第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 経営方針・経営戦略等

当社グループは、企業として目指す姿を表した「経営理念」を以下のとおり定めています。

① 自動化・省力化に貢献する

空気圧機器をはじめとする自動制御機器製品の製造販売を通じて、「産業界の自動化・省力化に貢献する」ことが、当社の社会的使命であると認識しております。

② 本業に専心する

「産業界の自動化・省力化に貢献する」要素部品メーカーとしての本分に徹し、本業である自動制御機器事業に経営資源を集中して、競争力の向上に努めてまいります。

③ グローバルに製品を供給する

世界各国・地域のルールやニーズに沿った製品、世界のどの市場でも通用する製品を供給してまいります。

 

(2) 経営環境

① 市場環境
 (a) お客様の多様性

当社グループの主要製品である空気圧機器をはじめとする自動制御機器は、自動化された工場の生産・搬送ライン、半導体製造装置、工作機械、産業用ロボットなどのオートメーションを支える要素部品として、あらゆる産業分野で使用されています。

当社グループは、特定の業種、特定のお客様への依存度が低いため、産業構造の変化や需要環境の急変への耐性が相対的に高いと認識しています。

 (b) 製品の汎用性の高さ

空気圧機器は、汎用性が高く、お客様の創意工夫によって、用途が無限に拡大しています。当社グループは、お客様のニーズに応える製品開発を進めており、これを通じて新規需要の開拓が可能です。

 (c) 環境保護への要請の高まり

環境保護の取組は人類共通の喫緊の課題であり、お客様の環境保護への要請は年々高まっています。

大気中に放出しても問題のない圧縮空気を動力源とする空気圧機器は、それ自体が環境にやさしい特性を備えています。

 (d) 労働力人口の減少と人件費の高騰

少子・高齢化は世界的に進んでおり、多くの先進国では、労働力人口の減少が始まっています。また、これまで労働集約型の生産活動を担ってきた新興国においては、経済発展に伴い人件費が高騰しつつあります。

空気圧機器は、人の手による作業の代替に適した自動制御機器であり、労働力人口の減少や人件費の高騰に対処するための自動化・省力化ニーズに合致しています。

 

② 当社グループの競争優位性

 (a) 空気圧機器の総合メーカー

空気圧機器は、空気配管上で使用される様々な機器でシステムを構成しています。当社グループは、それらの機器すべてを製造販売する総合メーカーであり、お客様に各種の空気圧機器をワンストップで供給することができます。

 (b) 環境性能に優れた製品開発

当社グループは、製品設計の段階から、環境負荷の少ない製品の開発に取り組んでいます。また、お客様のニーズに応じた製品開発を続ける中で技術力を培い、特に製品の小型化・軽量化を得意としています。

空気圧機器の小型化・軽量化は、空気圧機器を組み込んだ装置やロボットの重量を減らし、お客様の工場全体のエネルギー消費量の削減を可能にします。

 (c) 豊富な品揃えと潤沢な在庫

空気圧機器には、お客様の使用状況に応じた様々なバリエーションが要求されます。当社グループは、70万品目に及ぶ豊富な品揃えで、お客様のあらゆるニーズにお応えします。

空気圧機器は、お客様の工場の生産・搬送ライン等に組み込まれる要素部品であり、空気圧機器の不具合や欠品によってライン等が停止すれば、お客様は多大な損失を被ります。そのため当社グループは、製品の品質管理に万全を期すとともに、戦略的に厚めの在庫を保持することにより、お客様のご注文に迅速に対応できる短納期即納体制を整えています。

 

 (d) グローバルネットワーク

お客様の事業はグローバル化が進んでいます。

当社グループは80以上の国と地域に拠点を持ち、直販の営業人員を配置することで、お客様のニーズを的確にとらえ、ニーズに合った製品をグローバルに供給できる体制を構築しています。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 長期経営ビジョン

以上のような市場環境及び製品特性を踏まえて、当社グループは「中期経営計画」を策定せず、「長期経営ビジョン」という形で、より長期的な視点で継続的に取り組むべき課題を設定しています。

(a) お客様のニーズを的確にとらえた製品開発を進め、納期・品質・価格等においてお客様のご要望にお応えできる体制づくりに努める。
(b) 生産設備の新規拡充と既存設備の更新に集中的に取り組み、将来を見据えたグローバルな最適生産体制を確立するとともに、合理化・コストダウンを加速する。
(c) グローバル市場における競争に勝ち残り、より一層高いマーケットシェアの獲得を目指す。
 

② 事業上及び財務上の課題に対する具体的な取組の内容

 (a) 製品供給能力の確保

想定される中長期的な需要の伸長及び米中貿易摩擦など経済のブロック化の動きに備えて、当社グループは国内外において生産及び物流の体制を強化し、製品供給能力の確保に努めています。

 (b) 販売戦力の強化

お客様の事業のグローバル展開が進む中、ITを活用し、当社グループのグローバルネットワークを有機的に結合させることや、営業人員に対する教育研修プログラムを改善すること等を通じて、販売戦力のより一層の強化に取り組んでいます。

 (c) 保有資産の有効活用

当社グループの保有する現金は、経営の安定に寄与していますが、為替や金利の変動リスクに対応し、また機動的な資金の活用を可能にするため、グループ内での現金配分の見直しを実行しています。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 考え方及び体制

[マテリアリティ]

当社グループは、事業活動を通じた社会課題の解決に取り組んでいます。

お客様や株主・投資家の皆様との対話を起点に、取締役会で議論を重ね、リスク及び収益機会の両面から、当社グループが持続的に成長する上での重要課題(マテリアリティ)を以下のとおり特定しました。

 (a) 人権の尊重・ダイバーシティの推進・職場の安全安心確保

・当社グループはもとよりサプライチェーンにおいても、人権侵害のない環境づくりに取り組みます。

・ダイバーシティに取り組み、国籍・性別・年齢等に関わらず、多様な人材が活躍できる企業を目指します。

・従業員が安全・安心に働ける職場環境の維持に努めます。

 (b) 気候変動・環境課題への対応

・製造時及び使用時のCO2排出量を削減した環境配慮型製品(エコプロダクツ)の開発・供給を推進します。

・工場におけるCO2排出量削減、廃棄物の削減など(エコファクトリー)に取り組み、そのノウハウをお客様への提案にも活かします。

 (c) グローバルな製品の安定供給

・事業活動全般にわたるBCP(事業継続計画)を推進し、いかなる時にも製品供給を持続できる体制を構築します。

 (d) 人材の育成・自動制御技術の普及

・グローバルな人事評価制度・表彰制度・教育研修制度を整備し、人材の育成と活用に努めます。

・奨学金や各種セミナーの開催等を通じて、自動制御技術の普及に努めるとともに、次世代を担う人材の育成に貢献します。

 

 

[ガバナンス]

取締役会の諮問機関として「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティ課題に関する取組の進捗状況等の監督機能を強化しています。サステナビリティ委員会は、独立社外取締役が全体の過半数となるよう構成すること、委員長は独立社外取締役である委員の互選により選定することを、内規により定めています。

執行側の組織としては、同委員会を補佐する管掌取締役を置き、サステナビリティに関する取組を統括する「SDGs事務局」及びグループ内外への情報発信を担当する「コーポレートコミュニケーション室」が、事務局機能を担っています。また、各事業部門の責任者が管下組織における取組を統括管理し、サステナビリティ委員会及び取締役会への報告を行う体制としています。

環境関連のデータ収集並びに再生可能エネルギーの利用促進など気候変動対策としての具体的施策の企画立案・実施を担当する部署として、「エコファクトリー推進室」を設置しています。

 

 

取締役会

 

 

 

サステナビリティ委員会

 

 

 

 

 

事務局

(管掌取締役)

SDGs事務局

 

コーポレート
コミュニケーション室

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

製造本部

 

生産技術本部

 

技術本部

 

営業本部

 

管理本部

 

 

 

 

エコファクトリー推進室

 

 

 

[リスク管理]

サステナビリティ委員会は、各事業部門及び事務局から報告を受けたサステナビリティに関するリスクについて、分析、評価、対応策の妥当性を検証し、必要に応じて取締役会に報告することとしています。

気候変動に関しては、エコファクトリー推進室が中心となり、SDGs事務局及び各事業部門と連携して、リスク・機会を幅広く抽出し、重要なリスク・機会の特定・評価を行い、それぞれのリスク・機会に対して対応策を検討しています。その結果は、サステナビリティ委員会及び取締役会に定期的に報告しています。

 

(2) 気候変動に関する取組

[戦略]

当社グループは、2022年6月に賛同表明したTCFDの考え方に基づき、IEAやIPCCなどの報告書やパリ協定をはじめとする国際動向を踏まえ、低炭素社会へ移行する1.5℃シナリオと、温暖化が進行する4℃シナリオを選択し、シナリオ分析を実施しました。

シナリオ分析の結果は、当社グループの方針決定に反映しています。

また、1.5℃シナリオ及び4℃シナリオの双方において、それぞれのリスク・機会に関する財務影響度及び対応策の観点から、当社グループの事業戦略はレジリエンスを有していると考えています。

今後も定期的にシナリオ分析を行い、リスク・機会を見直すとともに、対応策の着実な実行及び進捗状況のモニタリングを実施します。

 

 

<シナリオの概要>

 

概  要

参照した主な参考文献

1.5℃
シナリオ

2050年に温室効果ガス(GHG)排出量をネットゼロとするため、炭素税や排出量取引、リサイクル規制や地球温暖化防止規制など、脱炭素に向けた政策が強化される。

それに伴い、GHG排出量削減要請の高まり、低炭素技術の進展や低炭素製品の需要拡大が見込まれる。

なお、気温上昇が抑えられることから、物理的な影響は比較的大きくないことが想定される。

・IEA WEO NZEシナリオ、SDSシナリオ

・IPCC RCP1.9

・JEITA 「注目分野に関する動向調査」

・世界経済フォーラム

「Winning in Green Markets: Scaling Products for a Net Zero World」

4℃
シナリオ

化石燃料への依存により経済が発展する中で、気候変動政策は十分に講じられず、脱炭素に関する技術はあまり進展しない。

一方で、気温上昇に伴い、洪水などの気象災害が激甚化し、物理的な被害の拡大が予想される。そのため、BCP対応や、熱中症・感染症等に備えるための工場設備の省人化・自動化の推進が想定される。

・IEA WEO STEPSシナリオ

・IPCC RCP8.5

・WRI Aqueduct Floods

・WRI Aqueduct Water Risk Atlas

・国土交通省 ハザードマップ

 

 

<定義>

時間軸

定  義

 

財務影響度

定  義

短期

0~3年

 

10億円未満

中期

4~10年

 

10~500億円未満

長期

11~30年

 

500億円以上

 

 

<1.5℃シナリオ>

分類

気候変動

ドライバー

想定

リスク

/機会

事業への影響

顕在

時期

2030年度

財務影響度

対応策

政策・

法規制

炭素税・排出量取引制度の導入

炭素排出の負担が発生する

リスク

サプライヤーの炭素排出負担転嫁による調達費用の増加

中~

長期

・小型・軽量製品の開発(材料使用量削減)

・切粉・端材のリサイクル

・グローバル調達の最適化

リスク

Scope1・2に炭素排出負担が生じることによる製造・営業費用の増加

中~

長期

・太陽光発電の導入

・再生可能エネルギー由来電力の主力電源化

・HFCを温暖化係数の低い洗浄液へ切替

・高効率設備の導入と設備更新

・省エネ生産工法の研究と量産導入

・温調機器に温暖化係数の低い冷媒を採用

機会

Scope1・2削減に伴う炭素排出負担減少による製造・営業費用の減少

中~

長期

市場

顧客の低炭素意識の高まり

顧客から低炭素エネルギーの利用が要請される

リスク

Scope1・2削減施策の実行に伴う製造・営業費用の増加

中~

長期

顧客からカーボンフットプリント(CFP)等の詳しい情報開示を要請される

機会

CFP表示が義務付けられ、CFPの小さい製品が選定されることによる、当社製品の売上高の増加

中~

長期

・代表機種製造時のCO2排出量算定

・製品アセスメントの実施

・軽量・小型設計で製造時のCO2排出量削減

・工場電力を再エネ電力へ切替

・製造時CO2排出量算定対象製品の拡大

・省エネ・省エア・長寿命製品の開発拡大

低炭素製品を志向する顧客が増加する

機会

見える化に伴うセンサー類の需要増加による売上高の増加

中~

長期

・省エネ製品の開発

・生産/販売体制の強化

・製品バリエーションの充実

・無線化技術の拡充

 

 

分類

気候変動

ドライバー

想定

リスク

/機会

事業への影響

顕在

時期

2030年度

財務影響度

対応策

市場

 

顧客の低炭素意識の高まり

低炭素製品を志向する顧客が増加する

機会

小型・軽量な空気圧機器の需要増加による売上高の増加

中~

長期

・製品バリエーションの充実

・小型・軽量製品の拡充

・生産/販売体制の強化

・省エネ・省エア製品の新規技術開発

・使用済み製品のリサイクルチェーン構築

動力が

電化に

移行する

機会

空気圧アクチュエータの市場の成長が鈍化する中での一定の売上高の増加

中~

長期

・省エネ・省エア製品の開発

・最適製品を選定できるプログラムの提供

・省エネ・省エア製品の市場普及活動

・省エネシステムの技術サポート

・カスタム製品の対応強化

リスク

空気圧アクチュエータ市場の成長率鈍化による売上高の逸失

中~

長期

機会

電動アクチュエータの市場が拡大することによる売上高の増加

中~

長期

・電動アクチュエータのバリエーションの充実

・省エネ製品の開発

・生産/販売体制の強化

・修理・リサイクル体制の構築

素材の価格上昇

低炭素社会移行に伴いアルミニウムの価格が上昇する

リスク

主要な原材料であるアルミニウムの価格上昇による調達費用の増加

中~

長期

・小型・軽量製品の開発によるアルミ使用量の削減

・樹脂材料への材質転化

・リサイクルチェーンの構築

・グローバル調達の最適化

低炭素社会移行に伴い銅合金・鋼材の価格が上昇する

リスク

主要な原材料である銅合金・鋼材の価格上昇による調達費用の増加

中~

長期

・小型・軽量製品の開発による銅合金・鋼材使用量の削減

・樹脂材料への材質転化

・リサイクルチェーンの構築

・グローバル調達の最適化

再生樹脂

・ゴム

材料価格が上昇する

リスク

主要な原材料である樹脂・ゴム材料の価格上昇による調達費用の増加

中~

長期

・小型製品の開発による材料使用量の削減

・ランナーレス金型構造の研究

・リサイクル原料の活用検討

・グローバル調達の最適化

市場

小売電力価格の上昇

電力会社が脱炭素エネルギーに基づく発電に移行することにより、小売電力価格が上昇する

リスク

サプライヤーの電気代価格転嫁による調達費用の増加

中~

長期

・連結Scope3排出量の算定

・省エネ生産工法の研究(プレス化、樹脂化など)

・省エネ生産工法の設計採用

・最適なグローバル生産拠点の検討

リスク

自社の電気代上昇による製造費用の増加

中~

長期

・太陽光発電の導入

・省エネ設備の導入

・高効率生産設備への更新

機会

省エネ・省エア製品の需要増による売上高の増加

中~

長期

・省エネ・省エア製品の開発

・最適製品を選定できるプログラムの開発と提供

・省エネ・省エア製品のバリエーション拡充と拡販

・省エネ・省エア製品の生産/販売体制強化

・省エネシステムの技術サポート

 

 

分類

気候変動

ドライバー

想定

リスク

/機会

事業への影響

顕在

時期

2030年度

財務影響度

対応策

市場

小売電力価格の下落

再生可能エネルギーが汎用化して小売電力価格が下落する

機会

自社の電気代下落による製造費用の減少

中~

長期

・再生可能エネルギー由来電力の主力電源化

・燃焼・空調設備の電化

機会

電気をエネルギー源とする製品の売上高の増加

中~

長期

・LCA関連団体(LCA日本フォーラム)への参加

・生産/販売体制の強化

・製品シリーズとバリエーションの拡充

・カスタム製品の対応強化

 

 

<4℃シナリオ>

分類

気候変動

ドライバー

想定

リスク

/機会

事業への影響

顕在

時期

2030年度

財務影響度

対応策

物理

(急性)

気象災害(洪水・大雨・台風等)の激甚化

気象災害に被災する

リスク

サプライヤーの気象災害被災に伴う納入遅延による損失

短~

長期

・複数購買の推進

・定期的な在庫保有日数の確認

・定期的な洪水・高潮リスクの把握

・新規サプライヤー選定時の洪水リスクの把握

リスク

自社の気象災害被災による棚卸資産・固定資産の災害損失

短~

長期

・生産/物流拠点の分散化

・事前の対策及び被災時のBCPの策定

・BCP対応予算の拡充

・損害保険契約

・在庫保管場所の見直し

・生産拠点の新設・移転時の気象災害リスクの評価

・洪水の影響を受けやすい拠点における洪水発生時の備えの検討

リスク

自社の気象災害被災に伴う操業停止による損失

短~

長期

物理

(慢性)

降雨パターンの変化

降雨の季節的な変動により、水不足が生じる

リスク

渇水による水不足に伴う操業停止による損失

短~

長期

・生産/物流拠点の分散化

・事前の対策及び被災時のBCPの策定

・BCP対応予算の拡充

・特に水不足のリスクが高い拠点における対策の実施や水不足発生時の備えの検討

・水使用量の削減

・水の再利用・循環の検討

 

 

[指標及び目標]

当社グループは、気候関連リスク及び機会を測定・管理するための指標として、国際的な基準である「GHGプロトコル」に基づくScope1、Scope2及びScope3(*1)のCO2排出量について、グループ全体(*2)を網羅するデータの収集及び推計を行っています。なお、これらデータの正確性及び信頼性については、LRQAリミテッドによる第三者検証を受けています。

将来の売上・生産規模の拡大も想定した上で、具体的な施策を積み上げて、GHG排出の絶対量を削減する中・長期目標(*3)を策定し、削減施策に取り組んでいます。なお、2030年度までのGHG排出量削減の中期目標については、SBTi(*4)による認証を取得しています。

*1 Scope1: 自社の燃料消費によるCO2排出量

   Scope2: 他社から供給されたエネルギーの消費によるCO2排出量

   Scope3: 原材料の購入、製品の配送、お客様が当社製品を使用した際のエネルギー消費など、事業活動に

       関わる間接排出

*2 連結外部売上高の95%以上を構成する販売拠点、生産拠点、主要物流拠点34社

*3 2021年度を基準年として、SBTi(*4)による1.5℃シナリオの要求を満たす削減目標

*4 SBTi(Science Based Target Initiative)は、企業が2050年までの実質的なGHG排出量ゼロ(ネットゼロ)達成

   に向けた目標を設定するための科学的な基準やガイダンスを提供する国際機関

 

 



 


<温室効果ガス(GHG)排出量>

(単位:t-CO2)

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

Scope1

50,907

52,930

60,240

60,634

50,507

Scope2 (マーケット基準)

110,199

116,516

137,918

119,139

86,041

Scope1,2 合計

161,106

169,446

198,158

179,773

136,548

Scope3

 

 

14,057,549

14,261,704

(注)

Scope1,2,3 合計

 

 

14,255,707

14,441,477

(注)

 

    (注) 2024年3月期のScope3排出量は、現在集計中です。

 

(3) 人的資本に関する取組

[戦略]

当社グループは、ビジネスのグローバル化、顧客ニーズの多様化、少子高齢化・労働力人口の減少に伴い深刻化する人材不足といったビジネス環境の変化に対応するとともに、イノベーションの創出や生産性の向上など、ビジネスに新たな価値をもたらす効果が期待できるダイバーシティを推進し、人的資本の最大限の活用に取り組みます。

 

① グローバル人事方針

当社グループの従業員約23,000名のうち75%が、海外のグループ会社に在籍しています。

当社グループがさらなる成長を遂げ、次のステージに進むためには、ダイバーシティの取組を推進し、グループが一体となって事業活動に取り組む体制を構築する必要があると考えています。具体的には、グループ間での連携・協働の深化、グループの優秀な人材が能力を発揮できる仕組みと環境の整備、人材育成の仕組みの整備に取り組みます。

当社グループは、こうした認識のもと、以下の人事方針を掲げています。

・従業員が会社に愛着と誇りを持ち、働きがいを感じることで、持てる力を存分に発揮できる環境を整備する。

・持続可能性と多様性を基軸とした人事施策を推進し、多様な個性を持った従業員を繋ぎ、グループとしての一体感を醸成する。

 

 

② 人材育成方針

 (a) 基本的な考え方

 当社グループは、空気圧機器をはじめとする自動制御機器の製造販売を通じて、「産業界の自動化・省力化に貢献する」という社会的使命を果たすために、人的資本を確保・育成していく必要があると考えています。

 当社は設立以来、「働きがい」を重視した人事管理を行っています。自由闊達な企業風土を醸成し、実務経験を通じて人を育て、若い社員にも責任ある仕事を任せて成長を促しています。各自が自律的に活動することで持てる力を存分に発揮し、常に仕事に情熱を持ち、会社に誇りを持てる環境づくりに努めています。

 当社グループは、持続可能性と多様性を基軸とした人事施策を推進するとともに、人材投資を惜しまず実行し、その効果の検証・改善を継続します。

 (b) 確保・育成していく人材像

   ・失敗を恐れずに積極的にチャレンジする人材

   ・グローバルな視点で活躍できる人材

   ・主体的に考え行動する自律型の人材

   ・専門性を高めスペシャリストを志向する人材

 (c) 具体的な取組

  (ⅰ) SMCグループ内転勤制度

 当社グループのさらなる成長を実現するためには、世界中のグループ各社で働いている優秀な人材が、会社の枠を超えて「グローバルに活躍できる態勢」を、スピード感を持って構築する必要があるとの考えから、「SMCグループ内転勤制度」の運用を2023年度から開始しました。本制度は、海外グループ各社から募った、優秀で高い意欲を持った人材が、日本の本社での勤務経験をもとに視野を広げ、帰国後のさらなる活躍の素地を固めると同時に、日本の従業員が海外の人材と交流し切磋琢磨する中で刺激を受け、グローバルな活躍の舞台を求めてチャレンジする精神を培うことを目的としています。(2023年度のグループ内転勤制度適用者は、6か国10名)

  (ⅱ) SMCグループ技能競技大会

 当社は、技能の向上及び伝承の環境づくりを整備するために、製造本部及び各工場に「技能伝承委員会」を発足し、国内にある6事業所の工場に「技能育成道場」を設置しました。また、自己啓発を促進して技能の維持・向上を図ることを目的に、社内の技能者を対象に技能競技大会を開催することとしていますが、SMCグループ企業及び協力企業の技能の維持・向上を図ることを目的に、2023年度は日本の6工場の他、中国工場が競技に参加して「第1回SMCグループ技能競技大会」を実施しました。今後は韓国工場やベトナム工場の参加も計画されており、国や会社の枠を超え、優れた技能に触れ切磋琢磨する機会を提供することで、製品の安定供給と品質向上を実現するとともに、モノづくりによるヒトづくり、モチベーションやエンゲージメントの向上、生産性向上を図ります。

 

③ 社内環境整備方針
 (a) 基本的な考え方

 当社グループは、「SMCグループ行動規範」において、「従業員一人一人の人格、個性を尊重し、国籍、人種、民族、信条、宗教、性別等に基づくいかなる非合理な差別もなく、各自が意欲を持ち、能力を十分に発揮できる、安全で働きやすい職場環境の維持に努めます」と定めています。

 (b) 安全・安心で健康的な職場環境の整備

 事業活動のすべてにおいて安全・安心を優先します。各生産拠点に「安全道場」を設置し、研修を徹底するなど、万全な安全管理に努めています。また特に、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント等のハラスメント行為は、人権を侵害し職場環境を害する行為であり、固くこれを禁じ、他人の行為も見逃しません。問題発生時には、迅速に調査し、被害者の救済と再発防止に向けた断固たる措置を取ります。全従業員を対象としたハラスメント防止研修を継続して実施し、組織としてハラスメントを起こさない職場風土づくりを進めています。

 (c) 公平・公正で透明性のある人事評価と処遇

 自由闊達な企業風土を醸成するとともに、明るく、働きがいのある職場環境の維持に努めます。公平・公正で透明性のある人事評価を行い、役割・能力・成果に基づいて処遇します。各自が意欲を持ち、能力を発揮できる環境を整備することで、生産性の向上を図り、会社に愛着や誇りを持って、働きがいを感じることができる職場環境づくりを進めています。

 

 

[指標及び目標]

① 女性の活躍推進

当社は、女性がキャリア形成をあきらめることなく活躍できる環境を整え、管理職へ昇進する機会も平等であることが重要だと考えています。積極的な採用活動により女性採用比率を向上させるとともに、出産や育児のための休暇・休業から復帰する際には、休業前と同一の職場に復職することとして、スムーズな復帰が可能となるよう配慮しています。また、仕事と家庭・育児等の両立支援策として、時短勤務制度や時差出勤制度などの諸制度を設け、働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。

将来的に組織の管理や経営の意思決定に携わる女性社員を増やしていくためには、中長期の視点でキャリア意識の醸成が必要であり、各自の特性や能力を最大限活かせる職場環境の整備や管理職の養成に関わる研修等の取組を進めています。

 

<当社における育児休業取得者の復職率>

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

育児休業取得者の復職率

99.0%

96.7%

100.0%

99.0%

100.0

 

   (注) 期間中に復職した者の数/期間中に休職を終了した者の数(退職者を含む)で算出しました。

 

<当社における大学新卒採用状況>

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

女性の

応募比率

技術職

0.0%

4.2%

3.9%

7.2%

2.1

営業職・企画業務職

21.0%

32.5%

31.3%

27.3

女性の

採用比率

技術職

0.0%

3.1%

2.3%

5.0%

2.4

(5年平均)

(1.0%)

(1.2%)

(1.1%)

(2.5%)

(2.8)

営業職・企画業務職

22.7%

36.0%

39.1%

15.2

(5年平均)

(17.1%)

(16.7%)

(20.4%)

(28.9%)

(27.2)

 

(注) 2020年度の営業職・企画業務職の女性の応募比率・採用比率については、採用者が0名であったことから、算出していません。

 

<当社における女性管理職比率>

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

管理職層における女性比率

0.9%

1.5%

1.8%

1.7%

1.8

 

 

<当社における全労働者の年次有給休暇の取得率・1当たりの平均取得日数>

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

男性

年次有給休暇の取得率

68.5%

63.3%

71.0%

75.9%

77.3

1人当たりの平均取得日数

12.9日

11.8日

13.2日

13.7日

14.1

女性

年次有給休暇の取得率

84.1%

76.4%

89.4%

95.3%

94.8

1人当たりの平均取得日数

15.2日

13.7日

16.1日

17.0日

17.2

全社

年次有給休暇の取得率

74.7%

68.6%

78.5%

83.7%

84.3

1人当たりの平均取得日数

13.9日

12.6日

14.4日

15.0日

15.3

 

 

<女性活躍推進法に基づく行動計画>

数値目標

(1) 技術職の新卒女性採用比率を5年平均で10%とする。

(2) 営業職・企画業務職の新卒女性採用比率を5年平均で35%とする。

(3) 社員1人当たりの年次有給休暇の取得率を80%以上とする。

 

 

② 男性の育児休業取得

当社は、男性の育児参加の促進を図るため、出生時育児休業制度の新設に合わせ、「出生時育児休業取得奨励金」を新設しました。職場全体が育児への理解を深めるとともに、育児を応援する職場風土の醸成と、育児休業を取得しやすい環境の整備を進めるために、社内報で男性の育児休業取得者の特集を組みました。これらの取組により、男性従業員の育児休業制度の利用が進んでいます。

また、育児を目的とした休暇の取得を促進するため、配偶者の出産時の特別有給休暇日数を増やしています。

 

<当社における男性従業員の育児休業取得率・育児休業平均取得日数>

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

男性従業員

育児休業取得率

0.7%

3.6%

11.0%

21.9%

43.1

育児休業平均取得日数

68.3日

62.2日

51.1日

38.2日

24.3

 

(注) 育児休業平均取得日数に、配偶者の出産時の育児を目的とした特別有給休暇の取得日数は含めていません。

 

<男性の育児休業取得の数値目標と施策>

数値目標

男性の育児休業取得率を2025年度に50%とする。

施  策

男性の育児休業取得状況を公表し、社内報等で取得者の声を紹介する。

管理職研修において周知徹底する。

 

 

③ 男女間の賃金格差

<男女間の賃金格差(男性を100とした場合の女性の値を表した指数)>

 

2022年度

2023年度

全従業員

48.5

50.8

正規雇用労働者

60.6

62.9

パート・有期労働者

89.0

87.6

 

 

<当社における労働者の職層別の男女間の賃金格差、従業員比率、平均勤続年数>

 

男女間賃金格差
(男性を100とした
場合の女性の値を
表した指数)

従業員比率

平均勤続年数

男性

女性

男性

女性

正規

管理職層

104.3

98.2%

1.8%

30.3年

28.4年

営業職・技術職・企画業務職

80.1

95.0%

5.0%

15.3年

12.0年

技能職・技能工職

59.9

98.1%

1.9%

19.0年

6.9年

製造職・一般事務職

109.7

0.4%

99.6%

18.0年

20.1年

非正規

パート・有期労働者

87.6

34.0%

66.0%

9.9年

11.0年

 

 

当社の賃金制度は、同一労働同一賃金の原則に則り、同一の職群(職層や職階のカテゴリー)においては同一の賃金テーブルで運用しており、性別による支給格差は一切ありません。

賃金格差が生じている理由は、以下のとおりであると分析しています。

(a) 男女間の平均勤続年数の差

従来の日本企業では、女性が結婚、出産、育児、介護を理由に退職することが多く、当社においても女性の平均勤続年数が男性より短い要因となっています。

加えて、特に技術職・営業職・技能職・技能工職の職層では、過去に女性の採用者が少なく、近年の新卒採用において女性の比率が上昇し、若手層が増加していることも、女性の平均勤続年数が男性より短い要因となっています。

(b) 男女間の従業員比率の差

当社では、相対的に賃金水準が高い職層(特に管理職層、技術職・営業職・企画業務職)で女性比率が低くなっています。

これらを踏まえた当社の対応策については、前記「① 女性の活躍推進」をご参照ください。

 

④ 人材の多様性確保

当社は、グローバル化への対応及び専門的知見を持つ人材の獲得を目的として、外国人や中途採用者の積極的な活用を推進しています。従業員全体の意識改革、組織の活性化といった効果も期待しています。

 

 

<当社における正規労働者に占める女性・外国人・中途採用者の比率>

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

女   性

28.5%

28.1%

28.3%

28.2%

27.7

外 国 人

0.5%

0.4%

0.4%

0.5%

0.8

中途採用者

15.6%

16.2%

15.7%

13.8%

16.7

 

 

<当社における管理職に占める女性・外国人・中途採用者の比率>

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

女   性

0.9%

1.5%

1.8%

1.7%

1.8

外 国 人

0.2%

0.0%

0.2%

0.4%

0.5

中途採用者

26.9%

25.9%

24.0%

23.1%

22.3

 

 

<当社における新規採用者に占める女性・外国人・中途採用者の比率>

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

女   性

30.4%

20.7%

28.7%

18.7%

23.9

外 国 人

0.6%

0.0%

0.6%

2.2%

0.9

中途採用者

1.8%

22.4%

16.9%

43.5%

26.8

 

 

⑤ 従業員エンゲージメント

当社は、従業員が会社に愛着と誇りを持ち、働きがいを感じることで持てる力を存分に発揮できる環境の整備を進めています。2022年度から人事評価に関わる納得性調査を開始し、2023年度から従業員一人ひとりの意欲を高め、組織としての一体感を醸成することを目的に、従業員のエンゲージメントサーベイを開始しました。「職場・仕事」「支援・上司」「環境・同僚」「風土・ビジョン」「処遇・報酬」の分類でエンゲージメントの調査を実施しています。結果は、肯定的な回答の比率が高いことから、概ね一定のエンゲージメントを維持できていると認識しています。今後も定期的な調査を継続し、より良い職場環境づくりに活用するとともに、人事施策の評価に活用します。

(a) 従業員エンゲージメントサーベイの結果

各分類に4問の質問を設けて、各々の質問に対して、「その通りである」「どちらかというとその通りである」「どちらかというその通りではない」「その通りではない」のいずれかで回答したものを集計しています。「その通りである」「どちらかというとその通りである」と回答した従業員(肯定的回答者)の割合は以下のとおりです。(調査対象者:当社における社員・嘱託。ただし、執行役員、海外赴任者、休職中の者を除く)

 

<当社における正規雇用労働者のエンゲージメントサーベイ各分類に占める肯定的回答者の比率>

 

2023年度

2024年度

職務・仕事

76.0%

75.5

支援・上司

77.6%

75.5

環境・同僚

78.0%

78.3

風土・ビジョン

73.4%

72.4

処遇・報酬

66.3%

66.4

 

(b) 今後取り組むべき課題

従業員エンゲージメントサーベイの結果全体は肯定的な回答が多いものの、「処遇・報酬」の比率が相対的に低いため、そこに改善すべき課題があると認識しています。肯定的な回答比率が低かった「昇格・昇進における公平・公正性」と「自分の希望するキャリアビジョン・キャリアプランを実現する機会」で課題が認識されました。

公平・公正で透明性のある人事評価を行い、役割、能力・成果に基づいて処遇することが必要であると認識しています。また、自分のキャリアについて漠然とした不安を抱えている可能性、将来に向けて明確な目標を持って仕事に取り組めていない可能性があることから、自分のキャリアについて考える機会が必要であると認識しています。従業員が挑戦意欲を持ち、能力を発揮できる環境を整備することを目指します。

 

<当社における正規雇用労働者の離職率>

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

正規雇用労働者の離職率

1.8%

2.0%

2.0%

3.5%

2.0

 

   (注) 期間中の離職者数/期初の在籍者数で算出しました。

 

<当社における新卒入社者3年以内離職率>

 

2022年4月1日

(2019年入社)

2023年4月1日

(2020年入社)

2024年4月1日

(2021年入社)

大学卒

2.6%

0.0%

8.7

高校卒

7.0%

14.3

 

   (注)1 期間中の離職者数/期初の在籍者数で算出しました。

2 2023年4月1日時点における高校卒の数値については、2020年の新卒入社者が0名であったことから、算出していません。

 

⑥ 賃金水準の引上げ

当社は、従業員が働きがいを感じ、生産性の向上に取り組む意欲を高めることを目的として、賃金水準の向上に努めています。直近5期間の昇給率は、以下のとおりであり、平均年率3.9%です。

また2023年4月から、従業員の資産形成を支援する目的も併せて、従業員持株会への拠出金に対して会社から支給する奨励金の支給率を、5%から15%に引き上げています。

 

<当社における正規労働者の昇給率の推移>

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

正規労働者の昇給率

4.0%

4.0%

2.6%

4.0%

5.0

 

   (注) 2021年度は、住宅手当の制度拡充を別途実施したため、他の年度に比して昇給率が低くなっています。

 

<当社における正規労働者の平均年間給与の推移>

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

正規労働者の平均年間給与(円)

7,499,525

7,753,221

8,529,285

8,646,196

8,463,582

 

 

(4) 情報セキュリティに関する取組

[ガバナンス]

当社グループは、グループ内で最も先進的なIT活用の実績があり、専門知識を持つ人材も多いSMCアメリカに設置した専門組織「GIT」が、グループ各社のITスタッフと連携して、情報セキュリティ対策を含む、グローバルに統一したIT戦略を推進しています。

GITの最高責任者は、当社取締役執行役員でSMCアメリカ社長のケリー・ステイシーが務めており、GITの活動の計画及び実績は、必要に応じて取締役会に報告されています。

 

[戦略]

当社グループは、オートメーションを支える自動制御機器の総合メーカーとして、いかなる非常事態に際してもグローバルに製品供給責任を果たすことが自社の社会的使命であり、そのためのBCPを整備することが、お客様からの信頼を獲得し、ビジネス面でも大きな競争優位性をもたらすものと認識しています。

BCPの極めて重要な構成要素である、グローバルな情報セキュリティ対策は、以下のとおりです。

① 基幹業務のバックアップ体制

当社グループは、北米、南米、欧州、アジア、オセアニア及び日本に合計11か所のデータセンターを設置して、基幹業務のバックアップ体制を構築しています。

・グローバルに統一した基盤整備により、セキュリティホールを排除

・サイバー攻撃の阻止、自動検知、監視体制の強化及び被害の極小化

・データセンター間のレプリケーションにより、システム障害や災害の発生時にも業務を継続

・他のデータセンターでのバックアップにより、サイバー攻撃や災害による障害からも早期に復旧

 


② グローバルで統一したセキュリティツールの導入

 当社グループは、グローバルで統一した各種の情報セキュリティツールを導入し、運用しています。

 ・サイバーハイジーン(衛生管理)、従業員教育

 ・エンドポイントセキュリティ対策

 ・統合ID認証管理(ID乗っ取り、認証攻撃対策)

 ・ルータ防御、ファイアウォール

 ・メール監視、フィッシングメール対策

 ・SPAMメール、マルウェア、ランサムウェア対策

 ・バックアップ

 ・サイバーインシデント管理

 

③ NISTへの対応

NIST(米国国立基準技術研究所)のサイバーセキュリティフレームワークを踏まえた、当社グループの情報セキュリティ対策の概要は、以下のとおりです。


 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 海外での事業展開に伴うカントリーリスク

(リスクの内容)

当社グループは、顧客満足度の向上を通じた受注の拡大を目的として、世界各地域において研究開発から資材調達、生産、販売に至るまでの広範な事業活動を展開しています。特に中国及びベトナムにおいては、当該国内での需要への対応やグローバルな製品供給の役割を担うべく、生産拠点の充実・強化を進めています。

中国をはじめ各国においては、以下のような不測の事態が発生するリスクがあります。

  ① 政治体制、経済環境の激変

  ② 法制、税制、為替政策、輸出入に関する規制などの急激な変更

  ③ 労働力の不足、人件費の高騰、大規模な労働争議の発生など労働環境の激変

  ④ 社会インフラの未整備に起因するエネルギー供給の不安定化

  ⑤ テロ、戦争、暴動、自然災害、感染症の蔓延などによる社会的混乱

(リスクが顕在化する可能性の程度及び時期)

当該リスクが顕在化する可能性は10年から20年に一度程度と想定してきましたが、近年、戦争や感染症の蔓延などリスクが顕在化したほか、経済面や安全保障面での米中対立も続いており、不透明感が高まっています。

(リスクが顕在化した場合の影響の内容)

当該リスクが顕在化した場合、現地従業員及び駐在員の安全並びに生産設備など現地資産の保全が危うくなるおそれがあるほか、グローバルな製品供給体制に支障が生じ、当社グループ全体の事業活動に深刻な悪影響が及ぶ可能性があります。

(リスクへの対応策)

BCPの観点から、中国に匹敵する規模の生産拠点をベトナムに整備することや、国内にも一定の供給能力を確保することで、不測の事態が発生しても早期に復旧できる体制の整備に努めています。

(当連結会計年度におけるリスクの顕在化について)

当連結会計年度においては、ロシアによるウクライナ侵攻の継続、中東における紛争の勃発とそれに伴うスエズ運河の航行不能という形で、当該リスクが顕在化しました。

当社グループの各拠点は、通常稼働を継続しており、お客様及びサプライヤー様の事業活動への影響も限定的なものにとどまりました。海上輸送の所要期間及び物流コストの面では影響を受けましたが、平素から潤沢な在庫を保持する戦略も奏功し、当社グループの製品供給に大きな支障は生じませんでした。

 

(2) 外国為替相場の変動リスク

(リスクの内容)

当社グループは、世界各地域において研究開発から資材調達、生産、販売に至るまでの広範な事業活動を展開しています。

当社グループの外貨建取引及び外貨建資産等は、連結財務諸表作成時に円換算するため、外国為替相場の変動により業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(リスクが顕在化する可能性の程度及び時期)

当社グループの海外ビジネスの拡大に伴い、当該リスクが顕在化する可能性は高まっており、過去の経験上、2~3年程度に一度は、為替変動により業績及び財政状態に比較的大きな影響を受けることが想定されます。

顕在化の時期としては、業績に対する影響は年間を通じて、財政状態に対する影響は決算期末となります。

(リスクが顕在化した場合の影響の内容)

円高方向への為替変動により、当社グループの外貨建売上高及び利益が減少します。外貨建の仕入及び費用も減りますが、相対的に影響は少額です。また、当社グループの外貨建資産に関して、換算上のマイナスが発生します。

(リスクへの対応策)

外貨建の仕入を増やすことに努めていますが、モノづくりの本拠が日本にあることから、対応には限界があります。現在、グループ内での現金配分を見直すことにより、特に為替変動の影響を受けやすい新興国通貨建の資産を減らす対応を進めています。

 

(3) 製品の欠陥に関するリスク

(リスクの内容)

当社グループは、製品の欠陥によってお客様に損害を与えた場合、製造物責任を問われるリスクがあります。

当社グループの主要製品である空気圧機器は、医療機器などの新しい分野に用途が拡大しており、これら機器に使用された製品に欠陥があったとして、損害賠償を求める訴訟が提起されるリスクもあります。

(リスクが顕在化する可能性の程度及び時期)

大規模な製品の欠陥という形で、当該リスクが顕在化する可能性は非常に低いと想定しています。顕在化の時期は特定できません。

(リスクが顕在化した場合の影響の内容)

当該リスクが顕在化した場合、損害賠償のための費用負担が発生するほか、お客様からの信頼を失うおそれがあり、イメージダウンに伴う他のお客様からの失注も含め、当社グループ全体の事業活動に悪影響が及ぶ可能性があります。

(リスクへの対応策)

当社グループは厳しい品質管理を行っていますが、製品に欠陥が生じるリスクをゼロにすることは不可能です。生産物賠償責任保険には加入していますが、保険金によって賠償額のすべてを賄える保証はありません。

 

(4) 情報セキュリティに関するリスク

(リスクの内容)

当社グループは、顧客情報や技術情報の管理、受発注から生産、人事・給与、会計のデータ処理など、事業活動のあらゆる場面において、情報ネットワークやシステムに大きく依存しています。

これらの情報ネットワークやシステムは、日常的に大量のサイバー攻撃にさらされています。このほかシステムや機器の故障、ヒューマンエラーや不正アクセスにより、情報システムの障害や、重要な情報の漏洩が発生するリスクがあります。

(リスクが顕在化する可能性の程度及び時期)

サイバー攻撃の手法は年々巧妙化しており、また経済安全保障やプライバシー保護の観点から、情報の取扱いに関する規制強化の動きが各国で進む中、当該リスクが顕在化する可能性は高まっています。顕在化の時期は特定できません。

(リスクが顕在化した場合の影響の内容)

当該リスクが顕在化した場合、生産や出荷、支払が止まるなど、当社グループの事業活動全般に重大な支障が生じることが想定されます。また、お客様やお取引先様の情報が漏洩した場合、損害賠償のための費用負担が発生するほか、社会的信用を失うことによる売上の減少など、当社グループの業績に深刻な悪影響が生じるおそれがあります。

(リスクへの対応策)

当社グループは、グループ全体の情報セキュリティを統括管理する専門チームを置いて、NIST(米国国立基準技術研究所)の「サイバーセキュリティフレームワーク」を踏まえた総合的な情報セキュリティ対策を実施しています。詳しくは、本有価証券報告書の「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 情報セキュリティに関する取組」をご参照ください。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績

当期(2023年4月1日から2024年3月31日まで)においては、長期化するウクライナでの戦争、中東での紛争勃発、世界的な金融引締めの動き、米中関係の冷え込み、中国経済の減速懸念などから先行き不透明感が強まり、幅広い業種において設備投資を手控える動きが続きました。

自動制御機器の需要は、半導体・電機関連は、日本・アジア・北米など各地域で設備投資の抑制・先送りの動きが継続しました。自動車関連は、欧米を中心にEV関連投資はありましたが、前年度は高水準であった中華圏のEVバッテリー需要が大きく落ち込むなど、総じて低調に推移しました。工作機械関連は、半導体関連需要の不振や中国の景気減速などにより、調整局面が続きました。医療機器関連、食品機械関連及びその他の業種向けは、コロナ後の新たな省人化・自動化需要はあるものの、伸び悩みました。

 

 

 (地域別の販売の状況)

日本では、日本・北米・アジアの各地域での設備投資の抑制・先送りの影響を受けた半導体・電機関連、中国向けの輸出需要が大きく減退した工作機械関連を中心に、受注は総じて低調に推移しました。

北米では、米国ISM製造業景況感指数が50を下回る状況が継続するなど、厳しい需要環境が続きました。半導体関連の受注が大きく落ち込んだほか、EV関連の設備投資が期待された自動車関連でも、EV市場の成長鈍化に伴い、主要メーカーの設備投資計画に遅れが見られました。

欧州では、サプライチェーンの混乱を受けて積み上げられた在庫の消化に時間がかかっているほか、ウクライナでの戦争の長期化に伴うエネルギーコストの高騰、車載用パワー半導体及び二次電池の設備投資計画の延期などの影響もあり、厳しい市況が続きました。

中国では、不動産業を中心とした景況感の悪化と、米中貿易摩擦の影響、EV、二次電池及び太陽光パネル向け需要の急減などから、受注の低迷が続きました。台湾では、半導体関連の設備投資が大きく落ち込みました。

その他アジアでは、半導体関連向けの比率が高いシンガポール、マレーシアを中心に、厳しい市況が続きました。インドでは、中国からの生産移転に伴う投資需要があり、堅調に推移しました。

南米・オセアニアなどその他の地域では、設備投資の回復傾向が続き、売上は前期を上回りました。

 

このような環境において当社グループは、中長期的な需要拡大に備えて製品供給体制の強化のための設備投資を積極的に推進するとともに、お客様のCO2排出量削減に貢献できる新製品開発やソリューション提案、BCP体制の構築、グローバル人材の活用などの課題に引き続き取り組みました。

上述のような経営環境の中、当期における売上高は、776,873百万円(前期比5.8%減)となりました。所在地別では、主に中華圏(中国・香港・台湾)が前期比で14.8%減少しています。また販売先業種別では、半導体業界向けの低調が続いていることが主な減収要因です。

営業利益は196,226百万円(同24.0%減)となりました。製品等販売量の減少、原材料費の増加、人件費の増加、及び減価償却費の増加を主因とする製造原価や費用の増加により前期比で減益となりました。

経常利益は251,008百万円(同18.0%減)となりました。為替差益は減少したものの、受取利息の増加額がより大きかったことにより、営業利益に比較して前期比の減益幅が縮小しています。

税金等調整前当期純利益は252,653百万円(同18.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は178,321百万円(同20.6%減)となりました。投資有価証券の売却益が少なくなったことが、前期比の特別損益の主な減益要因です。

自己資本当期純利益率(ROE)は、前期比3.8ポイント低下して10.0%となりました。

 

② 財政状態

 (a) 資産の状況

当期末における総資産は前期末比166,619百万円増加2,094,559百万円(前期末比8.6%増)となりました。現金及び預金は、納税、在庫の積み増し、投資有価証券取得、配当金の支払い、設備投資への資金充当や自己株式取得などにより92,313百万円減少となりました。このほか、事業活動量の影響による営業債権11,176百万円の減少、原材料及び部品を中心とする棚卸資産100,956百万円の増加、製造拠点の設備投資による有形固定資産86,563百万円の増加、及び新規米国債取得等による投資有価証券80,015百万円の増加が主な資産増減要因です。

 (b) 負債の状況

負債は、営業債務14,817百万円の減少、及び未払法人税等13,119百万円の減少を主因として前期末比16,926百万円減少208,688百万円(同7.5%減)となりました。

 (c) 純資産の状況

純資産は、前期末比183,546百万円増加1,885,871百万円(同10.8%増)となりました。利益剰余金120,268百万円の増加、自己株式30,628百万円の増加、及び為替換算調整勘定83,233百万円の増加が主な増減要因です。

自己資本比率は、前期末の88.1%から当期末は89.8%となり、1株当たり純資産額は、前期末の26,331円72銭から当期末は29,338円63銭となりました。

 

③ キャッシュ・フロー

当期末における現金及び現金同等物の残高は、前期末比85,737百万円減少405,586百万円となりました。

 (a) 営業活動によるキャッシュ・フロー

98,207百万円の収入(前期比3,409百万円の収入減)となりました。

正味の営業活動により得られた収入169,140百万円(同9,492百万円の収入減)、利息及び配当金の収入18,820百万円(同4,128百万円の収入増)、及び法人税等の支払89,671百万円(同1,910百万円の支出減)が主要因です。

 

 (b) 投資活動によるキャッシュ・フロー

131,900百万円の支出(前期比44,814百万円の支出増)となりました。

定期預金にかかる純収入額15,060百万円(同1,994百万円の収入減)、固定資産にかかる支出額104,308百万円(同29,931百万円の支出増)、及び有価証券等にかかる純支出額43,138百万円(同1,074百万円の支出増)が主要因です。

以上により当期間のフリーキャッシュフローは、33,693百万円のマイナス(同48,224百万円の支出増)となりました。

 (c) 財務活動によるキャッシュ・フロー

87,928百万円の支出(前期比25,370百万円の支出減)となりました。

自己株式の取得による支出30,628百万円(同24,401百万円の支出減)が主要因です。

 

④ 生産、受注及び販売の状況

(a) 生産実績

当社グループは自動制御機器事業の単一セグメントであり、当連結会計年度における生産実績は次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

自動制御機器事業

803,666

△9.3

 

(注)  金額は、販売価格によっています。

 

(b) 受注実績

当社グループは自動制御機器事業の単一セグメントであり、当連結会計年度における受注実績は次のとおりです。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

自動制御機器事業

707,829

△16.5

110,126

△38.5

 

 

(c) 販売実績

当社グループは自動制御機器事業の単一セグメントであり、当連結会計年度における販売実績は次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

自動制御機器事業

776,873

△5.8

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a) 経営成績の分析

当期の売上高は、776,873百万円(前期比5.8%減)となりました。需要動向及び販売の状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績」に記載のとおりです。

売上総利益は、363,077百万円(同13.8%減)となりました。製品等販売量の減少、原材料費の増加、人件費の増加、及び減価償却費の増加を主因とする製造原価や費用の増加など減収の影響により売上総利益率は前期比4.4ポイント低下して46.7%となりました。

販売費及び一般管理費は、配送業務費、人件費、減価償却費の増加を主因に166,851百万円(同2.4%増)となり、販管費負担率は前期比1.7ポイント上昇して21.5%となりました。営業利益は196,226百万円(同24.0%減)となり、営業利益率は前期比6.0ポイント低下して25.3%となりました。

営業外損益では、為替差益は24,486百万円(同13.2%減)となりましたが、市場金利上昇による受取利息が18,461百万円(同57.5%増)となり、経常利益は251,008百万円(同18.0%減)となり、経常利益率は前期比4.8ポイント低下して32.3%となりました。

特別損益では、投資有価証券売却益の減少、法人税等が減少したことなどから、親会社株主に帰属する当期純利益は178,321百万円(同20.6%減)となりました。

なお当期の期中平均為替レートは、1米ドル=144円58銭、1ユーロ=156円74銭、1人民元=20円13銭、期末為替レートは、1米ドル=151円40銭、1ユーロ=163円28銭、1人民元=20円84銭でした。

 

(b) 財政状態の分析

「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態」に記載のとおりです。

 

② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。作成に当たっては、経営者による会計方針の選択と適用並びに資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等に基づき合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる可能性があります。

当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しています。

 

(棚卸資産の評価に関する事項)
  (ⅰ) 当社グループの製品の特性(需要及び材質)

当社グループの主要製品である空気圧機器をはじめとする自動制御機器は、お客様の工場の生産・搬送ライン、半導体製造装置、工作機械、産業用ロボットなどに組み込まれる要素部品です。自動制御機器製品の単価は比較的低廉ですが、その不具合や欠品によってラインの停止や稼働遅れが生じた場合、お客様は多大な損失を被ります。そのため、お客様のニーズに合致した製品を短納期で即納することができるかどうかが、競争上、極めて重要な要件となります。

当社グループの製品を採用してくださったお客様は、次にラインや装置の図面を更新するまで長期間にわたり継続して同一の製品を購入される傾向があります。

また、当社グループの製品の主要な材質は、アルミニウムや樹脂など腐食に強い素材であり、製品は経年劣化しにくい特性を持っています。

さらに、在庫の陳腐化リスクを低減するため、最終製品に組み上げる前の段階で在庫として保持する等の対応も行っています。

 (ⅱ) 当社グループの在庫保有方針

「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 経営環境 ② 当社グループの競争優位性」に記載のとおり、豊富な品揃えと潤沢な在庫は当社グループの競争優位性の重要な要素であり、戦略的に厚めの在庫を保持するという方針を変更する予定はありません。

 (ⅲ) 棚卸資産の評価減金額の算定方法

当社は、上記の製品の特性及び在庫保有方針を踏まえつつ、時間の経過に応じた販売実績の減少に伴う収益性の低下を棚卸資産の評価に適切に反映するため、当社及び各連結子会社が保有する在庫の品番別の残高、過去の一定期間(概ね10年)の販売・使用の実績データ等を分析し、滞留状況に応じた評価減率を設定して、棚卸資産の評価減金額を算定しています。

 (ⅳ) 重要な会計上の見積りに関する注記との関係

「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」及び「2 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フローの状況の分析

「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フロー」に記載のとおりです。

 
② 資金需要

当社グループの運転資金需要の主なものは、原材料・部品等の購入費用、製造経費、販売費及び一般管理費、研究開発費です。投資を目的とする資金需要の主なものは、土地、建物、機械設備等の購入など設備投資です。

 

 

③ 財務政策

当社グループは、通常の事業活動に必要な流動性を確保しつつ、機動的な設備投資を実施するための資金需要にも対応できる資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

長期運転資金及び設備投資資金については自己資金により賄い、短期運転資金については自己資金のほか必要に応じて金融機関からの借入により調達することを基本としています。

 当期末における借入金の残高は13,070百万円、現金及び現金同等物の残高は405,586百万円です。

なお当社は、2023年11月14日開催の取締役会の決議に基づき、当期中に358,400株、29,998百万円の自己株式の取得を実施しました。

 

(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について

  「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

(5) 経営戦略の現状及び見通し

  「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、様々な産業界の自動化・省力化を支える自動制御機器の総合メーカーとして、自動制御技術及びその周辺技術に関する研究開発活動を行っています。そして、気候変動や少子高齢化など社会課題の解決に貢献します。

これら研究開発活動の中核を担うのは、筑波技術センターですが、世界の拠点(米国、英国、ドイツ、中国)に設けた技術センター間で緊密な連携を図り各地のお客様のニーズや技術情報を収集し迅速な製品開発や技術サポートを行なっています。

研究開発活動においては、半導体製造装置・自動車・工作機械・医療機器・食品機械・プラントなど多種多様な用途に適応した製品機種の拡充、省電力化・小型軽量化・長寿命化などの性能向上、生産コスト及び環境負荷物質の削減、そしてお客様のCO2排出量削減に寄与する製品開発に注力しています。また労働人口減少や重労働軽減化に貢献するため、農業や酪農、水産業向けの自動化製品など産業分野を広げて積極的に研究開発を行っています。

当期における主な開発製品の概要は下表のとおりであり、当期の研究開発費は31,141百万円(前期比13.8%増)です。

 

主な開発製品

シリーズ

エアマネジメントシステム

AMS

無線システム

EXW1/EX600-W

寿命向上シリンダ

CQ2/CJ2/CM2/MGP -XB24

薄型シリンダ/高出力形

CQE

コンパクトコンプレッサ

CRP

電動アクチュエータ/大型スライダタイプ

LET

半導体業界向けサーモチラー

INR-495

電空レギュレータ/大流量タイプ・高圧タイプ

ITV

空気用フローコントローラ

PFCA7

10

協働ロボット用エアグリッパ

RMH

11

協働ロボット用電動グリッパ

LEHR

12

フッ素樹脂2層ポリウレタンチューブ

TUE