第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

ここに記載した将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、入手可能な情報に基づいて当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営の基本方針

「インターネットを活用し、健康で楽しく長生きできる人を1人でも増やし、不必要な医療コストを1円でも減らすこと」―――それがエムスリーの願いであり、事業の目的です。社名のエムスリーは、医療(Medicine)、メディア(Media)、変容(Metamorphosis)の3つのMを表しています。インターネットというメディアの力を活かして、医療の世界を変えていくことが、当社の設立の志です。

上記の目的を実現する上で、当社グループでは主に4つのステークホルダーを意識して、経営を行っています。

・株主に対しては、企業価値の最大化で応えると同時に、当社グループへの投資が医療の改善に役立ち、社会的に意義があると感じてもらえるような経営を行います。

・顧客である医療従事者に対しては、インターネットという媒体を活用して、良質な医療情報をいち早く研究や臨床の現場に届け、医療の改善、変革に寄与することを目指します。また、同じく顧客である医療関連会社等に対しては、対価以上の価値に加えて、驚き、感動、喜びを感じてもらえるサービスを提供し続けることを目指します。

・従業員に対しては、個々人が成長、活躍できる場を整備し、会社の価値向上に貢献したスタッフには、厚く報いることができる経営を行います。

・社会に対しては、上記理念の通り「インターネットを活用し、健康で楽しく長生きできる人を1人でも増やし、不必要な医療コストを1円でも減らすこと」の実現を目指します。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループでは、企業価値を計る指標として、営業キャッシュ・フロー並びに1株当たり当期利益を重視しています。また、資本効率については、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)を重視しています。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

現在、当社グループの国内における事業は、医療従事者専門サイト「m3.com」の運営と、このサイトを通じて繋がる33万人以上(2024年4月26日現在)の医師会員を含む、医療従事者会員へのアクセスを中核に展開しています。

「m3.com」は、「More Contributions to More Doctors」をスローガンに掲げ、「医師をはじめとする医療従事者が抱える課題を『あらゆる方法で解決する』プラットフォーム」を目指し、専門医療情報に特化したニュース、サーチエンジン、ディレクトリ、文献検索、会員専用コミュニティサイト、独自コンテンツ等を会員に対して無料で提供することにとどまらず、医療現場の課題を会員の皆様から直接募集し、その課題をエムスリーの持つ多種多様な経験・専門性の高いスキルを有する人材、ビッグデータ、プロダクトといったアセットを提供し、活用いただくことで解決する施策等を実施しています。

メディカルプラットフォームでは、「m3.com」のプラットフォーム上で会員医師が主体的、継続的に高頻度で情報を受け取れる「MR君」ファミリーの各種サービスに加え、会員医療従事者を対象とした調査サービス、会員へ医療情報以外のライフサポート情報を提供する「QOL君」等の一般企業向けマーケティング支援サービス等、顧客の意図や用途により選べるサービスメニューを提供しています。またグループ各社を通じて、次世代MR「メディカルマーケター」の提供や医療系広告代理店等の事業の展開、加えてAI搭載クラウド電子カルテ「エムスリーデジカル」や患者の診療体験向上に繋がる「デジスマ診療」等を提供し診療プロセス全体の生産性向上に寄与する医療現場DX化支援事業の拡大も進めています。

エビデンスソリューションでは、臨床開発業務の支援及び大規模臨床研究の支援を行うCRO、治験実施医療機関において治験業務全般の管理・運営を支援するSMO、臨床開発・臨床研究等の実施に必要な被験者の募集並びに周辺業務の支援を行うPRO等の事業を、グループ各社を通じて展開しています。

キャリアソリューションでは、エムスリーキャリア株式会社において、医師、薬剤師向けの求人求職支援サービスの展開を進めています。

サイトソリューションでは、医療機関の運営をサポートする各種サービスを展開しています。

さらに、一般の方々からの健康や疾病に関する質問に「m3.com」登録医師が回答する「AskDoctors」(https://

www.AskDoctors.jp/)や医療福祉系国家試験の対策等の事業を行うエムスリーエデュケーション株式会社等においてもサービス展開を進めています。

海外においては、米国で、医療従事者向けウェブサイト「MDLinx」を運営し、この会員基盤を活かした製薬会社向けサービスの他、医師向けの転職支援サービスや治験支援サービスも展開しています。欧州では、英国で医師向けウェブサイト「Doctors.net.uk」において製薬会社向けサービスの展開を進める他、フランス、ドイツ、スペインでVidal Groupを通じて医薬品情報データベースの提供を行うとともに、eDoctores Soluciones, S.L.を通じて医療従事者向け診療現場モバイルアプリiDoctusをスペインおよび中南米で提供しています。アジア地域においても順調に事業を拡大しています。

また、日本、米国、欧州、中国、韓国をはじめ、当社グループが世界中で運営する医療従事者向けウェブサイト及び医師パネルに登録する医師は合計で約650万人となっており、医師パネルを活用したグローバルな調査サービスの提供も行っています。

 

(4) 優先的に対処すべき課題

当社グループでは、次の5項目での成長、展開に重点を置いた経営を進めていきます。

① 「m3.com」サイトの一層の価値向上

サイトの内容、機能の充実を進め、より多くの医療従事者会員からの、より多くのトラフィックを獲得することで、この「場」を活かして提供する他の様々なサービスの価値を底上げしていきます

② メディカルプラットフォーム事業をはじめとした既存事業の更なる成長

「MR君」ファミリーをはじめ、製薬会社や医療機関等の顧客への各サービス展開に加え、疾病、医療課題を解決し、医療の全体最適の実現に向けて、経営資源を投入していきます。

③ 新規事業の立ち上げ

「双方向コミュニケーションで繋がった、医師をはじめとする医療従事者会員」のプラットフォームから生み出される事業機会は多岐にわたり、順次事業化を進めていきます。また、グループ各社の事業拡大とグループ内シナジー効果の最大化を図ります。

④ 海外展開

日本と同様に、海外においても医療従事者向けプラットフォームを活かした製薬会社向けマーケティング支援、調査、医師向け転職支援、治験事業等のサービスを展開しています。日本で開発したサービスの海外展開を進めることにとどまらず、その国のニーズにあった独自サービスの開発も進めていきます。

⑤ エコシステムシナジーの実現

当社グループはすでに多岐にわたる事業を展開しており、その事業同士がシナジーを生み出すポテンシャルも多く有していると考えます。また、他の取り組みにおいて参入する事業領域が拡大すると、それに従いポテンシャルも拡張していくため、グループとしてのエコシステムがさらに強化されます。これにより、グループ全体でのシナジーが一層発揮され、競争力が高まる構造的良循環を強化していきます。

 

なお、当社グループでは成長を具現化、促進する手段として、必要に応じて提携、買収、資本参加を進めていきます。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組の状況は、次の通りです。なお、文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、さまざまな要因により実際の結果とは大きく異なる可能性があります。

 

(1) ESG戦略

① 戦略およびマテリアリティ

当社グループは「インターネットを活用し、健康で楽しく長生きする人を1人でも増やし、不必要な医療コストを1円でも減らすこと」をミッションに掲げています。

医療分野は、この地球上に生きるすべての方にかかわりがあり、世界のGDPに占める割合も大きく、社会的意義の高い事業領域です。一方で、この分野には医療従事者や患者にとどまらず、複雑かつ多様なステークホルダーが存在することに加え、バリューチェーンも多岐にわたり、それぞれに高い専門性・想像力・解決への執着が求められます。

当社グループは、日本に限らず世界中の難易度の高い医療課題に向き合うべく、当社グループだからこそ選択することができるユニークなアプローチで、課題解決・業界の改善につながる、価値あるサービスやプロダクトを創出していくとともに、各種取り組みを通じて、我々が掲げるミッションの実現を目指し、すべての人の健康と福祉の充実、社会の持続的な発展に貢献していきたいと考えております。

このような考えのもと、2022年に当社グループのマテリアリティ(重要課題)を特定しました。当社の経営戦略やミッションとの関連性を評価し、取締役会での議論を経て決定しております。

 

<E>

温室効果ガス排出量

エネルギー管理

<S>

顧客のプライバシー/データセキュリティ

医療アクセスの拡大

サービス・製品の品質と安全性

労働慣行および従業員の健康と安全

従業員エンゲージメント、多様性とインクルージョン

<G>

ビジネスモデルの優位性・柔軟性

経営倫理

これらのマテリアリティの取り組みにあたり、個別の項目に対して定量的な評価を行っています。この指標の一部を、当社HPを通じて社外にも公表し、当社グループの取り組みの進捗を確認するとともに、世界的な情勢や社会の要請を踏まえ適宜見直しを実施しております。

 

② ガバナンス

当社グループは、社会的課題の解決に向け、事業機会の拡大と価値あるサービスやプロダクトの創出を目指しております。また、これらの価値創造の活動を支える重要な資本として、当社グループが有する人的資本・プラットフォーム・経営基盤を一層強化・整備していくことが重要と考えており、取締役会等においても、定期的にサステナビリティ、ESGの方針・取り組みにつき議論を行い、ESGに関する取り組みのレビューやリスク管理を行っております。

また、当社は組織が小規模かつ簡素で、きわめて簡潔な業務執行体制を敷いております。ガバナンス・内部統制においては、この主たる業務執行体制の運用の徹底に主眼を置いております。このような背景のもと、当社における適正な業務の執行を確保するため、以下のような体制を整備しております。詳細は当社グループのコーポレート・ガバナンス報告書に記載しております。

 

a.取締役及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制

b.損失の危険の管理に関する規程その他の体制

c.取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制

d.取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制

e.子会社の取締役の職務の執行に係る事項の当社への報告に関する体制その他の当社グループにおける業務の適正を確保するための体制

f.監査等委員会がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における当該従業員に関する事項

g.監査等委員会の職務を補助すべき使用人の取締役からの独立性に関する事項及び監査等委員会の当該使用人に対する指示の実効性の確保に関する事項

h.当社の取締役及び使用人並びに子会社の取締役、監査役等及び使用人又はこれらの者から報告を受けた者が監査等委員会に報告をするための体制

i.監査等委員会又は監査役へ報告をした者が当該報告をしたことを理由として不利な取扱いを受けないことを確保するための体制

j.監査等委員の職務の執行について生ずる費用の前払又は償還の手続その他の当該職務の執行について生ずる費用又は債務の処理に係る方針に関する事項

k.その他監査等委員会の監査が実効的に行なわれることを確保するための体制

 

 

 

③ リスク管理

ESGの重要性に鑑み、リスク低減と事業機会及びエコシステムシナジーの創出機会を着実に捉えるため、リスク管理及び機会管理を強化しています。

リスク管理においては、リスクの重要性を経営会議・取締役会等で定期的にモニタリングしております。各部門やグループ会社で管理可能なリスクは、各組織が中心となって対応しています。機会管理においては、当社グループ全体で重点テーマを管理しつつ、グループ全体のシナジーについて検討する部署をオーナーとし、優先順位の設定とミッションに適う取り組みを推進する仕組みを構築し、戦略的な事業展開につなげています。

 

(2) 気候変動への対応

① 概要

当社グループは環境に配慮した経営を実践しております。当社グループの手掛けるビジネスは、インターネットを活用したサービス提供が中心となっており、固定資産の保有も限定的なため、環境負荷の小さい事業です。当社が提供しているサービスを通じて医療業界全体のDX化に貢献しており、さらなる環境負荷の低減を支援することができると考えております。

また、当社グループのオペレーションにおいても、リモートワークを基本とした新しい働き方を導入するとともに、電子契約や社内書類の電子化によるペーパーレス化推進により、ヒトやモノの移動、紙資源利用の削減に取り組んでおります。また、エネルギー効率のよいサーバ等の調達をはじめとする省エネ推進等の取組を進めています。

 

② 具体的な取り組み

当社グループは気候変動への対応を重要な経営課題の一つと捉え、2021年には、気候変動に対する取組の一環として、TCFD提言への賛同を表明しました。

現在グループ会社全体での二酸化炭素排出量について、SCOPE1・2に該当する排出量の算定を進めるとともに、SCOPE3の算定についても2025年3月期中に取り組みを開始する予定です。なお、当社の二酸化炭素排出量については、当社HPで公表しております。

 

(3) 人的資本に関する戦略並びに指標及び目標

① 人的資本に関する戦略

当社グループは、多様な人材こそが当社及びグループ全体の強みの源泉であるとの考えから、性別、年齢、国籍、人種、宗教、障害の有無等による制限を受けることなく、それぞれの社員が持つ可能性を引き出せることが重要と考えています。この考えは採用方針のみならず、入社後も、多様な状況下にある社員が働きやすく、かつ働きがいのある職場環境の整備方針の前提にもなっています。

また、それぞれの社員が持つ可能性を十分に引き出すため、一人ひとりが生き生きと、自律的かつ自由にキャリアを描けるような組織づくりに注力しています。特に、自ら新たな価値を創り出す社員が高く評価されることで、結果として医療業界がより良い方向に向かい、個人も会社も成長する形が当たり前に実現できる組織を目指しています。

 

② 指標及び目標

 

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

全取締役に占める女性取締役比率

※1、2

33%

(9名中3名)

44%

(9名中4名)

33

(12名中4名)

女性管理職比率 ※3

35%

37%

39

女性従業員比率 ※3

58%

57%

57

有給休暇取得率 ※1

74%

84%

80

※1 エムスリー単体

2 期中に行われた株主総会での選任結果を反映

3 2022年3月期はエムスリー単体及び国内連結子会社における比率

  2023年3月期及び2024年3月期はエムスリー単体及び連結子会社における比率

今後の目標は以下の通りです。

・女性取締役比率(エムスリー単体)について、40%を維持

2030年までに女性管理職比率を40

人的資本経営に関連した取り組み事例については、当社HP(https://corporate.m3.com/esg)にも掲載しております。

3【事業等のリスク】

当社グループの事業運営上リスク要因となる主な事項、及びリスク要因には該当しなくとも、投資者の投資判断上重要であると考えられる事項は下記の通りです。

なお、ここに記載した事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが認識、判断したものであり、全てのリスク要因が網羅されているわけではありません。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、入手可能な情報に基づいて当社グループが判断したものです。

 

(1) 事業環境について

① インターネットについて

当社グループは、インターネットを利用した医療関連事業を展開しています。インターネットの利用に関する新たな規制やインターネットビジネス関連事業者を対象とする法的規制等の導入、その他予期せぬ要因によって、インターネットの利便性が損なわれた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

② 医療及びヘルスケア市場について

現在、当社グループの売上高の多くが、医療関連会社からのものとなっています。当社グループのサービスの多くは新たな需要を喚起するもので、医療費全体の動向に大きく左右されるものではありませんが、市場の停滞、縮小や新たな市場動向に当社グループが対応できない場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

当社グループの主要な顧客である製薬会社においては、グローバルなレベルでの企業間競争が展開され、再編の動きが続いています。企業間競争は当社グループが提供する各種サービスの採用を加速する可能性がある一方、再編された既存顧客による契約見直しの可能性もあり、その場合には当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(2) 事業運営について

① 個人情報、顧客情報の保護について

「m3.com」登録会員等のプライバシーを保護するため、当社グループではプライバシーポリシーを制定し、当社グループの従業員が個人情報を取扱う際には、作業プロセスをマニュアル化し、複数の従業員がチェックを行う等、個人情報の取扱いには慎重を期したサイト運営を行っています。しかしながら、個人情報の流出等の重大なトラブルが当社グループ、当社グループの業務提携先もしくは当社グループの顧客企業で発生した場合には、個人情報保護法への抵触、損害賠償の請求や信用の低下等により、当社グループの事業及び業績に重大な影響を与える可能性があります。

当社グループは、互いに競合する複数の医療関連会社に対してサービスを提供しています。提供に際して、顧客より事業に関する機密情報を受け取る場合があり、その取扱いには社内ルールを設け、当社グループの従業員が機密情報を取扱う際には、作業プロセスをマニュアル化し、複数の従業員がチェックを行う等、細心の注意を払っています。しかしながら、機密情報の流出等の重大なトラブルが当社グループで発生した場合、損害賠償の請求や信用の低下等により、当社グループの事業及び業績に重大な影響を与える可能性があります。

これらのリスクを低減するため、情報セキュリティを統括する組織体を設置し、業務手順の明文化や定期的な監査を行っています。

 

② 知的財産権について

当社グループが提供する各種サービスは登録会員数の多さやソフトウェアの優位性により差別化されており、特許の有無による影響は大きくないと思われますが、当社グループでは提供する各種サービスに関する特許を複数取得しています。

当社グループでは当社グループの持つ知的財産権を侵害されないよう細心の注意を払っていますが、他者からの侵害を把握しきれない、もしくは適切な対応ができない場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

当社グループが各種サービスを展開するにあたっては、他社の持つ特許権、商標権等の知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払っていますが、万が一、他社の知的財産権を侵害した場合には、多額の損害賠償責任を負う可能性があります。

当社グループのサービス分野において、他社開発の技術あるいはビジネスモデルが標準化された場合、これらの特許権者に対してライセンス料負担が生じる可能性、ライセンス供与自体を受けられない可能性等があり、当社グループの事業及び業績に重大な影響を与える可能性があります。

 

③ 技術、システム面のリスクについて

当社グループは、各種サービスを行うためにインターネットを利用したコンピュータシステムを構築しているため、ハードウェア又はソフトウェアの不備、アクセスの急激な増加、人的ミス、インターネット回線のトラブル、コンピュータウィルス、停電、自然災害、その他予測困難な様々な要因によって当社グループのシステムに被害又は途絶が生じた場合、当社グループの業績に重要な影響を与える可能性があります。また、当社グループの想定しない新しい技術の普及等により技術環境が急激に変化した場合、当社グループの技術等が陳腐化し、当社グループの事業展開に影響を与える可能性があります。これらのリスクを低減し、サービス水準の維持向上を図るため、適宜新しいシステム技術やセキュリティ関連技術等を取り入れながら、継続的な設備投資並びに保守管理を行っています。

 

④ ポイントシステムについて

当社グループは、一部サービスにおいて、医学書等と交換可能なm3ポイントを会員に対して付与しています。このポイントが不正な操作等により、当社グループが正式に発行した以上に集められ、交換を求められた場合、当社グループの収益を圧迫する可能性があります。また、ポイントと交換された商品の欠陥、トラブル等により、当社グループの責任が問われる可能性があります。

 

⑤ 各種規制について

a.メディカルプラットフォーム事業に対する規制について

当社グループにおいてマーケティング支援サービス等を展開する上で、当社グループの顧客が制約を受ける医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律における広告の制限等の規制、又は公正取引委員会による「医療用医薬品製造業における景品等の提供の制限に関する公正競争規約」等の医薬品業界特有の各種規制については、当社グループでは特段の注意を払っています。しかしながら、業界の様々な動きに対して、法令や業界団体による規制等の改廃、新設が行われた場合には、当社グループの業績及び今後の事業展開に影響を受ける可能性があります。

 

b.エビデンスソリューション事業に対する規制について

当社グループが提供するエビデンスソリューション事業に関しては、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律、臨床研究法その他の法令等による規制を受けています。これらの規制等の改廃、新設が行われた場合には、当社グループの業績及び今後の事業展開に影響を受ける可能性があります。

 

c.人材サービス事業に対する規制について

当社グループは、一部の子会社において、必要な許認可を取得した上で、労働者派遣事業又は有料職業紹介事業を展開しています。これらの子会社は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律、職業安定法その他の関係法令による規制を受けていますが、関係法令に違反した場合等には、当該事業の停止又は廃止又は許可の取消等の処分を監督官庁より受けることがあります。現時点において、当社グループにおいて、法令違反等の事実はないものと認識していますが、今後何らかの理由により監督官庁による処分を受けた場合には、当社グループの事業活動及び業績に影響を与える可能性があります。また、これらの規制等の改廃、新設が行われた場合には、当社グループの業績及び今後の事業展開に影響を受ける可能性があります。

 

d.訪問看護及び訪問介護等に必要な指定に対する規制について

当社グループは、訪問看護及び訪問介護を行うために「健康保険法」並びに「介護保険法」に基づく、各サービス事業者の指定を各都道府県知事から受けています。それぞれの指定には、資格要件、人員要件、設備要件及び運営要件が規定されており、これらの規定に従って事業を運営しています。当社グループでは、看護師・介護士等の有資格者の入退社や新規施設の開設に伴い、自治体等の基準の確認及び変更に必要な届け出を怠らないよう細心の注意を払って運営しており、現時点において、事業運営の継続に支障を来すような状況は生じていません。しかしながら、これらの基準を遵守できなかった場合や診療報酬及び介護報酬等の不正請求が認められた場合には、指定の取消又は停止等の処分を受けるおそれがあります。その場合には、当社グループの業績及び今後の事業展開に影響を受ける可能性があります。

 

 

e.海外における法的規制について

海外市場においては、医師へ伝える情報の内容の規制、又は、ギフトや謝礼、医薬品サンプル等の供与に関する規制等、様々な規制があります。想定外の規制等に当社グループが何らかの対応を強いられた場合、当社グループの業績及び今後の事業展開に影響を受ける可能性があります。

その為、当社グループは、海外において医療関連サービス事業を展開するに当たり、現地弁護士への事前相談を行う等、特有の法的規制等に細心の注意を払っています。

 

(3) 事業内容について

① メディカルプラットフォーム事業及び海外事業について

a.競合、代替について

当社グループは、薬剤の処方を行う医療従事者に対して製薬会社が行うマーケティング活動の支援サービスを展開しています。医薬品の処方を医療従事者ではなく患者が直接行うようになる、また遺伝子操作等の医薬品に依存しない治療の比率が拡大する等、医療システムが抜本的に変わった場合、当社グループの提供するサービスが陳腐化する可能性があります。

当社グループの提供するマーケティング支援サービスは、直接、又は間接的に他社と競合する場合があります。当社グループの最大の強みは、国内医師会員33万人以上を含む医療従事者会員とインターネットを通じて双方向コミュニケーションで繋がっていることで、これに提供する各種サービスに関する特許や製薬業界における実績等を加えると、後発他社に対する新規参入障壁は比較的高いと認識しています。しかしながら今後、市場規模の拡大に伴い、「MR君」の代替となる他のマーケティングツール等が普及する可能性、他企業等が新規参入してくる可能性、並びに当社グループの顧客が業務を自ら手がける可能性等があり、その場合、当社グループの収益を圧迫する可能性があります。

 

b.マーケティング支援サービスについて

当社グループのマーケティング支援サービスには、顧客と会員の間でのメッセージのやりとりを伴うものが多くあります。メッセージの内容に関する責任は基本的に発信者自身が負いますが、当社グループのサービスを使った顧客、会員等による発信情報が当事者もしくは第三者に損害を与えた場合、それに関連して当社グループの責任が問われる可能性があります。また、一部サービスにおいて、医療に関する情報コンテンツを提供しています。これらのコンテンツに間違いもしくは誤解を招く表現等があった場合、その責任を問われる可能性があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループのマーケティング支援サービスに不具合があった場合、原則その責任の範囲は契約金額が上限であり、機会損失は補填しないと契約に記載しています。また、サービスの内容、対象、責任範囲等には細心の注意を払っており、契約、規約等でその責任範囲を限定しています。

 

② エビデンスソリューション事業及び海外事業について

a.大学、研究者との関係について

当社グループは、大学や医療関係者との共同研究等による技術指導を得ています。知的財産等の権利化、研究の委託や研究成果の対価の享受等における国立大学との関係は、国立大学法人法等の改廃又は関係当局による運用の変化等の影響を受ける可能性があります。

当社グループでは共同研究等を行う医療従事者に対し、技術指導の対価として謝金を支払うことがあります。技術指導を行う医療研究者等は各々所属する大学当局等より兼業の承認を得ることが前提となっており、当社グループでは原則として兼業の承認を確認する等の社内手続きを経た上で謝金の支払を行っています。しかしながら、このような謝金につきましては、明確なガイドラインが示されていない部分もあり、業務の範囲の解釈等の違いにより、承認を逸脱する様な謝金の支払であると解釈された場合においては、社会的批判等により当社グループの事業に影響を与える可能性があります。

 

b.損害賠償について

当社が支援を受託する臨床試験等(治験、大規模臨床研究等)の実施に起因して被験者に健康被害が生じる可能性があります。このような場合は、基本的には臨床試験等の依頼者が責任を負うことになります。しかしながら、当社グループが支援を受託した臨床試験等において、このような健康被害が明らかに当社グループに起因して生じた場合には、損害賠償等の責任を負う可能性もあり、その結果、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループが支援を受託した臨床試験等において、当社グループが遵守すべき各種規制に反した場合には、当該臨床試験等により回収した症例の信頼性が失われ、顧客である製薬会社等に甚大な損害を与える可能性があります。この場合には信用の低下や損害賠償等の責任を負うことにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループが製薬会社等又は医療機関等に対し派遣する従業員の過失等により、健康被害が生じた場合や各種規制に違反した場合にも、上記と同様に、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

c.サービス内容について

エビデンスソリューション事業においては、学会、研究会等、一旦確定した予算の増額が困難な主体が顧客となっている場合があります。予測困難な様々な要因によって、予算確定後に追加費用が発生した場合、当社グループが追加費用等を負担せざるを得なくなる可能性があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループが受託する臨床試験等には、契約期間が長期にわたるものがあります。予定通りに研究が進捗しない場合や、受託期間中に何らかのトラブルが発生した場合、また顧客の信用状態が悪化した場合等には、契約の中途解約や、売上債権の回収に支障をきたす等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

③ キャリアソリューション事業について

当社グループは医療従事者向け人材紹介サービスを展開しています。人材紹介事業特有の商慣行を踏まえ、当社グループでは、紹介した求職者が求人企業に入社した日付を基準に売上を計上しますが、当該求職者が入社から一定期間内に自己都合により退職した場合には、その退職までの期間に応じて紹介手数料を返金することとしています。当社グループは、求人企業と求職者の双方のニーズを十分に検討の上で紹介を進め、また、過去の返金実績率等を勘案して売上高を計上しています。当社グループの想定した返金率を上回る返金が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

④ サイトソリューション事業について

a.訪問看護及び訪問介護の医療及び介護報酬について

当社グループは「医療保険制度」「介護保険制度」「障害者総合支援法」のそれぞれに基づく訪問看護及び訪問介護を行っています。このうち「医療保険制度」に基づく診療報酬は2年に1度、「介護保険制度」に基づく介護報酬は3年に1度の頻度で制度の改定が行われます。今後、診療報酬及び介護報酬の見直しにより、大幅な改定が行われた場合には、当社グループの事業活動及び業績に影響を与える可能性があります。

 

b.利用者の逝去、退去について

当社グループは行政や医療機関等との連携によって、安定的な利用者の確保に努めており、高齢者の増加とともに市場が拡大し需要が増加している状況にあると認識しています。一方で特に在宅ホスピス事業はターミナルケアに特化した事業であることから、当社が想定する以上の利用者のご逝去、退去等が続いた場合には、当社グループの事業活動及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 医療機器関連事業について

当社グループでは医療機器の製造、販売を行っています。医療機器の製造販売及び販売に関しては、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律その他法令等による規制を受けています。これらの規制等の改廃、新設が行われた場合には、当社グループの業績及び今後の事業展開に影響を受ける可能性があります。また、当社グループが製造販売業者として取り扱う製品について不具合等が発生した場合は、損害賠償等の責任を負う可能性もあり、その結果、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

⑥ 電子カルテ、ゲノム・パーソナル医療関連検査等の販売事業について

当社グループが開発・販売する電子カルテシステムや、当社グループが扱うゲノム・パーソナル医療関連検査を始めとする医療関連情報は、医療機関において利用されるものであり、患者の生命身体に直接関わる情報であることから、当社グループは細心の注意をもって開発、導入、保守、情報管理等を行っています。しかしながら、予測し難い欠陥や不具合等が発生した場合には、信用の低下や損害賠償等の責任を負うことにより、当社グループの事業活動及び業績に影響を与える可能性があります。

 

 

(4) 組織体制について

① 人材の確保と育成について

当社グループの事業を拡大するには、目的達成のために主体的に行動できる企業家的な人材の確保とその育成が欠かせません。しかしながら、人材の確保が思うように進まない場合や、社外流出等何らかの事由により既存の人材が業務に就くことが困難になった場合には、当社グループの事業活動に支障が生じ、業績に悪影響を与える可能性があります。

 

② 特定の事業所への集中について

現在、当社グループの従業員の多くは近接した事業所に勤務しているため、自然災害や火災等の大きなアクシデントが起きた場合、損害が集中しやすく、事業の継続に影響が出る可能性があります。

これらのリスクを低減するため、災害発生時に事業活動の早期復旧を可能にするための事業継続計画を策定しています。

 

(5) 関連当事者との取引等について

① ソニーグループ株式会社(以下「ソニー」という)について

2024年3月31日現在、当社の筆頭株主であるソニーは、当社議決権の33.9%を所有する、当社の主要株主となっています。当社グループは現在、自主独立した経営を行っていますが、当社グループの業績は、主要株主たるソニーの今後の経営戦略の影響を受ける可能性があります。またソニー及びその関連会社(以下「ソニーグループ」という)の評判が何らかの理由で著しく損なわれた場合、それが当社グループに起因するものでなくても、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

② ソニーグループ内での競合について

ソニーグループ内には当社グループと同一のサービスを行っている会社はなく、競合関係にないと認識していますが、ソニーグループの動向次第では、今後当社グループと競合するサービスが提供される可能性があります。

 

③ ソニーグループとの人的関係について

2024年3月31日現在、当社取締役吉田憲一郎は、ソニーの代表執行役を兼任しています。当該取締役は、その専門性並びに株主の視点により当社グループの経営力を高めるべく、当社より就任を要請したものです。

 

(6) 今後の事業展開について

① 新規事業展開に伴うリスクについて

当社グループでは、様々な新規事業の開発を進めています。新規事業の展開にあたってはその性質上、計画通りに事業が展開できず投資を回収できなくなる可能性や、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、事業基盤の拡大と収益の安定化を図り、成長を加速させるために、今後も相乗効果の見込める他事業の買収又は資本提携を行う可能性があります。他事業の買収又は資本提携を行った場合、当社グループの財務状態等、経営全般にわたるリスクが拡大する可能性があり、また場合によっては想定外の損失を被る可能性があります。

 

② 海外展開について

a.海外でのビジネス展開について

当社グループは、米国、英国、フランス、インド、韓国等の子会社において、海外でのビジネス展開をしています。

今後、他の海外市場への進出も随時検討していますが、海外での事業を展開していく上で、投融資等の追加資金の投入が必要になる可能性があります。また事業展開が想定通りにいかなかった場合には、想定外の損失を被る可能性があります。

b.為替変動について

当社グループの海外事業の現地通貨建ての項目及びグループ各社における外国通貨建ての項目は、換算時の為替レートによる為替変動リスクを受ける可能性があります。

 

 

(7) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

当社は、会社法第236条、第238条及び第239条の規定に基づき、新株予約権を付与しています。また、今後も新株予約権を発行、付与する可能性があります。現在付与している新株予約権及び今後付与される新株予約権が行使された場合、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

2024年3月31日現在、発行済株式総数679,063,600株に対して、新株予約権の行使により今後増加する可能性のある株式数は1,024,400株です。この新株予約権の権利行使については、当社と新株予約権付与対象者との間で締結した「新株予約権割当契約書」に基づき、権利行使可能な期間及び行使可能株数等の条件を定めています。

 

(8) 非流動資産に係る減損リスクについて

当社グループが保有する、のれん等の非流動資産については減損リスクにさらされています。今後、これらの対象資産の価値が下落した場合、必要な減損処理を行う結果として、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、入手可能な情報に基づいて当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営成績の概況

国内においては、医師会員33万人以上(2024年4月26日現在)が利用する医療従事者専門サイト「m3.com」を中心に様々なサービスの展開をしています。

メディカルプラットフォームでは、「m3.com」のプラットフォーム上で会員医師が主体的、継続的に高頻度で情報を受け取れる「MR君」ファミリーの各種サービスに加え、会員医療従事者を対象とした調査サービス、会員へ医療情報以外のライフサポート情報を提供する「QOL君」等の一般企業向けマーケティング支援サービス等、顧客の意図や用途により選べるサービスメニューを提供しています。また、次世代MR「メディカルマーケター」の提供、医療系広告代理店等の事業を、グループ各社を通じて展開しています。

エビデンスソリューションでは、臨床開発業務の支援及び大規模臨床研究の支援を行うCRO、治験実施医療機関において治験業務全般の管理・運営を支援するSMO、臨床開発・臨床研究等の実施に必要な被験者の募集並びに周辺業務の支援を行うPRO等の事業を、グループ各社を通じて展開しています。

キャリアソリューションでは、エムスリーキャリア株式会社において、医師、薬剤師向けの求人求職支援サービスの展開を進めています。

サイトソリューションでは、医療機関の運営をサポートする各種サービスを展開しています。

さらに、一般の方々からの健康や疾病に関する質問に「m3.com」登録医師が回答する「AskDoctors」(https://

www.AskDoctors.jp/)や医療福祉系国家試験の対策等の事業を行うエムスリーエデュケーション株式会社等を通じてさまざまなサービス展開を進めています。

海外においては、米国で、医療従事者向けウェブサイト「MDLinx」を運営し、この会員基盤を活かした製薬会社向けサービスの他、医師向けの転職支援サービスや治験支援サービスも展開しています。欧州では、英国で医師向けウェブサイト「Doctors.net.uk」において製薬会社向けサービスの展開を進める他、Vidal Groupを通じてフランス、ドイツ、スペインで医薬品情報データベースの提供を行うとともに、eDoctores Soluciones, S.L.を通じて医療従事者向け診療現場モバイルアプリiDoctusをスペインおよび中南米で提供しています。アジア地域においても順調に事業を拡大しています。

また、日本、米国、欧州、中国、韓国をはじめ、当社グループが世界中で運営する医療従事者向けウェブサイト及び医師パネルに登録する医師は合計で約650万人となっており、医師パネルを活用したグローバルな調査サービスの提供も行っています。

 

当連結会計年度の業績は、以下の通りです。

(当期の業績)                                    (単位:百万円)

 

2023年3月期

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

2024年3月期

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

比較増減

売上収益

230,818

238,883

+8,065

+3.5%

営業利益

71,983

64,381

△7,602

△10.6%

税引前当期利益

74,318

68,840

△5,479

△7.4%

当期利益

51,983

48,549

△3,434

△6.6%

 

(セグメントの業績)                                 (単位:百万円)

 

2023年3月期

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

2024年3月期

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

比較増減

メディカル

プラットフォーム

セグメント売上収益

93,098

93,414

+316

+0.3%

セグメント利益

41,147

38,626

△2,522

△6.1%

エビデンス

ソリューション

セグメント売上収益

27,157

26,700

△457

△1.7%

セグメント利益

7,662

6,698

△964

△12.6%

キャリア

ソリューション

セグメント売上収益

14,538

16,642

+2,104

+14.5%

セグメント利益

4,644

4,781

+137

+2.9%

サイト

ソリューション

セグメント売上収益

35,295

33,025

△2,270

△6.4%

セグメント利益

3,745

3,735

△11

△0.3%

海外

セグメント売上収益

62,095

69,868

+7,773

+12.5%

セグメント利益

16,990

11,695

△5,296

△31.2%

その他エマージング事業群

セグメント売上収益

3,284

2,633

△651

△19.8%

セグメント利益

945

△290

△1,235

調整額

セグメント売上収益

△4,649

△3,399

セグメント利益

△3,151

△863

合計

売上収益

230,818

238,883

+8,065

+3.5%

営業利益

71,983

64,381

△7,602

△10.6%

 

① メディカルプラットフォーム

医療現場のDX化支援等の事業が堅調に推移した一方で、製薬企業の継続的な予算圧縮の影響により製薬マーケティング支援関連の売上が前期比で減少したため、セグメント売上収益は93,414百万円(前期比0.3%増)となりました。また、主に利益率の高い製薬企業向けマーケティング支援関連の売上比率が減少したことにより、セグメント利益は38,626百万円(前期比6.1%減)となりました。

 

② エビデンスソリューション

CRO等通常事業は堅調に推移したものの、新型コロナウイルスに関連した治験プロジェクト等の貢献が前期比で減少したことにより、セグメント売上収益は26,700百万円(前期比1.7%減)、セグメント利益は6,698百万円(前期比12.6%減)となりました。

 

③ キャリアソリューション

新型コロナウイルスに関連したワクチン接種支援プロジェクトの貢献が前期比で減少した影響はあるものの、コロナ禍で影響を受けていた薬剤師向け求人求職支援サービスが回復傾向となった結果、セグメント売上収益は16,642百万円(前期比14.5%増)、セグメント利益は4,781百万円(前期比2.9%増)となりました。

 

④ サイトソリューション

通常の事業は堅調に推移したものの、新型コロナウイルスに関連したワクチン接種支援プロジェクト及び治験プロジェクトの貢献が前期比で減少した影響を主因に、セグメント売上収益は33,025百万円(前期比6.4%減)、セグメント利益は3,735百万円(前期比0.3%減)となりました。

 

⑤ 海外

主に欧州・その他地域の堅調な実績により、セグメント売上収益は69,868百万円(前期比12.5%増)となりました。売上収益の増加はあったものの、主に北米での治験事業において利益率の高い新型コロナウイルスに関連した治験プロジェクトの貢献が前期比で大幅に減少したこと、また同事業において減損損失を計上したことにより、セグメント利益は11,695百万円(前期比31.2%減)となりました。

 

 

⑥ その他エマージング事業群

セグメント売上収益は2,633百万円(前期比19.8%減)となりました。また、医療福祉系国家試験の対策等の事業を行うエムスリーエデュケーション株式会社において、歯科医師国家試験対策関連事業のマーケットの縮小を受け減損損失を計上したことにより、セグメント利益は290百万円の損失(前期は945百万円の利益)となりました。

 

以上の結果、当連結会計年度における当社グループの売上収益は238,883百万円(前期比3.5%増)、営業利益は64,381百万円(前期比10.6%減)、税引前当期利益は68,840百万円(前期比7.4%減)、当期利益は48,549百万円(前期比6.6%減)となりました。

 

(2) 財政状態の概況

資産合計は、前連結会計年度末比90,135百万円増の490,780百万円となりました。流動資産については、現金及び現金同等物が31,343百万円増加したこと等により前連結会計年度末比37,269百万円増の240,739百万円となりました。非流動資産については、為替の影響や新規連結子会社の取得等によりのれんが24,168百万円、無形資産が10,862百万円増加したこと等により前連結会計年度末比52,866百万円増の250,041百万円となりました。

負債合計は、前連結会計年度末比32,952百万円増の124,079百万円となりました。流動負債については、営業債務及びその他の債務が6,013百万円増加したこと等により、前連結会計年度末比7,589百万円増の67,169百万円となりました。非流動負債については、借入金が16,388百万円増加したこと等により、前連結会計年度末比25,363百万円増の56,910百万円となりました。

資本合計は、前連結会計年度末比57,183百万円増の366,701百万円となりました。剰余金配当12,899百万円を行った一方、親会社の所有者に帰属する当期利益45,271百万円を計上したことで、利益剰余金が32,356百万円増加したこと、また、親会社の所有者に帰属するその他の包括利益15,220百万円を計上したことで、その他の資本の構成要素が15,269百万円増加したこと等によります。

 

(3) キャッシュ・フローの概況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末残高より31,343百万円増加し、149,661百万円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、58,310百万円の収入(前期は57,113百万円の収入)となりました。収入の主な内訳は、税引前当期利益68,840百万円、支出の主な内訳は、法人所得税の支払額22,947百万円です。

投資活動によるキャッシュ・フローは、39,456百万円の支出(前期は21,933百万円の支出)となりました。主に連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出27,346百万円が発生しています。

財務活動によるキャッシュ・フローは、9,432百万円の収入(前期は22,837百万円の支出)となりました。収入の主な内訳は、借入による収入19,920百万円、非支配持分株主からの払込による収入13,109百万円であり、支出の主な内訳は、親会社の株主への配当金の支払額12,896百万円が発生しています。

 

(4) 生産、受注及び販売の状況

① 生産実績

 当社グループは、製品の生産を行っていないため、記載すべき事項はありません。

 

② 受注実績

当社グループは、実績に応じて売上が計上される契約がほとんどであり、受注時に受注金額を確定することが困難な状況であるため、記載を省略しています。

 

③ 販売実績

セグメント別の当連結会計年度における販売実績は、次の通りです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比

メディカルプラットフォーム

(百万円)

90,490

+0.3%

エビデンスソリューション

(百万円)

26,386

△0.5%

キャリアソリューション

(百万円)

16,605

+19.7%

サイトソリューション

(百万円)

33,012

△5.6%

海外

(百万円)

69,852

+12.5%

報告セグメント計

(百万円)

236,345

+3.8%

その他エマージング事業群

(百万円)

2,539

△20.1%

合計

(百万円)

238,883

+3.5%

(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しています。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、前連結会計年度及び当連結会計年度における各販売先への当該割合が100分の10未満のため、記載を省略しています。

(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

① 重要性がある会計方針及び重要な会計上の見積り

 当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成に当たって、連結決算日における財政状態及び報告期間における経営成績に影響を与える見積り、予測を必要としています。当社グループは、過去の実績や状況を踏まえ、合理的と判断される前提に基づき、継続してこの見積り、予測の評価を実施しています。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 重要な会計上の見積り及び判断方針」に記載の通りです。

 

② 当連結会計年度の経営成績に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の経営成績に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績の概況、(2)財政状態の概況、(3)キャッシュ・フローの概況」に記載の通りです。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益68,840百万円を計上したことを主な要因に、58,310百万円の収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出等により39,456百万円の支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは借入による収入等により9,432百万円の収入となりました。これらの結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末より31,343百万円増加し、149,661百万円となりました。

当社はこの資金により、今後更に経営基盤を強化し、新たな事業展開に備えるための新規投資や出資等による支出に、機動的に対応していきます。

余剰資金の運用については、市場リスクや与信リスクを極めて限定的なものにする保守的な運用を行う方針としており、規模、期間を勘案した適切な手段による資金運用を行っています。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因、今後の方針等について

経営成績に重要な影響を与える要因については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載の通りです。また、経営方針・経営戦略等については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通りです。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

特記事項はありません。