当社グループは、2019年11月に経営ビジョン「Compass2030 エネルギーとソリューションを 暮らし、都市、地球の未来に」を発表し、①CO2ネット・ゼロへの移行をリード、②価値共創のエコシステム構築、③LNGバリューチェーンの変革、の3つの挑戦を掲げ、当社グループの変革の姿を示しました。
その後、2021年11月に「Compass Action」を発表し、Compass2030実現のための具体的な道筋を示し、2023年2月に2023-2025年度中期経営計画「Compass Transformation 23-25」を発表しました。
2023-25年度は、「従来のエネルギーの枠を超えたソリューションと事業群で、社会の持続的発展とお客さまへの一層の価値提供を追求すべく、東京ガスグループ自らがビジネスモデルを変革」する期間と位置づけ、グリーントランスフォーメーション(GX)・デジタルトランスフォーメーション(DX)・お客さまとのコミュニケーション変革(CX)を軸に3つの主要戦略を実行しています。戦略実行にあたっては、エネルギー市場のボラティリティや不確実性に迅速かつ柔軟に対応すべく、「収益性」「成長性」「安定性」の視点から事業ポートフォリオマネジメントを強化し、新たな成長領域への経営資源のシフトを加速します。
◆東京ガスグループ 2023-2025年度中期経営計画「Compass Transformation 23-25」の3つの主要戦略
①エネルギー安定供給と脱炭素化の両立:エネルギー安定供給を確保しながら、脱炭素分野を順次事業化・収益化
≪バリューチェーン全体の柔軟性を駆使した市場変動への対応・安定供給の推進≫
・エネルギー市場変動の増大に対応すべく、調整力や環境価値等の新たに成長する市場に適した資産形成の取組みとして、系統用蓄電池事業を推進するほか、お客さま敷地内の蓄電池をはじめとする様々なリソースの集約及び最適な需給運用を推進してまいります。また、これらの分散型エネルギーリソース(DER)の運用・管理システム「クラーケンフレックス」を導入開始しました(2023年10月公表)。今後もバリューチェーン全体で自社アセットの柔軟性を活かして市場ボラティリティに対応し、自社のガス・電力・環境価値の供給力と調整力、お客さまの需要・分散型リソースを組み合わせたAO&Tの高度化を実現してまいります。
≪責任あるトランジションの実行≫
・「東京ガスグループカーボンニュートラルロードマップ2050-カーボンニュートラル社会実現に向けた具体的な道筋-」を2024年3月に発表しました。国内外でLNGの高度利用を一層推進しCO2削減を図りながら、その収益を再エネ(特に市場規模の大きい洋上風力等)、e-methane、水素等の先進的な脱炭素分野に投入・順次事業化を図ります。また自社排出削減はもとより、お客さまニーズに応じた最適なソリューションを提供し、お客さまと東京ガスグループがともに持続的に発展する好循環を確立することで、社会全体の脱炭素化と経済的成長の両立を図ります。
≪ガス・電力双方の脱炭素技術実現に向けた取組み≫
・エネルギー需要の大宗を占める熱分野の脱炭素化を積極的に推進するため、e-methane に関する取組みをこれまでの小規模実証から大規模サプライチェーン構築へと強化・拡大します。電力分野では太陽光・バイオに加え、洋上風力の大規模化・低コスト化に向けた取組みを推進し、国とも連携しながら早期にGXの実現を目指します。
②ソリューションの本格展開:GX・DXを取り入れたソリューションをブランド化し、拡充することで、エネルギーに次ぐ事業の柱へ
≪統合事業ブランド構築とソリューションの拡充≫
・お客さまへの提供価値を「レジリエンス」「最適化」「脱炭素」と再定義し、これらに関わるソリューションを統合する新たなブランド「IGNITURE」を2023年11月に立ち上げました。「ご家庭」「法人」「地域・コミュニティ」のお客さまにとって、分かりやすい・使いやすいソリューションメニューを提供します。
≪リアルの強みとデジタルを活用したお客さまとのコミュニケーション強化≫
・オクトパスエナジー社等の先進的なデジタル技術を活用し、お客さまとのコミュニケーションを強化することで、これまでのリアルな接点で培ったお客さまとの関係をより一層強固なものにします。
≪地域密着の強みを活かした最適ソリューションの提供を通じた地域社会との価値共創≫
・東京ガスグループとアライアンスパートナーの省エネから先進的な脱炭素技術までのあらゆる環境ソリューションを最適に組み合わせ、お客さまや地域社会の課題解決に貢献します。さらにソリューションや商圏・分野の拡大により、ESG型不動産開発やまちづくりも推進し、持続可能な地域の実現を目指します。
③変化に強いしなやかな企業体質の実現:DXによるビジネスモデル変革に加え、人的資本経営や財務基盤強化により不確実性への耐性を向上
≪DX主要3施策の推進≫
・先進企業の知見も取り入れ、デジタルの特徴を活かした仕組み・業務プロセスへと進化させるべく、DXの3本柱として次の施策を推進します。施策①:再エネの主力電源化に伴い今後成長が見込まれる調整力、環境価値等の新市場を見据え、将来の収益基盤となるデジタル取引プラットフォームを整備します。施策②:英国オクトパスエナジー社が高度なデジタル技術をもとに開発した顧客管理システム「クラーケン」を導入し、顧客体験(CX)を大幅に向上させます。施策③:スタッフ業務の業務プロセスを抜本的に見直し、間接業務の生産性を倍増します。
≪人的資本経営の実践≫
・カンパニー・基幹事業会社が、各々の市場でインパクトのある仕事を生み出し、収益力を高めるため、戦略的人員採用・配置・育成・リスキリングを行い、多様な人材がグループ全体で活躍できる制度を充実します。この取組みのひとつとして、各人の専門性の範囲やレベルを棚卸・見える化し、専門性向上策に具体的に取組む仕組みを導入しました。今後も、グループ員一人ひとりと東京ガスグループ双方が成長を実感できる人的資本経営を実践していきます。
≪財務基盤強化≫
・変化に強い企業体質の実現に向け、事業ポートフォリオマネジメントを強化(事業特性に応じた期待リターン設定)するために、企業価値に繋がるKGI・KPIロジックツリーを構築しました。執行によるモニタリングを実施し、健全な財務体質と成長投資を両立し、持続的な成長・企業価値向上を実現します。
■主要計数
(注)1 スライド差補正後利益
2 発行済みハイブリッド社債及びハイブリッドローンの資本性50%を調整
3 海外含む
当社グループは、グループ経営理念「人によりそい、社会をささえ、未来をつむぐエネルギーになる。」を体現していくため、サステナビリティ上の重要課題(マテリアリティ)を特定し、事業活動を通じて取組んでいます。これにより、社会的価値と経済的価値を両立して創出していくことを実現していきます。
<マテリアリティ(2023年度~)>
1.脱炭素社会への責任あるトランジション
2.地球環境の保全
3.エネルギーの安定供給
4.安全と防災の徹底・安心なまちづくりへの貢献
5.ウェルビーイングなくらしとコミュニティへの貢献
6.多様な人材が活躍できる組織の実現
7.サプライチェーン全体における人権の尊重
取締役会において、経営計画、経営方針その他の当社の経営の重要な意思決定をしており、マテリアリティも2023-2025年度中期経営計画と合わせて決議しました。その上で、経営計画におけるサステナビリティに関わる重点管理指標について、定期的に執行より報告を受け、その進捗をモニタリングしています。
執行の役割としては、当社グループの各組織で、マテリアリティに基づく事業活動を推進するとともに、サステナビリティに関する事案について、経営会議及びサステナビリティ委員会にて、審議・調整を行い、重要事項については取締役会に報告しています。執行役社長が委員長を務めるサステナビリティ委員会は年3回開催し、サステナビリティを取り巻く状況変化をアップデートした上で、サステナビリティに関わる指標の評価・モニタリングや、グループ全体の方向性の検討・調整等を行い、グループ全体のサステナビリティ経営を推進しています。
サステナビリティ推進体制
当社グループは全社的リスク管理(ERM=Enterprise Risk Management)体制を構築し、「リスク統制規則」の中で重要リスクを明文化しています(詳細は
当社グループは、マテリアリティを踏まえて経営ビジョン・中長期計画を策定しています。
具体的な戦略として、長期経営ビジョンであるグループ経営ビジョン「Compass2030」において「「CO2ネット・ゼロ」をリード」「「価値共創」のエコシステム構築」「LNGバリューチェーンの変革」の3つの挑戦を掲げています。また、その実現に向けた2023-2025年度中期経営計画「Compass Transformation 23-25」では、「従来のエネルギーの枠を超えたソリューションと事業群で、社会の持続的発展とお客さまへの一層の価値提供を追求すべく、当社グループ自らがビジネスモデルを変革」する期間と位置づけ、グリーントランスフォーメーション(GX)・デジタルトランスフォーメーション(DX)・お客さまとのコミュニケーション変革(CX)を軸に以下の3つの主要戦略を設定し、取組みを推進しています(詳細は
a エネルギー安定供給と脱炭素化の両立
b ソリューションの本格展開
c 変化に強いしなやかな企業体質の実現
当社グループは、各マテリアリティについて指標と目標を設定し、サステナビリティ委員会で進捗をモニタリングしています。
マテリアリティに関する主な指標・目標と実績
当社グループは、気候変動への対応を事業活動を通じて解決すべき重要課題として認識しており、マテリアリティの一つとして「脱炭素社会への責任あるトランジション」を特定しております。
その上で、CO2ネット・ゼロの実現に向け、2040年、2050年を見据えた具体的な道筋として「東京ガスグループ カーボンニュートラルロードマップ 2050」を策定しています。2030年までの短期では「責任あるトランジション」として天然ガスの高度利用を推進しながら、脱炭素と安定供給を両立し、2030年以降は脱炭素化技術を実装・拡大しながら、2040年までの中期ではカーボンニュートラル社会へのシームレスな転換を牽引、2050年までの長期にてガス・電力の脱炭素化を実現します。
また、当社グループの事業を取り巻く環境を踏まえて、気候変動が事業に及ぼす影響を定性・定量的に把握し、事業戦略のレジリエンスの確認、対応策の検討に活用することを目的に、シナリオ分析に取組んでおります。シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)が公表しているシナリオ等を参照しながら事業環境を想定し、想定されるリスクと機会を特定・整理しています。例えば、非化石エネルギーの拡大の都市ガス事業への影響を踏まえ、カーボンニュートラルロードマップ 2050の主要取組みの一つであるe-methaneに関する技術の推進・導入拡大を進めています。
マテリアリティに関する主な指標・目標と実績
(注) GHG(温室効果ガス)排出量は2022年度実績値を掲載しております。
なお、内訳や算定基準等については、2023年8月発行「東京ガスグループ
(https://www.tokyo-gas.co.jp/sustainability/download/pdf/sr2023.pdf)」の52ページを参照ください。
2023年度実績値は、2024年8月発行予定の「東京ガスグループ
(https://www.tokyo-gas.co.jp/sustainability/download/index.html)」の「環境データ」を参照ください。
(5)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標
当社グループは、2022年4月に新たなグループ経営理念「人によりそい、社会をささえ、未来をつむぐエネルギーになる。」を公表しました。これに先駆けて当社グループはこれまで、事業環境が大きく変化する中にあっても社会から必要とされる企業グループであり続けるため、自らガバナンスを変え、戦略を変え、組織・マネジメントを変え、変革に向けた取組みを行ってきました。さらなる変革のステップを踏み出すためには、唯一、価値を創り出すことのできる「人」つまりグループ員一人ひとりが行動を変容していくことが不可欠であるとの想いから、グループ員一人ひとりが自ら行動を変容していくための拠り所として、自分たちが何者か・何のために存在するのかを表した「存在意義」とグループ員が大切にする「価値観」を定めました。
2023年2月には、2023-2025年度グループ中期経営計画「Compass Transformation 23-25」を公表しました。「変化に強いしなやかな企業体質の実現」を主要戦略の一つと位置づけ、その実現に向けて「人的資本経営の強化」を掲げました。当社グループの果たすべき役割を実行していくのはグループ員に他ならないことをステークホルダーの皆さまと共有しています。グループ員一人ひとりの使命に対するエンゲージメントを高め、ホールディングス(HD)型グループ体制のもとで各カンパニー・基幹事業会社が組織としての強みを発揮していくことを目指し、グループ員一人ひとりと東京ガスグループ双方が成長を実感できる人的資本経営を実践していきます。
<人的資本経営実践に向けたポイント>
<ポイント1>人材シフトと事業変化への対応力強化
カンパニー・基幹事業会社が、各々の市場でインパクトのある仕事を生み出し競争力を強化するため、戦略的人員採用・配置・育成・リスキリングを行います。加えて、DX分野や脱炭素分野等、当社として更に競争力を高めていく必要がある分野において、突出した高い専門性を有する高度専門人材の採用を進めます。
<ポイント2>プロ人材としての成長・挑戦、自律的キャリア形成促進
タレントマネジメントシステムやデータを活用し、一人ひとりの適性や意志を反映したキャリア形成やスキル構築の機会を提供します。また、会社が機会を提供するだけでなく、自らが機会をつかむ社外兼業・社内公募等を推進・拡充していきます。
<ポイント3>知・経験のダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン
当社グループに集う多様な人材の多様な背景・考え・働き方を尊重して背中を押し、育て、やりがいの大きい業務で成果を出してもらうことを通じて会社の成長と社会の発展につなげていきます。中でも女性活躍はダイバーシティの端緒と位置付けて様々な取組みを進めています。2023年には東京ガスの女性執行役員数が増加し3名になるなど、各役職段階に占める女性の割合が着実に増加しており、多様な人材が活躍できる土壌が形成されています。また、変化に強いしなやかな企業体質の実現に向けて、男女ともに柔軟な働き方や仕事と育児の両立を推進しています。
戦略実行の中心にあるのは人であり、従業員エンゲージメントの向上は必須と考えています。エンゲージメントを定期測定し指数を施策に反映することで、人事制度・運用やマネジメントを高度化していきます。
(注) 1 連結子会社の実績は、
2 東京ガスネットワーク㈱への転籍(2024年4月)による母数変動に伴い、前年度比+1.5ポイント。同条件で東京ガス㈱・東京ガスネットワーク㈱を合算した実績は、10.3%(前年度比+0.5ポイント)。
3 2023年度の育児休職取得者のうち、育児を目的とした休暇も含めて1ヶ月以上取得した者の割合は86.5%。平均日数は、60.2日。
4 2025年度目標到達点について、割合は育児休職の取得率100%、日数は育児休職と育児を目的とした休暇を合わせた取得日数1ヶ月以上。
(注) 1 翌年度の4月時点実績
2 2019年度~2021年度については、育児・介護休業法に規定された計算方法に基づく算出なし
3 詳細は、当社「
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有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当社は天然ガスをはじめとする都市ガス原料の大半を海外から輸入しているため、原料輸入先のカントリーリスクやガス田・LNG液化基地でのトラブル、LNG船の運航途上でのトラブル、東京湾での入港規制等により原料が長期にわたり調達できない場合には、都市ガスの供給に支障を来し、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、1969年の受入開始以来、安定調達を続けている主要原料のLNGについては、現在、4カ国13プロジェクトから購入し、調達先の多様化を進めています。また、自社管理LNG船等を活用した柔軟な配船やトレーディングの活用等により、安定的かつ柔軟なLNG調達に取り組み、原料調達リスクの低減を進めています。
なお、ロシア・ウクライナ問題や中東情勢等の地政学リスクに起因した原料調達支障は、2024年5月末現在発生しておりませんが、関係各所と連携しつつ、引き続き都市ガスの安定供給に努めていきます。
② 自然災害
当社グループは、都市ガスの製造・供給設備を事業活動の基盤としている装置産業であるため、大規模な自然災害が発生した場合には、LNG基地等の製造設備や導管等の供給設備等に損害を受け、都市ガスの供給に支障を来す可能性があり、その復旧対応等に伴う費用が収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、主要設備は阪神・淡路大震災、東日本大震災クラスの大地震でも十分耐えられる構造になっているものの、さらに二次災害を防止するための予防対策等を実施しています。また、内閣府想定の大規模地震災害に備えた事業継続計画(BCP=Business Continuity Plan)の策定をはじめ、地震、台風、津波等の自然災害に対する非常事態体制の整備、定期的な訓練の実施及び近年の大型台風等の風水害リスクに対するレジリエンス向上策の実施等、災害の影響を最小限に止める対策を実施しています。
当社グループは、お客さまの生活や産業を支える都市ガスの製造・供給及び発電を行っているため、都市ガスの製造・供給に伴う大規模な漏洩・爆発事故や供給支障が発生した場合には、社会的責任の発生等有形無形の損害が発生し、事業収支にも影響を及ぼす可能性があります。また、発電に支障が発生した場合には、電力の市場調達が必要となり、その対応に伴う費用等により、電力収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、ガスの大規模供給支障事故に備えたBCPの策定をはじめ、各種保安対策を計画的に実施するとともに、非常事態体制を整備し、定期的な訓練を実施する等事故・供給支障の防止に取り組んでいます。また、当社は複数のLNG基地を有し、基地間での補完が可能なため、ガスの供給停止に至る可能性は低いと考えます。
当社グループの業務従事者の病原性や伝播力の高い感染症への感染により、万一、都市ガスの製造・供給及び発電に支障を来した場合には、当社の事業収支に影響を及ぼすとともに社会的責任の発生等有形無形の損害が生じる可能性があります。
このため、流行発生の予見は困難ですが、病原性や伝播力の高い感染症に備え、BCPの策定や非常事態体制の整備により影響を最小化する対策を実施しています。
⑥ 不測の大規模停電
当社のLNG基地は信頼性の高い受電系統を配しており、LNG基地への電力供給が停止する可能性は低いと考えられますが、ガスの需要量や製造・供給設備の状況によってはガスの製造・供給に支障を来し、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、関東エリアで不測の大規模停電が発生した場合に備えて、BCPの策定をはじめ影響を最小限に止める対策を実施しています。また、系統電源からの電力供給が停止した場合には、停電によるガス需要減も見込まれるとともに、自家用発電設備で稼働することが可能なため、停電時にも一定量のガス送出が可能となっています。さらに、当社は複数のLNG基地を有し、仮に1つのLNG基地が停止しても、基地間での補完が可能であり、必要なガスの製造が概ね可能となっています。
また、ガス供給については、圧力調整器の動力がガス自身の圧力差であり電力が不要であることから、大規模停電が発生した場合においてもガス供給を継続することが可能です。一方、ガスの圧力や流量の監視・コントロールする設備や災害対応を行う保安拠点ビルについては、商用電源を利用していますが、停電時には商用電源から非常用電源に切り替わり、継続して使用可能となっています。
当社グループは、都市ガス供給上の保安責任を負うことから、都市ガス供給に関わる事故やガス機器等に起因する事故が発生した場合には、その対応に伴う直接・間接の損害が発生する可能性があります。
このため、お客さまへの定期保安点検・開栓の品質向上や安全機器への取り替え促進等の安全強化策を実施しています。また、連結子会社や協力企業等を通して安全機能を持つガス機器や常時監視できるガス警報器の販売、業務用換気警報器の無償設置を実施することで、ガス機器重大事故は着実に減少しています。
発生の予見は困難ですが、他社における都市ガス事故が都市ガス業界全体の信頼に重大な影響を及ぼし、有形無形の損害を被る事態が発生する可能性があります。
このため、平時から都市ガスの防災対策やガス機器の安全性向上対策を深化すると共に、お客さま・行政・マスコミ等に対し、当社の取り組みやガスの安全な使用方法等に関する周知活動を行っています。万一、事故が発生した際には、事故に関連する情報等について正確かつ誠実な広報を行い、ステークホルダーに正しく理解いただけるよう取り組みます。
所有する不動産や株式をはじめとした有価証券等の資産の市場価格が変動する場合、または年金資産が市場変動の影響により運用計画未達成となる場合には、会計基準にしたがって損失を計上する可能性があります。また、有利子負債について金利変動により支払利息が増加する可能性があります。
これらの損失影響を抑制するため、不動産については長期安定収益を志向する物件の取得、株式については保有意義が希薄化した証券の順次売却の実施、年金運用については特定の市場変動の影響を過度に受けないような分散投資の実施等の対応を行っています。また、当社の有利子負債は大部分が固定金利で調達していることに加え、借り換え時期を分散していることから、金利変動による影響は限定的です。
電力市場やLNG価格の変動が、収支に影響を及ぼす可能性があります。このため、当社は需要・供給両面での市場リスクマネジメントに取り組んでいます。
ガス小売全面自由化による他企業との競合激化や原油価格の変動、及び脱炭素の潮流による制度・お客さま志向の変化等LNGそのものが他エネルギーとの競争力を失う場合には、需要が減少し、収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループは、環境性・効率性・快適性の高いガス利用設備の導入や販売体制の強化をはじめとする営業強化及び効率化の徹底による競争力向上に取り組んでいます。
主として都市ガスの原料としているLNGの調達先との契約更改・価格交渉の動向によっては、収支に影響を及ぼす可能性があります。また、LNGは主に原油価格に連動して価格が決定されるため、原油価格の変動が収支に影響を及ぼす可能性があることに加え、ドル建ての売買契約になっているため、円の対ドル為替レート変動が収支に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、長期契約のLNGプロジェクトからの調達量を上回る需要増、感染症の拡大等に伴う経済活動の制限による需要減、出荷基地・輸送上のトラブルの発生、新規LNGプロジェクトの供給開始遅延等が生じ、スポットLNGの追加調達や転売が必要となる場合には、スポット市況により、収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社は調達先の多様化、契約条件の多様化、グローバルなLNGトレーディング強化等により、原料費の低減と安定化に取り組んでいます。
一方、原料費が変動しても「原料費調整制度」により、最大5ヶ月後にはガス料金に転嫁されます。ただし、原料費調整制度に基づき算定される平均原料価格(1トン当たり)が調整上限を超過した場合には超過分は未回収となります。また、会計年度を越えてガス料金に反映される場合には、年度収支に原料費の未回収・過回収による影響が及ぶ可能性があります。
ガス・電力事業においては、小売全面自由化に続き、送配電部門・ガス導管部門の法的分離が実施される等、制度の見直しが進められており、当社グループを取り巻く環境は大きく変化しています。今後のエネルギー政策の動向や他事業者との競争激化により、当社グループの事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、ガスは徹底的な効率化による競争力向上、電力は拡販と効率化の両立に取り組むと共に、当社グループの強みを活かしたサービスを通じて、お客さまそれぞれの暮らしやビジネスの多様なニーズにお応えすべく取り組みを進めています。
当社の連結売上高の多くが都市ガスの販売によるものであるため、猛暑や暖冬等の異常気象が発生した場合には、給湯・暖房用を中心とする家庭用ガス販売量や一部の業務用ガス販売量が変動し、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、気象の影響を受けづらい工業用やコージェネ用都市ガス販売に加え、Compass2030や東京ガスグループ2023-2025年度中期経営計画で掲げている、都市ガス販売以外のソリューションビジネス・不動産・海外事業の拡大等による事業バランスの変更を図っていきます。
中長期的な省エネ活動の進展及び産業構造の変化等により、将来の工業用・商業用の既存ガス需要の一部が減少する可能性があります。また、さらなる世帯人員の減少・生活形態の変化や省エネ機器の普及等により家庭用の既存需要の一部が減少する可能性があります。
将来のCO2削減に向けた社会的要請や機運が一層高まる中で、それらの開発や実用化が、将来、他社と比較して遅延した場合には、その新技術を活用できない、若しくはその活用に必要な知財使用・購入コストや代替技術開発コストが増加すること等により、結果的に競争力が低下し、経営成績等に中長期的に影響を及ぼす可能性があります。
このため、カーボンニュートラルロードマップ2050で掲げたカーボンニュートラル社会へのシームレスな転換を牽引するため、ガスはe-methane(合成メタン)導入、電力は再生可能エネルギーの拡大を主軸として脱炭素化を推進します。また、自社開発に加えてオープンイノベーションを戦略的に活用し、スピードや知財マネジメントを意識しつつ、開発状況の見える化・進捗管理を適宜実施しています。
Compass2030で掲げた海外への展開において、原油・ガス・電力価格及び外国為替相場は、常に変動することから、収支に影響を及ぼす可能性があります。特に、2023年12月にTGナチュラル・リソーシズ社を通じて天然ガス開発・生産事業会社を新たに買収しており、事業の特性上、ヘンリーハブ価格(ガス価格)の変動による影響をより大きく受ける構造となりましたが、へッジの活用や生産コスト低減などにより、リスクを緩和していきます。加えてLNGインフラ事業や再エネを含む脱炭素分野等、事業の多様化や資産入替により、リスクを分散していきます。
自由化の進展や技術革新により、中期的に既存ガス商材に対する競合の激化、競争力低下の恐れがあります。さらに、国や自治体の制度・政策等動向によっては、既存事業における競争環境が悪化する可能性があります。
このため、Compass2030及びカーボンニュートラルロードマップ2050で示した通り、カーボンニュートラル社会へのシームレスな転換を牽引すると共に、価値共創のエコシステム構築の取組みとして、デジタルマーケティング力を活かした商圏拡大、ラストワンマイルにおけるサービス拡充、デジタルソリューションや低・脱炭素商材の提供等を推進し、新たな市場を開拓し差別化・収益化を図ります。
当社は設備投資、出資、融資及び債務保証に関する案件に対しては投資評価委員会において採算性及びリスク評価を行い、その結果を踏まえて経営会議若しくは取締役会に付議する等、総合的な経営判断の下に投資を決定しています。
しかし、パイプラインやLNG基地建設等の安定供給基盤の強化や、電力事業、再エネ事業、エネルギーサービス事業、ガス田の開発等の海外事業やLNG輸送事業、IT及び保有不動産の活用に係わる大規模投資が、その後の経済情勢の変化等によっては、適切に回収されない、又は所期の成果を生み出せず、特別損失として収支に悪影響を及ぼす可能性があります。
このため、経済情勢の変化等は通年管理しており、その短・中期的影響を踏まえ未回収リスクの発現時は決算に反映させています。
お客さまの個人情報が外部へ流出した場合には、対応に要する直接的な費用、被害が深刻なお客さまからの信頼や当社グループのブランドイメージの毀損等により、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、グループ全体を対象とした情報セキュリティ推進体制の構築、情報セキュリティ教育や個人情報保護法教育、自主検査の実施、流出事故発生時のエスカレーションルールの徹底等を行うと共に、その構築・運用状況を社内審査により確認し、必要な改善を行う体制を整備する等の人的・組織的対策と外部からの不正アクセスやコンピュータウィルスによるシステムへの攻撃に対する侵入防止対策等の技術的対策により、個人情報の流出防止と事故発生時の影響の最小化に取り組んでいます。
② ITシステムの停止・動作不良
基幹ITシステムが停止した場合や動作不良を起こした場合には、お客さま対応業務の縮小・停滞・お約束不履行の発生等による当社グループのブランドイメージ毀損、通常と異なる手段で業務継続をするための追加費用の発生等のリスクがあります。また、ITシステムの停止・動作不良は、プログラム・オペレーティングシステム・データベース・機器の不具合等様々な原因で発生します。
このため、発生防止及び発生時の影響の最小化を目指して、対障害性・耐災害性に優れた堅牢なデータセンターの設置、各種セキュリティ対策及び定期的な訓練の実施等、システムの安定稼動に必要な対策を実施しています。また、万一発生した際には、再発防止及び再発時の影響の最小化のため、根本原因の徹底追究、他システムも含めた情報共有・点検等を実施していきます。なお、都市ガスの製造・供給調整に関するITシステムは、独自にバックアップシステムの整備及び自営無線の整備等の安全対策を施しているため、当該システムの停止・動作不良により都市ガスの製造・供給へ大きな影響が及ぶ可能性は低いものとなっています。
近年、サイバー攻撃のリスクが増大しています。サイバー攻撃の脅威が想定以上に高度化、複雑化し、個人情報の流出、基幹ITシステム及び都市ガスの製造・供給及び発電に関する制御システムの停止・動作不良等が発生した場合には、お客さま対応の停滞、被害が深刻なお客さまからの信頼や当社グループのブランドイメージの毀損、社会的責任の発生等有形無形の損害が発生し、事業収支にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
このため、部門横断的な体制を整備し、各種セキュリティ対策やインシデント対応訓練を実施する等、サイバー攻撃の影響を最小限に止める対策を実施すると共に、サイバーセキュリティ基本法や経済安全保障推進法など各種法令に従い、重要インフラ事業者として適切に対応しています。
コンプライアンス違反は、事業を加速させている海外も含め、世の中の企業コンプライアンスに対する意識の高まりと共に顕在化の可能性も高まっており、法令・定款に照らして不適切な行為、情報開示における不適切な対応、若しくは企業倫理・社会的規範に反する行為等が発生した場合には、対応に要する直接的な費用にとどまらず、社会的信用の毀損等有形無形の損害が発生し、結果として事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、コンプライアンスを業務運営の基盤と位置付け、社長を委員長とする経営倫理委員会において審議する「コンプライアンス推進活動計画」の下に、グループ全体でコンプライアンス向上の取り組みを実施し、法令・企業倫理・社会的規範の遵守の周知徹底や、その状況等を内部監査により確認する等コンプライアンスの推進に取り組んでいます。
新たな環境関連法規制や環境改善の追加的義務が発生した場合には、事業遂行体制見直しや費用増加によって事業運営や収支に影響を及ぼす可能性があります。気候変動問題においては、世界的に脱炭素化に向けた潮流が強まっており、化石燃料の競争力低下により収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、環境関連法規制等への対応として、環境法令の遵守、省エネルギーや廃棄物の削減等対策を強化しています。また、気候変動問題対応として、カーボンニュートラルロードマップ2050で示した通り、足元ではこれまでに推進してきた天然ガスの高度利用と並行して再生可能エネルギー等の分散型リソースの活用促進や、温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)における調整後排出係数がゼロとなる都市ガスメニューの開発に取り組み、ガス・電力の脱炭素化の準備を進めており、2030年代には脱炭素化技術を実装・拡大していきます。環境マネジメントシステムの強化を通じて、継続的な改善に取り組みながら、2040年時点でCO2排出量を2022年度比で6割削減、国内のお客さまに供給するガス・電力の5割をカーボンニュートラル化し、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指します。
不適切なお客さま対応等が発生した場合には、SNS等を通じて容易に拡散され、当社グループのブランドイメージの毀損による企業競争力の低下や既存顧客の流出等の有形無形の損害が発生し、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため、CS(お客さま満足)の向上を経営上の重要課題と位置付け、頂いたお客さまの声を該当する部門へ速やかに届けて改善策を講じる等、グループ全体でCSの向上を進めています。
事業活動における人権尊重を経営上の重要課題として位置付けていますが、事業を加速させている海外も含め、世の中の「ビジネスと人権」に関する意識はますます高まっている中で、人権リスクの顕在化の可能性は高まっており、人権リスクを把握して対応しなければ、訴訟費用の発生にとどまらず、社会的信用の毀損等有形無形の損害が発生し、結果として事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
このため当社は、国連の指導原則に基づく「東京ガスグループ人権方針」を制定してグループ内への浸透を図ると共に「人権デュー・デリジェンス」の仕組みを構築し、当社グループの人権リスクを特定し、その防止・軽減を図っております。特にサプライチェーン上の人権尊重をマテリアリティの1つに位置づけ、人権の観点を含む「サステナブル調達ガイドライン」(2024年3月改訂)の周知やアンケート実施、救済メカニズム等により人権課題の実態把握及び改善に向けた取り組みを強化します。
また、コンプライアンス部担当役員を委員長とする「中央人権啓発推進委員会」を設置し、その中で毎年、当社グループの「人権啓発活動計画」を定め、人権啓発活動に取り組んでいます。
前連結会計年度のセグメント情報は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」に記載のとおり、セグメント変更後の報告セグメント区分に基づき作成しています。
① 経営成績等の状況の概要
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況)
当連結会計年度における我が国の経済は、個人消費や輸出の一部に弱さが残るものの、設備投資の回復基調を受けて景気が緩やかに回復してきており、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されます。しかし、足下の物価上昇、ウクライナや中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等により経済の先行きに注視が必要な状況にあります。
また、脱炭素化とデジタル化が世界的な潮流となる等、当社グループを取り巻く環境は大きく変化しています。脱炭素化については、官民によるグリーントランスフォーメーション(GX)投資に向けた環境整備が進展しており、関連するイノベーションは社会実装段階に入りつつあります。デジタル化については、生成AI等のビジネスへの活用が急速に進んでいます。このような社会の変化とともにお客さまの価値観も多様化しており、従来と同じやり方で商品・サービスを提供していては、お客さまのニーズに応えきれない時代に突入しています。
そのような環境変化の中、当社はグループ中期経営計画「Compass Transformation 23-25」の実行初年度として、グリーントランスフォーメーション(GX)・デジタルトランスフォーメーション(DX)・お客さまとのコミュニケーション変革(CX) を軸とした3つの主要戦略(①エネルギー安定供給と脱炭素化の両立、②ソリューションの本格展開、③変化に強いしなやかな企業体質の実現)に基づき、さまざまな施策に取り組んできました。
売上高は、ガスの原料費調整による売上単価の減少及び電力の販売量の減少等により、前連結会計年度比19.0%減の2,664,518百万円となりました。
売上原価、販売費及び一般管理費を合計した営業費用は、前連結会計年度比14.8%減の2,444,209百万円となりました。
原油価格が前期より下落傾向にあったこと等により、売上原価は前連結会計年度比15.7%減の2,189,255百万円となりました。退職給付に係る数理計算上の差異の費用処理額の減少等により販売費及び一般管理費は前連結会計年度比6.2%減の254,954百万円となりました。
営業費用の減少を上回る売上高の減少となったことから、営業利益は前連結会計年度比47.7%減の220,308百万円となりました。
営業外収益の合計は、前連結会計年度の28,500百万円から、43,131百万円となりました。これは、為替差益が前連結会計年度比8,252百万円増の13,341百万円となったことが主な要因です。
営業外費用の合計は、前連結会計年度の41,130百万円から、35,260百万円となりました。これは、デリバティブ損失が前連結会計年度比6,143百万円減の4,165百万円となったことが主な要因です。
この結果、経常利益は前連結会計年度比44.2%減の228,179百万円となりました。
特別利益の合計は、前連結会計年度の7,301百万円から、27,389百万円となりました。これは、投資有価証券売却益が前連結会計年度比21,336百万円増の25,131百万円となったことが主な要因です。
特別損失の合計は、前連結会計年度の8,669百万円から、3,478百万円となりました。これは、前連結会計年度に計上した投資有価証券評価損2,420百万円及び長期貸付金評価損2,154百万円が当連結会計年度になかったことが主な要因です。
⑥ 親会社株主に帰属する当期純利益
以上の結果から、親会社株主に帰属する当期純利益は同39.5%減の169,936百万円となりました。
売上高に対する親会社株主に帰属する当期純利益率は、前連結会計年度の8.5%から2.1ポイント減少し、6.4%となりました。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の646円99銭から、411円88銭となりました。
⑦ セグメント情報
イ エネルギー・ソリューション
売上高は、ガスの原料費調整による売上単価の減少及び電力の販売量の減少等により、前連結会計年度から639,681百万円(20.9%)減少し、2,422,873百万円となりました。営業費用は、原油価格が前期より下落傾向にあったこと等により前連結会計年度から476,664百万円(17.7%)減少し、2,223,299百万円となりました。この結果、セグメント利益は前連結会計年度から161,679百万円(44.6%)減少し、200,812百万円となりました。
(ガス)
都市ガス販売量は、前連結会計年度比10.1%減の11,303百万m3となりました。家庭用需要は、高気温影響等による給湯需要減等により、前連結会計年度比2.8%減の2,724百万m3となりました。業務用需要は、高気温影響等による空調需要増等により、同2.3%増の2,275百万m3となりました。工業用需要は、需要家の稼働減等により、同20.1%減の4,741百万m3となりました。また、他事業者向け供給は、供給先の稼働減等により、同3.2%減の1,563百万m3となりました。
(注) 1 小売お客さま件数は、ガス小売事業者としてのガス料金請求対象件数
2 取付メーター数は、休止中・閉栓中・他社小売分を含む導管事業者としてのメーター取付数
3 業務用は、商業用、公用及び医療用
4 都市ガス販売量は45MJ(メガジュール)/m3
(電力)
販売量は、前連結会計年度比26.0%減の25,479百万kWhとなりました。小売では、件数増により、前連結会計年度比11.8%増の13,439百万kWhとなりました。卸他では、卸先の需要減により、同46.3%減の12,040百万kWhとなりました。
(注) 小売お客さま件数は、電力小売事業者としての電気料金請求対象件数
売上高は前連結会計年度から10,353百万円(3.1%)減少し、326,459百万円となりました。営業費用は、前連結会計年度から400百万円(0.1%)減少し、330,418百万円となりました。この結果、セグメント損益は前連結会計年度に比べ9,952百万円悪化し、3,959百万円の損失となりました。
ハ 海外
売上高は、前連結会計年度から39,891百万円(24.9%)減少し、120,021百万円となりました。営業費用は前連結会計年度から3,399百万円(3.9%)増加し、90,265百万円となりました。持分法による投資利益は、1,090百万円となり、前連結会計年度の持分法による投資損失5,135百万円に比べ、6,225百万円改善しました。この結果、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ37,065百万円(54.6%)減少し、30,846百万円となりました。
売上高は、前連結会計年度から28,437百万円(45.4%)増加し、91,113百万円となりました。営業費用は前連結会計年度から20,614百万円(42.7%)増加し、68,897百万円となりました。持分法による投資利益は、731百万円と前連結会計年度比54百万円(6.9%)減少しました。この結果、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ7,769百万円(51.2%)増加し、22,946百万円となりました。
なお、参考のため、セグメント別の売上高及び構成比を示します。
(注) 各セグメントの売上高には、事業間の内部取引を含んでいます。
当社グループが供給する都市ガスの主要原料であるLNGは海外から輸入しており、ドル建ての売買契約になっているため、円/ドル為替の変動リスクを受けます。また、ドル建てのLNG価格は主として原油価格に連動して決定されるため、国際原油価格市場の変動リスクも受けます。
ただし、原料購入価格が変動しても変動分について最大5ヶ月遅れ(注1)で都市ガス料金に反映する「原料費調整制度(注2)」が適用されるため、年度を区切ると回収超過や回収不足が発生(スライドタイムラグ)しますが、中長期的には収支への影響は軽微です。
為替及び原油価格の変動が翌連結会計年度の売上総利益に与える影響額は、以下のとおりです。
為替:1円/ドルの円安により、約6億円減
原油価格:1ドル/バレルの価格上昇により、約17億円減
翌連結会計年度見通しにおける年平均為替相場と原油価格は、当連結会計年度が144.58円/ドル、85.97ドル/バレルであったのに対し、それぞれ145.00円/ドル、80.00ドル/バレルを想定しています。
(注) 1 都市ガス料金への反映は、契約により5ヶ月遅れではない場合もあります。
2 調整の上限があり、原料費調整制度に基づき算定される平均原料価格(1トン当たり)が、
2022年3月から5月までの平均原料価格の160%を超過した場合には超過分は未回収となります。
当社グループの年度売上高の過半が都市ガスの販売によるもので、その販売量は気温の影響を受けます。家庭用においては、主な都市ガスの利用目的は給湯・暖房であるため、暖冬の場合には都市ガス販売量が減少し減収・減益要因となります。業務用においては、主な利用目的が空調であるため、夏場においては気温が低い場合、冬場においては気温が高い場合に、それぞれ都市ガス販売量が減少し減収・減益要因となります。
当連結会計年度の平均気温(※)は上期で23.8℃、下期で11.2℃(通期で17.5℃)でしたが、翌連結会計年度の平均気温は通期で16.4℃を想定しています。
(※)平均気温は、各日における平均気温を月間で平均したものです。
③ 金利の変動
当社の有利子負債は、長期・短期ともに概ね固定金利であるため、借入れ期間中の金利変動リスクは軽微ですが、借換え時等においては金利変動のリスクを受ける可能性があります。
当社の保有する株式のうち、上場株式の株価はマーケットリスクに晒されています。保有株式の取扱いについては、管理規則を設けています。
当連結会計年度においては、税金等調整前当期純利益の計上及び減価償却費の計上等があったものの、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得、有形固定資産の取得及び法人税等の支払等により、現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ89,542百万円減少し、当連結会計年度末には363,890百万円となりました(前期末比19.7%減)。
営業活動の結果増加した資金は、当連結会計年度において331,210百万円となりました。
これは、法人税等の支払(172,026百万円)等があったものの、税金等調整前当期純利益の計上(252,089百万円)及び減価償却費の計上(208,235百万円)に加え、仕入債務の増加(52,547百万円)等があったことによるものです。
また、これは、前連結会計年度に比べて155,820百万円の収入の減少となります(前期比32.0%減)。
投資活動の結果減少した資金は、当連結会計年度において362,014百万円となりました。
これは、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入(89,381百万円)及び投資有価証券の売却及び償還による収入(15,639百万円)等があったものの、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出(219,947百万円)、設備投資等に伴う有形固定資産の取得による支出(180,715百万円)及び無形固定資産の取得による支出(33,429百万円)等により資金が減少したことによるものです。
また、これは、前連結会計年度に比べて158,492百万円の支出の増加となります(前期比77.9%増)。
財務活動の結果減少した資金は、当連結会計年度において73,214百万円となりました。
これは、長期借入れによる収入(148,524百万円)及びコマーシャル・ペーパーの増加(77,000百万円)等があったものの、長期借入金の返済による支出(154,962百万円)、自己株式の取得による支出(113,049百万円)及び配当金の支払(27,515百万円)等があったことによるものです。
また、これは、前連結会計年度に比べて50,811百万円の支出の増加となります(前期比226.8%増)。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末から307,430百万円(8.6%)増加し、3,888,855百万円となりました。これは、機械装置及び運搬具の減少があったものの、Rockcliff Energy II LLCを買収したことによる鉱業権の増加等により、無形固定資産が前連結会計年度末から367,104百万円増加し、681,637百万円となったこと等によるものです。また、総資産利益率(ROA)は、前連結会計年度末の8.3%から4.5%に下落しました。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末から163,512百万円(8.2%)増加し、2,155,636百万円となりました。これは、未払法人税等の減少があったものの、社債及びコマーシャル・ペーパー等が増加したことによるものです。
社債、コマーシャル・ペーパー及び長期借入金の増加等に伴い、当連結会計年度末の有利子負債残高は、前連結会計年度末に比べ177,937百万円(14.1%)増加し、1,441,170百万円となりました。有利子負債比率(有利子負債÷総資産)は、有利子負債の増加率の方が大きかったため、前連結会計年度末の35.3%から37.1%に上昇しました。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ143,917百万円(9.1%)増加し、1,733,218百万円となりました。これは、株主資本について剰余金の配当及び自己株式の取得による減少に対し、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加が大きく32,747百万円増加したことや、繰延ヘッジ損益の増加等によりその他の包括利益累計額が104,597百万円増加したことによるものです。
自己資本比率は、前連結会計年度末の43.5%から43.6%に上昇し、自己資本利益率(ROE)は、前連結会計年度末の20.0%から10.4%に下落しました。負債資本倍率(D/Eレシオ)は、前連結会計年度末の0.81から0.85へと上昇しました。また、ハイブリッドファイナンスを考慮した後の負債資本倍率(D/Eレシオ)は、0.81となりました。
当社グループの製品・サービスは広範囲かつ多種多様であり、受注生産形態をとらない製品も少なくありません。また、都市ガスの販売が外部顧客に対する売上高及び営業費用の多くを占めています。
このため、以下は、エネルギー・ソリューションセグメントにおける都市ガスの生産実績について記載しています。
最近2連結会計年度の都市ガスの生産実績は次のとおりです。
都市ガスについては、その性質上受注生産は行いません。
都市ガスは導管を通じて直接需要家に販売していますが、一部については他事業者向け供給を行っています。
最近2連結会計年度の都市ガスの販売実績は次のとおりです。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
重要な会計上の見積りについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
<事業全体>
当連結会計年度の連結決算は、3期ぶりの減収となりました。また、営業利益、経常利益及び当期純利益のいずれにおいても減益となりました。以下では、経常利益ベースで減益となった理由について説明します。
減益となった主な要因は、①エネルギー・ソリューションにおける都市ガス販売において、前期はLNG価格が世界的に高騰する中でLNG調達コストを抑えられたことによる利益が発生していたものの、当期は市場価格の下落等に伴いその利益が縮小したこと、②資源価格の下落等により海外事業の売上単価が下落したことです。
<セグメント別>
エネルギー・ソリューションセグメントは、都市ガスの販売量の減少及び原料費調整制度による単価下落に加え、電力販売量の減少及び単価下落等により、売上高は前期比△6,397億円(△20.9%)の2兆4,228億円となり、都市ガス・LNG販売のスライド差益の縮小及び電力における経済フレーム悪化等により、セグメント利益は前期比△1,616億円(△44.6%)の2,008億円となりました。
ネットワークセグメントは、高気温影響等に伴い家庭用のガス託送量が減少したこと等により、売上高は前期比△104億円(△3.1%)の3,264億円、セグメント損益は前期より98億円悪化し、39億円の損失となりました。
海外セグメントは、豪州上流LNG事業における原油価格下落及び北米上流シェール事業におけるガス価格下落により、売上高が前期比△399億円(△24.9%)の1,200億円、セグメント利益は前期比△371億円(△54.6%)の308億円となりました。
都市ビジネスセグメントは、保有不動産の売却及びホテル事業においてインバウンド需要が回復したこと等により、売上高が前期比+285億円(+45.4%)の911億円、セグメント利益は前期比+78億円(+51.2%)の229億円となりました。
<認識>
減収減益となったものの、営業利益、経常利益、当期純利益のすべての利益ベースで前期に次ぐ歴代2位の好決算となりました。主な要因は、①エネルギー・ソリューションにおける都市ガス販売において、前期後半から当期前半にかけてLNG価格が下がり基調の中で、原料費調整制度によるスライド差益が利益貢献したこと、②日本卸電力取引所(JEPX)の価格が低位かつ安定的に推移したことによる電力事業の調達コストの抑制等、市況の影響を大きく受けています。この1年の間でも脱炭素化とデジタル化の変化のスピードがさらに加速し、中東情勢の悪化による地政学リスクのさらなる高まりによって、エネルギーの安定供給の重要性が一層高まっています。また、上場会社を対象とした2023年3月の東京証券取引所からの要請を契機に、資本コストや資本収益性を意識した経営がこれまで以上に強く求められています。こうした事業環境の変化も踏まえながら、「収益性」「成長性」「安定性」の視点から事業ポートフォリオマネジメントを強力に進め、2023-2025年度中期経営計画で掲げた「ROA4%程度、ROE8%程度」をコンスタントにクリアできるレベルに早期に到達し、その上を目指していかなければならないと強く認識しています。
当社グループの主な資金需要は、中長期的な成長に必要な設備投資及び投融資向けの資金です。
当連結会計年度は、営業活動によるキャッシュ・フロー3,312億円に対して、投資活動によるキャッシュ・フローは海外事業を中心とする投資拡大に伴い△3,620億円となり、フリーキャッシュフロー(営業活動によるキャッシュ・フローから、投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いた額)が△308億円となりました。
引き続き、将来に向けた成長投資を実行していきますが、その原資確保のために資金が不足する場合には、主に社債・長期借入金で対応する方針です。なお、短期運転資金は主にコマーシャル・ペーパーで賄っていく方針です。
2023年2月22日発表の「東京ガスグループ 2023-2025年度 中期経営計画」に基づき、事業ポートフォリオマネジメントの強化を通じて、健全な財務体質と成長投資を両立し、持続的な成長・企業価値向上を実現していきます。
イ 投資・資本効率性
投資に伴うリスク及び採算性に留意し個別の投資判断を行うとともに、投資効率の維持・向上及び株主資本の有効活用に努めます。また、稼ぐ力を考慮した投資・資産売却により、資産効率性を向上していきます。
具体的には、ROA(総資産利益率)・ROE(自己資本利益率)を主要経営指標と位置付け、2025年度における到達点を、ROAは4%程度、ROEは8%程度と定め上記の実現を図ります。
ロ 財務体質
現在の資金調達力を維持し財務健全性を確保するとともに、資本コストを意識した最適な資本構成の実現に努めます。
具体的には、D/Eレシオ(負債資本倍率)を主要経営指標と位置付け、2025年度における到達点を0.9倍程度と定め上記の実現を図ります。
ハ 株主還元
配当に加え、消却を前提とした自己株式取得を株主還元の一つとして位置付け、総還元性向(連結当期純利益に対する配当と自己株式取得の割合)は、各年度4割程度を目安とします。
また、配当については、安定配当を維持しつつ、中長期の利益水準を総合的に勘案し、成長に合わせて緩やかな増配を実現していきます。
n年度総還元性向=((n年度の年間配当金総額)+(n+1年度の自己株取得額))÷n年度連結当期純利益
当社は、2023年12月16日付で、当社の100%子会社東京ガスアメリカ社が出資する米国テキサス州のガス開発・生産事業会社TG Natural Resources LLC(以下「TGNR 社」といいます。)グループを通じて、Quantum Energy Partnersが出資する、米国テキサス州にてガス開発・生産事業を行う会社Rockcliff Energy II LLC (以下「RC 社」といいます。)の全株式を取得することを決定し、株式売買契約を締結しました。同年12月28日付で、RC社を子会社化しております。なお、RC社 は、2024年4月1日付で、TGNR Intermediate Holdings LLCに社名変更しています。
①株式取得の理由
当社は、2020年に子会社化したTGNR社を通じてガス開発・生産事業を継続してまいりました。今後、米国内でLNG輸出基地の新設が進むなど、天然ガス需要の増加が見込まれている中、東京ガスグループは、中期経営計画「Compass Transformation 23-25」において、北米でのシェールガス事業の拡大を掲げており、TGNR社が鉱区を保有するテキサス・ルイジアナエリアにおいて新たな優良資産の取得を模索していました。今回のRC社株式取得により、安定した収益基盤の構築を見込んでいます。
②株式取得の相手先の名称
Rockcliff Intermediate Holdings LLC
③取得株式数、取得価額及び取得前後の所有株式の状況
④取得対象会社の名称及び事業内容
(注)2024年4月1日付で、Rockcliff Energy II LLCはTGNR Intermediate Holdings LLCに、Rockcliff Energy Operating LLCはTGNR East Texas II LLCに、Rockcliff Operating LA LLCはTGNR LA Operating LLCに社名変更しています。
当社グループは、研究開発を経営戦略の一つとして位置付け、経営ビジョンCompass2030に沿って、以下の3つの挑戦に取り組んでいます。
・「CO2ネット・ゼロ」をリード
・「価値共創」のエコシステムの構築
・LNGバリューチェーンの変革
研究開発の推進にあたっては、投入原資の選択と集中を図るとともに、スピードと採算性を重視して取り組んでいます。
当連結会計年度の研究開発費総額は
主な研究開発活動は、エネルギー・ソリューションセグメントを中心に行われており、当セグメントにおける研究開発費は
当連結会計年度における具体的な研究成果は、以下のとおりです。
(1) 「CO2ネット・ゼロ」をリード
① 鹿島建設株式会社、日本コンクリート工業株式会社及び横浜市と共同で、都市ガス機器利用時の排気に含まれる低濃度のCO2を吸収・固定化して製造したカーボンネガティブコンクリート「CO2-SUICOM®」を、横浜市立元街小学校に設置した太陽光発電設備の基礎ブロックの一部として導入しました。実用化は、日本初となります。
② 株式会社正英製作所と共同で、日本初の水素燃焼が可能な廃熱回収装置内蔵水素バーナを開発しました。従来の廃熱回収装置内蔵の天然ガスバーナは、燃焼用空気を排ガスで予熱することで燃料使用量を約30%削減可能で、アルミ・非鉄金属加工、自動車・自動車部品製造、鉄鋼製造等、高温熱を必要とする様々な製造工程で利用されています。本バーナは、低NOxと安定燃焼を両立しており、水素専焼だけでなく天然ガス専焼も可能です。
③ 横浜市、三菱重工業株式会社及び三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社と共同で、ごみ焼却工場の排ガスから分離・回収したCO2を当社のメタネーション実証設備に輸送し、メタネーションの原料として利用する、国内初となる地域連携でのCCU共同実証を開始しました。
④ 都市ガス機器利用時の排気に含まれるCO2と水酸化物を反応させ、様々な用途で利用可能な炭酸塩をお客さま先(オンサイト)で製造する日本初の「CO2資源化サービス」を開発しました。製造された炭酸塩は、洗剤や肥料等の製品の原料として利用する等、炭酸塩の利用用途を拡大する取り組みも進めます。
⑤ 株式会社クボタ及びクレアトゥラ株式会社と共同で、水田由来のメタン排出削減が期待される水管理手法について、フィリピンにおける普及及び民間JCM(二国間クレジット制度)プロジェクト登録に向けた実証事業に取り組んでいます。クボタの水稲栽培における知見及びネットワーク、クレアトゥラのカーボンクレジット分野におけるプロジェクト開発及びクレジット創出の知見、当社のカーボンクレジット分野の信頼性確保に向けた取り組みにおける知見を活用した3社での価値共創により、ASEAN地域での農業分野における初の民間JCMプロジェクト登録を目指します。
⑥ 住友商事株式会社と共同で、大気中のCO2直接回収・貯留(DACCS)について事業可能性調査を始めます。当社が有するDAC(大気中のCO2直接回収)技術やプラントエンジニアリングの知見・ノウハウと住友商事がグローバルに展開するCCS(CO2の地下貯留)を含めた、次世代エネルギービジネスに関するネットワーク・知見をかけ合わせることで、北米をはじめとした貯留適地の選定や国内外のDAC技術評価を行うなど、共同でDACCSの事業可能性検討を推進し、将来に向けた共同事業の創出を目指します。
(2) 「価値共創」のエコシステムの構築
① 英国のオクトパスエナジー社が開発したカスタマーサービスシステム「クラーケン」及び分散型エネルギーリソース運用・管理システム「クラーケンフレックス」の導入を開始しました。「クラーケン」により、お客さまニーズに対応した電気料金プランをスピーディーに開発可能となるとともに、オペレーションコストも削減できます。また、「クラーケンフレックス」に自社・他社・お客さまの分散型エネルギーリソースを接続し、発電量等を最適化します。
② 機械制御分野における先進的AI技術を有する株式会社エイシングと共に、ビル・工場等の空調熱源のさらなる省エネ運転の実現を目指し、熱源機器の最適制御を実現するAIの開発を開始しました。
(3) LNGバリューチェーンの変革
① LNG・電力の取引契約、LNG船、受入基地、発電所などの最適運用を実現すべく、機械学習等を駆使した分析ロジックを開発し、エネルギー需要や価格の予測高度化を図っています。この取り組みなどが認められ、経済産業省及び東京証券取引所が主催する「DX注目企業2023」に選定されました。
また、ネットワークセグメントにおいてスマート保安関連技術等の研究開発を行っており、当セグメントにおける研究開発費は