第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「まちづくりを通じて社会に貢献する」という基本使命のもと、「人を、想う力。街を、想う力。」というブランドスローガンを掲げ、企業グループとしての成長と、様々なステークホルダーとの共生とを高度にバランスさせながら、「真の企業価値の向上」を目指しています。

 

(2) 中長期的な経営戦略、目標とする経営指標及び会社の対処すべき課題

当不動産業界を取り巻く国内経済環境は、経済活動の正常化が一層進み、雇用・所得環境が改善するなか、緩やかな景気回復が続くことが期待されるものの、物価高の影響による個人消費の動向、金利の動向、海外経済の下振れリスク等、先行きは不透明な状況にあります。オフィス賃貸市場においては、企業の人材確保、リアルなオフィスへの出社回帰の流れも受け回復傾向にありますが、引き続き企業のオフィス戦略やワークスタイルの変化を注視していく必要があります。分譲マンション市場では、立地条件等による需要の二極化や顧客ニーズの多様化が進むなか、資材価格や労務費の上昇等に伴う工事費の高騰や、金利動向が販売に与える影響等も注視していく必要があります。不動産投資市場においては、日銀の金融緩和政策見直しによる金利上昇傾向を警戒する見方はあるものの、グローバルで見た日本の不動産投資の優位性を評価する投資家も見られるなど、総じて過熱した環境が継続すると思われますが、想定以上の金利上昇や地政学的な緊張の急激な高まりといったリスクにも留意しながら、今後の動向について慎重に見極めていく必要があります。商業施設やホテル市場においては、国内需要・インバウンド需要ともに回復してきておりますが、今後の物価高や為替動向等の経済情勢による影響を注視していく必要があります。

当社グループといたしましては、2020年代の環境激変をチャンスに変えて持続的な価値を提供する企業グループに変革を続けていくために、2020年1月に、2030年までを見据えた「長期経営計画2030」を策定しました。

長期経営計画を通じて、「幅広いお客様により深く価値を届けるための事業機会の最大化」と「上場企業に求められる高効率で市況変化に強いポートフォリオへの変革」を目指し、丸の内を中心とする国内の大型開発パイプラインの着実な推進を図るとともに、海外事業においては、欧米豪を中心とした先進国への注力を進めていきます。あわせて、ノンアセットビジネスの拡大とサービス・コンテンツ領域への進出を通じ、新たな全社における利益成長の柱にするとともに、全社資産効率の改善に向けたドライバーとすることを目指していきます。また、長期経営計画の実行に向け、当社は2024年4月1日付で組織改正を実施しております。

なお、本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

○各機能グループ及び事業グループとコーポレートの戦略

・コマーシャル不動産事業

開発中プロジェクトの順次稼働による賃貸利益並びに回転型事業を中心とした販売利益の伸長を実現するとともに、新規タイプアセット並びにオペレーショナルアセットへの取り組みを進めます。

・丸の内事業

事業環境等の変化に伴い、ビジネスモデルに応じた機動的な戦略策定・実行の必要性に鑑みて「丸の内事業グループ」を新設し、丸の内NEXTステージ戦略に基づいてアセットマネジメントを徹底し、収益力の向上を目指します。

・住宅事業

国内分譲事業を着実に推進する一方で、ストックビジネス領域において多様化するニーズにも対応し、管理・仲介・リフォームなどのフィービジネスにも注力します。

・海外事業

米国、欧州、アジアエリアにおける開発・バリューアド投資機会の拡充と、新興国におけるパートナーとの事業推進を展開します。

・投資マネジメント事業

日・米・欧・アジアにプラットフォームを広げ、クロスボーダーな投資ニーズの拡大を背景とした持続的な拡大を図ります。

・設計監理事業

大規模設計監理業務の継続受注を進めるほか、コンストラクションマネジメント等のコンサルティング業務及びリノベーション業務等の成長分野と海外事業を強化し、あわせて三菱地所グループ技術支援を推進します。

・不動産サービス事業

幅広いサービスメニューと全国に広がる支店網、三菱地所グループの総合力を活用し、法人仲介・不動産コンサルティングのトップ企業を目指します。

 

・営業機能

グループ全体の営業窓口として、顧客企業とのリレーション強化並びに顧客ニーズに対応した企業提案や中長期的な開発案件、事業連携等の事業機会創出を図ります。

・新事業創出機能

全社横断的な新事業創出機能並びにIT施策を担い、ベンチャービジネスへの出資やグループ内における新事業創出により既存業務の拡大や新たな事業領域の探索を進めるほか、デジタル技術を活用した顧客価値を向上させるサービスの提供やデータ利活用の高度化を通じて、ビジネスモデル革新とDX推進を図ります。

・コーポレート

わが国におけるESGの先進企業としての地位を確立し、ステークホルダーとの共生と長期的な企業価値向上を目指します。

 

計数目標は次のとおりです。当社グループとしては、丸の内エリアの優位性や各事業領域における当社グループの強み・ノウハウを発揮することで着実な利益の拡大を図ります。

 

<経営指標/長期経営計画2030ベース(2020年1月公表)>

 

 

2023年度

実績

長計目標

(2020年1月公表)

2024年度

業績予想

 

ROA(事業利益/総資産)

3.9%

5.0%

3.9%

計数目標

(参考)事業利益 *1

2,789億円

3,500~4,000億円

3,003億円

ROE

7.4%

10.0%

7.2%

 

EPS

131.96円

200円

137.93円

(注)*1. 事業利益=営業利益+持分法投資損益

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、三菱グループの経営理念である「三菱三綱領」に基づき、基本使命において「住み・働き・憩う方々に満足いただける、地球環境にも配慮した魅力あふれるまちづくりを通じて、真に価値ある社会の実現に貢献します。」と謳っております。この基本使命に基づき、当社グループは130年以上にわたって、丸の内エリアの開発を手掛け、その活気と賑わいを大手町や有楽町へ、さらに国内外へと拡大してきました。

昨今、2015年のパリ協定の発効、SDGsの採択などを契機に、気候変動・サステナビリティに関する企業に対する社会的な要請は複雑さを増し、サステナビリティを前提とした事業・ビジネスモデルの変革が必要不可欠となっております。

 

このような状況を受け、サステナビリティの観点を、より一層経営や事業活動に組み込むため、2018年度に全社横断でワーキングを実施し、SDGsの観点で当社グループが注力すべきテーマを、7つのマテリアリティ(サステナビリティ経営上の重要課題)として特定いたしました。

また、「長期経営計画2030」(※1)においては、社会価値向上戦略と株主価値向上戦略の両輪を経営の根幹に据え、サステナブルな社会の実現に向け、事業活動を通じて時代が抱える社会課題の解決に取り組んでいくことを明確にしています。

社会価値向上戦略の軸として「三菱地所グループのSustainable Development Goals 2030(以下、2030年目標)」(※2)を定めており、マテリアリティも踏まえたサステナビリティの観点からグループ全体で重点的に取り組むべき4つのテーマを特定(図1)の上、2030年時点における達成目標と各テーマのアクションプラン案を整理しています。

なお、当社グループは社会環境等の変化を受け、2024年度に向けて上記4つの重要テーマ及びマテリアリティの見直しを図り、2024年5月10日に公表しました。当社グループは新たな重要テーマのもと、事業活動を通じた社会課題解決への真摯な取り組みを継続し、当社グループの持続的成長と真に価値ある社会の実現を目指します。

 

※1 (参考/長期経営計画2030資料)https://www.mec.co.jp/assets/img/plan2030/plan200124.pdf

※2 (参考/2030年目標「サステナビリティレポート2023」、2023年度時点)

https://mec.disclosure.site/j/sustainability/report/2023/pdf/all_mec_SR2023.pdf#page=40

 

 

図1 2030年目標/Sustainability Vision 2050

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(1) ガバナンス

■ 体制概要

当社グループでは、「三菱地所グループ サステナビリティ規程」において、気候変動を含むサステナビリティ推進活動に関する事項を定めております。三菱地所㈱執行役社長を委員長、サステナビリティ統括責任者(三菱地所㈱ サステナビリティ推進部担当役員)を副委員長とする「サステナビリティ委員会」(原則、年2回開催)では、気候変動をはじめとするサステナビリティに関する重要事項の審議・報告を行い、それに先立ち「サステナビリティ協議会」において事前協議・報告、事業グループ等におけるサステナビリティ推進活動に関する情報の集約を行っております(図2)。なお、「サステナビリティ委員会」の審議事項は、内容の重要度等に鑑み、必要に応じて「経営会議」への付議がなされ、「サステナビリティ委員会」での審議・報告事項については、取締役会にて報告され、監督される体制となっております。

 

また、「サステナビリティ委員会」で承認された方針・計画の実行に当たっては、「サステナビリティ統括責任者」のもと、三菱地所㈱各部・三菱地所グループ各社の「サステナビリティ推進責任者、担当者」、「サステナビリティ推進事務局(三菱地所㈱ サステナビリティ推進部)」を中心に具体的な活動・検討を進めております。

 

■ サステナビリティ委員会開催実績・議題

当社ホームページにて詳細開示しています。以下よりご覧ください。

https://mec.disclosure.site/j/sustainability/management/promotion/

 

図2 三菱地所グループ サステナビリティ推進体制(2023年度時点)

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(2) 戦略

①サステナビリティに関する戦略

サステナビリティの観点からグループ全体で重点的に取り組むべき4つのテーマである「Environment」・「Diversity & Inclusion」・「Innovation」・「Resilience」について外部環境の変化を予測し、リスク・機会を特定いたしました。

 

4つのテーマ

機会

リスク

対応する主な取り組み

Environment

・ 環境負荷が小さい不動産の取得・賃借ニーズの増加

・ 既存ストックの有効活用による、解体・建て替えスパンの長期化に伴う廃棄物削減

・ 環境負荷が小さい不動産取得・賃借ニーズが増加する中、対応が遅れる場合の空室率増加、成約率や販売価格の低下

・ 環境規制の強化による新規不動産開発、改修工事基準の厳格化に伴う対策費用の増加

・ SBTiの「ネットゼロ新基準(The Net-Zero Standard)」に沿った、目標を設定し、目標達成に向けた取り組みを実施

・ RE100に加盟をし、2025年度までにグループ全体でRE100達成を目指した取り組みを実施

 

 

4つのテーマ

機会

リスク

対応する主な取り組み

Diversity & Inclusion

・ 海外の方のニーズに対応した施設・サービスの需要増加

・ 外国人労働者受け入れによる労働力不足の解消

・ テレワークの加速やフリーランスの増加など多様な生活スタイルや就業・消費スタイルに対応した施設・サービス需要の増加

・ 人口動態の変化に伴う新たなニーズに対応した施設・サービスの需要増加

・ バリアフリー等ユニバーサルデザインに対応した施設・サービスへのニーズの増加

・ サプライチェーンマネジメントをはじめとしたカントリーリスク・コンプライアンスリスクの増加

・ ダイバーシティへの対応が不足している施設・サービスの需要低下

・ 人口動態の変化(労働人口の減少等)に伴う施設・サービスの需要低下

・ バリアフリー等ユニバーサルデザインに対応した施設・サービスへのニーズの増加する中、対応が遅れる場合の利用者の減少及び空室率増加

・ 多様な生活スタイルや就業スタイルに対応した施設の開発やサービスの提供

・ サプライヤー行動規範を策定し、サプライヤーの遵守状況を確認するため、ヒアリングシート調査を実施

Innovation

・ 技術革新、普及に伴う環境対策・投資費用の低減

・ ITやロボットを活用した、施設運営の効率化・利便性向上

・ スマートコミュニティ、ハウス、オフィスの開発機会、ニーズの増加

・ IT化・デジタル革新への対応が遅れることによる、施設・サービスの需要低下

・ スマートコミュニティ、ハウス、オフィスの開発機会、ニーズの増加が高まる中、対応が遅れることによる機会損失

・ eコマース等のオンライン売買の進展に伴う、実店舗・サービスに対するニーズの減少

・ インキュベーションオフィスを運営

・ 先端技術・テクノロジー・ロボットの活用

・ スタートアップ企業やベンチャーキャピタル等への出資による新規ビジネスの創出

Resilience

・ 気候変動に伴う災害(都市水害など)への対応力が高い不動産の取得・賃借ニーズの増加

・ 地震等の災害への対応力が高い不動産の取得・賃借ニーズの増加

・ 気候変動に伴う災害(都市水害等)の激甚化・増加による資産価値減少、維持・対策費用の増加

・ 地震等の災害発生による資産価値の減少、維持・対策費用の増加

・ 老朽化に伴う改修費用、災害対策コストの増加

・ 防災・減災に向けた体制構築

・ ハード・ソフト両面における防災まちづくりを重視

 

[気候変動・自然資本への対応]

・TCFD提言に基づく情報開示

当社は、TCFDの提言内容に則り、2020年5月にフレームワーク(気候変動のリスク・機会に関するガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿った開示を行いました。開示内容の拡充を図るため、2023年5月には、これまでのパリ協定が求める水準である産業革命前からの気温上昇が2℃以下を含めた2つのシナリオ分析に加え、移行リスク(低炭素経済へ移行する過程で生じるリスク)を評価するCRREM(Carbon Risk Real Estate Monitor)を取り入れ、気候変動による当社グループ主要事業への将来的な影響分析を開始しました。今後も内容の深化を進めるとともに、気候変動に関するガバナンスや事業戦略の強化を目指します。

 

・CRREMを活用したリスク分析

CRREMの概要 :欧州の研究機関等が開発した商業用不動産の移行リスクを評価・分析するツールです。パリ協定が求める2℃、1.5℃目標に整合する2050年までの温室効果ガス排出量のパスウェイ(炭素削減の経路)と自社物件の排出経路を比較することで、物件の座礁資産化の時期や座礁割合、又は将来の排出にかかるコスト等を算定し、対応策やその効果を検討することができます。なお、座礁資産化とは、自社ポートフォリオの脱炭素経路が2℃、1.5℃のパスウェイを超過することによって、移行リスクのある物件であると評価されることを示します。

 

CRREMを活用した当社の移行リスク分析:将来の気候変動が当社事業へもたらす影響、特に保有する物件の移行リスクについて、CRREMの手法を活用し、定量的な評価を行いました。

[分析対象範囲]

当社の所有する物件のうち、2022年のGRESB(※)報告対象物件から、2021年度末時点で所有していたオフィス、商業、物流施設など合計84物件を対象に分析しました。

[ケースの設定]

ケース 1 :これまでの当社脱炭素の取り組みに加え、省エネ施策の強化(空調・LED等)や、生グリーン電力の導入といった取り組みを考慮したケース

ケース 2 :ケース1に非化石証書付き電力契約による再エネ導入も加え、2025年度までにすべての物件で再エネ由来電力への切り替えを想定したケース

[ケース分析結果]

設定した2つのケースと2℃、1.5℃目標の各パスウェイを比較したところ、以下の結果が得られました。

ケース 1 :省エネ施策強化や生グリーン電力の導入のほか、系統電力の排出係数の低下が寄与するものの、2037年頃には1.5℃パスウェイを上回る排出水準になる見込みです。そのため、本取り組みだけでは不十分である可能性があります。

ケース 2 :再エネ由来電力への切り替えに伴い、2025年度以降、電力由来の排出がなくなる一方、地域冷暖房、ガス由来のエネルギーの排出が一部残る見込みです。その結果、2047年頃に1.5°Cパスウェイを超過する可能性があります。

[ケース分析を踏まえた戦略・取り組み(機会内容含む)]

本分析においては、2021年度末時点の物件を対象に、2050年までの間、物件の入れ替え等がない想定としていますが、実際には省エネ性能に優れた物件への建て替え、新規取得等により、温室効果ガス排出原単位の改善も見込まれます。当社が掲げる2025年度の再エネ導入率100%の達成に向け、これまで推進してきた非化石証書付き電力利用を一層進めるとともに、コーポレートPPAの導入等を検討します。また、今後当社が開発する新築建物においては原則ZEB水準の環境性能を目指すことにより、省エネ性能の優れたビルの比率を向上させ、温室効果ガス排出原単位の改善を図ります。

 

(※) GRESBは、欧州の年金基金のグループを中心に創設された不動産会社・不動産運用機関の環境・社会等への配慮の姿勢を測るベンチマークです。

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TCFD提言に基づく情報開示に関する詳細情報は、以下よりご覧ください。

https://mec.disclosure.site/j/sustainability/activities/environment/tcfd/

 

②人的資本に関する戦略

当社グループの求める人財像である5つの要素を高めながら、「長期経営計画2030」の達成に向けて、超長期的視点と時代を先取りするDNAを活かして協業による強みの掛け算を生み出していく役割及び高い専門性によって価値創出していく役割を発揮できる人財を育成していくことを、人財育成の方針として掲げております。

当社グループでは、社員は企業にとっての重要な経営資源であるとの認識のもと、「人材」ではなく「人財」という表現を用いております。

 

■ 5つの要素を高めていくこと

当社グループでは、求める人財像を下記5つの要素を備えた人物であると定義しております。

当社従業員は、ビジネスの状況や一人ひとりのキャリア志向に応じて多様な役割を担いますが、5つの要素は全従業員に普遍的に求めるものとしております。そのため、採用・育成に当たっては、この5つの要素を重視しております。

なお、5つの要素は当社グループ全従業員に対して求めるものであり、グループ各社の人財育成方針のベース・基盤としてあるものです。

 

5つの要素

定義

求める力

「志」ある人

成し遂げたい姿や状態を描き、それを実現していく強い意志と行動力を備えた人

ビジョン構築・浸透力、覚悟・胆力

「現場力・仕事力」のある人

自身の担当領域や不動産全般の「プロ」として知識・スキルを研鑽し、業務を推進できる力を持つ人

目利き力、顧客志向、仕事推進力、生産性、リスク対応力、知識・スキル

「誠実・公正」である人

高い倫理観を持ち、誠実かつ公正に行動し、周囲と良好な関係を築く姿勢を持つ人

オープンマインド、倫理観

「組織」で戦える人

組織としての競争力を高めるために人財育成やマネジメントを行う力のある人

育成力、チームワーク、マネジメント力

「変革」を起こす人

前例や慣例にとらわれず、失敗を恐れずにチャレンジ精神を持って行動する姿勢を持つ人

チャレンジ志向・イノベーション

 

■ 長期経営計画2030の達成のために人財に求める2つの役割

(ア)超長期的視点と時代を先取りするDNAを活かし、協業による強みの掛け算を生み出していくこと

当社グループのビジネスモデルの特徴は、まちづくりという長期的な事業において、社内外の膨大なネットワークとの協業によって新しい価値を生み出していくことです。

当社グループの強みである超長期的視点と時代を先取りするDNAを活かしながら、社内外のネットワークを活用することで「新しい視点からの課題の発見」や「協業による強みの掛け算」を生み出すために、慣例にとらわれずチャレンジ精神を持って行動する役割が求められます。

当社ではその役割をサポートする施策を整備しております。

 

(イ)高い専門性によって価値創出していくこと

「長期経営計画2030」の達成に向けては、国内の大型開発の着実な推進に加え、海外事業の強化やノンアセットビジネスの拡大とサービス・コンテンツ領域への進出を推進し、各領域における高い専門性を持った人財が新しい価値創出に向けて事業をドライブしていくことが必要だと考えております。このことを踏まえ、各領域の専門人財の採用強化に加え、社員一人ひとりが必要な専門性を獲得・深化できる施策を整備しております。

 

(3) リスク管理

当社グループでは、「三菱地所グループリスクマネジメント規程」を制定し、すべての事業活動を対象にリスクマネジメント体制を整備、運用しております。当社グループのリスクマネジメントを統括する機関として、三菱地所㈱執行役社長を委員長、各事業グループ及びコーポレートスタッフの担当役員等をメンバーとする「リスク・コンプライアンス委員会」を、またリスクマネジメントに関する情報の集約など、実務的な合議体として「リスク・コンプライアンス協議会」をそれぞれ位置付けるほか、取締役会の決議により任命されたリスクマネジメント担当役員を統括責任者として、ラインスタッフ部署、コーポレートスタッフ部署、DX推進部並びにグループ各社に責任者を置き、それを推進事務局である法務・コンプライアンス部が支援する形でリスクマネジメント活動を推進しております。また、緊急事態発生時の行動指針や連絡・初動体制、事業継続計画等についても整備、運用しております。

 

毎年実施するリスク分析において、気候変動関連リスクを含む事業活動全般に関するリスクについて評価・分析し、その分析結果を踏まえ、前述の「リスク・コンプライアンス委員会」において、事業活動全般への影響度を踏まえた三菱地所グループとしての重点リスクを審議し、その対策をモニタリングしております。

 

また、以下2つの活動を柱に、リスクマネジメントを推進しております。

① 個別重点リスクマネジメント活動(=各事業、機能グループ・グループ各社における個別リスクマネジメント

活動の推進)

各事業、機能グループ・グループ各社において、リスク分析の上、重点的なリスク(個別重点リスク)を選定し、対応する活動を毎年実施しております。ラインスタッフ部署はそれぞれの事業グループが所管するグループ各社のリスクマネジメントの推進状況を把握し、連携・支援を実施しております。

 

② 重点対策リスクマネジメント活動(=当社グループとして特に注力すべき重点対策リスクの抽出と

モニタリング)

当社グループ全体のリスクを的確に把握し、重点的に対策を講じる必要があるリスクを抽出・マッピングすることで注力すべきリスクとそのプライオリティを可視化しております。また、年間を通じて特に重要なリスク(重点対策リスク)を中心にモニタリングするとともに、必要に応じて支援を実施しております。

 

リスク管理の具体的な方策として、「2030年目標」で掲げる4つのテーマ(① Environment ② Diversity & Inclusion ③ Innovation ④ Resilience)に関する取り組み目標を、2020年度より組織・機能ごとの年次計画に盛り込む運用とし、その達成状況をモニタリングすることにより、気候変動をはじめとするサステナビリティに関するリスク管理体制の強化に寄与するものと考えております。

なお、ESGに関する取り組みの達成状況は、役員報酬の定性評価項目の一つに位置付けられております。

 

また、「2030年目標」に対する進捗状況については、「サステナビリティ委員会」にて原則年2回報告が行われ、定期的にモニタリングがなされます。また、年次計画の策定に係る事項は「取締役会」の審議事項であり、2030年時点における目標達成に向けたアクションプランの妥当性等を中心に監督される体制となっております。今後、「2030年目標」に向けた取り組みを加速させるため、組織別・機能別の目標やアクションプランの更なる具体化・深化を図っていきたいと考えております。

 

(4) 指標及び目標

①サステナビリティに関する指標及び目標

当社グループは2030年目標の達成に向け、グループ全体で重点的に取り組むべき4つのテーマである「Environment」・「Diversity & Inclusion」・「Innovation」・「Resilience」について以下のKPIを策定し、取り組みを進めております。

 

Environment

項目

目標

KPI

実績値(*2)

気候変動

(*1)

CO2等の温室効果ガス排出量

(2022年6月「SBTi」よりSBTネットゼロ認定取得)

2019年度総排出量に対して、

・2030年度までに、Scope1+2を70%以上、Scope3を50%以上削減

・2050年までに「ネットゼロ」達成(Scope1,2,3いずれも90%以上削減。残余排出量は中和化(*3))

総排出量:

2,099,270 t-CO2

うちScope1+2:

265,442 t-CO2

うちScope3:

1,833,828 t-CO2

再生可能エネルギー由来の電力比率

2025年度までにグループ全体で100%達成を目指す

51.4%

廃棄物

(*1)

m²当たりの廃棄物排出量

2030年までに2019年度比20%削減

(2019年度実績:7.1kg/m²)

5.6kg/m²

廃棄物再利用率

2030年までに90%

59.1%

Diversity & Inclusion

項目

目標

KPI

実績値

ダイバーシティ

(*4)

女性管理職比率

2030年度までに20%

・2040年度までに30%

・2050年度までに40%

8.1%(*5)

新卒における女性社員採用比率

毎年度40%以上

43.8%

中途採用における女性社員採用比率

毎年度40%以上

38.1%

男性の育児休業取得率

(対象年度中に配偶者が出産し、出産年度にかかわらず同年度中に育休を開始した社員の割合)

2030年度まで毎年100%以上を維持

82.4%(*6)

女性の育児休業取得率

2030年度まで毎年100%

100%

産休・育休後の復職率

2030年度まで毎年100%

100%

健康経営

(*7)

メタボハイリスク層の割合 (40歳以上)

(定期健康診断において、生活習慣病の判定に影響する項目の何れかが、医療機関受診推奨値を超えた人の割合)

2025年度までに25.6%

・2030年度までに14.8%

(全国平均相当、2019年度割合比で約60%改善)

7.5%

健康層の割合(40歳以上)

(定期健康診断において、生活習慣病の判定に影響する項目の全てが正常値の範囲内の人の割合)

2025年度までに20.85%

・2030年度までに32.8%

(全国平均相当、2019年度割合比で約370%改善)

23.9%

がん検診の実施率

2021~2030年度まで毎年90%

88.6%

高ストレス者

2021~2030年度まで毎年10%以下を維持(全国平均相当:10%)

5.5%

人権

(*8)

持続可能性に配慮した調達コードと同等の木材(認証材及び国産材)の利用比率

2030年度までに100%

80%

 

 

Innovation

項目

目標

KPI

実績値

ビジネスモデルを革新しパフォーマンスを最大化

まちづくりの視点から新たな発想やビジネスの創出をサポートし、都市・産業の成長に貢献する

Resilience

項目

目標

KPI

実績値

防災対応

救命講習資格保有率

2030年度まで毎年100%

82%(*9)

防災訓練の実施

帰宅困難者受入施設割合

100%(*10)

(注)*1. 支配力基準に基づき、対象組織を選定しております。三菱地所グループの所有権及び信託受益権が50%未満の物件は、原則データ算定対象外です。2023年6月29日時点の2022年度実績値です。

*2. 2023年度実績は第三者保証取得後、以下に掲載を予定しております。

https://mec.disclosure.site/j/sustainability/activities/esg-data/environment/

*3. 2050年段階で三菱地所グループのバリューチェーン内で削減できない排出量を「残余排出量」といい、バリューチェーンの外で森林由来吸収や炭素除去技術等を活用して「中和(Neutralization)」することで、ネットゼロとするのがSBT基準に基づく考え方です。

*4. 対象組織は当社です。ただし、産休・育休後の復職率はグループ5社(当社、三菱地所プロパティマネジメント㈱、三菱地所レジデンス㈱、㈱三菱地所設計、三菱地所リアルエステートサービス㈱)です。2023年度実績値です。ただし、女性管理職比率及び新卒における女性社員採用比率は2024年4月1日時点の実績値です。

*5. 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したもので、2024年4月1日時点のものであります。

*6. 「2023年度(2023年4月から2024年3月)の間で配偶者が子を出産した男性社員の数(a)」に対する「同年度中に新たに育児休業をした男性社員数(b)」の割合(b/a)であります。

*7. 対象組織は当社です。2022年度実績値です。

*8. 対象組織は当社及び三菱地所レジデンス㈱です。2022年度竣工物件を対象としており、2022年度実績値です。

*9. 対象は当社及び三菱地所プロパティマネジメント㈱です。2023年度実績値です。

*10.行政との帰宅困難者等受入協定などを締結している施設、及び施設ごとに定める帰宅困難者対応行動手順書等において自主的に帰宅困難者の受入方針・計画等を策定している施設(国内新築(2002年以降竣工)・大型(延床面積100,000m²以上)オフィス・商業施設)の実績値です。2023年度実績値です。

 

<参考>各KPIの実績については、以下よりご覧ください。

https://mec.disclosure.site/j/sustainability/activities/esg-data/environment/

https://mec.disclosure.site/j/sustainability/activities/esg-data/social/

 

②人的資本に関する指標及び目標

当社グループでは、人財・働き方の多様性に配慮することや人権を尊重することは、経営や事業を行う上で重要な課題であるとの認識から、「三菱地所グループ行動指針」において、「人権・ダイバーシティの尊重」「一人ひとりの活躍」を掲げ、その着実な実践に向け、取り組みを推進しております。

当社グループでは、多様性確保のため、国籍、性別、年齢、新卒・キャリア採用等に偏りのない従業員構成を目指し、その多様な価値観・意見を心理的安全性のもとに自由に表明できる環境を整える「オピニオンダイバーシティ」を推進しております。多様性の一つの指標として、性別(ジェンダー)に関する指標及び目標を設定しております。

 

当社の当該指標に関する目標は「①サステナビリティに関する指標及び目標」表内の「Diversity & Inclusion」ダイバーシティ項目、実績は「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異 ① 提出会社 I. 女性管理職比率・男性の育児休業取得率・男女間賃金差異」に記載のとおりであります。

 

3【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、株価及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクについて、主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資家の皆様の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資家の皆様に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 自然災害、人災等によるリスク

国内外を問わず、地震、暴風雨、洪水その他の自然災害及び事故、火災、戦争、暴動、テロその他の人災等が発生した場合に備え、当社グループでは、商業施設、ホテル、空港等をはじめとした当社グループが所有もしくは運営する施設において、当該事象発生時のBCP対応に取り組んでおります。しかし、当該事象の緊急度合によっては事業中断をせざるを得ない場合があります。また、パンデミックや台風等の自然災害発生時の対応について社会的関心が高まるなか、万一、当社グループが取り得る適切な対応に不備があった場合、安全管理リスクやレピュテーションリスク等が顕在化し、当社グループの事業推進、業績に影響が及ぶおそれがあります。

(2) 不動産市況悪化のリスク

国内外の要因により景気が悪化し、それに合わせて不動産市況が悪化する場合には、当社グループの業績に悪影響を与えるおそれがあります。その場合には、特に東京の賃貸オフィス市場の空室率及び分譲マンション市場の販売状況及び、複合開発計画や再開発計画等については開発期間が長期にわたり大規模な投資を伴う傾向にあるため、進捗状況に注意を要するものと思われます。

(3) 建物の安全管理及び品質管理、工程管理に関するリスク

当社グループでは、運営施設及び工事中物件について、各種安全管理及び品質管理、工程管理を徹底し取り進めておりますが、万一、当該取り組みや対応に不備があった場合、人身事故の発生や、商業施設やホテル、高齢者向施設、空港等における火災や食中毒等の発生、住宅等をはじめとした顧客からの信用喪失等に繋がり、当社グループの業績等に影響が及ぶおそれがあります。

(4) 資材価格の高騰リスク

国内外の要因により原材料並びに原油価格の高騰に伴い資材価格が上昇した場合には、不動産開発事業において必ずしも増加コスト分を販売価格や賃料に反映することが出来ず、当社グループの業績に悪影響を与えるおそれがあります。

(5) 為替レート変動のリスク

当社グループの業務は為替レートの変動の影響を受けます。円が上昇した場合、外貨建て取引の円貨換算額は目減りすることになります。さらに、当社グループの資産及び負債の一部の項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されております。これらの項目は元の現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。

(6) 金利上昇のリスク

日本銀行は物価安定の目標のもと、短期政策金利を極めて低位に設定し、金融政策を経済・物価・金融情勢に応じて適切に運営する方針を示しております。金融政策の変更や、国債増発に伴う需給バランスの悪化等による金利の上昇等により、当社グループの業績や財政状態に影響が及ぶおそれがあります。

(7) 個人情報等の漏洩を含むサイバー攻撃等情報セキュリティリスク

当社グループでは国内外を問わず、各事業において個人情報をはじめとする多くの機密情報を取り扱っております。これらの機密情報に関しては、「個人情報の保護に関する法律」をはじめ、関連する諸法令の遵守と適正な取扱いの確保に努めておりますが、サイバー攻撃・ウイルス感染等による情報セキュリティインシデント発生等、万一、機密情報が外部へ漏洩した場合やシステムリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績に影響が及ぶおそれがあります。

 

(8) 株価下落のリスク

当社グループは上場及び非上場の株式を保有しております。全般的かつ大幅な株価下落が生じる場合には、保有有価証券に減損又は評価差損が発生し、当社グループの業績に影響を与えるおそれがあります。

(9) 人事労務管理リスク

当社グループでは適正な労務管理に向けた取り組みの推進やハラスメント撲滅に向けた取り組みの推進、ダイバーシティ推進に努めておりますが、万一、各種規制順守や適切な対応に不備があった場合、当社グループの業務遂行等に悪影響が及ぶおそれがあります。また、「長期経営計画2030」における事業戦略として、特にアジア圏を中心に海外事業の更なる拡大を見据えており、各海外現地法人では現地採用社員の割合は増加する想定であり、従前以上に現地法人社員のマネジメントが重要であると考えております。

(10) サステナビリティ経営上の重要課題の認識とリスク

当社グループでは、当社グループを取り巻く環境の変化に関して、経営上の重要課題であるマテリアリティ及び、それに伴う機会とリスクを特定しております。これらのリスクが顕在化した場合には、中長期的に当社グループの業績に影響が及ぶおそれがあります。

マテリアリティ

主な機会

主なリスク

環境

環境負荷が小さく、自然災害に強い

不動産開発・運営ニーズの増加

環境規制の厳格化による開発機会の減少

グローバリティ

外国人利用に対応した

施設開発・運営ニーズの増加

サプライチェーンマネジメントをはじめとした

カントリーリスク、コンプライアンスリスクの増加

コミュニティ

テロや犯罪に対するセキュリティが強い

不動産開発・運営ニーズの増加

建物老朽化・空き家増加による治安悪化

ダイバーシティ

多様な生活スタイルや就業・消費スタイル等

に対応した施設・サービス需要の増加

テレワーク等多様な働き方拡大に伴う

オフィスニーズの変化

少子高齢化

高齢者向け不動産の開発・運営ニーズの増加

労働人口の減少によるオフィスニーズの変化

世帯数減少による新築分譲ニーズの変化

ストック活用

大都市における再開発・リノベーション及び

既存ストック利用ニーズの増加

新築分譲ニーズ変化

デジタル革新

スマートコミュニティ、ハウス、オフィスへ

の活用の可能性

リアルな不動産施設に対するニーズの低下

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度の業績は、営業収益が1,504,687百万円で前連結会計年度に比べ126,860百万円の増収(+9.2%)、営業利益は278,627百万円で18,075百万円の減益(△6.1%)、経常利益は241,158百万円で30,661百万円の減益(△11.3%)となりました。

特別損益につきましては、前連結会計年度において固定資産売却益8,921百万円、投資有価証券売却益3,303百万円の計12,224百万円を特別利益に、固定資産除却関連損17,741百万円、関係会社株式評価損2,599百万円、減損損失3,535百万円、エクイティ出資評価損7,264百万円の計31,141百万円を特別損失に計上したのに対して、当連結会計年度においては、固定資産売却益10,381百万円、投資有価証券売却益30,280百万円、負ののれん償却益4,850百万円の計45,513百万円を特別利益に、エクイティ出資評価損12,138百万円を特別損失に計上しております。

この結果、税金等調整前当期純利益は274,532百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ3,089百万円増益(+1.9%)の168,432百万円となりました。

 

当連結会計年度の業績及び各セグメントの業績は次のとおりであります。

 

(単位:百万円)

 

区分

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

営業収益

1,377,827

1,504,687

126,860

営業利益

296,702

278,627

△18,075

経常利益

271,819

241,158

△30,661

親会社株主に帰属する

当期純利益

165,343

168,432

3,089

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

営業収益

営業利益又は

営業損失(△)

営業収益

営業利益又は

営業損失(△)

コマーシャル不動産

事業

777,424

188,852

849,771

211,795

住宅事業

346,419

35,037

398,827

38,888

海外事業

176,130

89,400

173,770

51,448

投資マネジメント事業

35,878

8,054

30,962

△1,619

設計監理・

不動産サービス事業

60,774

4,176

73,265

9,021

その他の事業

11,801

△2,121

11,009

△1,577

調整額

△30,602

△26,696

△32,918

△29,328

合  計

1,377,827

296,702

1,504,687

278,627

 

(a)コマーシャル不動産事業

・当連結会計年度において、オフィスビルは、再開発に向けたビルの閉館等による減収があった一方で、リーシングが順調に進み既存ビルでは低い空室率を維持したこと等により、増収となりました。
なお、当社の2024年3月末の空室率は3.45%となっております。

・商業施設やホテルは、事業環境の改善等により増収となりました。

・その他、オフィスビル等の売却により、不動産販売が増収となりました。

・この結果、当セグメントの営業収益は72,346百万円増収の849,771百万円となり、営業利益は22,943百万円増益の211,795百万円となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

摘  要

前連結会計年度

当連結会計年度

貸付面積

営業収益

貸付面積

営業収益

不動産

賃貸

丸の内オフィス

 

(所有)

1,331,673

 

253,525

 

(所有)

1,277,460

 

255,231

(転貸)

401,163

(転貸)

405,934

東京オフィス

(丸の内以外)

 

(所有)

592,043

 

145,827

 

(所有)

534,415

 

143,141

 

(転貸)

823,864

 

(転貸)

877,850

オフィス

(東京以外)

 

(所有)

566,469

 

61,914

 

(所有)

563,932

 

65,018

 

(転貸)

290,616

 

(転貸)

370,498

アウトレットモール

 

(店舗)

362,408

 

51,052

 

(店舗)

362,621

 

57,367

その他

 

 

36,634

 

 

37,453

不動産販売

 

 

105,228

 

 

135,419

その他(注2)

 

 

123,240

 

 

156,138

合  計

 

 

777,424

 

 

849,771

(注)1. 営業収益には、セグメント間の内部営業収益又は振替高を含めております。

2. その他には、建物運営管理受託収入、営繕請負工事収入、レンタルオフィス事業収入、ホテル事業収入等が含まれております。

(b)住宅事業

・国内分譲マンション事業の主な売上計上物件

「ザ・パークハウス グラン 神山町」            (東京都渋谷区)

「ザ・パークハウス 南麻布」               (東京都港区)

「ザ・パークハウス 谷中道灌山テラス」          (東京都台東区)

「ザ・パークハウス 大宮吉敷町翠邸」           (埼玉県さいたま市)

「ザ・パークハウス 京都河原町」             (京都府京都市)

・当連結会計年度において、国内分譲マンション事業では、売上計上戸数が増加したことにより増収となりました。

・この結果、当セグメントの営業収益は52,407百万円増収の398,827百万円となり、営業利益は3,851百万円増益の38,888百万円となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

摘  要

前連結会計年度

当連結会計年度

販売数量等

営業収益

販売数量等

営業収益

マンション

 

売上計上戸数

1,596

 

112,937

 

売上計上戸数

2,271

 

155,929

住宅管理業務受託

 

受託件数

344,867

 

57,713

 

受託件数

349,446

 

60,053

注文住宅

 

 

38,252

 

 

37,328

その他

 

 

137,517

 

 

145,515

合  計

 

 

346,419

 

 

398,827

(注)1. 営業収益には、セグメント間の内部営業収益又は振替高を含めております。

2. 他社との共同事業物件の売上計上戸数及び金額は当社持分によっております。

 

(c)海外事業

・当連結会計年度においては、米国は物件の売却収入の増加等により、アジアは複合開発事業収入の増加等により増収となりましたが、英国は前連結会計年度に計上したオフィスビルの売却収入の反動により減収となりました。

・この結果、当セグメントの営業収益は2,360百万円減収の173,770百万円となり、営業利益は37,952百万円減益の51,448百万円となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

摘  要

前連結会計年度

当連結会計年度

貸付面積等

営業収益

貸付面積等

営業収益

不動産開発

・賃貸

米国

 

貸付面積

461,530

 

117,499

 

貸付面積

451,967

 

124,498

 

管理受託面積

97,527

 

 

管理受託面積

97,527

 

欧州

 

貸付面積

59,254

 

45,040

 

貸付面積

103,564

 

35,836

アジア

 

貸付面積

8,436

 

10,392

 

貸付面積

7,201

 

11,924

 

売上計上戸数

1,171

 

 

売上計上戸数

1,265

 

その他

 

 

3,198

 

 

1,511

合  計

 

 

176,130

 

 

173,770

(注)営業収益には、セグメント間の内部営業収益又は振替高を含めております。

(d)投資マネジメント事業

・当連結会計年度においては、米国で当社グループがアセットマネジメントを行うファンドが保有する資産の時価評価額の増加に伴い前連結会計年度に計上した一過性のフィーが剥落したこと等により、減収となりました。

・この結果、当セグメントの営業収益は4,915百万円減収の30,962百万円となり、営業利益は9,673百万円減益の△1,619百万円の損失を計上しました。

 

 

(単位:百万円)

摘  要

営  業  収  益

前連結会計年度

当連結会計年度

投資マネジメント

35,878

30,962

合  計

35,878

30,962

(注)営業収益には、セグメント間の内部営業収益又は振替高を含めております。

 

(e)設計監理・不動産サービス事業

・㈱三菱地所設計において、2023年11月に着工した「(仮称)赤坂二・六丁目地区開発計画」等の設計監理業務等の収益を計上しました。

・当連結会計年度においては、設計監理収益は売上件数が増加したこと等により増収となり、不動産仲介・駐車場運営管理は、事業環境の改善及び不動産仲介取扱件数の増加等により、増収となりました。

・この結果、当セグメントの営業収益は12,491百万円増収の73,265百万円となり、営業利益は4,844百万円増益の9,021百万円となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

摘  要

前連結会計年度

当連結会計年度

売上件数等

営業収益

売上件数等

営業収益

設計監理

 

受注件数

1,289

 

20,940

 

受注件数

1,305

 

25,705

 

売上件数

1,238

 

 

売上件数

1,357

 

不動産仲介

 

取扱件数

1,196

 

10,394

 

取扱件数

1,403

 

15,126

駐車場運営管理

 

管理台数

61,004

 

11,029

 

管理台数

62,254

 

11,922

その他

 

 

18,409

 

 

20,510

合  計

 

 

60,774

 

 

73,265

(注)営業収益には、セグメント間の内部営業収益又は振替高を含めております。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益、長期借入れ等による収入、有形固定資産の取得等による支出により、前連結会計年度末に比べ50,192百万円増加し、275,965百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、307,249百万円の資金の増加(前連結会計年度比+37,334百万円)となりました。これは、税金等調整前当期純利益274,532百万円に非資金損益項目である減価償却費98,301百万円等を調整した資金の増加に、棚卸資産の減少、エクイティ出資の増加等による資金の増減を加えたものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、362,017百万円の資金の減少(前連結会計年度比△49,971百万円)となりました。これは有形固定資産の取得等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、100,433百万円の資金の増加(前連結会計年度比+69,976百万円)となりました。これは長期借入れ、社債の発行等によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

生産、受注及び販売の実績については、「① 財政状態及び経営成績の状況」における各セグメントの業績に関連付けて記載しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

2024年3月期の業績は営業利益が2,786億円で、直近の対外公表予想値に比べて116億円の増益(+4.4%)となりました。

2023年度はオフィス賃貸事業ではアフターコロナにおけるオフィス需要の回復を捉えて賃貸利益が増加したことに加え、販売利益を実現させたほか、分譲住宅の着実な販売進捗や、アウトレットモール等の商業施設の需要のさらなる増加、海外における販売利益の獲得等により、当初計画の水準を超えた利益を実現できました。

2020年度よりスタートした「長期経営計画2030」では国内アセット事業・海外アセット事業・ノンアセット事業で、それぞれ500億円程度の成長を目指しております。2023年度においては「TOKYO TORCH」の第二弾プロジェクト「Torch Tower」の新築工事着工、「(仮称)赤坂二・六丁目地区開発計画」新築工事着工、オーストラリアでのバリューアド型ファンド組成等、長期経営計画の戦略に合致する将来の収益機会の獲得を実現しております。さらに、回転型投資の展開を通じた売却益の獲得及びフィービジネスの拡大を図るべく、当社グループで運営するファンドやREITへの売却を推進し、バリューチェーンを強化しています。これらの成果を着実に利益として結実させ、長期経営計画で掲げた計数目標の達成を目指します。

セグメントごとの経営成績に関しては次のとおりです。

コマーシャル不動産事業においては、アフターコロナにおけるインバウンドの増加等に伴い、商業施設・ホテルを中心に回復傾向が続いていることに加え、オフィス賃貸利益の増加により、営業利益は2,118億円となり、直近の予想値よりも68億円の増益となりました。

住宅事業においては、好調な分譲マンション市況により収益は増加、あわせて賃貸マンション等のキャピタルゲインが大幅増加となったことから、営業利益は389億円となり、直近の予想値よりも29億円の増益となりました。

海外事業においては、米国事業を中心に為替影響も含めて営業利益は514億円となり、直近の予想値よりも26億円の減益となりました。

投資マネジメント事業においては、過年度計上のインセンティブフィー(ノンキャッシュ)の調整により、営業利益は△16億円となり、直近の予想値よりも4億円の増益となりました。

設計監理・不動産サービス事業においては、流通事業の増益により、営業利益は90億円となり、直近の予想値より40億円の増益となりました。

その他のセグメントについても、概ね計画通りに利益を計上することができました。

 

≪セグメント別営業利益≫

 

 

 

(単位:百万円)

 

2023年度

直近予想値 *1

決算値

増減

コマーシャル不動産

事業

205,000

211,795

6,795

住宅事業

36,000

38,888

2,888

海外事業

54,000

51,448

△2,552

投資マネジメント事業

△2,000

△1,619

381

設計監理・

不動産サービス事業

5,000

9,021

4,021

その他の事業

△1,000

△1,577

△577

調整額

△30,000

△29,328

672

合  計

267,000

278,627

11,627

(注)*1. 2024年2月9日公表時の通期業績予想となります。

 

当社グループは、中期的な視点から強みを活かした投資により得られる利益の拡大を通じた企業価値の向上を図るため、成長投資を推進する一方で、財務健全性の維持も重要な経営目標としており、成長に向けた事業投資を行う際は、高格付けの維持を前提とした最適な資本構成を図っています。当社グループの財源については、ビル賃貸事業が主力事業であることから、引き続き長期・固定資金を主体に調達しております。今後も期間中の金利状況や、調達済有利子負債の償還期間等とのバランスも考慮しながら、調達手段に柔軟性を持たせつつ運営を行って参る所存であります。

事業等のリスクに対しては、当社グループでは「三菱地所グループリスクマネジメント規程」を制定し、すべての事業活動を対象にリスクマネジメント体制を整備、運用しています。当社グループのリスクマネジメントを統括する機関として「リスク・コンプライアンス委員会」を、またリスクマネジメントに関する情報の集約など、実務的な合議体として「リスク・コンプライアンス協議会」をそれぞれ位置付けるほか、取締役会の決議により任命されたリスクマネジメント担当役員を統括責任者として、ラインスタッフ部署、コーポレート部署、DX推進部並びにグループ各社に責任者を置き、それを推進事務局である法務・コンプライアンス部が支援する形でリスクマネジメント活動を推進しています。さらに、重要な投資案件の意思決定に当たっては「経営会議」の審議前に「投資委員会」で審議を行い、リスク内容及びリスク管理方法等をチェックしています。また、緊急事態発生時の行動指針や連絡・初動体制、事業継続計画等についても整備、運用しています。

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性

1)財務戦略の基本的な考え方

当社グループは、業界最上位の格付に裏打ちされた強固な財務基盤は、重要な経営資源の一つであると位置づけ、財務健全性の維持と高格付を活かした適時最適な調達の実現を財務戦略の基本方針としております。

2020年4月から開始した「長期経営計画2030」においても、ROAの向上を通じたROEの向上に主眼を置き、レバレッジについては現状の格付水準が維持可能な範囲で適切にコントロールすることを基本方針としており、不動産市況に応じた、成長投資・資産売却・株主還元・資金調達の最適な組み合わせによる企業価値向上を実現して参ります。長期経営計画の4年目となる2023年度は、ネット有利子負債/EBITDA倍率についてはハイブリッドファイナンス考慮前で7.3倍(考慮後で6.9倍)にて着地いたしました。世界経済の先行きは依然として不透明な状況が継続することが想定されますが、10年間という長期にわたる経営計画においては、事業環境が変動する可能性を織り込んでいるため、環境の変化を見極めつつ、柔軟な資本政策を組み合わせながら、事業機会獲得の機会を的確に捉え、2030年の目標実現に向け、着実に各種施策を推進して参ります。

 

2)経営資源の配分と資金需要の主な内容

当社グループは、事業により獲得した営業キャッシュ・フローと資金調達余力に応じたキャッシュインを、株主還元、事業投資・回収(ネット投資額=投資決定済案件への投資-物件売却による回収)、不動産市況に応じて柔軟に行う戦略的アロケーションの3点に配分します。戦略的アロケーションは、株主価値向上に資する案件への厳選投資、追加の株主還元、負債抑制等のうち、その時々の状況に応じて柔軟に判断して参ります。

今後の主な資金需要としては「長期経営計画2030」に基づき、有楽町エリア及び常盤橋エリアを重点更新エリアとし、2030年までに総額6,000~7,000億円程度を投じ、再開発やリノベーションを推進して参ります。また、2025年3月期の投資回収予算においては、約11,900億円の投資と約6,200億円の回収を見込んでおります。

 

3)資金調達手段

当社グループは、事業展開に伴う資金需要を安定的に確保するため、内部資金及び外部資金を有効に活用しております。

内部資金については、主要グループ会社では原則として金融機関など外部からの資金調達を行わず、キャッシュ・マネジメント・サービスの活用により、資金調達の一元化と資金効率化、流動性の確保を図っています。

外部資金については、財務健全性の維持が可能な範囲において金融機関からの借入や社債発行等を活用しており、資金需要・金融市況・調達コスト・償還バランスなどを総合的に勘案した上で、適切なファイナンスを実施しているほか、近年ではグリーンボンドやサステナビリティ・リンク・ローン等のサステナビリティファイナンスにも取り組んでおります。なお、当社グループは長期の開発期間を伴う事業が中心であるため、いずれの調達手段であっても10年以上の長期資金を中心とした資金調達を行うとともに、負債の年度別償還額の集中を避けることでリファイナンスリスクの低減を図っています。

主要な取引先金融機関とは、良好な取引関係を維持構築することで、円滑な資金調達を可能としております。また、国内金融機関においてコミットメントライン枠やスポット借入枠を設定しており、緊急時の流動性を確保しております。

 

社債発行については、国内外4社の格付機関から取得している信用格付(※1)をもとに、近年は劣後特約付社債(ハイブリッド社債)に加え、国内の公募債市場で最長かつ初となる50年債の発行を行う等、投資家需要や起債環境を見極めたうえで最適な起債に努めており、今後も資金調達手段の多様化を図って参ります。

なお、当社は劣後特約付公募社債を含む、全ての社債を無担保で発行していること、金融機関からの借入金についても財務制限条項は付されていないことから、安定した資金調達が可能と考えております。

 

※1 本報告書提出時点において、格付投資情報センターの格付はAAマイナス(ポジティブ)、日本格付研究所の格付はAAプラス(安定的)、スタンダード&プアーズの格付はAプラス(安定的)、ムーディーズの格付はA2(安定的)となっております。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。