文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループはコーヒー等の飲料及び食品の専門商社として主に業務用の分野で事業を行っております。経営理念「ともに考え、ともに働き、ともに栄えよう」のもと、事業活動のミッションとして「世界の食の幸せに貢献する」ことを掲げております。当社グループは1906年創業とわが国にあって比較的長い業歴を有しておりますが、更に業歴を伸ばし「永く続く会社となること」に重点を置いております。その必要条件として以下を規定しております。
・社会に必要とされ続ける会社であること
社会と同じ方向を向いて事業を行うこと、利益とともに社会貢献にもしっかり取り組むこと
・顧客・取引先に必要とされ続ける会社であること
価値を共有するパートナーから信頼され、頼りにされ、よい顧客、よい取引先であり続けること
・株主に必要とされ続ける会社であること
ガバナンスを強化し、適切な還元と発信により株主に愛され、満足し続けていただくこと
・従業員に必要とされ続ける会社であること
従業員に適切に報いるだけでなく、働きやすさ、働きがいを追求し、従業員に愛され希望が宿る職場であり続けること
・変化に対応し続ける会社であること
変化に対する感度を高め、変化に対し常にしなやかに対応できる会社であり続けること
・利益を安定継続して出し続ける会社であること
社会や環境に配慮しながら事業や取扱商品の新陳代謝をすすめ、労働生産性・資本生産性を追求し続けること、適切な事業ポートフォリオを追求し続けること
そしてこれらの必要条件の充足を着実に進めていくため、継続的に新たな「商売の仕組み」「経営の仕組み」「人事の仕組み」「働く仕組み」の確立や改革改善等、さまざまな「仕組み化」を進めております。
また、当社グループは2022年度よりスタートさせている中期経営計画「SHINE2024」をもとに、GHG(温室効果ガス)を削減しながらの企業成長や、社会的課題解決のビジネス化に積極的に取り組んでおります。
当社の事業はコーヒー・飲料事業、食品事業、海外事業の3つに分類され、それぞれの取り組みは以下のとおりであります。
コーヒーや茶類の輸入、加工、販売を通じて「1杯の幸せ」をつくり、消費者の皆様にお届けしていきます。原料となる作物の特性上、発展途上国との関りが深く、長期間のパートナーシップの構築により、安定した雇用や技術の向上、生活の改善に貢献していきます。
日本国内外で開発する業務用や中食等の食材の販売により「食の豊かさ」を支えていきます。さまざまな分野でのこだわり食材に加え、共働き世帯に役立つ食材、歳を重ねてもいつまでもおいしく食べられる食材、自然災害等による価格高騰から食卓を守るための食材等の提供により、世の中に貢献していきます。
日本の誇るべき文化と技術を「食」を通じて、多様化する世界の消費者ニーズに寄り添いながら広めていきます。また、海外グループ会社とのシナジーを活用することで、世界の食文化の発展に貢献していきます。
当社の企業構造については第1 企業の概況、3 事業の内容の事業系統図のとおりであります。
コーヒー・飲料事業、食品事業、海外事業それぞれの市場環境・顧客動向は以下のとおりであります。
国際コーヒー相場の高止まりの影響もあり2023年はわが国のコーヒー輸入量や国内消費量は減少しておりますが、世界においてコーヒー消費量は毎年増加を続けています。特に、アジアにおけるコーヒー消費量は伸びております。わが国のレギュラーコーヒー市場は新型コロナウイルスにより家庭用市場が伸び、その後も家庭用消費は維持されています。ここ数年1人当たりコーヒー消費量は大きくは変わっておりませんが、缶コーヒー消費は減少しており、レギュラーコーヒーを家庭で飲む機会は増加している模様です。また、コロナ5類移行による人流の拡大でホテル・レストラン・カフェなどのコーヒー需要は回復傾向にあります。サステナブルなコーヒーへの興味は高まりつつあり、消費者のコーヒー自体への関心が高い状況は継続しております。
紅茶市場につきましてはRTD(Ready-to-Drink)のペットボトル飲料が大半を占めております。2023年におきましては夏の猛暑によりアイスティー需要が大きく増加しました。家庭用市場ではティーバッグが日常的な商品として確立されておりますが、数量ベースでは減少しております。しかし、フルーツティーやはちみつティーなどの付加価値を付けた差別化された製品への需要は増加傾向にあります。
新型コロナが5類に移行した影響により食の市場は内食、中食から外食へと一気にシフトいたしました。その流れにより、外食関連の市場規模は急速に回復し、海外からの観光客増加の後押しもあり、コロナ禍以前の水準に戻りました。今後暫くは回復傾向が続くものと思われますが、物流業界の2024年問題、慢性的な人材不足等が大きな問題として影を落としております。国内市場におきましては人口の減少に加え、高齢化の進展に伴い1人当たりの飲食量が減少することが見込まれる一方、女性の社会進出、共働き世帯、単身世帯の増加による中食需要の高まりにより、中長期的には外食産業の市場規模はいずれ伸び悩み、漸減に転じることが予想されております。
日常の食生活で健康の維持・向上を図り、健康寿命延伸やアンチエイジングにつなげたいという意識が広まっており、小売等でも健康訴求商品の取扱い意欲を高め、供給側からは減塩化や健康ニーズに対応した商品の投入が進んでいくとみられております。またそうした健康面からのこだわり食材に加え、1人あるいは2人世帯の増加や家族バラバラの食事が増えることにより、小容量タイプや食べ切りタイプといった個食対応の需要が今後一層増加すると考えられ、さらには、より調理が簡便な商品を求める傾向は強まっていき、現に容器ごと電子レンジで調理できるような商品が増加しております。そうした動向に対するきめ細かな対応、観察力を働かせた先回りした対応が求められております。
分野別には、冷凍食品の分野で、近年、外食産業、給食業者、スーパー惣菜での人手不足により調理場、バックヤードの労働軽減のため調理のいらない自然解凍食品の需要が増えております。水産の分野では、わが国の漁船漁業が2010年代後半以降、地球温暖化や乱獲の影響で減少している一方、養殖量は中国やインドネシアやベトナムを中心に急速に伸びております。農産に関しては、近年天候による豊作・不作の振れが顕著となり、また人手不足を解消化する効率化の観点から、安定的でオペレーションに優れた原料供給が求められ、カット野菜や保存が出来る加工野菜の需要が、スーパーやコンビニ、食品メーカーを中心に広がっております。
ウィズコロナからアフターコロナへの市場変化に伴い、世界の外食市場はおおむね回復傾向にありますが、家庭需要も消えることはなく、小売市場は引き続き拡大の傾向にあり、日本食は外食向け、内食向けいずれも着実に成長しております。
また、徐々に食品市場においても「持続可能性」や「健康志向」などというキーワードに注目が集まるようになり、特に日本食はこれらの点において世界的に高い評価を受けており、市場はさらに拡大の一途をたどっております。農林水産省が発表している2023年の農林水産物・食品の輸出額は、過去最高の1兆4,547億円となり、2022年比では2.9%の増加、金額では407億円の増加となっております。
なお当社輸出事業における主要顧客は日本食品の販売を手がける卸売業者となり、その内容は特定の商品を専門的に取扱う企業から広範に商品を取扱う企業まで幅広くあり、それぞれの事業規模もさまざまです。
そうした顧客に対し、当社グループの専門性を活かすとともに、国内のメーカー=パートナーと緊密に協働し、求められる商品を安定的に供給し、信頼に応えております。また顧客と連携し、現地の食品管理に係る諸規制や流通制度にも対応しております。
当社グループの事業について、グループ会社のコーヒー・飲料関連の加工工場資本設備を除き総じて比較的少額の資本により新規参入、あるいは川上・川下からの参入が可能であると目され、事実、相応の競合は存在しております。しかしながら事業遂行にあたっては、かなり高度な専門知識や経験に基づくノウハウ、顧客・取引先との相互の信頼関係が伴わなければならず、当社グループはそうしたソフト面の知見や基盤をもとに競争優位を図っております。コーヒー・飲料事業、食品事業、海外事業それぞれの競争優位のポイントは以下のとおりであります。
・コーヒー、茶類ともに原料、加工技術、品質管理等に関する広範で深い知見(特にコーヒーに関して業界をリードする諸資格を有する人材の豊富さ)とこだわりの原料から加工、包装、廃棄の有効利用に至るまでお客様のニーズに合わせた商品価値を提案できること
・生産者、輸出業者と長年かけて構築したパートナーシップとそれからもたらされる最新の情報や付加価値の創造力と提案力
・GHG(温室効果ガス)削減や多様性、生産国とともに生きるための社会的商品の提案とサステナブルな取組とその価値の提供
・グループ会社が有する東西の焙煎工場機能
・食品原料、製品、それらの加工技術、品質管理等に関する広範で深い知見
・国内外の多数の食品原料供給者、製品の製造者とのつながり、他方、ニーズ先との接点とそれらの情報の結合
・「日本食」に関する深く広範な知識と、それらを取扱う国内メーカーとの厚い信頼関係
・長年の取引で世界各国に築き上げたさまざまな販路チャンネル
当社グループは、事業の遂行にあたって、品質・衛生・表示面についてわが国の食品衛生法、JAS法及び食品表示法等を遵守しております。加えて海外との取引が盛んな当社は、輸出入を行う商品に関し対象国の法的規制も受けており、各国で法令の変更や新たな法令の施行等があった場合には、それを適切に受け入れ遵守していく必要があります。その上、わが国と輸出入先の国とで食品衛生等に関する基準が異なる場合には、そのどちらをも充足するように対応していくことが求められております。
当社グループは、ステークホルダーとの双方向での実りある関係の維持・発展、すなわち[a]顧客に提供する商品について満足をいただき収入を得る、[b]取引先に仕入れた商品や受けたサービスの対価を支払う、[c]従業員に適切に報い安心して働いてもらう、[d]金融機関等に対しサービスに応じた金利、手数料を支払う、[e]国・地方政府にきちんと税金を納める、[f]株主に配当等により適切に報いる、の関係の均衡の取れた拡大を経営の根幹に置き、それに基づくさまざまな事業活動と直接的にリンクする最終利益(親会社株主に帰属する当期純利益)の絶対額確保を最も重視しております。また事業面でその最終利益を特に大きく左右するものとして営業利益をキーとして捉え、その絶対金額及びその従業員1人当たり金額も注視しております。なお、ステークホルダーの満足度という点では従業員満足度等も考慮しております。
当社グループは、株主視線での効率化指標として自己資本当期純利益率(ROE)を重視しております。
自己資本当期純利益率の最近の状況は次のとおりであります。
(注)自己資本 = 純資産合計-新株予約権-非支配株主持分、期首・期末の平均により計算
わが国では広く自己資本当期純利益率8%が一つの基準とされておりますが、当社グループは長らくその水準に達しておりませんでしたが、徐々に改善が図られ、当連結会計年度はクリアしております。引き続き安定して適切な水準を確保できるよう運営してまいります。
なお近時わが国において株価純資産倍率(PBR)が1を割れている会社が多く存在し、改善への取り組みの必要性が指摘されております。当社グループも残念ながら1を割れております。PBRは本項のROEと株価収益率(PER)の積によって表され、当社グループのPBRとPERの最近の状況は次のとおりであります。
(注)純資産は上記の自己資本で、発行済株式数を8,000千株として計算
すなわちROEの改善はPBR引き上げのための重要なファクターであると認識され、当社グループは2025年3月期を最終年度とする中期経営計画「SHINE2024」のなかで、業績向上の取り組み、IR活動の強化と適切な株主還元等により、ROEとPBRの両方の漸次引上げを図るよう努めております。
またROEが「売上高当期純利益率」と「売上高に対する総資産の回転率」と「自己資本比率の逆数」の積に分解されることはよく知られているところです。「売上高に対する総資産の回転率」の改善を構造的な課題として中長期的に取り組み、短期的には売上高に対する各利益の比率に焦点を当て、なかんずく次項の売上高営業利益率の引き上げを図るべく、事業の見直しや刷新を進めております。
売上高営業利益率の最近の状況は次のとおりであります。
当社グループは、自己資本当期純利益率の構成要素である総資産回転率や自己資本比率の過去の実績と実効税率等をもとに自己資本当期純利益率8%を達成するために必要な売上高営業利益率を概ね2%以上と算定し、事業全体としてこの2%を平均的・安定的にクリアすることを目標にしております。当連結会計年度は円安の影響による仕入価格の上昇を販売価格引き上げに繋げたことにより、売上総利益率は前連結会計年度に比べ改善いたしました。販売費及び一般管理費においても適切なコントロールにより抑制に努め、営業利益率は増加いたしました。その結果、当社グループ全体としては2%を大きくクリアいたしましたが、それぞれの事業においては課題を残しております。今後はROIC経営導入による投資効率管理の向上により安定的な売上高営業利益率の確保に努めてまいります。
当社グループでは、投資効率と価値創出の程度を理解するための指標として、ROICを用いております。ROICの重要性は以下2点にあります。
・投資効率の評価: ROICは、全ての投資資本(短期・長期の負債と自己資本)がどの程度効果的に使用されているかを評価するのに役立ちます。つまり、企業が投資した資本に対してどの程度のリターンを生み出しているかを示します。これは企業の資本配分の効率性を評価する上で非常に重要な指標となります。
・資本コストとの比較: ROICと資本コスト(WACC:加重平均資本コスト)を比較することで、企業が投資家から調達した資本のコストを上回るリターンを生み出しているかどうかを評価することができます。ROICが資本コストを上回っている場合、それは企業が投資家の期待を上回るリターンを生み出し、企業価値を創出していると解釈できます。
ROICは、全ての資本(負債と自己資本)をどの程度効率的に利益に変換できているかを示します。当社はこれらの数値を向上させることで、投資家に対するリターンを最大化し、企業価値を向上させることを目指しています。
事業によって使用する資本は異なり、前項の売上高営業利益率をそれぞれの事業の目標として一律に適用するのは必ずしも適切でないため、2025年3月期を最終年度とする中期経営計画「SHINE2024」のなかで、全社及び各事業の投下資本利益率を算定し、主要経営指標として注視することにしております。これをもとに事業ポートフォリオマネジメントを行い、投資及び経営資源配分の最適化に繋げてまいります。
なお、全社の投下資本利益率の最近の状況は次のとおりであります。
(注)投下資本利益率の分子は営業利益×(1-実効税率)で、実効税率は30.5%として計算
分母は期首・期末の平均で、時価ベースの自己資本は発行済株式数を8,000千株とする時価総額
WACCの計算に当たり、暫定的に負債コスト=1.25%、株主資本コスト=8.0%を想定
以上のように、当社グループは簿価と時価の2つの切り口で資本コストと関連させながら投下資本利益率をウォッチし、経営効率の向上を目指しております。
⑤ 運転資本関連項目の回転期間
当社グループは、グループ会社にコーヒー・飲料関連の加工工場を有しておりますが、主たる事業は商社として卸売業であり、健全にキャッシュフローを回していくとの観点で棚卸資産、売上債権等、運転資本関連項目の回転期間を重視しております。これは前項の投下資本利益率にも影響を与えるものであります。
当社グループは、長期経営計画実現のための橋渡しとして、中期経営計画をローリング方式により定め、実行しており、2023年3月期より中期経営計画「SHINE2024」(3か年計画)をスタートさせました。それはミッションに「世界の食の幸せに貢献する」を掲げ、永く続く会社=200年企業を目指し、「少しでも多くの、少しでも大きな食の幸せを創る」を目標にROIC経営、GHG(温室効果ガス)の削減と社会課題解決商品の開発に重点を置いた事業拡大、社内体制強化に積極的に取り組み、事業の持続的成長を目指そうとするものであります。
同計画の初年度である前連結会計年度は、著しい円安の影響に加えて、コーヒー相場の上昇分と合わせ、お客様に販売価格への転嫁の協力をお願いしていくことになりました。それにより売上高は増加いたしましたが、転嫁は仕入価格上昇を十分にカバーしきれず利益率は低下を余儀なくされました。当社グループを取り巻く事業環境は、特に為替相場を中心に当初計画策定時から著しく変化しており、足元の事業環境を踏まえ、中期経営計画の数値目標について見直しを行うことといたしました。
当連結会計年度においては、一部の子会社において足もとのコーヒー相場の影響を受けた収益環境の悪化により、前年同期比で減益を余儀なくされましたが、当社に関し、外食業界の需要回復に加えて円安の影響による仕入価格の上昇を販売価格引き上げに繋げたことに伴い、売上高、利益ともに順調に推移いたしました。
その結果、当連結会計年度における売上高は62,025百万円(当初計画値59,713百万円に対し3.9%プラス)、売上総利益は8,182百万円(当初計画値7,825百万円に対し4.6%プラス)、営業利益は1,654百万円(当初計画値1,238百万円に対し33.6%プラス)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,049百万円(当初計画値804百万円に対し30.5%プラス)となりました。
2025年3月期は同計画の最終年度に当たりますが、足もとで相場の一段高が進むとともに、為替等では波乱の様相を呈しております。それらを背景に、利益につきましては、顧客・取引先と良好・安定的な関係を保ちつつ当社グループとして持続的に収益を上げていくことを重視、急激な相場変動を直ちに価格に転嫁するのが得策でない状況も想定されること、加えて連結子会社間の合併に係る一時的な会計上の費用の計上が見込まれることも勘案し、保守的に見積もる必要が生じております。そうした状況を考慮した結果、収益が一時的に減収する見込みとなりますが、連結子会社統合によるシナジー効果とコスト削減の実現、さらには市場環境の変化に応じた新商品の提供、新たなマーケットの開拓等により、将来の収益力の大幅な向上を目指してまいります。
当社グループは、課題認識として、2010年代まで長きにわたり売上高及び利益が大きく成長しない状況が続いておりました。それは食品というわが国国内においては成熟した商品を取扱っていることに由来するものと考えられます。とは言え、わが国の食品業界において急成長を遂げている会社は存在しており、当社グループといたしましても、「永く続く」とともに成長の必要性を十二分に認識しております。その成長に関しましては、次の3点をテーマに取り組んでまいります。
・既存事業の枠組みのもとでヒット商品を生み出し、それを核に新規事業を発展させること
・成長余地のある海外事業を拡大させていくこと
・取扱商品に関し、GHG(温室効果ガス)削減等、プロセスやストーリーを含めた付加価値を創っていくこと
上記以外にも、ブルーオーシャンの新規事業分野に進出していくこと、M&Aを積極的に行うことが考えられないではありません。しかしながら前者は、果たしてブルーオーシャンかの見極めが難しく、また既存の当社グループの知見や強みを活かせる分野でないと著しくリスクが高いものと思料しております。また後者は、いわゆるPMI(M&A後の事業統合)が障害となることが多く、わが国では過去のM&Aの多くが失敗であったという事実も考慮し、あくまでも目的でなく手段の一つであるとの認識のもとに選別的に展開することとしております。
そうしたことから当社グループの今後の成長路線のためのテーマとして、上記の3つをまずは優先させております。
このような企業成長と歩調を合わせる形で、当社グループは収益体質の強化、企業としてのより一層の健全化にも取り組んでまいります。今後の経営環境につきましては、景気の緩やかな回復への期待感があるものの、海外における地政学リスクとそれをめぐる巨大国家間の対立、急速な利上げのあおりを受けた金融市場の動揺等の影響により消費マインドの低下が懸念され、先行き不透明な状況が続くことが予想されております。
そうしたなか、当社グループは、2022年度から中期経営計画「SHINE2024」(3か年計画)をスタートさせ、「少しでも多くの、少しでも大きな食の幸せを創る」ことを目標にROIC経営、GHG(温室効果ガス)の削減と社会課題解決商品の開発に重点を置いた事業拡大、社内体制強化に積極的に取り組んでおります。今後も引き続き事業の持続的成長を目指すため、以下を課題として挙げ、対処してまいります。
① サステナビリティと事業成長
・GXを軸とした商品開発、ビジネスモデル変革、収益追求
・社会課題、環境課題への対策推進
・パートナー企業との高度な事業連携
② 事業管理高度化
・投資効率管理の向上(ROIC経営導入の推進)
・投下資本利益率(ROIC)、自己資本当期純利益率(ROE)、株価純資産倍率(PBR)等の定量目標の達成
・非財務情報の定量化、積極的開示による信頼度向上
③ DX推進・AI活用
・業務の抜本的見直し
・社員のリスキリングによる育成
④ 人財力強化・エンゲージメント向上
・多様な人財の活躍推進(女性管理職比率、障がい者雇用率等の定量目標の達成)
・人財育成体制の構築
⑤ グループ力強化
・本社機能の専門化とグループ各社との連携強化、一体的発展
・グループ内人事交流の活性化
・新たなフィールドへの挑戦(欧州拠点等)
とりわけ「SHINE2024」の最終年度にあたる2025年3月期は、以下の3点に注力してまいります。
・⑤の一環として、2024年10月に誕生する新生「アライドコーヒーロースターズ株式会社」の事業の強化推進
・人財力強化・人財の多様化の推進、なかんずく女性活躍
・動揺する相場環境の中での収益の安定確保、PBR=1以上に向け正のROEスプレッド確保
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
当社グループでは、以下の3つをマテリアリティとして認識しております。
「事業の成長とサステナビリティ」
「人財の成長とサステナビリティ」
「社会・環境の調和とサステナビリティ」
この中で社会・環境対策商品の販売による事業成長を基盤に、人財の成長、社会・環境の調和の3点が補完的関係を形成していきます。当社グループの全ての活動は「サステナビリティ方針」に則り、取締役会において承認のISO(ISO14001)(注1)に基づきリスク・機会を抽出します。リスクに関しては社長を委員長とした「リスク管理委員会」により管理体制を構築しサステナビリティ保持を構築しております。
(注1)2025年3月期に承認予定となっております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①サステナビリティ全般
当社グループでは、サステナビリティに関する重要事項を主にサステナビリティ推進室で立案し、取締役会で審議・決議します。取締役会は気候関連課題をはじめサステナビリティに関する重要事項の監督を行い、サステナビリティ推進室によるリスク、機会、課題の報告に対し審議、精査も行います。なおサステナビリティ推進室による報告は、年に1回以上設けられます。
取締役には当社グループのサステナビリティを高いレベルで達成するための経験と専門性を求めております。各取締役は責任範囲を明確にし、四半期もしくは半期ごとに進捗を確認、評価することで業績連動型報酬制度に対応します。この業績連動型報酬は譲渡制限付株式報酬を取り入れ、市場評価と同じベクトルで判断するようにしております。
(2)-1.「事業の成長とサステナビリティ」
環境・社会的価値を付加した商品販売を事業の成長戦略として検討し、2030年度の金額に占める社会性商品の販売割合を40%として設定します。新たなポジショニング戦略として社会並びに収益性に貢献する戦略を進めます。ここでは電力消費、ゴミ削減、人権対策など環境・社会に対する法令の改正に対応した時事的原料並びに商品の開発が主体であり、事業成長と社会課題をトレードオンの状態にすることで解決を加速する仕組みを持っています。またグループ間で同じ方向性を示すことで原料の供給体制にシナジー効果が生まれ、市場でより競争力が増すことが可能となります。
(2)-2.「人財の成長とサステナビリティ」
当社グループでは、人材の多様性確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針を次のようにしております。
当社グループの経営理念として「ともに考え、ともに働き、ともに栄えよう」を掲げ、「人」を中心に据えた経営をおこなってきました。グループ経営の中心となる当社では先行して社員の「働きやすさ」の向上に取り組み、2016年にスタートさせた中期経営計画Sプロジェクト以降、フレックスタイム制、テレワーク制の導入などを進めました。そしてその成果を踏まえ、当社グループでもそれぞれの業態に合わせて働きやすさ向上に取り組みました。
人を資本として捉え、その価値を高めていくことで企業を中長期的に成長させていくことが求められるようになった今、中期経営計画SHINE2024では人的資本経営の土台づくりを主要テーマの1つとして設定し、「働きがい」の向上に取り組み始めました。当社グループは、VUCAの時代の成長ドライバーは社員一人ひとりの成長であると考えております。当社では人事ポリシーを変更し、年功序列型の「安心の提供」から年齢、性別、国籍などの属性に一切とらわれない、学び続け、挑み続けるための「機会の提供」へシフトする人事制度改革に取り組みます。当社グループでも同様社員一人ひとりにフォーカスし、個性や才能を伸ばすための施策を講じていきます。成長し続けるグループ社員一人ひとりがともに考え、ともに働くことで、ともに栄え続けるこれからの当社グループを創ります。
(2)-3.「社会・環境の調和とサステナビリティ」
当社グループの事業特性として、コーヒー、紅茶、農産品、水産資源、養鶏、エビ養殖など自然資本の依存度が高い点が挙げられ、脱炭素対策を含む環境問題と、人権、コミュニティなど社会的課題の大きく2つに分かれます。
環境問題の適合として、当社グループは2030年にScope1及びScope2のネットゼロ、Scope3 30%削減(2022年対比)、長期目標として2050年バリューチェーン全体のGHG排出量ネットゼロを掲げています。農産品、飼料における最大の脱炭素対策課題は窒素成分の投入減量で、品質、収穫量維持をしながら窒素肥料の減量を行う策を構築することになります。当社グループではコーヒーが基幹商品であるため、コーヒーによる脱炭素対策の試験投入を2022年度より開始し、この結果を基に紅茶、農作物、養鶏、養殖への展開を予定しています。2022年度よりブラジルでコーヒーの脱炭素試験栽培は、2025年の大型農園の移行テストにより、コスト削減を加味した脱炭素商品開発へと進める予定で、同時に他の農作物の効果試験を並行して進めます。
社会的課題の対応では、多様性の尊重を1つのキーワードとし、障がい者をはじめ社会弱者との協創による価値創造に取り組んでいます。個々の集団が持つ強み、独創性、個性を商品ごとに価値変換することで高額な買付け金額に耐えるようにするものです。ボランティア的要素を排除した価値創造を基盤としており、現在コーヒーをはじめ野菜類で製品化し、商品数は増加傾向にあります。
一方地域社会のサステナビリティも重要視しており、産地の地域社会、国内の地域社会ともに醸成を協創しています。SNSなどを媒体に地域文化を価値として発信し、歴史的価値に加えて、楽しさなどを工夫して新たな市場の創造をしています。こうした活動により、地域社会、地域産業の維持につながり、当社グループへの収益面の持続性を確保していきます。
当社グループでは、事業を取り巻くさまざまなリスクに対し的確な管理・実践が可能となることを目的とした「リスク管理規程」を設け、リスク抽出から管理までの規程を行っています。
(3)-1.「リスク管理規程」管理概要
・当社グループ各事業に相当程度の影響を与えうる全てのリスクを早期に発見・特定し経営レベルで掌握する。
・各リスクが当社の経営に与える影響やシナリオを検討・予測し、対応の優先順位を想定する。
・リスク管理を統括する組織を明確にし、主要リスクの対応組織を、業務分掌をもとに想定する。
・主要なリスクについて、各リスク要因の現状を把握し、必要に応じ対応策を整備する。
・危機、緊急時、責任者(対応組織)と権限・責任を検討し、指揮命令系統が適切に維持されるよう努める。
・定期的な啓蒙活動、トレーニング等を通じ、全役職員がリスク管理の適切な理解と有事の役割を認識する。
(3)-2.「リスク管理規程」管理体制
全社的なリスク管理推進に関わる対応策を協議、承認する組織として、社長を委員長とする「リスク管理委員会」を設置しています(社長が委員長の任に就くことができない場合は副社長が代位者)。事務局を担う管理部長が招集し、原則として年2回以上開催し、緊急時や重大リスクが顕在化した際は、社長が随時招集します。
委員会構成メンバー
委員長:社長
副委員長:管理部長
委員:常勤取締役もしくは経営役、常勤監査役、委員長・副委員長から指名された者、テーマに応じ関係部署の者
主な役割と権限
・リスク管理の取組全体の方針・方向性の検討、協議、承認
・各リスクテーマ共通の仕組みの検討、協議、承認
・リスク管理に関する年次計画、予算措置、是正措置の検討、協議、承認
・必要に応じ社内外から必要なノウハウや協力の取付け検討、協議、承認
・ワーキンググループの組成指示、そのリスク管理推進の進捗管理
・各現場でのリスク状況の把握とリスク管理推進の指示、進捗管理
・情報の収集と社内外開示の実施策検討、協議、承認
(3)-3.リスク抽出に関して
現在当社グループのリスクは、生産国側にある環境問題(脱炭素対策・水資源問題)、人権問題(IUU・少数民族対策・児童労働・ジェンダー問題・強制労働)、生物多様性、遵法などで、国内では労働問題(残業・男女格差問題・ジェンダー問題)、環境問題(廃棄物・脱炭素対策・排煙対策)、法規など多岐にわたり、専門的な人材による適切なリスク抽出が「リスク管理」の上で重要になると考えています。ISOで管理する各部門から提出された事業リスクの影響度を判断し、リスクの回避・低減化を目指します。
(4)-1.「事業の成長とサステナビリティ」
当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、事業の成長とサステナビリティに係る指標については、2030年度までの目標として売上金額に占める社会性商品の販売割合を40%として設定し、一部において具体的な取組みが行われているものの、当社グループに属する全ての会社では行われてはいないため、記載が困難であります。
(4)-2.「人財の成長とサステナビリティ」
当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、当社グループに属する全ての会社では行われてはいないため、当社グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、当社グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
(4)-3.「社会・環境の調和とサステナビリティ」
環境の調和として、当社グループは2030年にScope1及びScope2のネットゼロ、Scope3 30%削減(2022年対比)、長期目標として2050年バリューチェーン全体のGHG排出量ネットゼロの目標を掲げ、IPCC 第6次報告書(以下IPCCAR6)の科学的見地に基づき、GHGプロトコルに準じて実績の開示を進めます。また社会の調和に関しては、2025年度をめどに社会インパクト指数を用いた定量化目標の設定を目指します。
②サステナビリティに関する重点テーマの取組み
・気候変動、自然資本への対応
2024年10月、当社グループでは東京アライドコーヒーロースターズ㈱、関西アライドコーヒーロースターズ㈱の合併を予定し、将来的な環境変化に対応する体制構築を進めてまいります。また当社では各事業部の再編成を行い、基幹産業であるコーヒー、食品類の環境対策を進め、目標としている2050年カーボンニュートラルの実現に向けていきます。
また、自然資本への対応については、多くの企業が事業活動において「生物多様性」に影響を与えるとともに、自然(生態系)から得られる恵みに依存しております。当社グループは、コーヒー豆や茶葉、海産物など、自然資本に深く関連した商品を取り扱っております。今後、TNFDの枠組みに基づき、事業活動が自然及び生物多様性に及ぼすインパクト及び依存関係を評価・整理するとともに「ネイチャーポジティブ」の実現に向けた取り組みを進めてまいります。
当社では社会性・環境関連商品開発のビジネスモデル変革を急いでおります。このため気候変動による移行リスクを早期に捉え、新たな環境関連商品の開発が、事業成長と環境対策のトレードオンになると考えております。このため以下4点を柱とした機会創出を検討いたします。
1.環境施策:同一生産地、同一品種を守るために機材導入などにより対策を講じます。
2.品種改良:同一生産地で同一商品を作り続ける策として、各種商品で行っていきます。
3.生産地の移動:環境対応が難しくなった際、他国への技術移転を含め支援策を講じながら供給量確保に努めます。
4.代替生産物:需給バランスの崩れからビジネスとして成立しなくなると、代替商品の模索をすることで収益確保に努めます。
以上により、サプライチェーン全体でリスクを回避し、機会の創出を進めてまいります。
(1)ガバナンス
前記「①サステナビリティ全般(1)ガバナンス」に記載の通りです。
(2)戦略
2024年度、当社グループではリスク・機会の抽出を明確化し、相当する事業インパクトを開示いたします。シナリオ(1.5℃/2.0℃、4.0℃)、年度(2030年、2050年)の4項目を当社グループの各事業部でインパクト予想を行い、低・中・高の影響度で開示いたします。低は概ね売上高換算5%未満の影響を受けると予想するもの、中は売上高換算5%以上10%未満、高は売上高換算10%以上といたしました。4.0℃シナリオの2050年では多くの項目でリスクが増える一方、機会も増加する傾向があります。当社グループでは、コーヒー、紅茶、農作物を主とした自然資本による事業を展開するため、今後とも環境リスクの軽減に努め、「世界の食の幸せ」に貢献することといたします。
影響度設定では、IPCC AR6の気候変動データを用い、変動内容と取り扱い主要産物の特性からインパクト予想をいたしました。ここでは従来の生産で事業継続を行った場合の影響度を示しており、実際にはさまざまな対応策を講じることでリスクが減少していくこととなります。
(2030年)
(2050年)
(3)リスク管理
前記「①サステナビリティ全般(3)リスク管理」に記載の通りです。
前記「①サステナビリティ全般(4)指標及び目標」に記載の通りです。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。また各事項の発生可能性や影響度について、以下の分類を目安に考察を行っております。
[A] 発生の可能性:(イ)高(2~3年の期間に1度以上程度)、(ロ)中(3年~10年の期間に1度以上程度)、(ハ)低(10年以上の期間に1度以上程度)
[B] 影響度:(イ)大(売上高換算10%以上又は利益換算30%以上)、(ロ)中(売上高換算5%~10%又は利益換算15%~30%)、(ハ)小(売上高換算5%未満又は利益換算15%未満)、なお影響が表れる様相は売上高、利益といった業績のみならず、財産損失、事業遂行力低下、企業イメージダウン等が考えられますが、すべて業績に引き直して考察しております。
当社グループでは輸入商品を取扱っており、その仕入価格は産地国・調達先国の気候・作柄状況、地場通貨の相場、政情等によって変動する国際商品相場及び為替レートの影響を受けます。このような相場リスクを回避する目的で為替予約取引及びコーヒー先物取引を行い、また、調達先国を複数持つとともに、販売価格への転嫁を行っております。しかしながら、相場の変動が著しく急激あるいは変則的で、リスク回避を含めたコスト上昇分を販売価格に転嫁しきれない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、リスク回避目的の為替予約取引やコーヒー先物取引の未実現分の評価については繰延ヘッジ損益に計上され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループのこれまでの業績推移を振り返り、発生の可能性は中位、影響度は中と認識しております。近時はロシアのウクライナ侵攻を発端とするエネルギー・商品価格高騰により、世界的なインフレに拍車が掛かっている状況ですが、緩みのない高感度の情報収集と注意深い状況観察をもとにマネジメント主導で適切に判断し、迅速な対応を図っております。
当社グループは、ITを活用し事業活動を効率的に進めるために、多くのITシステムを運用しています。これらを安全に運用するために権限責任の明確化、チェック体制、外部からの侵入対策、社員教育等情報セキュリティ体制の強化に努めております。しかしながら、サイバー攻撃を含む意図的な行為により、情報の漏洩、消失、各種障害等の影響を受け、信用低下や事業活動が一時的に中断することにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまでの経験をもとに大事に至る当該リスクの発生の可能性は中位、影響度は中と認識しております。引き続ききめ細かく管理し、不測の事態が起きないよう努めてまいります。
当社グループは、需給バランス、作柄、国際相場等さまざまな調達リスクや市場の変化に素早く対応できるよう、取扱商品により産地を分散化し安定的に調達できるよう努めております。さらに、サプライチェーン全体においてどこで人権リスクが発生しやすいかを分析・確認することが重要であり予防・低減に努めております。しかしながら、世界的な需給バランスの変化や不作、調達国における法律等の変更や政治的混乱、国際紛争等により商品の大幅な価格上昇や調達量不足が生じた場合やサプライチェーンにおける児童労働、強制労働、外国人労働者の差別等による当社グループの社会的な信用低下により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。途上国・新興国等における人権状況等に鑑み発生の可能性は中位、影響度は、当社グループの一部の商品において代替が難しいものが含まれるため中と認識しております。それらの対策として、サプライチェーンにおけるリスクの該否及び対応について確認と継続的な対応改善を図ってまいります。
当社グループは、取扱商品の多くを海外から調達しており、その衛生管理に関し、専門部署による品質チェック、海外製造元に対する監査・指導等を通じ、万全な品質管理体制を敷き、十分な注意を払っておりますが、偶発的な事象等による商品事故や当社グループの取り組み範囲を超えるトラブルが発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。不断の管理により未然防止に努めているため、過去においてリスクは最小限に抑えてまいりましたが、食の安全安心の観点から慎重を期し発生の可能性は高位、影響度は、当社グループの取扱商品が多岐にわたることから個々の商品としては小と認識しております。引き続き事故に繋がるいかなる兆候も見逃さず、油断なく管理を行ってまいります。
(5) 感染症(パンデミック)のリスクについて
2020年に発生した新型コロナウイルスは世界中に拡散し、人々の社会生活や経済活動を一変させ、当社グループの主力マーケットである食品業界では、特に外食関連において深刻な打撃を与えてきました。
当社グループについて、感染症(パンデミック)に関して想定されている主要なリスクは次の通りであります。
① 国内外にて需要減少により販売が低下するリスク
② 販売ルートのいずれかで信用面の悪化が生じ連鎖するリスク
③ 生産拠点あるいは物流、サプライチェーンにおいて何らかの支障が生じ、販売用の仕入れ商品の調達が滞るリスク
④ 顧客・取引先と対面商談ができないことによるリスク
⑤ 当社グループのいずれかのユニットで社内感染により業務が停止するリスク
⑥ リモートワークに伴う業務機能の低下、あるいは社員の精神的な不安、ストレス等のリスク
⑦ 金融市場の混乱、あるいは当社グループの不測の業績悪化により資金調達に支障が生じるリスク
例年、インフルエンザ等はありますが、今回の新型コロナウイルスほどのパンデミックは1920年代のスペイン風邪以来と言われており、発生の可能性は低位であると認識しております。しかしながら、感染症(パンデミック)が当社グループ商品の需要先の一つである国内外の外食関連に対し厳しい打撃を与える場合の影響度は大と考えられ、中食等影響を受けない分野の営業強化や新しい販売チャンネルの開拓等の必要性を認識し、継続して検討してまいります。
当社グループでは、国内外の取引先との商取引に伴い発生する売掛債権等の信用リスクが存在します。債権の回収不能という事態を未然に防ぐため、情報収集や与信管理等を徹底し、取引信用保険を付保して、債権の保全策を講じております。また、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を見積り、回収不能見込額を貸倒引当金に計上しております。しかしながら、取引先の予期せぬ事態により信用状況等が大きく悪化した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。ここ約10年来、管理強化に取り組んできた結果、本件リスクが顕在化したことはほとんどありませんが、実際の貸倒引当金の計上事案等を鑑み、発生の可能性は高位、影響度は、与信先の分散により小と認識しております。引き続き緻密に管理を行ってまいります。
当社グループは、輸出入取引に係る貿易業務、常温もしくは冷蔵・冷凍保管、運送をそれぞれに強みのある取引先業者に委託し、それらを通じ様々な物流関連のインフラを利用しております。後述する自然災害のケースのみならず、突発的な電力等の供給不足、大規模ネット障害等によりインフラ機能に支障が生じ、その対応のため、一時的に、関連コストの増加を余儀なくされる場合があります。一方で、物流業界の慢性的な人手不足は、将来的に物流コストの上昇を招くものであり、現に当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼしておりますが、物流を担当する専門部署を設置し、物流の最適化を進めており、それをもとに発生の可能性は低位、影響度は中と認識しております。
当社グループは、専門商社として取扱商品をコーヒー焙煎業者、飲料メーカー、業務用食品問屋、量販店、外食チェーン等へ販売しており、競合他社に対する差別化を図るため主に商品の魅力、特性を訴求しております。今後、消費者の嗜好変化に伴う需要変動、新規参入、販売先の系列化等の影響により競争がさらに激化するような場合には収益性が低下し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。流行商品は変遷し、販売先の事業見直しや合従連衡は起きていますが、大規模なものの発生の可能性は中位、影響度は小と認識しております。当社グループの商品開発力、営業力に磨きをかけ、一層の競争優位を図ってまいります。
当社グループにあっては人材が最重要の経営資源であり、新卒及び中途採用を通じて優秀な人材の獲得及び育成に力を入れております。しかしながら、これら優秀な人材の退職や日本国内における少子高齢化に伴う労働人口の減少、産業構造の変化等により人材の確保が計画どおりに遂行できなかった場合、あるいは予見し得なかった突発的な事情により相応に知見・技能を有した人材の手当てが相当期間できなかった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまでの経験をもとに当該リスクの発生の可能性は中位、影響度は小と認識しております。社員エンゲージメントを高めるために、各社員がモチベーションを持ってそれぞれの能力を伸ばしながら安心して働ける環境作り、ニューノーマルな働き方の採用、適切な待遇、加えて緻密で整合性のある事業計画と要員計画の実践、これらを通じ安定した要員体制を保持してまいります。
当社グループは、中長期的な視点で今後の国内需要の伸びに大きな期待をすることは難しいため、漸次、輸出事業の他、販売・製造拠点展開等の海外事業を拡大させております。それぞれの案件の採算を慎重に検証し、分散を図り、進捗ペースは既存の事業収益と適度なバランスが保たれるようコントロールしておりますが、対象国・地域に関して政治・経済情勢の変化、政策変更の他、自然災害、テロ、争乱等の予期し得ないリスクも存在しております。そうしたリスクの顕在化の程度が著しい場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまでの経験をもとに当該リスクの発生の可能性は中位、影響度は海外事業のボリュームが依然小さいため小と認識しております。きめ細かな情報収集と管理により、不測の事態が起きないよう努めてまいります。
当社グループは、グループ会社にてコーヒー・飲料関連の加工工場を有し、対象事業の維持と拡大を図るため、漸次、機械設備等の増強、保守・更新を行っております。そうした投資案件に関し、金額・内容の妥当性や損益・資金収支の見通し等を慎重に検討の上、金額に応じ取締役会等で決定し、適切に進めております。しかしながら予期せぬ事態の発生により需要が当初予測を大幅に下回った場合、対象資産に係る損益・資金収支に影響を与え、それが高じた際には減損を余儀なくされ、それらにより当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまでの経験をもとに当該リスクの発生の可能性は低位、影響度は中と認識しております。引き続き投資判断を厳正に行うとともに、投資後案件をマネジメントレベルで定期的にレビューすること、保有資産の稼働状況、需要及び損益の先行き見通しを適切に管理することにより、不測の事態が起きないよう努めてまいります。
当社グループは、運転資金及び設備投資資金等を主に金融機関からの借入れにより調達しており、総資産に占める有利子負債の割合が2024年3月決算期で30.0%(有利子負債残高(リース債務を含む)11,020百万円/総資産36,682百万円)といった水準にあります。収益力向上とキャッシュ・フロー重視の経営によりこの水準を引き下げ、金融機関とは円滑、安定的な関係維持を図っておりますが、金融環境の変化により金利が大きく上昇した場合、あるいは金融市場の動揺、当社信用力に係る評価の著しい悪化等で資金調達が制約を受けた場合、調達コストの増加等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまで本件リスクが顕在化したことはなく、発生の可能性は低位、影響度は小と認識しております。引き続き当社グループのバランスシートに万全の注意を払い、金融市場の状況を見ながら、円滑、安定した金融機関取引を継続してまいります。
気候変動や地球温暖化の原因とされるGHG(温室効果ガス)削減が世界的に叫ばれるなか、当社グループの主要取扱商品であるコーヒーに関しては、コーヒー豆の生産地が2050年まで半減するという「2050年問題」が注目され、当社グループとしても検討すべきリスクファクターに含めております。また、他の商品についても少なからず気候変動の影響を受けるものと考えられます。本件は長期的に取り組むべきテーマであり、現時点では発生の可能性は低位、影響度は小と認識しておりますが、目下、グループ全体としてGHG(温室効果ガス)排出量の合理的な算出に取り組んでおり、さらにScope1・2とScope3に分けそれぞれの具体的な削減に向けた活動を推進しております。同様の観点で、当社グループはSDGsへの取り組みをグループ挙げての方針に掲げており、その一環として、近畿大学との共同で開発を行いましたコーヒーグラウンズ(コーヒー残渣)由来のバイオ燃料により焙煎したコーヒーの製造が進んでおります。また、兵庫県小野市に建設予定の新工場ではサーキュラーエコノミーシステムを用いた「グリーン焙煎」構想に着手いたします。
当社グループでは、自然災害等により事業所や設備の損壊による事業活動の低下や停止等、不測の事態が発生する可能性があるため、リスク管理委員会において対応の整備を図っております。しかしながら、予期せぬ自然災害等により想定を著しく超える事態が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまでの経験や統計的な判断をもとに大事に至る当該リスクの発生の可能性は低位、影響度は小と認識しております。BCP(事業継続計画)の強化を図りながら、想定外に対応するような事前検討・準備を怠りなく行い、きめ細かな状況分析に基づく的確な判断により、著しい影響の回避を図ってまいります。
当社グループは、取扱商品の多くの需要期が冬場で、特にその一部は年末・年初に繁忙期を迎えるため、売上高・利益の計上が下半期、なかんずく第3四半期に偏っております。従前より夏場商品の開発等により平準化を試みておりますが、これまでのところ成果は捗々しくなく、もし需要期・繁忙期に突発的な自然災害、事変等が発生し、充分な需要を確保できないような事態が発生した場合、年度を通じた業績への影響等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまでの経験をもとに大事に至る当該リスクの発生の可能性は低位、影響度は小と認識しております。引き続き夏場商品の開発を進めるとともに、きめ細かな状況分析に基づく的確な判断により、著しい影響の回避を図ってまいります。
当社グループは、事業の遂行にあたって、品質・衛生・表示面について食品衛生法、JAS法及び食品表示法等を遵守しております。しかしながら、海外との取引が盛んな当社は、日本のみならず海外各国の法的規制も受けており、各国で法令の変更や新たな法令の施行等があった場合には、当社グループの事業活動が制限される可能性があります。またこれらにより、各種規制事項を遵守するためのコストが増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまでの経験をもとに大事に至る当該リスクの発生の可能性は低位、影響度は小と認識しております。引き続き、きめ細かな状況分析に基づく的確な判断により、不測の事態が起きないよう努めてまいります。
当社グループは、良好な取引関係を維持する目的で一部の取引先企業の株式を保有しております。これらの保有 株式に関し定期的に取引関係、保有メリットが資本コストに見合っているかを精査し、保有の適否を見直すことと しておりますが、景気や市場動向、発行体の信用状況等の急激な変化により保有している有価証券の価格が著しく下落した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまでの経験をもとに大事に至る当該リスクの発生の可能性は低位、影響度は小と認識しております。引き続き、きめ細かな精査と見直しにより、著しい影響の回避を図ってまいります。
当社グループは、わが国において一般的に通用する会計規則に則り、将来の課税所得を合理的に見積もり、回収可能性を検討した上で繰延税金資産を計上しております。将来の課税所得の見積もり等に大きな変動が生じた場合には、繰延税金資産を取り崩すことにより税金費用が計上され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまでの経験をもとに大事に至る当該リスクの発生の可能性は低位、影響度は小と認識しております。引き続ききめ細かく管理し、不測の事態が起きないよう努めてまいります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」に引き下げられて以降、経済活動の正常化が一層進み、景気は緩やかな回復傾向をたどりました。その一方でロシア・ウクライナ戦争の長期化や米国等の金融引き締め政策に伴う影響など、我が国の景気を下押しするリスクも見られております。
海外に関しては、米国は雇用・所得環境の改善により引き続き個人消費等が堅調に推移しております。欧州、中国においては、個人消費の回復が低迷する等、依然として景気は足踏みないし減速傾向にある模様です。
当社グループの主力マーケットである食品業界におきましては、外食産業は人手不足や原材料の高騰等の影響を受けておりますが、個人消費の回復やインバウンド需要により、売上が昨年に比べて増加しております。
当社グループの業績に影響を与える為替相場におきましては、期初1ドルあたり133円台で始まり、日米の金融政策の違いに関する思惑からドル高円安傾向が強まり、151円台まで円安が進みました。その後、日銀の金融政策修正の観測が高まり、加えて米国の早期利下げ観測も相まって141円台まで円高が進みましたが、米国の経済指標が市場の予想を上回ったことを背景に再びドル高円安傾向が強まり、期末では151円台となりました。
コーヒー業界におきましては、コーヒー相場は期初1ポンドあたり170.50セントからスタートし、投機筋の思惑買いにより一時的に200セントを超えました。その後最大生産国であるブラジルの生産量が前年比増産見込みであることにより一時下落しましたが、ロブスタの供給不足や減産予想により投機筋の動きが優勢となり3月末では188.85セントとなりました。
このような状況のなか、当社グループは、前連結会計年度からスタートさせた中期経営計画「SHINE2024」で掲げているROIC経営、GHG(温室効果ガス)の削減と社会課題解決商品の開発に重点を置いた事業拡大、社内体制強化に積極的に取り組み、事業の持続的成長を目指しております。当連結会計年度においては、一部の子会社において足もとのコーヒー相場の影響を受けた収益環境の悪化により、前年同期比で減益を余儀なくされましたが、当社に関し、外食業界の需要回復に加えて円安の影響による仕入価格の上昇を販売価格引き上げに繋げたことに伴い、売上高、利益ともに順調に推移いたしました。
以上の結果、当連結会計年度においては、売上高は62,025百万円(前年同期比5.2%増加)、売上総利益は8,182百万円(前年同期比7.3%増加)、営業利益は1,654百万円(前年同期比25.6%増加)、経常利益は1,741百万円(前年同期比34.5%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,049百万円(前年同期比32.5%増加)となりました。
各事業別の状況は次のとおりであります。
コーヒー・飲料事業
コーヒー生豆は、コーヒー相場の高騰及び円安により販売価格は上昇しておりますが、顧客の商流変更、著しい価格競争を避けていること、前年同期にスポット販売した顧客への売上が今期なかったことにより、売上高が減少いたしました。
飲料原料は、円安により販売価格が上昇したことに加え、飲料メーカー向けの販売が好調だったことにより売上高が増加いたしました。
その結果、コーヒー飲料原料の売上高は前年同期比0.4%の微減となりました。
アフターコロナにより外食需要・観光産業向けレギュラーコーヒーなどの業務用需要は回復基調ですが、これまでのコーヒー相場高騰及び円安傾向に伴う値上げやリニューアルの影響で、主要顧客への販売が振るわず、また主要顧客との取引形態の変更も影響しました。
その結果、コーヒー飲料製品の売上高は前年同期比0.0%、横ばいとなりました。
これらの理由により、コーヒー・飲料事業の売上高は22,890百万円と前年同期比0.2%の微減となり、売上総利益は3,453百万円と前年同期比6.7%の増加となりました。
食品事業
ドライ商品は、量販店向けの野菜缶詰、メーカー原料・産業給食・老健向けへのフルーツ缶詰等の販売が増加し、各商品群の価格改定も進み、売上高は前年同期比17.7%増加いたしました。
フローズン商品は、中国産ポテトの取り扱いが増加し、既存の量販惣菜業態、小売業態・外食業態への販売が増加傾向で推移し、大型商品の価格改定・市場の復調もあり、売上高は前年同期比8.7%増加いたしました。
メーカー商品は、顧客の商流変更などもありましたが、ドライ・フローズンともに、昨年落ち込んだ外食向けの販売が回復に向かい、売上高は前年同期比2.3%増加いたしました。
その結果、加工食品全体の売上高は前年同期比8.4%増加いたしました。
主力のエビ関連は、需要先によりまちまちで売上高は横ばいに推移しました。イカ関連は、工場で使用されるイカの原料販売が増加したことにより、売上高が増加いたしました。また、水産調理冷食関連は、量販・中食業態向け商品の販売が増加したことにより、売上高が増加いたしました。一方で、タコ関連は、価格高騰の影響により既存得意先の需要が減退し、売上高が減少いたしました。
その結果、水産の売上高は前年同期比0.3%の微減となりました。
調理冷食は中食業態向けに商品提案を実施いたしました。中でも大きな伸びは原料販売となりました。その一方で大口顧客での商品切り替えにより唐揚げ商品の販売数量が減少となりました。
その結果、調理冷食の売上高は前年同期比11.7%増加いたしました。
生鮮野菜は国産玉葱の台湾向け輸出が大きく減少いたしました。また、得意先のメニュー変更もあり、玉葱、牛蒡の生鮮野菜は販売数量、売上高ともに減少いたしました。
農産加工品は、トマトペースト、たけのこ加工品、蓮根加工品において新規得意先の開拓が進んだことに加え、輸入コスト上昇により販売単価が上昇したことにより売上高が増加いたしました。
その結果、農産の売上高は前年同期比5.2%減少いたしました。
これらの理由により食品事業の売上高は27,809百万円と前年同期比3.0%の増加となり、売上総利益は3,566百万円と前年同期比11.8%の増加となりました。
海外事業
海外現地法人の事業拡大に加え、EUにおける日本食マーケットの成長をうまく取り入れることができたことや、英国で設立した合弁会社の効果も相まって、欧州向けの輸出が大幅に増加し、売上高は伸長いたしました。
なお、中国現地法人において販売シェアは伸びているものの、国内経済の不況に加えて競争激化、足もとのコーヒー相場の影響により利益率が下落しております。
その結果、海外事業の売上高は11,325百万円と前年同期比25.1%の増加となり、売上総利益は1,162百万円と前年同期比2.9%の減少となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ113百万円増加し、5,213百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動の結果得られた資金は3,811百万円(前連結会計年度に使用した資金は1,290百万円)となりました。その主な内容は、税金等調整前当期純利益1,686百万円及び仕入債務の増加1,042百万円です。
投資活動の結果使用した資金は797百万円(前連結会計年度に比べ使用した資金は84百万円増加)となりました。その主な内容は、投資有価証券の取得による支出550百万円です。
財務活動により使用した資金は2,926百万円(前連結会計年度に得られた資金は2,944百万円)となりました。その主な内容は、借入金及び社債の減少1,248百万円です。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は単一セグメントに該当するため、事業別に生産、受注及び販売の状況を記載しております。
当社グループのうち連結子会社において飲料製品(レギュラーコーヒー・インスタントコーヒー)の生産を行っておりますが、グループ事業全体における重要性が低いため、生産実績及び受注状況については記載しておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高62,025百万円(前年同期比5.2%増加)、売上総利益8,182百万円(前年同期比7.3%増加)、営業利益1,654百万円(前年同期比25.6%増加)、経常利益1,741百万円(前年同期比34.5%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益1,049百万円(前年同期比32.5%増加)となりました。新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」に引き下げられて以降、経済活動の正常化が一層進む一方、ウクライナ問題の長期化、世界的な資源価格高騰、さらには円安に伴う物価上昇圧力も相まって、依然として先行きは不透明な状況が続いておりました。また、食品業界の特に外食産業におきましては、人手不足や原材料高騰等の影響を受けているものの、個人消費の回復やインバウンド需要により売上が昨年に比べて増加しております。当連結会計年度におきましては、一部の子会社において足もとのコーヒー相場の影響を受けた収益環境の悪化により、前年同期比で減益を余儀なくされましたが、当社に関し、外食業界の需要回復に加えて円安の影響による仕入価格の上昇を販売価格引き上げに繋げたことに伴い、売上高、利益ともに順調に業績を伸ばし、期中には当初計画の上方修正を行いました。その後も業績は順調に推移し、着地としても上方修正した計画を利益面では大幅に上回る結果となりました。
また、前連結会計年度からスタートさせた中期経営計画「SHINE2024」で掲げているROIC経営、GHG(温室効果ガス)の削減と社会課題解決商品の開発に重点を置いた事業拡大、社内体制強化に積極的に取り組んでおります。
今後は、将来の目標とする姿からのバックキャストによって描かれるルートにしたがってビジネスモデルの変革や事業ポートフォリオの改革を進め、社会的課題・環境課題に対する高度な取り組みや新たなフィールドへのチャレンジ等を行うことにより事業の持続的成長を目指してまいります。
(単位:百万円)
連結会計年度の財政状態に関しては、期末日が休日であったことに伴い、売上債権・仕入債務が増加しております(売上債権は605百万円増加、仕入債務は1,042百万円増加)。一方、棚卸資産が減少(810百万円減少)、それに伴い借入金も大きく減少(1,192百万円減少)しております。当連結会計年度末の現預金の残高は月商の1.03ヶ月と当社グループとしては特に問題ない水準ですが(前連結会計年度末は1.06ヶ月)、引き続き財務の効率化と健全化を意識して取り組んでまいります。
事業別の経営成績の状況は次のとおりであります。
コーヒー・飲料事業 ・・・ 売上高: 22,890百万円 (前年同期比 0.2%減少)
売上総利益: 3,453百万円 (前年同期比 6.7%増加)
食品事業 ・・・ 売上高: 27,809百万円 (前年同期比 3.0%増加)
売上総利益: 3,566百万円 (前年同期比11.8%増加)
海外事業 ・・・ 売上高: 11,325百万円 (前年同期比25.1%増加)
売上総利益: 1,162百万円 (前年同期比 2.9%減少)
コーヒー・飲料事業は減収増益となっておりますが、著しい価格競争を避けていること、前年同期にスポット販売した顧客への売上が今期なかったことが主な要因であります。
食品事業は増収増益となっておりますが、外食業界の需要回復に加えて円安の影響による仕入価格の上昇を販売価格引き上げに繋げたことが主な要因であります。
海外事業は増収減益となっておりますが、英国で設立した合弁会社の効果も相まって、欧州向けの輸出が大幅に増加しておりますが、中国現地法人において足もとのコーヒー相場の影響により利益率が下落したことが主な要因であります。
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、現金及び現金同等物において期末残高は、前連結会計年度末に比べ113百万円増加し、5,213百万円となりました。また営業活動によるキャッシュ・フローは営業活動の結果得られた資金は3,811百万円となり、これは、主に税金等調整前当期純利益(1,686百万円)及び仕入債務の増加(1,042百万円)が大きく影響しております。当社が特に重視している運転資本関連項目の回転期間の推移は以下のとおりです。業態を勘案すれば特に問題ない水準と考えており、引き続きキャッシュ・コンバージョン・サイクルを注視しながら適切な運営を行ってまいります。
当社グループは適切な自己資本比率を維持しつつ、外部からの資金調達の制約を考慮しながら、円滑、安定的な資金繰り運営と手許流動性の維持を行っております。2002年の株式店頭登録以降、資本(エクイティ)による資金調達の実績はなく、調達の源泉は基本的に金融機関からの借入金に依存しております。その最近の推移は以下のとおりであります。当社グループは、前項の適切なキャッシュ・コンバージョン・サイクル、金融機関との密接な取引関係、不測の事態へのクッションとしての相応の自己資本の3つを資金流動性維持の根幹に据え、運営を行っております。今後も安定・効率的な資金調達と資本コストを意識した事業運営により、健全な財政状態が維持されるよう努めてまいります。
(単位:百万円)
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。ただし見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果がこれらの見積りと異なる場合があります。それに関連する主な項目は以下のとおりであります。
当社グループは、債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒が懸念される特定の債権については個別に回収可能性を検討し、債権の回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。
繰延税金資産は、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を検討し計上しております。
当社グループは、投資案件に関し、金額・内容の妥当性や損益・資金収支の見通し等を慎重に検討の上、金額に応じ取締役会等で決定し、適切に進めております。
当社グループは、保有株式に関し定期的に資本コストに見合っているか等を精査し、保有の適否を見直すこととしております。
当社グループは、従業員に対する賞与支給に充てるため、業績を鑑み、支給見込額を見積り計上しております。
当社グループは、棚卸資産を主として移動平均法による原価法(貸借対照表価額については収益性の低下に基づく簿価切り下げの方法)で評価しておりますが、収益性の低下による簿価の切り下げは、一定の仮定及び販売可能性の判断に基づいております。
該当事項はありません。
特記すべき研究開発活動はありません。