当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、一般炭を中心に日本の経済発展に不可欠な石炭を安定的に供給することを主たる事業目的としつつ、カーボンニュートラル(脱炭素化)の進展によるエネルギー需給構造の変化等、国際的な環境変化に適合した新たなビジネスモデルの構築、推進に注力している過程にあります。
現時点においては、当該経営戦略を前提とする中期経営計画の策定、公表には至っていない状況にありますが、持続的成長と中長期的な株主価値の向上のためには「成長戦略の強化」、「財務・資本戦略の強化」及び「積極的なIR活動の実施」が必須と考え、まずは翌事業年度の経営において実践することで、ROE8%以上、PBR1倍超を維持してまいります。
今後の見通しといたしましては、景気や個人消費は緩やかに回復していますが、一方でロシアや中東地域の情勢等、十分留意する必要があり、依然として先行き不透明な状況が続くと見込まれます。
このような状況下、当社グループ各事業の次期連結業績見通しに係る収益向上に向けた取り組みは次のとおりです。
石炭事業部門については、カーボンニュートラル(脱炭素化)に向けた国内外の政策による影響を踏まえて、既存顧客のニーズに対応しつつ、再生可能エネルギーであるバイオマス等を取り扱う物流基地としての機能向上にも取り組んで参ります。
新素材事業部門については、通信、省エネ関連部材の製造工程に不可欠な研磨材の需要が拡大しており、このような状況下、特に化合物半導体関連企業との関係を強化し、当該需要を取り込みます。
採石事業部門については、今後のプロジェクト工事を含む公共事業からの需要に対応すべく、生産現場の効率化を推進します。
当社グループといたしましては、持株会社体制の確立により上記取り組みによる収益力の改善を推し進めるとともに、強固な経営基盤を構築し、企業価値の向上を図ってまいる所存です。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
当社グループは、気候変動など地球環境保護への高まりを受け、サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)が重要な経営課題であると認識し、当社グループの企業価値の向上及び社会の持続的な成長への取り組みを加速させるため、以下のサステナビリティ基本方針を策定し、当該方針及び施策等を推進させるべくサステナビリティ委員会を新たに設置しました。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ基本方針
住石ホールディングスグループは、すべてのステークホルダーとの協働による価値創造により企業価値向上に取り組み、職場環境整備及び地球環境保護への配慮、人材の多様性確保等を推進することにより社会の持続的成長に貢献してまいります。
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(2)重要課題(マテリアリティ)
基本方針 |
重要課題(マテリアリティ) |
関連するSDGs |
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全てのステークホルダーのために |
〇法令・社会規範の遵守と監督 〇公平・公正な取引の実行と監督 〇従業員の公正な処遇 〇適時適切な情報の開示 |
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環境整備・保護のために |
〇各事業部の製造加工現場における 安全が最優先事項 〇全ての職場環境の整備・充実 〇CO2排出量削減への取り組み |
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人材の多様性確保のために |
〇人権の尊重 〇多様な価値観の尊重 〇多様性な価値観を発揮できる人材 育成及び環境整備方針の策定・実践 |
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(3)サステナビリティ推進体制
当社グループは、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置いたしました。原則四半期に一度開催し、サステナビリティに関連する事項の対応を推進してまいります。
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(4)気候変動(TCFD)への取り組み
当社グループは、2023年3月1日にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同することを表明
いたしました。
今後もTCFDのフレームワークに基づく情報開示を充実させるとともに、持続可能な社会の実現に貢献してまいり
ます。
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(5)人的資本・多様性への取り組み
1.人材戦略に関する基本方針と具体的な施策 当社グループでは、多様性と自主性を備えた個人が当社グループの成長の源と考えており、社員の成長が当社グループの成長につながる以下の施策を推進しています。
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2.人材戦略に関する指標と目標
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有価証券報告書に記載した当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスク及び変動要因と、その他投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。
なお、気候変動(TCFD)に係るリスクについては、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (4)気候変動(TCFD)への取り組み」に記載しております。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 信用リスク
当社グループでは、多様な商品取引活動により国内外の取引先に対して発生する種々の信用リスクに対して、各事業部門において、信用リスクを定量・定性面から管理・評価し、与信限度・債権状況を定期的にモニタリングするとともに、各事業部門より独立した部署が回収状況及び滞留債権状況を定期的にレビューし、回収可能性の検討を行い必要な処理を行っております。
(2) 金利変動リスク
当社グループでは、資金調達を主に銀行借入により行っており、借入金残高は減少しておりますが、金利変動リスクがあります。金利上昇によるコストの増加を事業活動において吸収できない場合は、経営成績に影響を与える場合があります。
(3) 海外投資リスク
当社の連結子会社である住石マテリアルズ株式会社は豪州ワンボ社(Wambo Coal Pty Ltd)のBクラス株式を保有しております。同社を運営している米国のピーボディ社等の業務状況等は、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
(4) 資産価値
当社グループが保有している固定資産は、時価や収益価値をもとに資産価値を検討していますが、今後時価の下落、収益性の低下、保有方針の変更に伴い資産価値が下落した場合、その結果が当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 海外情勢リスク
当社の連結子会社である住石貿易株式会社の石炭事業部門は、原油及び天然ガス等の国際的な資源市況の動向や、主たる仕入先の豪州、インドネシア等の政治経済環境の大幅な変化或いは法律改正等の予期せぬ事象により、業績に影響を受ける可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症における行動制限の緩和により、景気や個人消費は緩やかに回復していますが、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や、世界的な金融引締めに伴う影響など依然として先行き不透明な状況となっております。
当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の事業につきましては、主力である石炭事業部門において前連結会計年度に発生した石炭市況の高騰は、当連結会計年度に入り、エネルギー需要が緩み、軟化傾向が続きました。
a.財政状態
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、売上債権や商品及び製品等が減少したものの、現金及び預金や投資有価証券等が増加したことから、前連結会計年度末に比べて4,994百万円増加し、31,137百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、仕入債務やその他の流動負債等の増加があったものの、短期借入金の減少等により、前連結会計年度末に比べて1,635百万円減少し、4,148百万円となりました。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、自己株式の取得による減少があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等による利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べて6,629百万円増加し、26,989百万円となり、自己資本比率は86.7%となりました。
b.経営成績
当連結会計年度における経営成績は、売上高22,599百万円(前期比43.4%減)、経常利益8,106百万円(前期比117.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益7,530百万円(前期比105.4%増)と減収増益となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
石炭事業部門では、当連結会計年度は、エネルギー需要の緩みにより石炭市況の軟化が見られましたが、石炭取引数量は堅調に推移(前期比9.3%増)し、また、出資先の豪州ワンボ社からの受取配当金が増加したこと等から、売上高は21,799百万円(前期比44.4%減)、セグメント利益は8,679百万円(前期比113.4%増)と減収増益となりました。
新素材事業部門では、当連結会計年度は、化合物半導体、自動車部品向け研磨材販売は順調に推移しましたが、スマートフォン、HDD向け研磨材販売が大幅に落ち込み、売上高は275百万円(前期比10.8%減)、セグメント利益は44百万円(前期比41.0%減)と減収減益となりました。
採石事業部門では、当連結会計年度は、風力発電工事への出荷が好調に推移し、生産及び販売が順調であったため、売上高は525百万円(前期比40.7%増)、セグメント利益は94百万円(前期比200.0%増)と増収増益となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ14,780百万円増加し、18,717百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、持分法投資損益77百万円や退職給付に係る負債12百万円の減少等による支出があったものの、税金等調整前当期純利益7,682百万円の計上や棚卸資産7,343百万円の減少等により、18,778百万円の収入(前期は53百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出10百万円や有形固定資産の除却による支出7百万円等により、11百万円の支出(前期は22百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の減少2,857百万円や自己株式の取得による支出680百万円の支出等により、3,983百万円の支出(前期は504百万円の収入)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
新素材事業部門(百万円) |
101 |
4.7 |
採石事業部門(百万円) |
322 |
17.2 |
合計(百万円) |
423 |
14.0 |
(注)金額は販売原価であり、セグメント間取引については相殺消去しております。
(2) 受注実績
該当事項はありません。
(3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
石炭事業部門(百万円) |
21,799 |
△44.4 |
新素材事業部門(百万円) |
275 |
△10.8 |
採石事業部門(百万円) |
525 |
40.7 |
合計(百万円) |
22,599 |
△43.4 |
(注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。なお、Wambo Coal Pty Ltdについては、前連結会計年度の当該割合が100分の10未満であるため、また、王子グリーンリソース株式会社については、当連結会計年度の当該割合が100分の10未満であるため、それぞれ記載を省略しております。
3.Wambo Coal PTY Ltdの販売実績は受取配当金によるものであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
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金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
Wambo Coal Pty Ltd |
- |
- |
8,182 |
36.2 |
水島エネルギーセンター株式会社 |
11,391 |
28.6 |
5,405 |
23.9 |
王子グリーンリソース株式会社 |
9,527 |
23.9 |
- |
- |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に係る会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 及び 重要な会計上の見積り」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1.当社グループの当連結会計年度の経営成績等
(1) 売上高
当連結会計年度の連結売上高は、主力である石炭事業部門において前連結会計年度に発生した石炭市況の高騰は、当連結会計年度に入り、エネルギー需要が緩み、軟化傾向が続きました。
当連結会計年度の連結売上高は、22,599百万円(前期比43.4%減)となりました。
(2) 営業利益
当連結会計年度の連結営業利益は、8,009百万円(前期比108.6%増)となりました。
(3) 経常利益
当連結会計年度の連結経常利益は、8,106百万円(前期比117.9%増)となりました。
(4) 親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、7,530百万円(前期比105.4%増)となりました。
(5) 自己資本比率及び自己資本利益率(ROE)
当連結会計年度の自己資本比率は、親会社株主に帰属する当期純利益計上等により86.7%(前連結会計年度は77.9%)となり、自己資本利益率(ROE)は31.8%(前連結会計年度は19.4%)となりました。
2.当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
3.当社グループの当連結会計年度の財政状態の分析
財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
4.資本の財源及び資金の流動性
運転資金並びに石炭中継基地等への投資については、手元資金等で対応しております。
また石炭市況の変動等により運転資金等の調達を実施いたしますが、営業活動による収益、豪州ワンボ社(Wambo Coal Pty Ltd)からの継続的な受取配当金等の営業キャッシュ・フローを財源に、引き続き有利子負債の圧縮を進めてまいります。
当連結会計年度末現在において重要な資本的支出の予定はありませんが、今後も財務体質の改善と強化を図ってまいります。
なお、キャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社は、2024年5月15日開催の取締役会において、持続的な成長と企業価値向上を目的として、株式会社麻生(以下「麻生」といいます。)との間で資本業務提携(以下「本資本業務提携」といいます。)を行うことを決議し、同日付で麻生との間で資本業務提携契約(以下「本契約」といいます。)を締結しました。
詳細は、『第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表(2 財務諸表等 (1) 財務諸表) 注記事項(重要な後発事象)』に記載のとおりであります。
当連結会計年度の新素材事業部門において支出した試験研究費の総額は
(衝撃圧縮ダイヤモンド合成法の応用研究)
衝撃圧縮(ショックコンパクション)法により製造される多結晶ダイヤモンドは、主に研磨用途として多方面にわたる分野で使用されており、より高研削用途としての要望が高まってきています。当社としましてはこの様な環境のなかで、製造方法の改良研究とともに、高研削ダイヤモンドの開発を進めてまいります。