第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

当社は、『人類社会に役立つ存在感あふれる、開かれた、独自性ある、自己実現の場である企業を目指す』ことを経営理念とし取り組んでいます。「エレクトロニクス」「メカトロニクス」「ケミトロニクス」「コンポーネント」各分野に広がる独自技術を進化させ、さらには、新たな技術開発を通じてお客様の価値創造、豊かな社会に貢献します。

また、人が集まり情報が集まる企業、オンリーワン技術を磨く独自性ある企業、従業員が失敗を恐れず自己実現に向けて果敢に取り組む企業、お客様にとって掛け替えのない企業、となることを目指し、すべてのステークホルダーの信頼と期待に応えます。

当社グループは、経営の健全性、実効性及び透明性を確保し、企業価値の持続的な向上により社会から信頼・評価される企業として発展するべく、“コーポレート・ガバナンス基本方針”を定めています。

 

(2)経営戦略等

当社グループは、2022年4月より5ヶ年中期経営計画(Change & Growth 2026)をスタートさせています。その内容は以下の通りであります。

 

①基本的考え方

急激に変化する事業環境の中において、現事業の足許を固めつつも、新市場開拓や新規事業創出等による事業構造の転換に向けた取り組みが不可欠と認識します。

事業面だけでなく、人事制度、企業カルチャー等の定性的な項目を含めた『変革』に取り組み、新たな『成長』のエンジンを創出し、中長期的な企業価値向上を図ります。中期的な視点で『変革』を推進し、『成長』の果実を収穫していくため、計画期間を5ヵ年としました。

 

②中計ビジョン

『ニッチ・トップ』を目指して

ニッチ・トップとは小さくても成長が期待できる市場において、技術の優位性により圧倒的な市場シェアを誇ることを示します。変化する市場ニーズを先取りして各事業分野のコア・テクノロジーを進化させ、お客様にとっての戦略的なパートナーとなることを目指します。

 

③中計テーマ

『変革』と『成長』

事業面・体制面において6つの変革に取り組んでまいります。

Ⅰ.事業を変える

・新市場開拓、新規事業創出等、成長戦略への重点的取り組み

・資本コストを意識した経営の徹底により戦略分野への資源集中

Ⅱ.技術を変える

・スタートアップ連携などオープン・イノベーションの加速

・カーボンニュートラルに向けた技術開発の強化

Ⅲ.営業を変える

・新市場開拓に向けた営業体制の整備等

Ⅳ.カルチャーを変える

・成長戦略を支える人事制度改革、運用の高度化

・従業員意識調査に基づいた施策展開

Ⅴ.コスト構造を変える

・DX推進等によるコスト構造の改革、戦略的IT投資

・成長分野への積極投資

Ⅵ.コミュニケーションを変える

・情報開示の充実、株主との積極対話

・役職員間等社内コミュニケーションの強化

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 中期経営計画(Change & Growth 2026)において、最終2026年度に目指すKPIは以下の通りです。

連結営業利益 25億円以上(2023年度実績は営業損失5億円)

連結ROE 7%以上(2023年度実績 △6.1%)

 

新規に投入する製品によりモビリティ関係で更なる拡販に努めるなど、新市場開拓、新規事業創出等、成長戦略への重点的取り組みによって、新たな成長エンジンの創出を図り、中長期的な企業価値向上を目指します。

 

(4)経営環境

今後の経営環境は、引き続き景気の持ち直しが期待されるものの、地政学リスクの高まりや中国経済の減速、政策金利や為替の変動の影響にも注意が必要な状況が続くものと思われます。

当社グループを取り巻く経営環境につきましても、中国経済の影響による受注、売上の減少、原材料価格やエネルギー価格の高騰などによる営業利益を圧迫する環境が引き続き想定されます。

事業セグメント毎の経営環境は以下のとおりです。

[エレクトロニクス事業]

 医療用電源の需要は一段落しており、半導体製造装置用電源は半導体市場の回復時期の見定めが必要な状況となっています。より一層の売上拡大を目指し、当社独自のEV・エネスト関連商材の新製品のPRを開始しました。

[メカトロニクス事業]

 OLB(Optical Lens Bonder)分野はXR市場の成長は期待されるものの、足元のハードウェアの出荷台数は成長途上にあり、本格的な関連設備投資はこれからの状況です。

また、真空ソルダリング(VSM)分野はEVの需要伸長に牽引され、パワーデバイス関連の設備投資が増加するとともに、ICパッケージ市場においては微細化と高密度化進むことで市場拡大が見込まれますが、中国の景気減速による一時的な生産設備需要の減少が懸念される状況です。

[ケミトロニクス事業]

 主力のモビリティ関連については中国を始めとする海外市場では売上が伸び悩みましたが、国内市場での堅調な売上がそれを補完した形となりました。原材料価格は高止まりが続き、利益率を圧迫しました。一方、モビリティ関連以外では情報家電関連で売上が好調であった他、アミューズメント関連も売上が堅調に推移しました。カーボンニュートラル貢献塗料は顧客の関心の高まりが背景となり、アプローチ先の拡大が続きました。今後も原価削減、利益向上に向けた活動を継続します。

[コンポーネント事業]

 モビリティ市場は半導体不足解消に伴う生産回復に加え、EV車種増加により電動化が推し進められ安全機構関連製品の需要が高まっている中、国際規格に準拠した品質体制を確立し市場要求に応えて参ります。半導体製造装置市場は底を打った兆候は見られるものの在庫調整により低調な状況にありますが、生産体制を維持し需要回復に備えます。

 

(5)事業上及び財務上の対処すべき課題

当社グループを取り巻く経営環境につきましては、中国経済の影響による受注、売上の減少、原材料価格やエネルギー価格の高騰などによる営業利益を圧迫する環境が引き続き想定されます。

このような状況の中で新規市場の開拓・構築を進めることで安定した売上確保を図ると共にグループ全体で更なる成長に努めます。

また、東京証券取引所からの要請である「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に基づき、資本収益性や市場評価の改善を図り企業価値向上を目指していきます。

事業セグメント毎の具体的な施策は以下のとおりです。

[エレクトロニクス事業]

物価高騰により製造原価が上昇する環境が続いています。その他にも人手不足、廃止部品や環境規制への対応など、製品を安定して継続供給するため様々なリスクを低減するために対応をしていきます。厳しい事業環境のなかではありますが、医療用電源や半導体製造装置用電源、EV・エネスト市場への新製品上市を目指し開発を進めていきます。

[メカトロニクス事業]

事業の主力製品として注力してきた量産用貼合装置(DB,OLB)は需要の減少が見られ、またOLB分野は成長が期待できるものの、収益源として確立するには時間がかかると予想されます。ギ酸還元真空リフロー炉(VSM)のパワー半導体用途への販売拡大とともに、機能向上を推進し、ICパッケージや積層LSI向けなど、用途の拡大を図ります。

設備産業は需要変動が大きく事業収益の不安定要素が伴うため、現行の特殊大型設備装置に加えて標準化された装置など新たな製品開発にも取り組み事業転換を推進していきます。

 

[ケミトロニクス事業]

自動車部品メーカーを中心とした既存顧客への売上、シェアの拡大、新市場への参入の活動を継続して行います。EV市場に対しては海外進出が目覚ましい中国系企業に対しても拡販活動を拡げるとともに関係拠点との更なる連携を図ります。利益面では不採算製品の廃番を中心としたグレードや製品の統合を図り利益体質を強化します。製品面では速硬化塗料、植物由来原料塗料などの拡販を強化し、使用エネルギーの削減やカーボンニュートラルに貢献し成長を目指します。

[コンポーネント事業]

モビリティ市場への拡販を図るべく新製品を開発し、国内メーカーへの参入を果たしました。市場の回復もあり需要が増加しており、自動化による生産体制強化を推進します。更にグローバルな拡販活動を展開し売上拡大を図ります。半導体製造装置市場は低迷しておりそれに伴いベアリングの需要が減少しているなか、生産・在庫調整を図り棚卸資産管理に努めます。先行きの見通しが難しい市場であり急激な需要回復時には迅速に行動し対処いたします。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティ

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 

①ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティに関わる取り組みの意思決定機関として、取締役会の監督のもと、代表取締役社長を最高推進責任者とし、業務執行取締役及び事業部門の責任者である執行役員等によって構成されるサステナビリティ委員会(2回/年)を設置しています。関連する方針の決定や、マテリアリティの取り組み状況の進捗管理、各種施策の審議等の役割を担っています。その傘下にサステナビリティ実行委員会(8回/年)を設置し、サステナビリティ経営に関する実行計画の策定と各部門の実施事項の推進を図っています。サステナビリティ委員会で決定した方針や進捗状況の確認結果は、取締役会に報告し、取り組み内容に関する指示を受けています(2回/年)。なお、リスク管理については、リスクマネジメント委員会とも適宜連携して取り組みを進めています。

 また、サプライチェーン全体でのサステナビリティ推進に向け、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の「責任ある企業行動ガイドライン」を使用し、調達パートナーの皆さまへサステナビリティ経営への働きかけを行うとともに、定期的な取り組み状況の把握を行っています。

 なお、関連する業務執行に関わる委員会などコーポレート・ガバナンス体制の詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由」をご参照ください。

 

図 サステナビリティ経営推進体制

0102010_001.png

 

②戦略

 当社は、経営理念、当社グループ行動憲章を基本的な考え方として、「気候変動など地球環境問題への配慮」「人権の尊重、従業員の健康・働く環境への配慮や公正・適切な処遇」「お取引先との公正・適正な取引」に取り組むことを謳ったサステナビリティ基本方針を策定しております。製品・サービスの提供を通じて社会的課題を解決することで、持続的な社会づくりに貢献し、企業価値向上に努めていくことが責務と認識しております。5つのマテリアリティを抽出し、PDCAサイクルを回すことで取り組みを推進しています。

 また、国際イニシアティブに関しては、「国連グローバル・コンパクト」(以下「UNGC」)に支持を表明し、2022年4月に参加しました。 併せて、日本におけるUNGCのローカルネットワークである「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入しています。具体的内容は次のとおりであります。

 

a.サステナビリティ基本方針

 

Ⅰ. 気候変動などの地球環境問題への配慮

 省エネルギー、クリーンエネルギー、化学物質排出削減などの環境に配慮した製品の技術開発や生物多様性の取り組みなど環境に配慮した活動に全社を挙げて取り組みます。

 

Ⅱ. 人権の尊重、従業員の健康・働く環境への配慮や公正・適切な処遇

 ステークホルダーの皆さまとともに、人権と働き方に関する基本的権利に配慮し、明るく生き生きと働ける、安全な職場環境の実現に取り組みます。

 

Ⅲ. お取引先との公正・適正な取引

 

 国内外の法令やルールを遵守し、公正、透明、自由な競争ならびに適正な取引を行うとともに、企業情報を積極的かつ公正に開示し、お取引先とも連携してサプライチェーン全体で公正な事業活動に取り組みます。

 

b.マテリアリティ

 これまでの取り組みや今後の中長期経営計画にそった当社グループが取り組むべきと考える重要事項の中で、ステークホルダーの皆さまの関心が高いテーマとして、「社会課題の解決とオリジンの持続的成長(新技術、新事業へのチャレンジによる価値創造)」「ガバナンス強化(リスクマネジメント、コンプライアンス)」「人権啓発の推進と人材育成」「製品の安全と品質」「環境保全(気候変動問題への対処、CO2排出量削減)」の5つのマテリアリティを特定しております。

 

リスク管理

 リスク管理については、リスクマネジメント委員会で、リスク頻度と経営への影響の観点から事業活動のリスクを特定し、その対応策について進捗状況を定期的にモニタリングしております。

 主要なリスク及び、リスク管理体制については、「3 事業等のリスク」 、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 b.リスク管理体制の整備の状況」をご参照ください。

 

指標及び目標

 5つのマテリアリティについて、それぞれアクションプランを策定し、サステナビリティ委員会において進捗状況の確認・対処方針の修正など行うこととしております。特に気候変動については、カーボンニュートラルに向けた具体的な目標を掲げ取り組みを推進しています。2023年度における具体的な内容は次のとおりであります。

 

表 マテリアリティのアクションプランの実施状況

0102010_002.png

CSV:Creating Shared Value(共通価値の創造)

 

(2)気候変動への対応

 気候変動がサプライチェーン全体に亘る事業環境に与える影響は大きく、当社グループでは、サステナビリティ基本方針のなかで「気候変動などの地球環境問題への配慮」を掲げ、温室効果ガス(GHG)排出量削減に向けた環境に配慮した製品の技術開発や生物多様性の取り組みなど環境に配慮した活動に全社を挙げて取り組むこととしています。

 また、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、自社分(Scope1、Scope2)のCO2排出量を2030年に半減する目標を定め、削減に取り組むとともに、サプライチェーンのCO2排出量(Scope3)を算定し、影響度の大きな事業活動を特定し、その削減に向けた新技術開発や新製品開発に取り組み、段階的に開示の充実を図ります。

 

①ガバナンス

 気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティのガバナンスに組み込まれています。詳細については、「(1)サステナビリティ ①ガバナンス」をご参照ください。

 

戦略

 気候変動は、その事業リスクへの対処を進めるだけでなく、自社製品・サービスの提供価値及び企業価値を高める機会とも捉えています。気候変動により平均気温が上昇することで社会に大きな影響が及ぶことから、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)で示されている、1.5℃~2℃未満に気温上昇を抑えるシナリオを想定し、TCFDの提言を参考に事業活動に影響を与えるリスクと機会について、定性的な影響を評価しました。サステナビリティ実行委員会において、リスクに対する低減策や機会の拡大を図る対応策を議論し取りまとめています。今後、対応策を事業計画等に反映していきます。

 

 

表 気候変動に対する主な事業リスクと機会、対応策

0102010_003.png

 

 

③リスク管理

 気候変動に関するリスク管理は、サステナビリティのガバナンスに組み込まれています。

 なお、気候変動に対する主な事業リスクと機会、対応策については、全社のリスクマネジメント委員会でも共有を図っています。

 

④指標及び目標

 当社グループは、2021年に「2050年のカーボンニュートラルへの貢献に向けて、2030年に自社分(国内事業所)のCO2排出量を50%削減(2015年基準)するとともに、サプライチェーン全体でのCO2排出量削減に取り組みます。また、社会全体のCO2排出量削減に向け、メカニカルな機構で機能する機構部品への代替提案も進めていきます。」との目標を定め、全社を挙げてCO2排出量削減に取り組んでいます。自社分のCO2排出量は、省エネ設備の導入等に加え、新型コロナウイルスの感染拡大による事業への影響、間々田工場のクリーンルームの停止等により、ここ数年毎年継続的に減少していましたが、最近の生産量の拡大に伴いCO2排出量の増加が懸念されます。今後は、再生可能エネルギーの導入などの検討を進め、さらなる削減に取り組みます。詳細については、ホームページをご参照ください。

https://www.origin.co.jp/sustainability/environment/protect/

 

グラフ Scope1、Scope2(国内事業所)のCO2排出量の推移

0102010_004.png

 

 

 さらに、2022年には、影響度の大きなScope3のカテゴリ毎に目標を定め公開しました。

<Scope3の削減目標>

カテゴリ1:CO2排出量の少ない原材料調達

・CO2排出量の少ない原材料の使用(非化石燃料由来の原材料の使用:樹脂、絶縁油)

・原材料調達時のCO2排出量削減(調達パートナーへの協力要請)

カテゴリ10:製品加工時のCO2排出量削減

・塗装工程の省エネルギー化に貢献する塗料の開発 (速硬化、高塗着効率の塗料開発)

カテゴリ11:製品使用時のCO2排出量削減

・さらなる電源の高効率化

・装置使用環境時の省エネルギー化(空調エネルギー、使用時ガス、製造工程の廃棄物、等の削減)

 

 継続して新技術・新製品開発に取り組むとともに、調達パートナーに対してもCO2排出量削減への協力を要請していきます。2022年度のScope3のCO2算定結果を表に示します。この表に示すScope1、2の値は海外生産拠点の排出量を含むため、国内事業所のScope1、Scope2の集計結果とは異なっています。

 

 

 

表 Scope3算定結果(2022年度)

集計範囲:オリジングループ(当社と、当社のサプライチェーンに含まれる子会社及び現地法人等を含む)

0102010_005.png

 

 

(3)人的資本

 当社グループは、中期経営計画において、ビジョンである『ニッチ・トップ』を目指していくこととしております。厳しい経営環境が続くと想定される中で、人事制度、企業カルチャー等の岩盤となる定性的な項目を含めた抜本的な「変革」と新たな「成長」によって中長期的な企業価値向上を図って行くことが課題と認識しております。

 「変革」と「成長」というテーマの中で、6つの変革を設定しており、人的資本への投資については、「カルチャーを変える」において、積極的に取り組んでおります。

 

ガバナンス

人的資本に関するガバナンスは、サステナビリティのガバナンスに組み込まれています。詳細については、

(1)サステナビリティ ①ガバナンス」をご参照ください。

 

②戦略

a.人材の多様性確保を含む人材の育成に関する方針

 

Ⅰ.成長戦略を支える人事制度運用の高度化、改革の実施

 成長・変革に必要な人材を確保するために、人事制度全般(等級、評価、処遇)を刷新し、従業員の意欲向上や人材育成による将来環境の充実を進めております。また、人事評価が適正かつ公平に行えるよう、評価者のスキル向上・部下育成を主眼とした評価者研修ならびに自己申告制度による当人のキャリアプランや仕事の取り組み状況などについて話し合いができる機会を年1回設けております。さらに、従業員のスキルアップと教育を通じたコミュニケーション力の向上を図るため、各々のポジションに即したスキルアップと将来のリーダーとしての基礎固めを目的とした階層別役職教育を行っております。

 

Ⅱ. 女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保

 当社グループは多様な人材の多様な働き方を支援するため、社員一人一人が能力を発揮できる制度・環境の整備を進め、「従業員の幸福と自己実現」の両方を実現することを目指しています。女性活躍促進については、女性活躍推進法に適合した実施計画を策定し、女性キャリア育成に関する研修を計画し、実施しております。また、男性の育児休暇取得率向上を目指すとともに男女間の賃金差異を把握してダイバーシティ推進への環境整備を行うことで、優秀な人材の確保等、企業の持続的な成長のために欠かせない活動と認識して、取り組んでまいります。

 

Ⅲ. 健康経営推進委員会の設置

 当社グループは健康経営を経営の重要な戦略と位置付けています。経営理念に基づき、積極的に従業員の健康保持・増進に取り組むため、健康経営推進委員会を設置いたしております。また、2024年3月11日に経済産業省と日本健康会議が共同で推進する『健康経営優良法人2024(大規模部門)』に認定されました。今後、社会の要請とステークホルダーの期待に応え、企業価値とブランドイメージ向上を図る施策の推進と社内外への情報発信を行ってまいります。

 

b.社内環境整備に関する方針

Ⅰ. 労働時間管理と人員配置の適正化

 労働時間の適正化を図り、従業員が常に十分なパフォーマンスを発揮できるよう休暇・残業の労働時間管理を行っております。また、各事業部の労働時間管理結果を踏まえながら、人員不足等への対応として、社内人材から適正を考慮した従業員の振り分けおよび社外から広く人材を募集する等による中途採用活動を行っております。さらに年次の有給休暇取得率の向上のため、従業員に対し取得を促し、2027年までに年間10日以上の取得を目標にしています。2023年度の有給休暇取得率は78.3%となっています。

 

Ⅱ. 社内環境の充実化による従業員のパフォーマンス・エンゲージメントの向上

 働き方改革の一環やコロナ禍における感染対策措置を機に試行運用してきた在宅勤務制度を正式に導入し、運用を行っております。(2023年5月16日から施行)。今後も事業運営上における業務効率化により生産性の向上を推進してまいります。

 また、「カルチャーを変えて、組織全体が活性化するとともに企業価値を向上させる」ことを目的として、従業員意識調査を適宜実施しております。結果のフィードバックから課題抽出・施策検討・実行により、従業員の満足度や士気などの活力を向上させ、従業員のパフォーマンスおよびエンゲージメント向上を図っております。

 

③リスク管理

 人的資本に関するリスク管理は、サステナビリティのガバナンスに組み込まれています。詳細については、「(1)サステナビリティ③リスク管理」をご参照ください。

 なお、リスクマネジメント委員会において、人的資本に対する主なリスクとして、「人材の確保・育成」を抽出し、モニタリングを実施しています。

 

 

④指標及び目標

 人的資本に関する従業員の状況は、「第1企業の概況 5.従業員の状況」をご参照ください。

 

4)知的財産への投資など

 当社グループは、知的財産への投資について、事業に用いるまたはその可能性がある技術に関して戦略的に特許等の権利化を行い、競合他社との差異化を図っております。特許保有数は、幅広い事業領域にわたり、国内外あわせ約500件となっています。第三者の権利を侵害しないよう調査を行い、権利化阻止対応、実施許諾を得る等のリスクの解消を行うこととしています。また、幹部会議において、定期的に権利化状況、権利化に係る投資状況等を報告し、適宜、取締役が助言を行っております。

 事業の成長の源泉である研究開発活動への投資については、「6 研究開発活動」に記載のとおりであります。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 (1)設備産業関連事業としての構造

    設備産業関連事業分野について、特にエレクトロニクス事業とメカトロニクス事業の業績は、市場や顧客の設備投資動向や景気変動に大きく左右されます。そのため、業績変動の緩和と将来の成長を図るため新たな収益基盤となる新製品の開発に取り組んでいますが、将来の需要を的確に予測し、新製品を時宜にかない開発、販売し続けることができるとは限らず、その場合には、業績変動の緩和はもとより事業及び業績全般に影響を及ぼす可能性があります。

    また、当社グループの設備産業関連事業に影響を与えるリスクは以下のとおりです。

    ①構成部品や原材料の価格高騰

     構成部品や原材料の価格高騰を販売価格に反映することが困難な場合には、想定した利益を確保できない可能性があります。

    ②為替相場の変動

     海外取引の多いメカトロニクス事業の主力製品については、大幅な為替相場の変動は原材料費及び売上高、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

    ③社会的または政治的影響

     海外取引の多いメカトロニクス事業の製品については、予期できない法律や規制および政策の変更、国家間の貿易制限措置や報復措置などの要因による社会的または政治的混乱といったリスクがあり、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 (2)サプライチェーン

    当社グループは、主に外部の取引先を通じてサプライヤーから原材料を調達しております。主要な原材料はリスク管理の観点からも可能な限り複数の取引先から購入を行っておりますが、製品の製造において用いるいくつかの原材料、部品については、特定のサプライヤーに依存しているものがあります。購買ルートの検討等対策を講じておりますが、サプライヤーの生産設備における事故など、当社グループがコントロールできない要因により、それらのサプライヤーを通じた原材料・部品の調達が困難となった場合、当社グループの生産能力に影響を与え、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

    当社製品を構成する半導体部品は製品ライフサイクルが短いものもあり、代替部品などでの対処は行っていますが、製品改定費用や収益面から生産中止を余儀なくされる場合など経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

    当社グループと各サプライヤーとの間は、概ね良好な協力関係にあります。一般的な経済動向およびサプライヤー個別の事由により、需給の急激な変動や価格の高騰が起きた場合には、必要な部材の入手に支障を来し、当社グループが顧客企業に対し供給責任を果たせない、あるいは部材価格高騰による原価の上昇など、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。人権・カーボンニュートラルなど、サプライチェーンに対するサステナビリティの取り組みが顧客からより強く求められているなか、当社のサプライヤーに対しても取り組み対応実績検査などが必要となってきています。

    顧客企業が部材調達の支障を原因とする大幅な稼働低下をした場合、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (3)製品の価格競争・競合・新規開発関連

    当社グループは、ニッチトップを目指し独創的な製品開発を進めております。そのため常に市場と顧客の動向を把握し研究開発による技術確立と新製品開発に取り組んでおりますが、新製品のタイムリーな市場投入が出来なかった場合あるいは、新製品が市場に受け入れられなかった場合などのリスクが常に存在します。また、国内外に多様な競合企業が存在するため、より一層研究開発と高付加価値な新製品開発に注力することにより競争優位を維持していくことを目指しておりますが、当社グループの競争優位が脅かされるような性能や価格の製品が競合企業により新たに開発・上市されるリスクも同時に存在します。

    この様な状況下で当社グループは、新製品の販売機会を失い、研究開発投資の回収が困難になるなど、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (4)災害対策関連

    供給元、納入先、当社グループの工場や従業員などが地震、台風等の自然災害や、火災、停電等の事故災害の発生により被災した場合、当社グループの経営成績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。また、損害を被った設備等の修復費用が発生した場合、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

    こうした事態に備えて当社グループはBCP(事業継続計画)の策定および手順書を作成し、災害発生時の影響を最小限に留める対策をとっております。

 (5)感染症並びにパンデミック関連

    新型コロナウイルス感染症に於いては世界的に規制が解除され、当社グループに於いても、インフルエンザなどの基本的感染症対策へ移行しております。しかしながら、新たな感染症の流行や既存感染症の再拡大などにより、供給元、納入先、当社グループの工場等のサプライチェーンに影響が生じた場合や、当社グループの従業員に影響が生じた場合、さらには、輸出割合の多い事業に於いて、海外渡航制限などにより海外での装置据付に影響が出る場合など、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

    このような事態に対応するため、当社グループでは渡航制限に関係なく、ローカルエンジニア主体により現地据付体制の維持管理をして参ります。また、基本的な感染予防やWeb会議の活用による安全衛生の徹底など感染拡大防止に向けた取組みを継続し、影響を最小限に留める体制を構築しております。

 (6)退職給付費用及び債務

    当社の従業員退職給付費用及び債務は、年金資産の運用収益率や割引率などの数理計算上の前提に基づいて算出され、数理計算上の差異は発生年度で全額費用処理しております。年金資産運用環境の悪化により前提と実績に乖離が生じた場合や退職金・年金制度が変更された場合は、退職給付費用及び債務が増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 (7)公的規制等

    当社グループでは、日本国内のほか諸外国で事業を展開しており、国家安全保障またはその他の理由による輸出制限、関税をはじめとするその他の輸出入規制、事業や投資の許可等、様々な法規制の適用を受けております。また、通商、独占禁止、特許、消費者、租税、為替管制、環境・リサイクル関連等の法規制の適用を受けております。各国・地域の公的規制等の変更により、適時に対応することが困難な場合には生産活動等に支障が生じるリスクがあり、万一、これらの公的規制等を遵守できなかった場合、事業活動の制限、社会的信用の低下、当局等からの罰則等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

    このため当社グループでは、事業に関連する各国・地域の規制動向について情報を収集し、事業の継続に必要な対応策を講じています。また、社内規程の整備や継続的な社員教育を通じ、公的規制等の遵守に努めています。

    なお、当社間々田工場(栃木県小山市)における建築物の建替え検討にあたり敷地内の土壌および地下水を調査した結果、環境基準値を超える特定有害物質が検出されたことから、汚染の拡散防止等の対策工事を行いますが、新たな状況が判明した場合は追加費用が発生する可能性があります。

 (8)コンプライアンス

    当社グループでは、国内外拠点の従業員による個人的な不正行為等を含めたコンプライアンスに関するリスクもしくは社会的に信用が毀損されるリスクを排除できない場合があります。結果として、当社グループの信頼性や企業イメージが低下し、財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

    このようなリスクを踏まえ、法令遵守は極めて重要な企業の責務であるとの認識のもと、米国・アジアを中心とした諸外国の贈収賄防止法等の厳格化も睨み、国内外を問わず、より一層のコンプライアンスの強化に、継続的に取り組んで参ります。具体的にはオリジングループ行動憲章を設定、コンプライアンス委員会による啓発活動を実施して、当社グループのコンプライアンス意識高揚に努めております。また、海外を含めた当社グループ従業員が利用可能な専門業者による内部通報の外部受付窓口を設けて、不正行為が有った場合の早期洗い出しや不正行為の抑止に活用し、コンプライアンス体制の維持を図っております。

 (9)人材の確保・育成

    当社は、経営理念として、人類社会に役立つ存在感あふれる、開かれた、独自性ある、自己実現の場である企業を目指しておりますが、当社事業活動においては技術開発力・生産力・販売力・経営管理力が重要な要素であり、各分野において基幹となる人材の確保・育成に向けた活動が必要不可欠となります。それら重要な要素の強化につながる人材の育成に注力し社員の教育・研修を実施するとともに、有能な人材の確保に取り組んでいますが、そうした必要な人材を確保・育成できない場合、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (10)為替変動

    当社グループの海外売上高比率は、2022年3月期48.1%、2023年3月期49.1%、2024年3月期38.0%と高い比率であり、為替変動の影響を受ける状況にあるため、必要に応じてリスクヘッジを検討しております。為替の動向によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、海外の関係会社の経営成績は、連結財務諸表作成のために円換算されています。換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 (11)減損会計

    当社グループの固定資産の時価が著しく低下した場合、又は事業の収益性が悪化した場合には、固定資産減損会計の適用により固定資産について減損損失が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 (12)情報セキュリティ及びサイバー攻撃

    近年、サイバー攻撃による被害や情報漏えい等の事件が社会問題となる等、情報セキュリティに関する脅威の高度化・多様化への対策が大きな課題となっております。

    取引先又は当社グループの機密情報や個人情報の保護については、社内規程の制定、従業員への教育、情報インフラの整備、業務委託先も含めた指導等の対策を実施しておりますが、万が一、情報漏洩等が惹起した場合、当社グループの信用は低下し、取引先の情報を漏洩した場合、法的責任が発生するおそれがあります。その結果、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。また、このようなリスクを踏まえ、当社グループの重要な事業活動基盤の一つである社内ネットワークにつきましては、ゼロトラストを実現するべく、IT基盤の特性に合わせて対策を講じています。標的型攻撃対策として不正アクセス対策やマルウェア対策に加え、デバイス管理、ID管理、データ漏洩対策を組み合わせた認証・認可基盤を構築し、巧妙化・多様化・複雑化するサイバー攻撃への対策を実施するとともに、より高度なスキルを持つセキュリティ人材の育成に向けた取り組み等を強化しております。

 (13)製品品質関連

    当社グループは、製品品質の維持向上のためISO9001 認証を取得し、顧客の仕様及び品質基準を満足する製品を供給しております。しかしながら、将来的に全ての製品に欠陥がなく、製品の回収や賠償が発生しないという保証はありません。当社製品は、エレクトロニクス事業、メカトロニクス事業、ケミトロニクス事業、コンポーネント事業、半導体デバイス事業の5事業の分野にて亘っており、それぞれ特有の制約条件があって生産工程の安定性や収率等に影響が出る可能性があり、またそれに関連して欠陥を含む製品が出荷されないという保証はありません。当社製品において欠陥が発生した場合、製品回収や顧客への賠償に多額のコストを要するとともに社会的信用の失墜を招き、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また製造物責任賠償については保険加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできる保証はありません。当社グループにおいては、5事業それぞれに品質状況の月度確認を実施し、不具合が確認された場合には迅速な対処を行うとともに、日常的な品質改善活動を展開して、製品品質に関するリスク低減に努めております。なお、紛争鉱物の規制拡大傾向により、急な規制物質制定への対応が困難になる可能性があり、サプライヤーと情報交換しながら注意してまいります。

 (14)財務制限条項

    当社のコミットメントライン契約等の一部借入金の契約には財務制限条項が付されております。今後、財務制限条項への抵触等があった場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 (15)繰延税金資産

    当社グループは、将来の課税所得に関する予測・仮定に基づき、繰延税金資産の回収可能性の判断を行っておりますが、将来の課税所得の予測・仮定が変更され、繰延税金資産の一部ないしは全部が回収できないと判断された場合、繰延税金資産は減額され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

 ①財政状態及び経営成績の状況

  当連結会計年度の財政状態および経営成績は以下のとおりであります。

 

a.財政状態

当連結会計年度末における流動資産は288億8千7百万円となり、前連結会計年度末に比べて13億4千3百万円増加しました。また、固定資産は186億8千万円となり、前連結会計年度末に比べて20億9千3百万円増加しました。これにより、総資産は475億6千8百万円と前連結会計年度末に比べて34億3千7百万円増加しました。

当連結会計年度末における負債は212億2千万円となり、前連結会計年度末に比べて37億4千2百万円増加しました。

当連結会計年度末における純資産は263億4千7百万円となり、前連結会計年度末に比べて3億5百万円減少しました。

なお、自己資本比率は前連結会計年度末に比べて4.6ポイント減少し、50.4%となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境やインバウンド需要の改善する下で、緩やかな景気回復の動きが見られました。しかしながら、資源・エネルギー価格の高止まりや為替相場の円安進行による物価上昇の継続に加え、世界的な金融引き締めの継続や中国経済の減速による国内景気への影響が懸念されるなど、中東地域の地政学リスクの拡大も相まって先行き不透明な状況が続きました。

このような中、当連結会計年度の売上高は、メカトロニクス事業の業績不振により282億5百万円(前期比12.0%減)となりました。

利益面におきましては、営業損失5億8千3百万円(前期は営業利益5億7千4百万円)、為替差益2億3千1百万円等を計上した結果、経常利益4千2百万円(前期比97.1%減)となりました。特別損失に間々田工場の地下水汚染対策工事費用として、環境対策引当金繰入額7億9千3百万円等を計上し、これに税金費用を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は14億6千8百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益3億6千5百万円)となりました。

 

セグメントの業績は次のとおりであります。

 

 [エレクトロニクス事業]

 エレクトロニクス事業の売上高は前期比7.7%増の67億7千万円(総売上高の24.0%)となりました。

 医療用電源は顧客在庫調整の影響などもあり若干減少しましたが、半導体製造装置用電源は先行受注分の売上寄与等により大幅に増加したことから、全体として売上増となりました。

 

 [メカトロニクス事業]

 メカトロニクス事業の売上高は前期比73.7%減の15億9千6百万円(総売上高の5.7%)となりました。

 ギ酸還元真空リフロー炉(VSM)の新製品としてMPXシリーズを投入しましたが、想定した売上に至りませんでした。

 また、光学レンズ貼合装置(OLB)も需要の減少により大幅な売上減となりました。

 

 [ケミトロニクス事業]

 ケミトロニクス事業の売上高は前期比6.2%増の106億3千3百万円(総売上高の37.7%)となりました。

 主力のモビリティ関係は中国を始めとする海外市場では売上が伸び悩んだものの、国内市場での堅調な売上がそれを補完したことにより売上増となりました。

 

 [コンポーネント事業]

 コンポーネント事業の売上高は前期比5.3%減の76億1千1百万円(総売上高の27.0%)となりました。

 金融機器関係は新紙幣特需により好調に推移、モビリティ関係も採用拡大に伴い大きく伸長しました。一方、主要の事務機器関係は需要が戻らず低調な状況が継続、産業機器関係も半導体製造装置市場の低迷が大きく影響し売上減となりました。

 

[その他]

 その他(半導体デバイス事業)の売上高は前期比2.5%減の15億9千2百万円(総売上高の5.6%)となりました。

 半導体製造装置市場の低迷が影響し売上減となりました。

 

 ②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は80億3千3百万円となり、前連結会計年度末より14億5千6百万円増加いたしました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によって得られた資金は、1千1百万円(前期は17億7千2百万円の資金の獲得)となりました。

主な増加要因は減価償却費9億7千1百万円、環境対策引当金の増加額7億2千3百万円、仕入債務の増加額6億8千3百万円であり、主な減少要因は税金等調整前当期純損失9億8千5百万円、法人税等の支払額5億2千3百万円、退職給付に係る負債の減少額4億2千6百万円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によって得られた資金は、2億円(前期は14億6千4百万円の資金の使用)となりました。

主な増加要因は定期預金の純減少額10億2千2百万円であり、主な減少要因は有形固定資産の取得による支出6億5千8百万円であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によって得られた資金は、10億2千万円(前期は18億8千2百万円の資金の使用)となりました。

増加要因は長期借入れによる収入25億円であり、主な減少要因は長期借入金の返済による支出5億5千3百万円、自己株式の取得による支出3億7千2百万円、非支配株主への配当金の支払額3億1千9百万円であります。

 

 

 ③生産、受注及び販売の実績

  a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

エレクトロニクス事業

7,031,035

103.8

メカトロニクス事業

2,134,704

44.7

ケミトロニクス事業

9,284,834

108.3

コンポーネント事業

1,592,190

77.4

その他

1,485,556

80.9

合計

21,528,320

89.6

 (注)金額は販売価額によっております。

 

  b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

エレクトロニクス事業

6,344,025

76.2

3,261,715

88.4

メカトロニクス事業

819,104

30.7

877,764

53.0

ケミトロニクス事業

10,652,347

105.8

434,260

104.4

コンポーネント事業

7,637,040

95.5

1,242,642

102.1

その他

1,867,600

114.7

748,605

158.0

合計

27,320,117

89.0

6,564,986

88.1

 

  c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

エレクトロニクス事業

6,770,858

107.7

メカトロニクス事業

1,596,460

26.3

ケミトロニクス事業

10,633,887

106.2

コンポーネント事業

7,611,186

94.7

その他

1,592,685

97.5

合計

28,205,079

88.0

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自  2022年4月1日

  至  2023年3月31日)

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

  至  2024年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

Interface Technology

(Cheng Du) Co., LTD

5,003,241

15.6

3.当連結会計年度のInterface Technology (Cheng Du) Co., LTDについては当該割合が100分の10未満のため、記載を省略しています。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 次期につきましては、引き続き景気の持ち直しが期待されるものの、地政学リスクの高まりや中国経済の減速、政策金利や為替の変動の影響にも注意が必要な状況が続くものと思われます。

 当社グループを取り巻く経営環境につきましても、中国経済の影響による受注、売上の減少、原材料価格やエネル

ギー価格の高騰などによる営業利益を圧迫する環境が引き続き想定されます。

 

 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1)財政状態

当連結会計年度末の総資産は475億6千8百万円と前連結会計年度末に比べて34億3千7百万円増加しました。

 流動資産は288億8千7百万円となり、前連結会計年度末に比べて13億4千3百万円増加しました。これは主に受取手形、売掛金及び契約資産が4億6千4百万円減少しましたが、電子記録債権が10億8千3百万円、現金及び預金が5億4千7百万円、仕掛品が2億1千7百万円増加したことなどによるものであります。

 固定資産は186億8千万円となり、前連結会計年度末に比べて20億9千3百万円増加しました。これは主に投資有価証券が21億2千7百万円増加したことなどによるものであります。

 負債は212億2千万円となり、前連結会計年度末に比べて37億4千2百万円増加しました。これは主に退職給付に係る負債が4億2千3百万円減少しましたが、長期借入金が16億7千5百万円、電子記録債務が8億9千4百万円、固定負債の環境対策引当金が7億6千6百万円、流動負債のその他が5億6千2百万円、繰延税金負債が4億5千6百万円増加したことなどによるものであります。

 純資産は263億4千7百万円と前連結会計年度末に比べて3億5百万円減少しました。これは主にその他有価証券評価差額金が14億9千2百万円、為替換算調整勘定が2億4千1百万円増加しましたが、利益剰余金が16億7千5百万円減少、純資産から控除する自己株式が3億7千3百万円増加したことなどによるものであります。なお、自己資本比率は前連結会計年度末に比べて4.6ポイント減少し、50.4%となりました。

 

2)経営成績

(売上高)

当連結会計年度の売上高は、メカトロニクス事業の業績不振により前期比12.0%減の282億5百万円となりました。

 

(売上原価)

売上原価は、メカトロニクス事業の売上減少に伴う固定費回収不足が大きく影響し、前期比12.2%減の216億3千5百万円となりました。資源・エネルギー価格や原材料価格の高騰等による全社的な製造コストの増加に加え、棚卸資産評価損の計上、メカトロニクス事業及び中国子会社の売上高の減少に伴う利益率の低下があったものの、退職給付債務の算定にあたり発生した数理計算上の差異(発生年度で一括処理。年金資産の運用益等で退職給付費用が減少)により、売上原価率は76.7%となり、前期比0.2ポイント減となりました。

 

(販売費及び一般管理費)

販売費及び一般管理費は、一部製品の品質向上に要するコストの増加により、前期比4.8%増の71億5千2百万円となりました。

 

(営業利益、経常利益)

上記要因により、営業損失は5億8千3百万円(前期は営業利益5億7千4百万円)、営業外収益に為替差益2億3千1百万円等を計上し黒字に転換しましたが、経常利益は前期比97.1%減の4千2百万円となりました。

 

(特別損益)

特別利益は、固定資産売却益の2千4百万円となりました。

特別損失は、間々田工場の地下水汚染対策工事費用として、環境対策引当金繰入額7億9千3百万円、エレクトロニクス事業の子会社埼玉オリジンでの不具合対策損失8千5百万円及び工場閉鎖による特別退職金5千万円、メカトロニクス事業の賃借工場閉鎖に伴う固定資産解体費用引当金繰入額4千5百万円を計上したことなどにより、10億5千1百万円となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

親会社株主に帰属する当期純損失は、上記要因の他、法人税等2億6千3百万円及び非支配株主に帰属する当期純利益2億2千万円の計上により、14億6千8百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益3億6千5百万円)となりました。

 

また、セグメントにおける分析につきましては次のとおりであります。

[エレクトロニクス事業]

医療用電源は顧客在庫調整の影響などもあり若干減少しましたが、半導体製造装置用電源は先行受注分の売上寄与等により大幅に増加したことから、売上高は前期比7.7%増の67億7千万円(総売上高の24.0%)となりました。棚卸資産評価損の計上、一部製品の品質向上に要する費用の増加により、セグメント利益は前期比62.8%減の1億6千万円となりました。

[メカトロニクス事業]

ギ酸還元真空リフロー炉(VSM)の新製品としてMPXシリーズを投入しましたが、想定した売上に至りませんでした。

また、光学レンズ貼合装置(OLB)も需要の減少により売上高は前期比73.7%減の15億9千6百万円(総売上高の5.7%)となりました。固定費の回収不足により、セグメント損失は6億4千2百万円(前期はセグメント利益5億6千1百万円)となりました。

[ケミトロニクス事業]

主力のモビリティ関係は中国を始めとする海外市場では売上が伸び悩んだものの、国内市場での堅調な売上がそれを補完したことにより売上高は前期比6.2%増の106億3千3百万円(総売上高の37.7%)となりました。セグメント利益は前期比100.5%増の10億2千万円となりました。

[コンポーネント事業]

金融機器関係は新紙幣特需により好調に推移、モビリティ関係も採用拡大に伴い大きく伸長しました。一方、主要の事務機器関係は需要が戻らず低調な状況が継続、産業機器関係も半導体製造装置市場の低迷が大きく影響し売上高は前期比5.3%減の76億1千1百万円(総売上高の27.0%)となりました。セグメント利益は前期比25.8%減の8億5百万円となりました。

[その他]

半導体製造装置市場の低迷が影響し売上高は前期比2.5%減の15億9千2百万円(総売上高の5.6%)となりました。セグメント利益は前期比745.4%増の5千万円となりました。

 

b.経営成績に重要な影響を与える要因について

「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、資金需要の主なものは、新製品開発、生産性向上及び品質向上のための設備投資需要並びに新製品開発、製造のための材料及び部品の購入のほか、労務費、製造経費、販売費及び一般管理費等の運転資金需要であります。

これらの資金需要に対して当社グループは、自己資金のほか、銀行借入等の間接金融により賄っております。また、当社は機動的な財務戦略をとり、資金の効率的な調達を行うため、特定融資枠契約(シンジケーション方式によるコミットメントライン)を締結しております。

 

 ③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

この連結財務諸表の作成にあたりまして、過去の実績、法令や会計制度等の変更など様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行っております。実際の結果は、見積り特有の不確定要素が内在するため、これらの見積りと異なる場合があります。

(有形固定資産及び無形固定資産の減損処理)

固定資産の減損処理に係る会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

(繰延税金資産)

当社グループは、将来の課税所得に関する予測・仮定に基づき、繰延税金資産の回収可能性の判断を行っておりますが、将来の課税所得の予測・仮定が変更され、繰延税金資産の一部ないしは全部が回収できないと判断された場合、繰延税金資産は減額され、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

5【経営上の重要な契約等】

一般定期借地権設定契約

 

契約先の名称

契約

締結日

契約内容

土地面積

契約期間

東京建物株式会社

2016年10月21日

一般定期借地権設定契約

(東京都豊島区高田一丁目)

12,348.42㎡

2020年2月1日から

2092年5月31日

 

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、主として提出会社が行っております。

当連結会計年度の研究開発活動は、下記のとおりであります。

 

 当社における研究開発は、基本的技術あるいは共通的な技術を研究開発本部で、事業展開に直結する新製品、新商品の開発を各事業部門の開発グループが担当して活発に行っております。

 技術分野としては、電源を主とするエレクトロニクス技術、システム化を指向するメカトロニクス技術、高機能・高性能のプラスチック用塗料を主とするケミトロニクス技術、精密機器を中心とするコンポーネント技術、そして電力用半導体部品を中心とするその他技術の5分野にまたがっております。それぞれの技術分野でより高度な技術の開発を目指すとともに5分野の技術を融合することにより独自性のある技術の確立を目指して積極的に技術開発に取り組んでおります。また昨今、市場評価としても重要度が増しておりますカーボンニュートラルに向けた技術開発にも注力しております。

 当連結会計年度は研究開発費1,747百万円を投入し、主な成果は次のとおりであります。

 

(1)エレクトロニクス事業

1)新型医療用電源の開発を行い、小型高電圧技術を確立しました。

2)新分野の医療用電源の試作装置の出力波形制御技術を確立しました。

3)次世代半導体製造装置用電源の社内評価を完了しました。

4)新分野の半導体製造装置用の試作機を完成させました。

5)電欠対応用POCHA V2VのCHAdeMO認証を取得し、製品化しました。

6)デモ機を製作しEV車両との接続確認を実施し、13社36車種合格しました。

7)POCHA連携バッテリーパックの試作機を完成させました。

8)EVを活用したバックアップシステムの試作機を完成させました。

 当事業に係る研究開発費は318百万円であります。

 

(2)メカトロニクス事業

1)医療モニターにも対応可能な18~35インチのディスプレイを真空貼合できる全自動オプティカルボンディング装置を製品化しました。

2)画像処理によるアライメント機能を有するウエアラブルデバイス用レンズのバッチ式貼合装置を製品化しました。

3)インクジェットプリント工法により異形基板に厚さ10μmの接着層を形成して貼合するオプティカルボンディング技術を確立しました。

4)複数枚のディスプレイを同時に真空貼合する技術を確立しました。

5)ウエハバンピングや半導体ウエハのソルダリングに特化したギ酸還元真空リフロー炉「MPWシリーズ」の開発を進めました。

6)PCD切削工具に関する抵抗溶接技術の開発を進めました。

 当事業に係る研究開発費は360百万円であります。

 

(3)ケミトロニクス事業

1)非石油由来(BRC:50%)の1液型塗料「エコネットBO-100」を製品化しました。

2)非石油由来(BRC:60%)の2液型塗料を開発しました。

3)ノンスリップ塗料「エコネットNSL」を製品化しました。

4)自動車内装用塗料「エコネットEY」の速硬化型である「エコネットEY EC」を製品化しました。

 当事業に係る研究開発費は292百万円であります。

 

(4)コンポーネント事業

1)自動車電動バックドア用トルクリミッタとして、高負荷設定モデルや高機能モデルの開発を進めました。

2)自動車電動バックドア用トルクリミッタの生産効率化にあたり、生産ラインの自動化を進めました。

3)バックラッシレスで小型化を図ったトルクリミッタの開発に取り組み、自動車向け部品として量産採用に至りました。

4) 安全機構に特化したコンパクトかつ廉価なトルクリミッタの開発に取り組み、自転車向け部品として量産採用に至りました。

5)スキャナー用の動力切り替え機構として機械式クラッチの開発に取り組み、技術を確立しました。

6)自動車産業に特化した品質マネジメントシステムIATF16949の認証を取得しました。

 当事業に係る研究開発費は377百万円であります。

 

(5)その他

 医療機器向けに高圧電源用ダイオードモジュールを開発しました。

 当事業に係る研究開発費は113百万円であります。

 

(6)全社共通

 研究開発本部で行なっている、部品素材に関する基礎研究、AI活用や電気、機械、化学シミュレーションなどの応用技術開発等、各セグメントに配賦できない研究開発費は285百万円であります。