第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当グループは「人々の 心豊かな 暮らしのために」をパーパスに掲げ、ロボティクスと自動化技術を礎に、製造・介護・物流などの分野において、驚きと感動を与える商品・サービスをお届けすることで社会に新しい価値を創造し、人々の笑顔があふれるサステナブルで心豊かな社会の実現を目指しております。

そして、あるべき姿として、以下をフィロソフィーとして掲げており、社会価値と経済価値双方を追求してまいります。

 

・地球環境ならびに人々の幸福に資する商品・サービスをお届けします。

・事業を成長させ、ステークホルダーの皆さまへ適切に還元します。

・法令遵守はもとより、それを超えた道徳心の高い企業であり続けます。

 

更に、ビジョンにつきましては「半導体後工程チェーンにおけるFAブランドとして業界No.1へ」とし、今後も拡大する半導体後工程市場において、世界トップクラスを誇るマウンターやダイボンダーを軸に先進的な自動化ソリューションを提供することで、No.1FAブランドの地位を確立してまいります。

 

(2) 中長期的な経営戦略、目標とする経営指標

2035年のありたい姿:FUJI2035「ものづくり、くらし、みらいに貢献するグローバルカンパニーとして世界にinnovationを提供します」を制定し、それに基づいて新たに策定した2025年3月期を初年度とする3ヵ年の中期経営計画を軸に、さらなる事業の成長を目指してまいります。中期経営計画の方針は以下のとおりです。

 

FUJI2035の実現に向けた

事業ポートフォリオの再構築と社会的企業価値の向上

①既存事業の拡大と収益力強化

②次世代ビジネスの創出と事業化

③ESGに基づく事業基盤の向上

 

 

また、事業活動における収益性や資本効率の向上を図るため、経営指標として営業利益を重視しております。営業利益をはじめとする、中期経営計画の最終年度である2027年3月期における各指標の数値目標は以下のとおりです。

 

セグメント

指標

2027年3月期

(目標)

ロボットソリューション

売上高(百万円)

172,000

営業利益(百万円)

36,100

マシンツール・その他

売上高(百万円)

8,000

営業利益(百万円)

500

合計

売上高(百万円)

180,000

営業利益(百万円)

33,000※

※営業利益の合計数値には全社費用が含まれております。

 

指標

2027年3月期

(目標)

ROE

10%

PBR

1.1倍以上

配当金(配当性向)

50%以上

 

当グループは、こうした基本戦略を通して、全てのステークホルダー(株主様、お客様、お取引先、従業員、地域社会等)の皆様と利益を共有し、共に夢のある未来を創っていくことを目指してまいります。

 

上記文中の将来に関する記述は、提出日現在において当社が入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題

事業ごとおよび財務面における対処すべき課題については、それぞれ以下のとおりです。

 

ロボットソリューション事業

引き続き不透明な世界情勢の中、予断を許さない状況にあるものの、スマートフォンを中心とした通信・半導体市場の回復や、自動運転・IoT化による車載関連の継続的な設備投資なども見込まれます。このような環境下において、「手掛ける全ての製品においてシェアNo.1を目指す」べく、モジュール型電子部品装着機「NXTR」や拡張型オールインワン装着機「AIMEXR」といった新世代機種を拡販の軸に据え新規市場・顧客の開拓を図るとともに、独創性且つ競争力のある製品のスピーディな開発に取り組んでまいります。一方、デジタル活用による業務革新により生産・販売の業務効率化ひいては収益力強化を目指してまいります。また、宅配ロッカーシステム「Quist」や移乗サポートロボット「Hug」をはじめとする電子部品実装ロボット以外のロボット製品の事業化を推し進め、次世代の柱となる事業の創出を図ってまいります。

 

マシンツール事業

「事業基盤を確立し、持続的な収益成長へ」転換するため、組織体制を刷新いたしました。生産効率や提案営業力の向上によってターンキービジネスにおける優位性を確立し新規顧客の開拓に取り組むとともに、複合加工旋盤の新機種を開発し販路拡大、環境配慮型製品の確立と顧客への提供を進めてまいります。

 

財務面

高水準の研究開発投資を継続するとともに、将来の成長に向けた周辺事業、新規事業への戦略的投資や設備投資も積極的に実施していくことで、企業価値の増大を目指してまいります。さらに株主価値向上の観点から、収益性や資本効率の向上、継続的な株主還元にも経営の最重要政策として取り組み、配当性向50%を基本とするよう努めてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

気候変動問題が当グループの「企業価値」および「事業活動」においてリスク・機会となりうることから、気候変動対応への進捗状況を年に2回「サステナビリティ推進委員会」で取締役および執行役員へ報告し、意思決定や監督機能とすることでPDCAを回しております。ビジネスに大きな影響を及ぼす課題については、取締役会の議案や報告事項としております。環境対応を推進することを目的とした「環境部会」や各事業部などが「サステナビリティ推進委員会」へ設備投資・事業計画についての提言や進捗状況の報告を行っております。

 

(2)戦略

(イ) 環境

当グループの事業活動において気候変動が及ぼす影響に対してシナリオ分析を実施し、2030年を時間軸とした2℃シナリオ(注1)と4℃シナリオ(注2)を設定しました。その上で、2℃シナリオと4℃シナリオの世界観を整理し、特定したリスクと機会について、それぞれ対応策を決定し、事業活動に取り入れ、進捗状況はサステナビリティ推進委員会へ報告することで、PDCAを回してまいります。

当グループにおける気候変動に関する主なリスクと機会、その対応策は以下のとおりであります。

2℃シナリオ

事象

リスク・機会それぞれへの対応策

リスク

・炭素税の導入による燃料調達コストや材料・調達コストの増加

・排出規制の強化に伴うグリーン電力購入等のコスト増加

・製品への低炭素技術対応(軽量・高強度素材等、環境対応モータ類・半導体など先進機器)によりコスト増、それにより製品価格上昇による競争力低下

・サプライヤーとの連携、協働による新たな材料活用や工法の検討

・COフリー電力の購入

・再生エネルギー発電設備や蓄電池等の導入

・省エネ技術の開発推進

・材料調達コストに影響されないソフトウェア技術を最新技術情報を踏まえ研究

・安価で高品質な材料確保に向けた共同研究を含む研究開発の取組み開始

機会

・市場の省エネ電気製品の増加を受け、市場規模拡大

・工場、設備の生産性向上、省エネ性能を高めるソリューションのビジネス機会が拡大

・自動車のEV化が進み、EV向け電子部品実装ロボット、工作機械のビジネス機会が拡大

・省エネルギーの製品開発・サービスを推進して受注機会増加

 

4℃シナリオ

事象

リスク・機会それぞれへの対応策

リスク

・FUJIグループ:気象災害多発により被災が増加し、工場の操業停止および修復費用の増加

・サプライヤー:気象災害多発により部材調達および製品の出荷物流を含むサプライチェーンが寸断され、生産活動が停滞

・サプライチェーンを含めたBCP対策の強化

機会

・異常気象や感染症増加により、様々な分野で省人化に伴う自動化機運が高まり、ロボットを始めとした自動化ソリューションの市場拡大

・気候変動による災害リスク軽減のためにユーザーが各国に工場を設立し、納入する装置台数が増加

・工場の自動化、最適化の取組みに適応した製品、サービスを構築

・突発需要に対応できる柔軟な生産体制の確立

(注1)世界の平均気温が産業革命以前より2℃程度上昇するシナリオ

(注2)世界の平均気温が産業革命以前より4℃程度上昇するシナリオ

 

(ロ) 人材

当グループは、ダイバーシティ、人材育成、健康経営、労働環境・安全衛生の4つの観点から人材戦略に関する各種取組を進めております。

ダイバーシティの面では、様々な価値観や考えを持った多様な人材が個性や能力を存分に発揮し、活躍できる組織になることを目指しております。具体的には、専門的な高いスキルを持つ技術系社員を対象に、裁量労働制を適用したエキスパート職制度などの柔軟な人事制度の構築、女性管理職数についての目標設定や中途採用者が能力発揮できる環境の整備、外国人社員に対する文化の違いも踏まえた上での特有事情への配慮、バリアフリー環境整備などを実施しております。また、在宅勤務制度やフレックスタイム制度の導入、仕事と育児・介護を始めとする家庭の両立支援のための行動計画策定など、働きやすい環境の整備にも取り組んでおります。

人材育成の面では、人々の心豊かな暮らしのために、お客様や社会の課題を解決できる、イノベーションを起こせる自律型社員の育成に努めております。具体的には、社員本人のステップアップに合わせた様々な研修プログラムの実施、資格取得に対する支援制度や通信教育プログラムの提供などの自己啓発をサポートする制度の充実に取り組んでおります。特に技術者教育については、新入社員を対象としたFUJI独自の座学・製作実習「創開塾」や、顧客目線で開発を行う設計者の育成を目指し、製品据付業務・コールセンター業務・サポートサービス拠点常駐を行う、若手社員を対象とした「マルチスキル育成プログラム」などに力を入れております。また、オフィス業務担当者を対象にデジタルツールを活用し業務改革を推進するDX教育の場である「業革塾」にも注力しております。

健康経営の面では、「FUJI健康経営宣言」の実現に向け、健康経営を推進する上で解決したい経営課題、社員の健康課題、解決施策などをまとめた戦略マップを策定し、その具体的な指標を活用することで社員の良好な健康状態の維持・向上に努め、健康経営を推進しております。

労働環境・安全衛生の面では、安全で快適な職場づくりに努めております。具体的には、リスクアセスメント、安全衛生パトロールによる労働災害の危険源認識とリスク低減、法令に準拠した時間外労働時間の管理、健康障害の防止を重点項目として実施しております。

さらに、これらの人材戦略に関する各種取組の状況把握のため、2023年度よりエンゲージメント調査を実施し、その結果や傾向を基に施策や制度の策定・見直しを進めております。

こうした取組の結果、「ワーク・ライフ・バランス」の実現への取組に優れた企業として2005年に「愛知県ファミリー・フレンドリー企業」に、「子育てサポート」に優れた企業として2015年に「くるみん(厚生労働大臣の認定)」に、「女性活躍推進」に優れた企業として2016年に「あいち女性輝きカンパニー」にそれぞれ認定されているほか、「健康経営推進」に優れた企業として「健康経営優良法人」に4年連続(2020~2023年度)で認定されるなど、社外から様々な評価をいただいております。

今後も性別、国籍、障がいの有無などにとらわれない多様な人材の採用、活用に取り組むとともに、社員の健康増進と働きやすい環境の実現を通して“生き生きと働ける活力ある職場づくり”を推進してまいります。

 

(3)リスク管理

当グループを取り巻くリスクと機会の管理については、「サステナビリティ推進委員会」が主導し、各部門における管理体制の整備・構築を支援しております。加えて、「サステナビリティ推進委員会」では当グループが取り組むべき社会課題を特定し、それらを事業領域と照らし合わせ、マテリアリティの策定を行いました。この策定は、当グループの事業に存在するリスクと機会を考慮したものであり、今後も「サステナビリティ推進委員会」にてマテリアリティの見直しやそれに関連する方針の議論を継続的に行ってまいります。

特に重大なリスクについては、代表取締役を最高責任者とした「リスク・コンプライアンス委員会」にて、経営を取り巻く各種リスクを分析し、影響を及ぼす事象の対処を進めております。

さらに、気候変動に関するリスクについては、毎年各事業部にて「リスクと機会」を見直しており、「環境管理委員会」が更新状況や活動状況を監視およびモニタリングすることで、全社的なPDCAの推進とスパイラルアップを図っております。

これらの情報は定期的に「サステナビリティ推進委員会」および取締役会にて共有され、適切に管理・対処することでリスクの顕在化を未然に防止します。リスクの影響を最小限に抑えつつ機会の最大化に努め、企業価値の持続的な向上を目指してまいります。

 

(4)指標及び目標

(イ) 環境

当グループは気候変動における指標をCO排出量と定め、Scope1(自社での直接排出)、Scope2(自社でのエネルギー起源の間接排出)における2030年度のCO排出量を2013年度比で46%削減することを環境中期目標としました。社員の省エネ活動はもとより、省エネ設備の導入、COフリー電力の購入、グリーン電力証書などを活用し目標達成を目指してまいります。

2021年度にScope3(サプライチェーンの上流と下流の排出)の算定を開始しました。調査中であるカテゴリ4(輸送、配送(上流))とカテゴリ9(輸送、配送(下流))を除いた状況での2021年度の実績はScope3がサプライチェーン全体の98%を占めています。その中で、カテゴリ1(購入した製品・サービス)、カテゴリ11(販売した製品の使用)の影響が非常に大きいため、製品の環境配慮設計を進め、Scope3の削減に努めてまいります。

2023年4月のサステナビリティ推進委員会にて気候変動対応の長期目標を、当グループ全体のScope1、2のカーボンニュートラル、売上原単位でScope3の2021年度比80%削減をそれぞれ2050年に実現することと定めました。長期目標達成に向けてのカーボンニュートラル戦略ロードマップを作成し、気候変動対応を推進してまいります。

 

(ロ) 人材

当グループでは、上記「(2)戦略 (ロ) 人材」において記載した人材戦略について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標および実績は、以下のとおりであります。なお、当該指標に関する目標および実績は、当社においては関連する指標のデータ管理とともに具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、当該指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

人材戦略

指標

目標

実績(当事業年度)

ダイバーシティ

女性労働者の管理職者数

2027年3月まで9以上

6

管理職に占める女性労働者の割合

2027年3月まで5以上

3.4

健康経営

生活習慣改善の意識がある社員の割合

2027年3月まで69以上

65.6

プレゼンティーイズムによる生産性損失割合(注)

2027年3月まで35以下

36.9

高ストレス者の割合

2027年3月まで15以下

18.1

(注)プレゼンティーイズムとは、出勤はしているものの、心身の不調により十分なパフォーマンスが発揮できず、業務遂行能力・生産性が低下している状況をいい、数値は自社ストレスチェックWHO-HPQより算出しております。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。ただし、これらは当グループに関する全てのリスクを網羅したわけではなく、現時点では予見できないまたは重要と見なされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当グループの経営成績等の状況に与える影響については、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

なお、当グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であり、これらのリスク管理体制等につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。

以下、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当グループが判断したものであります。

 

(1) 部材等の調達による影響

当グループの製品を構成する鋼材・鋳物・電気材料等、主要部材の市場価格の高騰が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、半導体を始めとする一部の部材については需要集中等による供給不足や供給業者の被災及び事故等による供給中断が発生する可能性があります。当グループとしては、安定的な調達のために複数供給者からの購入体制をとる等の対応に努めてまいりますが、長期にわたり部材の入手が困難な場合、生産が不安定となり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 市場環境の変動による影響

当グループは、世界の各地域に販売拠点を置きグローバルな事業展開を行っており、電子部品実装ロボットや工作機械等の当グループの主力製品の需要変動は、各国の政情・経済や顧客の設備投資動向等に左右されます。

主力であるロボットソリューション事業においては、スマートフォンを中心とする通信機器関連をはじめ、コンピュータ、サーバー、車載等の分野向けに販売しており、景気変動に伴う電子機器の販売動向や顧客の設備投資動向に大きく影響を受けます。マシンツール事業は主要顧客である自動車業界の設備投資動向に大きく影響を受けます。

FUJIブランド商品の拡充や市場拡大等に取り組むとともに、収益体質の強化を図ってまいりますが、今後当グループの想定を超える急激な需要の変化があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 競争激化による影響

当グループは、事業を展開する市場において、価格や機能を含む様々な要素での競争にさらされており、厳しい状況が続いております。今まで以上に競合他社との競争が熾烈なものになることが予想され、IoT・AI技術を活用しお客様のニーズに合った魅力的な製品開発とサービス体制・販売網の強化、ソリューション営業の推進が急務だと考えております。そのほか、コスト削減の追求等にも取り組み、収益性の向上に努めておりますが、顧客が製造する電子機器や自動車等の市場価格の下落に伴う設備調達コスト低減要求や競合他社との価格競争により有利な価格決定を行うことが困難な状況に置かれる場合があります。販売台数の減少や販売価格の下落が当グループの想定を大きく上回りかつ長期にわたった場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 技術開発による影響

当グループは、顧客の要求を捉え、積極的な開発投資と技術開発活動を継続的に実施しております。現在では電子部品実装ロボットと工作機械を事業の柱に据え、既存製品の性能向上に取り組むとともに、産業用多関節ロボット、介護ロボット、大気圧プラズマ装置、宅配ロッカー、リニアモータ、リサイクル分別ロボット等の新規分野への事業展開を進めております。また、米国・シリコンバレーにあるFUJI Innovation Lab.等を積極的に活用し、ロボット技術に基づいたイノベイティブな新規事業創出に努めております。しかしながら、顧客要求の高度化や、市場での急速な技術革新による当グループの開発技術の陳腐化により、開発した製品を計画通り販売できない場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当グループは、品質マネジメントシステム規格ISO9001を取得し、品質保証体制及び顧客満足に資するサービスサポート体制の強化に努めております。しかしながら、当グループの製品は先端技術を駆使し、新たな分野の開発技術も多く採用していることから予期せぬ不具合が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(5) 大規模災害等による影響

当グループは、製造、販売及びサービス拠点をグローバルに展開しており、想定を超えた大規模災害や感染症の世界的流行等により、影響を受ける可能性があります。特に、当グループの主要な生産拠点が集中しております愛知県は、南海トラフ地震の防災対策推進地域であり、当該地域において大規模地震が発生した場合には、生産設備の破損や物流機能の停止等により生産・納入活動が停止し、業績に影響を及ぼす可能性があります。当グループといたしましては、災害等の発生時の被害最小化を図るため、事業継続計画の策定、耐震対策、防災訓練等の対策を講じリスクの最小化に努めております。

 

(6) 知的財産権による影響

当グループが開発・生産している製品について、特許権・商標権等の取得とその保護に努めておりますが、保有する知的財産権を不正に使用した第三者による類似製品等の製造・販売を完全には防止できない可能性があります。また、当グループの製品開発時には第三者の知的財産権を侵害しないように細心の注意を払っておりますが、結果的に知的財産権を侵害したとして第三者から訴訟を提起され、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 情報セキュリティによる影響

当グループは、情報システムの管理体制を構築し、徹底したセキュリティ対策や従業員教育等の施策を実施しております。しかしながら、コンピュータウィルス、不正アクセスやサイバー攻撃による予期せぬ障害が発生した場合には、生産をはじめとする事業活動の停止や情報漏洩による当グループの信用低下、顧客等に対する損害賠償等が発生する可能性があり、その場合には業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) のれんの減損による影響

当グループは、産業用ロボット及び半導体製造装置メーカーとしての総合提案力を強化するため、2018年8月にファスフォードテクノロジ株式会社(以下「FFT」といいます。)の株式を取得し、当連結会計年度末においてのれん9,038百万円を計上しております。今後、経営環境の変化等によりFFTの収益性が低下した場合や当初想定したシナジーが実現しなかった場合には、のれんの減損損失計上により、当グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

経営者の視点による当グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当グループが判断したものであります。

 

(1) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度におけるわが国経済は、個人消費やインバウンド需要の回復により景気が押し上げられ、企業の設備投資は世界的な財需要の低迷を背景に一部に弱い動きが見られるもののソフトウェア投資を中心に増加しました。世界経済は、北米では個人消費が底堅く推移した一方で、欧州および中国では内外需要に弱さが見られ、財輸出の低迷に伴い世界的に製造業の設備投資は伸び悩みました。

このような環境のなかで、当グループは「人々の 心豊かな 暮らしのために」をパーパスに掲げ、ロボティクスと自動化技術を礎に、製造・介護・物流などの分野において、驚きと感動を与える商品・サービスをお届けすることで社会に新しい価値を創造し、人々の笑顔があふれるサステナブルで心豊かな社会の実現を目指しています。主力事業であるロボットソリューション事業では、あらゆる製品のデジタル化により拡大が期待される電子部品実装機市場におけるマーケットリーダーとしての地位を確立すべく、新製品である「NXTR」「AIMEXR」によって多品種少量から超大量生産までお客様の幅広いご要望への対応、FSF(FUJI Smart Factory)ソリューションの進化によって生産フロア完全無人化を見据えた自動化・自律化への対応をそれぞれ進めてまいりました。さらに、グローバルに展開されているFUJIグループのネットワークをデジタル活用にて営業・サービスの両面から強化し、お客様とのより強い「つながり」の確立にも取り組んでまいりました。また、マシンツール事業では、EV化の急激な進展をビジネスチャンスと捉え、ロボットシステムによる自動化を強みにターンキーシステムの提案力強化や短納期提案に努めてまいりました。さらに、主力機種「CS」「TN」シリーズの拡販を進めつつ、EV用モーター部品加工に強みがある「ANW」シリーズのバージョンアップ機も販売を開始いたしました。そのほか、全社を挙げて、カーボンニュートラル実現に向けて環境に配慮した省エネ設計、ものづくりの効率化を推進してまいりました。

当グループの当連結会計年度の経営成績は、ロボットソリューションセグメントにおいて大幅な減収となり、売上高は127,059百万円と、前連結会計年度と比べて26,266百万円(17.1%)減少しました。

海外売上高は、世界的なエレクトロニクス需要の低迷により、111,886百万円と、前連結会計年度と比べて26,055百万円(18.9%)減少しました。売上高に占める海外売上高の割合は88.1%(中国29.2%、他アジア22.5%、米国13.4%、欧州16.8%、その他6.2%)と、前連結会計年度と比べて1.9ポイント下降しました。国内売上高は、前連結会計年度と比べて211百万円(1.4%)減少し、15,173百万円となりました。

営業利益は13,421百万円と、前連結会計年度に比べて13,686百万円(50.5%)減少し、経常利益は15,010百万円と、前連結会計年度に比べて14,006百万円(48.3%)減少しました。

親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度と比べて10,016百万円(49.0%)減少し、10,438百万円となりました。

以上の結果、1株当たり当期純利益は110円59銭と、前連結会計年度の212円05銭から101円46銭減少しました。

また、自己資本利益率(ROE)は4.6%となり、前連結会計年度に比べて4.8ポイント下降しました。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

 

ロボットソリューション

売上高は114,596百万円と、前連結会計年度と比べて25,282百万円(18.1%)減少しました。事業活動としては、自動化やDXを積極的に取り入れることで生産の効率化や利益率向上に努めるとともに、主力機種の拡販およびソリューション営業の推進によりマーケットシェアの拡大に取り組んでまいりました。一方、主力製品であるマウンター市場は、中国における通信関連にて一時的な設備投資があったものの、全般的には引き続き世界的なエレクトロニクス需要の低迷により設備投資が軟調に推移し、事業としては減収となりました。

営業利益は、18,321百万円となり、前連結会計年度と比べて13,077百万円(41.7%)減少しました。

セグメント資産は159,900百万円となり、前連結会計年度と比べて2,953百万円(1.8%)減少しました。これは主に、売上減に伴う売掛金の減少などによるものであります。

当年度は中期経営計画の最終年度でしたが、世界的な設備需要の低迷や部材コストの高騰により減収減益となり、目標の達成には至りませんでした。今後も通信、車載、半導体向けを中心にマウンター市場の規模は拡大が続く見通しであり、次年度よりスタートさせる新中期経営計画を軸に、引き続きマーケットシェア拡大に取り組んでまいります。

 

マシンツール

売上高は10,455百万円と、前連結会計年度と比べて193百万円(1.9%)増加しました。これは、自動車市場において一部需要に回復基調が見られたことによるものであります。

営業損益は786百万円の損失(前期:営業損失644百万円)となりました。

セグメント資産は、19,254百万円となり、前連結会計年度と比べて154百万円(0.8%)減少しました。これは主に売掛金の減少などによるものであります。

中期経営計画につきましては、市場全体として設備投資に対し慎重な姿勢が続いたことに加え、部材コストの高騰により当年度も引き続き営業損失となっており、目標の達成には至りませんでした。次年度は組織体制を刷新しコスト削減や経費の見直しを進めつつ、当社が得意とするターンキーソリューションビジネスに注力するとともに、事業基盤の確立および持続的な収益成長を目指してまいります。

 

その他

制御機器製造、電子機器製造、画像処理開発等のその他事業の売上高は2,007百万円となり、前連結会計年度と比べて1,178百万円(37.0%)減少し、営業損益は102百万円の損失(前期:営業損失38百万円)となりました。

 

 

(2) 財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は161,436百万円となり、前連結会計年度末と比べ15,314百万円減少しました。これは主に、受取手形及び売掛金が9,882百万円、棚卸資産が4,728百万円それぞれ減少したことによるものであります。固定資産は89,501百万円となり、前連結会計年度末から12,085百万円増加しました。これは主に、株価上昇などにより投資有価証券が6,075百万円、岡崎工場一部建屋の建替などにより建設仮勘定が2,487百万円それぞれ増加したことによるものです。

この結果、資産合計は、250,937百万円となり、前連結会計年度末と比べ3,229百万円減少しました。

 

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は18,406百万円となり、前連結会計年度末と比べ9,162百万円減少しました。これは主に、未払法人税等が3,236百万円、支払手形及び買掛金が2,973百万円減少したことによるものであります。固定負債は4,252百万円となり、前連結会計年度末から2,759百万円増加しました。これは主に繰延税金負債が2,653百万円増加したことによるものであります。

この結果、負債合計は、22,659百万円となり、前連結会計年度末と比べ6,403百万円減少しました。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は228,278百万円となり、前連結会計年度末から3,174百万円増加しました。これは主に、為替市場における円安の進行により為替換算調整勘定が4,449百万円、株価上昇などによりその他有価証券評価差額金が4,086百万円、親会社株主に帰属する当期純利益などにより利益剰余金が2,810百万円それぞれ増加した一方、自己株式の取得などにより9,403百万円減少したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は90.9%(前連結会計年度末は88.5%)となりました。1株当たり純資産額は2,463円67銭(前連結会計年度末は2,332円15銭)となりました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から2,484百万円増加し62,466百万円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、30,187百万円の収入(前期:12,994百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益15,018百万円や売上債権の増減額11,765百万円などによるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、12,366百万円の支出(前期:5,779百万円の支出)となりました。これは主に有形及び無形固定資産の取得による支出14,642百万円などによるものであります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、17,148百万円の支出(前期:7,951百万円の支出)となりました。これは主に、自己株式の取得による支出9,427百万円や配当金の支払額7,629百万円などによるものであります。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当グループの運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための原材料及び部品の購入費のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また運転資金、戦略投資資金及び設備投資資金は内部留保金を充当することを基本方針とし、将来の成長に向けた周辺事業、新規事業への戦略的投資や設備投資のために一定水準の内部留保を維持してまいります。一方、必要に応じて借入れによる資金調達も検討してまいります。重要な資本的支出及びその資金の調達源につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載しております。

なお、当社は、資金需要に対する機動性・安全性の確保及び財務リスクの低減を図るため、主要取引金融機関と総額120億円の特定融資枠契約を締結しております。

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

 

(6) 生産、受注及び販売の実績

a 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

ロボットソリューション

113,501

△23.3

マシンツール

11,875

△2.3

報告セグメント計

125,377

△21.7

その他

1,941

△38.2

合計

127,318

△22.0

(注) 金額は販売価格によっております。

 

b 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

ロボットソリューション

104,005

△18.6

34,536

△23.5

マシンツール

10,294

△12.7

7,018

△2.2

報告セグメント計

114,300

△18.1

41,554

△20.6

その他

1,909

△34.7

290

△25.1

合計

116,209

△18.4

41,845

△20.6

 

c 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

ロボットソリューション

114,596

△18.1

マシンツール

10,455

1.9

報告セグメント計

125,052

△16.7

その他

2,007

△37.0

合計

127,059

△17.1

(注) 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。なお、アメリカンテック カンパニー リミテッドへの販売実績の総販売実績に対する割合が前連結会計年度においては10%未満となりましたので、記載を省略しております。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

アメリカンテック カンパニー

リミテッド(中国)

16,238

12.8

 

5【経営上の重要な契約等】

合弁契約

合弁会社名

内容

出資額

設立年月

FUJIリニア株式会社

(資本金200百万円)

リニアモータの開発、製造及び販売

当社

契約締結先A

契約締結先B

268百万円

66百万円

66百万円

2020年2月

(注) 合弁契約上の取り決めにより契約締結先の名称公表は差し控えさせていただきます。

 

6【研究開発活動】

当グループは、次世代製品の開発に向け、世界の先進の顧客が求める最先端の自動化装置、システムの研究開発に重点的に取り組んでおります。

研究開発活動は主に当社にて、セグメントごとに行っており、各セグメントに属さない基礎研究及び要素技術開発等の研究開発活動は開発センターが行っております。

当連結会計年度の研究開発費の総額は、8,228百万円であります。なお、研究開発費の総額には、開発センターで行っている各セグメントに配分できない研究費用1,636百万円が含まれております。

セグメントごとの研究開発活動は、次のとおりであります。

 

ロボットソリューション

主力機種NXTシリーズをはじめとする電子部品実装ロボットのさらなる機能強化に向けた開発等を行っております。当期においては、電子部品実装工程の全自動化を目指し、世界初の自動部品補給システムを搭載したハイエンドモデル「NXTR」に加え、変種変量生産のニーズに応える拡張型オールインワン装着機「AIMEXR」の開発に引き続き注力してまいりました。

当セグメントに係る研究開発費の金額は5,638百万円であります。

 

マシンツール

複合加工旋盤の新機種開発や、EV用モーター部品加工に強みがある「ANW」シリーズのさらなる機能強化に向けた開発等に注力してまいりました。

当セグメントに係る研究開発費の金額は885百万円であります。

 

その他

研究開発費の金額は僅少のため、内容についての記載は省略しております。