文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
① 企業理念
「QUALITY FOR THE FUTURE 新たな価値へ、新たな未来へ」
② 目指すべき姿
「先進性を追求し、変革する未来を乗り越え続けるリーディングカンパニー」
当社を取り巻く環境は日々変化を続けております。賃貸不動産市場の現況を見てみますと、国内総人口は顕著な減少傾向にあるものの、単身世帯数(特に高齢者)や外国人労働者世帯数等の増加、さらに平均賃料の上昇等により、その市場規模は緩やかに拡大していくものと考えられております。
一方で、家賃債務保証業界においては競争が激化する状況が続いており、このような状況を踏まえますと、賃借人・賃貸人・不動産会社による家賃債務保証事業者の選別が今後更に進むことが想定されます。当社においては、こうした経営環境で生き残るべく、住宅確保要配慮者への円滑な保証やデジタル社会への対応といった課題を克服することで、契約件数・単価の増加、債権管理の高度化、業務の効率化等を通じた収益性の向上を図り、もってリーディングカンパニーとしてのプレゼンスを確固たるものとする必要があると考えております。
中期経営計画における主な戦略は以下のとおりです。
① 住居用家賃債務保証
今後の成長戦略の柱のひとつとして、当社は、各地域に強力な営業基盤を有する地銀グループとのアライアンスを推進してまいります。当該アライアンスを通じ、当社は、現状活動拠点を有していない地域においても営業活動を効率的に推進展開できる体制を整備し、更なるシェア拡大を図ってまいります。
また、近時増加する単身世帯の高齢者の方が安心して暮らせるよう、見守りサービスや孤独死保険等の付帯サービスを開発・提供してまいります。
② 事業用家賃債務保証
事業用家賃債務保証領域は、住居用家賃債務保証領域よりも更に潜在的な需要が大きく、将来的にも有望な市場になるものと考えております。従来からお取引させていただいている協定会社に加え、事業用物件を保有・運営するファンド・リート等へのアプローチを強化することで、本領域におけるシェアと収益の拡大を図ってまいります。
③ 学費保証
当社は新領域として、専修学校における授業料等の分割納付が可能となる新たな保証サービスの拡大に取り組んでおります。所得格差の広がりが懸念される昨今の状況ではございますが、かかる保証サービスの利用により、学生は、より資金負担の少ない方法で就学の機会を得られることとなります。当社は、学費面での就学環境を整えることで学生の就学の機会や意欲をサポートするとともに、少子化の中、専修学校の経営がより安定的なものとなるよう支援いたします。なお、2024年3月31日時点で、当社は51校の専修学校と提携し保証業務契約の締結を完了しております。今後は、各都道府県の専修学校各種学校連合会等との連携をより強力に推し進めることで、学費保証の認知度を向上させ、先行メリットを生かして事業規模を拡大してまいります。
④ DX戦略
AI・ロボット等を活用することで、営業・審査・債権回収・事務オペレーション等、社内の業務プロセス全体の効率化を不断に推進します。また、当社が独自開発した電子申込システムである「Z-WEB2.0」の機能拡充(電子契約、顧客レポート、契約書管理)等により業務のデジタル化・顧客接点の拡大を推し進め、将来的には生活のプラットフォーマーとなるべく取り組んでまいります。
本書に記載した将来に関する事項については、本書提出日現在において当社が判断したものであり、実際の結果と異なる可能性があります。
当社は、人類、社会、経済が持続的に発展していくためには、地球環境等に係るグローバルな課題への取組みが極めて重要であり、そうした取組みの如何が、当社の管理リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識しております。このため、当社は、「QUALITY FOR THE FUTURE 新たな価値へ、新たな未来へ」を企業理念として掲げ、事業活動を通じて、人類、社会、経済の持続的な発展に貢献することを基本方針に掲げております。
これまで当社は、家賃債務保証サービスの提供を通じて、賃借人の住まいのサポート、賃貸人の家賃未収リスクの軽減等により賃借人・賃貸人の皆様に安心をお届けしてまいりました。また、賃借人事故対応費用保険等の付帯サービスや外国籍専用家賃債務保証サービス「SUMAU」等の新たな商品を開発・提供することで、人々の生活基盤である住まいの確保の円滑化に向けた更なる貢献をしてまいりました。また、2024年3月期より、専修学校及び学生に向けて、授業料等の分割納付を可能にする保証サービスであるZ-College support(学費保証)の提供を開始しております。当社は、本サービスの積極拡充を通じて、学生の就学の機会や意欲をサポートするとともに、専修学校の安定経営にも寄与することで、我が国の人材育成に貢献してまいります。
人的資本への投資として、当社では、人材育成の重要性に鑑み、全社的な「人事育成計画」を定めて計画的な研修受講の仕組みを整えております。詳細は、「(3) 人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する方針 ①戦略 ・人材育成」をご参照ください。
知的財産への投資については、当社の持続的成長に向けた効率化及び生産性向上への取り組みの一環として自社システムの開発及び機能向上に努めており、特に当社サービスへの申し込みのデジタル化・ペーパーレス化の推進及びAI審査の導入に注力しております。サービスの申し込みのデジタル化・ペーパーレス化の推進については、当社の提供する申し込みシステムである「Z-WEB2.0」の機能拡充及び協定会社とのシステム連携を積極的に推進しております。また、AI審査の導入については、2023年第3四半期より本格運用しております。
また、CSRとして難病支援活動及び学生向け奨学金などの社会・地域貢献活動にも努めており、2023年度には合計で7,800千円を寄付しております。具体的には以下のとおりであります。
・難病支援(認定NPO法人アンビシャス)
・学生支援(全保連未来創出奨学金)
当社では、サステナビリティ関連のリスクを監視・管理するにあたり、役員のうち、社外役員が70%(7名/10名)、女性役員が30%(3名/10名)を占めるなど、外部から適切な牽制が働き、多様な観点から当社のリスクを把握しうる体制を採っております。サステナビリティに関連するリスクについては適宜リスク管理委員会や経営会議で討議・協議し、取締役会への報告を行う体制としております。
詳細は、
当社が、今後とも上述の企業理念を事業の柱として、社会に必要とされ、またお客さまに選ばれる存在であり続けるためには、自由で柔軟な発想をもつ社員を育成し、その活躍の場を与えることが必要不可欠となります。このような考えの下、当社では、社員の日頃の労に報い、そのモチベーションの向上を図り、併せて、事業拡大に貢献できる人材の確保を進めるために賃金の引き上げをはじめとする処遇の改善に取り組んでいるほか、人的資本の在り方等につき下記の方針に従って、取り組んでおります。
・人材育成
当社では、人材育成の重要性に鑑み、全社的な「人事育成計画」を定めて計画的な研修受講の仕組みを整えており、マネジメント研修や年次別研修等の階層別研修や、部門別で必要な専門知識を学ぶ研修等を実施しております。今後、全社員向けにコンプライアンス研修、選抜制の外部ビジネススクール研修プログラム、デジタルトランスフォーメーション研修、選択式のeラーニング等を更に充実させることにより、社員のチャレンジと成長をサポートする体制を整えてまいります。なお、2024年3月期の従業員1人当たり年間教育研修費用は105,154円と高い水準にあり、2025年3月期以降も更なる充実を図ってまいります。
・社内環境整備
当社では、社員が当社での勤務を通じて豊かな人生を手に入れるために、主に以下のような取り組みを行っております。
(休暇制度)
連続休暇制度、育児休業制度、介護休業制度
(柔軟な働き方を実現するための制度)
短時間勤務、定年後再雇用制度
(手当)
資格取得奨励制度、慶弔見舞金、帰省手当、出張時の日当
(その他)
定期健康診断、総合福祉団体定期保険、福利厚生倶楽部、確定拠出年金型退職金制度、永年勤続表彰制度
当社は、持続的な成長と企業価値の向上を図り、人材の多様性を確保する観点から、性別、国籍、採用の時期等に関わらず、その能力や目標達成度に応じ、公平公正な人事評価を行っております。すでに当社では、中途採用者の管理職登用率は高い水準にありますが、今後は、女性管理職の割合を12%(2024年3月末)から15%(2027年3月末)に増加させる目標を設定し、人材登用の更なる多様性を確保してまいります。また当社では、DX分野で外国人技術者を採用する試みをすでに始めており、引き続きこの試みを通じて人材登用の多様性を育んでまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項については、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
当社の営む家賃債務保証事業は、国内賃貸不動産市場の動向による影響を受けております。近年では晩婚化や少子高齢化に伴う単身世帯や高齢者世帯の増加、民法改正に伴う人的保証から家賃債務保証業者による保証への移り変わりといった環境下にあります。これらの動向は、家賃債務保証のニーズを後押しするものであり、当社の事業にとっては追い風の状況であると認識しております。一方、人口減少や経済状況の悪化等に伴い、賃貸不動産市場が低迷した場合においては、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
家賃債務保証業は、法令に基づく許認可が必要とされておらず、形式的な参入障壁は低いため、家賃債務保証業界においては多くの競合が発生し易い状況にあります。一方、賃貸人及び協定会社とのネットワークや代位弁済発生時の債権回収の実務フローは一朝一夕に構築できるものではないため、後発事業者にとっては参入障壁は高いものと考えております。しかしながら、保険会社等の保証実務に親和性のある他業種からの新規参入や、同業他社やクレジットカード会社等の台頭によってシェアを失うことになれば、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社は、家賃債務保証契約の管理をはじめとして、多くの業務にシステムを活用しており、今後もシステムに対する投資を積極的に行っていく予定であります。当社のシステムについては、安定稼働の維持に努めるべく、バックアッププランを含めた緊急時の体制を整えると共に、システム全般に適切なセキュリティ対策を講じております。
しかしながら、これらの施策にもかかわらず、ソフトウェアの不具合や人為的ミスのほか、災害や不正アクセス等の外的要因により、システムの安定稼働の維持が困難となった場合、当社の事業活動に支障が生じることによって、当社の財政状態及び経営成績に多大な影響を与える可能性があります。
当社は、保証委託契約を締結した賃借人の家賃不払い等の債務不履行が発生した際には、賃貸人に対して代位弁済を実施しております。保証委託契約締結前に行う審査においては、自社の審査システムに基づき審査の適正性の確保に努めております。また、代位弁済の実施により当社が取得した賃借人に対する求償債権については、当社の定めるルールに従い債権回収を専門に行う部署が回収を担当しております。
しかしながら、経済状況や雇用環境が著しく悪化し賃借人の支払能力が低下した場合には、代位弁済額の増加、求償債権回収不能等の事象の発生により、当社の財政状態及び経営成績に多大な影響を与える可能性があります。
当社は、代位弁済実施前の潜在的な保証債務について保証履行損失引当金を、代位弁済実施後の賃借人に対する求償債権について貸倒引当金を計上しております。これらは、債権を期間に応じて分類し、過去の一定期間における貸倒実績率により算定した損失見込額に対して計上しております。前述の通り、経済状況や雇用環境が著しく悪化し、代位弁済額や求償債権額が増加した場合には、引当金の追加計上等によって当社の財政状態及び経営成績に多大な影響を与える可能性があります。
当社は、必要な人材の確保と育成に努めていく方針でありますが、必要な人材の確保が計画どおり進まなかった場合や、現在在籍する人材の社外流出等により、当社の事業拡大が制約を受けた場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社では採用の強化、処遇の改善(給与改定等による平均年収増加率は、2023年度7%)、公平公正な人事評価、研修制度の充実、育児休業や有給休暇の取得推奨等の働きやすい環境の整備により、必要な人材の確保を図っております。
当社は、契約者の個人情報を含む数多くの機密情報を保有しており、万が一、当社の責めに帰すべき事由による情報漏洩が発生した場合、当社には、被漏洩者に対する損害賠償債務が発生するほか、当社の信用に対する重大な懸念が生じ、そのことが当社の財政状態及び経営成績に多大な影響を与える可能性があります。
このようなリスクを踏まえ、当社では、「プライバシーマーク」を取得し、社内規程やマニュアルの整備、役職員への教育、情報管理システムの構築等の体制を整備し、情報セキュリティの強化に取り組んでおります。また、万が一、情報漏洩が発生した場合には、直ちに関係者に公表し、被害拡大防止等の対策を講じるとともに、徹底した事実調査と原因究明を実施し、再発防止策を策定することにより、信用回復を図ることができるような対応策を整備しております。
当社は2017年10月に国土交通省によって創設された家賃債務保証業者登録制度(注1)への登録を行っております。万が一、当社が同制度に定める各種の規律に違反した等ことを理由に、同省から、同じく同制度に定める指導や登録取消等の措置を受けた場合には、当社の事業内容、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
また、家賃債務保証業については、当該業務それ自体を直接規律する法令(いわゆる業法令)が現状存在しないところではありますが、今後新たな法制度が導入される等することで、当該業務が直接法令上で規律される対象となった場合には、当社の事業内容、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(注)1.家賃債務保証業を営む者の登録に関し必要な事項を定めることにより、その業務の適正な運営を確保し、家賃債務保証の健全な発達を図ることを通じて、もって賃貸住宅の賃借人その他の者の利益の保護を図ることを目的とする制度。
家賃債務保証事業においては、代位弁済した家賃等を賃借人から回収する必要があります。当社では『債権回収ガイドライン』を定めて、適正な回収業務に努めると共に、そうした業務をモニタリングする仕組みを設けております。
しかしながら、当社の回収業務に対して苦情が発生し、報道やインターネットの掲示板等を通じて風評が拡散されることにより、当社のレピュテーションに悪影響を及ぼし、収益低下の要因となる等、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社は、社内規程や業務マニュアルの整備、事務手続におけるチェックの徹底、各業務のシステム化による正確な事務処理体制の整備等、オペレーションリスクの撲滅低減に努めております。
しかしながら、いわゆるヒューマンエラー等によりオペレーションに支障が生じる可能性はあり、そのことが、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社は、協定会社を通じて、賃借人・賃貸人に当社の家賃債務保証サービスを提供しており、協定会社との関係性が重要であります。当社では協定会社との関係性を強化するために、電子申込みや事故対応費用保険等の仕組みを整えて利便性を高めているほか、概算払方式のスキームで家賃滞納時における協定会社側の負担を低減させております。また、継続的な新規開拓と適時のフォローのために、全国の主要都市中心に本社・営業所等(現在全国19拠点)を配置しております。しかしながら、当社の努力をもってしても協定会社との関係性が維持できない場合や、協定会社が倒産等により業務を停止したことにより申込が減少した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社は、今後実施することが予想される代位弁済に備えるために、十分な資金の流動性を維持する必要があります。
当社は、保証債務及び求償債権の管理を厳格に行っておりますが、急激な経済状況の悪化等により代位弁済の実施件数の急増等が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社は全国的に事業を展開しておりますので、大規模な地震・台風等の自然災害や感染症流行による被害は、発生地域における家賃債務保証需要の縮小を惹起するとともに協定会社の営業体制に影響を及ぼし、当社の財政状態及び経営成績に多大な影響を与える可能性があります。感染症に対しては、お客様、取引先及び社員の健康と安全を確保しつつ、サービスの維持を図るため、事前対策、感染後の情報の収集、感染拡大防止のための措置を定め、適切な対策を実施しておりますが、当社の従業員に感染が拡大した場合、健康被害等により業務遂行に支障が生じ、当社の財政状態及び経営成績に多大な影響を与える可能性があります。
当社ではモチベーション向上等のため、ストック・オプション制度として役員及び従業員に新株予約権を付与しております。本書提出日現在で当社の役員、従業員に付与済みのストック・オプションに関する潜在株式数は3,514,000株であり、発行済株式総数に対する本新株予約権の潜在株式数の割合は14.64%となっております。また今後も優秀な人材確保のため新株予約権を発行する可能性があります。
これらの新株予約権が行使された場合、発行済株式総数が増加し1株当たりの株式価値を希薄化させ、株価形成に影響を与える可能性があります。
当事業年度末現在において、ファンド等が所有している株式数は10,972,231株であり、当事業年度末現在の発行済株式総数に対する保有株式数の割合は47.71%であります。一般的にファンド等による株式の所有目的は、株式を売却の上キャピタルゲインを得ることにあたるため、今後ファンド等が所有する当社株式の一部又は全部を売却することが想定されます。その場合、短期的に株式の需給バランスの変動が生じる可能性があり、当社株式の株価形成に影響を及ぼす可能性がございます。
当社は、将来の合理的な期間における課税所得の見積りを行い、将来の回収可能性を検討した上で繰延税金資産を計上しております。当社においては、主に保証委託料売上の前受金、保証履行損失引当金及び貸倒引当金等が一時差異等を構成しており、これらは今後も発生し続けることが見込まれております。今後、当社の経営状態の変化で見込んでいた課税所得に達しない場合、税効果計算上の会社分類に影響が出る可能性があるほか、法人税率引き下げ等の税制改正及び会計基準の変更等が生じた場合には、繰延税金資産が減額され、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社代表取締役社長執行役員である迫幸治は、創業時から蓄積された知見を有し、また代表取締役副社長執行役員である茨木英彦は大手金融機関で培った知見をもとに、当社の経営方針や事業戦略の決定等において重要な役割を果たしております。当社は、両名に過度に依存しないよう、経営幹部役職員の拡充、育成及び権限委譲による体制の構築等により、経営組織の強化に取り組んでおりますが、十分な体制の構築が整うより以前に、何らかの理由で両名が当社の業務を遂行することが困難になった場合には、当社の財政状態及び経営成績に多大な影響を与える可能性があります。
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当事業年度におけるわが国経済は、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」等の効果もあり緩やかな回復基調を示したものの、不安定な国際情勢が収まりを見せない中、近年にない急激な物価上昇と実質賃金下落の継続や、欧米諸国での金融引締めを背景とした円安の進行などの諸要因により、依然として不透明な状況に晒されました。
賃貸住宅市場におきましては、2023年4月から2024年3月までに賃貸住宅として新規着工された戸数が前年比2.0%の減少となる一方、賃貸住宅に対する新規に投資が予定されている額は前年比7.3%の増加となりました。(注1)
(注)1 出典:「令和6年3月分 建築着工統計調査報告」国土交通省
このような環境の下、当社は協定会社・賃借人の利便性を向上させるべく、独自開発した電子申込システム「Z-WEB2.0」及び電子契約システム「Z-SIGN」を積極展開し、顧客ロイヤリティを向上させました。また、当社の主力事業である住居用家賃債務保証に加えて、今後成長が見込める戦略分野としての事業用家賃債務保証で高単価案件の獲得に注力してまいりました。債権管理面では、AIを活用した審査の高度化やリソースの適正配分による回収業務の強化を推進して、信用コストの削減に取り組んでまいりました。また、次年度以降の成長戦略の布石として「地銀グループとのアライアンス構想」の第一弾となる滋賀保証サービス株式会社との業務提携を公表するとともに、新たな保証業務領域としてのZ-College support(学費保証)の全国展開を進めてまいりました。
以上の結果、当事業年度の売上高は24,510百万円(前事業年度比2.8%増)、営業利益は2,224百万円(前事業年度比16.8%増)、経常利益は2,189百万円(前事業年度比18.7%増)、当期純利益は1,538百万円(前事業年度比98.8%増)となっております。
(資産)
当事業年度末における総資産は21,793百万円となり、前事業年度末に比べ1,367百万円増加いたしました。資産の控除項目である貸倒引当金が550百万円増加しており、無形固定資産が632百万円減少したものの、現金及び預金が1,336百万円、求償債権が542百万円、関係会社株式が420百万円それぞれ増加したことが主な増加要因であります。
(負債)
当事業年度末における負債総額は、17,033百万円となり、前事業年度末に比べ1,938百万円減少いたしました。未払法人税等が923百万円増加したものの、短期借入金が1,897百万円、長期リース債務が622百万円、保証履行損失引当金が382百万円、長期借入金が205百万円それぞれ減少したことが主な減少要因であります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は、4,759百万円となり、前事業年度末に比べ3,305百万円増加いたしました。主な増加要因としては、新規株式上場、新株予約権の権利行使に伴う資本金増883百万円、資本剰余金増883百万円、さらに、当期純利益計上による利益剰余金増1,538百万円があります。
当事業年度末における現金及び現金同等物は5,202百万円と前事業年度末に比べ1,546百万円増加となりました。当事業年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動による収入は、3,324百万円(前事業年度は808百万円の支出)となりました。主な要因は、税引前当期純利益2,187百万円、減価償却費1,073百万円等の計上によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動による支出は、560百万円(前事業年度は2,046百万円の収入)となりました。主な要因は、投資有価証券の取得による支出420百万円、無形固定資産の取得による支出274百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動による支出は、1,217百万円(前事業年度は4,462百万円の支出)となりました。新株発行による収入1,767百万円があったものの、主な要因は、短期借入金の返済による支出1,897百万円、リース債務の返済による支出853百万円によるものであります。
当社は、生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。
当社は、受注に該当する事項がありませんので、受注実績に関する記載はしておりません。
第23期事業年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社は家賃債務保証事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
2.その他収入は、保証事務手数料収入、収納代行手数料収入等であります。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成に当たり、決算日における財政状態及び会計期間における経営成績に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、この見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表で採用する重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」等に記載のとおりであります。
(売上高)
当事業年度の売上高は、24,510百万円(前事業年度比2.8%増)となりました。これは主に契約単価や保証契約件数の増加に伴う年間保証料収入が817百万円増加、保証事務手数料が163百万円増加したこと等によるものであります。
(売上原価及び売上総利益)
当事業年度の売上原価は、7,191百万円(前事業年度比12.9%減)となりました。これは主に貸倒引当金繰入額が366百万円増加したものの、保証履行損失引当金繰入額が846百万円減少したこと等によるものであります。
(販売費及び一般管理費及び営業利益)
当事業年度の販売費及び一般管理費は、15,094百万円(前事業年度比10.3%増)となりました。これは主に、退去済み債権の法的手続き強化により、支払手数料が801百万円増加したこと等によるものであります。
この結果、営業利益は、2,224百万円(前事業年度比16.8%増)となりました。
(営業外損益及び経常利益)
当事業年度の営業外収益は、30百万円となりました。また、営業外費用は、借入金額の減少に伴い支払利息が33百万円減少したこと等により、66百万円となりました。この結果、経常利益は、2,189百万円(前事業年度比18.7%増)となりました。
(特別損益、法人税等及び当期純利益)
当事業年度の特別利益は、1百万円となりました。また、特別損失は、3百万円となりました。法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合算した法人税等は648百万円となりました。この結果、当期純利益は、1,538百万円(前事業年度比98.8%増)となりました。
当社の運転資金需要のうち主なものは、代位弁済金の支払、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。運転資金に必要な資金は自己資金、金融機関からの借入等で資金調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定であります。
なお、キャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社は、「QUALITY FOR THE FUTURE 新たな価値へ、新たな未来へ」を経営理念に掲げ、事業を拡大してまいりました。
当社がこの理念の下、長期的な競争力を維持し持続的な成長を図るためには、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の課題に対して、経営者は常に事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、最善の経営方針を立案していくことが必要であると認識しております。
経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、累計契約件数及び協定会社拠点数を重視しております。累計契約件数及び協定会社拠点数の直近3事業年度末時点の推移は以下の通りであります。
該当事項はありません。
当社における家賃債務保証可否の審査及び代位弁済した債権の管理について自社開発のシステムを使用しております。効率化及び生産性向上への取り組みとして開発及び機能向上に努めており、特に当社サービスへの申し込みのデジタル化の推進及び様々な業務プロセスへのAI活用に注力しておりますが、当事業年度において研究開発費の計上はありません。