第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「鉱山開発に始まり社会基盤を支えてきた技術を進化させ、常に挑戦する気概をもって社会に必要とされる企業であり続けます。」を経営理念としています。

この経営理念を実現するために、「運・鈍・根」*の創業者精神を心に刻み、「変革・創造・共存」を行動指針として実践します。

「 変 革 」… 未来に向けた意識改革により絶えざる自己革新を行う。

「 創 造 」… 市場のニーズに対応し、信頼され、魅力あるモノづくりを目指す。

「 共 存 」… 経営の透明性を高め、環境と調和した社会の発展に貢献する。

 

* 創業者である古河市兵衛の経営哲学に「運・鈍・根」があります。これは、人間にとって最も大切なのは運だとしても、何か重要なことをやり遂げるには愚鈍さと根気が必要だということを意味しています。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、創業150周年を迎える2025年度に向けて、連結営業利益150億円超の常態化を目指します。

 

(3) 経営環境および中長期的な経営戦略

当社グループの強みは、創業以来149年に及ぶ長い歴史の中で培った経験を活かし、様々な製品・技術・サービスを提供できることです。

この強みを活かし、SDGs(持続可能な開発目標)をはじめ、我が国における国土強靭化、生産年齢人口の減少など、様々な「社会課題」の解決に役立つインフラ整備、製品・技術・サービスなどを提供することで「企業価値」を創造すると同時に、「社会インフラ整備」、「安全で環境に優しい豊かな社会の実現」という「社会価値」の創造に寄与し続けていくことが、社会における当社グループの役割であると認識しています。

この意を込めた経営理念を具現化するため、2025年ビジョン「FURUKAWA Power & Passion 150」を制定しています。「2025年ビジョン」においては、「カテゴリートップ・オンリーワンを基軸として成長する企業グループの実現」をありたい姿として、連結営業利益150億円超の常態化を目指しています。

 

 

 

 

 

 

 

1.2025年ビジョン「FURUKAWA Power & Passion 150」

「カテゴリートップ・オンリーワンを基軸として成長する企業グループの実現」

―創業150周年を迎える2025年度に向けて、連結営業利益150億円超の常態化を目指します―

 

2.2025年ビジョン達成のための方針

(1) CSV*の視点を織り込んだ「マーケティング経営」による古河ブランドの価値向上

マーケティングを経営の根幹に据え、激変する市場の中で価値を認められる製品やサービスを提供し、顧客が抱えている課題を解決することにより「企業価値の向上と持続的な成長」を成し遂げるとともに、SDGs(持続可能な開発目標)をはじめ、我が国における国土強靭化、生産年齢人口の減少など、様々な「社会課題」を解決し「持続可能な社会の実現」に貢献していく。

①顧客ニーズを捉えた技術営業力(提案型・ソリューション型)の強化

②市場ニーズに合致した製品・技術・サービスの開発

③強みを活かせるニッチ製品への集中と差別化戦略によるカテゴリートップ化の推進

④新たな市場・カテゴリーの開拓・創造と新たなビジネスモデルの構築

⑤社会基盤を支えてきた製品・技術・サービスを進化させ、「社会課題」の解決に貢献

 

* CSV(Creating Shared Value:共通価値/共有価値の創造):企業が社会問題や環境問題などに関わる社会課題に取り組み、社会価値と企業価値を両立させようとする経営フレームワークです。

 

(2) 機械事業の持続的拡大

①インフラ関連・資源開発等を中心に拡大する海外市場における収益基盤の強化

②ストックビジネスの拡充・強化

③グループ総合力の発揮、エンジニアリング力の強化によるビジネスチャンスの拡大

 

(3) 人材基盤の拡充・強化

①新しい古河の活力あふれる人づくり・風土づくり

②国内外の多様な人材の確保・活用・育成

③営業・サービス人材の重点強化

 

(4) 企業価値向上に資する投資等の積極的推進

①成長に必要な設備投資の積極的実施

②戦略的なM&A、アライアンスによる事業拡大

 

(5) 経営基盤の整備

①二桁台のROEを意識した収益性・資本効率の改善による企業価値の向上

②堅固な財務基盤の確立

③成長投資と株主還元へのバランスのとれた配分

④当社グループのCSR/ESG課題に配慮した事業運営の実践による企業価値の向上

 

 

 

 

 

 

(4) 中期的な経営戦略

「2025年ビジョン」達成に向けた取り組み

当社グループは、長期経営計画である「2025年ビジョン」を3つのフェーズに区分し、各フェーズの位置づけの明確化を図り、戦略的な落とし込み、長期・中期それぞれの時間軸に対応した個別・具体的なアクションプランを策定し、運用しています。

「2025年ビジョン」達成のための重要なツールとして、毎年、期間3年で中期経営計画をローリングする方式を採用し、各フェーズが始まる際に対外公表する中期経営計画のシームレスな策定を実現しています。

 

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(5) 優先的に対処すべき事業上および財務上の課題

①「中期経営計画2025」の位置づけ

当社グループを取り巻く事業環境は、ひと言で言えば先が見通せない「VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代」が到来していますが、「中期経営計画2025」においては、「2025年ビジョン」第2フェーズにあたる2020~2022年度において注力した体質強化・収益力の増強を礎とした成長を実現し、「2025年ビジョン実現への総仕上げ」を行う期間と位置づけ、2025年ビジョンの更にその先を見据えた基盤固めを行っています。

 

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②「中期経営計画2025」における経営方針・経営計画と進捗および拡充・強化した取り組み

2023年度は「中期経営計画2025」の初年度で、経営指標である営業利益は85億円、ROEは13.8%となりました。財務水準であるデット・エクイティ・レシオは0.4倍、有利子負債/EBITDA倍率は4.5倍となり、デット・エクイティ・レシオについては2025年度の財務水準イメージを前倒しで達成しました。

企業価値創造力*の向上を図るために拡充・強化した具体的な取り組みとしては、2024年2月に政策保有株式の縮減目標を設定し、2026年3月末までに連結純資産に対する保有比率を20%未満にすることを公表しました。これを更に推し進め、1年前倒しで2025年3月末までに低下させる予定です。

政策保有株式の売却資金は、「中期経営計画2025」において株主還元に関する方針として設定した自己株式の取得(3年間)の目安を30億円程度から50億円程度に増額し活用する予定です。更に、M&A等の成長投資のほか、環境投資としてカーボンニュートラルおよび環境保全に係る投資に活用する予定です。なお、カーボンニュートラルに向けたロードマップは2024年度中に策定し公表する予定です。

「中期経営計画2025」の経営方針・経営計画および進捗については、以下に記載のとおりです。

 

* 企業価値創造力:「ROIC-WACC」を意味する当社造語です。

 

a.資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取り組みの拡充・強化

当社グループは、2017年度以降、連結および事業部門ごとに資本コストを算定するとともに、期待する企業価値創造力の確保が可能なROICをハードルレートとして設定し、事業ポートフォリオの見直しをはじめ、設備投資、出資を伴うアライアンス、M&Aの投資判断に活用する等、資本コストを意識した経営の実現に取り組んでいます。

しかしながら、市場の期待に応えられる企業価値創造力の実現ができていないため、「価値創造バロメーター」とも呼ばれるPBR(株価純資産倍率)は、2017年度以降7年連続して1倍を割っており、「PBR1倍超の早期実現」が重要な経営課題となっています。

このため、「中期経営計画2025」においては、「持続的な成長と中長期的な企業価値の向上」を実現すべく、企業価値創造力の向上を図るための具体的な取り組みを拡充・強化していくとともに、適切な情報開示や投資者との積極的な対話について一層の充実を図り、市場から十分な評価を得ることで「PBR1倍超の早期実現」に努めています。

なお、企業価値創造力の向上を図るために拡充・強化する具体的な取り組みの骨子は、次のとおりです。

 

 

R

O

E

8%

成長戦略による利益の増加

◆ 2025年度の連結営業利益を130億円程度に

● コア事業と位置づけている機械事業の持続的拡大を新たなステージに

● 事業ポートフォリオの見直し強化に加え、各事業部門内の事業(製品)ポートフォリオ戦略も可視化し、収益性の改善や低収益事業(製品)の見極めを推進

資本効率性の改善

◆ 政策保有株式*の縮減

縮減目標:2025年3月末までに連結純資産に対する比率を20%未満まで縮減(※)

※ 2023年5月12日公表時は縮減目標なし、2024年2月9日公表の「2026年3月末までに連結純資産に対する比率を20%未満まで縮減」の目標を2024年5月13日に変更

自己資本のスリム化・最適化

◆ 株主還元

● 増配および中間配当を検討し、原則として1株当たり50円以上の年間配当金および連結自己資本総還元率((配当金総額+自己株式取得総額)÷連結自己資本(期首・期末平均)×100(%))3%以上を目安に

● 1事業年度における自己株式取得の目安をおおむね15-20億円、2024年3月期から2026年3月期までの3年間で50億円程度に(※)

※ 2023年5月12日公表時の「1事業年度における自己株式取得の目安をおおむね10億円程度に」の方針を2024年5月13日に変更

非財務リスクの逓減に資する適切な情報開示や投資者との積極的な対話

◆ サステナビリティへの取り組み

◆ 非財務資本への投資(研究開発、知的財産、人的資本、DX)

財務リスクの逓減

◆ 格付戦略を核とした最適資本構成の追求

● 「A-」以上の格付引上げとなる財務水準

■ デット・エクイティ・レシオ:0.5倍台に

■ 有利子負債/EBITDA倍率:3倍台に

 

* 政策保有株式:保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式の連結貸借対照表計上額(非上場株式を含むが、非連結子会社および関連会社に対する株式を除く。)+みなし保有株式

 

b.成長戦略(機械事業に経営資源を集中し、リターンを上げる。)

基本方針

◆ 当社グループは、CSVの視点を織り込んだ「マーケティング経営」を実践することを基本方針としており、「社会インフラ整備」と「安全で環境に優しい豊かな社会の実現」という「社会価値」の創造に寄与する戦略を事業計画の柱としました。

◆ コア事業と位置づける機械事業は、気候変動により増加している災害に対する防災や減災などの社会課題解決に貢献するインフラ整備、働く人の安全・安心な現場、労働力不足を解決する製品・技術・サービスなどを提供していきます。

 

成長戦略を担う機械事業の事業計画

◆ 産業機械部門は、ポンプ、破砕機をはじめとする各種マテリアル機械や、ベルトコンベヤ、橋梁をはじめとする大規模な国内インフラプロジェクト向け製品の販売増を図ります。

◆ ロックドリル部門は、製品ライフサイクル全域でのカスタマーサクセス*を実現する「FRDモデル」の構築、ユニック部門は、国内での安定的な収益確保に加え、海外販売での収益拡大を進めます。

◆ 機械事業については、設備投資累計額の70%を投下し、2025年度の連結売上高において50%以上、連結営業利益において80%以上を占めることを目指し、更に将来における非連続な成長を実現するために、アライアンスやM&Aへの取り組みについても一層強化していきます。

 

* カスタマーサクセス(Customer Success):言葉のとおり、製品やサービスを通じて顧客の成功を支援する概念で、企業が自ら能動的に顧客の将来を考え、顧客が抱えている課題の掘り起こしや、製品やサービスを利用することでかなえられるプランの提案などを含む助言や支援をしていきます。

 

c.収益計画

基本方針

◆ ROE向上に向けた取り組みの強化

投資に伴うリスクおよび資本コストを勘案した採算性に留意し、個別の投資判断を行うとともに、効率性、収益性の改善への取り組みを強化していきます。

また、資本コストを活用した事業ポートフォリオマネジメントを運用することにより、経営資源配分の全体最適を追求し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現していきます。

 

2025年度の目標とする経営指標

2023年度実績

連結営業利益

130億円程度

85億円

自己資本当期純利益率(ROE)(%)

8%程度

13.8%

 

d.資本政策

財務戦略に関する方針

◆ 金融情勢によらず必要な資金の調達を可能とするため、引き続き堅固な財務基盤の確立を目指していきます。

◆ 格付戦略を核とした最適資本構成の追求

2025年ビジョンの最終年度となる2025年度には、日系格付機関による発行体格付で現行の「BBB+」から「A-」以上の格付引上げが可能となる財務水準をイメージし、今後とも継続して財務の健全性向上に努めていきます。

 

2025年度の財務水準イメージ

2023年度実績

デット・エクイティ・レシオ

0.5倍台

0.4倍

有利子負債/EBITDA倍率

3倍台

4.5倍

 

株主還元に関する方針

● 配当に関する方針

持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するための投資を優先したうえで、増配および中間配当の実施を検討し、原則として1株当たり50円以上の年間配当金および連結自己資本総還元率3%以上を目安といたします。

● 自己株式の取得・消却に関する方針

自己株式の取得・消却については、株価の動向や資本効率、キャッシュ・フロー等を勘案しつつ適宜検討していきます。

なお、1事業年度における自己株式の取得の目安は、おおむね15-20億円、2024年3月期から2026年3月期までの3年間で50億円程度(※)とします。

※ 2023年5月12日公表時の「1事業年度における自己株式取得の目安をおおむね10億円程度に」の方針を2024年5月13日に変更

 

2025年度の財務水準イメージ

2023年度実績

連結自己資本総還元率(%)

3%以上

3.1%

年間配当

1株当たり50円以上

55円

自己株式の取得

15-20億円

16億円

 

株主還元に関する方針

● 政策保有株式については、毎年、個別の銘柄ごとに、その保有目的、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか、また同時に定性面、定量面からの総合的な判断を含め精査し、取締役会においてその保有継続の適否を検証しています。

● 保有の必要性が認められなくなった銘柄は適宜売却を行うなど、縮減に努めています。

● 縮減に関する進捗の指標として、政策保有株式の連結純資産に対する比率を継続的に開示しています。

 

 

 

政策保有株式の縮減目標(※)

2023年度実績

連結純資産に対する政策保有株式比率(%)

2025年3月末

20%未満

2024年3月末

40.8%

※ 2023年5月12日公表時は縮減目標なし、2024年2月9日公表の「2026年3月末までに連結純資産に対する比率を20%未満まで縮減」の目標を2024年5月13日に変更

 

e.サステナビリティへの取り組み

以下の基本方針にのっとり、サステナビリティ中期目標(2023年度~2025年度)を策定し、PDCA(計画、実行、評価、改善)のサイクルを展開しています。

基本方針

◆ 当社グループは、サステナビリティへの取り組みを経営の最重要課題の一つと位置づけ、持続可能な社会の実現に貢献していくとともに、成長に向けた経営基盤の整備および事業を通じた「社会課題」の解決により、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現していきます。

 

基本方針を具現化するための取り組み状況

● 「攻め」のサステナビリティ:事業を通じた社会課題の解決

CSVの視点を織り込んだ「マーケティング経営」による古河ブランドの価値向上を図っていくとともに、「社会課題」の解決に役立つインフラ整備、製品・技術・サービスなどを提供することで、「企業価値」を創造すると同時に「社会価値」の創造に寄与しています。

● 「守り」のサステナビリティ:成長に向けた経営基盤の整備

成長に向けた経営基盤の整備のため、全社的リスクマネジメント体制を強化・拡充し、「当社グループのCSR/ESG課題に配慮した事業運営の実践による企業価値の向上」を図っています。

 

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マテリアリティ(重要課題)への取り組み推進

 

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脱炭素への対応

● 現行のCO2の削減計画については、各生産拠点におけるCO2削減施策を追加するなどの見直しを行います。

● 再生可能エネルギー由来の電力利用などを織り込んだカーボンニュートラル宣言の実施とその実現に向けたロードマップの完成については、2025年度を目標としていましたが、前倒しして2024年度中の公表を目指します。

 

気候変動に関連した情報開示への対応状況

● TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿った開示を行うために、まず、売上高の大きい金属部門およびロックドリル部門においてシナリオ分析に着手し、TCFDの提言への賛同表明を行いました。

● 次に、他部門についても気候変動に係る情報開示の強化を推進していきます。

 

SRI・ESGインデックス構成銘柄への採用、ESGに対する外部評価の改善

● SRI・ESGインデックス構成銘柄への採用や外部からの評価については、当社グループのESGの進捗度を測る重要なモニタリング評価として捉えるとともに、事業活動等を通じたESGへの取り組みを一層強化しつつ、適切な情報開示や投資者との積極的な対話に努めていくことで、継続的に改善していきます。

また、FTSE Blossom Japan Sector Relative Indexより厳しい選定基準であるFTSE Blossom Japan Indexにも組み入れられるよう、開示内容の充実を図っていきます。

 

f.事業ポートフォリオの見直し

基本方針

◆ 7つの事業部門ごとに資本コストを算定し、3要素[X軸:企業価値創造力、Y軸:売上高年平均成長率、バブルの大きさ:企業価値創造力×投下資本額/年]をバブルチャートにプロットし、事業ポートフォリオの可視化・識別を行います。そのうえで、成長性と企業価値創造力を判断基軸とする4象限分析を行い、これまでの歴史や思い入れに過度に引きずられない合理的な経営判断を実施していきます。

◆ 更に、各事業部門内の事業(製品)ポートフォリオ戦略についても可視化し、収益性の改善や低収益事業(製品)の見極めを推進していきます。

 

 

 

見直しの状況

● 金属部門において、委託製錬事業の抜本的な見直しとして、2023年3月末に小名浜製錬㈱との委託製錬契約を終了し生産規模を縮小した結果、必要銅精鉱量が減少したため、銅鉱山権益への出資についても見直し、ジブラルタル銅鉱山(カナダ)の権益の25%を保有する Cariboo Copper Corp.の株式を2024年3月に譲渡しました。

● ロックドリル部門において、海外マーケティング力の強化・再構築を行うべく、パナマおよび中国の海外子会社については、2023年度に清算を結了しました。

● 不動産事業において、将来の収益基盤をより一層堅固なものとすべく、古河大阪ビル跡地の将来構想を検討した結果、その共有持分の一部を2023年8月に譲渡しました。譲渡代金を原資として、当該地に建築中のホテルおよび一部住宅を用いた賃貸事業を計画しています。

 

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g.経営資源の配分等

基本方針

◆ 持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するための以下の投資を優先し、そのうえで、安定的・継続的な株主還元を実行していきます。

● モノづくりの強化を支える設備投資

● 社会課題の解決に貢献する研究開発投資

● 競争優位を確保するための知的財産への投資

● 働きがいのある会社を実現するための人的資本への投資

● 成長戦略と業務変革を加速化するためのDXへの投資

● 将来における非連続な成長を実現するためのアライアンス、M&Aへの投資

● 脱炭素・環境負荷低減やバリューチェーンにおける人権尊重などのサステナビリティへの取り組みに対する投資

◆ 持続的な成長と中長期的な企業価値向上のための投資や株主還元の原資は、内部留保や持続的に創出するキャッシュ・フローを基本とします。なお、非連続な成長を実現するためのアライアンス、M&Aへの投資については、必要に応じ資産売却(政策保有株式の売却を含みます。)等を選択肢に加え、最適な資金調達手段を講じて充当します。

 

 

ア.営業キャッシュ・フローの配分

基本方針

◆ 堅固な財務基盤の確立を目指しつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するための設備投資を行うとともに、株主還元に配慮した営業キャッシュ・フローの配分に努めていきます。

 

連結営業キャッシュ・フロー(3年間累計額のイメージ)

400億円

配分のイメージ

設備投資

200億円

成長投資

100億円

維持更新

100億円

配当

70億円

自己株式の取得

30億円

有利子負債の削減

100億円

 

イ.設備投資

基本方針

◆ モノづくり力の強化を支える設備投資計画

コア事業と位置づけている機械事業を中心に設備投資をしていきます。

 

設備投資(3年間累計額のイメージ)

200億円

配分のイメージ

機械事業

140億円

素材事業

50億円

その他

10億円

 

ウ.政策保有株式の売却資金の使途(2024年度以降)

政策保有株式の売却予定と生じる資金の活用(※)

政策保有株式については、2024年度は約150億円規模の売却を予定しており、2025年3月末の連結純資産に対する保有比率を縮減目標である20%未満まで低下させる予定です。当該売却資金は、「中期経営計画2025」において株主還元に関する方針として設定した自己株式の取得(3年間)の目安を30億円程度から50億円程度に増額し、活用する予定です。更に、M&A等の成長投資のほか、環境投資としてカーボンニュートラルおよび環境保全に係る投資に活用する予定です。

※ 2024年度の政策保有株式売却予定額は、2024年3月末時点における売却予定株式の株価から算出したものであり、今後の株価推移等による不確実性を伴います。

 

エ.研究開発投資

基本方針

◆ 社会課題の解決に貢献する開発テーマの製品化・事業化を推進するとともにメーカーとして不可欠な生産性の向上に向けた現場力の活性化を図ります。

 

重点課題への対応状況

● 省人化を目指した自動化技術開発の推進

● 全固体電池用の固体電解質の材料および量産化技術開発

● 高効率化・軽量化等による環境負荷低減に寄与する機械製品、技術の開発

● DXの効果的活用

● 技術者人材育成プログラムの本格運用による次世代を担う技術者の育成強化

 

オ.知的財産への投資

基本方針

◆ 知財活動を重要な経営戦略の一つと捉え、競争優位を確保するために知財情報を活用する体制を整備します。

◆ 当社グループにおける各事業会社等の技術の権利化を基本とし、知財活用を含む事業全体の価値評価を適切に行います。

 

 

 

重点課題への対応状況

● メーカーの競争力の源泉である技術力を目に見える形で評価できる知的財産権に関する知財活動(発掘~権利化~維持~活用)の活性化

● 保有権利の価値評価をすることで、産業財産権の有効活用を促進

● 特許情報を収集分析し、企業戦略を策定

● IPランドスケープの効果的運用

 

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カ.人的資本への投資

人的資本への投資に関する基本戦略

◆ 社員一人ひとりが能力を最大限に発揮して新たな価値を創造することができ得る働きがいのある会社の実現

 

人材育成方針への対応状況

● 当社グループが事業活動を通じて社会課題を解決し持続的な成長と企業価値の向上を成し遂げるためには、様々な個性をもった人材の成長が不可欠です。そのため当社グループでは、新たな価値の創造を目指し挑戦する気概をもって自律的に行動できる多様な人材の育成に取り組んでいます。

 

社内環境整備方針への対応状況

● 当社グループでは、多様な人材がやりがいをもって健康を保ちながら、安全で効率的に業務を遂行できる働きやすい環境の整備に取り組んでいます。

 

キ.DXへの投資

基本方針

◆ 当社グループの成長戦略と業務改革を加速させ、市場のニーズに対応し、信頼され、魅力あるモノづくり、コトづくりを支えるDX推進に取り組んでいきます。

 

重点課題への対応状況

● DX推進委員会(2023年4月設置)による当社グループ横断の推進体制を構築しました。

● モノづくり、コトづくり、業務改革を3つの柱とするDXを推進しています。

 

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ク.アライアンス、M&Aへの投資

基本方針

◆ 現有の機械事業の隙間を埋めて連続性を創るような周辺の事業会社や、機械事業における第4の柱となる事業会社を対象としたアライアンス、M&Aを検討・遂行していきます。

 

重点課題への対応状況

● コア事業と位置づけている機械事業については、引き続き持続的拡大を図っていくとともに、将来における非連続な成長を実現するために、アライアンスやM&Aへの取り組みを一層強化しています。

 

h.セグメント別の基本戦略、重点課題

〔機械事業〕

産業機械部門では、エンジニアリング力の更なる強化と部門横断的取り組みやDXの推進により、単なる機器メーカーからの脱却を図るとともに、SDGs、防災・減災などの社会課題の解決に寄与するインフラ整備に取り組むことで、国内市場における事業基盤を構築することを基本戦略としています。ポンプ、マテリアル機械においては、積極的な提案営業を推進しており、製品力強化による戦略機を中心に、新規顧客から受注を獲得するなど確実に成果が表れています。また、顧客情報管理をサービスの強化に活用することで、更新需要の取り込みやストックビジネスでの収益基盤を整備しています。マテリアル機械の大型プラント案件において、工事遅延等に伴い追加原価が発生した事案を踏まえ、マトリクス組織による厳格なリスク管理を実施していきます。コントラクタ事業については、リスク管理、プロジェクト管理を徹底し、受注精度・確率の向上を図るとともに、土砂搬送時の搬送効率やCO削減に貢献する長距離ベルトコンベヤ、環境配慮型製品である密閉式吊下げ型コンベヤ(SICON®)の需要創出と販売促進を図っていきます。

 

ロックドリル部門では、製品ライフサイクル全域でカスタマーサクセスを実現するビジネスモデル(FRDモデル)の構築を基本戦略としています。まずは国内において、コアコンピタンスである油圧ドリフタとその運用ノウハウ等を最大限に活用し、製品販売、部品消耗品販売、整備サービス、サポートプログラム、下取り再販の各フェーズでカスタマーサクセスを実現するビジネスモデルの構築を目指しています。サポートプログラムについては、油圧クローラドリルの稼働サポートシステムのデータを基に、顧客の生産性向上支援プログラム等の有償提供を行っています。整備サービスについては、自社整備体制を更に強化するため、2024年4月に専任部署を新設しました。

また、重点施策として「集中販売・集中生産」を掲げ、海外においては、北米では、ブラストホールドリルの大型機市場の開拓、西部地区の物流合理化およびサービス体制強化を行うため、ネバダ州に拠点を新設しました。東南アジアでは、「砕石市場創造」を掲げ、砕石市場向けに投入したアタッチメントドリルの販売展開強化により、さく岩機の油圧化を促進しており、また、下流展開(砕石プラント向け)を産業機械部門と協業して進めています。国内においては、油圧圧砕機の小割機集中販売、解体機市場向け油圧ブレーカ・油圧圧砕機の首都圏集中展開を図るとともに、砕石市場では、少子高齢化に伴うオペレーター不足という課題の解決策として、油圧クローラドリルにセミオート穿孔機能を追加し、他社との差別化による販売強化を図っています。トンネル関連製品では、全自動ドリルジャンボに続き、全自動ロックボルト施工機の市場投入を行い、掘削現場での安全性と生産性向上に資する製品を拡充しました。今後も、山岳トンネル施工現場でのICT化や無人化等の課題解決に取り組んでいきます。生産現場においては、集中生産を加速すべく合理化を推進し、コストダウン、品質強化、リードタイム短縮を図ります。

 

ユニック部門では、国内販売での安定的な収益確保と海外販売での収益拡大を目指し、製品の高機能化・高付加価値化、サービス体制の整備による競争力強化、海外における製品力・営業力・サービス技術力の強化を基本戦略としています。国内においては、ユニッククレーンの高機能化・高付加価値化による競争力強化に取り組んでいます。ユニッククレーンG-FORCEシリーズの吊上げ性能を向上したマイナーチェンジ機の市場投入を完了しており、ジョイスティック式ラジコン操作機、全自動油圧7段ブーム、狭小地用クレーンなど、優位性のあるユニック製品の拡販を図るとともに、近年はトラックの出荷遅れによる影響を受けたため、トラック架装に依存しないミニ・クローラクレーン、オーシャンクレーン(船舶用クレーン)の販売を拡大しています。海外においては、吊上げ荷重10トン以上の超大型クレーンや新型ミニ・クローラクレーンの導入、販売網の拡充、販売店の販売力強化、サービス力の向上により収益拡大に取り組んでいます。三極生産体制(日本、中国、タイ)におけるマザー工場である佐倉工場においては、トラックの電動化に対応するための開発体制の強化と研究開発を推進し、カーボンニュートラルに貢献する製品づくりを行っており、生産現場ではDXの推進により自動化、品質向上、業務改善を図り、コストダウン、環境負荷低減を進めます。

 

〔素材事業〕

金属部門では、委託製錬事業の最適化への取り組みを基本戦略としています。委託製錬事業の抜本的な見直しとして、2023年3月末に、小名浜製錬㈱との委託製錬契約を終了し、生産規模を縮小しました。これにより必要銅精鉱量が減少したため、銅鉱山権益への出資についても見直した結果、2024年3月に、ジブラルタル銅鉱山(カナダ)の権益の25%を保有するCariboo Copper Corp.の株式を譲渡しました。引き続き、採算性と安定化を追求していきます。

 

電子部門では、戦略製品の事業拡大による収益向上を基本戦略としています。窒化アルミセラミックスについては、熱対策部品向けや半導体製造装置用部品向けなどの需要が増加する見込みで、生産能力増強のための設備投資を実施し、増産体制を整えています。また、高熱伝導品の開発に取り組んでおり、更なる事業拡大を図っていきます。回折光学素子(DOE)については、技術的に優位性のあるレーザー加工用を端緒として拡販を図り、併せて新製品の開発を進めていきます。コイルについては、成長分野に向けた開発・拡販による収益拡大を目指します。

 

化成品部門では、既存製品の収益拡大と新規開発製品の育成・拡大を基本戦略としています。硫酸については、化学工業の各分野で不可欠な基礎材料として大きな需要があり、不純物が少ない高品質硫酸による差別化展開を強化しています。酸化銅については、5G関連やクラウドサーバー向けに販売が伸長することに備え、増産に向けた設備投資を実施しています。新規開発製品である金属銅粉については、品質、量産・販売体制を整え、サンプル展開から販路の拡大を図っていきます。

 

〔不動産事業〕

室町古河三井ビルディング(商業施設名:COREDO室町2)の安定収益確保と、保有する不動産の有効活用を基本戦略としています。2023年8月には、古河大阪ビルの跡地その他の土地の共有持分の一部を譲渡しました。譲渡代金を原資として、当該地に建築中のホテルおよび一部住宅を用いた賃貸事業を2027年度中に開始することを計画しています。

 

 

(注)文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりです。

なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月27日)現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) サステナビリティに関する考え方および取り組み

当社グループは、以下の基本方針を定め、サステナビリティへの取り組みを推進しています。

<古河機械金属グループ サステナビリティへの取り組みに関する基本方針>

古河機械金属グループは、サステナビリティへの取り組みを経営の最重要課題の一つと位置づけ、持続可能な社会の実現に貢献していくとともに、成長に向けた経営基盤の整備および事業を通じた「社会課題」の解決により、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現していきます。

 

①ガバナンス

当社グループでは、サステナビリティへの取り組みを一層強化するため、これまで古河機械金属㈱に設置していたCSR活動を推進するための組織である「CSR推進会議」を、2021年12月に「サステナビリティ推進会議」に改組しました。これによりステークホルダーの皆さまに対する責任を明確にして、「古河機械金属グループ サステナビリティへの取り組みに関する基本方針」を具現化するための活動に積極的に取り組んでいます。

サステナビリティ推進会議は、当社代表取締役社長を議長として当社のサステナビリティ推進部が事務局となり、原則年1回開催されます。同会議では、当社グループのサステナビリティおよびCSR活動の基本方針・活動計画の策定、推進体制の整備、活動状況の検証・評価、教育・広報対策など、サステナビリティおよびCSRにおける様々な課題を審議します。

また、当社取締役、各中核事業会社社長に加え、当社の組織であるコンプライアンス委員会、環境安全管理委員会、品質保証委員会の三つの委員会の委員長と当社のサステナビリティ推進部、人事総務部、資材部の三つの部署長がサステナビリティ推進会議の委員を務めており、会議での審議内容や指摘事項を踏まえたうえでサステナビリティおよびCSR活動の執行部門であるグループ各社や当社の各部門との連携を図り、計画・実行・評価・改善のPDCAサイクルを展開していきます。サステナビリティおよびCSRに係る業務を執行する際には、重要度に応じて、当社経営会議、取締役会等の機関決定を経ており、その進捗状況や結果がサステナビリティ推進部担当取締役から取締役会に随時報告されることにより、取締役会の監督が図られています。

更に、全社的リスクマネジメントに取り組む組織として新設した「リスクマネジメント委員会」とも連携し、当社グループの事業に関わるリスクの低減と機会の最大化を行う体制を整備していきます。

 

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②戦略

当社グループは経営理念の具現化と社会課題の解決により一層尽力していくため、2013年に特定したCSR重点課題を見直し、2022年11月開催の取締役会において、2021年12月に制定した「古河機械金属グループ サステナビリティへの取り組みに関する基本方針」に基づく10項目のマテリアリティ(重要課題)を以下のように特定しました。

 

(a)古河機械金属グループ サステナビリティへの取り組みに関するマテリアリティ(重要課題)

 

攻め:CSV課題

事業を通じた「社会課題」の解決に関するマテリアリティ(重要課題)

・環境に配慮した製品・技術・サービスの提供

・お客さまの課題解決への貢献

・インフラ整備など安全で快適な社会づくりへの貢献

守り:CSR/ESG課題

成長に向けた経営基盤の整備に関するマテリアリティ(重要課題)

E:環境

・事業活動における気候変動対策の推進

・生物多様性保全活動の推進

S:社会

・健康に配慮した安全で働きがいのある職場環境の整備

・多様な人材の確保と育成

・人権を尊重した経営の推進

G:企業統治

・全社的リスクマネジメント体制の整備

・コンプライアンスの徹底

 

(b)マテリアリティ(重要課題)特定の背景

当社グループでは、CSR推進組織を発足した2013年にCSR重点課題を特定し、それらについて目標を立て取り組んできました。しかしながら、近年、気候変動対策やSDGsへの取り組みが更に重要視されるようになり、当社グループとしても従来の課題認識を見直し、経営理念の具現化と社会課題の解決により一層尽力していくため、2021年12月1日付で「古河機械金属グループ サステナビリティへの取り組みに関する基本方針」を定め、CSR推進体制からサステナビリティ推進体制へ改編しました。更に、従来のCSR重点課題を見直し、当社グループが優先的に取り組むサステナビリティのマテリアリティ(重要課題)を特定しました。

 

(c)マテリアリティ(重要課題)特定のプロセス

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③リスク管理

当社グループは、成長に向けた経営基盤の整備のため、全社的リスクマネジメント体制を強化・拡充し、「当社グループのCSR/ESG課題に配慮した事業運営の実践による企業価値の向上」を図っていきます。

古河機械金属㈱に設置したリスクマネジメント委員会は、当社のサステナビリティ担当取締役を議長とし、当社サステナビリティ推進部が事務局となり、原則年2回開催されます。同委員会では、当社グループの事業活動に支障を来すおそれのあるリスクが顕在化した際における生命・財産の保全、被害・損失の極小化に取り組んでいます。

同委員会は、グループ各社・各部門のリスクの評価、リスクの対応策の検討・評価を行います。その結果、当社グループの経営に重大な影響を及ぼす可能性があると判断したリスクについて、評価結果および対応策の是非を取締役会に答申することで、取締役会の監督を図り、実効性のあるリスク管理を推進します。

また、同委員会の下部組織に人権リスク部会、環境リスク部会、グループBCP部会および情報セキュリティ部会を設置し、人権に関する課題、カーボンニュートラルなどの気候変動に関する課題、危機発生時の事業継続に関する課題および情報セキュリティに関する課題の解決に向けて取り組んでいきます。

 

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④指標および目標

当社グループは、マテリアリティ(重要課題)に係る目標を設定しています。2023年度の主な取り組みと進捗状況は、統合報告書2024(https://www.furukawakk.co.jp/ir/library/annual.html)に開示する予定です。

 

(2) 気候変動

①ガバナンス

主な内容は、「(1)サステナビリティに関する考え方および取り組み① ガバナンス」をご参照ください。

更に、気候変動に関する諸課題への対応については、サステナビリティ推進部と環境安全統括部は、サステナビリティ推進会議での審議内容や指摘事項を踏まえたうえで気候変動対応に関するグループ戦略の立案、目標管理、気候関連移行計画(ロードマップ)の策定などを実施し、執行部門であるグループ各社や当社の各部署との連携を図り、計画・実行・評価・改善のPDCAサイクルを展開しています。

 

②戦略

当社グループは、多数の事業を展開しており、気候変動に伴うリスクと機会は事業ごとに異なると認識しています。そのため、気候変動が与える影響と事業の売上規模の二つの観点から、部門別に順次シナリオ分析を行うこととし、第一段階として、2023年2月から6月にかけて、ロックドリル部門と金属部門についてシナリオ分析を実施しました。

シナリオ分析では、IEA(国際エネルギー機関)等の科学的根拠等に基づく1.5℃シナリオと4℃シナリオを設定し、2030年と2050年の時点で事業に影響を及ぼす可能性がある気候関連のリスクと機会の重要性を評価しました。

他部門についても順次シナリオ分析を進め、また今般対象とした部門についても継続的にシナリオ分析の見直しを行い、これらのリスクと機会について、適時・適切に開示していきます。

 

設定シナリオ

世界観

1.5℃シナリオ

移行面でのリスクおよび

機会が顕在化

⇒2030年を想定

・日本政府による温室効果ガス排出規制や炭素税の導入推進に起因するコスト増加のリスクがある。

・環境負荷の少ない製品に注目が集まり、EV車や再生可能エネルギー施設向けの素材や、省エネルギー性能の高い製品の収益増加の機会が見込まれる。

4℃シナリオ

物理面でのリスクおよび

機会が顕在化

⇒2050年を想定

・異常気象による自然災害の増加や気温上昇の影響が顕在化し、事業所やシステム設備の被災リスクや、資材調達が困難となる結果として原料価格高騰など、コスト上昇のリスクがある。

・異常気象に対する技術的対策や投資が進み、関連製品・技術・サービスの収益増加の機会が見込まれる。

 

(a)リスク一覧・機会一覧

認識したリスクと機会のうち、事業への影響度が「中」以上のものを以下に記載しています。

<影響度>

大:古河機械金属グループへの影響が非常に大きい。

中:当社グループへの影響はあるが限定的。

小:当社グループへの影響はほとんどない。

 

リスクの

種類

リスクの内容

影響度

対応策

1.5℃

4℃

リスク

移行リスク

政策

・法規制

炭素税の導入により、輸送などの燃料調達コスト、生産コスト、運用コスト(施設電気、配送時排出温室効果ガス対応費)が増加する。

再生可能エネルギー化、省エネルギー化、製品の環境負荷低減により対応

・太陽光発電などの再生可能エネルギーの活用

・LED照明や省エネルギー設備の導入、製造プロセスの見直しや生産設備の温室効果ガス排出抑制強化によるエネルギー効率の向上

・リサイクル可能な素材の使用や製品の長寿命化による製品の環境負荷の低減

・EV車両など環境配慮車両の拡大

・非化石証書購入等による温室効果ガス排出低減

技術

環境負荷の低い製品を好む市場のニーズに応えられず、売上が低下する。

環境負荷の低い製品への転換

・取引先と協力し、環境負荷の低い製品の製造・開発

市場

電力会社の電源構成に占める再生可能エネルギーの比率が上がることで、電力価格が上昇し、操業コスト増加する。

再生可能エネルギー電源の推進による電力価格削減 /再生可能エネルギー化や省エネルギー化、製品の環境負荷低減による対応

・社内におけるCO2係数ゼロの再生可能エネルギー電源の推進による電力価格削減

・LED照明や省エネルギー設備の導入、製造プロセスの見直しや生産設備の温室効果ガス排出抑制強化によるエネルギー効率の向上

物理リスク

急性

異常気象(洪水等)により事業所や工場が停止し売上が減少、または復旧コストが増加する。

被害の最小化/災害が発生した際の適切なマネジメント

・複数輸送手段の確保

・取引先の分散および異常気象が発生した際の損害の最小限化

・工場の浸水対策の強化

・取引先・拠点における水リスク評価の定期的な実施/洪水や浸水が発生した際のリスクマネジメントの徹底

・被害が発生した際の支援体制・報告体制としてのBCP対策

 

機会の

種類

機会の内容

影響度

対応策

1.5℃

4℃

脱炭素に貢献する機器需要増加に伴い売上が増加する。

需要に応じるための設備投資

異常気象による災害発生後の復興のため、製品の需要が生じる。

需要に応じるための設備投資および製品開発

技術

省エネルギーに貢献する製品の売上が増加する。

取引先との協働による省エネルギー製品の拡充

 

③リスク管理

(1) サステナビリティに関する考え方および取り組み ③リスク管理」をご参照ください。

 

④実績

2022年度のCO2排出量の実績はサステナビリティブック2023

(https://www.furukawakk.co.jp/sustainability/library/pdf/sustainability_book2023.pdf)に開示しております。

2023年度の実績は統合報告書2024(https://www.furukawakk.co.jp/ir/library/annual.html)において開示予定としております。

 

(3) 人的資本

①ガバナンス

「(1) サステナビリティに関する考え方および取り組み ①ガバナンス」をご参照ください。

 

②戦略

(a)人的資本への投資に関する基本戦略

当社グループは、「社員一人ひとりが能力を最大限に発揮して新たな価値を創造することができ得る働きがいのある会社の実現」を人的資本への投資に関する基本戦略としています。

(b)人材育成方針

当社グループが事業活動を通じて社会課題を解決し持続的な成長と企業価値の向上を成し遂げるためには、様々な個性をもった人材の成長が不可欠です。そのため当社グループでは、新たな価値の創造を目指し挑戦する気概をもって自律的に行動できる多様な人材の育成に取り組んでいきます。

(c)社内環境整備方針

当社グループでは、多様な人材がやりがいをもって健康を保ちながら、安全で効率的に業務を遂行できる働きやすい環境の整備に取り組んでいきます。

 

③指標および目標

当社グループでは、上記「(3) 人的資本 ②戦略」において記載した、「人材育成方針」および「社内環境整備方針」について、次の指標を設定しており、当該指標に関する目標および直近実績は、次のとおりです。

(a)人材育成方針

・多様な人材の採用

指標

目標

直近実績

企画職群の新卒採用者に占める女性の割合

20%

6.7%

(2024年度入社)

女性管理職比率(連結)

3%

3.7%

(2024年3月末)

管理社員層、企画職群の新規採用者に占める経験者採用の割合

40%

60.0%

(2023年度入社)

障がい者雇用率(連結対象会社のうち障がい者雇用率制度の対象会社)

法定雇用率(2.3%)の採用

2.2%

(2023年度)

(注)1.目標の比率の算定対象は、指標に括弧書きのあるものはその範囲、それ以外は当社籍社員です。

(注)2.女性管理職比率(連結)は、当社グループにおける管理職の比率です。

 

・挑戦する気概をもって自律的に行動できる人材の育成

指標

目標

直近実績

年間研修実施時間

1,500時間

887.3時間

(2023年度)

年間研修受講者数

3,600

2,632

(2023年度)

(注)目標の比率の算定対象は、当社籍社員です。

 

(b)社内環境整備方針

指標

目標

直近実績

男性の育児休業取得率

80%

83.9%

(2023年度)

育児休業後の社員の復職率

100%

100.0%

(2023年度)

健康診断受診率

100%

99.9%

(2023年度)

有所見率

40歳以上 50%未満

61.5%

(2023年度)

40歳未満 30%未満

39.6%

(2023年度)

健康経営優良法人

「ホワイト500」認定の取得

×

(2024年)

(注)男性の育児休業取得率および育児休業後の社員の復職率の算定対象は、当社籍社員です。健康診断受診率および有所見率の算定対象は、当社籍社員および古河健康保険組合に加入する連結対象会社籍社員です。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響の内容につきましては、合理的に予見することが困難であるものについては記載しておりません。以下に記載したリスクは、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見し難いリスクも存在します。当社グループの事業、業績および財務状況は、かかるリスク要因のいずれによっても著しい悪影響を受ける可能性があります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避および発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項および本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討したうえで行われる必要があります。

なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月27日)現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 為替の変動について

当社グループは、国内外において生産、調達および販売活動を行っており、製品の輸出、銅精鉱を中心とする原材料の輸入および製錬加工料収入について為替変動の影響を受けます。そのため、為替予約取引等を利用してリスクの軽減を図っておりますが、為替が大きく変動した場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(2) 非鉄金属市況の変動について

当社グループの主製品の一つである電気銅等非鉄金属の価格は、国際市況を反映したLME(London Metal Exchange:ロンドン金属取引所)で決定されたUSドル建ての国際価格であり、国際的な需給バランス、投機的取引、国際政治・経済情勢などにより変動します。そのため、先物取引を利用したヘッジ等によりLME価格の変動による影響の最小化を図っておりますが、LME価格が大きく変動した場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

また、当社グループは、銅精鉱調達のため海外鉱山に出資を行っておりますが、LME価格の変動は出資先の銅鉱山の経営成績等に影響を与え、その影響が当社グループにも及ぶ可能性があります。

 

(3) 金利について

当連結会計年度末における当社グループの借入金の連結貸借対照表計上額は533億89百万円と、総資産の20.5%を占めております。そのため、金利の上昇により負債コストが増加した場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

なお、市場金利が上昇した場合には資金調達コストが増加する可能性がありますが、当社グループでは、固定金利等の種々の借入条件を適宜組み合わせることで、急激な金利変動に備えております。

 

(4) 投資有価証券および土地、その他の固定資産について

当社グループは、歴史上の経緯から、その他有価証券で市場価格のない株式等以外のものおよび土地を保有しております。その当連結会計年度末の連結貸借対照表計上額は、その他有価証券で市場価格のない株式等以外のものが457億6百万円、土地が517億65百万円となっております。そのため、株価や地価が大きく下落した場合には、減損損失、評価損または売却損が発生し、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

なお、有価証券については、毎年、取締役会において個別の銘柄ごとに、保有に伴う便益やリスク等を定性面と定量面の両面から総合的に勘案のうえ、その保有の継続の適否を検証しております。検証の結果、保有の意義が認められないと判断したものについては、売却を進めることとしております。

また、当社グループが保有するその他の固定資産については、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により減損損失が発生し、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(5) 需要の変動について

当社グループの製品は、日本国内だけでなく海外でも販売されているため、日本、北米、欧州、アジアなどの主要市場において大きな景気変動があった場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

また、当社グループには、製品の特性上、売上高に占める国内の公共事業関連の割合が高い事業があるため、公共投資額に大きな変動があった場合も、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

 

 

(6) カントリーリスクについて

当社グループは、販売網の拡大やコスト競争力の強化、為替リスク低減等のために、グローバルに生産、調達および販売活動を行っております。そのため、現地における政情不安、急激な経済の減速、治安の悪化、貿易上の制裁措置、文化や法制度の相違、特殊な労使関係、テロ等の要因により問題が発生し、事業の円滑な遂行に支障が生じた場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

また、ウクライナ・中東情勢等の地政学的リスクにより、売上高の減少、鋼材など原材料や燃料価格の値上げによるコストの増加、海上輸送の遅延など、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(7) 自然災害、感染症のまん延等の不可抗力について

当社グループは、地震等の自然災害や大規模火災等に備えた事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定や地震対応マニュアルの作成、緊急時の連絡体制の整備等、事業継続に必要な対策を講じております。しかしながら、これらの災害により当社グループの生産拠点や調達先が重大な被害を受け、生産設備が損壊し、もしくは物流網に障害が発生する等の事態が生じた場合、または、新型ウイルス等の感染症の世界的なまん延により、当社グループの事業所や保有施設、調達先が操業・運営を行うことができない事態が生じた場合、製品およびサービスの安定的な供給・提供を行うことができなくなり、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(8) 品質について

当社グループは、世界的に認められている品質管理基準に従って製品を製造するとともに、その管理体制の確立および維持向上に努めております。しかしながら、全ての製品について、将来にわたって欠陥が発生しないという保証はありません。そのため、生産物賠償責任保険やリコール保険等に加入することでリスクに備えておりますが、想定を超える大規模な製造物責任やリコールにつながる製品の欠陥が発生した場合、または当社グループおよびその製品への信頼が失われた場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(9) 新製品開発について

当社グループは、顧客のニーズを満たす新技術、新機能を備えた製品を市場投入すべく、積極的に新製品の開発に取り組んでおります。しかしながら、一部の事業においては、製品ライフサイクル上の成熟期に位置する取扱製品があり、そのような製品は、競合他社製品との差別化を図ることが困難であることから、利益率が低下する可能性があります。そのため、そのような事業において、将来の柱となるような新製品を開発・市場投入できない場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(10) 人材確保について

当社グループは、将来に向けて成長していくため、新卒、中途を問わず優秀な人材を採用し、戦力化するための育成を行っております。しかしながら、事業に必要とされる人材の確保等を十分に行うことができなかった場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(11) 環境保全について

当社グループは、国内外の各事業所において、関係法令に基づき環境保全および環境安全対策ならびに公害防止に努めており、特に、国内休鉱山における坑廃水による水質汚濁防止や集積場(堆積場)の保安等の鉱害防止については、必要な措置を講じております。しかしながら、関係法令の改正等により規制が強化された場合、また、各事業所において不測の事態が発生した場合、その対応に要するコストが増加し、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(12) 公的規制について

当社グループは、国内外において事業を展開していることから、許認可、租税、環境、労務、独占禁止、輸出管理等に関する各国の法規制を受けております。当社グループは、これらの公的規制の遵守に努めておりますが、法令の改正等により規制が強化され、または新たな規制が制定された場合は、対応コストの増加や事業の継続への影響など、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(13) 退職給付債務について

当社グループは、従業員の退職給付に備えるため、確定給付企業年金制度および退職一時金制度を設けており、当連結会計年度末における退職給付債務および年金資産に基づき退職給付に係る負債を計上しております。しかしながら、退職給付債務等の計算の基礎として採用した割引率や長期期待運用収益率等の前提条件と実際の結果との間に差異が生じた場合、または前提条件が変更された場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(14) 気候変動について

当社グループは、気候変動に伴うリスクと機会を重要な経営課題であると認識し、温室効果ガスの排出削減などに取り組んでいます。また、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言へ賛同表明し、気候変動が事業に及ぼすリスク・機会を分析し、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指しております。しかし、炭素税の導入や異常気象による事業所や工場の被災が発生した場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(15) 情報セキュリティについて

当社グループは、研究開発、生産、営業などに関する機密情報や個人情報等を保有しています。当社グループでは、ネットワークセキュリティの強化、システムの保守更新など保守・保全策の強化と情報管理規則・各種ガイドラインを社員に遵守徹底するなど情報管理体制の強化を実施しておりますが、外部攻撃、不正アクセス、マルウェアの感染等により、システム障害や機密情報・個人情報の漏洩が発生した場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりです。

 

①経営成績の状況

 

前期

当期

対前期増△減

売上高(百万円)

214,190

188,255

△25,934

営業利益(百万円)

9,031

8,524

△507

経常利益(百万円)

9,348

10,384

1,036

親会社株主に帰属する当期純利益(百万円)

6,211

16,097

9,885

 

当連結会計年度(2023年4月1日から2024年3月31日まで)の我が国経済は、雇用・所得環境が改善する中で、各種政策の効果もあって、景気は緩やかに回復しました。企業収益は全体として改善しています。一方、世界的な金融引締めに伴う影響、中国経済の先行き懸念やウクライナおよび中東地域をめぐる情勢など、海外経済の減速が我が国の景気を下押しするリスクとなっています。

このような経済環境の下、当社グループの当期の売上高は、1,882億55百万円(対前期比259億34百万円減)、営業利益は、85億24百万円(対前期比5億7百万円減)となりました。産業機械部門およびユニック部門は減収減益、ロックドリル部門は増収増益となり、機械事業全体では、増収減益となりました。素材事業では、金属部門は減収増益、電子部門は減収減益、化成品部門は増収増益となり、全体では減収増益となりました。また、不動産事業は減収減益となりました。営業外収益に為替差益11億62百万円ほかを計上した結果、経常利益は、103億84百万円(対前期比10億36百万円増)となりました。特別利益に、古河大阪ビルの跡地その他の土地の共有持分の一部を譲渡したことを主とした、固定資産売却益134億33百万円、投資有価証券売却益26億59百万円ほかを計上し、特別損失にCariboo Copper Corp. (ジブラルタル銅鉱山(カナダ)の権益の25%を保有)株式譲渡に伴う関連会社投融資整理損20億58百万円ほかを計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、160億97百万円(対前期比98億85百万円増)となりました。

 

セグメント別の業績は、次のとおりです。

 

〔産業機械〕

 

前期

当期

対前期増△減

売上高(百万円)

17,943

15,548

△2,394

営業利益(百万円)

1,515

389

△1,125

 

産業機械部門の売上高は、155億48百万円(対前期比23億94百万円減)、営業利益は、3億89百万円(対前期比11億25百万円減)となりました。当期末の受注残高は、八王子南バイパス大船寺田高架橋やトンネル工事向け掘削土砂搬送設備、ダム新設工事向け骨材搬送設備などの受注があり、前期末に比べ増加しました。売上高については、マテリアル機械は、前期並みの売上高となりましたが、ポンプ設備および環境製品は、減収となりました。コントラクタ事業は、清水IC第3高架橋鋼上部工事やトンネル工事向け掘削土砂搬送設備などについて、出来高に対応した売上高を計上し、増収となりました。営業利益については、マテリアル機械においてプラント工事の遅延等に伴う追加原価の発生があり、減益となりました。

 

〔ロックドリル〕

 

前期

当期

対前期増△減

売上高(百万円)

35,752

38,682

2,930

営業利益(百万円)

3,030

4,148

1,117

 

ロックドリル部門の売上高は、386億82百万円(対前期比29億30百万円増)、営業利益は、41億48百万円(対前期比11億17百万円増)となりました。国内については、油圧クローラドリルなどの補用部品の出荷増や整備事業の受注増により、増収となりました。海外については、北米向け油圧ブレーカおよび油圧クローラドリルの出荷が好調だったことに加え、中近東やアフリカ向け油圧クローラドリルの出荷が増加した結果、円安による増収効果もあり、増収となりました。

 

〔ユニック〕

 

前期

当期

対前期増△減

売上高(百万円)

27,961

27,853

△108

営業利益(百万円)

1,547

1,158

△389

 

ユニック部門の売上高は、278億53百万円(対前期比1億8百万円減)、営業利益は、11億58百万円(対前期比3億89百万円減)となりました。国内については、トラックの生産遅延が回復傾向となり、前期と比べトラック供給台数が増加したことにより、ユニッククレーンの出荷が増加し、増収となりました。一方で、鋼材など原材料価格の高騰等に対して、値上げ前の受注製品の出荷が続いた結果、原価率が悪化し、減益となりました。海外については、中国、東南アジア、欧州などへの出荷が減少し、減収となりました。

 

≪機械事業合計≫

 

前期

当期

対前期増△減

売上高(百万円)

81,658

82,085

427

営業利益(百万円)

6,093

5,696

△397

 

産業機械、ロックドリルおよびユニックの機械事業の合計売上高は、820億85百万円(対前期比4億27百万円増)、営業利益は、56億96百万円(対前期比3億97百万円減)となりました。

 

 

〔金 属〕

 

前期

当期

対前期増△減

売上高(百万円)

111,424

84,712

△26,711

営業利益(百万円)

1,276

1,945

668

 

金属部門の売上高は、847億12百万円(対前期比267億11百万円減)、営業利益は、19億45百万円(対前期比6億68百万円増)となりました。電気銅の海外相場は、8,966米ドル/トンで始まり、4月半ばには9,000米ドル/トン台まで上昇したものの、中国の需要低迷長期化を主因として、5月後半には8,000米ドル/トン割れとなりました。その後は、中国の需要回復に対する期待感と不透明感が入り交じり、上げ下げを繰り返す展開が続き、期末には8,729米ドル/トンとなりました。2023年3月末をもって小名浜製錬㈱との委託製錬契約を終了したことにより、電気銅の生産量が48,262トン(対前期比21,924トン減)となったことから、販売数量が減少し、減収となりました。一方で、金属価格変動による利益計上があったほか、委託製錬収支の改善により、増益となりました。

 

〔電 子〕

 

前期

当期

対前期増△減

売上高(百万円)

6,926

6,766

△159

営業利益(百万円)

500

212

△288

 

電子部門の売上高は、67億66百万円(対前期比1億59百万円減)、営業利益は、2億12百万円(対前期比2億88百万円減)となりました。高純度金属ヒ素は、国内外ともに主要用途である化合物半導体用向け市場サイクルは底を脱しましたが、前期並みの売上高にとどまりました。結晶製品は、ユーザーの在庫調整の影響により、また、窒化アルミセラミックスは、半導体製造装置向け部品の需要低迷などにより、大幅な減収となりました。コイルは、半導体不足が解消された自動車生産の回復により、増収となりました。

 

〔化成品〕

 

前期

当期

対前期増△減

売上高(百万円)

8,454

8,908

454

営業利益(百万円)

532

608

75

 

化成品部門の売上高は、89億8百万円(対前期比4億54百万円増)、営業利益は、6億8百万円(対前期比75百万円増)となりました。酸化銅は、銅価の上昇と価格改定などにより販売単価が上昇したものの、パソコンおよびスマートフォン向けに加え、サーバー等に使用されるパッケージ基板向けの需要も減少したため、前期並みの売上高となりました。亜酸化銅は、主要用途である船底塗料の需要が好調であることに加え、銅価の上昇と価格改定などにより販売単価が上昇し、増収となりました。

 

≪素材事業合計≫

 

前期

当期

対前期増△減

売上高(百万円)

126,804

100,388

△26,416

営業利益(百万円)

2,309

2,765

456

 

金属、電子および化成品の素材事業の合計売上高は、1,003億88百万円(対前期比264億16百万円減)、営業利益は、27億65百万円(対前期比4億56百万円増)となりました。

 

〔不動産〕

 

前期

当期

対前期増△減

売上高(百万円)

2,056

1,873

△182

営業利益(百万円)

835

470

△365

 

不動産事業の売上高は、18億73百万円(対前期比1億82百万円減)、営業利益は、4億70百万円(対前期比3億65百万円減)となりました。主力ビルである室町古河三井ビルディング(商業施設名:COREDO室町2)は、商業施設の売上げに応じて発生する変動賃料が、コロナ禍前の水準まで回復しましたが、オフィスについては、都心の市場が供給過多の状態にある影響で、賃料単価が低下し、減収となりました。

 

〔その他〕

 

前期

当期

対前期増△減

売上高(百万円)

3,671

3,908

237

営業利益(百万円)

△133

△293

△160

 

金属粉体事業、鋳物事業、運輸業等を行っています。売上高は、39億8百万円(対前期比2億37百万円増)、営業損失は、2億93百万円(対前期比1億60百万円の損失増)となりました。

 

②財政状態の状況

 

前期

当期

対前期増△減

総資産(百万円)

232,745

259,878

27,132

負債(百万円)

126,695

126,605

△89

(うち有利子負債

(百万円))

62,848

58,389

△4,459

純資産(百万円)

106,050

133,272

27,222

自己資本比率(%)

44.2

50.0

5.8

 

当期末の総資産は、対前期末比271億32百万円増の2,598億78百万円となりました。これは主として、受取手形、売掛金及び契約資産が減少したこと、現金及び預金、上場株式の株価が上昇した投資有価証券、また、古河大阪ビルの跡地その他の土地の共有持分の一部を譲渡した代金を計上したことにより、投資その他の資産の「その他」に含まれる長期未収入金が増加したことによるものです。有利子負債は、対前期末比44億59百万円減の583億89百万円となり、負債合計は、対前期末比89百万円減の1,266億5百万円となりました。純資産は、対前期末比272億22百万円増の1,332億72百万円となり、自己資本比率は、対前期末比5.8ポイント増加し50.0%となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 

前期

当期

対前期増△減

営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

6,148

10,492

4,344

投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

△1,617

1,915

3,533

財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

△5,934

△8,446

△2,512

現金及び現金同等物(百万円)

13,606

18,193

4,587

 

当期の営業活動によるキャッシュ・フローは、主として、税金等調整前当期純利益の計上により104億92百万円の純収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出64億5百万円などの支出がありましたが、有形固定資産の売却による収入54億64百万円、投資有価証券の売却による収入31億28百万円などの収入があり、19億15百万円の純収入となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行による収入50億円などの収入がありましたが、借入金返済による支出310億40百万円や配当金の支払額19億4百万円の支出があり、84億46百万円の純支出となりました。この結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、対前期末比45億87百万円増の181億93百万円となりました。

 

当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当期の営業活動によるキャッシュ・フローは、104億92百万円の純収入で、対前期比43億44百万円の収入増となりました。主として、売上債権の減少、仕入債務の増加ほか、営業活動に係る資産・負債の増減により支出が減少したことによるものです。

 

(参考)

 

2022年度

(百万円)

2023年度

(百万円)

増△減

(百万円)

税金等調整前当期純利益

8,506

23,252

14,745

非資金損益項目等の調整※

5,039

△9,482

△14,522

 非資金損益項目等の調整後収入

13,546

13,769

223

 

 

 

 

営業活動に係る資産・負債の増減

△4,653

△941

3,711

純支払利息および配当金の受取額

579

878

298

法人税等の純支払額

△3,324

△3,213

110

 

 

 

 

 営業活動によるキャッシュ・フロー

6,148

10,492

4,344

※ 減価償却費や減損損失等の非資金損益項目のほか、営業外損益、特別損益項目の調整を含みます。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当期の投資活動によるキャッシュ・フローは、19億15百万円の純収入(前期は16億17百万円の純支出)で、対前期比35億33百万円の収入増となりました。主として、有形固定資産の取得による支出64億5百万円(対前期比30億43百万円の支出増)に対し、有形固定資産の売却による収入が54億64百万円(対前期比52億25百万円の収入増)、投資有価証券の売却による収入が31億28百万円(対前期比17億47百万円の収入増)となったことによるものです。有形固定資産の取得による支出の増加は、主として、群馬環境リサイクルセンター㈱の医療廃棄物処理設備の新設をはじめとする機械事業における、14億61百万円の支出の増加によるものです。有形固定資産の売却による収入の増加は、主として、古河大阪ビルの跡地その他の土地の共有持分の一部を譲渡したことによるものです。投資有価証券の売却による収入の増加は、政策保有株式について、毎年、保有継続の適否を検証するとともに、資産の有効活用および財務体質の健全化を図るべく適宜売却を進めていることによるものです。

 

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当期の財務活動によるキャッシュ・フローは、84億46百万円の純支出で、対前期比25億12百万円の支出増となりました。主として、有利子負債削減による支出(短期・長期借入れおよび社債の発行による収入と短期・長期借入金の返済による支出の純減)46億62百万円(対前期比17億93百万円の支出増)によるものです。

 

④生産、受注および販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

産業機械

17,134

△5.5

ロックドリル

36,299

5.0

ユニック

27,902

△2.5

金属

78,212

△26.7

電子

6,684

△3.6

化成品

7,396

4.1

その他

2,817

3.4

合計

176,445

△13.8

(注)1.生産金額の算出方法は、販売価格および製造原価によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.産業機械、ロックドリルおよびユニックの一部については外注生産を、また、金属は委託製錬を行っております。

 

b.受注実績

産業機械、ユニックおよびその他の一部については受注生産を行っており、当連結会計年度における受注実績を示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前期比

(%)

受注残高

(百万円)

前期比

(%)

産業機械

11,095

△26.3

15,870

11.4

ユニック

3,092

36.4

1,806

17.5

その他

1,117

73.1

433

△25.0

合計

15,305

△14.8

18,110

10.7

 

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

産業機械

15,548

△13.3

ロックドリル

38,682

8.2

ユニック

27,853

△0.4

金属

84,712

△24.0

電子

6,766

△2.3

化成品

8,908

5.4

不動産

1,873

△8.9

その他

3,908

6.5

合計

188,255

△12.1

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりです。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

古河電気工業(株)

32,340

15.0

28,672

15.2

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討の内容

(当社グループの当連結会計年度の経営成績)

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当連結会計年度の売上高は、対前期比259億34百万円(△12.1%)減少し、1,882億55百万円、営業利益は、対前期比5億7百万円(△5.6%)減少し、85億24百万円となりました。営業利益率は、0.3ポイント増加し、4.5%となりました。セグメント別の売上高および営業利益の状況につきましては、(1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況に記載のとおりです。

 

 

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当連結会計年度の営業外収益は、持分法による投資利益5億39百万円(前期は8億60百万円の持分法による投資損失)などを計上したことにより、対前期比5億9百万円増加し、36億55百万円となりました。営業外費用は、対前期比10億34百万円減少し、17億95百万円となりました。以上の結果、経常利益は、対前期比10億36百万円(11.1%)増加し、103億84百万円となりました。

 

当連結会計年度の特別利益は、古河大阪ビルの跡地その他の土地の共有持分の一部を譲渡したことを主とした、固定資産売却益134億33百万円(対前期比133億85百万円増)、投資有価証券売却益26億59百万円(対前期比22億96百万円増)などを計上したことにより、対前期比156億82百万円増加し、160億92百万円となりました。特別損失は、Cariboo Copper Corp. (ジブラルタル銅鉱山(カナダ)の権益の25%を保有)株式譲渡に伴う関連会社投融資整理損20億58百万円などを計上したことにより、対前期比19億72百万円増加し、32億24百万円となりました。以上の結果、税金等調整前当期純利益は、対前期比147億45百万円(173.3%)増加し、232億52百万円となりました。

 

当連結会計年度の法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合計した税金費用は、対前期比48億81百万円増加し、69億31百万円となりました。法人税等の負担率は、子会社留保利益による調整(△7.8%)があった前期に比し、5.7ポイント増加し、29.8%となりました。

非支配株主に帰属する当期純利益は、対前期比21百万円減少し、2億24百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、対前期比98億85百万円(159.1%)増加し、160億97百万円となりました。

 

(当社グループの当連結会計年度末の財政状態)

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当連結会計年度末の流動資産は、対前期末比2億46百万円(△0.2%)減少し、996億36百万円となりました。減少の要因は、現金及び預金が49億6百万円(36.1%)増加しましたが、売上高の減少により、受取手形、売掛金及び契約資産が50億93百万円(△14.3%)減少したことによるものです。

当連結会計年度末の固定資産は、対前期末比273億78百万円(20.6%)増加し、1,602億41百万円となりました。増加の要因は、古河大阪ビルの跡地その他の土地の共有持分の一部を譲渡した代金の計上により、投資その他の資産の「その他」に含まれる長期未収入金が増加したほか、保有する上場株式の株価の上昇により、投資有価証券が126億71百万円(36.5%)増加したことによるものです。なお、当社の株式の保有状況については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (5) 株式の保有状況」に記載しています。

以上の結果、当連結会計年度末の総資産は、対前期末比271億32百万円(11.7%)増加し、2,598億78百万円となりました。

当連結会計年度末の流動負債は、対前期末比114億42百万円(△18.1%)減少し、516億69百万円となりました。減少の要因は、短期借入金(1年以内返済予定の長期借入金を含みます。)が、100億49百万円(△60.5%)減少したことによるものです。

当連結会計年度末の固定負債は、対前期末比113億52百万円(17.9%)増加し、749億35百万円となりました。増加の要因は、社債および長期借入金の合計額が、55億90百万円(12.1%)増加したほか、その他有価証券評価差額金に係る繰延税金負債が増加したことによるものです。

以上の結果、当連結会計年度の負債合計は、対前期末比89百万円(△0.1%)減少し、1,266億5百万円となりました。

 

当連結会計年度末の純資産は、対前期末比272億22百万円(25.7%)増加し、1,332億72百万円となりました。増加の要因は、主に親会社株主に帰属する当期純利益160億97百万円を計上し、剰余金の配当19億5百万円を実施したことなどにより、株主資本合計が125億77百万円(15.0%)増加したこと、また、その他有価証券評価差額金の増加などにより、その他の包括利益累計額合計が143億83百万円(75.8%)増加したことによるものです。

 

(当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因)

産業機械製品は、主に民間設備投資と公共投資の動向の影響を受けます。ロックドリル製品は、国内では民間設備投資と公共投資の動向、海外では出荷先各国の景気動向の影響を受けます。ユニック製品は、トラックの国内需要動向の影響を受けます。

電気銅をはじめとする金属製品は、原料銅鉱石、地金製品ともに国際市況動向の影響を受け、製錬採算は、鉱石買鉱条件の影響を受けます。電子製品は、半導体市場の動向の影響を受けます。

なお、主要なリスクを含む事業等のリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しています。

 

(当社グループの資本の財源および資金の流動性)

a.キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

b.契約債務

2024年3月31日現在の契約債務の概要は、以下のとおりです。

 

年度別要支払額(百万円)

合計

1年以内

1年超

2年以内

2年超

3年以内

3年超

4年以内

4年超

5年以内

5年超

短期借入金

493

493

長期借入金

52,895

6,064

3,498

7,427

7,320

5,735

22,849

リース債務

907

250

199

144

104

78

130

上記の表において、連結貸借対照表の短期借入金に含まれている1年以内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めています。

当社グループの第三者に対する保証は、連結会社以外の会社の金融機関等からの借入等に対する債務保証です。保証した借入金等の債務不履行が発生した場合、代わりに弁済する義務があり、2024年3月31日現在の債務保証額は、16億2百万円です。なお、運転資金等の効率的な調達を行うため、取引金融機関と当座貸越契約および貸出コミットメント契約を締結しており、2024年3月31日現在の契約総額は、509億61百万円(借入実行額4億93百万円)です。

 

c.連結キャッシュ・フロー配分と資本政策

「2025年ビジョン」達成に向けた最終フェーズを担う「中期経営計画2025」における、連結キャッシュ・フロー配分および資本政策については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5) 優先的に対処すべき事業上および財務上の課題 ②「中期経営計画2025」における経営方針・経営計画と進捗および拡充・強化した取り組み g.経営資源の配分等、d.資本政策」に記載のとおりです。

 

「2025年ビジョン」の各フェーズにおける連結キャッシュ・フロー配分の概要は、次のとおりです。

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設備投資ヘの資金配分については、第1フェーズの設備投資実績累計額は164億3百万円(設備投資等の支払額は163億94百万円)、第2フェーズは131億10百万円(設備投資等の支払額は124億59百万円)、2023年度は80億13百万円(設備投資等の支払額は65億26百万円)となりました。なお、2023年度の設備投資の概要については、「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に記載のとおりです。第3フェーズの設備投資累計額は200億円を見込み、70%に当たる140億円をコア事業と位置づける機械事業に投下する予定です。引き続き、モノづくり力の強化を支える設備投資を実施していきます。

 

有利子負債の削減については、2016年度末の有利子負債残高735億7百万円から、第1フェーズで30億94百万円、第2フェーズで75億64百万円、2023年度は44億59百万円を削減(「連結キャッシュ・フロー配分の概要」の有利子負債の増△減には、為替換算差額による増△減額を含んでいません。)し、当連結会計年度末の有利子負債残高は、583億89百万円となりました。第3フェーズでは有利子負債100億円の削減を予定しており、引き続き、金融情勢に左右されない資金調達を可能にする堅固な財務基盤の確立を目指していきます。更に、「2025年ビジョン」の最終年度となる2025年度には、日系格付機関による発行体格付で、現行の「BBB+」から「A-」以上の格付引上げが可能となる財務水準をイメージし、今後とも継続して財務の健全性向上に努めていきます。

 

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配当については、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するための投資を優先したうえで、増配および中間配当の実施を検討し、原則として1株当たり50円以上の年間配当金および連結自己資本総還元率3%以上を目安として、安定的・継続的な利益還元に努めていきます。第1フェーズの剰余金の処分累計額は59億58百万円で、平均の連結自己資本総還元率は3.2%、第2フェーズの剰余金の処分累計額は58億円で、平均の連結自己資本総還元率は2.6%、2023年度の剰余金の処分額は20億45百万円で、連結自己資本総還元率は3.1%でした。

 

自己株式の取得・消却については、株価の動向や資本効率、キャッシュ・フロー等を勘案しつつ適宜検討していきます。第1フェーズで取得した自己株式の総数は1,186,300株、取得価額の総額は16億28百万円、第2フェーズは1,099,400株、13億87百万円、2023年度は925,700株、16億20百万円(「連結キャッシュ・フロー配分の概要」の自己株式の取得額には、単元未満株式の買取請求による自己株式の取得を含みます。)でした。

 

政策保有株式の縮減については、毎年、個別の銘柄ごとにその保有目的、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか、また同時に定性面、定量面からの総合的な判断を含め精査し、保有継続の適否を検証しています。保有の必要性が認められなくなった銘柄は、適宜売却を行うなど縮減に努め、縮減に関する指標として、政策保有株式の連結純資産に対する比率を継続的に開示していきます。当連結会計年度末の比率は、保有する上場株式の株価が上昇したことにより、対前期末比5.8ポイント増加し、40.8%となりました。

なお、2024年2月に政策保有株式の縮減目標を設定し、2026年3月末までに連結純資産に対する比率を20%未満にすることを公表しました。これを更に推し進め、1年前倒しで2025年3月末までに低下させる予定です。当該売却資金は、「中期経営計画2025」において株主還元に関する方針として設定した自己株式の取得(3年間)の目安を30億円程度から50億円程度に増額し、活用する予定です。更に、M&A等の成長投資のほか、環境投資としてカーボンニュートラルおよび環境保全に係る投資に活用する予定です。(「連結キャッシュ・フロー配分の概要」の第3フェーズ累計額(イメージ)は、営業活動によるキャッシュ・フローの配分を表しており、当該売却資金を反映していません。)

 

(当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)

創業150周年を迎える2025年度に向けた当社グループの2025年ビジョン「FURUKAWA Power & Passion 150」において連結営業利益150億円超の常態化、二桁台のROEを掲げる中、「2025年ビジョン」を具現化していくための最終フェーズ(2023年度~2025年度)を担う「中期経営計画2025」を策定し、最終年度である2025年度に、連結営業利益130億円程度、ROE8%程度とする経営指標を設定しました。

最終フェーズ初年度に当たる2023年度については、マテリアル機械においてプラント工事の遅延等に伴う追加原価の発生があった産業機械部門、鋼材など原材料価格の高騰等に対して、値上げ前の受注製品の出荷が続いたユニック部門などが低調で、連結営業利益は85億24百万円となりました。特別利益に、古河大阪ビルの跡地その他の土地の共有持分の一部を譲渡したことを主とした、固定資産売却益134億33百万円を計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純利益が160億97百万円となった結果、ROEは13.8%となりました。

 

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目標達成に向けての成長戦略として、事業ポートフォリオの見直し強化に加え、各事業部門内の事業(製品)ポートフォリオ戦略も可視化し、収益性の改善や低収益事業(製品)の見極めを推進していきます。特に、コア事業と位置づける機械事業については、持続的拡大を新たなステージに引き上げるために、経営資源を集中していきます。

ROE向上に向けた取り組みの強化については、投資に伴うリスクおよび資本コストを勘案した採算性に留意し、個別の投資判断を行うとともに、効率性、収益性の改善に努めます。また、資本コストを活用した事業ポートフォリオマネジメントを運用することにより、経営資源配分の全体最適を追求し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現していきます。

 

(セグメントごとの財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析検討の内容)

ROE向上の取り組みの強化・浸透を図るべく、ROA(総資産営業利益率)をセグメントごとの経営指標・管理指標とし、ROAの構成要素として収益性(売上高営業利益率)、効率性(総資産回転率)の改善に取り組んでいます。2016年度(比較基準年)、2019年度(第1フェーズの最終年度)、2022年度(第2フェーズの最終年度)および2023年度にわたる指標の推移、ならびに2023年度の状況は以下のとおりです。なお、セグメントごとの今後の課題については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5) 優先的に対処すべき事業上および財務上の課題 ②「中期経営計画2025」における経営方針・経営計画と進捗および拡充・強化した取り組み h.セグメント別の基本戦略、重点課題」に記載のとおりです。

 

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産業機械部門では、単なる機器メーカーからの脱却を目指し、エンジニアリング力の強化を図ってきた成果として、コントラクタ事業の拡大や、マテリアル機械におけるセクションプラント工事案件への技術提案による受注獲得などが、業績向上に大きく貢献し、収益性(営業利益率)が改善してきましたが、2023年度は、マテリアル機械においてプラント工事の遅延等に伴う追加原価の発生があったため、収益性(営業利益率)が大幅に悪化したことに加え、固定資産投資および在庫投資の増加などにより効率性(総資産回転率)も悪化した結果、ROAは1.4%となりました。

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ロックドリル部門では、新型コロナウイルス感染症の影響から回復した2021年度以降の増収に伴い、収益性(営業利益率)が改善し、また、売上債権回転率の改善や、在庫水準適正化の取り組みによる棚卸資産回転率の改善を主因として、効率性(総資産回転率)も改善しています。2023年度は、北米向け油圧ブレーカおよび油圧クローラドリルの出荷好調に、円安効果も加わった増収を主因として、収益性(営業利益率)が更に改善し、ROAは10.8%となりました。

 

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ユニック部門では、継続的な鋼材など原材料価格の高騰等に対して、値上げ前の受注製品の出荷が続いた結果、収益性(営業利益率)が更に悪化し、2023年度のROAは3.7%となりました。2016年度から2021年度にかけて実施した佐倉工場の設備投資に伴い、固定資産回転率が悪化しているため、収益性(営業利益率)の改善とともに、設備投資効果の追求と最大化が課題となっています。

 

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金属部門では、金属価格変動による利益計上に加え、委託製錬収支の改善により、収益性(営業利益率)が更に改善し、2023年度のROAは6.4%となりました。委託製錬事業の抜本的な見直しとして、2023年3月末に小名浜製錬㈱との委託製錬契約を終了し生産規模を縮小した結果、必要銅精鉱量が減少したため、銅鉱山権益への出資についても見直し、ジブラルタル銅鉱山(カナダ)の権益の25%を保有する Cariboo Copper Corp.の株式を2024年3月に譲渡しました。

 

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電子部門では、半導体市況回復の遅れを主因として収益性(営業利益率)が悪化し、2023年度のROAは2.4%となりました。電子機器の高性能化や高集積化、微細化、薄型化が進み、それに伴う放熱部材の需要が高まっている窒化アルミセラミックスの生産能力増強のための設備投資を実施しており、収益基盤の強化を図っています。

 

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化成品部門では、亜酸化銅が、主要用途である船底塗料の需要が好調だったことに加え、銅価の上昇と価格改定などにより販売単価が上昇し、増収となったことを主因として収益性(営業利益率)が改善し、2023年度のROAは3.5%となりました。5G関連やクラウドサーバー向けに販売が伸長することに備え、酸化銅の生産能力増強のための設備投資を実施しています。

 

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不動産事業では、都心のオフィス市場が供給過多の状態にある影響で、室町古河三井ビルディングの事務所賃料単価が低下し、減収となったことを主因として収益性(営業利益率)が悪化し、2023年度のROAは1.5%となりました。経営資源の有効活用を図ることを目的として、2023年8月に古河大阪ビルの跡地その他の土地の共有持分の一部を譲渡し、譲渡代金を原資として、当該地に建築中のホテルおよび一部住宅を用いた賃貸事業を2027年度中に開始することを計画しています。

 

②重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しています。

また、この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。

 

 

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

6【研究開発活動】

 当社グループは、多岐にわたる市場ニーズにかなった高付加価値製品の開発を積極的に推進しております。

 当連結会計年度における研究開発は、産業機械、ロックドリル、ユニック、電子、化成品部門を中心に行っております。

 当連結会計年度における研究開発費は、以下のとおりです。

部門の名称

金額(百万円)

産業機械部門

2

ロックドリル部門

112

ユニック部門

229

金属部門

電子部門

88

化成品部門

174

その他部門

19

コーポレート研究

686

合計

1,314

 

 当連結会計年度における研究開発活動の主なものは、以下のとおりです。

(1) 産業機械部門

 産業機械部門では、砕石市場における製砂プラント向けの分級機の開発等を行っております。

 

(2) ロックドリル部門

 ロックドリル部門では、各種大型油圧ブレーカ、排ガス規制対応やセミオート機能を搭載しせん孔作業の簡易化を実現した油圧クローラドリル、全自動ドリルジャンボの技術を応用した自動ロックボルト施工機等の開発を行っております。

 

(3) ユニック部門

 ユニック部門では、ユニッククレーン、ユニックキャリアのほか、欧州向けリチウムイオンバッテリー式ミニ・クローラクレーンの開発を行っております。

 

(4) 電子部門

 電子部門では、高機能窒化アルミセラミックス製品とその製造技術の開発を行っております。

 

(5) 化成品部門

 化成品部門では、金属銅粉のほか、酸化銅の量産化並びに環境負荷が低い製造技術の開発を行っております。

 

(6) その他部門

 その他部門では、半導体市場向け高純度アルミニウム粉等の開発を行っております。

 

(7) コーポレート研究

 当社が中心となって、機械製品の制御システムや素材開発等各セグメント製品群の基盤技術開発、新事業創出のための研究開発等を行っています。コーポレート研究に係る研究開発費は全報告セグメント(事業部門)に配賦しています。