文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、それぞれの事業において、「迅速果断」な意思決定のもと、既成概念にとらわれない強靭な経営体制を築きます。これを実現するために、事業活動を通じて適正な利益を確保し、変化を恐れず常に前向きに挑戦し続ける経営の実践に努め、ステークホルダーの期待に応えるべく「健全で信頼される企業」として社会に貢献してまいります。
当社グループは、2023年3月期から2025年3月期を対象とする第3次中期経営計画を策定しています。「新たな取り組みを試行しながら事業の持続的な成長を図る」「独自技術を活かした新製品の開発を進める」「上場企業としての社会的要請に応える」を基本課題として掲げ、これに基づき各分野における施策を定めています。
また計画の遂行に際し、事業ポートフォリオマネジメントとして、「事業計画、経営資源配分の検討」「各種施策の実行」「業績評価と分析」を年間サイクルで実施することにより、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。
当社グループは、企業価値の向上を目指すにあたり、収益重視の観点から、売上高・営業利益およびROICを経営上の目標の達成状況を判断するための指標としています。
当連結会計年度におきましては、国内では新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類に移行し、社会経済活動の正常化が進みました。一方、資源価格の上昇や円安、人手不足によるコスト増加などに起因する物価上昇は人々の生活を直撃し、個人消費の低迷に繋がっています。世界的にも経済の成長率は鈍化し、減速感が強まりました。
このような環境下、世界の半導体市場も、2022年半ばから続く需要低迷、在庫調整に伴う減産により、2023年は4年ぶりのマイナス成長となったと見られています。当社グループにおきましても、この状況を受け、高純度薬品事業の半導体分野では需要が低迷し、運輸事業でも当社製品および原料の輸送量減少が業績に影響を及ぼしました。一方、半導体市場の回復は当初予想より遅れを見せているものの、2024年は回復基調に転じることが期待されています。一時の落ち込みはありながらも、市場回復に向けた設備投資は継続されており、日本でも半導体を特定重要物質に指定し、安定供給体制の構築とサプライチェーンの強靭化が推し進められています。今後、自動車の電動化やAIが牽引役となり、半導体市場は再拡大することが見込まれます。これに伴い、当社の主力製品である半導体用高純度薬液も需要が高まることが期待できるため、ユーザーの要望に応じた製品開発体制、生産・供給体制を確立し、業績拡大に努めてまいります。
エネルギー分野では、原子力関連施設向けの濃縮ホウ素の需要が拡大しつつあります。その背景として、国際的にも脱炭素化の機運が高まる中、クリーンエネルギーとして原子力発電活用の動きが活発化していることがあり、今後もその動向は継続するものと考えられます。また、成長が見込まれる電池市場をターゲットに、二次電池用材料や全固体電池用材料の開発など、実用化に向けた技術革新が必要となっています。
さらに、当社グループの物流を支える運輸部門では、物流業界の働き方改革が進む中、継続して収益性を維持、向上させる取り組みが重要となってまいります。
以上の経営環境も踏まえ、当社グループは、次の課題、施策に取り組み、さらなるグループ企業価値向上を目指してまいります。
① 事業の持続的成長
当社グループ高純度薬品事業の主力製品である半導体用高純度薬液は、その高い品質と安定供給体制を強みとして競争力を築いてまいりました。事業環境の変化に合わせた重点販売地域の再編を推し進める中、国内外におけるユーザーの投資計画に対し機を逃さず、これに対応した販売拡大、新規商権の獲得に努めてまいります。また、ユーザーの一部において、その利便性から中小型容器での供給要望が高まる中、当該容器の充填能力増強を目的として新たな半導体用高純度薬液クリーンプラントの建設を進めています。これにより、最適な供給体制の構築と需要の取り込みを図ります。さらに、原料である無水フッ酸について、これまでも中国以外の地域からの調達に向けた取り組みを行ってまいりましたが、顧客要望も一層高まりつつある中、採算性を見極めつつ調達元の拡充に努めてまいります。
エネルギー部門では、需要の継続が見込まれる濃縮ホウ素において、生産設備の整備および改良を行い、より効率的に生産を行える体制を整えてまいりました。今後の販売拡大に努めてまいります。
この他、歯磨き用途のフッ化スズにおいては、海外において販売地域の拡大が見込まれています。価格競争力向上のため、生産体制の見直しなどにより原価低減を図り、収益性を高める取り組みを継続いたします。
また、当社グループの高純度薬品事業を物流や原料調達の面から支える運輸事業では、いわゆる2024年問題と呼ばれる法改正に対し、早期から計画的に体制を整えてまいりました。慢性的に不足しがちである運転手の確保や、設備等の充足により安定的事業基盤の構築等に努め、着実に成長していくことに注力する方針です。
② 独自技術を活かした新製品の開発
研究開発部門では、中長期でみた成長市場を踏まえて、当社が強みを持つ要素技術を活かした研究開発に取り組んでいます。半導体分野において、先端半導体の進歩は、微細化に加え、構造の三次元化・新材料の適用といった技術革新により実現します。この過程において、フッ化水素酸やバッファードフッ酸に要求される機能性は様々なものがあり、品位もますます厳しくなっています。当社では、ロジックやメモリにフォーカスし、これらの技術革新に貢献できる機能性薬液の開発を推し進めるとともに、半導体デバイスの歩留まりに影響を及ぼす極めて微細な粒子の低減に向けた取り組みにも注力してまいります。
エネルギー分野に関しては、リチウムイオン二次電池用材料として、電池の性能を向上させることに加え劣化を抑制する新規添加剤の開発を進め、サンプル評価から実用化へと繋がるよう取り組んでいます。また、全固体電池用材料についても、すでにサンプル評価を開始しており、必要に応じてさらなる改良を進めてまいります。
この他、細胞培養容器、蛍光体関連材料、高機能フッ化物など、新たな製品や素材の開発にも取り組み、事業ポートフォリオ拡充を目指してまいります。
③ 経営基盤の強化
企業の持続的発展のため、またプライム市場上場企業として社会から求められる事項に対して実践してまいります。資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応や、サステナビリティ関連の取り組みについて、その計画や目標に応じて取り組んでまいります。
また、社内の業務効率化、生産性向上に繋がる業務のデジタル化を推し進め、新たな施策に取り組む土台を強化いたします。
さらに、経営資源配分の観点では、資本効率・収益性・持続的成長に向けた長期視点等を意識した、成長投資や株主還元をバランスよく実施することを基本方針として掲げ、これに取り組んでまいります。
文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
サステナビリティ基本方針
私たちは、経営理念の実践とともに、「人々が幸せになれる製品を生み出し、その結果として、より企業価値の高い企業を目指していきたい」という思いを込めたスローガン『Beyond the Chemical ~化学を超えて 化学の向こうへ~』のもと、事業活動を通じて持続可能な社会の実現と企業価値の向上に努めます。
サステナビリティに関する諸課題への取り組みは、当社の中長期的な企業価値向上のための重要な経営課題であることから、取締役会が適切に監督を行うための体制を構築しています。
2023年4月に常勤取締役および各部門の責任者を委員としたサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ基本方針を制定いたしました。サステナビリティ委員会では気候変動への対応を含む、サステナビリティに関する取り組みについて情報を集約し、組織横断的なリスクおよび機会について審議・検討を実施し、その結果を取締役会へ報告・提言をいたします。取締役会は、サステナビリティ委員会からの報告や外部環境の認識に基づき、サステナビリティに関する戦略・方向性の検討および取り組みの選定・監督を行う体制となっています。
② 戦略
マテリアリティの特定
持続可能な社会の実現と持続的な企業の成長にむけて、当社の経営や社内にとっての重要度の視点から取り組むべき優先課題を選定し、重要性や影響度よりマテリアリティを特定しました。当社が取り組むべきマテリアリティは次のとおりです。当社は、サステナビリティ委員会を中心に、それぞれのマテリアリティについてのレビュー、対応策や計画の策定を含め活動を進めています。
当社はサステナビリティ課題に係る事業へのリスクについて、サステナビリティ委員会を開催し、当社および当社グループにおける各種リスクに対して、リスクの認識、対応策の審議および進捗状況のモニタリングを行い、取締役会へ報告を行っています。
なお、サステナビリティ課題に係るリスクについては、「
人材の多様性の確保を含む人材育成方針
当社は、持続的成長のためには「人」が原動力であると認識しています。
そのため性別、国籍、キャリア等に拘ることなく多様性のある人材の採用を行い、様々な考え方、経験、価値観等を取り入れ一人ひとりの強みや個性を伸ばし、自ら考え行動できる責任感のある自律型人材の育成に取り組みます。
社内環境整備に関する方針
当社は、社員一人ひとりがやりがいを持って健康に働ける社内環境を整備する事によって、個々のパフォーマンスの更なる向上を図る事が、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に繋がるものと考えます。
社員一人ひとりが心身共に健康で働く意欲にあふれ、公私ともに充実した生活を送ることができるよう職場環境の提供や多角的な人事施策の整備に、継続的に取り組みます。
※正規雇用の基本給・賞与合計の男女の賃金差異(男性を100%とした場合)
気候変動が当社事業にどのように影響を与えると考えられるか、主なリスクおよび機会の検討を行いました。
当社では、サステナビリティ委員会において、気候変動に伴うリスクの認識、対応策の審議、進捗のモニタリングを行い、その上で取締役会に報告されます。気候変動の影響は中長期的な時間軸で発現することから、関係各部門が取り組みを実行し、定期的に委員会へ進捗を報告いたします。また、サステナビリティ課題を全社横断的な取り組みに落とし込むために、各部門の実務者レベルの社員により組織されたサステナビリティワーキンググループにおいて議論を行っております。
当社は、気候関連のリスク・機会を評価するにあたり、温室効果ガス(CO2)排出量のうちScope1、Scope2排出量を指標として設定しております。政府が目標として「2050年のカーボンニュートラルを達成すること」を掲げており、当社でも、2050年のカーボンニュートラル達成を目指してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
これらのリスクは必ずしも当社グループの事業等に関するリスクを全て網羅したものではなく、当連結会計年度末現在では想定していないリスクや重要性が低いと考えられるリスクも、当社グループの財政状態や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
また当社は、リスクマネジメントの基本方針等を「リスクマネジメント規程」に定め、それに基づき、代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会において、事業を取り巻くさまざまなリスクに対して的確な管理を行うことに努めております。
当社グループの原材料等の一部は、特定の地域に在る供給源に依存しており、その供給が逼迫した場合や、供給が中断した場合には、生産活動の遅れや停止につながり、製品供給に支障が出る可能性があります。当社では調達リスクを軽減するために複数のサプライヤーからの購入、継続的な新規供給源の開発に取り組んでおります。また原材料価格の急騰は、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。速やかな販売価格への転嫁等により影響を極力回避すべく取り組みを行っております。
当社グループの売上高において、高純度薬品事業の半導体関連の占める割合が高く(約6割)、得意先である電子・電気・通信機器業界の半導体需要ならびに設備投資の下降、同業他社との価格競争激化による販売価格の下落等により、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。継続的な製品競争力の強化や他事業分野の製品開発および製品販売の伸張によって影響を回避すべく努めております。
当社グループは、災害や事故に伴う生産活動の中断により生じる影響を最小限に抑えるため、日常的な製造設備の保守点検、安全防災設備・機器の導入、自衛消防組織の確立、安全防災訓練実施やマニュアルづくり等、設備保全、安全確保に努めています。しかし、突発的な自然災害発生や不慮の事故発生により、製造設備の損壊、原材料の調達困難、電力・物流等の社会インフラの機能不全、経済状況悪化に伴う需要動向の変化等が発生し、生産活動を制限あるいは中断した場合には、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。万一の被災時における事業の継続あるいは復旧に備え、事業継続計画を策定し、また保険の付保による損害軽減策を講じています。
また、新型コロナウイルス感染症や新たな感染症が拡大した場合、従業員の感染、原材料調達の遅延、生産活動の停止など、または顧客および取引先の事業活動の停止や生産計画の見直し等により、当社製品の需要が減少した場合、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
一方、新たな生活様式の普及により当社製品の販売増進に繋がる分野もあり、これらの需要を着実に取り込むことで当社グループの経営成績等の維持・向上に努めてまいります。また、当社グループにおけるサプライヤーの事業活動に大きな影響が生じ、原材料等の調達価格高騰や調達困難な状況が発生した場合には、当社グループの事業継続コストが嵩み、財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業活動を行ううえで、安全保障貿易管理、商品の品質、安全、環境関連、化学物質関連、また会計基準や税法、労務関連、取引関連等の様々な法規制の適用を受けております。これらの法規制については遵守するよう体制を整備し、社会的良識に沿った企業行動を行っております。現行の法規制の変更や新たな法規制等が追加された場合は、当社グループの従来の事業活動が制限される、あるいはその対応のために新たな投資が必要になる等、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、世界的に環境・社会・経済の持続可能性(サステナビリティ)に配慮した経営が求められている中、これらの課題に対する取り組みの重要性を認識し、当社の経営や社内にとっての重要度の視点から取り組むべき優先課題を選定し、重要性や影響度よりマテリアリティ(重要課題)を特定しました。また、気候変動の対応として、2030年GHG排出量(Scope1・2)を2013年度比で46%(11,830t)削減、2050年GHG排出量(Scope1・2)のカーボンニュートラルを実現することを目標といたしました。
気候変動の緩和のため、温室効果ガス(GHG)の排出規制や脱炭素社会に向けた動きが加速するなか、各国の法規制の強化に伴うエネルギー価格の上昇や炭素税導入、GHG排出削減のための追加設備投資、環境関連法規制の強化により脱炭素社会に向けた地球環境保全に関連する費用が増加した場合は、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
加えて、人権等を含む社会問題への取り組みについて適切な対応が取れない場合、事業機会の損失や社会的信用の失墜などに繋がり、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 情報セキュリティに関するリスクについて
当社グループは、事業活動を行ううえで、顧客および取引先、株主、役職員等のすべての個人情報および研究開発、生産などに関する機密情報の適切な管理に努めております。また、事業活動に関わる情報を財産と考え、継続的に情報セキュリティ体制の構築・強化を図っております。しかしながら、想定を超えるサイバー攻撃やその他の不測の事態による情報セキュリティ事故、地震等の自然災害の発生による情報システムの停止または一時的な混乱に伴う事業への影響が発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜、訴訟の提起、社会的制裁等により、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの製品は、高度な技術や複雑な技術を利用したものが増えており、また、原材料等を外部の供給者から調達していることにより、品質保証へのコントロールは複雑化しています。当社グループでは、生産、出荷の各段階で当社の品質基準に適合していることを厳密に確認しています。しかし、すべての製品について欠陥がなくPL問題が発生しないという保証は無いため、製造物責任賠償についてはPL保険に加入し、万一の事故に備えておりますが、予期せぬ重大な事故や品質面での重大な欠陥が発生した場合には、社会的信用の失墜を招き、顧客に対する補償などによって、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、フッ化物製造事業を中心に、シンガポール、中国に事業展開していますが、各国において以下のようなリスクがあります。当該リスクに対しては、現地法人や商社を通じての情報収集を行いその回避に努めていますが、これらの事象が発生した場合は、債権回収の遅延・不能や、事業遂行の遅延・不能、需要動向の変化等により、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
a)予期しえない法律・規制・不利な影響を及ぼす租税制度の変更
b)不利な政治的要因の発生
c)テロ、戦争等による社会的混乱
d)人材確保の困難化、労使関係の悪化
e)ストライキ等の労働争議
当社グループは、海外への輸出を円貨建てで決済する一方、原材料等の一部を海外からの輸入品により調達しており、その代金決済を外貨建てで行っています。為替予約取引等により為替変動リスクをヘッジする措置を講じているものの、それら外貨に対する円相場の急激な変動が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。海外子会社の経営成績は、連結財務諸表作成のために円換算されていることから、換算時の為替レートにより、円換算後の計上額が影響を受ける可能性があります。
当社グループは、独自開発した技術による事業展開を基本として、必要な知的財産権の取得を推進しております。一方、当社グループが事業展開している分野については、第三者の知的財産権を常に調査監視して、第三者の有効な知的財産権は、代替技術の開発または技術的な回避策を講じることにより使用しない、当該第三者から使用する権利を得るなどの対策をとり、侵害の防止に努めております。さらに、調査監視にあたる人員を拡充するなど、体制の強化にも取り組んでいます。現在、当社グループの開発に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームが発生したという事実はありません。しかし、知的財産権侵害問題の発生を完全に回避することは困難であり、仮に当社グループが第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、当該第三者の主張の正当性の有無にかかわらず、解決には多大な時間および費用を要する可能性があり、場合によっては当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業を遂行するうえで、コンプライアンスの重要性を認識し、法令および社会的ルールの遵守の徹底を図っておりますが、取引先や第三者から訴訟等が提起され、または規制当局より法的手続がとられるリスクを有しています。これらにより、当社グループに対して巨額かつ予想困難な損害賠償の請求がなされた場合または事業遂行上の制限が加えられた場合、当社グループのイメージ・評判の低下、顧客の流出等を惹起し、財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当連結会計年度における国内経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う経済活動の正常化が進み、雇用・所得環境が改善するもとで、景気は緩やかな回復の動きが見られたものの、海外景気の下振れリスクや物価上昇の影響、円安の継続など、依然として先行きが不透明な状況が続いています。
このような環境のもと、当社グループは、顧客のニーズに基づいた多種多様なフッ化物製品の供給を行うとともに、特殊貨物輸送で培った独自のノウハウに基づいた化学品の物流を担う事業展開を行ってきました。
当連結会計年度の業績におきましては、半導体部門について、半導体市況悪化に伴い出荷量が減少したことに加え、工業用フッ酸部門や一般製品部門等の出荷量が減少した結果、売上高は304億46百万円(前期比14.0%減)となりました。
利益面におきましては、売上高の減少を受け、営業利益は27億22百万円(同22.5%減)、経常利益は30億64百万円(同29.5%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、高純度薬品事業におけるリチウムイオン二次電池用の添加剤の生産設備に係る減損損失等を特別損失に計上した結果、18億45百万円(同19.1%減)となりました。
当社グループは、2023年3月期から2025年3月期までの3ヵ年において、第3次中期経営計画を策定しており、売上高・営業利益およびROICを経営上の目標を達成するための客観的な指標として掲げています。売上高については、高純度薬品事業の半導体部門において、主要顧客を中心に需要拡大を見込んでいましたが、半導体市況悪化の影響から、2023年3月期より出荷量は減少に転じ、2025年3月期においては、市況は回復基調であるものの、当初の計画数値を下回ると想定しています。
営業利益およびROICについても、販売面では価格転嫁の取り組みを進めましたが、出荷量下振れの影響ならびに主要原材料の無水フッ酸価格が、主に円安を背景に当初計画と比較して高い水準で推移する見通しであることから、数値目標を修正いたします。
(経営成績に重要な影響を与える要因についての分析)
経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載しています原材料の調達リスクにおいて、高純度薬品事業における主要原材料である無水フッ酸を主に中国より調達を行っています。当連結会計年度の無水フッ酸価格については、中国での調達価格は若干低下したものの、円安の進行により、前連結会計年度と比較して概ね同水準となりました。原材料価格の上昇時には、販売価格への転嫁を行うなど収益面での影響を最小限とするよう取り組みを進めています。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
高純度薬品事業のうち、主力の半導体部門の売上高は、販売価格上昇も、半導体市況悪化の影響により、出荷量が前連結会計年度と比較し減少した結果、183億41百万円(前期比3.7%減)となりました。加えて、工業用フッ酸部門や一般製品部門等の出荷量が減少したことにより、高純度薬品事業の売上高は260億19百万円(同15.3%減)となりました。
利益面では、売上高の減少を受け、営業利益は21億67百万円(同26.8%減)となりました。
運輸事業につきましては、運送関連等の取扱量が前連結会計年度を下回った結果、売上高は42億52百万円(前期比5.6%減)となりました。
利益面では、運送関連費用が減少したことにより、営業利益は5億48百万円(同2.9%増)となりました。
その他事業につきましては、保険代理業収入等が前連結会計年度を上回った結果、売上高は1億74百万円(前期比2.1%増)となったものの、営業利益は18百万円(同39.3%減)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりです。
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 金額は販売価格によっています。
② 商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 金額は仕入価格によっています。
③ 受注状況
主として見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
④ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.主な相手先別の販売実績については、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しています。
当連結会計年度末の資産合計は、586億18百万円となり、前連結会計年度末に比べ31億46百万円増加しました。主な要因は、有形固定資産が増加したことによるものです。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
① 高純度薬品
高純度薬品事業につきましては、当連結会計年度末の資産合計は、485億98百万円となり、前連結会計年度と比べ27億22百万円増加しました。主な要因は、現金及び預金、建設仮勘定が増加したことによるものです。
② 運輸
運輸事業につきましては、当連結会計年度末の資産合計は、100億91百万円となり、前連結会計年度末と比べ5億5百万円増加しました。主な要因は、売掛金、有形固定資産が増加したことによるものです。
③ その他
その他事業につきましては、当連結会計年度末の資産合計は、2億69百万円となり、前連結会計年度と比べ20百万円減少しました。主な要因は、現金及び預金が減少したことによるものです。
当連結会計年度末の負債合計は、141億16百万円となり、前連結会計年度末に比べ18億7百万円増加しました。主な要因は、長期借入金、設備関係電子記録債務が増加したことによるものです。
当連結会計年度末の純資産合計は、445億1百万円となり、前連結会計年度末に比べ13億39百万円増加しました。主な要因は、利益剰余金、為替換算調整勘定が増加したことによるものです。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて11億18百万円増加し、当連結会計年度末は158億46百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、65億42百万円(前期比9億7百万円収入増加)となりました。
主な内訳は、税金等調整前当期純利益26億13百万円、減価償却費の計上27億68百万円、減損損失の計上4億47百万円、売上債権の減少4億10百万円、仕入債務の減少3億57百万円、未収消費税等の減少4億80百万円、法人税等の支払額10億10百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、58億31百万円(前期比25億50百万円支出増加)となりました。
主な内訳は、有形固定資産の取得による支出57億1百万円、有形固定資産の除却による支出1億55百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、1億41百万円(前期比35億75百万円の支出減少)となりました。
主な内訳は、長期借入れによる収入21億円、長期借入金の返済による支出11億75百万円、配当金の支払額10億92百万円によるものです。
借入金については、適切な資金確保および健全な財務体質を維持することを目指し、成長維持に必要な設備投資・投融資資金の調達、適正な手元資金水準を鑑み、当連結会計年度においては、短期借入金と長期借入金合わせて10億4百万円の増加となりました。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社グループは事業活動を遂行するための適切な資金確保および健全な財務体質を維持することを目指し、安定的な資金調達手段の確保に努めています。成長を維持するために将来必要な運転資金および設備投資・投融資資金は、主として営業活動によるキャッシュ・フローと金融機関からの借入により調達しています。
資金の流動性については、事業規模に応じた適正な手元資金の水準を維持することとしています。
現在進行中である第3次中期経営計画においては、経営資源配分の基本方針として「資本効率・収益性・持続的成長に向けた長期視点等を意識した、成長投資や株主還元をバランス良く実施する」と定めており、当中期経営計画の3年間に成長投資として設備・IT投資に約130億円、研究開発投資に約50億円を充当する計画としています。
また、株主還元については、2023年5月9日付「株主還元方針の策定に関するお知らせ」にて開示しましたとおり、成長投資と株主還元のバランスに加え、資本効率の改善を図るため、株主還元については、適用期間を定めて総還元性向100%を目標といたします。新たな株主還元方針の適用期間については、2023年度(2024年3月期)から2024年度(2025年3月期)とし、当該期間の終了時点で見直しを行います。2024年3月期の株主還元においては、自己株式の取得は実施せず、配当については、1株あたり中間配当60円、期末配当94円、合わせて年間154円の配当を行った結果、総還元性向は101.5%となりました。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いていますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。
該当事項はありません。
当社グループにおいては、高純度薬品事業において研究開発活動を行っています。研究開発活動の基本方針はフッ化物業界という特異な分野でありながら、多様化、高度化し、広範囲にわたる顧客ニーズに応える製品を研究開発し提供することです。
この目的達成のため次の事項を主眼として開発のスピードアップを図り、顧客ニーズ、時期に合致するよう努力しています。
(1) 効率的に研究開発に取り組める環境
(2) 高純度・高品質製品の開発
(3) 高機能・高付加価値製品の開発
(4) 顧客ニーズに合致した製品の開発
(5) 開発品の製法の効率化
(6) 高度先進技術への対応
研究開発スタッフは、グループ全員で33名にのぼり、これは総従業員の約5%に当たります。
当連結会計年度における主な研究内容は次のとおりです。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額(人件費を含む)は
主として高性能半導体の製造に使われる薬液、高精細ディスプレイに使われる材料、第5世代移動通信システム(5G)に使われる材料、リチウムイオン二次電池などの蓄電デバイスに使われる材料などを中心とした研究開発活動を行っています。最近は、フッ素化合物のナノ粒子化技術を用いた高精細ディスプレイ用反射防止材料、歯科材料などの用途開発、フッ素化技術を利用した高性能細胞培養容器の開発、自動車へ搭載されるリチウムイオン二次電池を高性能化する添加剤の開発、ナトリウムイオン二次電池や全固体電池などの次世代二次電池用の材料研究、高精細LCDやパブリックインフォメーションディスプレイなどに用いられるミニLEDの演色性を高めるLED用蛍光体および蛍光体製造材料の開発、第5世代移動通信システム(5G)における伝送損失を低減させる低誘電率・低誘電正接材料の開発など、研究テーマ毎にグループを形成して研究開発活動に従事しています。