当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「“はたらく”にテクノロジーを実装し、個の力から社会の仕様を変える」というパーパスのもと、テクノロジーによって一人ひとりの個性や才能を理解することで、個人のキャリア形成や働き方が多様化される社会の実現を目指しております。また、「人材情報を一元化したデータプラットフォームを築く」というビジョンに基づき、人材データベースを軸にさまざまなサービスと連携することで、より高い顧客体験価値を提供する人材データプラットフォームの構築を目指しております。
人事・人材関連サービスの領域には、「人事評価」「労務管理」「採用管理」「人材教育」など、いくつかの分野が存在しており、それぞれに特化したサービスが数多くありますが、業務の効率化や生産性向上に対して一定の効果は見られるものの、分野ごとの課題を解決するサービスに留まっております。一方、人材データプラットフォームを築くことで、人材データベースを軸に多数のサービスが連携して運用され、これまで以上に効率化が進み、生産性が高まり、人材データが有効活用されると考えております。人材データプラットフォームを構築し、ひとの可能性を正しく理解できる世界をつくり、個人のエンパワーメントを通じて個人のキャリアや働き方の多様化を支援してまいりたいと考えております。
(2)経営戦略及び経営指標
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指して、中期経営方針を策定しております。
① 継続的なARRの成長
当社グループは、売上高の成長を重視しておりますが、サブスクリプション型のビジネスモデルであるため、ARR(注1)を重要なKPI(Key Performance Indicators)の一つとして設定しております。中期財務目標として、継続的にARRを20~30%成長させることを掲げており、その継続的な成長を目指して以下の施策を推進してまいります。
<利用企業数の拡大に向けた施策>
・組織体制の強化
・認知度の向上
・パートナーの活用
<ARPU(注2)の向上に向けた施策>
・エンタープライズ企業の増加
・アップセルの促進
・人材データプラットフォームの拡大
② 収益性の向上
当社グループは、適切な投資配分の実施により持続的成長を実現し、中長期的な利益拡大を図ってまいります。その中で、経営指標として売上総利益率と調整後営業利益率(注3)を特に重視しており、中期財務目標として、2028年3月期までに調整後営業利益率で20%以上を目指してまいります。
なお、当社グループは、企業価値の最大化に向けて機動的な成長投資を実施するため、内部留保の充実を優先する方針です。短期的な配当実施は未定ですが、将来的には経営環境や内部留保の状況を勘案し、株主の皆さまへの利益還元を検討してまいります。
③ 非財務的活動の推進
当社グループは、「ステークホルダーの期待」と「パーパスとの関連度」の観点から、当社グループが対応すべき社会課題を抽出し、当社グループが取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定しました。さらに、これらの重要課題を「個を尊重する社会の実現」「脱炭素社会の実現」「安全で使いやすいデータプラットフォーム」「透明・公正なビジネス」の4つの分野に分類しました。当社グループは今後、持続可能な社会の実現に向けて、各分野でさまざまな取り組みを行ってまいります。
「個を尊重する社会の実現」の一環として、人的資本経営に取り組みます。経営目標を達成するために必要となる人材の要件を定義し、人材の採用・育成・配置を戦略的に進めることで企業価値の向上を目指してまいります。また、具体的な人事施策として、多様性の確保、自律的なキャリア形成の支援、Well-being(ウェルビーイング)(注4)の向上を進めることで、従業員一人ひとりが個性や才能を発揮できる環境づくりや育成に取り組んでまいります。
「脱炭素社会の実現」の一環として、カーボンニュートラルへの取り組みを推進します。オフィスや設備機器の省エネ化や再生可能エネルギーの活用などを通じて、2035年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指してまいります。
(3)経営環境
公益財団法人日本生産性本部が2021年12月に発表した調査によると、我が国の就業者1人当たりの労働生産性は、OECD加盟諸国の中で28位と上位諸国とはかけ離れた実態が明らかになっております。また、就業者1人当たりの労働生産性が低い中、内閣府が公表した令和5年版高齢社会白書によると、2040年までに生産年齢人口は7,000万人を割り込み、その先の2070年までに5,000万人を下回ると推計されております。このような状況を踏まえ、今後の日本社会では、労働人口は減少するという前提のもと、いかに労働生産性を高めていくかが重要な命題になると考えております。
近年の技術進歩により、テクノロジーの活用が労働生産性の向上に繋がると期待されております。さらに、これまで企業の中でも裏方的な存在であった人事・総務といった“人材に関わる業務”は、企業の売上や利益に直結する業務ではないこともあり、テクノロジーの導入や効率化が遅れている分野でもありましたが、HRテクノロジーの普及に伴い、この分野にITを積極的に導入する企業が増えております。
一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会が発表した「企業IT動向調査報告書 2023」(2022年度調査)によると、雇用の流動化を背景に適材適所の人材配置・活用が求められており、2021年度調査と比較してタレントマネジメントを導入・検討する動きがさらに広がっております。また、当社がターゲットとする従業員100人以上の企業は日本に約63,000社(注5)存在しており、当社の利用企業数を鑑みれば市場の開拓余地は広大です。
このように、タレントマネジメントに対するニーズの高まりと市場の開拓余地を踏まえると、さらなる市場成長が見込めると考えております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上記の経営戦略等を推進する上で、当社グループとして捉えている対処すべき主要な課題は以下のとおりです。
① サービスの普及拡大
先述のとおり、タレントマネジメントシステムの導入ニーズは高まっており、その市場は今後さらなる拡大が見込まれております。
当社グループは、今後も新規顧客の獲得に向けて、費用対効果を検討した上での積極的な広告宣伝などを通じたサービスの認知度向上を図るとともに、営業人員の拡充や顧客獲得プロセスの継続的な改善、紹介パートナー及びOEMを含む販売パートナーの拡大など営業機能の強化に努めてまいります。
② 顧客エンゲージメントの強化
当社のサービスを普及させていくには、既存顧客との関係性を強化し、継続的に『カオナビ』を利用していただくことも重要な課題であると認識しております。当社は、これまでも『カオナビ』の導入や定着の支援、カオナビキャンパスを通じたセミナーやコミュニティなど顧客エンゲージメント強化のための取り組みに注力してまいりました。「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3)『カオナビ』が選ばれる理由」にも記載のとおり、カスタマーサクセスの取り組みとしてさまざまな施策を実施しております。
今後、これらの活動をより一層強化・推進して、顧客に『カオナビ』の導入効果を最大限享受していただくことに努めてまいります。
③ サービスの改善と機能拡充
インターネット業界においては常に技術革新が起こっており、競争優位性を維持していくことは容易ではありません。
当社グループは、新規顧客の獲得及び既存顧客の継続的なサービス利用のため、このような技術トレンドを捉えた製品開発を継続してまいります。当連結会計年度におきまして、当社グループは開発ロードマップを開示し、既存機能のアップデートや新機能のリリースを複数実行いたしました。今後も、細やかな改善を積み重ねることでユーザビリティを徹底的に追求するとともに、多様化する顧客ニーズや潜在的な要望を的確に捉えた機能開発を行い、顧客体験価値の向上を目指した継続的なサービスの改善、機能の拡充に努めてまいります。
④ 情報管理体制の継続的な強化
当社グループは、顧客の従業員に関する個人情報を預かっており、その情報管理を強化していくことが重要な課題であると認識しております。当社はプライバシーマークを取得し、個人情報保護方針及び社内規程に基づき管理を徹底しておりますが、今後も継続して社内教育・研修の実施やシステムの整備などを行ってまいります。
また、2024年3月29日付で公表しました子会社であるワークスタイルテック株式会社の個人情報漏えいに関して、再発防止策を講じるとともに、グループ企業においても情報管理体制の継続的な強化を図ってまいります。
⑤ セキュリティの継続的な向上
当社グループサービスの継続利用の前提として、セキュリティの確保は必要不可欠であると考えております。当社では、ISO27001(ISMS認証)、ISO27017(ISMSクラウドセキュリティ認証)を取得して継続的なセキュリティマネジメント体制を構築しており、「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)」のクラウドサービスリストにも登録されております。また、外部業者による脆弱性診断を継続的に実施し必要な対策を取るとともに、全社員に対しても年次のセキュリティ研修を実施することで、セキュリティの向上に努めております。当該対策に終わりはないと認識しており、グループ全体でセキュリティ向上に向けた対策を行ってまいります。
⑥ 組織体制の強化
当社グループの持続的な事業成長には、多岐にわたる経歴を持つ優秀な人材を採用・育成し、組織体制を整備していくことが重要であると考えております。当社は、働く場所や時間に縛られず自分に合った働き方を選択できるMy Work Style制度を導入し、従業員の働きがいや生産性の向上を図る取り組みを行っております。今後も、当社グループのパーパスに共感し、高い意欲を持った優秀な人材を採用していくため、積極的な採用活動を行っていくとともに、従業員が働きやすい環境の整備や人事制度の構築、教育・研修体制の充実化に努めてまいります。
⑦ サステナビリティへの取組
気候変動問題への対応を含めた持続可能な社会の実現は、当社グループの持続的な成長の前提であり、これに貢献していくことが重要であると考えております。当社グループは、「ステークホルダーの期待」と「パーパスとの関連度」の観点から、当社グループが対応すべき社会課題を抽出し、当社グループが取り組むべき重要課題(マテリアリティ)として特定、開示しております。これらの重要課題に取り組むことで、持続可能な社会の実現に貢献し、パーパスの実現を目指してまいります。詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。
(注)1.ARR
Annual Recurring Revenueの略で、四半期末のMRR(Monthly Recurring Revenueの略で月額利用料の合計)を12倍して算出しています。なお、MRRは管理会計上の数値です。
2.ARPU
Average Revenue Per Userの略語で、利用企業1社当たりの月額利用料金の平均値を示しています。四半期末のMRRを利用企業数で除して計算しています。
3.調整後営業利益
営業利益+株式報酬費用+M&Aによるのれん償却費+その他一時費用
4.Well-being(ウェルビーイング)
身体的・精神的・社会的、3つの側面において良好な状態にあることをいいます。
5.日本の従業員100人以上の企業数は、総務省・経済産業省が公表している「平成28年経済センサス-活動調査」に基づき当社が算出しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題を企業の社会的責任と認識し、今後、事業活動を通じてさまざまな課題に対し、積極的に対応してまいります。
(1)当社グループの重要課題(マテリアリティ)
当社グループにおいて、気候変動等の地球環境問題、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理などサステナビリティに関する課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な利益の拡大と継続的な企業価値の向上において、重要かつ優先的に取り組むべきマテリアリティを特定し、積極的・能動的に取り組んでおります。他方、人的資本に関しては、パーパス実現に向け、テクノロジーによって一人ひとりの個性や才能を理解することで、個人のキャリア形成や働き方が多様化される社会を目指し、誰もが自分らしく働けるよう、さまざまな取り組みをしております。
そこで当社グループは、環境・社会・ガバナンスの属性から13の課題をマテリアリティとして特定し、さらに2領域4分野に分類することで、目指すべき方向性をより明確にしております。当社グループはこれらの実現に向け、取り組みを行ってまいります。
(2)ガバナンス
サステナビリティに関する方針、重要事項については、取締役や執行役員等を構成メンバーとする経営会議で審議のうえ、取締役会にて議論、決議することとしております。また、重要な課題は、中期経営方針の中で取り上げる等、対応策の推進を図っております。
(3)戦略
① 環境
当社グループは、気候変動を異常気象のリスクを増大させ、人類の生活基盤全体に影響を及ぼす重要な課題として捉えております。現在、世界全体で脱炭素社会の実現に向け、カーボンニュートラルへのさまざまな取り組みが行われております。当社グループにおいても、継続的に事業活動で排出される温室効果ガスを算定・モニタリングし、積極的に温室効果ガス削減に努め、気候変動の緩和に取り組んでまいります。気候変動に関わる重要事項に関しては、経営会議及び取締役会において議論・決議を行っております。
② 人的資本
経営目標の達成のためには、当社グループで働く一人ひとりが個性や才能を発揮し、自律的にキャリアを構築することが不可欠です。当社の求める人材は、当社のバリューを体現する人材であり、自己の能力を磨き、自律的に働き方を選択することで成果を発揮する人材と定義し、「ユニーク・パフォーマー」と呼んでおります。また、ユニーク・パフォーマーを確保・育成するための人材戦略の柱として、「多様な人材の確保」「成長支援」「柔軟な働き方」「Pay for Performance」の4つを掲げております。
③ 人権の尊重
当社グループは、データやテクノロジーの活用により、社会に対して多大な便益が期待される一方で、プライバシーの侵害や差別等のリスクも生じかねないことから、事業活動全体において、すべてのステークホルダーの人権を尊重することは重要な課題であると認識しております。人権は、人種、性別、国籍、出自、信条、政治的意見などにかかわらず、すべての人類が持つ基本的で普遍的な権利です。
当社グループでは、取締役会の承認を受けた「カオナビ人権ポリシー」のもと、人権啓発を推進しております。具体的には、経営会議において、人権意識の向上に資する取り組みに関する議論、実行の指示、内部通報窓口に寄せられた事項の調査・対処等の活動を行っております。
④ 情報セキュリティ
当社グループサービスの継続利用の前提として、セキュリティの確保は必要不可欠であると考えております。当社では、ISO27001(ISMS認証)、ISO27017(ISMSクラウドセキュリティ認証)を取得して継続的なセキュリティマネジメント体制を構築し、2021年12月には「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)」のクラウドサービスリストに登録されております。また、すべての役員及び従業員が情報セキュリティ方針を遵守・運用するため、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)管理責任者を指名し、情報セキュリティ委員会を設置しております。
(4)リスク管理
当社グループは、中期経営方針の柱の1つとして、非財務的な活動の推進を掲げております。取締役会において、中期経営方針を決議し、サステナビリティの課題について議論しております。サステナビリティを巡るリスクや機会については、担当部門によりリスク管理しており、短期(~3年)、中期(4~10年)、長期(11年~)の時間軸で気候変動に伴うリスクと機会を評価しております。認識した気候変動リスクと機会については、以下のとおりに対策を進めてまいります。
主なリスク
リスク項目 |
想定しているリスクの内容 |
対策 |
期間 |
政策/規制 |
温室効果ガス削減に関する規制強化や、排出権取引・炭素税等の導入等への対応におけるコスト増加 |
温室効果ガス排出量の明示及び管理を実施しております。 二酸化炭素排出量の実質ゼロを目指します。 |
中期 (4~10年) |
物理 |
自然災害等に起因するオフィスや設備等の損壊等により事業継続に影響を与えるリスク |
BCP(事業継続計画)、テレワーク推進、防災訓練、備蓄品の配備をしております。 |
短期 (~3年) |
平均気温の上昇により熱中症が頻発、生産性低下や冷房使用の増加によるコスト増大のリスク |
長期 (11年~) |
||
その他 |
気候変動に対する取り組みが積極的でないとみなされた場合に生じうる資金調達への影響、レピュテーションリスク |
気候変動対策の積極的な推進と開示をしてまいります。 |
中期 (4~10年) |
主な機会
機会項目 |
想定している機会 |
期間 |
製品及びサービス |
サービス利用の過程において、顧客のペーパーレス化を促進(紙で保管されていた人材情報をクラウド上で保存等)しております。 |
短期 (~3年) |
(5)指標及び目標
原則として、指標及び目標は当社グループ全体で管理していく方針ですが、ワークスタイルテック株式会社はグループ化した直後であるため指標のデータ管理体制構築に注力しております。このため、指標に関する実績は、単体のみで記載しておりますが、現状の社員数を連結で比較した時に連結と単体それぞれの集計数値は大きく乖離しないと判断しております。
① 温室効果ガスの抑制
当社グループは、日本政府が発表した2050年のカーボンニュートラルへの方針に賛同しております。サステナビリティに関する指標及び目標として、継続的に事業活動で排出される温室効果ガスの排出量を算定・モニタリングし、Scope1及び2は2028年までに、Scope3は2035年までに、排出量実質ゼロを目指してまいります。目標の実現に向け、Scope3における各カテゴリーをより精緻に算出しました。
温室効果ガス排出量
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|
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2023年3月期 |
2024年3月期 |
Scope1(t-Co2) |
都市ガス |
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該当なし |
該当なし |
Scope2(t-Co2) |
オフィス電力 |
|
|
|
Scope3(t-Co2) |
購入した製品・サービス |
カテゴリ1 |
3,137.7 |
4,341.1 |
資本財 |
カテゴリ2 |
124.4 |
43.6 |
|
エネルギー関連活動 |
カテゴリ3 |
- |
- |
|
輸送、配送(上流) |
カテゴリ4 |
12.4 |
9.6 |
|
事業から出る廃棄物 |
カテゴリ5 |
16.8 |
15.3 |
|
出張 |
カテゴリ6 |
52.1 |
108.1 |
|
雇用者の通勤 |
カテゴリ7 |
14.6 |
19.6 |
|
リース資産(上流) |
カテゴリ8 |
- |
- |
|
輸送、配送(下流) |
カテゴリ9 |
- |
- |
|
販売した製品の加工 |
カテゴリ10 |
- |
- |
|
販売した製品の使用 |
カテゴリ11 |
- |
- |
|
販売した製品の破棄 |
カテゴリ12 |
- |
- |
|
リース資産(下流) |
カテゴリ13 |
- |
- |
|
フランチャイズ |
カテゴリ14 |
- |
- |
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投資 |
カテゴリ15 |
- |
- |
(注)計測した数値は単体のみで集計しております。
② 従業員サーベイ及び人的資本ROI
中期経営目標の達成に向けた最重要指標は、従業員サーベイ及び人的資本ROIです。
従業員サーベイは、バリューの浸透度、エンゲージメント指数の2つの観点からユニーク・パフォーマーの育成状況を定期的に測定し、各種人事施策の改善に活用しております。また、人的資本への投資を適切に行った上でリターンを高めることも目標にしております。
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2023年3月期 |
2024年3月期 |
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83.8 |
|
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86.6 |
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83.5 |
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(注)1.ユニーク・パフォーマー・サーベイのうち、バリュー浸透に関する設問にポジティブな回答(「とてもそう思う」「ややそう思う」)をした割合
2.ユニーク・パフォーマー・サーベイのうち、エンゲージメントに関する設問にポジティブな回答(「とてもそう思う」「ややそう思う」)をした割合
③ 多様性の確保
さまざまなバックグラウンドを持った従業員が、それぞれの能力と個性を発揮し、変化に対応していくことが新たな価値創出に繋がると考え、人材戦略の柱の一つとして「多様性の確保」を掲げております。キャリア採用者、女性、外国籍、障がいを持つ従業員など、多様な人材の採用、起用を積極的かつ継続的に行い、それぞれの能力と個性を発揮して活躍するための仕組みの構築に努めてまいります。
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2023年3月31日 |
2024年3月31日 |
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0.4 |
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(注)計測した数値は単体のみで集計しております。
・女性活躍推進
今後もさらなる女性の活躍推進を目指し、優秀な女性従業員の抜擢や男女間賃金格差の解消のほか、子どもを安心して出産し育てられる職場環境づくりや、育児サポートの制度を整備してまいります。
また、男性従業員が育児休業を取得することで、男性従業員の育児参加だけではなく、配偶者の育児負担を軽減し、配偶者のキャリア形成を支援することができると考えております。育児休業取得者の経験談の紹介や育児休業取得者の上司への制度理解の促進等を通じて、男性従業員向けに制度の認知向上に取り組んでまいります。
これらの取り組みは、管理職に占める女性労働者の割合や男性労働者の育児休業取得率等の政府目標を達成することを目指し、以下の指標を通じて進捗を測っております。
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2023年3月31日 |
2024年3月31日 |
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24.4 |
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2023年3月期 |
2024年3月期 |
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86.4 |
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0.0 |
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100.0 |
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100.0 |
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(注)計測した数値は単体のみで集計しております。
・LGBTQ+に関する取り組み
婚姻関係にある配偶者に加えて、同性パートナーも社内規程上の配偶者として追加し、休暇や慶弔見舞金などにおいて、婚姻関係の有無による差別を解消してまいります。
④ 成長支援
従業員が自身の仕事とキャリアに主体性を持ち、挑戦し続けることを支援することは、ユニーク・パフォーマーを育成するために重要であると考え、人材戦略の柱に「成長支援」を掲げております。従業員が、自らのキャリアビジョンを明らかにし、その実現を図るため、自律的・継続的に自らのキャリア形成に取り組んでいる状態を目指してまいります。
・研修制度の充実とキャリア申告制度
従業員自らが学ぶ機会を提供するため、階層別研修や社内研修制度の充実を図ります。自身の現在地の振返りと将来の見通しの明確化を目的としたWCM(Will、Can、Must)シートの運用、上司以外の従業員との1on1を通じた非連続のキャリアの模索、自身で思い描いたキャリアを申告し挑戦したいポジションに名乗りを上げるハンズアップ制度等により、従業員主体のキャリア構築を促してまいります。この社内での自律的なキャリア実現をモニタリングする指標として、本部を越えた異動を実現した従業員の人数を指標としております。
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2023年3月期 |
2024年3月期 |
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15 |
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・兼業推奨
兼業は、従業員が普段と異なる業務を行うことで新たなスキルや経験を獲得し、視野を広げることに繋がるため、業務にも良い影響を及ぼすものと考え、従業員の兼業を推奨してまいります。
社内でのキャリア実現と合わせ、兼業率及び離職率は社外でのキャリア実現の指標と考えております。いずれも適正な水準で推移しており、同水準であるかを確認しております。
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2023年3月期 |
2024年3月期 |
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1,207 |
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23.0 |
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14.2 |
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(注)計測した数値は単体のみで集計しております。
⑤ 柔軟な働き方
従業員一人ひとりが最も成果を最大化できる働き方を自ら選択できる環境を提供することは、ユニーク・パフォーマーの成果の発揮に必要不可欠であると考えており、人材戦略の柱に「柔軟な働き方」を掲げております。そこで当社では、スーパーフレックス制度、勤務時間と休憩時間を柔軟に組み合わせて働くことを認めたスイッチワーク制度、リモートワーク制度等を総称して「My Work Style制度」として導入しております。この「My Work Style制度」の浸透により、効率的な業務遂行が定着し、適正な労働時間を達成してまいります。
これらの指標として、リモートワーク率を測り、80%前後の水準を目安としております。
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2023年3月期 |
2024年3月期 |
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82.0 |
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(注)計測した数値は単体のみで集計しております。
⑥ Pay for Performance
従業員の成長や成果には、報酬やより成長できるポジションを提供することで報いることはユニーク・パフォーマーの確保・育成に重要であると考えており、人材戦略の柱に「Pay for Performance」を掲げております。これらの取組の結果は、最年少管理職年齢、年俸額の高い増加率を達成した従業員の割合を指標としております。
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2023年3月期 |
2024年3月期 |
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28 |
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28 |
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34 |
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34 |
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24.0 |
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当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しております。あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の判断にとって重要であると当社グループが考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、本項の記載内容は主要なリスクであり、当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績及び財政状態に及ぼす影響につきましては、合理的に予見することが困難なため記載しておりません。また、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)事業環境に関するリスク
① 競合について
当社グループのタレントマネジメントシステム事業の分野において、競合企業が存在しております。また、当該事業分野が成長市場であること及び参入障壁が必ずしも高いとは言えないことから、今後、さらなる他社の新規参入により競争が激化する可能性があります。
競合企業の営業方針、価格設定及び提供する製品・サービス等は、当社グループが属する市場に影響を与える可能性があり、これらの競合企業に対して効果的な差別化を行うことができず、当社グループが想定している事業展開が図れない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、引き続き顧客のニーズを汲んだ製品・サービスの提供を進める方針であります。
② インターネット利用の普及について
当社グループは、インターネットを介してサービスを提供しております。そのため、スマートフォンやタブレット型端末等の新しいデバイスの普及により、インターネットの利用環境が引き続き整備されていくと共に、同関連市場が今後も拡大していくことが事業展開の基本条件であると考えております。
インターネットの普及に伴う弊害の発生、利用に関する新たな規制の導入、その他予期せぬ要因によってインターネット利用の順調な発展が阻害された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、インターネットの普及に伴う情報セキュリティ等の社会動向、利用に関する新たな規制導入の動向を把握するべく努めております。
③ 技術革新について
当社グループが事業展開しているインターネット関連市場では、技術革新や顧客ニーズの変化のスピードが非常に早く、インターネット関連事業の運営者はその変化に柔軟に対応する必要があります。
当社グループが技術革新や顧客ニーズの変化に適時に対応できない場合、又は、変化への対応のためにシステム投資や人件費等多くの費用を要する場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、最新の技術動向や環境変化を常に把握できる体制を構築するだけではなく、優秀な人材の確保及び教育等により技術革新や顧客ニーズの変化に迅速に対応できるよう努めております。
(2)事業内容及び当社グループサービスに関するリスク
① 特定の製品への依存について
当社グループのタレントマネジメントシステム事業は、特定のサービス『カオナビ』に依存した事業となっております。上記(1)①に記載のとおり、競合企業や新規参入企業との競争激化等が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、今後も新機能の追加により競合企業のサービスとの差別化を図るとともに、新規事業や新サービスの展開により、リスク低減を進めてまいります。
② システムトラブルについて
当社グループのサービスは、インターネットを介して提供しておりますが、大規模なプログラム不良や自然災害、事故、不正アクセス、その他何らかの要因によりシステム障害やネットワークの切断等予測不能なトラブルが発生した場合には、社会的信用失墜等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、安定的なサービスの運営を行うために、サーバー設備の増強、セキュリティの強化、システム管理体制の構築等により、システム障害に対する万全の備えをしております。
③ 解約について
当社グループの提供するサービスを継続利用することで生じるストック収益は、持続的に増加傾向にありますが、当社グループサービスの市場競争力の低下等によって解約が増加し、ストック収益が減少した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、顧客ニーズを的確に捉え、その要望を入念に吟味しながら、サービス機能の追加・改善、外部サービスとのAPI連携、サポート体制の充実など、顧客価値の向上を目指した継続的な機能・サービスの拡充に努めてまいります。
(3)法的規制及び知的財産権等に関するリスク
① 個人情報保護について
当社グループは、提供するサービスに関連して個人情報を取り扱っているため、「個人情報の保護に関する法律」が定める個人情報取扱事業者としての義務を課されております。
当社グループが保有する個人情報等につき漏えい、改ざん、不正使用等が生じる可能性が完全に排除されているとはいえません。従いまして、これらの事態が起こった場合、適切な対応を行うための相当なコストの負担、当社グループへの損害賠償請求又は信用の低下等によって、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、2024年3月29日付で公表しました子会社であるワークスタイルテック株式会社の個人情報漏えいに関して、今後関係各所から同社が損害賠償請求を受ける恐れがあります。
当該リスクに対しては、個人情報の外部漏えいの防止はもちろん、不適切な利用、改ざん等の防止のため、個人情報の管理を事業運営上の重要事項と捉え、アクセスできる社員を限定すると共に、個人情報保護規程等を制定し、全従業員を対象として社内教育を徹底する等、同法及び関連法令並びに当社グループに適用される関連ガイドラインを遵守してまいります。また、当社は2012年7月に取得したプライバシーマークを更新し、個人情報の保護と厳重なる社内管理、漏えい防止に積極的に取り組んでおります。さらに、内部監査室によるセキュリティ対策の有効性、実行についての継続的な監査の実施などのセキュリティ推進に必要な体制を構築しております。
② 知的財産権について
当社グループの提供するサービスが第三者の特許権、著作権等の知的財産権を侵害する可能性については、当社グループの提供するサービスに関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であることから、当社グループが認識せずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できません。また、将来当社グループが提供するサービスに関連して、当社グループが知的財産権を取得するよりも前に他の事業者等が特許権その他の知的財産権を取得する可能性があります。これらの場合、当社グループに対する訴訟等が発生し、当社グループが提供するサービスに影響が出る可能性があるほか、当該訴訟等への対応のために必要となるコストの発生により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、知的財産保護方針及び知的財産保護規程を制定し、当社グループの知的財産の保護及び他者の知的財産の侵害の防止を図るとともに、弁理士等の外部専門家を通じて調査を行っております。
③ その他訴訟等について
当社グループは、その事業活動の遂行過程において、取引先及び従業員等により提起される訴訟その他の法的手続の当事者となるリスクを有しています。これらの手続は結果の予測が困難であるため、多額の費用が必要となり、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。さらに、これらの手続において当社グループの責任を問うような判断がなされた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対し、当社グループでは、事業活動の遂行に際し、法規制の適用を受ける業務の特定、リスクに応じた措置の実行、従業員に対する教育を実施しコンプライアンスの強化に努めております。
(4)組織体制に係るリスク
① 経営管理体制について
当社グループは、事業の拡大に応じて内部管理体制の整備を進めており、今後も一層の充実を図る予定ですが、適切な対応がなされなかった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、今後、事業拡大に応じた人的・組織的対策を継続し、内部管理体制の充実を図る方針であります。
② 人材の確保や育成について
当社グループは、継続的な事業拡大のためには、優秀な人材の確保、育成及び定着が最も重要であると認識しておりますが、当社グループが求める優秀な人材が必要な時期に十分に確保・育成できなかった場合や人材流出が進んだ場合には、経常的な業務運営及び事業拡大等に支障が生じることや、採用費が計画から乖離すること等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、従業員が働きやすい環境の整備や人事制度の構築、教育・研修体制の充実化に努めてまいります。
(5)その他
① 広告宣伝活動等の投資について
当社グループのタレントマネジメントシステム事業において、新規顧客獲得数は非常に重要な要素であり、『カオナビ』の認知度と関心の向上のため、これまでもWEB広告やTVCM等の広告宣伝活動やイベント出展等の販売促進活動を積極的に実施して、新規顧客の獲得に努めてまいりました。
広告宣伝活動等への投資については、今後も積極的に実施していく方針ですが、蓄積した知見に基づき期待される費用対効果や新規顧客獲得数が得られない等、当社グループの想定したとおりに営業収益が推移しない場合は当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、継続的な市場動向への注視と広告宣伝の費用対効果の測定を行うことで最善のブランディングとなる広告宣伝活動への投資を選択する等により、リスクの低減に努めてまいります。
② 新機能や新サービスの開発投資について
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指して、新機能や新サービスの開発活動を積極的に進めていく方針ですが、新機能や新サービスのリリースまでには一定期間の研究開発投資を要するため、当社グループの利益率を低下させる可能性があります。また、将来の事業環境の変化等により、新機能や新サービスの提供によるARRの成長が当社グループの想定したとおりに推移せず、投資に対して想定していた成果の獲得に繋がらなかった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、市場動向を充分に観察・分析するとともに、事業計画や全社利益の状況に応じて、拡充する新機能や新たなサービスの研究開発投資の実行を判断する方針であります。
③ 子会社化により発生したのれんについて
当社は、人材データプラットフォームの拡大による持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指して、ワークスタイルテック株式会社の株式を取得して連結子会社としたことで当社グループの連結財務諸表にのれんが発生しております。
当該株式取得にあたり、企業の事業計画や財務内容、契約関係等の事前調査を十分に行った上で株式の取得価額を決定しておりますが、想定していた事業のシナジー効果等が得られない、デュー・デリジェンスの限界等から、同社の業績が事業計画の通りに推移せずに当初期待していた投資のリターンが得られず、発生したのれんの減損損失が発生する場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 企業への投資について
当社グループのタレントマネジメントシステム事業の強化、経営効率向上のため、当社グループの事業とのシナジーが期待される事業を展開している企業に対して資金支援を実施する『カオナビ NEXT FUND』を展開しております。
しかしながら、市場環境の変化や競争力の低下などにより、投資先企業が当初想定したとおりの事業展開ができない場合、当該会社の業績・財政状態の悪化により、投資有価証券評価損を計上する可能性があります。また、これらの投資においては、予め対象会社の法務・財務リスクなどを調査・評価しておりますが、投資時点では顕在化していない内部統制上の問題や、法令に抵触する可能性もあります。
これらの問題が発生した場合、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、年間出資上限額の設定や投資委員会による多方面からの慎重な検討を行いつつ、出資後も定期的なモニタリングを実施すること等により、リスクの低減を行っております。
⑤ 配当政策について
当社グループは、株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして位置付けておりますが、財務体質の強化に加えて事業拡大のための内部留保の充実等を図り、収益基盤の多様化や収益力強化のための投資に充当することが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。
将来的には、各事業年度における経営成績を勘案しながら、株主への利益還元を検討していく所存でありますが、現時点において、配当実施の可能性及び実施時期は未定であります。
⑥ 株式会社リクルートホールディングスとの関係について
株式会社リクルートホールディングスは、合同会社RSIファンド1号及び株式会社リクルートを通じて当連結会計年度末現在、当社の発行済株式総数の21.2%を保有するその他の関係会社に該当しておりますが、同社より役員等の派遣を受け入れていないこと、経営の意思決定において同社への事前承認等を要しないこと等、当社グループの事業運営の独立性は保たれていると認識しております。なお、同社グループとの取引については、他の企業の取引条件との比較等により取引条件の適正性等を確保する方針です。
当社グループは、2017年3月に同社からの資本参加を受けて以来、HRテクノロジー市場での事業拡大に向けて、同社グループとさまざまな協業を推進してまいりました。しかしながら、同社の経営方針やグループ戦略が変更された場合等、何らかの理由により当社グループとの関係が将来において変化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化
当社では、当社の役職員に対するインセンティブを目的として新株予約権を付与しており、当連結会計年度末現在における発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は3.2%となっております。
これらの新株予約権が行使された場合には、当社の株式が発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。
⑧ 繰延税金資産の回収可能性について
繰延税金資産の計算は、将来の一定期間における事業計画に基づく課税所得に関する見積りを含めたさまざまな予測・仮定に基づいており、実際の結果がかかる予測・仮定とは異なる可能性があります。
また、当社グループの事業は今後の市場の成長性が見込まれている一方で、競合他社の存在等により新規顧客獲得数には一定の不確実性を伴い、実際の課税所得の発生時期及び金額が見積りと異なった場合にも、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、前連結会計年度との比較分析は行っておりません。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
a.資産
当連結会計年度末における資産合計は6,544百万円となりました。その主な内訳は、現金及び預金が4,688百万円、のれんが615百万円であります。
b.負債
当連結会計年度末における負債合計は4,232百万円となりました。その主な内訳は、前受収益が2,693百万円、未払金が324百万円であります。
c.純資産
当連結会計年度末における純資産合計は2,312百万円となりました。その主な内訳は、資本金が1,153百万円、資本剰余金が1,143百万円であります。
② 経営成績の状況
当社グループは、「“はたらく”にテクノロジーを実装し、個の力から社会の仕様を変える」というパーパスのもと、テクノロジーによって一人ひとりの個性や才能を理解することで、個人のキャリア形成や働き方が多様化される社会の実現を目指しております。その実現のため、「人材情報を一元化したデータプラットフォームを築く」というビジョンを掲げ、企業の人材情報をクラウド上で一元管理し、データ活用のプラットフォームとなるタレントマネジメントシステム(TMS)『カオナビ』を提供しております。
生産年齢人口の減少を背景に、生産性の向上、多様な働き方への対応、人材の定着や離職防止、採用の強化など、企業はさまざまな人事課題を抱えております。その解決に向けて、TMSの導入ニーズは高まっており、その市場は今後さらなる拡大が見込まれております。
当社グループは、中期経営方針として、「継続的なARR(注1)の成長」、「収益性の向上」、「非財務的活動の推進」の3つを掲げております。
継続的なARRの成長に向けた施策の一環として、人材データベースを軸にさまざまなサービスと連携して付加価値を高めることで、顧客に最適なUX(顧客体験)を提供する人材データプラットフォームの構築を目指しております。当連結会計年度においては、既存機能のさらなる改善に加えて、新機能の開発に注力することで、人材データプラットフォームの拡大・進化を進めてまいりました。具体的には、学習管理システム『ラーニングライブラリ』、ジョブ型雇用の実現をサポートする『ポジションマッチング』、人的資本の情報開示に必要なデータを一覧表示できる『人的資本テンプレート』、スキル管理機能として『アビリティマネージャー』などをリリースしております。また、労務管理システム『WelcomeHR』を提供するワークスタイルテック株式会社を子会社化しました。
上記に加えて、人材採用や育成をはじめとした組織体制の強化、サービス認知度向上を加速するためのマーケティング活動、既存顧客に対するカスタマーサクセスの取り組みなどに注力してまいりました。
この結果、当連結会計年度末におけるTMSのARR(注2)は前事業年度末比27.4%増の8,112百万円、TMSの利用企業数(注3)は同20.2%増の3,677社、TMSのARPU(注4)は同6.0%増の184千円となりました。また、TMSの解約率(注5)の直近12ヶ月平均は0.42%(同0.09ポイント減)となり、低い水準を維持しております。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績は売上高7,625百万円、調整後営業利益(注6)814百万円、営業利益679百万円、経常利益675百万円、親会社株主に帰属する当期純利益699百万円となりました。
なお、当社グループの報告セグメントは、タレントマネジメントシステム事業のみであり、その他の事業セグメントの重要性が乏しいため、セグメント別の記載は省略しております。
(注)1.ARR
Annual Recurring Revenueの略で、四半期末のMRR(Monthly Recurring Revenueの略で月額利用料の合計)を12倍して算出しています。なお、MRRは管理会計上の数値です。
2.TMSのARR
四半期末のタレントマネジメントシステム『カオナビ』から計上されるMRR(TMSのMRR)を12倍して算出しています。
3.TMSの利用企業数
四半期末のタレントマネジメントシステム『カオナビ』を導入している企業や団体の数をいいます。
4.TMSのARPU
Average Revenue Per Userの略で、四半期末のTMSのMRRをTMSの利用企業数で除して計算しています。
5.TMSの解約率
MRRの解約率を示しており、当月の解約により減少したTMSのMRRを前月末のTMSのMRRで除して計算しています。
6.調整後営業利益
営業利益+株式報酬費用+M&Aによるのれん償却費+その他一時費用
③ キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、4,688百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の増加は1,388百万円となりました。これは主に、前受収益の増加額578百万円、税金等調整前当期純利益の計上561百万円等の資金の増加があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の減少は179百万円となりました。これは主に、敷金の回収による収入277百万円の資金の増加があったものの、連結の範囲の変更を伴う子会社化株式の取得による支出406百万円等の資金の減少があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の増加は80百万円となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出337百万円等の資金の減少があったものの、長期借入れによる収入300百万円、短期借入金の純増加額100百万円等の資金の増加があったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは、生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、受注状況の記載になじまないため、記載を省略しております。
c.販売実績
販売実績は、次のとおりであります。
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
|
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
7,625 |
- |
(注)1.当社グループの報告セグメントは、タレントマネジメントシステム事業のみであり、その他の事業セグメントの重要性が乏しいため、セグメントごとの記載はしておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りとは異なる場合があります。特に、のれんの評価、繰延税金資産の回収可能性については重要な会計上の見積りが必要となります。当該見積り及び仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響などは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
また、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
② 経営成績の分析
a.売上高
当連結会計年度における売上高は7,625百万円となりました。これは主に、マーケティングから受注に至る一連のプロセスにおいてモニタリング体制の強化と営業アプローチの改善を重ねて新規顧客を獲得していく一方で、既存顧客のサービス活用推進を図るためのカスタマーサクセスやプロダクト開発・機能強化とに注力して解約率を低水準に抑えた結果、タレントマネジメントシステム事業が順調に成長したことによるものであります。なお、当連結会計年度末の『カオナビ』の利用企業社数は3,677社であり、前連結会計年度末比で618社増加しております。
b.売上原価、売上総利益
当連結会計年度における売上原価は1,723百万円となりました。これは主に、外注費及びサーバー費の増加によるものであります。この結果、売上総利益は5,903百万円となりました。なお、当連結会計年度の売上総利益率は77.4%となりました。
c.販売費及び一般管理費、営業損益
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は5,224百万円となりました。これは主に、人員拡大に伴う給与の支払いとサービスの認知度向上のための広告宣伝等マーケティング費用、新機能や新サービスの開発による研究開発費が増加したことによるものであります。この結果、営業利益は679百万円となりました。なお、当連結会計年度末の従業員数は322名であります。
d.経常損益
当連結会計年度において営業外収益が0百万円、営業外費用が4百万円発生しております。この結果、経常利益は675百万円となりました。
e.親会社株主に帰属する当期純損益
当連結会計年度において、法人税、住民税及び事業税が152百万円、法人税等調整額が△290百万円発生しております。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は699百万円となりました。
③ 財政状態の分析
当連結会計年度における財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」をご参照ください。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。
⑤ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、人件費、外注費、広告宣伝費等の営業費用であります。
運転資金は自己資金を基本としており、投資資金は自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。なお、当連結会計年度末における借入金残高は418百万円となっております。また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は4,688百万円であり、流動性を確保しております。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
⑥ 経営戦略の現状と見通し
経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
⑦ 経営者の問題意識と今後の方針
今後、当社グループが長期的な競争力を維持し持続的な成長を図るためには、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のさまざまな課題に対処していくことが必要であると認識しております。当社グループがそれらの課題に対応するためには、経営者は常に事業環境の変化に関する情報を入手して分析を行い、当社グループの事業が企業の抱える人事課題の解決や戦略的人事の実現に繋がるためのサービス改善や機能拡充を継続的に行うことで企業に貢献するとともに、当社グループ全体でサステナビリティを意識した事業活動や取り組みを行っていくことで持続可能な社会の実現にも寄与していきたいと考えております。
その結果、企業の働き方やマネジメントのあり方をより良いものに変え、個人一人ひとりの個性や才能が理解されることによるキャリア形成や働き方が多様化される社会の実現を目指し、事業を展開していく方針であります。
(借入金の期限前弁済)
当社は、2020年1月に株式会社みずほ銀行から旧本社オフィス(東京都港区)の敷金支払資金として390百万円の借入を行いましたが、2023年7月に新本社オフィス(東京都渋谷区)に移転したことに伴い、旧本社オフィスに係る敷金が返還されたため、2023年12月29日付で金銭消費貸借契約に基づく借入金(残高91百万円)の期限前弁済を行いました。
(株式取得による子会社化)
当社は2023年12月7日開催の取締役会において、ワークスタイルテック株式会社の株式取得及び第三者割当増資引受により同社を子会社化することを決議し、同日付で株式譲渡契約及び募集株式総数引受契約を締結いたしました。また、2024年1月12日付で当該株式取得等による同社の子会社化が完了しております。
詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
当社グループは「人材情報を一元化したデータプラットフォームを築く」というビジョンに基づき、人材データベースを軸にさまざまなサービスと連携することで、より高い顧客体験価値を提供する人材データプラットフォームの構築を目指しております。
その結果、当連結会計年度における研究開発費の総額は
(1)新機能のリリース
タレントマネジメントシステム(TMS)『カオナビ』は、新機能や新サービスの開発を通じて、人材データプラットフォームとしての価値向上に注力するため、学習管理とナレッジシェアでリスキリングを推進する「ラーニングライブラリ」、ジョブ型雇用の実現をサポートする「ポジションマッチング」、上場企業の人的資本開示情報を一覧化した「人的資本データnavi β版」、スキルの定義付けから見える化までをワンストップで実現させる「アビリティマネージャー」をリリースしました。
また、メンバーの顔と名前を覚えるきっかけ作りや社内コミュニケーションの活性化のニーズに応えるため、オンボーディング促進とエンゲージメント向上を目的としたゲームアプリ「カオパス」をリリースしました。
(2)新サービスのリリース
タレントマネジメントで培った人事領域だけでなく、迅速な経営判断をサポートすることで人的資本経営の好循環を後押しすべく、2024年4月に、経営データをリアルタイムで可視化する予実管理システム「ヨジツティクス」をリリースしております。
なお、当社グループの報告セグメントは、タレントマネジメントシステム事業のみであり、その他の事業セグメントの重要性が乏しいため、セグメント別の記載は省略しております。