第一部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

回次

第21期

第22期

第23期

第24期

第25期

決算年月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

売上高

(千円)

1,676,456

1,409,515

1,781,943

2,091,293

2,481,193

経常利益

(千円)

382,533

92,407

212,554

300,365

417,271

当期純利益

(千円)

277,485

62,371

133,726

198,032

310,981

持分法を適用した
場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

374,820

374,820

704,805

704,805

704,805

発行済株式総数

(株)

4,867,100

4,867,100

5,123,300

10,246,600

10,246,600

純資産額

(千円)

1,259,838

1,322,209

2,103,983

2,298,588

2,692,615

総資産額

(千円)

3,564,700

3,958,493

5,215,602

5,811,615

6,543,075

1株当たり純資産額

(円)

129.42

135.83

205.33

224.33

262.78

1株当たり配当額

(円)

(1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純利益

(円)

28.51

6.41

13.20

19.33

30.35

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

35.34

33.40

40.34

39.55

41.15

自己資本利益率

(%)

24.75

4.83

7.81

9.00

12.46

株価収益率

(倍)

152.1

130.1

65.2

配当性向

(%)

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

667,859

238,996

469,290

99,672

334,625

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

108,007

520,262

404,170

285,100

811,773

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

644,373

869

1,333

現金及び現金同等物
の期末残高

(千円)

2,273,750

1,992,484

3,510,318

3,324,021

2,845,540

従業員数
〔外、平均臨時
雇用者数〕

(名)

84

79

82

92

98

61

78

79

76

93

株主総利回り

(%)

125.3

98.6

(比較指標:配当込みTOPIX)

(%)

(-)

(-)

(-)

(105.8)

(141.3)

最高株価

(円)

3,610

(7,220)

2,900

3,245

最低株価

(円)

1,165

(2,330)

1,828

1,764

 

 

(注) 1.当社は連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。

2.持分法を適用した場合の投資利益については、当社は関連会社を有していないため記載しておりません。

3.当社は配当を行っておりませんので、1株当たり配当額及び配当性向につきましては、それぞれ記載しておりません。

4.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。

5.第21期及び第22期の当社株式は非上場であるため株価収益率は記載しておりません。

6.第23期における投資活動によるキャッシュ・フローの大幅な増加は、定期預金の払戻による収入によるものであります。

7.第23期における財務活動によるキャッシュ・フローの大幅な増加は、株式の発行による収入によるものであります。

8.従業員数は就業人員(社外から当社への出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む。)は、年間の平均人員を〔 〕にて外数で記載しております。

9.2019年12月10日開催の取締役会決議により、2019年12月27日付で普通株式1株につき700株の株式分割を行っております。また、2022年11月8日開催の取締役会決議により、2023年1月1日付で普通株式1株につき2株の株式分割を行っておりますが、第21期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益を算定しております。

10.第21期、第22期及び第23期の株主総利回り及び比較指標については、2021年6月25日に東京証券取引所マザーズに上場したため、記載しておりません。

11.最高株価及び最低株価は、2022年4月4日より東京証券取引所グロースにおけるものであり、それ以前は東京証券取引所マザーズにおけるものであります。ただし、当社株式は、2021年6月25日から東京証券取引所マザーズに上場されており、それ以前の株価については、該当事項がありません。

12. 当社は2023年1月1日付で、普通株式1株につき2株の割合をもって株式分割を行っております。第23期の株価については株式分割後の最高株価及び最低株価を記載し、( )内に株式分割前の最高株価および最低株価を記載しております。

13.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第23期の期首から適用しており、第23期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

2 【沿革】

年月

概要

1999年8月

「さい帯血」(注1)の分離・保管を行う細胞バンクを目的として、東京都港区に株式会社ステムセル研究所設立

1999年9月

当社初のさい帯血を保管

2002年1月

大阪府吹田市に近畿地区の拠点として大阪オフィスを開設

2002年11月

福岡県大野城市に九州地区の拠点として福岡オフィスを開設

2003年6月

愛知県名古屋市中区に東海地区の拠点として名古屋オフィスを開設

2004年5月

検体数の増加に伴い本社並びに細胞処理センターを現在の本社所在地(東京都港区)に移転

2007年5月

保管能力の増強を目的に細胞保管センターを神奈川県横浜市緑区へ移設

2008年3月

兵庫県神戸市中央区において当社保管のさい帯血が、白血病の移植治療に利用される

2009年4月

米国デューク大学で当社保管のさい帯血が脳神経疾患への再生医療に利用される

2011年4月

東京都港区の細胞処理センターにて、ISO9001を取得(注2)

2013年9月

株式会社日本トリム(東証一部、現 プライム)が当社株式の50.1%を取得

2016年2月

東京都港区の細胞処理センターにて「再生医療等安全性確保法」に基づく、特定細胞加工物製造許可を取得

2016年7月

品質管理向上のため、アメリカさい帯血協会(CBA)に加盟

2017年4月

高知大学医学部附属病院が実施する「小児脳性麻痺等に対する再生医療提供計画」において、特定細胞加工物製造委託契約を締結

2017年9月

厚生労働省健康局へ「臍帯血取扱事業の届出」を提出

2018年9月

東京大学医科学研究所と「臍帯の臨床応用に向けた技術開発と保管体制構築」に関する共同研究を開始

2019年7月

American Association of Blood Banks(AABB)認証取得(注3)

2019年12月

東京都港区に管理本部及び総合企画本部の拠点として虎ノ門オフィスを開設

2020年9月

東京大学医科学研究所及び東京大学医学部附属病院と自家さい帯由来細胞を用いた「周産期付属物由来細胞の臨床応用に向けた技術開発とバンキング体制構築」と、「自家臍帯由来細胞を用いたティッシュエンジニアリングの研究開発」に関する共同研究契約を締結

2020年10月

高知大学医学部附属病院が実施する「小児脳性麻痺など脳障害に対する同胞間臍帯血単核球細胞輸血」及び「小児脳性麻痺など脳障害に対する同胞間臍帯血有核細胞輸血」の臨床研究において、特定細胞加工物製造委託契約を締結

2020年10月

大阪大学大学院医学系研究科と他家細胞を用いた「臍帯組織由来幹細胞と半月板修復材を用いた新規半月板再生医療の開発研究」に関する共同研究契約を締結(注4)

2020年11月

大阪市立大学(現 大阪公立大学)を中心とする研究グループによる「低酸素性虚血性脳症(HIE)に対する自己臍帯血治療」の第Ⅱ相多施設共同臨床研究において、特定細胞加工物(自己臍帯血細胞調整液)の製造業務委託契約を締結

2020年11月

慶應義塾大学医学部と「ヒト羊水幹細胞による周産期脳障害の細胞治療」に関する共同研究契約を締結

2021年3月

検体数の増加及び新たなサービスの開始に向け、神奈川県横浜市緑区の細胞保管センターの施設内に新たな細胞処理センター(横浜CPC)を開設

2021年3月

神奈川県横浜市緑区の細胞処理センターにて「再生医療等安全性確保法」に基づく、特定細胞加工物製造許可を取得

2021年4月

「さい帯(へその緒)組織保管サービス」の提供を開始

2021年6月

東京証券取引所マザーズに株式を上場

2021年6月

保管能力の増強を目的に細胞保管センターを神奈川県横浜市緑区に新設

2021年7月

一般社団法人 新経済連盟 (新経連)に加盟

2022年4月

東京証券取引所の市場区分の見直しにより、東京証券取引所グロース市場へ移行

2022年4月

大阪大学大学院医学系研究科に共同研究講座「運動器スポーツバイオメカニクス学講座」を開設

 

 

年月

概要

2023年5月

東京都港区虎ノ門に本社移転

2023年5月

事業拡大にともない、神奈川県横浜市緑区に横浜オフィスを開設

2023年5月

大阪公立大学と「自閉症スペクトラム障害に対する自家臍帯血有核細胞を用いた治療法の開発」に関する研究者主導臨床研究契約を締結

 

(注1)「さい帯血」は、お母さんと赤ちゃんをつないでいる、へその緒や胎盤の中に含まれている赤ちゃんの血液であります。さい帯血には血液を造る「造血幹細胞」や、神経・軟骨・心筋細胞等さまざまな細胞に分化したり、各組織の修復に関与する「間葉系細胞」が含まれており、再生医療・細胞治療の貴重なソースとして、臨床研究が進められています。

(注2)ISO9001とは、製品の品質保証と顧客満足及び組織の管理・改善まで踏み込んだ品質マネジメントシステムの国際規格であります。

(注3)American Association of Blood Banksとは、輸血、細胞治療分野で、提供者及び患者の安全を守るため設立された国際非営利団体であります。全世界50カ国に認証施設があり、輸血等に関連する安全性の基準、認証の付与、認証調査、教育プログラムを実施しています。

(注4)当社は、他家さい帯の提供並びにさい帯からの間葉系細胞の分離培養と拡大培養についての技術指導を行っております。

 

 

3 【事業の内容】

当社は、再生医療・細胞治療を目的とした、「さい帯血」や「さい帯」等の周産期組織由来の細胞バンク事業及び、それらの細胞を利用した、新たな治療法、再生医療等製品の開発、そしてこれらの事業基盤をベースにした再生医療・不妊治療・出産・子育て等の領域での事業開発及び投資等の事業展開を行っております。

なお、当社は「細胞バンク事業」の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っていません。

 

(1)さい帯血バンクについて

「さい帯血」は、お母さんと赤ちゃんをつないでいる、へその緒や胎盤の中に含まれている赤ちゃんの血液であります。さい帯血を保管する「さい帯血バンク」には、「公的さい帯血バンク」と「民間さい帯血バンク」があります。公的さい帯血バンクでは、造血幹細胞移植法に基づきお母さん達から「無償」でさい帯血の提供を受け、白血病等の病気で移植治療を必要とする患者さん(第三者)のために保管しております。2024年3月31日現在、厚生労働大臣の許可を受けた公的さい帯血バンクは全国に6ヵ所あります。

民間さい帯血バンクでは、「本人や家族」が、将来何らかの治療(主に脳性麻痺や自閉症等への再生医療)に使うことができるようになる可能性を想定し、「有償」で、さい帯血の保管を行っております。

民間さい帯血バンクは、公的さい帯血バンクと違い許可制ではありませんが、厚生労働省(健康局)へ「臍帯 血取扱事業の届出」の提出を要請されており、同届出を行っている民間さい帯血バンクは、当社を含めて2社であり、当該2社のさい帯血保管総数は78,881件、当社の保管総数は78,077件(厚生労働省健康局「臍帯血の引渡し実績等に関する報告」より(2023年3月31日時点)となっております。

2024年3月31日現在、日本国内において、自己にさい帯血を投与(使用)するためには、対象疾患毎に、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(以下、「再生医療等安全性確保法」という)に基づき、「第2種再生医療等(体性幹細胞など中リスクのもの)」として、再生医療等提供計画を「特定認定再生医療等委員会」(注1)に提出し、審査を受け、適と判断された後、厚生労働大臣へ同提供計画を提出の上、実施する必要があります。

また、2024年3月31日現在、当社における顧客の利用目的(臨床研究における投与も含む)の引渡件数は、累計で、再生医療32件、血液疾患1件、研究目的(モデルマウス等での治療効果の検討等)の引渡件数は101件となっております。

 


(出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/

bunya/kenkou_iryou/kenkou/ishoku/saitaiketsu.html))

 

 

  (2)当社の「細胞バンク事業」について

当社は、顧客(妊婦等)と「さい帯血分離保管委託契約」を締結した上で、国内さい帯血採取協力病院(大学病院、産科クリニック等)において採取されたさい帯血を回収し、自社の細胞処理センター(東京都港区及び横浜市緑区)に搬入、さい帯血に含まれる幹細胞を分離・抽出・調製する作業を行った後、自社の細胞保管センター(横浜市緑区)において、超低温下にて長期保管しております。「さい帯血分離保管委託契約」に基づき、顧客よりさい帯血にかかる分離料、検査料、登録料及び細胞保管料を収受し、将来の使用に備え、保管する事をビジネスモデルとしております。

さい帯血はその採取にあたっては、お母さん、赤ちゃんともに侵襲性(体に傷や痛みを与える程度)が低く、また、通常は出産後に医療廃棄物として廃棄されるものである事から、倫理的にも扱いやすい点がメリットとして上げられます。なお、さい帯血採取により、当社の定めた規定値以上の量を有し、保管基準を満たした場合に、国内さい帯血採取協力病院へ、採取技術料をお支払いしております。

さい帯血には血液を造る「造血幹細胞」や、神経・軟骨・心筋細胞等さまざまな細胞に分化したり、各組織の修復に関与する「間葉系細胞」が含まれており、もともと自分の身体の中にある細胞(体性幹細胞)であるため、がん化のリスクも少なく、安全に使用出来ることから、現在十分な治療法のない小児の中枢神経系疾患(低酸素性虚血性脳症:発症率1~3/1,000人:注2、脳性麻痺:同2~3/1,000人:注3)や自閉症スペクトラム障害(同1/100人:注4)等に対する「再生医療・細胞治療」として、臨床研究が進められております。

さい帯血は、血液疾患等の治療においては、「造血幹細胞移植法」、また、再生医療目的で使用する場合は、「再生医療等安全性確保法」に基づき、適正に使用される必要があります。これらの法律は専門的なものであることから、当社では、治療、検査目的等で当社において保管している細胞(さい帯血)の出庫が必要な場合は、外部有識者を含む専門の委員で組織している、社内倫理委員会において、審議を行いその妥当性を評価の上で実施しております。また、当社はさい帯血保管の品質向上を目的に、2011年よりISO9001の運用を開始しておりますが、グローバル基準への適合を目的に、2019年7月にさい帯血保管に関する国際基準AABBの認証を取得しております。なお、臨床研究実施機関への細胞輸送においても、AABBの品質管理基準を満たした輸送管理体制に基づき、実施しております。

当社は、2016年2月に東京細胞処理センター、2021年3月に横浜細胞処理センターにおいて、再生医療等安全性確保法に基づき、特定細胞加工物製造許可を取得し、同法に基づく細胞提供の体制を整えております。また、当社は、2021年4月より「さい帯(へその緒)組織保管サービス」を開始しております。

再生医療・細胞治療に有望な間葉系細胞は、骨髄や脂肪、さい帯等から得ることができますが、侵襲なく採取可能な点で、さい帯は医療資源として適切と考えられています。間葉系細胞は、炎症を抑制し、かつ拒絶されにくい性質を持つことから、炎症性疾患を対象とした他家利用の臨床開発が数多く行われています。また、間葉系細胞は、炎症抑制作用の他に、他の細胞に分化する性質を持つことから、機能的な細胞・組織に分化させた後に、欠損や障害をきたした組織に代替的に利用する方法の開発も進められています。当社では、自家さい帯を用いた医療開発を積極的に推進し、さい帯の保管意義の向上に努めております。

 

(ご参考)当社におけるさい帯血及びさい帯保管(売上)検体数

期別

さい帯血

さい帯

保管検体数(新規)

保管検体数(累計)

保管検体数(新規)

保管検体数(累計)

2020年3月期

7,232 検体

57,494 検体

2021年3月期

5,695  検体

63,189  検体

2022年3月期

6,907  検体

70,096  検体

1,511  検体

1,511  検体

2023年3月期

7,564  検体

77,660  検体

2,907  検体

4,418  検体

2024年3月期

8,559 検体

86,219  検体

4,047  検体

8,465  検体

 

※ 上表に記載の検体数は、厚生労働省への「臍帯血取扱事業の届出」記載の検体数より、売上に計上していない無料保管分を除いた検体数となっております。

 

 

 (3)さい帯血を用いた国内の臨床研究の状況

さい帯血の臨床研究が進展していくことは、将来さい帯血がより広く利用できることを期待して保管されている当社顧客にとっても有益な情報であり、その動向は当社の業績に影響を与えるものであるとの観点から臨床研究の状況について記載します。

2017年1月に高知大学医学部附属病院で開始された「自家臍帯血を用いた小児脳性麻痺などの脳障害に対する臨床研究(第Ⅰ相)」では、当社の保管細胞が用いられ、2018年4月に予定投与数(6例目の最終投与)を終え、最終投与から約3年かけて患者の経過観察等を行い、その結果が2022年11月に論文が発表されました。自家臍帯血を用いる本臨床研究は、さらなる有効性の評価のための第Ⅱ相臨床研究について、2024年2月に大阪大学第一特定認定再生医療等委員会より実施計画が適切であることを認められており、2024年3月現在、先進医療として進める検討がなされております。

また、2020年10月5日付でjRCT(臨床研究実施計画・研究概要公開システム)に公表された「小児脳性麻痺など脳障害に対する同胞間臍帯血有核細胞輸血」及び「小児脳性麻痺など脳障害に対する同胞間臍帯血単核球細胞輸血」の臨床研究については、2020年11月11日付の第8回臍帯血による再生医療研究会学術集会において、6例中5例でリハビリテーション単独以上の運動能力改善が認められ、1年以上その状態が維持されていることが報告されております。本臨床研究は、2025年6月終了予定であり、論文が発表される見込みです。

大阪市立大学医学部(大阪府立大学との統合により現在は大阪公立大学医学部)がAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の支援を受け実施した「低酸素性虚血性脳症(HIE)に対する自己臍帯血幹細胞治療(第Ⅰ相)」は、既に終了し論文が発表され第Ⅱ相多施設共同臨床研究が、2020年11月12日付でjRCTに公表され、開始に至っております。この臨床研究の予定症例数15例のうち、10例は当社が細胞加工(さい帯血の細胞分離・輸送)を担うこととなっております。2024年3月現在の症例数は1例となっております。

 

<日本で実施されている臨床研究(当社が細胞の処理・提供を行っているもの)>

対象疾患

実施施設

フェーズ

症例数

ステータス

脳性麻痺等

高知大学医学部附属病院

(自家単核球細胞投与)

Ⅰ(注5)

6例

終了(論文発表済)

Brain Dev 2022

Nov;44(10):681-689.

高知大学医学部附属病院

(同胞間有核細胞投与)

Ⅰ(注5)

5例

被験者募集中

高知大学医学部附属病院

(同胞間単核球細胞投与)

Ⅰ(注5)

3例

募集中断

(被験者不在のため)

低酸素性虚血性脳症

大阪公立大学医学部附属病院他

Ⅰ(注5)

6例

終了(論文発表済)

Sci Rep.2020 Mar

 12;10(1):4603

Ⅱ(注6)

15例

被験者募集中

 

※ 症例数は変更される可能性があります。また、各臨床研究は研究者の方針、診療結果により、延期・中止となる可

  能性があります。

 

 

 (4)細胞処理センターについて

①東京細胞処理センター

再生医療等安全性確保法に基づき、厚生労働省(関東信越厚生局)より特定細胞加工物製造許可を受けた施設(東京都港区)で、さい帯血に含まれる幹細胞の分離・抽出・調製を行っております。またISO9001とAABBの認証を取得し、運営を行っております。

②横浜細胞処理センター

近年のさい帯血保管のニーズの高まりに対応するため、2021年3月に厚生労働省(関東信越厚生局)より特定細胞加工物製造許可を得て、新たな細胞処理センターを横浜市緑区に開設いたしました。これにより、さい帯血処理のキャパシティは約3倍となっております。この新施設は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律において再生医療等製品の製造に求められる基準を満たせるよう設計されており、保管した細胞の培養や製品化に加え、その他の様々な細胞・組織の受け入れにも対応可能な施設となっております。

また、本施設にはさい帯組織を処理する専用のブースを設置しており、これを利用し2021年4月より「さい帯(へその緒)組織保管サービス」を開始いたしております。

 

 (5)細胞保管センターについて

新耐震基準に基づいた設計で耐震性を有している細胞保管施設です。細胞処理センターで分離・抽出・調製した幹細胞は、同施設内にある液体窒素タンクで保管し、その後、細胞保管センターに移送し長期保管用の大型の超低温液体窒素タンクで保管しております。

これまでの細胞保管センターに加え、2021年6月に同施設内に第二の細胞保管センターを開設しております。これにより、保管キャパシティは約2倍(約7万検体から約14万検体)となり、さい帯血保管事業のみならず、2021年4月より開始している「さい帯(へその緒)組織保管サービス」や、今後の各種細胞の保管サービスに対応する中長期のキャパシティを確保いたしております。

これまでに、第一および第二細胞保管センターを開設しており、約14万検体の保管キャパシティ(臍帯血保管ベース)を有しておりますが、2021年4月より開始した「さい帯(へその緒)組織保管サービス」や、凍結卵子保管受託サービスの進展を鑑み、第三細胞保管センターの開設を計画(2024年度竣工予定)しております。これにより、保管キャパシティは23万検体(臍帯血保管ベース)となる見込みです。

 

(注1)再生医療等技術や法律の専門家の有識者からなる合議制の委員会で、特に高度な審査能力、第三者性を有するもので、一定の手続きにより厚生労働大臣の認定を受けたものをいいます。

(注2)「新生児低酸素性虚血性脳症で出生した重症仮死児への自己臍帯血幹細胞治療の研究」(新宅治夫)より。

(注3)公益財団法人日本医療機能評価機構 産科医療補償制度運営委員会の「平成25年 産科医療補償制度 医学的調査専門委員会報告書」より。

(注4)厚生労働省の「e-ヘルスネット」(2021年3月末時点)より。

(注5)第Ⅰ相試験では、少数の被験者が参加し、安全性についての評価が行われております。

(注6)第Ⅱ相試験では、臨床探索的研究として実施される見込みで、さい帯血の処理及び供給体制などを検討し、有効性と実施可能性を検証することを目的として行われる予定であります。

 

 

[事業系統図]

 


 

また、当社は「細胞バンク事業」の単一セグメントでありますが、売上高は「技術料」、「保管料」、「その他」の3つから構成されております。

① 技術料

細胞分離及び細胞処理の際に必要となる分離料、検査料及び登録料を技術料として分類しております。

② 保管料

細胞保管料を保管料として分類しております。保管料は契約時に契約年数に応じた保管料総額を前受金として計上し、保管期間の経過に応じて年間の保管料を毎期収益として計上しております。

③ その他

上記の他、契約更新時の更新手数料等をその他として分類しております。

 

 

4 【関係会社の状況】

 

名 称

住 所

資本金
(百万円)

主要な事業の内容

議決権の

所有割合

(%)

(注)2

関係内容

(親会社)

㈱日本トリム

(注)1

大阪府大阪市北区

992

電解水素水整水器等を中心とした健康機器販売及びそれに関連する附属品等の販売

被所有 72.1

(72.1)

㈱トリムメディカルホールディングスの株式(100%)を保有

(親会社)

㈱トリムメディカルホールディングス

大阪府大阪市北区

10

事業持株会社

被所有

72.1

当社の大株主

 

(注) 1.有価証券報告書の提出会社であります。

2.議決権の所有割合の( )は間接被所有で内数であります。

3.当社は非連結子会社1社を有しておりますが、重要性が乏しいため記載を省略しております。

 

5 【従業員の状況】

(1) 提出会社の状況

 

 

 

 2024年3月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

98

38.1

5.3

5,281

93

 

(注) 1.従業員数は就業人員(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む。)は、年間平均雇用人数を〔 〕外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.当社は「細胞バンク事業」の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

 

(2) 労働組合の状況

当社には労働組合は、結成されておりませんが、労使関係は良好に推移しております。

 

(3) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。