文中の将来に関する事項は、当期末現在において当企業グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当企業グループは、Strategic Business Innovator(戦略的事業の革新者)として、創業時から常に時流を捉え、革新的な事業を創造することを目指しています。同時に、企業は社会に帰属しているからこそ存続できるという考えのもと、事業を通じて、社会の維持・発展に貢献することを志しています。
また、当企業グループには、持続的に成長する企業グループであり続けるため、今後も継承すべきと考える企業文化のDNAが4つあります。それは、常にチャレンジし続けるために「起業家精神を持ち続けること」、「スピード重視」の意思決定と行動、過去の成功体験に捉われず「イノベーションを促進すること」、環境の変化を敏感に察知して「自己進化し続けること」です。
そして、全ての役職員が共有する規範として、当企業グループでは5つの経営理念を掲げています。
当企業グループの5つの経営理念
正しい倫理的価値観を持つ
「法律に触れないか」、「儲かるか」ではなく、「それをすることが社会正義に照らして正しいかどうか」を判断基準として事業を行う。
金融イノベーターたれ
革新的技術を導入し、より顧客便益性を高める金融サービスを提供することで、従来の金融のあり方に変革を与える。
新産業クリエーターを目指す
21世紀の中核的産業の創造および育成を担うリーディング・カンパニーとなる。
セルフエボリューションの継続
「創意工夫」と「自己変革」により経済環境の変化に柔軟に適応すべく、自己進化し続ける。
社会的責任を全うする
当企業グループ各社は、社会の一構成要素としての社会性を認識し、さまざまなステークホルダー(利害関係者)の要請に応えつつ、社会の維持・発展に貢献していく。
当企業グループでは、企業価値は顧客価値の創出を土台に、株主価値及び人材価値を加えた3つの価値が相互に連関する好循環を生むことによって増大していくと認識しています。創業以来、掲げてきた価値観である「顧客中心主義」を徹底的に実践することで、お客様のために、投資家のために、より革新的なサービス、ビジネスの創出に努め、顧客価値、株主価値、人材価値の総和たる企業価値の極大化を追求します。
(2)経営環境及び対処すべき課題等
当企業グループの組織構築の基本観
当企業グループの事業構築は6つの基本観、即ち(1)「顧客中心主義」の徹底、(2)「企業生態系」の形成とシナジーの徹底追及、(3)革新的技術に対する徹底的な信奉(4)近未来を予見した戦略の策定と遂行(5)公益は私益に繋がる(6)金融を核に金融を超える、に基づき行われています。
「顧客中心主義」の徹底とは、より安い手数料・より良い金利でのサービス、金融商品の一覧比較、魅力ある投資機会、安全性と信頼性の高いサービス、豊富かつ良質な金融コンテンツの提供といった、真に顧客の立場に立ったサービスを徹底的に追求するものです。
「企業生態系」の形成とシナジーの徹底追及とは、「全体は部分の総和以上である」「全体には部分に見られない新しい性質がある」という「複雑系の科学」の二大命題をもとに、当企業グループを構成する企業間でシナジーを発揮することで、単一の企業では成し得ない相乗効果と相互進化による高い成長ポテンシャルを実現する「企業生態系」を構築し、当企業グループ全体で飛躍的な成長を実現させるものです。
革新的技術に対する徹底的な信奉とは、テクノロジーこそが社会に新たな潮流を生み出すとの考えのもと、フィンテック、AIやブロックチェーンをはじめとした先端領域において、革新的技術を有する国内外の有望なベンチャー企業に「投資」し、投資先企業の技術等をグループ内の事業会社へ「導入」、そしてそれらの技術を業界横断的に「拡散」するという3つのプロセスを通じ、持続的な事業拡大を目指すものです。
近未来を予見した戦略の策定と遂行とは、効率的なシナジーを生むとともに相互に一体感を高めるべく、社会問題や国家目標などに合致し、時代の変遷を踏まえて当企業グループを挙げて取り組む「全体戦略」を策定し、その全体戦略が効率的に各子会社に伝播され、各々に応じた具体的な「個別戦略」として遂行されることで、統一的な目標を達成する戦略です。
公益は私益に繋がるとは、社会の一員としてどんなに事業が成功しても「公益」が達成されなければ意味がなく、「社会なくして企業なく、企業なくして社会なし」という考えのもと、「世のため人のため」となる「公益」に資する企業活動を続けることは、自ずと当企業グループの利益にも繋がることを意味しています。
また金融を核に金融を超えるとは、金融業は情報産業そのものであり、財貨・サービスの動きと金融は表裏一体であることから、金融分野を超えて、金融業の強みを発揮できる他の事業分野にも積極的に進出し、様々な生活局面において必要となる財・サービス・情報を包括的に提供することを目指すものです。
これらの基本観の実践を通じ、当企業グループは時代の変化を逸早く察知し、その変化に対応する戦略を実行することで、事業領域や事業規模を加速度的に拡大してきました。例えば、証券・銀行・保険を中心とする金融サービス事業では、銀証連携を始めとしたシナジーの発揮を通じて、競合他社を大きく上回る口座数や預り資産などの顧客基盤を築き上げ、高いマーケットシェアを獲得し、外部の各種顧客満足度調査においても好評価をいただいています。日本の国家戦略でもある地方創生の領域においては、全国各地の地域金融機関との提携を拡大し、それによって、地域金融機関に質的転換を促すことで、地域金融機関の収益力強化とそれに伴う地域経済の活性化に貢献する取り組みを進めています。また金融業と大きなシナジーを発揮できる分野として、次世代の金融商品にもつながるデジタルアセットに関連する事業を展開しているほか、新たに半導体に関連する事業にも進出しております。
目標とする経営指標
当企業グループでは、資本効率を考慮しながら、「金融イノベーター」や「新産業クリエーター」として、事業の「選択と集中」で回収した資金を成長分野や革新的な事業展開を可能とする分野へ再投資することで、グループ全体としての持続的な成長を目指しています。このように、経営資源を国内外の注力分野に投下することで、さらなる利益成長につなげていきます。
また、当企業グループは、株主への利益還元を充実させることを、株主価値を高めることにつながる重要な経営施策の1つとして捉え株主還元を決定しています。当社の株主還元は、配当金総額に自己株式取得額を加えた総還元額を、当面の間は金融サービス事業において子会社等株式売却益などの特殊要因を除いた税引前利益の30%程度とすることとしています。
このほか、当企業グループが創業以来掲げる「顧客中心主義」の考え方に基づき、常に顧客の目線に立った商品ラインナップ拡充や、便益性の高い多様なサービスの提供を図ることで、業界最高水準のサービス提供を目指しています。そのため、当企業グループの金融サービス事業各社では、第三者評価機関が実施する顧客満足度調査において、継続して高評価を得ることを志向しています。
中長期的な経営戦略
当企業グループは、1999年の創業以来、日本国内においてインターネットをメインチャネルとし、証券・銀行・保険をコア事業とする金融サービス事業において企業生態系の構築を進め、現在世界的に見ても極めてユニークな総合金融グループとなっています。また、創業時から、国内外において次世代の成長産業への注力投資やアジア地域を中心とした成長著しい国々への投資を積極的に行い、国内外のベンチャー企業等の育成にも取り組んできました。
近年、金融業界だけでなく様々な業界において、AIやブロックチェーン・分散型台帳技術(DLT)を中心にそれらと親和性の高いビッグデータ、IoT、ロボティクス等の先進技術の導入が急速に進んでいます。そうした中、今後も引き続きこれらの先進技術における有望な企業への投資や提携を積極的に進めると共に、当企業グループの各金融サービスでこれらの先進技術を活用した新サービスの開発や新たな金融ビジネスの創造に向けた取り組みを強化し、企業生態系の組織優位性を最大限に発揮する事業展開によって、飛躍的な成長を図ることが重要であると考えています。
当企業グループが事業展開において特に注力する領域
1. 株式会社SBI証券におけるゼロ革命がもたらすポジティブな効果を金融生態系全般に波及
株式会社SBI証券においては、2023年9月30日注文受付分より、オンラインでの国内株式売買手数料等を無料にするゼロ革命を開始しました。ゼロ革命により、株式会社SBI証券は試算で約158億円の収益を逸失しましたが、4年超にわたる収益源の多様化に向けた諸施策が奏功し、前期比で増収増益を達成することが出来ました。
特に、当連結会計年度末時点の信用取引建玉残高ならびに投資信託残高がそれぞれ過去最高を更新したことで、当連結会計年度通期の金融収益ならびにその他受入手数料に含まれる投資信託の信託報酬額が過去最高を達成したほか、FX収益や外債の販売が大きく寄与し、トレーディング収益も当連結会計年度通期で過去最高となったことが大きく貢献しています。
さらに、外国株式や先物、個別株オプション等の商品の取引拡大を図るほか、引受・募集・売出しやM&A仲介等のホールセール向けビジネスの更なる強化に取り組むことで、収益源の更なる多様化を図っていきます。
またゼロ革命の実施により、株式会社SBI証券の新規口座開設件数が2024年1-3月に約77万件を記録するなど口座獲得ペースは加速度的に増加しており、当企業グループの証券口座数は2024年3月末時点で国内最多の1,245万件となっています。株式会社SBI証券に口座を開設したお客さまは株式会社SBI証券内のその他の金融商品へ興味の幅が広がることが見込めるだけでなく、グループ企業が提供する商品・サービスを認知する入口としてグループ各社への送客につながるため、当連結会計年度末時点で5,000万件を超えている当企業グループ全体の顧客基盤の更なる拡大を図っていきます。
2. 日本の金利上昇局面を見据え、銀行事業へ経営資源を傾斜配分し、収益力の徹底強化を推進
株式会社SBI新生銀行では、2022年10月の株式会社SBI証券との同時口座開設開始以降、預金口座数の伸びが加速し、2023年12月単月においてはリテール口座の純増数が初めて4万口座を突破しました。新規の口座開設のうち、7割超が株式会社SBI証券からの送客によるもので、株式会社SBI証券との銀証連携が株式会社SBI新生銀行の個人顧客基盤拡大に大きく寄与しています。また法人領域においても、営業活動の活性化や当企業グループ提携先との連携強化等により事業法人・金融法人へのネットワークが飛躍的に拡大しています。
このような着実な成果もあり、株式会社SBI新生銀行を中核とする当企業グループの銀行事業は、連結業績に対する寄与度ですでに証券事業を上回っていますが、日銀がマイナス金利政策を解除し、中長期的に金利上昇が見込まれる中、金利上昇からポジティブな影響が期待できる銀行事業の収益力を更に強化するべく、株式会社SBI新生銀行のオーガニックな成長だけでなくM&Aによる資産規模の更なる拡大を目指すとともに、株式会社SBI新生銀行をコアとする広域地域プラットフォーマー化を目指して地域金融機関との連携を一層強化するなど、「第4のメガバンク構想」を徹底推進します。
なお、株式会社SBI新生銀行による公的資金の返済は、当企業グループの大義であり今後の飛躍的成長の契機になると考えています。株式会社SBI新生銀行では、公的資金返済の実現に向け進めている収益力強化への取り組み等が短期間でかなりの成果を生み出しており、当連結会計年度の連結業績において、13年ぶりに実質業務純益が1,000億円を突破致しました。返済に向けた道を着実に歩んでいると考えています。
3. 高い経済成長が見込まれる国へ経営資源を投入し内外一体化を推進
当企業グループでは、東南アジアを中心に証券・銀行といった金融サービスを提供しており、高い経済成長にも支えられ、各社は既に収益貢献する段階に至っています。また中東・アフリカ・インドなどのグローバルサウス地域においても、有力パートナーと提携しながら積極的な投資活動などを行っております。
また海外事業の更なる収益力強化に向けて、新たに海外事業統括本部を設置し、半年程度の期間をかけてグループの海外事業を一元管理できる体制を整え、内外一体化の考え方の下でグループ中から集めた各事業領域におけるエキスパート人材を適材適所で投入することで、海外事業からの利益がグループ全体の連結税引前利益の20~30%とすることを当面の目標としています。
4. デジタルアセット領域の急成長を促進すべく、様々な新サービス・新プロダクトを積極展開
SBI VCトレード株式会社や株式会社ビットポイントジャパンといった暗号資産取引業者では、頻繁な売買を行わずとも、暗号資産を預けておくだけで報酬を受け取ることができるステーキングサービスなど、様々な顧客ニーズに対応できるサービスを提供しています。
また当企業グループでは、米ドル建てステーブルコインUSD Coin(USDC)を発行する米Circle社と提携し、日本国内でのUSDC流通に向けて事業を推進しています。ステーブルコインは、法定通貨の値動きに連動した暗号資産の一種で、多くの暗号資産に共通する課題である値動きの激しさを解消しており、現実世界と仮想空間の双方において決済などの領域で今後の利用拡大が見込まれています。
大阪デジタルエクスチェンジ株式会社では、日本初となるセキュリティトークン(ST)の流通市場であるSTARTを2023年12月に開設いたしました。STとは、ブロックチェーン技術を用いた「デジタル化された証券」で小口化や取引が容易という特長を持っており、STARTでは、現在上場している不動産のSTに加えて社債のSTなども取り扱うべく検討を進めております。
このように、ブロックチェーン技術を活用した暗号資産及びその派生商品は様々な応用可能性を持っており、当企業グループでは今後も革新的な商品の創出に尽力していきます。
5. 日本政府が国家産業と位置付けている半導体関連事業へ参入
産業の米とも言われる半導体は、日本政府が国家産業と位置付けており、政府が目指すデジタル社会の実現にとっても不可欠なものです。
しかしながら世界的な半導体需要の増加が見込まれる中、半導体分野での米中による覇権争いや半導体ファウンドリの台湾一極集中による地政学的リスクの増大など供給サイドを取り巻く情勢は不安定化しており、日本における半導体自給力の向上はますます重要な課題となっています。
また日本は、半導体製造装置等において高い国際シェアを持つ半導体関連企業が多く存在するほか、自動車、バイオ、AI等半導体を大量に必要とする企業も多く、豊富な水、土地、物流、電力等のインフラが充実していることから半導体ファウンドリの立地として優れています。
このような環境下で半導体製造のノウハウを保有する台湾の半導体ファウンドリ大手PSMCとのご縁があり、当企業グループが築き上げてきた金融・投資機能が半導体事業の展開において大きな強みとなり、半導体事業と金融各社は法人顧客開拓の面でも相互シナジーを期待できることから、半導体分野に参入する好機と判断し、日本国内で半導体ファウンドリを建設することを2023年7月に発表致しました。
2023年10月には半導体ファウンドリの建設予定地を宮城県大衡村に決定し、清水建設株式会社を設計・施工を担うゼネコンとして、2025年の着工および2027年のファウンドリ稼働開始に向けて、建設予定地におけるボーリング調査を2024年3月より開始するなど、半導体ファウンドリの建設に向けた準備を着実に進めております。
当企業グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当期末現在において当企業グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ
当企業グループは創業以来、「企業は社会の一構成要素であり、社会に帰属しているからこそ存続できる」という変わらぬ考えのもと、社会の維持・発展に貢献することを目指しています。
常に時流を捉え、世のため人のためとなるような革新的な事業を創造することこそが、社会的責任の遂行と持続的な成長の要であると考えています。
また、人に徳があるように企業にも「社徳」があり、企業としての社会的責任を果たすことで「社徳」が高まり、企業を取り巻く幅広いステークホルダーから信頼される「強くて尊敬される企業」となると考えています。
こうした方針や考え方は、当企業グループの経営理念に適うものでもあり、常に社会に必要とされる企業グループであり続けるため、役職員は事業活動の推進においてこの企業哲学を反映させています。
当企業グループは、社会的正義に照らして正しいことを実践するとともに、“Strategic Business Innovator(戦略的事業の革新者)”として、現状維持で良いのか常に自らに問いかけることで、今後も様々な事業活動を通じて社会課題の解決に貢献し、持続可能な社会の実現と継続的な社会価値の向上を目指していきます。
①ガバナンス
当社は、業務執行取締役で構成され代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を当社取締役会の下に設置し、2021年12月21日付で「サステナビリティ基本方針」を策定しています。同委員会は、原則年2回以上開催し、当企業グループの経営戦略の一環として、「サステナビリティ基本方針」に基づきサステナビリティに関する戦略的な取り組みを議論し決定するだけでなく、取り組み状況の確認・審議を行っています。同委員会は、その内容を必要に応じて年に2回以上、適時・適切に取締役会に報告し、取締役会では報告を受けた内容について意見交換の上、適宜指示・提言・助言などを行い、サステナビリティへの取り組みを監督しています。また、同委員会での審議を経て決定されたサステナビリティ施策を、同委員会の事務局を担う「サステナビリティ推進室」を通じて、グループ各社に連携し当企業グループ全体に展開・推進しています。
当社はこのように、社会課題解決に向けた取り組みを適切に管理する体制を整え、施策の更なる実効性を確保しています。
なお、サステナビリティ委員会の事務局を担うサステナビリティ推進室では、社内外の情報を収集した上で、当企業グループの課題及び問題の把握に努め、討議しています。
<当社 サステナビリティ推進体制図>
サステナビリティ委員会における主な審議・決定事項(2024年3月期)
2023年3月期におけるGHG排出量(Scope1~3)と2050年ネットゼロと2030年中間目標に向けた削減量の進捗確認
マテリアリティ(重要課題)の追加と達成したKPIの見直しについて
サステナビリティに関わる情報拡充・各種施策について
各種イニシアティブ等への賛同・加盟の検討について
②戦略
当社では、実業(本業)の事業活動を通じて社会に貢献することを第一の目標とするのは当然として、より直接的にも社会に貢献するような戦略を構築し実践することで企業の社会性は持続的に高まると考えています。
本業では、革新的技術に対する徹底的な信奉により、テクノロジーの力で世の中の様々な不条理な部分を、特に金融面で変え、新たな付加価値を創出していくことが当企業グループの大きな事業ミッションです。また、これまでベンチャー企業が成長資金を得られにくい状況下で、当企業グループのベンチャーキャピタルがリスクキャピタルを供給して、ベンチャー企業を育てていくことでも社会貢献をしています。
もう一方で、児童福祉も同じく深刻な問題で、それを微力ながら改善することができれば、それは当企業グループの進めている大きな事業ミッションとも一致するのではないかと考え、公益財団法人SBI子ども希望財団を通じた児童福祉の向上に取り組み続けています。
このように、当企業グループではこれまでも様々な事業活動を通じて社会課題の解決に貢献してきましたが、昨今、社会課題の解決による持続可能な社会の実現と、持続的な企業価値向上の両立を図ることの重要性がより一層増していることを踏まえ、2021年11月の「サステナビリティ委員会」ならびに「サステナビリティ推進室」の設置以降、当企業グループのサステナビリティの推進をより一層強化しています。そして、「課題解決に向けてどのような貢献が可能か」「課題解決に向けた取り組みが中長期的なグループ戦略とアラインするか」等の観点から優先的に取り組むべき課題を特定し、「SBIグループのマテリアリティ(持続的な企業価値向上のための重要課題)」として策定しています。
SBIグループのマテリアリティ |
具体的な取り組み例 |
新たな社会潮流や顧客ニーズを捉えた付加価値の創出 |
・一人ひとりのライフスタイルに沿った資産形成機会の提供 ・顧客便益性を一層高める金融サービスの提供 ・デジタルアセットを基盤とする企業生態系の構築 |
新産業の育成と技術革新への貢献 |
・21世紀の中核的産業の創造及び育成 ・革新的な金融サービスの提供 ・業界横断的な技術の拡散 |
ステークホルダーと協働した社会課題の解決と経済の活性化 |
・地方創生に寄与する事業の推進 ・パートナー企業とのアライアンスの拡大と深化 ・価値共創によるイノベーションの促進 |
豊かで健康的なサステナブル社会の実現 |
・サステナブルファイナンスの提供 ・グリーン・イノベーションやESGを意識したインパクト投資や、ライフサイエンス、ヘルスケア関連の有望なベンチャー企業への投資 ・超高齢社会への対応として、5-アミノレブリン酸(5-ALA)事業等を通じた健康支援 ・医療情報のデジタル化やビッグデータの活用による医療の高度化に貢献 |
将来を担う世代への支援 |
・公益財団法人SBI子ども希望財団を通じた児童福祉の充実及び向上への寄与 ・学校法人SBI大学を通じて次世代を担う人物の育成 |
多様な価値観を尊重し受け入れる組織風土の醸成 |
・ダイバーシティ&インクルージョンの推進 ・従業員の能力開発を通じた人材価値の継続的な向上 ・個性や人との違いを尊重できる柔軟な働き方の整備 |
持続的成長を実現する企業体制の強化・充実 |
・透明性、独立性が確保された意思決定プロセスの構築 ・事業機会とリスクを想定した経営戦略の立案やリスクマネジメントの実行 ・内部統制システムの整備と適正な運用 |
③リスク管理
当企業グループは、サステナビリティへの対応の不備等を、経営に多大な影響を及ぼす経営戦略上の重要なリスクであると認識し、サステナビリティに係るリスクと機会の特定を行っています。
当社においては、リスク管理の定常的な枠組みとして企業活動を阻害する可能性のあるリスクを把握し、適切に評価・管理するため、リスク管理に関する責任者としてリスク管理担当役員を定めるとともに、リスク管理部門としてグループリスク管理統括部を設置し、統合的なリスク管理を実施しています。グループリスク管理統括部では、サステナビリティに起因するリスクを認識し、
・信用リスク(投融資先の財務状況の悪化等により、投融資資産の価値が減少又は消失し損失を被るリスク)
・市場リスク(金利・株価・為替・不動産価値等の変動により損失を被るリスク)
・オペレーショナルリスク(内部プロセス・人・システムが不適切であること、もしくは機能しないこと、又は外生的事象が生起することから生じる損失に係るリスクならびにレピュテーションリスク)
・流動性リスク(当企業グループの財務内容悪化等により必要な資金が確保できない場合や、通常より著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより損失を被るリスク)
等が齎す影響を総合リスク管理の枠組みに統合し、サステナビリティ推進室との連携、リスクの特定と対応の深化を実施しています。また、サステナビリティに係る新規リスクが想定される、もしくは顕在化した場合には、当該リスクの発生部門又は発生会社において対応・管理方法を構築し、リスク管理統括部門が適宜モニタリングを行い、サステナビリティ推進室と連携します。
サステナビリティ推進室では、リスク管理統括部門から連携を受けたリスクの対応課題や対応方針のみならず、中長期的な企業価値向上を目的とし、機会の観点からマテリアリティや関連する取り組みについて討議しています。また報告を受けたサステナビリティ委員会では、具体的な施策について議論を行い、経営に及ぼす影響を総合的に判断し、優先すべき対応事項などを議論しています。サステナビリティに係るリスクと機会は、当企業グループの課題やステークホルダーからの対応要請ニーズ、事業における影響評価などを総合して特定・管理し、マテリアリティやKPI設定に活用するなど、当企業グループ全体で取り組んでいます。
<総合リスク管理体制図>
④指標と目標
「SBIグループのマテリアリティ」における一部の取り組みについては目標を設定しています。上記ガバナンスにおいて各進捗状況をモニタリングし、達成された目標については随時アップデートを行います。
SBIグループのマテリアリティ |
目標 |
新たな社会潮流や顧客ニーズを捉えた付加価値の創出 |
・お客様サービスにおいて顧客満足度評価など第三者による評価で高水準を維持する ・SBI証券でのネオ証券化は、2024年3月期上半期中の具現化を目指す→2023年9月30日発注分から、「ゼロ革命」と題して、インターネットコースのお客様を対象として、オンラインの国内株式売買手数料の無料化を実施。その後、サービス内容を順次拡充 |
新産業の育成と技術革新への貢献 |
・最先端のサービス・テクノロジーへ投資を行う1,000億円規模の新ファンドを2023年度に設立する→最大1,000億円規模の新たな旗艦ファンド「SBIデジタルスペースファンド」を設立し、2023年11月から本格的に運用を開始 ・セキュリティ・トークン(ST)等の次世代金融商品の普及に向けて、ST流通市場を2023年内に創出→2023年12月25日より大阪デジタルエクスチェンジがセキュリティトークン取引に係る私設取引システムである「START(スタート)」において売買取引を開始 ・次世代金融商品であるセキュリティ・トークン(ST)の普及に向けて、大阪デジタルエクスチェンジは2026年3月までに取扱時価総額1,000億円を目指す |
ステークホルダーと協働した社会課題の解決と経済の活性化 |
・日本全国の事業承継支援のため、2025年までに累計で1,000億円規模のファンド設立を目指す ・地域金融機関のシステムコストの削減及び平準化に向けて次世代バンキングシステムを開発し、2030年度までに地域金融機関10行での導入を目指す |
豊かで健康的なサステナブル社会の実現 |
・2030年度末までに累計5兆円のサステナブルファイナンスを組成する ・当企業グループは国家目標である2050年カーボンニュートラル実現に向けて、当企業グループの温室効果ガス(GHG)排出量(Scope1、2)を2050年度までにネットゼロとすることを目標とし、中間目標として2030年度までに2018年度比で33%削減する |
多様な価値観を尊重し受け入れる組織風土の醸成 |
・SBIホールディングスの女性管理職比率は2025年まで継続して20%以上を維持する ・当企業グループの外国籍社員比率は2025年までに40%以上を目指す |
持続的成長を実現する企業体制の強化・充実 |
・グループ全体でのコンプライアンス体制構築のための会議や役職員向けのコンプライアンス研修を定期的に実施する ・年に1回以上、取締役会の実効性に関する分析・評価を実施し、結果を公表する |
また、公益財団法人SBI子ども希望財団における活動としては、被虐待児童が生活する児童養護施設の小規模化への助成事業、児童福祉施設等への助成や児童養護施設の職員を対象とした研修、施設退所後の子どもたちの自立支援のほか、オレンジリボン運動の推進など児童虐待防止啓発活動も積極的に行っています。本財団による助成実施金額は、2006年3月期から2024年3月期までの累計で約12億1,260万円です。施設職員への研修は19回を終了し、卒業生は約1,900名となっています。また、SBI子ども希望財団は児童虐待防止の社会的啓発運動である「オレンジリボン・キャンペーン」を後援しており、毎年11月の虐待防止強化月間には当企業グループの役職員一同、オレンジリボンの着用や社内外への啓発活動に取り組んでいます。2024年3月期の当企業グループ社員による児童虐待防止啓発活動であるオレンジリボングッズの購入額は約140万円となりました。
<SBI子ども希望財団による助成実績(2006年3月期~2024年3月期)>
施設(児童養護施設や乳児院等)への助成(累計) |
1,020百万円 |
助成を実施した施設数(延べ) |
713施設 |
自立支援のための助成(累計) |
171百万円 |
福祉団体等活動助成事業(累計) |
21百万円 |
(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)
①ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティの推進体制に組み込まれています。詳細については「
②戦略
当企業グループは、気候変動がもたらすリスクを特定するとともに、脱炭素社会の実現に向け、グループの各事業会社における多様なソリューション提供を通じて、環境・社会に関する課題解決に貢献することを新たな事業機会と捉えています。リスクと機会の特定とシナリオ分析においては、気候変動を社会が直面する重要な課題の一つとして捉え、地球の平均気温が産業革命以前に比べて4℃、1.5℃上昇することを想定した2つのシナリオを用いて、気候変動に係るリスクと機会の特定を行っています。当企業グループの主要事業である証券事業および投資事業(プライベート・エクイティ)については2030年度における財務インパクトを試算し、気候変動により被る損失は軽微であると認識しています。銀行事業に関してはSBI新生銀行が2050年までの財務インパクト(累積)を試算しています。
また、温暖化の国際枠組み「パリ協定」で掲げられた目標に沿って、産業革命前より世界全体の気温上昇を1.5℃以内に抑えることに貢献することが重要であると認識し、当企業グループにおける温室効果ガス(GHG)排出量の可視化にも取り組んでいます。
<気候変動に伴うリスク>
移行リスク(気候変動対策を目的とする規制強化や顧客行動の変化による影響)と物理的リスク(異常気象の激甚化による資産の毀損や長期的な気候パターンの変化が齎す影響)として、以下に挙げるものを認識しています。
当社および各事業に共通するリスク
リスク:
区分 |
種類 |
想定されるリスク |
時間軸 |
影響度 |
|
4℃ |
1.5℃ |
||||
移行 |
法制 |
炭素税をはじめとするカーボンプライシングの導入、再生可能エネルギーの使用や省エネに係る政策によるコストの増加 |
短期~ |
- |
低 |
技術 |
以下の<主要事業に係るリスク>をご参照ください |
|
|
|
|
評判 |
環境配慮型ビジネスへの転換を行わない場合の当社のレピュテーションリスクの増加(例:資金調達への影響、顧客流出) |
短期~ |
低 |
高 |
|
物理的 |
急性 |
異常気象(台風、洪水、高潮等)による店舗及びオフィスへの物理的な損害およびシステム障害への対応コストの発生 |
中期~ |
高 |
低 |
慢性 |
データセンターやオフィスの空調コストの増加 |
中期~ |
高 |
低 |
※時間軸における短期は0~3年、中期は4~10年、長期は11~20年を想定
移行リスク低減への対応として、当社では温室効果ガス(GHG)排出量を可視化し、省エネ対策の推進や再生可能エネルギーを活用するとともに、当企業グループのGHG排出量の削減目標の達成に向けた進捗を管理することで、炭素税などの負担回避によるコスト低減を図ってまいります。
また、従来型の火力発電等に依拠した電力調達はGHG排出量が大きいだけではなく、国家政策や資源価格の影響を受けてコストが変動するリスクがあるため、電力調達コスト安定化の観点からも、再生可能エネルギーによる電力へ切り替えていくことが望ましいと考えております。そのため、これまでの省エネ対策の推進に加え、再生可能エネルギーの活用を推進しています。
今後も当企業グループは、環境配慮型ビジネスへの転換を進め、レピュテーションリスクへの対応および調達コストの変動リスク低減に向けて取り組んでいきます。
物理的リスク低減への対応としては、当社およびグループ各社において、BCP(事業継続計画)等を策定し、災害時の早期復旧の体制構築に向けた対応を進めています。
<主要事業に係るリスク>
当企業グループの主要事業である証券事業、投資事業(プライベート・エクイティ)、銀行事業(SBI新生銀行)においては、それぞれの事業の特性上、以下に挙げるリスクを認識しています。
証券事業におけるリスク
・ 移行リスク(評判):ブランド価値の低下により顧客流出に繋がる可能性があります。
・ 物理的リスク(急性):オンライン取引システムの停止等のシステム障害が発生する可能性があります。それによって、事業の一時的な操業停止や復旧対応による財務的影響のほか、セキュリティに支障が生じた場合には損害賠償責任等が発生する恐れがあります。
リスク低減への対応
SBI証券では同社の定めるコンティンジェンシープランに則り、危機管理対策室を迅速に立ち上げ、業務への影響を極小化し、重要業務を中心に事業継続を図っていく運営をすべく、平時よりBCP/BCM(事業継続マネジメント)の取組みを行っています。
投資事業(プライベート・エクイティ)におけるリスク
・ 移行リスク(技術・市場):気候変動に関する政策や規制に対する投資先企業の対応が不十分であった場合、当該企業が保有する技術の陳腐化や競争力低下によるバリューダウンが発生し、結果として、保有する営業投資有価証券の価値が毀損する可能性があります。
・ 移行リスク(評判):投資検討や実行段階における、ESGに関する情報開示の拡充やESGの観点からの管理体制の構築・充実化が求められることが予想され、そのための対応コストが発生する可能性があります。
リスク低減への対応
投資事業(プライベート・エクイティ)では、投資先企業においても脱炭素化に向けた取り組みが当該企業の成長に資する可能性が示唆されることから、投資先企業に対しESG対応を促すことを含めたフルハンズオンでのエンゲージメントを行うことを検討していきます。
銀行事業(SBI新生銀行)におけるリスク
・ 移行リスク(法制・法規制/技術・市場):2℃以下達成に向けた規制強化や技術革新等に起因する、温室効果ガス高排出セクターや気候変動対応が不十分な投融資先の業況悪化に伴い、デフォルトリスクの上昇およびクレジットコストが発生する可能性があります。
・ 移行リスク(評判):温室効果ガス高排出セクターや気候変動対応が不十分な企業への投融資によりブランド価値が低下し、顧客流出に繋がる可能性があります。
・ 物理的リスク(急性):担保価値の毀損によるデフォルトリスクの上昇およびクレジットコストが発生する可能性があります。
リスク低減への対応
SBI新生銀行では、気候変動の影響を受けると思われるセクターについて、その気候変動リスクを定性的に評価しています。また、定性評価の結果およびエクスポージャーの大きさに基づき、セクターおよびアセットタイプごとに優先順位を付けたうえで、定量的な分析などによるリスクの深掘りを実施しています。
<気候変動に伴う機会>
脱炭素社会の実現に向けて、グループ会社が多様なソリューションを提供することで、環境・社会に関する課題解決に貢献することを新たな事業機会と捉えています。
当企業グループの主要事業においては、社会全体で、再生可能エネルギーへの転換や循環型経済への移行等によって脱炭素に貢献する事業を展開する企業および異常気象の激甚化により防災・減災に貢献する事業を展開する企業の価値向上が見込まれ、当企業グループにとって新たな事業機会が広がると認識しています。
証券事業における機会
想定される機会 |
時間軸 |
影響度 |
|
4℃ |
1.5℃ |
||
・脱炭素に貢献する事業を展開する企業の価値向上に伴う、当該企業が発行する株式等の金融商品取扱量の増加 ・当該事業分野でのM&Aニーズの増加による関連事業の提供機会の増加 ・ESG投資選好の高まりに関連する事業機会の拡大(例:グリーンボンド等のサステナブルファイナンス商品の開発やプロジェクト創出) |
短期~ |
低 |
高 |
・防災及び減災に貢献する事業を展開する企業の価値向上に伴う、当該企業が発行する株式等の金融商品取扱量の増加 ・当該事業分野でのM&Aニーズの増加による関連事業の提供機会の増加 |
短期~ |
高 |
低 |
投資事業(プライベート・エクイティ)における機会
想定される機会 |
時間軸 |
影響度 |
|
4℃ |
1.5℃ |
||
・脱炭素に貢献する事業を展開する投資先企業の価値向上に伴う収益機会の増加 ・ベンチャーキャピタル(VC)ファンドへの投資ニーズの増加を通じたファンド出資者の獲得機会の増加 |
短期~ |
低 |
高 |
・防災及び減災に貢献する事業を展開する投資先企業の価値向上に伴う収益機会の増加 ・VCファンドへの投資ニーズの増加を通じたファンド出資者の獲得機会の増加 |
短期~ |
高 |
低 |
銀行事業(SBI新生銀行)における機会
想定される機会 |
時間軸 |
影響度 |
|
4℃ |
1.5℃ |
||
・移行支援ファイナンスのニーズ拡大 ・脱炭素化に向けた投融資ニーズ拡大 |
短期 |
低 |
高 |
・投融資ポートフォリオは比較的体力のある大手が多いことから、修繕や防災設備強化のための資金需要の増加 ・気候変動リスクのヘッジや保険商品へのニーズの高まり |
短期~ |
高 |
低 |
※時間軸における短期は0~3年、中期は4~10年、長期は11~20年を想定
2030年度における財務インパクト予測(2020年度比):
気候変動が当企業グループの証券事業および投資事業を通じて齎す、当企業グループの操業に係る連結業績への財務的影響額は以下の通り軽微なものと認識しています。
4℃シナリオ:66百万円
1.5℃(2℃) シナリオ:169百万円
(参考)当社 2024年3月期 税引前利益 141,569百万円
※ 証券事業および投資事業(プライベート・エクイティ)における、炭素税・排出権取引導入によるコスト増、電力価格のコスト増、ZEB対応コスト増、気温上昇による冷房コスト増、年平均の洪水被害額、年平均の高潮被害額、年平均の営業停止損害額による財務インパクト予測の総額を記載。
2050年度における財務インパクト予測(2050年度まで累計/銀行事業):
SBI新生銀行では財務的影響額を以下の通り試算しています。
物理的リスク:累計で55億円~90億円程度の与信関連費用
移行リスク:累計で65億円~280億円程度の与信関連費用
※ 本試算上の物理的リスクの対象ビジネスは、国内不動産ノンリコースローン、国内プロジェクトファイナンス、住宅ローン、新生フィナンシャルの個人向け無担保ローン。
※ 本試算上の移行リスクの対象ビジネスは、電力ユーティリティ、石油・ガス、海運。
当企業グループでは試算した財務インパクトを踏まえ、気候変動に伴うリスクの最小化と機会の最大化に対応するべく、グループの各事業会社における多様なソリューション提供等を通じて、脱炭素社会の実現等に向けた環境・社会に関する課題解決に努めています。
グループ各社での具体的な取り組みの一例は以下の通りです。
・グリーンボンドをはじめとしたSDGs債の発行支援(SBI証券及びSBI新生銀行)
・サステナブルファイナンス/インパクトファイナンス(SBI新生銀行)
・サステナビリティ預金(SBI新生銀行)
・SDGsを踏まえた投資先の選定(SBIインベストメント)
・営農型太陽光発電の開発事業(SBIスマートエナジー)
今後も気候変動が当企業グループの事業に及ぼすリスクと機会について継続的に分析を行い、事業活動を通じた持続可能な社会の実現と更なる社会価値の向上を目指します。
③リスク管理
気候変動に関する主なリスクは、総合リスク管理体制に組み込んで管理しています。詳細については「
また今後は、グループ横断的にシナリオ分析を深化させるとともに、気候変動リスクの定量化と、気候変動が齎す当企業グループ全体への影響について、統合的に評価・管理する体制の構築を進めていきます。
気候変動が齎す機会とそのリスク管理体制については以下の通りです。
当企業グループでは、気候変動に係る機会として、脱炭素に貢献する事業や防災・減災に関連する事業領域における事業拡大、並びにESG投資選好の高まりに関連する事業機会の拡大等を認識しています。こうした案件の投融資に関連する審査の際には、ウォッシング等に該当することがないよう第一線の部署による審査に加えて、リスク管理部門によるチェックを行っています。
また、投資事業(プライベート・エクイティ)においては、たばこやポルノ、石油・石炭等の化石燃料を事業とする企業や兵器の製造を行う企業等、気候変動を含む環境・社会への影響が懸念される企業への投資は行っていません。これらの除外事項は、国連グローバル・コンパクトや国際労働基準等の地域的・世界的な合意に基づいて決定しています。投資先企業の製品や業務がこれらの事項に該当することがないよう、第一線の担当者および投資審査を行う投資委員会がチェックを行った後に投資判断を行っています。
SBI新生銀行グループにおいては、責任ある投融資を推進する体制の高度化を目的として、2021年7月に「責任ある投融資に向けた取組方針」を制定しました。環境問題および社会課題に適切な配慮をしない企業と取引することを経営リスクと捉えており、一部の特定事業に対する投融資については環境および社会に対する重大なリスクがあるという認識のもと、取引を禁止もしくは制限しています。
気候変動の観点では、予防的アプローチに基づき、新設の石炭火力発電の建設を使途とする新規の投融資をせず、石炭火力発電所向け投融資額の圧縮を進めています。
脱炭素社会の実現に向け、当企業グループの各事業会社において環境・社会に関する課題解決に一層努めていく中で、更なる気候変動に係るリスクと機会の増加が想定されます。今後は再生可能エネルギー等関連事業を含めたセクター別の対応方針を協議しながら、気候変動が齎す機会に関わるリスク管理体制を一層深化させていきます。
④指標と目標
当企業グループは、気候変動が経営に及ぼすリスクと機会等の影響を測定・管理するための指標として温室効果ガス(GHG)排出量を選定しています。
国家目標である2050年カーボンニュートラル実現に向けて、SBIグループのGHG排出量を2050年度までにネットゼロ(Scope1、Scope2)とすることを目標とし、中間目標として2030年度までに2018年度比で33%削減することを掲げています。また、当企業グループのScope3排出量の規模を把握するべく各カテゴリーの算定に着手しています。
GHG排出量の推移 (単位:t-CO2)
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2018年度 |
2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
Scope1 |
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Scope2 |
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合計 |
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Scope3 |
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※集計範囲:SBIホールディングスおよび主なグループ会社の国内拠点を対象に、GHGプロトコルで定義されるScope1(化石燃料等の使用に伴う直接排出)、Scope2(購入した電気・熱の使用に伴う間接排出)、Scope3(事業者の活動に関連する他者の排出)の各排出量を記載。2021年度からScope1及びScope2にSBI新生銀行グループを含む。
※Scope3は出張(カテゴリー6)、通勤(カテゴリー7)が対象。2023年度からSBI新生銀行グループを含む。
<GHG排出量削減目標達成に向けて>
GHG排出量が2021年度において増加しているのは、2021年12月に子会社化したSBI新生銀行グループを含むためです。なお、2023年度の当企業グループのGHG排出量(Scope1、Scope2合計)のうち、約9割をSBI新生銀行グループが占めていますが、SBI新生銀行グループでは2030年度までにネットゼロを目標としています。
当企業グループが入居する泉ガーデンタワーでは、省エネの推進や非化石証書(※1)等を用いた再生可能エネルギー由来の電力への契約切り替えを推奨しており、2022年4月から当企業グループが入居するオフィスの大部分において、グリーン電力(※2)への切り替えを行いました。
SBI新生銀行グループにおいても、オフィスビルにおける省エネの推進や非化石証書(※1)等を用いた再生可能エネルギー由来の電力への契約切り替え、データセンターの統合やクラウド化等により消費電力の削減を図っています。
なお、SBI新生銀行グループでは、投融資先ポートフォリオからのGHG排出量(※3)を2050年度末までにネットゼロとする目標を設定しています。併せて、当該GHG排出量実績をPCAF(※4)の公開する国際的な基準に準拠して算定しています。また、2022年度には同行の事業法人および住宅ローンの一部に加えて、プロジェクトファイナンス、不動産ノンリコースローン(※5)を対象として、投融資先ポートフォリオGHG排出量を計測しました。今後も段階的な対象アセットの拡大および算定精度の向上に取り組む予定です。
また、石炭火力発電向けプロジェクトファイナンス融資残高を2040年度末までにゼロとすることも脱炭素化社会への貢献目標として掲げています。
当企業グループでは引き続きGHG排出量削減に一層資する取り組みを検討していきます。
※1 非化石燃料により創り出された電力の持つ環境価値を切り出して、証書化したもの。
※2 主に太陽光、風力、水力等の「再生可能エネルギー」から作られる電力。
※3 当該GHG排出量は、各投融資先のGHG排出量のうち、SBI新生銀行グループの寄与分を算出しています。
※4 SBI新生銀行は、2022年10月に、PCAF(Partnership for Carbon Accounting Financials)に加盟し、PCAFが定める透明性のGHGプロトコル(集計手法)により、投融資先のGHG排出量評価の高度化に取り組んでいます。
※5 PCAF基準における6アセットタイプのうち、事業法人は「上場株式および社債」ならびに「事業融資および非上場株式」、 住宅ローンは「居住用不動産」、プロジェクトファイナンスは「プロジェクトファイナンス」、不動産ノンリコースローンは「商業用不動産」の算定方法に基づき、投融資先ポートフォリオGHG排出量を計測しました。
(3)人的資本
当企業グループは人こそが創造性の源泉であり、競争力の源泉となる差別化をもたらす主因であると考えています。そして、人的資源こそが最も価値ある戦略的資源と捉えており、当社では人事担当執行役員がダイバーシティ&インクルージョンを含めた人材価値向上の戦略策定と実行を担っています。既存の概念にとらわれず、イノベーションを実現する「総合企業グループ」として、開かれた雇用機会の提供、充実した人材育成体制の整備、公正で意欲に応える評価・処遇制度の実現などを通じて、独自の企業文化を育み継承する人材を育成し、健全な労働意欲の醸成を促進しています。
①ガバナンス
当企業グループの人材価値向上に関しては取締役会において方針の議論を行い、具体的な課題や各種施策(重要な組織の新設・改編、主要ポジションの任免や重要な人事施策の新設・改廃等)に関する検討、進捗状況の共有を行っています。グループ各社の人材ニーズ等については当社人事部門がグループ横断的に情報を収集し、必要な役職員の派遣や配属を行い組織力の強化を図っています。次世代の経営陣幹部の育成等に係る取締役会の機能や審議プロセスについては、取締役会の下に独立した諮問機関として設置され、委員の過半数を独立社外取締役で構成する経営諮問委員会が適切に関与しています。また、評価制度・教育体系・報酬制度等はグローバル共通の仕組みを導入し、グループ全体で推進しています。
グループ各社の人事責任者による会議も定期的に開催し、当企業グループ全体の人材開発の方針等について共有・議論しています。
②戦略
人間性を重視した登用、社会の維持・発展に貢献する人材の育成こそがお客さまに役立つ財・サービスを提供するために必要不可欠であり、サステナブルな経営を推進していく上で重要な構成要素の一つであるとの考えのもと、人材育成、ダイバーシティ&インクルージョンならびに働きやすい職場づくりに係る各種施策を通じて「人材価値」向上に取り組んでいます。
<人材育成>
施策1. 開かれた雇用機会の提供
当企業グループでは採用において、プロフェッショナルとしての職歴だけではなく人間性を重要視した基準を設けています。従業員には、仕事ができ人間的にも優れた人物であることを求めますが、人種・国籍・性別や学歴等は一切問いません。2006年度から開始した新卒採用活動においてもこの基準に照らし、多様なバックグラウンドを持つ将来性の高い人材を多数採用してきました。
また、今後は高度な専門性が必要な業務を担当する人材の確保がより一層重要になると考え、中途・新卒に関わらず、優秀な人材を積極的に登用しています。2018年には給与処遇および勤務形態について、既存の枠組みとは異なる対応が可能となる高度専門職制度を設けました。
施策2. 企業理念の浸透
社員の9割超が中途採用であることを踏まえ、当企業グループの理念・企業文化を理解し実践できる人材の育成に取り組んでいます。自身が所属する部署のみを近視眼的に考えるのではなく、グループ全体の相乗効果も視野に入れた取り組みを行えるよう、継続的に研修を実施しています。更に、経営トップが自らの経営論・企業観について執筆した書籍を通じて、従業員の人間学や経営学の教育向上、社内における一体感の醸成、相互の意思疎通を図っています。
施策3. 公正で意欲に応える処遇
従業員の処遇は成果のみならず、結果にいたるプロセスも重視しています。また、公正・公平な評価に努める観点から、上司だけでなく部下や同僚など多方面より評価を行う360度評価を実施しています。このような多面的な評価と半期ごとの目標達成度をもとに、経験、能力、業績への貢献度等に応じた総合的な判断で各従業員の処遇が決定される仕組みとなっており、「功ある者には禄を与え、良識・見識ある者には地位を与える」という方針を貫いています。
施策4.「有為な人材」を育成するための取り組み
当企業グループは、日本の未来を担う「有為な人材」を一人でも多く輩出していきたいと考えています。私たちが育成を目指す「有為な人材」とは、一部門・一企業の利益に貢献するだけではなく、広く経済・社会に貢献しようとする高い志を有し、ビジネスにおける高い専門性を備え、国際的視野を持ち、確たる倫理的価値観と実行力を伴う胆識を備えた人物のことを言います。
そうした観点から、2008年に当企業グループの全面支援によりSBI大学院大学が開校しました。SBI大学院大学では、高い意欲と志を有する受講生を社外から広く集め、知識を詰め込む「知育」ではなく、人間力を磨くことを主眼とした「徳育」を重視し、人間学を学ぶ機会を提供しています。また、教育プログラムに最先端の経営学の知見を取り入れ、実践的な学問=「実学」を学ぶ機会も提供しています。知識を吸収するだけではなく、様々な背景と個性を有する人々―教える者と学ぶ者、あるいは学ぶ者同士―との相互対話と切磋琢磨を行うことによって、「有為な人材」の育成を図ります。
当企業グループにおける人材育成にあたっては、各種専門知識に関するOJTに加え、このSBI大学院大学を活用した研修を行っています。上級管理職を目指す社員に向けては「SBIグループ上級管理職研修」の修了を昇格要件と定めるほか、より広範にマネジメントを学びたい社員に向けてはSBI大学院大学への企業派遣制度を設けています。2024年3月末現在、この制度を通じて171名がMBAを取得しています。また新入社員に対しては、早期から当企業グループの経営幹部としての知見や経営観を習得させるべく、当社独自の課題研修を行っています。2週間に一度、新入社員に小論文の提出を課し、社長を含めた経営陣が評価しています。
その他、従業員の自己啓発の促進のために、2016年10月に導入した資格取得支援制度の対象となる資格の見直しを行い、従来制度で対象としていた33資格から新たに19資格を追加し、受験料補助の対象を52の資格に拡大しています(2023年3月1日施行)。
社員一人当たりの年間研修時間は13時間45分(※)、当社単体での教育研修費は109百万円(一人当たり平均研修費用は330千円)となっています。
(※)国内連結子会社(SBI新生銀行グループは除く)の従業員が対象
<当企業グループの人材育成プロセス>
施策5.優秀な人材の確保に向けて
当企業グループの持続的成長を図る上で優秀な人材の確保、従業員満足度や定着率の向上がより一層重要になると考えています。
2022年4月からは、新卒初任給及び入社3年目までの給与テーブルの大幅な引き上げを行っており、2024年4月には、賢材の定着・確保を目的として、若手から中堅層に重点を置いた給与テーブルの引き上げを実施しました。また、当企業グループのさらなる企業価値の増大を目指し、当社の結束力をさらに高め、連結業績に対する意欲や士気をより高める上で、当企業グループの役職員が当社の株価や企業価値をより意識した事業運営を行うことも重要だと考えており、これらを実現することを目的として当社及び当社子会社の取締役及び従業員向けにインセンティブプログラムを導入しています。これらの取り組みに加えて、役職員全員にグループ連結業績を反映させた報酬制度を導入するなど、従業員の処遇の向上にも取り組んでいます。
<ダイバーシティ&インクルージョン>
イノベーションを生み出す企業であり続けるため、役職員の多様性を尊重すると共に、あらゆる人材が活躍できる職場環境づくりに注力しています。
施策6. 多様な人材の活用
当企業グループでは、持続的成長を実現しイノベーションを生み出す企業であり続けるには、人種、国籍、性別、性的指向、障がいの有無等にかかわらず、多様な人材が互いの価値観や個性を認め合い、それぞれの能力を最大限に発揮し、共に成長できる環境が必要であると考えています。こうした考え方のもと、当社では人事担当役員がダイバーシティ&インクルージョンの責任者を務めています。
26ヵ国・地域へ展開する当企業グループにあって、海外拠点の従業員割合は20.3%となっています。また、2015年3月からは定年後の再雇用の上限年齢を撤廃しており、優秀な人材に対しては、その属性を問わず積極的に登用・昇進させる姿勢を徹底しています。
<働きやすい職場環境づくり>
当企業グループでは、あらゆる人材が常に最大限のパフォーマンスを発揮することができる働きやすい職場環境を整えるべく、様々な施策を行っています。
施策7. 健康経営の推進
2018年には「健康経営宣言」を制定し、従業員が健康保持・増進に取り組みやすい環境を積極的に整えています。産業医による「健康個別相談会」を毎月実施し、対面及び電話、文書等での役職員の希望する方法に応じた面談を実施するなど、従業員の健康に配慮しています。また、 医療分野を通じた直接的な社会貢献に積極的に取り組むべく 2007年に設立したSBIウェルネスバンクでは、同社が提携・支援する医療法人「東京国際クリニック」を通じて、当企業グループの役職員の健康維持を図っています。長時間労働はメンタルヘルス不調を誘引する可能性があることから、当社では2015年から全社的に削減に向けた取り組みを積極的に実施しています。例えば、残業時間や有給の取得状況については、対象者とその上長に対して定期的にアラート機能で通知するなど把握に努めています。
2016年からは、従業員向けに実施が義務付けられたストレスチェックを行っており、今後はストレスチェックから収集した定量データを精緻に分析し、グループ各社の業務特性や職場環境の把握に努めるとともに、より従業員の健康維持に効果的な施策を検討していきます。
施策8. 自己実現の場の提供
社員の自己実現の場を提供するとともに、人材の有効活用や適材適所を実現する意図から、「キャリアオープン制度」を導入しています。この制度は社員自らが希望するグループ内の事業会社等への異動願いを申告するもので、2023年度においては140名がこの制度を活用しキャリアチェンジを実現しています。
施策9. 働きやすい環境の整備
男女問わず、介護・育児といった特定の理由に限定せずに正社員が短時間勤務を選択できる短時間正社員制度を導入しています。更に、時差出勤も制度化し柔軟な働き方を推進しています。また、産休・育休制度を通じた当社単体での女性の育児休暇取得率は100%、男性の育児休暇取得率は50%となっています。
さらに、業務の効率化・生産性の向上に向けては、グループを挙げてRPA・AIの導入を推進し、各種ルーティン業務の自動化を行っています。
2023年からはこれまで以上に従業員と会社の繋がりの強化を図るべく、当社においては定期的にエンゲージメントサーベイを実施しています。本調査の結果については各部門長へのフィードバックを行うとともに、従業員エンゲージメントの向上に活かし、働きやすい職場環境の一層の整備を目指します。本調査の結果から見えてきた社員の声から対応すべき取り組みを検証し、研修の拡充、資格取得支援制度における対象資格の拡大や報酬制度の拡充、就業環境の整備などを進めてきました。今後も、エンゲージメントサーベイでの結果を分析し、課題の把握に努め、新たな各種施策を検討し従業員エンゲージメントの向上に取り組んでいきます。
③リスク管理
当企業グループ全体を通じた課題として、急速に拡大した事業を支える優秀かつグローバルな人材の確保と社員の能力開発を通じて人的資源の継続的な向上を図ることがますます重要となっています。こうした取り組みが十分になされないことは、当企業グループの持続的な成長と発展において最大のリスクであると考えています。そのため、性別、国籍、人種等に関わらず当企業グループの経営理念に共感し即戦力となる優秀な人材の採用活動のさらなる強化と共に、独自の企業文化を育み継承する人的資源の確保として新卒採用を継続して実施しています。2006年4月から採用を進めてきた新卒採用者は、急速に拡大する当企業グループの未来を担う幹部候補生として、既に各々重要なポジションで活躍しています。今後もより優秀かつグローバルな人材の確保と、社員のキャリア開発を促進し、当企業グループの持続的な成長と発展を図っていきます。また、SBI大学院大学の活用による人材教育の拡充やM&A等を通じた優秀な即戦力人材の獲得も併せて促進しています。
外部からのより優秀かつグローバルな人材の確保と、社員のキャリア開発を促進し、リスク低減に努めています。
④指標と目標
各指標については以下及び「
<人材育成>
・従業員一人当たりの年間研修時間
年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
時間 |
15.63 |
13.38 |
13.75 |
※国内連結子会社(SBI新生銀行グループは除く)の従業員を対象に実施している新入社員向けの課題研修・上級管理職研修・SBI大学院大学への企業派遣制度(MBA)・各種e-ラーニングを含む
<ダイバーシティ&インクルージョン>
・当企業グループの外国籍社員比率
年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
% |
42.3 |
37.7 |
35.5 |
※国内外連結子会社(SBI新生銀行グループは除く)
・
年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
|
26.5 |
24.7 |
|
※当社単体
・女性採用者数
年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
人 |
933 |
1,327 |
1,101 |
※国内連結子会社
・
年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
|
81.1 |
83.1 |
|
※当社単体
一部の指標については当企業グループのマテリアリティに組み入れ、目標を設定しています。「
なお、主要な事業会社については関連する指標のデータ収集が行えていますが、新たにグループ入りした企業グループなど、連結対象範囲の全てのグループ会社に対してデータの管理・収集が行えていないため、連結における記載が困難なものがあります。このため、一部の指標に関する目標及び実績については当社単体のもの及び収集可能な範囲での数値を記載しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項を以下に記載しております。当該事項が顕在化する可能性の程度や時期、当該事項が顕在化した場合に当企業グループの経営成績等の状況に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるものについては記載しておりません。他方、当企業グループは、これらの潜在的なリスクを認識した上で、かかるリスクの回避並びに顕在化した場合の低減に向けて当社及び当企業グループ各社にリスク管理担当役員を任命し、当企業グループのリスクを洗い出すとともにリスク対応策を策定し、リスクの低減に努めております。また、リスク管理態勢が機能しているか内部監査部門による監査を実施する等の様々な施策を講じており、引き続き適切な対応に努めてまいります。
なお、本項には将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書の提出日(2024年6月27日)現在において判断したものであります。
事業全般のリスクについて
1)複数事業領域への事業展開に伴うリスク
当企業グループは金融分野及び非金融分野の多岐にわたる業種の企業で構成されております。また、当企業グループには複数の上場会社が存在しております。このような多様性により、当企業グループは単一の領域で事業を展開している企業には見られないような課題に直面しております。具体的には以下の3点があげられます。
・様々な分野の業界動向、市場動向及び法的規制等が存在します。したがって当企業グループは様々な事業環境における変化をモニタリングし、それによって影響を受ける事業のニーズに合う適切な戦略を持って対応できるよう、リソースを配分する必要があります。
・当企業グループの構成企業は多数あることから、事業目的達成のためには説明責任に重点を置き、財政面での規律を課し、経営者に価値創造のためのインセンティブを与えるといった効果的な経営システムが必要です。さらに多様な業種の企業買収を続けている当企業グループの事業運営はより複雑なものとなっており、こうした経営システムを実行することはより困難になる可能性があります。
・多業種にまたがる複数の構成企業がそれぞれの株主の利益になると判断し共同で事業を行うことがあります。こうした事業において、期待されるようなシナジー効果が発揮されない可能性があります。
2)当企業グループの構成企業における議決権の所有割合又は出資比率が希薄化される可能性があります
構成企業は株式公開を行う可能性があり、その場合、当該会社に対する当企業グループの議決権の所有割合は希薄化されます。さらに、構成企業は成長戦略の実現その他の経営上の目的のために資本の増強を必要とする場合があり、この資金需要を満たすため、構成企業は新株の発行やその他の持分証券の募集を行う可能性があります。当企業グループはこのような構成企業の新株等の募集に応じないという選択をする、又は応じることができない可能性があります。当該会社に対する現在の出資比率を維持するだけの追加株式の買付けを行わない場合、当企業グループの当該会社に対する出資比率は低下することになります。
構成企業に対する出資比率の低下により、当該企業から当企業グループへの利益の配分が減少することになった場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。さらに、出資比率が大きく低下した場合、当企業グループの当該企業の株主総会における議決権の所有割合が低下し、当該企業に対する支配力及び影響力が低下する可能性があります。
3)インターネットビジネスに関するリスク
当企業グループの事業は主にインターネット利用等の非対面チャネルでのサービスを提供しており、正確で有益なサービス、コンテンツの提供、安心、安全な利用環境の提供に取り組んでおりますが、システム障害によるサービスの遅延又は中断、不正アクセスによる保有資産の毀損、個人情報の漏洩等の情報システム及びセキュリティに関するリスクが顕在化した場合には、個別企業の商品及びサービスにおける顧客離れや損害賠償責任等が生じることに加え、グループ全体の評判の低下につながることにより、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、インターネットとその関連技術に精通し続けることが当企業グループの成長には不可欠であります。インターネット関連業界は技術革新が継続しており、新技術の登場や異業種からの金融事業への参入により業界の競争環境は変化します。当企業グループはFinTech分野の新技術を活用した新サービスの開発や新たな金融ビジネスの創造を推進しておりますが、新技術や新規参入者への対応が遅れた場合、当企業グループの提供するサービスが陳腐化又は不適応化し、業界内での競争力低下を招く可能性があります。もし今後の環境変化への対応が遅れた場合は、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、重要な技術変革に対応するために新たな社内体制の構築及びシステム開発等の費用負担が発生する場合があります。この場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
4)システムに関するリスク
当企業グループのシステム(業務委託先等の第三者のシステムを含みます。)は、事業を行う上で非常に重要な要素の一つであり、適切な設計やテストの実施等によりシステム障害等を未然に防止し、セキュリティ面に配慮したシステムの導入に努めていますが、システム障害やサイバー攻撃、不正アクセス、コンピュータウイルス感染、人為的ミス、機器の故障、通信事業者等の第三者の役務提供の瑕疵、新技術、新たなシステムや手段への不十分な対応等を完全には防止できない可能性があります。また、全てのビジネス要件や規制強化の高まりからくる規制要件に対応するシステムの機能強化への要請を十分に満たせない可能性や、市場や規制の要請に応えるために必要なシステム構築や更新がその作業自体の複雑性等から計画どおりに完了しない可能性があります。その場合、情報通信システムの不具合や不備が生じ、取引処理の誤りや遅延等の障害、情報の流出等が生じ、業務の停止及びそれに伴う損害賠償の負担その他の損失が発生する可能性、当企業グループの信頼が損なわれ又は評判が低下する可能性、行政処分の対象となる可能性、並びにこれらの事象に対応するための費用負担等が発生する可能性があります。
5)当企業グループにおける合弁契約の締結、提携の相手先企業に対する法的規制若しくは財務の安定性における変化、又は双方の経営文化若しくは経営戦略における変化
当企業グループは国内外の複数の企業と合弁事業を運営又は提携を行っております。これらの事業の成功は相手先企業の財務及び法的安定性に左右されることがあります。合弁事業を共同で運営する相手先企業に当企業グループが投資を行った後に、相手先企業のいずれかの財政状態が何らかの理由で悪化した場合又は相手先企業の事業に関わる法制度の変更が原因で事業の安定性が損なわれた場合、当企業グループは合弁事業若しくは提携を想定どおりに遂行できない、追加資本投資を行う必要に迫られる、又は事業の停止を余儀なくされる可能性があります。同様に、当企業グループと相手先企業との間の経営文化や事業戦略上の重大な相違が明らかになり、合弁又は提携契約の締結を決定した時点における前提に大幅な変更が生じる可能性があります。合弁事業や提携事業が期待した業績を達成できなかった場合、又は提携に関して予め想定しなかった事象が生じた場合、これらの合弁事業又は提携事業の継続が困難となる可能性があります。合弁事業又は提携事業が順調に進まなかった場合には、当企業グループの評判の低下や、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
6)ブランド及び風評に関するリスク
当企業グループの業容拡大や知名度向上に伴い、グループ内の「SBI」ブランドを冠した一企業に対する評価がグループ全体の評価となり得る状況にあります。このため、当社は「SBI」ブランドの管理を徹底し、グループ各企業におけるブランドの適切な使用とブランド価値の維持向上に向けた取り組みを推進しておりますが、一企業の商品やサービス、顧客対応に対する信頼の毀損やインサイダー取引を含むコンプライアンス違反の他不祥事等がグループ全体のブランドに影響した場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、当企業グループの事業分野は安心、安定と顧客の信頼が最も重要とされる業界であることから、当企業グループは顧客又は投資家からの低評価や風評リスクの影響を受けやすい状況にあります。当企業グループ又は当企業グループのファンド、商品、サービス、役職員、合弁事業のパートナー及び提携企業に関連して、その正誤にかかわらず不利な報道がなされた場合、又は本項に記載されたリスク要因のいずれかが顕在化した場合、顧客及び顧客からの受託のいずれか一方又は両方の減少につながる可能性があります。当企業グループの事業運営は役職員、合弁事業のパートナー企業及び提携企業に依存しております。役職員、合弁事業のパートナー企業及び提携企業によるいかなる行為、不正、不作為、不履行、及び違反も相互に関連し合うことで、当企業グループに関する不利な報道につながる可能性があります。この場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、当企業グループの商号等を騙った詐欺又は詐欺的行為が発生しており、当企業グループに非がないにもかかわらず、風評被害を受ける可能性があります。この場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
7)事業再編と業容拡大に係るリスク
当企業グループは「Strategic Business Innovator = 戦略的事業の革新者」として、常に自己進化(「セルフエボリューション」)を続けていくことを基本方針の一つとしております。
今後もグループ内の事業再編に加えて、当企業グループが展開するコアビジネスとのシナジー効果が期待できる事業のM&A(企業の合併及び買収)を含む積極的な業容拡大を進めてまいりますが、これらの事業再編や業容拡大等がもたらす影響について、当企業グループが予め想定しなかった結果が生じる可能性も否定できず、結果として当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当企業グループは適切な投資機会、提携企業、又は買収先企業を見つけることができない可能性があるほか、これらについて適切に見つけることができた場合でも、商取引上許容し得る条件を満たさない、又は取引を完了することができない可能性があります。企業買収に関しては、内部運営、流通網、取扱商品、又は人材等の面で買収先企業及び事業を現存の事業に統合することが困難である可能性があり、こうした企業買収によって期待される成果が得られない可能性があります。買収先企業の利益率が低く、効率性向上のためには大幅な組織の再編を必要とする可能性や、買収先企業のキーパーソンが提携に協力しない可能性があります。買収先企業の経営陣の関心の分散、コストの増加、予期せぬ事象や状況、賠償責任、買収先企業の事業の失敗、投資価値の下落、及びのれんを含む無形資産の減損といった数多くのリスクを有し、それらの一部又は全部が当企業グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。企業買収や投資を行う際に、当企業グループが関連する監督官庁と日本国又は当該国政府のいずれか一方又は双方から予め承認を得る必要がある場合、必要な時期に承認を得られない、又は全く得られない可能性があります。また、海外企業の買収によって当企業グループには為替リスク、買収先企業の事業に適用される現地規制に係るリスク、及びカントリーリスクが生じます。これらリスクが顕在化した場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
8)新規事業への参入に係るリスク
当企業グループは「新産業クリエーターを目指す」という経営理念のもと、21世紀の中核的産業の創造及び育成を積極的に展開しております。かかる新規事業が当初予定していた事業計画を達成できず、初期投資に見合うだけの十分な収益を将来において計上できない場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、当企業グループが新たに提供する商品又はサービスが既存の法令や会計基準では想定されていない場合、その適用の有無や解釈の確認のために迅速な事業展開が制限され、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。さらに、法令その他の理由により参入が遅れる場合や、必要な許認可等が取得できない可能性があります。また、新規事業において新たな法令の対象となる、又は監督官庁の指導下に置かれる可能性があります。これら適用される法令、指導等に関して何らかの理由によりこれらに抵触し、行政処分又は法的措置等を受けた場合、当企業グループの事業の遂行に支障をきたします。結果として当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
9)投融資に係る損失計上及び市況変動に伴う収益悪化リスク
当企業グループは、関連会社への投資を含む多額の投資有価証券を保有しております。そのため、株式市場及び債券市場の状況(例えば、クレジット市況の悪化、金利急上昇等)によって、かかる投資有価証券の評価損計上等による損失が生じる場合があります。また、当企業グループは、事業会社等へ融資も行うことがあり、今後発生し得る様々な要因により、これら融資先企業の業績等が悪化することで貸倒損失が発生する、あるいは信用損失引当金の追加計上等が必要になる場合があります。加えて、不動産市場の状況によって、関連する債権にかかる信用損失引当金の追加計上や損失が生じる場合があります。さらに、調達コスト上昇を価格に転嫁できないことや市況により商品又はサービスの需給が減少することで、営業収益が減少する等のリスクが生じます。このような場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
10)訴訟リスク
当企業グループには各事業分野において、事業運営に関する訴訟リスクが継続的に存在します。訴訟本来の性質を考慮すると係争中又は将来の訴訟の結果は予測不可能であり、係争中又は将来の訴訟のいずれかひとつでも不利な結果に終わった場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
11)リスク管理及び内部統制に係るリスク
当企業グループは、グループ会社に証券会社、銀行、保険会社など複数の金融機関を持ち、国内外において多岐にわたって金融事業を展開しております。そのため、リスク管理態勢やコンプライアンス態勢の更なる強化を図り、グループの財務の健全性及び業務の適切性を確保するとともに、リスク管理及び内部統制のシステム及び実施手順を整備しております。
これらのシステムには、経営幹部や職員による常時の監視や維持、又は継続的な改善を必要とする領域があります。かかるシステムの維持を効果的かつ適切に行おうとする努力が十分でない場合、当企業グループは監督官庁から行政処分や制裁、処罰の対象となる可能性があり、結果として当企業グループの事業の遂行に支障をきたし、経営成績及び財政状態や評判に影響を与える可能性があります。
当企業グループの内部統制システムは、いかに緻密に整備されていたとしても、その本来の性質により判断の誤りや過失による限界を有しております。したがって、当企業グループのリスク管理及び内部統制のためのシステムは、当企業グループの努力にかかわらず、効果的かつ適切である保証はありません。また、内部統制に係る問題への対処に失敗した場合、当企業グループ及び従業員が捜査、懲戒処分、さらには起訴の対象となる可能性、当企業グループのリスク管理システムに混乱をきたす可能性、又は当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
12)利益相反
お客様の利益を不当に害されることがないよう、利益相反のおそれのある取引を適切に管理するために利益相反管理方針を作成しております。また適切な管理のために社内研修等の実施を含めて適切な利益相反管理に必要な体制を整備し、定期的な検証に努めております。利益相反を特定し適切に対処することができない場合、罰則や行政処分の対象となるほか、顧客の信頼を失うレピュテーションの毀損等により、当企業グループのビジネスに悪影響が生じ、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
13)資金の流動性に係るリスク
当企業グループは、事業資金を資本市場におけるエクイティファイナンスのほか、金融機関からの借入や社債の発行等により調達しております。世界経済の危機による金融市場の悪化と、それに伴う金融機関の貸出圧縮を含む世界信用市場の悪化により、有利な条件で資金調達を行うことが難しい、あるいは全くできない状況に直面する可能性があります。また、各国中央銀行の金融政策、金融市場の動向等により金利が上昇した場合、若しくは当企業グループの信用格付が引下げられた場合には、当企業グループの資金調達が制約されるとともに、調達コストが増大する可能性があります。これらの場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
14)デリバティブに係るリスク
当企業グループは、投資ポートフォリオの価格変動リスクを軽減し、金利及び為替リスクに対処するためデリバティブ商品を活用しております。しかし、こうしたデリバティブを通じたリスク管理が機能しない可能性があります。また、当企業グループとのデリバティブ契約の取引内容を契約相手が履行できない可能性があります。その他、当企業グループの信用格付が低下した場合、デリバティブ取引を行う能力に影響を与える可能性があります。
また、当企業グループは、その一部で行うデリバティブ商品を含む取引活動によって損失を被り、結果として当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
15)当社の収益は、その一部を子会社及び関連会社からの配当金に依存しております
当社は、債務返済を含む支払義務履行のための資金の一部を、子会社やその他の提携先企業、投資先企業等からの配当金、及び分配等に依存しております。契約上の制限を含む規則等の法的規制により、当企業グループと子会社及び関連会社との間の資金の移動が制限される可能性があります。かかる子会社及び関連会社のなかには、取締役会の権限により当該会社から当企業グループへの資金の移動を禁ずる、又は減ずることが可能であり、特定の状況下ではそうした資金の移動全ての禁止が可能となるような法令の対象となっているものがあります。これらの法令によって当企業グループが支払義務を果たすための資金調達が困難になる可能性があります。この場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
16)キーパーソンへの依存
当企業グループの経営は、当社代表取締役である北尾吉孝とその他のキーパーソンのリーダーシップに依存しており、現在の経営陣が継続して当企業グループの事業を運営できない場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。キーパーソンの喪失に対処するために経営陣が採用する是正措置が直ちには、あるいは効果を現さない可能性があります。
17)商標権等の様々な知的財産権に係るリスク
当企業グループが行う事業には、商標権、特許権、著作権等の様々な知的財産権、特に「SBI」の商標が関係しております。当企業グループが所有し事業において利用するこれらの知的財産権の保護が不十分な場合や、第三者が有する知的財産権の適切な利用許諾を得られない場合には、技術開発やサービスの提供が困難となる可能性があります。また、当企業グループが第三者の知的財産権を侵害したとする訴訟の対象となる可能性があります。特に特許権関連の知的財産権については関連コストが増加する可能性があり、その場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
18)法令及び会計基準の施行又は改正に係るリスク
法令の施行又は改正がなされた場合、当企業グループの事業の運営方法、国内外で提供している商品及びサービスにも影響を与える可能性があります。かかる法令の施行又は改正は予測不可能な場合があり、結果として、当企業グループの事業活動、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、会計基準の施行又は改正がなされた場合、当企業グループの事業が基本的に変わらない場合であっても、当企業グループが経営成績及び財政状態を記録する方法に重要な影響を与える可能性があり、結果として当企業グループの事業活動、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
19)繰延税金資産に関するリスク
財務諸表と税務上の資産負債との間に生じる一時的な差異にかかる税効果については、当該差異の解消時に適用される法定実効税率を使用して繰延税金資産を計上しております。
このため税制改正等により法定実効税率が変動した場合には繰延税金資産計上額が減少又は増加し、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
評価性引当額は、将来税務上減算される一時差異及び繰越欠損金などについて計上した繰延税金資産のうち、実現が不確実であると考えられる部分に対して設定しております。繰越欠損金については、回収可能な金額を限度として繰延税金資産を計上することが認められており、当企業グループにおける繰延税金資産も回収可能性を前提に計上しております。
将来の税金の回収予想額は、当企業グループ各社の将来の課税所得の見込み額に基づき算出されます。評価性引当額差引後の繰延税金資産の実現については、十分な可能性があると考えておりますが、将来の課税所得の見込み額の変化により、評価性引当額が変動する場合があります。この場合、繰延税金資産計上額が減少又は増加し、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
20)保険による補償範囲に係るリスク
事業リスクの管理のため、当企業グループは保険をかける場合があります。しかし、こうした保険契約に基づいて全ての損失について、全額が必要な時期に補償されるという保証はありません。加えて、地震、台風、洪水、戦争、及び動乱等による損失等、保険をかけることが一般的に不可能な種類の損失もあります。構成企業のうちいずれか1社でも保険で補償されない、又は補償範囲を超える損失を被った場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
21)天災又は悪天候、テロ攻撃や地域紛争、戦争、感染症の発生・蔓延等により重大な損失を被る可能性について
当企業グループの資産の相当部分は、日本国内にあり、当社純資産の相当部分は日本国内における事業から生じております。当企業グループの海外事業には、同様のあるいは他の災害リスクがあります。日本国内あるいは海外において、当企業グループの事業ネットワークに影響する大きな災害、暴動、テロによる攻撃あるいは他の災害はもとより、感染症の発生・蔓延等は、当社の資産に物理的被害を与えないとしても、当社の事業を混乱させる可能性があります。また、当企業グループが投資や事業展開を行う地域や国において紛争若しくは戦争等が発生する場合があり、当企業グループや投資先企業等の資産に被害が生じる可能性があります。これら災害等の影響を受けた地域や国における重大な経済の悪化を引き起こした結果、当企業グループの事業、経営成績及び財政状態に支障あるいは影響を与える可能性があります。
なお、感染症の発生・蔓延に関わるリスクについては、外出規制・自粛要請や渡航禁止措置等により、日本国内のみならず世界的に経済や企業活動が広範な影響を受ける可能性があります。当企業グループが行う国内での金融サービス事業は、インターネットをメインチャネルとし、対面での接客・営業活動が限定されていることから、感染拡大による社会への影響が長期化した場合においても、業務継続の観点では直接的な影響を受けづらいものと認識していますが、企業や個人の経済活動の低下による取引量の減少等を通じて、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、国内外の投資事業は、将来の不確実な経済条件の変動や株式・為替市況の急変によっては直接的な影響を受ける可能性があり、感染症の発生・蔓延により事業環境及び市況が悪化した場合、当企業グループが保有する投資有価証券等について評価損失を計上する可能性があります。
22)海外における投資、事業展開、資金調達、及び法規制等に伴うリスク
当企業グループは、海外における投資や事業展開を積極的に進めております。これら投資や事業展開においては、為替リスクだけではなく、現地における法規制を含む諸制度、取引慣行、経済事情、企業文化、消費者動向等が日本国内におけるものと異なることにより、日本国内における投資や事業展開では発生することのない費用の増加や損失計上を伴うリスクがあります。海外における投資や事業展開にあたっては、これに伴うリスクを十分に調査や検証した上で対策を実行しておりますが、投資時点や事業展開開始時点で想定されなかった事象が起こる可能性があります。また、当企業グループが投資や事業展開を行う国が経済制裁対象国となる場合があり、これに関連する取引が存在すること等により、当企業グループが法規制等の影響や風評の悪化等の影響を受ける可能性があります。この場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、当社の株主構成における、外国人株主の保有状況によっては、当社の意図とは関係なく結果的に海外における資金調達を行っているということとなる可能性もあり、その結果、外国の法規制、特に投資家保護のための法規制の影響を受け、その対応のための費用増加や事業における制約等を受ける可能性があります。また、今後は為替リスク回避等を目的として、海外における金融機関からの借入や社債の発行等による資金調達が増加する可能性もあります。これら海外における資金調達を行う場合には、これに伴うリスクを十分に調査や検証した上で実行しておりますが、資金調達時点で想定されなかった事象が起こる可能性もあります。これらの結果、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
さらに、米国や英国による腐敗行為防止のための諸法令、各国当局等による経済制裁関連規制、EUによる一般データ保護規制等のように、当企業グループの海外拠点等所在地における法規制等で、その適用が日本国内を含む他の国における当企業グループ拠点にも及ぶ可能性のあるものがあります。これら法規制等については事前に十分な調査や検証を行いこれら法規制に抵触しないように対応しておりますが、現時点で想定できない事象が生じた場合や対応が不十分であった場合、これら法規制に抵触する可能性もあります。この場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
23)反社会的勢力との取引及びマネー・ローンダリング等に関するリスク
当企業グループは、反社会的勢力との関係が疑われる者との取引を排除すべく、新規の取引に先立ち、反社会的勢力との関係に関する情報の有無の確認や反社会的勢力ではないことの表明及び確約書の締結をするなど、反社会的勢力とのあらゆる取引を排除すべく必要な手続きを行っています。また、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与に関しても、当企業グループの商品及びサービスがこれらの不正な取引に利用されないための対策を講じています。しかしながら、当企業グループの厳格なチェックにもかかわらず、反社会的勢力との取引やマネー・ローンダリング等を排除できない可能性があります。このような問題が認められた場合、対策費用の増大、監督官庁等による処分・命令、社会的な評判の低下等により、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
24)サイバーセキュリティに関するリスク
国内外にわたり、事業展開をしている当企業グループでは、深刻化するサイバーセキュリティに対する脅威から顧客及び当企業グループの情報及び資産を保護するため、当企業グループ各社に情報セキュリティ管理責任者を設置しています。これら責任者に対し、当社のグループ情報セキュリティ管理責任者による統括の下、グループCSIRTが支援し、当企業グループ全体の情報セキュリティを確保する体制を整備しています。この当企業グループ横断的な協力体制の下、JIS Q 15001に示される個人情報保護の標準、及びISO/IEC 27001に示される情報の安全管理措置等を参照し、組織管理、技術的対応、人的対応及び外部連携による、情報セキュリティ対策を推進して、継続的に改善を行っています。しかしながら、新たに人的、システム的な脆弱性が顕在化し、サイバー攻撃又は情報セキュリティ事故が発生した場合、個人情報及び機密情報等の毀損、漏洩の被害が生じるおそれがあります。当該被害の結果、当企業グループの信用低下、被害者からの損害賠償請求、及び監督官庁による行政処分を受ける可能性により、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
25)情報紛失・情報漏洩に係るリスク
当企業グループは、国内外の法規制に基づき、顧客情報や個人情報を適切に取り扱うことが求められております。当企業グループでは、顧客情報や個人情報を多く保有しており、情報の保管・取扱いに関する規程類の整備、システム整備を実施し、管理態勢高度化に取り組んでおりますが、不適切な管理、外部からのサイバー攻撃その他の不正なアクセス、若しくはコンピュータウイルスへの感染等により、顧客情報や個人情報等の紛失・漏洩を完全には防止できない可能性があります。その場合、罰則や行政処分の対象となるほか、顧客に対する損害賠償等、直接的な損失が発生する可能性があります。加えて、顧客の信頼を失う等により当企業グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性、並びにこれらの事象に対応するための追加費用等が発生する可能性があります。
26)ESGへの取り組みに関するリスク
気候変動や資源問題に代表される環境課題のほか、人権や経済的不平等、食料問題といった社会課題の顕在化を背景に、ESG(環境:Environment、社会:Social、企業統治:Governance)を意識した経営に対する社会の注目や関心が高まる中、当企業グループでは、社会課題の解決による持続可能な社会の実現と、持続的な企業価値向上の両立を図ることが重要であるとの認識のもと、グループの経営戦略の一環としてサステナビリティ施策を議論・決定・管理するサステナビリティ委員会を設置し、その事務局であるサステナビリティ推進室を通じて各施策をグループ全体に展開・推進しています。
当企業グループはこのように、気候変動を含む環境・社会課題解決に向けた取り組みを適切に管理する体制を整え、施策の更なる実効性を確保していく方針ですが、当企業グループの経営体制や事業活動においてESGへの取り組みが不十分であるとステークホルダーに判断された場合、当企業グループに対する評価が低下し、資金調達や人材採用等に影響を及ぼす可能性があります。また、当企業グループの投融資先におけるESGへの対応が不十分である場合、投融資先の企業価値低下や信用状態の悪化により、当企業グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
金融分野におけるリスク
<金融サービス事業に係るリスク>
・証券関連事業に係るリスク
1)証券関連事業に影響を与える事業環境の変化による影響
証券関連事業における収益は、株価や株式市場の取引高及び、売買高等の動向に強い影響を受けます。株式市場の取引高及び売買高は企業収益、為替動向、金利、国際情勢、世界主要市場の変動、又は投資家の心理等の様々な要因の影響を受け、株価が下がると一般的には取引高が縮小する傾向があります。今後、株式市場が活況を続ける保証はなく、株価の下落とともに取引高が減少した場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
2)信用リスク
株式の信用取引は、証券関連事業における主な収益源の一つですが、同取引においては顧客への信用供与を行っており、顧客が信用取引で損失を被る、あるいは代用有価証券の担保価値が下落する等した場合に、顧客が預託する担保価値が十分でなくなる可能性があります。また、信用取引にかかる証券金融会社からの借入のために差入れた有価証券等の担保価値も変動するため、証券市況の変化に伴い、担保価値が下落した場合、追加の担保の差入れを求められることがあり、そのために必要な資金は独自に確保する必要があります。この場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当企業グループは、顧客から借入れた株式を他のブローカー・ディーラーに貸付ける場合があります。株式の時価が急激に変化し、株式の貸付先が決済不履行した場合、当企業グループは、損失を被る場合があります。株式市場における変動は、貸株取引を行っている当事者が決済不履行となるリスクをもたらす場合があります。また、当企業グループが貸株業務における顧客基盤を拡充することができず、株式の貸付先である他の証券会社と良好な関係を維持できない場合、当企業グループの評判、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、店頭外国為替証拠金取引は、定められた額の証拠金を担保として預託して行う取引であります。そのため、顧客は証拠金の額に比して多額の利益を得ることもありますが、逆に預託した証拠金以上の多額の損失を被ることがあります。外国為替市況の変動に伴い、預託されている証拠金を超える損失が発生した場合において、その総額又は発生件数によっては、無担保未収入金の増加により貸倒損失が発生する、あるいは信用損失引当金の追加計上が必要になる等、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
3)為替変動及びカウンターパーティリスク
当企業グループは、顧客に対する当企業グループのポジションの為替変動等をヘッジするために行う店頭外国為替証拠金取引において、カウンターパーティリスクに直面する場合があります。当該カウンターパーティがシステム障害や業務又は財務状況の悪化等の不測の事態に陥った場合には、顧客に対するポジションのリスクヘッジが実行できないおそれがあり、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
4)引受リスク
当企業グループは、収益源の多様化を図るため、株式等の引受及び募集等の投資銀行業務にも注力しておりますが、引受けた有価証券を販売することができない場合には引受リスクが発生します。有価証券の価格動向によっては、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、特に新規公開株式の引受業務において、当企業グループが主幹事証券として引受業務を行う企業が、新規上場する過程又はその後に評価が低下するような事態が発生した場合には、当企業グループの評価が影響を受け、引受業務の推進に支障をきたす等、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
5)私設取引システム(PTS)運営事業に係るリスク
当企業グループが提供する私設取引システムは、複数の証券会社がシステム接続する本格的な取引所外電子取引市場です。しかしながら、システム障害、決済不能若しくは遅延、又は取引参加証券会社の破綻等の不測の事態により市場運営が困難になった場合には、投資家や取引参加証券会社等の当該私設取引システムに対する信頼性と安全性に対する信頼が損なわれ、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
6)証券関連事業における競合について
証券関連事業については、近年の規制緩和やIT技術の発展により競争が激化する一方で、商品及びサービスの多様化・顧客利便性の向上・独自性の発揮が強く求められてきております。このような状況の中で競争力を維持できない場合には、競合他社に取引シェア・収益などで劣後し、収益性の低下を招く可能性があります。この場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
7)証券関連事業における法的規制について
① 金融商品取引業登録等
当企業グループの一部の構成企業は金融商品取引業を営むため、金融商品取引法に基づく金融商品取引業の登録等を受けており、金融商品取引法、及び同法施行令等の関連法令の適用を受けております。また、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所、及び札幌証券取引所の総合取引参加者等であるほか、金融商品取引法に基づき設置された業界団体である日本証券業協会及び(社)金融先物取引業協会等の定める諸規則にも服しております。当企業グループ及びその役職員がこれら法令等に違反し、登録等の取消し、又は改善に必要な措置等を命じる行政処分が発せられた場合等には、当企業グループの事業の遂行に支障をきたし、あるいは経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
② 自己資本規制比率
第一種金融商品取引業者には、金融商品取引法及び金融商品取引業等に関する内閣府令に基づき、自己資本規制比率の制度が設けられております。自己資本規制比率とは、固定化されていない自己資本の額の、保有する有価証券の価格変動その他の理由により発生し得るリスク相当額の合計に対する比率をいいます。当該金融商品取引業者は自己資本規制比率が120%を下回ることのないようにしなければならず、金融庁長官は当該金融商品取引業者に対しその自己資本規制比率が120%を下回るときは、業務方法の変更等を命ずること、また100%を下回るときは3ヶ月以内の期間、業務の停止を命ずることができ、さらに業務停止命令後3ヶ月を経過しても100%を下回り、かつ回復の見込みがないと認められるときは当該金融商品取引業者の登録を取り消すことができるとされております。また、当該金融商品取引業者は四半期ごとにこの自己資本規制比率を記載した書面を作成し、3ヶ月間全ての営業所に備え置き、公衆の縦覧に供しなければならず、これに違反した場合には罰則が科されます。
③ 顧客資産の分別管理及び投資者保護基金
金融商品取引業者は、顧客資産が適切かつ円滑に返還されるよう顧客から預託を受けた有価証券及び金銭につき、自己の固有財産と分別して管理することが義務付けられております。但し、信用取引により買付けた株券等及び信用取引によって株券等を売付けた場合の代金については、このような分別管理の対象とはなっておりません。また、有価証券関連業を行う金融商品取引業者は投資者保護のために、金融商品取引法に基づき内閣総理大臣が認可した投資者保護基金に加入することが義務付けられており、当企業グループは日本投資者保護基金に加入しております。投資者保護基金の原資は基金の会員である金融商品取引業者から徴収される負担金であり、日本投資者保護基金は、基金の会員金融商品取引業者が破綻した場合には投資家が破綻金融商品取引業者に預託した証券その他顧客の一定の債権について上限を顧客一人当たり10百万円として保護することとなっております。そのため、基金の積立額を超える支払いが必要な会員金融商品取引業者の破綻があった場合、当企業グループを含む他の会員金融商品取引業者は臨時拠出の負担を基金から求められる可能性があります。この場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
④ 金融商品販売法及び消費者契約法
「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」は、金融商品の販売等に際して顧客の保護を図るため、金融商品販売業者等の説明義務及びかかる説明義務を怠ったことにより顧客に生じた損害の賠償責任並びに金融商品販売業者等が行う金融商品の販売等に係る勧誘の適正を確保するための措置について定めております。
また、消費者契約法は、消費者契約における消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に着目し、一定の場合に消費者が契約の効力を否定することができる旨を規定しております。当企業グループでは、かかる法律への違反がないよう、内部管理体制を整備しております。これらの違反が発生した場合には損害賠償責任が生ずるとともに、顧客からの信頼が失墜する等、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
8)証券関連事業に影響を与えるシステムリスク
当企業グループは、インターネットを主たる販売チャネルとしているため、オンライン取引システムの安定性を経営の最重要課題と認識しており、そのサービスレベルの維持向上に日々取り組んでおります。しかしながら、オンライン取引システムに関しては、ハードウェア及びソフトウェアの不具合、処理能力の逼迫、人為的ミス、通信回線の障害、コンピュータウイルス、並びにサイバー攻撃のほか、自然災害等によってもシステム障害が発生する可能性があります。当企業グループでは、かかるシステム障害リスクに備え、365日24時間体制の監視機能、基幹システムの二重化、及び複数拠点におけるバックアップサイト構築等の対応を実施しておりますが、これらの対策にもかかわらず何らかの理由によりシステム障害が発生し、かかる障害への対応が遅れた場合、又は適切な対応ができなかった場合には、障害によって生じた損害について賠償を請求され、当企業グループのシステム及びサポート体制に対する信頼が低下し、結果として相当数の顧客を失う等の影響を受ける可能性があります。また、口座数及び約定件数の増加を見越して適時適切にシステムの開発及び増強を行ってまいりますが、口座数及び約定件数がその開発及び増強に見合って増加しない場合、システムの開発及び増強に応じて減価償却費及びリース料等のシステム関連費用が増加するため、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
9)証券関連事業における顧客情報のセキュリティについて
不正な証券取引注文、重要な顧客データの漏洩又は破壊が起こった場合は、賠償責任を負う場合があり、それが当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、個人情報の保護に関する法律への違反が発生した場合又は顧客データの漏洩若しくは破壊が発生した場合には、顧客からの信頼が失墜する等負の結果が生じ、それによって当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
10)自己勘定によるトレーディング業務に係るリスク
当企業グループは、自己勘定による有価証券・外国為替等に関するトレーディング業務を行っております。当該トレーディング業務では、市場動向や顧客側の取引需要の影響で当企業グループにとって不利な事象が生じ、取引の低迷や保有ポジションの時価変動により損失を被るリスクがあります。トレーディングに係るリスクを低減するため、ヘッジ取引やポジション管理を行うほか、継続的なモニタリングを行っておりますが、想定を超える市場変動等により、ヘッジが有効に機能しない場合やポジションの速やかな処分が進まない場合、取引先が受渡決済を含む債務不履行に陥った場合、保有する有価証券の発行体が信用状況を著しく悪化させた場合には、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
・銀行関連事業に係るリスク
1)銀行関連事業全般に係るリスク
銀行関連事業(銀行業、無担保ローン、クレジットカード・信販及びリース事業等)においては、信用リスク、市場リスク、流動性リスク、コンプライアンスリスク、オペレーショナル・リスク、システムリスク、情報セキュリティリスク、外部委託にかかるリスク、イベントリスク、風評リスク、自己資本比率悪化リスク、事業戦略リスク、及び規制変更リスク等の広範なリスクへの対応が必要となります。態勢整備が不十分であった場合、当企業グループの事業の遂行に支障をきたす可能性があります。
当該事業は、債券、証券化・流動化商品、デリバティブ取引などの金融商品等への投資を行っております。また、預金・貸出金等の長短金利ギャップに伴う金利リスクを抱えております。そのため、リスク限度の設定、損失額についての損失限度の設定や、個別商品への投資上限の設定等を行い、厳格なリスク管理体制を整備しております。しかしながら、金融市場動向や景気動向等により、予想を超えて金利等の各種経済条件が大幅に変動した場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
2)信用リスク
当企業グループは、顧客の状況、差し入れられた担保の価値及び経済全体の見通しに基づいて、信用損失引当金の額を決定しています。実際の貸倒損失は、予測したそれと大きく異なり、引当額を大幅に上回り、信用損失引当金が不十分となる可能性があります。また、経済状況の悪化により当企業が前提及び見通しを変更したり、担保価値が下落したり、又はその他の要因により予測を上回る悪影響が生じた場合には、貸倒損失が発生する、あるいは信用損失引当金の追加計上が必要になる等、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
3)市場リスク
当企業グループは、債券、株式、デリバティブ商品等の多種の金融商品に対し、日本の国内外において、広く取引・投資活動を行っております。これらの活動による業績は、金利、外国為替、債券及び株式市場の変動等により変動しますが、急激な株式相場の下落や長期金利の上昇に伴う債券等の価格下落等による資産の目減り、顧客の減少等に伴う貸出業務や投資業務等における収益の減少、利鞘の縮小等が予想され、これらが当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、当企業グループは、クレジットトレーディングや証券化業務において、住宅ローン、不良債権、売掛債権、リース資産等の多様な資産に対する投資を行っており、最終的には、これを回収、売却又は証券化することを目的としております。そのため、特定の資産又は特定の格付若しくは種類の有価証券を集中的に保有する場合があります。かかる営業資産から得られる当企業の収益が予想より少ない場合(当企業グループにより証券化された資産のプールにおいて、当企業グループ自身がその残余持分を保有している場合におけるその残余持分の価値の下落を含む)には、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、こうした当企業グループが取得できる資産の市場規模及びその価格は常に変動していることから、当企業グループが魅力的な投資機会を常に得られるとは限らず、投資活動の結果が大きく変動する場合もあります。
4)流動性リスク
安定的な資金繰り運営を継続することを目的として、資金調達方法の多様化や、調達環境の状況に応じた流動性リスク指標のモニタリングを通じ、適切な流動性リスク管理に努めておりますが、以下のとおり、資金の効率的な調達が困難となるリスクがあります。
・今後、リテールバンキング業務及び同業務にかかる預金の営業基盤・顧客基盤が伸び悩む可能性があります。
・国内の公社債市場の変化や市況動向により、社債又はその他の債券を発行することに制限が生ずる可能性があります。
・日本銀行のマイナス金利を含む金利に係る方針の変更により、金融市場における資金需給が変化した場合、当企業グループの資金調達は何らかの影響を受ける可能性があります。
・海外の金融市場の混乱や金融経済環境の悪化等により、資金調達の条件悪化を含め、外貨資金調達が不安定化、非効率化する可能性があります。
・人々の認識や市場環境の著しい変化により、資金調達のコストが増加し、又は十分な流動性を確保することが予期に反して困難となる可能性があります。
また、格付機関により信用格付が下げられると、銀行間市場での短期資金調達あるいは資本調達活動等において相手方との取引を有利な条件で実施できず、又は一定の取引を行うことができない可能性があります。そのため、当企業グループの資金調達コスト増加ないし流動性の制約、デリバティブ取引あるいは信託業務上の制約等により当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
5)オペレーショナル・リスク
当企業グループでは、幅広い金融業務において大量に事務処理を行っておりますが、事務フローの改善、事務指導、研修等の実施や、表記方法の見直し等による手続き内容の明確化等事務水準の向上にも努めており、事務処理状況の定期的な点検等により事務レベルをチェックする体制等を整えております。また、お客さま本位の業務運営に反した行為等のコンダクトリスクに対して、ミスコンダクト事案の広範な捕捉やリスク軽減策の実施等の管理体制の高度化に努めております。しかしながら、こうした対策が有効に機能せず、又は当企業グループや外部委託先の役職員が正確な事務を怠る、あるいは事故・不正等を起こした場合には、損失の発生、行政処分、レピュテーションの毀損等により、当企業グループの業務運営や、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
6)銀行関連事業に影響を与えるシステムリスク
当企業グループは、情報システム及びインターネットにより顧客にサービスを提供しておりますが、システムの処理能力や信頼性に大きく依存しております。過去に発生しましたATM、インターネットバンキングサービスや他行宛て送金取引に係る不具合等に対して、発生原因の究明及び十分な再発防止策を講じておりますが、今後とも不具合やサービスの停止が発生する可能性があります。また、当企業グループのシステムには人為的ミス、自然災害、停電、システム連携先または外部委託先の障害、サイバー攻撃等の不正・妨害、機密情報の漏洩、ハッキングによる不正利用等が今後も発生する可能性があります。システム障害等により提供する金融サービスの中断や停止が発生した場合、レピュテーションや営業基盤の毀損等により、当企業グループの業務運営や経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
7)銀行関連事業における顧客情報のセキュリティについて
当企業グループは、銀行関連事業に関連し保有した多数の個人情報について、個人情報保護法に従い、個人情報の保護及び適切な利用に努めておりますが、万一個人情報の漏洩又は不正アクセス等による事故が発生した場合、その損害に対し賠償を行う必要があると同時に、関連監督当局から行政処分等を受ける可能性があります。さらに漏洩事故の発生により、顧客や市場の当企業グループに対する信用の低下を招き、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
8)銀行関連事業における法的規制について
当企業グループは銀行関連事業を行うにあたり、会社法、銀行法、独占禁止法、金融商品取引法、貸金業法、外国為替及び外国貿易法、犯罪による収益の移転防止に関する法律等並びに外国における同様の法律等の広範な法令上の制限及び監督官庁による監視を受けております。また、金融当局による自己資本規制その他の銀行関連業務規制に加えて、業務範囲についての制限を受けております。こうした金融関連法規・規制をはじめ、その他の適用法規・規制の遵守を怠った場合には、重大なレピュテーショナルリスクに晒される他、法令等に基づき「業務改善命令」や「業務停止命令」といった行政処分や、その他の制裁・罰則・賠償請求を受けること等により、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、当企業グループは現時点の規制に従って業務を遂行していますが、法律、規制、税制、実務慣行、法解釈、財政や金融その他政策の変更又は当局との見解の相違並びにそれらによって発生する事態が、当企業グループの業務運営や業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当企業グループにおける各銀行は、銀行法及び金融庁長官の告示に基づく自己資本比率規制に服しており、海外に支店等の営業拠点を有しない銀行として、自己資本比率を4.0%以上に保つことが義務付けられておりますが、「事業等のリスク」に記載する各種リスクの顕在化等により、自己資本比率は低下する可能性があります。この最低比率を維持できない場合には、当企業グループにおける各銀行は行政処分を受ける可能性があり、当企業グループの業務遂行能力が間接的に影響を受ける可能性があります。
9)コンシューマーファイナンス事業に係るリスク
当企業グループは、銀行関連事業における中核業務として、コンシューマーファイナンス業務(個人向け無担保ローン等)を行っております。コンシューマーファイナンス業務を営む子会社は、過去に発生した所謂「グレーゾーン金利」(超過利息あるいは過払金)に関して、将来に発生する過払金返還及びそれに関連する貸倒損失を見積もった上で引当金を計上しております。これにより、過払金返還に係る追加的な損失の発生は限定的なものになると認識しておりますが、現在の引当金額が将来の過払金返還請求及び関連する貸倒損失への対応として不十分である場合、将来追加の費用が生じる可能性があり、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
10)株式会社SBI新生銀行に対する政府の影響力について
当企業グループの連結子会社であるSBI新生銀行は公的資金による資本増強を行っており、政府(預金保険機構及び整理回収機構)が普通株式の一定割合を有しております。公的資金を受ける際に法律に基づき、SBI新生銀行は経営健全化計画の作成及び定期的な見直しを義務付けられております。この経営健全化計画の収益目標と実績値が大幅に乖離した場合、SBI新生銀行は金融庁より業務改善命令を受ける可能性があります。また同計画について、中小企業に対する貸出に関する計画目標を達成できない場合等にも業務改善命令を受ける可能性があります。
政府は株主及び監督当局の両方の立場から、SBI新生銀行の経営に対して影響を与える可能性があり、SBI新生銀行経営陣の事業戦略とは異なる対応等を求める可能性があります。またSBI新生銀行の普通株式配当は、経営健全化計画に基づき一定の制約を受ける事から、SBI新生銀行の利益水準と照らして十分な配当を、当企業グループが受けられない可能性があります。
11)海外における銀行業に係るリスク
海外における銀行業においても、信用リスク、市場リスク、流動性リスク、コンプライアンスリスク、事務リスク、システムリスク、情報セキュリティリスク、外部委託にかかるリスク、イベントリスク、風評リスク、自己資本比率悪化リスク、事業戦略リスク、及び規制変更リスク等の広範なリスクへの対応が必要となります。態勢整備が不十分であった場合、当企業グループの事業の遂行に支障をきたす可能性があります。また、当該事業が予定していた事業計画を達成できず、投資に見合うだけの十分な収益を将来において計上できない場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。さらに、現地において自己資本比率規制等が適用されており、当該比率が悪化した場合、現地当局から様々な規制及び命令を受けることになります。その場合、業務が制限されること等により、顧客に対して十分なサービスを提供することが困難となり、その結果、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、このような事態を避けるため、当企業グループからの追加出資等が必要となる可能性があり、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
・その他の金融サービス事業に係るリスク
1)保険業に係るリスク
保険業においては、保険引受リスク、市場関連リスク、信用リスク、流動性リスク、事務リスク、システムリスク、情報漏洩リスク、法務リスク、及び災害リスク等の広範なリスクへの対応が必要となります。そのためリスク管理態勢の改善を続けておりますが、態勢整備が不十分であった場合、当企業グループの事業の遂行に支障をきたす可能性があります。また、当該事業が当初予定していた事業計画を達成できず、初期投資に見合うだけの十分な収益を将来において計上できない場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
生命保険業においては、保険料設定時の想定を超えて、社会・経済情勢の変化により死亡率・羅患率が上昇した場合等に、追加で保険金・責任準備金等の費用負担が発生し、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
なお、損害保険業においては、自動車保険の保有契約件数が順調に伸びているものの、会計上、保険料売上の計上と同時に未経過分の保険料を責任準備金として費用計上する必要があるため、契約件数が伸びているうちは費用が先行する傾向にあります。今後も事業費の圧縮等に努めてまいりますが、費用を先行して計上すること等により、ソルベンシー・マージン比率の維持のための追加出資等が必要となり、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
2)オペレーティングリースのアレンジメント事業に係るリスク
当企業グループではオペレーティングリースのアレンジメント事業を行っており、今後、対象となる事業資産の稼働率の低下や資産価値の下落により、当該資産の販売が低迷した場合、減損損失の計上等が発生し、当企業グループの業績及び財政状況に影響を与える可能性があります。
3)その他の金融サービス事業に影響を与える法的規制ついて
当該事業においては、貸金業法、銀行法、保険業法、及び関連諸規則、並びにこれらの法令等に基づく許認可の取得又は届出を行っております。当企業グループ及びその役職員がこれらの法令等に違反し、業務改善命令あるいは認可又は登録の取消等の行政処分を受けた場合、当該事業の遂行に支障をきたし、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
4)その他の金融サービス事業に影響を与えるシステムリスク
当該事業は、コンピュータシステムに依存する部分が多いため、地震や水害等の大規模広域災害、火災等の地域災害、コンピュータウイルス、電力供給の停止、通信障害、通信事業者に起因するサービスの中断、又は予測不可能なシステム障害により顧客へのサービスが遅延、中断又は停止する場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、当該事業では、主に受託開発並びに運用及び保守業務等を行っておりますが、IT関連業界は技術革新が継続しており、新技術の登場により業界の技術標準又は顧客の利用環境が変化します。これら新技術への対応が遅れ、当企業グループの提供するサービスが陳腐化又は不適応化し、業界内での競争力低下を招く等により、これらの事業が当初予定していた事業計画を達成できず、初期投資に見合うだけの十分な収益を将来において計上できない場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。更に提供するサービスでの障害発生や、障害復旧を円滑に対応できない場合は、提供先からの損害賠償請求や風評の低下を招く可能性があります。
5)その他の金融サービス事業における顧客情報のセキュリティについて
個人情報の保護に関する法律への違反や個人情報の漏洩事件等が発生した場合、顧客からの信用を失う可能性があり、法的な、あるいはその他のコストが発生する可能性があります。これらのコストはいずれも、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
<資産運用事業に係るリスク>
1)資産運用事業で運営するファンドの運用成績の低迷に係るリスク
当企業グループの資産運用事業は、公募又は私募の投資信託や投資助言を行っておりますが、これらは当初期待していた通りの運用成績が達成できない可能性があります。その場合、投資家への販売額の低下や、評価額の減少、解約、新規ファンドの設定が困難となること等による預かり資産の減少を通して、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
2)金融機関の動向
当企業グループの資産運用事業のうち、一般投資家向け投資信託の販売について金融機関に委託しております。また金融機関の自己資金の受託による私募投資信託の運用を行っております。金融機関は資産運用業務における主要顧客であり、金融機関の投資信託販売業務や資金運用方針の変更は、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
3)資産運用事業における競合について
公募又は私募の投資信託や投資助言を行う資産運用事業は、国内外の大手金融機関が積極的に経営資源を投入した場合や、業界内プレーヤーの統廃合等により、競合他社の規模が拡大した場合は、競争環境が変化する可能性があります。このような競争環境の変化に当企業グループが柔軟に対応できなかった場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
4)資産運用事業に影響を与える法的規制について
当企業グループ内には、投資信託委託会社として金融商品取引法に基づき投資運用業及び投資助言・代理業の登録を行っている会社があります。今後これら金融商品取引法及びその関連法令等に関し改正が行われた場合又は何らかの理由によりこれらの登録の取消処分を受けた場合には、当該事業の業務遂行に支障をきたすとともに当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
<投資事業に係るリスク>
1)投資事業における事業環境の変化等による影響
当企業グループ及び当企業グループが運営する投資事業組合等が行う投資事業については、保有株式の売却によるキャピタルゲインや投資事業組合等管理収入が主な収益源でありますが、これらは政治、経済又は産業等の状況や、新規公開市場を含む株式市場全般の動向に大きく影響を受けます。当該事業においては、これら当企業グループがコントロールできない外部要因によって業績が変動し、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、当社は、国際会計基準(IFRS会計基準)に基づき、投資事業等を通じて保有する多額の投資有価証券の公正価値を売却の有無に関わらず毎四半期ごとに見直し、各期末における公正価値評価額の増減を公正価値の変動による損益として認識しております。そのため、株式市場及び債券市場が著しく変動する等し、かかる投資有価証券の公正価値の変動による多大な損失等を計上した場合、当企業グループの財政状態に影響を与える可能性があります。
2)当企業グループが運営する投資事業組合等における外部投資家に係るリスク
ファンドの運用成績が不調の場合、既存又は新規の外部投資家からの新規資金調達が困難になる場合があります。また、既存の外部投資家が、流動性の低下、財務の健全性の低下、又は財務上困難な状況となる場合、当企業グループが既存の投資家からの出資約束金額を利用できなくなる場合があります。当企業グループの投資事業における新規ファンドの募集が困難となる場合は、当初予定していたとおりにファンドを運用できなくなる可能性があり、その結果、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
3)投資リスク
当企業グループ及び当企業グループが運営する投資事業組合等からの投資先企業には、ベンチャー企業や事業再生中の企業が多く含まれます。これらの企業は、その将来見通しにおいて不確定要因を多く含み、今後発生し得る様々な要因により、これら投資先企業の業績が変動する可能性があります。かかる要因には、急激な技術革新の進行や業界標準の変動等による競争環境の変化、優秀な経営者や社員の維持及び確保、並びに財務基盤の脆弱性の他に、投資先企業からの未開示の重要情報等に関するものを含みますが、これらに限定されるわけではありません。
また、当企業グループが投資しているいくつかの事業は、本質的に投機的及びリスクのある業種において行われているものです。このような不確実性を伴う投資リスクは結果として損失となり、その結果、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
4)為替リスク
当企業グループ及び当企業グループが運営する投資事業組合等が、外貨建ての投資を行う場合には為替変動リスクを伴います。投資資金回収の時期や金額が不確定であるため、為替レートの変動が当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
5)海外投資リスク
当企業グループ及び当企業グループが運営する投資事業組合等が、海外での投資活動を行う場合には、現地において経済情勢の変化、政治的要因の変化、法制度の変更、又はテロ等による社会的混乱等が発生する可能性があります。こうしたカントリーリスクを極小化させたり、完全に回避することは困難であり、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
特に当企業グループのファンドは、中国及びその他のアジア諸国を含む新興市場の企業に対して投資を行っております。数多くの新興市場の国々は経済的にも政治的にも発展途上であり、確固たる基盤を持った証券市場を有していない場合があります。新興市場における企業への投資には高いリスクを伴う可能性があり、また投機的となる場合があります。
将来において、当企業グループのファンドが新興市場において期待されたとおりの運用成績を達成できなかった場合、当企業グループの事業、成長見通し、ファンドの募集、管理報酬等の収入、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。
6)投資事業における競合について
ベンチャー投資や企業再生型の投資事業は新規参入を含め競合が激しく、国内外の金融機関や事業会社等による多数のファンドが設定される状況下、当企業グループの競争力が将来にわたって維持できる保証はありません。また、画期的な新規サービスを展開する競合他社の出現や競合先同士の合併、連携その他の結果、当企業グループが企図する十分な規模のファンドの募集を実施できない、あるいは投資実行において十分な収益を獲得できる有望な投資先企業の発掘ができない可能性があります。この場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
7)投資事業に影響を与える法的規制について
当企業グループが運営する投資事業組合等は、その運営において金融商品取引法、貸金業法、会社法、民法、投資事業有限責任組合契約に関する法律、及びその他国内外の法令の対象となっており、これらを遵守する必要があります。今後これら金融商品取引法及びその関連法令等に関し改正が行われた場合又はこれらの法的規制が及ぶことにより当企業グループの活動が制限される場合には、当該事業の業務遂行に支障をきたすとともに当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
<暗号資産に係るリスク>
1)暗号資産の交換・取引サービス等を行う事業における法令諸規則等の事業環境等の変化等による影響
当企業グループでは、資金決済法第63条の2に基づき、暗号資産交換業者として内閣総理大臣の登録を受け、同法及び関係法令による各種規制並びに金融庁の監督を受ける暗号資産交換業を営んでおります。当企業グループは自主規制機関である一般社団法人日本暗号資産取引業協会に加入していることから、同協会の諸規則にも服しております。そのため、これらの法令、諸規則、業界の自主規制ルール等の制定又は改定等が行われることにより、当初の計画通りに事業を展開できなくなる可能性があります。規制の内容によっては、暗号資産全般に係る事業環境の著しい変化や価格変動等をもたらす可能性があり、当企業グループの事業活動及び経営成績に影響を与える可能性があります。
また、諸法令等に違反する事実が発生した場合には、登録その他認可業務の取消、業務の全部又は一部の停止等の行政処分を受ける可能性があり、当企業グループの風評、事業展開、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
2)サイバー攻撃等による暗号資産の消失に伴うリスク
当企業グループは、管理する電子ウォレットにおいて顧客の所有する暗号資産の預託を受けております。また、マイニング事業等を通じ、自己勘定として暗号資産を保有しております。
権限のない第三者による電子ウォレットに対する不正アクセスのリスクを軽減するためのサイバーセキュリティ対策等を講じておりますが、電子ウォレットに対して不正アクセスが行われた場合には、権限のない第三者によりこれらの電子ウォレットに保管される暗号資産が消失させられるとともに、当企業グループがこれらの暗号資産を取り戻せない可能性があります。当企業グループが保有する暗号資産の消失及び当企業グループの顧客の暗号資産の消失により、顧客に対する多額の弁済が生じる可能性があるとともに、当企業グループの経営成績及び財政状態、今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
3)市場リスク
当企業グループは、暗号資産を保有するとともに、暗号資産交換業を運営しており、様々な要因に基づく暗号資産の価格及び取引規模の変動により、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
4)信用リスク
当企業グループは、暗号資産に係る事業において、金融商品取引業者として顧客に対して証拠金取引を提供しております。同取引においては顧客への信用供与を行っており、取引の損失は預かった証拠金の範囲内に収まるよう、ロスカットルールを設定しておりますが、暗号資産の価格が急激に変動し、顧客が追加の証拠金の差し入れや取引の決済が行えなくなった場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、当企業グループでは、暗号資産の売買取引や貸借取引を行っております。また、暗号資産の価格が大きく変動し、貸付先が期限での返済や追加担保の差し入れに応じられなくなった場合、それら債務が履行されないリスクが存在します。更に自己の保有する暗号資産について、他の暗号資産取引業者に預入している場合、預入先に信用不安が発生した場合、預入暗号資産の引出しや回収ができないリスクがあります。これらは、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
次世代事業分野におけるリスク
<バイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業に係るリスク>
当該事業において主に一般用医薬品の研究開発に注力しておりますが、当企業グループの研究開発努力が商業的に成功する製品の開発又は画期的な製造技術の開発につながる、あるいはこれらの研究プロジェクトが当初予定していたとおりの業績をもたらすという保証はありません。当企業グループのバイオテクノロジー製品は多くの場合、販売目的で市場に投入する前に臨床試験を実施する必要があります。この過程には費用及び時間がかかり、その結果は不確実なものです。研究開発及び臨床試験に莫大な時間と費用を費やしたにもかかわらず、開発途中の製品に対して商業販売の認可が下りなかった場合、又はバイオテクノロジー製品に関する製造物責任に関する賠償請求の対象になった場合は、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、当企業グループ又は製品の製造委託先において、経営成績及び財政状態の悪化、技術上若しくは法規制上の問題、原料の不足、又は自然災害の発生等により、製品の安定的な供給に支障が生じる可能性があり、その動向によっては当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事法等及び薬事行政指導、その他関係法令等により様々な規制を受けており、当該事業は薬事法をはじめとする現行の法的規制及び医療保険制度、それらに基づく医薬品の価格設定動向等を前提として事業計画を策定しています。しかしながら、当該事業において開発を進めている製品が現実に製品として上市されるまでの間、これらの規制や制度・価格設定動向等が変動しない保証はありません。もしこれらに大きな変動が発生した場合には、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
<新技術関連事業に係るリスク>
新技術に基づいた事業については、当該技術が成熟されていない事による損失の発生や、当該技術を用いたサービス・製品が当初予定した通りに拡大しない可能性があります。また、法規制等が十分に整備されていない新技術を利用した事業領域へ進出する場合、当該新技術に基づいた事業領域におけるステークホルダーの権利が十分に保護されず、当企業グループ又は当企業グループの顧客の権利・資産が毀損する、訴訟が発生する等の恐れがあります。これらの恐れが顕在化した場合には、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
<開発途上地域における事業に係るリスク>
開発途上地域での事業については、法規制、取引慣行、経済状況、政情、文化等に係るリスクについて十分に調査・検証した上で取り組んでおりますが、事業開始時点では想定されなかった事象が起こる可能性があります。特にクーデター等による政変、テロ、法規制の急変、国際社会による経済制裁等が発生した場合、これまで培った金融分野でのナレッジ等が活かせない可能性があり、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当期における当企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期における我が国経済は、下半期こそ実質GDP成長率がマイナスとなったものの、通年ではプラス2%近くとなり回復基調が見られました。また2024年2月22日に日経平均株価が史上最高値となる3万8,915円を更新し、3月には4万円を突破するなど、株式市場は極めて好調でした。一方でゼロ金利政策の解除による長期的な金利上昇や、日米の金利格差などを要因とする円安の進行とそれに伴う輸入価格の上昇が引き起こすインフレなど、今後の動向を注視すべき状況にあります。
このような状況下で、当社の当連結会計年度における連結業績は、収益が前期比26.5%増の1兆2,105億円となり過去最高を更新しました。金融サービス事業の収益が前期比22.0%増の1兆314億円となったことが大きく貢献しています。
利益面については、金融サービス事業が堅調であったことに加え、前期において一部取引先破綻の影響もあり税引前損失約184億円を計上していた暗号資産事業が、税引前利益約84億円と大きく好転したことも寄与し、連結での税引前利益は前期比38.6%増の1,416億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同146.1%増の872億円となりました。
当企業グループにおいて、収益および利益の両面で最大かつ安定的な貢献をしている金融サービス事業につきましては、SBI証券は、2023年9月30日注文受付分からオンラインでの国内株式売買手数料を無料にするゼロ革命を開始したにもかかわらず、4年超をかけて準備してきた収益源の多様化等の諸施策が奏功し、当連結会計年度の業績は前期比で増収増益を達成しました。また、金利上昇局面を見据え経営資源を傾斜配分してきた銀行事業は、既に連結業績に対する寄与度の点で証券事業を上回る規模となっており、その中核となるSBI新生銀行は、銀証連携を中心とする当企業グループとの連携諸施策で既に一定の成果を挙げ、当連結会計年度の業績は、2011年3月期以来13年ぶりに実質業務純益が1,000億円を突破するなど、前期比で大幅な増収増益を達成しています。
当企業グループは、「金融サービス事業」や「資産運用事業」、「投資事業」に加え、今後も成長領域として期待される「暗号資産事業」、バイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業のほかWeb3関連の先進的な分野に取り組む事業等が含まれる「次世代事業」の5つの事業セグメントを報告セグメントとしております。
なお、従来「非金融事業」としていたセグメントを「次世代事業」に名称変更しております。これは、当該セグメントに含まれているデジタルアセット領域の事業に関して、セキュリティトークンなどの形で金融の領域とも密接に関係していくことから、より実態を反映した名称に変更すべく実施しております。
報告セグメントごとの業績は次のとおりであります。
|
収益 |
|
税引前利益 |
||||||
|
前期 |
|
当期 |
|
前期 |
|
当期 |
||
|
百万円 |
|
百万円 |
% |
|
百万円 |
|
百万円 |
% |
金融サービス事業 |
845,166 |
|
1,031,439 |
22.0 |
|
152,040 |
|
164,981 |
8.5 |
資産運用事業 |
27,966 |
|
29,449 |
5.3 |
|
10,123 |
|
4,843 |
(52.2) |
投資事業 |
36,684 |
|
88,353 |
140.8 |
|
(16,661) |
|
(8,288) |
- |
暗号資産事業 |
30,320 |
|
57,142 |
88.5 |
|
(18,429) |
|
8,428 |
- |
次世代事業 |
26,238 |
|
26,637 |
1.5 |
|
(3,253) |
|
(4,952) |
- |
計 |
966,374 |
|
1,233,020 |
27.6 |
|
123,820 |
|
165,012 |
33.3 |
消去又は全社 |
(9,397) |
|
(22,516) |
- |
|
(21,680) |
|
(23,443) |
- |
連結 |
956,977 |
|
1,210,504 |
26.5 |
|
102,140 |
|
141,569 |
38.6 |
(%表示は対前期増減率)
(金融サービス事業)
国内外における証券関連事業、銀行事業、保険事業を中核とした多様な金融関連事業を行っております。
当期における収益は1,031,439百万円(前期比22.0%増加)、税引前利益は164,981百万円(同8.5%増加)となりました。これは主に、銀行事業における「償却原価で測定される金融資産から生じる受取利息」の増加等の要因によるものであります。
(資産運用事業)
投資信託の設定、募集、運用などの投資運用や投資助言、金融商品の情報提供等を行っております。
当期における収益は29,449百万円(同5.3%増加)、税引前利益は4,843百万円(同52.2%減少)となりました。これは主に、前期において、Morningstar, Inc.に「モーニングスター」ブランドを返還することによる収益を8,000百万円計上したこと等の要因によるものであります。
(投資事業)
国内外のIT、フィンテック、ブロックチェーン、金融及びバイオ関連のベンチャー企業等への投資に関する事業等を行っております。
当期における収益は88,353百万円(同140.8%増加)、税引前利益は8,288百万円の損失(前期は16,661百万円の損失)となりました。これは主に、企業への投資において認識される「FVTPLで測定する金融資産から生じる収益」の増加等の要因によるものであります。
(暗号資産事業)
暗号資産の交換・取引サービスを提供する暗号資産交換業等を行っております。
当期における収益は57,142百万円(同88.5%増加)、税引前利益は8,428百万円(前期は18,429百万円の損失)となりました。これは主に、暗号資産価格の上昇等の要因によるものであります。
(次世代事業)
生体内に存在するアミノ酸の一種である5-アミノレブリン酸(5-ALA)を活用した医薬品・健康食品・化粧品の開発・販売や、がん及び免疫分野等における抗体医薬・核酸医薬の研究開発に関する事業、医療・健康情報のデジタル化や医療ビッグデータの活用を推進するソリューション・サービスの提供及び医療金融に関する事業等を行うバイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業のほか、Web3関連の先進的な分野に取り組む事業や再生可能エネルギー事業、アフリカをはじめとした海外新市場で展開する事業等を行っております。
当期における収益は26,637百万円(同1.5%増加)、税引前利益は4,952百万円の損失(前期は3,253百万円の損失)となりました。
なお、当期末の総資産は27,139,391百万円となり、前期末の22,301,975百万円から4,837,416百万円の増加となりました。また、資本は前期末に比べ155,364百万円増加し、1,907,346百万円となりました。
② キャッシュ・フロー
当期末の現金及び現金同等物残高は4,580,335百万円となり、前期末の3,200,916百万円から1,379,419百万円の増加となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,345,740百万円の収入(前期は960,743百万円の収入)となりました。
これは主に、「営業債権及びその他の債権の増減」が936,261百万円の支出となった一方で、「顧客預金の増減」が1,397,222百万円の収入及び「社債及び借入金(銀行業)の増減」が678,701百万円の収入となったこと等の要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、65,116百万円の支出(前期は1,075,054百万円の支出)となりました。
これは主に、「投資有価証券の売却及び償還による収入」が1,843,947百万円となった一方で、「投資有価証券の取得による支出」が1,834,145百万円となったこと等の要因によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、29,172百万円の収入(前期は810,425百万円の収入)となりました。
これは主に、「社債の償還による支出」が1,747,111百万円、「長期借入金の返済による支出」が157,131百万円及び「短期借入金の純増減額」が146,991百万円の支出となった一方で、「社債の発行による収入」が2,098,864百万円となったこと等の要因によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
生産及び受注の実績については、該当する情報がないため記載しておりません。また、販売の実績については、「① 財政状態及び経営成績の状況」に各セグメントの収益として記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当企業グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当期末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積もり
当企業グループの連結財務諸表はIFRS会計基準に準拠して作成しております。IFRS会計基準に準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、他の情報源から直ちに明らかにならない資産及び負債の帳簿価額について、見積もり、判断及び仮定の設定を行う必要があります。見積もり及びそれに関する仮定は、関係が深いと思われる過去の経験及びその他の要素に基づいております。実績はこれらの見積もりと異なる場合があります。
当企業グループの会計方針については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等」の「(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要性がある会計方針」に記載のとおりであります。また、当該会計方針のうち、将来に関する仮定及び報告期間末における見積もりの不確実性の要因となる事項で、特に重要性があるものについては、「(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2 作成の基礎 (4) 見積もり及び判断の利用」に記載しております。これらは、当期及び来期以降に資産や負債の帳簿価額に対して重大な調整をもたらすリスクを含んでおります。
② 当期の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当期における当企業グループを取り巻く事業環境は、我が国の実質GDP成長率が下半期こそマイナスとなったものの、通年ではプラス2%近くとなり回復基調が見られたほか、2024年2月22日に日経平均株価が史上最高値となる3万8,915円を更新し、3月には4万円を突破するなど、株式市場が好調でした。一方でゼロ金利政策の解除による長期的な金利上昇や、日米の金利格差などを要因とする円安の進行とそれに伴う輸入価格の上昇が引き起こすインフレなど、今後の動向を注視すべき状況にあります。
(金融サービス事業)
金融サービス事業の収益は、前期比22.0%増加の1,031,439百万円、税引前利益は前期比8.5%増加の164,981百万円となりました。
株式会社SBI証券は、2023年9月30日発注分から日本で初となる「ゼロ革命」(オンラインでの国内株式売買手数料の無料化)を開始したことで、約158億円もの逸失収益が有ったにもかかわらず、4年超にわたり進めてきた収益源の多様化が奏功し収益減少をオフセットしたことで、営業収益、営業利益のいずれも過去最高となりました。
株式会社SBI新生銀行は、法人業務での貸出残高増加に伴う利鞘や手数料収益の増加、アプラスの割賦収益の増加等に伴い、前期比で大幅な増収増益となりました。持分法適用関連会社の住信SBIネット銀行株式会社は、住宅ローン事業が堅調に拡大したものの、2023年3月の同社株式の上場時に持分の一部を売却し所有比率が減少した影響で、当社におけるIFRS会計基準取り込みベースの持分法による投資利益は減益となりました。韓国の株式会社SBI貯蓄銀行は、基礎的収支は堅調に推移したものの、引き続き韓国国内の景況悪化に伴う信用悪化と延滞増加による貸出償却負担の増加などが影響し減益となりました。
SBIインシュアランスグループ株式会社は、保有契約件数の堅調な増加により増収増益となりました。
(資産運用事業)
資産運用事業の収益は、前期比5.3%増加の29,449百万円、税引前利益は前期比52.2%減少の4,843百万円となりました。
2022年11月に当企業グループ入りしたSBI岡三アセットマネジメント株式会社の業績が通期で寄与したことにより、前期比で増収を達成し過去最高となった一方で、SBIグローバルアセットマネジメント株式会社が前期に「モーニングスター」ブランドを返還したことにより受け取った対価80億円分の利益が剥落したことが減益に影響しています。
(投資事業)
投資事業の収益は、前期比140.8%増加の88,353百万円、税引前利益は8,288百万円の損失(前期は16,661百万円の損失)となりました。投資先企業の公正価値評価について、上場銘柄において評価益及び売却益を計上したものの、一部未上場銘柄において前期の反動から評価損を計上したことや、SBIリーシングサービス株式会社が運営する匿名組合における外貨建借入から生じる為替差損を計上したことが影響しています。
(暗号資産事業)
暗号資産事業の収益は、前期比88.5%増加の57,142百万円、税引前利益は8,428百万円(前期は18,429百万円の損失)となりました。2024年1月にビットコイン(BTC)の現物ETFが承認された影響などで、BTC価格が史上最高値を更新する環境下で、取引所事業が好調だったことに加え、マーケットメーカーのB2C2 Limitedが海外における暗号資産取引の拡大をうまく取り込めたことが大きく貢献しました。
(次世代事業)
次世代事業の収益は、前期比1.5%増加の26,637百万円、税引前利益は4,952百万円の損失(前期は3,253百万円の損失)となりました。
バイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業で、5-ALA関連事業において健康食品事業用の原料在庫の評価替えに伴う特別損失を計上したことに加え、Web3・デジタルアセット等の先端技術領域において、グローバルでの事業拡大が進む中で先行投資が増加したことが影響しています。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載しております。
④ 戦略的事業展開について
戦略的事業展開については、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
(a) 資金需要及び資金の調達源
当企業グループの事業活動における主な資金需要としては、証券関連事業における信用取引に係る顧客への貸付資金、銀行関連事業及び海外金融サービス事業における貸付資金、投資事業における投資資金等があります。これらの資金需要に対して、市場環境や長短のバランスを考慮し、銀行借入による間接金融、社債やエクイティファイナンス等の直接金融、証券会社や証券金融会社との取引、コールマネー、顧客預金の受入及び貸出金その他の資産の流動化等により資金を調達しております。
(b) キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フロー」に記載しております。
当社及び当社の完全子会社であるSBI地銀ホールディングス株式会社(以下、公開買付者)は2022年5月12日付の各取締役会決議に基づき、公開買付者が、株式会社SBI新生銀行の普通株式(以下、対象株式)を金融商品取引法(昭和23年法律第25号。その後の改正を含む)による公開買付けにより取得することを決定しました。
本公開買付けの買付け期間は2023年6月23日に終了し、2023年6月30日に公開買付者は対象株式7,547,389株を取得しております。
当企業グループの当期における研究開発費は
バイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業においては、生体内に存在するアミノ酸の一種である5-アミノレブリン酸(ALA)を活用した医薬品・健康食品・化粧品の開発・販売や、がん及び免疫分野等における抗体医薬・核酸医薬の研究開発に関する事業、医療・健康情報のデジタル化や医療ビッグデータの活用を推進するソリューション・サービスの提供及び医療金融に関する事業等を行っております。