第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社は1935年の創立以来、社是「技術は正しく」をメーカーとしてのバックボーンとし、「常に最先端技術を追求し、お客様にご満足いただける精巧比なき、価値ある製品をつくり、社会に貢献する」ことを経営の基本理念としております。併せて、人と自然環境の融合を視野に入れた製品づくりに積極的に取り組んでいるところであります。

これらの実行と実現には裏付けとなる確かな企業力が必要不可欠です。工作機械、半導体関連装置の両分野における「総合砥粒加工機メーカー」として当社グループは技術開発力・生産力・営業力など持てる経営資源を駆使することはもちろん、発想力・企画力など創造的なパワーを結集し、岡本工作機械でなければ成し得ないグローバルな事業展開を積極的に推進してまいります。

 

(2) 目標とする経営指標、中長期的な経営戦略

当社の経営戦略につきましては、有価証券報告書提出日現在において以下のように定めております。

 

当社グループは、中長期的な戦略として、売上及び収益率の安定化、資金効率の改善により『景気に左右されることなく利益を上げ得る強固な経営体質』の確立・定着を目指しております。実現に向けた取り組みとして、「世界に類のない「総合砥粒加工機メーカー」として、平面研削盤・半導体ウェハ研磨装置でグローバルNo.1を目指す」を2030年の長期ビジョンに掲げ、各種施策を通じて市場での競争力の向上、安定的な売上と粗利の確保に取り組んでまいります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、安定的な事業収益力を示すものとして売上高営業利益率を重視しております。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループでは、中長期的な経営戦略として掲げた『景気に左右されることなく利益を上げ得る強固な経営体質』の確立・定着を目指し、以下の課題に取り組んでおります。

 

① 売上の安定化と利益重視の施策

ⅰ. 安定的な売上と粗利の確保

・ 超高精度研削盤:販売事例の世界展開

・ 汎用研削盤:業種、機種、地区別販売戦略の展開

・ 半導体関連装置:成長市場に向けた新製品の開発

・ 既存機種の後継機・新機種の開発

ⅱ.コスト削減策

・ 外部支出費の削減

・ 新製品、大型特殊仕様機種のコスト管理強化

・ 全社的な品質管理システムの確立

・ 最適生産拠点への生産シフトの継続、徹底

ⅲ.社内環境整備

・ 超高精度研削盤の製造・開発に見合った環境整備

・ 販売強化のための拠点の整備

・ 内製化、増産要求に応えるための生産拠点の充実

・ 顧客に対し高い付加価値を提供する仕組みの構築

ⅳ.各子会社の収益向上と体質強化

② 資金効率の改善及び有利子負債の削減

ⅰ. 棚卸資産の削減

ⅱ.売上債権の回収促進

ⅲ.機動的な資金調達

 

(5) 経営環境

当社グループの経営を取り巻く今後の環境につきましては、賃上げによる所得環境の改善や個人消費の持ち直しが見られる一方で、円安の進行や原材料価格の高騰、金融政策の引締めによる金利上昇など先行きの不透明な状況が続くものと見込まれております。

工作機械市場につきましては、AIとIoTを活用した生産性の向上、省エネ化やCO2削減など環境負荷の低減に寄与する製品が要求されております。成長市場である北米、中国への展開に加えインドなどの新興国では今後も工作機械需要の拡大が予想されます。精密歯車につきましては、グローバルでの省人化ニーズに伴うロボット需要の増加により、拡大を予想しております。

半導体市場につきましては、半導体需要の緩やかな回復が見られるものの、世界的なインフレによるパソコンやスマートフォン向けの需要低迷などにより、市況の回復は遅れております。一方で、省エネや高効率化に不可欠なパワー半導体や高周波デバイス向けの半導体などでは旺盛な需要が継続しております。今後も半導体市場の継続成長による競争環境激化を予測しており、次世代新機種の先行開発と生産キャパシティ増強のための投資を行うことによる競争優位性の構築及び強化が必要であると認識しております。

当社グループは2024年5月22日付「資本業務提携、第三者割当による新株式の発行並びに主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ」にて公表した通り、三井物産株式会社との資本業務提携契約を締結いたしました。本資本業務提携契約により、両社の経営資源・ノウハウを活用することで、工作機械・半導体関連装置の両事業での成長を加速することが可能となるほか、三井物産グループの事業基盤や知見を活用し、新たな収益の柱を構築し、企業価値向上に努めてまいります。

なお、当社グループは2025年3月期を初年度とする4ヵ年の中期経営計画を策定中です。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは、社是、経営理念、行動規範に基づき、企業活動を通じて持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な企業価値向上を目指し、サステナビリティ基本方針を策定しております。

 

(サステナビリティ基本方針)

・常に最先端技術を追求し、環境に配慮した製品・サービスを開発、提供していくことで、地球環境を保全する社会の実現に貢献します。

・多様な人材がそれぞれの能力を最大限に発揮できるよう人事制度や 教育研修体制を整備し、自分らしく活躍するための職場環境づくりを推進します。

・法令を遵守するとともに、健全なガバナンスにより社会から信頼される経営を行い、継続的な企業価値の向上を目指します。

 

(1)ガバナンス

 当社は、サステナビリティ基本方針に基づくサステナビリティ課題への取り組みをより一層推進するため、2024年4月1日にサステナビリティ委員会を設置いたしました。

 当委員会は当社の中長期的な価値創造のため、以下の職責を果たし、(i)サステナビリティをめぐる課題に対する取締役会による検討を支援し、また、(ii)経営陣による業務執行上の意思決定、また、全社的リスクマネジメントの取組みにおいて、サステナビリティの観点が戦略的かつ大局的に統合されるよう促す役割を担っております。

(1)サステナビリティ基本方針の策定及び改訂

(2)サステナビリティ課題についての具体的な施策推進及びその推進体制に対する助言と監督

(3)サステナビリティ課題に関する開示方針及び開示内容の検討

 

 当委員会は、代表取締役社長を委員長に、取締役及び各本部長を委員として構成し、上記(1)~(3)等の事項を審議のうえ、取締役会への報告を行います。

 また、同委員会は、年1回以上開催することを原則とし、サステナビリティに関する方針、目標の設定、実施計画の策定や、リスク・機会の特定、目標に対する進捗管理を担っております。取締役会では、同委員会で検討した重要なリスク・機会についての審議・決定やモニタリング等を行っております。

 

(サステナビリティ委員会)

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(2)リスク管理

当社グループでは、リスク管理委員会において、毎年当社グループ全社を対象にした重要リスクの抽出・評価を行い、当社グループにとって優先的に取り組むべきリスクを特定し、当社グループ全体でリスクの低減活動を推進しております。これらの活動につきましては、その内容を取締役会において定期的に報告しております。

リスク管理委員会は、リスク管理統括部署(総務部)とリスク管理責任者(各部門長)から構成されており、各所管部署及びグループ会社からの報告内容をリスク管理統括部署が取り纏め、それを議論、評価し、全社リスクの把握と適切な対応を審議し、その内容を取締役会へ報告する体制となっております。

サステナビリティ関連リスクは、サステナビリティ委員会が中心となり、リスクの特定・評価を行い、取締役会に報告の上、担当部門において実行に移されます。

また、同委員会にて実施状況をモニタリングし、リスク軽減に努めると共にリスク管理委員会と連携することにより、全社的なリスクとして統合的に管理する体制を構築しております。

 

(当社のリスク管理体制について)

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(3)人材戦略

 当社はこれまで、工作機械、半導体関連装置の両分野における「総合砥粒加工機メーカー」としてお客様のニーズに応えるべく、技術開発や品質・コスト・納期の継続的な改善とグローバルな供給網の構築に取り組み、成長を続けてまいりました。これからは従来の取り組みに加え、新たな価値やサービスの提供に取り組んでまいります。大きな環境変化の中で当社のさらなる成長を支える人材の育成は最重要のテーマであります。人事制度の再構築・計画的な人材育成・採用力の強化を主要な取組テーマとし、グローバルで活躍できる人材育成に注力してまいります。

 なお、2024年5月22日開催の取締役会において、三井物産株式会社(以下「割当予定先」又は「三井物産」といいます。)との間で資本業務提携(以下「本資本業務提携」といいます。)を行うこと及び割当予定先に対する第三者割当による新株式の発行を決議し、本資本業務提携についての契約を締結いたしました。

 本資本業務提携を通じて、人材戦略・コーポレート機能において三井物産グループからの様々な支援を受けることが可能となり、より盤石な経営基盤を構築することで企業価値の向上を実現できると考えております。

 具体的には、三井物産グループ企業から当社グループへの人材受入れを通じた半導体関連装置事業・工作機械事業の両事業における管理及び市場調査機能強化や、当社グループから三井物産グループ企業への人材派遣も含めた人材交流を行うこと等によるグローバル人材育成、三井物産グループへの参画を背景とした、採用における当社グループとしての認知度向上等を図ってまいります。

 また、企業価値向上のためにはオーガニック成長のみならず、インオーガニック成長の追求も重要であると認識しており、当社グループは、三井物産と連携しながらM&A戦略の策定・実行を行ってまいります。さらに、三井物産との協力によるDX・IT・セキュリティ戦略やサステナビリティへの取組みの強化等、コーポレート機能全般に係る体制の強化も進めてまいります。

 

(4)社内環境整備

社員が生き生きと働ける「働きがい」のある職場を目指し、さまざまな労務管理の改善強化策を実施しております。仕事と育児等の両立支援については、出産の前後や育児における休暇・休業・職場復帰制度、時短勤務制度等の諸制度を設けるなど、働きやすい職場環境の整備に積極的に取り組んでおります。2022年10月には産後パパ育休制度を設け、男性従業員による育児休職制度の利用も徐々に進んでおります。

また、当社は就業時間管理の徹底、会議の時間短縮・効率化の推進等を通じた長時間労働の削減にも努めており、これは従業員の健康を守るとともに、育児、介護等を行いやすくすること、ひいては生産性を向上させてイノベーションを起こし、企業価値の向上につながるものと考えております。

 

(5)指標及び目標

 また、当社グループでは、上記「(3)人材戦略」及び「(4)社内環境整備」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2030年3月まで15以上

10.2

男性正規雇用労働者の育児休業取得率(注)1

2030年3月まで75以上

50.0

(注)1.当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組が行われているものの、連結グル

ープに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、一部連結子会社を除いた目標及び実績を記載しております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 市況変動について

当社グループが販売する工作機械、半導体関連装置業界は、景気変動の影響を受け易い特徴があり、設備投資や個人消費の動向が企業業績に与える影響は小さくありません。特に、景気の停滞期には、設備投資や個人消費の低迷による需要の冷え込みから業界全体の受注総額が縮小し、当社グループの業績を悪化させる要因となります。

当社グループにつきましては、市況変動による業績への影響を最小限に抑えるため、「世界に類のない「総合砥粒加工機メーカー」として、平面研削盤・半導体ウェハ研磨装置でグローバル No.1 を目指す」を長期ビジョンに掲げ、各種施策を通じて市場での競争力の向上、安定的な売上と粗利の確保に取り組んでおります。

 

(2) 有利子負債への依存について

当社グループの直近3期の連結会計年度末有利子負債残高及び総資産に占める割合は下記のとおりであります。

当社は、借入金比率の削減による財務体質の強化に努めておりますが、今後の経済情勢等により、市場金利が変動した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

 有利子負債残高(百万円)

5,490

6,389

9,368

 総資産(百万円)

47,507

55,098

60,164

 総資産に占める割合(%)

11.6

11.6

15.6

当社グループの対応につきましては、営業キャッシュ・フローにより借入金の返済を進めることを第一に、資金調達が必要な場合には債権の流動化など調達方法の多様化を図ることにより、有利子負債残高の圧縮に取り組んでおります。

 

(3) 資金調達について

当社グループは、銀行からの借入金による資金調達を中心に、シンジケートローン等の方法により調達方法の多様化を図っておりますが、契約内容に一定の財務制限条項等が付されている場合があり、当該事由に抵触した場合には当社グループの資金繰りに影響を与える可能性があります。

 

(4) 海外事業展開について

当社グループは国内に加え、タイ、シンガポールに生産拠点を有し、一貫生産体制や国内の販売先へ直接輸送可能な体制を構築することに取り組んでおります。また米国、欧州及びアジアを含む海外拠点を通じたグローバルな販売網を有しており、マーケティング機能強化などによるさらなる販売網の強化に取り組んでおります。そのため、為替動向のほか、国によって政情の悪化、予期せぬ法律、規制の変更による経済活動の停滞などにより、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループの対応につきましては、原材料の調達先、取引通貨の決定、最適生産拠点の決定を慎重に行うと共に、各拠点との適時円滑な情報共有が可能となる人材の確保・育成を行っております。

 

(5) 自然災害等の異常事態の発生について

当社グループは、国内に加え、タイ、シンガポールに生産拠点、米国、欧州、アジアに販売拠点を有しております。そのため、新型コロナウイルス感染症拡大のような事象や、大規模な自然災害のような異常事態が発生した場合には、各拠点の事業活動が停滞し、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社では本社の安中工場において、緊急事態が発生した際の損失の最小化を図ることを目的としてBCP(事業継続計画)を策定しております。

 

(6) 固定資産の減損について

当社グループは生産設備を中心とした固定資産を保有しておりますが、経営環境の悪化による事業の収益性の低下又は保有資産の市場価格の著しい下落等により、固定資産の減損損失を計上する可能性があり、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)繰延税金資産について

当社グループは税効果会計を適用し、繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の計算は、将来の課税所得等に関する見積りや仮定に基づき計算しておりますが、実際の課税所得等は見積りや仮定と異なる可能性があり、将来において繰延税金資産の全部または一部が回収できないと判断した場合には、繰延税金資産は減額され、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 業績の季節変動について

当社グループは、工作機械を生産販売しており、顧客の設備投資動向の影響を受けることから、出荷や納期が期末に集中する傾向にあり、売上高・利益が下期に偏る傾向があります。こうした状況から、生産、開発キャパシティの見える化を推進し、生産、開発、販売計画の連動による生産活動の効率化を目指しております。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況(以下、「経営成績等」という。)の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、ウクライナ情勢の長期化による原材料・エネルギー価格の高騰、欧米でのインフレや金融引き締め、中国での景気減速など、先行きは不透明な状況で推移いたしました。

わが国経済におきましては、新型コロナウイルス感染防止の行動制限が緩和され、社会経済活動の正常化への動きがみられました。一方で、不安定な国際情勢の中での物価上昇や、世界的な金融引き締めによる円安の進行もあり、景気の先行きは依然として不透明な状況となっております。

このような状況の中で当社グループは、今期が2年目の中期経営計画「“創”lution 2025 GRIT & Adjust」で掲げた最終年度の目標売上高500億円、営業利益60億円を1年前倒しでの達成に向け、生産体制やカスタマーサポート体制の拡充、半導体関連装置事業の強化などに注力してまいりました。その結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比較して5,066百万円増加し、60,164百万円となりました。

当連結会計年度末の負債の合計は、前連結会計年度末と比較して51百万円減少し、30,187百万円となりまし

た。

また、純資産は、前連結会計年度末と比較して5,117百万円増加し、29,977百万円となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度における連結売上高は50,198百万円(前年同期比10.3%増)、営業利益は6,133百万円(前年同期比9.6%増)、経常利益は6,284百万円(前年同期比13.2%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は4,556百万円(前年同期比13.1%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

(工作機械)

工作機械は、売上高は31,604百万円(前年同期比1.0%増)、セグメント利益(営業利益)は2,025百万円(前年同期比26.3%減)となりました。

(半導体関連装置)

半導体関連装置は、売上高は18,594百万円(前年同期比30.8%増)、セグメント利益(営業利益)は5,389百万円(前年同期比34.1%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末と比較して956百万円減少し、11,418百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は929百万円(前年同期は2,684百万円の獲得)となりました。これは主に、売上債権の増加3,064百万円及び契約負債の減少3,712百万円により資金が減少した一方で、税金等調整前当期純利益6,640百万円及び減価償却費1,834百万円により資金が増加したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は3,634百万円(前年同期は3,079百万円の使用)となりました。これは主に、定期預金の預入による支出216百万円、有形固定資産の取得による支出2,817百万円及び無形固定資産の取得による支出206百万円により資金が減少したことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は1,237百万円(前年同期は406百万円の獲得)となりました。これは主に、短期借入金の純減少額1,386百万円、長期借入金の返済による支出459百万円、リース債務の返済による支出457百万円及び配当金の支払額932百万円により資金が減少した一方で、長期借入れによる収入4,500百万円により資金が増加したことによるものであります。

③ 生産、受注及び販売の実績

 a. 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

工作機械

23,242

99.3

半導体関連装置

11,134

103.1

          合計

34,377

100.5

(注)金額は製造原価によっております。

 

 

 b. 受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比(%)

工作機械

26,929

82.6

14,021

75.0

半導体関連装置

5,796

32.4

25,086

66.2

         合計

32,725

64.8

39,108

69.1

(注)当連結会計年度において、半導体関連装置事業の受注高の実績が前年同期に比べて著しく変動しました。主な要因は、前連結会計年度の受注高に、ウエーハ生産用のファイナルポリッシャーの大口受注が含まれていたこと、及び昨年度後半からのメモリ半導体を中心とした設備投資抑制の影響を受けたことによるものであります。

 

 

 c. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

工作機械

31,604

101.0

半導体関連装置

18,594

130.8

          合計

50,198

110.3

(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

ミクロ技研株式会社

7,793

15.5

明徳貿易株式会社

6,786

14.9

ファナック株式会社

6,145

13.5

(注)1.当連結会計年度の明徳貿易株式会社、及びファナック株式会社に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満であるため記載を省略しております。

2.前連結会計年度のミクロ技研株式会社に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満であるため記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

1)財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比較して5,066百万円増加し、60,164百万円となりました。主な要因は、現金及び預金が3,244百万円、有形固定資産が2,178百万円増加したことによるものであります。

当連結会計年度末の負債の合計は、前連結会計年度末と比較して51百万円減少し、30,187百万円となりました。主な要因は、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)が4,227百万円増加した一方で、短期借入金が1,231百万円、契約負債が3,546百万円減少したことによるものであります。

また、純資産は、前連結会計年度末と比較して5,117百万円増加し、29,977百万円となりました。主な要因は、利益剰余金が、親会社株主に帰属する当期純利益の計上4,556百万円、配当金の支払い939百万円により3,617百万円、及び為替換算調整勘定が1,216百万円増加したことによるものであります。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の45.1%から49.8%となりました。

2)経営成績

売上高は、主に半導体製造装置の売上が堅調に推移したことにより、前連結会計年度と比較して10.3%増加の50,198百万円となりました。

利益面では、QCD改善活動や内製化による変動費削減など、引き続き徹底したコスト削減に重点を置き、収益性の向上に努めてまいりましたが、岡本工機株式会社の新工場稼働により減価償却費が増加したため、売上総利益率は、前連結会計年度と比較して0.7ポイント悪化し30.9%となりました。

営業利益は、主に人件費が増加したため、販売費及び一般管理費は前連結会計年度を上回ったものの、売上総利益の増加により、当連結会計年度は6,133百万円(前連結会計年度は5,598百万円)、営業利益率は前連結会計年度と比較して0.1ポイント悪化し12.2%となりました。

営業外損益では、主に受取利息の増加及び為替差益の計上により、前連結会計年度と比較して196百万円収益(純額)が増加しました。以上の結果、経常利益は6,284百万円(前連結会計年度は5,552百万円)となりました。

税金費用は、前連結会計年度と比較して、税金等調整前当期純利益の増加に伴う課税所得の増加等により、法人税、住民税及び事業税が301百万円増加しました。また、法人税等調整額は、当連結会計年度に繰延税金資産の減少等があったことにより273百万円増加し、合計で575百万円の増加となりました。

以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度と比較して13.1%増加の4,556百万円となりました。

なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

(工作機械)

国内市場におきましては、受注は前年度好調であった半導体関連向けでの設備投資が落ち着いたことや、ロボット向け歯車の受注低迷により前年度より減少しております。売上につきましては、セラミックス業界向けのロータリー平面研削盤や幅広い業種に大型平面研削盤の販売が増加し、前年度を上回りました。

海外市場におきましては、米国では金利引上げ政策や今年11月に控える大統領選挙の影響により景気の先行きは不透明な状況となっております。中小企業を中心に設備投資へ消極的な姿勢が継続したため工作機械、鋳物の需要が落ち込み受注、売上ともに前年度を下回りました。欧州におきましては、ウクライナ情勢など地政学的リスクにより経済が停滞しているものの、EV関連向けの底堅い需要は継続し、受注、売上ともに堅調に推移しております。中国におきましては、歯車の市況悪化により受注が低迷している一方で、EV車用リチウムイオン電池向けの大型平面研削盤の販売が増加し、売上は前年度を上回ることができました。

以上の結果、売上高は31,604百万円(前年同期比1.0%増)、セグメント利益(営業利益)は2,025百万円(前

年同期比26.3%減)となりました。

なお、セグメント資産は、前連結会計年度末と比較して2,225百万円増加し、31,620百万円となりました。これは主に売掛金、有形固定資産が増加したことによるものであります。

 

(半導体関連装置)

半導体市場におきましては、半導体需要の緩やかな回復が見られるものの、世界的なインフレや米国による中国への輸出規制、パソコン、スマートフォン向けの需要低迷などにより市況の回復は遅れております。一方で、省エネや高効率化に不可欠な次世代パワー半導体や高周波通信デバイス向けの半導体などでは旺盛な需要が継続しております。

このような状況の中で当社グループは、ポリッシャーやグラインダーの拡販に向けて、ウェーハ業界向けの新機種開発やサービス拠点拡充などの諸施策を進めてまいりました。その結果、売上につきましては、国内、欧州向けのウェーハ生産用ファイナルポリッシャーと東アジア向けのパワー半導体向けグラインダーの販売が増加し、前年度を上回りました。受注につきましては、国内、東アジアの先端パワー半導体向けの取引先からグラインダーやポリッシャーなどの受注を獲得しました。しかしながら、市況回復の遅れにより、ユーザーの設備投資計画が見直されるなど、受注は前年度より大きく減少する結果となりました。

以上の結果、売上高は18,594百万円(前年同期比30.8%増)、セグメント利益(営業利益)は5,389百万円(前

年同期比34.1%増)となりました。

なお、セグメント資産は、前連結会計年度末と比較して3,302百万円増加し、15,409百万円となりました。これは主に電子記録債権、売掛金が増加したことによるものであります。

 

セグメント別の売上高の推移

 

工作機械事業

(百万円)

半導体関連装置事業

(百万円)

合計

(百万円)

2024年3月期

31,604

18,594

50,198

2023年3月期

31,305

14,219

45,524

2022年3月期

26,096

11,450

37,547

 

 

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

資本の財源及び資金の流動性

当社グループの主な資金需要は、当社グループ製品製造のための原材料及び部品購入費の他、労務費、製造経費、販売費及び一般管理費等の運転資金、生産体制の強化・合理化を目的とした生産設備の新設及び更新等の設備資金であります。

このような資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金を投入している他、不足分については銀行借入金及び売上債権の流動化などにより資金を調達することとしております。調達につきましては、事業計画に基づく資金需要、金利動向、既存借入金の返済時期等を考慮の上、金額及び方法を適宜判断して実施しております。なお、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、売上高の約2.7ヶ月相当の水準となっており、当社グループの事業運営上、妥当な流動性を保持していると考えております。

 

今後予定しております生産設備の新設及び更新等につきましては、「第3設備の状況 3設備の新設、除却等の計画(1)重要な設備の新設等」に記載のとおり、自己資金及び借入金による調達を予定しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

(取得による企業結合)

当社は、2023年9月28日開催の取締役会において、大和工機株式会社の全株式を取得し、子会社化することについて決議し、同日付けで株式譲渡契約を締結いたしました。なお、2023年11月1日に株式を取得しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

(事業譲渡契約)

当社は、2023年11月30日開催の取締役会において、2023年10月2日に新潟地方裁判所に自己破産を申請し、破産手続き中のニッコー株式会社(以下「ニッコー」とする)より同社の主力事業である平面研削盤製造・販売事業(以下「本事業」といいます。)を譲り受けること、およびその受け皿となる当社の100%出資子会社を設立することについて決議いたしました。

また、12月12日開催の取締役会において、ニッコーの破産管財人弁護士との間で本事業の事業譲渡契約を締結することについて決議いたしました。

 

(1)事業譲受の理由および目的

当社は、工作機械、半導体関連装置の両分野における「総合砥粒加工機メーカー」として研究・技術開発を推進し、高性能の製品を生産・販売することでお客様の多様なニーズに応えられるよう取り組んでおります。

一方、ニッコーは1994年3月に設立され、主に平面研削盤製造・販売、オーバーホール、各種メンテナンスといった事業を手掛けており、工作機械業界から評価を得ておりました。

今般、当社グループは、「総合砥粒加工機メーカー」としての更なる発展に向けて、同社の設備を含む本事業を譲り受けることとし、その受け皿となる当社100%出資の新会社を設立することといたしました。譲り受ける資産は、本社土地、本社工場および機械装置等の有形固定資産、ソフトウェア等の無形固定資産、棚卸資産であり、負債の譲受はありません。

今後、当社グループは、本事業の譲受による販路拡大・サービス体制の強化を図るとともに、中長期的には、新会社を含むグループ各社との更なる連携およびノウハウの相互活用を通じた多面的なソリューションの展開を目指してまいります。

 

(2)事業譲受日

2023年12月12日

 

(3)ニッコーの概要

① 名称   :ニッコー株式会社

② 事業の内容:平面研削盤製造・販売事業

 

(4)新会社の概要

① 名称   :株式会社 NICCO

② 事業の内容:平面研削盤製造・販売、オーバーホール、各種メンテナンス

③ 設立年月 :2023年12月6日

④ 持株比率 :当社 100%

 

(資本業務提携契約の締結、及び第三者割当による新株式の発行)

当社は、2024年5月22日開催の取締役会において、三井物産株式会社との間で資本業務提携を行うこと及び同社に対する第三者割当による新株式の発行を決議し、2024年6月7日に同社からの払込みが完了しております。その結果、当社の主要株主である筆頭株主に異動がありました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、総合砥粒加工機メーカーとして顧客の高精度/高能率要求に対応していくため、「究極の平面創成」をスローガンに、平面加工(研削・研磨)の分野において世界最高峰の技術を目指すことを主要な開発テーマとしております。

当連結会計年度における研究開発費の総額は283百万円であります。

また、当社グループの研究・開発・技術スタッフは131名で、全従業員の5.7%に当たります。

なお、セグメント別の状況は次のとおりであります。

(1) 工作機械

当社の主力商品である平面研削盤関連におきましては、さらなる超精密・高精度の実現を目指し、高次元かつ

安定的な商品品位を確立するため、設計のクオリティーのみならず部品加工及び組立工程における技術の向上を図りながら、各種テーブルサイズのシリーズ化と静圧スピンドル、静圧スライド搭載機の拡充に継続して取り組んでおります。さらには、自動化・省人化に関する時代要求に応えるため、ワークの自動着脱・自動搬送に関する標準化を進めることにより、各種ユーザーニーズに対するフレキシブルなご提案の実現を目指しております。

新カバーデザイン、対話型汎用ソフトのグラフィックデザインを含め操作性の向上を図りながら、すべての機構において設計再検討を行った中型平面研削盤のマイナーチェンジモデルPSG126CA-iQ、PSG127CA-iQを市場投入し、大型ワークサイズ要求に対応するべく、テーブルサイズ1,500mmのPSG156CA-iQ、PSG157CA-iQ、2,000mmのPSG206CA-iQ、PSG207CA-iQをラインナップに加えシェア拡大を図っております。

新機種として、立軸ロータリ研削盤「ⅤRGシリーズ」、グライディングセンター「UGM64GC」の2機種をラインナップに加えました。「VRGシリーズ」は、複数の被削材を並べて同時寸法合わせ等の高能率研削に最適な研削盤として、歯車、セラミックス、油圧部品をターゲットに拡販を目指しており、ロータリテーブルΦ600mmに加え、Φ1,000mmの開発に着手いたしました。また「UGM64GC」は、平面研削加工では不可能な部分への加工を可能とする半導体難削材対応の研削盤として新たな市場の開拓を進めており、ロボットでのワーク搬入搬出自動化仕様の開発に着手いたしました。

当セグメントに係る研究開発費は76百万円であります。

 

(2) 半導体関連装置

半導体デバイスウエーハ関連におきましては、科学技術振興機構(JST)の支援プログラムにて採択された、Si貫通電極ウエーハの技術開発の2024年度終了に向けて引き続き取り組んでおります。

また、材料シリコンウエーハ用加工機においては、様々な顧客ニーズに対応するため、ラインナップの充実を図るとともに新規装置の開発にも着手しております。さらにシリコン以外の特殊材料関連においても、EV関連で大きく飛躍が予想されるパワー半導体のSiC(炭化ケイ素)、スマートフォンに採用されているSAWフィルター用のLT(リチウムタンタレート)やLN(リチウムニオベート)、高出力照明、5G基地局電源用のGaN(窒化ガリウム)専用の高能率研削盤ポリッシュ盤の開発を進めるとともに、車載向けGPU(画像処理)に広く使用されているパッケージ基板用研削盤の開発にも着手しております。

当セグメントに係る研究開発費は206百万円であります。