文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは「“水”を究め、自然と人間が調和した豊かな環境を創造する」を企業理念とし、当事業年度において新たに企業ビジョン「持続可能な社会の実現に貢献する『水の新たな価値』の開拓者」を定めました。また、当社グループの経営の中核的概念を、従来の「CSR」から「サステナビリティ」に広げ、企業活動と自然環境や社会システムが相互に影響し合った持続的な成長を指向し、サステナビリティを標榜した「企業ビジョン」の実現に向けた当社グループの重要課題を「クリタグループのマテリアリティ」として定めました。
当社グループは、企業価値の向上と競争優位の創出に邁進し、株主・投資家をはじめとするすべてのステークホルダーの皆様に対する適正かつ迅速な情報開示を通じ、より透明性の高い経営の実現を目指しております。
(2) 中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
①中期経営計画
当社グループは、2023年4月より5カ年の中期経営計画「PSV-27」(Pioneering Shared Value 2027)をスタートさせました。マテリアリティの課題解決に繋がる社会価値を起点とした新事業の創出やCSVビジネスの展開に加え、顧客価値を起点とした既存ビジネスの深化・変革により、強固な社会価値・経済価値の創出基盤を確立することを目指しています。PSV-27 計画最終年度(2027年度)の業績目標は次の通りとしております。
売上高 4,500億円
売上高事業利益率 16%※
親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE) 12%以上
投下資本利益率(ROIC) 10%以上
※事業利益は、売上高から売上原価ならびに販売費及び一般管理費を控除した恒常的な事業の業績を測る当社グループ独自の指標です。IFRSで定義されている指標ではありませんが、財務諸表利用者にとって有用であると考え、自主的に開示しております。
「PSV-27」では「人材・技術・しくみを磨き上げ、圧倒的なスピードと課題解決力で、期待を超える価値を切り拓く」を基本方針とし、次の重点施策に取組んでいきます。
(重点施策)
・電子産業への重点化
超純水供給事業で蓄積した「水に関する知」をバリューチェーン全体で活用し、併せて営業・設計・調達の変革を実現することにより、圧倒的なスピードで深い顧客理解に基づくソリューションを提供し、世界の電子産業市場に対する事業展開を加速していきます。
・多様な産業を通じた社会との共通価値の創出とグローバル展開
各国・地域の顧客動向やニーズを一元的に把握し、CSVビジネスをはじめとした社会との共通価値を創出するソリューションをグローバルに展開します。また、サーキュラーエコノミーの視点で、企業と企業、企業と地域をつなげるソリューションを開発し提供していきます。
・社会課題を解決するイノベーションの推進
温室効果ガス(GHG)排出削減、節水、資源循環などで社会に貢献する新たな領域の開発に中長期的な視点で取り組みます。また、外部機関との協業を推進し、新たな領域で確固たる競争優位性を確立していきます。
・技術立社としての基盤強化
技術立社を支える多様な分野の人材の獲得と育成を強化するとともに、世界の知財のビッグデータを駆使し、イノベーションや事業の方向付けを行います。また、デジタル技術を駆使した「水に関する知」の蓄積と利活用を進めていきます。
・グループ経営基盤のさらなる強化
当社の経営体制を変革し、コーポレートガバナンスの水準を一層高めていきます。また、多様な人材の育成
と活躍の支援によるエンゲージメントの向上、生産プロセスの変革とサプライヤーとの共存共栄に基づく強固
なサプライチェーンの構築、デジタル技術の早期確立と業務プロセスの変革によるデータドリブンな経営に取り組んでいきます。
②価値創造ストーリー
当社グループは、企業理念の実現に向け社会と共に持続的、長期的に成長していくための道筋をクリタグル
ープの価値創造ストーリーとして言語化しました。当社グループの一人ひとりが価値創造ストーリーの担い手となることで、企業理念の実現を目指してまいります。
(クリタグループの価値創造ストーリー)
私たちクリタグループは、世界の様々な現場で日々変化する水の課題に対しソリューションを提供しております。
現場から得られる水に関する課題や情報は、私たちの知として集約、蓄積されます。私たちはこの知の活用により、お客様の真の課題を理解し、お客様と共有できる形での価値の予測とともに最適なソリューションを提供します。
私たちは、予測した価値の実現により、お客様と社会との共通価値を創造(Creating Shared Value:CSV)し、社会と産業を変えていきます。そして、創造した価値にふさわしい収益を得るとともに、お客様と社会からの信頼を基に更なる現場と新たな知を獲得していきます。
(3) 会社の対処すべき課題
当社グループは、2023年度より中期経営計画「PSV-27」(Pioneering Shared Value 2027)をスタートさせまし
た。PSV-27計画では、サステナビリティを経営戦略の中核に位置付け、クリタグループの経済価値の向上と社会価値、顧客価値の向上を結び付けた取り組みを強化していきます。
PSV-27計画の初年度である当期は、電子産業への重点化に取り組み、新規のお客様から水供給サービスの受注を獲得したほか、ドイツのアルカデ・エンジニアリングGmbHとその関連会社の株式を取得し、欧州での事業基盤を整備しました。また、グループ全体でCSVビジネスの展開に取り組むとともに、国内ではCSVビジネスを加速させるため、グループの販売事業会社の統合を決定したほか、使用済紙おむつの分別処理装置を初受注し、循環型経済社会に貢献する事業を立ち上げました。収益性に課題のあったクリタ・アメリカ,Inc.では、新しい経営体制にて不採算事業を撤退させるなど変革を進め、収益性の改善が進んでいます。また、社会課題を解決するイノベーションの推進に向け、イノベーションを実現する仕組みや体制の見直し、技術立社としての基盤強化に向け、知的財産および市場を統合的に分析し、そこから得られた情報を経営戦略に役立てるIPランドスケープの活用を開始しました。さらにグループ経営基盤の強化として、指名委員会等設置会社への移行や、経験者採用も含めた採用、人材育成の強化を進めています。
PSV-27計画の2年目にあたる2024年度は、計画達成に向け、確固たる道筋をつけていく必要があります。そのために、当社グループの対処すべき課題として、次の5つの重点施策に取り組んでまいります。
1) 電子産業における事業基盤の強化とグローバル展開の推進
世界四極(日本、アジア、北南米、EMEA)体制における電子事業戦略を構築するとともに、水供給サービスの多様化とお客様層の拡大を図ります。また、DXを活用した生産プロセスの変革を推進し、リードタイム削減と建設コ
ストダウンの達成を確実なものとするとともに、サービスビジネスの拡大を継続していきます。
2) CSVビジネスを通した収益性の改善
グループ連携を強化してCSVビジネスを拡大させるとともに、新たなCSVビジネスを創出するための業務プロセス
をアジャイルに構築するほか、全社的な取り組みを加速させるプロジェクトを開始します。また、低収益事業を縮減し、収益性の改善を図ります。
3) 社会課題を解決するイノベーションの推進
2023年度に行ったイノベーション創出プロセスの抜本的な見直しを受け、実効性の高い開発基盤を確立し、運用
していきます。また、グループ内のR&D機能の連携を強化し、技術視点での競争優位性を構築し、展開をしていきます。
4) 技術立社としての基盤強化
技術立社を支える多様な分野の人材の採用と育成を継続するほか、知的財産のビッグデータを駆使し、イノベーションや事業の方向付けを行います。また、「水に関する知」の権利化や、開発技術およびビジネスモデルの競争優位性を確保していきます。
5) グループ経営基盤の更なる強化
タレントマネジメントのプラットフォームを導入し、人材データの集約と活用を推進するとともに、より実効的で透明性の高いコーポレートガバナンスの確立に取り組んでいきます。また、企業価値向上につながる財務情報、非財務情報を一体的に可視化し、PSV-27計画達成のための重点的な取り組みを明確にして管理する仕組みを構築していきます。
文中の将来に関する事項は、特に断りのない限り、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)クリタグループのサステナビリティへの取組
当社グループはサステナビリティを「自然環境や社会システムの中に企業活動を位置づけそれらとの相互影響を踏まえて持続的な成長を図ることである」と捉え、サステナビリティを経営の中核に据えて取組んでおります。
①ガバナンス
当社グループは、企業ビジョンの実現に向けた重要課題を、サステナビリティに関するグローバルな課題を踏まえ中期経営計画ごとに特定して「クリタグループのマテリアリティ」として定め、指標及び目標を設定して取組んでおります。指標ごとに定める活動所管部署は目標の達成に向けて活動を実行し、サステナビリティ推進委員会へ活動状況を報告しております。当社の執行役員であるサステナビリティ推進本部長を委員長とするサステナビリティ推進委員会は、マテリアリティへの取組を統合して管理、推進するとともにその状況を原則年2回経営会議へ付議または報告しております。経営会議はマテリアリティへの取組状況を取締役会へ報告し、取締役会が監督しております。また、取締役会の諮問機関であるサステナビリティ諮問会議において、サステナビリティを取り巻く国内外の情勢を踏まえ、マルチステークホルダー視点、中長期的視点からサステナビリティ経営に関する当社の在り方を検討、審議し、取締役会へ答申、報告しております。なお、執行役のインセンティブ報酬のうち、業績連動報酬である短期インセンティブ報酬算定の一部には、マテリアリティに紐づく一部の指標及び目標の達成度を評価する環境貢献係数が用いられます。
②戦略
当社グループは、「持続可能な社会の実現に貢献する『水の新たな価値』の開拓者」を企業ビジョンに掲げ、この実現に向けた当社グループの重要課題を「クリタグループのマテリアリティ」として指標及び目標を設定して、中期経営計画PSV-27の戦略と有機的に融合させた取組としており、マテリアリティへの取組はPSV-27の目標達成において重要な役割を担っております。
なお、マテリアリティは以下のステップにより特定しました。
<Step1:サステナビリティ課題の抽出>
国際規範※1、法令と情報開示基準※2、および過去のステークホルダーエンゲージメント※3より得られた課題から、マテリアリティ候補となるサステナビリティ課題37テーマを網羅的に抽出しました。
<Step2:マテリアリティ・マトリクスの作成>
E&S委員会※4委員、社外取締役、監査役※4、E&S委員会※4事務局にアンケートを実施し、以下の2側面につきポジティブ側面・ネガティブ側面での影響度(発生可能性と影響の大きさ)評価を行いました。
(i) サステナビリティ課題がクリタグループの企業価値に与える影響(財務マテリアリティ)
(ⅱ)クリタグループがサステナビリティ課題に取組むことで社会・環境に与える影響(インパクトマテリアリティ)
評価結果を、上記(i)(X軸/横軸)および(ⅱ)(Y軸/縦軸)の2軸のマトリクスで整理し、X軸・Y軸ともに影響度の大きいテーマをマテリアリティ候補とし、7つのマテリアリティと複数のマテリアリティに共通する5つのサブテーマに絞り込みました。
<Step3:妥当性の確認とマテリアリティの特定>
Step2で絞り込んだマテリアリティ候補を経営会議および取締役会※4へそれぞれ報告し意見を得た後、経営会議メンバーを中心とする中期経営計画の検討を担う委員会でPSV-27の検討と並行してマテリアリティの妥当性を確認し、最終的に8つのマテリアリティを、経営・事業活動の基礎とすべき「基礎テーマ」と、社会との共通価値創造に繋がる「共通価値テーマ」に分類し、特定しました。その後、取締役会※4にてこれを決議し「クリタグループのマテリアリティ」としました。
※1 SDGs、UNGC10原則、OECD多国籍企業行動指針、WEFグローバルリスク報告書。
※2 GRIスタンダード、GHGプロトコル、SASBスタンダード、EUタクソノミー、SFDR、CSRD、TCFD、TNFDなど。
※3 顧客からの調査への回答、取引先アンケート結果、従業員エンゲージメント調査結果、株主・投資家への
説明会、ESG評価機関からの調査への回答、社会貢献活動など。
※4 定款の一部変更が行われた2023年6月29日以前の機関であり、E&S委員会は現サステナビリティ推進委員
会の旧称です。
また当社グループは、顧客、取引先、従業員、株主・投資家および地域社会といったステークホルダーとのエンゲージメントに取組み、エンゲージメントを通して把握した期待や懸念、評価を、「クリタグループのマテリアリティ」ならびにその指標及び目標の妥当性の検証や目標達成に向けた諸活動に生かしていくこととしております。サステナビリティ推進委員会は、エンゲージメントごとに定める関連部署よりエンゲージメント状況を集約し、マテリアリティへの取組に反映します。
ステークホルダー |
エンゲージメントの方法 |
顧客 |
・ 顧客・サプライヤー評価機関からの調査への対応。 |
・ 製品・技術・ビジネスモデルの開発段階におけるヒアリング。 |
|
・ 顧客調査や提案活動によるコミュニケーション。 |
|
取引先 |
・ 取引先アンケートの実施やサプライヤー評価機関を通した調査の実施。 |
・ 取引先ヘルプラインを通じた、匿名の相談・通報窓口の確保。 |
|
・ 人権デューデリジェンスの実施を通した潜在的人権リスクの調査・是正。 |
|
従業員 |
・ 従業員エンゲージメント調査の実施。 |
・ 自己申告制度等を活用した従業員との対話。 |
|
・ コンプライアンス相談窓口、公益通報窓口の設置による、匿名の相談・ 通報窓口の確保。 |
|
株主・投資家 |
・ 各種説明会の開催、カンファレンスへの参加、およびロードショーの実施 による株主・投資家との対話。面談や電話会議による証券アナリストや 機関投資家との個別対話。 |
・ ESG評価機関等からの調査への対応。 |
|
地域社会 |
・ 事業拠点へ寄せられた苦情や謝意の確認。 |
・ 公益財団法人クリタ水・環境科学振興財団への出捐を通した水と環境に 関する科学技術の振興への貢献。 |
|
・ 水資源および公衆衛生の問題改善や次世代の育成等の社会貢献活動 を通した社外団体との協働。 |
|
・ 事業拠点がある地域における自然保全、福祉、防災などに関する活動や、 災害・紛争発生時の被災地支援。 |
③リスク管理
当社グループに関わるリスクの監視およびマネジメントは、経営管理本部長が推進しております。経営管理本部長は、「全社リスクマップ」に基づき、当社グループのリスクの分析・評価を定期的に行うとともに、継続的にリスクの監視を行うことで、その発生防止に努めております。
経営に重大な影響を及ぼすリスクが顕在化した場合は、経営管理本部長が対応の責任者と体制を立案し、代表執行役社長の承認を得て直ちに発令します。当該責任者は、速やかに対策を実行するとともに、リスクによる影響、是正状況および再発防止策について、代表執行役社長、経営管理本部長および取締役会または監査委員会に報告することとしております。
重大なリスクのうち、コンプライアンスや人権、気候変動等に関するものはサステナビリティ推進委員会委員長を、安全衛生に関するものは本部安全衛生委員会委員長を責任者としております。また、日常的な事業活動に直結したリスクへの対応は、各本部長・事業部長を責任者として実施しており、各本部・事業部は主管する業務およびグループ会社に関するリスクの特定・評価を行っております。その他、品質、災害、交通事故、環境、情報セキュリティおよび輸出規制等のリスクへの対応は、各担当部署が実施しております。経営管理本部長、各委員会委員長、各本部長・事業部長は、リスクマネジメントの推進状況を定期的に取締役会に報告しております。なお、リスクマネジメントの実施状況や改善状況のモニタリングは、監査室を責任部署として実施しております。
④指標及び目標
中期経営計画における「クリタグループのマテリアリティ」の指標及び目標は、マテリアリティごとに定めた活動所管部署が策定の上、E&S委員会(現サステナビリティ推進委員会の旧称)および中期経営計画の検討を担う委員会での討議を経て、取締役会にてこれを決議しました。
|
マテリア リティ |
意味するところ、 取組みの方向性 |
指標 |
目標(年度) |
|||||
2023 |
2024※2 |
2025 |
2027 |
2030 |
2050 |
||||
共 通 価 値 テ | マ |
1.水資源 の問題 解決 |
水に関する知を生かしたソリューションの提供と様々な組織との協働により水量、水質、水へのアクセスの側面から水資源の問題解決に取組むとともに、生態系サービスとしての水の適切な循環を維持する。 |
コレクティブアクションを実施する延べ流域数と活動流域の延べ人口 |
3流域・ 130百万人 |
3流域・ 93百万人 |
4流域・ 160百万人 |
5流域・ 600百万人 |
7流域・ 700百万人 |
|
CSVビジネスによる節水貢献量 |
125百万m3 |
135百万m3 |
200百万m3 |
300百万m3 |
|
||||
GHG排出量・節水貢献量比※1の削減割合(2022年度比) |
5% |
20% |
35% |
50% |
|||||
取水量原単位(連結売上高比)の削減割合(2022年度比、超純水供給事業を除く) |
7% |
21% |
23%※2 |
27%※2 |
|||||
水資源に関する関心向上のためにエンゲージした個人・組織・団体の数 |
前年度 以上 |
前年度 以上 |
前年度 以上 |
前年度 以上 |
|||||
2.脱炭素 社会実現 への貢献 |
産業・社会における温室効果ガスの削減に資するソリューションの開発・提供、低炭素な事業活動の実践により、サプライチェーン全体で脱炭素社会の実現に貢献する。 |
Scope1+2の削減割合(2019年度比) |
17% |
50% |
52% |
73% |
100% |
Net-Zero |
|
Scope3の削減減割合(2019年度比) |
11% |
14% |
17% |
22% |
30% |
Net-Zero |
|||
CSVビジネスによるGHG削減貢献量 |
630千t |
900千t |
1,100千t※2 |
1,600千t※2 |
|
|
|||
3.循環型 経済社会 構築への 貢献 |
限りある資源、再生可能な資源を最適な方法で有効活用・再利用する製品・サービスの開発・提供により、持続可能な産業・社会の構築と自然の喪失防止・回復に貢献する。 |
CSVビジネスによる資源化貢献量・資源投入削減貢献量の増加割合(2022年度比) |
30% |
65% |
100% |
300% |
|||
自社廃棄物のリサイクル化率 |
前年度 以上 |
前年度 以上 |
前年度 以上 |
前年度 以上 |
|||||
基 礎 テ | マ |
4.革新的な 製品・ 技術・ ビジネス モデルの 開発と 普及 |
グループ内外の様々な人・組織の協働を通し、社会課題の解決に資する革新的な製品・技術・ビジネスモデルの開発と普及に努め、持続可能な社会の発展に寄与する。 |
革新領域※3への投資割合 |
15% |
20% |
25% |
30% |
|
|
革新領域※3のテーマ件数割合 |
20% |
23% |
30% |
30% |
|||||
革新領域※3に関するステークホルダーエンゲージメント件数 |
前年度 以上 |
前年度 以上 |
前年度 以上 |
前年度 以上 |
|||||
5.戦略的な 人材育成 と活用 |
企業理念に共感する多様な人材の育成を含めた確保と活用を通し、一人ひとりが能力を発揮し、顧客価値の最大化と社会との共通価値の創造に取組む企業グループであり続ける。 |
エンゲージメントスコア(a.全業種平均を上回る会社の割合、b.調査した会社全体でのスコア) |
a.50% b.前回調査以上 |
-※4 |
a.65% b.前回調査以上 |
a.75% b.前回調査以上 |
|||
栗田工業の業務執行に係る経営層に占める[女性、外国人、経験者採用者]の割合 |
30% |
前年度 以上 |
35% |
40% |
|||||
開発人材、デジタル人材、知財人材の充足度 |
65% |
70% |
75% |
80% |
|||||
6.高い品質 と安全性 の製品・ サービス の提供 |
多様な現場接点から得られる情報を基に、製品・サービスを生み出し、品質と安全を担保するための改善を継続し、社会からの信頼を高める。 |
顧客・社会に影響を与える事故の再発率の削減割合※5(前年度比) |
30% (栗田工業) |
30% (栗田工業) |
20% (栗田工業、国内関係会社) |
20% (栗田工業、国内外関係会社) |
|
7.人権を 尊重した 事業活動 |
人権に関する国際規範を踏まえ、企業理念が示す「自然と人間が調和した豊かな環境」における「人間」への取組として、すべての人の人権を尊重することを目指す。 |
サプライヤーへの人権デューデリジェンスの実施 |
実施 |
実施 |
実施 |
実施 |
|
|
労働安全強度率※6 (栗田工業および国内関係会社) |
0.005以下 |
0.005以下 |
0.005以下 |
0.005以下 |
|||||
人権に関する教育研修について対象者の受講率 |
100% |
100% |
100% |
100% |
|||||
人権侵害に関する救済窓口(グリーバンス・メカニズム)の設置 |
-※7 |
-※7 |
-※7 |
完了 |
|||||
8.公正な 事業活動 |
公正・透明・誠実な行動を実践し、正々堂々と業務に取組むことで、クリタグループで働く人々の自分の業務への誇りを高めるとともに、社会からの信頼を継続的に高める。 |
内部通報窓口に関する教育研修について対象者の受講率 |
100% |
100% |
100% |
100% |
|||
贈賄防止・競争法遵守等の法令・社内ルールに関する教育研修について対象者の受講率 |
100% |
100% |
100% |
100% |
|||||
贈賄防止法および競争法に関する違反件数 |
0件 |
0件 |
0件 |
0件 |
※1 クリタグループのScope3カテゴリ11および13を水処理装置のCSVビジネス(Scope3カテゴリ11および13を発生させる)による節水貢献量で除した数値。
※2 2024年度目標は、サステナビリティ推進委員会で検討を行い経営会議で決定した。また、2025、2027年度目標は、2024年度目標を踏まえ当初目標から上方修正した。
※3 Deloitte 7 cells(Deloitte社の成長戦略策定の考え方)における「革新領域」を指す。
※4 2年ごとにエンゲージメント調査を行うこととしており、次回は2025年度に実施する予定。
※5 2023年度は栗田工業、2025年度から国内関係会社、2026年度から海外関係会社にそれぞれ対象を拡大して取組む。
※6 日本国外の指標および目標については、現地法令等を踏まえ、2025年度までに別途策定する。
※7 2027年度までの設置完了を目標とし、2023、2025年度は設置に向けた調査等を行う。設置後は周知に関する目標を設定する。
(2)人的資本(人材の多様性を含む)への取組
①ガバナンス
当社グループは、当社の執行役員であるサステナビリティ推進本部長が人的資本に関する取組全般の推進と統括を行い、組織文化醸成に関する取組は、各本部・事業部およびグループ各社と連携し推進しております。また、人材育成や活用に関する取組は、「クリタグループのマテリアリティ」のテーマ5に定めており、サステナビリティ推進本部長を委員長とするサステナビリティ推進委員会が管理、推進するとともに、人づくり委員会やDX委員会と連携して推進しております。サステナビリティ推進本部長ならびにサステナビリティ推進委員会、人づくり委員会、DX委員会は、人的資本に関する取組状況を経営会議へ付議または報告し、経営会議はその内容を審議し必要な施策を決定します。また、経営会議は人的資本に関する取組状況を取組全般の監督を担う取締役会へ報告します。
②戦略
当社グループは、企業ビジョン実現下の人材と組織の状態をD&Iビジョンとして「水と環境を大切に想う多様な人々が、互いの違いを受け入れ、相互作用することで、水の新たな価値を創造し続ける企業グループ」と定めております。
また、D&Iビジョンの実現を通じ、価値創造ストーリーを具現化する組織・人材のあり方を、人材戦略として策定しております。人材戦略は、人材ポリシーとこれを支える方向性で構成されております。人材ポリシーは価値創造ストーリーの基になっている「戦略ストーリー」に描かれている組織や人材の姿から抽出して整理し、「クリタグループの人材に求める、価値観や思考・行動の基本的な考え方」を表しております。これにグループ内外の環境変化を加味し、取組の方向性を「組織に関する方向性」と「人材活用に関する方向性」に整理しております。
<人材の多様性の確保に関する方針>
当社グループの中で多様性確保に課題の多い、当社での取組を重点的に推進しており、当社の人事部内にD&Iの専任組織を設け、人事部、当社内組織ならびにグループ会社と連携し、施策を実施しております。
◇女性活躍
当社では、属性に関わらず全員が活躍し、組織として活力と貢献意欲を高めることを目指しており、女性従業員の活躍推進もその一環として取り組んでいます。2023年度には以下の取組を実施しました。
-積極的な女性総合職の新卒・経験者採用の継続、女性管理職の登用促進
-経営層と女性総合職が「キャリア形成」や「多様な働き方の促進」をテーマに話し合い、気づきを得るための座談会
-専門職志向者向けに「自身が専門職になることのイメージ」を明確にし、「専門職としての思考ステップ」を体験するワークショップ
◇経験者採用者
当社は事業の展開に合わせた即戦力人材としての期待から、経験者採用の強化を図っており、2023年度の経験者採用者数は対前年比で約4倍に増加しています。また昨年度から開始した選考時の業務・キャリアパス説明の強化や経験者採用受入プログラム(約3日間)を継続実施し、配属後の状況を確認するための面談も開始しております。当社は、社員全体に占める経験者採用者の割合を2031年4月には30%程度まで引き上げる計画で、今後も積極的な採用、管理職への登用等を継続してまいります。
<人材の育成に関する方針>
当社では、エンゲージメント調査より当社従業員から体系的なキャリア形成支援が求められていることを踏まえ、若年層のキャリア形成支援とキャリア形成を考慮した異動・配置の検討〔経験〕、部下の挑戦を支える管理職の育成〔助言〕、「実効性ある学習機会」と「自主的に学習できる環境」の提供〔研修〕の観点で人材育成施策の方向性を整理し、これに則した育成施策を実施しております。具体的には以下の取組を行っております。
-「専門技術者部会」による専門技術者の後継者育成、「DXマスターカレッジ」によるデジタル人材育成
-研修動画の拡充、人材育成コンテンツの一元化と当社グループへの公開
-「階層別研修」による、自律的に成長する意欲や本質的な課題解決力の習得につながるプログラムの提供と社内外e-learningコンテンツを用いた自主学習環境の提供
-人材特性(資質)と各人の心の状態の可視化による、上司・部下間のコミュニケーションの質向上
-適正配置と自律的なキャリア形成の促進に向け、自己申告制度の改定、キャリア相談窓口の設置、人事情報管理システムを活用した異動マッチングの実施
<人材の採用及び維持に関する方針>
当社は、競争力の源泉の一つである結束力を継承する新卒人材を一定数確保しつつ、専門性や多様性を拡充する人材である経験者採用を推進し、また、豊富な経験、スキル、実績を有するベテラン層の活躍機会の拡大を図ることを通して、人材の採用及び維持を進めてまいります。
③リスク管理
当社グループに関わるリスクの監視およびマネジメントは、経営管理本部長が推進しております。経営管理本部長は「全社リスクマップ」に基づき、グループのリスクの分析・評価を定期的に行うとともに、継続的にリスクの監視を行うことで、その発生防止に努めております。人的資本に関連するリスクは全社リスクマップに統合され、サステナビリティ推進本部長を責任者として、(1)③リスク管理に記載の全社のリスク管理体制に基づきリスクの低減を推進しております。
④指標及び目標
当社グループにおける人材戦略の進捗を定量的に把握しながら施策を実行するため、2022年度に設定したKPIとKGIの進捗は、以下のとおりであります。この中で、エンゲージメント調査(2年毎に実施予定)から導く当社独自の指標として、「D&I実行度」(当社グループで策定した「D&Iビジョン実現のための推奨行動」の実行度を表す)や、「人事制度運用度」(人事制度の効果的な運用状況を表す)を定めており、これらの計測を通して人材戦略の実効性を高めてまいります。
|
方向性等 |
指標 |
分類※1 |
KGI、KPIの実績および目標/水準 |
|||||||
2022年度※2 |
2023年度 |
|
2027年度 |
|
|||||||
|
|
||||||||||
Outcome (価値創造ストーリーを実現する人材、組織) |
|||||||||||
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
||
KGI |
- |
エンゲージメントスコア(a.全業種平均を上回る会社の割合、b.調査した会社全体でのスコア) |
MA |
<実績> a. 50% (4社※5) |
<実績> a. 51% (43社※5) |
<目標> a. 65% |
<目標> a. 75% |
- |
|||
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
||
Input/Output (人的資本拡充/活用) |
|||||||||||
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
||
KPI |
組織文化 |
|
MA |
<実績> 27% |
<実績>
|
<目標>
|
<目標> 40% |
- |
|||
|
T |
4.1% |
|
|
10%程度 |
- |
|||||
|
T |
29% |
|
- |
3割から 4割程度 |
- |
|||||
|
T |
10.6% |
|
- |
- |
|
|||||
|
T |
68% |
|
- |
8~9割 程度 |
- |
|||||
|
T |
23日 |
|
- |
2~8週間程度 |
- |
|||||
D&I実行度 |
MO |
47% (4社※6) |
47% (43社※6) |
前回調査以上 |
前回調査 以上 |
- |
|||||
組織体制 |
|
MO |
73% |
|
- |
8割程度 |
- |
||||
|
MO |
32% |
|
- |
- |
|
|||||
人材の確保・活用 |
|
MA |
59% |
|
|
80% |
- |
||||
人事制度 |
人事制度運用度 |
MO |
38% (4社※6) |
39% (43社※6) |
前回調査以上 |
前回調査 以上 |
- |
※1 MA:マテリアリティとして重視する、T:達成目標を設定する、MO:中期的に傾向をモニタリングする指標を表します。
※2 2022年度の情報を中心に、一部は2021年度の情報を含みます。
※3 海外事業を展開する主な子会社における代表者とその直下の人材に占める現地社員割合を表します。
※4 管理職を含む、専門職・経営補佐職・特別専門職。
※5 調査実施会社数を表します。
※6 調査実施会社数を表します。対象会社数増加に伴う算出方法の変更により、過年度に開示済みの数値を遡及修正しています。
当社グループの中で多様性確保に課題の多い当社を中心とした多様性に関する指標の推移は、以下のとおりであります。
①女性 |
2019年度 |
2021年度 |
2023年度 |
|
2027年度 |
2030年度 |
|||
|
実績 |
実績 |
実績 |
|
目標 |
目標 |
|||
当社 |
女性管理職割合 |
12月1日時 |
2.1% |
2.7% |
4.2% |
|
10%程度 ('28年4月) |
|
|
総合職採用の 女性割合 |
(新卒) |
4月入社時 |
19% |
24% |
35% |
|
- |
|
|
(新卒・経験者) |
通年 |
通年 |
12月末 累計 |
|
27年度 通年 |
|
|||
|
|
|
20% |
26% |
26% |
|
3割から 4割程度 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
<参考>各年度の12月1日時データ |
2019年度 |
2021年度 |
2023年度 |
|
|
|
|||
〇女性管理職割合 |
当社(a) |
2.1% |
2.7% |
4.2% |
|
|
|
||
国内連結子会社(b) |
3.9% |
5.3% |
5.6% |
|
|
|
|||
海外連結子会社(c) |
18.0% |
22.3% |
23.7% |
|
|
|
|||
|
合計(a+b+c) |
9.6% |
13.2% |
14.7% |
|
|
|
||
〇全従業員の女性割合 |
当社グループ |
23.7% |
25.0% |
25.4% |
|
|
|
||
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
②経験者採用 |
|
|
|
2021年9月 |
2023年12月 |
|
2031年4月 |
||
当社 |
社員に占める経験者採用社員の割合 |
10.5% |
12.8% |
|
|
30%程度 |
|||
|
管理職相当※1に占める経験者採用社員割合 |
13.0% |
13.2% |
|
|
- |
※1 管理職を含む、専門職・経営補佐職・特別専門職。
(3)気候変動問題への取組
当社グループは、気候変動問題を世界共通で取組むべき喫緊の課題と捉えており、TCFD提言に基づき、事業活動に伴って発生する温室効果ガス(GHG)の排出の継続的な削減と、事業を通したお客様におけるGHG排出削減に取組んでおります。
①ガバナンス
当社グループは、「クリタグループのマテリアリティ」の一つに「脱炭素社会実現への貢献」を定め、当社の執行役員であるサステナビリティ推進本部長を委員長とするサステナビリティ推進委員会が、グループにおける気候変動問題への取組を統括、推進しています。サステナビリティ推進委員会は、気候変動問題への取組状況を原則年2回経営会議へ付議または報告することとしており、経営会議はその内容を審議し必要な施策を決定します。また、経営会議は気候変動問題への取組状況を取組全般の監督を担う取締役会へ報告し、サステナビリティ諮問会議は国内外の情勢に関する事項等を審議し、マルチステークホルダー視点、中長期的視点から取締役会へ答申、報告を行っております。
②戦略
当社グループは、IPCC SR1.5およびIPCC RCP8.5などで描かれる2種類のシナリオ(1.5℃および4℃)※1に基づき、「発生可能性」と「影響度」の2軸で短期・中期・長期※2のリスクと機会を特定し、クリタグループの施策を策定するとともに一部のリスクと機会については事業への財務影響を評価しています。
分類 |
リスク・機会の内容 |
時間軸 |
事業への財務影響・施策 |
|
政策と法 |
リスク |
炭素税の導入や増加 |
中~長期 |
<事業への財務影響(2050年度時点)> ・1.5℃:22億円※3 ・4℃:なし <施策> ・Scope1+2:2030年度までに推定で約11億円の費用を投じ、再生可能エネルギーの採用や電気自動車の導入などにより100%削減。 ・Scope3:2030年度までにCSVビジネス※4の推進に加え、低炭素原料の調達などにより基準年比30%削減。 |
リスク |
GHG排出量の多い製品やサービスへの規制 |
中~長期 |
<施策> ・デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化。 ・再生可能エネルギーの採用や電気自動車の導入などによるScope1および2の削減。 ・バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大。 |
|
機会 |
GHG排出量の少ないエネルギーへの転換を支援する政策インセンティブの普及 |
中~長期 |
||
テクノ ロジー |
リスク/ 機会 |
GHG排出量の少ない製品やサービスへの転換が進む |
短~長期 |
|
市場 |
リスク |
化石燃料関連セクターからの需要減少 |
中~長期 |
<施策> ・デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化や、バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大による事業のシフト。 |
リスク |
原料、エネルギーコストの高騰 |
中~長期 |
<施策> ・デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化。 ・再生可能エネルギーの採用や電気自動車の導入などによるScope1および2の削減。 ・バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大。 |
|
機会 |
DXの加速による電子産業の需要増加 |
中~長期 |
||
物理的な影響 |
リスク |
サイクロンや洪水などによる工場停止や工期遅延の増加 |
短~長期 |
<事業への財務影響(2020年度以降)> ・1.5℃と4℃共通:リスクがあると特定した国内生産拠点で約157億円/年。 <施策> ・約14百万円を投じ、1拠点で止水板を設置済。 ・水害対策など、自然災害に備えた事業継続体制の継続的強化。 |
機会 |
冷却設備の稼働率増加 |
短~長期 |
<施策> ・デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化。 ・バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大。 ・比較的排出量の小さい拠点を対象とした再エネ証書購入。 |
|
資源効率 |
機会 |
効率的な生産や流通プロセスの普及 |
短~長期 |
|
機会 |
水使用量の削減 |
短~長期 |
||
エネル ギー源 |
機会 |
GHG排出量の少ないエネルギーの普及 |
短~長期 |
|
機会 |
分散型エネルギー源への転換 |
短~長期 |
製品と サービス |
機会 |
GHG排出量の少ない製品およびサービスの需要増加 |
短~長期 |
<事業への財務影響(2027年度以降)> ・1.5℃:約3,500億円/年※5 ・4℃:なし <施策> ・デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化。 ・再生可能エネルギーの採用や電気自動車の導入などによるScope1および2の削減。 ・バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大。 |
機会 |
GHG排出削減に向けた多様な技術ニーズの増加 |
短~長期 |
||
レジリエンス |
リスク/ 機会 |
燃料、水資源などの代替や多様化 |
短~長期 |
<施策> ・デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化。 ・再生可能エネルギーの採用や電気自動車の導入などによるScope1および2の削減。 ・バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大。 |
※1 気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)が予測する、工業化以前の水準からの気温上昇が1.5℃となるシナリオおよび最も気温上昇が高いシナリオ。
※2 短期(1~3年)、中期(3~5年)、長期(5~20年)と設定。
※3 (事業展開地域のScope1および2排出量+Scope3カテゴリ1排出量)×(事業展開地域の炭素価格)の2050年度予測に基づく試算。
※4 従来に比べ節水・GHG排出削減・廃棄物の資源化および資源投入量の削減に大きく貢献する製品・技術・ビジネスモデル。
※5 GHG削減に寄与する新規のCSVビジネスのSAM(Serviceable Available Market)を試算。
③リスク管理
当社グループに関わるリスクの監視およびマネジメントは、経営管理本部長が推進しております。経営管理本部長は「全社リスクマップ」に基づき、グループのリスクの分析・評価を定期的に行うとともに、継続的にリスクの監視を行うことで、その発生防止に努めております。気候変動に関連するリスクは全社リスクマップに統合され、サステナビリティ推進本部長であるサステナビリティ推進委員会委員長を責任者として、(1)③リスク管理に記載の全社のリスク管理体制に基づきリスクの低減を推進しております。
④指標及び目標
当社グループは、気候変動問題への取組を「クリタグループのマテリアリティ」のテーマ2に定め、SBTi※6が示す手法に沿い「Net-Zero」を長期目標とし、Scope1、2および3の削減に取組んでおります。さらに、CSVビジネスによるGHG削減貢献量の中期目標も設定し、産業・社会におけるGHGの削減に資するソリューションの開発・提供、および低炭素な事業活動の実践により、サプライチェーン全体で脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
基準年となる2019年度における当社グループのCO2排出量は、Scope1+2が約2%、Scope3が約98%でした。Scope1+2は、その大半はScope2の電力由来のCO2排出であるため、再生可能エネルギーの採用を進めると共に、ガソリン車から電気自動車やハイブリッド車に順次切り替えていきます。Scope3は、約70%はカテゴリ11「販売した製品の使用」(主に水を送るために用いられるポンプなどの回転機)によるCO2排出であり、当社グループの競争優位性向上との両立を図るため、CSVビジネスの仕組みを活用してお客様に提供するソリューションの低炭素化を推進してまいります。
有価証券報告書提出時点で最新の実績を確認できる年度である2022年度は、Scope1+2は主に電力由来のCO2排出量が多い国内の複数の拠点にて再生可能エネルギーを採用したことで、基準年である2019年度比で約16%減少しました。また、Scope3は主要排出源となっているポンプ類の調達実績に基づく消費電力量の減少や、再生可能エネルギーの普及によるCO2排出係数の低下といった要因により、基準年である2019年度比で約7%減少しました。
2023年度は、Scope1+2は上記施策のさらなる推進により前年比で減少し、Scope3はポンプ類を必要とする案件の受注増による増加が低炭素化による削減を上回るため前年度より増加する見通しです。
マテリアリティ |
指標 |
中・長期目標※7 |
実績※7 |
||||
2027年度 |
2030年度 |
2050年度 |
2019年度 |
2021年度 |
2022年度 |
||
2.脱炭素社会 実現への貢献 |
Scope1+2 |
73% |
100% |
Net-Zero |
-
( |
5%
( |
16%
( |
Scope3 |
22% |
30% |
Net-Zero |
-
( |
24%
( |
7%
( |
|
CSVビジネスによるGHG削減貢献量 |
1,500 千t-CO2 |
- |
- |
279 千t-CO2 |
367 千t-CO2 |
499 千t-CO2 |
※6 企業に対し、気候変動による世界の平均気温の上昇を、工業化以前と比べ1.5℃に抑えるという目標に向けて、科学的知見と整合した削減目標を設定することを推進するイニシアチブ。
※7 Scope1+2および3は2019年度(基準年)からの削減割合。
CO₂排出量の過年度の実績は、為替と物価の補正を行ったため、開示済みの数値を遡及修正しています。
当社グループに係るリスクについては、経営管理本部長をリスク管理およびリスクマネジメント推進の担当役員として定め、当社およびグループ会社のリスクの分析・評価を定期的に行うとともに監視を継続し、その発生防止に努めています。なお、気候変動を含むサステナビリティに関するリスクはサステナビリティ推進本部長が担当しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経済、市場の状況
当社グループは事業活動を行っている国内および海外の国・地域の経済状況の影響を受けております。電子市場、一般水処理市場ともに工場操業度、設備投資の動向により需要が変動し、経営成績に影響を与える可能性があります。電子市場では顧客の経営状況により需要が変動し、経営成績に影響を与える可能性があります。さらに米中貿易摩擦の加速により輸出規制や制裁関税措置等が強化された場合は、関係する当社顧客の経営状況に影響し、間接的に当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。気候変動問題対応による顧客の化石燃料関連事業の縮小・撤退、燃料や水資源等の代替、当社設備および当社製品等から排出されるCO2に対する炭素税の導入や増加などにより経営成績に影響を与える可能性があります。なお、当社グループは、水と環境に関わる課題にソリューションを幅広い業種の顧客に提供しており、またサービスビジネスへの転換を推進し、安定した収益の確保に努めております。さらに、当社は、関係会社の月次・四半期での業績や方針・施策の展開状況の確認、および内部監査や財務報告に係る内部統制のモニタリングを行うとともに、当社の決裁・審査規程に基づき関係会社における重要事項を当社が決定するなど、関係会社の事業管理に努めております。また、当社グループの事業分野における競合相手との競争激化による製品やサービスの価格下落等により、当社グループの収益性が低下する可能性がありますが、当社グループは(3)に記載のとおり競争優位性の確保に努めております。
(2) 資材調達に関する影響、原材料・資材・エネルギーコストの高騰およびサプライチェーンの混乱
当社グループは製品の製造や製作・建設等のために使用する原材料や部品を当社グループ外から調達しております。また、様々な業務を行ううえで必要な役務サービスを当社グループ外から調達しております。これら調達については、クリタグループ行動準則に基づく人権への配慮に加え、クリタグループ調達方針を定め、法令を遵守し、経済・社会・環境に配慮した調達活動を行っておりますが、市況の変化により原材料、部品および役務の価格は変動し、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。なお、新型コロナウイルス等の感染症の拡大やウクライナおよび中東情勢の緊迫化などの国際関係の変化を起因とした水処理薬品の原材料や水処理装置の資材の高騰、エネルギーコスト高騰による物流コストの増加、サプライチェーンの混乱が再燃する可能性がありますが、その場合には販売価格への転嫁、在庫の確保などの対策を講じます。
(3) 新技術・新製品・新サービスの開発、ビジネスプロセスの変革
当社グループは、従来に比べ温室効果ガス(GHG)排出削減、節水、廃棄物資源化に大きく貢献するCSVビジネスをはじめ、新技術・新製品・新サービス等の開発により、薬品、装置、メンテナンスの技術・製品・サービスを駆使した総合ソリューションの拡充に取り組んでおります。また近年ではデジタル戦略本部を設置し、新製品・新サービスへのIoTやAIの活用、ビジネスプロセスのデジタル化などデジタルトランスフォーメーションに積極的に取り組んでおります。これらの開発・変革は不確実なものであり、顧客ニーズに合致した技術や優位性のある製品・サービス・ソリューションモデルをタイムリーに提案できない可能性や、技術革新や顧客ニーズの変化、デジタル技術の進化に追随できない可能性があります。優位性のある新製品・サービス・ソリューションモデルを開発できない場合やデジタルトランスフォーメーションの取り組みが遅延した場合、そして事業を通した顧客における温室効果ガス(GHG)排出削減の取り組みが停滞した場合は、将来の成長と収益性を低下させる等、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
(4) 海外事業展開に係るリスク
当社グループは海外市場における事業拡大を図っております。これらの海外市場への事業展開にあたっては、国内とは異なる、予期しない法律又は規制の変更、政治・経済の混乱、紛争・テロ等のリスクが内在しており、これらの事態が発生した場合は、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。なお、当社グループの事業展開地域においては、外務省やコンサルタントからの治安等の情報入手、現地の弁護士、公認会計士等の専門家の活用による法律・規制に関する確認等を実施しております。また、海外への出張者に対しては海外出張ガイドブックによる安全管理教育を実施し、海外駐在員に対しては医療・トラブル時の支援サービス、安全に関する情報を提供し役員・従業員の安全確保に努めております。また、ロシアのウクライナ侵攻、台湾や朝鮮半島の情勢による規制・制裁強化の影響やそれに伴う景気悪化等の間接的な影響も考えられます。
(5) 大規模自然災害等
大規模自然災害等により当社グループの事業遂行に直接的または間接的な混乱が生じた場合は、当社グループの事業活動、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、当社グループでは、地震、台風、集中豪雨等大規模な自然災害その他の事象を想定したクリタグループBCM(事業継続マネジメント)方針を定め、事業継続計画の策定、当社グループの各拠点および役員・従業員の自宅の水害リスク調査と対策実施、安否確認システムの構築、建物の耐震化、防災用物資の備蓄、役員および従業員を対象とした災害対応訓練等を行っております。
(6) 為替変動
当社グループは、海外での企業買収などにより海外売上比率は48.5%になっております。
各海外子会社の現地通貨建の財務諸表は、円換算後に連結財務諸表に反映されております。従って、現地通貨と日本円との為替レートの変動が当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。なお、当社グループは、為替リスクをヘッジする目的で為替予約、通貨スワップ契約等のデリバティブを利用することがあります。
(7) 不採算工事発生によるリスク
水処理装置事業における水処理設備において、顧客との契約時に設定する原水条件等の当社グループ側での不備や、設計・施工における過失等に起因する製品・サービスの欠陥や事故による追加原価の発生、またはそれにより顧客へ損害が生じた場合の損害補償の発生の可能性があります。当社グループでは、設計・施工要領書に基づく設計・施工の徹底をしており、工事予算交付前にエンジニアリングレビューという会議体を設置し、その場にて工事単位ごとに品質・コスト・納期・安全・環境等に関する設計の妥当性を確認しております。また受注後から引渡しまで毎月ビジネスプロセスレビューという会議体において、工事進捗度の確認、工事単位ごとの収支管理を行い、工事原価総額の見積りにおいても最新の情報に基づいた見積りを行っております。海外のグループ会社でも同様の取組みを実施しており、大型工事については当社より設計や工程管理に関する支援を行っております。このように、問題情報データの共有等により不適合の未然防止を図っております。
(8) 固定資産の減損損失
①のれん及び無形資産の減損損失
当社グループは、海外事業の基盤獲得や競争力のある技術や事業モデル獲得のため、企業買収を実施し、結果として「のれん」の残高は71,001百万円(連結総資産の12.7%)となっております。「のれん」は償却を行わず、毎年又は減損の兆候が存在する場合はその都度、減損テストを実施しております。事業環境の変化等により買収が期待どおりの効果を得られない場合や減損テストにおける将来キャッシュ・フローの見積りと実績に差異が発生した場合は、「のれん」等の減損損失が発生します。減損テストを実施するにあたり、回収可能価額は使用価値により測定しております。使用価値は将来キャッシュ・フローを資金生成単位の加重平均資本コストを参考に決定した割引率で割り引いて算定しております。将来キャッシュ・フローの予測期間は5年であり、過去の経験と外部の情報を反映して作成され、経営陣によって承認された事業計画を基礎としております。5年を超える期間については、資金生成単位が属する市場の状況を勘案して決定した長期平均成長率をもとに算定しております。事業計画における売上成長率、その後の期間の成長率および割引率を主要な仮定として使用しており、これら仮定の変動により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、当社は、当社グループの投融資に関する審査機能を強化するため、経営管理本部副本部長を委員長とする投資委員会を設置しております。同委員会は取締役会や経営会議に付議する投融資案件について、事業計画・投資金額・リスク評価の妥当性、採算性、競争優位性、適法性などの観点から審査を実施し、審査結果や主要論点を取締役会および経営会議に報告することで、当社は十分な検討、議論を経て企業買収の実施を決定しております。また、買収後は(1)に記載の関係会社の事業管理を行っております。
②有形固定資産の減損損失
当社グループは、主に超純水供給事業等で顧客工場に事業用設備を設置しております。顧客の事業撤退や工場の休止に伴い固定資産の減損損失が発生する場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、これらの投資決定にあたっては、顧客の事業状況、顧客との契約条件および投資対効果などを慎重に検討しております。
(9) 情報システムのセキュリティ
当社グループの事業活動において、情報システムの利用とその重要性は増大しており、コンピュータウイルスその他の要因によってかかる情報システムの機能に支障が生じた場合は、当社グループの事業活動、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、当社グループは情報システム管理方針を定め、ウイルスチェックソフト導入、標的型攻撃メール訓練等の役員・従業員への情報セキュリティ教育や啓発の実施によりコンピュータウイルス対策を強化しております。またセキュリティ事故が発生した際の機会損失を最小限に抑えるため、緊急対応を実行する組織を設置しております。
(10)法令・コンプライアンス
当社グループの役員・従業員が法令を遵守できなかった場合や社会倫理に反する行動を起こした場合は、事業活動の制約、罰金、社会的信用の失墜等により当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。なお、当社グループは、サステナビリティ推進本部長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、コンプライアンス活動を単に遵法活動と捉えるのではなく、社会倫理に基づいた行動を全ての企業活動の前提として徹底していくための活動として位置付け、推進しております。
(11)製品・サービスの品質および水処理設備のオペレーションエラー
顧客または当社グループの水処理設備のオペレーションにおける人為的なエラー等により基準に満たない処理水を供給または排出することで損害賠償の発生や社会的信用の失墜につながる可能性があります。賠償責任保険の適用を超えるような責任が発生した場合や社会的信用が失墜した場合は、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。なお、当社グループは(7)で記載したように品質マネジメントシステムを構築し、顧客満足向上のため、継続的な改善活動に取り組んでおります。
(12)知的財産権
広範囲に事業を展開する中で、当社グループの知的財産権が侵害される可能性や第三者が保有する知的財産権を侵害する可能性があり、こうした場合は、当社グループの経営成績に影響を与える可能性がありますが、当社グループは知的財産権の重要性を認識し、国内および海外において、知的財産の権利化、第三者が保有する知的財産権の侵害防止に継続して取り組んでおります。
(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「3.重要性がある会計方針」、「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。
(2) 経営成績
当期における世界経済は、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化により景気の先行きに不透明感が高まり、物価上昇や金利引き上げの影響などで一部に弱さがみられましたが、持ち直しの動きが継続しました。
当社グループを取り巻く市場環境は、国内においては、新型コロナウイルス感染症の5類移行による社会活動の正常化を背景とした個人消費の増加や原材料等の供給制約の解消により製造業の生産活動は、持ち直しに向かっていたものの、半導体関連需要の低迷や一部自動車メーカーの生産停止の影響などにより、年度後半にかけて回復の動きが鈍化しました。設備投資は、高水準の企業収益を背景に底堅く推移しました。海外においては、米国の景気は堅調に推移した一方で、欧州の経済成長は、エネルギー価格などの物価上昇や金利引き上げの影響により停滞しました。アジアでは、中国は不動産市場の低迷長期化などの影響を受け、景気回復の動きに弱さがみられましたが、その他の地域では持ち直しの動きがみられました。
このような中、当社グループは、5か年の中期経営計画「PSV-27」(Pioneering Shared Value 2027)をスタートさせました。「人材・技術・しくみを磨き上げ、圧倒的なスピードと課題解決力で、期待を超える価値を切り拓く」という基本方針のもと、電子産業市場分野では、デジタル技術を駆使して、これまでの超純水供給事業などで蓄積したデータを分析、可視化した「水に関する知」をバリューチェーン全体で活用し、併せて、営業、生産、開発の機能を1つの組織に集約することにより、深い顧客理解に基づく、節水やGHG排出削減、廃棄物の資源化といった環境負荷低減、生産性の向上など顧客の課題解決に貢献するソリューションの提供に注力しました。一般産業市場分野では、各国・地域において多様な事業に取り組む顧客の動向やニーズを一元的に把握し、CSVビジネスをはじめとした社会との共通価値を創出するソリューションをグローバルに展開するための取り組みを強化しました。海外では、アルカデ・エンジニアリングGmbH(本社:ドイツ)とその関連企業からなる4社を買収し、欧州での電子産業向け水処理装置事業における現地の製造拠点とサプライチェーンを獲得し、European Chips Act(欧州半導体法)等を背景とした電子産業向け水処理装置の需要増加に対して迅速に対応可能な事業基盤の整備に取り組みました。
以上の結果、当社グループ全体の受注高は390,152百万円(前年同期比4.2%増)、売上高は384,825百万円(前年同期比11.7%増)となりました。利益につきましては、事業利益は42,055百万円(前年同期比9.0%増)、営業利益は41,232百万円(前年同期比41.9%増)、税引前利益は41,686百万円(前年同期比38.3%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は29,189百万円(前年同期比45.0%増)となりました。
当連結会計年度においては、その他の収益1,968百万円、その他の費用2,791百万円を計上しております。その他の収益は、欧州子会社における為替差益計上などにより前年同期比で404百万円増加しております。その他の費用は、主に前連結会計年度に計上したクリタ・アメリカ, Inc.(水処理薬品事業)ののれんの減損損失7,646百万円がなくなったため、前年同期比で8,304百万円減少しております。この結果、営業利益、税引前利益、親会社の所有者に帰属する当期利益は大幅な増益となりました。
(電子)
受注高は、165,805百万円(前年同期比2.4%減)となりました。主に前連結会計年度に開始した超純水供給契約案件の貢献により、継続契約型サービスが増加し、メンテナンスも高水準であった前年同期を上回りましたが、水処理装置が前年同期における複数の大型案件の受注計上の反動により、また精密洗浄が半導体市況悪化による国内および米国の顧客工場の稼働率低下の影響を受け、それぞれ減少しました。
売上高は172,698百万円(前年同期比15.7%増)となりました。精密洗浄が減少した一方で、水処理装置で受注済みの大型案件の工事進捗により大幅に増加したほか、継続契約型サービスやメンテナンスも増加しました。
利益につきましては、精密洗浄の売上減少に加え、比較的原価率が高い装置案件の売上が増加したことによる売上原価率悪化の影響を受け、事業利益は、19,938百万円(前年同期比8.3%減)、営業利益は、20,202百万円(前年同期比3.3%減)となりました。
(一般水処理)
受注高は、224,346百万円(前年同期比9.8%増)となりました。水処理薬品は、主に中国での顧客工場稼働率低下の影響を受け、減少しましたが、水処理装置は、主にアルカデ社(4社)を新規連結したことにより増加し、継続契約型サービス、エンジニアリング洗浄、メンテナンスも伸長しました。
売上高は、212,127百万円(前年同期比8.6%増)となりました。水処理薬品は減少しましたが、新規連結の影響があったことに加え、水処理装置やメンテナンスで受注残からの売上計上、継続契約型サービスとエンジニアリング洗浄の伸長により、増収となりました。
利益につきましては、増収に加え、製品構成見直しやコスト低減などの収益性改善の取り組みにより事業利益は、22,103百万円(前年同期比30.8%増)となり、営業利益は、前連結会計年度に計上したクリタ・アメリカ, Inc.(水処理薬品事業)ののれんの減損損失7,646百万円がなくなったことにより大幅に増加し、21,030百万円(前年同期比155.1%増)となりました。
生産、受注および販売の実績は、以下のとおりであります。
①生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
電子市場(百万円) |
172,333 |
113.8 |
一般水処理市場(百万円) |
212,871 |
102.8 |
合計(百万円) |
385,205 |
107.4 |
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
②受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
電子市場 |
165,805 |
97.6 |
64,593 |
90.6 |
一般水処理市場 |
224,346 |
109.8 |
59,320 |
124.9 |
合計 |
390,152 |
104.2 |
123,914 |
104.3 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
電子市場(百万円) |
172,698 |
115.7 |
一般水処理市場(百万円) |
212,127 |
108.6 |
合計(百万円) |
384,825 |
111.7 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(3) 財政状態
①資産合計 557,407百万円(前連結会計年度末比55,869百万円増加)
流動資産は228,018百万円となり、前連結会計年度末比31,602百万円増加しました。これは主に営業債権及びその他の債権が19,165百万円、棚卸資産が4,222百万円、現金及び現金同等物が3,541百万円それぞれ増加したためであります。
非流動資産は329,388百万円となり、前連結会計年度末比24,267百万円増加しました。これは主に超純水供給事業(電子市場)に係る設備の新規取得により有形固定資産が12,236百万円増加したことに加え、のれんが10,588百万円増加したためであります。のれんの増加は、第2四半期連結会計期間において、欧州の水処理装置の製造・販売会社であるアルカデ・エンジニアリングGmbH、アルカデ・インダストリーSAS及びクリタ・スイスAG(2023年12月18日付でアルカデ・エンジニアリングAGから社名変更)およびアルカデ・エンジニアリング(アジア) Pte. Ltd.を買収したことによる増加2,734百万円と円安外国通貨高の影響によるものであります。
②負債合計 223,995百万円(前連結会計年度末比18,217百万円増加)
流動負債は118,620百万円となり、前連結会計年度末比9,152百万円増加しました。これは社債及び借入金が9,901百万円減少したものの、営業債務及びその他の債務が16,938百万円、その他の流動負債が2,302百万円それぞれ増加したためであります。
非流動負債は105,375百万円となり、前連結会計年度末比9,065百万円増加しました。これは主に長期借入金の増加により社債及び借入金が9,956百万円増加したためであります。
③資本合計 333,411百万円(前連結会計年度末比37,652百万円増加)
主に円安外国通貨高に伴う在外営業活動体の換算差額の計上により、その他の資本の構成要素が16,251百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上等により利益剰余金が21,019百万円それぞれ増加したためであります。
当連結会計年度末における資産をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
報告セグメント |
調整額 (注) |
連結財務諸表 計上額 |
||
電子市場 |
一般水処理市場 |
計 |
|||
セグメント資産 |
261,694 |
234,018 |
495,713 |
61,693 |
557,407 |
(注)主なものは各報告セグメントに配分していない全社資産であります。
(4) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は54,009百万円(前連結会計年度末比3,541百万円増加)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動で得られた資金は50,874百万円(前年同期比2,243百万円増加)となりました。これは主に営業債権及びその他の債権の増減額(△は増加)15,177百万円、法人所得税の支払額12,965百万円などで資金が減少したものの、税引前利益41,686百万円、減価償却費、償却費及び減損損失32,637百万円などで資金が増加したためであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動で使用した資金は35,801百万円(前年同期比10,473百万円減少)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出28,958百万円、子会社の取得による支出(取得資産に含まれる現金及び現金同等物控除後)3,080百万円などで資金を使用したためであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動で使用した資金は15,337百万円(前年同期比16,438百万円増加)となりました。これは主に長期借入れによる収入12,013百万円により資金が増加したものの、配当金の支払額9,236百万円、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの純増減額(△は減少)10,196百万円、リース負債の返済による支出5,310百万円などで資金を使用したためであります。
当社グループは事業運営上必要な流動性確保と安定した資金調達体制の確立を基本方針としております。短期運転資金、設備投資やその他成長分野への投資資金は自己資金を基本としつつも、必要に応じて債券市場での調達や銀行借入を実施しております。なお、当連結会計年度末において、当社は取引金融機関2社とコミットメント・ライン契約を締結しております(借入実行残高 -百万円、借入未実行残高 20,000百万円)。
(5) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
中期経営計画「PSV-27」に対する達成状況については、以下のとおりであります。
|
2023年3月期実績 |
2024年3月期実績 |
2028年3月期目標 |
売上高(百万円) |
344,608 |
384,825 |
450,000 |
売上高事業利益率(%) |
11.2% |
10.9% |
16% |
親会社所有者帰属持分 当期利益率(ROE) |
7.1% |
9.3% |
12%以上 |
投下資本利益率(ROIC) |
8.0% |
7.2% |
10%以上 |
株式取得による子会社化
当社は、2023年4月27日開催の取締役会において、当社連結子会社であるクリタ・ヨーロッパGmbHを通じて、欧州の水処理装置の製造・販売会社であるアルカデ・エンジニアリングGmbH、アルカデ・インダストリーSAS及びアルカデ・エンジニアリングAG(2023年12月18日付でクリタ・スイスAGに社名変更)の発行済株式の全てを取得し、子会社化することを決議し、2023年5月2日に株式譲渡契約を締結し、2023年7月3日付で全株式を取得しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「7.企業結合」に記載のとおりであります。
当社グループは、社会的課題の解決と顧客の企業価値・競争力向上に貢献する独創的なソリューションの提供に必要な商品・技術の開発に重点的に取り組んでいます。また、ビジネスモデルのデジタルトランスフォーメーションに必要なセンシング技術、データ解析技術、最適制御技術の開発、水処理技術の数理モデル化、および当社商品技術を支える水処理の作用・障害の機構解明にも注力して取り組んでおります。
今後も、永年培ってきた“水”の技術にさらに磨きをかけるとともに、企業ビジョン「持続可能な社会の実現に貢献する『水の新たな価値』の開拓者」の実現に向けて、日本、ドイツ、シンガポール、北米等の開発拠点が連携して、社会と産業のニーズに幅広く対応する商品・技術の開発を積極的に進めてまいります。
研究開発は、主に当社のイノベーション本部により推進されており、研究開発スタッフはグループ全体で約187名にのぼり、これは従業員総数の2.3%にあたります。当連結会計年度の研究開発費の総額は
当連結会計年度におけるセグメント別の研究開発概要と主な成果および研究開発費は、以下のとおりです。
(1) 電子市場
電子産業における生産性向上に寄与する中で、CO₂排出量削減、水使用量削減および廃棄物削減に貢献し、使用
材料のマテリアルリサイクルなど循環型経済社会の実現に向けた開発に取り組んでいます。当該連結会計年度にお
ける主な成果は次のとおりです。
・半導体製造プロセスでの水使用量の変動に応じて、超純水製造量を可変させ、水質変動なく安定的に造水することができる超純水製造システムを開発しました。超純水の水質維持のため常に一定量の超純水を循環運転することで発生していた過剰な送水エネルギーを抑制でき、顧客のCO₂削減に大きく貢献します。
・最先端半導体研究機関との協業により、半導体の製造プロセスにおいて配線材料として使用される銅の溶解を防止する洗浄技術と、それを実現する機能性水供給ユニットを開発しました。これにより、半導体製造プロセスにおける生産性向上、超純水使用量削減、および薬品使用量削減に貢献していきます。
なお、当セグメントに係る研究開発費は
(2) 一般水処理市場
顧客の節水・CO₂排出量削減・生産性向上に貢献する技術開発や、排水の回収・再利用、廃棄物の削減・リサイ
クルや、再生可能エネルギー創出などの循環型社会実現に向けた技術開発に取り組んでいます。当該連結会計年
度における主な成果は次のとおりです。
・製紙産業における板紙製造工場の紙化工程で発生する微細な原料由来の汚泥を、板紙原料として改質できる添加剤を開発しました。これにより、従来、廃棄されていた汚泥を削減し板紙原料として再利用するとともに、それに伴う紙化工程時の蒸気使用量の増加の抑制に貢献します。
・使用済み紙おむつの分別処理装置「クリタサムズシステム」により分別される回収プラスチックの純度を向上する前処理技術を開発しました。今後、多種多様な製品へ活用できるプラスチックペレットの製造条件の最適化を図り、使用済み紙おむつの再資源化に寄与するソリューションの拡充を目指します。
なお、当セグメントに係る研究開発費は