第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 本文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(経営方針)

 当社グループは、以下のパーパス・バリューに基づき、持続的な事業成長を達成することによって、企業価値の最大化を図ることを目標としております。

◆パーパス

 私たちは、常に顧客視点で変化を先取りし、社会インフラとして成長し続けるEコマースの進化に貢献します

 

◆バリュー

1.二つのお客様を大切にする心

 常に顧客企業の成功とその先のエンドユーザー様の満足を第一に考え行動する

2.新しい目線と提案力

 従来のやり方に改善の余地がないかを常に模索し、圧倒的な提案力と改善力で顧客に信頼される存在となる

3.スピード感と正しい生産性

 個人および組織として正常な危機感を常に持ち、スピード感と責任感を持って行動する

 付加価値の創出を意識し、生産性の向上を図る

4.責任を伴う自由の奨励

 職位に関わらず、誰もが率直かつ敬意のある意見を述べる文化を奨励し改善のために他者からの建設的な意見を受け入れる謙虚さを持つ

5.自分事・誠意・敬意を元にしたチーム志向

 イー・ロジットの社員として社内で模範となる行動を心がけ同僚および取引先などの全ての関係者に常に最大限の敬意を払う

6.倹約

 必要な投資、無駄な経費を見極め、資本を適切に活用する

 

(中長期的な会社の経営戦略等)

 当社グループは、上述のパーパス・バリューに基づき、顧客ニーズに応える以下の3つの軸を強化し、事業の拡大を図ってまいります。

① 生産性の向上

 賃借床面積の稼働率を追求し、高効率運営を実現します。

 FCの運営モデルを保管型ビジネスから出荷型ビジネスへ転換し、収益性を向上します。

② 固定費の適正化

 既存FCの稼働率向上を追求するとともに、固定費の削減を常に意識し、坪当たり売上高の高いビジネスモデルを実現します。

③ 自動化の推進

 既存の出荷能力をさらに高めるため、各FCに自動倉庫システムの導入を進め、坪当たり出荷数が高いビジネスモデルを実現します。

 

(目標とする経営指標)

 当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高及び営業利益であります。

 売上高は、当社及び業界の成長を表す指標と判断しており、業界、競合他社及び当社の成長度合いを計る指標として総合的に判断して決定し、売上高の拡大を目指してまいります。

 売上高計画における具体的な策定方法といたしましては、物流業界、倉庫業界及び顧客となるEC業界の将来展望を指標として、当社独自の戦略により業界成長率にどの程度上乗せして成長できるかを見込んでおります。

 営業利益については、当社が持続的な成長を実現するための源泉となり、人員計画や設備投資計画の実行や株主還元を行う上での重要な指標になると考え、総合的に判断して決定し、営業利益の拡大を目指してまいります。

 売上高計画の策定内容に対して、必要コストの比率及び見込額を見積り、売上原価並びに販売費及び一般管理費を算出しております。具体的には、利益に影響が大きい人員計画、設備投資計画、運送料や賃借料等の動向を勘案し、策定しております。

 

(経営環境並びに事業上及び財務上の対処すべき課題)

 当社グループは、今後のさらなる成長を実現する上で、以下の事項を経営課題として重視しております。

(1)収益性の向上

 当社の事業を取り巻くBtoC-EC市場(注1)において、2023年8月に発表された「電子商取引に関する市場調査(経済産業省)」の結果では、2022年の日本国内におけるBtoC-EC市場規模は前年の20.7兆円から22.7兆円になり、前年比9.9%増で拡大しております。国内BtoC-EC市場は、今後もさらに拡大していくことが予想されます。

 一方、人材不足や資源価格高騰等、近年企業の業績悪化要因が相次いで生じております。また、変化の速いBtoC-EC市場では、市場規模の増加に比して既存システムや仕組みが陳腐化してしまう恐れがあります。

 これらに対応すべく新たなシステムやサービス導入の検討を適宜進め、先行き不透明な経済環境に対応するため、サービス提供時における販売価格や販売コストの適正化を随時実施してまいります。また、機械化等に伴う物流業務の生産性向上を追求し、倉庫床面積の稼働率を可能な限り高めることで事業の収益性を高い水準で維持できるよう改善を進めてまいります。

(注1)消費者向け電子商取引

 

(2)人材の採用及び育成

 当社グループが持続的な成長を達成するためには、各分野で専門的な能力を持った優秀な人材の確保が重要であると考えております。しかしながら、労働人口の減少や雇用情勢の改善から人材の確保は難しくなってきております。したがって、採用手法の多様化への対応や教育制度を整備するとともに、従業員定着率の向上を目指し、福利厚生制度の拡充やワークライフバランスを考慮した働きやすい職場環境づくり等、就業環境の改善に積極的に取組んでまいります。

 

(3)新規・周辺領域サービスの拡充

 当社グループが持続的な成長を達成するためには、既存サービスの品質や業務効率の向上が重要であると認識しております。したがって、技術革新、通販事業者や通販利用者のニーズの変遷を迅速に取り入れ、新規・周辺領域サービスの拡充に積極的に取組んでまいります。

 

(4)情報管理体制の強化

 当社グループは顧客である通販事業者の注文に対する物流代行を行っており、購入者の個人情報を含む膨大な注文に関する情報を保有しております。そのため、システム設計、個人情報に関する社内でのアクセス権限の設定等、取扱いには十分な注意を払っております。情報の取扱いに際しては、ISMS認証(ISO27001)及びプライバシーマークを取得し、個人情報保護方針及び社内規程に基づき、情報管理体制の整備・運用を強化することで情報漏洩防止に取組んでまいります。

 

(5)内部管理体制の強化

 当社グループが経営目標を達成するためには、健全かつ効率的な内部管理体制の強化が必要不可欠であると考えております。そのため業務フローの整備や文書化を進めるとともに、内部監査等による運用状況の確認と改善に努めております。また、リスク管理やコンプライアンスについては、常勤役員が出席するリスクコンプライアンス委員会を運営することで恒常的に意識を高めており、引き続き経営者を中心とした内部管理体制の強化に積極的に取組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、取締役会がサステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有しており、当社のサステナビリティのリスク及び機会への対応方針及び実行計画等についての審議・監督を行っております。

 

(2)戦略

 当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

① 人材育成方針

 当社グループのパーパスステートメント(「私たちは、常に顧客視点で変化を先取りし、社会インフラとして成長し続けるEコマースの進化に貢献します」)に基づき、常に顧客視点で顧客企業の課題解決と成功を模索する自律した人材の育成を目指し、教育制度を構築しております。

 自己の成長・変革に挑戦する社員を支援・尊重し、成長・活躍・自己実現の場を提供するため、年齢や性別等を問わず、能力と人格を備えた優秀な人材に適切な昇格・昇進の機会を与え、将来の管理職・経営層の育成を行っております。

 

② 社内環境整備方針

 当社グループは優秀な人材確保及び育成のため、以下の取組みを行っております。

a.「自己変革」を促すために、職務記述書(JD)を職種・職位毎に作成し、挑戦を志す社員が、「何の業務を行うのか」、「どのような責任範囲があるのか」、「業務遂行に必要な能力は何か」を分かるようにしております。また、社員が必要なスキルを得ることができるよう、コーチングやDX、業務運営手法に関連した研修制度の定期運用を行い、自学の機会を持てるようにしております。

 

b.「公募制度」の運用を通じて挑戦したい社員がチャレンジできるようにし、可視化された環境で昇格・昇進の機会を設定しております。公募に自ら応募・チャレンジし、採用された社員については、その役割・責任に応じた報酬を与える事で意欲を高めてもらうと共に、サクセッションプランニング研修等、専門性の高い研修の実施により業務スキルの向上を図っております。

 

c.変化の激しい時代に対応するため、柔軟かつ強靭な組織構築に向けた人事制度改革を進めております。2023年4月に運用を開始した新人事制度は、JDに基づく職能型の人事制度に加え、エンジニアやコンサルタント等の専門性の高いプロフェッショナルな人材創出を目指したスペシャリストコースを導入しております。勤務体系については、短時間勤務でも正社員となる事が可能な短時間勤務正社員制度、以前まで禁止としていた副業を解禁、フルフレックス制度、リモートワーク制度等の導入・推進により、優秀かつ成長意欲に溢れた人材が自律的に働けるような環境を構築しております。また、評価制度については旧来の目標管理制度による短期的・個人的目標への固執という弊害から脱却するため、前述のパーパスステートメントに基づき、バリューとコンピテンシーを主な評価基準とする新しい評価制度を導入し、より組織全体への貢献度を可視化し、社員のモチベーションとエンゲージメントの向上を目指しております。

 

(3)リスク管理

 当社グループにおいて、全体的なリスク管理は、リスクコンプライアンス委員会で定期的にモニタリングしております。その中でも経営への影響が大きく、対応の強化が必要なリスクは取締役会でリスクを共有し、経営陣も参画するリスクコンプライアンス委員会で進捗管理しております。

 

(4)指標及び目標

 当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標

 人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績については、今後、能力ある人材を積極的に管理職に登用し、管理者研修参加率を100%(当連結会計年度96.6%)、全異動に占める公募による異動率を50%(当連結会計年度16.2%)にすることを目指します。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する項目は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

(1)事業環境について

① EC市場の動向

 当社グループが属する通販物流業界は、EC市場の拡大、ネットショッピング利用者の増加、スマートデバイスの普及等により成長を続けてまいりました。このような傾向は今後も継続していくものと考えておりますが、セキュリティの脅威や法規制、その他の予期せぬ要因等によってEC市場の成長が阻害される状況が生じた場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 他社との競合

 当社グループが属する通販物流業界は、EC市場の拡大に伴い、それを好機として競合他社は増加しつつあります。当社の提供する物流代行サービスや運営代行サービスは、通販事業者が満足する品質や価格の提供を維持することに努めており、競合他社が増加しつつあるものの、当社事業は順調に拡大しております。

 しかしながら、競合他社との品質や価格等の競争が激化した場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 宅配事業者による影響

 当社グループが属するBPOサービス事業は、宅配事業者に宅配サービスを委託し、購入者に商品を届けることができることでサービスの提供が成り立っております。現在、宅配事業者を取り巻く市場環境は、重労働問題や雇用情勢改善による人手不足もあり、労働者の賃金値上げにより、当社も運賃値上げ等の影響を受けております。当社の宅配サービスの外注先については、大手宅配事業者に委託する割合が相対的に大きく、これらの会社が何らかの事情で宅配事業が行えなくなることやこれらの会社との取引ができなくなる可能性はゼロではありません。

 このようなリスクを踏まえ、当社は既存の大手宅配事業者との継続的な交渉、他の大手宅配事業者や地域宅配事業者の新規開拓等に努めておりますが、これらの施策にも係わらず、運賃値上げや宅配個数制限の影響を回避できなかった場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ FCの賃貸借契約及び賃借料上昇に関するリスク

 当社グループは拠点であるFCを賃借しております。何らかの事情により当該FCの継続使用が困難になった場合、又は契約更新時等に賃借料が上昇した場合、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)法的規制について

 当社グループのBPOサービス事業は、「倉庫業法」、「貨物利用運送事業法」、「個人情報保護法」等の法的規制が存在します。当社では、上記を含む各種法的規制について、法令遵守体制の整備・強化及び社員教育を行っております。

 本書提出日現在において各種許認可等の取消事由は発生しておりませんが、今後新たな法令の制定や既存法令等の改正又は解釈の変更が行われ、当社が新たな規制に適時適切に対応することができない場合、許認可等の取消を受けた場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

許認可事業

法律

監督官庁

許認可等の内容

有効期限

取消事由

倉庫業

倉庫業法

国土交通省

登録

なし

同法第21条

第一種貨物利用運送事業

貨物利用運送事業法

国土交通省

登録

なし

同法第16条

 

(3)設備投資について

 当社グループは今後のEC市場に伴う当社グループ事業の需要拡大に備え、FCの新設等を目的とした設備投資を行っております。FCの新規開設を行った場合には、新規投資に見合う水準までFCの稼働率が上昇するまでに一定の期間を要するほか、借入面積の増加に伴う賃借料負担の増加や新FC立上げに伴う人員増強のための労務費増加等の先行投資が発生するため、一時的に営業損益の低下要因となる傾向があります。

 さらに、事業環境の予期せぬ変化等により、計画した成果や資金回収が得られない場合又は資産が陳腐化した場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)人材の確保について

 当社グループ事業が持続的な成長を達成するためには、人材の確保及び育成が重要であると考えております。現在、労働人口の減少や雇用情勢の改善による人手不足の影響もあり、従業員の採用は厳しい状況であります。今後、雇用情勢がさらに悪化し、従業員の採用や育成した従業員の定着が順調に進まなかった場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)情報セキュリティについて

 当社グループは顧客である通販事業者の商品の配送に関して、購入者の個人情報を含む膨大な注文に関する情報を保有しております。そのため、システム設計、個人情報に関する社内でのアクセス権限の設定等、情報の取り扱いには十分な注意を払っており、ISMS認証(ISO27001)及びプライバシーマークを取得の上、個人情報保護方針及び社内規程を整備し、情報管理体制の運用を強化しております。

 しかしながら、不測の事態による個人情報の喪失や外部への漏洩事故が発生した場合には、当社への損害賠償請求や信用失墜による顧客喪失等、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)システム障害について

 当社グループの事業運営は、倉庫管理システムであるWMS(Warehouse Management System)等、主にインターネットを経由して処理されるよう設計されております。したがって、想定外の自然災害又は事故、コンピューターウィルスによる不正侵入もしくは誤操作等による大規模なシステム障害の発生により業務が停滞した場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)コンプライアンスに関するリスクについて

 当社グループはリスク管理規程及びコンプライアンス規程に基づき、リスクコンプライアンス委員会を設置し、法令違反等のリスク低減について協議し、その結果を役職員の法令遵守体制の整備・強化及び社員教育に役立てております。

 しかしながら、上記に反し当社の役職員が法令違反行為等を行うことや、情報管理体制の不備による個人情報の喪失や外部への漏洩事故が発生した場合には、当社への損害賠償請求や社会的信用の失墜等、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)感染症に関するリスクについて

 新型コロナウイルス感染症をはじめその他の感染症の流行、拡大により、終息期間が長期化した場合もしくは想定以上の事態が発生した場合、従業員への感染によるFCの稼働低下、顧客の業績悪化による債権回収の停滞等、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)自然災害等によるリスクについて

 当社グループはFCを運営し顧客の商品の保管・発送業務を行っております。そのため、大規模な地震、風水害、火災による事故等によりFCが被害を受け、又は輸送経路が遮断される等の事態が発生した場合、物流業務が停滞し当社の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)採用単価の高騰及び人件費の高騰

 全体的な賃上げ圧力がかかる環境下においては、採用単価、派遣労働者単価、有資格者人件費高騰が予想されることから、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)法改正による原価変動

定期的に見直される建築基準法、建設業法の改正による、労務管理等の変更等により、工期の長期化や、配置人員の増加等で原価が高騰する可能性があります。原価の高騰分を請負金額に反映できない場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)品質管理について

品質管理には万全を期しておりますが、契約不適合責任等による損害賠償が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(13)労働災害及び事故の発生について

工事施工にあたっては、労働災害および事故の発生を防ぐべく対策を講じておりますが、万が一、人身や施工物にかかわる重大な事故が発生した場合は、売上高・利益の減少、採算性の悪化等、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)取引先の信用リスクについて

建設業界では、一契約における請負金額が大きく、また支払条件によっては工事代金の回収に期間を要する場合があります。当社グループでは、与信管理の徹底により貸倒れ防止に努めておりますが、取引先の急激な経営状況の悪化等により資金の回収不能や工期の遅延等が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは、前事業年度まで2期連続して営業損失を計上し、当連結会計年度において重要な営業損失、経常損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上した結果、当連結会計年度末において債務超過になるとともに現金及び預金が大幅に減少いたしました。このような状況から、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。当社グループは、安定的な黒字基盤を確立し健全な財務体質を確保することを最優先課題として、以下の対応策を実施してまいります。

 

1.売上高・売上総利益の向上及びFCの自動化による収益性の向上

当社グループの主要な事業であるBPOサービス事業において、デジタルマーケティング及びコンタクトセンターの領域に精通する企業との連携を強化し、当社グループが得意とするEコマース分野におけるフルフィルメントサービスを掛け合わせ、Eコマース領域におけるサービスをワンストップで提供することで収益性の向上を図ります。また、当社FCの生産性及びサービス品質向上のため、FCの自動化を進め、自動倉庫システム「RENATUS」の導入や、他のマテハン機器等の自動化設備の導入を推進し、自動化・省人化による大量出荷時の人件費抑制、生産性及び設備稼働率の向上を図ることで収益性の向上に努めます。

さらに、他社との連携やFC自動化と並行して、大型新規案件の受注及び新規案件の大量出荷に耐えうるオペレーションの確立を構築してまいります。

 

2.新たなビジネスモデルの構築

上記1.で記載した自動倉庫システム「RENATUS」の当社FCでの稼働に加え、当社FCを「RENATUS」ショールームとして活用することで、当社グループの顧客企業等への「RENATUS」の販売・保守を推進し、フルフィルメントサービス以外の新たなビジネスモデルの構築を図ってまいります。

 

3.固定費の大幅な削減

当社グループでは、FCの坪数の適正化を検討し3拠点を閉鎖することにいたしました。これにより、固定費の中でも特に比率の大きい賃借料の削減を図ることができ、また既存の他のFCに経営資源を集約することにより業務効率の一層の改善と経費削減に努め、早期の収益性の改善を目指してまいります。

 

4.財務基盤の安定化

2023年10月30日に発行した第6回新株予約権の行使が2023年11月に複数回行われ142,200千円を調達いたしました。また、当社の財務状態に鑑み、当社フルフィルメントセンターの閉鎖費用及び運転資金を機動的に調達するため、2024年6月25日開催の取締役会において当社と豊田Holdings株式会社との間で総額500,000千円の借入枠を設定することを決議し、契約を締結いたしました。詳細は、「1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご参照ください。今後も引き続き、経営基盤の再構築と債務超過の早期解消による経営安定化を目的として、増資を含めた資金調達を検討してまいります。

 

しかしながら、上記の対応策が計画通り実現できるとは限らないことにより、現時点においては継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 なお、当社グループは、当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、前連結会計年度との比較分析は行っておりません。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の行動制限が緩和されたことを受け経済活動の正常化が進み、個人消費の持ち直しやインバウンド需要の回復等により緩やかな回復の兆しが見えています。一方で、国際情勢の悪化等による原材料価格及びエネルギー価格の高騰や円安による物価の上昇など、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。

 このような状況のもと、当社は「私たちは、常に顧客視点で変化を先取りし、社会インフラとして成長し続けるEコマースの進化に貢献します」をパーパスとして、多様なお客様のニーズに寄り添った対応をより深い次元で実現することに取り組んでおります。

 当社グループは2000年の創業以来、通販物流代行サービスを提供してきました。現在は、これまでに培ったEコマース領域でのナレッジを活かし、クライアントをトータル支援するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスとコンサルティング・人材育成サービスを提供しております。

 当社グループが事業を展開するEコマース業界は急速な市場拡大を遂げており、ロジスティックスの出荷数や在庫過多などの流通上の課題を抱えていることや解決のプロセスもより複雑化しているため、EC事業全体の戦略見直しや提案力が求められています。これらに対応すべく当社グループでは、クラウドビッグデータを基盤にした、当社のWMSなどの社内システムにある貴重な情報資産を活用したBIレポートや分析レポートを導入するなど、DX推進の取り組みを強化しております。分析力を強化して、顧客企業視点での課題の把握及び改善提案を行うことにより、顧客企業と伴走し、顧客企業のEC事業成功を支援する真のBPOパートナーとしての成長を目指してまいります。

 当連結会計年度の売上高は、BPOサービス事業において新規案件の稼働開始が当初計画から後ろ倒しとなったものの、既存案件の出荷数の増加により、13,121,502千円となりました。売上総損失は、連結子会社である株式会社アビスジャパンにおいて、暫定的な処理をしていた会計処理に関して修正すべき事項が判明しそれらを原価に計上したことにより、売上総損失59,523千円となりました。販売費及び一般管理費については、体制強化に向けた積極的な人員拡充に係る採用費及び人件費や、業務効率改善を目的とした営業支援システムの導入等によるシステム関連費用の計上により、1,133,902千円となりました。

 以上の結果、営業損失は1,193,426千円、経常損失は1,179,180千円となりました。さらに、投資有価証券売却益119,508千円を特別利益に、閉鎖の経営判断を行ったフルフィルメントセンター(以下、FCといいます。)に係る固定資産の減損処理及び、第3四半期連結会計期間より連結子会社となった株式会社アビスジャパンにおいて暫定的な処理をしていた期首残高に重要な会計上の修正すべき事項があることが判明し、将来の超過収益力が期待できなくなったためのれんの減損処理を実施したこと等による減損損失960,569千円、FCの閉鎖に伴い生じる損失に備えて事業所閉鎖損失引当金繰入額362,277千円を特別損失に計上し、税金等調整前当期純損失は2,447,206千円、親会社株主に帰属する当期純損失は2,466,261千円となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 なお、当連結会計年度より、報告セグメントとして記載する事業セグメントを変更しており、当連結会計年度の分析は、変更後の区分に基づいております。

 

(BPOサービス事業)

 売上高につきましては、新規案件の稼働開始が当初計画から後ろ倒しとなったものの、既存案件の出荷数が増加しました。セグメント利益につきましては、体制強化に向けた積極的な人員拡充に係る採用費及び人件費や、業務効率改善を目的とした営業支援システムの導入等によるシステム関連費用を計上しました。これらの結果、売上高は12,865,475千円、セグメント利益は279,613千円となりました。

 

(ファシリティ事業)

 建築部門は10月時点までは計画どおり進捗したものの、原料コストの高騰等により資材の発注が思うように進まず、その影響により大型案件の工事の進捗が遅れ、売上が伸びなかったものの、太陽光事業部門は、昨年から計画されていた案件が本格的に稼働を開始し大きく伸長しました。これらの結果、売上高は256,027千円、セグメント利益は△488,035千円となりました。

 

財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における資産合計は、4,342,402千円となりました。主な内訳は、現金及び預金359,473千円、売掛金及び契約資産1,599,405千円、差入保証金1,322,804千円であります。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計は、5,409,103千円となりました。主な内訳は、買掛金1,111,833千円、未払金1,338,346千円、長期借入金885,690千円であります。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は、△1,066,700千円となりました。主な内訳は、資本金604,603千円、資本剰余金524,603千円、利益剰余金△2,232,757千円であります。

 この結果、自己資本比率は、△25.0%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、359,473千円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、使用した資金は△1,235,241千円となりました。これは主に、減損損失960,569千円の計上、事業所閉鎖損失引当金の増加362,277千円、前払費用の減少382,746千円、仕入債務の増加231,433千円等により資金増加があった一方、税金等調整前当期純損失2,447,206千円の計上、売上債権の増加319,714千円、未払金の減少224,871千円等による資金減少があったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は△611,262千円となりました。これは主に、資産除去債務の履行による支出165,803千円、投資有価証券の取得による支出139,110千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出310,929千円等による資金減少があったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、得られた資金は105,319千円となりました。これは主に、短期借入れによる収入403,553千円等の資金増加があった一方、長期借入金の返済による支出323,349千円等による資金減少があったことによるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

 当社グループは、生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.受注実績

 BPOサービス事業の受注実績は、販売実績とほぼ一致しておりますので、受注実績に関しては販売実績の項をご参照ください。

 ファシリティ事業の受注実績は、重要性が乏しいため記載を省略しております。

 

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績を示すと、以下のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

BPOサービス事業      (千円)

12,865,475

ファシリティ事業     (千円)

256,027

合計(千円)

13,121,502

(注)1.当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、前年同期比については記載しておりません。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。

相手先

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

販売高(千円)

割合(%)

カーブスジャパン株式会社

1,313,833

10.01

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績の分析

(売上高)

 当連結会計年度の売上高は、13,121,502千円となりました。

 これは主に、既存顧客が堅調に推移したことなどによるものです。

 

(売上原価、売上総損失)

 売上原価は、13,181,026千円となりました。

 これは主に、原価における人件費の増加及び、連結子会社である株式会社アビスジャパンにおいて、暫定的な処理をしていた会計処理に関して修正すべき事項が判明しそれらを原価に計上したことによるものです。

 以上の結果、売上総損失は59,523千円となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業損失)

 販売費及び一般管理費は、1,133,902千円となりました。

 これは主に、体制強化に向けた積極的な人材採用に伴う人件費の増加及び、業務効率改善に向けた営業支援システム等の費用の増加によるものです。

 以上の結果、営業損失は1,193,426千円となりました。

 

(営業外損益、経常損失)

 営業外収益は、29,656千円となりました。これは主に、保険金収入及び物品売却益の計上によるものです。

 営業外費用は、15,411千円となりました。これは主に、支払利息の計上によるものです。

 以上の結果、経常損失は1,179,180千円となりました。

 

(特別損益、親会社株主に帰属する当期純損失)

 特別利益は、119,508千円となりました。これは、投資有価証券売却益の計上によるものです。

 特別損失は、1,387,533千円となりました。これは主に、減損損失及び事業所閉鎖損失引当金繰入額の計上によるものです。

 以上の結果、税金等調整前当期純損失は2,447,206千円となりました。さらに、法人税、住民税及び事業税16,710千円及び法人税等調整額2,345千円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は2,466,261千円となりました。

 

当社グループのセグメントごとの経営成績の分析

 セグメントごとの経営成績の分析ついては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

財政状態の分析

 財政状態の分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの状況の分析に関する情報については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社グループにおける資金需要は、主として荷造運賃、賃借料等の運転資金及びFC新設時の設備導入並びに保証金の差入等があります。

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 運転資金の財源については自己資金により賄い、設備投資等については、金融機関からの借入れによる資金調達を基本としております。なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は359,473千円となっております。

 今後の事業拡大等に向けた運転資金及び設備投資資金については、金融機関からの借入れ又は株式発行による調達を予定しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表等は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因にもとづき見積り及び判断を行っておりますが、不確実性があるため、将来生じる実際の結果と異なる可能性があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 目標とする経営指標」に記載のとおり、売上高及び営業利益を重要指標としております。

 当連結会計年度は、上記「① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載のとおりです。今後も原価及び経費の低減を図りつつ、売上高及び営業利益の拡大に努めてまいります。

 

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

売上高(千円)

13,121,502

営業損失(△)(千円)

△1,193,426

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)取得による企業結合

 当社は、2023年9月29日開催の取締役会において、株式会社アビスジャパンの全株式を、当社の100%子会社として新たに設立した株式会社EL firstを通じて取得し子会社化することを決議し、同日付で株式譲渡契約を締結、2023年10月2日付で株式を取得いたしました。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

(2)第三者割当による第6回新株予約権の発行

 当社は、2023年10月13日開催の取締役会において、マイルストーン・キャピタル・マネジメント株式会社を割当先とする第三者割当による第6回新株予約権の発行を決議し、2023年10月30日にコミットメント条項付き第三者割当て契約を締結しております。

 

 

(3)連結子会社株式の譲渡

 当社は、2024年6月19日開催の取締役会において、当社連結子会社である株式会社EL firstの全株式を譲渡することを決議し、2024年6月19日に譲渡が完了いたしました。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

(4)資金の借入契約の締結

 当社は2024年6月25日の取締役会において、資金の借入枠を設定することを決議し、契約を締結いたしました。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。