第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、経営理念である「GROUP DNA」および「GROUP MISSION」、経営理念に基づき当社グループが重点的に取り組む課題である「GROUP MATERIALITY」を定め、これらのもと、企業としての成長と社会的な価値の創出に積極的に取り組んでおります。

 また、2024年4月にはグループ長期経営方針である「& INNOVATION 2030」を策定し、2030年度前後における当社グループの「ありたい姿」を「産業デベロッパーとして、社会の付加価値の創出に貢献」することと位置づけ、それを実現する事業戦略として、「三本の道」を通じた成長の実現と、財務戦略として、「成長・効率・還元」を三位一体で捉えた経営の推進に取り組んでおります。

 

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(2)経営環境、会社の長期経営方針及び対処すべき課題

 ①グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」の策定

 当社グループはこれまで、時代時代の社会課題を、価値創造を通じて解決してまいりました。2018年には長期経営方針「VISION 2025」を策定し、「持続可能な社会実現に向けた街づくり」、「不動産業のイノベーション」、「グローバルカンパニーへの進化」に取り組み、当社グループの業容はグローバル規模で拡大し、「VISION 2025」で目指した姿へ進化を遂げたと考えております。

 一方で、世界では今、大きなパラダイム転換が生じています。バブル以降の「失われた30年」にピリオドを打つべく、日経平均株価の最高値更新、マイナス金利解除、賃上げ実施など、日本経済も新たなステージに移行しつつあるといえます。このような新たな時代の価値創造を進めていくうえでは、自らを変革し、進化させていく必要があると考え、私たちは自らの存在意義を見つめ直し「経営理念」を再定義いたしました。

 そして、その理念に基づき、グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」を策定しました。この経営方針は、当社グループの2030年度前後の「ありたい姿」を妄想(DREAM)し、戦略を構想(VISION)することで、その実現(REALITY)を目指すものです。

 

 ②グループ長期経営方針の骨格

 当社グループは、2030年度前後における当社グループの「ありたい姿」を「産業デベロッパーとして、社会の付加価値の創出に貢献」することと位置付けています。

 当社グループの価値創造においては、「社会的価値の創出」と「経済的価値の創出」を車の両輪としており、社会的価値を創出することが、経済的価値の創出につながり、その創出した経済的価値により、更に大きな社会的価値の創出につなげてまいります。

 そして、それを実現する事業戦略として、「三本の道」を通じた成長の実現と、財務戦略として、「成長・効率・還元」を三位一体で捉えた経営の推進に取り組んでまいります。

 

(グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」の骨格)

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③事業戦略

事業戦略として、1.「コア事業の更なる成長」、2.不動産領域における「新たなアセットクラスへの展開」、

3.不動産領域を超えた「新事業領域の探索、事業機会獲得」の、「三本の道」を設定いたしました。コア事業およびその周辺領域での成長を進め、既存の不動産領域にとどまらず、新事業領域でのビジネス機会の獲得を目指すという両利きの経営を実践してまいります。

 

(事業戦略「三本の道」の全体像)

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(注)グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」の詳細については、下記をご参照ください。

   URL: https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/innovation2030/pdf/innovation2030.pdf

 

 ④財務戦略

 企業価値を最大化していくために、財務戦略においては、「成長・効率・還元」を三位一体で捉え、それらを

安定・継続的に維持向上させてまいります。具体的な取り組み方針については以下のとおりです。

 

(「成長・効率・還元」の維持向上のための取り組み)

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(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」において、2026年度および2030年度前後の定量目標を以下のとおり定めております。

 

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)ガバナンス

・サステナビリティ推進体制

  当社は、サステナビリティ課題への取り組みを推進するため、「ESG推進委員会」(委員長:社長執行役員)および下部組織である「ESG推進部会」(部会長:サステナビリティ推進本部長)を設置しています。ESG推進委員会では、サステナビリティ課題における理念整理および方針策定、各部門における活動の目的・目標・計画の調整、進捗状況の監督・評価の機能を担っています。取り組みの推進にあたっては、ESG推進部会において部門別の年度目標を設定し、進捗管理等を行っています。なお、気候変動をはじめとするリスクについては、国や地方公共団体、一般社団法人日本経済団体連合会、一般社団法人不動産協会などの多様なチャネルから国内外の動向・要請等の情報収集を行い、専門性の高いESG推進部会でリスクの特定を行い、ESG推進委員会でその影響を評価しています。また、重要なリスクについては、業務委員会およびリスクマネジメント委員会にて当社事業への影響や、本業を通じた課題解決について対応検討を行うこととしています。

 このような取り組みについては、定期的に取締役会に報告され、目標および進捗状況のモニタリングが実施されるほか、必要に応じて都度取締役会における検討を行っています。また、経営層の報酬を決定する項目として、サステナビリティ課題に関する取り組みの状況が加味されています。

 

当社グループのサステナビリティ推進組織体制(2024年4月1日現在)

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※三井ホーム株式会社、三井不動産ファシリティーズ株式会社、三井不動産商業マネジメント株式会社、株式会社三井不動産ホテルマネジメント、東京ミッドタウンマネジメント株式会社では、グループ環境方針のもと、独自の環境方針を定めて環境活動を推進しています。また、個社独自の社会・環境報告も行っています。

 

(2)戦略

 三井不動産グループでは、新たな時代の価値創造を進めていくうえでは、自らを変革し、進化させていく必要があると考え、自らの存在意義を見つめ直し「経営理念」を再定義しました。当社グループの新たな「経営理念」として、私たちに受け継がれている精神「GROUP DNA」と、 私たちが果たしたい使命「GROUP MISSION」を掲げ、当社グループが重点的に取り組む課題、「GROUP MATERIALITY」を下記のとおり策定しました。

1.産業競争力 への貢献

2.環境との共生

3.健やか・活力

4.安全・安心

5.ダイバーシティ&インクルージョン

6.コンプライアンス・ ガバナンス

上記を踏まえ、2030年度までのグループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」では、サステナビリティ分野において、「人材」、「ESG」を、戦略を支えるインフラとして位置付けております。これは、価値創造の源泉は人材であると考え、人材力の底上げ、イノベーションを加速させる新たな人材・知見の獲得、多様な人材の活躍を支えグループの力を結集させる組織への深化などの人的資本に関する取り組みをさらに進めていくことや、持続可能な社会への貢献を積極的に進める「サステナビリティ経営」をより一層推進していこうといった意思の表れです。

・環境

 気候変動への対応は、社会基盤の構築・発展を担う当社グループの社会的責務であり、脱炭素に向けた取り組みを当社グループの最重要課題と位置付けています。当社は企業等に対して気候変動リスクと機会に関する情報開示を推奨する気候関連財務情報開示タスクフォースである「TCFD」の提言に賛同し、それに基づく情報開示をしております。また、事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的なイニシアティブ「RE100」に加盟し、取り組みを推進しています。2021年11月には、温室効果ガス削減目標を、2030年度までに40%削減(2019年度比)、2050年までにネットゼロとする新たな目標を設定し、国際的枠組みである「パリ協定」達成のために科学的根拠に基づいた削減目標を設定することを推奨する「SBT(Science Based Target)イニシアティブ」より、世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて1.5℃未満に抑えるという「1.5℃」目標としての認定を取得しました。また単に目標を掲げるだけでなく、不動産業界のリーダーとして求められるアクションプランとして「脱炭素社会実現に向けたグループ行動計画」を策定しサプライチェーンと一体となって、脱炭素社会実現に向けた取り組みを進めております。

 行動計画では、保有・運用物件の環境性能の向上や共用部の電力グリーン化だけでなく再生可能エネルギーの安定確保に向けた施策や、入居企業の要望に応じて専有部にグリーン電力を供給するサービスなどを行っております。これは、お客様の脱炭素に向けた取り組みにお応えするとともに、当社事業の差別化を実現する取り組みであり、まさに“脱炭素の実現”という社会的価値と“企業の競争優位性の確保”という経済的価値を結び付けた事業展開と言えます。また2022年3月には、学識経験者、設計者と協働し、「建設時GHG排出量算出マニュアル」を策定しました。2023年秋からはマニュアルを着工物件に適用し、業界全体に貢献する取り組みを推進しております。

 また、気候変動の課題のみならず、生物多様性や水環境の保全、環境汚染の防止および省資源・廃棄物削減といった環境に関する諸課題に対しても、オフィス・商業・住宅などあらゆる事業領域で積極的に対応しています。

 

・人的資本

 気候変動への対応と同様に「ダイバーシティ&インクルージョン」についても当社グループの最重要課題と位置付けています。当社は2021年にダイバーシティ&インクルージョン推進宣言および取組方針を策定し、D&Iのなかでも、特に女性活躍推進を重要テーマと位置付け、グループとして定量目標および定性的な活動計画を定め、グループ一体となって推進しています。人種・国籍・宗教・性別・年齢・障がいの有無・性自認・性的指向などに関わらず多様な人材が公正に評価され、従業者一人ひとりがお互いを認め合い、個々の能力を最大限発揮できる職場環境にするために、働き方改革の推進や人事制度の充実等により、組織の生産性向上や従業者のワークライフバランスの支援に努めています。

 人材育成については、「個々人がプロフェッショナルな知識・能力を磨き、付加価値となる創造力を高める」、「多様な価値観・能力が融合し、チームとしての実行力に変えていく」という2点を実現させるために、社員一人ひとりと向き合い、その活躍の舞台を整えることが、当社における人材マネジメントの考え方です。高度な専門性と幅広い視野を持つ社員がそれぞれの個性を発揮する、多様な人材の集合体となるために、キャリアに応じた「4つの人材育成の機会(①OJT、②本人と人事部による年1回の面談、③ジョブローテーション、④研修プログラム)」の組み合わせによって、一人ひとりの能力伸長を図ることを人材育成の基本方針としています。

 

・社会-サプライチェーンの人権

 当社グループが街づくりを通して人々にビジネスライフやくらしを提供していくうえでは、一人ひとりの人権を尊重することが何より大切です。当社グループは、「三井不動産グループ人権方針」を策定し、人権への取り組みを推進しています。本方針は社内ポータルへの掲載や研修等によりグループ内の周知徹底を図ると同時に、本方針に基づく「サステナブル調達基準」を定め、サプライチェーンに向けた「人権デューデリジェンス」を推進しています。2022年2月には人権デューデリジェンスの実施に向け「サステナブル調達基準」を改訂し、発注に携わる当社グループと取引先の双方が遵守すべき事項、または積極的に推進すべき事項として、1.法令等の遵守、2.事業活動における人権尊重、3.労働に係る人権尊重、4.安全で健康的な労働環境、5.企業倫理の確立、6.品質の確保、7.環境への配慮、8.情報セキュリティ、9.危機管理・事業継続計画における基本指針を盛り込みました。国連が提唱する「ビジネスと人権に関する指導原則」や「労働における基本的原則および権利に関するILO(国際労働機関)宣言」で定められた基本的権利を支持・尊重することはもとより、人権に配慮した事業の推進を徹底してまいります。2023年度は当社事業に関連するサプライチェーンとしてゼネコン・工務店94社にアンケートを実施したほか、2022年5月よりJP-MIRAIが開始した「外国人労働者相談・救済パイロット事業」に参画するなど、サプライチェーンマネジメントおよび人権デューデリジェンスに関する取り組みを強化しています。

 

(3)リスク管理

 ・リスクマネジメント体制

 「経営会議」が当社グループのリスクマネジメント全体を統括し、そのもとで「業務委員会」が事業リスクを、「リスクマネジメント委員会」が業務リスクを、それぞれマネジメントしています。法務・コンプライアンス管掌役員である取締役が、リスクマネジメント委員会に所属しており、また経営企画管掌役員である取締役が、業務委員会に所属しており、それぞれの取締役が定期的に取締役会および社長にリスク管理について報告しています。

 また、上記のリスクマネジメント体制を取締役会が監督しています。

 

・気候関連課題への対処

 当社グループは、企業等に対して気候変動関連リスクと機会に関する情報開示を推奨する気候関連財務情報開示タスクフォース「TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言に賛同し、気候変動に伴う異常気象による被害など、自社グループの事業活動へのリスクや、人やその他の生物が生息できる環境を守り持続可能な脱炭素社会を形成していくために気候変動が事業に及ぼすリスクと機会などについて分析を行い、関連する情報の開示を進めています。GHG原単位の削減や省エネの推進などを通じて、炭素税の引き上げや規制強化等の気候関連リスクへの対応を推進しています。特定にあたって行ったシナリオ分析については随時精緻化を進め、リスクと機会の見直しを図っています。

 

・大規模自然災害への対処

 当社グループは、災害に強い街づくりを推進するとともに、当社グループが運営する施設の従業員やテナント、お客様の安全・安心を守るために、防災訓練や救急救護講習など、事業継続計画(BCP)に関する取り組みを推進しています。原則毎年3回、想定を変えた大規模地震に対するグループ総合防災訓練を実施し、様々な状況において円滑な対応が出来るように、訓練を行っております。

 

・業務委員会

 事業リスク(主として事業推進・利益獲得のために取るリスク)を管理することを目的として、「業務委員会」を設置し、経営計画および特定の経営課題の審議ならびに遂行管理等を行っています。

 

・リスクマネジメント委員会

 業務リスク(業務遂行上のオペレーショナルリスク)を管理することを目的として、「リスクマネジメント委員会」を設置し、リスクマネジメント方針・計画の策定およびリスク課題の把握・評価、対応策の策定ならびに指示などをしています。

「リスクマネジメント委員会」では、業務リスクを統括的にマネジメントするとともにPDCAサイクルを確立し、クライシス対応や予防的リスク管理をより的確に実施できる体制としています。コンプライアンス違反と判断された場合は、リスクマネジメント委員会が調査と対処を指示し、モニタリングを行います。

 

・内部相談窓口の設置

 当社は、内部相談窓口を設置しています。当社役職員(通報の日から1年以内に当社労働者であった者を含む)であれば利用できます。社内・社外の2か所設置しており、いずれの窓口に相談することも可能です。社外窓口は弁護士事務所に設置していますが、中立的な立場で相談を受理し、会社に対して相談内容を連絡し対応を促すものです。

 相談対象は法令・社内規程・一般的社会規範および企業倫理に反する不正等、セクハラ・パワハラ等のハラスメント、雇用問題、職場環境の課題等です。相談者のプライバシーは保護され、相談行為を理由とした報復行為および人事処遇上の不利益な取扱い等を受けることはありません。また、実名でも匿名でも相談可能です。

 

(4)指標及び目標

・環境(連結 注1)

グループ全体KPI

CO2排出量実績 注2

(千t-CO2)

評価指標

達成時期

数値目標

単年度実績

3か年平均実績 注3

2022年度

2019年度比

3か年平均

(2020年度

~2022年度)

3か年平均比

(2018年度

~2020年度)

CO2等排出

削減比率

2030年度

2019年度比

▲40%

5,503

+1,120

(+25.6%)

4,797

+82

(+1.7%)

2050年度

実質ゼロ

(注)1.2021年度からは三井不動産および連結子会社のうち建物保有会社もしくは従業員100人以上の会社

     が保有・賃貸する施設ならびにCO2排出量が大きい会社(三井不動産TGスマートエナジー)が対象

   2.Scope1,2,3の合計
   3.当社グループの温室効果ガス排出量は、各年度の竣工・売却物件の増減により大きく変動するため、

     3年間の平均排出量を算出しています

 

・人的資本

①三井不動産㈱(単体)

KPI

実績

評価指標

達成時期

数値目標

2023年度

従業者エンゲージメント注1

毎年

80%以上

92

一人当たり研修時間

注2

毎年

前年度実績水準

(2022年度実績:28.2時間)

28.4時間

一人当たり研修投資額 注3

毎年

前年度実績水準

(2022年度実績:13.1万円)

13.2万円

女性管理職比率 注4

2025年

2030年

10

:20%

9.2

女性採用比率

毎年

40

48.6

障がい者雇用率 注5

毎年

2.5以上

2.74

男性育児休業等取得率

注6・7

毎年

100

116.6

育児休業復帰率

毎年

100

100

有給休暇取得日数

毎年

年間14

16.2

健康診断/

人間ドック受診率

毎年

100

100

(注)1.「当社で働いていることを誇りに思う」に5段階で上位2つに回答した割合

2.2023年度研修時間を正社員数で除した数字

3.2023年度研修金額を正社員数で除した数字

4.2024年4月1日の数字時点の総合職掌における女性管理職比率

5.2023年6月1日の数字

6.分母は該当年度に配偶者が出産した男性社員の数、分子は該当年度に出生時育児休業・育児休業・育児

  を目的とした休暇制度による休暇のいずれかを取得した男性社員の数

7.配偶者が出産した年度と、育児休業等を取得した年度が異なる男性労働者がいる場合、100%を超える

  ことがあります

 

②女性活躍におけるモデル会社(注1)

サンライフ・クリエイション㈱

KPI

実績

評価指標

達成時期

数値目標

2023年度

女性管理職比率 注2

-

-

63.2%

女性採用比率

-

-

84.6%

育児休業復帰率

毎年

100%

100%

有給休暇取得率

毎年

取得率70%

81.0%

 

三井不動産商業マネジメント㈱

KPI

実績

評価指標

達成時期

数値目標

2023年度

女性管理職比率 注2

2025年

20%

19.9%

2030年

25%

女性採用比率

-

-

62.1%

育児休業復帰率

毎年

100%

97.4%

有給休暇取得率

毎年

取得率80%

85.4%

 

㈱三井不動産ホテルマネジメント

KPI

実績

評価指標

達成時期

数値目標

2023年度

女性管理職比率 注2

2025年

15%

18.1%

2030年

20%

女性採用比率

-

-

76.8%

育児休業復帰率

毎年

100%

100%

有給休暇取得率

毎年

取得率70%

88.5%

(注)1.当社は国内外多数のグループ会社が存在しているため、①三井不動産(単体)と②女性活躍における

     モデル会社について開示しています

   2.2024年4月1日の数字

 

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

  (1)当社グループの事業リスク

リスク名称

リスク内容

対策

①事業環境の変化によるリスク

景気変動、国内外の経済状況の変化、金利上昇、為替変動、物価変動、少子高齢化および人口減少等は、不動産需要の低下、市況の悪化による地価等の下落、個人消費の低迷等をもたらす可能性があります。

また、DXの進展、全世界的な気候変動への意識の高まり、地政学的リスクの顕在化や新型コロナウイルス感染症等によって、人々の生活様式や働き方、企業ニーズ、消費者ニーズおよび個人消費動向、産業構造等に変化が生じています。

こうした事業環境の変化に伴い、オフィスや商業施設等の賃貸用不動産の稼働率の低下や賃料の減少、分譲住宅等の販売用不動産の売上の減少の他、その対応のための費用の増加が生じ、当社グループの事業、財政状態および経営成績等は悪影響を受ける可能性があります。

当社グループは、事業環境や顧客ニーズの変化等を見極めながら、グループ会社の連携強化、顧客ニーズを先取りした商品開発、街づくりの一層の強化、新たなビジネスインフラの顧客への提供、DXの推進、人口動態や供給動向を見据えた立地戦略、海外を含めた資産ポートフォリオの戦略的構築等を進めてまいります。

②市場金利に関するリスク

当社グループは、事業の運営・発展のため、金融機関等から短期および長期の有利子負債を調達しています。新規の資金調達が必要となる場合、市場金利の上昇局面においては資金調達コストが増加する可能性があります。

また、市場金利の上昇は、住宅購入者の購買意欲の減退や、投資家の要求する不動産の期待利回りの上昇をもたらすことで、当社グループの分譲収益の減少や所有資産の価値の下落につながるおそれがあり、当社グループの事業、財政状態および経営成績等は悪影響を受ける可能性があります。

当社グループでは、かねてより大半の必要資金を長期かつ固定金利を中心に調達しており、既存の有利子負債については、市場金利の上昇の影響を抑えるべく努めております。

また、今後の国内外の金利動向による、住宅ローン金利の動向や不動産取引市場におけるキャップレートの変動には、引き続き注視するとともに、今後も適時適切な資金調達やバランスシートの適正なコントロールを通じて、金利上昇リスクの軽減に努めてまいります。

③為替変動に関するリスク

為替の大幅な変動は、輸入価格の変動を通じ、建築コストやエネルギーコスト等に影響を与え、当社グループの個別事業におけるコストの変動要因となる可能性があります。

また、為替の変動が、テナント企業の業績へ影響を与えることを通じて、当社グループの賃貸収入等に影響を及ぼすおそれがあります。

加えて、当社グループは、国外で事業展開を進めており、為替の変動は、海外事業における資金調達時のコストや、当社連結決算上の海外事業損益の取り込み額、資産・負債の計上額の変動要因となります。

これらにより、当社グループの事業、財政状態および経営成績等に影響を与える可能性があります。

当社グループは、為替の変動を含む、各種原価の価格変動の要因・動向を注視し、個別事業において適切な対策を講じることを通じ、各種原価のコントロールに努めています。

また、当社グループの賃貸事業では、商品の競争力維持に努めるとともに、テナントリーシングの強化・推進に取り組むことで、事業環境変化に伴う賃貸収入の減少等の影響を抑えています。

海外事業においては、原則、現地通貨建てでの資金調達を実施することや、国内外のエリアにおける適度なポートフォリオ分散により、為替変動に伴うリスクを抑えるよう努めています。

④気候変動リスク

大規模な気候変動または気候変動リスクを考慮した企業ニーズや消費動向の変化により、国内外の経済環境や社会環境の変化が発生した場合、不動産需要の低下、地価等の下落、個人消費の低迷等が起こる可能性があり、その結果、当社グループの事業、財政状態および経営成績等は悪影響を受ける可能性があります。

当社グループは、気候変動への対応を重要な経営課題と位置づけ、「脱炭素社会実現に向けたグループ行動計画」を策定するとともに、気候変動の予測および変化の対応に努めてまいります。

⑤地政学的リスク

当社グループは、国内外において事業を展開しています。国・特定エリアが抱える政治的、軍事的、社会的な緊張の高まりが顕在化し、国・特定エリア間における関係の悪化、政治体制の混乱、経済環境の変動等が生じた場合、当該国・エリアで展開する当社グループの事業に対して直接的に影響を及ぼすおそれがあるほか、国際的なサプライチェーンの混乱等による燃料・原材料価格高騰や、その他事業環境の変化が生じることにより、当社グループの事業に対して影響を及ぼすおそれがあります。

これらの影響により、当社グループの事業、財政状態および経営成績等は悪影響を受ける可能性があります。

当社グループは、エリアおよび商品における適度なポートフォリオ分散を図っています。また、個別事業においても、一定のリスクを織り込んでの投資判断および事業推進を行っております。

⑥感染症リスク

新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、商業施設、ホテル等の当社事業活動に多大な影響を与え、当社グループの事業、経営成績に一時的に大きな悪影響を及ぼしました。

また、感染拡大が生活様式や働き方等の顧客ニーズおよび経済環境の変化をもたらし、当社グループの事業に影響が生じました。

今後、新型コロナウイルス感染症とは異なる新たな感染症が発生し流行する可能性もあり、当該新たな感染症の性質や感染症の発生・拡大に起因した国内外の事業環境の変化等によっては、当社グループの事業、財政状態および経営成績等は新型コロナウイルス感染症と同等またはそれ以上の悪影響を受ける可能性があります。

当社グループにおいては、「三井不動産9BOX感染対策基準」を策定し、新型コロナウイルス感染症の被害を軽減または防止するための措置を講じることで、ウイルスの特性に合わせた感染対策を行いながら施設営業の正常化を図りました。

さらに、当社グループは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を経たことによる顧客ニーズや事業環境の変化等を見極めながら、グループ会社の連携強化、ニーズを先取りした商品開発、街づくりの一層の強化、新たなビジネスインフラの顧客への提供、DXの推進等を進めることで競争力を維持・強化してまいります。

また、新型コロナウイルス感染症とは異なる新たな感染症が発生し流行した場合にも、人命保護を最優先としつつ当社グループの事業活動とのバランスを図り対応してまいります。

⑦不動産事業における競合リスク

当社グループが推進する不動産事業は、総じて競争的な環境にあります。

例えば、開発用地の取得においては、適した立地を巡り他社と競合することがあります。また、オフィス、商業施設等の賃貸事業におけるテナント誘致や、住宅分譲事業における顧客獲得、ホテル・リゾート事業における労働者の確保等の様々な面で他社と競合する可能性があります。さらに、DXの進展に代表される技術革新や、価値観の変化が既存のビジネスモデルを破壊する、いわゆる破壊的イノベーションは、競争環境に多大な影響を与える可能性があります。これらの要因が、費用の増加や収益の減少につながり、その結果、当社グループの事業、財政状態および経営成績等は悪影響を受ける可能性があります。

当社グループは、グループ会社の連携強化、顧客ニーズを先取りした商品開発、街づくりの一層の強化、新たなビジネスインフラの顧客への提供、DXの推進、既存施設の価値向上、既存事業を通じた顧客とのネットワークや建替・コンバージョン等グループ力を活かした事業機会の獲得等を通じて、競争力を維持・強化してまいります。

⑧賃貸収入に関するリスク

当社グループの賃貸事業においては、テナントが賃貸借契約を中途解約した場合や賃貸期間満了時に賃貸借契約を更新しない場合および、テナントの賃料を減免せざるを得ない場合には、収入が減少するおそれがあります。

また、テナントが倒産した場合、賃料の支払遅延や回収不能が発生するだけでなく、当該テナントの退去が遅延した場合、後継のテナントリーシングや当該物件の売却活動にも不利な影響が及ぶ可能性があります。これらの結果、当社グループの事業、財政状態および経営成績等は悪影響を受ける可能性があります。

当社グループは、グループ会社の連携強化、顧客ニーズを先取りした商品開発、街づくりの一層の強化、新たなビジネスインフラの顧客への提供、DXの推進、既存施設の価値向上等を通じて、競争力を維持すると共に、テナントリーシングの強化・推進に取り組んでいます。

⑨資産価値変動リスク

当社グループは、不動産事業に関連する資産を多く保有しております。

当該資産については、市場金利の上昇等により、住宅購入者の購買意欲の減退および投資家の要求する不動産の投資期待利回りの上昇等が生じた結果、売却による利益の減少や損失の発生等に繋がる可能性があります。加えて、当該所有資産について、減損損失や評価損の認識等を行う可能性があります。

また、当社グループは、投資有価証券を保有しており、当該有価証券の資産価値が低下した結果、売却による利益の減少、損失の発生等に繋がる可能性があります。加えて、当該有価証券について、評価損の認識等の可能性があります。かかる資産価値の変動により、当社グループの事業、財政状態および経営成績等は悪影響を受ける可能性があります。

当社グループは、バランスシートの適正なコントロールや、最適なポートフォリオの構築を通じて、リスク耐性のある事業基盤の構築を目指しております。

また、マーケットにおける資産価値変動の要因・動向を注視するとともに、商品企画やサービスの向上等を通じた市場競争力の強化により、資産価値変動リスクの軽減に努めています。

⑩原価変動リスク

当社グループが推進する事業は、建築工事費、エネルギーコスト、人件費等、様々な原価の価格変動にさらされています。

当社グループの個別事業において、各種原価の上昇分を必ずしも顧客への販売価格や賃料等に反映することができず、収益性に悪影響を与えるおそれがあります。

その結果、当社グループの事業、財政状態および経営成績等は悪影響を受ける可能性があります。

当社グループは、マーケットにおける各種原価の価格変動の要因・動向を注視し、個別事業において適切な対策を講じることを通じ、各種原価のコントロールに努めています。

⑪資金調達リスク

当社グループは、金融機関等からの借入金、コマーシャル・ペーパーおよび社債の発行等により、事業に必要な資金を調達しています。市場金利の上昇や、金融市場の混乱、当社格付の引下げ、または金融機関や機関投資家等の融資および投資方針の変更等により、当社グループの資金調達への制約、あるいは資金調達コストの増大のおそれがあり、当社グループの事業、財政状態および経営成績等は悪影響を受ける可能性があります。

当社グループは、かねてよりD/Eレシオ管理による健全な財務体質を維持するとともに、調達先・調達手段の多様化や、コミットメントライン等の活用により十分な流動性を確保し、安定資金の確保に努めております。

⑫不動産開発リスク

当社グループの不動産開発事業においては、用地取得、開発、建設等の各段階において多額の投資を行っており、投資回収までには一定の年月を要します。不動産開発事業に要する期間および投資額は、不動産需要の変化、天候、自然災害、事故、不祥事、請負業者の倒産、政府の規制または政策の変更、市場環境の変化、規制当局からの許認可の取得の遅延、埋設物または土壌汚染の発見、地域住民による反対、その他予期し得ない問題等、当社グループではコントロールできない多くの要因により、コストの増加、開発スケジュールの遅延等の影響を受ける場合があります。

これらにより、当社グループの事業、財政状態、経営成績等および当社グループの市場での評価は悪影響を受ける可能性があります。

当社グループは、個別事業において、一定のリスクを織り込んでの投資判断のうえ、事業推進および施工管理を行っています。

また、当社事業に特に大きな影響を及ぼす問題が発生した場合は、速やかに経営に報告し、適切に対応するガバナンス体制を構築しています。

⑬海外事業に伴うリスク

当社グループは、日本国内だけではなく、米国、英国およびアジアを中心に国外でも事業展開を進めています。

海外事業においては、各国・地域の法令や許認可の遵守、多様な国籍、言語、文化を踏まえた人員配置や労務管理等が必要となります。加えて、法規制や税制の変更、金利水準の上昇、インフレおよび為替水準の変動、内乱または紛争、テロ事件、疫病の流行、国際関係の悪化等による政治的または経済的不安定等の世界的または各国の事業環境の変化や、当社グループに対する訴訟等、当社グループのコントロールの及ばない様々なリスク要因の影響を受けるおそれがあります。

また、当社グループは、現地企業との提携を通じて海外事業を推進することが多く、当該提携先の財務状態や提携関係等により、現地での事業展開に影響を受けるおそれがあります。

これら様々なリスク要因により、当社グループの事業、財政状態および経営成績等は悪影響を受ける可能性があります。

当社グループは、海外での事業展開において必要な情報収集や、現地の市場や法規制等に精通した現地企業を提携先として選定するように努めています。

また、海外事業共通のガバナンス指針として、「グローバル・ガバナンス・ガイドライン」を定めており、現地法人・本社海外事業本部・本社スタッフ部門の3つの階層により適切なリスク管理を実施しています。

⑭物件ポートフォリオの立地に関するリスク

地震、台風、大雨、洪水、津波、噴火等の自然災害や、火災、事故、暴動、テロ、ミサイル攻撃等の人為的な災害が発生した場合、従業員が被災し業務に支障をきたすおそれがあるだけでなく、当社グループの資産が保険では担保しきれない重大な被害を受けるおそれがあります。

これらの被害を軽減または防止するために様々な事業継続計画(BCP)を講じていますが、想定外の災害等が発生した場合には、当社グループの事業、財政状態および経営成績等は悪影響を受ける可能性があります。

当社は、オフィスビル、商業施設、スポーツ・エンターテインメント施設、ホテル・リゾート、ロジスティクスなどの商品を国内各エリアで展開しており、さらに、海外での事業展開も進めるなど、ポートフォリオのエリア分散に取り組んでおります。

また、建物の耐久性向上や、被災度判定システムの導入や非常用発電機の72時間稼働化、コジェネレーションシステムを活用した特電事業等のBCP対策を推進しています。

今後もリスク耐性のある事業基盤の構築に努めてまいります。

⑮法令・政策の変更に関するリスク

当社グループは、新たな法令、規制の制定や、既存の法制の変更により、これらに即して当社グループにおける事業構造や資金調達方法を変更せざるを得ない、または、これらの制定や変更に対応するための費用が発生する可能性があります。

このような法規制の変更等によって、当社グループの事業、財政状態および経営成績等は悪影響を受ける可能性があります。

当社グループは、国内外の各種法令、規制、法制の動向について、各種団体や専門家等からの情報を収集・分析して当社の各組織にて対応の検討を行い、影響の度合いや内容に応じて必要と判断したものについては、速やかに情報を共有の上、適切に対応しています。

⑯多様な人材確保に関するリスク

当社グループを取り巻く事業環境は一段と変化を速め、少子高齢化、社会の成熟化、女性の社会進出やグローバリゼーションのさらなる進展に加え、新型コロナウイルス感染症の感染拡大がもたらした人々のくらしや行動の変容、サステナビリティの重要性の高まり等により、当社がサービスを提供する顧客の多様性と個別性が一層拡がりを増しています。また、このような環境変化に伴い、従来の個別事業の枠組みのなかだけでは解決できない社会課題が生じてきています。

当社グループを取り巻く事業環境の変化や新たに生じる社会課題等に対応するための人材の継続的な確保や育成が不十分である場合には、当社グループの事業、財政状態および経営成績等は悪影響を受ける可能性があります。

当社グループが新しい価値を創造し続け、競争優位性を確保していくための原動力は人材であると考えております。そして、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を重要な経営戦略の一つと位置付け、「ダイバーシティ&インクルージョン推進宣言」とその取り組み方針を策定し、グループ一体となって推進しています。

 

 

 

  (2)当社グループの業務リスク

リスク名称

リスク内容

対策

①被災リスク

地震、風水害、感染症等の自然災害および戦争、テロ等の人為的災害により、従業者が被災し業務に支障をきたす恐れがあるだけでなく、当社グループが保有・管理等をしている不動産の毀損または滅失等を招くおそれがあり、その場合、当社グループの事業継続や財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、災害時の安心・安全の確保に努めるとともに、災害が発生した場合には、その影響を最小限に抑え、生活や事業を継続できるよう防災に取り組むとともに、災害発生時の事業継続計画や行動計画等を策定し、当社グループにおける事業継続に関する取り組みを行っております。

 各種災害に関し、事業継続計画(BCP)を策定し、非常時の指揮命令系統、事業継続のための任務分担、各任務の災害対応マニュアルを定め、災害の影響を最小限に抑える体制を整備しています。また、参集拠点として常設の災害対策本部室を用意し、年に複数回大規模地震災害を想定した「災害対応訓練」を実施し、事業継続計画(BCP)に定められている対応の確認(役職員の生命や安全の確保、指揮系統の確立、事業復旧等)を行っています。

 その他、宿日直制度による24時間365日体制を整えるとともに、災害に強い施設づくりとしてBCP関連の投資や中圧ガスを活用した電気・熱供給事業、建物管理研修施設の「三井不動産総合技術アカデミー」を開校する等、様々な施策を実施しています。

②システムリスク

 当社グループでは、情報システムおよび制御システムにおけるシステム障害や、不正アクセス・ウイルス被害による情報漏洩等の不測の事態により、万一、当社のシステムが正常に利用できない場合や個人情報が外部へ漏洩した場合、当社グループの営業活動や業務処理の遅延、信用の失墜およびそれに伴う売上高の減少や損害賠償費用の発生等により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 セキュリティの確保はこれまで以上に重要性を増していくと考え、情報システムおよび制御システムにおいて計画的なセキュリティ診断・年次点検を実施し、標的型攻撃メール訓練等による役職員へ啓蒙を行うとともにインターネット接続時における情報アクセスへの制限やログ管理、情報端末の紛失に備えた対策の強化、第三者によるシステム・セキュリティ診断の実施、ウイルススキャンや異常な動きに対する検知システムの導入等を行い、サイバー攻撃や情報漏洩に備えた環境整備を進めています。

 個人情報に関しては、関係する諸法令の遵守と適正な取扱いの確保に努めており、当社グループにおける情報の組織的管理とセキュリティレベルの維持向上を図る目的として「情報管理規則」「秘密情報取扱規程」を定め、定期的に役職員の教育・啓蒙を行っています。

③コンプライアンスリスク

 当社グループの主たる業務である宅地建物取引業に関して、顧客に対する重要事項説明の誤りや不実告知等の法令違反により当局から行政処分等を受ける場合があります。また、会社法、建築基準法、個人情報保護法等、当社グループが事業を行う上で関係する法令に違反した場合、当社グループの信用の失墜、罰金等が課されることにより、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループでは、役職員の不正、業務上の過失等によるリスクが発生する可能性があります。当該リスクが顕在化した場合には、当社グループの信用の失墜及びそれに伴う売上高の減少や損害賠償費用の発生等により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 役職員が法令等を遵守し、より高い倫理観に従って行動するための基本的な事項を定める「三井不動産グループコンプライアンス方針」をはじめ、社内規程の制定と定期研修によるその周知徹底・啓蒙を推進しております。また、宅地建物取引業法等の主要な法令に関しては、法令遵守のため、各法令に応じた業務フローの策定を行い、研修やOJTによる周知徹底と法令遵守の定期的な自主点検を行っております。

④品質リスク

 当社グループが行う不動産開発事業において設計・施工等の不備が発生した場合、また、当社グループが賃貸・管理する施設において管理上の不備が発生した場合は、当社グループの信用の失墜、想定外の費用及び開発計画、運営計画の遅延が生じる等、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 不動産開発事業においては、一定の信用力・技術力を有する第三者に建物の設計・施工業務等を発注し、その設計・施工における品質を確保するため、当社グループにて独自の品質基準を定め、設計・施工業務等の発注先による遵守徹底を図るとともに、発注者として施工状況の確認及び品質検査を実施しております。賃貸・管理する施設に関しては、業務内容に応じたマニュアルを策定の上、研修・OJTを通じて業務品質を確保しています。また、万一の不備や事故等に備え、損害保険を付保しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

  当連結会計年度における当社グループの財政状態及び経営成績の状況の概要は、以下のとおりであります。

 

①財政状態および経営成績の状況

a.財政状態

◆資産

  当期末の総資産は、9兆4,895億円となり、前期末比で6,481億円増加しました。

  主な増減としては、販売用不動産(仕掛販売用不動産、開発用土地、前渡金を含む)が2,116億円増加、新規投資等により有形・無形固定資産が1,123億円増加し、また、投資有価証券が時価評価等により2,113億円増加しました。

  なお、当期の設備投資額は2,466億円、減価償却費は1,337億円でした。

◆負債

  当期末の有利子負債(短期借入金、ノンリコース短期借入金、コマーシャル・ペーパー、1年内償還予定の社債、ノンリコース1年内償還予定の社債、社債、ノンリコース社債、長期借入金、ノンリコース長期借入金の合計額)は、4兆4,304億円となり、前期末比で3,818億円増加しました。

  なお、資金調達の流動性補完を目的として、コミットメントラインを複数の金融機関との間で設定しており、未使用のコミットメントラインが4,000億円あります。

  また、当期末の流動比率(流動資産/流動負債)は、前期末の183%から上昇し211%となりました。

◆純資産

  当期末の純資産合計は、3兆2,346億円となり、前期末比で2,034億円の増加となりました。これは、利益剰余金が1,592億円、その他有価証券評価差額金が531億円増加したこと等によります。

  当期末の自己資本比率は32.8%と前期末の32.8%から大きな変動はなく、D/Eレシオ(有利子負債/自己資本)は1.42倍と前期末の1.40倍から上昇しました。なお、1株当たり純資産額は、1,109.89円(前期末は1,035.79円)となりました。

  また、当社は2024年4月1日付で普通株式1株につき3株の株式分割を行っております。前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して1株当たり純資産額を算定しております。

 

b.経営成績

 当社グループの連結業績につきましては、売上高は2兆3,832億円(前期比1,141億円増、5.0%増)、営業利益3,396億円(前期比342億円増、11.2%増)、経常利益2,678億円(前期比25億円増、1.0%増)となりました。これに特別利益として投資有価証券売却益541億円等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は2,246億円(前期比276億円増、14.0%増)となりました。

 

 

 報告セグメント別の業績は、次のとおりです。

 なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等) セグメント情報」の「1.報告セグメントの概要」に記載のとおりであります。

 各セグメントの売上高は、外部顧客に対する売上高を記載しており、特に記載のない場合、単位は百万円となっております。

賃貸

 

当期

(2023.4.1~2024.3.31)

前期

(2022.4.1~2023.3.31)

増減

売上高

815,002

755,238

59,763

営業利益

167,805

149,795

18,009

 

前期に竣工した「50 Hudson Yards(米国・オフィス)」の収益・利益の拡大に加え、既存商業施設の売上伸長や、「ららぽーと門真・三井アウトレットパーク 大阪門真」の新規開業効果等により、セグメント全体では、597億円の増収、180億円の増益となりました。

なお、当期末における当社の首都圏オフィス空室率(単体)は2.2%(第3四半期末の3.1%から0.9pt改善)となりました。

 

<売上高の内訳>

 

当期

(2023.4.1~2024.3.31)

前期

(2022.4.1~2023.3.31)

増減

オフィス

446,087

426,928

19,159

商業施設

286,553

261,394

25,159

その他

82,360

66,916

15,444

合計

815,002

755,238

59,763

 

・貸付面積の状況(単位:千㎡)

 

当期

(2024.3.31)

前期

(2023.3.31)

増減

オフィス  所有

2,060

1,960

100

      転貸

1,545

1,491

54

商業施設  所有

2,010

1,873

137

      転貸

667

651

16

 

・期末空室率推移(%)

 

2024/3

2023/3

2022/3

2021/3

2020/3

2019/3

2018/3

2017/3

オフィス・商業施設(連結)

3.8

4.3

3.0

2.9

2.3

1.8

2.4

3.1

首都圏オフィス(単体)

2.2

3.8

3.2

3.1

1.9

1.7

2.2

3.4

地方オフィス(単体)

3.2

2.8

3.7

3.5

1.3

1.8

2.3

2.3

 

 

<当期における主要な新規・通期稼働物件>

・新規稼働物件(当期稼働物件)

ららぽーと門真・

三井アウトレットパーク 大阪門真

大阪府門真市

2023年4月開業

商業施設

ららぽーと台中

台湾台中市

2023年5月開業

商業施設

ららテラスTOKYO-BAY

千葉県船橋市

2023年11月開業

商業施設

ららテラスHARUMI FLAG

東京都中央区

2024年3月開業

商業施設

 

・通期稼働物件(前期稼働物件)

LaLaport BUKIT BINTANG CITY CENTRE

マレーシア

クアラルンプール

2022年1月開業

商業施設

三井アウトレットパーク 台南

台湾台南市

2022年2月開業

商業施設

ららぽーと福岡

福岡県福岡市

2022年4月開業

商業施設

50 Hudson Yards

米国ニューヨーク市

2022年6月竣工

オフィス

東京ミッドタウン八重洲

東京都中央区

2022年8月竣工

オフィス・ホテル・商業施設

ららぽーと堺

大阪府堺市

2022年11月開業

商業施設

 

<単体の賃貸事業内訳>

・全体

 

当期

(2023.4.1~2024.3.31)

前期

(2022.4.1~2023.3.31)

売上高

702,491

650,667

粗利益

121,904

94,703

粗利益率(%)

17.4

14.6

 

・オフィス・商業施設

 

オフィス

商業施設

 

首都圏

地方

合計

首都圏

地方

合計

売上高

314,067

23,999

338,066

168,102

93,395

261,498

貸付面積(千㎡)

2,547

283

2,830

1,450

889

2,339

棟数(棟)

94

23

117

70

28

98

空室率(%)

2.2

3.2

2.3

1.6

2.9

2.1

 

分譲

 

当期

(2023.4.1~2024.3.31)

前期

(2022.4.1~2023.3.31)

増減

売上高

627,611

641,672

△14,060

営業利益

131,969

145,868

△13,898

 

国内住宅分譲は、「パークコート神宮北参道 ザ タワー」「パークタワー勝どきミッド」等の引渡しの進捗等により増収増益となりました。投資家向け・海外住宅分譲等は、前期の物件売却の反動や、米国物件における、利上げに伴うキャップレートの上昇等による評価損の発生等により減収減益となりました。セグメント全体では、140億円の減収、138億円の減益となりました。

なお、国内の新築マンション分譲の次期計上予定戸数3,650戸に対する契約達成率は84.4%となりました。

 

<売上高・営業利益の内訳>

 

当期

(2023.4.1~2024.3.31)

前期

(2022.4.1~2023.3.31)

増減

国内住宅分譲

 

 

 

   売上高

314,400

270,530

43,870

   営業利益

49,788

39,368

10,419

投資家向け・海外住宅分譲等

 

 

 

   売上高

313,210

371,142

△57,931

   営業利益

82,181

106,499

△24,317

売上高合計

627,611

641,672

△14,060

営業利益合計

131,969

145,868

△13,898

 

<国内住宅分譲内訳>

・売上高等の内訳

 

当期

(2023.4.1~2024.3.31)

前期

(2022.4.1~2023.3.31)

増減

マンション

280,561

(3,280戸)

235,638

(3,196戸)

44,922

(84戸)

  首都圏

253,923

(2,665戸)

196,655

(2,324戸)

57,267

(341戸)

  その他

26,638

(615戸)

38,983

(872戸)

△12,344

(△257戸)

戸建

33,839

(420戸)

34,892

(420戸)

△1,052

(0戸)

  首都圏

33,839

(420戸)

34,787

(418戸)

△948

(2戸)

  その他

(0戸)

104

(2戸)

△104

(△2戸)

売上高合計

314,400

(3,700戸)

270,530

(3,616戸)

43,870

(84戸)

 

・契約状況

 

 

マンション

戸建

合計

期首契約済み

(戸) (A)

4,256

118

4,374

期中契約

(戸) (B)

3,449

361

3,810

計上戸数

(戸) (C)

3,280

420

3,700

期末契約済み

(戸) (A)+(B)-(C)

4,425

59

4,484

完成在庫

(戸)

24

22

46

新規発売

(戸)

3,423

382

3,805

(注)契約済み戸数、新規発売戸数には、次期以降に計上が予定されている戸数も含まれております。

 

・期末完成在庫推移(戸)

 

2024/3

2023/3

2022/3

2021/3

2020/3

2019/3

2018/3

2017/3

マンション

24

55

82

150

128

141

108

321

戸建

22

0

7

17

58

30

40

69

合計

46

55

89

167

186

171

148

390

 

・当期における主要な計上物件(国内住宅分譲)

パークコート神宮北参道 ザ タワー

東京都渋谷区

マンション

パークタワー勝どきミッド

東京都中央区

マンション

HARUMI FLAG

東京都中央区

マンション

幕張ベイパーク ミッドスクエアタワー

千葉県千葉市

マンション

パークホームズ三軒茶屋一丁目

東京都世田谷区

マンション

ファインコート新百合ヶ丘グランレガシー

神奈川県川崎市

戸建

 

・当期における主要な計上物件(投資家向け分譲・海外住宅分譲)

Innovation Square Phase Ⅱ

米国ボストン市

オフィス

Alta Revolution

米国サマービル市

賃貸住宅

大崎ブライトタワー

東京都品川区

オフィス

豊洲ベイサイドクロスタワー

東京都江東区

オフィス

MFLP東名綾瀬

神奈川県綾瀬市

物流施設

パークアクシス赤坂山王

東京都港区

賃貸住宅

パークアクシス大塚サウスレジデンス

東京都豊島区

賃貸住宅

 

マネジメント

 

当期

(2023.4.1~2024.3.31)

前期

(2022.4.1~2023.3.31)

増減

売上高

462,857

445,924

16,932

営業利益

66,289

63,383

2,905

 

プロパティマネジメントは、リパーク(貸し駐車場)における前年同期比での稼働向上等により増収増益となりました。仲介・アセットマネジメント等は、プロジェクトマネジメントフィーの増加等により増収増益となりました。

セグメント全体では、169億円の増収、29億円の増益となりました。

 

<売上高・営業利益の内訳>

 

当期

(2023.4.1~2024.3.31)

前期

(2022.4.1~2023.3.31)

増減

プロパティマネジメント

 

 

 

   売上高(※1)

347,025

334,973

12,051

   営業利益

38,554

37,547

1,007

仲介・アセットマネジメント等

 

 

 

   売上高

115,831

110,950

4,880

   営業利益

27,735

25,836

1,898

売上高合計

462,857

445,924

16,932

営業利益合計

66,289

63,383

2,905

 

※1 当期末のリパーク(貸し駐車場)管理台数の状況

   リパーク管理台数:247,046台(前期末:250,515台)

 

・三井不動産リアルティの仲介事業の状況(仲介・アセットマネジメント等に含む)

 

当期

(2023.4.1~2024.3.31)

前期

(2022.4.1~2023.3.31)

増減

 

取扱高

件数

取扱高

件数

取扱高

件数

仲介

1,934,599

(38,680件)

1,918,415

(39,106件)

16,184

(△426件)

 

・三井不動産レジデンシャルの販売受託事業の状況(仲介・アセットマネジメント等に含む)

 

当期

(2023.4.1~2024.3.31)

前期

(2022.4.1~2023.3.31)

増減

 

取扱高

件数

取扱高

件数

取扱高

件数

販売受託

67,951

(870件)

57,180

(702件)

10,771

(168件)

 

施設営業

 

当期

(2023.4.1~2024.3.31)

前期

(2022.4.1~2023.3.31)

増減

売上高

194,512

144,577

49,935

営業利益

26,333

△3,690

30,023

 

ホテル・リゾートのADRが大幅に上昇したことや、東京ドームにおける稼働日数・来場者数の増加等により、セグメント全体では、499億円の増収、300億円の増益となりました。

 

<売上高の内訳>

 

当期

(2023.4.1~2024.3.31)

前期

(2022.4.1~2023.3.31)

増減

ホテル・リゾート

140,577

95,197

45,380

スポーツ・エンターテインメント

53,934

49,379

4,554

合計

194,512

144,577

49,935

 

・ホテル稼働率

 

当期

(2023.4.1~2024.3.31)

前期

(2022.4.1~2023.3.31)

増減

宿泊主体型ホテル

83%

82%

1pt

 

<当期における主要な新規・通期稼働物件>

・新規稼働物件(当期稼動物件)

ブルガリ ホテル 東京

東京都中央区

2023年4月開業

ホテル

三井ガーデンホテル

横浜みなとみらいプレミア

神奈川県横浜市

2023年5月開業

ホテル

 

・通期稼働物件(前期稼働物件)

三井ガーデンホテル

柏の葉パークサイド

千葉県柏市

2022年7月開業

ホテル

 

その他

 

当期

(2023.4.1~2024.3.31)

前期

(2022.4.1~2023.3.31)

増減

売上高

283,306

281,690

1,616

営業利益

2,185

△904

3,090

 

<売上高の内訳>

 

当期

(2023.4.1~2024.3.31)

前期

(2022.4.1~2023.3.31)

増減

新築請負・リフォーム等

245,948

246,236

△287

その他

37,357

35,453

1,903

合計

283,306

281,690

1,616

 

・受注工事高内訳

 

当期

(2023.4.1~2024.3.31)

前期

(2022.4.1~2023.3.31)

増減

新築請負

131,792

137,806

△6,014

 

 

②キャッシュ・フローの状況

 当期末における現金及び現金同等物の残高は、前期末比で469億円増加し、1,792億円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次の通りです。

 

◆営業活動によるキャッシュ・フロー

 当期は、営業活動により2,416億円の増加となりました。これは、税金等調整前当期純利益3,340億円や減価償却費1,337億円等によるものです。一方で、法人税等の支払額又は還付額901億円等による減少がありました。

 

◆投資活動によるキャッシュ・フロー

 当期は、投資活動により2,869億円の減少となりました。これは、有形及び無形固定資産の取得による支出2,208億円、投資有価証券の取得による支出1,318億円等によるものです。一方で、投資有価証券の売却による収入773億円、預り敷金保証金の受入による収入465億円等による増加がありました。

 

◆財務活動によるキャッシュ・フロー

 当期は、財務活動により599億円の増加となりました。これは、借入金の調達等によるものです。

 

③生産、受注および販売の状況

 生産、受注および販売の状況については、「①財政状態および経営成績の状況」における報告セグメント別の業績に関連付けて示しています。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下の通りです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

 当社グループの連結業績につきましては、売上高は2兆3,832億円(前期比1,141億円増、5.0%増)、営業利益3,396億円(前期比342億円増、11.2%増)、経常利益2,678億円(前期比25億円増、1.0%増)となりました。これに特別利益として投資有価証券売却益541億円等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は2,246億円(前期比276億円増、14.0%増)となりました。また、当連結会計年度末の総資産は9兆4,895億円となり、有利子負債残高は4兆4,304億円となりました。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度のわが国経済は、コロナ禍の収束に伴い社会経済活動の正常化が進み、雇用情勢・企業収益の改善等が相まって景気は緩やかな回復基調で推移しました。一方、ウクライナ情勢に加え、中東情勢の緊迫化等の地政学的リスクや、先行き不透明な中国経済の影響等による世界経済の下振れリスクが引き続き懸念されています。 また、世界的なインフレの進行、欧米における金融政策引き締めの長期化、日本銀行によるマイナス金利政策等の見直しの影響については、今後注視していく必要があります。

 このような事業環境のもと、当社グループにおきましては、オフィス賃貸事業については、ミクストユースによる「行きたくなる街」にある「行きたくなるオフィス」の提案や、様々なソフトサービスの提供を行うことにより、優勝劣敗構造が進むオフィスマーケットにおいても、テナント企業から高い評価を受け、堅調に推移しました。

 商業施設賃貸事業については、「ららぽーと×三井アウトレットパーク」の2業態複合型商業施設として新たに開業させた「三井ショッピングパーク ららぽーと門真・三井アウトレットパーク 大阪門真」(大阪府門真市)が好調なスタートを切るとともに、各施設においてスポーツ・エンターテインメントの力を活用し、来館価値の向上に努めたことで、多くのお客様にご来館いただき、当社施設全体の売上は1年を通して堅調に推移しました。

 住宅分譲事業については、「暮らし方」「働き方」の多様化に伴う顧客ニーズの変化を的確に捉え、「パークタワー勝どきミッド」(東京都中央区)等を売上に計上するとともに、「三田ガーデンヒルズ」(東京都港区)をはじめとした販売物件において好調に契約が進捗しました。

 物流施設賃貸事業については、引き続きEC事業拡大等による物流施設への需要の高まりを的確に捉え、事業規模を着実に拡大しました。

 ホテル施設運営事業については、コロナ禍の収束に伴い回復したインバウンド需要を取り込み、上質な滞在体験の提供を通じた滞在価値の最大化を図ることで、多くのホテルで過去最高の業績を達成しました。また、「三井ガーデンホテル横浜みなとみらいプレミア」(神奈川県横浜市)、「ブルガリ ホテル 東京」(東京都中央区)を新たに開業させました。

 これらの様々な施策を通じて、営業収益、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のすべてにおいて、期中に公表した連結業績予想を上回る結果となりました。

 

c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループでは、2018年5月にグループ長期経営方針「VISION 2025」を策定し、2025年度前後に向けて、連結営業利益は3,500億円程度、うち海外事業利益(※)は30%程度、ROAは5%程度を達成することを目標指標としておりました。

 ※海外事業利益=海外営業利益+海外持分法換算営業利益(海外所在持分法適用会社について、各社の営業利益または営業利益相当額(当期純利益から税負担分を考慮して簡便的に算出した利益)に当社持分割合を乗じて算出した金額と海外所在持分法適用会社に係る関係会社株式売却益(不動産分譲を目的とした事業に係るものに限る)の合計額)

 当連結会計年度において、コロナ禍の収束に伴い社会経済活動の正常化が進み、営業利益は3,396億円、うち海外事業利益は16.6%、ROAは3.9%となりました。

 当社グループの連結業績につきましては、売上高は2兆3,832億円となり、通期業績予想2兆3,000億円に比べて832億円上回り(3.6%増)、営業利益は3,396億円となり、通期業績予想3,350億円に比べて46億円上回り(1.4%増)、経常利益は2,678億円となり、通期業績予想2,650億円に比べて28億円上回り(1.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,246億円となり、通期業績予想2,200億円に比べて46億円上回り(2.1%増)ました。

 報告セグメントごとの連結業績に関する通期業績予想比については次のとおりです。

 賃貸セグメントにおいては、営業利益は1,678億円となり、通期業績予想1,670億円よりも8億円の増益となりました。

 分譲セグメントにおいては、国内住宅分譲および投資家向け・海外住宅分譲等の営業利益はともに概ね想定通りとなりました。セグメント全体では営業利益は1,319億円となり、通期業績予想1,310億円よりも9億円の増益となりました。

 マネジメントセグメントにおいては、営業利益は662億円となり、通期業績予想650億円よりも12億円の増益となりました。

 施設営業セグメントにおいては、主にホテル・リゾート事業の営業状況が想定を上回り、営業利益は263億円となり、通期業績予想240億円よりも23億円の増益となりました。

 その他セグメントにおいては、営業利益は21億円となり、通期業績予想20億円と比して概ね想定通りとなりました。

 

<連結セグメント別業績(通期予想比)>

 

当期

(2023.4.1~2024.3.31)

2024年3月期通期業績予想

(2023.4.1~2024.3.31)

増減

 

売上高

営業利益

売上高

営業利益

売上高

営業利益

賃貸

815,002

167,805

780,000

167,000

35,002

805

分譲

627,611

131,969

600,000

131,000

27,611

969

マネジメント

462,857

66,289

450,000

65,000

12,857

1,289

施設営業

194,512

26,333

180,000

24,000

14,512

2,333

その他

283,306

2,185

290,000

2,000

△6,693

185

消去又は全社

△54,892

△54,000

△892

合計

2,383,289

339,690

2,300,000

335,000

83,289

4,690

 (注)2024年2月9日公表時の通期業績予想となります。

 

 当連結会計年度の当社グループの経営資源の配分・投入につきましては、有形・無形固定資産について、設備投資2,466億円、減価償却費1,337億円となり、販売用不動産について、新規投資6,146億円、原価回収4,174億円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの主要な資金需要は、国内のビル賃貸事業や商業施設賃貸事業等における新規投資や、販売用不動産の取得、および海外事業の拡大に伴う開発資金等であります。これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、金融機関からの借入や社債およびコマーシャル・ペーパーの発行による資金調達等にて対応していくこととしております。また、手元の運転資金につきましては、当社及び一部の連結子会社においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入することにより、資金効率の向上を図っております。

 当連結会計年度においては、「日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業」、「ららぽーと高雄」への投資等、投資活動によりキャッシュ・フローが2,869億円減少しましたが、営業活動によるキャッシュ・フロー2,416億円と財務活動によるキャッシュ・フロー599億円で充当し、現金及び現金同等物の期末残高が1,792億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因につきましては、前記「(1)経営成績等の状況の概要/②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 翌連結会計年度においては、新規・既存物件への投資等が計画されておりますが、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、借入金の調達等の財務活動によるキャッシュ・フローで対応していく予定です。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。当社グループの連結財務諸表で採用する会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

   該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は1,015百万円となっており、報告セグメントごとの内訳は、賃貸セグメントで55百万円、マネジメントセグメントで113百万円、その他セグメントで456百万円、全社セグメントで389百万円であります。なお、その他セグメント、全社セグメントの主な研究開発活動は次のとおりであります。

 

(1)その他セグメント

 三井ホーム㈱では、高性能・高品質な住宅の供給およびスマート設備等の様々な技術の実用化に向け、住生活向上・エネルギー利用の効率化・環境の低炭素化のための基礎的研究や開発等(住宅部資材・設備・工法・性能等)の研究開発活動を実施しております。

 基礎的研究および応用開発においては最大で壁倍率30倍相当の耐力を持つ「MOCX WALL(モクスウォール)」をベースに、住宅用に展開すべく「MOCX WALL工法」として関連の技術開発を実施しました。また、温熱等級6,7の断熱性能向上の基準を受け、当社オリジナルの防火構造の外壁付加断熱仕様の大臣認定を取得し、リリースに向けて関連技術の開発を進めております。加えて、木造マンション「MOCXION(モクシオン)」をはじめ賃貸住宅の遮音性向上とコストダウンの両立のための技術開発や意匠設計・施工性にこだわった木造建築物を目指し、木製屋外階段や緩勾配屋根仕様の技術開発を実施しました。さらに、大規模・非住宅建築の木造化促進による新たな事業領域の拡大として、木材を用いた空間や木造建築物の価値向上に向けた研究開発、特に睡眠質向上や認知症予防に関する研究開発にも取り組んでおります。

 住宅商品の開発においては、新規事業となるセレクト住宅事業に向けて新規プランおよびデザインの作成をいたしました。また、新技術を取り入れた次期商品の企画・開発をいたしました。

 

(2)全社セグメント

 当社では、社会経済環境の変化を端緒とした生活者の価値観の多様化を背景に「不動産業そのもののイノベーション」を推進するための価値検証・新規サービス開発等の研究開発活動を実施しております。

 主な活動として、社員個人が有するアイデアを引き出して新事業創出を促すための社内公募型事業提案制度を通じ、新たな住む・働く・楽しむのあり方に関する研究開発等を実施しております。