文中の将来に関する事項は、提出日(2024年6月27日)現在において当社グループが判断したものであり、当社グループとしてその実現を約束するものではない。
(1)経営理念
これまで、「安全最優先」と「社会的責任の全う」を経営の基軸に位置付け、「お客さまと社会のお役に立ち続ける」ことを使命とする経営理念のもと、事業活動を展開してきたが、金品受取り問題等では、「社会的責任の全う」という点について、社内外から厳しいご指摘をいただいた。これを受け、新しい関西電力グループとして創生し、持続的に成長していくための指針として、2021年3月に「関西電力グループ経営理念 Purpose & Values」を策定した。
この経営理念は、当社グループの最上位概念として、お客さまや社会にとっての『「あたりまえ」を守り、創る』という存在意義のもと、『「公正」「誠実」「共感」「挑戦」』という価値観を大切にして事業活動を行い、持続可能な社会を実現することを掲げている。
(2)ゼロカーボンビジョン2050
国における2050年カーボンニュートラル宣言など地球温暖化対策への社会的な要請が一層高まる中、さらなる地球温暖化問題への対応を自主的かつ積極的に推進していく必要があるとの考えのもと、2021年2月、当社グループは「関西電力グループ『ゼロカーボンビジョン2050』」を策定し、事業活動に伴うCO2排出を2050年までに全体としてゼロとすることを宣言した。ビジョンにおいては、ゼロカーボン実現に向けた取組みの3つの柱として、「①デマンドサイドのゼロカーボン化」、「②サプライサイドのゼロカーボン化」、「③水素社会への挑戦」を掲げている。
また、2022年3月には、ビジョン実現に向けた道筋である「ゼロカーボンロードマップ」を策定し、中間地点として2030年度の目標を設定するとともに、ゼロカーボン社会の実現に向けて取り組む内容を、「お客さまや社会の皆さまとともに取り組むこと」「関西電力グループ自ら取り組むこと」の2つの観点で整理した。
これまでの取組みの進捗や世界的な脱炭素化の潮流の高まりを踏まえ、2024年4月に「関西電力グループ ゼロカーボンロードマップ」を改定し、新たにGHG排出量目標を設定するなど、取組みを加速させている。
今後も当社は再生可能エネルギーの主力電源化や、原子力の最大限活用、火力のゼロカーボン化、ゼロカーボン水素の活用に取組み、排出量削減を着実に進める。また、電化や蓄電池などの多種多様なソリューションの提案により、お客さまや社会の皆さまと共に社会全体のCO2排出量を削減していく。
引き続き、お客さまや事業パートナー、自治体など、あらゆるステークホルダーの皆さまと力を合わせ、様々な取組みを進めていく。
(3)関西電力グループ中期経営計画(2021-2025)
当社グループは、2021年3月、5ヵ年の実行計画として「関西電力グループ中期経営計画(2021-2025)」を策定した。
この3年間、当社グループは、計画に掲げた取組みの3本柱である、「ゼロカーボンへの挑戦(EX)」、「サービス・プロバイダーへの転換(VX)」、「強靭な企業体質への改革(BX)」の実行に努めるとともに、前半3ヵ年の財務目標をいずれも達成するなど、着実に取組みを進めてきた。
昨今、国際情勢を受けたエネルギー市場の不安定化に加え、脱炭素化の潮流やデジタル技術の一層の進展等により、当社を取り巻く事業環境は、時々刻々と変化し続けている。
これらを踏まえ、2024年4月、長期的な方向性を見据えながら、さらなる成長への道筋を確かなものとするため、中期経営計画をアップデートした。これからの後半2年間は、EXでは、2024年4月に改定したゼロカーボンロードマップに基づき、脱炭素化を牽引するとともに、VXでは、分散型サービスプラットフォームをはじめとするエネルギー事業でのⅤⅩに加え、データセンター事業等、エネルギー領域に捉われない領域へ挑戦し、新たな価値を提供していく。また、経営基盤の強化に向けたBXの取組みとして、コスト構造改革、DXの推進等に加え、人財基盤の強化、仕事の進め方の改革等に力を尽くしていく。
そして、中長期的には、エネルギー・非エネルギー事業の拡大に取り組むとともに[エネルギー]:[非エネルギー(エネルギーVXを含む)]=2:1の利益バランスの実現によるレジリエントな事業ポートフォリオの構築やM&Aやアライアンスを活用した成長の加速、“安定的に利益とキャッシュを創出し、国内で最も成長し続けるユーティリティ事業者”を目指すことを通じて持続的成長の実現に繋げていく。
財務目標(連結)(2024年4月公表)
(注)1 ROA〔総資産事業利益率〕=事業利益〔経常利益+支払利息〕÷総資産〔期首・期末平均〕
2 ROIC〔投下資本利益率〕=税引後事業利益 ÷ 投下資本〔期首・期末平均〕
3 各セグメント損益には、連結子会社および持分法適用会社からの受取配当金を含まない。
(4)ガバナンス確立とコンプライアンス推進に向けた取組み
金品受取り問題をはじめとする一連の不適切事象に共通する課題として、環境変化とリスクへの確実な対応や組織風土面に問題があるとの認識のもと、内部統制の抜本的な強化と、組織風土改革の取組みを両輪で推進する。
内部統制強化では、事業運営の適正性確保に向け、法令・ルールの遵守に留まらず、自律的かつ継続的な改善ができる組織作りを目指す。
組織風土改革では、役員・従業員一人ひとりが誇りを持ち、業務に活き活きと取り組むことができる会社を目指す。
文中の将来に関する事項は、提出日(2024年6月27日)現在において当社グループが判断したものである。
(1) ガバナンス
当社グループは、経営の最上位概念である「関西電力グループ経営理念 Purpose & Values」において、お客さまや社会にとっての『「あたりまえ」を守り、創る』という存在意義のもと、『「公正」「誠実」「共感」「挑戦」』という価値観を大切にして事業活動を行うことで持続可能な社会を実現することを掲げている。また、この経営理念のもと、具体的にどのように行動すべきかを「関西電力グループ行動憲章」において定めており、当社グループの全ての役員、従業員が本憲章に基づいて行動することで、当社グループの持続的成長ならびに持続可能な社会の実現を目指している。
・「関西電力グループ行動憲章」
<基本的な考え方 抜粋>
「関西電力グループ行動憲章」は、「関西電力グループ経営理念 Purpose & Values」のもと、関西電力グループの役員、従業員が、具体的にどのように行動すべきかを示したものであり、全ての社内規程等の前提として、私たちの事業活動における判断の拠り所となるものです。関西電力グループの事業活動は、お客さま、社会のみなさま、株主・投資家のみなさま、ビジネスパートナー、従業員といった様々なステークホルダーのみなさまによって支えられています。こうしたみなさまから頂戴する信頼こそが、関西電力グループが企業としての使命を果たし、持続的に成長を遂げていくための基盤です。関西電力グループは、コンプライアンスを実践・徹底すること、すなわち、法令遵守はもとより時代の要請する社会規範とは何かを常に考え、経営理念に基づき行動し続けることで、社会の一員としての責務を果たします。また、グループの事業活動に対して様々なステークホルダーのみなさまから寄せられる期待に誠実にお応えすることにより、みなさまからの信頼を確固たるものとしていきます。このような認識のもと、関西電力グループは、全ての役員、従業員がそれぞれの持てる知恵を結集し、協働することで、社会の持続的発展に貢献します。
1.コンプライアンスの実践・徹底
2.公正な事業活動
3.適正な情報開示・管理と対話
4.人権の尊重とダイバーシティの推進
5.安全の確保
6.お客さまに選ばれる商品・サービスの提供
7.よりよき環境の創造を目指した取組み
8.地域社会の課題解決・発展に向けた取組み
9.危機管理の徹底
10.役員の責任と本憲章の徹底
・経営理念・行動憲章の実践に向けた活動
当社グループは、2021年3月に策定した経営理念および行動憲章を従業員一人ひとりが真に理解し、日々の業務において実践していくための活動計画を定めており、本計画に基づいて、経営層と従業員とのコミュニケーション、各種研修、各職場でのディスカッション、グループ会社支援等の活動を積極的に行っている。この活動の一環として、「経営理念」、「コンプライアンスチェック」、「安全行動の誓い」を記載した携帯用のコンダクトカードを全従業員に配布しており、従業員は、このカードの裏面に自らの行動宣言を明記し、日々の業務における行動や目標の確認に活用している。
・サステナビリティ推進体制
当社グループは、お客さまと社会のお役に立つ企業グループとして持続的な成長・発展をとげるとともに、グローバルな社会課題の解決を通じた持続可能な社会の実現を目指してサステナビリティに資する取組みを推進している。こうした取組みをより一層推進するため、社長を議長とした「サステナビリティ推進会議」を設置し、社会の持続的な発展に貢献するためのサステナビリティ推進活動に関する総合的方策の策定を行い、具体的な活動を展開している。こうした体制のもと、各事業本部などはサステナビリティ推進会議で策定された方針に基づき、それぞれの活動を展開している。グループ会社においても、当社とコミュニケーションを取りながら、自律的にサステナビリティ活動を展開している。
また、業務執行を担う執行役の報酬については業績連動報酬を支給しており、業績指標として、CO2排出削減量・社外ESG評価・従業員、組織エンゲージメントを採用している。
役員の報酬等については、P.79
(体制図)
・取締役会
独立社外取締役を議長とし、サステナビリティに関する事項を含む当社グループの経営に関わる重要事項について決議している。
・執行役会議
社長を議長とし、取締役会の決定した基本方針に基づいて、当社グループ全般の重要な業務執行方針および計画ならびに業務執行に関し審議するとともに、必要な報告を受け、迅速かつ適切な会社運営を実施している。
・サステナビリティ推進会議
社長を議長とし、当社グループ全体のサステナビリティに関するリスク・機会を含む総合的方策の策定や、実践状況の確認を行っている。
・内部統制部会
コンプライアンス推進本部長(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)を主査とし、サステナビリティ関連を含む重要リスク項目の抽出、その管理状況の把握・評価を行っている。リスク評価結果については、定期的に取締役会まで報告し、必要に応じてリスク管理の仕組み、体制の改善を行っている。
<気候変動>
当社グループは、気候変動問題を経営上の重要課題として認識し、以下の会議体にて評価・管理し、必要に応じて、各業務執行部門に対して、助言・指導を行っている。(サステナビリティ全般に組み込まれている共通のガバナンス体制については、P.15(1)ガバナンスを参照。)
・ゼロカーボン委員会
社長を委員長とし、「関西電力グループ ゼロカーボンビジョン2050」の実現に向けて、「ゼロカーボンロードマップ」を策定し、ゼロカーボンに係る各部門の取組み共有および進捗状況の確認を行っている。
なお、2024年4月の「関西電力グループ ゼロカーボンロードマップ」改定にあたっては、ゼロカーボン委員会にて議論を行い、取締役による意見交換会を経たうえで、取締役会で決議されている。
https://www.kepco.co.jp/sustainability/environment/zerocarbon/index.html
https://www.kepco.co.jp/sustainability/environment/zerocarbon/pdf/zerocarbon_roadmap_01.pdf
(気候変動に関するガバナンス体制図)
(2) 戦略
当社グループが持続的な成長をとげるとともに、SDGs等のグローバルな社会課題の解決を通じて社会の持続的な発展に貢献することを目的とし、中期経営計画(2021-2025)の策定に合わせて下記10個のマテリアリティ(重要課題)を特定している。
その中でも、気候変動への対応については、「関西電力グループ ゼロカーボンビジョン2050」を中期経営計画と並んで、理念体系における「存在意義」の具体化として位置づけ、カーボンニュートラルの達成に向けて、「ゼロカーボンロードマップ」を策定し、脱炭素に向けた取組みを推進している。
・マテリアリティ特定プロセス
<気候変動>
当社グループは、気候変動に関するリスク・機会についてTCFD提言の分類を参考に、サステナビリティ推進会議での議論を経て、以下のとおり特定している。
(リスク・機会の抽出)
※1 短中期: 〜2030年、長期: 〜2050年と定義している。
2
3 慢性的に生じうるリスクであるため、発現時期については評価していない。
・2050年に向けたシナリオ
(シナリオ分析結果)
気候変動に関するリスク・機会を分析するにあたって、「気候変動の将来予測」と「当社グループへの影響度」の観点でシナリオドライバーを設定した。
「気候変動の将来予測」では、国際エネルギー機関 (IEA) や気候変動に係る政府間パネル(IPCC) 等を踏まえ、2050年にカーボンニュートラルを達成する「1.5℃シナリオ」とGHG排出を一定程度抑制した「2℃シナリオ」を選定した。
「当社グループへの影響度」では、当社グループへの影響度が大きいと特定した「原子力の稼動状況」と「火力のゼロカーボン技術の導入」を選定した。
上記シナリオドライバーを前提に、気候変動に関するリスク・機会について、以下の通りシナリオを設定し、分析を行っている。
1.5℃シナリオにおいて、電力需要は、原子力の稼動状況や火力のゼロカーボン技術の導入度合いにかかわらず、2021年と比べて、約6割増加する結果となった。需要側では、カーボンニュートラルを達成するために、省エネの進展および電化率の向上 (55%~58%) が必要な結果となった。供給側では、カーボンニュートラルを達成するため、原子力の稼動状況や火力のゼロカーボン技術の導入度合いに応じて、再エネの導入量が大きく変動する結果となった。
2℃シナリオでは、電力需要は、2021年と比べて、約1割増加する結果となった。需要側では、1.5℃シナリオと比較しGHG排出制約が厳しくないため、電化率は46%程度と、1.5℃シナリオと比較すると緩やかに上昇する結果となった。供給側では、1.5℃シナリオと比較しGHG排出制約が厳しくないものの、火力のゼロカーボン技術の導入遅延に伴い、火力電源が減少するため、再エネ導入の拡大が必要な結果となった。
このように、1.5℃シナリオは2℃シナリオと比べて、シナリオ達成のために、より強力な施策の実施とイノベーションを必要とするシナリオだと考えている。
・財務インパクト
以上の気候変動に関して特定したリスク・機会とシナリオ分析結果を踏まえた、当社グループの財務に影響を与える要因とそれに伴う当社グループの取組み状況は以下のとおりである。
(当社グループの気候変動戦略)
このように、「お客さまや社会の皆さまとともに取り組むこと」と、再エネ、原子力、ゼロカーボン火力等の「関西電力グループ自ら取り組むこと」を着実に実施することで、当社グループ事業は、2℃シナリオ、および1.5℃シナリオいずれにおいても、レジリエンスを確保できると評価している。当社グループは、上記取組みを「関西電力グループ ゼロカーボンビジョン2050」や「関西電力グループ ゼロカーボンロードマップ」等の気候変動戦略へ適切に反映していく。足元では、これまでの取組みの進捗や世界的な脱炭素化の潮流の高まりを踏まえ、2024年4月に「関西電力グループ ゼロカーボンロードマップ」を改定した。
また、1.5℃シナリオの実現には、原子力のさらなる活用、火力のゼロカーボン技術の導入、再エネの新規開発拡大が不可欠であるところ、当社グループはこれらの取組みを着実に推進していることから、2050年カーボンニュートラルをS+3Eの観点で比較的優位なポジションで達成できる可能性がある。
今後も取組みの進捗状況や、技術開発、政策動向等を踏まえ、戦略を柔軟に見直しながら、S+3Eを大前提としたカーボンニュートラルの実現を図っていく。
<人的資本>
関西電力グループ中期経営計画(2021-2025)で掲げた、経営基盤の強化に向けたBX取組みにおける人財基盤強化の全体像は下図の通り。
・人財育成方針・社内環境整備方針
(3) リスク管理
当社グループは、「関西電力グループリスク管理規程」に則り、組織目標の達成に影響を与える可能性のある事象をリスクとして認識、評価したうえで、必要な対策を実施するとともに、対策後にその評価を行い、改善していく一連のプロセスにより、当社グループへの影響を適切なレベルに管理している。
サステナビリティ関連を含む当社グループの事業活動に伴うリスクについては、各業務執行部門(グループ会社含む)が自律的に管理することを基本としつつ、組織横断的に重要とされるリスクに関しては、専門性を備えたリスク管理箇所が、各業務執行部門に助言・指導を行うことで、リスク管理の強化を図っている。
当社グループのリスク管理体制、リスク管理状況、事業等のリスクについては、P.28「
<気候変動>
当社グループは、エネルギーセクターにおける気候変動に関するリスク・機会について、将来の事業環境の変化や不確実性のうち主要事業である電力事業において、系統電力の市場規模や新規投資判断・既存アセット等へ影響を与えうる約30項目を抽出し、当社グループのマテリアリティや各業務執行部門が選定したリスク項目等との整合を確認の上、特にインパクトが大きい項目を特定し、当社グループ戦略に適切に反映することで気候変動に起因する各種リスクを適切なレベルに管理するよう取り組んでいる。
気候変動リスクについては、財務リスク等、気候変動以外のリスクと共に全社のリスク管理体制のなかで、影響度、発生可能性の観点から重要性を評価し、俯瞰的にリスク管理状況を把握・管理している。加えて、定期的に執行役会議および、適宜、取締役会へ報告し、必要に応じてリスク管理の仕組み、体制の改善を行っている。さらに、リスク管理体制の整備と運用に関して、経営監査室による内部監査を受け、監査結果を基に改善を図っている。
(4) 指標及び目標
<気候変動>
「関西電力グループ ゼロカーボンビジョン2050」の実現に向け、あらゆるステークホルダーのみなさまと力を合わせて、社会全体のゼロカーボン化に向けた取組みを進めるための気候変動戦略として、当社グループは「ゼロカーボンロードマップ」を策定し、2024年4月の改定にあたってはScope3を含むGHG排出量目標など新たな目標を設定している。
(GHG排出量(Scope1,2,3))
※1 「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(ver.2.5)」(環境省/経済産業省)に基づきサプライチェーン全体の温室効果ガスの排出量を算定。
※2 直接的な温室効果ガス排出量(スコープ1)では、「地球温暖化対策の推進に関する法律(以下、温対法という)」に基づく報告(事業者)中の直接的な温室効果ガス排出量(エネルギー起源CO2、SF6、N2O)と、温対法に基づく報告(事業者)に含まれない車両燃料由来のCO2排出量を合算。なお、ここで考慮しているSF6は暦年値である。
※3 間接的な温室効果ガス排出量(スコープ2)では、温対法に基づく報告(事業者)のうち、間接的なCO2排出として、他社から購入した電気と熱によるCO2排出量を合算。
※4 スコープ1およびスコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
※5 (自社が購入・取得した製品またはサービスの金額データ)×(排出原単位)および(ガス総販売量)×(排出原単位)「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」(環境省/経済産業省)の解釈変更に伴い、過年度の実績を見直している。表中の括弧内の数値は算定方法変更前の数値を示している。
※6 (資本財価格)×(排出原単位)一部算定方法の見直しに伴い、過年度の実績を見直している。
※7 (燃料・熱消費量)×(排出原単位)および(他社購入電力量)×(排出原単位)および(エンドユーザーに販売する他社購入電力の生
成に伴う排出量)
「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」(環境省/経済産業省)の解釈変更に伴い、2020、
2021年度の実績を見直しています。表中の括弧内の数値は算定方法変更前の数値を示している。
※8 (燃料消費量)×(排出原単位)
※9 (廃棄物処理(量))×(排出原単位)および(燃料消費量)×(排出原単位)
※10 (従業員数)×(排出原単位)
※11 (都市階級別)Σ(従業員数×営業日数×排出原単位)
※12 事業特性上の理由等から該当なし
※13 (ガス総販売量)×(排出原単位)一部算定方法の見直しに伴い、過年度実績を見直している。
※14 表中の括弧内の数値は算定方法変更前の数値を示している。
※15
https://www.kepco.co.jp/share_corporate/pdf/2023/report2023.pdf
<人的資本>
上記(2)戦略において記載した、人財の多様性の確保を含む人財育成方針および社内環境整備に関する方針に基づき、当社および関西電力送配電株式会社では、以下の指標を用いている。
なお、連結ベースでの指標及び目標の開示については、各社毎に事業内容および事業環境が多岐に亘るため、連結グループに属する全ての会社を総合した指標は、設定していない。
(インプット指標)
(注)1 実践研修とは別に、全従業員を対象として、2023年度中にDXリテラシー向上に関する基礎的な研修を実施した。
2 実践研修受講後に実施するアンケートにおいて、研修を契機とする習得した知識の業務での実践や、DXに関する自律的な学習の実施等、従業員の自律性に基づく追加アクションを行ったと回答した者の比率を表す。
3 医療・運輸職員を除く。
4 延べ100万労働時間あたりの労働災害による休業1日以上の死傷者数のことで、災害の発生頻度を表す。
(アウトプット指標)
(注)1 過去1年間において、成長志向を持ち、自らアクションを起こした者の比率
2 過去1年間において、成長実感が得られた者の比率
3 多様性を活かす職場であると感じている者の比率
4 ①職場において、いかなるハラスメントも許さないという意識が定着していると感じている者の比率
②働き方について、時間・場所ともに満足している者の比率
5 社内アンケートにおける、以下3設問に対して「(かなり+わりと)あてはまる」と回答した者の比率
①「あなたは、自分の仕事にやりがいや誇りを感じている。」
②「あなたは、将来において、会社での仕事のやりがいが高まっていると思う。」
③「あなたは関西電力・関西電力送配電が好きですか。」
当社グループ(当社および連結子会社)は、「関西電力グループリスク管理規程」に則り、組織目標の達成に影響を与える可能性のある事象をリスクとして認識、評価したうえで、必要な対策を実施するとともに、対策後にその評価を行い、改善していく一連のプロセスにより、当社グループへの影響を適切なレベルに管理している。
当社グループの事業活動に伴うリスクについては、各業務執行部門が自律的に管理することを基本とし、組織横断的かつ重要なリスク(情報セキュリティ、子会社の経営管理、人財基盤、市場リスク、財務報告の信頼性、環境、エネルギー政策、災害、コンプライアンス(競争環境における法令含む)、調達の適正性)については、必要に応じてリスクの分野ごとに専門性を備えたリスク管理箇所を定め、業務執行部門に対して、助言・指導を行うことで、リスク管理の強化を図っている。さらに、リスクを統括的に管理する内部統制部会を設置し、CCOを「リスク管理統括責任者」とする体制のもと、当社グループの事業活動に伴うリスクを適切なレベルに管理するよう努めている。
内部統制部会は、リスク評価結果等を定期的に組織風土改革会議および取締役会へ報告し、必要に応じてリスク管理の仕組み、体制の改善を行っている。さらに、リスク管理体制の整備と運用に関して、経営監査室による内部監査を受け、監査結果を基に改善を図っている。
リスク管理体制 (2024年6月末時点)
2023年度中にリスク管理委員会を1回、内部統制部会を12回開催し、当社グループの事業活動に大きく影響を与える重要リスク項目を抽出し、その管理状況を全社的視点から把握・評価している。
重要リスク項目は、リスク対策を実効的かつ適切に行っていく観点から、経営層で議論を重ね、収支に影響を与える各構成要素に着目して抽出し、事業別(事業ウェイトの大きい電気事業特有と全事業共通)と要因別(戦略、オペレーション、ハザード、財務・金融)の観点で、体系立てて整理するとともに、システム不具合等、近時のリスク事象への対応を踏まえ、ITガバナンス等の新規項目を追加している。電気事業特有のリスクは、《1》気候変動、《2》原子力関連リスク、《3》電力等供給支障、《4》競争環境の急激な変化への対応遅れ、全事業共通のリスクは、《5》法規制・規制政策変更、《6》イノベーションの停滞、《7》資産価値毀損、《8》人財基盤の揺らぎ、《9》サプライチェーンの不安定化・断絶、《10》ITガバナンス・情報セキュリティリスク、《11》ガバナンス・コンプライアンスリスク、《12》環境問題(環境法令違反等)、《13》自然災害・国際情勢の変化等、《14》市場・市況変動リスクである。
(分類、重要リスク項目、具体的なリスクの内容は、下表のとおり)
重要リスク項目に関連するリスクについては、事業毎の実態・特性を見極めつつ、発生可能性や影響度などの観点から重要度を評価した上で、対策の検討を行い、期中のリスク対策結果を踏まえ、改めて期末に重要度評価を実施することで、リスク管理のPDCAを回している。
(3) 事業等のリスク
当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性のある「重要リスク項目」の具体的な内容は、以下に記載のとおりである。なお、本記載内容は、提出日(2024年6月27日)現在において当社グループが判断したものであり、今後、経済状況や原子力発電を含むエネルギー政策、ならびに環境政策の変化等の影響を受ける可能性がある。なお、影響額については、一定の前提に基づき算定した理論値であり、前提諸元が急激かつ大幅に変動する場合等には、影響額により算出される変動影響が実際の費用変動と乖離する場合がある。
《1》気候変動
当社グループは、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の趣旨に賛同し、中長期にわたる気候変動に関するリスクの分析を行い、経営計画・方針に適切に反映している。気候変動に関するリスクとして、下記の移行リスクと物理リスクを認識しており、これらのリスクによって、社会的信用の低下が生じる事象、電源構成の大幅な変化に伴うエネルギー事業資産の価値毀損、他事業者との競争のさらなる拡大、各種市場からの収益変動等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
<移行リスク>
政策:炭素価格導入等のCO2排出規制による火力発電稼動率の低下、再エネ開発における競争激化・制度変更等
による投資予見性の低下等
技術:分散型電源導入拡大等による系統電力需要の減少等
市場:環境負荷の高い商品の売上低下等
評判:原子力発電に対する社会的受容の低下、炭素排出量や係数悪化に伴う顧客評判変化等
<移行リスク>に対応し、持続可能な社会を実現するため、『ゼロカーボンエネルギーのリーディングカンパニー』として、事業活動に伴うCO2排出を2050年までに全体としてゼロとすることを『関西電力グループ「ゼロカーボンビジョン2050」』において宣言している。今後、デマンドサイドの役割が拡大していく中で、ゼロカーボンソリューションプロバイダーとして、全ての部門(家庭・業務、産業、運輸)において、お客さまのゼロカーボン化を実現する最適なソリューションを提案・提供していく。また、分散型エネルギーリソースの活用やレジリエンスの強化等、多様化する社会ニーズも踏まえて再エネを最大限導入・主力電源化し、それを可能にする送配電系統の高度化、出力安定性に優れエネルギー密度が高い原子力エネルギーの安全最優先を前提とした最大限活用、再エネ大量導入に必要な調整力等に優れた火力のゼロカーボン化に取り組む。加えて、水素社会の実現に向けて、非化石エネルギーを活用したゼロカーボン水素の製造・輸送・供給、発電用燃料としての使用に挑戦していく。『関西電力グループ「ゼロカーボンビジョン2050」』の実現に向けて、2030年度を中間地点と位置づけ、当社グループの取組みの道筋を目標と共にゼロカーボンロードマップで取りまとめている。なお、これまでの取組みの進捗や世界的な脱炭素化の潮流の高まりを踏まえ、2024年4月にロードマップを改定しScope3を含むGHG排出量目標を新たに設定するなど、取組みをさらに加速させている。
<物理リスク>
急性:異常気象激甚化に伴う発電・送配電設備の復旧および対策費用の増加
慢性:降水量の変化による水力発電の稼動率の低下
急性リスクについては、台風・豪雨等(気候変動に起因する異常気象等)により、当社グループ設備への被害・損害、操業への支障や他社からの電気・資機材の調達等への支障が生じ、当社グループサービスの提供が困難になることで、社会的信用の低下が生じる事象等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
(なお、急性リスクへの対応は、《13》自然災害・国際情勢の変化等に記載している。)
慢性リスクについては、降水量の減少により水力の発電量が減少することで、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
慢性リスクに対応するため、水力発電所の運転実績に応じた最適な運用方法への見直しや効率的・安定的な設備運用等、必要な対応を実施していく。
《2》原子力関連リスク
原子力発電は、エネルギーセキュリティの確保、経済性、地球環境問題への対応の観点から優れた特性を有しており、エネルギー資源の乏しい我が国において、将来にわたって経済の発展や豊かな暮らしを支えるための重要な電源である。一方で、原子力発電は、大量の放射性物質を取扱い、運転停止後も長期間にわたり崩壊熱を除去し続ける必要があるなどの固有の特性を有する。このため、原子力施設の建設・運転・廃止措置、使用済燃料や放射性廃棄物の輸送・貯蔵・処理・処分等の全ての局面において、自然現象、設備故障、人的過誤、破壊・テロ活動、核燃料物質の転用・拡散等により、放射線被ばくや環境汚染を引き起こすリスクがある。原子力発電において、適切な管理を怠って重大な事故を起こせば、長期にわたる環境汚染を生じさせ、立地地域をはじめ社会のみなさまに甚大な被害を及ぼすだけでなく、我が国のみならず世界に対し経済・社会の両面で影響を与えうるなど、社会的信用の低下が生じる事象等が発生し、当社グループの存続可能性に疑義が生じる重大な影響を与える可能性がある。
原子力発電の安全性を向上させるため、全ての役員および原子力発電に携わる従業員が、「ここまでやれば安全である」と過信せず、原子力発電の特性とリスクを十分認識し、絶えずリスクを抽出および評価して、それを除去ないし低減する取組みを継続する。こうした取組みを深層防護の各層において実施することにより、事故の発生防止対策を徹底し、そのうえで万一、事故が拡大し、炉心損傷に至った場合の対応措置も充実させる。また、「原子力安全推進委員会」において、美浜発電所3号機事故を踏まえた再発防止策の推進や安全文化の醸成、福島第一原子力発電所事故を踏まえた自主的・継続的な取組みに関して、広い視野から確認、議論を行い、全社一丸となり、取組みを推進している。さらに、社外の有識者を主体とする「原子力安全検証委員会」において、独立的な立場から助言等を得て、安全性向上の取組みに反映している。
我が国において重要な電源である原子力発電を将来にわたって一定規模確保するためには、安全の確保、技術・人財基盤の維持等が必要であり、これらを実現するためには、安全性の確認された40年超プラントの運転に加えて、新増設・リプレースが必要になると考えている。当社グループとしては、原子力発電所の安全確保を大前提として、有効に活用していきたいと考えている。
当社グループは他の電力会社と比較して原子力発電の比率が高く、新規制基準等への適合性の確保、各種基準・法令等の変更への対応や原子力差止め訴訟等の結果により、発電所の停止が長期化した場合には、当社グループの業績は大きな影響を受ける可能性がある(2023年度実績ベースでは、原子力利用率が1%悪化する場合の費用増加影響は52億円程度)。これらのリスクに対応するため、新規制基準等への適合性を確保し、各種基準・法令等の変更に適切に対応していくとともに、訴訟等においても各原子力発電所の安全性に関する主張・立証を適切に行っていく。なお、2023年6月に原子炉等規制法が改正され、高経年化した発電用原子炉の安全規制が見直された。当社グループは、同法が施行される2025年6月までに、見直し後の安全規制に基づく認可を得られるよう順次対応していくが、認可取得が遅れることにより現在の7基稼働体制の運営に支障をきたすリスクがあることから、計画的に認可申請を実施していく。
当社グループの原子力発電所は7基すべてが福井県に集中して立地しているため、局所的な災害により複数の発電所が同時に停止した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。当社は、火力や再生可能エネルギーなどの自社電源および他社電源の柔軟・有効活用なども含め、電源の多様性を確保している。
原子力施設の廃止措置や使用済燃料の再処理・処分などの原子力バックエンドコストは、今後の制度の見直しや将来費用の見積額の変動等により費用負担額が増加した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。また、原子力バックエンド事業は、超長期の事業であり不確実性を伴うが、国による制度措置等により事業者のリスクが軽減されている。原子力損害賠償・廃炉等支援機構一般負担金については、今後の負担総額や負担金率の変動等により、当社グループの負担額が増加した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
原子力発電の燃料となるウランは、政情の安定した国々に埋蔵されていることから安定確保が可能である。また、少しの燃料で長期間発電に使うことが可能なうえ、使い終わった燃料は再処理することで再び燃料として使用できることなどから、準国産のエネルギー資源になる。原子力発電所で使用した燃料中のウラン、プルトニウムを燃料として再利用する「原子燃料サイクル」を進めることは、資源に乏しい我が国にとって、エネルギー資源の有効活用およびエネルギーを安定的に確保していくために効果的であるといえる。
使用済燃料は、発電所内の使用済燃料プールで一定期間貯蔵したあと、再処理工場へ搬出する。万が一、プールが満杯になれば発電所を運転できなくなるため、計画的に搬出する必要があることから、当社グループは「使用済燃料対策推進計画」に基づき、中間貯蔵施設の操業に向けた取組み等を展開している。2023年6月には、「使用済燃料対策推進計画」で示している2,000トン規模のうち、使用済MOX燃料再処理実証研究に伴い約200トンの使用済燃料の搬出が決定した。その後10月に「使用済燃料対策推進計画」を補完する指針として、「使用済燃料対策ロードマップ」を策定した。これに基づき、使用済燃料対策として「六ヶ所再処理工場への使用済燃料の搬出」、「使用済MOX燃料再処理実証研究に伴う仏国オラノ社への使用済燃料の搬出」および「中間貯蔵施設の2030年頃の操業開始、操業に向けた準備」を進めることとしている。
廃止措置は長期の事業であり不確実性を伴うため、当社グループの廃止措置は大きく4段階に分け、約30年かけて実施することとしている。廃止措置の実施にあたっては、必要な対策等を講じ、安全の確保を最優先に着実に行っている。現在、美浜発電所1、2号機は、第2段階の「原子炉周辺設備解体撤去期間」であり、管理区域内での解体を実施している。解体により発生する廃棄物については、放射能レベル区分に応じて処理する計画であり、これを確実に実現すべく準備を進めている。一方、大飯発電所1、2号機は、第1段階の「解体準備期間」であり、タービン建屋内機器等解体工事等の作業を計画どおり進めるとともに、第2段階への移行に必要な炉内外の放射能調査も計画通り進めている。
《3》電力等供給支障
当社グループ設備の事故等により、安全・安定供給が困難となることで、当社グループは、社会的信用の低下や業績の悪化等の影響を受ける可能性がある。送配電事業においては、送配電設備の事故等による操業支障や、施工力不足、資機材の調達支障等により、電力の供給が困難となることで、当社グループは社会的信用の低下や業績の悪化等の影響を受ける可能性がある。このため、発電所の適切な運転管理や巡視に努めていることに加えて、事故の再発防止を徹底している。また、送配電設備の事故防止のため、効率的・効果的な設備改修を進めるとともに、能率向上・施工力増強両面からの取組みを推進することにより施工力を確保し、高経年設備の着実な更新を実施している。さらに、調達面では非常用安全在庫の備蓄や安定調達、調達リスクを考慮したサプライヤー選定等を行い、リスク低減を図っている。
エネルギー事業においては、将来の電力需要増加に対して適切に対応していく必要があるが、人口減少や省エネルギー(節電)などの減少影響よりも、経済成長やデータセンター・半導体工場の新増設に伴う増加影響が大きいとされ、将来の電力需要は増加するという想定がある一方、徹底した省エネルギー(節電)の推進により、将来の電力需要は減少するという想定もある。このように、想定の不確実性が高いことから、投資回収の予見性が低く電源投資が進捗しないことで、電力需要に応じた適切な設備容量を確保できず、収入増加の機会を逸するリスクがある。
こうした状況下で投資判断を行うために、国の電力システムにかかる政策や規制動向について必要な情報収集を実施するとともに、審議会等の場を通じて当社グループの考え方を主張するなど必要な対応を実施し投資回収の予見性を高めていく。
送配電事業においては、必要な投資の確保とコスト効率化を両立させ、高経年化する送配電設備の確実な増強と更新や再生可能エネルギー主力電源化、レジリエンス強化を進めていく必要があるが、これらが実現できない場合、収支悪化リスクおよび安定供給に支障をきたすリスクがある。
2023年度より、新たな託送料金制度が導入され、本制度下において、第1規制期間(2023-2027年度)に達成すべき目標を明確にした事業計画を策定し、その実施に必要な見積費用(収入の見通し)は国から承認されている。これにより、必要な設備の維持・拡充にかかる費用は見積費用に織り込まれ確保されているため、また、需給調整市場における調整力調達費用は事後検証のうえ調整されるため、収支悪化リスクおよび安定供給に支障をきたすリスクは低減されている。
※送配電事業は関西電力送配電(株)が担う。
当社発電設備の事故や厳気象(猛暑および厳寒)等により、需要に対し必要な供給力や燃料に不足が生じ、供給支障が発生することで、当社グループは、社会的信用の低下や業績の悪化等の影響を受ける可能性がある。
そのため、発電所の適切な運転管理や巡視、事故の再発防止の徹底に加え、「需給ひっ迫を予防するための発電用燃料に係るガイドライン」に基づく必要な燃料在庫の確保、卸電力取引市場での機動的な電力調達等により、供給支障発生の未然防止に取り組んでいる。そのうえでなお、関西エリアや全国大で需給ひっ迫が発生した場合は、燃料の緊急調達や卸電力取引市場からの電力調達等、必要な供給力確保に加え、国や電力広域的運営推進機関と連携しながら緊急時の対策に努める。
《4》競争環境の急激な変化への対応遅れ
昨今の世界的な脱炭素化の潮流の高まりを踏まえ、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギー由来の電力供給や蓄電池等を活用したエネルギーの効率的な利用に関する顧客のニーズが高まっている。
このような顧客のニーズ変化を受け、従来の大規模発電所ではなく、地元やエネルギー使用地点に近い場所に分散設置された太陽光発電や風力発電等の発電設備から電力を供給する分散型エネルギーシステムへの移行が進んでいる。こうした動きに対し、当社の取組みが他事業者に劣後する場合、顧客や販売電力量の減少といった影響を受ける可能性がある。
こうしたリスクに対応するため、太陽光発電や風力発電等の分散型エネルギーの活用を提案している。さらに、発電量、電気使用量を精緻に予測し、空調、蓄電池、EV等の各設備をAIで最適制御するエネルギーマネジメントシステムを開発、提案するなど、顧客に対する最適なエネルギーサービスを提供している。
電力システム改革の検証やエネルギー基本計画、その他制度の見直しの結果、各種市場からの収支変動等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
次に、小売販売電力量が、冷暖房需要の主たる変動要因である気象(特に気温)や景気の動向、省エネルギーの進展、技術革新による電気の利用形態の変化および他事業者との競争状況等により変動する場合がある。また、販売価格が、他事業者との競争状況等により変動する場合もある。その結果、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。ガス販売量および販売価格についても、上記に準じ変動する場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。さらに、燃料価格や外国為替相場等の動向によって火力燃料費・購入電力料が変動した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。燃料価格や外国為替相場の変動を電気料金に反映させる「燃料費調整制度」によって一定の調整が図られるものの、燃料価格の高騰が継続する場合、燃料費調整制度において平均燃料価格が上限を超えることにより、燃料価格の上昇を一部料金反映できない可能性がある。
これらのリスクに対応するため、競合他社との差別化につながる最適なエネルギーサービスを開発・提供していくことで、顧客の維持・拡大に取り組んでいく。また、政策動向のリスクに対しては、国の電力システムにかかる政策や規制動向について情報収集するとともに、審議会等の場を通じて当社グループの考え方を主張するなど、適宜対応していく。さらに、電力調達においても、多様な調達先の確保、長期・短期契約の組み合わせなど、燃料・電力等の市況変動に影響されにくい調達ポートフォリオの構築、法人分野の料金における市場価格の変動に対応した料金メニューの導入等により価格変動に伴う収支影響の緩和を図るなど、リスクの抑制に取り組んでいる。
《5》法規制・規制政策変更
小売全面自由化を踏まえた内外無差別な卸販売等の競争政策、容量市場、非化石価値取引市場、ベースロード市場や需給調整市場といった電力市場整備等、電力システム改革に関する制度の見直し、その他政策動向等により、他事業者との競争のさらなる拡大や各種市場からの収支変動等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
これらのリスク対応について、2024年度は、電力システム改革の検証が国の審議会で行われるため、国の電力システムにかかる政策や規制動向について必要な情報収集を実施するとともに、審議会等の場を通じて当社グループの考え方を主張するなど必要な対応を実施していく。
また、2023年7月に閣議決定された脱炭素成長型経済構造移行推進戦略(GX推進戦略)では、エネルギー安定供給の確保が世界的に大きな課題となる中、GX(グリーントランスフォーメーション)を通じて脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の3つを同時に実現するべく、「エネルギー安定供給の確保を大前提としたGXの取組」、「成長志向型カーボンプライシング構想等の実現・実行」が掲げられている。
このうち、「エネルギー安定供給の確保を大前提としたGXの取組」においては、再生可能エネルギーの主力電源化や安全確保を大前提とした原子力の活用等が明記され、再エネ導入や原子力事業環境整備の進展が期待されるものの、これらの政策が停滞した場合には当社グループの事業は業績の悪化等の影響を受ける可能性がある。
次に、「成長志向型カーボンプライシング構想等の実現・実行」においては、カーボンプライシングに係る取り組みとして、CO2排出に対して、化石燃料賦課金導入、企業間の排出量取引制度(GX-ETS)稼働、発電事業者を対象にした有償オークションへの移行といった方向性が示されている。温室効果ガスの多排出事業にあたる発電事業に対しては、過度な排出規制の導入により、火力発電所の稼働率低下や追加的な費用負担といった影響が生じる可能性がある。
これらのリスク対応について、2024年度は、次期エネルギー基本計画の策定にかかる検討やカーボンプライシングの詳細制度設計が実施される見通しであり、国のエネルギー・環境政策や規制動向について、必要な情報収集を実施するとともに、審議会等の場を通じて当社グループの考え方を主張するなど必要な対応を実施していく。
情報通信分野においては、現在、議論が行われているNTT法の見直しをはじめ、政策方針の変更によって競争環境や市場環境が大きく変化し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。これらのリスクに対応するため、国の情報通信政策や規制動向について、必要な情報を収集し、公正な競争環境の維持・推進に向けた政策提言を継続的に行うとともに、規制環境に合わせた新サービスの開発、既存サービスの拡充、継続したコスト低減等により競争環境の変化に対応できる経営基盤の強化に取り組む。
不動産分野においては、政策金利が上昇した場合、住宅ローン金利の上昇により住宅購入者の購買意欲が減退し、分譲住宅事業の業績に影響を与える可能性がある。また、都市計画や建築関連法令等の政策変更により、物件開発コストの増加や保有土地の価値毀損等の影響を受ける可能性がある。これらのリスクに対しては、情報の収集と分析により適時適切に対応していく。
《6》イノベーションの停滞
当社グループは、イノベーション推進により目指す状態を、「新事業、新サービスを生み出す力」と「既存事業のオペレーション変革力の双方が優れていること」かつ「イノベーションが自律的かつ持続的に巻き起こせる仕組み(システム)が確立されていること」と定義しており、これらを推進するための体制強化や仕組みの構築を行っている。
しかしながら、政策・経済・社会・技術等の外部環境の変化に適応できずに業務変革や新規事業・サービス創出に向けた活動が停滞することにより、事業の構造転換に支障が生じ、ステークホルダーからの評価が著しく低下する可能性がある。
そのため、将来の外部環境の変化により的確に対応することを目指し、中長期的な技術・社会動向等を調査し、事業機会・脅威を考察することで、先手を打った事業活動を展開していく体制や仕組みの充実を進めている。また、コーポレートベンチャーキャピタル「合同会社K4Ventures」を投資主体に、順次ベンチャー企業等への投資を実施しており、当社やグループ各社との協業を促進するとともに、最新の技術やビジネスモデルを早期に情報収集し、さらなる新規事業・サービス創出を展開していく。
《7》資産価値毀損
昨今の世界的な脱炭素化の潮流の高まりに加え、主要7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境相会合では、石炭火力については、各国の温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標に沿って、2030年代前半または、気温上昇を1.5度に抑えることが可能な期間内に排出削減対策が講じられていない既存の石炭火力発電をフェーズアウトする方針が示されている。
このような事業環境において、火力に対するCO2排出規制強化、法改正(新規制基準に対する追加要求事項等)や訴訟による原子力不稼働事象の顕在化等により既存電源の稼働率が低下することで資産価値が大幅に毀損するリスクがある。
これらのリスクに対応するため、国の電力システムにかかる政策や規制動向について必要な情報収集を実施するとともに、事業者にとって合理的な内容とするべく審議会等の場を通じて当社グループの考え方を主張するなど、必要な対応を実施していく。
また、送配電事業においては、高経年化設備の更新等に必要な投資を収入として確保できないことで資産価値が毀損するリスクがある。新たな託送料金制度の導入後も短期的には収支影響が発生する可能性はあるものの、必要な費用は見積費用(収入の見通し)に織り込まれていること、エリア需要の変動は翌規制期間に調整されること、また、災害復旧等にかかる制御不能な費用増は事後調整されることから、中長期的な事業運営の安定性および予見性が一定程度向上し、資産価値毀損のリスクは低減されている。
なお、上記以外にも、情報通信事業や生活・ビジネスソリューション事業において、競合他社に対する技術力の劣後、顧客志向の変化に伴うサービスの陳腐化や市場環境の変化等が発生することで、資産価値が毀損するリスクがある。これらのリスクに対し、新サービスの開発・既存サービスの拡充等により、競争環境の変化に対応できる経営基盤の強化に取り組んでいる。
国内再エネ・国際事業ならびにグループ事業や新規事業等への投資については、市場規模や規制等の市場に係る動向や開発計画の遅延等により、想定していた収益性が確保できず資産価値が毀損するリスクがある。このようなリスクに対応するため、投資の妥当性の評価や投資後のモニタリングと撤退・再建策の検討・実施も含めた一連のマネジメントプロセスの構築・運用等により、投資リスクの適正な管理に努めている。
《8》人財基盤の揺らぎ
労働災害の発生等、社会的信用の低下が生じる事象等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
美浜発電所3号機事故をはじめとする事故や災害から得た数々の教訓から、「安全を守る。それは私の使命、我が社の使命」との社長の宣言のもと、当社グループの事業活動にかかわるすべての人の安全を守ることを最優先に、安全活動を続けている。この宣言に込めた思いを継承していくため、「関西電力グループ安全行動憲章」をグループワイドで共有し、「安全行動の誓い」を規範として安全行動をたゆまず実践することで、安全の実績を着実に積み重ね、ゆるぎない安全文化を構築していく。さらに、グループワイドで災害防止に向けた取組みをより一層促進するため、安全・品質部会や「安全衛生委員会」にて安全活動の継続的な改善を行うとともに、協力会社を含めたグループ会社と”相方向”の情報共有やコミュニケーションを深めることで、「災害ゼロ」を目指している。
従業員の意欲の低下や多様で優秀な人財の安定的な確保に支障をきたすなど、人財基盤の強化が進まず、当社グループの持続的な成長を妨げ、社会的信用の低下が生じる事象等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
人財基盤強化の前提として、2021年に策定した「関西電力グループ人権方針」に基づき、あらゆる事業活動において、人権を尊重する取組みを推進している。その上で、人財基盤強化のため、キャリア・女性・外国人採用者について、今後も職歴や性別といった属性の多様性を強化するとともに、国籍にとらわれることなく、積極的な採用を進めていく。管理職への登用についても、個人の能力や適性に応じて公平・公正に実施している。なお、国や社会の動向といった今日的な観点に加え、当社の経営状況や労働力確保等の状況も踏まえ、2025年度から定年延長を含む「新たな評価・報酬体系の構築」を実施することとしている。社員の定年を65歳まで引き上げることで、第一線職場における要員不足に対応するだけでなく、ベテラン層から中堅、若年層への確実な技術継承を行っていくとともに、“今の挑戦”をより重視する制度へ見直しや魅力的な挑戦機会を提供する仕組みを導入することで、従業員一人ひとりが、挑戦意欲や成長意欲を持って活き活きと働くことができる環境、労働状況を整備していく。また、2024年度に実施した賃金改定では、若年層の賃金水準をより魅力ある水準に引き上げるべく意を用いて改定を実施したほか、初任給の引き上げを実施している。こうした様々な取組みにより従業員エンゲージメントの向上を図りながら、人財の多様性を確保し、ダイバーシティ&インクルージョンを推進するとともに、労働市場の変化や事業環境の変化に即した多様な採用コースの構築を図ることで、優秀な人財の獲得につなげている。さらに、2018年に設立した「関西電力グループアカデミー」の中で体系化した研修や育成制度を通じて、従業員の自律的なキャリア形成を促し自発的な成長を支援するとともに、「働き方」改革・健康経営の推進責任者である社長のもと、人事労務担当役員が委員長を務める「『働き方』改革・健康経営委員会」での議論を通じて、より柔軟に働ける勤務制度の整備や従業員の健康増進に向けた方針・施策を策定し、労働組合・健康保険組合・医療スタッフ等と連携しながら、従業員一人ひとりが成長意欲や挑戦意欲をもち、健康で活き活きと活躍できる環境整備をグループ大で推進している。
《9》サプライチェーンの不安定化・断絶
取引先における人手不足や採算性悪化により取引先が事業撤退し、もしくは当社グループに対し、取引停止を申し入れることで、資機材等の安定的な調達が困難となる可能性がある。
これらのリスクに対応するため、関西電力グループ調達基本方針に基づき、取引先との対話活動を充実させ、対話活動を通して顕在化した課題に対し、迅速・適切に対応することで、既存の取引先との強固なパートナーシップを確立するとともに、新規取引先を積極的に開拓することで、複数取引先の確保を図る等、安定調達の実現に向けた取組みを進めている。
《10》ITガバナンス・情報セキュリティリスク
当社グループは、AI(人工知能)などのデジタル技術活用や業務の抜本的見直しが遅延する等により、DX推進が効率的・効果的に実施されない場合、他事業者との競争に劣後し、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、既存事業の生産性向上や新たな価値創出に取り組むとともに、DXの取組みを加速すべく、役員をトップとし全体戦略の検討や方向づけを行う「DX戦略委員会」、DXの専業会社で施策実施に必要な技術支援を行う「K4 Digital株式会社」、施策の検討や展開を行う「各部門」の三位一体でDXを推進している。また、DX戦略委員会での議論結果は、執行役会議での議論を経てDX戦略として策定している。
情報システムの要件漏れやプログラムバグの混入等により法令対応が適切に行われず、情報システムの不具合や停止が発生し、お客さま情報の不適切な取扱いや電力市場への誤入札等の社会的信用の低下につながる事案の発生により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。情報システムの品質を確保するため、標準のシステム開発手順を社内ルールとして規定のうえ、開発に直接従事していないIT専門家が第三者視点でルールの遵守状況を確認している。また、IT部門と各部門が連携し、全社横断的にIT投資額や人的資源の投入、リスク対応の妥当性、運用中のシステムにおける法律・規制変更への対応状況を確認している。さらに、経営上重要な開発プロジェクトは執行役会議に付議し、計画の妥当性を確認している。これらの取組みを継続し、情報システムの不具合や停止を低減していく。
外部からのサイバー攻撃等により、当社グループ設備への被害や損害、操業への支障が生じ、電力の安全・安定供給や当社グループサービス提供の継続不可、当社グループ保有のお客さま情報、重要情報の社外流出等、社会的信用の低下につながる事案が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。重要インフラ事業者である当社グループは電力の安全・安定供給を重要な責務として、関係法令・サイバーセキュリティ経営ガイドライン・社内規定等に則って情報セキュリティ対策を継続的に強化するとともに、日々高度化する社外のサイバー攻撃事例や最新の情報セキュリティの技術情報を入手し、早期対策の実施に努めている。
当社グループが保有するお客さま情報をはじめ、業務上取扱う重要情報について、適切な取扱いがなされず社外へ流出することで、社会的信用の低下につながる事案が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。個人情報の適切な保護のため、当社グループが保有する個人情報については、個人情報保護法やガイドライン等を遵守するとともに、プライバシー権等にも配慮した対策を実施している。また、個人情報を含む業務情報を適切に取扱うために、組織的・人的・物理的・技術的側面から情報セキュリティ対策を継続して講じている。
《11》ガバナンス・コンプライアンスリスク
当社は、会社法に基づいて、業務の適正を確保するための体制を定め、その結果を記載した事業報告に当該体制の決議内容および運用状況の概要を開示している。業務の適正を確保するための体制の有効性が確保されない場合には、ステークホルダーからの信頼を失墜し、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
当社グループは「関西電力グループ経営理念 Purpose & Values」(2021年3月策定)に基づき、ステークホルダーのみなさまのご期待にお応えし続けることで、持続的な企業価値の向上と社会の持続的発展に貢献していく。その実現に向けた経営の最重要課題は、コーポレート・ガバナンスの強化であると認識し、当社のコーポレート・ガバナンスにおいては、経営の透明性・客観性を高めることを目的に、執行と監督を明確に分離した「指名委員会等設置会社」の機関設計を採用し、取締役会議長は社外取締役、構成委員の過半数は社外取締役としている。また、取締役会直下に法定外の「コンプライアンス委員会」を設置している。さらに、当社はグループ各社に対して、「関西電力グループ経営理念 Purpose & Values」および「関西電力グループ行動憲章」等の経営の基本的方向性や行動の規範について、浸透を図るとともに、子会社管理に係る社内規程に基づき、子会社における自律的な管理体制の整備を支援、指導すること等により、企業集団の業務の適正を確保している。
金品受取り問題をはじめとする一連の不適切事象を踏まえ、環境変化とリスクへの確実な対応や組織風土面に問題があるとの認識のもと、内部統制の抜本的な強化と組織風土改革の取組みを両輪で推進している。当社グループの事業活動に伴うリスクを適切なレベルに管理し、当社グループの持続的な成長を実現するため、内部統制部会を設置し、内部統制システムの整備・運用状況の評価、改善に係る総合的方策の検討ならびに不備事項の改善指示および改善状況の確認・支援を行っている。また、内部統制の抜本的な強化や組織風土改革をはじめとした再発防止策を総合的に推進するため、組織風土改革会議を設置し、一連の不適切事象に係る全社的な課題の把握・分析、再発防止に向けた総合的方策の策定等を行っている。
重大なコンプライアンス違反の発生等、社会的信用の低下が生じる事象等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
当社はこれまでの金品受取り問題、新電力顧客情報の不適切な取扱い、独占禁止法違反といった不適切な事象の発生を受け、取締役会の監督のもと、それぞれ業務改善計画に基づき対応を実施しており、2023年7月に、コンプライアンス推進本部を新設するとともに、コンプライアンス推進の最高責任者としてCCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)を設置してグループ全体のコンプライアンス推進やリスクマネジメント等、内部統制の抜本的な強化を進めている。
なお、コンプライアンスに関わる当社グループの不適切な事案の詳細については、以下に記載のとおりである。
(金品受取り問題および役員退任後の嘱託等の報酬に関する問題)
当社グループは、当社の役員等が社外の関係者から金品を受け取っていた問題および役員退任後の嘱託等の報酬に係る問題により、お客さまや社会のみなさまから賜わる信頼を失墜させた。
本問題については、第三者委員会を設置し、2020年3月14日に調査報告書を受領した。その報告書の内容を厳粛かつ真摯に受け止め、電気事業法に基づく業務改善命令に対する業務改善計画を取りまとめ、2020年3月30日に経済産業大臣に提出した。
その後、2020年6月に指名委員会等設置会社に移行し、外部の客観的な視点を取り入れた新たな経営管理体制のもと、ガバナンス改革をはじめとする業務改善計画の取組みを進めており、その実行状況を2020年6月29日、10月13日、2021年3月2日および12月27日に経済産業大臣へ報告した。
今後も取組みを確実に実行するとともに、外部の客観的な視点を踏まえ実行状況を検証し、必要に応じて改善策を加えるなど、引き続き、新たな関西電力グループの創生に向け、全力で取り組んでいく。
(特別高圧電力および高圧電力の取引に関する独占禁止法違反)
当社は、特別高圧電力および高圧電力の取引に関し、2021年4月13日および同年7月13日に、独占禁止法違反に係る被疑事実があるとして、公正取引委員会による立入検査を受け、2023年3月30日に、同委員会から、不当な取引制限を禁止する独占禁止法第3条に違反する行為があったと認定された。なお、当社は排除措置命令および課徴金納付命令のいずれも受けていない。
当社は、2023年4月にコンプライアンス委員会から、原因究明および再発防止策の提言を受け、当社再発防止策を決定した。また、2023年7月14日に業務改善命令を受領し、本年8月10日に業務改善計画を経済産業大臣に提出した。当社は、二度とこのような事態を起こさないとの強い決意のもと、再発防止策を徹底していく。
(新電力顧客情報の不適切な取扱いによる電気事業法違反等)
他の小売電気事業者のお客さま情報の不適切な取扱いおよびお客さま情報の漏洩に係る問題について、2022年12月27日に電力・ガス取引監視等委員会から、2023年1月13日に個人情報保護委員会および経済産業省から報告徴収を受領し、それぞれ翌月に回答した。さらに、本件に関し、経済産業省から2023年2月21日に緊急指示を2023年4月17日に業務改善命令を受領した。この間、当社および関西電力送配電の各社社長を本部長・委員長とする「緊急対策本部」・「調査検証・改革委員会」をそれぞれ2023年1月末に設置し、本件に関する事実調査や原因究明を実施した。判明した事実や原因に基づき業務改善計画を取りまとめ、当社コンプライアンス委員会の確認を経て、2023年5月12日に経済産業大臣に提出した。本改善計画では、コンプライアンス推進本部の新設およびコンプライアンス推進の最高責任者であるCCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)の設置、内部監査の強化、組織風土改革会議の新設等を行うとともに、一連の改革の実行性を高めるべく外部人材を活用した検証を行うこととしている。業務改善命令の指摘を真摯に受け止め、本改善計画を着実に実行していく。
(電力市場への誤入札等)
当社は、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場※1での取引において、2022年12月26日、2023年9月20日および21日受渡し分で、合計約51.7GWhの過剰な買い入札を行っており、また、2023年9月21日受渡し分の取引においては、約1.1GWhの余剰電力の市場供出※2を行っていなかった。過剰な買い入札の原因は入札時に使用する当社システムの不備によるものであり、余剰電力の供出未達の原因は入札条件の認識誤りによるものである。
本件については、2023年12月26日に電力・ガス取引監視等委員会から、業務改善勧告を受領し、2024年1月31日に再発防止策を取りまとめ報告した。業務改善勧告を真摯に受け止め、今後、再発防止策を着実に実行していく。
※1:毎日10時に翌日受渡しする電力の取引を行う市場
※2:各コマにおける自社供給力から自社想定需要・予備力等を差し引いた入札可能量を指し、スポット市場において売り入札する事業者は、余剰電力の全量を限界費用に基づく価格で入札することが、公正かつ有効な競争の観点から望ましい行為とされている。
株主のみなさまをはじめとしたステークホルダーのみなさまへの非財務情報の開示が不足する等、社会的信用の低下が生じる事象等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
情報開示の充実を図るため、コーポレートガバナンス・ガイドラインにおいて適切な情報開示と透明性の確保に関する考え方を定め、これに基づき、株主のみなさまをはじめとしたステークホルダーのみなさまに向けて、有価証券報告書やコーポレート・ガバナンス報告書、統合報告書等にて会社の財政状態・経営成績等の財務情報や経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る非財務情報等について、積極的に開示を行っている。
テレビCMや新聞広告等の内容、プレス発表、ホームページ、SNS等での情報開示不足や情報の分かりにくさからくる否定的反応により、当社グループのブランドイメージが低下する可能性がある。また、原子力発電に対する社会からの受容性低下や事故や不祥事が発生した場合の対応次第で、社会的信用の低下につながり、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
《12》環境問題(環境法令違反等)
重大な環境コンプライアンス違反等、社会的信用の低下が生じる事象等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
これらのリスク対応について、当社グループは、気候変動問題への取組みをはじめ、資源循環の推進や地域環境保全等といった事業活動に密接に関係する環境問題への対応について、中長期的にめざす方向性を「関西電力グループ環境方針」として定め、環境コンプライアンスの実践・徹底に取り組んでいる。
具体的には、事業活動において周辺環境や人の健康に影響を及ぼすことがないよう、社内ルールの整備や実務知識付与のための専門教育等を実施し、環境コンプライアンス違反の防止を図るとともに、ISO14001の考え方を取り入れた環境管理システムを構築し、環境問題への先進的な取組みおよび環境リスク管理を推進している。
《13》自然災害・国際情勢の変化等
台風・豪雨(気候変動に起因する異常気象等)・地震・津波等の自然災害、武力攻撃、感染症により、当社グループ設備への被害・損害、操業への支障や他社からの電気・資機材の調達等への支障が生じ、当社グループサービスの提供が困難になることで、社会的信用の低下が生じる事象等が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
従業員とその家族の安全を確保するとともに、電力・ガスを始めとする当社グループサービスの安定供給の責務を果たすため、さまざまな自然災害に対し、「災害に強い設備づくり」や「早期復旧に向けた防災体制の確立」を基本に設備・防災部会等を定期的に開催し、災害関連主要リスクに適切に対策を講じるなど、防災対策に取り組んでいる。
海外事業においては、紛争の勃発や緊張状態の高まりを常に注視している。投資済み案件については現時点では大きな影響はないことを確認しており、新規投資については最新の国際情勢を踏まえ適切に判断している。
火力燃料の確保に対しては、調達地域、契約期間、契約相手先、価格指標の分散により、安定調達に資する調達ポートフォリオの構築を行うとともに、多様な取引先との継続的な情報交換ネットワークを構築し、国際情勢の変化と影響の迅速な把握に努めている。
水素事業においても、国際情勢の変化に伴い、サプライチェーン構築における水素調達国の政策変更・情勢不安・経済停滞により上流案件組成への影響、また燃料価格高騰により水素事業の競争力が低下し、サプライチェーン構築が困難となる可能性がある。水素キャリア※1やカラー※2、調達国の分散等、多面的に検討・参画することでリスク最小化に努めている。
※1:気体のままでは貯蔵や長距離の輸送の効率が低い水素を、液体や水素化合物(アンモニア、メチルシクロヘ
キサン等)にして効率的に貯蔵・運搬する方法。
※2:水素は、その製造方法によって、グレー水素(CO2を排出)、ブルー水素(CO2を回収)、グリーン水素(再
エネにて製造)の大きく3種類に区別される。
サプライチェーンに対しては、平常時から、主要な生産拠点の把握、情報収集を間断なく行うとともに、新規取引先を積極的に開拓することで、複数取引先の確保を図る等、安定調達の実現に向けた取組みを進めている。
経済安全保障は、社会の重要なインフラを担う当社グループにとって重要なリスクの一つであると認識しており、経済安全保障推進法の規定内容の遵守はもちろん、経済安全保障上重要な技術や情報の流出防止等の観点でリスク対策を実施している。
同法における「基幹インフラにおける重要設備の導入・維持管理委託の事前審査」について、関西電力の発電事業、ガス製造事業、関西電力送配電の一般送配電事業を対象に2024年5月より制度運用が開始され、これに対応する社内ルール整備が完了したため、以降、適切に対応していく。
《14》市場・市況変動リスク
事業活動に伴い、通貨や各種商品の価値・価格の変動、金利や為替の変動および気候の変動に起因する収支変動等の不確実性がある。販売方策の工夫、デリバティブ取引の活用等により、一定以上の損失の回避、収支の安定化および向上を図っている。
当社グループの有利子負債残高(連結)は、2024年3月末時点で、4,580,482百万円(総資産の50.7%に相当)であり、有利子負債残高の96.6%(4,423,501百万円)は長期借入金、社債の長期資金である。長期資金の多くは固定金利であるものの、一部は変動金利での調達であるため、今後調達する長期借入金、社債等を含め、市場金利の動向は当社グループの業績に影響を与える可能性があり、引き続き、その動向を注視する。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
<経営成績等の状況の概要>
当社グループを取り巻く事業環境は、国際情勢を受けた燃料市況の不安定化に加え、脱炭素化の潮流やデジタル化の急進により、先行き不透明な状況が続いている。こうした中において、「関西電力グループ中期経営計画(2021-2025)」の取組みを着実に進捗させ、長年取り組んできた原子力7基体制を実現するとともにコスト構造改革等による成果が表れてきている。
当連結会計年度の小売販売電力量は、需要数が増加したことなどから、1,172億kWhと前連結会計年度に比べて5.1%増加した。その内訳を見ると、「電灯」については、314億kWhと前連結会計年度に比べて1.7%増加した。また、「電力」については、858億kWhと前連結会計年度に比べて6.4%増加した。
収入面では、販売電力料が増加したことなどから、売上高は4,059,378百万円と、前連結会計年度に比べて107,494百万円の増収(+2.7%)となった。
支出面では原子力利用率の上昇や燃料価格の低下などにより火力燃料費や他社購入電力料が減少したことなどから、営業費用は3,330,442百万円と、前連結会計年度に比べて673,498百万円の減少(△16.8%)となった。
この結果、当連結会計年度の営業利益は728,935百万円と、前連結会計年度に比べて780,992百万円の増益、経常利益は765,970百万円と、前連結会計年度に比べて772,636百万円の増益となった。また、和歌山発電所建設計画の中止を決定したことに伴い、126,495百万円を特別損失に計上したものの、親会社株主に帰属する当期純利益は441,870百万円と、前連結会計年度に比べて424,191百万円の増益(+2,399.3%)となった。
セグメントの経営成績(相殺消去前)は、次のとおりである。
(注) 各セグメント損益には、連結子会社および持分法適用会社からの受取配当金を含まない。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの概要は、次のとおりである。
<生産、受注及び販売の状況>
当社および連結子会社における生産、受注及び販売の実績については、その大半を占めるエネルギー事業のうち当社の数値を記載している。
(注) 1 火力発電電力量は、汽力発電電力量と内燃力発電電力量の合計である。
2 新エネルギー発電電力量は、汽力発電設備におけるバイオマスと新エネルギー等発電等設備における太陽光による発電電力量である。
3 発受電電力量と総販売電力量は、提出日(2024年6月27日)現在において把握している電力量を記載している。
4 揚水発電所の揚水用電力量とは、貯水池運営のための揚水用に使用する電力量である。
5 2022年度出水率は、1991年度から2020年度までの30カ年平均に対する比である。
2023年度出水率は、1992年度から2021年度までの30カ年平均に対する比である。
6 四捨五入の関係で、合計が一致しない場合がある。
7 発受電電力量の合計と総販売電力量の差は損失電力量等である。
(注) 1 総販売電力量は、提出日(2024年6月27日)現在において把握している電力量を記載している。
2 四捨五入の関係で、合計が一致しない場合がある。
自社発電認可最大出力
主要燃料の受払状況
(注) 四捨五入の関係で、合計が一致しない場合がある。
<財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析>
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。重要な会計方針については、「第5 経理の状況」に記載している。
連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の計上額に影響を与える見積りを行う必要がある。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。このうち、特に重要なものについては、「第5 経理の状況」の連結財務諸表の注記事項(重要な会計上の見積り)に記載している。
[エネルギー事業]
社会の変化に着実に対応すべく、「ゼロカーボンエネルギーのリーディングカンパニー」として、再エネの主力電源化や原子力の最大限活用、火力のゼロカーボン化、ゼロカーボン水素の活用も含めた電源のゼロカーボン化に取り組み、また、お客さまのゼロカーボン化を実現する最適なソリューションをご提案・ご提供するとともに、水素社会に向けた検討・実証にも取り組むなど、お客さまや社会のゼロカーボン化の実現に向けて当社グループのリソースを結集していく。また、デジタル技術の活用や、競争力のある電源ポートフォリオの構築、燃料調達や需給運用の合理化といったコスト構造改革の取り組み等により、強靭な企業体質への改革に努めるとともに、エネルギーソリューションを軸とした様々なサービスの開発・提供を通じて事業の拡大を図り、中期経営計画で掲げた目標の達成に取り組む。
(業績)
収入面では、販売電力料が増加したことなどから、外部顧客への売上高は3,335,680百万円と、前連結会計年度に比べて225,971百万円の増収(+7.3%)となり、内部売上高を含めた売上高は3,539,199百万円と、前連結会計年度に比べて77,084百万円の増収(+2.2%)となった。
支出面では、原子力利用率の上昇や燃料価格の低下などにより火力燃料費や他社購入電力料が減少したことなどから、経常費用は減少した。
この結果、セグメント利益は583,867百万円と、前連結会計年度に比べて611,273百万円の増益となった。
(当連結会計年度の取組み)
原子力プラントについては、特定重大事故等対処施設を含む安全対策工事を完了し、昨年8月に高浜発電所1号機、同年10月に同2号機の本格運転を再開した。これにより美浜発電所、高浜発電所および大飯発電所の全てのプラントが運転を行っており、7基体制を実現することができた。当社の原子力プラントの高経年化対策については、法律に基づいた技術評価を実施し、安全性を確認したうえで運転を行っている。また、昨年6月に改正された原子炉等規制法において、高経年化の安全規制について見直しが行われたが、これに対しても適切に対応していく。今後とも、原子力プラントの安全・安定運転および安全性・信頼性の一層の向上に取り組んでいく。
再生可能エネルギーの開発等については、国内において、KDS太陽光合同会社によるコーポレートPPA(電力購入契約)に活用する太陽光発電設備の開発を進め、昨年7月に1号機が営業運転を開始した。また、水力発電事業では、黒部川第二発電所3号機の設備更新など最大出力増加に取り組んだ。和歌山県沖での洋上風力発電事業や北海道古平町と余市町での陸上風力発電事業では、地域からの意見を踏まえつつ、環境保全に十分配慮しながら事業性を検討してきた。
国外においては、フィンランドのアラヤルヴィ陸上風力発電事業は昨年12月に商業運転を開始した。また、スペインのビルバオ港沖での浮体式洋上風力実証プロジェクトおよびノルウェーのゴリアテヴィンド浮体式洋上風力発電実証事業へ参画するとともに、オドフェル・オーシャンウィンド社への出資参画にも取り組んできた。
ご家庭のお客さまへのサービスについては、従来のオール電化住宅向けなどのメニューに加え、省エネ給湯機エコキュートのリース料金と一定量までの電気料金がセットになったサブスクリプション(定額)メニュー「はぴeセット」等の推進に加え、新たに蓄電池のリースと電気をセットにした「はぴeセットストレジ」の提供を発表した。加えて、当社の電気とガスをセットにした「なっトクパック」の提案活動を展開し、年度末時点での関電ガスの契約件数は160万件となった。
法人のお客さまへのサービスについては、脱炭素の計画策定から具体策の実行までをトータルサポートする「ゼロカーボンパッケージ」において、太陽光オンサイトサービス※1やコーポレートPPA、お客さまが所有する分散型エネルギーリソースの最適制御等を行うエネルギーマネジメントシステムであるSenaSonなど、より一層サービス内容の充実を図った。加えて、昨年4月にE-Flow合同会社※2を設立し、分散型エネルギーリソースを最適に運用し、需給調整市場等の各種市場取引を推進している。
株式会社関電エネルギーソリューションにおいては、ユーティリティサービス事業について、収益の拡大に向け、大型案件の受注推進に加え、中小規模案件の獲得や首都圏での活動強化など顧客基盤の構築に取り組むとともに、節水・節湯自動管理システム「ぴたっとOU」等の新サービスを推進した。
※1:お客さまの建物の屋根などに、太陽光発電設備を設置、所有したうえで、設置後の運用・メンテナンスま
でをワンストップで行うもので、初期投資ゼロで太陽光発電による電気をご使用いただけるサービス。
※2:昨年4月設立。VPP事業、系統用蓄電池事業、再エネアグリゲーション事業の3事業に重点を置き、2030年
度までに全国で分散型エネルギーリソースの市場取引量250万kW、売上高300億円を目指す。
[送配電事業]
送配電事業の一層の中立性を確保しつつ、安全かつ安定した電気を低廉な価格でお届けするため、電力系統の運用、送電、変電、配電の計画・工事などを行い、生活や産業の基盤を支える電力を供給している。
また、脱炭素化やレジリエンス強化をはじめ、エネルギーに関する社会ニーズは多様化する中、それを支える基盤である送配電事業の重要性はこれまで以上に高まっていると認識しており、電力ネットワークの次世代化を進めるとともに、分散型電源などの多様な系統利用者の要請にも柔軟に系統利用サービスを提供し続け、お客さまや社会のご期待にお応えし続けていく。
(業績)
収入面では、託送料金の改定などによる託送収益の増加があったものの、需給調整取引の単価下落により販売電力料が減少したことなどから、外部顧客への売上高は341,880百万円と、前連結会計年度に比べて128,095百万円の減収(△27.3%)となり、内部売上高を含めた売上高は1,016,276百万円と、前連結会計年度に比べて122,162百万円の減収(△10.7%)となった。
支出面では、需給調整取引の単価下落により購入電力料が減少したことなどから、経常費用は減少した。
この結果、セグメント利益は124,083百万円と、前連結会計年度に比べて169,270百万円の増益となった。
(当連結会計年度の取組み)
関西電力送配電株式会社において、新たな託送料金制度のもと策定した5ヵ年の事業計画に基づき、高経年化設備の計画的更新や、脱炭素化・レジリエンス強化に資する電力ネットワークの次世代化、サービスレベルの向上などを着実に進め、電力の安定供給に取り組んだ。また、トヨタ生産方式(カイゼン)・DXを通じた生産性向上や徹底した効率化を推進した。
[情報通信事業]
FTTHを利用した光インターネット、光電話、光テレビの3つのサービスをeo光ブランドで関西一円に展開しているほか、全国をターゲットにモバイル事業「mineo(マイネオ)」および、法人ソリューション事業などを展開している。
(業績)
収入面では、株式会社オプテージにおいて、株式会社関電セキュリティ・オブ・ソサイエティを吸収合併したことによりホームセキュリティサービスの収益が増加したことや、FTTHサービスの収益が増加したことなどから、外部顧客への売上高は225,369百万円と、前連結会計年度に比べて2,540百万円の増収(+1.1%)となり、内部売上高を含めた売上高は301,381百万円と、前連結会計年度に比べて9,697百万円の増収(+3.3%)となった。
支出面では、株式会社関電システムズにおいて、システム開発案件が増加したことなどから、経常費用は増加した。
この結果、セグメント利益は47,492百万円と、前連結会計年度に比べて4,463百万円の増益(+10.4%)となった。
(当連結会計年度の取り組み)
株式会社オプテージにおいて、FTTHサービス「eo光」について、超高速(10ギガ/5ギガ)コースを関西173市町村で利用可能とするなど、販促活動の推進により関西のFTTH(戸建向け•5ギガコース以上)において約6割のシェアを確保している。
また、モバイル事業「mineo」は10周年を控え、約130万回線をご利用いただいている。法人向け事業については、大阪市内に都市型データセンター「曽根崎データセンター」の建設を進め、2026年1月に運用開始を予定している。
[生活・ビジネスソリューション事業]
不動産賃貸・分譲・管理、レジャーなどの総合不動産事業に加え、リース、コールセンター運営、メディカル・ヘルスケアなど、お客さまの安心・快適・便利な生活やビジネスを実現するサービスを展開している。
(業績)
収入面では、関電不動産開発株式会社の住宅分譲事業において、引渡戸数が増加したことや、賃貸事業において、ホテルの稼働率が向上したことなどから、外部顧客への売上高は156,447百万円と、前連結会計年度に比べて7,077百万円の増収(+4.7%)となり、内部売上高を含めた売上高は195,022百万円と、前連結会計年度に比べて4,312百万円の増収(+2.3%)となった。
支出面では、関電不動産開発株式会社の住宅分譲事業において、売上原価や委託費が増加したことなどから、経常費用は増加した。
この結果、セグメント利益は22,389百万円と、前連結会計年度に比べて1,480百万円の増益(+7.1%)となった。
(当連結会計年度の取り組み)
安心・快適・便利な生活やビジネスを実現する様々な事業を展開している。特に、関電不動産開発株式会社においては、超高層タワーマンション「シエリアタワー中之島」や、首都圏のオフィス建て替えプロジェクト「関電不動産渋谷ビル」の開発を推進した。
また、海外においても住宅開発・賃貸事業を展開しており、米国・豪州にて6件の事業に参画した。
当期経常利益を765,970百万円計上した一方、和歌山発電所建設計画の中止を決定したことに伴い、126,495百万円を特別損失に計上したことなどから、税金等調整前当期純利益は641,054百万円となった。ここから法人税等合計と非支配株主に帰属する当期純利益を差し引きした親会社株主に帰属する当期純利益は441,870百万円となり、前連結会計年度に比べて424,191百万円の増益(+2,399.3%)となった。
資産は、和歌山発電所建設計画の中止を決定したことに伴い、固定資産に係る減損損失126,495百万円を計上したものの、設備投資額が減価償却費を上回ったことや、現金及び預金が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べて258,492百万円増加(+2.9%)し、9,032,917百万円となった。
負債は、有利子負債が減少したことなどから、前連結会計年度末に比べて234,973百万円減少(△3.4%)し、6,699,669百万円となった。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益441,870百万円を計上したことなどから、前連結会計年度末に比べて493,465百万円増加(+26.8%)し、2,333,248百万円となった。
これらの結果、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べて4.8%上昇し、25.2%となった。
また、1株当たり純資産は、前連結会計年度末に比べて543円04銭増加し、2,547円28銭となった。
当社グループは、エネルギー事業等を行うための設備投資や債務償還などに必要な資金を可能な限り自己資金にて賄い、不足する資金については主に社債や借入金によって資金調達を行い、コマーシャル・ペーパー等により短期的な運転資金を調達することにより、流動性を確保している。
営業活動によるキャッシュ・フローについては、税金等調整前当期純損益が増加したことなどから、前連結会計年度に比べて収入が1,026,951百万円増加(+802.1%)し、1,154,990百万円の収入となった。
投資活動によるキャッシュ・フローについては、投融資の回収収入が減少したことなどから、前連結会計年度に比べて支出が10,164百万円増加(+2.4%)し、428,049百万円の支出となった。
財務活動によるキャッシュ・フローについては、有利子負債が減少したことなどから、前連結会計年度に比べて支出が606,011百万円増加し、488,906百万円の支出となった。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べて242,192百万円増加(+75.2%)し、564,427百万円となった。
(5)中期経営計画の財務目標および進捗状況
連結財務目標および進捗状況
(注) ROA=事業利益〔経常損益+支払利息〕÷総資産〔期首・期末平均〕
セグメント別財務目標および進捗状況
(注) 1 各セグメント損益には、連結子会社および持分法適用会社からの受取配当金を含まない。
2 ROA=事業利益〔セグメント損益+支払利息〕÷セグメント資産〔期首・期末平均〕
該当事項なし。
当社および連結子会社における研究開発活動としては、中期経営計画の達成に向け、『ゼロカーボンへの挑戦(EX)に資する研究開発』『サービス・プロバイダーへの転換(VX)に資する研究開発』および『強靭な企業体質への改革(BX)に資する研究開発』を中心に取組んでいる。
それぞれの取組みについては次のとおりである。
1.ゼロカーボンへの挑戦(EX)に資する研究開発
・原子力発電所における地震・津波・高経年化などの安全性向上を主目的とした研究開発
・水素や再生可能エネルギーなどゼロカーボンを見据えた研究開発
・再生可能エネルギー普及拡大に伴う電力品質に関する研究開発 など
2.サービス・プロバイダーへの転換(VX)に資する研究開発
・モビリティ事業におけるEV充電やエネルギーマネジメントシステムを中心としたパッケージサービスのための
研究開発
・省エネ、エネルギー診断などのエネルギー事業に必要な商品・サービスに関する研究開発
・保有技術の活用などによる事業領域の拡大や将来の成長の源となる基盤技術の探索・調査・開発に関する研究
開発
・将来の分散型電源を見据えたVPP事業・系統用蓄電池事業・再エネアグリゲーション事業のための研究開発
など
3.強靭な企業体質への改革(BX)に資する研究開発
・設備機能向上によるレジリエンス強化に資する研究開発
・発電効率向上や設備の寿命延伸、作業効率化・設備のスリム化などのコスト削減につながる研究開発 など
なお、当連結会計年度における当社および連結子会社の研究開発費の金額は、エネルギー事業について主として上記1~3の研究課題に関して