を導入しております。国籍、性別、新卒/キャリア入社等で、昇格や処遇に差を設けておりません。また、人事評価(考課)においてもエクイティ(公平性)を重視することで、社員各人が備えている能力を最大限発揮できる環境の整備に努めております。
項目 |
指標等 |
22年度実績 |
23年度実績 |
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Diversity, Equity & Inclusion (DE&I) |
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3.9% |
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目標: |
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男女の人事評価結果における差異(注)3 |
(企画専門職) |
97.7% |
97.0% |
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(管理職) |
102.5% |
99.9% |
(注)1.当社グループにおける記載が困難であるため、各指標は当社のみの内容を記載しております。
2.女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主において定める目標値で、2025年度までの達成を目指しております。
3.男女の人事評価結果における差異は、発揮されている能力や行動特性を人財育成に活かすために評価している人事評価結果を数値換算した上で、男性の人事評価結果に対する女性の人事評価結果の割合を示しています。なお、本指標は、いわゆる総合職層である「企画専門職」および「管理職」を対象として集計しています。
④適所適材の配置
当社では社員が自ら手を挙げて特定のポジションへの異動を申請することが出来るキャリアチャレンジ制度を導入しております。社員一人ひとりの自主性を促し、自律的な組織をつくることでイノベーションの創出につながることを期待しております。また、当社はグローバルに事業を展開していることから、各国、地域の商習慣に精通した人財の必要性が高く、早期から海外駐在の経験等を積むことが出来る環境を備えており、グローバルで活躍できる人財の輩出に力を入れております。
項目 |
指標等 |
22年度実績 |
23年度実績 |
人財ポートフォリオ |
キャリアチャレンジ (社内公募)の募集件数 |
56件 |
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21.1%(307名) |
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(注)1.当社グループにおける記載が困難であるため、各指標は当社のみの内容を記載しております。
⑤健康経営の推進
フジクラグループは「企業の競争力はそこで働く社員の良好な健康状態が基盤となる」という考えのもと、社会に必要とされる企業でありつづけるためには社員の「健康」が重要な資源であると認識し、2014年に「フジクラグループ健康経営宣言」を発表いたしました。社員一人ひとりのヘルスリテラシーの向上を目指すとともに、安心して、活き活きと働けるようメンタルヘルス対策や健康保険組合とのコラボヘルス推進にも力を入れており、前年度に引き続き「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に認定されました。
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 需要動向
当社グループの経営成績は、製品が主としてインフラ用や最終消費財の部品等であるため、景気循環の影響を受けることはもとより、各マーケットの設備投資の動向や競合環境、サプライヤの動向、顧客の購買政策の変化や信用状況等によって影響を受けます。
(2) 為替レートの変動
当社グループは、実需の範囲内で通貨ヘッジ取引を行い、外貨建売上取引等における為替変動による悪影響を最小限に抑える努力をしておりますが、必ずしも為替リスクを完全に回避するものではないため、為替レートの変動は当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの事業には、海外における製品の生産、販売が含まれており、各地域における現地通貨建ての収益、費用、資産等の各項目は連結財務諸表作成のため、円換算しており、換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
(3) 金利の変動
当社グループは、資金需要、金融市場環境及び調達手段のバランスを考慮し資金調達を実施しておりますが、金利が上昇した場合には、支払利息が増加し、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4) 原材料等の調達及び価格変動に関するリスク
当社グループは、事業に必要な原材料や副資材、重要な希少資源などの調達において、計画的かつ安定的な数量の確保に取り組んでおります。しかしながら、サプライチェーンの混乱や需給の逼迫、供給元の方針変更、資源の枯渇等により必要量の確保に至らなかった場合や、これらの原材料等の価格ならびにエネルギー価格の高騰が著しく進んだ場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
また、当社グループの製品の主要な材料である銅の価格は、国際的な需給動向等の影響により変動しますが、銅価格の急激な変化による仕入価格の変動が即座に製品価格に反映されるとは限らないため、銅価格の著しい変動によって当社グループの経営成績は影響を受ける可能性があります。
(5) 製品の欠陥及び品質に関するリスク
当社グループは、全社方針『フジクラ クオリティ方針』のもと、品質管理体制の強化および品質コンプライアンス意識の向上に取り組むとともに、厳格な品質管理基準に従って各種の製品を製造しております。また、万が一の場合に備えて、製造物責任賠償については保険に加入しております。
しかしながら、重大なクレームや製造物責任賠償につながるような製品及びサービスの欠陥あるいは品質問題が発生した場合、製品回収や補償のための費用、品質管理体制の改善・強化に要するコスト、また信用低下による販売活動への影響が生じる可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 法的規制等
当社グループの事業活動においては、事業展開する各国の様々な法的規制の適用を受けております。このような規制には、事業・投資を行うために必要な政府の許認可、商取引、輸出入に関する規制、租税、金融取引、環境に関する法規制等があります。当社グループはこれらの規制を遵守し事業活動を行っておりますが、将来において法的規制の重要な変更や強化が行われた場合、当社グループがこれらの法規制に従うことが困難になり事業活動が制限されたり、規制遵守のためのコスト負担が増加すること等により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7) 訴訟、規制当局による措置その他の法的手続等
当社グループは、事業を遂行するうえで、訴訟、規制当局による措置その他の法的手続に関するリスクを有しております。訴訟、規制当局による措置その他の法的手続により、当社グループに対して損害賠償請求や規制当局により課徴金等が賦課され、又は事業の遂行に関する制約が加えられる可能性があり、かかる訴訟、規制当局による措置その他の法的手段は、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8) 政治経済情勢
当社グループは、情報通信事業部門、エレクトロニクス事業部門、自動車事業部門、エネルギー事業部門等、国内外にて事業展開しているため、各国の政治経済や環境情勢及び新興国の経済の変動、並びに紛争・テロの発生等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 知的財産
当社グループは、特許権、その他の知的財産権の取得により自社技術の保護を図ると共に、第三者の知的財産権に対しても細心の注意を払っております。しかし、製品の構造・製造技術の多様化や、海外での事業活動の拡大等により、当社グループの製品が意図せず他社の製品の知的財産権を侵害した場合、販売中止、設計変更等の処置をとらざるを得ない可能性があります。また、第三者が当社グループの知的財産権を侵害しても、各国の法制度等の相違により、適切な保護が得られるとは限らず、当社グループの事業活動や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10) 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、事業遂行に関連して多くの個人情報・顧客情報を含む機密事項を有しております。これらの情報の秘密保持については、最大限の対策を講じておりますが、第三者によるサイバー攻撃やコンピューターウイルス感染等の予期せぬ事態により情報が外部に流出する可能性があり、その結果、当社グループのイメージの低下や損害賠償の発生等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、同様の予期せぬ事態により、当社グループの情報システム及びネットワークの正常な運営が妨げられた場合、事業の停止や生産効率の低下、復旧のための費用増等、当社グループの生産体制、経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 災害、感染症等のリスクについて
当社グループは、国内外に多数の工場を有しており、当該地域において大規模な地震や台風などによる風水害などの自然災害が発生し、生産設備に被害を受けた場合、操業停止に伴う生産能力の低下、設備修復による費用増など、当社グループの生産体制、経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
また、新興感染症あるいは再興感染症の流行拡大により、政治、経済環境に制限が課されることとなった場合、当社グループのサプライチェーンの機能不全等様々な事業活動の制約により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 人財確保に関するリスク
当社は、グループの成長の原動力は人財であるとの認識のもと、柔軟な働き方や多様性を実現する労働環境の整備、キャリア形成支援、公正な評価制度の整備や適材適所の配置などの人財マネジメント諸施策を実行し、多様な人財がグローバルに活躍できる組織作りを推進しております。しかしながら、人財の獲得競争は国内外とも激しくなっており、必要な人財の確保や流出防止ができない場合、当社の競争力の源泉である開発力や技術力の停滞、デジタル技術の活用の遅れといった事業活動への制約が生じ、当社グループの事業活動や生産体制、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
①経営成績
当社グループの当連結会計年度の売上高は7,998億円(前年度比0.8%減)、営業利益は695億円(同1.0%減)、経常利益は697億円(同2.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は510億円(同24.8%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しております。前年度の数値につきましては、同様に組替を実施しております。
[情報通信事業部門]
通信キャリア顧客における投資抑制が継続しているものの、多様な収益基盤を背景に高い利益水準を維持したことにより、売上高は前年度比2.0%増の2,972億円、営業利益は同3.5%減の392億円と、前連結会計年度並みとなりました。
[エレクトロニクス事業部門]
巣ごもり需要の反動による在庫調整及びサプライチェーン問題の影響等により、売上高は前年度比16.5%減の1,647億円、営業利益は同39.7%減の166億円となりました。
[自動車事業部門]
北米での新車種立ち上げにより、売上高は前年度比15.2%増の1,795億円となりました。また、拠点閉鎖による費用削減、及び顧客との間で事業環境変化による増分コスト負担の適正化が進展したこと等により、営業利益は12億円(前年度は営業損失66億円)となりました。
[エネルギー事業部門]
国内の新工場建設等に伴う需要が引き続き好調に推移し、売上高は前年度比0.6%増の1,391億円、営業利益は同102.6%増の87億円となりました。
[不動産事業部門]
当社旧深川工場跡地再開発事業である「深川ギャザリア」の賃貸収入等が引き続き堅調に推移し、売上高は前年度比2.3%減の105億円、営業利益は同2.7%減の49億円と、前連結会計年度並みとなりました。
2025年3月期の当社連結の業績予想につきましては、売上高は8,300億円(前年度比3.8%増)、営業利益は700億円(同0.7%増)、経常利益は680億円(同2.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は500億円(同2.0%減)を予想しております。情報通信事業部門につきましては、生成AI需要拡大を背景としたデータセンタにおけるインフラ投資の加速が見込まれ、また、通信キャリア向け需要は第4四半期に底を打ち、回復に転じる見通しであります。当期営業黒字化した自動車事業部門につきましては、引き続き収益性改善に取り組んでまいります。
②財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比較し、671億円増加の7,239億円となりました。これは主に、営業収支の確保により現預金が増加したこと、及び為替の影響に伴う売上債権の増加により、流動資産が増加したことによるものです。
負債の部は、前連結会計年度末と比較し、51億円減少の3,573億円となりました。これは主に、営業収支の確保や運転資金の改善に伴うキャッシュ・フローの増加により、有利子負債が減少したことによるものです。
純資産の部は、前連結会計年度末と比較し、722億円増加の3,666億円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上及び為替換算調整勘定の増加によるものです。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益642億円等を源泉とした収入により、944億円の収入(前年度比363億円の収入増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは設備投資を中心に215億円の支出(前年度比118億円の支出増加)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは配当金の支払や社債の償還による支出を中心に360億円の支出(前年度比21億円の支出増加)となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は1,470億円(前年度比404億円の増加)となりました。
当連結会計年度については、利益の増加及び運転資本の削減等により、ネットD/Eレシオは8:92(前連結会計年度は24:76)と、さらなる改善を進めることができました。
2024年度につきましては、25中期のもと、将来の成長に向けた事業投資・戦略投資の実行、財務の健全性の確保、並びに株主還元のバランスを図り、資本効率を重視した経営を実行してまいります。
(3) 生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額又は、数量で示すことはしていません。このため、生産、受注及び販売の実績については、「(1)財政状態及び経営成績の状況」における各セグメント経営成績に関連付けて示しています。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りです。
該当事項はありません。
当社グループでは、環境問題やエネルギー問題など社会課題解決を通じた事業の持続的発展を目指し、情報通信事業部門、エレクトロニクス事業部門、自動車事業部門を中心に新技術並びに新商品の開発を積極的に推進しています。当社グループの研究開発活動は、新事業創生・研究開発部門、及び各事業部門内の開発部にて実施しています。
[新事業創生・研究開発部門]
生成AIに代表されるデジタル技術の革新により、通信データ量は指数関数的に増大しており、情報ネットワークの高速化、大容量化、低遅延化だけでなく、データセンタを含めた通信ネットワークの消費電力増加は社会問題になりつつあります。
次世代光通信の分野では、高密度・大容量伝送が可能なマルチコアファイバ(Multi-Core Fiber;MCF)とコネクタを含む接続技術の実用化に向けた開発を進めています。2023年度は、標準クラッド外径でコアが4つあるMCFの融着接続技術や検査技術の開発を行いました。また、MCFケーブルの製造や敷設の際の極性管理の課題を解決する技術や、MCFのクラッドや被覆を細径化し高密度化する技術も進展いたしました。これらの成果は2023年10月のECOC*(英国)や2024年3月のOFC*(米国)、国内の学会や研究会に報告しています。既存の一般的な光ファイバとの接続技術も重要であり、その入出力デバイス、コネクタ接続技術など周辺技術も含めて実用化を加速させます。
*ECOC:The European Conference on Optical Communication、OFC : Optical Fiber Communication Conference。いずれも光通信に関する最大規模の主要国際学会。
ミリ波の分野では、5G(第5世代移動通信システム)や、その発展形である5G-Advancedによる大容量高速無線通信サービスの本格普及に向け、5G基地局向けミリ波帯通信デバイスの開発を進めています。米国IBM社よりライセンスを受けた技術を基に、当社独自の高度化設計を加えたミリ波高周波ICとアンテナなどを組み合わせ、世界トップクラスのビーム制御性能(校正不要で緻密に電波の送受信方向を制御)を有する28GHz帯アンテナ一体型高周波モジュールが完成しました。2023年度には、送信出力が従来比2倍となる高出力版モジュールのサンプル出荷も開始しています。今後もミリ波帯無線デバイスのさらなる高性能化・低コスト化を進め、5G時代に求められる高速・大容量無線通信網の構築に貢献します。また、産業用無線映像伝送システムへの導入を目指し、60GHz帯無線通信モジュールの開発も進めています。2Gbps超の通信スピードや500m超の長距離伝送、ミリ秒オーダーの超低遅延など、世界トップクラスの性能を有する本モジュールは、高リアリティ・高レスポンスな遠隔監視や遠隔制御を無線ネットワーク経由で実現するデバイスとして高い評価を得ています。当社は、ミリ波帯無線を応用したこのような省人化システムの実現に寄与することで、少子高齢化に伴う社会課題の解決に貢献します。ミリ波技術は様々な場面で活用されることが期待されており、将来に向けて応用製品を幅広く検討しております。
次世代エネルギーの分野では、すでに事業化を推進しているファイバレーザの高性能化・高出力化をさらに推し進めるとともに、光のエネルギー伝送や情報伝送に応用する研究開発も行っております。
以上のような当社既存事業との親和性の高い「次世代光通信」、「ミリ波応用」、「次世代エネルギー」の3分野を中心とした研究開発を進め、革新的な情報通信ネットワークの構築や、環境負荷低減などの社会貢献につなげてまいります。
[Beyond2025] ~持続可能な社会に向けた取り組み~
(高温超電導線材)
レアアース系高温超電導線材は、液体ヘリウムを使用しない次世代の高温超電導機器を実現する製品としてエネルギー分野、医療や分析、産業機器などへの応用・展開が期待されています。当社はレアアース系高温超電導線材の開発および量産技術開発を精力的に進め、世界トップレベルの性能を実現しています。最近ではカーボンニュートラル実現のために欧米を中心に高温超電導線材を用いた核融合発電の開発が精力的に行われています。高温超電導線材は核融合発電に必要なプラズマを閉じ込め、制御するための高温超電導マグネットに用いられ、当社製品を採用したお客様より高い評価を得ています。また、当社は「京都フュージョニアリング株式会社」と共に、英国原子力公社(UKAEA)向けの核融合発電炉用高温超電導マグネット領域の研究推進プロジェクトにおける協業を発表しています。今後も環境負荷の低減と持続可能なエネルギー供給の実現に向け、さらなるイノベーションを追求し、高温超電導の技術開発、事業化を通じて社会の発展に貢献して参ります。
(ファイバレーザ)
金属のマーキング、溶接、切断で使用されるレーザ加工機の市場では、従来の固体レーザから、ビーム品質が良く、かつ小型で電力変換効率が高いファイバレーザへの置き換えが進み、加工用途も拡大しています。固体レーザでは、レーザ光は空間を伝搬させていましたが、ファイバレーザではファイバで導光することによって、レーザ光の扱いが飛躍的に容易かつ安全となり、様々な加工機やバイオ分析、医療分野などへの応用が可能となりました。当社は、光通信用ファイバや光部品で培ったコア技術をベースにファイバレーザの研究開発に注力してきました。2023年度は金属切断加工分野における厚板対応や高速化といった要望に応えるため、レーザの高出力化を進め20kW超高出力レーザを上市しました。また成長を続けている半導体市場において、半導体製造装置メーカと共に各工程用途に最適化したパルスファイバレーザの開発を継続しています。今後も低消費電力かつ長寿命なファイバレーザ製品により、環境負荷低減および持続可能な社会の実現に貢献していきます。
(急速充電)
政府が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」により、今後拡大が見込まれる電気自動車の充電インフラの領域においては、急速充電ケーブルコネクタの開発を推進しています。電気自動車の台数増加や搭載されるバッテリの大容量化に伴い、充電時間短縮や充電渋滞解消を目的に、高出力急速充電コネクタ規格の整備が進められています。当社では、国内初となる液冷方式のケーブルコネクタを開発し、2023年から150kW連続充電に対応した急速充電器への搭載を開始しました。更なる高出力化のニーズに対応するため、最大出力900kWに適合した液冷方式のケーブルコネクタの開発にも取り組み、国内の実証プロジェクトに参画しています。
セグメント別の研究開発活動及びその成果は次のとおりで、当連結会計年度の連結研究開発費は
[情報通信事業部門]
5G(第5世代移動通信システム)やIoT(Internet of Things)、近年では生成AIの活況など多様な情報通信サービスの普及にともない、光ファイバケーブルの需要が世界的に拡大しています。フジクラでは、既存設備を有効利用しながら経済的に光ファイバ網を構築する技術として、世界トップレベルの細径・高密度な光ファイバケーブル「SWR®/WTC®」技術を用いた様々な新製品を開発し、上市しています。2023年度は、データセンタで要求される高難燃特性と低発煙特性を有した、空気圧送タイプの光ケーブルである難燃AirBlown WTC®を開発し、リリースしました。今後もSWR®/WTC®の技術をもとに革新的な光ファイバケーブルを開発し、世界各国の通信ネットワークの発展に貢献していきます。
また、光ケーブルの接続点に使用される光コネクタについても、高性能化・小型化の開発を進めており、2023年度は、既存製品のSWR®/WTC®の片端末または両端末に牽引端を取り付けた牽引端付きMulti-Fiber Push On (MPO) 成端ケーブルを更に細径化することで、より細径の管路に対応できるようにしました。多心コネクタの主力製品であるMPOコネクタについては、従来の1/3のフットプリントで実装可能なミニ多心コネクタ(MMC)の16心タイプをリリースし、更に24心タイプの開発も進めています。また、接続作業の際に端面を清掃するMMC用光コネクタクリーナも開発いたしました。今後も、高密度・大容量伝送のニーズに応えられるよう、小型・高密度収容の光コネクタ開発を積極的に進めていきます。
通信用の光ファイバでは、データセンタおよび長距離通信市場において必要とされるITU-T G.654.Eに準拠した光ファイバFutureGuide®HSC-110およびFutureGuide®HSC-125について、生産性向上および低コスト化に注力いたしました。また光通信機器等で使用されるPANDA*(偏波面保持機能)ファイバに関し、次世代の高速通信で使用される小型光通信機器での収納に適した曲げ半径2mmに対応したPANDAファイバを、国際学会Photonics West2024にて発表いたしました。今後も通信、及び通信機器メーカの要望に応じたファイバを開発していきます。
*PANDA:Polarization-maintaining AND Absorption-reducing
光ファイバケーブルの敷設工事等で使用される光ファイバ融着接続機や、光部品の製造等で使用される特殊光ファイバ用融着接続機を開発しています。特殊光ファイバ用融着接続機は、細径から大口径までの光ファイバを接続可能であり、2023年度はこの用途で使用される特殊光ファイバストリッパと高性能光ファイバカッタを上市しました。これらは光ファイバを融着接続する前の光ファイバの被覆除去・切断に使用される工具です。両工具とも、RFIDを用いた自動条件変更機能を搭載し作業効率を向上させており、また被覆除去の品質安定のための引き抜き速度制御や、切断品質安定のためのテンション自動制御を採用しております。今後も引き続き光ファイバ融着接続の品質向上に貢献する製品を開発し、光ファイバの敷設や光部品製造の品質向上・効率向上に貢献していきます。
なお、当セグメントに係る研究開発費は
[エレクトロニクス事業部門]
民生及び産業用の電子機器に使われるフレキシブル・プリント配線板(FPC)、コネクタ、メンブレン*、電子ワイヤ、センサ、ハードディスク、サーマル製品の開発を行っています。スマートフォンに代表されるモバイル機器は、情報通信速度の高速化や高機能化が進み、周辺機器との連携が強く要求されています。また、自動車の電動化、情報化、知能化が加速する中で、近年需要が増えている自動車用電子部品は、各種環境下での高い信頼性が要求されています。
*メンブレン:銀などの金属インクを樹脂基板に印刷することにより形成した電子回路基板
(FPC事業)
FPCについては、スマートフォンを中心とした電子機器の高密度化や高速伝送に対応するため、高精細回路、電気特性を向上させた多層基板の開発を進めています。また、車載用途として、バッテリ監視用途などの車両の電動化や、先端運転支援システム(ADAS)に対応する製品群の技術開発を進めています。加えて、医療、ウェアラブル用途などの特殊構造の製品開発にも取り組んでおります。
(コネクタ事業)
コネクタについては、「小型・低背」「堅牢」「高速伝送」「作業性」「防水」をキーワードに、高機能化(高操作性、高強度、大電流、複合化など)した製品開発を推進しています。モバイル機器用途では、Board to Boardコネクタの小型・堅牢化や、バッテリ用コネクタ等の製品バラエティ拡充を進めています。産業機器用途では、NC工作機やロボット、半導体製造装置に対応した小型・防水・多芯の製品ラインナップ拡充を進めています。また5G関連の通信用途向けコネクタの開発や、自動車用途における自動車の情報化・知能化に対応すべく、高速通信用コネクタの開発に注力しています。
(電子部品事業)
メンブレンについては、印刷回路の細線化や新規機能性ペーストの商品化を進め、従来のパソコン、車載市場に加え、医療、ヘルスケアといった新しい市場を開拓しています。その中でも特に、ストレッチャブルメンブレン(伸縮性印刷回路)を応用した立体配線基板の開発、銀印刷回路に電解銅めっきを付与した環境に優しい低抵抗なフレキシブル基板の開発に注力しています。
電子ワイヤについては、エレクトロニクス市場での更なる高速、高容量データ伝送やモバイル機器、ウェアラブル機器で求められる高屈曲耐久を実現する機器内配線用極細同軸ケーブルアセンブリの開発を進めています。また極細同軸によるケーブルの細径化により、内視鏡用途など医療市場の開拓に取り組んでいます。
センサについては、空圧機器市場や医療市場の要求に応え、また製品ラインナップを強化するため、高分解能デジタル出力圧力センサは量産フェーズに移行し、小型圧力センサは量産化に向けた開発を継続しています。
サーマル製品については、スーパーコンピュータやハイエンドサーバ、ハイパースケールデータセンタ用の次世代CPU/GPUの発熱量の増加に対応するため、独自構造を持つ新型高性能コールドプレートの開発、及び空冷式ヒートパイプモジュールの高性能化に向けた開発を進めています。また、IGBT等パワー半導体向けに、大容量に対応したベーパーチャンバやヒートパイプ製品の高性能化に向けた開発を進めています。
なお、当セグメントに係る研究開発費は
[自動車事業部門]
自動車の高機能化に伴う電装品への小型軽量化のニーズに対応した細径・軽量電線や、半導体ヒューズや半導体リレーを内蔵した小型電源分配ボックス、CASEに代表される分野の技術革新に対応した新商品・新技術の開発を推進しています。
また、車載LANの高速化ニーズに対応した1G~10Gbpsの高速通信ハーネスや、10Gbps以上の超高速通信ハーネスの開発を推進しています。さらに、車両の電動化ニーズに対応した、高屈曲細径ケーブルや高電圧電源分配ボックスなどの開発、カーメーカーの車両開発期間短縮を実現するハーネス製造シミュレーションシステムの開発、BCPの一環として生産自動化システムの構築を推進しています。
なお、当セグメントに係る研究開発費は