文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、「堅実経営と誠実施工を信条に、社会から必要とされ続ける企業として、社業の発展を通じ広く社会に貢献する」ことを経営理念に掲げ、時代の趨勢、経営環境の変化に柔軟かつ迅速に対応して経営基盤の強化を図り、株主の期待に応え、ひいては社会に貢献することを基本方針としています。
当社グループでは、すべての事業活動においてこれらを踏まえ、ステークホルダーに信頼・満足・安心を提供していくことを目指しています。
(2) 中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
① 2030年に向けたビジョン
建設市場においては、防災・減災対策、インフラ長寿命化、PPP/PFI事業の拡大、DXの推進や脱炭素に向けた投資など一定の需要が見込まれるものの、中長期的には、地政学的リスクによる景気への影響に加え、新設の建設投資の抑制、物価上昇による建設コストのさらなる高騰、技能労働者不足の深刻化が懸念されるなど、経営環境は一層厳しさを増すことも予想されます。
このような環境認識のもと、今後も長期的に事業を継続し、社会の持続的な発展に貢献するため、将来のありたい姿を示した「2030年に向けたビジョン」の実現に向け、様々な取り組みを展開しています。
② 中期経営計画
「2030年に向けたビジョン」の実現を見据えた第2のステップである「中期経営計画(2022~2024年度)」において、事業戦略の基本方針として掲げる「企業価値の向上」「事業領域の拡大」及び「人的資源の活用」に基づく取り組みを推進しています。
同計画の概要については、次のとおりです。
なお、「2030年に向けたビジョン」及び「中期経営計画(2022~2024年度)」の詳細については、当社ウェブサイトに掲載しています。
・2030年に向けたビジョン
https://www.okumuragumi.co.jp/corporate/vision/
・中期経営計画(2022~2024年度)
https://www.okumuragumi.co.jp/corporate/plan/
(3) 経営環境及び対処すべき課題
わが国経済の先行きは、海外経済の状況や高騰が続く物価の動向など不透明な部分はあるものの、雇用・所得環境の改善等を背景に、内需を中心に緩やかな回復基調を辿ることが期待されています。建設業界においては、建設投資は引き続き堅調に推移することが見込まれますが、2024年4月から建設業にも適用されています時間外労働の上限規制の影響が懸念されるなど、予断を許さない事業環境が続くものと思われます。
当社グループにおいては、社会のニーズの変化を見据えた事業・サービスを展開するとともにESG/SDGsに関わる取り組みを一体的に推進するなど、確かな技術と誠実な事業運営により社会の信頼に応え、成長し続ける企業グループを目指す所存であり、将来のありたい姿を示す「2030年に向けたビジョン」の実現を見据えた第2のステップである「中期経営計画(2022~2024年度)」に掲げた事業戦略の基本方針に基づく取り組みを推進しています。
具体的には、業務改革や組織改編、DXの推進等による生産性及び技術優位性の向上などを通じて「企業価値の向上」を図るとともに、不動産事業のさらなる拡大や強固な海外事業基盤の構築、従来の建設会社の枠を超えたバイオマス発電事業の推進といった「事業領域の拡大」、全社員のワークライフバランス実現のための社内制度の拡充や多様な人材がより活躍できる環境整備など「人的資源の活用」に引き続き取り組んでいます。
また、これらの取り組みを加速させるべく、多様な人材が能力を最大限に発揮できることを志向した新オフィス「クロスイノベーションセンター」を2023年10月、東京丸の内に開設しており、同オフィスを拠点に産官学民の連携強化による技術開発、ベンチャー企業との交流等による新規事業の開拓など、社内外の様々なリソースを活用したオープンイノベーションを強力に推進していきます。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、これまでの歴史の中で、『「堅実経営」と「誠実施工」を信条に、社会から必要とされ続ける企業として、社業の発展を通じ広く社会に貢献する』という経営理念を受け継いできており、その経営理念を基礎としながら、将来のありたい姿を示す「2030年に向けたビジョン」の実現を目指して、事業活動を推進しています。当社グループが描いているビジョンは、SDGsが目指す「持続可能な共生社会の実現」と目的を一つにするものと捉えており、事業活動による価値創造がSDGsへの貢献に繋がるものと考えています。
①ガバナンス
当社グループでは、ESG/SDGsに関連する課題等について審議し、戦略的な取り組みを推進する組織として、ESG/SDGs推進委員会を設置しています。
また、建設業界においては長時間労働の是正や週休2日の実現等が喫緊の課題となっており、働き方改革を横断的かつ可及的速やかに推進するための専門委員会として、働き方改革推進委員会を設置しています。
両委員会は、いずれも代表取締役社長を委員長、各本部組織の長及び東日本・西日本支社長を委員として構成し、その審議結果等については、必要に応じて取締役会に付議・報告することとするなど、取締役会による監視が適切に図られる体制としています。
②戦略
当社グループでは、気候関連を含めたサステナビリティ課題への対応が重要な経営課題であるとの認識のもと、ESG/SDGsに関わるリスクと機会、それらが顕在化した場合のインパクトを分析し、その発生可能性と影響度の2軸により、TCFD提言に基づくシナリオにおける重要度を評価のうえESG/SDGsに関わる課題を抽出しています。
同分析の結果、気候変動に関連したマテリアリティ(重要課題)として「レジリエントなインフラ整備への貢献」及び「環境に配慮した事業の推進」を特定したほか、事業活動の根幹となる「働き方改革の推進」についてもESG/SDGsに関わる当社グループのマテリアリティ(重要課題)として特定しており、これらの課題解決に向けた方策を中期経営計画における各部門の施策等に反映することで、事業活動とESG/SDGsに関わる取り組みを一体的に推進しています。
[ESG/SDGsに関わる当社グループのマテリアリティ(重要課題)等]
※1 リスクに関しては負のインパクト、機会に関しては正のインパクトを記載しています。
※2 発生可能性と影響度の2軸で重要度を評価しました。1~5の5段階で評価し、5が最も重要度が高いことを示しています(5:極めて高い、4:高い、3:中程度、2:低い、1:極めて低い)。
※3 ESG/SDGsに関わる当社グループのマテリアリティ(重要課題)は太字下線で示しています。また、★印は気候変動に関連した課題を示しています。
<気候変動に関する方針等>
当社グループは、「人と地球に優しい環境の創造と保全」を基本理念に掲げ、環境汚染の予防、環境負荷の低減及び環境の保全に努めています。
当社グループでは、「2℃以下シナリオ」及び「4℃シナリオ」に基づく検討(シナリオ分析)により、気候関連のリスク及び機会が組織に及ぼす影響を分析しており、気候変動に関連する課題は、前述の「ESG/SDGsに関わる当社グループのマテリアリティ(重要課題)等」内で★印で示しているとおりです。
・2℃以下シナリオ:世界の平均気温の上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準を保ち、1.5℃に抑える努力を継続することを想定したシナリオ
・4℃ シ ナ リ オ:世界の平均気温が産業革命前より4℃程度上昇することを想定したシナリオ
同分析の結果や課題等を踏まえ、中期経営計画(2022~2024年度)においては「再生可能エネルギー由来電力の安定供給」「施工段階におけるCO2排出量削減施策の推進」「設計段階におけるCO2排出量削減施策の推進」を非財務目標として設定しています。また、気候関連のリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標として、「温室効果ガス(GHG)排出削減目標」を設定しています。これらの目標のもと、CO2排出量削減に貢献またはCO2排出量を抑制するなど脱炭素社会に向けた取り組みを推進しています。
<人的資本に関する方針等>
当社グループでは「中期経営計画(2022~2024年度)」において、事業戦略の基本方針として「人的資源の活用」を掲げており、多様な人材が個々の能力を最大限に発揮し、すべての社員が生き生きと活躍できる職場づくりを推進するため、「人材育成方針」「社内環境整備方針」を策定のうえ、それら方針に基づく取り組みを進めています。
[人材育成方針]
具体的には、職務遂行能力に応じた階層別の研修や専門的知識の習得を目的とした職種別の研修などを計画的かつ積極的に実施するとともに、業務成績や発現された能力の評価に基づく適正な処遇への反映や評価結果のフィードバックを通じた指導・教育を行うことにより、人的対応力の強化を図っています。
また、DXを推進し、さらなる生産性の向上を実現するため、専門人材の確保・育成に注力するとともに、全社的なITリテラシー向上のための教育にも取り組んでいきます。
このほか、2023年4月から、従業員に対するインセンティブ・プランの一環として「従業員向け株式給付信託」を導入するなど、中長期的な業績の向上及び企業価値の増大への従業員の貢献意欲や士気を高める取り組みを進めています。
[社内環境整備方針]
具体的には、働き方改革を推進し、多様な人材が活躍できる職場環境を整備することにより、従業員の働きがいの向上に繋がる人材投資に取り組んでいきます。
その一環として女性活躍推進にも取り組んでおり、女性社員の積極的採用、育成を行うとともに、育児と仕事の両立を支援する制度の充実等を通じて女性社員が安心して働ける環境整備を進めることにより、女性の指導的立場での活躍を着実に推進します。
また、社員の健康づくりを積極的に支援しており、まずは社員が心身ともに健康で、さらには個性や能力を最大限に発揮することができる環境を整えることにより、社員一人ひとりのウェルビーイングの実現を目指しています。
なお、2023年10月には、多様な人材が能力を最大限に発揮できることを志向した新オフィス「クロスイノベーションセンター」を東京丸の内に開設しており、同オフィスは「CASBEE-ウェルネスオフィス認証」で最高位となる「Sランク」を取得しています。
※CASBEE-ウェルネスオフィス認証とは、建物利用者の健康性、快適性の維持・増進を支援する建物の仕様、性能、取り組みを評価するツールです。
③リスク管理
当社グループでは、ESG/SDGs推進委員会及び働き方改革推進委員会において、ESG/SDGsに関する課題等の分析・識別・評価を行い、事業環境の変化に合わせてマテリアリティ等を適宜見直すなど、関連するリスクを総合的に管理しています。また、サステナビリティを巡る課題の解決に向けた方策を中期経営計画に反映することで、事業活動とESG/SDGsに関わる取り組みを一体的に推進する体制とし、解決に向けた方策の実効性を高めています。
④指標と目標
<気候変動に関する指標と目標>
当社グループでは、「②戦略」において記載した、気候変動に関連するリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標を「
また、長期的な指標と目標として、温室効果ガス(GHG)排出削減目標を次のとおり設定しています。なお、同目標は2023年1月にSBT認定を取得しています。
※SBT(Science Based Targets):パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準を保ち、1.5℃に抑える努力を継続するもの)が要求する水準と整合した、5~15年先を目標年として企業が設定する「温室効果ガス排出削減目標」のこと。
(注)1 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
2 (参考)2020年度排出総量実績 Scope1+2:41,466.13 t-CO2 Scope3:1,180,258.95 t-CO2
2023年度排出総量実績 Scope1+2:51,801.65 t-CO2 Scope3:1,291,719.97 t-CO2
<人的資本に関する指標と目標>
当社グループでは、「②戦略」において記載した、人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標と目標を設定しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりで、当社グループはこれらのリスクに対して適切な管理を行い、業績等への影響の回避を図っています。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
① 建設投資の動向
事業環境の変化を見据え、事業戦略に基づき事業領域の拡大を目指すなど、強固な収益基盤の構築に努めていますが、事業ポートフォリオに占める建設事業の割合が大きいため、財政政策の変更による公共投資の縮減や国内外の景気後退等による民間設備投資の縮小など、受注環境が著しく悪化し受注競争が激化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
主要資材価格及び労務費の動向を常時注視し、大きな価格変動が見込まれる際には契約時期を調整する等により適正な価格での調達に努めていますが、原材料や原油価格の高騰、建設技能労働者の不足、需給バランスの偏り等により資材価格或いは労務費が高騰し、コスト増加分を請負代金に反映することが困難な場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
品質マネジメントシステムの運用により、施工案件の品質管理の徹底に努めており、品質トラブル及び顧客クレーム発生時には原因調査や是正を迅速に行っていますが、設計、施工等のサイクルにおいて、万一、重大な欠陥が発生した場合には、企業評価の悪化や契約不適合責任に基づく損害賠償金の支払い等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
労働安全衛生マネジメントシステムの運用により、事業所及び建設現場において安全衛生パトロールを実施する等、安全衛生管理には万全を期しており、災害発生時には原因調査や是正を迅速に行っていますが、万一、重大事故や労働災害が発生した場合には、企業評価の悪化や関係官庁からの行政処分等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
顧客及び協力会社についての信用調査を慎重かつ徹底的に行いリスク回避に努めていますが、万一、取引先が信用不安に陥った場合には、債権の回収不能や施工遅延による追加費用の発生等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
事業戦略に基づき、事業領域の拡大のため不動産事業の強化を図っており、不動産取得に際しては採算性等に関する十分な検討を行っていますが、国内外の景気動向や金利動向、不動産市況に著しい変化が生じた場合には、保有不動産の時価の著しい低下等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、取引関係の維持・強化等を目的として保有している有価証券等については、保有に伴う便益・リスクや企業価値向上に資するか等を定期的に精査し、縮減する等見直しを行っていますが、時価が著しく下落した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
PFI事業等の期間が長期にわたる事業においては、事業内容、採算性等を精査し参入の可否を慎重に判断していますが、経済動向、法的規制の変更、利用者減少等の市況の変化など、事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
事業戦略に基づき、事業領域の拡大のため海外事業基盤の構築を図っており、海外事業への取り組みに際しては、詳細な現地調査による情報収集に努めるとともに、為替リスクを回避するため、資金需要に応じた調達方法やヘッジ手段を検討していますが、進出国における政治・経済情勢・法制度や為替相場等に著しい変化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 新規事業展開のリスク
事業戦略に基づき、事業領域の拡大のため新規事業への参入を図っており、再生可能エネルギー事業等の新規事業への取り組みに際しては、事業性、将来性等に関する十分な検討を行っていますが、予期しない政治・経済情勢、市場の急激な変化等により、事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
コンプライアンスの徹底を経営上の重要課題と位置づけ、役職員へのコンプライアンス教育を実施するほか、コンプライアンス委員会、談合防止専門委員会を設置し、法的規制の遵守徹底を図っていますが、万一、法令違反が発生した場合には、社会的信用を著しく損ねるとともに、関係官庁からの行政処分や公共発注機関からの指名停止処分等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
大規模な自然災害等が発生した場合においても、事業活動を継続ないしは速やかに復旧し、必要な体制を構築できるよう事業継続計画(BCP)を整備していますが、地震、津波、風水害等の大規模自然災害や感染症の世界的流行が発生し、当社グループの従業員や保有資産に対する損害のほか、事業環境の悪化或いはその懸念が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、気候変動に関するリスク及び対応等については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。
情報セキュリティ体制を構築し、サーバやパソコンの設置及びネットワークの維持管理等、情報システム全般について管理・保全するとともに、事業活動を通じて得た顧客の機密情報について、細心の注意を払って管理していますが、万一、情報漏洩が発生した場合には、顧客や社会からの信用喪失や、損害賠償金の支払い等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行等に伴い経済活動の正常化が進みましたが、物価の高騰や海外経済減速の影響が続いたことなどから、回復のペースは緩やかなものとなりました。そのような中、建設業界においては、建設投資は堅調に推移したものの、依然として資材価格が高い水準で推移するなど、楽観できない事業環境が続きました。
当社グループにおいては、売上高は、前年同期に比べ15.5%増加した288,146百万円となりました。損益面では、売上高が増加したこと等により、売上総利益は同10.0%増加した35,191百万円、営業利益は同15.7%増加した13,708百万円、経常利益は同15.3%増加した14,878百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同10.9%増加した12,493百万円となりました。
(売上高)
土木事業及び建築事業の売上高が前年同期に比べそれぞれ6.0%、18.5%増加したため、売上高合計は同15.5%増加した288,146百万円となりました。
(売上総利益)
土木事業及び建築事業の売上総利益が前年同期に比べそれぞれ5.6%、14.6%増加したため、売上総利益合計は同10.0%増加した35,191百万円となりました。
(販売費及び一般管理費)
人件費やICT関連費用が増加したことや、新オフィス「クロスイノベーションセンター」の開設に伴い関連諸費用が増加したこと等により、前年同期に比べ1,329百万円増加した21,483百万円となりました。
(営業損益)
営業利益は、販売費及び一般管理費が増加したものの、売上総利益の増加により、前年同期に比べ15.7%増加した13,708百万円となりました。
(営業外損益)
連結子会社の支払利息の増加等により営業外費用が前年同期に比べ113百万円増加しましたが、為替差益の増加等により営業外収益が同222百万円増加したため、営業外収支の黒字は同109百万円増加した1,170百万円となりました。
(経常損益)
経常利益は、営業利益の増加等により、前年同期に比べ15.3%増加した14,878百万円となりました。
(特別損益)
投資有価証券売却益の増加や固定資産の売却等により特別利益が前年同期に比べ841百万円増加したこと等により、特別損益の黒字は同866百万円増加した3,293百万円となりました。
(法人税等)
法人税、住民税及び事業税が前年同期に比べ1,077百万円増加、法人税等調整額が同137百万円増加し、法人税等は同1,215百万円増加した6,008百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純損益)
以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期に比べ10.9%増加した12,493百万円となりました。
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しているとおり、当社グループは、2022年度を初年度とする「中期経営計画(2022~2024年度)」を策定しており、当連結会計年度の経営成績を、同計画における計画最終年度の主要数値目標と比較すると、次のとおりです。
引き続き、「中期経営計画(2022~2024年度)」に掲げた事業戦略の基本方針に基づき、業務改革や組織改編、DXの推進等による生産性及び技術優位性の向上などを通じて「企業価値の向上」を図るとともに、不動産事業のさらなる拡大や強固な海外事業基盤の構築、従来の建設会社の枠を超えたバイオマス発電事業の推進といった「事業領域の拡大」、全社員のワークライフバランス実現のための社内制度の拡充や多様な人材がより活躍できる環境整備などの「人的資源の活用」に取り組むことにより、数値目標の達成を目指していきます。
また、これらの取り組みを加速させるべく、多様な人材が能力を最大限に発揮できることを志向した新オフィス「クロスイノベーションセンター」を2023年10月、東京丸の内に開設しており、同オフィスを拠点に産官学民の連携強化による技術開発、ベンチャー企業との交流等による新規事業の開拓など、社内外の様々なリソースを活用したオープンイノベーションを強力に推進していきます。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(土木事業)
売上高は前年同期に比べ6.0%増加した103,154百万円、営業利益は、売上高の増加に加え、大型工事を含む複数の工事において竣工に伴う損益改善があったこと等により同8.9%増加した9,552百万円となりました。
(建築事業)
売上高は前年同期に比べ18.5%増加した165,185百万円、営業利益は、売上高が増加したこと等により同35.7%増加した914百万円となりました。
(投資開発事業)
再生可能エネルギーによる発電・売電事業の売上高が増加したこと等により、売上高は前年同期に比べ75.1%増加した14,211百万円、営業利益は同39.3%増加した2,605百万円となりました。
(その他)
売上高は前年同期に比べ19.6%増加した5,594百万円、営業利益は同0.1%減少した614百万円となりました。
生産、受注及び販売の実績は次のとおりです。
② 売上実績
(注) 1 当社グループにおいては、土木事業、建築事業以外での受注及び生産は僅少なため、受注実績については、土木事業、建築事業のみ記載しています。
2 当社グループが営んでいる事業の大部分を占める土木事業、建築事業では、生産実績を定義することが
困難なため、「生産の実績」は記載していません。
3 受注実績、売上実績については、セグメント間の取引を相殺消去して記載しています。
4 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりです。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の実績
(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高に
その増減額を含みます。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれます。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)です。
工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。
(注) 百分比は請負金額比です。
(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりです。
前事業年度
当事業年度
2 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
④ 次期繰越工事高(2024年3月31日現在)
(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりです。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は384,750百万円、負債合計は193,176百万円、純資産合計は191,573百万円となりました。また、当社グループの自己資本比率は49.0%(前連結会計年度末は50.0%)となりました。
流動資産は、現金預金、有価証券が減少しましたが、受取手形・完成工事未収入金等が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ21,562百万円増加した220,418百万円となりました。
固定資産は、機械、運搬具及び工具器具備品が減少しましたが、投資有価証券が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ19,459百万円増加した164,332百万円となりました。
この結果、資産合計は、前連結会計年度末に比べ41,022百万円増加した384,750百万円となりました。
流動負債は、短期借入金、未成工事受入金が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ17,319百万円増加した146,367百万円となりました。
固定負債は、ノンリコース借入金が減少しましたが、繰延税金負債、長期借入金が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ5,345百万円増加した46,809百万円となりました。
この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べ22,664百万円増加した193,176百万円となりました。
純資産合計は、配当金の支払い等により利益剰余金が減少しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益の計上やその他有価証券評価差額金が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ18,357百万円増加した191,573百万円となりました。
当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、投資活動により1,458百万円増加しましたが、営業活動により17,139百万円、財務活動により4,304百万円それぞれ減少したことにより、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ19,875百万円減少した28,917百万円となりました。
税金等調整前当期純利益の計上等により資金が増加しましたが、売上債権の増加等により、17,139百万円の資金減少となりました。(前連結会計年度は、17,900百万円の資金増加)
有形及び無形固定資産の取得等により資金が減少しましたが、有価証券及び投資有価証券の売却及び償還等により、1,458百万円の資金増加となりました。(前連結会計年度は、772百万円の資金増加)
借入金の増加等により資金が増加しましたが、配当金の支払い等により、4,304百万円の資金減少となりました。(前連結会計年度は、1,571百万円の資金減少)
キャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりです。
(注)1 キャッシュ・フロー指標のトレンドの計算式及び算出に利用した数字のベースについては次のとおりで
す。
有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対
象としています。
営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フロー
を使用しています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使
用しています。
2 当連結会計年度のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオに
ついては、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスのため記載していません。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、工事の完成に要する外注費等の工事費や人件費等の販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。
また、「中期経営計画(2022~2024年度)」では「企業価値の向上」「事業領域の拡大」「人的資源の活用」を事業戦略の基本方針としており、これらに戦略的に投資することとしています。
上記の資金需要に対し、自己資金の活用及び金融機関からの借入(ノンリコース借入を含む)を基本として必要資金の調達を行う方針です。
なお、当社グループは運転資金の効率的かつ機動的な調達を行うため、取引銀行3行と総額80億円のコミットメントライン契約を締結しており、緊急の資金需要等の流動性リスクに備えています。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。
特記すべき事項はありません。
当社グループは、建設構造物の更なる品質や安全性の向上、さらには脱炭素社会の実現など多様化する社会のニーズに柔軟に対応すべく、建設に関する技術の研究開発を推進しているなか、2023年10月に産官学民の技術者等との分野を超えた交流・連携の拠点として東京丸の内にクロスイノベーションセンター(通称:クロスアイ)を開設し、技術開発の促進に加え、ベンチャー企業等との交流による新技術の開拓を積極的に進めています。
当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は
セグメントごとの研究開発活動について示すと次のとおりです。
(1) 山岳トンネル工事の安全対策として「肌落ち監視システム」を開発
山岳トンネル工事において、切羽(掘削の最先端部分)での肌落ち(トンネルを掘削した面から岩石等が落下すること)災害の防止を目的に、切羽鏡面(掘削方向に対する垂直面)に吹付けたコンクリートのひび割れを検出して肌落ちの予兆を知らせる「肌落ち監視システム」を㈱システム計画研究所と共同で開発しました。
本システムは、カメラで撮影した切羽画像から、切羽鏡面の吹付けコンクリートに発生したひび割れをAIで検出し、肌落ちの予兆を警告するシステムです。吹付けコンクリート供試体や切羽鏡面の吹付けコンクリートなどのひび割れ画像を教師データとして作成したAI学習モデルを用いて、高い精度でひび割れを検出することができます。長崎県発注の山岳トンネル工事に適用し、切羽監視責任者が切羽に極力接近することなく、短時間でひび割れ検出結果を表示でき、肌落ち監視を補助するシステムとして有効であることを確認しました。
今後は、施工の安全性向上に寄与するシステムとして積極的に現場適用していくとともに、本システムの更なる高度化を図ります。
(2) 「下水道内部の水位モニタリングシステム」を開発
下水道管路の老朽化対策や局所的な豪雨などによる内水氾濫(雨水が排水できなくなり浸水する現象)の軽減を目的に、管路内部の水位データを広域かつ効率的に取得・管理できるモニタリングシステムを㈱コアシステムジャパンと共同で開発しました。
本システムは、①センサ技術、②通信技術、③水位計の固定治具の3項目を工夫することにより、省電力・高耐久・機器設置の簡便性を実現するものです。これにより効率的でコストを抑えた下水道管路内部のモニタリングシステムを確立しました。①センサ技術は、腐食に強く耐雷性にも優れた光ファイバを用いた「ヘテロコア光ファイバ水位計」を採用しました。従来型の水位計よりも低コストであることから多数の設置が可能となります。②通信技術は、従来のLTE通信に加え、消費電力が少ないLoRa通信も採用しました。LoRa通信ではクラウドへのデータ転送を行わないため、マンホール下に設置した送信機から受信機を搭載した点検車が走行しながらデータを取得することとしました。主要なマンホールに設置するメイン機器はリアルタイムに計測できるLTE通信を用い、メイン機器を補完する位置に設置するバックアップ機器はLoRa通信を用います。これにより、LTE通信のみを使用する場合と比べ、消費電力と通信料の大幅な低減を実現しました。③水位計の固定治具は、アンカーレスで容易に着脱が可能な「水位計一体型固定治具」(自社開発技術(特許取得済み))を採用することで、設置時間を従来の25%に短縮し、機器設置の効率化を実現しました。
今後は、自治体等の管理する供用中の下水道管路に本システムを適用・運用し、効果の検証を行います。また、運用によって得られた知見から、機器の改良を行い、更なる機能向上を図ります。
建築事業では、建築物の資産価値を維持し安全性を確保する免震・制振技術や、快適性を高める室内環境技術、SDGs達成にも貢献する省エネ・省資源・環境配慮技術などの開発、さらには企画・設計・施工の各フェーズにおける合理化などに取り組んでいます。
免震建物において長周期地震動の影響を受けた際に生じる過大な水平変位を抑制し、建物が擁壁に衝突することを防ぐ「性能可変オイルダンパー(以下、VOD)」を東北大学、(有)シズメテックと三者共同で開発しました。まずは、既存免震建物である奥村組名古屋支店に設置されているダンパーをVODに取り替える(2024年8月予定)こととしており、 2024年1月に「奥村組名古屋支店に用いる性能可変オイルダンパー」として、(一財)日本建築センターから評定(BCJ評定-IB0041-01)を取得しました(特許出願中)。
VODは、免震層に生じた水平変位に応じて減衰力(地震のエネルギーを吸収し揺れを小さくする力)が自動で無段階に切り替わります。地震による揺れが続いている間は、性能変化により増加した減衰力を維持することで建物の水平変位を抑制するため、上部構造に作用する最大地震力を従来型のダンパーと同等に抑えられるとともに、長周期地震動作用時に免震層の最大水平変位を抑制することができます。
今後は、長周期地震動作用時に擁壁への衝突が危惧される既存の免震建物のほか、水平クリアランスを十分に確保できない狭小敷地における免震建物の建設にも本技術を適用していきます。
鉄筋コンクリート造建築物において、梁幅を柱幅より広くし、一般的な梁よりも梁せい(梁の高さ)を小さく抑えた扁平梁を適用する「奥村式扁平梁工法」を開発し、(一財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明(GBRC性能証明 第19-13号改1)を取得しました。
本工法では、扁平梁を補強筋等で適切に補強することにより、剛性や耐力を確保しつつ、柱幅に対する梁幅の比(扁平率)を最大3倍まで広げ、梁せいを最大で柱幅の半分まで小さくすることが可能です。これにより、住戸内の有効天井高や窓開口を大きく確保できるため、設計の自由度が高まります。
今後は、主に高層・超高層の集合住宅等への適用を積極的に進めていきます。
研究開発活動は特段行われていません。
研究開発活動は特段行われていません。