第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

<CEOメッセージ>

 


 

代表取締役社長/CEO 芳井 敬一

 


 

 

創業100周年の夢の実現へ

折り返し地点から描く10兆円の風景

 

大和ハウスグループは1955年の創業以来、「世の中の役に立つからやる」という創業者の想いとともに歩んできました。その結果、創業者が“夢”として掲げた「創業100周年に売上高10兆円」の折り返し地点である売上高5兆円を2023年度に超えることができました。歴代の経営陣をはじめ従業員が一丸となって、さまざまな事業のアイデアをデザインし、実行し、幅広い事業ポートフォリオを構築しながら、目標へと向かってきた、まさに大和ハウスらしさを体現してきた成果だと思います。

“将来の夢”(パーパス)の「生きる歓びを分かち合える世界の実現」に向けて、現在当社グループは戸建住宅事業、賃貸住宅事業、マンション事業、商業施設事業、事業施設事業、環境エネルギー事業の6つのコアセグメントで事業を展開しています。過去を振り返ると、売上高2兆円、3兆円、4兆円は中期経営計画にて計画した通りの道のりではありましたが、5兆円については、予期せぬ新型コロナウイルス感染症の影響等もあり、想定より1年遅れての達成となりました。しかし、この期間があったことは、次のステージに向けて事業ポートフォリオを見つめ直す機会になりました。売上高10兆円の達成に向けた道のりは、現在の事業を成長させるだけでは難しいと考えており、新しい事業の創出、そして何よりも事業を生み出す人財の育成が必要だと考えています。

そこで新たなビジネスモデルや市場の開拓を見据えて、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)ファンドを設立し、最大300億円規模のスタートアップ投資を行うことを決めました。また「社会課題の解決が、人財の成長の原動力になる」という人財育成の観点も踏まえ、社内起業制度を設立し、同じく最大300億円を投資します。この第7次中期経営計画(以下、7次中計)で種まきをし、8次中計以降で次の成長の柱となる事業を育てていきます。

一方、まちの“再耕”実現に向けた「リブネスタウンプロジェクト」も進めています。SDGsの目標にある「つくる責任、つかう責任」は、建設会社として達成すべき目標の1つであると考えており、我々が50年以上前に開発した住宅団地の高齢化や空き家問題など地域が抱える課題に寄り添い、「つくった責任」を果たしていきます。現在は、地域住民の交流や地域の活気を取り戻すための取り組みとして、コミュニティスペースの開設や、イベント開催など、人のつながりを促す環境を整えています。多くの課題はありますが、各団地では多世代での交流や、産官学との繋がりが生まれ、「再耕」への道筋が少しずつ見えてきたように思います。

当社グループは社会のニーズに応じて事業領域を拡大してきましたが、どの事業においても「住宅の心」を継承しています。ものづくりでは、そこに住む人、施設を利用する人がより幸せを感じられるように、そして、その後も価値を提供し続けるにはどのようにしたら良いか、一人ひとりのお客さまに長く寄り添っていくことを考えながら事業を進めています。

2024年の初めは、能登半島地震や羽田空港における航空機衝突事故などがあり、自然の脅威、そして命の大切さについて再び深く考えさせられました。能登半島地震に対しては、当社グループとしても1月2日から初動対策本部を立ち上げ、現場とお客さまの安全確認や、復興支援等に尽力してきました。我々は自然災害から逃れることはできません。しかし、あらゆる危機・リスクに備え、日頃から準備をしておくことが大切であると再認識しています。

 

 

 

第7次中期経営計画の2年目を終えて

評価と今後の取り組み

 

海外事業の成長戦略

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海外事業は、私が担当していた当時から、次の成長の柱としてどのように育てていくか、考え続けてきた事業の1つです。4代目社長を務めた上村圭一氏が、海外事業部長として、携帯電話もない1980年頃、時には苦しみながらも知恵を絞って、米国、南米、東南アジア等世界各国で事業を進めてくれました。この財産を受け継ぎ、今は各地域で最適な事業を展開していますが、最終的には、世界に向けて、住宅事業、賃貸住宅事業、商業施設事業等、幅広い事業領域で成長を目指す、いわゆる「大和ハウスモデル」そのものを輸出するのが私の夢です。

そのような海外事業の中でも、特に米国は重点エリアと位置付けています。7次中計の初年度は想定していなかった米国の住宅金利の上昇や、資材価格の高騰などがあり、受注スピードが一時的に鈍化した時期もありました。しかし現場での工期短縮や最適な販売手法の選択など様々な努力により、米国戸建住宅事業3社(Stanley Martin社、Trumark社、CastleRock社)の引渡戸数は順調に拡大しています。

機関投資家との対話で、M&Aにより取得した米国3社について多くの質問をいただきます。私は、米国での事業拡大においては、いかに良質な住宅を継続的に提供し続けられるかが重要だと考えています。そこで、各エリアに精通し、エリア特有のニーズに応じてノウハウを活かし、より一歩進んだ住環境を提供している3社をグループに迎えました。私たちのノウハウを彼らに共有するだけでなく、彼らから学ぶことも数多くあります。米国住宅市場においては分譲事業(建売住宅)が一般的であり、米国3社の従業員一人当たりの売上高は国内の戸建住宅事業と比較して優れています。お互いの良い点を共有しながら、グループ全体で生産性の高い事業を展開していきたいと考えています。

2023年度は、CastleRock社がアリゾナ州とテネシー州に進出し、Trumark社が中央カリフォルニアに進出。さらに2024年5月にはStanley Martin社がノースカロライナ州シャーロットに本社を置く土地開発・土地造成請負会社のPrestige社の取得を発表するなど、3社はお互いに切磋琢磨しながら事業拡大しています。米国3社トップとは定期的に集まり、今後の米国の住宅事業の拡大に向けて議論しています。2024年4月はコロラドで会議を開催し、7次中計最終年度の目標達成に向けた綿密な議論を交わしました。

私は、各社の成長への意欲を重視していますが、彼らの成長に対する貪欲さ、自主的に戦略を立てて次々と実行していく姿を見ていると、今後ますます期待が高まります。国内と同様に、戸建住宅事業にとどまらず、賃貸住宅や商業施設など幅広い領域での成長を目指す「大和ハウスモデル」の米国での展開に向けて、綿密なコミュニケーションを通じて、当社グループの方針を理解してもらいながら、今後も協業していきます。その面では、Stanley Martin社は、当初は戸建住宅しか手がけないとしていましたが、事業領域の拡大に対して意欲を示しており、賃貸住宅や分譲マンションへの参入も視野に入れつつあります。

 

 

 

 

 

米国戸建住宅事業の「工業化」の推進については、我々が日本で培った工業化の技術を一方的に押し付けるのではなく、実際に米国3社に日本の工場や施工現場も見てもらい、参考にしたいと思ってもらった部分のノウハウ、知見を共有しています。米国は労務費が高く、職人不足もあり、工業化の推進は各社の成長の鍵の1つになると考えています。工業化ノウハウの共有によるオフサイト化を進めることで品質の安定化を図り、グループ購買によるサプライチェーンの効率化に向けた支援などにも取り組みながら、引き続き米国事業の拡大に注力していきます。

 

 

国内住宅事業は、

分譲事業強化を推進

 


 

国内戸建住宅事業については、新設住宅着工戸数が低位で推移する中、分譲事業(建売住宅)強化を軸とした経営改革を進めており、お求めやすい価格帯の商品を充実させることで、より多くのお客さまに我々の商品・サービスをお届けできると考えています。その一つとして、価格以上の価値を感じられる注文住宅品質の分譲住宅「Ready Made Housing.」の提案を開始しました。我々が今まで提供してきた住宅メーカーの品質と長期サポートを兼ね備えた提案です。

分譲事業を拡大する狙いは、注文住宅と比較すると設計コストが抑えられるため、高品質な建物を安く提供できることです。分譲事業強化への取り組みは九州エリアから始めていますが、その成果は少しずつ表れています。2024年度は、エリアごとに分譲と請負の最適なバランスを見きわめながら、全国へと拡げていきます。

 

 

環境事業に注力し、

社会価値を創出

 


 

 

 

 

 

 

 

 

自然災害を目の当たりにする機会が増え、国としてもカーボンニュートラルを掲げる中で、当社もその実現は我々の責務であると感じています。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、2030年度までに当社グループが新たに提供する建物は原則ZEH・ZEB率100%、またすべての建物に太陽光発電設備を搭載するという目標を設定しています。事業によって取り組むべき課題は異なるものの、商品開発から営業・設計・施工まで一体となってZEH・ZEB化の取り組みを推進しており、いずれも順調に進捗しています。また業界トップレベルの供給実績を持つという自負のもと、お住まいの方や建物を利用されるお客さまのウェルビーイングへの配慮や災害時の安全・安心を守る役割を担うなど、社会価値の創出にも取り組んでいます。当社グループが蓄積してきた知恵に加え、外壁や屋根材などの各メーカーのノウハウも採用し、志を共にする取引先パートナーとの協業による価値創出も目指していきます。

さらには木造建築を選好されるお客さまが多い中、Future with Woodプロジェクトを立ち上げ、今後、市場の成長が期待される非住宅建築物の木造・木質化にも挑戦していきます。持続可能なサプライチェーンの強化を図りながら、ネイチャーポジティブの観点からも生態系ネットワークの維持・回復に配慮した木造事業を、新たな成長の柱に育てていきたいと考えています。

 

 

 

理念体系を再構築し、経営基盤のさらなる強化を図る

 

さらなる成長に向けた

人的資本経営

 


 

社是に「事業を通じて人を育てること」「企業の前進は先づ従業員の生活環境の確立に直結すること」とあるように、当社は「人財」を価値創造の源泉として重視してきました。“世の中の役に立つ”事業を通じて社員の成長を促し、成長した社員が生み出す事業が新たな社会を創っていくという過程にこそ、人と企業の成長につながる経営の本質があると思います。

社是は創業者の想いがそのまま込められたもので、当社グループの理念体系の最上位に位置しています。この度、理念体系を再構築し、創業100周年に向けた私たちの新たな羅針盤としての“将来の夢”(パーパス)、そして新たにその実現に向けた5つの大切にしたい価値観を策定しました。この新・理念体系を浸透させ、様々なバックグラウンドを持つ多様な人財の多様な考え方を尊重し、たたえ合える文化を醸成することで、従業員一人ひとりが輝ける企業にしていきたいと考えています。企業の持続的な成長を実現していくためにも、時代に合わせて教育システムを再整備しながら人財の成長を促進させていきます。

 

 

2024年問題への対応

 

 

建設業界では、労働力不足や工期長期化等によるコストアップの課題に直面するなか、当社グループでは2021年度より施工現場の完全週休2日制(4週8休)を導入するなど準備を進めてきました。2024年4月より建設業界・物流業界での時間外労働時間に関する規制が適用される、いわゆる2024年問題がいよいよ始まりました。2024年度の業績計画策定時には、当社の現場を支えていただいている協力施工業者への配慮が、より一層必要となってくることを鑑み、そして何より法令を遵守することを最優先とし、十分な工程・予算等を踏まえた計画とさせていただきました。並行して、自社で柔軟に工期等をコントロールできる分譲事業比率の上昇により、生産性向上や適正工期の確保を進め、継続して働き方の改革に取り組んでいきます。労働時間については、残業時間の見える化をはかり、部下が長時間労働にならないよう上司に徹底させており、万が一、長時間労働になってしまいそうな場合に、その理由を従業員から直接私に届ける「社長 2024年問題BOX」も設置しました。投稿内容から長時間労働につながりかねない原因を特定し、改善を図る取り組みも全社的に行っています。

物流業界においても重層的な下請け構造のため業者間の対話が生まれにくく、2024年問題は大きな課題となっています。当社は物流施設開発シェアNo.1企業として、施設建設だけに留まらず、DXの活用を含めた幅広いソリューション提供を進めることで、トラックドライバーの雇用環境改善につながる働き方改革、労働時間の削減に貢献してまいります。

 

 

 

様々な状況に対応できる柔軟な経営により、企業価値向上を目指す

 


 

 

 

 

 

 

 

 

毎年、年初に「今年の漢字」を一文字決めていますが、2024年は「伸」を選びました。人も業績も、環境の変化等、様々な状況に対応できる柔軟な伸び方をしてほしいという想いを込めていますが、1996年から3年間、社長を務めた石橋伸康氏の名前の一文字でもあります。当時、今ほど環境問題が重視されていなかった時代に「社会的な責任である環境対応に取り組まない企業は生き残れない」と、環境対応の大切さを説き、環境事業に取り組みました。石橋伸康氏の想いも意識しながら、世の中にとって大事なことを見きわめ、さらなる成長を実現していきたいと、改めて私自身、強く思っています。

大和ハウスグループは、従業員一人ひとりが、目標数字達成へのこだわりや推進力、そして一度決めたところに突き進む力を発揮したことで、これまでの成長を実現してきました。創業者の言葉や社是が今なお受け継がれている事実は、人と企業を育ててきた歴史を表しています。しかしながら、単なる売上高10兆円という高い目標値だけを従業員に強いるとなれば、本質を見誤らないとも限りません。業績を伸ばすだけでなく、ガバナンス、従業員の働きがいや働きやすさ、自然環境にも十分に配慮しながら、様々な状況に対応できる柔軟な経営を推進してまいります。

 

 

 

 

マテリアリティと第7次中期経営計画

大和ハウスグループでは、2030年頃のメガトレンドをふまえ、機会とリスクを認識し、“将来の夢”を実現するために取り組むべきマテリアリティ(最重要課題)を設定しています。マテリアリティをふまえ、第7次中期経営計画では、第8次中期経営計画以降の成長も見据えた企業価値の最大化に向けて、「収益モデルの進化」「経営効率の向上」「経営基盤の強化」の3つの経営方針に基づく8つの重点テーマに取り組み、持続的成長モデルの構築を目指します。


 

       ※ 大和ハウスグループへの影響(リスクと機会)の詳細については、統合報告書2024(2024年8月発行予定)をご覧ください。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

当社グループでは、“将来の夢”(パーパス)を起点とした世の中の役に立つ「事業の推進」によるキャッシュ・フローの創出と、世の中の変化に対応した「基盤の強化」によるサステナビリティの向上を両立するビジネスモデルによって、事業を通じて社会課題を解決し、ステークホルダーからの信頼・共感を得ることで、次の事業機会・事業投資へ繋げる[価値創造プロセス]を実現しております。この価値創造プロセスの好循環により、持続的な企業の成長と社会課題の解決に取組むことで、企業価値の向上と“将来の夢”の実現を目指しております。

当社グループにおいて、サステナビリティ課題に取組むことは、企業の価値創造の源泉や強み、ビジネスモデルを強化することであり、将来キャッシュ・フローひいては事業の持続的成長並びに企業価値の維持・向上につながるものと捉えており、環境・社会の観点から世の中の変化に対応した取組みを進めております。

 

[価値創造プロセス]


1.サステナビリティ全般

(1)ガバナンス

当社グループは長期視点での経営課題をマテリアリティ(最重要課題)として特定し、短・中期においては中期経営計画の方針に落とし込み、企業のサステナビリティのための課題解決に取組んでおります。マテリアリティ並びに中期経営計画の進捗は、定期的に取締役会へ報告しております。

特に、SDGs・ESGへの取組みについては、全社環境推進委員会及びサステナビリティ委員会から重要な情報の提供を受けたうえで、コーポレートガバナンス委員会において意見交換を行い、必要に応じて取締役会に提言しております。

全社環境推進委員会は、当社グループが取組むべき環境活動の基本的事項について審議・決定し、全社の環境活動を指示・統括しております。

サステナビリティ委員会は、ESG課題のうち、従業員や取引先との関係性等、特に「社会」の分野を中心とした重要課題の現状を把握したうえで、改善内容について審議・決定し、当該決定に関する全社の取組みを指示・統括しております。

 

 

(2)リスク管理

中長期的に大きな影響を与えるリスクとしては、環境に関する(気候変動・生物多様性保全等)リスクや、人財基盤に関わるリスク、人権に関するリスク、情報セキュリティに関するリスク、コンプライアンスリスク等を認識しており、全社的なリスク管理プロセスに統合してマネジメントしております。リスク・機会の特定・評価は、中期経営計画や環境行動計画の策定に合わせて、詳細分析を行い、同計画の重要課題の特定や主要施策、目標水準に反映しております。

 

2.気候変動への対応

当社グループでは、創業100周年にあたる2055年を見据えた環境長期ビジョン「Challenge ZERO 2055」を策定しております(※)。また、特に重要な7つの目標を「チャレンジ・ゼロ」として2030年のマイルストーンを明確にしているほか、マテリアリティの一つに「サーキュラーエコノミー&カーボンニュートラル」を掲げ、全社の取組みを加速させております。

気候変動の緩和と適応は、当社グループが取組むべき最も重要なテーマの一つであり、着実な取組みを進めるために、第7次中期経営計画では重点テーマの一つに「すべての建物の脱炭素化によるカーボンニュートラルの実現(カーボンニュートラル戦略)」を掲げ、カーボンニュートラル戦略を策定するとともに、環境行動計画「エンドレス グリーン プログラム 2026」ではより詳細な目標を設け、取組みを推進しております。

※ 気候変動に関しては、社会的要請をふまえ2050年としております。

 

(1)ガバナンス

当社グループでは、「気候変動の緩和と適応」を重要な経営課題の一つに位置づけており、委員長を当社サステナビリティ統括部長とする「全社環境推進委員会」を設置しております。年2回実施する当委員会は、気候変動を含む当社グループの環境活動に関する基本的事項及び環境に関するリスクや機会について審議・決定し、全グループの環境活動を統括しております。さらに、事業本部ごとに事業本部長を環境委員長とする自律的なマネジメント体制を構築し、環境目標の達成度を、年2回の「事業本部環境委員会」で確認しております。また、主要グループ会社においては、各社の環境担当役員で構成する「グループ環境経営会議」を年2回実施し、全社環境推進委員会で決議された事項を共有しております。

また、中期経営計画に合わせて策定している環境行動計画「エンドレス グリーン プログラム」(気候変動問題・生物多様性保全を含む)は、環境経営に関する重要な事項であるため、取締役会への報告事項としており、年に一度、全社環境推進委員長が取締役会に進捗状況を報告し、適宜、戦略や目標、計画等の見直しを行っております。

2023年度は、「エンドレス グリーン プログラム 2026」の2022年度の全社実績及び2023年度の目標見直しについて取締役会でレビューを実施いたしました。ZEH・ZEBの更なる推進を図るよう指示を受け、各事業本部において取組みを強化いたしました。

 

 


 

 

会議体

主なメンバー

気候変動に関する主な役割

開催頻度

取締役会

取締役、

社外取締役

戦略の監督

月1回程度

コーポレートガバナンス委員会

代表取締役、社外取締役、

監査役、社外監査役

戦略に関する重要事項について討議のうえ、取締役会に提言

年2回程度

全社環境推進委員会

サステナビリティ統括部長、

事業本部環境統括責任者、

本社機能部門長

戦略の立案・審議・決定、全社管理

指標の進捗管理

年2回程度

グループ環境経営会議

グループ会社環境担当役員

戦略のグループ展開

年2回程度

事業本部環境委員会

事業本部長、環境統括責任者、
環境推進責任者

戦略の実行、個別管理指標の進捗管理

年2回程度

 

 

 

(2)戦略

気候変動にともなうリスクと機会には、脱炭素社会に向かうなかで生じる規制の強化や技術の進展、市場の変化といった「移行」に起因するものと、地球温暖化の結果として生じる急性的な異常気象や慢性的な気温上昇といった「物理的変化」に起因するものが考えられます。また、その影響は短期のみならず、中長期的に顕在化する可能性もあります。そこで当社グループでは、気候変動にともなうさまざまな外部環境の変化について、その要因を「移行」と「物理的変化」に分類のうえ、影響を受ける期間を想定し、財務影響を評価し、重要なリスクと機会を特定しております。

また、当社グループでは特定したリスクと機会をふまえ、将来の外部環境の変化に柔軟に対応した事業戦略を立案するため、複数のシナリオを用いて、事業への影響評価を実施しております。シナリオ分析にあたっては、「移行」が進むシナリオとして1.5℃シナリオを参照、極端な「物理的変化」が進むシナリオとして4℃シナリオを参照し、事業戦略の妥当性を検証しております。

その結果、いずれのシナリオにおいても、2030年時点における将来シナリオを想定し、当社グループの提供するネット・ゼロ・エネルギー住宅や建築物の需要、環境エネルギー事業等の拡大が見込まれ、その収益増は負の財務影響を上回る見込みであることを確認し、リスク対応の妥当性とより積極的な事業機会獲得の重要性を再認識いたしました。これらの分析を踏まえ、2030年までに「原則全棟ZEH・ZEB化、原則すべての新築建物の屋根に太陽光発電を搭載する」との方針を決定し、ZEH率・ZEH-M率・ZEB率を第7次中期経営計画における重要管理指標の一つに設定いたしました。

なお、分析の対象は当社グループのコア事業である戸建住宅・賃貸住宅・マンション・商業施設・事業施設・環境エネルギー事業を対象に、重要なリスク・機会に限っての簡易分析としております。今後は対象となる事業の更なる拡大を図るとともに、リスク・機会の網羅性の向上や、シナリオ分析の精緻化等にも取組んでまいります。

 


 

[気候変動に関する主なリスクと機会]

影響を受ける期間:短期(1年未満)、中期(1年以上5年未満)、長期(5年以上)

財務影響の程度:小(100億円未満)、中(100億円以上1,000億円未満)、大(1,000億円以上)

種類

内容

影響を受ける期間

財務影響の程度

リスク

移行

政策・法規制

建築物省エネ法の規制強化にともなう仕様変更による原価増

短期

カーボンプライシングの導入にともなう運用コストの増加

中期

物理的変化

慢性

夏季の最高気温上昇にともなう施工現場での熱中症発症リスクの増大

短期

急性

気象災害による自社施設の損害発生及び保険料の増加

短期

気象災害によるサプライチェーンにおける資材調達及び工事遅延の影響

短期

機会

移行

製品/サービス

温室効果ガス排出量の少ない住宅・建物の需要増

短期

再生可能エネルギーの需要増による環境エネルギー事業の拡大

短期

物理的変化

製品/サービス

気象災害に備えた住宅・建物の需要増

中期

 

 

 

[カーボンニュートラル実現のための移行計画]

当社グループは、「気候変動の緩和と適応」を重要な経営課題と位置づけ、環境長期ビジョンに掲げる「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けた挑戦を続けております。

2022年度からスタートした第7次中期経営計画の「カーボンニュートラル戦略」では、バリューチェーンを通じた温室効果ガス排出量(スコープ1・2・3)を2030年までに40%削減(2015年度比) することをマイルストーンに設定し、全事業、全方位で取組みを加速させます。なかでも、当社グループが直接関与する事業活動におけるGHG排出量(スコープ1・2) については、「自社発電由来の再生可能エネルギーによる電力の再エネ化」等を通じて、2030年までに70%削減(2015年度比) することを目指します。また、最も排出量の多い販売建物の使用によるGHG排出量(スコープ3/カテゴリ11)については、すべての事業において原則として、「全棟ZEH・ZEB化、全棟太陽光発電搭載」を推進し、2030年までに63%削減(2015年度比)することを目指してまいります。

 


 

(3)リスク管理

気候変動リスクは、中長期的に大きな影響を与えるリスクの一つと認識し、全社的なリスク管理プロセスに統合してマネジメントしております。リスク・機会の特定・評価は、中期経営計画や環境行動計画の策定に合わせて、概ね3~5年おきに詳細分析を行うとともに、毎年見直しを行い、同計画の重要課題の特定や主要施策、目標水準に反映しております。

具体的にはサステナビリティ部門において、脱炭素社会への移行にともなう「外部環境の変化」と地球温暖化の進展にともなう「物理的変化」を特定。その発生確率とこれらが現実化した場合の財務影響から重要なリスクと機会を評価しております。こうして特定した重要なリスクと機会については、各部門別に具体的な対策を検討し、環境行動計画において、グループ全体・部門別・事業所別に重要管理指標と目標を設定し取組みを推進しております。そのうえで、グループ全体として年2回の全社環境推進委員会、部門別には年2回の事業本部環境委員会、事業所別には年2回の事業所ECO診断/研修にて進捗管理を行っております。

 

 

(4)指標及び目標

気候変動にともなうリスクの最小化と機会の最大化を目指し、短・中・長期の目標を設定して、取組みを推進しております。なお、これらの目標は中期経営計画の指標の一つとして設定するとともに、同計画の対象期間と合わせて策定している環境行動計画「エンドレス グリーン プログラム」においては、さらに詳しい管理指標と目標を設定し、「環境と企業収益の両立」を目指して、取組みを加速させております。

 

主な指標

2023年度実績

(注1)

2026年度目標

2030年マイルストーン

(環境長期ビジョン)

バリューチェーン全体のGHG排出量削減率

(2015年度比)

35.6%

35%

40%

事業活動におけるGHG排出量削減率

(2015年度比)

(注2)△26.3%

55%

70%

販売建物の使用によるGHG排出量削減率

(2015年度比)

52.2%

54%

63%

 

(注)1.2023年度実績は暫定値です。確定値及びその他の指標については、2024年7月末発行予定の「サステナビリティレポート2024」にてご確認ください。(https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/library/csr_report/index.html)

2.事業活動におけるGHG排出量について、2023年度実績は、2015年度比で26.3%増加いたしました。その要因は、響灘火力発電所(石炭バイオマス混焼発電)の子会社化によるものです。この影響を除いた場合、GHG排出量削減率は54.2%となります。なお、同発電所は2024年3月に稼働を停止し、バイオマス専焼発電への改修工事に着手したため、2024年度以降のGHG排出量は再び目標達成水準に回復する見込みです。

 

3.人的資本・多様性への取組み

当社グループでは社是に掲げる「事業を通じて人を育てる」に基づき、人財(人的資本)の価値向上が企業価値の源泉であると捉え、創業以来、人財の成長を第一に考えた経営を行ってまいりました。また、創業100周年に向けた当社グループの羅針盤となる“将来の夢”(パーパス)の策定に伴い、2024年4月より新たな理念体系に変更いたしました。新しい理念体系は、“いつの時代も変わらない”「社是」「社員憲章」と、“時代に合わせて変化していく”「将来の夢」「大切にしたい価値観(従業員が大切にする共通の価値観として新設)」の2軸で構成しており、「“将来の夢”が人や企業を成長させる」という考えのもと、更なる人財の成長への取組みを行ってまいります。

第7次中期経営計画では、人的資本への積極的な投資と従業員の成長の場・機会の創出を通じて、「個」と「組織」の価値を最大化し、イノベーションの基盤づくりを進めております。多彩な事業ポートフォリオを持つ当社グループにおいて多様な人財の確保は最も重要な課題の一つであり、事業戦略に連動した多様な人財を確保するとともに、一人ひとりの個性や価値観に寄り添った成長機会を提供することで、自律的なキャリア形成を支援しております。そして、多様な「個」が健康かつ心理的安全な職場環境の中で自分らしさを発揮し、対話を通じてつながり合うことで「組織」として新たな価値が創出される、その様な組織風土・文化を醸成してまいります。

 

(1)戦略

人財育成方針

当社グループは、人財(人的資本)が最大の財産であるとの信念のもと、「創業者精神」を基本軸に、中長期的な視点をもって人財の育成に取り組んでおります。変化し続ける社会や価値観の多様化に柔軟に対応し、潜在的な市場を発掘・創出するためには、一人ひとりの人財が自分の基盤を確立したうえで「強み・らしさ」を発揮して輝き合い、新しい価値を共創していくことが欠かせません。当社では、「Keep Learning, Growing, and Dreaming.」をコンセプトに、従業員それぞれがお客様や社会から信頼され、愛される真のプロフェッショナル人財として成長するための3つの基盤づくり(機会づくり、仲間づくり、職場づくり)を実践。複線的な成長機会の提供を通じて、従業員の自律的かつ持続的なキャリア形成を支援しております。そして、「個」と「組織」の成長による人的資本の価値向上が知的資本と財務資本の強化へとつながり、更なる人的資本の最大化につながるという好循環を持続的に生み出すとともに、一人ひとりの人財にとってその成長が「生きる歓び」となり、より豊かな人生へとつながることを目指してまいります。

 

 

[人財育成ポリシー]


 

[人財育成のエコシステム]


 

 

 

社内環境整備方針

当社グループでは多様な人財が持つ「知」や「経験」のダイバーシティがイノベーションを生み出す源泉であると考え、従業員が働きがいを実感しながら、「自分らしさ」を存分に発揮できる健全で公平な職場環境の整備に取組んでおります。技術革新(AIやICT)の積極活用により従業員の働き方に変化を起こし、生産性の向上と従業員の健康保持並びに改善を進めてまいります。また、従業員が持つ多様な価値観、性別、障がいの有無、性自認、性的指向、性表現、年齢、国籍、言語、文化、ライフスタイル等が尊重され、それぞれが持つ視点や発想を認め合い、活かしあい、輝きあう職場風土を、経営層及び従業員相互の交流・対話を通じて醸成してまいります。

これらの取組みを通じて、従業員の自分らしい生き方や働き方の選択肢を広げ、エンゲージメントの向上につなげていくとともに、定期的なサーベイを通じてその効果を検証してまいります。

 

人的資本の拡充、多様性の推進

当社では多様性の一つである「女性」社員の活躍推進をダイバーシティ推進の試金石として積極的に取組んでまいりました。2005年に女性活躍推進プロジェクトを立ち上げ、2007年には専任組織である「Waveはあと推進室」を設置。業域拡大に合わせて2015年4月には同推進室を「ダイバーシティ推進室」に名称変更、2019年10月から「DE&I推進」組織として組織改編いたしました。

当社においてダイバーシティ&インクルージョンを経営に活かし、商品やサービス等のプロダクト及びプロセスにおける新しい発想を生み出すため、また多様な視点での意思決定を強化するため、多様性を促進しております。

 

(2)指標及び目標

当社グループでは、社是に掲げる「事業を通じて人を育てる」に基づき人財(人的資本)の価値向上に取組んでおりますが、係る具体的な取組み、指標のデータ管理については連結グループに属する全ての会社で共通ではないため、指標及び目標については当社を対象として記載しております。

 

人財育成のための教育プログラム

当社は、従業員一人ひとりが「人財育成ポリシー」で定義した「成長Story」に沿って成長することを積極的な教育投資を通じて実現いたします。あらゆる階層・職種の従業員がプロフェッショナルとして自律的にキャリアを開発し、成長し続けるための「機会・仲間・職場」づくりを、多様な研修プログラムや越境体験機会の提供により支援いたします。

 

[当社の2023年度教育投資実績]

総投資額

のべ受講時間

(従業員一人当たり)
受講費用

(従業員一人当たり)
受講時間

2,050,357千円

412,506時間

127,075円

25.6時間

 

 

 

[当社の2023年度の主な教育プログラム受講実績]

成長Storyの段階

教育プログラム

目的

受講

人数

(人)

(一人当たり)

受講時間

(時間)

 

基盤の

確立

階層別

教育

新入社員

教育

集合

研修

学生から社会人にモードチェンジし、基礎力を習得する

『集合研修』みらい価値共創センター「コトクリエ」にて創業者精神や当社社員として大切にしたい価値観を学ぶ

『実習』現場実習:職種を問わず施工現場での実習を経験し、ものづくりの真髄に触れる

住宅営業実習:配属先を問わず住宅営業職の仕事を経験し「住宅の心」を学ぶ

681

65.9

 

実習

624

(※1)

689.9

 

 

新任主任職教育

新たな役割に求められるマインド・知識・スキルを習得する

『主任職』後輩育成力、チームビルディング力の強化

『管理職』業績が上がるマネジメントとヒトが活きるマネジメントの両立

319

8.0

 

新任責任者教育

287

9.1

 

職種・部門別専門教育

業務上必要となるビジネススキル・技術力を習得・アップデートする

(※2)

57,976

(※3)

9.4

 

個性

の確立

大和ハウス版サクセッションプラン「D-Succeed」育成プログラム

選抜された経営リーダー後継候補者が、経営人財に求められるものの見方・考え方、経営リテラシーを習得し、リーダーシップを開発する

241

22.6

 

他流試合/越境型プログラム

他社・他団体のメンバーとの交流やプログラム活動を通し、自律型人財となり、リーダーシップやチームマネジメント力を開発する

29

38.0

 

新価値の

共創

 

経営リーダー向け

社外交流講座

さまざまな企業の経営人財候補生が集う社外講座にて、社会や地域課題に目を向け、将来の事業を創造するプロセス・考え方を習得する

23

49.6

 

 

※1.[当社の2023年度の主な教育プログラム受講実績]の内、新入社員教育の「実習」の受講時間数は、[当社の2023年度教育投資実績]の「のべ受講時間」(412,506時間)には含んでおりません。

※2.職種・部門別専門教育の受講人数は「のべ人数」。

※3.職種・部門別専門教育の一人当たり受講時間は、のべ受講時間を全従業員数(16,135名)で除した時間。

 

女性活躍推進

組織の意思決定に影響を与える分岐点とされる30%(クリティカル・マス)の確保に向けて、当社では「女性管理職比率」、「女性主任職比率」、「新卒採用女性比率」の3指標をKPIとして定めております。当社の女性社員比率は21.6%(2024年4月1日現在)であるため、絶対数の確保と育成を並行して進めております。

女性管理職については、第7次中期経営計画(2022~2026年度)において、初年度(2022年4月1日)に比べ約2倍となる500名登用(女性管理職比率8%)を目標として掲げております。その前段階として新卒採用女性比率30%を目標とし、会社説明会等において出産・育児等のライフイベントを支える人事制度の説明や、当社で活躍する女性社員の事例紹介等、入社後の働き方をイメージしやすい仕掛けづくりをしております。また、女性社員はもとより上司等、周りの社員に対してもマインドセットを図り、能力と意欲のある女性がキャリアを積み重ね持続的に働くことのできる環境と成長の機会を整備しております。その結果、管理職候補となる主任職層における女性比率が徐々に高まり、女性管理職比率も年々高まっております。

 

 

男性の家事・育児参画の推進

お客様の住まいと暮らしに寄り添う企業グループとして、従業員が性別に関わらず家事や育児に参画し新たな学びや気づきを得ることを支援しております。当社では2016年4月に育児休業制度の見直しを行い、育児休業の当初5日間を有給化し、男性も育児休業に踏み出しやすい環境を整えております。また、育児休業期間中だけではなく日常的に家事や育児に関われるように休暇制度やフレックスタイム制度等、柔軟な働き方を拡充してまいりました。

日本においてはまだまだ女性が担うことの多い家事や育児を、男性が単にサポートするのではなく主体的に関わることを後押ししております。男性が家事や育児を実体験として経験できる新たな機会を生み出すとともに、女性の精神的・肉体的負担を軽減することで、誰もが活躍できる社会を創ることを目指しております。

 

指標

実績

目標

2021年度

2022年度

2023年度

管理職における女性比率
(女性管理職比率)

2022/4/1

4.9%

2023/4/1

5.2%

2024/4/1

5.8

2027/4/1

8

主任職における女性比率
(女性主任職比率)

2022/4/1

19.2%

2023/4/1

21.3%

2024/4/1

23.4

2027/4/1

25

新卒採用女性比率

2022/4/1

25.8%

2023/4/1

24.9%

2024/4/1

27.6

30

男性の育児休業取得率(※1)

2021年度

41.9%

2022年度

62.2%

2023年度

66.5

2026年度

80

男性の育児休業平均取得日数

2021年度

8.4日

2022年度

13.7日

2023年度

27.1

2026年度

30

障がい者雇用率

2022/4/1

2.46%

2023/4/1

2.50%

2024/4/1

2.48

2026/4/1

2.70

若年層(入社3年後)
の定着率(※2)

2022/4/1

2019/4/1入社

76.6%

2023/4/1

2020/4/1入社

76.6%

2024/4/1

2021/4/1入社

77.6

85

 

※1.2020年及び2024年に実施した社内アンケートにて、育児休業を「取得したい(取得したかった)」と回答した男性社員比率が80%であったことから、第7次中期経営計画終了時(2026年度)の目標を「80%」に設定しております。

※2.各年度における入社3年後の定期採用者の定着率。

 

ダイバーシティスコアの事業所評価への組み入れ

会社全体でのダイバーシティを推進するために、事業所単位での状況を可視化することで、各職場におけるダイバーシティの推進度を測り促進することを目的とし、2019年度より事業所における経営健全度を評価する項目に「事業所ダイバーシティスコア」を導入いたしました。具体的には、「管理職・主任職における女性比率」、「男性の育児休業取得率」、「障がい者雇用率」、「若年層の定着率」の4項目にて評価することで、会社全体で人財の多様化を進めております。

 

 

シニア活躍推進

当社は高齢化・人口減少社会の到来を見据え、同業他社に先駆けて2013年に65歳定年制を導入いたしました。その後もシニア社員の処遇体系を継続的に見直してまいりました。またキャリア採用においても50歳以上を積極的に採用するなど、高度な経験やスキルを持つ人財を確保し長く活躍できる制度を整備しております。

 


 

指標

実績

2021年度

2022年度

2023年度

60歳到達後の雇用継続率(※1)

98.2%

98.4%

92.7

65歳定年到達後の雇用継続率(※2)

60.9%

49.4%

55.2

50歳以上キャリア採用者数

13名

12名

42

 

※1.前年度満60歳を迎えた社員が当年度継続雇用される率。

※2.前年度末で定年退職した社員(65歳到達社員)が当年度嘱託として再雇用される率。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)リスクマネジメント体制について

当社は、「リスクマネジメント規程」を制定し、リスクを「大和ハウスグループに損失を与えるおそれのある事象」と定義した上で、リスクについての平時・有事の対応体制を明文化しております。具体的な体制は、以下のとおりです。

1.平時の体制

経営管理本部長をリスクマネジメント統括責任者に選任して、同責任者が当社グループ全体のリスクマネジメント体制の構築・運用・監督を実施する体制としております。そして、同責任者の監督の下、当社の各事業におけるリスクの顕在化の予防、顕在化したリスクへの対応を推進するための組織として、事業単位のリスク管理委員会(事業本部リスク管理委員会)を設置しております。

これらの体制を含む当社グループ全体の内部統制システムを監督する組織として内部統制委員会を設置しております。同委員会の委員長は社長が、副委員長は経営管理本部長(リスクマネジメント統括責任者)が務めております。

また、リスクをはじめとする当社グループの持続的成長を阻害するおそれのある事実を早期に発見・是正することを目的として、「大和ハウスグループ内部通報規程」を制定し、複数の内部通報窓口を設置・運用しております。運用にあたっては、公益通報者保護法の趣旨を踏まえて通報者氏名・通報内容の厳秘や、不利益な取り扱いを禁止する旨を同規程に定めるとともに、「社内リーニエンシー制度」の導入や、利益相反する関係者を排除して通報に対応する仕組みの構築等、より実効性を高めるための取組みを実施しております。

 


 

 

2.有事の体制

重大リスクが顕在化した場合には、緊急対策本部を立ち上げて対応し、業績等への悪影響の最小化に努めております。具体的には「リスクマネジメント規程」において、顕在化したリスクのうち当社グループ又はそのステークホルダーに特に重大な影響を及ぼすおそれのあるものについて、緊急対策本部を設置して、当該重大リスクへの対応・再発防止策の検討・推進を行うことを定めております。その上で、リスクマネジメント規程の下位規範である「緊急対策本部設置・運営細則」において、緊急対策本部の設置基準・メンバー・運営手順・業務等を明文化することで、速やかに緊急対策本部を立ち上げて適正な対応を執ることができる体制としております。

 

(2) 当社グループの事業等に関するリスクについて、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を与える可能性がある事項には、以下のようなものがあります。なお、本項において将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

<当社グループのリスク一覧>

分類

具体的内容

外部要因

1)法令・政策

① 法的規制

② 海外事業

③ 住宅関連政策・税制の変更

2)事業環境

④ 特定の取引先・製品・技術等への依存

⑤ 原材料・資材価格・人件費等の高騰

⑥ 競合

⑦ 建設技能労働者の減少

3)不動産市場

⑧ 不動産を含む資産の価値下落

⑨ 不動産開発事業

4)ファイナンス

⑩ 金利の上昇

⑪ 退職給付費用

⑫ 賃貸用不動産における空室及び賃下げ

5)ハザード・突発的事象

⑬ 情報セキュリティ

⑭ 自然災害・気候変動

⑮ 感染症

内部要因

 

⑯ 事業戦略・グループ戦略

⑰ 品質保証等

⑱ 安全・環境

 

 

 

1.外部要因

  1)法令・政策

① 法的規制に関するリスク

リスク内容

国内、海外を問わず、法的規制が改廃されたり、新たな法的規制が設けられたりした場合には、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社は、国内、海外における建設・不動産事業を行っており、国内においては会社法、金融商品取引法、建築・不動産関連法令、環境関連法令、各種業法等、海外においてはそれぞれの国や地域の法的規制の適用を受けます。また、グループ会社においては、ホテル事業、物流事業、保険事業、スポーツクラブ運営事業、クレジットカード事業等の多種多様な事業を行っており、各事業の業法その他の関連法令がそれぞれの会社に適用されます。このように、当社グループの事業に関連する法令は広範にわたっており、法的規制の改廃や新設によっての影響を受ける場面は少なからず存在しているものと考えられます。

また、法的規制に違反した場合、処罰、処分その他の制裁を受けたり、当社グループの社会的信用やイメージが毀損されたりすることで、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社グループの事業に関連する法的規制の改廃や新設に関する情報については、その動向を常にモニタリングしており、当社グループの事業内容や業績等に影響を及ぼすリスクがある情報を入手した場合は、リスクを最小化するために、事前に対策を講じる体制としております。

また、当社グループにおいては、経営管理本部長をリスクマネジメント統括責任者に選任し、当社グループ全体のリスクマネジメント体制の構築・運用・監督を実施する体制とするとともに、その監督の下、リスクの顕在化の予防、顕在化したリスクへの対応を推進するための組織として、事業ごとにリスクマネジメントを行う体制を構築・運用しております。さらに、従業員に対する積極的な法令知識の研修・啓蒙や、各種マニュアル・チェックリストの作成を推進するなどの対策を講じております。

万一、重大なリスクが顕在化した場合には、緊急対策本部を立ち上げて対応し、業績等への悪影響の最小化に努めるとともに、再発防止を徹底しております。

 

 

② 海外事業に関するリスク

リスク内容

海外事業では、進出国における急激なインフレーション、為替相場の変動による事業収益の低下、政治・経済情勢の不確実性、紛争(内乱・暴動・戦争)の発生や日本との外交関係の悪化等に伴い実施される外貨規制による事業遂行・代金回収の遅延・不能(海外送金規制含む)等の発生、不動産事業の引き締め等を目的とする政策変更や法改正による購買意欲減退等、国際取引特有の外的要因に基づく様々なリスクを負っており、これらのリスクが顕在化した場合には、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

投資管理ガイドラインを当社グループとして定め、投資方針や具体事案の検討の基準の可視化と当該基準に従った事案のリスク精査徹底に注力しております。また、フィルター機能として海外案件を諮問する専門委員会を設置し、事業毎の事前のリスク精査と対策の状況を確認の上で諮問し、適切な投資判断の担保を図っております。

また、事業推進中の経営状況の管理のため、海外を5つのエリアに分け、エリア毎に地域統括会社を決めそこに管理部門責任者を配置し、Regional Corporate機能(以下RC機能)としてエリアガバナンス体制の構築を推進しております。エリア、各国の特性を習得することがリスク回避に重要と言え、現地に根付いて文化・習慣、税務・法律解釈、労務問題等の情報収集によるノウハウの蓄積を進め、リスクの未然防止や対処力の向上を図っております。各RC機能人員がそれぞれの専門能力を発揮しエリア毎の経営基盤の強化を図ると共に、海外本部・経営管理本部を中心とした本社部門との情報共有を密にし、当社グループの経営方針に即した事業遂行と事業管理の実現に注力しております。

 

 

 

③ 住宅関連政策・税制の変更に関するリスク

リスク内容

住宅ローンの金利優遇措置、住宅取得やリフォーム工事に対する補助金・助成金・給付金制度等の住宅需要刺激策の変更もしくは廃止により、住宅需要が減退し、当社グループの住宅関連事業に影響を与える可能性があります。また、消費税率の引き上げや住宅ローン減税等の税制の変更・廃止等により、住宅取得にかかるお客様の資金負担が増加した場合には、戸建住宅やマンション等の購買需要が減退する可能性があり、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

各種補助金・助成金・給付金制度等については、制度内容の改変・廃止・受付終了等の情報を常にモニタリングし、制度の変更に応じた施策を講じております。

また、住宅事業では良質な住宅をお値打ちな価格で提供することを方針としており、特に分譲住宅の拡販を図っております。お客様の需要を喚起し、住宅需要の減退が業績に与える影響を軽減する対応に努めております。

 

 

  2)事業環境

④ 特定の取引先・製品・技術等への依存に関するリスク

リスク内容

当社グループは、商品・サービスの提供や、商品の原材料の製造等の一部について、一定の技術を保有する事業者に委託しておりますが、世界の地政学的リスクの発生や感染症、自然災害等に起因する資材高騰、材料逼迫、納期遅延により、突発的に商材・部品・素材の供給不安が発生するリスクや、取引先の倒産による供給停止が起こるリスクがあります。これらのリスクが顕在化した場合には、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社グループは、上記のようなリスクが顕在化する事態を防止すべく、集中的に調達する物品については、一部の特別な仕様・性能・機能を持つ物品を除き、原則として2社以上と調達契約を締結することとしており、複数の調達先へ発注・委託を行うよう努めております。また、製品の重要度、調達難易度等に基づき、優先度の高い物品について、調達先の国内回帰、部品製品在庫の国内での積み上げ、製造拠点の複数化、適正在庫の確保等の対策を取引先と共に講じております。また、顧客に対し訴求力のある製品を除いては、オリジナル品からカタログ品への移行を推進し、調達難易度を下げる取組みを行っております。さらに、取引先の与信管理に於いては、外部調査機関のデータを活用し、与信管理体制の強化を図っております。

 

 

 

⑤ 原材料・資材価格・人件費等の高騰に関するリスク

リスク内容

当社グループでは建物の建築やサービスの提供にあたり、多くの原材料や資材の調達及び下請事業者への発注を行っております。世界的な異常気象や為替市場の変動、地政学的リスクの影響、製造に携わる労働者不足により、原材料や資材価格、エネルギー価格や労務費が既に上昇しておりますが、今後さらに、働き方改革関連法案の施行に伴う労務費及び物流費の上昇リスクがあります。それら価格高騰分を販売価格に転嫁できない場合は業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。長期化するウクライナ情勢、隣国の台湾有事による中国を中心としたサプライチェーンの分断等により、原材料・資材の逼迫と価格の上昇リスクが考えられ、これらのリスクが顕在化した場合にも、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、11月の米国大統領選挙結果は国内外に多大な影響を与えるため、その動向を注視する必要があります。

対応策

原材料・資材価格等が高騰するリスクに対しては、①新規材料の採用、代替材採用等の仕様見直し、②複数の取引先から材料を調達することによる価格競争力の維持、③取引先製造拠点の変更による運送費見直しや輸送方法の見直し、④調達リードタイム見直しによる配送リードタイムの確保、⑤取引先と連携した改善活動によるコストダウン、⑥グループ会社と連携し、手配数量の集約によるスケールメリットを追求、⑦施工予定情報の早期入手による手配数量の事前提示等を行い、取引先の経費を抑えるなど、複数の施策を実施することでコスト上昇の抑制に努めております。加えて、工場においては、製造ラインの効率改善、資材・労務の早期手配により原価抑制を図っております。

人件費(労務単価)等が高騰するリスクに対しては、デジタル化やものづくりの見直しにより、現場施工の省人化・省力化を推進して生産性向上を図り、原価上昇を抑えるように努めております。さらに、労働者不足による労務費アップ解消のため、協力会と連携し雇用促進に取組んでおります。

 

 

⑥ 競合に関するリスク

リスク内容

当社グループは、建設・不動産事業をはじめとする様々な事業を行っており、これらの各事業において、競合会社との間で競争状態にあります。当社グループが、商品の品質や価格、サービスの内容、営業力等の観点から、これらの競合会社との競争において優位に立てない場合には、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社グループでは、事業本部制のもと、業界に属する他社動向に関する情報を収集・分析し、必要に応じて自社事業の戦略に反映しております。

また当社独自の土地を起点とした情報力や開発力、顧客目線に立った課題解決力等の強みを活かし、競合他社との過度な競争に巻き込まれないよう努めております。

 

 

 

⑦ 建設技能労働者の減少に関するリスク

リスク内容

当社グループの主たる事業である建設工事事業には多くの建設技能者が必要ですが、日本の建設業就業者数は右肩下がりであり、今後もさらに減少するとの推計もあります。人口減少の影響を受けて今後更に建設業就業者が減少すると、工程の遅れや人件費の高騰を招き、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、建設業就業者は高齢化が進行し、次世代への技術承継が大きな課題となっており、建設業界への入職者が増加しない場合には、国内での事業継続に悪影響を及ぼす可能性もあります。

対応策

当社グループでは、建設業の担い手の中長期的な育成・確保のために国土交通省が定める基本理念や具体的措置に則り、現場の働き方改革を推進するとともに、建設技能者の処遇改善に取組んでおります。

現場の働き方改革においては、2021年度より当社においてすべての現場で4週8休を推進しております。加えて、建設現場における労務管理を徹底するために、取引先へのグリーンサイト(※)加入支援や建設キャリアアップシステムによる技能者の入退場管理を行い、技能者の就労履歴の蓄積を推進しております。

また、建設技能者の処遇改善として、2019年4月より取引先に対する下請代金の全額現金支払いに移行しております。加えて、優秀技能者認定制度を設け、所定の技能力を保有している建設技能者の所属する施工店へ手当の支給を行うとともに、建設技能者の増加、育成に向け、技能者育成資金補助制度、新規技能者育成研修を通じて、施工店への育成支援を行っております。

さらに、当社グループでは、先進的な建設工程の実現に向けDXやBIMを推進しております。BIMにより、データ一元化によるプロセスの最適化を図って生産性向上につなげるとともに、デジタルコンストラクションプロジェクトでは、施工作業におけるロボティクス等の活用による省人化や、建設現場状況の可視化による生産性向上に取組んでおります。

 

※ 労務・安全衛生に関する書類を電子的に作成・提出・管理するためのインターネットサービス。

 

  3)不動産市場

⑧ 不動産を含む資産の価値下落に関するリスク

リスク内容

当社グループは、国内及び海外において不動産の取得、開発、販売等の事業を行っており、不動産市況が悪化し地価の下落、賃貸価格の下落が生じた場合には、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、その場合には、当社グループが保有する不動産の帳簿価額の引き下げを行う必要が生じる可能性があります。

さらに、当社グループが所有する不動産以外の棚卸資産や有形固定資産、のれん等の無形固定資産、投資有価証券等の投資その他の資産についても、市場動向に応じて帳簿価額の引き下げを行う必要が生じる可能性があり、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社グループは多岐にわたる事業展開を行っており、その中で所有する不動産に適した事業を選択することで資産価値向上に努めております。なお、自社所有の不動産については定期的に鑑定評価をとるなどモニタリングを行い、価値下落の兆候が認められるものについては適正に対処しております。また、不動産以外の市場価額の変動リスクがある資産は、事業上の必要性がある場合を除き、原則として保有しない方針としており、保有している資産の価格変動リスクについては定期的にモニタリングを行っております。

 

 

 

⑨ 不動産開発事業に関するリスク

リスク内容

当社グループは、中長期的な戦略として不動産開発事業に重点を置き、住宅団地、分譲マンション、賃貸住宅、商業施設、物流施設、ホテル等、様々な用途の不動産開発を行っております。これらのプロジェクトは完了までに多額の費用と長い期間を要する不動産開発事業であり、プロジェクト進行中において、様々な事由により、想定外の費用発生、プロジェクトの遅延もしくは中止を余儀なくされる場合があり、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社グループでは、不動産を含む重要な投資の実行にあたっては、事業投資委員会で事業性やリスクを評価し審議しております。不動産開発事業の場合はIRRを主要な指標としておりますが、同時に、その事業が当社グループの経営理念・経営戦略・ブランドイメージと合致しているか、また、法的リスク、土壌・地下水汚染、地盤リスク、災害リスク(洪水等)、環境問題、建築費の妥当性等、ESGを含む多面的なリスク評価(17部門、27項目)を行い審議しており、経済的な観点からは基準を満たす投資案件であっても、当該投資実行が当社の目指すべき姿・ビジョンと大きく相違する場合や、環境への影響が大きい場合等には、当該投資は実施いたしません。なお、リスク評価項目の見直しは定期的に行っております。そのほか事業投資についても不動産開発と同様にリスク評価を行い、審議しております。

 

 

  4)ファイナンス

⑩ 金利の上昇に関するリスク

リスク内容

当社グループは、不動産開発を中心とした資金需要に対応するため、資本効率を考慮しながら、自己資本と共に有利子負債による資金調達を行っております。そのため、市場金利の上昇や当社格付の低下等により、資金調達コストが上昇し、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、市場金利の上昇によって、融資を利用して土地や建物を取得するお客様の支払総額が増加し、購買意欲が減退する事で業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社では、運転資金について、調達コストの低い短期借入金やコマーシャル・ペーパー等を中心に調達しております。一方、不動産開発等の回収に時間がかかる投資については、長期調達により流動性リスクを低減しております。長期調達については、不動産の売却期間に合わせ期間5年を中心に調達しておりますが、有利子負債が増加する中、リファイナンスリスクを減らすため、さらに期間が長い超長期の調達も実施しております。また、急激な資金市場金利の悪化による悪影響を受けないようにするため、原則として固定金利で調達するとともに、市場金利が低下するタイミングでは低い金利を享受できる変動金利による調達もバランスよく組み合わせております。

加えて、金融機関との良好な関係構築に努め、社債による直接金融での調達とともに、間接金融でも調達することで、安定的な資金調達を行っております。格付の維持については、目標とする財務規律を設定し、財務規律を意識した経営を行っております。

更に、融資を利用されるお客様に対しては、常に各金融機関における最新の融資商品等を把握し、お客様のニーズに即した融資のご提案を行うとともに、国や自治体等が実施する各種支援策を積極的に提案すること、また税理士やファイナンシャルプランナー等の外部専門家と連携することで、お客様のトータル的なファイナンスサポートを行い、最適な土地建物計画のご提案ができるように努めております。

 

 

 

⑪ 退職給付費用に関するリスク

リスク内容

当社グループは、確定給付型の制度として企業年金基金制度及び退職一時金制度、また、確定拠出型の制度として確定拠出年金制度を設けております。確定給付型の制度においては、株式市場や為替市場等の金融市場が変動した場合等に、割引率をはじめとした基礎率の変動による退職給付債務の多額の増減や、多額の年金資産運用損益が発生し、退職給付にかかる費用が大幅に変動する可能性があります。なお、当社グループでは退職給付会計における数理計算上の差異について、発生年度に一括して費用処理しているため、年金資産の運用環境が大幅に変動した場合や、退職給付債務の計算に用いる基礎率が変動した場合、当該事象が発生した事業年度の業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

対応策

年金資産の変動リスクに対する対応策として、大和ハウス工業企業年金基金では資産運用委員会を設置し政策的資産構成割合の策定・見直し、運用受託機関の選任・評価等を実施しており、年金資産の運用は、許容可能なリスクの範囲内で、リスクリターン特性の異なる複数の投資対象に分散投資することを基本としております。

しかしながら、当社グループの当期末年金資産残高は、5,735億円となっており、金融市場の影響を大きく受け、2024年3月期においては、主に年金資産の運用益(評価益を含む)に起因する退職給付会計における数理計算上の差異等が465億円(費用の減少)発生いたしました。「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号)においては、数理計算上の差異は平均残存勤務期間以内の一定の年数で按分した額を毎期費用処理すると定められており、その中でいわゆる「遅延認識」を行う事で発生期の業績への影響を緩和する事が認められておりますが、当社グループは2003年3月期以降、発生年度に一括して費用処理しており、この費用処理方法を変更することは「会計方針の変更」に該当いたしますが、年金資産残高の増加や業績への影響が高まっていることは、会計方針変更の正当な理由に当てはまらない事から、現在の会計制度では変更が認められておりません。なお、当期の営業利益4,402億円から数理差異等を除いた営業利益は3,936億円となります。

 

 

⑫ 賃貸用不動産における空室及び賃下げに関するリスク

リスク内容

当社グループは、多くの賃貸目的の不動産を所有・管理しておりますが、入居者・テナント獲得の競争の激化等により、入居者や賃料が計画通りに確保できなくなる可能性があります。また、入居後も賃借人との協議等により賃料が減額される可能性があるほか、既存テナントが退去した場合、代替テナントが入居するまでの空室期間が長期化し、不動産の稼働率が大きく低下する場合もあります。その場合、代替テナント確保のため賃料水準を下げることもあり、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、既存テナントが倒産した場合、賃料の支払遅延や回収不能となる可能性もあります。

対応策

賃貸目的の不動産を管理する事業毎に、エリアの特性や社会情勢等を踏まえ、入居者やテナント企業のニーズを的確に捉えた競争力の高い施設を提供することで、空室及び賃下げリスクを最小限にとどめるよう努めております。また、環境に配慮した開発を行うことで物件価値を向上させ、社会的意義のある建物を建設するよう努めております。

 

 

 

  5)ハザード・突発的事象

⑬ 情報セキュリティに関するリスク

リスク内容

当社グループは、DXによる新たな価値創造・事業の円滑・効率的な運用等を目的として、ITシステムの利活用を推進しておりますが、サイバー攻撃等により、ITシステムが長期間にわたり正常に作動しなくなった場合、当社グループの業務が著しく停滞し、業績等への悪影響が生じる可能性があります。また、個人情報や法人の秘密情報等が外部に漏えいした場合には、当社グループの社会的信用に影響を与え、損害賠償等を行う必要が生じることにより、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社では、ファイアウォール等のいわゆる入口対策・出口対策のほかにもエンドポイントの監視等、あらゆるアクセスを検証対象として情報保護対策を行っており、セキュリティ専門組織であるCSIRT(Computer Security Incident Response Team)・SOC(Security Operation Center)を設置して、セキュリティ・インシデントに対応しております。また、情報セキュリティに関する規程(「個人情報保護規程」・「情報管理規程」等)を整備し、加えて情報セキュリティに関するeラーニングや標的型攻撃メール訓練を役職員等に対して実施するなど教育・研修の徹底を図っております。加えて、グループ会社に対しても、海外を含むグループ全体のセキュリティポリシー・基準を整備し直し、セキュリティレベルの実態把握、セキュリティ施策導入の推進、問題解決の指導、脆弱性情報等セキュリティトピックの共有等を実施しております。

 

 

⑭ 自然災害・気候変動に関するリスク

リスク内容

当社グループは、国内及び海外に事務所・工場・研究開発等の施設を展開しており、地震や火山の噴火、台風や水害等の大規模な自然災害の発生により、従業員や施設・設備等への直接的な被害のほか、情報システムや通信ネットワーク、流通・供給網の遮断・混乱等による間接的な被害を受ける可能性があります。また、地震・台風・水害の際には、当社が過去に建築した建物に被害が生じる可能性があり、これらの場合には、被害回復のための費用や事業活動の中断等による損失、またお客様の所有建物に対する点検や応急処置の実施、その他社会的な支援活動を行うための費用等が発生し、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社グループでは、気候変動の緩和策に取組むとともに、いわゆるBCMについての規程・マニュアルを策定することで、自然災害発生時の対応を適正・迅速に行うことができるよう事前の対策を講じております。また、食料の備蓄、蓄電池設備の配備、IP無線や衛星電話の導入等の通信環境の整備、サプライチェーンにおける事業継続計画の策定も行っており、リスクが顕在化した場合の業績等への悪影響を最小化するための取組みを行っております。

 

 

⑮ 感染症に関するリスク

リスク内容

当社グループでは、各営業拠点、工場のほか、建設現場や商業施設等の人が集まる施設を保有しており、重大な健康被害をもたらす感染症が大規模に蔓延した場合、感染拡大を防止する観点から、営業活動や工事現場の操業を停止せざるを得なくなる可能性があり、また不動産市況の悪化により、不動産の取得・開発等の事業に悪影響が出る可能性があります。特にホテル事業やスポーツクラブ運営事業等においては、稼働率の低下や単価の引下げにより、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

上記のリスクは、外的要因に起因するものであるため、リスクが顕在化する可能性の程度や、業績等への悪影響の程度を合理的に見積もることは困難です。しかしながら、リスクが顕在化した場合には、まずは当社グループのステークホルダーの健康被害を最小化することを最優先に取組む方針であり、感染拡大を防ぐため、各保有施設等において感染予防対策措置を講ずるとともに、従業員には感染リスクの高い国・地域への渡航の禁止、テレワーク(在宅勤務)等の対策を実施しております。

 

 

 

2.内部要因

⑯ 事業戦略・グループ戦略に関するリスク

リスク内容

当社グループは、事業戦略上、中長期的観点に立ち、必要に応じて企業や事業の買収、組織再編又は売却等を行っております。しかしながら、企業や事業の買収、組織再編及びこれらの実行後の統合手続等が想定どおりに進行せず、グループ内におけるシナジー効果が期待通りの成果をもたらさないことや、事業環境の前提条件の大幅かつ急激な変化等により、事業戦略上想定した利益が達成できない場合には、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

事業環境は常に変化することから、上記のリスクが顕在化する可能性の程度や、業績等への悪影響の程度を見積もることは困難です。しかしながら、当該リスクへの対策として、買収等検討の際は、買収目的を明確にし、買収前に各種専門家を交えてデューデリジェンスや株式価値評価を行うことで、買収先の企業価値、事業計画の実現可能性等を適正に評価し、買収の是非の判断を行う体制としております。さらに、買収実施後、一定のPMI期間を設けており、専門の部署がPMIを推進することにより、企図した目的を達成しシナジーの最大化を図っております。また、PMI期間終了後には、主管部門の移管を行い、事業本部制によるグループ経営に移行し、事業本部主導でシナジーを追求し、グループ全体での企業価値向上と中長期的成長を実現できるよう取組んでおります。

 

 

⑰ 品質保証等に関するリスク

リスク内容

当社グループの住宅関連事業は、お客様の満足度を高めるために長期保証システムを提供しております。品質管理には万全を期しておりますが、長期にわたるサポート期間の中で、予期せぬ事情により重大な品質問題が発生した場合には、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

設計時には法的規制の遵守状況をモニタリングし、施工時においては、施工部門と異なる第三者的立場の部門における品質検査を実施しております。更にお引渡し後の建物の定期的な点検・診断を行い、劣化診断・メンテナンス提案等の長期サポートを通じて建物のモニタリングを行い、重大な品質問題が生じていないことを確認し、その結果について、技術部門で情報共有し、業績等に悪影響を及ぼす可能性を最小化する体制を構築しております。

 

 

⑱ 安全・環境に関するリスク

リスク内容

当社グループは、工場、建設現場等を多数有しているため、特に安全、環境面を最優先に配慮、対策のうえ事業を行っております。しかしながら、これらの配慮、対策にもかかわらず現場災害、環境汚染等の事故等が発生した場合には、人的・物的な被害等により業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

安全面でのリスクに対しては、施工現場の定期・特別パトロール、安全衛生協議会を通じて、当社及び施工会社の従業員に対する指導・教育を行い、リスクを低減しております。

また、環境面でのリスクに対しては、有害化学物質を代替・削減する取組みを推進するとともに、教育や訓練を実施しており、建設業において重要度の高い土壌汚染問題に対しては、専門部署を設置するなどの方法によりリスクを低減しております。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

1.財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、円安を背景としたインバウンド需要や、賃上げ率の上昇、資源価格や人件費の増加分を価格転嫁する動きがみられるなど、緩やかな回復基調となりました。しかしながら、円安が続く為替の状況、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の悪化等の地政学的リスクが資源価格等に与える影響により、依然として景気の先行きは不透明な状況が続いております。

国内の住宅市場における新設住宅着工戸数は、持家、貸家及び分譲住宅の全てにおいて前年比マイナスとなりました。一般建設市場でも、建築着工床面積において、事務所が増加したものの全体では前年比マイナスとなりました。

このような事業環境の中で当社グループは、2022年度よりスタートした5ヵ年計画「第7次中期経営計画」において、「収益モデルの進化」・「経営効率の向上」・「経営基盤の強化」の3つの経営方針を掲げ、持続的な成長モデルの実現に向け、海外事業とストック事業の拡大やDXによる顧客体験価値向上等、様々な高付加価値提案や施策を積極的に推進してまいりました。

以上の結果、当連結会計年度における売上高は5,202,919百万円前連結会計年度比6.0%増)、営業利益は440,210百万円前連結会計年度比5.4%減)、経常利益は427,548百万円前連結会計年度比6.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は298,752百万円前連結会計年度比3.1%減)となりました。

なお、上記の営業利益には退職給付数理差異等償却益46,515百万円を含んでおり、数理差異等を除いた営業利益は393,694百万円(前連結会計年度比6.8%増)となりました。

 

 

セグメント別の概況は次のとおりです。

なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。下記の連結会計年度との比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組替えた数値で比較しております。

 


 

 

戸建住宅事業では、住まいのあり方が多様化する中、省エネ性に優れ、レジリエンス性能を備えた良質な住宅の提供と、住まう方の人生や変化する価値観に寄り添い、生活を豊かにするライフスタイル提案を行ってまいりました。

国内の住宅事業では、分譲住宅の取組み強化を図るため分譲専用の木造住宅商品「ComfortWood(コンフォートウッド)」に加えて、2023年11月より注文住宅品質を継承した新しい分譲住宅「Ready Made Housing.(レディ メイド ハウジング)」という考え方を発信し、注文住宅と変わらない高い設計力と品質、安心の長期保証、そしてアフターサポートを叶えながら、価格以上の価値を目指した良質な分譲住宅の提供を開始いたしました。

注文住宅では、鉄骨商品の主力商品である「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」、3・4・5階建商品「skye(スカイエ)」を中心に販売を強化。また、ZEH販売率の向上に取組むとともに、木造住宅商品「xevo GranWood(ジーヴォグランウッド)」や、富裕層をターゲットとした当社最高級戸建住宅商品「Wood Residence MARE-希-(マレ)」を販売するなど、カーボンニュートラルの実現とお客様の多様なニーズに対応してまいりました。

さらに、ストック型社会の到来を見据え、既存建物の再生・循環にも注力しております。特に、かつて当社が開発した各地の住宅団地において、地域活性化や空き家問題等の社会課題に向き合い、まちの再生・再耕する「リブネスタウンプロジェクト」に取組んでおります。そこに暮らす人々と共に考え、まちと暮らしに寄り添い、未来に向かって輝き続けるまちの価値構築を進めております。

海外では、米国において、東部・南部・西部を結ぶスマイルゾーンで東部のStanley Martin、南部のCastleRock、西部のTrumarkのグループ3社を軸とした事業拡大を進めております。住宅ローン金利と住宅価格の高止まりは見られますが、中古住宅の在庫が低水準にあることから、新築住宅への需要は底堅く、足元では持ち直しの動きが継続しております。また、2023年10月にはTrumarkが米国で戸建住宅事業を行うJP Holdings, LLCの事業を譲受いたしました。加えて、2024年1月にはCastleRockが米国で戸建住宅事業を行うThe Jones Company of Tennessee, LLCの事業を譲受する契約を締結いたしました。これらにより、米国での戸建住宅供給の更なる拡大を図ってまいります。

以上の結果、当事業の売上高は951,083百万円前連結会計年度比8.5%増)、営業利益は35,164百万円前連結会計年度比24.5%減)となりました。

 

 


 

 

賃貸住宅事業では、ご入居者様・地球環境・街への3つの視点から持続的な価値を提供することで、オーナー様の資産価値の最大化につながる賃貸住宅経営のご提案とサポートを行ってまいりました。加えて、環境負荷を低減し、省エネ・創エネ対応のZEH-M物件の普及に努めてまいりました。

大和リビング株式会社では、幅広いご入居者様に選ばれる、高品質で住み心地の良い賃貸住宅「D-ROOM」の供給に加え、リノベーション事業の強化も奏功し、管理戸数の増加及び高い入居率の維持につながっております。

大和ハウス賃貸リフォーム株式会社では、当社施工の賃貸住宅を所有されているオーナー様に対し、定期点検・診断を通じたリレーションの強化を図り、保証延長工事やリノベーション提案を推進してまいりました。

また、2024年3月には賃貸住宅事業に携わる当社グループ3社(※1)と大東建託グループ3社(※2)は「災害における連携及び支援協定」を締結いたしました。平時より共同で防災イベントを開催し、ご入居者様・地域住民の方へ防災に関する啓蒙活動を行うとともに、災害時には被災された方に対して両社グループの空室提供等を行うことで地域の防災力の更なる強化とご入居者様が安心して暮らせる住まいの提供に尽力いたします。そして更なる賃貸住宅のイメージと価値の向上を目指してまいります。

海外では、主要エリアである米国において、金利の高止まりにより厳しいマーケットが続いておりますが、金利動向や不動産市況を注視しながら、賃貸収入による収益の最大化を目指し、マーケットの回復時には遅滞なく売却できるよう稼働率や収益性の向上に注力してまいります。

以上の結果、当事業の売上高は1,250,288百万円前連結会計年度比5.7%増)、営業利益は115,791百万円前連結会計年度比5.5%増)となりました。

※1. 大和ハウス工業株式会社、大和リビング株式会社、大和ハウス賃貸リフォーム株式会社。

※2. 大東建託株式会社、大東建託パートナーズ株式会社、大東建託リーシング株式会社。

 


 

 

マンション事業では、お住まいになる方々の多彩なライフスタイルに応えるため、ハウスメーカーとして培ってきたノウハウを駆使しながら、長寿命の住まいに欠かせない基本性能や快適性、安全性、管理体制の提供を追求してまいりました。お客様にとっての資産価値に加えて、環境や社会への配慮、地域社会への貢献を目指した付加価値の高いマンションづくりに努めております。

2021年11月に販売開始した北8西1地区第一種市街地再開発事業である「ONE札幌ステーションタワー」は、長年にわたる大規模複合再開発事業への期待感や札幌市営地下鉄東豊線・南北線「さっぽろ駅」から直結・徒歩1分の場所に位置する交通利便性と生活利便性の高い立地が評価され、竣工前の2023年8月には全戸完売、2024年3月より引渡しを開始いたしました。

大和ライフネクスト株式会社では、2024年3月に株式会社東急コミュニティーの子会社である株式会社マリモコミュニティの全株式を取得する契約を締結いたしました。今後とも各マンションが抱える課題に向き合い、安全・安心かつ快適な暮らしの提供を目指してまいります。

株式会社コスモスイニシアでは、2024年1月に販売開始した「イニシア日暮里」(東京都)において、JR山手線「日暮里」駅から徒歩4分、「西日暮里」駅から徒歩5分の交通利便性と商店街や飲食店といった公共機関が揃う生活利便性、ZEH Oriented認定を受けた高い快適性・省エネ性等が好評を博し、販売が順調に進捗しております。なお、当連結会計年度末時点で株式会社コスモスイニシアは当社の連結子会社から持分法適用関連会社となっております。

海外では、主な展開エリアとなる中国に加えて、英国ロンドンでの分譲マンション開発事業に参画しております。欧州での慢性的な住宅不足という社会課題解決に貢献すべく2026年の竣工に向け順調に推進しております。

しかしながら、中国における分譲マンション引渡戸数の減少等により、当事業の売上高は441,867百万円前連結会計年度比8.8%減)、営業利益は37,372百万円前連結会計年度比8.6%減)となりました。

 

 


 

 

商業施設事業では、テナント企業様の事業戦略やエリアの特性を活かし、ニーズに応じたバリエーション豊富な企画提案を行ってまいりました。特に、大型物件への取組みの強化や、当社で土地取得し、開発企画・設計施工・テナントリーシングまで行った物件を投資家様に販売する分譲事業等にも注力してまいりました。2024年2月には、神奈川県横浜市西区みなとみらいにおいて、世界初のゲームアートミュージアム、地域熱供給プラント、オフィスを併設した「みなとみらい21中央地区52街区開発事業」を着工しております。

都市型ホテル事業では、大和ハウスリアルティマネジメント株式会社において、2024年3月に「ダイワロイネットホテル大宮西口」(埼玉県)が開業し、同年3月末時点で国内76店舗16,209室となり、2024年1月から3月末における平均稼働率は約86.6%となりました。

フィットネスクラブ事業では、スポーツクラブNAS株式会社において、2024年3月よりクラブ月会費価格を見直し、会員数の回復を図りました。

ホームセンター事業では、ロイヤルホームセンター株式会社において、株式会社大創産業と販売代理店契約を締結し、2024年2月に堺店、2024年3月に津島店にてDAISO商品売場の展開を開始いたしました。

海外では、米国カリフォルニア州において、稼働中の商業施設である「TRADE(トレード)」と「Village Center(ビレッジセンター)」に対し、日系テナントの入居を推進することで安定的に高い稼働率を維持しております。

以上の結果、当事業の売上高は1,181,561百万円前連結会計年度比8.2%増)、営業利益は143,630百万円前連結会計年度比8.0%増)となりました。

 

 


 

 

事業施設事業では、法人のお客様の様々なニーズに応じた施設建設のプロデュースや不動産の有効活用をトータルサポートすることで業容の拡大を図ってまいりました。

物流施設関連では、2024年2月に「DPL坂戸B」(埼玉県)と「DPL仙台泉」、2024年3月に「DPL群馬太田」など、2024年1月からの3ヶ月間において8件が竣工いたしました。市場環境の変化の中でも当社の強みであるリーシング力を活かし、堅実なテナントニーズを取り込むべく案件開発を継続しており、リーシング成果として「DPL仙台泉」、「DPL群馬太田」、「DPL岡山玉島」は竣工前に満床、「DPL坂戸B」、「DPL仙台利府Ⅱ」、「DPL松戸Ⅱ」(千葉県)も順次賃貸借契約を締結しております。

主に当社が開発した物流施設を管理・運営する大和ハウスプロパティマネジメント株式会社では、2024年2月完成の「DPL坂戸B」をはじめとする物流施設等8棟について新規プロパティマネジメント(PM)契約を締結し、累計管理棟数は247棟、累計管理面積は約986万㎡となりました。

ロジスティクスサービス業を展開するダイワロジテックグループでは、IT事業において顧客企業のDX化に伴うIT関連投資の拡大が続いている一方で、今後は2024年問題に関わる物流業務の省人化・自動化システムの導入推進及び新製品の発売により新規顧客獲得へつなげてまいります。

物流事業では、大和物流株式会社において2024年1月に地域別の配車業務の属人化や負荷の偏りなどの問題を解消し、効率化を図るため中部エリアの配車業務を集約した「中部統括配車センター」(愛知県)を開設いたしました。当センターでは、各物流センターのオペレーションと連携しつつ配車情報を集約することで地区全体の輸配送効率化に取組んでおります。

海外では、主な展開エリアとなるASEANにおいて、2024年3月にベトナム北部における物流ニーズの高まりに対応するため、首都ハノイから東へ約40kmに位置する工業団地内において、マルチテナント型物流施設「(仮称)DPLベトナムミンクアン」を着工いたしました。今後もASEAN・東アジアにおいて、事業施設等の大型開発で更なるインフラ整備や雇用を促進してまいります。

以上の結果、当事業の売上高は1,294,455百万円前連結会計年度比14.5%増)、営業利益は123,244百万円前連結会計年度比23.7%増)となりました。

 

 


 

 

環境エネルギー事業では、脱炭素への流れが加速し、再生可能エネルギー導入のニーズが高まる中、EPC事業(再生可能エネルギー発電所の設計・施工)、PPS事業(電力小売事業)、IPP事業(発電事業)の3つの事業を推進してまいりました。

EPC事業では、脱FIT(再生可能エネルギーの固定買取制度)の取組みとして、太陽光発電所から離れた需要家に供給する「オフサイトPPA(※)」、屋根上や隣接地に設置した太陽光発電所から直接電力を供給する「オンサイトPPA」の2つのPPA事業の拡大に取組んでまいりました。再生可能エネルギーを求める需要は着実に増加しております。当社が創業以来積み重ねてきた用地開発のノウハウを活かして適地管理による太陽光発電所用地の確保と大手エネルギー会社との協業による需要家の開拓を行い、今後の主力事業として引き続き注力してまいります。

PPS事業では、仕入れに合わせた供給量のコントロール、新料金体系への移行、電源調達調整費(独自燃調)の導入等の取組みとともに、電力卸売市場のスポット価格が安定したことにより、収益性が改善いたしました。しかしながら、電力業界における事業環境動向の予見は困難なため、今後も事業リスクの対策を継続しPPS事業の安定化に取組んでまいります。

IPP事業では、太陽光発電を中心に、風力発電、水力発電を全国551ヶ所で運営しております。

今後も第7次中期経営計画における重点テーマの一つ「すべての建物の脱炭素化によるカーボンニュートラルの実現」の取組みの中核を担い、当社グループ全体で推進し、更なる再生可能エネルギーの普及拡大を目指してまいります。

以上の結果、当事業の売上高は139,441百万円前連結会計年度比26.1%減)、営業利益は9,131百万円前連結会計年度比45.3%増)となりました。

※ Power Purchase Agreement(パワー・パーチェース・アグリーメント)の略。電力購入契約。

 

(注) 各セグメント別の売上高は、外部顧客への売上高にセグメント間の内部売上高又は振替高を加算したものです。(「第5 経理の状況 1 (1) 連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」を参照。)

 

 

2.キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動による資金の増加302,294百万円、投資活動による資金の減少310,419百万円、財務活動による資金の増加97,399百万円等により、あわせて93,418百万円増加いたしました。この結果、当連結会計年度末には439,572百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動による資金の増加は302,294百万円前連結会計年度比31.3%増)となりました。これは、主に法人税等の支払いや販売用不動産の取得を行ったものの、税金等調整前当期純利益を455,834百万円計上したことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動による資金の減少は310,419百万円(前連結会計年度は505,181百万円の減少)となりました。これは、主に大規模物流施設や商業施設等の有形固定資産の取得を行ったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において財務活動による資金の増加は97,399百万円前連結会計年度比66.1%減)となりました。これは、主に株主配当金の支払いや自己株式の取得を行ったものの、棚卸資産や投資用不動産の取得等のために、社債の発行や借入金による資金調達を行ったことによるものです。

 

3.生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当社グループの生産・販売品目は、広範囲かつ多種多様であり、生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載しておりません。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前期増減率 (%)

受注残高

(百万円)

前期増減率 (%)

戸建住宅

925,377

16.6

206,437

0.2

賃貸住宅

1,261,809

8.2

187,781

7.5

マンション

392,336

△18.6

84,687

△45.1

商業施設

1,153,320

4.2

207,948

△9.7

事業施設

1,324,384

10.0

1,030,245

6.8

環境エネルギー

90,678

△27.9

3,525

△75.8

その他

40,122

△29.7

9

合計

5,188,029

5.1

1,720,635

△1.4

 

(注) 各セグメントの金額は外部顧客への受注高・受注残高を表示しております。

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額 (百万円)

前期増減率 (%)

戸建住宅

944,461

8.6

賃貸住宅

1,248,673

6.0

マンション

432,969

△9.0

商業施設

1,175,715

8.5

事業施設

1,259,239

14.3

環境エネルギー

101,746

△29.0

その他

40,112

△29.8

合計

5,202,919

6.0

 

(注) 1.各セグメントの金額は外部顧客への売上高を表示しております。(「第5 経理の状況 1 (1)連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」を参照。)

2.総販売実績に対する割合が10%以上の相手先はありません。

 

(参考)提出会社個別の事業の状況は次のとおりです。

受注高、売上高及び繰越高

期別

部門別

前期

繰越高

(百万円)

当期

受注高

(百万円)

(百万円)

当期

売上高

(百万円)

次期

繰越高

(百万円)

第84期

自 2022年

4月1日

至 2023年

3月31日

建築請負部門

556,083

1,071,875

1,627,958

1,145,560

482,397

不動産事業部門

87,762

856,874

944,637

772,203

172,434

その他事業部門

88,302

88,302

88,302

643,846

2,017,052

2,660,898

2,006,066

654,831

第85期

自 2023年

4月1日

至 2024年

3月31日

建築請負部門

482,397

1,184,356

1,666,753

1,144,087

522,666

不動産事業部門

172,434

917,697

1,090,131

929,249

160,882

その他事業部門

76,377

76,377

76,377

654,831

2,178,431

2,833,262

2,149,713

683,548

 

(注) 1.損益計算書においては、建築請負部門は「完成工事高」、不動産事業部門は「不動産事業売上高」、その他事業部門は「その他の売上高」として表示しております。

2.前期以前に受注したもので契約の更改により金額に変更あるものについては、当期受注高及び当期売上高にその増減を含めております。

3.次期繰越高は(前期繰越高+当期受注高-当期売上高)です。

 

4.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、その達成を保証
するものではありません。

 

 <CFOメッセージ>

 


企業価値向上に向けて

戦略的資本政策と、資本効率向上を目指す

 

代表取締役副社長/CFO 香曽我部 武


 

 

変化に対応し、さらなる成長を遂げる

第7次中期経営計画(以下、7次中計)の2年目にあたる2023年度、売上高は5兆円を突破し、過去最高の5兆2,029億円となり、営業利益は4,402億円(退職給付における数理計算上の差異等を除く営業利益では過去最高の3,936億円)となりました。創業者・石橋信夫の夢である「創業100周年に売上高10兆円の企業グループ」の折り返しとなる5兆円を、70周年(2025年)を迎える前に達成できたことは感慨深いものがあります。社員一人ひとりの働きに感謝するとともに、創業者の “世の中の役に立つからやる”という言葉を大切にして、現状に満足せず、さまざまな領域に挑戦してきた結果を誇りに感じています。

一方、市場環境に目を向けると、国内においては、日銀のマイナス金利政策の解除に伴い、今後は金利のある社会へ変化していくことが予想されます。CFOとしては、さまざまな事業への挑戦や新たなエリアへの進出を続けるなかで、リスクマネジメントの観点からも、金利上昇局面に対する強固な財務基盤の構築は重要な課題の一つであると考えています。

そこで当社は、金利上昇を見据え、投資のハードルレートを、2023年2月に引き上げました。また、直接金融と間接金融、変動金利と固定金利など状況に応じた多様な資金調達を常に検討しています。現在の格付はAA格を取得していますが、我々にとって安定的な資金調達に向けて、格付の維持は重要なテーマです。格付会社との対話では、不動産開発事業が拡大する状況下で、どのようにD/Eレシオ0.6倍程度を達成するのかが問われています。成長への投資とともに、保有している不動産の回転率や稼働状況をしっかりと管理しながら、財務健全性の維持に努めています。

また国内では人口、世帯数の減少が一層進行し、深刻な人手不足が課題となる中、人財の確保と労務管理は今まで以上に厳しくなるでしょう。絶えず社会環境が変化する中でも、当社は業界のトップランナーとして、社会からの期待に応え続けていくために、2024年問題という労働時間規制への対応をしっかりと進めていきながら、ガバナンスへの意識を更に高めていかなければなりません。

さらに成長の柱である海外事業においては、RC(リージョナル・コーポレート)機能を、アメリカ、オーストラリア、ASEAN、中国、ヨーロッパ等、世界各地で設置し、各エリアの事業や子会社、プロジェクトに合わせた体制を整え、現地の商慣習やリスク、ノウハウをRC機能に蓄積することで、持続的な成長を支える経営体制とリスク管理を推進しています。加えて、本部と海外各社との役割と責任を明確化したうえで、現場により近い位置(業務内容、物理的距離)でモニタリングし、適切なサポートを行っています。

 

7次中計の進捗

2021年頃から鉄をはじめとする資材価格の高騰や、労務費の上昇等により、建設コストが上昇してきた中、利益率の悪化に対する策を講じてきました。各事業で価格転嫁などの取り組みは進めていますが、価格高騰以前に締結した契約案件の交渉は想定通り進まず、比較的工期の長い事業施設と商業施設事業は、その影響を受けています。しかし直近では、改めて契約締結時にお客さまへ資材価格高騰時の価格転嫁に関して丁寧に説明し、契約書の特約に記載するなどしていますので、今後は徐々に利益率が改善していくものと見ています。

加えて7次中計では、グループ購買によるコスト低減の取り組みも進めています。従来はグループ会社が個別に調達していたものを、国内の主要なグループ企業(大和ハウス工業、大和リース、フジタ等)が共同で調達することにより、参加グループ企業における最優遇価格の展開が可能になりました。スケールメリットによるコストダウンも期待でき、2026年度グループ集中購買額1兆円、コスト削減効果額1,000億円に向けて取り組みは順調に進捗しています。また、海外においてもオフサイト化(工場生産)の推進や、米国戸建住宅3社(Stanley Martin社、Trumark社、CastleRock社)による共同調達の取り組みが始まっています。

 

 

投資と回収

開発不動産については、7次中計の投資額2.2兆円に対する進捗率は約30%となりました。2.2兆円のうち、物流施設を中心とした事業施設への投資は1.5兆円と計画しています。物流施設用地仕入れにおける競争環境の激化や大型の土地入札案件の一巡感などが影響し、投資スピードは当初見込みよりも遅れていますが、テナントからの確かな需要は確認できています。開発不動産の売却については、国内の物流施設を中心に、安定して売却できており、今後も継続的に実施していきます。米国においては、近年の金利上昇などにより、賃貸住宅をはじめとする投資不動産の流通市場環境が悪化しました。その影響で、2023年度は売却を見送りましたが、市場環境が回復してきた際により良い条件で売却できるよう、NOI利回りの向上を図りながら、運営、開発を継続していきます。

一方、販売用不動産については、国内各事業で積極的に分譲事業の拡大を進めているため、7次中計策定時の見込みより投資が進んでいます。特に、戸建住宅事業では、国内で事業モデルの改革を行い、分譲事業を強化しており、また、米国では、現地3社の強みである土地情報力や地主、土地開発会社との強力なリレーション等を活用しながら、順調に優良な土地の確保を進めています。賃貸住宅事業では、土地を取得し、アパートを建設後、ご入居者様を募り、投資家や節税対策を目的としたオーナー様向けに販売しています。商業施設事業や事業施設事業についても豊富な土地情報力や顧客基盤を活かしながら、様々なアセットを開発し、売却を実施しています。

分譲事業は請負事業と比較し、土地や建物に投資するリスクがありますが、土地取得から建物仕様、アセットによってはテナント誘致まで、当社がデザインすることで、収益率の向上が期待できます。各事業で回転率や滞留する不動産の状況、市況や分譲事業のパフォーマンスなどを注視しながら、効率的な投資を行っています。

 

資金調達

2024年1月に転換社債型新株予約権付社債(CB)を発行しました。7次中計における積極的な不動産投資を遂行するための戦略的な資金調達です。金利上昇など資金調達環境の不透明な状況が続く中、金利0.00%で調達を行っており、普通社債での調達と比較して約7~80億円程度の金利コストの削減が実現できたと考えています。また、転換制限条項及び額面現金決済条項の付与により転換の可能性及び希薄化を抑制しうる商品設計にしています。更に当CBにより得た低コストの資金を原資に自己株式取得を実施しましたので、資本政策の達成に向け、ROEや1株当たり当期純利益(EPS)等の資本効率の向上も企図されています。なお、額面現金決済取得条項については、当社のオプションであるため、行使に関しては、株価やD/Eレシオの水準、ROEの状況など、その時点での財政状況や資本政策を考慮して判断していきたいと考えています。

 

資本コストと株価を意識した経営を推進する

常にエクイティスプレッドを意識した経営を推進しておりますが、成長分野への投資を継続しながら、ROE13%以上を実現することは決して容易ではありません。しかし、既存事業での確実な成長と、生産性向上による更なる利益の創出に加えて、安定的な株主配当や機動的な自己株式の取得による株主還元との両輪で、ROE13%以上を達成したいと考えています。また、事業ポートフォリオの見直しという観点から実行した、2023年7月のリゾートホテル事業の譲渡や、2024年2月のコスモスイニシアの株式一部譲渡、さらに政策保有株式の売却など、積極的に保有資産の資金化を図ることもROEの目標達成に向けての手段の1つだと考えています。

株価については、一時、日経平均が4万円超となる中、当社も年初には4,718円の上場来最高値を更新することができましたが、2024年5月の決算発表後には、併せて公表した2024年度の計画が市場コンセンサスに対して未達であったことなどから、株価を下げることとなりました。現状のPBR、PERの水準を考えれば、物足りなさを感じていますので、しっかりと実績を積み上げて市場の期待に応えていきたいと考えています。

昨今言われているPBR向上に向けては、ROEの向上と株主資本コストの低減の両面で取り組む必要があります。株主資本コスト低減に向けては、更なるガバナンス強化と、IR活動を通じた株主・機関投資家との対話が鍵となります。まずは7次中計最終年度の利益達成の蓋然性をご説明するとともに、豊富な土地情報を有する強みと、そして地方行政や各企業を含む顧客基盤から生まれる事業機会を活かす当社の稼ぐ力を改めてご理解いただき、当社が持続的に成長し続ける企業であることを再認識いただけるよう努めていきます。

 

 

環境、人的資本に積極投資する

環境については、2050年にカーボンニュートラルを実現すべく、原則、建築するすべての屋根に太陽光発電パネルを設置し、2030年度にはZEH・ZEB率を100%とする取り組みを進めています。

GHG排出量については、2023年度は響灘火力発電所(※)の子会社化により、事業活動(スコープ1・2)は一時的に増加しました。一方、カーボンニュートラル戦略のもと、太陽光発電パネルの設置率、ZEB、ZEH率が順調に向上したことにより、販売建物の使用(スコープ3カテゴリ11)における排出量の削減が進んだことから、バリューチェーン全体のGHG排出量は、計画を上回る39.5%削減を達成しました。お客さまとともに進めるカーボンニュートラルに向けた取り組みが進んでいることを実感しています。

当社の持続的成長、そして“将来の夢”の実現に向けた人的資本経営においては、多様な人財が活躍し、従業員一人ひとりが働きがいを実感できることが生産性の向上につながります。従業員が「誇り」と「働きがい」を持ち、個々が「強み・らしさ」を発揮して活躍できる人財育成と、公平・公正な場の整備を進めています。特に現場における人財育成や組織運営の要となるミドルマネジメント層への教育を強化しており、労務管理だけでなく、「人が活きるマネジメント」と「業績が上がるマネジメント」の好循環を生み出すための意識、知識、リテラシーを高めるための教育支援を行っています。

また物価上昇が続くなかで、従業員が安心して働ける環境整備と、中長期的な人財の採用・確保につなげるため、従業員への投資として継続的な給与改定を実施しています。加えて、建設業の2024年問題に向けた建設DX投資なども推進し、現場の負荷低減による生産性向上も進めていきます。

※ 響灘火力発電所:石炭とバイオマス燃料(木質ペレット)の混焼による発電を行っており、石炭専焼のプラントと比べCO₂排出量を最大で年間約30%削減可能。なお、2024年3月に稼働を停止したため、2024年度以降のGHG排出量は再び目標達成水準に達する見込み。今後は、バイオマス燃料を100%利用したバイオマス専焼発電所へ転換、2026年4月の運転開始を目指している。

 

引き続き安定的な株主還元を実現する

当社は、事業活動を通じて創出した利益を株主の皆さまに還元するとともに、中長期的な企業価値最大化のために不動産開発投資、海外事業展開、M&A、研究開発や生産設備などの成長投資に資金を投下し、1株当たり当期純利益(EPS)を増大させ、株主価値向上を図ることを株主還元の基本方針としています。2023年度の年間配当金額は143円、配当性向は35.1%(退職給付会計における数理計算上の差異の影響を除く)となりました。2024年度の年間配当額は145円の計画とし、15期連続の増配を計画しています。また2024年5月には7次中計における株主還元方針の一部を変更させていただき、安定的な配当の観点から、配当金の下限設定を130円から145円へと変更させていただきました。

なお、自己株式の取得については、市場環境や資本効率等を勘案し、状況に応じて機動的に実施する方針で、7次中計ではこれまでに総額で871億円の自己株式の取得を実施いたしました。

 

ステークホルダーとともに“将来の夢”を実現する

大和ハウスグループは、利益を創出する事業価値と “世の中の役に立つ”という考え方のもとで生み出される社会価値の両立により、企業価値向上を図っています。

創業以来当社は、戦後の木材不足から鉄パイプで組み立てた「パイプハウス」やプレハブ住宅の原型となる「ミゼットハウス」、日本初の住宅ローン、1970年代にはロードサイドの遊休地利用による流通店舗事業など、次々と新たな商品・事業を生み出してきましたが、次のステージに向けて、新しい事業との創出にも本格的に挑戦していきます。アントレプレナー(起業家)とイントレプレナー(社内起業家)の共創機会を創出し、新規事業へ挑戦するための仕組みとして、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)と社内起業制度を設立しました。“世の中の役に立つ”新たなサービスや付加価値がこの制度を通じて生まれることを大いに期待しています。

社会価値を創造する事例の一つとして「リブネスタウンプロジェクト」があります。建物を引き渡して終わりではなく、その後のお客さまの暮らしにも寄り添うという点で、非常に大和ハウスらしい取り組みです。業績は大切ですが、それだけを目標とせずに、今後も全てのステークホルダーの皆さまにとって何が良いかを常に考えながら、“夢”の実現に向けて事業を進めていきます。

 

 

 


 

 

 

Ⅰ.財政状態

 

 

財務の状況

 

 

2023年度末の総資産は、2022年度末比で3,916億円増加し、6兆5,337億円となりました。その主な要因は、各事業で分譲事業を推進するため販売用不動産の仕入れを強化し、特に戸建住宅事業及び商業施設事業において棚卸資産が増加したことによるものです。

負債合計については、2022年度末比で2,568億円増加となり、4兆99億円となりました。その主な要因は、販売用不動産や投資用不動産の取得等のために社債の発行や借入金による資金調達を行ったことによるものです。

純資産合計については、2022年度末比で1,348億円増加し、2兆5,237億円となりました。その主な要因は、株主配当金875億円の支払いや自己株式871億円の取得により株主還元を進めたものの、2,987億円の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによるものです。

リース債務等を除く有利子負債残高は、2022年度末比で2,383億円増加し、2兆878億円となりました。D/Eレシオについては、0.77倍(※1)となり、0.6倍程度としている財務規律を上回っておりますが、これは成長のための積極的な投資を進めたことによるものであり、第7次中期経営計画最終年度においては掲げた財務規律を遵守すべく、資本政策を検討してまいります。

資産内訳については、棚卸資産の残高が2兆2,877億円となり、大きな割合を占める状況となっております。今後も、棚卸資産や投資用不動産の取得等により、資産が増加することが見込まれますが、最適資本構成の検証により財務の健全性維持に努めてまいります。

※1.ハイブリッドファイナンス(2019年9月に発行した公募ハイブリッド社債(劣後特約付社債)1,500億円、及び2020年10月に調達したハイブリッドローン(劣後特約付ローン)1,000億円)について、格付上の資本性50%を考慮して算出しております。

 

[ 図1 ]


 

第5次中期経営計画の最終年度(2018年度)との比較を行っております。

 

①流動比率は137%から238%へと上昇

②固定比率は151%から118%へと低下

③固定長期適合率は84%から59%へと低下

④自己資本は1兆5,959億円から2兆4,378億円へと成長

 

 

[ 図2 ]


 

①棚卸資産は9,556億円から2兆2,877億円へ増加(図3参照)

②賃貸等不動産は1兆560億円から1兆2,800億円へ増加

③リース債務等を除く有利子負債は7,785億円から2兆878億円へ増加、また自己資本に対する比率(D/Eレシオ)も0.49倍から0.77倍へ上昇
(ハイブリッドファイナンスの資本性考慮後)

 

 

 

 

資産増加の分析

 

 

2023年度末の棚卸資産は2兆2,877億円となり、2018年度対比で139%の増加となりました。主な増加要因は、各事業で当社の強みの一つである「土地を起点とした複合的な事業提案力」の強化を図り、投資不動産の購入を検討されているお客様に向けた販売用不動産の仕入を増加させたことにより、特に賃貸住宅や商業施設事業において残高が増加したものです。また米国戸建住宅3社(Stanley Martin社、Trumark社、CastleRock社)において、米国住宅市場の進出エリアが順調に拡大していることも棚卸資産の増加につながっております。セグメント別には、積極的に展開している海外で分譲事業が中心となる戸建住宅、国内で開発した物流施設等の売却を進めている事業施設事業の割合が高くなっております。

投資不動産は1兆5,950億円となり、2018年度対比で48%の増加となっております。内訳としては流動化不動産(※2)が1兆2,350億円68%の増加、収益不動産(※3)が3,600億円6%の増加となっており、流動化不動産の増加が投資不動産の増加につながっております。主な増加要因は収益ドライバーの一つである物流施設の開発投資を拡大してきたことによるものです。

資産の増加は棚卸資産や投資不動産の増加によるところが大きくなっていますが、これは成長のための投資を積極的に行っていることによるものです。投資に際しては、IRRを重要な指標として意思決定しており、売却時には資金回収及び収益獲得に寄与するものと考えております。今後も、市場の環境等を踏まえながら最適なタイミングで売却を実施し、資本効率の向上に努めてまいります。

※2.流動化不動産:値上がり益を得る目的で投資後、早期に売却可能な不動産。

※3.収益不動産:賃貸収益を得る目的で投資・開発した不動産。

 

[ 図3 ]


 

[ 図4 ]


 

 

 

 

Ⅱ.キャッシュ・フロー(CF)

 

 

基本的な考え方

 

キャッシュ・マネジメントについては、事業活動によるキャッシュ創出額を基準として投資を行うことを基本的な考え方としております。第7次中期経営計画において、財務規律としてD/Eレシオを0.6倍程度に設定しておりますが、優良な投資機会に対しては、積極的な投資を行う必要があり、成長のための投資が先行し一時的に規律を上回ることがあります。中長期的には、0.6倍程度に有利子負債の水準をコントロールするため、社内の投資判断基準を設定、厳格に運用し、成長投資と財務健全性の維持の均衡を図っております。

 

キャッシュ・フローの状況

 

 

2023年度における営業活動CF(休日調整後)は2,928億円となり、2022年度に比べ625億円増加し、自己資本を1とした場合の営業活動CF比率は、2022年度の0.10から0.02ポイント上昇し0.12となりました。その主な要因は、法人税等の支払いや販売用不動産の取得を行ったものの、4,558億円の税金等調整前当期純利益を計上したことによるものです。

投資活動CFについては、第7次中期経営計画における投資計画に基づき、賃貸等不動産等の取得や、不動産開発事業への投資を2,486億円実行したことなどにより、△3,104億円となりました。その結果、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動CF+投資活動CF)は△176億円となりました。

財務活動CFについては、株主配当金の支払いや自己株式の取得により株主還元を進めたものの、棚卸資産や投資用不動産の取得等のために、社債の発行や借入金による資金調達を行ったことなどにより、財務活動CFは973億円となりました。

これらの結果、現金及び現金同等物の2023年度末残高は2022年度末から934億円増加し、4,395億円となりました。

 

[ 図5 ]


 

[ 図6 ]


 

 

Ⅲ.損益の状況

 

 

自己資本利益率(ROE)

 

 

 

自己資本利益率(ROE)は12.7%となりました。当社は、第7次中期経営計画においてはROE13%以上を経営目標に掲げております。2023年度においては、リゾートホテル事業の売却や、上場会社であるコスモスイニシアの連結除外等を行いましたが、引き続き事業ポートフォリオの最適化や非効率資産の圧縮等、さまざまな観点から資本効率の改善に向けて取組み、利益の上積みと株主還元の両輪で達成してまいります。

 

[ 図7 ]


 

 

 

 

(ROE分解)売上高当期純利益率

 

 

 

親会社株主に帰属する当期純利益は2,987億円となり、2018年度からの6年間の年平均成長率は4.7%となりました。当期純利益率については5.7%となり、退職給付会計における数理計算上の差異の影響もありますが、それを除いても改善傾向にあります。依然として資材価格や燃料費の高騰による影響を受けていますが、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けたホテル事業等の業績回復が利益率改善につながっております。

 

[ 図8 ]


 

 

(ROE分解)総資産回転率

 

 

 

売上高は5兆2,029億円となり、2018年度からの6年間の年平均成長率は4.7%となりました。総資産回転率(※4)については、前期の0.84回より0.02回低下し0.82回となりました。当社グループの事業は、投資が不要な建設請負事業が中心だったところから、不動産開発事業のように先行投資が必要な事業の割合が増加してきており、売上高に占める開発物件売却の割合も増加してきております(図10参照)。さらに土地建物を販売する分譲事業を強化しており、このビジネスモデルの変革により回転率は低下することが見込まれますが、ストックとフローのバランスを取りながら棚卸資産の販売促進や投資不動産の売却、政策保有株式の売却等、資産の効率的な活用の徹底に引き続き取組み、改善を図ってまいります。

※4.総資産は期中平均で算出。

 

[ 図9 ]


 

[ 図10 ]


 

 

(ROE分解)財務レバレッジ

 

 

 

自己資本は2兆4,378億円となり、2018年度からの6年間の年平均成長率は8.8%となりました。財務レバレッジ(※5)は、前期と比べて2.6ポイント低下し、268.4%となりました。D/Eレシオを財務規律として設定することで、財務レバレッジをコントロールしながら、成長投資への資金を確保し、財務基盤の強化に努めます。

※5.総資産及び自己資本は期中平均で算出。

 

[ 図11 ]


 

 

投下資本利益率(ROIC)

 

 

 

税引後営業利益(NOPAT)(※6)は、3,055億円となり、投下資本(自己資本+有利子負債)(※7)4兆3,296億円に対する利益率(ROIC)は7.1%となりました。株主資本コストを上回る資本効率でリターンに結び付けるために、現場においては図13に示すような通常業務の改善に「凡事徹底」で取組み、ROICの向上に努めてまいります。

※6.税引後営業利益(NOPAT):
営業利益×(1-実効法人税率)

※7.投下資本は期中平均で算出。

 

[ 図12 ]


 

 

[ 図13 ]


 

 

 

海外業績

 

 

 

海外事業における売上高は7,059億円、営業利益は304億円となり、2018年度からの6年間における年平均成長率は売上高20.4%、営業利益18.8%となりました。当社業績に占める海外事業の割合も上昇傾向にあり、売上高についてはコンスタントに10%を上回る水準となりました。当社は米国の住宅会社のM&Aや海外での不動産開発等、海外事業に積極的に取組んでおります。第7次中期経営計画において、地域密着型の海外事業による成長の加速を重点テーマの一つとし、最終年度には、海外売上高1兆円・営業利益1,000億円を目指してまいります。

 

[ 図14 ]


 

 

[ 図15 ]


 

 

 

Ⅳ.事業別経営成績

 

 

収益性分析

 

 

 

営業利益においては、賃貸住宅、商業施設、事業施設事業の3つのセグメントで全体の85%以上を占めております。

環境エネルギー事業においては、売上高構成比としては2%にとどまるものの、脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギーの普及の貢献に積極的に取組んでおります。

また、戸建住宅事業においては、新設住宅着工戸数の減少が見込まれますが、分譲事業強化を軸とした経営改革を進め、利益率の改善を図ってまいります。

 

[ 図16 ]


 

 

セグメント資産に対する営業利益率

 

 

 

セグメント資産に対する営業利益率については、分譲事業の推進により棚卸資産残高は増えているものの、請負事業や賃貸管理事業の利益貢献度の高い賃貸住宅事業が高い数値を示しております。

事業施設事業については、物流施設やデータセンター等の市場の成長に対応し、長期大型開発へ積極的な投資を行っております。現在は取得済みの土地に係る建設投資を進めていることから、現時点における資産利益率は低い水準となっておりますが、今後の投資回収期にはキャッシュ・フローに大きく寄与してくることを見込んでおります。

 

[ 図17 ]


 

 

事業投資の状況

 

 

 

事業投資の状況としては、持続的成長を見据え積極投資を維持し、収益ドライバーである物流施設を中心とした事業施設事業と地域ポテンシャルを引き出し雇用創出や賑わいに貢献する商業施設事業への開発投資を拡大しております。また、これらの事業によって創出された資金を活用し、新たな収益の柱として育成すべく新規事業や海外事業等への投資も併せて実施しております。

 

[ 図18 ]

 


 

 

 

Ⅴ.株主還元及び株価の状況

 

 

株主還元

 

 

 

2023年度は、年間配当金額143円、配当性向31.3%とし、14期連続の増配を実現いたしました。配当性向は31.3%となりましたが、退職給付会計における数理計算上の差異の影響を除くと35.1%となります。第7次中期経営計画では配当性向を従来の30%以上から5ポイント引き上げ35%以上とし、業績に連動した利益還元を行い、また2024年度からは130円としていた年間の配当金額の下限を145円に変更し、より安定的な配当の維持に努めてまいります。

また、2023年5月に700万株の自己株式消却を実施し、2024年1月には1,718万株(取得価額799億円)の自己株式の取得を行いました。

 

 

[ 図19 ]


 

注 2015年度及び2022年度の配当性向の増減は、主に退職給付債務算定に用いる割引率を変更したことによるものです。

 

 

株価純資産倍率(PBR)

 

 

 

1株当たり純資産(BPS)は3,810.21円となり、2018年度からの6年間の年平均成長率は9.6%となりました。株価純資産倍率(PBR)は、1.19倍となり、前期は1.00倍を下回る結果となっていましたが、当期は上回っております。しかしながら、現状の株価には満足せず、継続してROEの向上と事業ポートフォリオの最適化による資本効率の向上への取組みを進め、加えて財務健全性やガバナンスの強化、IR活動を通じた投資家との対話により、今後も企業価値の最大化を図ってまいります。

 

 

[ 図20 ]


 

[ 図21 ]


 

 

2014

2015

2016

2017

2018

2019

2020

2021

2022

2023

時価総額(億円)

15,620

21,016

21,206

27,254

23,359

17,779

21,203

20,987

20,517

28,971

最高株価(円)

2,467.5

3,654

3,367

4,594

4,293

3,819

3,552

3,900

3,320

4,718

最低株価(円)

1,673.0

2,326.0

2,500.5

3,096

3,119

2,230.5

2,332.0

3,037

2,907.5

3,080

 

注 最高・最低株価は、2022年4月3日以前は東京証券取引所市場第一部におけるものであり、2022年4月4日以降は東京証券取引所プライム市場におけるものです。なお、時価総額は期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)としています。

 

Ⅵ.中期経営計画進捗

 

 

当社は、2022年度を初年度とする5ヵ年計画「第7次中期経営計画」をスタートいたしました。2年目となる2023年度は、売上高は5兆円を突破し、退職給付会計における数理計算上の差異等の影響を除いては、営業利益・当期純利益とともに過去最高を更新することができました。D/Eレシオについては、投資が先行しており、財務規律を上回っておりますが、最終年度に向けてコントロールしてまいります。原材料・エネルギー価格の高騰や金融資本市場の変動等の影響により厳しい事業環境が続きますが、計画達成に向けて、「収益モデルの進化」「経営効率の向上」「経営基盤の強化」の3つの経営方針を掲げ、持続的な成長モデルの実現に向け、海外事業の更なる進展や、地域を活性化させる複合再開発の推進、カーボンニュートラルの実現に向けた取組み等、各施策を実施してまいります。

 

財務目標

 

 

 

[ 図22 ]


 

注 営業利益・当期純利益・配当性向は退職給付会計における数理計算上の差異等の影響を除く。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。D/Eレシオは、ハイブリットファイナンスの資本性考慮後。

 

 

事業別業績目標

 

 

 

[ 図23 ]


 

注 営業利益は退職給付会計における数理計算上の差異等の影響を除く。

 

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、「人・街・暮らしの価値共創グループ」として、社会に役立つ価値の創造を目指し、官公庁、国内外の大学、異業種企業とも密接に連携を図りながら、基礎・応用研究から新技術・新商品開発、これらの新技術の建築物や街づくりへの活用・検証まで多岐にわたる研究開発活動を行っております。

なお、当連結会計年度の研究開発費は10,915百万円となっております。

当連結会計年度の主な活動は次のとおりです。

 

(1) 戸建住宅事業、賃貸住宅事業、マンション事業

・2023年4月より、快適防音室・快適静音室「音の自由区」の提案を開始いたしました。当社は、2006年より室内の心地よい響きと外部への遮音を両立させた新築戸建住宅向けの防音室「奏でる家」の提案を開始しており、これまでに累計約3,000室(※1)を提供してきました。そしてこのたび、当社が提案してきた防音室を「音の自由区」と名付け、防音仕様が異なる3つのグレード(快適防音室「奏でる家+(プラス)」、「奏でる家」、生活音を減音する快適静音室「やすらぐ家」)を用意し、当社の防音性能に優れた建物との一体設計で、住まいの防音に加え、新たに静音の提案を行ってまいります。またこの取組みは「第17回キッズデザイン賞」(※2)の「子どもたちを産み育てやすいデザイン部門」において、優秀賞「こども政策担当大臣賞」を受賞いたしました。

※1.2023年3月末時点。

※2.特定非営利活動法人キッズデザイン協議会主催。

・2023年5月、自分らしさを表現できる木の家、木造自由設計商品「xevo BeWood」を発売いたしました。xevo BeWood では鉄骨自由設計商品xevoΣとモジュールを統一することで、顧客ニーズに適した工法選択が可能となりました。構造・防水共に初期保証30年、外張り断熱通気外壁による高い断熱性等もxevoΣと同様です。また、高耐久と美しさを両立する、独自のシームレス外壁「GranWood-BOITH工法」により、多様な外観デザインが実現できます。さらに独自の「邸別構造解析」によって確かな耐震性能を発揮しながら、ゆとりある大空間・大開口やダイナミックなあらわし梁を実現し、安心も心地よさも手に入れた空間が、暮らしの質を高めます。

・2023年10月、分譲戸建住宅に特化したサプライチェーンを構築することで、お値打ち価格でハウスメーカー品質と長期保証を実現した木造分譲限定商品「ComfortWood」の運用を開始いたしました。木造ならではの落ち着きあるデザインとし、「シンプル」と「デコラティブ」の2タイプの外観バリエーションを準備いたしました。断熱等級5、NearlyZEH仕様、初期保証30年等、一般在来工法でありながらハウスメーカー品質でビルダーにはない安心を提供いたします。

・当社と大和リビング株式会社は、エネルギー事業を展開する株式会社サンワ(以下「サンワ」)と共に、サンワが事業主となる新築賃貸住宅「エコンフォート前橋駒形」(以下、本物件)において、雨天時でも約10日間の停電に対応可能(※3)な、「全天候型3電池連携システム」を搭載した、ネット・カーボンマイナス賃貸住宅の実用化に向けた実証実験を開始いたしました。本物件の実証実験は、ご入居者様が日常生活で使うエネルギーや設備の稼働率、余剰電力量のデータを分析することで、ネット・カーボンマイナス賃貸住宅の実用化を目指し、賃貸住宅の脱炭素化による環境負荷の低減に寄与いたします。

※3.水道、ガスが使える場合。

・当社は、分譲マンションに設置されるディスポーザーを利用した、100戸クラスのマンションに導入可能な小型バイオガス発電システムを開発し、マンションの一次エネルギー消費量の削減とレジリエンス性の向上を実現いたします。ディスポーザー搭載マンションに向けて、浄化槽を小型バイオガス化装置に置き換え、得られたバイオガスをコージェネレーションで熱電併給するものです。この開発により、現在高層マンションにおける創エネ設備が太陽光発電しかない状態を改善、BEI値の更なる改善を図り、ZEH-M化を推進いたします。

 

・当社は、分譲マンションをご検討いただくお客様の利便性の向上や竣工物件の販売促進のため、2020年2月より一部の分譲マンションにおいて、VR(※4)モデルルームを導入いたしました。CGで制作したモデルルームや360度カメラで撮影した実際のモデルルームを、場所や時間の制約なくWeb上で内見が可能ですが、地方や郊外でのマンション居住を検討されているお客様や、パソコンやスマートフォンなどを通じてご自宅等からWeb上でモデルルームを気軽に内見したいというお客様のニーズに応えるため、2023年5月以降に販売を開始(※5)するすべての分譲マンション「プレミスト」において、VRモデルルームを導入することといたしました。

※4.「Virtual Reality」の略で、「仮想現実」などを指す。

※5.一部の分譲マンションではすでに導入済。

なお、当事業に係る研究開発費は4,485百万円です。

 

(2) 商業施設事業、事業施設事業、環境エネルギー事業、その他の事業

・当社は、株式会社イシモク・コーポレーションと共同で、植栽ユニットを搭載した独自の個室型ワークブース「ハコノワ」を開発し、2023年7月より販売を開始いたしました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響で、社内外のコミュニケーションにWeb会議を利用する頻度が増えたことで、騒音対策やスピーチプライバシー(※6)の観点から、個室型ワークブースの需要が堅調に推移しております。「ハコノワ」は、当社グループがオフィスビルを建築・リノベーションする際に、お客様のニーズに合わせて提案いたします。

※6.第三者に対し会話が漏れ聞こえてしまうことで発生する機密情報や個人情報の漏えいを防ぐこと。

・当社と株式会社デンソー、アスクル株式会社、エレコム株式会社、タカラスタンダード株式会社、三井倉庫ロジスティクス株式会社、安田運輸株式会社の7社は、長距離輸送の効率化に貢献する幹線中継輸送サービス「SLOC(Shuttle Line Of Communication)」の実証実験を2023年7月に実施いたしました。「SLOC」は、荷物を積載する荷台(コンテナ)部分を脱着できるスワップボディコンテナを用いた幹線中継輸送サービスで、一つの行程に中継地点を設け、複数のドライバーで交代しながら輸送する仕組みです。ドライバー一人当たりの拘束時間短縮により、荷主としての労働環境の確保と運輸を両立する方法として期待されております。2024年問題で不足が見込まれるドライバーの確保や環境負荷低減にも貢献いたします。

・大和ハウスグループの3社(当社、南国アールスタジオ株式会社、株式会社トラス)はBIM(※7)を使用して作成した、商業施設や事業施設などの建物の3次元モデルを、XR(※8)技術に活用することで、メタバース(仮想空間)「D’s BIM ROOM(ディーズビムルーム)」として可視化させる技術を開発いたしました。「D’s BIM ROOM」によって建設予定地で実寸大の外観イメージなどを体感でき、いつでもどこでもメタバース内で打ち合わせが可能となります。また、株式会社トラスが提供する建材データベースに登録されているアイテムから、実寸大で色味や建材の候補を比較して決めることが可能となり、イメージギャップの解消にもつながります。

※7.デジタルモデリングを使用して、初期設計から建設、保守、最終的に廃棄に至るまで、建築資産のライフサイクル全体にわたる情報管理の仕組み。

※8.AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)といった現実世界と仮想世界を融合する表現技術の総称。

・当社は、様々な用途でのZEB(※9)化を推進するため、初期設計段階で利用するZEB設計支援ツール「D-ZEB Program」と、詳細設計段階で利用する「BIM連携ZEB設計ツール」を同時に開発し、2023年12月、本格運用を開始いたしました。これにより、ZEB検討に必要な省エネルギー性能の計算時間を、従来の数週間から1時間以内に短縮(※10)することができ、平面図しかない設計初期段階からのZEB提案や、設計変更時のZEB化の検討にも迅速に対応可能となります。当社は、設計段階の川上から川下までスピーディーで質の高いZEB提案を可能とすることで、2030年度に当社が建築する建物のZEB率100%を目指し、カーボンニュートラルの実現に貢献いたします。

※9.ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略称。建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと。

※10.延べ面積2,000㎡程度の事務所の場合。

 

・当社が行っている熊本県阿蘇市にある森林住宅地「ロイヤルシティ阿蘇一の宮リゾートASONOHARA及び草原育成プロジェクト」が、一般社団法人いきもの共生事業推進協議会が主催する「第3回ABINC賞」において「特別賞」を受賞いたしました。この地区は阿蘇くじゅう国立公園内にあり、地域特有の草原景観の保全・創出に取組んでおります。草原エリアでは、専門家による生物のモニタリングを実施しながら草刈りなどの管理を行い、絶滅危惧種のナガミノツルキケマンやカヤネズミの球巣などの草原構成種を確認いたしました。今後も、生物多様性に配慮した管理手法の蓄積と地域の方々と連携した自然保全活動を継続し、自然と共生した社会の実現に貢献してまいります。

・株式会社フジタ(以下「フジタ」)は、住友重機械エンバイロメント株式会社・国立大学法人東北大学・国際農林水産業研究センター・福山市との共同研究体により応募した「リン吸着バイオ炭によるリン回収及び炭素貯 留技術の実証事業」 (以下、「本実証事業 」という)が、国土交通省の令和5年度補正水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)(※11)「炭化物により下水汚泥資源からリンを回収する技術」(※12)に採択されました。今後、バイオ炭(※13)を用いて下水処理場の脱水ろ液(※14)等からリンを回収することで、より安定的かつ経済的に下水汚泥資源の肥料利用を図る技術について実証事業を実施し、脱炭素・資源循環型の持続可能な社会の実現のために貢献してまいります。

※11.国土交通省ウェブサイト「下水道革新的技術実証事業」より。

※12.国土交通省ウェブサイト「下水汚泥資源の肥料利用促進に向けて技術実証に取り組みます~令和5年度補正予算により、B-DASH技術を新たに採択~」より。

※13.燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物。

※14.下水汚泥処理フローの脱水工程において固形分(脱水汚泥)と分離された液体。

・フジタは、株式会社地球科学総合研究所と共同で、山岳トンネル掘削のために実施する発破時の振動を利用し、トンネル切羽の地質等の状態(性状)変化を毎日、天気予報のように予測して安全性向上につなげる「切羽予報」を開発いたしました。フジタ施工の新三国トンネル工事(※15)において基礎実験を行い、令和元年~4年度横断道羽ノ浦トンネル工事(※16)にて本技術を適用し、有用性を確認の上、実用化に成功いたしました。トンネル内の切羽の性状変化を天気予報のようにリアルタイムに予測、作業関係者に周知することで、従来に比べ、崩落のリスクを低減し、作業の安全性向上に寄与しております。

※15.発注者:国土交通省関東地方整備局高崎河川国道事務所、2021年3月竣工

※16.発注者:国土交通省四国地方整備局徳島河川国道事務所、2023年7月竣工

・フジタは、国立大学法人東京大学大学院工学系研究科、株式会社アイスクウェアド、株式会社清和ビジネス、株式会社ダイスネクスト、及び明豊ファシリティワークス株式会社と「既存建物情報のデジタル化による空間価値創造(キャンパスマネジメントDX)」社会連携講座(※17)を開設いたしました。本講座は、スクラップ&ビルドによる旧来の施設更新のあり方を脱却するという目的意識のもと、センシングやモニタリング、XR技術やゲームエンジン等の技術を活用し、デジタル空間情報の集約・分析手法やそれに基づく施設マネジメントのための定量的評価・運用手法を確立することで、既存建物群のハード/ソフト両面からの新たなマネジメントのあり方の提案と実証を目指すものです。

※17.社会連携講座とは、公共性の高い共通の課題について、東京大学と共同して研究を実施しようとする民間等外部の機関から受け入れる経費等を活用して設置される講座をいい、民間機関等と連携することにより、東京大学における教育研究の進展と充実を図り、人材育成をより活発化させ、もって学術の進歩及び社会の発展に寄与することを目的としている。

・大和リース株式会社(以下「大和リース」)は、東京製鐵株式会社と、柱・梁・床の構造材に電炉材を採用することで、従来の立体駐車場建設と比べてCO₂排出量を約55%削減する「環境配慮型 自走式立体駐車場」を共同開発し、大和リースにて販売を開始いたしました。建設事業で発生するCO₂排出量の削減は、建設に携わる企業だけでなく、施設を所有されるお客様にとっても不可欠な課題となっております。本商品は、高炉材(※18)に比べ鋼材製造時のCO₂排出量を大幅に抑制できる電炉材(※19)を使用することで、脱炭素社会の実現と、2050年のカーボンニュートラルの達成に貢献いたします。

※18.高炉材は鉄鉱石(酸化鉄)の中から鉄を取り出す際、石炭(コークス)を用いた酸素の除去(還元)が必要となり、その際に大量のCO₂を排出する。

※19.電炉材は鉄スクラップを電気で融解して鉄を製造するので、発電の際に生じるCO₂が主な排出となり、鋼材製造時のCO₂排出量が抑えられる。

 

・株式会社フレームワークスは物流施設の人手不足への対策としてロボットやマテハン機器(※20)を導入した後に発生する課題解決策として、「PeakPerformPro(ピークパフォームプロ)」を開発いたしました。本ソリューションでは、物流施設運営全体の効率的な運用を実現するため、「物流施設の整流化(※21)」に着目し、物流施設内における整流化を阻害する要因を素早く正確に把握することを起点に、各施設の能力を最大限に発揮した状態を維持することを目指します。今後当システムに蓄積されたデータを活用、分析することで、物流施設全体の更なる効率化・生産性向上の実現に向けたサービスを提供いたします。

※20.物流業務を効率化するために用いられる作業機械の総称。

※21.生産や物流工程において、モノや情報の停滞を排除し、淀みなく流れている状態にすること。

なお、当事業に係る研究開発費は6,430百万円です。