第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループは、「我々は、地球的視野に立ちビジネスロジスティクスを介し『共有できる歓び』『共感し得る価値』『共生したる環境』を先進創造し、お客様・株主様・従業員と共に社会の繁栄に貢献する」ことを基本理念としております。この理念を信奉し、健全な事業活動を通して、お客様、株主様、地域の皆様に対し、企業責任を果たし、国家・地域社会の発展に寄与してまいります。

当連結会計年度の世界経済は米国で個人消費が堅調に推移するなど一部の地域で底堅く推移し、全体として緩やかな回復基調にある一方、ロシアによるウクライナ侵攻、中東での軍事衝突など経済安全保障リスクが高まり、中国経済の減速傾向も相まって先行き不透明感が広がり、本格的な経済回復は道半ばの状況となりました。国内においても景気は緩やかな回復基調にあり、自動車業界では車載用半導体不足の緩和による自動車生産が回復し、サプライチェーンの正常化が進みました。一方で、世界経済の減速と連動する製造業で生産の落ち込みの影響もあり、全体としての荷動きは力強さに欠ける状況で推移いたしました。

このような経済情勢のなか、当社グループは2024年4月より新たな三か年計画である第13次中期経営計画をスタートさせ、事業戦略の成長ドライバーとして『海外事業』、『循環事業』、『衣食住事業』の3つの柱を掲げ、新たなチャレンジの一歩を踏み出しました。

新規に建設した倉庫設備の稼働や、2023年11月にダンボール製造会社の株式会社エムピー、2023年12月には産業廃棄物収集運搬事業の古河環境サービス株式会社を買収した他、スケジュールが多少後ろ倒しになったものの、2024年度に入りニッコン両毛株式会社(旧ミツバロジスティクス株式会社)や米国キャリアカー事業をグループ内に取り込み、計画の達成に向けて着実に歩みを進めております。

当社グループは、「自前主義・手の内管理」というユニークな戦略の下、自社保有のファシリティやドライバーを活用することで、時間帯にかかわらず柔軟に業務が遂行できる点、長距離輸送の際の乗り継ぎ運行、荷役や荷待ち時間の短縮などにより2024年問題に対処して参ります。

ESG経営につきましても、女性活躍やCO2の削減、水銀灯の全廃などに加え、人的資本経営の実践により、ワークライフバランスの重視と生産性の向上を進め、グループ全体の企業価値向上に努めて参ります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティの基本的な考え方

 ニッコングループは、「グループ基本理念」「グループ行動指針」に基づき、物流事業を通じて新たなサービスを創出することで、持続可能な社会の実現、企業価値向上を図ってまいります。

 

(2) ガバナンス

 当社グループは、持続可能な社会の実現を最優先課題ととらえ、サステナビリティ経営に関する取組みを推進・強化するため、ESG活動を取締役が直接監督し、気候変動により生じる地球環境問題をはじめとした様々な社会問題に対し、ガバナンス体制を構築しております。

 具体的には、社外取締役を委員長とするサステナビリティ委員会を取締役会の諮問機関として設置し、ESG全般に係る執行状況を監督・指導する取締役直轄の組織として機能しています。サステナビリティ委員会は四半期ごとに開催し、気候関連問題を含めたサステナビリティに係る事項について取締役会に報告するとともに、重要度の高いテーマについて取締役が出席する会議において多面的な議論を行い、取締役会からの指示の下、迅速な方針策定及びより実効性の高い活動に取り組んでおります。

 また、実行部隊であるESG推進室は、各部署及びグループ企業と連携を図り、気候変動対策を含むサステナビリティ戦略を検討・起案し、サステナビリティ委員会に提言、企業活動を通じて実践すべきテーマや重要課題を特定し、気候変動対策やダイバーシティ推進に向けた具体的な取組を推進しております。

 

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(3) 戦略

 当社が優先して取り組むべき重要課題として設定しております「マテリアリティ」の解決に向けて、サステナビリティ委員会で協議を重ね取締役会で決定した「サステナビリティ方針」に基づき、今後も様々な取組みを通じ、 サステナビリティ経営を実践してまいります。

 また、当社グループは、気候変動により生じるリスクと機会について特定し、リスクの軽減、機会の獲得に向けた取組みを推進しております。

 

区分

種類

想定される

リスク・機会

事業への影響

主な取組

移行

リスク

政策・

法規制

排ガス規制

環境対応車の導入によるコストの増加

適正料金の収受

技術

技術開発の遅延

自動車メーカーにおける大型トラックの低炭素車両の開発の遅延による導入の遅れ

自動車メーカーの開発状況の情報収集

市場

顧客ニーズ

の変化

CO2の排出削減の対応遅れによるシェアの減少

中長期の低炭素計画の策定、推進

評判

資金調達及び

株価への影響

CO2の排出削減への取組みが不十分と評価されることによる金融機関からの資金調達の困難及び投資家離れによる株価の下落

情報開示の充実

物理

リスク

急性

自然災害の発生

自然災害の発生による道路の寸断や倉庫の浸水等による物流サービスの停止

ハザードマップ等に基づいたBCP対策の推進

慢性

気温の上昇

平均気温の上昇による労働環境の悪化

労働環境の整備

機会

資源

効率化

輸送効率の改善及びCO2排出量削減

エネルギーコスト等の減少

ダブル連結トラックを活用した幹線輸送の推進

製品・

サービス

サービスの開発

CO2排出量削減となる輸送サービスの開発による新たな事業機会の創出

モーダルシフト、共同配送、輸送冶具の提案の推進

 

 2023年4月1日から開始しています3か年計画である『第13次中期経営計画』において、「事業活動を通じ、人々が幸せを実感する豊かな社会の実現と持続的な発展に貢献する」を経営方針に掲げ、地球環境問題をはじめとした様々な社会課題に対し、リスクの軽減、機会の獲得を行い、ESG経営による企業価値向上に向け積極的に取り組んでまいります。

 

 また、当社グループにおける多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は『次世代物流の構築』を軸として取り組みを進めております。

 2022年12月に社長直轄の「HR(Human Resource)統括部」を発足し、当社グループ全体の人的資本経営に取り組む体制を整えました。

 物流業界は2024年に直面し、今まさに既存の物流から新たな物流への変革の時期にきており、この変革に遅れることなく対応することが必要であり、その中でも高度物流人材の投入は必須であります。

 こうした背景から、当社グループにおける多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針を以下のとおり定めております。

 

1.安全最優先

 物流は、生活の根源である衣食住すべてを支える欠くことのできない機能であり、サステナブルなサービスを安定的に提供することが我々の使命です。その社会的使命において、物流サービスの根幹となる『安全』に関する事項は最も重要なテーマであり、全グループ会社において最優先で取り組んでおります。

 

2.次世代物流の構築

 当社は、若い世代へ物流の重要性を伝えていく次世代物流の発展にも注力しております。2021年から一橋大学『物流経営論』寄付講座を開講し、講義や事業所見学を通じて物流業界の発展と今後の物流を担う次世代人材の育成に貢献しております。また、最新の物流を研究すべく外部物流研究機関への出向を行っております。

 

 

3.従業員の持続的成長への取組強化

 当社グループでは、誰もが仕事と個々のライフイベントを両立するための制度を利用でき、平等に教育・研修・評価を受け能力を伸ばしていく成長支援の施策・環境づくりに取り組んでおります。性別・国籍を問わず多様な人材を受け入れるとともに、様々な国の認証制度を取得推進し環境を整え、具体的に、かつ中長期的な視点で持続可能な人材構築体制を計画してまいります。

 当社では以下の5項目を重点課題として捉えており、それぞれに対する具体的取組は下記項目に記載のとおりであります。

① 次世代物流の構築

・新サービスの開発を行うための研究開発部門の新設

・新技術開発への参画や導入を行うための研究機関や大学との連携

② 次世代人材育成と後継者計画

・物流業界の発展と今後の物流を担う次世代人材の育成に貢献することを目的とした一橋大学での寄付講座開講

・経営者育成及び幹部養成を目的としたニッコン経営スクールの実施

・国内・海外事業会社の次期幹部候補社員を国内・海外グループ会社で育成する制度の企画・検討

・全世界のニッコングループ若手および中堅社員がグループ会社での実務研修を行うトレーニー制度の実施

③ 多様な人材の雇用促進

・高度物流人材とグローバル人材の積極的な採用

・外国人技能実習生の受け入れ推進

・障がい者の受け入れ推進

・女性社員の積極的な採用

④ 人材確保に向けた環境整備

・ホワイトカラーエグゼンプション制度導入の推進

・働きやすい職場認証制度、健康経営優良法人認証制度、えるぼし認定、ホワイト物流推進等の国の認証制度の取得促進

⑤ 人的資本の拡充

・人材基盤の確立を行うため国内外のグループ会社において教育・育成体制の充実

・従業員エンゲージメントの向上を図るため、タレントマネジメントとスキルアッププランの見える化

 

 

(4)リスク管理

① 気候関連のリスクを特定・評価するプロセス

 監督機関でありますサステナビリティ委員会は、実行部隊であるESG推進室に対し、気候関連リスク及び機会の特定、評価を指示し報告を受けます。ESG推進室は、主要子会社8社と構成するESGワーキンググループにてディスカッションを重ね、社会課題のリストアップを行い、当社グループの事業活動との関連及びステークホルダーからの期待の把握、優先順位づけを実施することで、気候関連リスク及び機会を特定、評価の実施を行います。

 

② 気候関連のリスクを管理するプロセス

 ESG推進室は、気候変動リスクを含めたESGに関する全社グループ戦略の立案を担い、グループ企業全体に周知し推進するとともに、取組状況をサステナビリティ委員会に報告します。サステナビリティ委員会は、原則として四半期に1回を目途に定期的に開催するほか、必要に応じて臨時に開催することとしており、取締役会への報告及び提案を行うとともに各部門への指導を行っています。

 

 

(5)指標及び目標

 当社グループは、サステナビリティ委員会指導の下、ESG推進室が起案し取締役会にて決議している指標として、温室効果ガス(Scope1・Scope2)排出量や水銀灯に関する削減目標を設定しており、2024年3月期の実績は下記の通りです。業務量増加のなか、フルトレ輸送やモーダルシフトの拡大、ハイブリッド車や小型EV車など環境配慮車の導入や太陽光パネルの設置などに順次取り組んでおります。今後も引き続き、輸送の効率化等による使用エネルギー量の削減や、クリーンエネルギーへの切替えなどを推進し、2030年度目標として掲げている30%削減に向けて、商用車の小型車新車販売を2030 年までに電動車20~30%とする政府目標や、当社の主流である大型車の技術開発の動向、供給インフラの整備状況等を踏まえながら具体化し、その先の2050年カーボンニュートラル達成を目指してまいります。

 また、女性活躍につきましては、従業員に占める女性比率に加え、役職者比率、管理職比率目標を新たに設置し、引き続き女性が働きやすい職場・活躍できる職場の構築を進め、採用に繋げてまいります。

 

 《CO2排出量(Scope1+2)》

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

2026年3月期

 

2030年度

2050年度

実績

(基準年)

実績

目標

目標

 

目標

目標

CO2排出量削減率

▲1.3%

▲0.4%

▲3.7%

 

▲30%

▲100%

CO2排出量(t)

180,048

177,732

179,318

173,340

 

126,034

0

 

 《水銀灯削減》                           (本)

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

2026年3月期

実績

実績

計画

計画

水銀灯個数

12,347

8,995

6,041

33

削減計画数

▲3,352

▲2,954

▲6,008

 

 また、人的資本に関する指標及び目標は以下のとおりです。

 

 《女性従業員比率》

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

2026年3月期

実績

実績

計画

計画

従業員全体に占める女性の割合

国内

18.2%

18.3%

20.0%

22.2%

海外

37.3%

38.3%

39.1%

39.4%

合計

23.4%

23.5%

24.9%

26.5%

役職者全体に占める女性の割合

国内

10.0%

11.6%

14.0%

17.2%

海外

39.8%

41.7%

41.2%

41.3%

合計

19.4%

21.3%

23.4%

25.5%

管理職全体に占める女性の割合

国内

1.6%

2.0%

4.8%

7.7%

海外

21.6%

21.8%

22.2%

25.0%

合計

8.1%

8.5%

10.4%

13.2%

 

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)燃料費の変動について

当社グループにおいて使用する輸送用車両の燃料費は、原油価格や為替相場の変動により影響を受けております。当社グループはこれらのコスト増が生じた場合、顧客企業との協議により適正な料金の収受を図ってまいりますが、急激な燃料価格の上昇や適正な料金の収受ができないような場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2)法的規制等について

当社グループの営む事業について、運送事業の一部(貨物自動車運送事業、貨物利用運送事業)につきましては、「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(自動車NOx・PM法)」や「生活環境確保条例」等の規制を受けております。

これらの法規制等への対応については、車両の代替及び排出ガス低減装置の取付けを効果的、効率的に行うことによりコストへの影響を最小限にとどめております。しかしながら、今後規制の内容の変更等が生じた場合、更なるコストの発生が考えられます。

(3)重大事故の発生可能性について

当社グループにおきましては、順法精神に則り社会的責任を最優先に営業活動を行っておりますが、万一重大な交通事故等が発生してしまった場合、社会及び顧客の信用が低下するとともに、事業所の営業停止、事業許可の取り消し等の行政処分を受ける可能性があります。

(4)固定資産の減損について

当社グループにおきましては、倉庫事業、梱包事業及びテスト事業を中心に多額の固定資産を所有しておりますが、経営環境の変化や収益性の低下などにより投資額の回収が見込めなくなった場合には減損損失の計上が必要となり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(5)自然災害等について

当社グループが事業を展開する地域において、地震や風水害等により輸送経路が遮断された場合や事業所設備が毀損した場合、停電の発生によりシステム停止等の事態が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(6)顧客企業の動向について

当社グループにおきましては、連結売上高のうち自動車業界向けが50%超を占めており、主要な顧客企業における生産調整や物流需要等の減少が生じた場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(7)M&Aについて

当社グループでは、今後の事業領域の拡大又は必要な機能の取得、拡充のためM&Aをその選択肢の一つとしております。M&Aの実施に当たっては、対象会社の財務内容や契約関係等についてデューデリジェンスを行い、取得価額の妥当性やリスク等について十分に検討したうえで決定しておりますが、買収後の事業環境や競合状況の変化等により当初想定したとおりに事業計画が進まない場合は、対象会社の株式取得価額やのれんの減損が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(8)人材の確保・育成について

国内では人口減少や少子高齢化により労働人口の減少が進んでおり、人手不足感が強まっております。加えて物流業界におきましては、自動車運転業務の時間外労働時間の上限規制が適用されることによる影響、いわゆる2024年問題への対応も課題となっております。当社グループは、多様な人材の雇用促進や就業環境の改善等により人材の確保に努めるとともに、研修制度の充実等により人材育成を進めておりますが、事業の維持、拡大に必要な人材の確保が出来なかった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当社グループは当連結会計年度において、愛媛県松山市及び米国オハイオ州に土地と建物を取得、埼玉県三芳町、茨城県古河市に倉庫を取得、タイ国ラッカバン、インドネシア国西ジャワ州に事業用地を取得するなど、積極的な設備投資や営業活動を行ってきました。

この結果、当連結会計年度における売上高は、設備投資効果に加え業務量の回復などもあり2,223億24百万円(前年同期比4.8%増)となりました。営業利益は増収効果等により、212億35百万円(前年同期比8.4%増)となりました。経常利益は、238億75百万円(前年同期比8.0%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、166億8百万円(前年同期比4.4%増)となりました。

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

運送事業

貨物取扱量の回復などにより、売上高は1,003億98百万円(前年同期比3.8%増)となりました。営業利益は、増収効果などにより、55億85百万円(前年同期比10.3%増)となりました。

 

倉庫事業

国内外で継続的に行ってきた倉庫の新増設の効果等により保管貨物量が増加し、売上高は388億63百万円(前年同期比3.0%増)となりました。営業利益は、人件費や減価償却費の増加などにより83億28百万円(前年同期比1.1%減)となりました。

 

梱包事業

業務量の回復などにより、売上高は538億9百万円(前年同期比8.5%増)となりました。営業利益は、増収効果などにより33億20百万円(前年同期比10.4%増)となりました。

 

テスト事業

主に業務量の回復により、売上高は228億81百万円(前年同期比9.3%増)となりました。営業利益は、増収効果と業務の効率化により33億29百万円(前年同期比49.7%増)となりました。

 

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は427億96百万円となり、前連結会計年度末に比べ33億36百万円増加しました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は311億7百万円となり、前連結会計年度に比べ14億40百万円減少しました。これは主に増加要因として税金等調整前当期純利益が8億57百万円、賞与引当金の増減額によるキャッシュ・フローが6億72百万円、その他の負債の増減額によるキャッシュ・フローが18億56百万円それぞれ増加し、減少要因として売上債権の増減額によるキャッシュ・フローが29億6百万円減少し、法人税等の支払額が15億49百万円増加したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果支出した資金は243億40百万円となり、前連結会計年度に比べ17億91百万円増加しました。これは主に有形固定資産の取得による支出が12億85百万円増加したことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出した資金は44億8百万円となり、前連結会計年度に比べ42億円増加しました。これは主に支出の増加要因として長期借入金の返済による支出が123億28百万円、自己株式の取得による支出が9億99百万円、配当金の支払額が10億88百万円それぞれ増加し、主に支出の減少要因として長期借入れによる収入が100億円増加したことによるものであります。

 

③販売の実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

前年同期比(%)

運送事業

100,398

45.1

103.8

倉庫事業

38,863

17.5

103.0

梱包事業

53,809

24.2

108.5

テスト事業

22,881

10.3

109.3

その他事業

6,370

2.9

90.2

合計

222,324

100

104.8

(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2 最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

本田技研工業㈱

30,736

14.5

37,368

16.8

 

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、以下のとおりであります。

a.財政状態

(資産の部)

当連結会計年度末における流動資産は879億81百万円となり、前連結会計年度末に比べ49億54百万円増加しました。これは主に現金及び預金が36億25百万円、電子記録債権が22億99百万円増加した一方、受取手形及び売掛金が7億98百万円減少したことによるものであります。固定資産は3,004億64百万円となり、前連結会計年度末に比べ227億43百万円増加しました。これは主に、愛媛県松山市及び米国オハイオ州に土地と建物を取得、埼玉県三芳町、茨城県古河市に倉庫を取得、タイ国ラッカバン、インドネシア国西ジャワ州に事業用地を取得、栃木県宇都宮市の倉庫建設工事の進捗などにより有形固定資産が113億92百万円、投資有価証券が時価評価等により107億41百万円増加したことによるものであります。

この結果、総資産は3,884億46百万円となり、前連結会計年度末に比べ276億97百万円増加しました。

 

(負債の部)

当連結会計年度末における流動負債は593億66百万円となり、前連結会計年度末に比べ10億7百万円増加しました。これは主に1年内償還予定の社債が固定負債からの振替により100億円、その他の内の預り金が15億92百万円増加した一方、短期借入金が返済により111億26百万円減少したことによります。固定負債は826億34百万円となり、前連結会計年度末に比べ96億44百万円増加しました。これは主に長期借入金が169億74百万円、繰延税金負債が30億90百万円増加した一方、社債が流動負債への振替により100億円減少したことによるものであります。

この結果、負債合計は1,420億1百万円となり、前連結会計年度末に比べ106億51百万円増加しました。

 

(純資産の部)

当連結会計年度末における純資産は2,464億45百万円となり、前連結会計年度末に比べ170億46百万円増加しました。これは主にその他有価証券評価差額金が70億54百万円、利益剰余金が33億52百万円、為替換算調整勘定が27億98百万円増加し、消却に伴い自己株式が30億44百万円減少したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は63.3%(前連結会計年度末は63.4%)となりました。

 

b.経営成績

(売上高)

当連結会計年度における売上高は2,223億24百万円(前年同期比4.8%増)となりました。貨物取扱量の回復と、新増築した倉庫の稼働開始による貨物取扱量の増加が寄与しました。セグメント別の売上高につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

(営業利益)

当連結会計年度における営業利益は212億35百万円(前年同期比8.4%増)となりました。売上高の増加に伴い堅調に推移しました。セグメント別の営業利益につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

(経常利益)

当連結会計年度における営業外収益は29億98百万円となり、前連結会計年度に比べ1億45百万円増加しました。これは主に受取配当金が1億91百万円増加したことによるものであります。営業外費用は3億58百万円となり、前連結会計年度に比べ33百万円増加しました。これは主に支払利息が24百万円増加したことによるものであります。

この結果、経常利益は238億75百万円(前年同期比8.0%増)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度における特別利益は1億92百万円となり、前連結会計年度に比べ7億65百万円減少しました。これは主に前連結会計年度において発生した収用補償金が7億44百万円減少したことによるものであります。特別損失は4億32百万円となり、前連結会計年度に比べ1億43百万円増加しました。これは主に子会社にて発生した退職給付制度の改定に伴う過去勤務費用を一括で費用認識したことによる退職給付制度改定損が1億7百万円発生したことによるものです。

この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は166億8百万円(前期比4.4%増)となりました。

 

c.キャッシュ・フローの分析

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

d.資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの事業活動における資金需要としては、事業を行うための費用や一般管理費などの営業費用としての運転資金と主に倉庫、作業所及び事業用車両等の固定資産購入のための設備資金があります。

当社グループでは、運転資金につきましては内部資金のほか必要に応じてコマーシャルペーパーや金融機関からの借入金で賄い、設備資金につきましては内部資金のほか必要に応じて固定金利の普通社債及び金融機関からの借入金で賄うことを基本としております。当連結会計年度末における普通社債の残高は500億円、借入金の残高は290億59百万円であります。

 

e.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、2023年4月1日から3か年の中期経営計画「第13次中期経営計画(Challenge13)」をスタートさせました。

初年度である当連結会計年度におきましては、売上高2,300億円、営業利益220億円、営業利益率9.6%を掲げておりました。国内景気の緩やかな回復や自動車業界における生産活動の妨げとなっていた部品不足の解消もありましたが、売上高は2,223億24百万円、営業利益は212億35百万円、営業利益率は9.6%となり、営業利益率は目標達成となったものの売上高と営業利益はいずれも中期経営計画初年度の目標に若干の未達でした。

なお、中期経営計画2年目の2025年3月期の目標は売上高2,500億円、営業利益240億円、営業利益率9.6%です。

 

 

②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果とは異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

a.減損会計における将来キャッシュ・フロー

「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

b.退職給付債務の算定

当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、期待運用収益率等の様々な計算基礎があります。

当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。

退職給付債務及び退職給付費用の算定において、主要な仮定の変化が当連結会計年度末の退職給付債務及び退職給付費用に与える感応度は以下のとおりであります。マイナス(△)は退職給付債務の減少を、プラスは退職給付債務の増加を表しております。感応度分析は分析の対象となる数理計算上の仮定以外のすべての数理計算上の仮定が一定であることを前提としております。

当連結会計年度末(2024年3月31日)

 

数理計算上の仮定の変化

退職給付債務に与える影響(百万円)

割引率

0.5%の上昇

△807

0.5%の低下

842

 

数理計算上の仮定の変化

退職給付費用に与える影響(百万円)

期待運用収益率

0.5%の上昇

△58

0.5%の低下

58

なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係)(8)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

(取得による企業結合)

当社は2024年4月16日米国の自動車陸送企業であるSupreme Auto Transport, Inc.の全持分の内、75%を取得することについて既存出資者との間で合意し持分譲渡契約を締結しました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。