当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、路線トラック輸送のパイオニアとして、創業以来、「輸送立国」すなわち、お客様に喜んで頂ける最高のサービスを常に提供し、輸送を通じて日本の産業、経済の発展に貢献する物流企業を目指してまいりました。
今後も最高の物流品質を提供できるセイノーグループを形成し、国民生活の向上と共に「会社を発展させ、顧客、株主、取引先そして従業員の信頼と期待に応える」堅実経営を基本方針として、国内商業物流のトップ企業を目指します。併せまして「業界一のグループ効率経営」に取り組み、企業価値、株主価値の向上に取り組んでまいります。
(2) 経営環境、経営戦略、事業上及び財務上の優先的に対処すべき課題
わが国経済の今後の見通しは、雇用・所得環境が改善する中、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されております。一方で、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクや、物価上昇、中東地域をめぐる情勢など懸念材料もあり、依然として不透明な状況が続くと予想されております。
当社グループの主要な事業にあたる輸送業界におきましては、高齢化、労働人口減少が加速し、2024年問題もあって、商品を運べなくなるリスクの発生が想定されます。
このような情勢において、輸送事業では、ロードマップ2028の目標達成に向けて2年目である今年度は、昨年度に引き続き、自社のみの最適化ではなく、オープン・パブリック・プラットフォーム(O.P.P.)による他社との連携や協業を推進してまいります。具体的には、当社の特積み全国ネットワークによる圧倒的かつ安定した輸送力を持つ強みを生かし、優位性が異なる同業他社とのO.P.P.や非効率な地域を補完し合うO.P.P.を通じて、お客様の利便性向上や物流業界の配送効率向上につなげてまいります。
また、ロジのセイノーを加速させるとともに、注力分野である貸切事業を強化するためハコベル株式会社との協業を深化させてまいります。
その他、2024年4月に、ラストワンマイル関連事業の意思決定の迅速化や効率化を図るため事業会社6社を統括するセイノーラストワンマイル株式会社を発足させ、また神奈川県下のラストワンマイル配送に強みを持つ日祐株式会社(横浜市)を子会社化しております。
自動車販売事業の乗用車販売では、顧客満足度向上に向けた継続的な店舗・サービス工場のリニューアルや商圏分析をもとにした拠点の新設を行うとともに、拠点の統廃合による店舗網の最適化などにより効率化も並行して行ってまいります。また、働き方改革や環境整備により利益率の高いサービス部門を担う整備士の採用・育成に努めてまいります。
トラック販売では、供給制限の緩和や出荷再開により、お客様のご要望に応じた対応が可能となるため、新車販売はもとより中古車販売、リース、保険等の金融商品の販売も合わせて、増販を目指してまいります。加えて、車検・定期点検の早期入庫誘致による台数確保と修理業者等への部品拡販により、収益の確保に努めてまいります。その他、先進整備機器導入などによりES向上を図り、乗用車販売と同様に整備士の定着・採用に繋げてまいります。
物品販売事業、不動産賃貸事業およびその他では、事業領域の拡大や既存事業強化を実施してまいります。
当社グループの経営理念である「会社を発展させ、従業員を幸福にする」のもと、「働く人が誇りを持てる、魅力ある企業」を造り、お客様、協業先様、社会、環境そして従業員家族の未来と幸せに貢献することで、更なる成長を目指してまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループはROEを重要な経営指標と位置付けております。当社は、2023年6月12日開催の取締役会において、中長期の経営の方向性「ありたい姿とロードマップ2028」を決定いたしました。売上高の成長、営業利益率の改善及び適切な資本政策により、PBR1倍超の早期実現に向けて、3年から5年以内にROE8.0%以上を目指します。
セイノーグループの根底には、創業から現在までの持続的な成長の基盤となった経営理念「会社を発展させ、社員を幸福にする」が脈々と流れております。その理念の達成には、「誰かのお困りごと」すなわち「社会課題」の解決という価値を創造し、社会とともに成長していくことが必要であると考えています。
〈サステナビリティ推進にかかわる方針〉
・環境方針:国家社会に貢献するとともに、地球環境対策に積極的な取り組みを推進するための方針です。
・倫理綱領:社会の一員として法令を遵守するとともに、社会から信頼される企業となるための方針です。
方針の詳細につきましては当社ホームページをご参照ください。
https://www.seino.co.jp/seino/shd/environment/policy/
https://www.seino.co.jp/seino/shd/environment/ethical-guidelines/
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において当社グループが判断したものであります。
〈サステナビリティに関するマテリアリティ〉
私たちセイノーグループは社会と共存し、持続的に成長するために優先して取り組む7つのマテリアリティ(重要課題)を特定しております。マテリアリティ(重要課題)の解決に向け、サステナビリティにかかわる基本的な方針を定めて取り組んでおり、当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
|
マテリアリティ(重要課題) |
取り組むテーマ |
1 |
持続可能な地球環境への貢献 |
CO₂排出の少ない事業活動の推進 資源使用の少ない事業活動の推進 |
2 |
安心・安全な職場環境づくり |
安全風土の構築に向けた従業員教育 安全を守る企業体制づくり |
3 |
多様な人が活躍する組織づくり |
多様性の尊重と柔軟な働き方の推進 従業員への心と身体のケア 従業員間のコミュニケーション促進 |
4 |
輸送事業を通じた社会貢献 |
BCP対策の推進 災害時における行政との連携 |
5 |
社会課題解決型事業の推進 |
輸送サービスによる社会課題への貢献 他社との共創による社会課題への貢献 ウクライナ難民の受け入れ |
6 |
責任ある企業運営 |
従業員への教育 コンプライアンスを遵守する企業体制づくり 公益通報窓口の設置 リスク管理マネジメントの実施 |
7 |
持続可能な企業風土の醸成 |
従業員の認知度や理解度を向上 |
〈マテリアリティ特定のプロセス〉
SDGsを基に当社事業と整合する課題を抽出し、当社グループの経営理念を踏まえて整理し、ステークホルダーや当社にとって特に重要であり、解決に向けて取り組む課題をマテリアリティ(重要課題)として、下記①~⑥のプロセスを経て特定しております。
① |
SDGsと事業の整合 |
SDGsに紐づく169項目のターゲットから事業活動と親和性の高い指標39項目を抽出 |
② |
課題の分類と整理 |
抽出したターゲット39項目を環境、社会、ガバナンスの観点で分類し当社グループの課題として設定 |
③ |
ありたい姿の設定 |
設定した課題に対するありたい姿を設定 |
④ |
重要性の評価 |
ステークホルダーと当社にとって重要度を評価 |
⑤ |
事業部門との議論 |
当社グループの強みと果たすべき役割を整理し、特に重要で優先的に取り組む課題を再抽出 |
⑥ |
取締役の審議 |
抽出した重要課題と目指すべき方向性について社内外取締役の審議を経て、マテリアリティ(重要課題)を特定 |
(1)ガバナンス
気候関連のリスクや機会の分析を行うために発足した「カーボンニュートラル推進プロジェクト」を発展させ、2022年7月にサステナビリティ推進部を設置しております。当社グループのサステナビリティに関する方針、マテリアリティ、TCFDなどの重要な施策は、サステナビリティ推進部で起案しており、起案されたサステナビリティ関連の施策は、取締役会ならびに付随する会議体で審議・議論され決定されております。
また、気候変動を中心とした事業に及ぼすサステナビリティ関連のリスクや機会については、その他のリスクや機会と同様に扱われており、リスク管理委員会にて議論され、管理されております。
(2)戦略
気候変動への対応については、特に重要な経営課題であると認識しており、TCFDに基づくシナリオ分析を実施、当社の事業に及ぼすリスクや機会を予測し、適切な対応をしていくことで、当社グループの持続可能性が高まると考えております。また、シナリオ分析においては、1.5℃、4℃シナリオを用いて可能な限り定量的な把握に努め、必要なデータの取得が困難な場合は定性的な情報を基に分析を行いました。
事業への財務影響について2050年までの期間内に想定される利益への影響額が大きいと特定したものは以下のとおりであります。
(3)リスク管理
当社ではリスク管理委員会を設置しており、コーポレート推進部担当役員をリスク管理委員長とした組織横断的な委員会体制のもと事業運営にあたり予想されるリスクを明確にするとともに社内周知を進め、全社共通認識のもと未然防止とリスクの低減に取り組んでおります。リスク管理委員会は四半期ごとに開催され、想定される具体的なリスク特定を行い、リスク一覧表に定め、影響度と発生可能性をもとにリスクの重要性を評価し、重要性に応じて取締役会へ報告、審議を実施しております。
気候変動に関連するリスクについてもその他のリスクと同等に取り扱われ、リスク管理委員会で選別、評価、管理されております。
(4)指標及び目標
気候変動への対応については、特に重要な経営課題であると認識しており、当社グループの事業活動を通じて排出されるGHG排出削減を推進するためにScope1、Scope2を対象に2013年度を基準年度とし、目標を設定しております。
〈GHG排出削減目標〉
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2030年度目標 |
2050年度目標 |
Scope1(自社の直接排出) |
35%削減(2013年度比) |
カーボンニュートラル |
Scope2(自社の間接排出) |
※Scope1、Scope2は、「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」
(昭和54年法律第49号)、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年法律第117号)で定められた
算定方法及び排出係数により算定しております。
※上記気候関連財務情報開示の詳細については、当社ホームページをご参照ください。
https://www.seino.co.jp/seino/shd/environment/tcfd/
〈GHG排出削減実績〉
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削減率(2013年度比) |
削減量(2013年度比) |
Scope1(自社の直接排出) |
10.93%削減 |
49,991tCO₂ |
Scope2(自社の間接排出) |
7.65%削減 |
3,990tCO₂ |
※上記数値は、国内連結子会社の2023年度実績であります。
また、少子高齢化に伴う労働力不足が進み、業界全体がネットワーク維持に苦戦する中で、当社が定着率を高め盤石なネットワークを維持することで持続可能な物流インフラの提供を可能とするための人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針、当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
当社は、多様な視点や価値観が重要であるとの考えの下、採用時女性比率の向上や外国人採用を含め、ダイバーシティーの推進に努めております。但し、中核事業の輸送事業における商品特性が重量物運搬等も含まれており、労働関係法令により女性の従事が制限されている分野にて、全社員に占める女性社員比率は8.2%となっております。こうした背景により、女性の管理職登用の前段としてまずは管理職候補職種の事務職の新卒者採用において、女性比率30%を目途として取り組んでおります。
また、外国人については、管理職候補の事務職の新卒者採用において、外国人比率5%を目途として取り組んでおり、中核会社である西濃運輸株式会社では前年度は10.0%の採用となりました。
尚、中途採用については従来からその採用数が多く、既に管理職の中途採用者比率は約45%と高い比率となっており、特に今後の目標は定めておりません。かねてより当社の人材確保は中途採用が中心のため今後も継続する中で、人材育成部門によって理念浸透並びに、様々な職種にも対応すべく多様な研修コンテンツをオンデマンドで提供し、全社員の受講を促すことで当社使命である価値創造実現を図っております。
指標 |
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実績 |
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※研修対象となる主要な国内連結子会社の2023年度実績であります。
今後については、特定しております7つのマテリアリティ(重要課題)について、定量目標の策定をすすめ、当社グループ内のサステナビリティ推進および実行につなげて参ります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 法規制について
当社グループの行う輸送事業において営む貨物自動車運送事業及び貨物利用運送事業は、それぞれ「貨物自動車運送事業法」及び「貨物利用運送事業法」の規制を受けております。この他、貨物運送による付帯業務として倉庫業、通関業、航空運送代理店業、保税手荷物保管業、損害保険代理店業等を行っておりますが、それぞれ関連する法令により規制されております。これらの法令の改正により、収受運賃、営業エリア、業務内容等に変更が生じ、当事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの行う自動車販売事業における自動車修理部門は、道路運送車両法に基づく車検制度をはじめ、フロン回収破壊法、自動車リサイクル法等の関連法令にしたがい事業活動を行っております。これら法令に定められた作業の受託による収益は、法律改正によりその作業範囲や頻度が変化し、当事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 車両事故及び荷物事故について
当社グループの行う輸送事業において、路線車両の運行や集配送におけるトラックの運転については、安全に十分配慮しておりますが、重大な不慮の事故が発生した場合、損害賠償等により、当事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。その対応策として、当社グループでは、最新の安全機能を備えた車両を導入するなどハード面の充実に加え、新人研修、安全推進インストラクターの養成などによる安全推進活動の強化、トラックドライバー・コンテストの参加等による運転技術の向上やドライブレコーダー等を活用した教育などソフト面からも安全風土を醸成するよう努めております。
(3) 環境規制について
当社グループの行う輸送事業において、多数の車両を使用しております。近年環境問題への関心が高まる中、当社グループは低公害車の導入や省燃費オイルの利用、エコドライブの推進等、環境対策を自主的に進めておりますが、当社グループの想定を上回る環境規制が実施された場合、当事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) コスト上昇について
当社グループの行う輸送事業において、多量の燃料を使用しております。安定的かつ適正価格で燃料の供給を受けておりますが、原油価格の動向によっては、燃料費が大幅に高騰して、輸送コストが上昇する可能性があり、その場合、当事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。その対応策として、原油価格変動に連動する燃油サーチャージを収受することや、モーダルシフトを推進することによりその影響を最小限とする取り組みを進めております。
(5) 災害、感染症等の発生について
当社グループの行う輸送事業において、車両による商品の輸送が主要な業務であり、また、情報管理を行うコンピュータ等、電気の供給が必要な設備によって事業が営まれております。災害発生時におけるマニュアルの整備、バックアップ体制の構築に取り組んでまいります。しかしながら、地震等の災害や停電の発生等により、輸送経路の遮断、電力供給の停止によるシステム停止等の事態が生じた場合、当事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、感染症の大流行等により、当社グループの営業活動やサプライチェーンに影響を与えるだけでなく、経済活動の停滞に伴い売上の減少が見込まれるなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) トヨタ自動車㈱、日野自動車㈱への依存度について
当社グループの行う自動車販売事業において、トヨタカローラネッツ岐阜㈱は、新車(乗用車)の仕入れをほぼ全面的にトヨタ自動車㈱に依存しており、また、岐阜日野自動車㈱、滋賀日野自動車㈱については、新車(トラック、バス)の仕入れをほぼ全面的に日野自動車㈱に依存しております。したがって、災害、事故等によりトヨタ自動車㈱又は日野自動車㈱の生産が継続的に減少又は停止した場合には、当事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 情報関連事業特有のリスクについて
当社グループの行うその他の事業の中の情報関連事業の提供するサービスは、業務の性格上、顧客の秘匿性が高く、且つ重要性の高い情報に触れることがあります。当社グループでは安定的な運用のためのシステム強化やセキュリティ強化を行っておりますが、当社グループの提供するサービスに誤作動、プログラム上の瑕疵等が存在した場合や、当社グループの通信ネットワークにコンピュータ・ウイルスの感染、コンピュータ・システムへの外部からの不正侵入等により顧客情報の漏洩やデータの消失等の事態が生じた場合、顧客及び当社グループの業務の運営に支障が生じるほか、それらの復旧や損害賠償等により、当事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 顧客等の情報の管理について
当社グループは、物流業務受託、情報処理受託、物品販売等に際し顧客等の情報を取扱っております。コンプライアンスや個人情報管理の徹底など、社内教育を通じて情報管理に努めてまいります。しかしながら、情報の外部漏洩やデータ喪失等の事態が生じた場合、当社グループの社会的信用の低下を招くだけでなく、損害賠償請求を受ける可能性があります。したがって、これらの事象は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 輸送事業におけるITシステムへの依存度について
当社グループにおける輸送事業のうち、貨物自動車運送事業は、個々の輸送取引は少額であるものの、日々、大量に取引されており、その対価である貨物自動車運送収入は、システムにより処理・記録されたデータに基づき計上されております。また、貨物自動車運送収入の基礎となっている運賃計算にあたっては、顧客ごとに、距離または方面別、重量別等で詳細な条件が決定され、当該条件に基づく複雑な計算が行われており、ITシステムへの依存度が非常に高く、その影響は広範囲に及んでおります。そのため、当社グループではITシステム全般が有効に機能するよう方針やルールを整備するとともに、各業務においてシステムが適正に稼働、運用されていることを検証する体制を整備しておりますが、これらのシステムや体制に不備や障害があった場合や、想定通りに処理が行われなかった場合には、当社グループの業務運営に支障が生じることになるほか、当社グループの財務報告にも重要な影響を及ぼす可能性があります。
(10) 人材の確保について
当社グループの輸送事業においては、ドライバーは必要不可欠な戦力であり、少子高齢化に伴う国内労働人口の減少とも相俟って人材の確保は重要な課題となっております。そこで、採用強化だけでなく育成にも軸足を置き、教育コンテンツの充実や免許取得支援等へ注力することに加え、ユニット運行・荷役分離の導入による運び方改革、休日増加や労働時間の短縮といった働き方改革の推進、更には貸付金制度の見直しや施設のリノベーション等社員のES向上策により定着向上に努めております。また、自動車販売事業においても、整備士等要員確保のため、休日増加や労働時間短縮等の働き方改革の推進や先進整備機器を導入するなどES向上策にて定着向上を図っております。しかしながら、人材の確保が計画通りに進まない場合、採用や定着のためのコストに加え、臨時傭員費や外注費の増加などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11) のれんの減損損失について
当社グループは、企業買収に伴い発生したのれんを連結貸借対照表に計上し、その効果の発現する期間を見積り、当該期間にわたり均等償却しております。事業環境の変化等により当初に期待した成果が得られない場合には、当該のれんについて減損損失を計上し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、6,895億25百万円と前連結会計年度末に比べ143億68百万円の減少となりました。負債については、2,539億47百万円と前連結会計年度末に比べ2億18百万円の減少となりました。また、純資産については、4,355億77百万円と前連結会計年度末に比べ141億49百万円の減少となりました。
② 経営成績
当連結会計年度におけるわが国の経済は、国際情勢の不安定化や海外経済の減速に加えエネルギー価格や原材料価格の高止まりなど不確実性が高まる一方、社会・経済活動の正常化が一段と進む中、サービス消費やインバウンド需要の伸長などにより、緩やかな回復基調で推移いたしました。
当社グループの主要な事業にあたる輸送業界では、特に建設関連貨物や消費関連貨物が低調に推移する中、原油および原材料価格の高騰や2024年問題への対応もあり、企業活動を取り巻く環境は厳しい状況が続きました。
このような状況におきまして、当社グループは、成長と適切な資本政策によるPBR1倍超の早期実現に向けてROE8.0%以上を目指すため、「中長期の経営の方向性~ありたい姿とロードマップ 2028~」を策定しました。これに基づき、事業基盤である特積み輸送の優位性を確保しつつ効率化の推進と安定的な成長を図り、またお客様の総合窓口となるべくロジスティクスおよび貸切輸送を成長エンジンに高利益体質へとシフトするなど、成長性、収益性、資本効率のバランスが取れた施策を展開してまいりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は6,428億11百万円(前連結会計年度比1.8%増)、営業利益は234億3百万円(前連結会計年度比17.9%減)、経常利益は244億96百万円(前連結会計年度比25.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は145億61百万円(前連結会計年度比23.4%減)となりました。
セグメント業績は次のとおりであります。
(輸送事業)
当事業におきましては、ロードマップ2028のもと、主力である特積み輸送では、全国をカバーする路線網に加え数多くの拠点や人材を有する強みを活かし、長距離・高重量帯を中心に適正運賃収受に努めるとともに、新規荷主の積極的な開拓を実施するなど取扱貨物量の確保に努め、成長と収益性の改善を図ってまいりました。
輸送事業の中核会社である西濃運輸株式会社では、関東西濃運輸株式会社、濃飛西濃運輸株式会社および東海西濃運輸株式会社を2023年4月1日付で吸収合併し、運行便の効率化を加速させ、中継拠点や集約拠点の見直し、低積載の解消、取扱貨物量に相関した運行体制への刷新などを図ってまいりました。また、収入・取扱貨物量に相関した費用管理をショートインターバルで検証し、成果に繋げてまいりました。その他、Green物流の実現に向け、O.P.P.カンガルー便の積極的な展開を図るとともに、トナミ運輸株式会社と石川県金沢市・愛知県岡崎市において、それぞれ共同配送を開始しております。加えて、日本初の水素燃料電池(FC)大型トラックの実証実験を開始するとともに、水素燃料電池(FC)小型トラックや電気(EV)小型トラックを導入しております。
拠点展開では、西濃運輸株式会社の松戸支店(千葉県流山市)および京都支店(京都市伏見区)の移転、新木場物流倉庫(東京都江東区)、厚木物流倉庫(神奈川県愛甲郡)、岐阜羽島ロジスティクスセンター(岐阜県羽島市)および九州向け中継輸送の専門店となる北大阪ハブ(大阪府茨木市)の新設、セイノースーパーエクスプレス株式会社富山営業所(富山市)の移転を行い、ロジスティクスインフラの増強や中継業務の効率化による収益の拡大を図っております。
この結果、売上高は4,702億37百万円(前連結会計年度比0.9%減)、営業利益は152億73百万円(前連結会計年度比30.2%減)となりました。
(自動車販売事業)
当事業中、乗用車販売におきましては、半導体不足に伴う供給制限から生産が回復傾向となったことから新車販売台数は第3四半期までは伸長しましたが、メーカーの認証不正の影響もあり、第4四半期の販売台数は減少に転じたものの、通期では新車販売台数は前年実績を大きく上回りました。中古車販売でも、新車販売増加による下取り車の増加もあり卸売りが好調に推移し、販売台数は前年実績を大きく上回りました。また、車検・点検・整備・修理などのアフターサービスにも注力してまいりました。なお、お客様満足度の向上はもとより、営業担当者やサービスメカニックの定着・採用に資する従業員満足度の向上のために投資をしております。
トラック販売におきましては、メーカーのエンジン認証不正問題による出荷停止の影響があったものの、一部車型の出荷再開もあり、大型車や中型車の販売が好調に推移し、新車販売台数は前年実績を上回る結果となりました。また、中古車販売においても前年の販売台数を上回りました。
拠点展開では、トヨタカローラネッツ岐阜株式会社において鏡島店(岐阜市)を統合するなど、店舗網の効率化を行っております。
この結果、売上高は1,086億63百万円(前連結会計年度比15.3%増)、営業利益は58億8百万円(前連結会計年度比23.3%増)となりました。
(物品販売事業)
当事業におきましては、燃料や紙・紙製品に代表される物品の販売を行っております。特に家庭紙販売が好調に推移し、燃料販売における販売単価の上昇も加わり、売上高は357億47百万円(前連結会計年度比6.7%増)、営業利益は9億48百万円(前連結会計年度比18.5%増)となりました。
(不動産賃貸事業)
当事業におきましては、所有する土地および跡地利用において、ポテンシャルを最大限に活かし、地域において利用価値が高い事業へのトランスフォームを進めております。
その結果、売上高は22億46百万円(前連結会計年度比2.5%増)、営業利益は16億48百万円(前連結会計年度比2.1%増)となりました。
(その他)
当事業におきましては、情報関連事業、住宅販売業、建築工事請負業および労働者派遣業などを行っております。売上高は259億17百万円(前連結会計年度比3.6%減)となりましたが、営業利益は13億94百万円(前連結会計年度比18.8%増)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度に比べ256億86百万円減少し、753億78百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、前連結会計年度に比べ91億66百万円増加し、484億41百万円となりました。これは主に、仕入債務の増減額が増加したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ40億80百万円減少し、255億9百万円となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出が減少したこと、投資有価証券の取得による支出が減少したこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ404億73百万円増加し、486億46百万円となりました。これは主に、自己株式の取得による支出が増加したこと、配当金の支払額が増加したこと等によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループの扱う輸送商品及び販売品目は広範囲かつ多種多様であり、セグメントごとに画一的に表示することは困難であります。
このため、生産、受注及び販売の実績については、「② 経営成績」における各セグメント業績に関連付けて示しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末における資産合計は6,895億25百万円と前連結会計年度末に比べ143億68百万円(2.0%)の減少となりました。流動資産の残高は2,303億69百万円と前連結会計年度末に比べ250億62百万円(9.8%)減少しました。自動車販売セグメントにおいて新車在庫が増加したことにより棚卸資産が増加したものの、自己株式の取得や配当金の支払等により現金及び預金が減少したことなどが主な要因であります。固定資産の残高は4,591億55百万円と前連結会計年度末に比べ106億94百万円(2.4%)の増加となりました。保有する投資有価証券の時価上昇に伴い、その税効果により繰延税金資産は減少したものの、投資有価証券が増加したことなどが主な要因であります。
(負債合計)
当連結会計年度末における負債合計は2,539億47百万円と前連結会計年度末に比べ2億18百万円(0.1%)の減少となりました。流動負債の残高は1,198億38百万円と前連結会計年度末に比べ68億71百万円(6.1%)の増加となりました。当連結会計年度末が休日であった影響により、営業未払金及び買掛金が増加したことなどが主な要因であります。固定負債の残高は1,341億9百万円と前連結会計年度末に比べ70億90百万円(5.0%)の減少となりました。退職給付信託の年金資産残高の増加により退職給付に係る負債が減少したほか、長期借入金が減少したことなどが主な要因であります。
(純資産合計)
当連結会計年度末における純資産の残高は4,355億77百万円と前連結会計年度末に比べ141億49百万円(3.1%)の減少となりました。親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加した一方、自己株式の消却及び配当金の支払により利益剰余金が減少したことが主な要因であります。
2)経営成績
(売上高)
当連結会計年度の売上高は6,428億11百万円と前連結会計年度に比べ113億4百万円(1.8%)の増加となりました。輸送事業においては、ロジスティクスの伸長に加え、新規連結の効果はあったものの、特積みの物量が3.5%減少したことにより、売上高は4,702億37百万円(前連結会計年度比0.9%減)となりました。自動車販売事業では、メーカーの生産台数の回復により新車販売台数が増加したことから、売上高は1,086億63百万円(前連結会計年度比15.3%増)となりました。物品販売事業においては、燃料販売における販売単価の上昇に加え、家庭紙販売やふるさと納税返礼品が堅調に推移したことから、売上高は357億47百万円(前連結会計年度比6.7%増)となりました。また、不動産賃貸事業では、売上高は22億46百万円(前連結会計年度比2.5%増)、その他の売上高は259億17百万円(前連結会計年度比3.6%減)となりました。
(営業利益)
当連結会計年度の営業利益は234億3百万円と前連結会計年度に比べ50億98百万円(17.9%)の減少となりました。輸送事業においては、適正運賃の収受に努めるとともに、運行便の全体効率化に取り組んだものの、消費者の購買減により取扱貨物量が減少した影響により営業利益は152億73百万円(前連結会計年度比30.2%減)となりました。一方、自動車販売事業においては、販売台数の回復による売上増加に加え、トラック販売でのメンテナンス利益の増加により、営業利益は58億8百万円(前連結会計年度比23.3%増)となりました。
(営業外損益及び経常利益)
当連結会計年度の経常利益は244億96百万円と前連結会計年度に比べ81億92百万円(25.1%)の減少となりました。前連結会計年度に比べて持分法投資利益が大幅に減少したほか、営業外費用において自己株式取得費用が増加したことが主な要因であります。
(特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は145億61百万円と前連結会計年度に比べ44億51百万円(23.4%)の減少となりました。
特別利益において受取補償金が増加したことや西濃運輸株式会社旧川崎支店の土地売却等により固定資産売却益が増加したほか、法人税、住民税及び事業税は減少したものの、経常利益が減少したことが影響しております。
b.経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2023年6月12日の取締役会において、中長期の経営の方向性「ありたい姿とロードマップ2028」を決定しており、成長の道すじと資本政策を中心とした企業価値創造の道すじを策定しております。日本が直面している少子高齢化や人手不足、環境問題などの社会課題に対し、持続的な物流ネットワークを構築するため、スローガンを『Team Green Logistics ~共に創り 未来に貢献する~』として、業界・企業の垣根を超えたオープン・パブリック・プラットフォーム(O.P.P)によりGreen 物流を展開することで、社会価値と経済価値を高めてまいります。
本ロードマップにおいて、PBR1倍超の早期実現に向けて、稼ぐ力の向上、積極的な株主還元で、3年から5年以内にROE8%達成を目指しております。具体的な内容については、以下のURLをご参照ください。
https://www.seino.co.jp/seino/media/pdf-lib/shd/ir/account-settlement/202403/202403_1setsumei.pdf
なお、当連結会計年度のROEは3.3%となっております。目標とするROE8%を達成するため、ロードマップに掲げた施策の実現に向けて取り組みを進めて参ります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性
資金の財源に関しましては、自己資金を充当することを原則としておりますが、当面の資金需要と設備投資計画に照らして、必要な資金を金融機関からの借入金及び社債等により調達しております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、753億78百万円となっており、有利子負債残高は222億42百万円、無利息の転換社債型新株予約権付社債残高は250億99百万円となっております。
当社は、額面総額250億円の2026年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債を2021年3月に発行しました。調達資金の使途については、ロジ・トランス施設(トラックターミナルとロジスティクス施設を一体化させた施設)の建設及び建設用地取得等の、輸送事業における国内の設備投資資金に充当する予定であります。
当社グループは、グループ全体の資金を有効活用するため、キャッシュ・マネジメント・システムを採用しており、連結子会社の支払代行業務を行っている他、各連結子会社の報告に基づき、グループにおける重要な資金繰りの予定について当社で把握しております。また、一時的な資金の不足については、取引銀行より当座借越枠を含め、十分な借入金の与信枠の設定を受けており、支払期日に支払を実行できなくなるリスクを回避し、必要資金を適時に確保するための管理体制を整えております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としており、重要なものは以下の通りとなります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
(固定資産の減損)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、その減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討してまいりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、追加の減損損失の計上が必要となる可能性があります。
(退職給付債務及び退職給付費用)
退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率等に基づいて計算しております。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定しております。割引率やその他の見積りの変更は、将来の退職給付債務及び退職給付費用に影響を与える可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいて課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
当社は、2024年6月18日開催の取締役会において、三菱電機株式会社が保有する三菱電機ロジスティクス株式会社(以下「三菱電機ロジスティクス」という)の普通株式の一部(所有割合66.6%)の当社による取得(以下「本取引」という)に係る株式譲渡契約書及び本取引後の三菱電機ロジスティクスの事業運営等に係る株主間の取り決めを定めた株主間契約書の締結を決議し、同日付で当該契約を締結いたしました。
なお、当該契約に関する事項の概要は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。