文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。また、当該事項については、取締役会等の社内会議体で合理的な根拠に基づき適切な検討を行ったものです。これらの記載は実際の結果と異なる可能性があり、その達成を保証するものではありません。
<成長戦略の骨子>
スズキは2030年度に向け、主要事業地域である日本・インド・欧州を核にして、カーボンニュートラル社会の実現とインド・ASEAN・アフリカなどの新興国の経済成長に貢献していきます。お客様の立場になった製品・サービスづくりと進出国・地域とともに成長するというスズキらしい解決策に取り組んでいきます。
<カーボンニュートラル>
当社は、各国政府が掲げる達成目標時期に基づき、日本・欧州で2050年、インドでは2070年のカーボンニュートラルの達成を目指していきます。
~ 製品分野 ~
お客様の選択肢を広げ、地域のニーズに合った製品・サービスをお届けするとの考え方を軸に、地域ごとのカーボンニュートラル目標の達成に取り組んでいきます。
〇四輪車
当社の主要事業地域である日本、欧州、インドの2030年度におけるパワートレイン比率の目標を定めました。日本とインドのバッテリーEV比率が低くなっておりますが、これは各国の充電インフラやエネルギー事情などを考慮したうえで、最終的にEVに至るまでは、ハイブリッドなど複数の選択肢を用いた、より現実的なアプローチを考えているためです。
例えば、インドのエネルギー事情について、発電量のうち、CO2を出す石炭火力による発電が7割以上を占めているため、EVの普及がそのままカーボンニュートラルに繋がらないのが現実です。そのため、当社は今後台数が増えていくインドにおいて、ハイブリッドだけでなく、ガソリンよりもCO2排出量の少ない圧縮天然ガス(CNG)車や、その先のカーボンニュートラル燃料として期待されるバイオガスなども加えた、「マルチパスウェイ」で対応していきます。
〇二輪車
通勤・通学や買物など生活の足として利用される小型・中型二輪車は、2030年度までにバッテリーEV比率25%を計画しております。趣味性の強い大型二輪車については、カーボンニュートラル燃料での対応を検討しております。
〇船外機
湖沼や河川で多く使われる小型船外機は、2030年度までにバッテリーEV比率5%を計画しております。海洋で使われる大型船外機については、カーボンニュートラル燃料での対応を検討しております。
~ 製造分野 ~
日本国内の工場は、2035年度のカーボンニュートラル達成に挑戦してまいります。
〇スマートファクトリー創造
世界の生活の足を守り抜く企業であり続けるために、2030年度のものづくりのあるべき姿を描き、スズキ・スマートファクトリー創造を進めております。スズキのモノづくりの根幹である「小・少・軽・短・美」とデジタル化の推進を組み合わせることで、データ・モノ・エネルギーの流れを最適・最小化、簡素化し、徹底的にムダをなくして、カーボンニュートラルへ繋げてまいります。
〇国内工場での取組み
国内最大の生産拠点である湖西工場では、塗装設備の刷新と塗装技術の向上により、使用するエネルギーを効率化/最適化し、塗装工場のCO2排出量30%削減に取り組んでおります。さらに、太陽光発電などの再生可能エネルギーからグリーン水素を製造し、その水素をエネルギー源として荷役運搬車両を走らせる実証実験を2022年末に開始いたしました。
二輪車の生産拠点である浜松工場は2030年のカーボンニュートラル達成を宣言しておりましたが、エネルギー使用量の削減や太陽光発電設備の増設など再生可能エネルギーへの転換により、カーボンニュートラル達成を2027年度に前倒しいたします。浜松工場のノウハウを他工場にも展開することで、2035年度の国内全工場のカーボンニュートラル化に取り組んでまいります。
~ インドのバイオガス事業 ~
2030年度に向けて、インド市場は今後も成長を見込んでおりますが、製品からのCO2排出量を削減しても、総排出量の増加が避けられない見通しです。これからもインドとともに成長していくために、販売台数の増加とCO2総排出量の削減の両立に挑戦してまいります。
そのための当社独自の取組みとして、インド農村部に多い酪農廃棄物である牛糞を原料とするバイオガス燃料の製造・供給事業へ挑戦してまいります。このバイオガス燃料は、インドCNG車市場シェアの約70%を占める当社のCNG車に使用することができます。
当社は、インド政府関係機関の全国酪農開発機構、アジア最大規模の乳業メーカーであるBanas Dairy社と3者間で4つのバイオガスプラントをグジャラート州に設置することで合意をし、着々と歩みを進めています。また、日本で牛糞を原料としたバイオガス発電を手掛ける合同会社富士山朝霧Biomassに出資し、知見の蓄積を始めております。
インドにおけるバイオガス事業は、カーボンニュートラルへの貢献だけではなく、経済成長を促し、インド社会に貢献するものと考えております。また、将来的にアフリカやASEAN、日本の酪農地域など他地域に展開することも視野に入れております。
インド自動車産業のリーディング企業である当社が、新興国のカーボンニュートラルと経済成長に貢献することは、先進国と新興国が協調してCO2排出量を削減するパリ協定の趣旨にも合致するものであり、全世界のステークホルダーに対して貢献できると信じて取り組んでまいります。
<研究開発体制・外部連携>
スズキ本社、横浜研究所、Suzuki R&D Center India Private Limited、Maruti Suzuki India Limitedが連携し、将来技術、先行技術、量産技術の領域分担をしながら、効率的に開発してまいります。また、当社がインドに徹底的に根付くため、スズキイノベーションセンターが探索活動を行っております。さらに、スタートアップ企業、スズキ協力協同組合、日本・インドの大学との共同研究による産学官連携などグループ外とも連携しながらモノづくりの力を高めてまいります。
トヨタ自動車株式会社とは、競争者であり続けながら協力関係を深化させ、持続的成長と自動車産業を取り巻く様々な課題克服を目指してまいります。自動運転や車載用電池などをはじめとした先進技術開発、将来有望な新興国でのビジネス拡大、インドでのカーボンニュートラルに向けた取組み、また環境に配慮した循環型社会の形成に向けて協業してまいります。
2022年に設立したコーポレートベンチャーキャピタルファンドのSuzuki Global Ventures, L.P.では、企業及び既存の事業の枠を超えスタートアップとの共創活動を加速しております。日本のみならず海外においても、お客様や社会の課題解決に資する領域に投資をし、スタートアップとともに成長するエコシステムの発展に貢献してまいります。
<研究開発・設備投資>
2030年度までに研究開発に2兆円、設備投資に2.5兆円、あわせて4.5兆円規模を投資してまいります。4.5兆円のうち、電動化関連投資に2兆円、そのうち5,000億円を電池関連に投資してまいります。
研究開発への投資は、電動化、バイオガスなどのカーボンニュートラル領域や自動運転などに2兆円を計画しております。
設備投資は、バッテリーEV工場の建設や再生可能エネルギー設備などに2.5兆円を計画しております。なお、2023年度の実績は、研究開発費が2,342億円、設備投資は3,215億円となりました。
<連結売上高目標>
当期の連結売上高は過去最高の5.4兆円となりました。さらに、次期は5.6兆円以上を目指してまいります。これからも、新興国の成長に貢献することで、当社もともに成長していきたいと考えております。2030年度には7兆円規模を目指して挑戦を続けております。
なお、足元の事業環境の変化を踏まえ、現在の中期経営計画(2021年4月〜2026年3月)を見直し、技術をはじめとした各分野の戦略をとりまとめ、2025年3月期末までに新中期経営計画を公表する予定です。
(2)持続的成長を目指した人的資本の増強
〜人事制度を刷新し、「個の成長」の加速と「個の稼ぐ力」を強化〜
当社は、2030年度に向けた成長戦略の達成及び持続的成長を実現するため、社員一人ひとりが自身の能力を最大限に発揮できる環境を整備していきます。その一環として、2024年4月から人事制度を全面的に刷新しました。
新しい人事制度は、社員一人ひとりの挑戦と行動、価値創造を通じて、個の職務能力向上と成長を促します。チームスズキ全員が、社是と行動理念『小・少・軽・短・美』『三現主義』『中小企業型経営』に則り、知識・スキル・ノウハウを備え、現場での経験を重ねることで、スズキ人材としての職務能力を高め、組織の稼ぐ力を上げていきます。
今回実施する制度改革のポイントは以下のとおりです。
1.職能資格制度の導入
① 各職系・階層ごとの役割と社員一人ひとりの職務遂行に必要な能力要件を明確化した職能資格制度へ移行。
② 各本部の職務で必要とされる知識・スキル・ノウハウ・経験を明示し、職務能力の増強に活用。
2.評価制度の見直し
① 業績と職務能力の向上は別々に評価し、短期の業績は賞与に、職務能力は昇給・昇格に反映。これによりさらに挑戦できる環境の醸成を図る。
② 能力評価の項目を明示し、上司と部下の相互コミュニケーションを通じて職務能力改善に取り組む。
3.60歳以降の働き方の見直し
① 60歳を過ぎても、気力・体力・環境に問題がなければ、60歳時点の業務と給与を維持。
② 全社レベルの人材マッチングと再教育による個の職務能力に最適な配置を実現し、60歳以上の方々が活き活きと働くことができる会社を目指す。
4.給与・手当・初任給の見直し
① 職務と職能に基づく給与体系を導入。
② 子育て支援、通勤、国内出向などの各種手当を見直し。
③ 初任給を大幅に引き上げ、若年層からの賃金カーブの立ち上がりを改善。
詳細につきましては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組(3)人的資本に関する取組」をご参照ください。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。また、当該事項については、取締役会等の社内会議体で合理的な根拠に基づき適切な検討を行ったものです。これらの記載は実際の結果と異なる可能性があり、その達成を保証するものではありません。
(1)サステナビリティ全般の方針
代表取締役及び関係役員が出席する経営会議とコーポレートガバナンス委員会において、サステナビリティ(環境・社会・ガバナンス)に関する課題や方針、対策等について議論しています。特に重要な議題については取締役会に上程・報告します。経営と一体となった、実効性のある活動の推進を目指しています。
具体的な施策については、経営企画室に設置したサステナビリティ推進の専門部署を中心に、社会課題の解決に向けた取組みを社内横断的に推進していきます。
②リスク管理
各部門で発生または認識した課題の審議、並びに潜在リスクの洗い出し、把握をコーポレートガバナンス委員会で実施しています。特に環境関連リスクについては、テーマに応じてカーボンニュートラル推進会議や環境委員会で集中検討し、各部門への指示や管理を行っています。
詳細につきましては、「(2)気候変動への対応 ③リスク管理」「(3)人的資本に関する取組 ③リスク管理」「3 事業等のリスク」をご参照ください。
③戦略
a. マテリアリティ(重要課題)の特定
2021年2月に発表した中期経営計画の策定に伴い、事業を取り巻く環境の変化を踏まえて2015年に特定した当社のマテリアリティの見直しを実施しました。
(マテリアリティ・マトリックス)
特定したマテリアリティは、社是「お客様の立場になって」を念頭に、課題解決によって社会やお客様にどのように貢献していくかを意識し、「事業を通じて解決する課題」とそれらを支える「事業基盤の強化のための課題」に大きく分類しました。
特定・整理したマテリアリティを当社のサステナビリティ方針の基本として、取組みを推進しています。また、マテリアリティは事業を取り巻く環境の変化に応じて、項目の見直しを定期的に実施していきます。
b.サステナビリティ戦略
2023年1月、当社は「2030年度に向けた成長戦略」を発表しました。2030年度に向け、主要事業地域である日本・インド・欧州を核にして、カーボンニュートラル社会の実現とインド、ASEAN、アフリカなどの新興国の経済成長に貢献していきます。お客様の立場になった製品・サービスづくりと進出国・地域とともに成長するというスズキらしい解決策に取り組んでいきます。
詳細につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(1)2030年度に向けた成長戦略」をご参照ください。
(2)気候変動への対応
①ガバナンス
スズキは、グループ全体の環境管理を目的として、取締役会直下に「カーボンニュートラル推進会議」および「環境委員会」を設置しています。取締役会は「カーボンニュートラル推進会議」および「環境委員会」に対して指示・監督を行うとともに、両会議体からの報告を受け最終的な意思決定を行います。
「カーボンニュートラル推進会議」は気候変動(カーボンニュートラル)にテーマを絞り、より機動的に会議運営ができるように毎月1回、脱炭素に向けた集中審議を行っています。「環境委員会」は、カーボンニュートラル以外の環境問題、すなわち大気保全、水資源、資源循環などをテーマに年2回開催しています。二つの会議体のテーマを明確に分けることで会議の実効性を高め、脱炭素に向けた意思決定を一層加速させています。
②戦略
(ⅰ)TCFD提言への対応
2020年4月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の趣旨に賛同・署名しました。ステークホルダーに分かりやすい情報開示を進めるとともに、気候変動に対する強靭性をより強化するため、シナリオ分析の高度化や開示情報の充実化に努めていきます。
(ⅱ)気候関連リスクと機会、シナリオ分析
当社は、持続可能な事業活動を進めるために事業リスクや機会の特定を進めています。特に、気候変動の影響は根源的に不確実であるため、将来を幅広に捉えた上でリスク・機会の影響度を評価し、適切に対応することが重要であると認識しています。
この認識のもと、気候変動の物理影響が顕著になる「4℃シナリオ」と、パリ協定の実現に向けて気候変動対策が加速する「1.5℃/2℃シナリオ」の2つのシナリオを想定し、リスクと機会の影響の差異を評価しました。シナリオの想定にあたっては、IEA※1やIPCC※2等の科学知見に基づく、外部シナリオを参照しました。
※1 IEA:International Energy Agency の略。国際エネルギー機関。
※2 IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change の略。気候変動に関する政府間パネル。
■当社の気候関連リスクの一覧とシナリオ別の影響差異
(ⅲ)スズキの気候関連リスクと機会
気候変動の緩和策として、排出ガスやCO2・燃費規制などさまざまな法規制の強化が進められる中、これらの規制を遵守するための開発費用の負担増加は当社の業績に大きな影響を与える可能性があります。一方で、当社が得意とする「小さなクルマ」は、生産に必要な材料やエネルギーが少なく、また使用時のCO2排出量も抑えることができます。こうした当社独自の強みを活かし、リスクに適切に対処していくことで機会の創出につなげていくことができると考えます。
また今年度から、すでに開示している気候変動に伴うシナリオ分析をベースとした財務インパクト分析に着手しました。気温上昇による台風や洪水、高潮など自然災害リスクの影響度をグローバルベースで評価し、リスクの低減や回避、事業継続につなげることを目的とした取組みです。まずは国内およびインドの自社拠点に加えて国内1次取引先様の影響度評価を実施しました。
気候変動によるリスクの低減や回避、将来の機会獲得や競争力強化に向けて、今後も引き続き十分な検討を重ね、事業戦略への反映を進めていきます。
■特に重要なリスク項目の詳細と創出機会、当社の対応状況
③リスク管理
(ⅰ)リスク管理体制
気候関連のみならず、各部門で発生または認識した課題の審議、並びに潜在リスクの洗い出し、把握をコーポレートガバナンス委員会で実施しています。環境関連リスクについては、テーマに応じてカーボンニュートラル推進会議や環境委員会で集中検討し、各部門への指示や管理を行っています。
各会議体の扱うテーマ
●コーポレートガバナンス委員会:
各部門で発生または認識したリスクを把握し、審議のうえ各部門へ指示を出し解決につなげる。
●カーボンニュートラル推進会議:
環境関連リスクのうち、気候変動(カーボンニュートラル)に関するリスクと機会を審議し、解決並びに推進を行う。
●環境委員会:
水資源や生物多様性等、気候変動以外の環境関連のリスクと機会を審議し、解決並びに推進を行う。
(ⅱ)気候関連想定リスク
気候関連リスクにおいては、気候変動影響を「4℃シナリオ」「1.5℃/2℃シナリオ」の2つのシナリオを想定し、リスクと影響を評価しています。リスクの種類として、政策規制等の「移行リスク」と自然災害等の「物理リスク」の2つの観点からリスクと影響を考察しています。
リスクの詳細は、「②戦略(ⅱ)気候関連リスクと機会、シナリオ分析」の当社の気候関連リスクの一覧をご参照ください。
④指標と目標
(ⅰ)環境目標
昨今、地球温暖化が要因とされる異常気象が頻発しています。こうした気候変動の影響を抑えるために、世界の平均気温上昇を産業革命以前から2℃未満に抑えることを目的に、今世紀後半に温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す「パリ協定」が採択されました。
スズキは以前から、「小・少・軽・短・美」の理念に沿って、製造時、使用時ともにCO2排出の少ない製品を作り続けてきましたが、いわゆる1.5℃目標の達成に向けて、より一層のCO2削減に努めなければならないという課題意識のもと、気候科学と整合した削減目標を掲げ、取組みを推進していきます。
また、新興国は気候変動対策だけでなく経済成長との両立を求めています。新興国とともに成長を目指すスズキは、新興国の人々の暮らしを豊かにしつつ、気候変動対策を推進していきます。
スズキでは気候関連の目標と指標を複数設定し、推進並びに進捗管理しています。
指標にはCO2排出量のほか、気候変動と関連するエネルギー、大気保全、水資源保全等についても設定しています。
指標はターゲットに応じて大きく3つ設定しており、それぞれ目標達成を目指しています。
・ 長期:スズキ環境ビジョン2050
・ 中期:マイルストーン2030
2030年度に向けた成長戦略
・ 短期:スズキ環境計画2025
■スズキの環境目標
(ⅱ)バリューチェーン全体が排出する温室効果ガスの開示
スズキは、原材料・部品の購買や製品の製造・販売を通した事業活動に伴い排出される温室効果ガスの低減に向け、温室効果ガス排出量の把握・開示が必要であると考え、事業活動に伴い排出される温室効果ガスだけではなく、バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量を把握する取組みを2013年度より行っています。
2022年度にバリューチェーン全体が排出した温室効果ガス排出量10,370万t-CO2のうち10,256万t-CO2がスコープ3(その他の活動に伴う間接排出)に相当し、中でも「カテゴリー11 スズキが販売した製品の使用」による排出量が8,270万t-CO2とバリューチェーン全体の79.7%を占めています。
このことからスズキは、バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量を低減させるには製品の使用に伴う排出量を低減させることが重要であると考え、引き続き燃費向上を重視した製品の開発・改良に取り組んでいきます。
■バリューチェーン全体が排出する温室効果ガスの開示 スコープ1・2・3 (単位:万t-CO2)
※1 《スコープ1・2》
●算定範囲
-国内:スズキ株式会社、及び国内製造・非製造子会社66社
-海外:海外製造・非製造子会社32社
●対象ガス:温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類、
六フッ化硫黄、三フッ化窒素の7つのガス)
●排出係数
-電力:国内は電気事業者別の直近の調整後排出係数、海外はIEA Emissions Factors 2022
-燃料:国内は算定・報告・公表制度における排出係数、海外はIPCCガイドライン2006。
なお、都市ガスの単位発熱量は供給会社の公表値。
※2 《スコープ3_ カテゴリー11》
●算定範囲:スズキ株式会社グループ
●算定対象製品:四輪車、二輪車、船外機、電動車いす他の自社製品を対象
●算定方法概要
-当該年度に販売した製品の想定される生涯走行距離に、機種別の排出原単位を乗じて算出。
-年間走行距離、使用年数については、主にIEA SMP Model 等の公表情報を基に設定。
-機種別の排出原単位は、原則として各国規制に基づく認証値を採用し、WTW(Well to Wheel)に換算したものを設定。
*なお、2021年度以前のデータについては、算定方法の見直しに伴い遡って修正。
詳細は、ウェブサイト
(3)人的資本に関する取組
①ガバナンス
②戦略
<基本動作>
社是と行動理念「小・少・軽・短・美」、「現場・現物・現実」、「中小企業型経営」に則り、人材育成方針及び社内環境整備方針に基づき、社員の能力発揮、価値創造を後押しします。社員一人ひとりが自身の能力を最大限に発揮することで、2030年度に向けた成長戦略の達成及び持続的成長を実現します。人と社会に必要とされる存在となるべく、“生活に密着したインフラ企業”を目指していきます。
<人材育成方針>
スズキグループの全社員が理解し実践すべき社是では、①企業の社会的使命を果たすことへの努力目標(製品づくり)、②自分が所属する会社という組織に対する努力目標(会社づくり)、③自分自身に対する努力目標(人間づくり)の三つの努力目標を掲げています。社是の精神とそれを実践するための行動理念に基づき、「人材開発は会社の一丁目一番地」との思いで、社長自らが先頭に立って人材開発に関する諸改革をリードし、2022年10月には組織体制を人事総務本部から人材開発本部へと改編し、社是や行動理念を体現できるスズキらしい人材づくりに注力しています。そして、自動車の100年に一度の大変革と言われるCASE対応や、社会的使命であるカーボンニュートラル社会の実現等、従来の自動車メーカーのままでは到底対処できない大きな変化を乗り越えるために、既存の業務や考え方にとらわれず、新しいことに果敢に挑戦する人材、新たな発想を生み出す多様な経験・価値観を持つ人材、高度な専門性を持つ人材、グローバルに活躍できる人材など、多様な人材を採用、育成することに努めています。
<社内環境整備方針>
社是にあるとおり、高い目標への挑戦と自身の努力を促す風土醸成により、一人ひとり個性の異なる人材が共通の目標に向かって能力を発揮し、より付加価値の高い成果を創出し、働き甲斐・やりがいを感じながら活き活きと働き続けることができる会社づくりに取り組んでいます。直近では、これまで以上に社員の声を吸い上げ、労使で丁寧な対話を重ね、抜本的な人事制度改革、大胆な業務改廃・働き方変革、労働諸条件の改善など、人事総務諸施策の改革を進めて、社員一人ひとりがスズキで働いて良かったと思える会社にしていきます。
a. 人事制度改革
2024年4月から、人事制度を全面的に刷新しました。多様な社員一人ひとりが社是と行動理念を実践できるように、個の成長を促します。一人ひとりが自らの職務を遂行するために必要な職務遂行能力、すなわち職能を伸ばすことで、個の稼ぐ力が向上し、会社の持続的な成長につながります。同時に社員個々の価値創造を通じて、人と社会に必要とされる存在となるべく、“生活に密着したインフラ企業”を目指し、社会貢献に寄与していきます。多様な社員一人ひとりがやる気をもって「挑戦と行動」に取り組み、能力を発揮した結果について上司と部下で対話を重ねながら、評価・フィードバックする。このことでモチベーションを向上させて、さらなる「挑戦と行動」に取り組み、能力の更なる向上につなげていきます。この人材育成サイクルを繰り返すことで個の成長を促します。原理原則を理解し、職務遂行に求められる知識とスキルを自ら学び、上司や先輩社員からノウハウを受け継ぎ、自ら現場を経験することで職務能力を向上させることに取り組んでいます。
職系・資格
各職系・各階層における職能資格を見直し、職務遂行に必要な役割・能力・行動要件を明確化した「職能資格制度」を導入しました。各部門の職務で必要とされる知識・スキル・ノウハウ・経験を明確にし、同時に各職系に求められる職務内容を整理することで、上司と部下の相互コミュニケーションを通じて、上司と部下の双方が共通理解にたって職務に取り組むことで、効果的な職務能力向上に取り組みます。
評価
これまで一括実施していた業績評価と能力評価を個別に評価し、短期の業績は賞与に、職務能力は昇給・昇格に反映するようにしました。これにより、各職系・各階層に求められる能力を正しく評価できるように変更し、さらなる『挑戦と行動』を促す環境の醸成を図ります。また、半期に1回の目標を掲げ、目標達成度により業績考課を決める従来の「目標チャレンジ制度」に加えて、「職能育成制度」を導入しました。
各資格で定義した評価項目(能力基準)に基づき、1年間における能力発揮・向上について評価し、上司と部下の相互コミュニケーションで個の成長を促す人材育成サイクルを回しています。
賃金
各職能資格に応じて『挑戦と行動』を促し、個の能力発揮・向上を適切に賃金へ反映するように、賃金体系と賃金等級を見直しました。年次に応じた成長年数と連動させ、個の成長とキャリアの進展を公正かつ透明に評価し、処遇しています。また、各職能に必要となる研修を実施し、勤務年数に応じて昇給するのではなく、求められている役割や能力に応じて昇給することで、さらなる個の成長を促します。
諸手当
・ 通勤手当
通勤手段によらず自宅から勤務地までの距離区分に応じて支給していましたが、受給者の納得性が高まるよう、社員それぞれの通勤手段・通勤経路・出勤日数等に応じて通勤に掛かった実費相当額を支給することにしました。
・ 子育て支援手当
子どもが15歳到達後の3月までを支給対象としていましたが、仕事と子育てを両立できる環境の向上、および、定着率、モチベーション、パフォーマンスの向上につながるよう、18歳到達後の3月までに支給対象を拡大するとともに、出生、入学(小学校および中学校)などのライフイベントに対する祝金を新設しました。
・ 単身赴任手当
転勤に際して配偶者及び子どもと別居する場合に、3年間を限度として支給していましたが、単身赴任者の負担を軽減して業務に専念できる環境が整うよう、期間の限度を廃止し、会社が必要と認める限り支給を継続することにしました。
・ 単身赴任帰省旅費手当
従来は支給していませんでしたが、単身赴任手当と同じく、負担を軽減して業務に専念できる環境が整うよう、単身赴任者が家族のもとへ帰省するためにかかる費用の実費相当額を新たに支給することにしました。
再雇用制度
60歳を迎えた社員の内、希望者には、年齢に関わらず「挑戦と行動」に取り組めるように、正社員と同様の業務で活躍し、60歳時点の給与を維持する制度に見直しました。また全社における人材マッチングと再教育による個の職務能力に最適な配置を実現し、活き活きと働くことができる環境を整備しました。
b. 人材育成
社員が自己実現できる企業風土の構築に努め、法令遵守と企業倫理を堅持しながら新技術やトレンドを迅速に学び活用する柔軟性を持たせ、清新で協力一致した組織を築き上げることを目指します。
研修
スズキが持続的に成長していくため、「個の成長」と「個の稼ぐ力」の強化を目的に人材育成に取り組んでいます。人材育成を促進するため、上司と部下が一体となり、個人のキャリアパスに沿って、社員一人ひとりが主体的に必要なスキルを必要な時に学べる研修環境を整備しました。
・ 個の稼ぐ力の強化
部門戦略に必要なスキル・知識・経験・ノウハウを明確にして、個の職務能力を向上させるための人材育成計画を各部門が立案、その人材育成計画に沿った研修を企画・実施していきます。若手社員に必要な基礎知識スキルを3年目までに習得する研修体系としました。
また全社員が必要な時に学び直しができる仕組みを導入していきます。
・ 役職者の育成
役職者を計画的に育成するため、部門の人材育成計画と個人のキャリアパスに沿って、役職就任前に役割に求められるスキルを習得するための研修を実施していきます。
2022年度より、全管理職のマネジメント能力の向上を目的に管理職マネジメント研修を開始しました。2024年度に、全管理職の研修が完了します。2025年度以降も、研修内容を見直し、引き続き研修を実施していきます。また、役職者を計画的に育成するため、部門の人材育成計画と個人のキャリアパスに沿って、役職就任前に役割に求められるスキルを習得するための研修を実施していきます。
・ 職場コミュニケーション向上
各研修の実施にあたっては、職場コミュニケーションの活性化を図るために、心理的安全性を土台とした双方向コミュニケーションの重要性について講義を行っていきます。
スタートアップ企業への派遣
スズキ本来の「困難に立ち向かい自ら切り開く起業家精神」に立ち返り視野・知見を拡げ、社員一人ひとりが社外へのアンテナを高めることを目的に、当社の若手人材を、業種や企業規模を問わず、スタートアップ企業へ派遣しています。国内では、2020年より株式会社エムスクエア・ラボへ「モバイルムーバー」の共同開発などスズキのモビリティ開発のノウハウと、エムスクエア・ラボの農業や地域における課題解決型事業を創造してきたノウハウを融合し、新たなビジネスモデル創造として、また2022年8月より株式会社SkyDriveへ「空飛ぶ車」を四輪・二輪・マリンに次ぐ新たなモビリティ事業の一つとして、種をまき、育成するために派遣しています。海外では、デジタル化が急速に進んでいるインド工科大学内に、2022年11月よりSIC(スズキ・イノベーション・センター)を設置しました。SICに社内各本部の若手社員を派遣し、人々の日常にある課題解決を目指し、インド工科大学の学生と一緒にアイディアを出し合い、ITプロダクトの開発、社会貢献に繋げるイノベーション創出活動を開始しています。
シリコンバレー研修
2017年9月より、失敗を恐れず挑戦する「ベンチャー精神」に触れ、問題解決手法「デザイン思考」を学ぶことを目的に、シリコンバレーへの社員派遣を開始しました。スズキの社是である「お客様のために」の精神を体現している現地スタートアップ企業から学ぶべく、役員から若手までの男女様々な社員を、これまでに17回、延べ171名をシリコンバレーへ派遣してきました。コロナ感染症拡大中もオンラインや国内派遣により、さらに9回、延べ123名に対し研修を実施し、役員から若手までの男女様々な社員が研修に参加し、現地の研修で学んだデザイン思考や、失敗を恐れず挑戦するマインドセットを日々の業務や人材育成に活かしています。
デジタル教育
デジタル教育は全社員、DX推進人材、経営層及び管理職の3層に分けて教育を実施しています。
全社員を対象に、DXリテラシー教育を実施し、業務効率化と付加価値の創出、各部門におけるデジタルツールの積極的な活用を促進することを目指しております。DX推進人材には、DX推進スキル教育を実施し、より高度なデータ分析スキルの習得、デジタルツールの導入と社内展開を進めております。これにより、DX推進人材が社内でのデジタル化をリードする体制を整えております。経営層及び管理職には、DXマネジメント教育を実施し、デジタル技術を活用した競争優位性の確保と変革を目指しております。
主な教育内容
・ DXマネジメント研修
DXは経営課題であるという認識のもと、経営層が自ら「役員・本部長が業界No.1デジタルチームになる」というスローガンを掲げ、DXを積極的に推進しているITトップベンダー各社との交流会や社内外の講師によるDX研修を開催しています。この研修では、役員及び本部長が直接手を動かし、ソフトウェアやネットワーク、セキュリティ等の分野についての原理・原則を理解するために取り組んでまいりました。2024年度は本取組みを管理職に広げ、年6回の実施を計画しております。
・ 業務デジタル化ツール推進教育
全社員が市民開発者となるべく、ローコード開発、BI開発などの研修動画を使って教育をしています。また、業務改善を加速するため、各部門よりプロセス改善人材を選出し、技術相談会を実施することでスキルアップと継続的な育成を計画しております。
・ データ分析・活用教育
データを活用する概念の教育と、データの分析力を高める教育を実施しております。データの分析力を高める教育は、基礎編、応用編、実践編の3コースを準備しております。また、研修以外にも「データ活用Quiz」を用意し、全社員がいつでも楽しみながら自己啓発・スキルアップできる環境を提供することでデータ分析に対する理解向上と定着を図っております。
i. データを活用する概念の教育(全社員の80%目標)
データを分析することで何ができるようになるのかイメージできるようにする。
ii. データの分析力を高める教育(DX推進人材:データ分析人材の80%目標)
基礎編:データの傾向/特徴から事象を予測できるようにする。
応用編:分析結果を考察し、結果の確からしさを判断できるようにする。
分析失敗事例から次分析に活かすポイントを見つけることができるようにする。
実践編:AIに触れることのハードルを下げ、自身の業務で活用できるようにする。
・ 生成AIの活用基盤の構築・活用
生成AIのChatGPTを同業他社に先駆け2023年3月21日に導入し、現在は10種類近くの内製アプリが稼働しています。全社員の生産性を向上させるため、生成AIを用いたアプリケーションの内製開発、及び社員自らが生成AIを用いたアプリケーション開発を行う(生成AIの市民開発)ための環境構築を推進しております。
i. 生成AIを用いたアプリケーションの内製開発
長文要約、文章生成、コード生成といった生成AIの一般的な使い方の他に、社内ノウハウ(文書・社内公開WEBページ)を生成AIが参照し、対話形式で質問に対して回答するなど、社内業務に特化した応用的な使い方ができるアプリケーションを開発しています。
ii. 生成AIの市民開発環境の構築
社員自らが、生成AIを用いたアプリケーション開発やシステム開発を行えるように生成AIのAPIを社内公開し、生成AIやAPIの専門知識がなくても開発を行える環境を構築しています。
c. エンゲージメント
社長職場対話
2021年より、社長自らが社内全職場(本部・工場・拠点)の現場へ足を運び、意見交換会を実施しています(2023年度実績:24本部、39か所)。社長自らが従業員に直接思いを伝え、また従業員は日々の困りごとを打ち明け、諸問題を共有し、協力一致して解決に取り組んでいます。特に若手から中堅の従業員にとっては、自分の思いを自分の言葉で社長へ直接届けることができる機会となり、また社長のみならず経営陣が現場の声に直接耳を傾け、柔軟かつ素早い改善に取り組んでいます。
また、2023年より、社内ホームページで、打ち明けられた困りごとへの対応状況を閲覧できるようにし、現場の声を吸い上げて終わりとせずに、継続的に対応していることをフィードバックしています。
人事制度(「a. 人事制度改革」に記載しております。)
d. 流動性
人材の流動性や人手不足が加速している社会情勢において、スズキで働くことが魅力的であり、かつ個人の成長に繋がると感じてもらえるような会社づくりや職場環境整備に努めています。
キャリア採用
多様な人材を確保するべく新卒採用に加え、近年はキャリア採用に注力しています。2023年度は181名(前年度比172%(105名))を採用しました。また、社内に蓄積のない新しい分野の知見・経験をもった人材の方を対象に、既存の人事制度にとらわれない雇用形態を新設し、2023年6月より導入しています。
アルムナイ採用
スズキを退職された方を対象に「アルムナイ採用」に取り組んでいます。在職時の知見を活かし、社外で新たに学び得た知識や経験を持ち合わせ、慣れ親しんだ職環環境であるスズキで再び即戦力として活躍していただくこと、また、転職を経験したことにより、スズキの強み・弱みを再認識し、強みは伸ばし、弱みは改善することでスズキの更なる成長に貢献していただくことを期待しています。
リファラル採用
スズキに在籍している社員から知人・友人を紹介いただく「リファラル採用」に取り組んでいます。事前に社員がスズキのことを詳しく説明することで、応募者の方はスズキに対する理解が深まり、スズキを良く知った上で入社していただくことで、入社後の定着性向上に寄与すると考えています。
技術開発に向けたデジタル人材の採用
CASEを始めとする次世代技術開発に必要なデジタル人材の確保が喫緊の課題となっています。日本国内のデジタル人材が不足する中、当該分野の人材を多数輩出するインドに着目し、2018年よりインド工科大学ハイデラバード校からの直接採用に取り組んでいます。(2024年4月時点 累計16名)また、スズキが得意とするインド市場において、当社子会社のMaruti Suzuki India Ltd.との人材交流で日印一体となって競争力の向上に取り組んでいます。
人材可視化
部門ごとの業務を分解し、業務の流れと必要となるスキルを見える化し、社員一人ひとりが業務遂行に必要となるスキルを関係づけすることで、属人化されている業務が可視化され、自部門の人材配置状況を把握した上で、欠員を見こした補充や育成計画を明確にします。目標チャレンジや職能育成面接時に上司と部下との対話をとおして育成計画やキャリアパスと実績を共有し続け、個の成長を促進・評価して、組織の成長・増強につなげます。将来的には各部門で作成した「タスク分解表(スキルマップ)」を人事データとして人材基盤システムに取り込み、人的資本状況の把握、採用と配置、リスキリング、タレントマネジメント等に活用していきます。
サクセッションプラン
当社は持続的な企業成長を目指し、次世代リーダー(役員、本部長、部長)のサクセッションプラン策定に取り組んでいます。2024年4月の人事制度改革に伴い役職ごとに求められる能力要素、人物・行動要件を定義し、役職者の役割を明確にしました。また、幹部級・管督級の人材プールを設け、組織のマネジメントを担うポスト長への配置をフレキシブルに行っています。役職昇進は上司からの推薦だけでなく人事部門が考える後任候補者リストを参考に、経営会議にて社長を始めとする経営幹部が意見を出し合って決定しています。今後は管理職を対象とした多面評価を行い、あらゆる側面からリーダーとしての適性を見極め、適切な人材配置及び人材育成に取り組んでまいります。
部門人事
現場の困りごとを、現場により近くで正確かつ迅速に対応するため、2023年より四輪技術部門と生産部門に人材開発本部から独立した部門人事を新設しました。若手社員を少人数のグループに分けて本部長と直接対話する若手座談会を実施し、現場の声を拾い上げて人材開発本部へ届け、職場改善・問題解決をしています。社員が活き活きと働けるようにモチベーションを高め、定着率向上につなげています。
e. ダイバーシティ
スズキでは、性別、年齢、国籍、人権、宗教、障がいの有無などのみならず、社員一人ひとりの個性や意思を尊重し、一人ひとりが仕事と生活の調和を図りながら、多様な働き方を通じて、能力発揮・能力向上で最大限に活躍できる環境整備と風土醸成に取り組んでいます。
女性活躍推進
これまで以上に女性が活躍できる会社となるよう、2020年からは、2025年の女性役職者数を2015年度の3倍にする計画を掲げ、管理職並びにその候補者を含む女性役職者数の増加に取り組んでいます。2023年度の女性役職者は2015年度比で3.4倍の182名まで増加し、計画を前倒しで達成しました。
一方で、女性管理職数は2023年度時点で25名(女性比率1.85%)となっています。将来的には女性管理職比率を女性従業員比率と同じにするため、まずは2030年までに女性管理職比率を5.0%とすることを目標とし、両立支援にとどまらず、キャリア形成支援に取り組んでいきます。また、自動車産業の女性比率が低いことも課題と捉え、生産工場をはじめとする社内のすべての職場が、性別、年齢、国籍、人種、宗教、障がいの有無などを問わず、すべての人にとって働きやすいものとなるよう、生産技術の革新、各種設備の更新によるすべての職場の根本的な作業環境の改善等、働きやすさの実現にも取り組んでいきます。
両立支援
従業員が多様な働き方を選択できる制度をつくることで、意欲と能力を持った従業員が継続して働ける環境を整えています。また、職場全体でワークライフバランスへの意識を高め、「働きやすい職場」づくりを推進していきます。
・ 短時間勤務制度(育児・介護)
小学生以下の子供を養育する従業員、もしくは家族の介護を必要とする従業員に対し、本人の申し出により1日の所定労働時間を6時間または7時間に短縮する制度を導入しており、2023年度は355名が利用しました。
・ 休暇・休職制度(育児・介護)
育児・介護に専念するための休職制度は、男女を問わず多くの従業員が利用しています。2023年度は395名がこの制度を利用しました。2022年4月からは、男性が育児参加しやすい風土とするために、従来の配偶者の出産時に2日間取得できる「配偶者出産休暇」に加え、子の出生から8週間以内に5日間取得できる「出生時育児休暇」を新設しました。2023年度の男性の育児休職取得者は289名(取得率63.1%)と着実に風土醸成が進んでいます。
・ ライフサポート休暇
付与後2年間の有効期限を過ぎた有給休暇日数は最大40日までストックすることができ、傷病、親や子供の介護、不妊治療、骨髄提供において利用できるライフサポート休暇制度を導入しました。
・ 2022年くるみん認定を取得
次世代育成支援対策推進法に基づき「子育てサポート企業」として「くるみん」の認定を受けました。
LGBTQ
スズキでは就業規則において、性的指向・性自認に関する嫌がらせ・差別的言動を禁止するとともに、全従業員に配布している「コンプライアンス・ハンドブック」でアウティングを取り上げて理解促進を図る等、従業員が「性の多様性」を理解し、受容する風土の醸成に取り組んでいます。また、ユニフォームの男女統一化や「誰でもトイレ」の増設も実施しました。
障がいのある方の雇用
人事部内に専任担当者、精神保健福祉士を配置し、定期的に個別面談を実施している他、職場にも障害者職業生活相談員を置き、障がいを持つ従業員の悩みや問題のケアを行うなど、長く安心して働くことができる環境づくりに取り組んでいます。
2005年2月に設立した特例子会社「スズキ・サポート」は、事業をスタートして20年目を迎えました。2024年3月末現在で、障がいのある方(重度の障がいを含む)の社員数は79名となり、指導員と一体となってスズキ本社内事務所、社員寮、関連施設の清掃業務、社内の文房具管理業務、及び農園作業に携わっています。全員が明るく元気に働く姿は、スズキの従業員からも共感と喜びをもって迎えられています。スズキでは、スズキ・サポート設立の理念である社会貢献の一環として、障がいをのある方が働くことのできる喜びや社会参加によって人間的成長を感じることができるよう、今後も障がいのある方の雇用に取り組んでいきます。
f. 健康・安全
健康経営:
健康宣言
スズキでは「お客様の笑顔は社員の笑顔から生まれる」をキャッチフレーズに、スズキグループで働くすべての従業員が社是を実践し、心も身体も健康で明るく生き生きと働くことができ、その結果、お客様が笑顔になるような製品をご提供できるよう、チームスズキ一丸となって、健康経営活動に取り組んできました。これまでの継続した取組みにより、スズキは2021年から毎年、健康経営優良法人へ認定されています。
これからもお客様の笑顔を、社員の笑顔を生み出し続けるため、健康経営活動への取組みを続けます。
社内浸透の取組み
「お客様の笑顔は、社員の笑顔から生まれる!」を健康経営キャッチフレーズとして、チームスズキ一丸で健康経営を推進していこう!と社長から全従業員に対しメッセージを発信しました。また毎月1回「健康経営ニュース」を発行し、従業員へ健康経営活動についての情報発信をするとともに、活動に対するアイディアや意見を募集する取組みを実施しています。
ヘルスリテラシー向上の取組み
社長をはじめ経営層と従業員が健康管理をテーマに座談会を定期的に開催し、その様子を動画で社内へ発信することで、従業員のヘルスリテラシー向上を図っています。また毎月1回「今は興味のないあなたにも、何かの時にお役に立てる」をコンセプトに、医務室通信「はなえみ」を発行しています。
浜松ウエルネスアワード2024
浜松市が目指す予防・健幸都市の実現に向けた浜松ウエルネスプロジェクトの推進に寄与し、他の企業や団体等の模範となる事業・取組みとして、「浜松ウエルネスアワード2024」健康経営部門にて、浜松ウエルネス大賞を受賞しました。
メンタルヘルス対策
メンタルヘルス対策として、各種階層別教育、セルフケア・ラインケア教育などの実施に加え、事業所ごとに独自のセルフケア教育やラインケア教育を実施しています。また、相談体制として社内医務室や心の相談室(外部精神科医や臨床心理士によるカウンセリングを無料で受けられる相談室)に加え、仕事上のストレスのみならず私生活上の悩みにも相談できるよう社外のEAPサービスを導入し、従業員だけでなくその家族も利用できる環境を整備しています。
運動習慣促進の取組み
スズキアスリートクラブの選手がアイディアを出し、簡単な動きで運動効果の高い「スズキオリジナル体操」を作成しました。スズキオリジナル体操を全社に広める活動として、アスリートクラブ選手が各事業所を回り、体操指導を実施しています。また、浜松市と連携し、浜松市の提供する健康管理アプリ「はままつ健幸クラブ」を社内へ紹介しています。誰でも参加ができ、月間の歩数、消費カロリーの管理・歩数ランキングなど、日々の健康づくりの見える化を実施しています。
安全衛生:
安全基本理念
・ 「安全は全てに優先する。」~Make Safety as first priority.(Safety First)~
企業活動の根幹は「人」である。その「人」を守る安全はいかなる時にも一番の優先順位を与えなければならない。
・ 「労災はすべて防ぐことができる。」~All accidents are preventable.~
管理者は、「労災は必ず防げる」という強い信念をもって、日々職場をリードしなければならない。
・ 「安全はみんなの責任である。」~Safety is everyone’s responsibility.~
会社がやるべきことを行うと共に、一人ひとりが、自分の身を自分で守る、責任ある行動を取らなければならない。みんなが、ルールを守り、注意し合える職場風土を全員でつくろう。
リスクアセスメント活動
スズキでは予防を中心とした安全先取り活動として「リスクアセスメント」を実施しています。作業におけるリスクを洗い出し、その対策を進めることで安全性の向上を図っています。2001年よりヒヤリ・ハット事例のリスクアセスメントを導入し、2013年より定常作業のリスクアセスメントに取り組んでいます。また、2016年より化学物質のリスクアセスメントを実施しています。2017年にはリスクアセスメントの評価方法を見直し、リスクの高い作業について再評価し、リスク低減を進めています。
g. 労働慣行
人権の尊重:
人権に関する法令や国際規範の尊重
スズキグループは、「世界人権宣言」(UDHR)、国際人権規約(「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(ICESCR)、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(ICCPR)」)及び「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」(ILO中核的労働基準)など、国際的な人権規律に規定された人権(結社の自由・団体交渉権の承認、強制労働の禁止、児童労働の禁止、差別の排除など)を尊重します。「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGPs)、OECD多国籍企業行動指針、我が国の「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」等を参照し人権尊重の実践に取り組みます。また、スズキグループが事業展開する世界各国の、現地の人権関連法令を遵守します。人権についての国際規範と各国・各地域の法令の間に差異がある場合は、より高い基準を尊重することに努めます。
是正と救済
人権に対する負の影響を引き起こし、または関与したことが明らかになった場合は、適切な手段を通じて、その是正に取り組みます。その一環として、職場内でのハラスメントを含む人事上の問題や安全衛生・メンタルヘルスに特化した相談窓口として、「人事・総務・相談窓口」を開設しています。さらに、これらの相談窓口に加え、食堂や事務棟等に「改善提案箱」を設置し、より一層、相談・提案が行いやすい風通しの良い職場づくりを目指しています。
福利厚生:
従業員持株制度
従業員持株制度は、毎月の給与から一定の金額を天引きして会社の株式を継続的に購入する制度です。毎月の拠出金額に応じて無理なく株式が取得でき、財産づくりを支援するため、拠出金に会社から奨励金も付与されます。福利厚生のみならず、従業員が自社の株を持つことで、会社業績の向上が株価を押し上げ、その結果として自身の資産価値が増大するというモチベーションアップが期待でき、経営参画意識の醸成にもつながります。またスズキでは、人的資本投資の取組みの一環として、2023年4月より従業員持株会の奨励金付与率を現在の5.6%から100%(奨励金額上限10,000円)へ引き上げました。魅力的で加入しやすい制度とすることで、さらに多くの従業員が持株会へ加入することで資産形成を後押しするとともに、経営参画への意識を向上していきます。
選択型福利厚生制度
・ カフェテリアプラン
勤務地・環境にかかわらず、社員が公平に福利厚生を受けられること、並びに多様な社員一人ひとりの嗜好を幅広く支えるため、会社が設定した福利厚生メニュー(両立支援、健康支援、能力支援、余暇支援、生活支援、等)の中から社員が自由に選択し、付与されたポイント(カフェテリアポイント)を上限に、補助を受けることができる仕組みです。
・ ベネフィット・ステーション
会社が設定したメニュー(旅行、レジャー、グルメ、スポーツ、ショッピング、学習、等)を会員優待価格で、制限なく利用できるサービスです。さらにカフェテリアプランで認められているメニューに関しては、そのポイントを併用して利用することができる仕組みです。
キッチンカー
昼食時間帯には社員食堂の他、曜日によっては本社構内にてキッチンカーの営業も行っております。クレープやかき氷などのスイーツやドリンクといったカフェメニューだけでなく、ハンバーガー、プレートランチ、スープなどランチメニューもあり、天気の良い日は芝生広場のベンチで喫食が可能です。2024年1月15日から本社社員食堂で新しいインドベジタリアン料理の提供を開始しました。この料理は浜松市でレストラン事業などを展開する企業様にご協力いただいたもので、味の開発にはインド出身のスズキの従業員も協力し、現地の味と同等にしています。本社以外の拠点では、予約制で提供を行っています。キッチンカーは本社以外からの出店希望も多いため、工場等の他拠点にも出店を広げています。
労使関係:
2022年以降の交渉スタイルの変革
労使交渉については、年1回の春季労使交渉(いわゆる春闘)の場が主となっていましたが、昇給・賞与に主眼が置かれてしまい、それ以外の課題については、労使間での情報共有・意見交換が尽くされておらず、お互いの主張を伝える形式的な場になりがちでした。こうした状況を踏まえ、労使信頼関係の根幹である職場単位での上司・部下コミュニケーションを活性化させ、層別で議論をしていくことを目指し、2022年の春季労使交渉では、これを実現させるための施策を実施しました。
労使交渉後の継続的な取組み
職場の課題はまず職場で解決すべく、部門単位の「労使懇談会」を定期的に開催し、コミュニケーションを活性化させています。職場だけでは解決が難しい課題は、毎月1回開催する「支部労使協議会」、「中央労使協議会」の場で3月の春季労使交渉まで継続的に議論することで、春季労使交渉を労使議論の集大成の場とすることを目指しています。
組合員意識調査の実施
従業員を代表するスズキ労働組合では、スズキ労連(スズキグループの労働組合が加盟するスズキ関連労働組合連合会)と連携し、全組合員を対象とした意識調査を実施しています。この調査を通じて内側から見たスズキグループ全体の強みと弱みを把握することによって、自発的なより良い会社・職場づくりにつなげるため2018年から毎年実施しています。調査結果で見えた課題は組合員に報告し、組合活動へ反映すると同時に労使で共有し、職場課題の解決に向けた労使一体の活動につなげ労使関係を安定的に維持しています。
h. コンプライアンス
不適切事案に関する再発防止策の実施状況
2016年に犯した燃費不正にかかる法令違反、並びに2019年の完成検査不正の問題により、お客様へ多大なご迷惑をおかけしました。その事実を決して忘れることなく後世へと伝え続けるために、毎年5月18日を全従業員が改めて自部門に関わる法令を総点検し、その遵守を再認識する日としました。2017年に技術部門より開始し2018年以降は社内の全ての部門で自分達の業務に関連する法令の棚卸しと総点検する活動を実施しています。
コンプライアンス・ハンドブック
2020年には、行動指針に基づいて、コンプライアンスの視点からスズキグループで働く人々が実践しなければならないことや、やってはいけないことを具体的にまとめた「コンプライアンス・ハンドブック」を発行して国内の全従業員に配布しています。日本語版の他、英語版・ポルトガル語版を作成して、国籍を問わず、日々の業務において随時確認・振り返りができるようにしています。2023年度には内容の見直しを行って改訂版(第2版)を再配布しています。
③リスク管理
④指標及び目標
なお、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理ととともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、上記の指標に関する実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しています。
当社グループの経営成績及び財務状況、キャッシュ・フロー等に影響を与え、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事業等のリスクは以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
<リスク管理体制>
取締役会の下に、コーポレートガバナンス委員会を設置しています。コーポレートガバナンス委員会は、コンプライアンスの徹底やリスク管理に関する施策を展開し、また、関係部門との連携により組織横断的な課題への取組みを推進しています。
詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。
<事業等のリスク>
気候変動リスクは、日本及び世界各国で、社会面、規制を含む政治面での関心が高まっています。これらのリスクには、低炭素社会への移行リスク及び気候変動による物理リスクが含まれます。
低炭素社会への移行リスクのうち、当社グループが特に重要度の高いリスクと認識しているものは、自動車のCO2・燃費規制の強化に伴う罰金発生や販売機会の逸失、規制遵守のための研究開発費用の負担増加等、及び炭素税等の導入・強化に伴う操業コストの増加等です。これらは、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、お客様の嗜好や投資家行動の変化による企業価値低下等の可能性があります。
気候変動の物理リスクには、平均気温の上昇に伴うエネルギーコストの増加等、及び水資源リスクの変化に伴うサプライチェーンの停滞や生産コストの増加等の長期的な気候変動による影響と、自然災害の頻発・激甚化に伴う事業拠点の被災や事業活動の停止等の突発的な気象変化による影響の両方が含まれます。突発的な気象変化に対応すべく、水災に特化したBCPの策定に取り組んでおりますが、気候変動の物理的リスクは当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
詳細につきましては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)気候変動への対応」をご参照ください。
お客様のニーズや自動車を取り巻く環境の変化に迅速に対応し、お客様に満足していただける魅力的な新商品を市場に投入するために、継続的な技術革新と商品開発に取り組んでいます。これには、環境性能の向上や先進技術の導入など、将来に向けた開発力の強化が含まれます。また、優秀な人材の確保と育成、効率的な生産体制の構築、部品調達の最適化など、幅広い分野での取組みを進めています。
しかしながら、国内外の景気低迷による需要減少、環境性能への要求の高まり、先進技術搭載車の普及など、市場の急激な変化を的確に捉え、新商品を適時に開発し市場に投入することができなければ、販売シェアや売上の低下の可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。
③ コンプライアンス
当社グループでは役員及び従業員が健全に職務を遂行するための「スズキグループ行動指針」の制定、コーポレートガバナンス委員会の設置、業務に関連する法令等の遵守、承認・決裁手続、他部門による確認手続の定めを含む業務規程・マニュアル類の整備、コンプライアンス研修や個別の法令等の研修の実施、内部通報窓口(スズキグループ・リスクマネジメント・ホットライン)の設置など、法令等の遵守については違反の未然防止の対策並びにコンプライアンス案件に速やかに対応する体制を講じています。
しかしながら、不測の事態により法令違反の事実や不十分な対応があった場合、当社グループの社会的信用に重大な影響を与える場合があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 人材確保及び人材育成
電動化技術、先進安全技術、デジタル技術の強化等の専門領域の人材を中心として、日本国内のみならずインドを含め、これまで以上に積極的な採用を行うとともに、採用後の人材育成にも力を入れています。また、社員一人ひとりの学びの機会を増やし、挑戦と行動を支え、個の職務能力を向上させることで、会社の創造価値を高めていく環境を整えるため、2024年4月より人事制度を全面的に刷新しました。さらに、様々な個性や価値観を持つ従業員が個々の能力を十分に発揮できるよう、性別・年齢・国籍・人種・宗教・障がいの有無等の多様性を尊重するとともに、分け隔てなく公平に登用し、働きやすい職場環境の整備に努めています。
しかしながら、労働市場のひっ迫や人材獲得競争の激化等により、人材の確保ができない場合、人材の育成が不十分な場合や、従業員の多様性が尊重された職場環境が実現できない場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
詳細につきましては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(3)人的資本に関する取組」をご参照ください。
⑤ 取引先からの部品調達
技術力、品質、価格競争力などの要素を総合的に踏まえ、部品調達先を分散し、安定した調達に向けた取組みをしています。
しかしながら、部品によっては調達が特定の取引先に依存している場合や、当社グループが一次取引先を分散していたとしても、一次取引先が部品調達を二次以降の特定の取引先に依存しているものがあります。これらの部品について、市況、災害、経済安全保障の動向、人権侵害の発覚等により、継続的・安定的に確保できない場合、当社グループの生産に遅延や休止又はコストの増加を引き起こす可能性があります。その結果、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 人権侵害
当社グループは、国際的なビジネスを展開する中で、サプライチェーンにおいて人権尊重の原則に基づいた活動を行っています。
しかしながら、当社や製造・非製造子会社、販売子会社を含むグループ会社のみならず、取引先やその二次取引先以降も含むグローバルなバリューチェーン全体の労働環境や人権状況に関する完全な管理は困難であるという課題があります。児童労働や強制労働、差別的な労働慣行、労働者の健康と安全に関する問題などの人権侵害は、法的な責任や罰金、賠償責任などの経済的な損失などに加え、ブランドイメージの損傷やお客様からの信頼喪失などの当社グループの社会的信用に重大な影響が生じることにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 品質保証
当社グループは、高品質な製品づくりを重要な経営課題の一つとしており、中期経営計画の中でも優先度の高い取組みとして掲げています。
しかしながら、大規模なリコール等が起こった場合、多額のコストとして品質関連費用が発生することに加え、ブランドイメージの毀損等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 情報セキュリティ・サイバーセキュリティ
当社グループは、事業活動全般にわたり、電子データを用いた設計開発、生産、販売、会計などの作成・処理・蓄積を行っており、これらのシステムは適宜更新・変更されています。また、製品には多様な電子制御装置が組み込まれており、これらは車両や装備の制御に不可欠です。これらのシステムと装置には安全対策が施されていますが、それでもなお、ハッカーやウィルスによるサイバー攻撃、システム障害、インフラの停止などのリスクが存在します。サイバー攻撃は特にその脅威が増しており、過去には当社海外子会社が標的とされた事例もあり、同様の事態が発生した場合には業務の中断、データの破損や喪失、機密情報の漏洩などが起こり得て、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、当社グループは、個人情報や経営・業務・技術に関する機密情報の保護に努めていますが、予期せぬ事態によりこれらの情報が流出したり不正に使用されたりすることがあります。そのような場合、法的請求、訴訟、賠償責任、罰金の支払いなどが生じ、これもまた当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 特定の事業及び市場への集中
当社グループは、当連結会計年度において連結売上高のうち、インドでの売上高が四輪事業・二輪事業・その他含めたインド事業全体にて4割強を占めています。
しかしながら、これら事業に関わる需要や市況、同業他社との競争等が予測し得る水準を超えた場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 他社との提携
当社グループは、研究開発、生産、販売、金融等、国内外の自動車メーカーをはじめ、他社と様々な提携活動を行っていますが、提携先固有の事情等、当社グループの管理できない要因により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
長期間の景気低迷、世界経済の悪化や金融危機、お客様の購買意欲低下は、四輪車、二輪車、船外機等の当社グループ製品の需要の大幅な低下につながり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、世界各国において事業を展開しており、特に、アジア地域の新興国を中心とした海外生産工場への依存度も年々高まってきています。これらの市場での経済情勢の急変などの不測の事態や、各国の税制や金融政策などの予期せぬ変更や新たな適用があった場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 他社との競争激化
当社グループは、競争力の維持・向上のための施策に取り組んでいますが、事業を展開する世界各国の市場において他社との競争にさらされています。世界の四輪車・二輪車・船外機産業の国際化及び異業種参入が今後ますます進展することによって、競争はより一層激化する可能性があります。製品の品質、安全性、価格、環境性能等のほか、製品の開発・生産体制の効率性や販売・サービス体制の整備、販売金融など様々な項目において優位に競争することができなくなった場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) 金融・経済のリスク
当社グループは、日本から世界各国へ四輪車、二輪車、船外機並びにそれらの部品などを輸出するとともに、海外の生産拠点からも、それらの製品や部品を複数の国々へ輸出しています。現在では連結売上高に占める海外売上高の割合は7割を占め、特に新興国を中心とした海外生産工場への依存度が高いことから為替変動の影響を受けやすく、為替変動リスク軽減として為替予約等のヘッジや、生産拠点を分散してグローバルに最適化を図るなどの対策を行っています。また資金の多くを低金利が続く日本で調達していることから金利変動影響を受けやすく、金利変動リスクの軽減として借入期間など借入方法の多様化に取り組んでいます。
しかしながら、全てのリスクをヘッジすることは不可能であり、為替及び金利の変動は当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 原材料・部品価格の変動
原価低減活動の実施や在庫調整などによる収益改善の取組みを実施していますが、原材料及び部品の購入価格の上昇は、製品コストの上昇につながり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4) 政治・規制・法的手続・災害等に関するリスク
① 政府規制等
排出ガス、燃費、騒音、安全性及び製造工場からの汚染物質排出レベルに関する法規制に対応するため、環境技術の開発や製品の改良、及び事業活動における化石燃料資料の削減に積極的に取り組んでいます。また、消費者保護、労働規制、独占禁止法令など、国内外の広範な法規制に適応するためのコンプライアンス体制を強化しています。
しかしながら、これらの規制の改正により費用負担が増加した場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 知的財産の保護
当社グループは、他社製品との区別化のため、技術・ノウハウ等の知的財産を蓄積しており、その保護の対策を講じるとともに、第三者の知的財産権侵害防止の対策を講じています。
しかしながら、当社グループの知的財産が不法に侵害され、あるいは第三者から知的財産侵害の指摘を受け訴訟、製造販売の中止、損害賠償等が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 法的手続
訴訟リスクや法的手続きに対応するため、関連法規に基づく調査にも迅速かつ適切に対応しています。
しかしながら、現在進行中の訴訟や将来発生する可能性のある法的手続において、不利な判断が下され罰金、損害賠償金が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 世界各国での事業展開
当社グループは、世界各国において事業を展開しており、また、いくつかの国においては、その国の法律上又はその他の要件に従い、現地企業との間で合弁による事業を行っています。これらの事業は、各国の様々な法律上その他の規制(課税、関税、海外投資及び資金の本国送金に関するものを含みます。)を受けています。これらの規制、又は合弁相手の経営方針、経営環境などに変化があった場合は、当社グループの業績及び財政状態に対して悪影響を及ぼす可能性があります。
また、多くの政府は、関税の賦課や、価格管理規制及び為替管理規制を定めています。当社グループは、これらの規制を遵守するために費用を負担してきており、今後も負担することになると予想しています。新たな法律の制定又は既存の法律の変更によっても、当社グループが更なる費用を負担する可能性があります。さらに、各国の税制や景気対策等の予期せぬ変更や新たな適用が、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 自然災害・パンデミック・戦争・テロ・ストライキ等の影響
日本では、地震、台風、洪水などの自然災害や原子力発電所の予期せぬ事故など様々なリスクにさらされています。特に、当社の本社をはじめとする主要施設や研究開発拠点、主要生産拠点は周期的な巨大地震が発生する可能性が高い静岡県に集中しています。当社グループでは、東海地震・東南海地震などの自然災害による被害の影響を最小限に抑えるべく、建物・設備等の耐震対策、防火対策、事業継続計画の策定、地震保険への加入等、様々な対策を講じていますが、災害等の規模がその想定を超える場には当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
海外においても、当社グループは世界各国において事業を展開しており、海外での事業展開に関連する様々なリスクにさらされています。
これら国内外のリスクには自然災害、パンデミック、戦争、テロ、ストライキ、さらには政治的・社会的な不安定性や困難に起因するもの等があります。これらの予期せぬ事象が発生すると、原材料や部品の調達、生産、販売及び物流やサービスの提供などに遅延や停止が生じる可能性があります。これらの遅延や停止が起こり、長引くようであれば、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。これらの記載は実際の結果とは異なる可能性があり、その達成を保証するものではありません。
当連結会計年度の当社グループを取り巻く経営環境、及び業績につきましては、半導体不足影響の解消により、前期に比べ四輪車の生産・販売台数が増加し、モデルミックスも改善しました。さらに、コストアップに対し、四輪車の販価を適正な水準への見直し、為替影響やインドでの原材料価格の落ち着き等の追い風もあり、売上高および全ての利益項目について、過去最高を更新しました。
当連結会計年度の業績につきましては、売上高は5兆3,743億円となり前連結会計年度に比べ7,326億円(15.8%)増加、営業利益は4,656億円となり前連結会計年度に比べ1,150億円(32.8%)増加しました。経常利益は4,885億円となり前連結会計年度に比べ1,057億円(27.6%)増加、親会社株主に帰属する当期純利益は2,677億円となり前連結会計年度に比べ466億円(21.1%)増加しました。
事業別セグメントの業績は、次のとおりです。
日本、欧州、インドでの販売増加、売上構成変化等の改善により、売上高は、4兆8,838億円と前連結会計年度に比べ7,216億円(17.3%)増加し、営業利益は3,982億円と前連結会計年度に比べ1,191億円(42.7%)増加しました。
インドでの販売増加により、売上高は3,669億円と前連結会計年度に比べ338億円(10.1%)増加しました。営業利益は390億円と前連結会計年度に比べ97億円(33.0%)増加しました。
北米市場の減速により、売上高は1,123億円と前連結会計年度に比べ223億円(16.6%)減少し、営業利益は252億円と前連結会計年度に比べ142億円(36.0%)減少しました。
④ その他事業
売上高は112億円と前連結会計年度並みとなり、営業利益は31億円と前連結会計年度に比べ5億円(16.9%)増加しました。
生産、受注及び販売の状況は、次のとおりです。
当社グループは主に見込み生産を行っているため、受注生産について該当事項はありません。
(注) 販売実績は外部顧客への売上高を示しています。
当連結会計年度末の財政状態は、総資産は5兆3,856億円(前連結会計年度末比8,079億円増加)となりました。
負債の部は、2兆2,472億円(前連結会計年度末比1,781億円増加)となりました。借入金につきましては、世界的な景気後退リスクの高まりを踏まえ、現在の借入水準を当面維持していく考えです。
純資産の部は、3兆1,384億円(前連結会計年度末比6,298億円増加)となりました。前連結会計年度末に対する主な増加要因は、利益剰余金の増加に加え、為替換算調整勘定やその他有価証券評価差額金の増加によります。
(3) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① キャッシュフローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は8,536億円となり、前連結会計年度末に比べ285億円減少しました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(ⅰ)営業活動によるキャッシュ・フロー
4,460億円の資金増加となりました。増益等により、前連結会計年度の2,866億円の資金増加に比べ、1,594億円の増加となりました。
(ⅱ)投資活動によるキャッシュ・フロー
4,339億円の資金減少となりました。有形固定資産の取得による支出の増加等により、前連結会計年度の3,027億円の資金減少に比べ、1,312億円の減少となりました。
これらの結果、フリー・キャッシュ・フローは122億円の増加となり、前連結会計年度の160億円の資金減少と比べ、282億円の増加となりました。
(ⅲ)財務活動によるキャッシュ・フロー
812億円の資金減少となり、前連結会計年度の316億円の資金増加に比べ、1,128億円の減少となりました。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、経営環境を考慮しつつ、適切な手元資金水準を維持しながら、資金調達計画を経営会議において審議し、戦略的投資と研究開発費等の成長に向けた経営資源の適切な配分を安定的に行っています。当社グループの資金の流動性管理にあたっては、資金繰り計画を作成し、適時に更新するなどによりリスク管理を行っているほか、急激な外部環境変化に対応できるよう、一定水準の手元流動性を確保する方針としています。また、国内や欧州において資金を一元管理し、キャッシュプールを通してグループ内での相互貸借機能を保有することで、流動性リスクに対し機動的に対応できる体制を構築しています。加えて、当社は取引銀行6行と総額3,000憶円のコミットメントライン契約を締結するなど、十分な流動性を確保する手段を保有しています。なお、当連結会計年度末においてコミットメントラインは未使用となっています。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物8,536億円は、月商比1.9ヶ月に相当し十分な流動性を確保しています。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものの内容及び金額は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。
当社グループは、お客様の立場になった価値ある製品づくりをモットーとし、世界中のお客様の日々の移動を支え、環境にも優しく、いつも身近にあって頼れる生活のパートナーとなる製品・サービスを提供しながら、下記のように研究開発に取り組んでいます。
当社の行動理念である「小・少・軽・短・美」を具現化し、モビリティのライフサイクル全体でエネルギー消費の極少化を目指して技術開発を行っています。この理念から生み出される商品を通じて、持続可能なカーボンニュートラル社会の実現と世界中の人々に移動する喜びを提供してまいります。
生産、技術、調達、IT一体の「中期経営計画(2021年4月~2026年3月)~「小・少・軽・短・美」~」の基本理念「世界の生活の足を守り抜く」を主眼にお客様に価値ある製品・サービスを提供するため、AIを活用した品質向上・保証とデータ活用基盤の強化などに挑戦しています。これらは、スズキスマートファクトリー創造のもとに取り組んでいます。電動化の製造技術は、量産が視野におさまり、製造領域のCO2排出削減は、湖西工場でドライブース導入とブース排気のリサイクルを採用した塗装設備への刷新(生産開始:2025年3月~)や、水素活用で燃料電池を動力とする荷役運搬車を運用し、データ取得を進めています(2022年12月~)。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
(1)四輪事業
① 新商品の開発状況
[国内市場]
2023年11月に新型「スペーシア」、「スペーシア カスタム」を発売しました。「わくわく満載!自由に使える安心・快適スペーシア」をコンセプトに、楽しさを感じられるデザイン、快適で居心地のよい室内空間、安全機能など、スペーシア本来の魅力をより進化させました。
2023年12月に新型「スイフト」を発売しました。「エネルギッシュ×軽やか 日常の移動を遊びに変える洗練されたスマートコンパクト」をコンセプトに、歴代のスイフトで培ってきたデザイン性や走行性能に加え、安全装備や利便性の高い装備が充実したことで、スイフトの魅力であるデザインと走りに「クルマと日常を愉しめる」という新たな価値を加え進化させました。
2024年2月に、軽商用車「エブリイ」、軽乗用車「エブリイワゴン」を一部仕様変更して発売しました。今回の一部仕様変更では、CVT車を新たに設定し、燃費性能や静粛性を高めました。また、CVT車に使用状況や路面状況に応じて「2WD」、「4WD AUTO」、「4WD LOCK」の3つのモードが選択可能な電子制御式4WDや、ぬかるみ脱出アシストを採用し、利便性を高めました。
福祉車両ではウィズシリーズに、2023年11月に全面改良した新型「スペーシア」をベースとした、新型「スペーシア 車いす移動車」を設定し、2WD車は12月、4WD車は2024年3月に発売しました。テールゲート一体型スロープに前倒し機構を採用したほか、車いす乗員用の手すりを回転タイプとすることで利便性を高めました。
[海外市場]
当社は、特に強みとするインド市場において2024年3月末までに四輪車の累計生産3,000万台を達成しました。成長を続けるインドにおいて、お客様の立場になって多様なモビリティの選択肢を提供しています。
2023年4月に、インド子会社Maruti Suzuki India Ltd.(以下、マルチ・スズキ)は、インドで新型「フロンクス」を発売しました。力強さと流麗さを際立たせた新しいクーペスタイルと取り回しの良さを備えた、新ジャンルのSUVであり、発売から10か月で累計販売10万台を達成しました。また6月には新型「ジムニー5ドア」をインドで発売しました。後席には専用のリヤシートや内装を採用するなど、インドにおいても、お客様が求める本格的な四輪駆動車としての走行性能を備えるとともに、幅広いお客様がレジャーを楽しみ、ライフスタイルを表現するための道具として選んでいただけるデザイン、装備としました。「フロンクス」及び「ジムニー5ドア」の販売により、マルチ・スズキのSUVラインアップを拡充し、拡大が見込まれるインドのSUVセグメントにおいても、多様な選択肢をお客様に提供していきます。
2023年7月に、マルチ・スズキは新型プレミアム3列シート車の「インビクト」をインドで発売しました。当社がトヨタ自動車(株)と2017年に業務提携に向け締結した覚書に基づく協業に取り組む中OEM供給を受け、パワートレインはトヨタ自動車(株)のハイブリッドシステムを搭載しました。この協業を通じて、両社それぞれの強みを持ち寄ることでお客様に幅広い電動化技術を提供することが可能となり、インドにおける電動化の加速とカーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。
② カーボンニュートラルへの対応
当社は、お客様の選択肢の幅を広げ、地域のニーズに合った製品・サービスをお届けするとの考え方を軸に、各国でのカーボンニュートラル目標達成に貢献します。お客様のニーズや利用スタイルに対応した電動化技術の開発を進めるとともに、内燃機関などの既存技術を活用したCO2削減や、水素燃料を使ったエンジンの研究開発など、マルチパスウェイでの取組みを行っています。電気自動車(EV)の開発・製品化の推進はもちろんのこと、内燃機関の更なる改善にも力を入れ、ハイブリッドシステムの効率を向上させていきます。
EVの取組みについては、当社はお客様のニーズと利用スタイルに対応した適所適材のEVを開発し、適切な時期に市場に投入していく方針です。
「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」にて、インドの「Auto Expo 2023」で世界初公開したEV世界戦略車第一弾のコンセプトモデル「eVX」のエクステリアを進化させるとともに、インテリアを初めて公開しました。電子制御の四輪駆動技術をさらに進化させ、スズキのSUVに相応しい本格的な走行性能を実現するEVモデルです。また、毎日の生活に寄り添う軽ワゴンEVコンセプトモデル「eWX」も世界初公開しました。
日本では、小型SUV・軽乗用・軽商用などのEV投入を予定しており、2024年度から2030年度までに6モデルを展開します。欧州では2024年度よりEVを投入、SUV・Bセグメントなどに広げていき2030年度までに5モデルを、インドでは2024年度から2030年度までに6モデルを展開します。
EVの開発では、複数地域でプロトタイプ車を走行させてデータを収集しており、これらのテスト結果は、トヨタ自動車(株)と共同で開発したEVにもフィードバックしています。また、インド・グジャラート州への投資など、インドでのEV生産の準備も合わせて進めています。
内燃機関車両の改善としては、2023年12月から販売開始した新型スイフトには、高速燃焼を実現したZ12E型新エンジンと高効率の新CVTを搭載しWLTCモード24.5km/Lの低燃費と走行性能の両立を実現しました。また2024年2月からエブリイに対してFR(後輪駆動)用の新CVTを搭載し、軽商用車も燃費向上を行いました。新型軽乗用車「スペーシア」は、高効率領域を拡大し燃焼効率を高めたR06Dエンジンと、軽量で高効率な新CVT、マイルドハイブリッドの組み合わせにより、先代スペーシア(HYBRID G 2WD車)に対してWLTCモード走行で燃費2.9km/L向上し、軽ハイトワゴントップクラスとなる燃費値25.1km/Lを実現しています。さらに、インドでは多様なニーズに応える環境性能に優れた技術を搭載する自動車をラインナップするための技術として、CNG燃料に対応した自動車をマルチ・スズキと共同で開発、実績として2022年度にインド国内で約30万台、2023年度には前年比1.5倍の約45万台を販売しました。また、牛糞をベースとしたバイオガス事業を推進するため、スズキ、全国酪農開発機構(NDDB)及びアジア最大規模の乳業メーカーであるBanas Dairy社の3社は、2023年9月にバイオガス生産プラント設置(2025年稼働)について合意しました。これにより、バイオメタンガス燃料に対応したCNG/CBG車開発と安定した品質のバイオガス燃料を生産する製造技術開発を推進します。
加えて、当社が支援しマルチ・スズキが開発した高エタノール混合ガソリン対応エンジンをプロトタイプ車に搭載し開発を進めています。
また、燃料を「つくる」プロセスの効率化を研究することを目的とした「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合」に参画し、カーボンニュートラル社会実現のため、バイオマスの利用、生産時の水素・酸素・CO2を最適に循環させて効率的に自動車用バイオエタノール燃料を製造する技術研究を進めています。
③ 安全・安心技術の開発
当社は、小さなクルマで大きな安心をお届けするため、誰もが安心して乗れる運転のしやすさを考えた基本安全技術、事故そのものを未然に防ぐ予防安全技術「スズキ セーフティ サポート」、万一の衝突被害を軽減する衝突安全技術を培い続けています。安心して楽しく車に乗っていただくために、事故の無い未来に向けてさらなる技術の進化と普及に努めていきます。
2023年11月より国内向け新型「スペーシア」、2023年12月より国内・欧州向け新型「スイフト」に、ミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせた衝突被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポートⅡ」を採用し、新たに交差点事故シナリオに対応しました。また、アダプティブクルーズコントロールはより自然な加減速を、車線維持支援機能はより車線中央付近の走行維持を実現し、アダプティブハイビームシステムなどの高機能前照灯との組み合わせにより、日常運転の負担を更に軽減しています
④ 情報通信・自動化技術の開発
2021年12月より国内向け新型「スペーシア」、2022年2月よりインド向け新型「バレーノ」、2022年8月より欧州向け新型「Sクロス」へコネクテッド技術を搭載し、「スズキコネクト」サービスの提供を開始し充実させています。コネクテッド技術を活用して、緊急時の迅速かつきめ細やかなお客様サポートや、離れた場所で車両の状態確認や操作を可能とするリモート機能など、より安心・快適・便利なカーライフをお客様へ提供しています。そして、他地域への展開や他モデルへの搭載を順次進めるとともに、コネクテッドデータを活用した品質向上や設計支援の促進、次世代の通信技術を採用し通信ナビやBEV向け新機能を実装した、新しい世代のコネクテッド開発を進めています。
また、2023年3月より法人向け車両管理サービス「スズキフリート」を開始しており、コネクテッド技術を活用し、車両を日々活用されている法人企業の車両運行管理や社員の安全運転啓発などの業務を支援しています。簡易装着可能な通信機を活用することで、法人企業が既に所有されている車両にも装着することが可能です。今後は、走行データを分析することで、各業種・企業に適したカスタマイズサービスを提供することや、カーボンニュートラル対応のEV導入を支援するサービスへ展開することを進めていきます。
また四輪車のみならず、二輪車やセニアカーなど他製品への通信技術の搭載にも取り組むとともに、新しい電動モビリティユニットなどの新製品やカーボンニュートラルを支えるための、IoT先進技術の検討も進めていきます。
高齢化や人口減少により、人や物の移動を支えるドライバの人手不足が社会課題となっています。この社会課題を解決する自動運転技術の実用化にチャレンジしています。
人の移動については、「交通空白地における交通弱者の足の確保」を目標に、官民一体のプロジェクト(浜松自動運転やらまいかプロジェクト)に参画しています。スズキのものづくりの根幹である「現場・現物・現実」に即した自動運転技術、モビリティサービスを実現するため、2017年、2019年、2022年に実証実験を行い、地域住民や自治体の方々から多くの意見をいただきながら、開発を進めています。2023年度は、約3ヶ月の長期実証実験を行うことで、これまでの短期間の実証実験では抽出できなかった技術面、運用面の課題を抽出することができました。これら課題を2024年度の実証に反映し、ステップアップで自動運転技術の実用化につなげてまいります。
物の移動については、豪州のスタートアップ企業「Applied EV」と共同でジムニーのラダーフレームを活用した物流向けの自動運転電動台車の開発を開始しました。スズキが培ってきたものづくりの強みとスタートアップ企業の強みである発想力・柔軟性をかけ合わせることで、さまざまな用途で使える自動運転電動台車のプラットフォームを創造し、新たな価値につなげてまいります。2024年度は、開発車を製作し実証実験をスタートします。
スズキはオーナーカーだけでなく人や物の移動による喜びを皆様に提供していきます。
当連結会計年度における四輪事業の研究開発費は
(2)二輪事業
二輪事業では、カーボンニュートラル達成に向けた技術、お客様の立場になった「価値ある製品」を提供する技術の開発を行っています。
2023年10月に開催された「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」に、共通仕様バッテリーシェアリングサービス「Gachaco(ガチャコ)」を利用した電動スクーター「e-BURGMAN」の実証実験車のほか、水素を燃料とした「水素エンジンバーグマン」を参考展示しました。そして、2024年3月にサステナブル燃料を使用するGSX-R1000Rで鈴鹿8時間耐久ロードレースへ参加することを発表しました。カーボンニュートラル達成に向かい、多様な選択肢の開発を行っています。
また、新たな電子制御技術を開発し、新型大型二輪車「GSX-S1000GX」向けに、「スズキアドバンスドエレクトロニックサスペンション(S.A.E.S.)」をスズキの二輪車として初採用しました。電子制御により路面入力に応じた減衰特性を調整し、長距離走行時の疲労を軽減、快適な走行に貢献します。
当連結会計年度における二輪事業の研究開発費は
(3)マリン事業
マリン事業では、マリン製品における環境や利便性向上とお客様の価値向上に関わる技術開発を行っています。
お客様の価値向上のため、船外機「DF200A」「DF150A」にマットブラック(艶消し黒)色を追加、発表しました。
また、2020年から活動を開始した「スズキクリーンオーシャンプロジェクト」の一環として、2023年9月静岡大学とマイクロプラスチック判別技術の共同研究を開始しました。2022年7月からマイクロプラスチック回収装置(以下、MPC)を一部船外機に搭載、その回収物にはマイクロプラスチックの他に砂や木くず、微小な海洋生物などが含まれ、手作業と目視による分別には経験やスキルが必要です。この課題を解決するため、画像認識技術を利用し、現場でも容易に分別できる判別技術の共同研究を実施しています。今後、MPCを搭載する機種を増やしていくと共に、その有効活用のため、技術開発を進めていきます。
一方、本活動で船外機製品及び部品のプラスチック梱包資材の削減にも取り組んでいます。従来使用していた包装用のプラスチックや固定用の発泡スチロールを、紙や生分解性の素材に変更しました。その結果、2020年10月から2024年3月までの累計で61トンを超えるプラスチックを削減しました。
マリン事業に関わる全ての活動において、SDGs 14「海の豊かさを守ろう」を実行します。これらを通じて、地域の環境教育活動として小学校での勉強会も開催しています。
当連結会計年度におけるマリン事業の研究開発費は
(4)その他の事業
その他代表的なものとして、小型低速電動モビリティ事業において、当社がこれまで培ってきた電動車いすの技術を応用し、乗用モビリティから産業用ロボットまで様々な用途で活躍する電動モビリティの技術開発に取り組んでいます。
具体的には、若者から高齢者まで多くの人の生活の足となる新しいモビリティの提案として、2023年10月から11月に開催された「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」にSUZU‐RIDE、SUZU‐KARGO、SUZUKI GO!を出展し、「近未来的でワクワクする」「様々な場面で活躍してくれそう」「四輪で安定感が高そう」等、好意的な意見を多数頂き、引き続き開発中です。
また、様々な分野の産業用ロボットの足となる電動モビリティベースユニットを2023年12月に開催された国際ロボット展に出展し多くの業界のお客様から引き合いを頂きました。
人々の移動の自由や搬送問題を解決し、新たなモビリティ社会に貢献するモビリティの開発を進めています。
当連結会計年度におけるその他事業の研究開発費は