第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは日々生まれる新規技術をもって、日本企業の活性化を牽引できるような存在であることに力を注いでおります。そのために、高い技術力を持った社員と、革新的で有効性の高い次世代型ソフトウェアを併せ持つことを重視しております。社員一人一人が高い技術力を持ったプロフェッショナルとして自主的に考え、実行できる存在として育成すること、また絶えず良いものを探し積極的に投資し導入することで、企業価値を高めております。これらのためには健全な財政状態を保つことが重要だと考えております。

 

(2) 経営環境

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い国内外の企業業績に与える影響は引き続き大きく、先行きも不透明な状況である中、当社グループの属する情報サービス産業においては、同感染症の発生以前より労働力の減少に対する経営効率化や生産性向上等、将来の成長及び競争力強化に向けた企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)推進への関心が高まっておりました。加えて、同感染症対策としてのリモートワークや付随する業務プロセスのオンライン化への対応が加速することにより、関連するIT分野への投資需要は引き続き堅調に推移するものと考えられます。

当社グループはDX事業の単一セグメントにおいて、これまで手作業で行っていたプログラミング作業を自動化できるローコード技術と、少人数かつ短期間で品質の高いシステム開発を実現できるアジャイル手法を組み合わせた受託開発サービス及び技術者向けトレーニングを提供する「プロフェッショナルサービス」と、それに関連する「ソフトウェアライセンス販売」の両サービスを提供しておりますが、同感染症が拡大する中でも、当社グループの既存顧客及び潜在顧客においては引き続き各種システム化への投資意欲は衰えておらず、多様化するニーズと、ニーズ対応への早期化を狙いとしたローコード開発ツールへの取り組みが加速するものと予測しております。

当社グループとしてはこれらを踏まえ、以下の対応が必要と考えております。

  情報システム構築事例の増大

 業務システム開発の手法や開発基盤の選定に際して、顧客企業は同一業界、同一業務領域における既存事例とその前提となる手法、基盤の安定性を重視するため、当社グループの保有する事例を増やすことが重要となります。また、当社グループは、事例をモデル化し資産として活用する事を目指しており、これを活用できる体制を整え開発期間の短縮や品質向上のみでなく技術者人材の省エネを実現し、顧客企業への更なる安定的な受託開発サービスの提供を可能としております。

  技術者人材の育成による確固たる地位の確保

 当社グループの提供する受託開発サービスは、手法や開発基盤を安定的に提供するための技術者人材の市場への供給が不可欠となります。そのため、施策として人材育成プログラムの増強を行います。これは、当社グループ内だけでなく、顧客企業やパートナー企業を含めた当社グループ外部への市場供給も目的としており、これを実現することにより、当社グループが扱うソリューション製品の国内における確固たる地位を確立して参ります。

③ 新たなソリューション製品の開発

当社グループは、遠隔地においても本社と連携して開発業務を行える体制を試験的に導入しており、徐々にですがノウハウを蓄積しております。今後は、このノウハウを生かしつつローコードの技術を取り入れ、場所や働き方を選ばずに開発業務を行えるシステムを構築して参ります。また、これらは将来的に顧客企業に対して応用技術の公開を予定しており、顧客企業が必要とする時に必要な技術を持った人員を遠隔地からでも確保できるようにし、需要と供給のマッチングモデルの確立を目指して参ります。

 

 

(3) 目標とする経営指標

当社グループは、持続的な成長と企業価値の向上のため、収益力を高めるとともに、経営の効率化を図ってまいります。具体的には下表の各指標を重要な経営指標と位置づけ、各経営課題に取り組んでまいります。

経営指標

数値目標

売上高

2023年3月期に23億円

期中取引顧客数

2023年3月期に200社以上

従業員数、従業員技術者数及び

 サービスパートナー技術者数

2023年3月期に従業員数130名以上、従業員技術者数80名以上、

サービスパートナー技術者数80名以上

 

(注) 1.経営指標「売上高」の「数値目標」に記載される2023年3月期の数値は、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度及び事業年度の期首から適用した数値となります。

2.上記の将来に関する事項は、将来の目標数値の達成を保証するものではありません。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループの継続的な発展及び経営基盤の安定を図っていくために、以下の事項を今後の事業展開における主要な課題として認識し、事業展開を図る方針であります。

  開発スピード強化への対応

 当社グループでは、先端技術を活用した大規模な情報システムの開発を実現するアジャイル型の開発方法論とそれに関するツールの開発に取り組んでいます。当開発方法論及びツールは、社会的な環境の変化に伴う業務アプリケーションへのニーズの変化や様々な技術革新による開発技術の進化に応じて、常に改良と拡張を実施していく必要があります。また当開発方法論をより効果的に活用するための新たなツールの開発や、既存のクラウドサービスとの連携等を実現するための研究・開発組織の充実に取り組んでまいります。

  技術者人材の確保と育成

 先端技術と独自の開発方法論を活用したコンサルティングと業務アプリケーションの受託開発サービスを手掛ける当社グループにおいては、そのサービスの持続的発展的成長を遂げるために必要となる技術者人材の自社及びサービスパートナー企業における確保が不可欠となります。当社グループの採用する先端技術と開発方法論を用いたお客様の情報システム開発を推進するため、事業の柱となる新しい技術者人材の育成に注力し、自社内での確保にとどまらず、市場への供給に努めてまいります。

  組織体制の整備

 当社グループは成長段階であり、小規模ながら組織も急速に拡大を行っております。こうした中、業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の強化が重要となります。このため、バックオフィス業務の整備を推進するとともに、経営の公正性及び透明性を確保するための内部管理体制の強化に努めてまいります。

 

 当社グループでは、上記のような事業上の課題に対処するための研究開発と技術者育成に係る継続的な投資を行います。これにより、当社独自の開発方法論に基づくプロフェッショナルサービスを展開し、収益力の向上及び安定的なキャッシュ・フローを創出するとともに、その再投資を通じた事業の拡大に努めてまいります。

 

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業環境等に関するリスクについて

① 経済市況について

当社グループの提供する製品・サービスは、企業向け業務システムの開発・保守・運用を対象としております。このため、顧客となる企業のIT設備投資動向が日本国内外の景気動向等に応じて悪化する場合には、当社グループの事業展開、財務状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

② 競合について

当社グループの提供する製品・サービスは、企業向け業務システムの開発・保守・運用を対象としており、国内外では、ローコード開発ツールを使用したサービス提供を行う新たな市場を形成しつつあります。しかしながらこの領域においても、同様の製品・サービスを標榜、提供する競合企業が存在しており、競合他社の営業力・技術力等の向上により競争が激化する場合には、当社グループの事業展開、財務状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

③ 法的規制等について

当社グループは、事業者又は個人との間で業務委託契約を締結し、業務を委任しておりますが、「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)が適用される場合があります。

当社グループは、法令を遵守し事業運営を行っておりますが、運用の不備等により法令義務違反が発生した場合には、当社グループの社会的信用の失墜等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

④ 技術革新について

当社グループの属する情報サービス産業においては、技術革新の急速な進展とそれに伴う市場ニーズの変化に迅速に対応することが常に求められます。その中において適切な対応をとることができず、当社グループの有する技術・ノウハウ等が陳腐化し、顧客の期待する高品質のサービスを提供できなくなる等、競争優位性を失った場合、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。

このため、当社グループでは新規テクノロジーの開発及びその実用化に向けた取り組みを継続的に進め、DX事業の核となるローコード技術とアジャイル手法に特化したサービス提供に取り組んでおります。

⑤ 新型コロナウイルス感染症について

新型コロナウイルス感染症拡大による影響については、今後の広がりや収束時期等を予測することは困難な状況にあります。現時点で同感染症による当社グループの事業に与える影響は限定的でありますが、今後さらなる感染が拡大し、終息までの期間が長期化した場合、市場の低迷、顧客の業績悪化による債権回収の停滞、従業員への感染等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、かねてより多様なワークスタイルの推進の観点からリモートワークへの取り組みを進めておりましたが、これをさらに推進することにより従業員の安全・安心の確保のもと、顧客へのサービス提供を滞りなく継続できるよう努めてまいります。

 

(2) 事業内容等に関するリスクについて

① OutSystemsソフトウェアへの依存について

当社グループでは、OutSystemsジャパン社との間で、同社提供ソフトウェア製品OutSystems®に関する販売代理店契約を締結しております。(契約内容は[第2 4 経営上の重要な契約等]を参照ください。)

当連結会計年度において、当社グループのソフトウェアライセンス売上高及びプロフェッショナルサービス売上高の95%以上がOutSystems®に関連するものとなっておりますことから、当社グループの成長はOutSystems®の市場拡大に大きく依存しております。

当該契約は、当事者の一方が3ヶ月前までに申し出た場合に解除できることとなっております。これに加え、即時解除条件として、本契約内容に対する重大な違反があった場合ならびに当事者の一方の倒産、要職にある者の死亡等に伴い後継候補者が見つからない場合、及び当事者の一方が賄賂や刑事罰を受けた場合が規定されておりますが、OutSystemsジャパン社との関係は良好であり、当該パートナー契約の解除事由に該当する事項は現時点では発生しておりません。

こうした現状を踏まえ、当社グループでは、OutSystems®以外の他社製品及びこれらを活用したプロフェッショナルサービスの販売による新たな事業展開に努めておりますが、競合製品の登場、製品・サービスの陳腐化、技術の進歩への対応の遅れが生じることでの競争力の低下によりOutSystems®の市場規模が縮小する場合や、OutSystemsジャパン社の経営戦略あるいは取引条件に変更があるような場合、またはOutSystemsジャパン社とのパートナー契約の解除事由に抵触し契約解除された場合には、当社グループの事業展開、財務状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

② プロフェッショナルサービスの提供に関するリスクについて

当社グループでは、主たる事業である受託開発サービス提供において、提供先顧客との間で一括の請負契約を締結することがあります。請負契約の場合、仕様の大幅な変更や、予期せぬ不具合の発生等により開発工数が増加し、当初予定の納入期日に変更を及ぼし、顧客の検収に基づく収益の計上が翌四半期あるいは翌事業年度にずれ込む可能性がございます。このような状況が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを回避するため、当社グループにおいては、開発ノウハウの標準化とその適用に際する品質管理体制を整えるとともに、契約形態についても請負契約を低減し、顧客による作業完了確認により収益を計上する準委任契約の締結を推進しております。

③ システムトラブルについて

当社グループが提供するプロフェッショナルサービスの提供に際して構築するシステムとその提供は、クラウド化の進展によりインターネットを経由して行われることが多くなっており、インターネットに接続するための通信ネットワークに依存することが増加しております。構築・提供するサーバーについては、安全性・信頼性の高いクラウドサービスの採用を原則としておりますが、当該サービスに対するアクセス数の急激な増加に伴う負荷の増加や外部からのサイバー攻撃、自然災害及び事故などによる予期しえないトラブルが発生し、大規模なシステム障害が起こるような場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

④ 単一事業であることについて

当社事業は、「DX事業」の単一事業となっております。当社が属する情報サービス産業並びにDX市場の成長傾向は今後も継続するものと見込んでおりますが、当該市場の成長が鈍化するような場合、またこれに応ずる事業環境の変化等への対応が適切でない場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 経営成績の季節変動について

当社グループが提供するソフトウェアライセンス販売並びにプロフェッショナルサービスは、顧客のシステム投資予算並びに新製品開発予算の対象となる他、顧客企業の予算執行のタイミングや開発システムの工期との兼ね合いから、第4四半期会計期間に売上・利益計上が集中する傾向があります。なお、当社グループでは納入期限とその品質管理を徹底しておりますが、「プロフェッショナルサービスの提供に関するリスクについて」に掲げる納入期日に変更が生ずる場合、当該期間での業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(3) 組織体制に関するリスクについて

① 代表取締役への依存について

当社グループにおいて、代表取締役社長松岡真功は、当社グループの経営方針及び事業戦略を決定するとともに、ビジネスモデルの構築から事業化に至るまで重要な役割を果たしております。また、今後も当社グループの業務全般においては、同氏の事業構想・経営手腕に依存する部分が大きいと考えられます。

当社グループでは、取締役会等の重要な会議において役員及び幹部社員の情報共有や経営組織の強化等により、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏が業務執行を継続することが困難となった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

② 人材の確保・育成に関するリスクについて

当社グループでは、「優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に掲げる技術者人材の市場への供給に努めております。当社グループまたは当社グループのサービスパートナー企業が必要とする人材を十分に確保、育成できない場合には、顧客のシステム開発需要に対する開発者人材の供給が不足し、サービス提供機会の喪失につながることから、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

このような人材の確保・育成のリスクを回避するため、人材の確保については、人材の登用とその教育制度の充実に努めるとともに、ワークライフバランスを重視し、働き方や価値観の多様化に対応した人事制度の構築や労働環境の整備に取り組んでおります。

③ パートナーの確保について

当社グループにおけるプロフェッショナルサービスの拡大に際しては、顧客の情報システム開発ニーズに対し、適時に対応するための技術者人材の確保とソフトウェアライセンスの販売体制の強化が必要不可欠となります。

このため当社グループでは、一部のサービスパートナーと技術者人材の育成を通じた受託開発サービスの提供のみならず、当該ソフトウェア製品の再販においても提携をしております。

今後の事業拡大にあたり、既存パートナーとの安定的な取引関係の維持及び新規パートナーの開拓を継続的に行ってまいりますが、当社グループ展開サービスの需要拡大に応じた適切なパートナーの確保ができない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

④ 内部管理体制について

当社グループでは、「優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に掲げる事業拡大に伴った組織体制の整備に努めております。現時点では、バックオフィス業務の整備や、内部監査の実施によるコンプライアンス体制の強化、監査役監査の実施によるコーポレート・ガバナンス機能の整備を実現しておりますが、今後の業容拡大から生ずる、新たな人員、組織、拠点等の拡大に伴い、上記内部管理体制の構築が追い付かない状況が生じる場合には、社会的信用の失墜を招き、適切な業務運営が困難になり、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

⑤ 情報管理体制について

当社グループは、入社時に役員及び従業員に機密情報管理に関する研修を行うことと併せて、パートナー技術者へも参画時に情報管理に関する研修を行っております。また、リスク管理体制の観点から「情報システム管理規程」、「情報管理規程」を定め、役員及び従業員の情報取り扱いに関する運用を実施しております。しかしながら、人為的ミス等により知り得た情報が漏洩した場合には、当社グループの社会的信用の失墜、損害賠償責任の発生等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) その他

① 知的財産権等について

当社グループの事業が他社の知的財産権を侵害したとして、損害賠償請求を受ける可能性や、第三者により当社グループの知的財産権が侵害される可能性があり、いずれの場合も、当社グループの事業及び業績等に影響が生じる可能性があります。当社グループにおいては、内部管理体制を整備のうえ社員への教育を充実させ、該当する契約内容の確認と運用を通じた法令順守の徹底に努めております。

② 配当政策について

当社グループは株主還元を適切に行っていくことが重要であると認識しており、剰余金の配当については、内部留保とのバランスを考慮して適切に配当を実施していくことを基本方針としております。

しかしながら、当社グループはいまだ成長途上にあり、主要事業の立ち上げ間もないことからいまだに内部留保が薄く、創業以来配当を行っておりません。今後は内部留保の充実を図り、収益力強化と事業基盤整備のための投資に充当し、一層の成長を実現することにより、将来における安定的かつ継続的な利益還元につながると考えているため、配当実施の可能性及び実施時期については未定であります。

③ ストック・オプションの行使による株式価値の希薄化について

当社グループは、当社役員及び従業員に対するインセンティブを目的とした新株予約権(以下「ストック・オプション」という)を付与しております。これらのストック・オプションの権利が行使された場合には、保有株式の価値が希薄化する可能性があります。2022年5月31日現在におけるストック・オプションによる潜在株式数は169,800株であり、発行済株式総数3,494,946株に対応する潜在株式の比率は約4.86%であります。

④ ベンチャーキャピタル等の持株比率について

2022年5月31日現在における当社の発行済株式総数は、3,494,946株であり、ベンチャーキャピタルが組成した投資事業責任組合が所有している株式数は、166,418株(所有割合約 4.76%)であります。したがって、当社が株式上場後、それらが短期間で売却された場合、当社の株価に一時的な影響を及ぼす恐れがあります。

 

⑤ 資金使途について

当社グループの資金使途については、受託開発サービスの中核となる技術者人材等の増強に係る労務費、売上増加に応じたサービスパートナー企業技術者人材の増強に係る外注委託費、営業及び管理部門の人材の増強に係る人件費、並びに当社の成長戦略に照らした研究開発費等の運転資金に充当いたします。

しかしながら、事業環境の急激な変化に応じ、現在予定する使途以外の目的に充当される可能性があります。また、予定通りの使途に資金を充当した場合にも、想定通りの成果を挙げられない可能性があります。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しております。この結果、前連結会計年度と収益の会計処理が異なることから、以下の経営成績に関する説明において増減額及び前年同期比(%)は記載せずに説明しております。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度における我が国の経済は、世界的に感染拡大が継続し収束の兆しが見えない新型コロナウイルス感染症の影響が引き続き大きく、不透明な状況が続いております。

当社グループの属する情報サービス産業におきましては、そのような状況の中、労働力の減少に対応する経営効率化や生産性向上の推進を含めた将来の成長・競争力強化に向けた企業のデジタル・トランスフォーメーション(以下「DX」という。)推進基調の継続に加え、コロナ対策としてのリモートワーク推進のトレンドも重なり、IT投資の需要が引き続き堅調に推移するものと予想されます 。

このような状況の中、当社グループは「新たな価値を創造し、常識を変え、文化を進化させる」という企業理念のもと、グローバルで活用できる最新のローコード開発ツールと独自の開発方法論を活用し、エンジニアの開発生産性を高めることで「日本企業の国際的競争力を向上させる」ことをミッションとするDX事業を展開しております。

当社グループの事業は、ローコード技術とアジャイル手法を最大限に活かせる当社グループ独自の開発方法論である「AGILE-DX」を活用した受託開発サービス及び技術者向けトレーニングを提供する「プロフェッショナルサービス」とローコード開発ツール等のソフトウェアを販売する「ソフトウェアライセンス販売」から構成されております。「プロフェッショナルサービス」においては、受託開発サービスにおけるローコード開発ツール「OutSystems®」を活用したシステム受託開発及びコンサルティングの提供が順調に拡大いたしました。「ソフトウェアライセンス販売」においては、「プロフェッショナルサービス」の提供に伴って「OutSystems®」を中心とする当社グループ取扱製品の販売が堅調に推移いたしました。また、顧客のシステム化ニーズの多様化に合わせ、インターネット・クラウド上での業務プロセスの自動化や効率化を実現する「Workato®」等の新たな製品取り扱いを開始し、その販売拡大及び「OutSystems®」と組み合わせての新たなプロフェッショナルサービス提供機会創出に努めてまいりました 。

これらの結果、当連結会計年度における売上高は1,942,140千円、営業利益は375,056千円、経常利益は355,172千円、親会社株主に帰属する当期純利益は259,025千円となりました。

なお、収益認識会計基準等の適用により、従来の基準と比較して当連結会計年度の売上高は721,177千円減少しております。
 収益認識会計基準の適用によって、主に当社グループ事業における「ソフトウェアライセンス販売」のうち、他社からの仕入が発生するソフトウェアライセンスの売上高に影響が生じております。当該取引においては、従来の売上高及び売上原価を総額で計上する方式から、売上高から売上原価であるライセンス使用料を差し引いた純額を売上高として計上する方式に変更しております。計上時期についても、従来のライセンス契約期間に応じて分割計上する方式から、契約開始時に一括で計上する方式へ変更しております。

また、セグメントの業績につきましては、当社グループは、DX事業の単一セグメントのため、記載を省略しております。

 

② 財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は3,157,478千円となり、前連結会計年度末に比べ1,977,558千円増加いたしました。これは主に上場に伴う新株式の発行等により現金及び預金が増加した一方で、収益認識会計基準の適用により前払費用が減少したことによるものであります。固定資産は193,045千円となり、前連結会計年度末に比べ13,228千円減少いたしました。これは主に減価償却により減少したことによるものであります。
 この結果、総資産は3,350,523千円となり、前連結会計年度末に比べ1,964,329千円増加いたしました。
(負債)

当連結会計年度末における流動負債は906,648千円となり、前連結会計年度末に比べ173,586千円増加いたしました。これは主に前受収益が収益認識会計基準の適用により減少したことによるものであります。固定負債は45,950千円となり、前連結会計年度末に比べ83,386千円減少いたしました。これは主に長期借入金の返済により減少したことによるものであります。
 この結果、負債合計は952,599千円となり、前連結会計年度末に比べ90,200千円増加いたしました。
(純資産)

当連結会計年度末における純資産は2,397,924千円となり、前連結会計年度末に比べ1,874,129千円増加いたしました。これは主に上場に伴う新株式の発行等によるものであります。
 この結果、自己資本比率は71.6%(前連結会計年度末は37.8%)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ1,710,720千円増加し、2,356,210千円となりました。
 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により得られた資金は、338,364千円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益355,172千円があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により使用した資金は、9,579千円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出8,124千円があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により得られた資金は、1,381,935千円となりました。これは主に、株式の発行による収入1,492,037千円があったことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当社グループは、生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

b.受注実績

第15期連結会計年度及び第16期連結会計年度の受注実績は、次の通りであります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

受注高

(千円)

前期比

(%)

受注残高

(千円)

前期比

(%)

受注高

(千円)

前期比

(%)

受注残高

(千円)

前期比

(%)

DX事業

2,528,639

118.6

219,899

2,116,716

394,475

179.4

合計

2,528,639

118.6

219,899

2,116,716

394,475

179.4

 

(注)収益認識会計基準を当連結会計年度の期首から適用しており、前連結会計年度末受注残高については、当該会計基準等を適用した後の受注残高としております。この結果、従来の基準と比較して、当連結会計年度の受注高は830,911千円、受注残高は1,107,535千円それぞれ減少しております。また、前連結会計年度と収益の会計処理が異なることから、前期比(%)は記載しておりません。

 

 

c.販売実績

第15期連結会計年度及び第16期連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。

なお、当社グループの事業はDX事業の単一セグメントであります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

金額(千円)

前期比(%)

金額(千円)

前期比(%)

DX事業

2,101,710

116.8

1,942,140

合計

2,101,710

116.8

1,942,140

 

(注)1.収益認識基準を当連結会計年度の期首から適用しており、前連結会計年度と収益の会計処理が異なることから、前期比(%)は記載しておりません。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社マクニカ

105,608

5.0

323,491

16.7

アビームコンサルティング株式会社

249,204

11.9

191,088

9.8

情報技術開発株式会社

290,040

13.8

101,330

5.2

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

a.貸倒引当金

当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるために、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案して回収不能見込額を計上しております。顧客の財務状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。

b.繰延税金資産の回収可能性

当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得を見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異等について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

c.受注損失引当金

受注契約に係る将来の損失に備えるため、当該連結会計年度末における受注契約に係る損失見込額を計上しております。受注契約時の予見不能な事象の発生やプロジェクト案件の進捗状況等によって損失額が大きく変動する可能性があります。

d.固定資産の減損損失

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

② 経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度における売上高は1,942,140千円となりました。これは、当連結会計年度より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を適用したことにより、従来の基準と比較して売上高は721,177千円減少したことが主因となります。適用前の基準に合わせた売上高は左記金額を加えた2,663,317千円となり、これは主にDX事業におけるローコード開発プラットフォームOutSystems®のソフトウェアライセンス販売が既存顧客の更新ならびにアップグレードにより堅調であったこと、およびプロフェッショナルサービスにおけるOutSystems®等ソフトウェアを活用し、当社アジャイル手法を組み合わせた受託開発サービスの提供増大に伴うものとなります。

収益認識会計基準等を適用した売上高の内訳は、ソフトウェアライセンス販売が276,618千円、プロフェッショナルサービスが1,665,521千円となりました。また、プロフェッショナルサービスの大半を占める受託開発サービスの売上高は1,590,298千円となりました。なお、収益認識基準等の適用に伴い、前連結会計年度と収益の会計処理が異なることから、上記経営成績の分析において増減率(%)は記載しておりません。

(売上原価,売上総利益)

当連結会計年度における売上原価は878,362千円となりました。これは主に、収益認識会計基準等を適用に伴いDX事業において、ソフトウェアライセンス販売に応ずる仕入費用の大半が売上原価として計上されなくなったことに伴う減少に伴うものとなります。なお、収益認識基準等の適用に伴い、前連結会計年度と収益の会計処理が異なることから、上記経営成績の分析において増減率(%)は記載しておりません。この結果、売上総利益は1,063,777千円となりました。

(販売費及び一般管理費,営業利益)

当連結会計年度における販売費及び一般管理費は688,720千円(前期比33.5%増)となりました。これは主に、技術部門を中心とする当社従業員の増員に伴う給与等人件費及びこれに付随する採用教育費等が増加したことによります。この結果、営業利益は375,056千円(前期比114.0%増)となりました。

(営業外収益,営業外費用,経常利益)

当連結会計年度における雑収入等の営業外収益355千円、上場時関連費用、支払利息等の営業外費用20,239千円が発生し、この結果、経常利益は355,172千円(前期比103.7%増)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

法人税等96,147千円が発生した結果、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、259,025千円となりました。

 

③ 財政状態の分析

財政状態の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりです。

 

④ キャッシュ・フローの状況の分析

キャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制の強化、優秀な人材の確保、市場のニーズにあったサービスの展開等により、当社グループの経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。

 

⑥ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの運転資金需要のうち主なものには、DX事業におけるプロフェッショナルサービス提供のための外注費及び労務費のほか、営業部門及び管理部門の人件費、サービス開発に伴うソフトウェア利用料、研究開発費等があります。運転資金は、主として内部資金及び借入により調達しております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等は、資金需要の額や用途に合わせて柔軟に検討を行う予定であります。

 

⑦ 目標とする経営指標

「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社グループでは経営上の目標の達成状況を客観的に判断するため、「売上高」、「期中取引顧客数」ならびに「従業員数、従業員技術者数及びサービスパートナー技術者数」を経営指標と位置付けております。当該指標においては、当連結会計年度終了時点で、売上高は1,942,140千円、期中取引顧客数165社、従業員数91名、サービスパートナー技術者数75名となっております。各指標について目標数値の達成に向け堅調に推移しているものと認識しておりますが、取引顧客数の拡大に伴う売上高の増大と、これを実現するために必要不可欠となるプロフェッショナルサービス提供技術者の確保と育成に注力してまいります。

 

4 【経営上の重要な契約等】

 

契約会社名

相手先
 の名称

相手先の
 所在地

契約品目

契約
 締結日

契約期間

契約内容

OutSystems

ジャパン株式会社

OutSystems

ジャパン

東京都港区六本木一丁目4番5号アークヒルズサウスタワー9階

OutSystems
販売代理店契約

2019年

3月27日

契約日より2年
(1年毎に自動更新)

販売代理店契約

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループはDXを推進するための手法にフォーカスし、開発プロセスの改善を通じて、日本企業の競争力向上へ資するよう新しいサービスの研究開発を進めております。研究開発は当社研究開発チーム所属の2名の上級技術者を中心に、研究開発対象に応じて体制を計画し、実施しております。

当連結会計年度においては、ローコード開発やアジャイル手法を活用したプロフェッショナルサービスの提供を支援するソフトウェアの研究開発を実施いたしました。

当連結会計年度の研究開発費の総額は10,041千円であります。

なお、当社グループはDX事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。