当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは『愛される「ものがたり」を全世界に』を使命とし、東映を中心とする安定的なグループ経営のもと、映像作品をはじめとする良質なエンターテインメントを全世界に提供し続けて参ります。
(2)中長期的な会社の経営戦略
創業以来の組織変更を実施の上、グループの中長期的な成長戦略として『東映グループ中長期VISION「TOEI NEW WAVE 2033」』を2023年2月に策定し、推進しております。
概要
◆使命:愛される「ものがたり」を全世界に
◆スローガン:
◆10年後に目指す姿:世界で愛されるコンテンツを数多く創造発信している
◆成長戦略:実写、アニメ映像事業を強化・拡大し、グローバル展開を加速する
◆全体像:
重点施策
当社グループの強みは多様で魅力的な作品群を生み出す源泉となる企画製作力、そしてIPホルダーとして収益最大化を実現するマルチユース展開力と認識しております。その強みを活用した重点施策として、以下に取り組んでおります。
①映像事業収益の最大化
企画製作力の強化、コンテンツのマルチユース促進、IPライフサイクルの長期化
②コンテンツのグローバル展開へのチャレンジ
現地企業とのコラボレーション(ローカライズ作品やオリジナル作品の創出)、海外におけるファンの育成、グローバルメジャーと共同開発・世界展開、世界的ネットワークの構築
③映像事業強化のための人的投資の拡大
企画製作力とマルチユース展開力を高める採用・配置/育成、エンゲージメントを高める評価・報酬/環境整備
④持続的なチャレンジと成長を支える経営基盤強化
事業基盤強化に向けた投資戦略(製作設備関連投資、不動産関連投資)、コーポレート・ガバナンスの強化、サステナビリティへの取り組み、資本・財務戦略
<キャピタルアロケーション>
2033年に向けた東映グループでの成長投資(予定)
▼コンテンツ投資: 2,400億円
▼事業基盤強化に向けた投資: 600億円※
※〈内訳〉製作設備関連投資: 360億円
不動産関連投資: 240億円
また、株主・投資家をはじめとするあらゆるステークホルダーの皆様に当社をよりご理解いただき、適正に評価していただくため、更なる開示の充実にも取り組みます。引き続き、当社グループの企業価値ひいては全てのステークホルダー共同の利益の長期安定的な向上に努めてまいります。
(3)目標とする経営指標
上記した重点施策の展開により、企画からマルチユース展開のサイクルのグローバル化を推進し、国内外でのトップライン拡大及びベースライン収益の向上を目指してまいります。
・売上構成比率における海外割合が50%
・営業利益 ベースラインとして250億~400億円
・ROE8%以上
(4)経営環境及び対処すべき課題
コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進みつつある一方、地政学リスクの高まりによる資源価格の高騰や物価の上昇等、依然として世界経済の先行き不透明な状況は続いております。当社グループを取り巻く事業環境におきましても、コンテンツ産業は今後も世界的な成長が期待される一方、国内における少子高齢化やそれに伴う人口減少、消費者ニーズや伝達媒体の多様化等、厳しい情勢下にあります。こうした状況のなか、当社グループの経営課題として、以下を認識しております。
・オリジナルを中心とした新規IP創出力の増強によるIPポートフォリオの拡充
・IPのグローバル展開の加速と、国内・海外のIPマルチユース促進によるIPあたり収益の最大化
・持続的成長に向けたIPライフサイクルの長期化
これらの経営課題の解決に向けて、「(2)中長期的な会社の経営戦略」に記載の通り、東映グループでは10年後に目指すべき姿を『東映グループ中長期VISION「TOEI NEW WAVE 2033」』として策定しました。本ビジョンの実現に向け、『愛される「ものがたり」を全世界に』の使命のもと、より積極的な事業展開を図り、総合エンターテインメント企業として成長を続けてまいります。
当社グループは『愛される「ものがたり」を全世界に』を使命とし、持続可能な社会に貢献しつつ、自社の持続的成長を実現することを目指します。
当社グループの取り組みについては、国内外のサステナビリティ開示で広く利用されている TCFD のフレームワークである4つの構成要素に基づき開示をいたします。
(1)ガバナンス
当社は2022年6月に監査等委員会設置会社に移行し、委員の過半数が社外取締役で構成される監査等委員会が、業務執行の適法性、妥当性の監査・監督を担うことでより透明性の高い経営を推進しております。また、2023年1月には取締役会の監督機能の強化、コーポレートガバナンス体制の充実を図るため、取締役の指名並びに取締役及び執行役員の報酬等に係る評価・決定プロセスの透明性及び客観性を担保する、任意の指名・報酬委員会を設置しております。
取締役会の下に内部統制委員会、コンプライアンス委員会、リスクマネジメント委員会、ハラスメント委員会、サステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ委員会の中に人的資本経営分科会、D&I推進分科会、TCFD対応分科会を設け、各委員会より定期的に取締役会に報告を実施し経営判断に反映しています。
(2)リスク管理
当社では、外部専門家の知見を活用し各業務におけるリスクを洗い出し、発生頻度と発生時の影響度を基準としたヒートマップを作成し、優先順位を判断したうえで対策を進めております。また、リスク事象を集計し、要因分析を行うことで再発の防止にも努めています。
(3)戦略
コンテンツ産業である当社グループの持続的成長のためには、専門性の高いスペシャリストや新たな価値観を取り入れるため等、キャリア採用を積極的に実施し、さらに従業員の多様性の尊重と個の成長を促すことが重要であると認識しております。
・人材育成方針
メディア環境やニーズの変化へ柔軟に対応し、価値あるコンテンツを創り続けると同時に世界に届けるために個の成長を促す能力開発プログラムの拡充と挑戦機会の提供に努めてまいります。
① リカレント/リスキリングのサポート
従業員の主体的な学びや成長を支援する制度の充実化を図っております。従業員が自ら学ぶことを選択できるeラーニングツールの導入や資格取得支援制度の拡充、VIPO(映像産業振興機構)が運営する「VIPOアカデミー」の受講等を支援しております。また、中長期ビジョンに連動した知見を深めるため社内外の講師による講演を主軸とした「東映塾」の開催、海外映画祭企画マーケットへのエントリーを視野に入れたプレゼンテーションや企画書作成のトレーニング実施等、プロデューサーの人材育成にも力を入れています。
② 階層別研修による個々の期待役割の理解とマネジメント力の向上
新たに構築した人材育成体系に基づき、役割ごとに求められるポータブルスキル習得を目的とした階層別研修を管理職から実施し、今後は一般職へ展開し継続してまいります。また、研修では自己の現状を把握し、今後に向けた課題設定を行うため、360度サーベイを採用しております。
③ キャリア自律を支援する制度の充実化
新たにキャリア自律を支援する仕組みとして「Toei Career Action Program」を導入しました。(1)様々な業務を経験する「JobTry制度」(申告異動制度)や「東映マルチプレイヤー制度」(所属する部署に籍を置きながら、他部署の業務に携わることを認める制度)、(2)自己実現に向けて挑戦する機会を創出する「キャリアチャレンジ制度」(社内公募制度)、(3)キャリアプラン設計やキャリア形成力を育成する「キャリアデザインシート」「キャリア研修」など、個々のキャリア実現に向けての意欲を向上させ、組織力強化及び活性化を目指していきます。
・社内環境整備方針
ダイバーシティ&インクルージョンを推進することにより当社グループで働くすべての人が最大限に能力を発揮できる環境を整え、ワークライフバランスの実現やハラスメント防止に努め、安心・安全な職場環境を構築することで人材が集まるグループを目指します。
(健康経営の推進)
代表取締役社長を最高健康責任者とし、社内に推進体制を設け、従業員の心身の健康の維持向上と働きやすい職場づくりを目的とした健康経営を働き方改革との両輪で推進します。
① 労働時間の短縮に向けた取り組み
適切かつタイムリーな労働時間の把握を行い、クリエイティビティを十分に発揮するため、働き過ぎを防止する取組・監督指導の強化を行っております。また、毎月実施の衛生委員会では、長時間労働による従業員の健康障害の防止を図るための議論も行い、対策を進めております。
② 健康経営に関するイベントの実施
従業員の健康維持の支援を目的に、個々人の歩数をランキング形式で競う「TOEI Walking Week」等多数のイベントを実施しております。
(働きやすい環境の整備)
ダイバーシティー&インクルージョンを推進することにより、東映で働くすべての人が最大限に能力を発揮できる環境を整え、ワークライフバランスの実現やハラスメント防止に努め、安心・安全な職場環境を構築することで人材が集まるグループを目指します。
① ダイバーシティー&インクルージョンの推進
全役職員がダイバーシティー&インクルージョン(D&I)を“自分ごと“として捉え、互いを尊重することでイノベーションを創出する企業を目指して、D&I推進に取り組んでいます。また多様な経験を持った従業員によるボトムアップのプロジェクトでは当社のD&Iにおける現状把握、課題の洗い出し、従業員アンケート調査、他社事例の研究やD&I推進企業をゲストに招いた講演の実施、経営陣との意見交換を経て、D&Iスローガン「東映BRAVE宣言」を社内に発表し、当社のD&I推進に向けて新たな一歩を踏み出しました。引き続き、お互いの個性を認め合う組織風土の醸成、さらなるイノベーションの創出を目指していきます。
ダイバーシティー&インクルージョンのスローガン
② 両立支援の推進
従業員の「仕事と育児・介護・治療の両立」支援に力を入れており、安心して長く働き続けられる組織作りを目指し、活動しています。本年度は育児をテーマに、父親や母親として育児と両立しながら働いている従業員へのヒアリングや育児支援ガイドブックのリニューアル等に取り組みました。
③ ハラスメント防止やリスペクト研修の実施
当社においては、全役職員が定期的にハラスメント防止研修を受講することで意識向上に努めております。映画撮影現場ではすべての作品でリスペクト研修の実施を継続し、昨年度より始まった日本映画制作適正化機構のガイドラインにも適切に対応しております。
④ テレワークの活用など柔軟な働き方ができる環境の構築
全従業員がベストパフォーマンスを発揮できるよう、フレックスやテレワーク勤務体制等、多様かつ柔軟な働き方の定着化等、働き方改革を推進しております。今後もICTの利活用やDXの推進により、働きやすい職場環境の整備、生産性の向上に努めます。
(4)指標及び目標
・エンゲージメントスコア 63(2024年4月時点) 目標値:69(提出会社)
エンゲージメントサーベイから課題を抽出し、改善策を実施し、効果を検証するサイクルを継続して参ります。
※エンゲージメントスコアとは、社員と組織の“つながり”を可視化したものであり、組織の今の状態を評価する指標の一つです。
・キャリア採用人材比率 22.1% 目標値:30.0%(提出会社)
革新的な企画や新市場の開拓、テクノロジーの活用を積極的に推進するために様々なバックグラウンドや技術を有した人材の採用を積極的に推進します。
・一人当たり年間研修 9.2時間 目標値:17時間(提出会社)
研修プログラムの拡充に加え、映像をはじめとする専門性を高める外部研修への参加支援や各分野のプロフェッショナルによるセミナー開催、階層別研修実施など能力開発に努めます。また、若手が早期にコンテンツ製作の責任あるポジションに挑戦する機会を創出するためにチャレンジレーベルの活用も進めてまいります。
(5)TCFDへの対応
・ガバナンス
TCFD対応分科会が温暖化ガス排出の状況についてサステナビリティ委員会を通じて取締役会に報告し、経営陣がタイムリーに実態を把握し判断する体制を構築します。
・リスク管理
TCFD分科会が当社グループの温暖化ガス排出量を定期的にモニタリングし、懸念があれば原因の調査、対応の検討を迅速に進めます。
・戦略
バーチャルプロダクションをはじめとする撮影の新技術活用及び設備更新や不動産投資の際に環境に配慮した設備を導入することで排出量の削減を図ります。
・指標と目標
Scope1・2 20,165t-CO2
※Scope1:事業者による直接のCO2排出量(直接排出量)
※Scope2:他社から供給された電気や熱、蒸気の使用に伴うCO2排出量(間接排出量)
※連結対象会社の2024年3月期実績合計値であります。
当社グループの経営成績又は財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクとして認識している事項には以下のようなものがあります。なお、当社グループのリスクのうち主なものを記載しており、現時点では予見できない又は重要とみなされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。
当社グループは、これらのリスクを認識したうえで、前述の「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載する方法などにより、その発生の回避及び発生時の適切な対応に向けて努力してまいる所存であります。
文中の将来に関する内容については、当有価証券報告書提出日現在における判断に基づくものであります。
(1)リスクマネジメント推進体制
当社グループでは、リスクマネジメントを企業価値の最大化と持続可能な事業運営における重要な経営テーマとして責任を持って取り組むこと、及びグループ全体のリスク管理状況の把握と向上を目的としたリスクマネジメントの統括機関である「リスクマネジメント委員会」を設置しております。
当該委員会は代表取締役社長を最高責任者とし、リスクマネジメント担当役員及び各事業部門の責任者を委員としております。リスクマネジメント委員会は、当社グループを取り巻くリスクに関する情報の収集分析、リスクの対応方針及び目標の決定、グループ経営上重要なリスクの抽出・評価、定期的なリスク対応状況に関するモニタリングを行っております。
当社グループのリスクマネジメント体制図
(2)リスクマネジメントプロセス
当社グループでは、リスクマネジメントの管理体制が適切かつ健全な役割を果たすために、リスクマネジメントの管理体制及び方針のレビュー・見直しを毎年行っております。当社グループの事業に関するリスクの評価を行い、リスクの性質に基づいて「ハザードリスク」、「事業戦略リスク」、「ガバナンスリスク」の3つに区分した上で、優先的に対応すべきリスクを特定しております。各リスク項目における関係部署においてリスクの対応策を検討し、実施しております。
なお、リスク統括部署はリスクへの対応支援及びモニタリングを実施し、定期的に実施状況や確認結果をリスクマネジメント委員会に報告します。リスクマネジメント委員会は報告に基づいて、体制の強化または改善等が必要な項目に対して審議し、意見交換を通じて取り組みを最善な方向性に調整しております。加えて、当社グループの経営に影響する可能性がある事項を適時に最高責任者の代表取締役社長及び取締役会に報告しております。
当社グループのリスクマネジメントプロセス
(3)リスクの特定
リスクの特定においては、以下のとおりに実施しております。
・リスクの識別
当社グループの事業戦略を分析すると共にそれぞれの事業部門と管理部門の責任者に対してインタビューを実施することによって、トップダウン・ボトムアップ両方のアプローチで当社グループにおける各リスクを識別。
・リスクの評価
識別されたリスクに対して、定量的かつ定性的に事業に及ぼす影響度と発生可能性を評価した後、既存の対応状況を評価。
・リスクヒートマップによる対応優先度の特定
上記2段階のリスク評価結果に基づいて、リスクヒートマップを作成し、特定されたリスクを「低」・「中」・「高」の3つのレベルに分け、「高」または「中」になるリスクを優先的に対応すべきリスクとして特定。
最新のリスク評価の実施結果において、当社グループは40項目のリスクを識別し、「(4)当社グループにおける優先的に対応すべきリスク」に示す11個のリスク項目に分類し、対応策の検討及び実施を行っております。また、刻々と変化する事業環境に対応するため、モニタリングの結果や新たなリスクを識別した際には、リスク評価の見直しを行い、必要に応じて優先的に対応すべきリスクを更新しております。
(4)当社グループにおける優先的に対応すべきリスク
当事業年度において優先的に対応すべきリスクと位置付けたもののうち、主なものを記載しておりますが、その他のリスクについても、それぞれ対応を進めております。
また、下記のリスクは有価証券報告書提出日現在における当社グループが判断したもので、将来の業績や財政状態に与えうるリスクや不確実性は、これらに限定されるものではありません。
分類 |
リスク項目 |
対策優先度 |
ハザードリスク |
① 災害リスク |
高 |
② 感染症リスク |
中 |
|
事業戦略リスク |
③ 取引先管理に関するリスク |
高 |
④ 風評リスク |
高 |
|
⑤ 労働・安全衛生に関するリスク |
高 |
|
⑥ 人材確保に係るリスク |
高 |
|
⑦ 事業環境に関するリスク |
中 |
|
ガバナンスリスク |
⑧ 個人情報等の機密情報の取り扱いに関するリスク |
高 |
⑨ 情報セキュリティリスク |
高 |
|
⑩ 著作権等の知的財産権に関するリスク |
高 |
|
⑪ コンプライアンス違反リスク |
中 |
<ハザードリスク>
|
① 災害リスク |
対応優先度 |
高 |
|
|
リスクシナリオ |
当社グループは映画劇場、テーマ・パーク、ホテル等多数の顧客等を収容可能な商業施設及び撮影所を含めた重要な作業施設において事業を行っております。地震、台風及び津波等の自然災害、火災や停電あるいは予期せぬ事故等が発生した場合は、顧客または当社グループの従業員の人的被害、施設及び設備の損壊等により、当社グループのサービス提供、事業運営に影響が生じ、当社グループの経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。 |
||
|
対応策 |
当社グループは自然災害または人為的な災害の発生による被害を軽減するために、重要な事業の継続を図る体制及び計画を整備しております。また、顧客及び従業員の安全を確保するために、安否確認システムの導入、災害対応手順の文書化及び定期的な訓練の実施等の対策を講じています。 |
|
② 感染症リスク |
対応優先度 |
中 |
|
|
リスクシナリオ |
新型コロナウイルス感染症等の感染症の蔓延により、政府や地方自治体からの行動制限の要請、消費者行動の変容やビジネスモデルの変化の結果として、以下のような事象が発生し、当社グループの事業活動及び収益に影響を及ぼす可能性があります。 ・感染の拡大や景気の後退等による商業施設の利用減少 ・物価の高騰や撮影関係者の感染等による制作費用の増加 ・不動産市況の低迷による不動産価値の低下 ・従業員の感染による業務停滞の発生 |
||
|
対応策 |
当社グループは新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐために、業種別ガイドライン等に基づく適切な感染防止対策を徹底し、検温・消毒等による従業員・施設の衛生管理、リモートワークの導入等様々な感染拡大防止策を積極的に推進しております。 |
<事業戦略リスク>
|
③ 取引先管理に関するリスク |
対応優先度 |
高 |
|
|
リスクシナリオ |
当社グループは個人事業主または中小事業者に映像制作等の関連業務を委託しております。それらの業務委託先が自社の財務状況等による運営が停止された場合は、当社グループの業務継続に支障が生じる可能性があります。加えて、それらの業務委託先との契約に不備があった場合、当社が提供するサービスや制作する作品の品質レベルが維持できなくなり、当社グループの社会的信用あるいはブランドイメージが毀損される可能性があります。 また、当社グループは国内外において多様な企業と取引を行っております。適切な契約条件での契約締結ができない場合は、当社グループにとって不利益な状況に陥り、事業活動及び収益に影響を及ぼす可能性があります。 |
||
|
対応策 |
当社グループは公正な取引及び健全なパートナーシップを築くために、業務委託先を含む取引先の選定管理に関する体制構築に力を入れております。また、当社グループの権利及び利益を守るために、契約の締結及び契約内容の交渉を徹底するように努めております。 |
||
|
④ 風評リスク |
対応優先度 |
高 |
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リスクシナリオ |
当社グループが事業展開を行う各種事業のサービス及び映像作品に関して、各種のソーシャルメディアを通じて、宣伝や交流等を目的とした積極的な情報発信をしております。当社グループの従業員による不適切な内容が投稿された場合は、当社グループの社会的信用及びブランドイメージが毀損される可能性があります。 また、当社グループの映像作品等の社外関係者による不祥事、または第三者による誹謗中傷が発生した場合は、当社グループまたは映像作品等が風評被害を受け、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。 |
||
|
対応策 |
当社グループにおけるソーシャルメディアへの投稿を管理できる確認体制構築と適切な運用の徹底に努めております。また、風評被害発生可能性の低減を図るため、定期的な社内セミナーを開催し注意喚起をおこなっている他、風評被害発生後に即時対応が取れるように、社内における危機管理体制の構築にも力を入れております。 |
||
|
⑤ 労働・安全衛生に関するリスク |
対応優先度 |
高 |
|
|
リスクシナリオ |
従業員の長時間労働は、健康障害や心身の不調につながる恐れがあり円滑な業務の遂行に支障をきたす可能性があるだけでなく、これに起因して労働災害等重篤な事故が発生すると、損害賠償等経済的な損失や、社会的信用の失墜を招く可能性があります。 |
||
|
対応策 |
当社グループは従業員の心身健康を守るために、長時間労働を抑制する働き方改革を推進しており、各部署における労務管理を徹底すると共にリモートワークの推進や休暇取得の奨励等の働きやすい職場環境を構築する対応策を積極的に講じています。加えて、定期的にエンゲージメントサーベイを実施し、長時間労働の発生状況等をモニタリングしております。 |
|
⑥ 人材確保に係るリスク |
対応優先度 |
高 |
|
|
リスクシナリオ |
少子高齢化の加速による労働人口の減少、あるいは当社グループが人材の多様性等を確保した良好な職場環境やリモートワーク等の従業員にとって柔軟な職場環境を整備できない場合は、人材獲得における競争上の優位性の確保できず、従業員の採用及び維持が難しくなり、採用コストを含めた人件費が増加し、または人員不足による業務停滞が発生する等、事業の継続に影響を与える可能性があります。 |
||
|
対応策 |
当社グループは継続に専門人材の育成に力を入れると共に、定期的なエンゲージメントサーベイを実施しております。サーベイの結果に基づいて職場環境等の改善を検討及び実施することによって、従業員が働きやすい環境構築に努める他、従業員による自律的なキャリア開発を支援する制度の充実化を進めております。加えて、当社グループはダイバーシティの観点から多様な人材の採用を積極的に行っております。 |
||
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⑦ 事業環境に関するリスク |
対応優先度 |
中 |
|
|
リスクシナリオ |
当社グループが事業展開を行う事業において、競争環境や事業環境の変化によって、以下のような事象が発生し、当社グループの事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。 ・関連する技術の研究や開発による費用の増加 ・技術革新に対する対応や導入の遅れによる競争上の優位性の低下 ・既存IPにおける原作終了や新たなIPの原作利用権の喪失による収益の低下 ・劇場用映画の興行成績の予測が困難であることによる収益の低下 |
||
|
対応策 |
当社グループは2010年に映像制作におけるデジタル技術の実践を中心に研究を行うツークン研究所を立上げ、当社グループが制作した作品に映像技術の活用を継続的に取り組んできました。加えて、新たに運用を開始したバーチャルプロダクション技術を多様な作品に活用する取り組みを推進しております。 また、各作品の興行成績の予測には困難を伴いますが、可能な限りの厳密な興収予測を立て、動員力と完成度を重視した企画選定を徹底しております。加えて、幅広いチャンネルでの多様かつ良質なコンテンツの企画及び制作に努め、年間を通じてバランスの取れた興行収入を得られるような取り組みを推進しております。 |
<ガバナンスリスク>
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⑧ 個人情報等の機密情報の取り扱いに関するリスク |
対応優先度 |
高 |
|
|
リスクシナリオ |
当社グループでは、顧客等から得た個人情報を数多く保有しております。当社グループの従業員あるいは外部の業務委託先が保有する個人情報を適切に取り扱わず、個人情報の外部流出、あるいは不正利用が生じた場合は、当局から業務停止命令、罰金その他の処分を受ける可能性、顧客または関係企業から訴訟を提起される可能性や当社グループの社会的信用及びブランドイメージが毀損される可能性があります。 |
||
|
対応策 |
当社グループは保有する個人情報を適切に管理するために、個人情報の取り扱いに関するルール及びガイドラインの策定と運用の徹底に努めております。また、当社グループの従業員に対して、定期に個人情報の取り扱いに関する教育の実施と社内管理体制の整備を行い、細心の注意を払っております。 |
||
|
⑨ 情報セキュリティリスク |
対応優先度 |
高 |
|
|
リスクシナリオ |
当社グループが事業展開を行う各種事業のサービス提供や業務遂行にあたって、様々な情報システム及びネットワークを活用しております。災害、事故または大規模なシステム障害によるシステムの停止、遅延、あるいは第三者によるサイバー攻撃または不正アクセス等が発生した場合は、当社グループが提供するサービスや業務の遂行が停止すると共に、当社グループが保有する個人情報や映像コンテンツ等を含めた重要データが漏洩、改ざん、あるいは不正利用され、当社グループの事業活動、社会的信用及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 |
||
|
対応策 |
当社グループでは、情報セキュリティ事故を未然に防止するため、情報セキュリティの推進体制整備と従業員への啓発、社内ネットワークに関する監視機能の強化や情報へのアクセスの制限等を実施しております。また、当該リスクが発生した場合は、適切な対応を即時実施の上、原因解析や影響範囲の調査を行い、再発防止並びに防御の最適化を図る体制をとっております。 |
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⑩ 著作権等の知的財産権に関するリスク |
対応優先度 |
高 |
|
|
リスクシナリオ |
当社グループの保有する知的財産権については、海賊版や模倣品等による権利侵害が現実に発生しております。それらについては、ケースごとに適切な対応をとるよう努めておりますが、海外あるいはインターネット等においては、法規制その他の問題から、知的財産権の保護を充分に受けられない可能性があります。仮に、当社グループが、侵害行為を回避できない場合は、当社グループの経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。 一方、当社グループが所有または利用する知的財産権に関して、第三者から訴訟を提起される等の結果、損害賠償義務を負ったり、知的財産権の利用が差し止められたりする可能性があります。 |
||
|
対応策 |
当社グループは著作権、商標権等の保護に関する各種対策の強化に努めております。なお、第三者による侵害が発生した場合、当社グループは毅然とした対応で、法的措置を取る等の対策を徹底しております。 また、従業員による第三者が保有する知的財産の侵害を防ぐために、当社グループは知的財産の取り扱いに関する周知等を定期的に行っております。 |
||
|
⑪ コンプライアンス違反リスク |
対応優先度 |
中 |
|
|
リスクシナリオ |
当社グループの役員または従業員によるハラスメントや不正行為、当社グループの雇用環境に関する従業員等からの当社グループへの訴訟の提起等が発生した場合は、当社グループの社会的信用及びブランドイメージが毀損される可能性があります。 |
||
|
対応策 |
当社グループでは「コンプライアンス委員会」を設置しており、「東映コンプライアンス指針」を周知徹底し、コンプライアンス全般に関する啓発・研修体制の充実に取り組み、適正なコンプライアンス体制の構築及び運用を行っております。加えて、「東映グループホットライン規程」を定めており、通報窓口を活用し、不正・不祥事に関する情報収集及び即時に必要な対応を実施しており、予防・再発防止のための情報展開等に取り組んでおります。 |
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による行動制限が撤廃され、経済活動の正常化が進み、訪日外国人数の増加や個人消費の持ち直しの動きなど、全体的に緩やかな回復の傾向がみられています。その一方、世界的な金融引き締め等による影響や物価上昇に加え、ヨーロッパや中東地域をめぐる情勢や金融資本市場の変動の影響など、その先行きについては依然として不透明な状況にあります。
このような状況のなかで当社グループは、映像関連事業・興行関連事業・催事関連事業・観光不動産事業・建築内装事業の各事業におきまして堅実な営業施策の遂行に努めました。
その結果、売上高は1,713億4千5百万円、営業利益は293億4千2百万円、経常利益は353億1千7百万円となり、また、特別利益として投資有価証券売却益等を、特別損失として減損損失等を計上いたしまして、親会社株主に帰属する当期純利益は139億7千1百万円となりました。
|
売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
親会社株主に帰属する当期純利益 (百万円) |
1株当たり 当期純利益 (円) |
当連結会計年度 |
171,345 |
29,342 |
35,317 |
13,971 |
225.68 |
前連結会計年度 |
174,358 |
36,339 |
40,172 |
15,025 |
242.48 |
増減率(%) |
△1.7 |
△19.3 |
△12.1 |
△7.0 |
△6.9 |
(注)当社は、2024年4月1日付で普通株式1株につき5株の割合で株式分割を行っております。前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり当期純利益を算定しております。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末における財政状態の状況については、次のとおりです。
|
資産合計 (百万円) |
負債合計 (百万円) |
純資産合計 (百万円) |
自己資本比率 (%) |
1株当たり 純資産額 (円) |
当連結会計年度末 |
411,406 |
95,175 |
316,230 |
57.5 |
3,819.35 |
前連結会計年度末 |
379,889 |
96,716 |
283,172 |
56.0 |
3,434.50 |
増減率(%) |
8.3 |
△1.6 |
11.7 |
- |
11.2 |
(注)当社は、2024年4月1日付で普通株式1株につき5株の割合で株式分割を行っております。前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額を算定しております。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、次のとおりです。
|
営業活動による キャッシュ・フロー (百万円) |
投資活動による キャッシュ・フロー (百万円) |
財務活動による キャッシュ・フロー (百万円) |
現金及び現金同等物の期末残高 (百万円) |
当連結会計年度 |
22,076 |
△9,805 |
△7,542 |
77,929 |
前連結会計年度 |
27,323 |
△7,815 |
△6,599 |
71,315 |
増減額(百万円) |
△5,246 |
△1,989 |
△942 |
6,614 |
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は、広範囲かつ多種多様であり、受注生産形態をとるものも少ないため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため、生産、受注及び販売の実績については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①経営成績の分析」における各セグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績の分析
当連結会計年度におけるセグメント別の経営成績は、次のとおりです。
|
売上高 |
営業利益 |
||||
前連結会計 年度 (百万円) |
当連結会計 年度 (百万円) |
増減率 (%) |
前連結会計 年度 (百万円) |
当連結会計 年度 (百万円) |
増減率 (%) |
|
映像関連事業 |
135,179 |
125,980 |
△6.8 |
35,167 |
26,333 |
△25.1 |
興行関連事業 |
18,449 |
20,174 |
9.3 |
900 |
1,907 |
112.0 |
催事関連事業 |
10,015 |
10,085 |
0.7 |
1,276 |
1,422 |
11.4 |
観光不動産事業 |
5,967 |
6,494 |
8.8 |
2,168 |
2,569 |
18.5 |
建築内装事業 |
4,746 |
8,610 |
81.4 |
48 |
397 |
723.9 |
全社・消去 |
- |
- |
- |
△3,222 |
△3,288 |
- |
連結計 |
174,358 |
171,345 |
△1.7 |
36,339 |
29,342 |
△19.3 |
〔映像関連事業〕
映画事業は、提携製作作品等40本を配給しました。当社配給作品のうち、「劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD」「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」「翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~」が興行収入20億円を超える大ヒットとなり、「Gメン」「映画プリキュアオールスターズF」等もヒットしました。また、前連結会計年度における公開作品のうち、「ONE PIECE FILM RED」「THE FIRST SLAM DUNK」「シン・仮面ライダー」が引き続き好稼働しました。
ドラマ事業は、テレビ映画に関して各放送局間の激しい視聴率競争により番組編成の多様化が進むなか、受注市場は引き続き厳しい状況にありましたが、作品内容の充実と受注本数の確保に努めました。当連結会計年度は60分作品「相棒」「科捜研の女」など49本、30分作品「仮面ライダーギーツ」「ひろがるスカイ!プリキュア」など295本、ワイド・スペシャル作品「松本清張ドラマプレミアム『顔』・『ガラスの城』」など19本の計363本を製作してシェアを維持しました。また、「王様戦隊キングオージャー」「仮面ライダーギーツ」「仮面ライダーガッチャード」などキャラクターの商品化権営業も売上高に貢献しました。
コンテンツ事業は、劇場用映画等の地上波・BS・CS放映権及びビデオ化権の販売、配信事業者向けの配信権販売を行いました。その中でも、旧作テレビ時代劇やテレビ映画「相棒」シリーズ等の放映権販売、「レジェンド&バタフライ」「シン・仮面ライダー」等の配信権販売が好調でした。また、「東映特撮ファンクラブ」における会員数の増加も売上高に寄与しました。ビデオソフト販売においては、業界全体が縮小傾向にあるなか、当社子会社・東映ビデオ㈱との連携を密にして、DVD・ブルーレイディスクあわせて251作品を発売し、「THE FIRST SLAM DUNK」「ONE PIECE FILM RED」等のDVD、ブルーレイディスク販売が好調でした。国際営業は、劇場用映画・テレビ映画等の海外販売、「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」などテレビ映画の海外向け商品化権販売とともに、「ボヘミアン・ラプソディ」「レヴェナント:蘇えりし者」など外国映画のテレビ放映権の輸入販売を行いました。アニメ関連においては、「THE FIRST SLAM DUNK」の海外上映権販売や「ワンピース」の海外配信権販売に加え、国内外における「ワンピース」の商品化権販売等が好調に稼働しました。教育映像業は、教育映像の製作配給等を行い、2023年教育映像祭において「バースデイ」が最優秀作品賞を受賞しました。そのほか、撮影所事業は、劇場用映画・テレビ映画等の受注製作、部分請負等を行いました。
以上により、当セグメントの売上高は1,259億8千万円(前年度比6.8%減)、営業利益は263億3千3百万円(前年度比25.1%減)となりました。
〔興行関連事業〕
映画興行業は、当社子会社・㈱ティ・ジョイによるシネマコンプレックス(共同経営・共同運営含め22サイト218スクリーン)の運営が事業の中心となっており、「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」「名探偵コナン 黒鉄の魚影」の大ヒットが業績を牽引しました。また、東映㈱直営館(2スクリーン)においては、「THE FIRST SLAM DUNK」「劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD」等が好調に稼働いたしました。
以上により、当セグメントの売上高は201億7千4百万円(前年度比9.3%増)、営業利益は19億7百万円(前年比112.0%増)となりました。
〔催事関連事業〕
催事事業は、「北斗の拳 40周年大原画展 ~愛をとりもどせ!!~」「暴太郎戦隊ドンブラザーズファイナルライブツアー2023」をはじめ、様々なジャンルの展示型イベント、ライブイベントや舞台演劇、人気キャラクターショーなど各種イベントの提供を行いました。また、映画関連商品の販売やオンラインサイトによるイベント商品の通信販売、仮面ライダーストア等でキャラクターグッズの販売を行うなど積極的な営業活動を展開いたしました。なお、東映太秦映画村はリニューアル工事を開始しましたが、売上高は堅調に推移しました。
以上により、当セグメントの売上高は100億8千5百万円(前年度比0.7%増)、営業利益は14億2千2百万円(前年比11.4%増)となりました。
〔観光不動産事業〕
不動産賃貸業は、物価の上昇傾向にもかかわらず、賃料水準が上昇線を描く状況には至らず、特に地方圏では全体的に厳しい状況が続きました。当連結会計年度は、引き続き「プラッツ大泉」「オズ スタジオ シティ」「渋谷東映プラザ」「新宿三丁目イーストビル」「広島東映プラザ」等の賃貸施設が稼働しました。また、ホテル業においては、新型コロナウイルス感染症による行動制限の撤廃により国内の旅行需要が急回復し、円安効果で訪日外国人観光客数も増加する一方、引き続き物価高の影響を受けております。このような状況のなか、価格改定やコスト管理の徹底に努めるなど営業努力を重ねました。
以上により、当セグメントの売上高は64億9千4百万円(前年度比8.8%増)、営業利益は25億6千9百万円(前年度比18.5%増)となりました。
〔建築内装事業〕
建築内装事業では、民間設備投資の持ち直しの動きが見られましたが、建設コストに関しましては、建設資材・エネルギー価格の高止まりや労務費の上昇等による影響があり、厳しい経営環境が続きました。このような状況のなか、従来の顧客の確保及び受注拡大を目指して積極的な営業活動を行い、映像関連施設では、ハイスペックシアターの受注が増加し、老健施設や医療施設、障がい者雇用支援施設、マンション建築等の工事を手掛けました。
以上により、当セグメントの売上高は86億1千万円(前年度比81.4%増)、営業利益は3億9千7百万円(前年度比723.9%増)となりました。
当社グループの主幹事業である映像関連事業におきましては、その中核を成す劇場用映画がヒットするか否かの予測が困難であり、その好不調がドラマ事業、コンテンツ事業等の映像関連事業全般に広く影響を及ぼすことから、収益の安定化が命題となっております。そのため、より一層の営業努力に邁進し、業界各社との強力な連携を図り、収益力を見極めた企画の選定に注力する一方で、不動産賃貸業にて保有する賃貸資産の有効活用等に努めることで、安定した収益確保に努めて参ります。
このような状況のなかで当社グループとしては、映像関連事業を中心に、より一層のコンテンツ事業の強化及び効率的な活用に傾注し、また資産の有効活用に努めるとともに、不採算部門の見直し等により、今後も収益基盤の強化に取り組んでまいります。
なお、中長期的な経営戦略については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載しております。
② 財政状態の分析
当連結会計年度末における資産合計は、4,114億6百万円となり、前期末に比べ315億1千7百万円増加しました。これは主に、現金及び預金が115億6千7百万円、仕掛品が19億6千8百万円、流動資産のその他が33億3千5百万円、建設仮勘定が18億9千万円、投資有価証券が144億5千2百万円、退職給付に係る資産が15億7千7百万円増加し、商品及び製品が38億5千7百万円減少したことによるものであります。
負債合計は、951億7千5百万円となり、前期末に比べ15億4千1百万円減少しました。これは主に、支払手形及び買掛金が13億1千2百万円、繰延税金負債が38億5百万円増加し、未払法人税等が37億4千8百万円、流動負債のその他が10億8千1百万円、長期借入金が12億7百万円減少したことによるものであります。
純資産合計は、3,162億3千万円となり、前期末に比べ330億5千8百万円増加しました。これは主に、利益剰余金が122億9千6百万円、その他有価証券評価差額金が81億6千4百万円、退職給付に係る調整累計額が21億1千5百万円、非支配株主持分が92億2千9百万円増加したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は、営業活動によるキャッシュ・フローが220億7千6百万円増加し、投資活動によるキャッシュ・フローが98億5百万円減少し、財務活動によるキャッシュ・フローが75億4千2百万円減少した結果、779億2千9百万円(前年同期は713億1千5百万円)となりました。
〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕
営業活動により得た資金は、220億7千6百万円(前年同期は273億2千3百万円の増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益354億1千万円、減価償却費36億6千5百万円、棚卸資産の増減額14億4千2百万円、利息及び配当金の受取額28億6千8百万円の増加と、受取利息及び受取配当金18億3千万円、持分法による投資損益21億1千9百万円、その他の流動資産の増減額35億5千6百万円、未払消費税等の増減額14億8百万円、法人税等の支払額134億1千3百万円による減少があったことによります。
〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕
投資活動により支出した資金は、98億5百万円(前年同期は78億1千5百万円の減少)となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入225億2千7百万円による増加と、定期預金の預入による支出264億5千1百万円、有形固定資産の取得による支出43億5千3百万円による減少があったことによります。
〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕
財務活動により支出した資金は、75億4千2百万円(前年同期は65億9千9百万円の減少)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出12億2千9百万円、配当金の支払額16億7千5百万円、非支配株主への配当金の支払額35億8千4百万円による減少があったことによります。
④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
イ.財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、財務の健全性を保ち、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出すことにより、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能であると考えております。また、資産の有効活用と収益基盤の強化をはかりつつ、適正な手許資金の水準について検証を実施し、企業価値向上のために戦略的に経営資源を配分することが、長期安定的な株主還元に繋がると考えております。
ロ.資金調達の方法及び状況
当社グループは、運転資金及び通常の設備改修資金などは、内部資金又は金融機関等からの借入金により資金を調達しております。また、財務基盤をより堅固なものとするべく、グループ内の資金の一元管理等を含め、資金調達コストの低減をはかり、グループ全体の有利子負債の削減に努めております。
なお、当連結会計年度末における金融機関等からの借入金については、次のとおりです。
|
前連結会計年度末 (百万円) |
当連結会計年度末 (百万円) |
増減額 (百万円) |
短期借入金 |
350 |
240 |
△110 |
1年内返済予定の長期借入金 |
1,229 |
1,207 |
△22 |
長期借入金 |
13,987 |
12,779 |
△1,207 |
合計 |
15,566 |
14,227 |
△1,339 |
ハ.資金需要の主な内容
当社グループの資金需要の主な内容は、営業活動に係る資金支出では、劇場用映画やテレビ映画等の製作費、DVD・ブルーレイディスクの製作費、配給収入やコンテンツ事業収入に係る配分金のほか、シネコンの運営に関わる地代家賃、劇場用映画等の広告宣伝費、人件費等の販売費及び一般管理費があります。投資活動に係る資金支出では、撮影所やシネコン等の設備改修等があります。
(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(吸収分割契約)
当社は、2024年1月22日開催の取締役会において、当社の営むDVD・ブルーレイディスク販売等のパッケージ事業を吸収分割により当社の連結子会社である東映ビデオ㈱に対し承継することを決議し、2024年1月22日に吸収分割契約を締結しました。
詳細は、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。