DNPグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、DNPグループが判断したものです。
DNPグループは、サステナブルな社会の実現を目指し、「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」ことを企業理念に掲げています。また、この理念に基づき、持続可能なより良い社会と、より心豊かな暮らしを実現するために、長期を見据えて、自らがより良い未来をつくり出すための事業活動を展開していくことを「経営の基本方針」としています。
さまざまな活動を通じて、社会課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値を創出し、それらの価値を生活者の身近に常に存在する「あたりまえ」のものにしていきます。人々にとって「欠かせない価値」を生み出し続けることで、DNP自身が「欠かせない存在」になるように努めており、こうした姿勢を「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントで表明しています。
DNPグループは、「経営の基本方針」に沿った取り組みを通じて、持続的に事業価値・株主価値を創出していきます。また、事業活動の評価指標としてROEとPBRを用いて、価値向上の達成状況を評価していきます。
DNPグループは、「経営の基本方針」に基づき、2026年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画を2023年4月から実行しています。この計画では、「事業戦略」を中心に持続的な価値創出の具体策を実行するとともに、それを支える経営基盤の強化に向けて「財務戦略」と「非財務戦略」を推進し、事業価値・株主価値を高めていきます。
<三つの戦略>
〔1:事業戦略〕
〔1-1:中長期の事業ポートフォリオの考え方〕
「事業戦略」では、市場成長性・魅力度と事業収益性を基準として、目指すべき中長期の事業ポートフォリオを明確に示しました。市場成長性・魅力度が高い「成長牽引事業」(*1)と「新規事業」(*2)を「注力事業領域」と位置付けています。この「注力事業領域」の五つの事業にリソース(経営資源)を集中的に投入し、必要な組織・体制なども十分に整備して、利益の創出を一層加速・拡大させていきます。また、DNP独自の強みの進化と深耕のほか、DNPとは異なる強みを持った企業との連携・M&Aを含む、DNPならではの社会・関係資本である多様なパートナーとの共創などによって、「No.1」を獲得していく戦略を推進していきます。
*1 成長牽引事業:デジタルインターフェース関連、半導体関連、モビリティ・産業用高機能材関連
*2 新規事業:コンテンツ・XR(Extended Reality)コミュニケーション関連、メディカル・ヘルスケア関連
一方、市場成長性・魅力度の伸び率は低水準ながら収益性の高い「基盤事業」(*3)については、事業効率の向上などによって、安定的なキャッシュの創出に努めていきます。また、現状では市場成長性が低く収益性が厳しい「再構築事業」(*4)については、生産能力や拠点の縮小・撤退を含めた最適化を進めるとともに、注力事業領域へのリソースの再配分や、当事業のなかでも独自の強みを有した製品・サービスの強化などによる構造改革を推進していきます。
*3 基盤事業:イメージングコミュニケーション関連、情報セキュア関連
*4 再構築事業:既存印刷関連、飲料事業
〔1-2:各セグメントにおける戦略〕
〇スマートコミュニケーション部門
当部門では、投下資本とキャッシュ創出のバランスを見ながら効率的・効果的な投資を行うほか、DNP独自の強みを活かし、国内外の企業との協業・サービス開発を進めていきます。また、紙メディア印刷関連は、再構築事業の一つとして市場規模に対応した合理化・適正化を進めます。
当部門の注力事業領域である「コンテンツ・XRコミュニケーション関連」では、リアルとバーチャルの空間をシームレスかつセキュアに行き来できるメタバース等を実現し、人々の体験価値を拡大していきます。国内外の多様なIP(Intellectual Property:知的財産)ホルダーやクリエイターとのネットワーク、アーカイブ事業、高精細画像処理技術や版権処理の実績と信頼、そして、個人や情報を安全に認証しながら大量のデータを流通させ、複雑なビジネスプロセスを統合・最適化させる能力などのDNPならではの強みを活かしていきます。また、着実に収益を積み上げる基盤事業として、写真プリント等の多様な製品・サービスをグローバルに展開する「イメージングコミュニケーション関連」、企業・団体等の最適な業務プロセスを設計して関連業務を受託するBPO(Business Process Outsourcing)事業、国内トップシェアのICカードや各種認証サービス等の「情報セキュア関連」の事業を推進していきます。
具体策として、「イメージングコミュニケーション関連」や「情報セキュア関連」でグローバルな投資を拡大するほか、企業・自治体等の業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)化のニーズを捉えたBPO事業の拡大を図ります。「コンテンツ・XRコミュニケーション関連」では、国内外の多数のパートナーとの連携を深めて、新規市場を創出していきます。
〇ライフ&ヘルスケア部門
当部門の注力事業領域の一つ「モビリティ・産業用高機能材関連」では、世界シェアトップのリチウムイオン電池用バッテリーパウチのEV向けのグローバル展開を積極的な設備投資によって推進します。この製品とモビリティ(移動用車両)向けの多様な内外装加飾材を中心に、数十年先を見据えてEVの航続距離の延伸や自動運転、快適な移動空間の実現に取り組んでいきます。
もう一つの注力事業領域の「メディカル・ヘルスケア関連」では、出版・包装・半導体等の事業で培った画像処理技術やカラーマネジメント技術、無菌・無酸素充填技術、ミクロ・ナノ造形技術、精密有機合成技術等を掛け合わせ、原薬製造・製剤・剤形変更・医療パッケージ製造などの製薬サポート事業を展開していきます。また、画像診断やオンライン診療などのスマートヘルスケア事業の拡大に努め、人々の健康寿命の延伸に貢献していきます。
一方、市場環境が厳しい包装関連事業等では拠点の再編などによる収益性の改善・向上を図るとともに、「DNP透明蒸着フィルム IB(Innovative Barrier)-FILM®」等の独自製品や環境配慮包材の拡大を進めます。
具体策としては、リチウムイオン電池用バッテリーパウチの米国拠点への投資、バリアフィルムや環境配慮包材等のグローバル供給能力拡大のほか、メディカル・ヘルスケア関連のパートナーとの相乗効果の最大化などにも取り組んでいきます。
〇エレクトロニクス部門
当部門では、積極的な設備投資を推進するほか、DNP独自の強みを活かした新製品開発や、社外のパートナーとのアライアンスによる半導体サプライチェーンへの提供価値拡大などによって、事業の拡大を加速させていきます。
注力事業領域の一つ「デジタルインターフェース関連」では、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクやディスプレイ用光学フィルムなど、世界トップシェアの製品を中心に、技術革新の潮流も捉えて、リアルとバーチャル、アナログとデジタルをつなぐ新しい価値を創出していきます。
もう一つの注力事業領域「半導体関連」では、自動運転や遠隔教育・遠隔医療、クラウド環境やデータセンターの広がりなどによって全世界のデータ流通量が飛躍的に増大するなか、半導体サプライチェーン全体に不可欠なファインデバイスを開発・提供していきます。
〔2:財務戦略〕
持続的な事業価値と株主価値の創出に向けて、安定的な財務基盤を構築・維持した上で、キャッシュを成長投資に振り向けるとともに、株主還元にも適切に配分していきます。
〇キャッシュ・アロケーション戦略
注力事業領域への積極的な投資とそれぞれの事業の効率化を推進し、成長投資の原資となる営業キャッシュ・フローを安定的に創出していきます。資産効率の改善に向けて、政策保有株式の売却を加速し、遊休不動産の縮減にも着実に取り組んでいます。また、有利子負債の活用を含む適切な資金調達方法を検討するなど、資金効率の最大化に努めていきます。
創出したキャッシュは、注力事業領域に集中的に投資するとともに、経営基盤の構築に向けた投資にも配分していきます。長期にわたって企業活動を推進し、社会や人々に価値を提供し続けていくため、成長投資の推進と株主還元のバランスを考慮した上で、株主還元にも積極的に配分していきます。
〔3:非財務戦略〕
〇人的資本の強化
DNPグループは、「人への投資」を積極的に進めるなかで、2022年に「人的資本ポリシー」を策定し、「人への投資」を企業価値の向上にさらに明確に結びつけ、グローバルでの「人的創造性(付加価値生産性)」を飛躍的に高めていくため、以下の取り組みを進めています。
価値創造に向けた社員のキャリア自律支援と組織力の強化に向けて、DNP版「よりジョブ型も意識した処遇と関連施策」を展開しており、複線型のポスト型処遇、キャリア自律支援に向けた人的投資、競争力の高い報酬水準・体系の維持・確保、組織開発の充実などを進めています。
また、「DNPグループ健康宣言」に基づき、多様な個の強みを引き出すチーム力の強化とマネジメント改革に向けて、「DNP価値目標(DVO)制度」の浸透や組織のエンゲージメントを高める施策を展開し、社員の幸せ(幸福度)を高める健康経営を推進しています。
事業戦略に基づく適材適所の人材配置の実現については、タレントマネジメントシステムを活用したICT人材・DX人材のスキルレベルの可視化、人材ポートフォリオに基づく採用・育成、人材再配置に必要なリスキリングの強化などを進めていきます。
DNPグループはまた、多様な社員を活かし、一人ひとりの強みを掛け合わせることが価値の創出に欠かせないと考え、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進を重要な経営課題の一つとしています。D&I推進の基本方針である「多様な人材の育成」「多様な働き方の実現」「多様な人材が活躍できる風土醸成」の具現化に向けた施策をさらに進めていきます。
〇知的資本の強化
DNP独自の強みと社外のパートナーとの連携を活かして、知的資本を強化していきます。
研究開発の方針として、DNP自身がつくり出したい「より良い未来」の姿を描き、それを起点とした“未来シナリオ”を実現するため、独自の技術等の強みを強化・連動させて、新製品・新サービスの開発・提供につなげていきます。注力事業領域を中心とした新規テーマの創出、基盤技術の強化と新製品開発、オープンイノベーションによる戦略的な技術の獲得と製品化・事業化などを推進していきます。また、ライフ&ヘルスケア部門を中心とした海外での事業展開・マーケティング・研究開発の強化にも努めます。多様な事業を通じて獲得してきた特許等の知的資本の新製品・新サービスへの展開、社内外の強みを積極的に掛け合わせる組織風土の構築・醸成なども進めて、既存事業と新規事業の両方で新しい価値を創出していきます。
また、DNPグループにとってのDXは、アナログとデジタル、リアルとバーチャル、モノづくりとサービスなど、両極端ともいえる強みを融合し、独自のビジネスモデルや価値を生み出すことだと位置付けています。DXに関するこの基本方針に沿って、新規事業の創出と既存事業の変革、生産性の飛躍的な向上、社内の情報基盤の革新などを進めていきます。
〇環境への取り組み
DNPグループは常に、事業活動と地球環境の共生を考え、環境問題への対応を重要な経営課題の一つに位置付けています。「価値の創出(事業の推進)」と「基盤の強化」の両輪で環境課題の解決に取り組むことで、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に貢献していきます。
「価値の創出(事業の推進)」については、環境負荷の低減と事業の付加価値の向上をともに実現する事業ポートフォリオへの転換、環境をテーマとした新規事業の創出、低炭素材料・素材の開発・活用、製品単位のCO2排出量の算定と削減、循環型社会に向けたリサイクルスキームの構築、リサイクル材の活用促進などに取り組んでいきます。
「基盤の強化」では、環境負荷の見える化、再生可能エネルギーの導入、環境負荷を考慮した省エネ設備への投資、生産拠点の最適化、プラスチックを中心とした資源の効率的な利用、原材料のトレーサビリティの確保、生態系への負荷の低減などに取り組んでいきます。
〔4:ガバナンス〕
DNPグループは、環境・社会・経済の急激な変化等、経営に大きな影響を与えるリスクを評価して中長期的な経営戦略に反映し、また、そのリスクを事業機会に転換していくプロセスの強化に取り組んでいます。
この取り組みを一層加速させるため、2022年4月に代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を始動させました。当委員会では、中期経営計画を実行していく過程で、環境・社会・経済の急激な変化を捉え、適切に経営戦略に反映していくため、経営会議・取締役会に報告・提言していきます。
DNPグループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてDNPグループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
DNPグループは、健全な社会と経済、快適で心豊かな人々の暮らしは、サステナブルな地球の上で成り立つと考えています。近年は特に、環境・社会・経済が急激に変化しており、経営に影響を与えるリスク(変動要素)もますます多様かつ広範囲に及んでいます。
このようななか、環境・社会・経済の持続可能性を高め、DNPグループ自身の持続的な成長をさらに推進していくため、2022年4月に「サステナビリティ推進委員会」を代表取締役社長を委員長、代表取締役専務を副委員長とし、本社の各部門を担当する取締役・執行役員を委員として構成する体制に再編し、機能を強化しました。自然災害等の有事発生時でも社員の安全を確保して生産活動を維持していくための「BCM推進委員会」と、社員のコンプライアンス意識の向上を図ってリスクの低減を図る「企業倫理行動委員会」と連携することで、全社的リスクを網羅し、柔軟で強靭なガバナンス体制を構築しています。
サステナビリティ推進委員会は、サステナビリティに係るDNPグループの在り方を適切に経営戦略に反映していくことを目的として、年4回の定例開催を基本として必要に応じて適宜開催し、以下の内容の協議などを行い、取締役会に報告と提言を行います。
①サステナビリティに関する中長期的な経営リスク管理、事業機会の把握及び経営戦略への反映
②サステナビリティ活動方針の構築と各部門での実行の統括
③サステナビリティに関する課題の掌握、目標・計画の策定、計画推進・活動状況の評価及び是正・改善
取締役会は、当委員会で協議・決議された事項の報告・提言を受け、サステナビリティに関するリスク及び機会への対応方針並びに実行計画等について、審議・監督を行っています。
(2)戦略
DNPグループは、企業理念に「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」ことを掲げ、サステナブルな経営の考え方として「持続可能なより良い社会、より心豊かな暮らし」の実現を目指しています。これらに基づき、長期を見据えて、自らが「より良い未来」をつくり出すための事業活動を展開しています。2024年3月、「より良い未来」として目指す、それぞれ相互関係にある「4つの社会」の実現に向けて、DNPが何をすべきか、どのような価値をつくり出していくのかを具体化することで、DNPが社会と共に成長し続けるために重要なこととしてのマテリアリティを特定しました。
■DNPのマテリアリティ
・安全・安心かつ健康に心豊かに暮らせる社会
DNPグループは、自ら変化を生み出し、変化に柔軟に対応することで、環境・社会・経済の持続可能性を高めていきます。
・快適にコミュニケーションができる社会
DNPグループは、リアルとデジタルをつなぐことで、得られる体験価値の質を高めるとともに、人々の活動の機会を拡げていきます。
・人が互いに尊重し合う社会
DNPグループは、相互に理解を深め、認め合うことで、誰もがいきいきと活躍できる場をつくっていきます。
・経済成長と地球環境が両立する社会
DNPグループは、環境保全・環境負荷の低減に取り組むことで、ネイチャーポジティブなバリューチェーンを実現していきます。
マテリアリティに基づく活動として、中期経営計画における「事業戦略」「財務戦略」「非財務戦略」に沿った取り組みを推進しています。「価値の創出」とそれを支える「経営基盤の強化」により、事業活動を通じて社会課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値を創出し、DNPグループの持続的な成長を図っていきます。
非財務資本の強化では、特に重要だと考えている「人的資本」「知的資本」「環境への取り組み」を加速させています。また、事業活動のグローバル化が進むなかで、人権の尊重が今後、ますます重要になると認識しており、2020年3月に「DNPグループ人権方針」を策定して以降、継続的に人権尊重のマネジメントを強化しています。サプライチェーン全体で人権に配慮した調達に取り組んでおり、鉱物資源や木材・紙を中心に、リスク評価やトレーサビリティの確保など取り組みを進めています。
① 人的資本の強化
価値創出の要であり、成長の原動力である「人的資本の強化」に関しては、「人的資本ポリシーに基づき人への投資を拡大する」という方針のもと、
・価値創造に向けた社員のキャリア自律支援と組織力の強化
・社員の幸せ(幸福度)を高める健康経営の推進
・人材ポートフォリオに基づく採用、注力分野への人材配置とリスキリングの展開
・多様な個を活かすダイバーシティ&インクルージョンの推進
を進めています。
その為の人材育成方針として、社員一人ひとりが自律した個として主体的に必要な知識と技術を身につけ、最大限に自身の役割を果たし、自らの成長と自己実現を図ることができる人材の継続的な輩出を目指します。社内環境整備方針としては、ダイバーシティ宣言や健康宣言に基づき、多様な個人の強みを引き出すチーム力や組織力の強化に向けて、DNP価値目標(DVO)制度によるチーム目標の設定や組織のエンゲージメントを高める施策などを推進していきます。
これらの方針に基づく具体的な取り組みとして、「キャリア自律型」の仕組みであるDNP版「よりジョブ型も意識した処遇と関連施策」などを展開します。社員は自律的にキャリアを描くなかで自らを磨き、会社は「価値創造に向けた社員のキャリア自律」を支援していくことで、人的資本ポリシーに謳う「社会(社内・社外)で活躍できる人財」の輩出を目指していきます。
また、DX人材については、経済産業省のデジタルスキル標準に基づきDX人材を再定義し、全社員に対してDXリテラシーの向上を図っています。さらに専門人材については、各人のスキルレベルを可視化し、レベルアップを図るためのキャリアディベロップメントプログラム(CDP)を整備・運用し、DX推進における専門的な役割を担う人材育成を進めています。
こうした取り組みを通じて、人への投資を企業価値の向上に結び付けていく中で、グローバルでの『人的創造性(付加価値生産性)』の飛躍的向上を実現していきます。
② 知的資本の強化
DNPグループは、他社と差別化してグローバルな競争力を高めていくため、長年培った「印刷と情報(Printing & Information)」の強みを進化・深耕させるとともに、社外のパートナーとの連携を深めることで知的資本を充実させています。
また、特許戦略の推進にも注力しているほか、研究開発の投資として、毎年300億円規模を継続的に実施しており、特に、注力事業領域を中心に、知的資本を有効に掛け合わせて、製品化・事業化を加速させる取り組みを強化しています。さらに、事業の成長と生産性の革新の両面で「DX」を強力に推進しており、そのための技術や人材の充実も図っています。重要な成長戦略の一つとして、社内のDX人材の育成と必要な外部人材の獲得、パートナー企業との連携等を位置付けており、DXによる価値創出のためのリソースをさらに拡充していきます。
こうした「事業化の推進」、「技術・研究開発」とその活動を支える「知的財産の戦略的獲得」を三位一体で強力に推進していきます。
③ 環境への取り組み
DNPグループは、事業活動と地球環境の共生を絶えず考え、環境問題への対応を重要な経営課題の一つに位置付けており、行動規範の中に「環境保全と持続可能な社会の実現」を掲げています。近年特に、地球環境に対する負荷の低減が強く求められるなか、サプライチェーン全体で環境を強く意識した活動を推進しています。2020年3月には「DNPグループ環境ビジョン2050」を策定し、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に向けた取り組みを加速させています。
特に気候変動対応を重要課題の一つに位置付けており、事業活動にともなう気候変動リスクの抽出と長期リスクに対する戦略検討のため、国際的な枠組みであるTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)が提言するフレームワークに沿って、「移行」および「物理的影響」に関するシナリオ分析に基づく定性的・定量的な財務影響と影響を受ける期間の評価・分析を実施しています。さらに、自然資本への影響評価や取り組みについて、TNFD(Task Force on Nature-related Financial Disclosures)の提言に沿った評価・分析を進め、情報開示の質と量の充実に取り組んでいます。
環境ビジョン2050に掲げる「脱炭素社会」の構築に向けて、グループ全体におけるGHG排出量(Scope1、2、3)を把握し、実績の分析に基づいて削減に取り組んでいます。具体的には、事業ポートフォリオの転換、省エネルギー活動の強化、再生可能エネルギーの導入等により、自社拠点での事業活動にともなうGHG排出量を2050年までに実質ゼロにすることを目指すとともに、製品・サービスを通じて脱炭素社会の構築などに貢献していきます。また、「循環型社会」の実現に向けて、サプライチェーン全体で資源の効率的な循環利用を進めており、自社で生じるプラスチック不要物を中心に、マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルの取り組みを進め、資源循環率の向上に努めています。さらに、「自然共生社会」の実現に向け、サプライチェーン全体で生物多様性への影響の最小化と地域生態系への調和を目指しており、原材料調達のトレーサビリティ確保や生態系に配慮した事業所内の緑地づくりを進めています。
(3)リスク管理
DNPグループは、柔軟で強靭なガバナンス体制のもとに、変動要素(リスク)によるマイナスの影響を最小限に抑えるとともに、事業機会の拡大につなげるため、統合的なリスクマネジメントを推進しています。
環境・社会・経済に関するリスクと機会は、サステナビリティ推進委員会が年に1回以上特定し、評価・管理しています。また、事業計画や財務的影響、市場の変化や環境・社会に与える影響の大きさ、発生可能性等の観点を踏まえ、優先課題の特定や活動の優先順位付け、目標の設定を行い、経営に反映させています。特に重要度や優先度が高いリスクについてはリスク管理部門を選定し、経営会議での協議を経て事業戦略・計画に反映させ、各組織が中心となって対応しています。機会については、DNPグループ全体で重点テーマを管理し、戦略的な事業展開につなげています。
(4)指標・目標
DNPグループは、サステナビリティに関する取り組みについて、的確な進捗管理を可能とし、着実に実行するため、具体的な指標と目標を設定しています。これらの進捗状況は、サステナビリティ推進委員会のガバナンスにおいてモニタリングされています。
人的資本・知的資本・環境への取り組みについては、次の指標を用いております。
①人的資本の強化
DNPグループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
②知的資本の強化
DNPグループでは、知的資本の強化に向けて、次の指標を設定しております。
*データマネジメント基盤:DNPグループ内の各種システムからデータを集約し、集約されたデータを加工、
分析、可視化し、経営判断に活用する基盤を指す
③環境への取り組み
「DNPグループ環境ビジョン2050」の実現に向けて、中期目標を掲げて具体的な活動を進めています。
GHG排出量削減および水使用量の削減に関しては、範囲を財務会計上の全グループ会社として算定し、結果を記載しております。また、資源循環率の改善に関しては、全グループ会社の製造拠点における産業廃棄物を対象として算定し、結果を記載しております。
*スーパーエコプロダクツ:自社独自の基準により特定した環境配慮に優れた製品・サービス
2023年度実績は、いずれも目標を上回る進捗となり、特に注力しているGHG排出量の削減についても、2030年度目標を前倒しで達成する見込みです。取り組みをさらに加速させるべく、2024年4月により挑戦的な目標に更新しました。また、目標達成年度を2030年度に統一しました。
<中期目標>
*GHG排出量削減目標:パリ協定の努力目標である「1.5℃目標(温度上昇を1.5℃以内に抑える水準の目標)」に準じて、「基準年度比で年率4.2%の削減」とする。
DNPグループは、地球環境の持続可能性を高め、健全な社会と経済、快適で心豊かな人々の暮らしを実現していく新しい価値の創出に努めており、それによってDNP自身の持続的な成長を達成していきます。また、その実現に向けて、環境・社会・経済に関するさまざまな課題と、変動要素としてのリスクを正しく認識し、統合的なリスクマネジメントを行う取り組みに注力しています。これら事業環境の変化におけるリスクを、DNP独自の「P&I」(印刷と情報)の強みの進化・深耕によって成長機会への転換を推進しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてDNPグループが判断したものであります。
・気候変動による自然災害の頻発・激甚化、渇水や洪水等水リスクの高まり
・プラスチック汚染や生物多様性の損失の加速
○地球環境保全に関連した制度や市場動向の変動要素
・気候変動リスクや自然関連情報等の開示の強化、グローバル化
・GHG排出量の規制強化、エネルギー関連施策の見直し、循環経済への移行の加速
・環境負荷削減に資する製品・サービスの市場拡大、技術革新の加速 等
DNPグループは、事業活動と地球環境の共生を絶えず考え、「DNPグループ環境ビジョン2050」に掲げる「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に向けた取り組みを加速させています。例えば、短期的なリスクである風水害等の大規模な自然災害等への対応としては、製造設備その他の主要施設に防火・耐震・水害対策等を施すとともに、製造拠点や原材料調達先の分散を図り、生産活動の停止や製品供給の混乱を最小化する事業継続計画(BCP)を策定し、その適切なマネジメント(BCM)を推進しています。また、各種保険によるリスク移転も図っており、事業の存続を脅かすような緊急事態が発生したとしても、事業活動が早急に復旧できる強い企業体質を構築しています。しかしながら、甚大な自然災害や感染症の流行など、社会インフラの大規模な損壊や機能低下、生産活動の停止につながるような予想を超える事態が発生した場合は、業績に大きな影響を与える可能性があります。
長期環境ビジョンの達成に向けて、DNPグループは中期目標を設定し、環境負荷の削減を計画的に進めています。しかしながら、GHG排出量削減のさらなる強化や脱石化製品への移行の加速、代替素材への切り替え要請の高まりによる削減目標の引き上げや製品仕様の見直し等によって、事業への影響や追加的措置が必要となる場合があり、企業活動に大きく影響する可能性があります。
またDNPグループの事業は、印刷用紙等の森林資源や鉱物資源等の原材料、製造工程で使用する水やエネルギー等の供給サービス、水質や大気排出、事業所の土地利用等の調整サービスなど、さまざまな形で自然の恩恵を受けています。さらに、グローバルなサプライチェーンの構築など、社会と密接に関係しながら事業活動を展開しています。こうした状況をグループ全体で明確に認識し、環境の持続性を確保しつつ、社会とともに持続的に成長するため、サプライチェーン全体における環境負荷の把握・削減、トレーサビリティの確保を進めています。しかしながら、地球環境の急激な変動や生物多様性の損失の加速などによって、DNPが必要とする自然資本に想定以上の変動がある場合は、企業活動への影響が大きくなります。
国内外では、気候変動への対応や生物多様性の保全などに関する法的規制や国際規範の強化が進み、社会課題の解決に取り組む姿勢を重視して企業価値を判断する傾向がますます強まっています。特にカーボンニュートラルの実現や循環経済への移行は、緊急度と深刻度が増しており、ネイチャーポジティブに向けた各種インフラや事業構造の変革がさらに強く求められています。DNPグループはこうした変化を先取りすることに加え、自ら主体的に変化を起こすことによって、価値創造と基盤強化の両輪で環境課題の解決に取り組みます。また、国際的な開示基準に沿って透明性を有した情報を積極的に開示することにより、ステークホルダーとの対話を進めていきます。
・少子高齢化や労働力不足、雇用の流動化の加速
・多様な社会で生きる多様な人々の尊厳に関する課題の変化
・あらゆる人が心地よく生きるための諸条件の変化(心身の健康・安全・衛生等)
・サプライチェーン全体における人権リスク対応の重要性の高まり
○健全な社会の構築に向けた制度や市場動向の変動要素
・各国・地域の法制度・政治制度の変更、サプライチェーン上のリスク対応の強化
・地政学的リスク/カントリーリスクの拡大
・文化や制度・ルールの違いによる各種リスクの顕在化
・レピュテーションリスクの増大 等
DNPグループは、「人的資本ポリシー」に基づき、社員の心理的安全性が高く健康で活力ある職場の実現に注力するほか、社員一人ひとりの状況に配慮した働き方を実現し、多様な強みを掛け合わせていく「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂)」の取り組みや、注力事業領域を中心とした人材ポートフォリオに基づく採用・人材配置・リスキリング等を推進しています。しかしながら、国内外の雇用情勢の急激な変化にともない、高い専門性を有する人材や、変化に柔軟に対応しながら業務を遂行できる人材の確保・育成ができない場合など、競争優位性の高い組織体制の構築が難しくなる可能性があります。
近年は特に、海外での事業活動やグローバルに拡大するサプライチェーンに関して、多様な社会的・政治的・経済的変動要素が顕在化しています。世界各地での労働環境の適正化や人権への配慮がますます重要となるなか、「DNPグループ人権方針」に基づく労働環境や人権への配慮などの社会的責任を果たし続けていくことが、企業として長期的に発展していくための重要な基盤となります。それに対して、各国・地域や経済圏における人権デュー・ディリジェンスの重要性の高まりなど、社会関連の法律や規制の予期しない制定や変更、地政学的リスクやカントリーリスクの増大等が起きることによって、DNPグループの国内外の事業活動や原材料調達に支障が生じ、業績に影響を与える可能性があります。
DNPグループは、果たすべき3つの責任として「価値の創造」「誠実な行動」「高い透明性(説明責任)」を掲げており、社員全員に対して企業倫理の浸透・徹底を図っています。すべての企業活動において法令等を守るだけでなく、高い倫理観を持ち、常に公正・公平な態度で、社会の維持・発展に寄与することで、将来にわたって信頼を得るべく努めています。しかしながら昨今、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の広がりを背景として、企業に対する批判的な評価や評判によって企業のレピュテーションが低下するような事案が国内外で発生する可能性があります。そのため、グローバルレベルでのコーポレート・ガバナンス、コンプライアンス体制を強化するとともに、社員に対する企業倫理の浸透・徹底を図っています。また、国内外のSNSなどのモニタリングを行い、早期のリスク発見と適宜適切な対応に努めています。
(3)経済関連のリスク
○各国・地域とグローバルな市場における経済活動の短期および中長期の変動要素
・ビジネスモデル/技術/製品・サービス等の開発の加速
・デジタルトランスフォーメーション(DX)やグローバルネットワーク等の加速
・各種経済指標の急激な変動(国内外の景気・業界動向・消費意欲・物価・為替・GDP他)
・世界経済の地政学的要因によるバランスの変化や分断化
○経済活動の基盤となる制度や市場動向の変動要素
・資本主義の見直し、バーチャルな経済圏の確立等による金融インフラの変動
・情報インフラ関連の変動(GDPR等各種ルール・規制の強化/緩和、情報セキュリティへの脅威) 等
DNPグループは、特定の業種に偏らない数万社の企業や、自治体・各種団体・生活者等と多様な事業活動を行っています。この強靭で安定的な事業基盤を強みにするとともに、オールDNPの強みの掛け合わせと、社外のパートナーとの連携を推進しながら成長牽引事業・新規事業からなる注力事業領域と長期間安定的にキャッシュを生み出す基盤事業を中心に価値の創出に努めています。また、DXの進展やAI利用が拡大するなか、リアルとデジタルを繋ぐ付加価値の創出やAI革新による事業化のスピードアップなどを進めるとともに、「DNPグループAI倫理方針」を策定し、AIの適切かつ効果的・効率的な利活用を推進し、事業活動・研究開発活動などでの価値創出を加速させていきます。しかしながら、国内外の景気や消費の動向などが想定以上に低迷した場合や、特に新興国での生産や需要の変化が大きい場合など、生産量の減少や単価の下落等によって業績が影響を受ける可能性があります。また、新規のビジネスモデルや技術、製品・サービスの開発において、さらなる競争の激化や変化に対する対応の遅れ、予想を上回る商品サイクルの短期化、市場動向の変化等が業績に影響を与える可能性があります。戦略的な事業・資本提携や企業買収は、事業拡大の迅速化や効果の拡大に有効ですが、提携先・買収先等を取り巻く事業環境が悪化し、当初想定していたような相乗効果が得られない場合、業績に影響を与える可能性があります。
原材料等の調達については、国内外の複数のメーカーから印刷用紙やフィルム材料を購入するなど、安定的な数量の確保と最適な調達価格の維持に努めています。しかしながら、地政学リスクの高まり、石油価格や為替の大幅な変動や新興国での急激な需要の増加、天然資源の枯渇、気候変動の影響、サプライチェーンにおける人権の問題などにより、需給バランスが崩れる懸念もあります。また為替相場については、現地生産化や為替予約などによって変動リスクをヘッジしていますが、これらの状況が急激に変動する場合には、業績に影響を与える可能性があります。
また、事業活動において、世界規模のコンピュータネットワークなど情報システムを活用するなかで、ソフトウェアやハードウェアの不具合のほか、日々巧妙化・高度化するサイバー攻撃によるコンピュータウイルスへの感染、個人情報の漏えいなどの発生リスクが高まっており、更なる自社防御強化が必須です。DNPグループは、個人情報を含む重要情報の保護、つまり情報セキュリティを経営の最重要課題のひとつとして捉え、体制の強化や社員教育などを通じてシステムとデータの保守・管理に万全を尽くしていますが、万一、DNPグループのサプライヤーやパートナーにおいてサイバー攻撃による被害や重要情報に関連する事故などが発生した場合には、事業の停止等事業活動に影響を与える可能性があります。
事業活動において自社が保有する知的財産やノウハウ等を適切に保護、管理、活用することが不可欠です。DNPグループでは、自らの技術・ノウハウ等の流出を防止するための管理を厳重に行っていますが、不測の事態による外部流出の可能性があります。一方で他者の知的財産を必要とする事業や製品開発において当該知的財産を利用できない場合、事業拡大や業績に影響を与える可能性があります。また、他者の知的財産権を尊重し、侵害しないよう対応していますが、他者から訴訟等を提起され、差止請求や損害賠償請求を受ける可能性があります。
当連結会計年度におけるDNPグループの状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるDNPグループを取り巻く状況は、国内の雇用・所得環境の改善、インバウンド需要の回復等により、景気の緩やかな回復が見られました。一方、地政学リスクの長期化や世界各地の金融政策の影響、国内の物価上昇や人手不足など、先行きが不透明な状況が続いています。また、国連のグテーレス事務総長が「地球沸騰化」と表現したような気候変動や、能登半島地震をはじめとする自然災害の影響も、引き続き懸念されます。
DNPグループは、環境・社会・経済が急激に変わるなかでも、変化やリスクに対応するだけでなく、長期を見据えて変革を起こし、自らが「より良い未来」をつくり出す事業活動を展開しています。独自の「P&I」(印刷と情報)の強みを掛け合わせ、多様なパートナーとの連携を深めて、事業領域の拡大に努めています。
現在は2023-2025年度の3か年の「中期経営計画」を推進しており、「事業戦略」「財務戦略」「非財務戦略」に基づく具体的な取り組みを通じて、持続的な事業価値・株主価値の創出に注力しています。事業戦略では、中長期にわたって強みを発揮できる事業ポートフォリオの構築を進めるとともに、注力事業領域を中心とした新しい価値の創出を加速させています。財務戦略では、創出したキャッシュを事業のさらなる成長のための投資と株主還元に適切に配分していきます。非財務戦略としては、「人への投資の拡大」「知的資本の強化」「環境への取り組み」を中心に推進し、サステナブルな成長を支える経営基盤の強化を図っていきます。三つの戦略のより詳細な内容は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な会社の経営戦略 <三つの戦略>」に記載しています。
また、自然災害等の不測の事態に対しても、事業継続マネジメント(BCM)の徹底を図り、グループを挙げてさまざまな企業活動を持続的に推進していきます。
これらの結果、当連結会計年度のDNPグループの売上高は1兆4,248億円(前期比3.8%増)、営業利益は754億円(前期比23.2%増)、経常利益は987億円(前期比18.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券の売却にともなう特別利益の計上もあり、1,109億円(前期比29.5%増)となりました。また、DNPグループが収益性指標の一つとしている自己資本利益率(ROE)は9.8%となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度から、部門(事業セグメント)の名称について、「情報コミュニケーション部門」を「スマートコミュニケーション部門」に、「生活・産業部門」を「ライフ&ヘルスケア部門」に変更し、「飲料事業」を「ライフ&ヘルスケア部門」に移行しています。前連結会計年度との比較・分析は、変更後の区分に基づいています。
イメージングコミュニケーション関連は、写真プリント用部材が欧州・アジア市場を中心に好調に推移しました。
情報セキュア関連は、BPOの大型案件に加え、ICカードでは、1つのICチップで接触型と非接触型の規格に対応可能なデュアルインターフェイスカードが特に堅調に推移しました。
マーケティング関連は、企業等に向けたマーケティング施策の実績や知見とデジタルの強みを掛け合わせた価値の提供に努めたものの、カタログ・パンフレット等の紙メディアの縮小の影響を受け、前年を下回りました。
出版関連は、リアル書店やネット販売のハイブリッドな書籍の流通販売事業、指定管理者としての受託館数が増加した図書館運営業務が堅調に推移したものの、雑誌等の市場縮小の影響により、当事業全体では前年並みとなりました。
コンテンツ・XRコミュニケーション関連では、リアルとバーチャルの空間の融合等によって人々の体験価値を高めるXRコミュニケーション事業の強化に努めました。その一環として、脳神経科学とITの融合によるブレインテック事業とXR事業に強みを持つ株式会社ハコスコとの連携を進めるなど、新規事業の創出に注力しています。
教育関連では、レノボ・ジャパン合同会社とともに、東京都の「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム事業に係るプラットフォーム構築・運営組織」に採択されました。今後も、国が掲げる“誰一人取り残すことのない”多様な教育機会の提供に取り組み、全国の自治体や教育現場の活動を支援していきます。
その結果、部門全体の売上高は7,194億円(前期比0.1%減)となりました。営業利益は、情報セキュア関連の売上増加や人的資本の再配置などの事業構造改革の進展などはあったものの、紙媒体を中心とした減収の影響を受けたことにより、261億円(前期比2.1%減)となりました。
モビリティ・産業用高機能材関連は、リチウムイオン電池用バッテリーパウチが、車載向けで下期に電気自動車(EV)需要停滞の影響を受けたものの、IT向けではスマートフォンの新機種での採用が進むなど需要が回復し、全体で堅調に推移しました。太陽電池関連は、世界的な需要の高まりによって封止材を中心に好調に推移しました。自動車用の加飾フィルムは、内装用に加えて、塗装工程短縮と環境負荷低減を実現する、デザイン性に優れた外装用の製品の販売が堅調に推移しました。
包装関連は、原材料値上げ等を一因とする物価高騰による生活者の買い控えの影響を受けたものの、プラスチック成型品の増加などにより、前年並みとなりました。また、「DNP環境配慮パッケージング GREEN PACKAGING®」をはじめとする機能性包材の開発・販売に注力したほか、製造拠点の再編などによる体質強化を進めました。
生活空間関連は、高い耐久性とデザイン性を両立させた外装材「アートテック®」が国内外で堅調に推移したものの、国内の新設住宅(持家)着工戸数の減少によって住宅向けの内装材が減少し、前年を下回りました。
飲料事業は、コロナ禍からの人流の回復や昨年夏の暑さが長引いたことなどによって販売数量が増加したほか、価格改定が寄与し、前年を上回りました。
メディカル・ヘルスケア関連では、当連結会計年度より、シミックCMO株式会社を連結子会社とし、2023年6月からシミックグループと共同で原薬から製剤までの一貫製造や付加価値型医薬品の開発などを行っています。
その結果、部門全体の売上高は4,723億円(前期比4.6%増)となりました。営業利益は、原材料費やエネルギー費の上昇ペースが落ち着き、十分に価格転嫁できなかった影響が緩和されたことにより、133億円(前期比67.2%増)となりました。
デジタルインターフェース関連は、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクが、スマートフォンでの有機ELディスプレイ採用拡大にともなって堅調に推移しました。光学フィルムも、サプライチェーン全体の前年度の在庫調整の影響の一巡による需要回復に加え、主にテレビのパネルサイズの大型化にともなう出荷面積の拡大もあり、当事業全体で前年を上回りました。
半導体関連は、半導体製造用フォトマスクが顧客企業の製品開発需要によって前年並みとなったものの、市場全体の減速によって半導体パッケージ用のリードフレーム等が減少し、当事業全体で前年を下回りました。
その結果、部門全体の売上高は2,353億円(前期比15.6%増)となりました。営業利益は、半導体関連の売上の減少に加え、原材料費等のコスト上昇の影響を受けたものの、デジタルインターフェース関連が好調に推移し、581億円(前期比23.9%増)となりました。
当連結会計年度末の資産、負債、純資産については、総資産は、投資有価証券や退職給付に係る資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ1,252億円増加し、1兆9,556億円となりました。
負債は、繰延税金負債の増加などにより、前連結会計年度末に比べ368億円増加し、7,189億円となりました。
純資産は、自己株式の取得や剰余金の配当による減少の一方、当期利益による増加やその他有価証券評価差額金、退職給付に係る調整累計額の増加などにより、前連結会計年度末に比べ884億円増加し、1兆2,366億円となりました。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ237億円減少し、2,345億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,430億円、減価償却費559億円などにより725億円の収入(前連結会計年度は379億円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出594億円、投資有価証券の売却による収入816億円などにより183億円の収入(前連結会計年度は250億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出885億円、配当金の支払額164億円などにより1,186億円の支出(前連結会計年度は524億円の支出)となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)セグメント間取引については相殺消去しております。
経営者の視点によるDNPグループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
DNPグループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は、前連結会計年度(以下「前期」)に比べて516億円増加し、1兆4,248億円(前期比3.8%増)となりました。
売上原価は、前期に比べて298億円増加して1兆1,111億円(前期比2.8%増)となり、売上高に対する比率は前期の78.7%から78.0%となりました。販売費及び一般管理費は、前期に比べて75億円増加して2,382億円(前期比3.3%増)となり、この結果、営業利益は前期に比べて142億円増加して754億円(前期比23.2%増)となりました。
営業外収益は、受取配当金の減少や持分法による投資利益の増加等により前期に比べて17億円増加して284億円(前期比6.5%増)となり、営業外費用は、前期に比べて9億円増加して51億円(前期比21.5%増)となりました。この結果、経常利益は前期に比べて150億円増加して987億円(前期比18.0%増)となりました。
特別利益は、投資有価証券売却益の増加等により、前期に比べて414億円増加して859億円(前期比93.2%増)となり、特別損失は、減損損失の増加等により前期に比べて331億円増加して415億円(前期比395.0%増)となりました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,109億円(前期比29.5%増)となりました。
DNPグループの経営成績に重要な影響を与えた要因は以下のとおりです。
当連結会計年度におけるDNPグループを取り巻く状況は、国内の雇用・所得環境の改善、インバウンド需要の回復等により、景気の緩やかな回復が見られました。一方、地政学リスクの長期化や世界各地の金融政策の影響、国内の物価上昇や人手不足など、先行きが不透明な状況が続いています。また、国連のグテーレス事務総長が「地球沸騰化」と表現したような気候変動や、能登半島地震をはじめとする自然災害の影響も、引き続き懸念されます。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。
スマートコミュニケーション部門については、イメージングコミュニケーション事業やBPOの大型案件、金融機関向けのICカードが増加したほか、リアル書店やネット販売のハイブリッドな書籍の流通販売事業、図書館運営業務も堅調に推移しましたが、紙媒体の市場縮小の影響を受けて出版印刷物や商業印刷物が伸び悩んだ結果、部門全体の売上高は前期比0.1%減の7,194億円となりました。営業利益は、事業構造改革の進展などはあったものの、紙媒体を中心とした減収の影響を受け、前期比2.1%減の261億円となりました。営業利益率は、前期の3.7%から0.1ポイント低下し、3.6%となりました。
ライフ&ヘルスケア部門については、包装関連事業は、物価高騰による買い控えの影響を受けたものの、プラスチック成型品の増加などにより、前年並みとなりました。生活空間関連事業は、国内の新設住宅(持家)着工戸数の減少によって住宅向けの内装材が減少し、前年を下回りました。モビリティ・産業用高機能材関連は、車載向けのバッテリーパウチが下期から得意先の在庫調整の影響を受けたものの、IT向けは増加し、全体では堅調に推移しました。また、太陽電池関連の封止材が増加したほか、自動車用の加飾フィルムも堅調でした。飲料事業は、人流の回復や価格改定が寄与し、前年を上回りました。メディカル・ヘルスケア関連は、当連結会計年度より、シミックCMO株式会社を連結子会社としています。その結果、部門全体の売上高は前期比4.6%増の4,723億円となりました。営業利益は、原材料費やエネルギー費の上昇ペースが落ち着き、これまで十分に価格転嫁できなかった影響が緩和されたことにより、前期比67.2%増の133億円となりました。営業利益率は、前期の1.8%から1.0ポイント上昇し、2.8%となりました。
エレクトロニクス部門については、デジタルインターフェース関連は、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクが堅調に推移したほか、光学フィルムも需要回復に加えてテレビの大型化にともなう出荷面積の拡大もあり、前年を上回りました。半導体関連は、フォトマスクが顧客企業の製品開発需要によって前年並みとなったものの、市場全体の減速により半導体パッケージ用のリードフレーム等が減少し、前年を下回りました。その結果、部門全体の売上高は前期比15.6%増の2,353億円となりました。営業利益は、デジタルインターフェース関連が好調に推移し、前期比23.9%増の581億円となりました。営業利益率は、前期の23.1%から1.6ポイント上昇し、24.7%となりました。
セグメント資産の状況については、スマートコミュニケーション部門は前期末に比べて、32億円減少して8,145億円(前期末比0.4%減)となりました。
ライフ&ヘルスケア部門は前期末に比べて、467億円増加して5,479億円(前期末比9.3%増)となりました。
エレクトロニクス部門は前期末に比べて、476億円増加して2,901億円(前期末比19.6%増)となりました。
報告セグメント合計では前期末に比べて、912億円増加して1兆6,525億円(前期末比5.8%増)となりました。
DNPグループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前期末に比べ237億円減少し、2,345億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整当期純利益1,430億円、減価償却費559億円などにより725億円の収入(前期は379億円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出594億円、投資有価証券の売却による収入816億円などにより183億円の収入(前期は250億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出885億円、配当金の支払額164億円などにより1,186億円の支出(前期は524億円の支出)となりました。
a.財務戦略の基本的な考え方
DNPグループは、社会課題を解決し、人々の期待に応える新しい価値の創出のため、成長領域を中心とした事業へ集中的に事業投資(研究開発投資、設備投資、戦略的提携やM&A投資)を行うとともに、それらを支える人財投資に経営資源を投入していきます。そのほか、資本効率の向上、財務基盤の安定化と株主還元の実施など、さまざまな資本政策を総合的に勘案して推進していきます。
b.DNPグループの資本の財源
DNPグループは、主に営業活動により確保されるキャッシュ・フローにより、成長を維持・発展させていくために必要な資金を確保しております。
設備投資資金などの資金需要については自己資金で賄うことを基本としておりますが、自己資金に加え、他人資本も活用し、成長投資資金を調達していきます。
c.DNPグループの経営資源の配分に関する考え方
DNPグループは、成長領域を中心とした注力事業への投資などを進めていきます。
重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源泉等については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)新設等」に記載のとおりであります。
また、利益の配分については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。
DNPグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(注)契約期間2024年4月1日から2034年3月31日までの契約を新たに締結しています。
(2)その他
DNPグループは、新規事業の創出・新製品開発から生産技術の開発に至るまで、幅広い研究開発活動を続けており、その活動は事業活動の原動力として機能しております。
DNPグループの研究開発は、研究開発・事業化推進センター、技術開発センター、AB(アドバンストビジネス)センター及び各事業分野の開発部門を中心に推進しております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
当連結会計年度における各事業部門の主な研究開発とその成果は次のとおりです。
(1) スマートコミュニケーション部門
マーケティング分野では、電子商取引の普及に伴い生活者の買い物スタイルが変化している中で、リアル店舗を見直す動きが加速しています。そこで、店舗でのお客様の振る舞いをデータ取得・分析し、新しい買い物体験を支援する駅構内のショールーミング店舗「&found」の実証実験を推進しました。今後も、企業ブランドや商品の魅力に触れ、新しい体験価値を実感できる次世代型店舗への事業化に取り組んでいきます。
認証・セキュリティ分野では、キャッシュレス決済の拡大に伴いクレジットカードの不正利用が増加し、対策強化が求められています。そこで、クレジットカードのオンライン決済の不正利用を検知・判定する「DNP 3Dセキュア2.0」に、不正利用されたデバイス情報をカード発行会社間で共有する機能や、カード会社提供アプリを使った本人認証の新機能を追加しました。今後も、キャッシュレス決済におけるクレジットカード会社各社のセキュリティ強化を支援していきます。
BPO(Business Process Outsourcing)分野では、様々な分野で急速に普及が進む生成AIの利活用を促進するため、多様なドキュメントを生成AIの学習に適した形式に整形する技術を開発しました。この技術により膨大なマニュアルやドキュメントを参照して業務を行う審査やコンタクトセンターの問合せ対応等の精度が向上します。契約書・帳票類・業務マニュアル等、膨大なドキュメントを取り扱う自治体や金融機関を中心に、生成AIを活用した業務改革の実現を目指します。
XRコミュニケーション分野では、新しい教育機会の創造や、探究的な学びの広がりのためにオンラインの仮想空間が活用されています。そこで、日本語の指導が必要な児童・生徒や不登校の児童・生徒に対して参加意欲の向上を図るため、仮想空間における居場所や学びの場となる「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム」を開発しました。メタバースを活用して、体験価値の高い教育サービスを提供し、全国の自治体や教育現場の活動を支援していきます。
イメージングコミュニケーション分野では、生活者の体験価値を高める写真プリントソリューションを開発しています。アイドルやキャラクター、スポーツ選手等を応援する「推し活」のニーズに応えて、DNPクラウド型画像販売ソリューション Imaging Mall®に、“推し” の画像や記念日を選べるポストカードカレンダーをラインナップしました。さらに、ファンクラブなど利用者限定のフォトグッズ販売機能も追加しました。
当部門に係る研究開発費は
(2) ライフ&ヘルスケア部門
包装分野では、「DNPライフサイクルCO2認証システムCO2算定サービスによるカーボンニュートラル取り組み支援」で、一般社団法人サステナブル経営推進機構が主催する「第6回エコプロアワード」で奨励賞を受賞しました。本システムを活用することでパッケージの原材料調達や製造などのサプライチェーン上流でのCO2排出量把握に関する課題を解決し、カーボンニュートラル実現に向けた情報・コミュニケーションの基盤を提供する先進的な取り組みとして評価されました。今後、環境負荷改善やコンサルティングサービスなどにも取り組み、幅広い業界に対してカーボンニュートラルの対応を進めていきます。
生活空間分野では、マット(低艶)な質感で意匠性が高く、指紋がつきにくい内装用化粧シート「DNP EBオレフィンシート サフマーレ® プレミア」及びフローリング用化粧シート「DNP EBオレフィンシート サフマーレ® フロア プレミア」を発売しました。DNPは、基材に塗工した各種材料を電子線(Electron Beam)の照射で硬化させ、多様な機能を持たせる独自のEBコーティング技術で、長年にわたり市場から高い評価を得ています。この技術を進化させ、人々が暮らすあらゆる空間の価値を向上させる「空間ソリューション」の一環で、地球環境にも配慮した“人と環境にやさしい”高質感内装化粧シートを開発・提供していきます。
モビリティ分野では、交通移動サービスと交通以外のサービスを連携し、地域住民や旅行者の移動の利便性向上や地域の課題を解決するMaaS(Mobility as a Service)が注目を集めています。DNPは他社と連携して、デジタル田園都市国家構想・三重広域連携モデル事業の運営に向けて一般社団法人三重広域DXプラットフォームを設立し、デジタル技術を活用した新たなまちづくり「美村(びそん)プロジェクト」を推進しています。地域の多様なデジタルサービスやイベント等との連携とマイナンバーカードの活用により、地域の魅力を住民や観光客等に体験してもらう「美村パスポートサービス」を2024年2月に開始しました。
高機能マテリアル分野では、高い耐久性と信頼性を備えた太陽電池モジュール向けのバックシートや封止材を提供して実績を重ねてきました。今回、両面採光型太陽電池モジュールの発電量を向上させる「DNP太陽光発電所用反射シート」の提供を開始しました。本製品は、両面で光を受けて発電するタイプの太陽電池モジュールが設置された発電所の地面に敷設するシートで、太陽光の反射能を向上させることでモジュールの裏面に入射する光を増加させて発電量を高める効果があります。両面採光型太陽電池モジュールの導入を検討している発電事業者や、太陽光発電所の設計・調達・建設等を手掛けるEPC(Engineering/Procurement/Construction)事業者、運用・メンテナンス等を手掛けるO&M(Operation & Maintenance)事業者等に本製品を提供し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
当部門に係る研究開発費は
(3) エレクトロニクス部門
最先端のロジック半導体では極端紫外線(EUV)光源を用いるEUVリソグラフィによる生産が進んでいます。DNPは2023年に3ナノメートル世代のEUVリソグラフィ向けフォトマスク製造プロセスの開発を完了し、2024年度中に2台目と3台目のマルチ電子ビームマスク描画装置を稼働させるなど、2ナノメートル世代のEUVリソグラフィ向けフォトマスク製造プロセスの開発を本格化しています。更にRapidus株式会社がNEDOから受託した国プロ「高集積最先端ロジック半導体の製造技術開発」の再委託先として参画し、2025年度までに、EUVリソグラフィに対応した2ナノメートル世代のロジック半導体向けフォトマスクの製造プロセスの開発を完了し、2027年度の量産開始に向けて生産技術の確立を進めます。
自動運転車向けのLiDAR(Light Detection and Ranging:レーザー光を用いて対象物までの距離や対象物の形などを計測する技術)では、凍結や結露を防止して検出感度を向上させるために高い透過率と導電性を持つ薄膜が求められています。そこで、マイクロ波の照射により作製した銀の導電性繊維(銀ナノワイヤー)を用いて、高い透明性、導電性、耐久性、フレキシブル性を備えた透明導電フィルムを開発しました。自動運転用LiDARだけでなく、ディスプレイ分野における反射防止フィルムや液晶位相差フィルム等の機能性光学フィルムや、通信分野の電磁波シールドなどに新しい機能を提供していきます。
当部門に係る研究開発費は