(1) 当社の存在意義(Purpose)
当社は、「人と技術の創造的融合を繰り返し、技術革新とグローバル展開を通して、革新的な素材開発によるソリューションを提供することにより、社会的課題を解決し、世界を健康にする」ことを存在意義と定義しております。
今、自然環境にますます負荷がかかり、人間の行動が危険な気候変動や大量絶滅をもたらしかねません。そのリスクを減らすうえで、自然に対する理解を深め、適切なテクノロジーを一層迅速に配備する必要があります。この視座こそが「カガクでネガイをカナエル会社-カネカ」が目指すパーパス経営です。当社は、環境・エネルギー、食糧、健康(よりよく生きる)の危機の三つをドメインとしてテクノロジーに磨きをかけ、社会実装化による最適なソリューションを提供したいと考えています。
(2) パーパス経営を実現する3つのValue
当社は、カネカタワーとTransformationのトリプルPackageの2つの経営システムを、変革の根幹としています。
① カネカタワー 「当社の経営モデルの基本構造」-その視座と視点(大切にすること)-
● 当社の経営モデルの基本構造であり、当社の創業以来の持つ強み(DNA)を活かし、「事業構築力(内なる力)」と「市場開発力(外なるPower)」を進化させ、「現場力」がその実行を支え、常に時代の変化に応じて経営革新を自律的に行えるようにします。
● 自治機能を高める2つのWork Shop(変革と成長のトライアングル、カネカ1on1)を通して現場をInspireします。
② 経営システム TransformationのトリプルPackage
● 変革と成長を実現するための、ビジネス思考のプラットフォームです。経営のソフトウェアとハードウェアをドッキングすることにより、実効性を上げます。
● 時代認識/仕掛け/成果のトライアングルは、経営計画のなかで、どのように目標を設定し、技術革新を含めた達成のための仕掛けを整え、スケール・スピードを意識したうえで、いったい何を成果として位置付けるのか。経営計画の骨格そのものとなります。
(3) 経営方針
当社は、ESG経営を「世界を健康にする健康経営-Wellness First」と定義し、全ての活動のプラットフォーム(憲法)とします。当社の健康経営は人間賛歌の経営です。価値あるソリューションをグローバルに提供することを通じて世界の人々の人生と環境の進化に貢献し、存在感のある企業として成長し続けます。
① カガクでネガイをカナエル会社・カネカ
化学という「不思議の海」の冒険を通して、Dream をRealにし、人々の人生に役立つ会社になります。
② ソリューションプロバイダー
「経営システムTransformationのトリプルPackage」に基づいて、Sustainability(持続可能社会)の構築に貢献します。当社グループが提供するソリューションはP18~21に記載の通りです。
③ ハイブリッド経営
イノベーションとは「違ったやり方でコトを運ぶ新結合」のことです。異質なものどうしを、異質な事業領域で、新しく組み合わせることを当社は「ハイブリッド経営」と呼んでいます。当社が保有する多種多様な異種技術による驚きの組み合わせで、独創的な価値あるソリューションを創り出す「ハイブリッド経営」を通じて社会問題の解決に貢献してまいります。
④ 実験カンパニー
(大量に試していいものだけを残す)熱い「実験カンパニー」を行動指針とし、新陳代謝を繰り返しながら新しいポートフォリオに変革する「Value Creating Company」を目指します。
(4) 対処すべき課題
コロナ禍は期中に終焉しましたが、ウクライナ問題の長期化、中東での新たな紛争の勃発など地政学リスクが終息せず、景気の先行きが見通せない不安な状況が続きました。インフレに腐心する米欧の金融政策の混乱、米中摩擦、中国経済の低迷など、世界経済は方向感のないVolatileな一年になりました。
このように「分断とVolatility」に翻弄される不透明な時代をむかえていますが、当社のDNAである地域に根を張ったグローバル活動に磨きをかけ、「R2B“カネカならでは”」の研究開発戦略で新製品・新規事業の実装化を加速させてまいります。 技術に磨きをかけてポートフォリオを新しくし、業容を拡大します。
(5) 重点戦略
当社は、ハイブリッド経営による事業ポートフォリオの変革を急ぎます。多種多様な異種技術、ソリューションを組み合わせ、ユニークで価値ある新たなソリューションを創り出し、社会問題の解決に貢献していくことを目指しています。
投資の「選択と集中」を加速させ、“地球を健康にするライフサイエンス”領域を拡大させます。
マネのできないユニークな差別化技術開発に向けて、人、モノ、カネの戦略的な資源投入を行い、先端事業群の事業拡大を図ります。コア事業群も差別化力の強化と、供給力を強化する設備投資により事業基盤を強靭化します。
化学で「地球生命」という大きな「いのち」を健康にする、そのテクノロジーと創造的な活動が「ライフサイエンス」の定義です。カネカ生分解性バイオポリマーGreen Planet®、ゲノム編集技術、バイオ医薬品、再生・細胞医療、有機酪農乳製品事業、サプリメント、発酵培養プロセス技術などカネカの「バイオものづくり」やPV Technology、医療器は、すべて「地球生命」という大きな「いのち」に繋がっています。カネカは、ライフサイエンス領域での「R2B」に挑戦することで、ポートフォリオ変革をドライブします。
③ R2B [R to B(Research to Business)]戦略
● ResearchからBusinessへの流れの加速
当社はResearchとBusinessという二つの機能を結合させ、ユニークな製品やサービスを生み出し、社会に実装させ、スケールさせる「ハイブリッド経営」を通じて、社会に価値を届けてきました。研究開発とビジネスとの結合を進め、R&DからR&Bへと進化させたマインドをさらに、発展させます。“R&B(Research and Business)”から“R2B”へ、ResearchからBusinessへの流れを一層加速させます。
● ハイブリッド経営を支えるR2B+P(Research to Business + Production)
当社の研究開発は、社会実装までつながってこそ初めて完成すると考えます。ライフサイエンス領域における当社の強みであるバイオものづくり技術を強化すると同時に、全領域をまたいで生産技術革新を担う研究開発体制を大幅に強化しています。研究から生産、そしてビジネスに繋げるR2B+P体制を整えています。
● ハイブリッド経営を加速するR2B×DX(研究開発のデジタルトランスフォーメーション)
新たな価値創出を目指す全社のデジタル変革の戦略のもと、R2Bの変革に向けて、先端のシミュレーション・データ解析技術の取り込みとデジタルインフラ活用の日常化の両輪で進めています。
④ 人材戦略
● Human Driven Company(少数精鋭・能力成果主義 ⇒ 創業以来の理念)
当社では、1949年の創業以来、社員一人ひとりのタレントを活かすことが事業の成長に欠かせないという理念のもと、人材を育成し、実力に基づく配置・登用・処遇を行い、成長してきました。今、社員の属性・価値観が多様化し、個を活かす人材育成の重要性が増しています。
当社の成長をけん引しているのは、社員一人ひとりのチャレンジです。チャレンジできる環境を整え、機会を与え、成長を促進し、変革を実現する。「人材育成」「Diversityの推進」「Wellnessの推進」を人材戦略の柱に掲げ、取り組んでいます。
● 「カネカ1on1」を柱とした人材・リーダー育成
「人は仕事で成長し、会社は人で成長する」と考え、人材育成の柱として、「カネカ1on1」を目標設定や自己成長について評価を行う人事制度と紐づけて適用しています。さらなる深化に向けて対話の質を高める取り組みを続けています。(「カネカ1on1X」への進化)
● Diversityの推進(属性の差を超えて、個を活かす多様性へ)
異なるタレントを持つ、多彩な社員たちによって新たな価値を生み出せるカネカを目指し、Diversityを推進しています。
「年齢・性別・国籍・人種(属性)を問わず、多様な個性と多彩な視点から新たな発想が生まれ、カネカならでは!と世界を驚かせるユニークな価値を発信し続ける」当社がめざすDiversityの姿です。特に女性活躍を推進し成長と変革を牽引する女性リーダー層の育成強化に取り組んでいます。
「人は仕事で成長し、会社は人で成長する」の考えに基づき導入・定着させた「カネカ1on1」を、新たなステージ「カネカ1on1X」へ進化させ、個人の成長と組織の成果を高めます。
● Wellnessの推進(イキイキとチャレンジする社員や組織・グループの「絆」)
Wellnessの推進は、カネカグループで働く仲間一人ひとりが、元気にイキイキと仕事に取り組むことを基軸としています。
⑤ グローバル戦略 - Think Global, Act Local -
地域に根ざした事業展開を可能にするグローバルネットワーク
ユニークな技術と製品を世界の隅々にまで届け、人の命や社会課題を解決する企業を目指しています。地域に根ざした活動を推進していきます。海外事業は文化の移植です。化学に国境はなく、文化の違いを乗り越えた現地発信(グローカル)にフォーカスしていきます。ボーダレスに価値あるソリューションをタイムリーに世界の市場に提供し、グローバルに存在感ある企業を目指します。
モノづくり現場の実践から「未来」を創っていきます
● モノづくり現場はValue Center
技術力とイノベーションを生み出す「たくみ」の力とデジタル技術を融合させ、“カネカならでは”の未来の製造現場を作り上げます。
「安全と信頼の工場」をベースとして、モノづくり起点で事業の最大化とマネタイズに拘っていきます。
● 「新たな価値の創出」とサステナブルを体現する工場の実現
DXの取り組みの加速、最先端の技術を取り入れた生産プラントへ進化させ、新製品事業化のスピードとスケールを向上させていきます。カーボンニュートラルの実現に向けて、全社横断的な取り組みと各テーマの前倒しにチャレンジしています。当社のエネルギーソリューション技術により、自治体をはじめとする社会の脱炭素にも貢献していきます。
● モノづくりと「R2B+P」のIntegration
「R2B」とモノづくりが一体となった取り組みを強化し、「たくみ」というCreativityをルーティーンという「しくみ」にスケール化させ、新規技術を競争力ある形でスピーディーに社会実装していきます。
● カーボンニュートラル
当社グループは、国内外グループ会社を含めたScope1・2を対象とし、2030年にGHG排出量の30%削減(対2013年度比)、2050年度にはカーボンニュートラルの実現を目指しています。
Scope1は、石炭ボイラーからガスタービンコージェネレーション設備への更新を決定しました。工場排熱の効率的回収による省エネの徹底、エネルギー多消費設備の革新を進めていきます。Scope2は、再生可能エネルギーや低CO2排出係数の電力活用を進めていきます。
● デジタルトランスフォーメーション(DX)
デジタル技術を駆使した生産革新、全社の業務系デジタルプラットフォームの高度化を通じたDXの実現により、新しい時代に合致した業務へ変革させていきます。
⑦ コーポレート・ガバナンスの充実
当社は、「人と、技術の創造的融合により未来を切り拓く価値を共創し、地球環境とゆたかな暮らしに貢献します。」という企業理念のもと、当社が持続的に成長し、中長期的な企業価値を向上させ、株主および投資家、お客様、地域社会、取引先、社員などの全てのステークホルダーと信頼でつながる関係を築きます。企業としての社会的責任を果たすため、最良のコーポレート・ガバナンスを実現します。当社は、当社の多角的かつグローバルな事業展開と、経営資源配分を持続させるために、コーポレート・ガバナンス機能を働かせることが非常に重要であると考え、それが当社の持続的な成長および中長期的な企業価値の向上に不可欠と考えています。その観点から、意思決定の透明性・公正性を確保するとともに、迅速・果断な意思決定により経営の活力を増大させるためにコーポレート・ガバナンスを充実させます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
技術革新とDXが社会のパラダイムシフトを加速させています。カーボンニュートラルな脱炭素社会を目指す世界的な動きが活発になってきました。当社は、この社会の潮流を構造化し、「地球環境・エネルギーの危機」、「食の危機」、「健康(豊かに生きる)の危機」の3つをサステナブルな危機と考え、当社の重点事業領域として定め、事業ポートフォリオを変革していきます。地球環境を守り、サステナブルな人間性回復に貢献します。「命を育む社会を支える」健康経営 =“Wellness First”を進めていきます。
- 基本的な考え方 -
当社グループは、2018年にESG経営への進化に取り組むべく「ESG憲章」を制定しました。「ESG憲章」は、企業理念を実現するための一人ひとりの行動指針であり、また化学を軸に価値あるソリューションをグローバルに提供することを目的としています。
- 推進体制 -
2022年4月1日付で、ESG経営を統括・強化するため、ESG関連組織を再編し、Task Force 「Sustainability(SX)本部」を立ち上げ、大きく推進体制を変更しました。同本部のなかに、8つのReal(実装)組織を設けて、全社関係部署を横断的に統括し、ESG、SDGsの推進を図ります。地球環境を守り、人間性の回復に貢献し、「命を育む社会を支える」健康経営、ESG経営の強化に取り組んでいます。
リスク管理に関する基本方針に基づき、「危機」に対応するための基本的な体制・役割、危機の事例・ランクなどを明確にした「危機管理規程」を定めています。当社グループが受ける悪影響を可能な限り回避・低減して企業活動を維持することによって、社会的責任を継続的に果たしていきます。
上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりです。
・気候変動
・人的資本
それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。
当社グループは「人と、技術の創造的融合により未来を切り拓く価値を共創し、地球環境とゆたかな暮らしに貢献します。」という企業理念のもと、製品・サービスを通じて気候変動問題に対して価値あるソリューションをグローバルに提供するとともに、製造工程や物流工程で生じるさまざまな気候変動への影響に対し社会的責任を果たしていきます。そのような中、当社は2021年3月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明しました。
ESG経営を統括・強化するため、2022年4月1日付で、ESG関連組織を再編し、取締役副社長を本部長とするTask Force「Sustainability(SX)本部」を新たに設けました。カーボンニュートラルに係る生産戦略は、その傘下にある「DX・CN Committee」がその推進を担います。
DX・CN Committeeは、事業部、スタッフ部門、工場、研究所、グループ会社と連携しながら、モノづくり領域のDXとカーボンニュートラルを一体とした取り組みを加速させることでカーボンニュートラルを推進していきます。DX・CN Committeeでの活動は3か月に1回、Task Force「Sustainability(SX)本部」へ報告され、今後の活動方針が審議・決定され、戦略、主要な行動計画、事業計画などへ反映されます。その結果については、代表取締役に報告されます。
気候変動に関する事業上のリスクと機会を評価し、戦略・指標・目標を策定するために、2021年度に1.5℃シナリオと4℃シナリオにおける事業影響の策定と影響度の分析を実施しました。2022年度にもシナリオ分析を行い、移行のリスクと機会を抽出しました。本年度は、分析の結果、2030年度の当社にとって特に重大と判断した項目に物理リスクを加え、下表の通り、影響を具体化し、対応策を整理しました。
- リスク管理 -
気候変動に関するリスクは、信頼の生産力センター品質・地球環境センターが、掌理しています。気候変動に関するリスクやその予防策の策定では、事業部門・生産部門・研究部門と協議の上、信頼の生産力センター品質・地球環境センターからTask Force「Sustainability(SX)本部」へ提案・審議され、各部門と協業しながら対処していきます。
当社グループは2050年までにカーボンニュートラルを実現します。そのマイルストーンとして、国内外グループ会社を含めたScope1・2を対象とし、2030年にGHG排出量30%削減(対2013年度比)を目標として設定しました。
2022年度の当社グループのScope1とScope2のGHG排出量合計は、1,363.9千トンCO₂e(2013年度比88.3%)でした。
なお、以下では、指標及び目標に対する2022年度実績値を示します。2023年度実績データについては、2024年度に当社ウェブサイトにて公表予定の「データ集2024」を参照ください。
■GHG排出量(※1)・エネルギー起源CO₂排出原単位指数(※2)
※1 GHG排出量:
GHGプロトコルに沿った方法で算定されたエネルギー起源CO₂排出量、非エネルギー起源CO₂排出量、メタンと一酸化二窒素のCO₂換算排出量の合計値。
※2 CO₂排出原単位指数:
エネルギー起源CO₂排出量を活動量で除して求めたエネルギー起源CO₂排出原単位について、2013年度を100として指数化した数値。
② 人的資本
当社の成長をけん引しているのは、社員一人ひとりのチャレンジです。チャレンジできる環境を整え、機会を与え、成長を促進し、変革を実現する。これが Human Driven Company、当社の人材戦略です。
当社の人材戦略の3本柱は、ⅰ.カネカ1on1を柱とした人材・リーダー育成、ⅱ.ダイバーシティの推進、
ⅲ.Wellnessの推進です。
ⅰ.カネカ1on1を柱とした人材・リーダー育成
<カネカ1on1>
人の成長を通して企業価値を高め、会社の成長をドライブさせるため、経営システムの一環として「カネカ1on1」を実施しており、より質を高めるべく「カネカ1on1X」と名付け、取組みを次のステージへと進めております。引き続き、人との成長と仕事の達成の両方の実現に取り組んでいます。
<リーダー育成>
経営トップが主催する「一粒の種モミ塾」は2023年で第9期を迎えました。塾生は、ローテーションやチャレンジングなアサインメントを通じて、新たな経験値の獲得や異なる環境でのリーダーシップやマネジメント力を強化します。塾生から、役員、部門長といった経営層が誕生しています。また、女性幹部の参加も増やし、女性リーダーの育成も進めています。
<育成研修>
当社では育成研修として、「リーダー層の育成」、「カネカ1on1研修」、「語学教育(英語・中国語)」の3つに力を入れています。また、eラーニングを活用したベーシックスキル(論理的思考・会計など)、DX・IT教育、情報セキュリティ、コンプライアンス、ハラスメント防止や労務管理などの研修メニューも拡充しています。
ⅱ.ダイバーシティの推進 - 属性を超えて -
創業以来、社員一人ひとりのタレントを活かすことが事業の成長に欠かせないという理念のもとで取り組んでおります。今後も属性の差を越えて、個を活かす多様性を重視し、将来のビジネスや経営を担う人材を育成してまいります。
<幹部職の登用>
当社は「人の成長」を経営理念や労使の労働協約理念の根幹に据えております。学歴や勤続年数に関わらず、実力主義を貫いて幹部登用しています。
<シニア人材の活躍推進>
定年後の社員が年齢を問わず意欲高く仕事に取り組めるように、ジョブ型を取り入れた再雇用制度を設けています。これまで培ってきた経験やスキルをベースにして、自ら希望する仕事や働き方に応じて職務を選択する社内公募によるジョブマッチングを行い、定年後もイキイキと働ける再雇用制度を運用しています。
<障がい者雇用>
2023年度の障がい者雇用率は、2.7%となりました。今後も働きやすい環境整備と職域拡大に取り組み、雇用率を向上していきます。
<グローバル人材の育成>
グループ全体では、11,544名(2024年3月末時点)の社員のうち約3,300名の外国籍社員が全世界で業務に従事しています。海外拠点から日本への研修も実施しています。派遣された者は、日本での業務を通して、技術レベルの向上、人的ネットワークの向上に取り組んでいます。
<女性活躍推進>
当社は、女性活躍推進に特に力を入れており、女性社員を積極的に採用するとともに、行動計画を掲げ、幹部職登用や環境整備を進めています。
・幹部職層
行動計画の達成を目指して、仕事と生活の両立をサポートする制度の整備や、女性上位職者とのコミュニケーションや男性社員の育休取得促進の取り組みなど、制度と意識の両面から女性活躍を推進しています。
・採用
大学・高専の新卒採用において、女性の比率を年々高めており、2017年以降、女性の採用数は3割を超えて推移しています。2024年大卒事務系では女性の入社数が過半数となりました。
ⅲ.Wellnessの推進
イキイキとチャレンジをする上で、社員一人ひとりの心身の健康は欠かせません。「目指す健康像」を定め、社員と組織のWellness向上に取り組んでいます。「疾病・生活習慣病予防」「メンタルヘルス」「絆」の3つの視点で健康増進と健全な組織づくりを、Task Force「Sustainability(SX)本部」をトップとした全社的な推進体制で実現していきます。
<目指す健康像>
・働く組織:健全・自由闊達で、多様な個性、個人の能力が進化・最大限に発揮できるOne Teamな職場
・働く仲間:元気でイキイキとした生活を送り、仕事に取り組む仲間たち
女性活躍推進 行動計画(計画期間 2021年4月1日~2026年3月31日)
(1) リスクマネジメントの基本的な考え方
当社グループは、世界を健康にする「健康経営-Wellness First」を目指すに当たり、事業展開する上で想定されるリスクへの対応として、「リスク管理に関する基本方針」を定めています。
リスク管理については、各部門が、業務の遂行に際して、または関連して発生しそうなリスクを想定して適切な予防策を打ち、万一、リスクが発現した場合には、関連部門の支援を得ながら適切に対処することを基本としています。
潜在的リスク発現に対する予防策については、倫理・法令遵守に関するものも含め、「Compliance Committee」が全社の計画の立案・推進を統括します。
リスクが発現した場合、または発現するおそれが具体的に想定される場合には、適宜「Compliance Committee」が当該部門と協働して対処します。
以上のことが、的確に実施されているかどうかについて定期的に点検を行い、体制の形骸化を回避するとともに、実効性を維持・改善していきます。
(2) 事業等のリスク
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。
なお、ここに記載した事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループがリスクとして判断したものでありますが、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません。
① 当社事業の優位性の確保と国内外の経済環境の動向に係るリスク
当社グループは、自社開発技術に先端技術を外部から導入あるいは融合し、多岐にわたる分野で高付加価値製品を開発、商品化し、継続的に新規市場の開拓を行い、グローバルにネットワークを構築して安定供給することで、事業の優位性を確保すると同時に、事業構造改革を推し進め経営基盤の強化に取り組んでおります。しかしながら、経済活動の急激な変化、技術革新の急速な進展、自然災害や大規模感染症(パンデミック)が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 事業のグローバル化に伴うリスク(海外事業展開、為替変動)
当社グループは、これまで常に世界に視野を置き、他社に先駆けた事業展開を推進してきました。現在ではグローカル(現地発信の事業展開)に軸足を置き、世界各地の特性にあわせた技術開発、素材開発を加速させています。海外における事業活動には、予測不能な法律、規制、税制などの変更、移転価格税制による課税、急激な為替変動、テロ・戦争などによる社会的、政治的混乱などのリスクがあります。その発現を未然に防ぎまたは影響を軽減するために、グループ会社のガバナンス強化、専門家体制の整備、為替耐性強化策、損害保険の付保、従業員の安全対策等諸施策を講じておりますが、仮にこれらの事象が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 原燃料価格の変動に係るリスク
当社グループは、原燃料の調達について、グローバル購買、中長期契約とスポット市場での購入を組み合わせ最有利に行う体制を構築し運用しておりますが、その多くが国際市況商品であることから、想定外の相場変動が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 製造物責任・産業事故・大規模災害に係るリスク
当社グループは、お客様に提供する製品の品質、流通には万全の体制を構築して運用し、万一事故が発生した場合に備え、グループ全体を補償対象とする賠償責任保険を付保しております。また、安全をすべてにおいて優先し、法令順守の下、事業活動に取り組んでおりますが、想定外の事故や地震などの大規模自然災害により、主要な製造設備の損壊及びシステム障害に起因する事業の中断とそれに伴う機会損失が発生する可能性があります。これらのリスクに備えて、必要な保険を付保しておりますが、その補償範囲を超えた損失が発生するリスクがあります。このような状態が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 知的財産権の保護に係るリスク
当社グループは、研究開発の成果を特許などの知的財産として確実に権利化することにより、社会課題の解決に資するソリューションの早期提供を目指しています。一方、他社の知的財産に対しては、これを尊重し係争を未然に回避すべくテーマ提案・事業化・仕様変更などの事業開発の節目において必ず特許調査を実施し、パテントクリアランスの確保に万全を期しております。しかしながら、グローバル化や情報技術の進展などにより、当社グループが開発した技術ノウハウなどの漏洩、不正利用や使用許諾に関する係争等のリスクがあります。仮にこのような事態が発生した場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 環境関連規制の影響
当社グループは、「ESG憲章」に基づき、製品の全ライフサイクルにおいて、それぞれの段階で地球環境の保護に取り組み、資源の保全、環境負荷の低減により、社会の持続的発展と豊かな社会の実現を目指しています。2021年3月には、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、カーボンニュートラルの実現に向けて努力しております。一方、環境関連規制は年々強化される方向にあり、規制の内容によっては事業のサプライチェーンにおいて活動の制約など、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 訴訟などに係るリスク
当社グループは、コンプライアンス経営を重視し、法令及び社会的ルールの遵守の徹底を図っております。しかしながら、国内外において事業活動を行う過程で、予期せぬ訴訟、行政措置などを受けるリスクがあります。仮に重要な訴訟などが提起された場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 情報セキュリティに係るリスク
当社グループにとって、情報システムは、事業活動のあらゆる側面において、重要な役割を担っております。一方、サイバー攻撃、不正アクセス、災害等によるシステム障害、情報漏洩等の発生するリスクが高まっています。その対応策として、「情報管理基本方針」に基づき、経営層によるリスク管理体制を構築するとともに、外部専門家の知見を取り入れ、セキュリティシステムの強化、情報セキュリティの社員教育等を行うことで、リスク回避を図っております。しかしながら、想定外の事態が発生する場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑨ その他のリスク
当社グループは、中長期的な取引関係構築、維持及び強化等を目的に、取引先及び金融機関の株式を保有しております。これら株式の期末時の時価等が著しく下落した場合には、「金融商品に関する会計基準」の適用により、評価損を計上する可能性があります。
固定資産については、今後、事業環境の大幅な悪化や保有する遊休土地の時価が更に低下した場合等には、「固定資産の減損に係る会計基準」の適用により、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
棚卸資産については、将来の需要予測に基づく見込生産を行うため、その販売可能性には不確実性を伴い、経済条件の変動等により販売が困難と判断した場合には、評価損を計上する可能性があります。
退職給付債務については、数理計算上の基礎である割引率が著しく低下した場合や、年金資産の運用が著しく悪化した場合には、多額の積立不足が生じる可能性があります。
繰延税金資産については、将来減算一時差異に対して、将来の課税所得等に関する予測に基づいて回収可能性を検討し計上しておりますが、実際の課税所得等が予測と異なり、繰延税金資産の取崩しが必要となる可能性があります。
仮に以上のような事象が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
また、第1四半期連結会計期間は第1四半期、第2四半期連結会計期間は第2四半期、第3四半期連結会計期間は第3四半期、第4四半期連結会計期間は第4四半期、第1四半期及び第2四半期は上期、第3四半期及び第4四半期は下期と表示します。
当連結会計年度(2023年4月~2024年3月)の世界経済は、コロナ禍は期中に終焉しましたが、ウクライナ問題の長期化、中東での新たな紛争の勃発など地政学リスクが終息せず、景気の先行きが見通せない不安な状況が続きました。
インフレに腐心する米欧の金融政策の混乱、米中摩擦、中国経済の低迷など、世界経済は方向感のないVolatileな一年になりました。
日本はと言えば、「円安」が止まらない。
経済・金融政策が行き詰まりGDPは世界4位に落ち5位をうかがう。
国づくりの一大事に歯止めがかからない。
世界は国や地域ごとに分断し、景気及び成長のシンクロしたシナリオが予見できない。
このように「分断とVolatility」に翻弄される不透明な時代をむかえていますが、当社のDNAである地域に根を張ったグローバル活動に磨きをかけ、「R2B“カネカならでは”」の研究開発戦略で新製品・新規事業の実装化を加速させてまいります。
技術に磨きをかけてポートフォリオを新しくし、業容を拡大します。
何よりも人がすべてです。
このような状況のなか、当社グループの当連結会計年度の業績は、売上高762,302百万円(前連結会計年度(以下、前期)比0.9%増)、営業利益32,579百万円(前期比7.1%減)、経常利益29,222百万円(前期比9.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益23,220百万円(前期比0.9%増)となりました。
2024年3月期 連結業績 (単位:百万円)
セグメント別売上高・営業利益 (単位:百万円)
① 急ピッチな業績の回復
当連結会計年度の全社業績の特徴は、営業利益が第1四半期(56億円)を底に、第2四半期(70億円)、第3四半期(90億円)、第4四半期(110億円)と期を追うごとに回復の足取りを速めたことであります。
インフレの影響による欧米の建築需要の低迷やエレクトロニクス市場の在庫調整など重い負の力が残っているものの、下期に入って業績は急ピッチで収益回復に転じました。
ポストコロナの極めてVolatileな需要変動を主因に低迷した上期でしたが、下期には各SVの強いモメンタムが戻ってきました。
特に第4四半期は、Performance Polymers(MOD)・Performance Polymers(MS)・E & I TechnologyなどR2Bで成果を狙う海外事業型SVや他にはないユニークなニッチ技術を生かした開発戦略に舵を切っているSupplemental Nutrition・Foods & Agris (Nutrition SU)が貢献して、営業利益110億円を実現しました。
Medicalは順調に拡大し、Vinyls and Chlor-Alkali・Foam & Residential Techsも最悪期を脱しました。
② ポートフォリオ変革をドライブする先端事業
Medical・Supplemental Nutrition・Performance Polymers(MS)・E & I Technology・PV & Energy managementは、当社の差別力ある特異な技術やオープンイノベーションの取り組みが実を結び、業績は着実に伸長しました。
Medicalの業績は順調に拡大しました。医療技術の高度化が発展の原動力である事業であるため、医師からの高い信頼を得ている日本の事業モデルを武器に、M&A、技術提携などオープンイノベーションに積極的に取り組んでいます。米国・中国・アジアなど海外が次の一手でありR2Bの強化・販売体制の再構築に全力傾注しています。当社の成長をけん引する事業に育ててまいります。
Pharmaは需要調整が続き低調に推移しましたが、第4四半期は大幅に回復に転じました。バイオCDMO・低分子医薬において、顧客との共同開発活動が進み、モメンタムを取り戻しています。次期に向けて、国内外市場での更なる大型案件の獲得を積極的に進めています。
③ コア事業の健闘
ポストコロナ禍のVolatilityを原因に欧米亜市場の需要が急冷したPerformance Polymers(MOD)は、過剰な市場在庫・世界的な需給バランスの悪化の峠は越えました。当連結会計年度上期・下期の比較、当連結会計年度と前連結会計年度の下期比較では、いずれも大幅な増益を達成しています。
Performance Polymers(MOD)と同じく、技術の差別化力を強化してスケールあるグローバルニッチ市場を創出する活動に注力しているVinyls & Chlor-Alkali・Foam & Residential Techsも最悪期を脱出しました。汎用市場の需給が崩れ市況が悪化したVinyls & Chlor-Alkaliはショートバランスであったコロナ期の収益力には戻らないものの、安定した業績で推移しております。
Performance Fibersは、第1四半期に底を打ち回復をめざしていますが、アフリカ諸国のインフレ長期化・通貨安に伴い、第4四半期は一時的に需要調整が続く局面となっています。製品を高機能化しカネカロンならではの特徴ある繊維が提案できるR2B活動を鋭意進めています。また頭髪分野では、Domainを広げ、ナイジェリアを軸にしながらも、サブサハラアフリカや北中南米での販売を強化しています。
Foods & Agrisは、高付加価値品への販売シフトとスプレッドの拡大が更に進み、収益性が大幅に向上しました。引続き高水準の業績を維持していく計画です。Pure Natur乳製品、Q10ヨーグルト・グミ、有機A2牛乳、ブノワニアン・ベルギーチョコレートなどの新規事業は快走しておりFoods事業のポートフォリオ変革をリードしています。
④ 成長に向けた投資計画の進捗
Medicalは、北海道・苫東の血液浄化器新工場が2024年度第2四半期に稼働予定です。更に生分解性マグネシウムステント技術を持つ会社の買収や、血栓回収用ステントの輸入販売など、Open Innovationによるカテーテル製品のラインアップ拡充が進みました。
Pharmaのカネカユーロジェンテックでは、遺伝子治療やがん治療薬用で高成長が期待されるmRNA生産設備の建設が計画通り進んでいます。
Material系では、使い捨てプラスチックの廃棄を減らし地球環境を守ることをめざすカネカ生分解性バイオポリマー「Green Planet®」の量産実証プラントの建設が順調に進んでいます。
また、グローバルな需要増が見込まれる変成シリコーンポリマーのベルギーでの能力増強も計画通り完成する予定です。
高砂の石炭ボイラーを廃止する大型設備投資を決定しました。革新的プロセスを導入した自家発電設備の燃料転換を機に、一層の省エネに取り組み、2050年のカーボンニュートラルをめざします。
先端事業の成長を加速させる投資や、コア事業の基盤強化のための投資を積極的に進めてまいります。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(Material Solutions Unit)
当セグメントの売上高は322,902百万円と前期比10,952百万円(3.3%減)の減収となり、営業利益は27,495百万円と前期比45百万円(0.2%増)の増益となりました。欧米・アジアの景気低迷の影響を受け上期は減益となりましたが、下期は需給の回復により大幅な増益となりました。年間でも前年に並ぶ水準まで回復しました。
Vinyls and Chlor-Alkaliは、塩ビ・か性ソーダともにアジア市況の下落の影響を受けましたが、第3四半期から業績を回復させています。
Performance Polymersのモディファイヤーは、年間を通して需給調整が続きましたが、第3四半期から全拠点で需要が回復し下期は対前年で大幅な増益となりました。事業競争力強化の取り組みが着実に進み、収益力が向上しました。
変成シリコーンポリマーは、他にはないユニークな機能特性が評価され、販売が堅調に推移しました。今後は今春完工するベルギーの生産能力増強を最大限に活かし、業容拡大をめざします。
生分解性バイオポリマー「Green Planet®」は、大手ブランドホルダーとの共同開発が進み、新たなアプリケーションでの採用案件が増加しました。
(Quality of Life Solutions Unit)
当セグメントの売上高は176,182百万円と前期比3,415百万円(2.0%増)の増収となり、営業利益は15,361百万円と前期比769百万円(4.8%減)の減益となりました。Foam & Residential Techs、E & I Technology、PV & Energy managementで増収増益となり、Performance Fibersは需給調整が続きましたが、全体として増収減益となりました。
Foam & Residential Techsは、スプレッドが改善し、全体としては増収増益となりました。発泡ポリオレフィンは、自動車分野の販売が回復し、EV用途での採用も拡大しています。
PV & Energy managementは、国内で戸建て住宅向け高効率太陽電池の販売が堅調に推移しました。政府のGX推進や自治体の再エネ活用義務化の動きが拡大しており、当社製品への注目度は更に高まりました。壁・窓が発電するZEB需要を喚起するため、大成建設と共同販売会社を設立しました。
E & I Technologyは、スマートフォンの生産調整に伴い、上期はポリイミド出荷も影響を受けましたが、第3四半期以降は中国市場を中心に需要は回復しています。大型TV向けアクリル樹脂は一時的な需要調整があったものの、第4四半期以降は回復しています。
Performance Fibersは、アフリカ諸国のインフレ及び通貨安の影響が大きく需要が低迷しました。マーケティング戦略の強化や高機能新製品の投入を積極的に進め、末端需要の喚起に注力します。
(Health Care Solutions Unit)
当セグメントの売上高は74,856百万円と前期比4,069百万円(5.7%増)の増収となり、営業利益は12,941百万円と前期比2,740百万円(17.5%減)の減益となりました。Medicalは順調に業容が拡大し、Pharmaは第3四半期までの出荷調整の影響を受けましたが、全体として増収減益となりました。
Medicalは、北海道の血液浄化器の新工場が稼働予定です。引続き経営資源を積極的に投入してまいります。
Pharmaは、低分子及びバイオ医薬品の顧客での需要調整が想定以上に続きましたが、第4四半期以降需要は回復基調にあります。mRNAについては、生産体制を強化し、遺伝子疾患やがん治療薬用での採用に注力します。
(Nutrition Solutions Unit)
当セグメントの売上高は187,182百万円と前期比9,843百万円(5.6%増)の増収となり、営業利益は12,076百万円と前期比4,490百万円(59.2%増)の増益となりました。Foods & Agris・Supplemental Nutritionともに好調を維持し、大幅な増収増益となりました。
Supplemental Nutritionは、米国の還元型コエンザイムQ10の販売が堅調に推移しました。アジア・オセアニアでの販売が伸長しています。乳酸菌事業も着実に拡販が進んでいます。最大市場の米国での販売拡大が課題であり多様な新製品の上市や生産基盤の強化に注力します。
Foods & Agrisは、スプレッドの改善が進み収益が大幅に伸長しました。有機乳製品をはじめヨーグルトなど付加価値の高い「B2C」事業を積極的に推進し業容拡大をめざします。
(その他)
当セグメントの売上高は1,178百万円と前期比103百万円(9.7%増)の増収となり、営業利益は667百万円と前期比113百万円(20.4%増)の増益となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 生産金額は売価換算値で表示しております。
2 連結会社間の取引が複雑で、セグメント毎の生産高を正確に把握することが困難なため、概算値で表示しております。
主として見込み生産であります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は、設備投資の拡大による固定資産増加に加え、保有株式の時価上昇による投資有価証券の増加、円安による海外グループ会社の資産額増加等により、前連結会計年度末に比べて87,565百万円増加の870,205百万円となりました。
負債については、借入金の増加及び社債の発行等により前連結会計年度末に対して49,604百万円増加の395,822百万円となりました。
純資産については、利益剰余金の増加に加え、円安による為替換算調整勘定の増加、保有株式の時価上昇によるその他有価証券評価差額金の増加等により前連結会計年度末に対し37,960百万円増加の474,383百万円となり、自己資本比率は52.1%となりました。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費等により61,911百万円の収入となり、前期比で33,201百万円の収入増となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出により58,771百万円の支出となり、前期比で16,801百万円の支出増となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債発行による収入の一方、配当金の支払や自己株式の取得により1,519百万円の支出となり、前期比で13,871百万円の収入減となりました。
この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ2,579百万円増加し、43,278百万円となりました。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社は、付加価値のある新しい事業を生み出しポートフォリオの変革を実現することで成長を続ける研究開発型企業を目指しています。基盤事業により十分なキャッシュを確保し、新事業創出のための研究開発や設備投資資金に活用していくことを基本とし、更なる成長投資に必要な資金については、その目的・規模や金融環境に応じ最も適切な調達方法を採ることとしています。
資金需要に応じ有利かつ円滑な資金調達ができるよう信用格付の維持・向上や金融機関・資本市場との良好な関係維持に努めるとともに、緊急な資金需要に備え融資枠や社債発行登録枠の設定を含め十分な手元流動性を確保しています。また、資金調達の方法については、自己資本など財務の安全性を確保しながら、資本効率の向上につながる資本・負債構成を考慮し、社債や借入金のいわゆる負債による資金調達を実施しています。
株主還元については、毎期の業績、中長期の収益動向、投資計画、財務状況を総合的に勘案し、連結配当性向30%を目安に、自己株式の取得も状況に応じ機動的に実施し、安定的に継続することを基本方針としています。
(4) 重要な会計上の見積り及び当期見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
① 減損会計における将来キャッシュ・フロー
減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において用いられる将来キャッシュ・フローは、中期経営計画を基礎として、資産グループの現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮し見積っております。中期経営計画の見積期間を超える期間の将来キャッシュ・フローは、中期経営計画を基礎として、それまでの計画に基づく趨勢を踏まえた一定の仮定をおいて見積っております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において減損損失が発生する可能性があります。
② 棚卸資産の評価
棚卸資産は、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しており、正味売却価額が帳簿価額よりも下回っている場合は、帳簿価額を正味売却価額まで切り下げております。入庫日から1年超経過している棚卸資産については、需要予測等に基づく収益性の低下の事実を反映するように、個別に回収可能性を見積っております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する棚卸資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。
③ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、将来減算一時差異に対する将来の課税所得等に関する予測に基づいております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
④ 退職給付債務の算定
確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率等の計算基礎があります。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係) 2 確定給付制度 (9)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。
特記すべき重要な契約等はありません。
(1) 事業セグメント別の主な活動
当社グループの主な研究開発活動は以下のとおりです。
① Material Solutions Unit
素材の豊かさを引出し、生活と環境の進化に貢献できる機能性材料や、競争力を強化するプロセス開発に取り組んでおります。当連結会計年度では、植物油から微生物によって生産され海洋分解性などユニークな特徴を持つ「カネカ生分解性バイオポリマーGreen Planet®」において、世界の大手ブランドホルダーとの共同開発や様々なニーズに応える加工技術開発に注力しました。また、廃食油やCO2からの樹脂培養技術の研究を進めました。
② Quality of Life Solutions Unit
素材の力で生活価値の先端を創る製品の研究開発に取り組んでおります。当連結会計年度では、衝撃吸収や断熱性にすぐれる発泡樹脂、ワクチンを始めとする医薬品の定温輸送を実現するパッケージ、独特の風合いと難燃性にすぐれた繊維、5Gなど次世代情報通信を支えるポリイミドを中心とした高機能素材、住宅やビルのゼロエネルギー化(ZEH、ZEB)に貢献する太陽電池や車載用太陽電池などの製品開発に注力しました。
③ Health Care Solutions Unit
革新医療がより多くの患者に届けられる世界を創るために高齢化社会、医療の高度化に貢献する製品の研究開発に取り組んでいます。当連結会計年度では、発酵、精密合成、ポリマー技術を健康分野に適用し、低分子医薬品、新規バイオ医薬品、血液浄化機器、脳・心臓・消化器等の治療用医療機器、新型コロナウイルス検査キットなどの開発を進めました。
④ Nutrition Solutions Unit
食の多様化に貢献する新素材や機能性食品など食と健康、食料生産に革新をもたらす技術開発に取り組んでいます。当連結会計年度では、高品質でおいしい乳製品や還元型コエンザイムQ10の機能性表示食品への展開や機能性乳酸菌の市場開発を進めました。また、当社独自の技術と日本たばこ産業株式会社から取得した植物バイオテクノロジーとの融合を進め、食糧危機に対する食糧生産ソリューションの開発に注力しました。
(2) 研究開発費
当連結会計年度における研究開発費は、総額で