我が国の経済は、雇用・所得環境が改善する中で各種政策の効果もあり、景気の緩やかな回復が続くことが期待される一方、世界的な金融引締めや中国経済の先行き懸念など下押し圧力がみられ、物価上昇、中東地域の情勢、金融資本市場の変動、さらには能登半島地震の影響についても留意していく必要があります。建設業界においては、資材・労務費の高騰が続くなか、時間外労働の上限規制の適用を含む働き方改革への対応、建設技能労働者の減少、脱炭素社会への取組みなど課題は多く、今後の動向を注視していく必要があります。
2023年度のマンション市場においては、新規供給戸数は首都圏、近畿圏共に前年度を下回りました。首都圏では2万6,798戸となり、2年連続で3万戸を下回りました。近畿圏も2年連続の減少で1万5,788戸となりました。2024年度の新規供給戸数については、首都圏、近畿圏共に再開発物件や大規模物件の供給が予定されていることから、2023年度を上回ると思われます。また、首都圏、近畿圏共にマンション価格の上昇傾向が継続し、2023年度の平均価格は首都圏では7,566万円と過去最高値となり、近畿圏でも4,935万円と1991年度(5,464万円)以来の高水準が続いています。
2023年度の販売状況はマンション価格が上昇したものの、変動型住宅ローン金利の低位継続など住宅取得環境は良好に推移したこと、物価が上昇するなか緩やかながら景気の回復基調は維持されたことなどから堅調に推移しました。2024年度は、賃上げが購入意欲を高める期待がある一方、住宅ローン金利に影響を与える金融政策の動向を注視していく必要があります。
当社グループは、2021年3月期より開始した「長谷工グループ長期ビジョン」ならびに中期経営計画「HASEKO Next Stage Plan(略称:NS計画)」の4年目となる2024年3月期において、建設関連事業においては当社の土地情報収集力や商品企画力、施工品質や工期遵守に対する姿勢、効率的な生産体制等についてお客様や事業主様から評価をいただき、施工中工事高は増加した一方、資材・労務費の高騰等の影響を受け、完成工事総利益率は低下しました。サービス関連事業においては各社の業績が好調に推移したことで、着実に利益を積み重ねることができました。その結果、連結経常利益は期初予想であった830億円を上回り、833億円となりました。
住まいのあり方や働き方に対するニーズは、新型コロナウイルス感染拡大を機に大きく変化・多様化し、様々な創意工夫が求められております。BIM(Building Information Modeling)&LIM(Living Information Modeling) など独自のDXを積極的に推進することで、商品・サービスの競争力強化や生産性向上に革新的に取組み、新たな事業モデルの創出を目指しております。そのため2021年11月からスタートしたDXアカデミーをさらに拡大させ、スペシャリスト人材の育成にも注力しております。
サステナビリティに関する取組みとしては、長谷工グループ気候変動対応方針において温室効果ガスの排出量削減目標を設定し、すでにSBT(Science Based Targets)イニシアチブより認定を受けております。2023年5月には当社建設現場の使用電力100%再生可能エネルギー化を実現し、その他でも環境配慮型コンクリートなど環境負荷を低減する施工技術の開発・導入や、自社開発分譲マンション・自社保有賃貸マンションのZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)化、マンションの木造化・木質化の推進など、当社グループ全体で企業価値向上を目指しながら、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。また、人権尊重の考え方を明確にするとともに、企業として人権尊重責任を果たしていくため、2022年1月に策定した「長谷工グループ人権方針」に基づき、グループ内での浸透を図るとともに、サプライチェーンも含めた人権デュー・ディリジェンスを継続的に実施してまいります。さらに、多様な人々の活躍については、2023年4月当社内にD&I推進室を立ち上げ、これまでの女性活躍の取組みをさらに進めていくとともに、「個性活躍」をキーワードとして、多くの社員が働きがいをもって生き生きと活躍できる環境づくり・環境整備にも取り組んでまいります。
引き続き、社会課題の解決に取組みつつ、NS計画の重点戦略と位置付けたコア事業の競争力の強化や不動産関連事業の投資拡大、将来の成長に向けた取組みについて、成長戦略投資を実施してまいります。また、強固な財務基盤を維持しつつ株主還元の拡充を図り、資本効率性をより意識した経営に努めるとともに、グループ各社の連携をさらに高め総合力を発揮することで、サステナビリティに積極的に取組み、持続可能な企業グループとして発展を続けてまいります。
長谷工グループ長期ビジョン ~2030年3月期に目指す姿~
■目指す姿
少子化・高齢化、人口減少、都市のコンパクト化、災害、建築物の老朽化、環境配慮・省エネルギー、コミュニティ形成などの社会情勢の変化に対応し、当社の企業理念である「都市と人間の最適な生活環境を創造し、社会に貢献する。」を具体的に実現する為、分譲マンションを中心に、賃貸・高齢者住宅や商業・介護・子育て・健康・医療・教育等を組み合わせ、ハード・ソフト両面から「住まいと暮らしの創造企業グループ」における更なる飛躍を目指す。
■目指す姿の実現に向けた事業戦略
①事業領域の拡大(事業エリア、建築メニュー)
②安定収益分野と成長分野へのバランスの取れた戦略投資
③サービス関連事業の拡大に向けて、デジタル技術などの先進技術等を積極活用し、新たな事業モデルによる商品・サービスの競争力強化および労働生産性の向上
④新たな事業分野への挑戦
■目指す利益水準
連結経常利益 1,500億円
中期経営計画概要
・計画名称 HASEKO Next Stage Plan(略称:NS計画)
~次なるステージへの成長を目指して~
・計画期間 2021年3月期~2025年3月期
・数値目標
2025年3月期 連結経常利益 1,000億円
2025年3月期 連結子会社経常利益 300億円以上
2021年3月期~2025年3月期 5期合計連結経常利益 4,000億円
・基本方針
1.新規の住宅供給等を主なマーケットとする建設関連事業と既存の住宅関連等を中心とするサービス関連事業
の両方に軸足をおく経営の強化
2.グループ連携を深化させ、都市居住生活者の信頼に応える企業体の実現
3.安全・安心で快適な住まいと都市環境を提供
4.成長戦略投資による安定した収益基盤の構築
5.強固な財務基盤の維持と株主還元の拡充
6.中長期的な視点を踏まえた新たな取組みへの挑戦
7.CSR経営の確立に向け注力
・重点戦略
1.コア事業の競争力強化
(1)建設関連事業の領域拡大
①超高層マンションの施工拡大等により、分譲マンション建設での優位性を維持・強化
②賃貸マンション、学生・シニア向けマンション、寮・社宅、ホテル、オフィス、物流施設など分譲マンション以外での建設受注拡大
③BIM及びその他のICT関連技術の活用による工期短縮・コスト競争力の強化
④環境配慮技術・IoTを活用した商品開発
(2)再開発・建替事業の拡大・コンパクトシティ化への対応
(3)サービス関連事業の継続強化
①事業エリアを大都市圏から地方主要都市へと拡大
②先進技術導入による事業モデルの再構築
2.不動産関連事業の投資拡大
(1)マンション分譲事業の事業エリア拡大
(2)賃貸不動産の保有・開発事業の展開
①安定収益源の底上げを目的とした賃貸不動産の保有
②私募REIT創設による開発案件の多様化、新たな収益源の確保
3.将来の成長に向けた取組み
(1)デジタルトランスフォーメーション(DX)の具現化に向けた投資
①AI、センサー、通信、ロボット等の最新のIT関連技術を活用し、各種メーカー、ベンチャー企業、大学、研究機関等、外部との連携を行い、デジタルトランスフォーメーションの推進
(2)価値創生部門による先進技術導入に向けた投資
①サービス関連事業を中心に、既存ビジネスの生産性の抜本的な改革
②先進技術を積極的に活用した新たな事業モデルの創生
(3)海外事業への投資
①米国(ハワイ)における収益基盤の再確立
②東南アジアにおける設計・施工生産体制の確立
③不動産開発プロジェクトへの参画
(4)新規投資
①時代のニーズに合わせた住まい方の提案、新商品、新サービスの開発
②既存事業のサービス向上や成長性のある事業領域拡大を重点対象としたM&Aの実施
(5)人的資産への投資
①成長戦略の基盤となる自律型の人材・組織づくり
②人材の多様性と社員一人ひとりの働きがいを引き出す環境づくり
③新たな価値を生み出す、イノベーティブ人材・グローバルに活躍する人材の育成
④社員の挑戦を後押しするメリハリのある処遇
4.投資計画
5か年合計投資額 2,400億円
(1)分譲事業 500億円
(2)賃貸不動産の保有・開発事業 700億円
(3)海外事業 600億円
(4)先進技術投資 200億円
(5)新規事業、M&A等 400億円
5.財務戦略・株主還元
(1)強固な財務基盤を維持しつつ、成長戦略投資の加速と株主還元の拡充
(2)安定的な配当の継続実施。加えて、自己株式の取得は、経営環境、成長投資機会、当社株価水準や資本効率向上等を踏まえ柔軟に対応
<株主還元方針>
①1株当たり年間配当金の下限を70円と設定(2022年3月期の配当から80円に変更しました)
②5期合計の親会社株主に帰属する当期純利益に対して、総還元性向40%程度と設定
6.CSR経営への取組み
(1)事業を通じた課題解決によって「社会価値の創造」と「グループの成長」を両立させ、企業価値向上を実現
(2)長期的な成長を図るうえで重要なESG要素と当社グループの強みをCSR取組みテーマに取り纏め、CSRの目指す姿として推進
※なお、将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、2030年3月期に目指す姿として「住まいと暮らしの創造企業グループにおける更なる飛躍」を掲げており、その長期ビジョンを実現するための道筋として、2025年3月期までの5か年を対象期間とする中期経営計画「HASEKO Next Stage Plan(略称:NS計画)」を策定しております。NS計画では、「CSR経営への取組み」を重点戦略の一つとして掲げ、企業経営とCSRの更なる連動を図ることで当社グループの持続的成長を目指しております。具体的には、優先的に取り組むべき課題をマテリアリティ(重要課題)として特定し、CSRを推進する上での指針としております。マテリアリティとして特定された課題のうち、「人的資本(ダイバーシティ&インクルージョン・人材育成)」、「気候変動への対応」、「人権の尊重」、「サプライチェーン・マネジメント」を最重要課題とし、それらも含めた複数のマテリアリティに紐づけたCSR行動計画に則った活動をグループ全体で推進しております。
当社グループにおけるサステナビリティの基本方針に関する詳細な情報は、
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/feature.html)をご参照ください。
≪当社グループのマテリアリティ≫
(2) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社グループではサステナビリティの実現に向けて、次表におけるマネジメント体制の運用を通じて、CSR活動の組織的な推進を図っております。かかる状況下、当社社長が委員長となる「サステナビリティ委員会」は取締役会の監督下にあり、定期的な報告を行うこととしております。また、委員会の下部組織として、「サステナビリティ推進会議」を設置し、脱炭素やエネルギー・環境技術などの環境施策も含め、グループ全体でのCSR活動の推進・浸透に取り組んでいます。
≪サステナビリティマネジメント(ガバナンス)体制≫
当社グループのリスク管理に関する事項は、当社社長を委員長とするリスク統括委員会(以下当委員会)で取り扱っております。当委員会は、四半期に1回の開催に加えて、重大リスク発生時には必要に応じて臨時で開催することとしており、リスク管理に関する社内規程やリスク予防計画等の策定及び改廃について検討、決定するほか、リスク管理に関する推進方針及び具体策等の討議決定が行われております。サステナビリティに関するリスクについても当委員会に共有し、グループ全体のリスク管理体制の中で検討・管理しております。
≪リスク管理体制≫
(3) 重要なサステナビリティ項目
当社グループでは、優先的に取り組むべき課題をマテリアリティとして特定し、CSRを推進する上での指針としております。マテリアリティとして特定された課題のうち、以下4課題を最重要マテリアリティに設定しております。
① 人的資本(ダイバーシティ&インクルージョン・人材育成)
② 気候変動への対応
③ 人権の尊重
④ サプライチェーン・マネジメント
各項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
① 人的資本(ダイバーシティ&インクルージョン・人材育成)
当社グループの総合力を支えているのは、グループ社員や協力会社の社員であり、それら社員の持つノウハウや経験、新たな価値を生み出す知恵や活力こそが「資産」であると考えております。当社グループでは、「人的資産への投資・活用を通して、企業価値の更なる向上を目指す」を人事基本理念として、中期経営計画に連動した人事計画を策定しております。事業戦略の実効性を高め持続的成長を実現するため、人的資本への投資による最適な人的資産のポートフォリオを追求してまいります。幅広い生活者をお客様とする当社グループだからこそ、採用においても経営計画とその進捗、今後の事業環境や人員構成の変化に対応した要員計画を策定、新卒とキャリア採用を組み合わせて多様性のある人材ポートフォリオの構築を図っております。
2021年3月期よりスタートしたNS計画においても、人事計画に定める重点戦略に基づき人材育成と社内環境整備への投資を拡充してまいりました。2024年度は将来を担う人材の確保・定着を促進するために初任給と全体の処遇水準の大幅な引き上げを実施しております。今後も社員にとって働きがいのある、全てのステークホルダーにとって魅力ある企業であり続けるために多様な人材への投資に引き続き取り組んでまいります。
(人材育成の方針と取組みについて)
人材育成の観点では、「自律人材の継続輩出と将来の長谷工を担う多様な人材を育成する」をスローガンとして、自律人材の育成とキャリア開発、持続的成長を見据えた次世代の経営者・役職者及び実務リーダー層の育成、新たな戦略を実現する人材の育成という観点で、イノベーティブ人材・グローバル人材の養成、DX教育等幅広く展開しております。
(a)職種別実務教育の強化
・経営計画達成の鍵となる若手社員の早期育成・早期戦力化のために実務に即した会社別・部門別カリキ
・当社の事務系総合職(営業・スタッフ)には、生きたお客様の声・ニーズを把握し、用地の仕入れや、事業企画に活かすべく、グループの販売会社にて半年間の販売実習を経験させています。また、設計職には建設作業所の実態を踏まえた設計力を身に付けるべく、1年次に施工実習を実施。施工管理職には施工図研修を実施するなど、事業の川上から川下まで一貫して行うビジネスモデルを持つ当社だからこそ、関連する他職種の理解を深める研修により、実務知識の向上と関連職種との連携を高めております。
(b)自律人材育成プログラムとキャリア開発の連動
・入社後10年間で「自ら考え行動し未来を切り拓くことが可能な」自律人材へと育成するべく、職種横断の階層別研修を実施しております。
・将来の当社グループを牽引する若手・中堅社員の職場定着を最重要課題と捉えBe3(ビーキューブ=入社3年間の職場内外の先輩による側面支援)制度を推進しております。
・キャリアを主体的に描く「キャリア自律」促進に向け、4・7年次研修にて今後のキャリアを考える機会を設定しております。10・20年次社員へは上司との対話・力量把握を踏まえたキャリアプラン策定及び3年ごとに進捗の定点観測を実施しております(CAP・10(キャップ・テン)制度)。
(c)役職者教育
・組織・人づくりの要として役職者に求められる役割と重要性がさらに高まってきております。その認識の下、新任の課長クラスを対象に自律人材の育成に向けた部下育成・職場づくりを目的としたマネジメント研修、適切な目標設定・評価を行うことを目的とした新任評価者ガイダンスを実施しております。また、2025年3月期よりD&I研修を新設し、社員一人ひとりが働きがいをもって活躍する職場づくり・風土醸成に取り組む役職者を後押ししてまいります。
(d)経営幹部候補の計画的輩出・次期経営者の育成、選任計画(サクセッションプラン)の策定
・持続的成長企業として、多様性の確保も踏まえながら選抜型の経営者養成講座をそれぞれの階層で実施しております。また、当社グループ各事業の連動を踏まえた各社役員へのローテーションによる実践を経て、本社役員・経営幹部人材の育成もしております。特に近年は女性幹部の育成に注力しており、現在グループ全体で約70名の女性幹部(うち女性役員20名)が活躍しており、グループ共通の選抜教育受講と並行して実務経験を積んでおります。
・また次期経営者の育成のため、新任の執行役員を対象に経営戦略・会計・法務・コンプライアンス等、経営者として求められる知識を体系化した研修を実施しております。また、新任の常務執行役員を対象に、講師との対話を通し、経営者としての意識改革と行動変容を促すための研修を実施しております。当社及び関係会社の次期経営者の選定のため、当社グループを横通しした候補者リストを作成しております。候補者の実績、キャリア、スキル、研修履歴等の様々な要素を勘案し、当社及び関係会社の役員と議論をしながら、次期経営者の選任計画を策定しております。また当社役員候補者については、5名の社外取締役と代表取締役等で構成される指名報酬委員会での協議を踏まえ選任しております。
(e)新たな戦略を実現する人材の育成・配置
・業務改革による生産性向上や新たなビジネスの創出ができる人材づくりに向け、2022年3月期より、当社社長が直接指揮を取り、東洋大学情報連携学部(INIAD)の坂村健学部長・教授と連携し、DXアカデミーを開講いたしました。第一弾はグループ全社員(8,000名受講)へのDX教育(eラーニング)、第二弾はグループ全社から80名のDX推進リーダーを選抜し、プログラミング教育や新規アイデアを経営トップへ答申する研修を実施しました。2024年3月期は、第三弾として組織を牽引するグループの全部長層を対象に「DXリテラシー講座」を実施しております。
・また、今後の海外事業の拡大を見据え、2017年3月期より外部機関とも連携した英語教育施策を提供し、これまでグループ全体からの公募による受講者が100名以上おります。
・更には2030年NS計画長期ビジョンの実現へ向け、異業種リーダー層との合同研修やベンチャー企業への社員派遣等の越境学習によるイノベーション教育等も実施しております。
当社グループの人材育成に関する詳細な情報は、
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/employee/educational.html)の「人材育成・技術継承」をご参照ください。
(社内環境整備の方針と取組みについて)
多様な人材が個性を発揮しながら活躍できる働きやすい環境づくりに向けて、関連する方針を策定し諸施策の実行と役職員の意識改革に取り組んでまいりました。これまでの女性活躍推進を始めとした多様性を後押しする取組みをさらに発展させ、働きやすさと働きがいをともに実現するため職場環境への投資を拡充してまいります。また、役職員のエンゲージメントと心身両面での健康維持は、人的資本の基盤となる重要な要素と捉えており、グループ全体で働きやすい職場づくりや安全衛生及び健康経営を推進しております。
(a)D&I推進
2023年4月より、当社に「D&I推進室」を新設し、これまでの女性活躍推進を始めとする様々な取組みを更に進めていくとともに、「個性活躍」をキーワードに、多くの社員が働きがいをもって生き生きと活躍できる環境づくりを進めております。
当社グループのダイバーシティインクルージョン推進方針に関する詳細な情報は、
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/employee/human_resources.html)の「多様な人々の活躍」をご参照ください。
(イ)女性活躍推進に向けた取組み
当社グループは、過去より業界に先駆けて女性の積極的な登用を進めてまいりました。住宅購入の際に決定の主導権を持つことが多い女性のお客様のニーズに対応するため、土地情報の取得から事業企画、設計施工、販売、管理、修繕に至るまで、全ての業務に女性社員が携わりながら、女性社員一人ひとりが「住まいと暮らし」への想いを共有しカタチにしてきたことが、競争力維持の原動力となり、企業価値向上にも繋がってまいりました。2015年女性活躍推進法の成立以降も女性積極採用を継続し、中核・幹部社員の育成・定着に注力してまいりました。
女性社員比率も2021年度以降は30%超に増加いたしました。積極採用層が管理職層となるにはもう少し時間を要しますが、2023年度の女性管理職比率も10.2%と着実に増加をしております。
(単位:%)
※集計範囲:2021年度以前 全グループ会社(海外除く)、2022年度以降 当社+国内連結子会社
グループの女性幹部(部長以上)も約70名、うち女性役員20名と着実に増えてきており、2023年6月には当社でも初の女性社内取締役を輩出することができました。今後も現状の女性管理職比率の実績を伸ばすことを目標に、上記人材育成方針に沿った女性社員の育成と管理職への積極的な登用を促進してまいります。その他、女性活躍支援策として「女性社員交流会」、「女性特有の健康課題に関する研修」、「産前産後・復帰前後のフォロープログラム」等様々な取組みを実施しております。
女性活躍等、D&I推進に向けた取組みに関する詳細な情報は、
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/employee/human_resources.html)の「多様な人材の活躍」をご参照ください。
(ロ)多様な人材の活躍
米国やベトナムを中心とする海外事業への投資として外国人の登用を進めております。米国(ハワイ)では、役員や中核となる役職者のほとんどが、現地採用の外国人で構成され、組織運営をしております。ベトナムでも現地採用の外国人が中核となって事業を推進している状況であります。また、グループでは、シニア事業、人材派遣事業等でも外国人材が活躍しております。
NS計画重点戦略である建設関連事業の領域拡大や再開発・建替事業の拡大、不動産関連事業の投資拡大へ向け、キャリア採用を継続的に実施しております。現状、キャリア採用社員のうち約4割が役職者であり、役員をはじめ、各職種で多くの者が中核人材として役職に就いております。
その他、2005年に定年年齢を60歳から65歳へ引き上げ、経験豊富なシニア人材の活躍促進にもいち早く取り組んでおり、321名が定年退職以降も活躍しております(2024年3月末定年者含む)。
また、障がい者の活躍についても、1991年から特例子会社を立上げ、過去よりグループ全体で継続的な雇用・活躍促進に取り組んでおり、2024年3月時点で2.38%の雇用率となっております。法定雇用率の段階的な引き上げに対しては、サテライトオフィス事業においてグループ内での委託業務を拡大しながら、採用強化を図ってまいります。
(ハ)多様な社員が最大限能力発揮できる環境の整備
キャリアアセスメント制度や公募制度、専門職制度、職掌転換制度、勤務地限定職掌、正社員登用、再雇用制度、復職支援プログラムなど多様なキャリアを実現する諸制度や、明確な評価基準に基づき複数人で評価をする仕組みなど、公平・公正な評価制度を整え、多様な社員一人ひとりが、最大限能力発揮できる環境を整えております。
男女ともに仕事と家庭を両立しやすい職場環境に向け、配偶者出産休暇や育児休業の一部有給化、こども休暇などの育児向け制度、休業期間や休暇日数等法定を超える介護制度の拡充、半日・時間単位の有給休暇制度や在宅勤務、時差出勤、フレックスタイム制度、育児・介護事情がある場合の時間外労働の免除・制限等、社員の状況に応じた柔軟な働き方を可能とする制度を整備しております。男性育休取得率も2019年度2.6%から2023年度36.0%へと拡大しております。社内報での制度周知及び取得事例の紹介や、社内ポータルサイトにて、グループ各社役員によるイクボス宣言などの継続的な取組みが取得率向上に寄与しております。
以上のような取組みについて、経営トップによるコミットメントの発言に加え、サステナビリティ委員会や取締役会での報告の他、マネジメント研修や経営講座等、管理者向けの研修内容への取組みを実施しております。2023年8月にはグループ役職員約1万人を対象にD&Iの取組理解向上に向けたeラーニングを実施しており役職員全体へのさらなる意識啓発へ継続して取り組んでおります。
女性活躍等、D&I推進に向けた取組みに関する詳細な情報は、
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/employee/human_resources.html)の「多様な人々の活躍」をご参照ください。
「MOSt活動」の概要・具体的な推進等に関する詳細な情報は、
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/employee/human_resources.html)の「働きやすい環境づくり」をご参照ください。
当社グループでは長時間労働の改善、生産性の向上について、各種施策の検討・展開を進めてまいりました。営業職、設計職の社員を中心にモバイルワーク環境の整備や、時差出勤制度やフレックスタイム制、変形労働時間制の導入など、働く場所や時間に柔軟性をもたせた効率的な働き方の導入を進めてきました。
建設作業所においては本社からの業務支援の充実や、業務そのものの削減に関する取組み、各種アプリケーションの導入によって業務効率化を進めるともに、建設作業所の4週8閉所(年間104日休日)を目標に掲げ活動を展開しています。2024年度においては4週8閉所を前提として工程を組んでおり、厳守するよう建設部門担当役員より作業所に対し発信しております。
当社グループでは、「グループ安全衛生管理方針」を年度ごとに定め、労災事故撲滅のための取組みを徹底するとともに安全で快適な職場づくりに継続して取り組んでおります。また、当社建設作業所では、「安全衛生管理計画」により協力会社を含めた安全衛生方針・具体的実施策を年度ごとに定め、死亡・重大事故災害“ゼロ”はもとより、労災事故撲滅に向けて、建設作業所における災害数値目標として「労働災害度数率0.60以下」、「労働災害強度率0.01以下」を掲げて活動をしております。
「中央安全衛生委員会」等、安全衛生推進体制を含めた詳細な情報は、
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/employee/occupational_safety.html)の「安全で衛生的な労働環境の実現に向けて」をご参照ください。
協力会社をはじめとするサプライヤーとの信頼関係を築き、安全で生産性の高い職場の実現に向けた取組みを継続していきます。当社では、設計部門、建設部門、技術推進部門に加えて、約300の主力協力会社からなる組織「建栄会」が「四位一体」となって、精度の高いマンションづくりを担っています。この協力関係は四半世紀以上にわたって続いており、固いきずなで結ばれた品質管理体制は他社にはない強みとなっています。
また技術関連の部門と建栄会が協力し、「責任施工の範囲の明確化」、「労務省力化及び作業効率化」、「長谷工ブランドの向上」を目的に高品質なマンションを提供するための活動として「HASEKOバリューアップ活動」を行っています。現在は、業界全体の課題ともいえる「働き方改革」へ向けた活動を定着させるため、先端技術の活用による業務効率化や、さらなる生産性の向上への取組み等を推進しておりWEB開催した「バリューアップ拡大勉強会」には、協力会組織を中心に約2,500名が参加しました。なお活動の成果については、年に1回開催される「バリューアップ活動報告会」にて共有され、更なる「継承」・「浸透」・「連携」を図っています。
「役職員の健康なくして成果なし」をスローガンに「健康HASEKO元気PLAN」と銘打って役職員の健康づくりにつながる諸施策を進めております。当社社長による「長谷工グループ健康宣言」の下、「グループ健康経営推進委員会」を設置、また2021年には、全ての社員が心身ともに健康であり続け、一人ひとりがより活力を持って働くことのできる企業を目指すために、解決したい経営課題と、そのための健康投資(健康推進施策)とのつながりを見える化した長谷工グループ健康経営戦略マップを策定の上、健康経営を進めております。
当社グループ健康経営戦略マップに関する詳細な情報は、
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/pdf/promoting_health_map.pdf)をご参照ください。
制度・施策については当社グループの健康推進機関である㈱長谷工ウェルセンターが中心となり、企業内診療所での健康診断、保健指導、健康セミナーの企画・運営、ストレスチェック、刊行物による定期的健康情報の発信など社員の健康支援に注力しています。独自性の高い制度としては、45歳・50歳以上の社員を対象にPET-CT検査費用を全額会社負担しており、がんの早期発見に高い効果が現れています。また、長谷工健康保険組合と㈱長谷工ウェルセンターを同一フロアに集約し、保健事業及びコラボヘルスの推進体制を強化しております。長谷工健康保険組合を主体とした保険事業は、脳ドック・レディースドック・歯科健診を社員の自己負担なしで実施、またコラボヘルスの一環として取組みを強化した特定保健指導は実施率を大幅に引き上げました(被保険者実施率2019年度24.5%→2023年度44.1%)。この成果はメタボ該当率の低下等具体的な健康データに現れております。その他、メンタルヘルスのケア・30代を対象とした健康教育等、テーマ毎のポピュレーションアプローチによる健康リスクの低減にも取り組んでおります。
※健康経営の推進体制
健康経営に関する詳細な情報は、
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/employee/occupational_safety.html)の「健康経営の推進」をご参照ください。
当社グループでは中期経営計画に連動して人事計画を策定し、その進捗・実績や課題と対策を毎期人事担当役員が取締役会で報告し協議しております。また、人事関連の規程・制度は、経営への影響度等の観点から決裁のルールを定めており、重要性の高い案件は経営会議での事前審議を経て取締役会へ上程し審議しております。
役職員を対象とする規程・制度については、社内ポータルサイトへ掲載もしくは対象者へ発信する等、制度の周知と丁寧な運用を図っております。役職員の人事関連情報についても、グループ共通のシステムによって一元管理するとともに適時更新する運用としております。
人事関連部門の体制は、当社においては東西の拠点を主管する人事部門に加え、各部門にも人事機能を配することで実効性を高めております。グループ人事においては、共通施策の展開によるグループとしての人的基盤の整備を図るとともに、関連各社の独自性を追求することを方針としております。また、当社人事部門と各部門及び関連各社の人事部門の間でのローテーションや定期的な情報共有等を実施し、グループ人事としての連携と機能強化に取り組んでおります。
継続的な企業成長を実現させていく為には、多様な人材を安定して採用し、定着をさせていくことが重要であると考えております。そのため、労働市場の人材流動性が高まる中、計画通りの採用数及び多様な優秀人材の獲得が進まなくなること、社員の離職により組織力が低下することがリスクと捉えております。女性社員の離職率低下を目指し、離職率3%以下という目標を立て、D&I推進室の下、女性活躍推進施策や働きやすい環境整備を強化しております。また、労働時間や職場環境等を理由とした社員の「傷病による欠勤(アブセンティーイズム)」や「健康上の理由による業務パフォーマンスの低下(プレゼンティーイズム)」などもリスクと捉えております。
上記ガバナンス体制及び職制をベースとした適切な労働時間管理、自己申告やヒアリング等を通した職場環境及び社員一人ひとりの把握、また業務を通じた働きがいの実感、社員のキャリア志向を捉えた配置活用、適切な評価制度の運用を通じた処遇の実現等により、社員が前向きに活躍しやすい環境を整えることで、リスク低減に努めております。
当社グループでは、「(Ⅰ)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
(注)当社の目標
当社グループは、「住まいと暮らしの創造企業グループ」として、「都市と人間の最適な生活環境を創造し、社会に貢献する。」ことを目指しております。一方で、近年、気候変動による自然災害の頻発・激甚化が、私たちの住まいや暮らしの安全・安心にとって脅威となりつつあります。
かかる状況を踏まえ、当社グループは、気候変動への対応を重要な経営課題の一つと捉え、2021年12月に気候変動対応方針「HASEKO ZERO-Emission」を策定・発表すると同時に、TCFD提言に賛同いたしました。
「HASEKO ZERO-Emission」に関する詳細な情報は、
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/environment/climate.html)をご参照ください。
気候変動に関するガバナンスは、当社グループのサステナビリティマネジメント体制に含まれております。詳しくは「(2)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理」をご参照ください。
当社グループは、環境推進会議(現サステナビリティ推進会議)の下に気候変動対応に係る全社横断的なワーキンググループ(以下、WG)を設置し、気候関連のリスクと機会の特定、影響度の分析及び対応に係る検討を行いました。
検討結果は、サステナビリティ委員会にて、分析の妥当性や追加対応の必要性等につき審議のうえ承認し、取締役会に報告することとしております。
(対象セクター/地域、財務計画への影響)
分析の第一段階として、対象範囲を国内建設事業といたしました。また、財務への影響について、定量的な算出は行っておりません。今後、分析対象範囲の拡大や定量的な影響度算出にも取り組んでまいります。
(シナリオの説明、短期・中期・長期の視野)
分析に当たっては以下の2つのシナリオを設定し、影響の検討を行いました。
また、短期、中期(2030年まで)、長期(2050年まで)の視点で検討を行いました。
*1 IEA :International Energy Agency(国際エネルギー機関)
*2 IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)
分析の結果、脱炭素社会への移行に伴う炭素税の導入や各種規制強化による建設原価の上昇、夏季平均気温の上昇に伴う労務不足及び気象災害の頻発・激甚化に伴う建設工事の遅延を重要なリスクとして特定いたしました。
一方で、ZEHや災害に強い住宅の需要拡大が、新築・リニューアル工事の受注機会拡大につながる可能性があると分析いたしました。
この分析結果を踏まえ、これらのリスク・機会に対する現在の取組み状況を整理し、その十分性や追加施策の必要性について検討を行いました。その結果、現在の取組みの方向性が妥当であることを確認する一方で、建設資材に由来する排出量の大半を占めるコンクリートや鋼材の脱炭素技術、住宅・建築物に関する省エネ技術等、いくつかの施策については、一層の加速が必要であることを確認いたしました。今後、これら施策の加速に向けた対応を具体化し、これまで以上の取組みを進めてまいります。
なお、重要なリスクと機会及びその影響度と対応についての詳細は、次表をご覧ください。
※「影響度」は2030年における影響を評価したものです。
前表の「リスクと機会」に対する対応策は、次表のとおりです。
気候変動関連リスクについては、全社横断的なWGを設け、気候変動リスクの洗い出し、事業への影響度の分析を行っています。WGで分析されたリスクは、サステナビリティ委員会で審議され、取締役会に報告される体制となっております。
当社グループは、気候関連問題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス(CO2)総排出量を指標として削減目標を設定しております。なお、2030年目標について、SBT*3の認定を取得いたしました。
*3 SBT :Science Based Targets(科学的根拠に基づく目標)
*4 Scope1:燃料の燃焼等による直接排出
*5 Scope2:電気の使用等による間接排出
*6 Scope3:事業者の活動に関連するサプライチェーン排出
※2020・2021・2022年度の実績及び算定方法に関する詳細な情報は、
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/esg/)をご参照ください。
(CO2総排出量は、GHGプロトコルに従い算定しております。)
また、当該目標の達成に向けて、以下の目標も設定しております。
・建設現場で使用する電力の100%再エネ化(2025年までに実現。当社では2023年5月末に達成)
・H-BAコンクリート(環境配慮型コンクリート)採用の提案率80%(2030年までに実現)
≪CO2排出量実績≫
(単位:t-CO2)
なお、当社グループでは、CO2排出量(スコープ1、スコープ2、スコープ3)について、透明性と正確性を確保するため、一般財団法人日本品質保証機構(JQA)による第三者検証を受けています(2022年度分)。
今後も第三者検証を有効に活用し、継続的に精度向上に取り組んでいきます。
当社グループでは、「長谷工グループ行動規範」の中で「人権の尊重」を明文化しております。また、人権尊重を図る取組みを深化させるため、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿って、2022年1月に「長谷工グループ人権方針」を策定いたしました。グループの社員一人ひとりが人権に対して理解を深め、常に高い意識を持って業務にあたることができるようグループ内での浸透を図るとともに、協力会社等のサプライチェーンに対しても、人権を尊重した事業活動を要請いたします。また、人権デュー・ディリジェンス(以下、人権DD)の取組み等を通じて、人権に配慮した経営に努めてまいります。
「長谷工グループ行動規範」に関する詳細な情報は、
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/pdf/code_of_conduct_2.pdf)、
「長谷工グループ人権方針」に関する詳細な情報は、
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/pdf/human_rights.pdf)をご参照ください。
(Ⅰ)ガバナンス
人権に関するガバナンスは、当社グループのサステナビリティマネジメント体制に含まれております。詳しくは「(2)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理」をご参照ください。
人権に関するリスクは、人権DDによって把握・特定の上、予防・軽減策を講じてまいります。その状況は、リスク統括委員会に報告されるとともに、サステナビリティ委員会、経営会議、取締役会にも適宜報告されます。
当社グループの人権におけるリスク管理に関する詳細な情報は
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/governance/human_rights.html)をご参照ください。
(人権デュー・ディリジェンスの取組み状況)
「長谷工グループ人権方針」の策定に伴い、現在、人権DDの取組みを進めております。人権DDは、事業活動に関連して発生しうる人権侵害のリスクを洗い出し、評価、特定したうえで、予防・軽減措置を講じ、その効果を確認してPDCAを回すことにより、人権尊重の取組みの実効性を高めていく継続的なプロセスであります。このプロセスについては、単年度のみならず、毎年度継続してPDCAサイクルを回してまいります。
●対応すべき人権課題の特定
当社の経営管理部門及び協力会社との窓口である建設部門にて「人権WG」を組成し、グループの事業活動に関連して発生しうる人権侵害のリスクを洗い出し、深刻度と発生可能性の観点から評価を行うとともに、関連する部門やグループ会社の対応状況等につき確認し、2022年10月に優先的に対応すべき人権課題を特定いたしました。なお、2024年2月には、人権課題の特定以降に実施した予防・軽減策の状況や、事業内容・事業環境の変化等を踏まえ、人権WGにおいて、人権課題見直しの要否を検討しましたが、見直しは不要と判断しております(今後も、必要に応じ見直し要否を判断してまいります)。
■特定した人権課題
●予防・軽減策の検討・実施
特定した人権課題の多くは、従来から展開している「リスク予防活動」の中で、「全社共通リスク」あるいは「部門固有リスク」として認識し、対策を講じてきているものとなります。このため、2023年度の「リスク予防活動」では、特定した人権課題の周知を図るとともに、各部署が洗い出したリスクのうち人権課題に該当するものを特定することにより、自部署に潜在的に存在する人権課題を各部署において確認する作業を実施しました。今後、確認結果を元に、追加対策の要否については検討していく方針です。
一方、特定した人権課題の一部には、従来はグループの課題としての認識が薄く、実態が十分に把握できていないものがございます。このため、こうした人権課題への対応としては、まず、実態を把握すべく、協力会社に対して、2023年7~8月に、以下の2種類のアンケートを実施いたしました。
■協力会社に対するアンケートの概要
※各会は、以下のグループ会社の協力会社の組織。
◆建栄会:㈱長谷工コーポレーション ◆建翔会:不二建設㈱ ◆親和会:㈱細田工務店
◆住優会:㈱長谷工リフォーム ◆輝翔会:㈱長谷工コミュニティ
●人権DDの取組み体制
人権DDへの取組み状況等については、当社社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」に報告し、レビューを受けています。
なお、実務的な対応については、人権WGが中心となって検討・実施を進めています(人権WG内では、対応事項に応じて主担当部を決めて対応を進めています)。
■人権WGの概要
◆構成部署:サステナビリティ推進部、リスク管理部、人事部、人材開発部、建設企画部
(いずれも、当社の部署)
◆メンバー:構成部署の担当役員、部長、チーフ等
◆責 任 者:サステナビリティ推進担当役員
当社グループは、サプライチェーン全体で社会的責任を果たすための取組みを進めており、そのために「長谷工グループCSR調達ガイドライン」を制定しております。グループ各社が資材や労務の調達を行う際に当ガイドラインを遵守するとともに、取引先(サプライヤーに限らず、請負業者、代理業者等、全ての取引先を含みます)にも当ガイドラインを遵守した事業活動をお願いすることにより、社会の要請に応えてまいります。なお、主要取引先については、当ガイドラインに対する同意書を取得しております。また、それ以外の取引先も含めて、当ガイドラインの遵守要請を明確化するため、取引に関する契約書への条項追加に取り組んでいるところです。
「長谷工グループCSR調達ガイドライン」に関する詳細な情報は、
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/pdf/csr_guidelines_02.pdf)をご参照ください。
サプライチェーン・マネジメントに関するガバナンスは、当社グループのサステナビリティマネジメント体制に含まれております。詳しくは「(2)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理」をご参照ください。
サプライチェーン・マネジメントに関するリスクについては、人権や環境に関するものが多く、それぞれのテーマの中で、リスクの把握や対応を行っており、その状況は、サステナビリティ委員会、経営会議、取締役会にも適宜報告いたします。その他リスクについては、サステナビリティ委員会で審議、対応されます。
なお、取引先における「長谷工グループCSR調達ガイドライン」の遵守状況を確認するため、2022年度から、自主点検表によるアンケートを実施し、概ね適切な対応が行われていることを確認しております。また、自主点検表と併せて、木材のトレーサビリティに関するアンケート及び協力会社が雇用している外国人技能実習生に関するアンケートも実施しております(詳細は、「③人権の尊重」をご参照ください)。
■「長谷工グループCSR調達ガイドライン」自主点検表の概要(2023年度)
※各会は、以下のグループ会社の協力会社の組織。
◆建栄会:㈱長谷工コーポレーション ◆建翔会:不二建設㈱ ◆親和会:㈱細田工務店
◆住優会:㈱長谷工リフォーム ◆輝翔会:㈱長谷工コミュニティ
当社グループの業績及び財政状態は、今後起こり得る様々な要因により影響を受ける可能性がありますが、事業等のリスクについては、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項について記載しております。当社グループは、これらの他にも様々なリスクがありうることを認識し、それらを可能な限り防止、分散あるいは回避するよう努めておりますが、当社グループの支配の及ばない外部要因や必ずしも現時点にて具現化する可能性が高くないと見られる事項等の発生により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループは、首都圏、近畿圏及び東海圏での分譲マンションに関わる事業をコアとしており、中でも分譲マンション建設事業に対する依存度が高くなっております。従って、受注高やその他の分譲マンション関連事業の取引高は、分譲マンションの新規供給量や販売状況、分譲マンション建設用地の供給、取引先デベロッパーの事業規模、住宅関連政策、住宅にかかる税制及び金利等の動向によっては大きく変動することになり、これらの変動が業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は、土地情報収集力や分譲マンション事業に関するプロジェクトマネジメント力を背景として、土地持込による受注を主たるビジネスモデルとしておりますが、このビジネスモデルにより今後も引き続き競争優位に立ち、市場シェアや収益性の維持、拡大が図れるという保証はありません。
そのため、当社グループでは安定収益源の底上げを図るべく、賃貸マンションを中心とした保有・開発事業の拡大やサービス関連事業の事業エリア拡大に取組むことで、収益基盤の強化と収益構造の変化を目指しています。
当社は、建設資材・労務等の確保を本社機能部門による集中購買体制にて実施しており、将来の着工時期の予測を踏まえた運用や全体調達によるコスト競争力の強化に努めておりますが、建設業全般の業績の動向によりマンション建設の分野に対する参入が増え、同業他社との価格競争が激化した場合や、建設資材・労務等の急激な高騰及び調達難、協力業者等の確保状況による生産能力の低下等が生じた場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが事業を行う上で遵守すべき法令・規則等は多岐に渡っており、建築基準法、建設業法、宅地建物取引業法、建築士法といった事業に直接関係する法令のみならず、会社法、金融商品取引法といった事業に直接関係はしないものの重要な法令等があります。当社グループにおきましては、役職員がこれらの法令等を遵守することができるよう啓蒙を適宜実施しておりますが、これらの法令等を遵守できなかった場合、又はこれらの法令等が当社グループの予測し得ない内容に改廃もしくは新設された場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に、建築基準法等のマンション建設における法的規制の改廃もしくは新設、又は建築確認・検査の厳格化等により、事業計画の大幅な変更、建設工事の着工の遅延又は中止等が発生した場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、国内外の事業遂行にあたり、当社グループに対する訴訟等について、当社グループ側の主張・予測と相違する結果となった場合には、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
建設工事着工に際しましては、周辺住民に対する事業計画等の説明を実施しておりますが、反対運動及びそれに伴う訴訟等により、事業計画の大幅な変更、建設工事の着工の遅延又は中止等が発生した場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
建設部門・設計部門・技術推進部門に主力協力会社を加えた四位一体での品質向上活動への取組みにより、施工品質の維持向上には万全を期しておりますが、引当金の計上額を上回る負担の発生や、保険等でカバーできない損害賠償が発生した場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、安全教育の実施、点検パトロール等、工事事故・品質事故・災害を撲滅するために安全管理・施工管理を徹底し、また、工事着手にあたり入念な施工計画の立案等、安全な作業環境を整え施工を行っておりますが、万が一、重大な工事事故・品質事故・労働災害等が発生した場合、社会的信用を失うとともに、企業イメージを損ない、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
建設業においては、一つの取引における請負金額が大きく、多くの場合工事代金の支払いは分割であり、目的物の引渡し時及び引渡し後に多額の支払が行われる傾向があります。当社グループでは取引先の信用力と信用額の管理を行っておりますが、工事代金の受領前に取引先が信用不安に陥った場合は、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、営業活動上の必要性から不動産を保有しておりますが、事業の分散あるいはリスク管理の観点から、不動産の投資分野毎の投資上限を定めた投資計画をもとに取得を行っております。しかしながら、不動産には時価の変動リスクがあるとともに、一般的に流動性が高くないため売却時における需給関係によっては相場価格により売却できない場合があります。
棚卸不動産については当社グループが開発ノウハウを持つ分譲住宅を中心とした投資を行っておりますが、事業計画の進捗次第では予定している回収額に満たない場合や様々な要因により計画を中止せざるを得ない場合があります。また、固定資産については当社グループが開発・運営のノウハウを持つ賃貸マンションを中心とした投資を行っておりますが、賃貸条件や事業収支の悪化が生じる等、予定しているキャッシュ・フローが得られなくなる場合があります。これらの場合には評価損失・減損損失・売却損失等が発生し、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業拡大や収益基盤の強化を目的に企業買収等を実施することがありますが、実施にあたっては、その重要性に応じ第三者の専門家による対象企業並びに事業環境等の調査を客観的かつ詳細に行い、その調査報告も参考に決定しております。しかしながら、買収等の対象事業を当社グループの経営戦略に沿って統合できない場合や、既存事業及び買収等の対象事業について効率的な経営資源の活用を行うことができなかった場合、また、急激な市況変化が生じた場合には、当初想定していた効果が得られないことにより、のれんの減損の発生等、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業拡大や収益基盤の強化を目的に地方主要都市を中心とした事業エリアの拡大に取組んでおりますが、会社の経営資源の多くは首都圏・近畿圏・東海圏に集中しております。このため、将来、首都圏・近畿圏・東海圏並びにその周辺において、地震、暴風雨、洪水その他の天災、感染症、事故、火災、その他の人災等が発生し、工期の遅延、消費者の購買意欲の減退、所有資産の毀損等があった場合には、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
海外での事業活動では、社会慣行の違い、法令・規制の予期せぬ変更、経済・為替の変動、政治・軍事問題等に関するリスクが存在し、これらに関した問題が発生した場合には、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、事業活動実績の少ない地域における新規事業の判断は、第三者の専門家等による多面的な評価を参考に取組みの判断を行うなど、社内におけるリスクコントロールの向上にも努めております。
当社グループが業務を遂行するにあたり、役職員による不正行為、不適切な行為、事務処理のミス、労務管理上の問題等の各種オペレーショナルリスクの発生が考えられます。当社グループはリスク管理規程を定め、オペレーショナルリスクも含めた事業遂行に関わる様々なリスクについて管理し、それらのリスクに対応することによって、グループの経営方針の実現を阻害するリスク要因を可能な限り低減させ、コントロールするよう努めておりますが、上記のようなオペレーショナルリスクが発生した場合、社会的信用を失うとともに、企業イメージを損ない、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、住宅購入顧客並びに購入検討顧客や管理受託マンションの居住者等、多くの個人情報を保有しております。また、営業・購買情報等、多くのデータをコンピュータ管理しています。個人情報保護法に従って、個人情報の取扱いに関するルール(基本方針・規程・細則)を、マイナンバー(社会保障・税番号)制度への対応のため、マイナンバー関連規程(基本方針・規程)を設け、体制整備を行っております。また、個人情報以外の情報の取扱いについても、各部個別にセキュリティポリシー(基本方針・対策基準・実施手順)を順次整備する等、情報管理を徹底し万全を期しておりますが、コンピュータシステムのトラブルによる情報流出や犯罪行為等による情報漏洩が発生する可能性があります。その場合、社会的信用を失うとともに、企業イメージを損ない、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、借入や社債発行による資金調達を行っており、一部の借入については金利変動リスクに対応するために金利の固定化を実施しておりますが、金利等の市場環境の変化、あるいは当社に対する格付の引下げ等の信用力低下により資金調達コストが増加し、当社グループの業績及び財務内容に影響を与える可能性があります。
また、金融機関からの新規借入や社債発行にあたっては同様の条件により行えるという保証はなく、当社グループが金融機関から借入や社債発行による調達を適時に行えない場合には、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、事業上必要な資金調達について、主に金融機関との間で協調融資方式によるタームローン、及びコミットメントライン契約の借入契約を締結しております。これらの借入契約には、自己資本の維持と経常利益の確保の2項目に関して財務制限条項が付加されており、それに抵触した場合には、多数貸付人の意思結集に基づく請求により期限の利益を喪失する可能性があり、約定の返済期限より前に残元本及び利息等を返済する義務が発生する可能性があります。
当社グループは、市場性のある株式を保有しておりますが、株式市場が下落し、保有株式の価値が大幅に下落した場合には、当社グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
影響を限定的にするために、株式の保有残高について連結純資産に対して一定程度を目安とすることとしております。
(16)中期経営計画について
当社グループは、2021年3月期をスタートとする中期経営計画「HASEKO Next Stage Plan」(略称:NS計画)において、収益基盤強化のための成長戦略投資や株主還元の拡充を行うとともに、事業を通して社会課題の解決に取組むべくCSR経営の確立を目指すことを公表しております。
計画内容の策定にあたっては、取締役会にて事業の課題や方向性等について充分な検討を重ねてきましたが、当社グループの業績は、経済環境等様々な要因の影響を受ける可能性があるため、目標値を達成できるという保証はなく、計画している事業上、財務上の効果が得られない可能性があります。
また、当社グループは収益基盤強化のため賃貸マンションを中心とした保有・開発事業の拡大やサービス関連事業における事業エリアの拡大などグループ事業展開の強化も計画しておりますが、予期せぬ経済情勢の変化、あるいはマーケットの急激な変化等により、事業展開が予定通りに実行できず、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(17)気候変動リスク
脱炭素社会への移行リスクとしては、炭素税の導入や各種規制強化により建設原価が上昇し、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、物理的リスクとして、夏季平均気温の上昇に伴う建設現場の生産性低下や気象災害の頻発・激甚化に伴う建設工事の遅延が発生した場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかる気候変動に関するリスクも踏まえ、当社グループは、2021年12月に「長谷工グループ気候変動対応方針 ~HASEKO ZERO-Emission~」を制定し、同方針に従い、再生可能エネルギーの導入拡大、環境配慮型資材の活用促進、低炭素施工や脱炭素住宅に係る技術開発等により、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。また、機械化やIT活用による建設現場の作業効率化、気候の影響を受けにくい施工方法の研究等により、物理的リスクの影響緩和に取り組んでいます。加えて、施工中物件を含む関連物件・施設の被災に迅速に対応するための災害時BCP(事業継続計画)体制の高度化や災害に強いマンションづくりにも注力しております。
当連結会計年度における国内経済は、雇用・所得環境が改善する中で各種政策の効果もあり、景気の緩やかな回復が続きました。一方、世界的な金融引締めや中国経済の先行き懸念など下押し圧力がみられ、物価上昇、中東地域の情勢、金融資本市場の変動、さらには能登半島地震の影響についても留意していく必要があります。
2023年度のマンションの新規供給戸数は首都圏で2万6,798戸(前期比6.4%減)、近畿圏で1万5,788戸(同8.5%減)となりました。物価やマンション価格の上昇を背景に供給件数と戸数の絞り込みが進み、首都圏・近畿圏共に2年連続で前年度を下回りました。供給商品の内容をみると首都圏・近畿圏共に分譲単価・平均価格の上昇が継続しています。首都圏の分譲単価は1,151千円/㎡(同10.8%増)、平均価格は7,566万円(同9.5%増)と、3年度連続で過去最高値を更新しました。近畿圏では分譲単価は834千円/㎡(同7.6%増)、平均価格は4,935万円(同5.5%増)となり、分譲単価は3年度連続で過去最高値を更新しました。分譲単価・平均価格の上昇が継続するなか、首都圏の初月販売率は69.9%(同0.8ポイント減)となり、年度末の分譲中戸数は5,665戸(同9.2%増)と増加しましたが、2019年度(7,888戸)、2020年度(7,357戸)、2021年度(5,881戸)と比較し分譲中戸数は低水準で推移しています。近畿圏の初月販売率は73.5%(同2.6ポイント増)、年度末の分譲中戸数は2,758戸(同20.7%減)と減少し、販売は順調に推移しました。
このような中、中期経営計画「HASEKO Next Stage Plan(略称:NS計画)」の4年目となる当連結会計年度につきましては、資材・労務費の高騰等の影響を受け、完成工事総利益率は低下しましたが、サービス関連事業において各社が着実に利益を積み重ねた結果、連結経常利益は期初予想であった830億円を上回り、833億円となりました。
当連結会計年度における業績は、完成工事高の増加及び不動産の取扱量増加により売上高は1兆944億円(同6.5%増)、完成工事総利益率の低下により営業利益は857億円(同4.9%減)、経常利益は833億円(同5.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は560億円(同5.5%減)の増収減益となりました。営業利益率は7.8%(同0.9ポイント減)、経常利益率は7.6%(同1.0ポイント減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(単位:億円)
( )内は前期比増減額
(建設関連事業)
建築工事では、当社の土地情報収集力や商品企画力、施工品質や工期遵守に対する姿勢、効率的な生産体制等について事業主から評価を頂いている一方、受注時採算の悪化及び資材・労務費の高騰等により、当期の完成工事総利益率は低下いたしました。
当社における分譲マンション新築工事の受注は、首都圏で200戸以上の大規模物件15件を含む59件、近畿圏・東海圏で200戸以上の大規模物件8件を含む24件、合計で83件となりました。また、分譲マンション以外の工事として、賃貸住宅等13件を受注いたしました。
当社の完成工事につきましては、賃貸住宅等18件を含む計97件が竣工いたしました。
当セグメントにおいては、当社における完成工事高の増加により売上高は7,765億円(前期比4.0%増)、完成工事総利益率の低下により営業利益は578億円(同13.6%減)の増収減益となりました。
(不動産関連事業)
分譲マンションの新規引渡し及びその他の不動産取扱量が増加したことにより、当セグメントにおいては、売上高は1,282億円(前期比10.1%増)、営業利益は192億円(同0.8%増)の増収増益となりました。
大規模修繕工事・インテリアリフォームでは、売上高はほぼ横ばいで推移しましたが、粗利率の改善により増益となりました。
賃貸マンション運営管理・社宅管理代行では、新規受託の順調な推移や継続的な受託により、運営管理戸数は両事業合計191,162戸(前期末比5.5%増)となりました。
新築マンションの販売受託では、首都圏を中心に販売が好調に推移し引渡戸数は増加しました。
不動産流通仲介では、仲介の取扱件数・リノベーション事業の販売戸数ともに増加しました。
分譲マンション管理では、新規受託が堅調に推移し管理戸数は436,798戸(同2.1%増)となりました。
シニアサービスでは、新たに2つの有料老人ホームを開設したこと、有料老人ホーム・高齢者向け住宅の入居が進捗したことにより、稼働数は2,549戸(同7.9%増)となりました。
当セグメントにおいては、売上高は2,675億円(前期比14.7%増)、営業利益は192億円(同28.5%増)の増収増益となりました。
ハワイ州オアフ島において、商業施設の運営及び新規の戸建分譲事業の開発を進めております。
当セグメントにおいては、商業施設の開業初年度ということもあり、売上高は10億円(前期は売上高0億円)、営業損失は49億円(前期は営業損失29億円)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
a.受注実績
(注) 1 当連結企業集団では建設関連事業における建設工事等及び設計監理、サービス関連事業における大規模修繕・内装工事等及び海外関連事業における建設工事等以外の受注実績を把握することが困難であるため記載しておりません。
2 セグメント間の取引については相殺消去しております。
b.売上実績
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
c.建設関連事業の状況
売上実績
d.不動産関連事業の状況
(注) 数量及び稼働数は連結会計年度末現在で表示しております。
e.サービス関連事業の状況
(注) 数量及び稼働数は連結会計年度末現在で表示しております。
売上実績
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
建設工事等及び設計監理の状況
(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注高にその増減額を含んでおります。従って、当期売上高にもかかる増減額が含まれております。
2 次期繰越高の施工高は、支出金により手持高の施工高を推定したものであります。
3 当期施工高は(当期売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致します。
工事受注方法は、特命と競争に大別されます。
(注) 百分比は請負金額比であります。
(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
前事業年度 請負金額80億円以上の主なもの
当事業年度 請負金額100億円以上の主なもの
2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は次のとおりであります。
④ 手持高(2024年3月31日現在)
(注) 手持工事のうち請負金額100億円以上の主なものは、次のとおりであります。
(2) 財政状態
当連結会計年度末における連結総資産は、主に現金預金が増加したことにより、前連結会計年度末に比べ1,531億円増加し、1兆3,512億円となりました。
連結総負債は、借入金の調達等により、前連結会計年度末に比べ960億円増加し、8,400億円となりました。
連結純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益を計上し利益剰余金が増加したこと等から、前連結会計年度末に比べ572億円増加し、5,112億円となりました。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の37.9%に対し、37.8%となりました。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
(単位:億円)
( )内は前期末比
(建設関連事業)
建設関連事業において、当連結会計年度末における資産は、建設受注用地の売却が進捗したことに伴い販売用不動産が減少したこと等により前連結会計年度末に比べ72億円減少し、3,833億円となりました。
(不動産関連事業)
不動産関連事業において、当連結会計年度末における資産は、分譲マンションの仕入が順調に進捗し不動産事業支出金及び販売用不動産が増加したこと等により前連結会計年度末に比べ605億円増加し、4,845億円となりました。
(サービス関連事業)
サービス関連事業において、当連結会計年度末における資産は、預り金の増加に伴い現金預金が増加したこと等により前連結会計年度末に比べ417億円増加し、2,738億円となりました。
(海外関連事業)
海外関連事業において、当連結会計年度末における資産は、出資に伴う投資有価証券の増加等により前連結会計年度末に比べ181億円増加し、1,180億円となりました。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の519億円の支出超過と比較して1,669億円増加し、1,150億円の収入超過となりました。これは主に、売上債権の減少に伴う資金増加206億円(前連結会計年度は212億円の資金減少)によるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の554億円の支出超過と比較して156億円増加し、398億円の支出超過となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得に伴う資金減少242億円(前連結会計年度は354億円の資金減少)によるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の508億円の収入超過と比較して515億円減少し、8億円の支出超過となりました。これは主に、借入金・社債の調達及び返済に伴う資金増加235億円(前連結会計年度は797億円の資金増加)によるものであります。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末の2,083億円より752億円増加し、2,835億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローが前期比で大幅に増加しておりますが、その要因は、主に売上債権の減少に伴う資金増加によるものであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。
当社グループの資金需要のうち主なものは、建設事業にかかる運転資金、建築受注を目的とする短期的な不動産取得、分譲用不動産等の仕入れ、賃貸用不動産及び海外事業への投資などの支出であります。また、当社グループでは、2020年2月に策定した「中期経営計画(2021年3月期~2025年3月期)」において賃貸不動産の保有・開発事業、分譲事業及び海外事業への投資を中心に2,400億円の投資を計画しております。これらの資金需要に対して、事業活動から生じる利益及び借入金・社債により調達した資金を充当する方針であります。
当連結会計年度におきましては、期限の到来等により100億円の長期借入金の返済、200億円の社債の償還に加えて315億円のコミットメントラインの返済をしておりますが、普通社債の発行による200億円の調達及び650億円の長期借入金の調達を行っており、社債を含む借入金残高は235億円増加し4,150億円となりました。
また、当社は運転資金の安定的かつ機動的な調達を行うため取引金融機関とコミットメントライン契約を締結しております。当連結会計年度におきまして630億円の借入極度額を1,000億円に増額しており、現金預金とあわせて十分な流動性を確保しています。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値にその結果が反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は異なることがあります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当社の研究開発活動は、集合住宅におけるフローとストックの両分野に軸足を置き、長谷工版BIMをはじめとするデジタル技術を積極的に採用しながら、安全・安心、快適・健康、品質・性能、生産性向上等のテーマに取り組むとともに受注の拡大や利益の向上、及び、将来的な事業分野の拡大に寄与する研究・技術開発を目指しております。
活動にあたっては、研究・技術開発のスピードアップと採用促進を図るため、東京都多摩市の技術研究所を拠点としながら、大学・研究機関等との共同研究・開発を進めるとともに、当社技術推進部門・設計部門・建設部門・価値創生部門等社内各部門及び当社グループ各社との連携・強化に努めております。
活動内容としては、①生産技術開発、②商品開発、③気候変動対応、④そのために必要な基礎的な研究開発、以上の4つに重点を置きながら、特に工業化対応、木質化や省CO2材料等の環境対応、ストック改修対応など、社会環境や顧客ニーズの変化に即した集合住宅関連技術の開発・商品化に注力しております。
当連結会計年度における研究開発費は、
(建設関連事業)
建設技能労働者の高齢化と労働者不足、2024年問題の懸念に対し、中高層及び超高層の集合住宅等を対象に、生産性向上や品質向上を目的とした工業化・ICT活用等の技術開発を推進しております。特に、単純作業など、ロボット等に置き換えることが可能な作業について、機械化施工の検討を行っています。具体的には“集合住宅に特化した清掃ロボット”を開発しました。この清掃ロボットは、複数台を用いての実運用を見据えた現場実証を行い、他社へのリースも見据えた本格運用に向けて準備中です。また、気候変動に対応した脱炭素に関する技術開発にも注力しております。
生産技術開発分野として、業務及び生産プロセスの合理化に向けたBIMの導入・活用検討において、長谷工独自のBIMツールの開発や業務ワークフロー改善等による、設計・施工まで一貫した「長谷工版BIM」の環境整備を強力に推進しています。各種施工図の自動作成、根伐土量算出、コンクリート数量算出、仮設足場材自動拾いなどを実現しております。また、BIM連携による鉄筋、型枠加工図の効率化、各種製作図の効率化を行っております。
CO2の排出量を抑制する長谷工式環境配慮型コンクリートの「H-BAコンクリート」では、国土交通大臣による特別評価方法認定を取得することで住宅性能表示を適用するマンションをはじめ広く採用をしています。また、H-BAコンクリートの考え方は日本産業規格(JIS)に取り入れられ、先導する気候変動対応技術として位置づけられています。 東京では「ザ・ケンジントンレジデンス上池台」(東京都大田区、地上5階、42戸)、関西では「ルネ江坂 江の木町」(大阪府吹田市、地上11階、149戸)において主要構造部を含む全てのコンクリート(上池台は、基礎部分を除く)に採用しました。また、再生可能エネルギーに関しては、「サステナブランシェ本行徳」(千葉県市川市、地上5階、36戸)において、集合住宅の屋上部分のみならず壁面や手摺等に設置可能な太陽光発電システムの検証を行い、更に、水素を燃料とする純水素型燃料電池利用の実証実験を行ってまいります。
商品開発分野として、住宅としての基本的で本質的な性能確保といった根幹は踏襲しつつ、住まいを最適な空間に“Fit”させることが可能な「Be-Fit」を、「ルネ松戸みのり台」(千葉県松戸市、地上12階、173戸)、「ブランシエラ川崎大島」(川崎市川崎区、地上6階、104戸)の2物件に先行して導入いたします。
現在、「ドレッセタワー武蔵小杉」(川崎市中原区、地上23階、免振、160戸)、「(仮称)港区港南3丁目計画」(東京都港区、地上28階/地下1階、耐震、458戸)、「グランドメゾンThe池下ガーデンタワー」(名古屋市千種区、地上39階/地下1階、制振、200戸)、「シティタワー千住大橋」(東京都足立区、地上42階、制振、462戸)、他5物件を建設中であります。
また、2024年3月期は、「NAGOYA the TOWER」(名古屋市中村区、地上42階/地下1階、制振、435戸)、「エクセレント ザ タワー」(千葉市中央区、地上31階、制振、397戸)、「Brillia Tower 浜離宮」(東京都港区、地上32階/地下1階、免振、420戸)、「ローレルタワー堺筋本町」(大阪市中央区、地上44階/地下1階、制振、511戸)が竣工いたしました。
更なる技術のレベルアップとして、Fc150級プレキャスト部材や鋼繊維補強高強度コンクリートの活用研究、超高層に対応したパーティション等の各種外装部材の開発に取り組んでおります。
競争と連携のネットワークを構築するため、多様な研究機関、企業等の幅広い結集を図り、研究開発の共通基盤(プラットフォーム)の確立を目指している「建築研究開発コンソーシアム」などに継続参画し、物流・データセンター等の鉄骨構造関連技術の開発に取り組んでおります。
現在、「(仮称)羽村市緑ヶ丘物流施設」(東京都羽村市、地上4階)、「LOGIBASE柏」(物流施設、千葉県柏市、地上4階)等を建設中です。
また、2024年3月期は、「CBRE IM 千葉北Ⅳ」(物流施設、千葉市稲毛区、地上4階)等が竣工いたしました。
木造関連技術に関しては、当社研究施設「長谷工テクニカルセンター」の敷地内に建設した音響実験棟において、現在建設中の「(仮称)目黒区中央町一丁目計画」(東京都目黒区、地上7階、101戸、下層RC造+上層4階木造構造)で採用予定である木造の界壁・外壁の遮音性能試験、並びに、軸組床の衝撃音性能試験等を実施し、遮音性能を満足する仕様を開発しました。
これまで当社では、段ボール古紙や木くずにおける循環型マテリアルリサイクルシステムの構築、また、廃プラスチック類のサーマルリサイクルシステムの構築をしてまいりました。
当社作業所から発生した木質系廃棄物をバイオマス燃料として再利用し、発電施設で発電された再生可能エネルギーを作業所の仮設電力として使用する取り組みを進めております。今後も、更に環境に配慮した循環型社会の実現に向けた取り組みを推進してまいります。
「住まい情報と暮らし情報のプラットフォーム」(HASEKO BIM & LIM Cloud)の構築に向け、各種パートナー企業、大学や研究機関と連携し、顔認証システム、センサー、AIやロボットなどICT活用に本格的に取り組んでおります。2024年3月末までに新築賃貸マンション8物件、シニア施設2物件、リノベーション賃貸マンション1物件にICTを導入、稼働しております。加えて、既存分譲マンション「サウスオールシティ」(堺市西区、総戸数791戸、2009年竣工)における大規模修繕時のICT化を進めながら、同時に分譲マンションでははじめて居住者向けICT導入を行っております。ご入居者様のご利用状況・ご意見等を参考にしながら改善を図り、集合住宅の提供価値向上を継続検討いたします。その他、コンピューターOSの権威であられる東洋大学INIADの坂村学部長と共創した実験住戸の制作や、シニア施設に導入しているオリジナル健康増進アプリの有効性を東京大学との共同研究成果として学会発表するなど、外部機関・企業との協業も含め多岐にわたる取組みを行っております。
(サービス関連事業)
(1) 既築集合住宅を対象とした技術の開発
拡大する国内ストック市場における既築集合住宅向け「ストックビジネス」の技術基盤づくりを目指しております。共用部では「建物の延命化・耐震化の工法」、「居住者の負担を軽減できる工法」、「騒音・振動を低減する工法」の開発等、専有部では「住まいの機能の維持やグレードアップの提案」を進める等、継続的にストック・リフォーム分野における研究・技術開発を行っております。
また、今後増加が見込まれる大規模修繕工事適齢期超高層案件において、居住者の負担を軽減するため、工期を短縮する工法などの検討を進めております。
「グループIT投資戦略プロジェクト(名称:FITプロジェクト)」において、初期検討顧客層の新築マンション探しをサポートするサービス「マンションFit(フィット)」では、提案される物件のAIレコメンド機能の向上を行いました。この他、マンション管理における管理組合向けの新たな運営サービスの社会実証を開始したほか、マンション入居者向けに立地周辺のサービス事業者との連携を促すWebサービス実現のための開発と社会実証に取り組みました。
また、当社グループ内の各種システムやデータを横断的に連携・分析・外部連携するための「グループ情報連携基盤」について、機能拡張を含めた各種開発に取り組み、運用を開始しました。
この他、竣工後のマンション管理業務の効率化や大規模修繕時の作業効率化、生産性向上にも取り組んでおります。
なお、子会社においては、研究開発活動は行われておりません。
建設関連事業及びサービス関連事業以外の事業においては、研究開発活動は行われておりません。