第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等については以下のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において判断したものであり、将来において様々な要因により、実際の結果と異なる可能性があります。

 

(1)グループ経営理念

 当社グループは、創業以来掲げてきた「生活文化創造企業」をグループ共通の経営理念とし、グループ全ての事業において生活文化創造=未来の『あたりまえ』を発見するという共通理念の下、事業運営に取組んでおります。

 また、この理念を経営戦略に反映させるため、3年ごとに中期経営計画を策定し、その時々の経営環境や課題を鑑みて計画ごとにテーマ並びに経営ビジョンとビジョン実現に向けた基本方針を設定しております。

 

(2)経営戦略等

 当社グループは、2023年4月に第7次中期経営計画「Evоlve!!」を策定いたしました。当社グループがこれまで進めてきた各セグメントの新しい取組に加え、さらに視野を広げることで幅広い分野の顧客の消費意識の変化を先取りした新しい価値の創出を進め、社会の要請に応えることを目指しております。

 当計画では、「進化することで社会課題の解決に資する存在であり続けること」に基づき、各事業セグメントにおいては、新たな製品・サービスの開発に努めてまいります。また、デジタルを活用して人間にしか創り出せないアナログ的価値を提供することを目指し、更なる販売拡大に向けて、人員やシステム、設備などへの積極的な投資を行ってまいります。

 

(3)当社グループを取り巻く事業環境と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループを取り巻く環境は、感染症による社会活動への影響が落ち着き社会の正常化が進む中で、インターネット通販市場の拡大、テレワーク・オンライン会議の一般化や、郊外型の住宅環境と安全な移動手段としてのマイカー保有等、コロナ禍での外出自粛から始まった新しい生活様式については、今後も恒常的に残ると想定されます。

 このような生活様式の変化は、足元の当社既存製品の需要掘り起こしに寄与するだけでなく、今後ユーザーの更なる価値観の変化と新たな市場を生み出す源泉にもなると考えております。特に自動車分野においては、改めてその価値が見直されることとなったマイカー保有とサステナビリティの両立の観点から、自動車メンテナンスの需要が増え、また、産業分野や生活分野においても、コロナ禍によって医療・衛生分野に向けた関心が高まっていることから、新しい提案を行う機会が増加すると考えております。

 また、当社グループを取り巻く環境は、自動車保有形態の変化、カーケア関連製品の購買に関するユーザーの意識変化や、ハイテク関連分野の競争激化といった市場の変化が着実に進行している状況です。近年はこれらに加えて「所有から利用」「時間に対する価値意識」等、ユーザーの消費意識の変化が顕著に表れております。

 さらにSDGsに代表されるサステナビリティへの社会的な取組みの進展や、デジタルトランスフォーメーションの進行・浸透により、これまで不便だったことがデジタル技術を用いて劇的に改善される可能性が高まっています。このようなユーザーや市場の変化は、当社グループにとって新たなビジネスチャンスが生まれてくる状況であると認識しております。

 当社グループを取り巻く事業環境の変化に対応するためには、作業の効率化や付加価値を高めるために「デジタルの活用」を推進することは必要不可欠であると認識しております。

 デジタルを活用した製品・サービスの付加価値向上だけでなく、効率化によってもたらされる時間を活用し、心を揺さぶるような人にしか創り出せない「アナログ的価値」を提供することで利益の成長を推進し、経営効率の改善を伴う事業規模拡大の実現を目指します。

 

 事業運営上の効率性指標としては、第7次中期経営計画においても第6次中期経営計画より採用しているROICを継続し、ROICが資本コストを上回ることを目指します。その次のステップとして新分野・新事業に向けた投資による業容の拡大を指向しております。

 

・各セグメントにおける主要施策について

〈ファインケミカル〉

 自動車分野では、消費者にカーライフの「キレイ」「安全・安心・快適」「修復」を届ける活動を推進していきます。

 国内向け販売におきましては、サービスによる価値提供の強化をしつつ、業務用コーティング施策と連動した製品開発に努めてまいります。またWEBを経由した店舗との仕組み構築や集客施策の実施の強化や、新たな市場に対して意識を向けて当社製品が届いていない領域への進出に取組んでまいります。

 業務用製品の販売におきましては、施工業者様に対して、「磨き」を軸としたメニュー展開の推進や新たな得意先へのアプローチに力を入れるだけでなく、オンラインを活用することで集客システムの構築や海外G’zоxショップの研修強化に取組んでまいります。また、自動車分野以外にもビルメンテナンスやクリーニングといった「キレイ」を求めるあらゆる業界へのアプローチの継続とコロナ禍以降で需要が高まっている抗菌・抗ウイルス効果を付与した衛生管理製品の提案や、表面改質技術を活用した印刷・接着業界に向けた問題解決提案を行うことにより、新たな事業領域の拡張につなげてまいります。

 海外向け販売におきましては、SNSを積極的に活用して日本の洗車習慣を世界へ発信し、海外専売品のラインナップの強化や販売増加に取組んでまいります。また、今まで取引がなかったアフリカや米国などの新たな市場に進出するため、現地生産も視野に入れて化学規制に対する調査や販路の確立に努めてまいります。

 家庭用品販売においては、主力であるメガネケア製品での新たな販路開拓や、スポーツ用品向け等の販売カテゴリーでの売上拡大をはじめ、新たに業務用・眼科ルート開拓を軸にメガネケア習慣化推進に努めてまいります。

 TPMS(タイヤ空気圧監視装置)の企画・開発・販売におきましては、既存の得意先様へのメンテナンスサービスの推進に加え、TPMSで得られる空気圧データを活用した運転管理サービスの推進により、提供価値の拡充に努めてまいります。

 電子機器・ソフトウェア開発販売におきましては、従来取組んできたインフラ設備に対する開発販売の知見を活かし、消費者向け製品の開発に積極的に取組んでまいります。

 

〈ポーラスマテリアル〉

 産業資材分野では、半導体・液晶・HDDなどのハイテク産業に向けた製造装置の消耗部材販売において更なる清浄度や作業性、耐久性等の技術向上に努め、シェアの維持・拡大を図ります。また、次の収益の柱となる用途の創造を目指し、環境・健康などの分野において、新たな製品開発と顧客の開拓に取組んでまいります。特に医療分野においては、これを重点的な拡大分野と考えており、これまでの医療製品への部材提供から医療関連製品の自社開発への転換を目指して研究開発を進めてまいります。また、アズテック(株)による病院施設向け医療・衛生管理用品の企画・開発・販売事業の開始に併せ、医療現場ニーズに即した製品開発ノウハウの獲得による更なる開発力と販路の強化を進めてまいります。

 生活資材分野では、国内向けには日本製高品質素材訴求によって競合との差別化を図るとともに、WEBを活用したアプローチによる販売拡大に取組みつつ、自社ブランドの新たな開発に努めてまいります。また、海外向けには、スポーツ用途展開による新市場の開拓や、グループリソースを有効活用した新規市場開拓に取組んでまいります。

 また、更なる高品質製品の生産に向けて、生産体制の見直しや設備投資も進めております。

 

〈サービス・不動産関連〉

 自動車整備・鈑金事業においては、入庫車両数の確保を進めるとともに、輸入車メーカー認証の取得による対応車両の拡充を進めてまいります。また、美装向けのサービスの推進に合わせ、鈑金・美装における直需を強化するため、エンドユーザー向けのサービスの推進に努める他、オートディテイリングビジネスの拡大に向けて、国内・海外両面の販売展開を進めてまいります。

 自動車教習事業においては、兵庫県下でトップクラスの入所者数を維持しつつ、高齢者講習ビジネスの強化やドローンライセンスの強化に加え、教習所指導員のノウハウを活用した安全運転管理システムの商品開発を進めることで、新たな収益源の構築を目指します。

 生活用品企画開発事業においては、生協向けの取引先や提案数の拡大に加え、ECサイトの再構築と自社による企画製品を強化することにより、これまでリーチできていなかった顧客層に向けて提案を行えるプラットフォームの確立を目指します。

 不動産関連においては、保有不動産の有効活用を目的としつつ、デジタルの活用など新たな要素を掛け合わせることで今までにないサービスを創出し、他社との差別化や新規ユーザーの獲得に努めてまいります。

 

・経営効率の改善について

 当社グループは、経営効率改善のため、既存事業の運営効率向上と新規事業への投資による業容拡大の両面が必要であると認識しております。

 第7次中期経営計画における既存事業の運営効率指標としては、直接事業に供している資産から得られる利益率(投下資本利益率:ROIC)が資本コスト(概ね5.5%~6.0%の水準)を継続的に上回ることを目指し、その次のステップとして新分野・新事業に向けた投資による業容の拡大を指向しております。

 

 当社グループのROICの実績推移は以下のとおりです。

 

第6次中期経営計画

第7次中期経営計画

2023年

3月期

2024年

3月期

2025年

3月期(計画)

2026年

3月期(計画)

連結営業利益(百万円)

3,256

3,579

3,600

3,780

連結経常利益(百万円)

3,440

3,782

3,800

3,960

親会社株主に帰属する

当期純利益(百万円)

2,063

2,631

2,650

2,770

純資産(百万円)

52,772

54,627

56,087

57,100

総資産(百万円)

60,377

62,542

64,002

64,700

事業投下資本(百万円)

31,997

32,459

32,959

32,700

ROIC(%)※

7.1

7.7

7.6

8.1

ROE(%)(参考)

4.0

4.9

4.8

4.9

ROA(%)(参考)

5.7

6.2

6.0

6.1

 ※ROIC算定に使用される営業利益は税引後の数値となります。なお、税率は30%で算定しております。

 

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループはサステナビリティに対する方針として、ソフト99グループ行動憲章(https://www.soft99.co.jp/corporate/profile/philosophy/doc/constitution.pdf)で「省資源化による炭素源の削減や化学物質の適切な使用を推進することで、循環型社会の形成への貢献する」と明示しております。従前より持続可能性をめぐる様々な課題への対応については、企業価値向上における経営課題の1つであると認識しており、日々事業と社会の持続可能性を高める取組みを進めております。

 

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ

(1)ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティ全般のリスクと機会について代表取締役社長や各管掌部門の取締役が参加する会議で協議・特定し、重要事項については取締役会で情報を共有することにより、取締役会による監視体制は取れております。当社の代表取締役社長は、ISО14001に則った環境マネジメントシステムを活用することで主要なグループ会社の環境活動を統括しており、他のグループ会社においても、取締役や監査役と各種会議への参加を通じて評価・管理に直接関与し、グループ全体としての環境活動を統括しております。

 

(2)戦略

 当社グループでは、車のお手入れ製品や半導体向け製品など、化学品を製造販売する事業の構成比が高く、従来から化学品の品質及び安全性を保ち適切な使用を推進することが当社の持続可能性において重要であると認識しており、意識を高めて取組んでおります。

 また、経営方針や経営戦略などに短期的・中期的・長期的に影響を与える可能性がある気候変動をはじめとした様々な事柄に関するリスクや機会にも対処するため、ソフト99グループ行動憲章において持続可能性への取組み方針を掲げております。化学品の安全性や品質、今後の対応については代表取締役や各管掌部門の取締役が参加する会議で協議を進めており、その他のリスクや機会についても経営陣が出席する会議体で議論を重ねることによって、日々の企業活動の中で取組みを強化しております。

 

(3)リスク管理

 当社のリスク管理体制については、毎月開催される取締役会の中で各担当者より事業運営を把握するための定性情報及びこれに付随する定量情報をもとに、事業運営や主要なリスクに関する報告がされており、経営陣が適宜状況を把握・評価・管理する体制を構築しております。

 特に環境への取組みについては、所轄部門として管理部門がその主要な機能を有しております。管理部門が関係部門と連携を図りつつ、各事業部における運用状況のモニタリングや必要に応じて取締役会で経営陣に対して報告することで、サステナビリティ関連のリスク及び機会について適切に把握・評価・管理しております。

 

(4)指標及び目標

 化学物質の適切な使用として、原材料における規制リスク物質の代替処方開発だけでなく、代替製品への戦略的な販売移行やパッケージに使用されているプラスチック使用量の削減などの取組みも進めております。

 また、気候関連のリスク及び機会を管理するための指標として、事業活動の一連の流れで発生するGHG排出量Scоpe1、Scоpe2、Scоpe3を算定対象とし、当社のグループ特性に合わせた情報整理と集計を進めることで現状把握に努めてまいります。

 

 

(2)人的資本

 当社グループは、人財の成長が企業の成長・発展の基盤となると認識しており、価値創造を通じて人財が成長するとともに、新たな価値を創造し続けるサイクルを促進するための環境整備に努めております。

 また、人財の多様性確保が事業の継続性を確保する上で重要な要素の1つであると認識しております。グループ行動憲章において「多様性と人権の尊重」「労働環境の整備」を掲げ、性別や国籍などの属性条件から生じる様々な視点や価値観を相互に理解し、尊重しながら、公平かつ公正な採用活動や人事評価、人財育成を行うことで、人的資本の価値最大化を目指しております。

 

(1)戦略

 当社グループは、心を揺さぶるような人にしか創り出せない価値を「アナログ的価値」と定義しており、アナログ的価値を製品やサービスに活かすだけでなく、デジタルを活用し知識共有や生産プロセスの自動化などの効率向上を進めることで、次の新たな価値創造機会につなげます。

 学習を通じて習得する知識と、知識を用いた業務経験のかけ合わせを「スキル」と定義し、人財のスキル向上のために外部研修などの知識習得機会提供や、その知識を活用する業務への人財登用を積極的に推進しております。

 グループ全体で新たな価値の生み出す上では、スキル向上だけでなくグループ内における人財間の連携強化や協業促進をすることも重要であり、多様な価値観を持つ人財間でのシナジー効果をアナログ的価値創出に活かすことで、より一層高い成果を生み出す組織を目指します。新たな価値を創造する人財の育成体制を確保することによって、持続的な事業運営を実現します。

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(2)指標及び目標

 当社グループは、ソフト99・コーポレート・ガバナンス・ポリシーで、性別や国籍などの属性条件から生じる様々な視点や価値観を相互に理解、尊重しながら、公平公正な採用活動・人事評価並びに人財育成を行うことを掲げております。

 社内での多様性確保は重要な要素の1つですが、当社グループに合う人財を公正公平に評価し育成する中で、多様な人財が長く働き続けられる環境を作ることが最も重要であると捉えており、あえて目標とする指標は設けず状況に対して適切な対応ができる環境整備を進めてまいります。

 

 当社グループの多様性確保の状況は以下のとおりです。

 

(各従業員数(人))        2024年3月31日現在

連結従業員数

811

うち、女性従業員

203

うち、外国人従業員

30

うち、中途採用従業員

319

うち、障碍者従業員

11

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)特定の市場への依存度について

 当社グループは、「自動車」に関わる事業の売上構成比が高く、自動車関連産業の市況や制度の変更により業績に影響が出る可能性があります。ファインケミカル事業における一般消費者向け自動車ケミカル用品の一部の製品については、市場内でのシェアが高いことから、市場の縮小による業績への影響を受けやすく、売上高及び利益において減少する懸念があります。

 また、自動車販売時に施工されるコーティング剤等の業務用製品は、自動車ディーラーへの販売依存度が高く、自動車販売の増減に影響されることから、売上高や利益において極端に浮沈する可能性があります。

 サービス事業における自動車整備鈑金事業についても同様に、自動車関連産業の動向及び市況の影響を受け、売上高や利益において下降する懸念があります。

 ポーラスマテリアル事業において、半導体業界向けの洗浄材及び研磨材の製造販売の依存度が高く、また、市場シェアも高いことから半導体の景気動向による業績への影響を受けやすく、売上高及び利益において浮沈する可能性があります。

 また、半導体業界は製品技術の進歩が速く、業界を構成する企業の合併等の業界再編・市場再編が頻繁に行われます。これらの技術の切り替えや企業再編のタイミングにおいて需給調整が行われることにより、当社の売上高や利益に影響を与える可能性があります。加えて、国内外において性能面及び価格面での他社との競争が激化しており、競合品の台頭により主要得意先の販売が下落し、売上高及び利益において減少する懸念があります。

 

(2)石油加工品の原材料への依存度について

 当社グループが提供する製品は、原材料及び容器等に合成樹脂や溶剤等を多く使用しており、石油加工品への依存度が高くなっております。このような事業構造のため、災害や国際情勢の悪化等により原材料の調達が不可能になった場合、中長期にわたって一部の製品供給が困難になる可能性があり、また、原油価格の上昇により原材料の調達コストが上昇し、売上高や利益面において下降する懸念があります。これに対して当社グループは、より付加価値の高い製品提供による利益の維持確保や、詰め替えタイプ・濃縮タイプ等の省パッケージ製品の開発によるトータルコストの低減に取組んでおります。

 

(3)化学製品の法規制について

 当社グループの製品及び製造過程において、化学物質を多く使用していることもあり、化学品規制に関する法律が変更された際に、従来通りの製造、販売活動を継続できなくなる懸念があります。当社グループでは、海外を含む化学品規制に関する法律改定の最新情報を常に更新し、さらに製品の配合変更を適宜実施することで、市場に安定して製品を供給できる体制を構築しておりますが、法令の公布から施行までの期間が短い場合は、その製品の出荷を一時的に停止させる措置をとることが考えられます。

 

(4)仕入先企業の営業方針の転換に伴う影響について

 当社グループは、多くの仕入先から原料や製品を仕入れ、それを加工・販売することで円滑な事業活動を継続しておりますが、仕入先において化学品の規制強化対応のための製品廃番や、経営合理化のための事業停止による品番統合・廃番などが発生する可能性があります。その結果、競合他社との仕入競争が激化し、仕入価格の高騰や、潤沢な原材料の確保が行えないことによる生産・販売計画の遅延などといった影響が出る懸念があります。

 

(5)製造物責任について

 当社グループが提供する製品・サービスの欠陥により、人又は財産に被害が生じるリスクがあります。製造物責任賠償やリコール等が発生した場合は、当社グループのブランド価値低下を招くとともに、多額の費用負担が発生する可能性があります。これに対して、当社グループでは、ISOに準拠した開発・生産体制の構築を進め、製品・サービスの品質維持に取組んでおります。

 

(6)季節商材の返品による業績への影響について

 当社グループは、ファインケミカル事業において、冬季商材であるタイヤチェーンの販売を行っております。この製品は、積雪量の増減といった天候の変動により消費者の購買行動が左右されますが、天候を事前に予測し、生産計画を立てることは困難であるため、返品による在庫の増加や、製品が欠品する懸念があります。

(7)海外事業について

 当社グループは、ファインケミカル事業において、拡大する海外市場への展開を進めており、展開する国や地域

において政治的・経済的・社会的不安定要素や、法律の改正や為替相場の変動、知的財産に関する問題、テロ・紛

争等による社会的混乱等により販売面で影響を受け、売上高や利益面において低下する懸念があります。

 またポーラスマテリアル事業において、海外の売上構成比が高く、特に、海外向け半導体関連製品については、

米国・欧州・中国の政治経済状況の影響を受ける可能性が高くなっております。これら海外販売については、仕向

け地の増加拡大により、地域リスクの低減・平準化を目指しております。

 

(8)洪水・震災等の自然災害及び感染症の流行に伴うリスクについて

 当社グループは、製造業の占める売上比率が高く、複数の製造工場を保持しておりますが、各種自然災害の発生

や感染症の流行などの影響により、当社グループの製造工場における燃料供給の不足、インフラの障害、操業の中

断などが発生し、製造工程の一部ないし全てを停止させることになる恐れがあります。BCP対策として、製品在

庫について外部倉庫を含む全国いくつかの倉庫に分散して預けておくことで、急な災害時にも欠品を起こさない体

制づくりを行っておりますが、これらの製造工場における被害が想定を上回る水準で被害を受けたことにより、営

業再開に想定以上の時間を要した場合、業績に大きく影響を与える可能性があります。

 また、当社グループは原料や資材の調達網を世界に広げていることから、各種の自然災害や感染症の流行によっ

て流通網が寸断され、流通・製造・その他営業活動に関わる資源が不足することや、気候変動に伴い植生が変化す

ることで天然資源が安定的に供給されなくなるリスク等があります。事前の情報収集や、適切な在庫の確保に努め

てまいりますが、調達面では世界的に広がった調達網が機能しなくなることによる製造の停止や製品供給停止によ

り業績に大きく影響を与える可能性があります。重症化リスクの高く、治療方法が確立されていない感染症が流行

するなどした場合、各事業への影響度合いに違いはあるものの、収束までの期間が長引くと業績に大きく影響を与

える可能性があります。

 

(9)人的資本の確保について

 人財の多様性確保は、持続的な事業運営の担保における重要な経営課題の1つであると認識しており、多様な人

財の採用・育成や省力化などの労働環境の整備を進めることで、人的資源の確保及び有効活用に努めております。

しかし労働人口の減少などにより、じゅうぶんに適切な人財を確保できなかった場合、当社グループの事業活動に

制約を受け機会損失が生じるなど、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

 

①財政状態について

 当連結会計年度末における総資産は、62,542百万円(前連結会計年度末は60,377百万円)となり、2,165百万円増加いたしました。利益の増加に伴い現金及び預金が1,344百万円増加したことや、期末日が休日だったことなどで売上債権が164百万円増加したこと、ポーラスマテリアルセグメントにおいて設備投資を実施したことなどにより機械装置及び運搬具が258百万円増加し、設備等の稼働に伴い建設仮勘定が116百万円減少、償却により建物及び構築物で283百万円減少しました。また、ファインケミカルセグメントにおける基幹システムの更新などによって無形固定資産が336百万円増加したことや、株式市場の好調を受けた保有株式等の含み益増加によって投資有価証券が249百万円増加したことなどによるものです。

 負債の残高は、7,915百万円(前連結会計年度末は7,604百万円)となり、310百万円増加いたしました。これは主に、仕入債務が215百万円減少したことや、未払法人税等が243百万円増加したこと、株式市場の好調を受けて繰延税金負債が129百万円増加したことや、ESОPの実施に伴う長期借入金が104百万円減少したことなどによるものです。

 純資産の残高は、54,627百万円(前連結会計年度末は52,772百万円)となり、1,855百万円増加いたしました。これは主に、利益剰余金が1,774百万円増加したことや、株式市場の好調を受けてその他有価証券評価差額金が244百万円増加したこと、自己株式の取得により自己株式が197百万円増加したことなどによるものです。

 

 

②経営成績の状況について

 当連結会計年度における我が国の経済は、不安定な国際情勢によるエネルギーや原材料価格の高止まり、継続的な円安による物価高の影響によって個人消費を下押ししていることから景気の先行きは予断を許さないものの、新型コロナウイルス感染症による社会活動への影響が落ち着き、感染症法上の分類が第5類に引き下げられるなど、活動制限等が緩和されたことによってレジャー消費をはじめとした経済活動においては回復基調にあります。

 

 このような経営環境の下で、当社グループは「生活文化創造企業」の経営理念の下、近年で新たに発生した社会的ニーズを含めた幅広い社会課題の解決を事業機会と捉え、他にない製品やサービスの開発と事業化に努めてまいりました。

 特需の影響が平常化したことで売上高が減少したものの、価格改定の実施で利益を維持したことにより、当連結会計年度の経営成績は、売上高29,874百万円(前年同期比1.0%減)、営業利益3,579百万円(同9.9%増)、経常利益3,782百万円(同9.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,631百万円(同27.5%増)と減収増益となりました。

 

 

(ファインケミカル)

 自動車を取り巻く環境は半導体不足の改善や車両搭載品の代替などが進んだことで、生産が回復基調にある新車販売は前期を上回りました。また、新車販売の回復に伴い販売車両が増加したことで、中古車販売も前期を上回りました。

 国内の小売業界では、ホームセンターをはじめとした量販店の来店客数は減少傾向にあるものの、プロ向け資材やペット関連製品の販売は好調に推移しました。一方で猛暑や暖冬の影響を受けたことで季節商材の販売が低調に推移しました。

 また、カー用品専門店においても、来店客数が減少傾向にあり猛暑や暖冬の影響で季節商材の販売が低調だったものの、外出機会の増加に伴い車両メンテナンス需要が高まったことでオイルやバッテリーなどの販売が好調に推移しました。

 

a.一般消費者向け販売(自動車分野)

 ボディケア製品は、足回り製品のディグロスシリーズや9月に発売開始したレインドロップトルネードヴォルテックスの出荷が好調だったことなどにより、前期を上回りました。

 ガラスケア製品は、前期に比べ冬季の降水量が多かったことや撥水剤で企画導入が進んだものの、ワイパー製品は得意先への新規導入があった前期に対して当期は在庫補充に留まったことで前期を下回りました。

 リペア製品は、価格改定によって利益率は改善し、下期以降は停滞していた得意先への販売が回復しているものの、上期での商流の変更に伴う一時的な販売減少をカバーするには至らず、前期を下回りました。

 一般消費者向け販売全体では、ボディケア製品は新製品の発売開始により足回り製品やボディーコートが好調だったものの、リペア製品での販売減少や暖冬による季節商材の落ち込みをカバーできず、一般消費者向け販売全体では前期を下回りました。

 

b.業務用製品販売(自動車分野・産業分野)

 新車向けは、新車販売の生産回復の影響で、当社ブランドの業務用コーティング製品の出荷が好調に推移しました。OEM製品においては、震災による一部自動車メーカーでの生産減少に伴い販売が減少したものの、新車販売向け製品販売全体では、前期を上回りました。

 中古車向けは、中古車販売が好調だったことや、得意先での積極的なアプローチにより高付加価値製品を使用した施工機会が増加したことで前期を上回りました。

 それぞれ前期から実施している価格改定も売上に寄与したことによって、業務用製品販売全体では前期を上回りました。

 

c.家庭用製品販売(生活分野)

 主力のメガネケア製品では、売り場展開や企画導入が前期並みに推移したものの、マスクの着用意識の低下や暖冬の影響から需要が減少し、販売が低調に推移したことで前期を下回りました。OEM製品においても、くもり止め製品の需要減速の波を受けて出荷が低調だったことで前期を下回りました。その結果、家庭用製品販売全体では前期を下回りました。

 

d.海外向け販売(自動車分野)

 中国では、代理店によるプロモーションが奏功しガラスケア製品の販売が好調に推移したことで、前期を上回りました。

 中国を除く東アジアでは、韓国においてレインドロップが初期導入に対しリピートにとどまったことや、台湾で撥水剤の出荷が減少したことにより、前期を下回りました。

 東南アジアでは、現地で在庫調整が行われボディケア製品や撥水剤などの出荷が低調だったことで前期を下回りました。

 ロシアでは、ウクライナ侵攻の継続により当社製品の出荷は前期に引き続き低調に推移しております。

 欧州エリアでは、SNSプロモーションが奏功しボディケア製品やガラスケア製品の出荷が好調に推移したことで前期を上回りました。

 南米エリアでは、上期に主要仕向け地であるブラジルで降水量が多かったことでガラスケア製品の出荷が好調に推移し、前期を上回りました。

 中国や欧州、南米での出荷が好調だったものの、世界的なインフレの進行により前期を下回るエリアの実績をカバーするには至らず、海外向け販売全体では前期を下回りました。

 

e.TPMSの企画開発販売(自動車分野)

 トラック業界での新車供給の回復を受けて取付台数が増加したことや、既存取付車両への整備・メンテナンスサービスの売上が伸長したことにより、前期を上回りました。

 

f.電子機器・ソフトウェア開発販売(産業分野)

 半導体関連部品の入荷状況が不安定だった前期に比べ各種部材供給が改善しつつあることや、単価の高い案件の製品出荷が進んだことで前期を上回りました。

 

 これらの結果、当連結会計年度のファインケミカル事業の売上高は、新車販売回復の影響を受けて業務用製品販売やTPMSの企画開発販売が好調に推移したものの、一般消費者向け製品や海外向け販売での販売減少をカバーするには至らず、14,511百万円(同1.5%減)となりました。一方営業利益は、業務用製品販売の伸長や一般消費者向け販売及び業務用製品販売での価格改定、販売ミックスが改善したことなどによる利益の増加や、前期に比べて販売促進費や広告宣伝費を抑えられたことで、1,926百万円(同11.7%増)となりました。

 

(ポーラスマテリアル)

a.産業資材部門(産業分野)

 半導体市場は、世界的な半導体不況やHDD需要減退などデジタル関連需要の減少により在庫調整が続いたものの、今後はAIやIoTなどの進展に伴い半導体市場は回復基調になることが予想されております。また日本国内においては、半導体の新工場設立をはじめ、今後新たな需要が生まれることが期待されます。

 国内向け販売は、主力の半導体向けが堅調に推移しており、フィルターやプリンター用途においては、価格改定後も需要が継続したことで、前期を上回りました。HDD向けは年明け以降に需要が回復傾向にあるものの、得意先での生産調整が長期化していたことで前期を下回りました。国内向け販売全体では前期を上回りました。

 海外向け販売は、半導体向けにおいて米国への出荷は堅調に推移し、台湾や韓国は年明け以降需要が回復傾向にあるものの、第3四半期まで主要メーカーの減産影響を受けていたことで、海外向け販売全体では前期を下回りました。

 医療向け販売は、体外検査薬フィルターや薬液塗布材など新たな需要の拡大が継続したことや、海外において吸液材などの製品が他社製品からの置き換えが進みました。しかし、国内で感染症対策目的の利用拡大が一部沈静化してシート関連製品の出荷が落ち着いたことや、前期に販売した大型の設備案件が当期はなかったことで、医療向け販売全体では前期を下回りました。

 国内向け販売が海外向け販売や医療向け販売の落ち込みをカバーするには至らず、産業資材部門全体では前期を下回りました。

 

b.生活資材部門(自動車分野・生活分野)

 国内向け販売は、家庭用製品は量販店での販売が低調だったものの第4四半期以降は回復傾向にあり、主力の車用製品は新車販売の回復に伴い自動車向けOEM製品の出荷が好調に推移し、スポーツ用製品も好調だったことで前期を上回りました。

 海外向け販売は、主力仕向け地である米国で急激なインフレによる消費停滞の影響から在庫調整が継続し、販売が減少しました。

 生活資材部門全体では、国内向け販売が海外向け販売での減少をカバーしたことで、前期を上回りました。

 

 これらの結果、当連結会計年度のポーラスマテリアル事業の売上高は8,304百万円(同2.9%減)となりました。一方、設備投資に伴う減価償却費や修繕費等が増加したものの、半導体業界の落ち込みが想定を下回り需要が継続したことや、生産現場において稼働率が正常化し前期に発生していた超過労務費が減少するなど、アイオンの原価率悪化を最小限に留めました。また、販売ミックスの変化でアズテックの利益率が改善したこと、また当期はのれん償却が発生しなかったことで、営業利益は1,083百万円(同3.9%増)となりました。

 

(サービス)

a.自動車整備・鈑金事業(自動車分野)

 鈑金事業では、入庫台数は前期をやや下回ったものの、業務効率化や見積精度の向上、修理用の部品供給が安定したことで事故車の出庫が順調に推移し、前期を上回りました。美装事業でも、新車の販売回復の影響から自動車用プロテクションフィルムにかかる施工・物販が好調に推移したことにより、自動車整備・鈑金事業全体では前期を上回りました。

 

b.自動車教習事業(自動車分野)

 入所者数については前期並みに推移しており、特需の影響を受けていた普通車免許の需要が落ち着いたものの、運輸・旅客向けの職業用免許や企業研修の需要が高まったことで、前期を上回りました。

 

c.生活用品企画販売事業(生活分野)

 一部生協において物価上昇に伴う消費者の買い控えの影響を受けたことや、感染症法上の分類の第5類引き下げに伴う外出機会の増加によって通販需要が減少したことなどにより、生協向けでの採用アイテム数は増加したものの販売数が減少し、前期を下回りました。

 

 これらの結果、当連結会計年度のサービス事業の売上高は、自動車整備・鈑金事業での修理単価が増加したことや自動車教習事業で売上が好調だったことで、生活用品企画販売事業での落ち込みをカバーし、5,516百万円(同1.1%増)となりました。また、営業利益は生活用品企画販売事業での利益悪化をカバーするには至らず、183百万円(同19.2%減)となりました。

(不動産関連)

a.不動産賃貸事業(生活分野)

 一部の保有物件で退去があったことなどにより、前期を下回りました。

 

b.温浴事業(生活分野)

 行動制限の解除に伴い、各種集客イベントの再開により来場者が増加したことや、コロナ期間は低調であった飲食利用が増加したことなどによって、前期を上回りました。

 

c.介護予防支援事業(生活分野)

 感染症法上の分類の第5類に引き下げなどコロナ禍から回復基調にあり、欠席者が減少し平均利用者数が増加したことで、前期を上回りました。

 

 これらの結果、当連結会計年度の不動産関連事業の売上高は1,542百万円(同8.4%増)となりました。また、営業利益は375百万円(同49.2%増)となりました。

 

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,430百万円の増加となり、当連結会計年度末の残高は21,244百万円となりました。

 

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

 「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、3,772百万円の流入(前年同期は2,619百万円の流入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益が3,822百万円、減価償却費が969百万円、棚卸資産が214百万円増加し、仕入債務が216百万円減少したことや、法人税等の支払額946百万円などを要因としております。

 

 「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、1,137百万円の支出(前年同期は2,176百万円の支出)となりました。これは主に、ポーラスマテリアルセグメントでの設備投資などで有形固定資産の取得による支出758百万円や、ファインケミカルセグメントでの設備投資で無形固定資産の取得による支出347百万円などを要因としております。

 

 「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、1,205百万円の支出(前年同期は516百万円の支出)となりました。これは主に配当金の支払額856百万円や自己株式の取得による支出275百万円を要因としております。

 

 

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

ファインケミカル  (千円)

13,589,116

99.2

ポーラスマテリアル (千円)

7,610,887

100.9

合計(千円)

21,200,004

99.8

(注)1.金額は販売価格によっております。

2.サービス事業、不動産関連事業については、生産活動を伴わないため、記載しておりません。

 

b.受注実績

 該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

ファインケミカル  (千円)

14,511,860

98.5

ポーラスマテリアル (千円)

8,304,626

97.1

サービス      (千円)

5,516,413

101.1

不動産関連     (千円)

1,542,081

108.4

合計(千円)

29,874,980

99.0

(注)セグメント間の取引については、相殺消去しております。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。また、連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項については、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。これらの概要については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の「注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績に重要な影響を与える要因

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、仕入に係る費用と販売費及び一般管理費などの営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資及び新事業創出のための投資によるものであります。

 当社グループの運転資金は自己資金を基本としており、金融機関からの借入は行っておりません。

 なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は、営業預り保証金161百万円のみとなります。長期借入金190百万円については、従業員の福利厚生に資する「従業員持株会支援信託ESОP」導入に際しての信託スキームによる借入です。これは実質的に当社が利息の支払いを行うものではないため、有利子負債の残高には含んでおりません。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は21,244百万円であります。当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について

 第7次中期経営計画(2023年4月~2026年3月)初年度である2024年3月期の達成・進捗状況は以下のとおりであります。

 

指標(連結)

2023年

3月期

(実績)

2024年

3月期

(計画値)

2024年

3月期

(実績)

前期比(%)

達成状況

計画比(%)

売上高

(百万円)

30,170

30,000

29,874

99.0

99.6

営業利益

(百万円)

3,256

3,270

3,579

109.9

109.5

経常利益

(百万円)

3,440

3,450

3,782

109.9

109.6

親会社株主に帰属する当期純利益

(百万円)

2,063

2,400

2,631

127.5

109.6

(参考)ROE(%)

(純利益/純資産)

4.0

4.4

4.9

(参考)ROIC(%)

(税引後営業利益

 /投下資本)

7.1

7.1

7.7

 第7次中期経営計画期間中のROICは概ね7.0~8.0%を推移する想定としており、当社の資本コストについては中長期的には概ね5.5~6.0%の水準であると認識しております。

 今後も余資を活用した業容拡大に向けて、新しい製品・サービスの開発、新市場への進出に向けて、より一層注力してまいります。

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

6【研究開発活動】

 当社グループは多様化、高度化、精密化した顧客ニーズに対応していくため、ファインケミカル事業とポーラスマテリアル事業にて製品の研究開発を進めております。

 当連結会計年度における各事業別の研究開発活動の状況及び研究開発費の金額は次のとおりであります。

 なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、635百万円であります。

(ファインケミカル)

 当事業における当連結会計年度の研究開発費は333百万円となっております。

 主な研究成果は次のとおりであります。

 

(1)自動車ボディ・ガラス

 

①レインドロップ トルネードヴォルテックス

 ガラスとボディの同時撥水コーティングが強力に実現する「レインドロップシリーズ」から新製品を発売しました。新機構のTⅤヘッドによるトルネード噴射で、より効率的な施工が可能になり、作業性も飛躍的にアップしました。新開発のG-RASシールド効果によって、撥水耐久性能が劇的に向上し、強力な撥水効果と深い艶が長期間持続します。使用後はTⅤヘッドを大容量カートリッジに付け替えることでリユースが可能になり、機能性だけでなく環境配慮も実現しております。

 

②ディグロス神トレ ホイール&タイヤクリーナー

 ディグロスシリーズは、他にない性能をもつ独創的な足回りお手入れ用品としてコアな洗車ファンを中心に支持されております。このタイヤクリーナーは、タイヤ・ホイールのしつこい油汚れを一度で落とす専用のクリーナーで、超強力な洗浄成分が、タイヤやホイールにこびりついたブレーキダストやピッチ・タール、油汚れなどを分解・洗浄、汚れの再付着も防止します。輸入車のホイールなどのデリケートなホイールの表面加工やシミに配慮した設計で、タイヤとホイール約20本分に使用できる高いコストパフォーマンスを発揮した製品です。

 

③ALAUNEN アワテクシャンプー

 「ワクワクするような洗車体験の提供」をコンセプトに洗車用品の新ブランド「ALAUNEN(アラウネン)」を立ち上げました。贅沢な泡立ちと素早い泡切れが相反する性能を両立させ、ワクワクする色と香りで楽しく洗車ができるシャンプーを開発しました。バケツ希釈で中型車約80台分の洗車が可能な、使用感・コスパ・環境配慮を兼ね備えた次世代スタンダードシャンプーです。

 

④眼神 ヘッドライトリフレッシュ

 ヘッドライトのリフレッシュ製品である「ライトワン」からパワーアップした新製品で、研磨と溶解ができるクリーナーで下処理効果の向上を実現しました。ガラス系硬質レイヤーと撥水防汚レイヤーで構成されたボディコーティング並みの強力な撥水防汚効果をもつコート剤を施工することで、愛車の美しさを持続させます。

 

⑤G’zox ガードグレイズ

 当社の業務用コーティングブランド「G’zox」から、鉛筆硬度9H相当の高硬度被膜で、G’zox史上最強のバリア性能を発揮するガラス系ボディコーティングを発売しました。ポリシラザンと反応型撥水オイルを組み合わせることで、高硬度と高いすべり性を両立させた被膜を形成します。優れた撥水性・耐アルカリ性・耐スクラッチ性を発揮し、ボディへのキズつきや酸性雨、黄砂、泥水などの様々な外的要因から大切な愛車をより強力にガードすることが可能となりました。

 

(2)自転車ボディ

①velоgue タフガード

 高機能と作業性の良さを両立した、自転車専用の超高硬度ガラス系コート剤を発売しました。1液タイプで速やかにガラス系被膜を形成し、撥水・滑水・艶性能とともに優れた防汚性能を付与します。非常に硬く平滑な被膜は耐キズ性能を発揮するとともに優れた耐候・耐ケミカル性能を持ち、約3年の耐久性能を発揮します。液剤の伸びも良く、良好な作業性が実現しました。

 

 当連結会計年度において、特許出願数は2件、実用新案出願数が5件でした。

 当事業の研究開発活動は合計10名で行っております。

 

(ポーラスマテリアル)

 当事業における当連結会計年度の研究開発費は302百万円となっております。

 主な研究成果は次のとおりであります。

 

(1)メディカル関連

 第2種医療機器製造販売業の業許可を取得し、クラスⅠ、Ⅱの商品開発を進めています。クラスⅠの商品開発は、医師との情報交換や関係する学会での情報収集により商品設計を行い、医療機器としての登録の準備を進めています。また、クラスⅡは商品化を目指す用途を明確にし、医療機器申請に必要な安全性データ等の取得を準備中です。

 

(2)半導体用洗浄関連

 Break-in時間短縮要求が強まり、ブラシの改良、洗浄方法等について検討を進めています。

 また、洗浄性能向上を目指したブラシ改良を継続しています。重要顧客の量産部門から同部門で抱えている課題解決を求められ、改善提案の検討とユーザー提案を継続しています。一部ユーザーには評価用サンプルを提供しています。

 

(3)新規テーマ関連

 大学とは下記の共同研究を実施しています。

 ・硬脆材料用研磨材の開発:SiC基板だけではなく、他材料の砥粒レス研磨の可能性について検討を継続します。

 ・医療系に向けたPVAスポンジへの機能付与:機能性を付与することで遺伝子検査に有効と思われる結果が得られたため、機能性付与技術の開発とその有効性の評価を継続します。

 ・脱窒処理用担体の開発:嫌気性処理に使用可能と考えられる担体が開発できたため、処理性能評価計画を策定中です。

 

(4)HD用研磨材関連

 HD基板の薄肉化に伴い、ユーザーごとに異なる改善要求を受け、砥石の開発、提案、及び、品質安定化の取組みを続けています。次世代基板に対応する砥石を開発し、一部ユーザーに評価用サンプルを提供しています。

 

(5)生活資材関連

 新規ブランド「STTA」では「Stick type」、「Sheet type」に続く第三弾として「水切りマット」を3月の展示会で発表しました。

 

 

 当連結会計年度において、実用新案の登録が1件でした。

 当事業の研究開発活動は合計27名で行っております。