当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
①経営理念・経営信条
当社の創業者 早川徳次の言葉の一つに「他社がまねするような商品をつくれ」があります。この言葉には、次の時代のニーズをいち早くかたちにした“モノづくり”により、社会に貢献し、信頼される企業を目指すという当社グループの経営の考え方が凝縮されています。
当社グループは、1973年に、この創業の精神を「経営理念」「経営信条」として明文化しました。さらに、2016年には、早川創業者の「誠意と創意」の精神を、これからも変わらない当社グループの“原点”として受け継ぎ、オリジナリティ溢れる新たな価値を提供し続けることを世界中のお客様と約束する言葉として、新コーポレート宣言“Be Original.”を制定しました。
当社グループは、今後も引き続き、「経営理念」「経営信条」を体現し続けることで、社会の発展に貢献していきたいと考えています。
②目指す方向性
当社グループは、2024年5月14日に公表した中期経営方針に沿って、今後、「ブランド事業に集中した事業構造の構築」の具体化を加速するとともに、将来の飛躍に向け、ブランド企業としての新たな成長モデルの確立に取り組みます。
これにより、「強いブランド企業“SHARP”」の早期確立を目指してまいります。
(2) 経営環境、経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
昨今、当社グループを取り巻く事業環境は、巣ごもり特需の反動減やエネルギーコストの上昇、インフレの加速、急激な円安等、様々なマイナス要因が重なる極めて厳しい状況が継続しています。こうした中においても、ブランド事業では毎期着実に利益を確保することができていますが、ディスプレイデバイスにおいて変化への対応が遅れた結果、近年、全社の業績が大きく悪化しています。
他方、長期的視点で見ると、当社グループは、資本力が競争優位に直結するデバイス事業において、十分な投資が行えず徐々に競争力が低下、一方、堅実な業績をあげているブランド事業においても、投資が制限され、将来に向けた打ち手が不十分で、その成長ポテンシャルを十分に発揮することができていません。この結果、全社のキャッシュ創出力が向上せず“負のサイクル”に陥ったことが、当社グループの成長が足踏みしている大きな要因の一つであり、今後、将来に亘って成長し続けるためには、このサイクルから早期に脱却し、持続可能な収益構造を確立することが重要であると考えています。
このような認識の下、当社グループは今後、中期経営方針に沿って、2024年度を「構造改革」の1年、2025年度から2027年度を「再成長」の3年と位置づけ、将来の飛躍に向けた変革に取り組みます。
まず、デバイス事業において「アセットライト化」、即ち、工場の最適化や他社の力を活用した事業展開へと舵を切り、ブランド事業に集中した事業構造を確立します。
そして、ブランド事業の投資を拡大し、売上/利益成長を実現するとともに成長領域へのシフトを加速していきます。さらに、成長する新産業分野、Next Innovationの事業機会獲得に挑戦し、さらなる事業成長、企業価値向上を目指します。これにより、既存ブランド事業とNext Innovationの“正のサイクル”が回る新たな成長モデルを確立していきたいと考えています。
加えて、将来の飛躍を牽引する“強い本社”の構築にも取り組んでまいります。
また、重要なビジネスパートナーである鴻海精密工業股份有限公司との連携をより一層強化し、構造改革と再成長の両面で彼らのリソースを有効活用することで、それぞれの取り組みのスピードを加速していきます。
(3) 2024年度の取り組み
ブランド事業では、円安がさらに進行する非常に厳しい事業環境下にありますが、特長商品や新規カテゴリー商材の創出、海外事業の強化、低収益事業の改善等に取り組み、各セグメントにおいて前年に対して増収増益を目指します。
<スマートライフ&エナジー>
白物家電事業では、独自特長商品の投入による日本市場のシェアアップや、米州/ASEAN市場の重点強化に取り組みます。エネルギーソリューション事業では、電力会社等との連携による国内住宅向けのシェア拡大及びV2Hの販売拡大に取り組みます。
<スマートオフィス>
ビジネスソリューション事業では、ソリューション提案力強化による顧客基盤の維持拡大に取り組むとともに、ITサービスディーラーを開拓し、サービス領域の拡張を進めます。PC事業では、B2B向けプレミアムモバイルモデルの販売拡大や、ライフサイクルマネジメントサービスの拡大に取り組みます。
<ユニバーサルネットワーク>
TVシステム事業では、日本市場において、独自特長商品の販売拡大による収益力強化を図るとともに、海外市場において、他社との連携による事業拡大に取り組みます。通信事業では、国内携帯電話事業におけるハイエンド/ミドルエンド比率の向上に取り組むとともに、XR事業や決済端末事業の立上げを進めます。
一方、デバイス事業では、アセットライト化を推進するとともに、ディスプレイデバイスの抜本的な収益改善に取り組みます。
<ディスプレイデバイス>
2期連続での大幅赤字となった堺ディスプレイプロダクト㈱は、子会社化後の市場の変化により当初想定の再生計画の遂行が困難になったことから、2024年度上期中に大型ディスプレイの生産を停止します。今後は、他社への技術支援やAIデータセンター関連ビジネスへの事業転換を進めていきます。
中小型ディスプレイ事業においては、売上規模に見合った生産能力の最適化や人員の適正化等、抜本的な固定費削減に取り組むとともに、車載向けやVR向けの販売を拡大し、赤字幅の縮小を図ります。
<エレクトロニックデバイス>
カメラモジュール事業及び半導体事業において、事業の親和性が高く、両者のさらなる成長に資するパートナーへの事業譲渡を推進します。
センサー事業では、ファクトリーオートメーション向けデバイスの拡大に取り組みます。
(4) 目標とする経営指標
今年度も、世界的なインフレや円安の加速等、非常に厳しい事業環境が継続する見通しにありますが、デバイス事業の赤字幅縮小に取り組むとともに、ブランド事業の収益力向上を図り、年間黒字の必達を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般
当社グループは、当社経営理念の一節にある「広く世界の文化と福祉の向上に貢献する」、「会社に働く人々の能力開発と生活福祉の向上に努め、会社の発展と一人一人の幸せとの一致をはかる」などの言葉が示す創業の精神に基づき、社会の期待や要請に応え、社会と当社の相互の持続的発展を目指すことをサステナビリティに関する基本的な考え方としています。中長期的な企業価値向上の観点から、「ESGに重点を置いた経営」方針を定め、気候変動や人的資本、人権の尊重をはじめとする、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関わる諸課題への対応に積極的に取り組んでいます。気候変動への対応については、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、TCFDのフレームワークに沿って、気候変動に関する情報開示の拡充を図っています。
① ガバナンス
「ESGに重点を置いた経営」方針を実行施策レベルに落とし込み、PDCAサイクルでマネジメントしていくため、代表取締役社長を委員長とし、経営幹部、環境・人事・調達などの本社機能部門、事業本部・子会社などで構成する、サステナビリティ委員会において、方針やビジョンの徹底、施策についての審議・推進、社会的課題に関する最新動向の共有などを実施しています。
委員会における経営層によるモニタリング・レビューを通じて、SDGs/ESG分野の取り組みを継続して強化し、当社のESGレーティング・格付の向上を図りながら、持続的成長を支える強固な経営基盤を構築し、サステナブルな社会の実現への貢献を目指しています。
サステナビリティ・マネジメント推進体制図(2024年6月現在)
② 戦略
サステナビリティへの取り組みが事業の機会創出とリスク低減につながる重要な経営課題であるとの認識に立ち、2018年度からは「事業や技術のイノベーションを通じた社会課題の解決」と「サステナブルな事業活動による社会・環境に対する負荷軽減」を両輪として、「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」達成に向けた貢献を目指すことをサステナブル経営の基本戦略として取り組んでいます。
また、気候変動や資源枯渇など、地球規模の環境問題がさらに深刻さを増す中、当社は、1992年に定めた環境基本理念「誠意と創意をもって『人と地球にやさしい企業』に徹する」のもと、2019年に長期環境ビジョン「SHARP Eco Vision 2050」を策定しています。「気候変動」「資源循環」「安全・安心」の3つの分野で2050年の長期目標を設定し、持続可能な地球環境の実現を目指して取り組んでいます。
2022年度からは「ESGに重点を置いた経営」方針に沿い、カーボンニュートラルへの貢献を重要テーマに位置づけ、関連する取り組みを加速しています。また、気候関連リスクおよび機会を踏まえた戦略と組織のレジリエンスについて検討するため、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による気候変動シナリオ(1.5℃シナリオおよび4℃シナリオ)を参照したシナリオ分析を実施しています。
■当社の事業における気候変動に関するリスク・機会と対応策
シナリオ |
要因 |
変化 |
当社への影響 |
リスク・機会 |
影響度 |
影響が顕在化する時期※ |
当社の対応策 |
1.5℃ |
カーボンプライシングの導入 |
原材料調達コストの増加 |
当社の仕入製品に対して炭素税が導入されることで、仕入価格に転嫁される。 |
リスク |
大 |
短期 |
・低GHG(Green House Gas)排出原料の探求 ・環境負荷低減に努める仕入先の開拓 ・購買量の適正量化(在庫抑制の更なる徹底) |
直接操業コストの増加 |
当社が排出するスコープ1,2の排出量に応じて炭素税が導入され、支払コストが増加する。 |
リスク |
大 |
短期 |
・省エネの推進によるGHG排出量の低減 ・インターナルカーボンプライシングの導入による低炭素排出設備投資の推進 |
||
サプライチェーン上の脱炭素・環境配慮要請の高まり |
ユーザーの環境配慮ニーズを満たさないことによる競争力の低下 |
環境配慮についてユーザーの期待に応えられない場合、売上高減少のリスクが発生する。 |
リスク |
中 |
短期 |
・ユーザーとの継続的なコミュニケーションによるマーケットニーズの把握 ・省エネに関する研究開発の継続実施 |
|
環境配慮資材への切替コストの増加 |
CO2排出量が少ない電炉材や再生プラスチック、バイオマスプラスチックなどへの切り替えを進めていくに当たり、コストが増加する。 |
リスク |
中 |
中期 |
・低コストである環境配慮資材の調達先の発掘 ・環境配慮資材活用の外部開示による消費者の価格弾力性の堅持 |
||
再エネへの切り替えによるエネルギー調達コストの増加 |
自家発電やPPA(Power Purchase Agreement)、再エネメニューへの切替、環境価値証書の購入を進めることでコストが増加する。 |
リスク |
小 |
中期 |
・省エネの推進によるGHG排出量の低減 ・低コストとなるPPAや再エネを推進するためのパートナーの探求 |
||
再生可能エネルギー市場の拡大 |
再エネ発電事業者・利用企業からの太陽光発電関連製品・システムに対する需要の拡大 |
当社の製品・システム提供を拡大することで、収益拡大の可能性が高まる。 |
機会 |
中 |
短期 |
・マーケット需要に応じた太陽光発電関連製品・システム開発の継続 |
|
ZEH (Zero Energy House)需要の拡大 |
住宅向けの太陽光発電定額サービスや HEMS(Home Energy Management System)の提供を強化し、収益拡大の可能性が高まる。 |
機会 |
中 |
短期 |
・マーケット需要を捉えたエネルギーソリューション(システム/サービス)の提供 |
||
環境貢献ビジネスの拡大 |
サーキュラーエコノミー型ビジネスモデルの拡大 |
脱炭素の取り組みが社会的に高まる中で、廃棄物を出さないサーキュラーエコノミー型のビジネスモデルを確立することで、顧客支持の拡大につながる。 |
機会 |
小 |
中期 |
・自己循環型マテリアルリサイクル技術などの活用による廃プラスチックの再資源化の推進 ・太陽電池リサイクルの情報収集の継続による新規事業機会の積極創出 |
|
4℃ |
気象災害の激甚化 |
サプライチェーンの寸断 |
気象災害が激甚化することで、当社の仕入先、拠点が被災し、サプライチェーンが影響を受け、当社の販売機会喪失が懸念される。 |
リスク |
中 |
長期 |
・製品の複数購買、複数地域購買の推進 ・主要取引先の事業継続計画 (BCP)策定状況の調査と対策の強化 ・自社拠点におけるBCPの更なるレベルアップ |
※ 短期:3年以内、中期:2030年頃、長期:2050年頃に顕在化し始めると想定。
③ リスク管理
当社は、リスクマネジメントを「事業を継続的に発展させステークホルダーの期待に沿うことで社会的責任を果たす重要な活動の一つ」と位置付けています。リスク管理の基本的な考え方として「ビジネスリスクマネジメント規程」を制定し、リスク管理体制構築のもと、経営が特に大きいリスク項目を「特定リスク」として選定・管理しています。ESG関連リスクを含む全ての特定リスクについては、全社を横断的に管理する機能部門と、自らの事業領域における管理を担当する事業本部が連携し、リスクの最小化・適正化や未然防止の取り組みを行っています。
さらに、当社およびグローバルサプライチェーンにおける、社会や環境に与える負荷を低減していくために特に重要と考える取り組みテーマを毎年度特定し、関連管理策を設定の上、経営層によるモニタリング・レビューを行っています。
④ 指標及び目標
当社は、事業活動に伴う温室効果ガス排出量の削減に向けて、再生可能エネルギーの導入や設備の省エネなどの取り組みを推進しています。また、製品・サービスの省エネのさらなる強化やお取引先様との協働などにより、間接的な温室効果ガス排出量の削減を進めています。さらに、当社はパリ協定に準拠した科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標として、「SBTイニシアティブ※(Science Based Targets Initiative)」の認定を取得しています。
■SBTの進捗状況(1.5℃目標)
指標 |
目標 |
2023年度実績 |
基準年比 |
事業活動に伴う温室効果ガス 排出量(スコープ1+2) |
2030年度までに2021年度比で42.5%削減 |
|
13%削減 |
間接的な温室効果ガス排出量 (スコープ3) |
2030年度までに2021年度比で25.0%削減 |
|
28%削減 |
※SBTイニシアティブ : 国連グローバル・コンパクト(UNGC)、CDP、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)による気候変動に関するイニシアティブ。企業に対し、パリ協定に準拠した科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標を設定することを推進。
(2) 人的資本
当社グループの経営理念には「社会への貢献」「会社の発展」「社員の成長と幸せ」を追求する基本姿勢が示されています。
当社グループはこの理念のもと、一貫して人材の成長支援と活用を行ってきました。意欲ある従業員に成長機会を提供し、柔軟な働き方が可能な就業環境の整備等により、多様な人材の一人ひとりが、その能力を最大限に発揮できる「働きがいを生む職場」づくりに取り組んでいます。
これらの施策を継続し、現在は「ESGに重点を置いた経営」の方針のもと「人を活かす経営」を推進しています。
① 人(HITO)を活かす経営
当社グループは中期経営方針において、人材戦略(HITOを活かす経営)に重点を置き、「人への投資の拡大」「従業員エンゲージメントの向上」に取り組むことを掲げています。当社グループは、企業の持続的成長の原動力は「人」であると考えており、人(HITO)を活かす経営、つまり、「複数の専門性を持つHybrid人材の育成」、「Innovationが生まれる環境や風土づくり」、「社員の才能(Talent)を十分に活かす適材適所の人材配置」、「優秀人材への成長機会(Opportunity)の提供」の4つの観点から、さらなる人事制度改革を推進していきます。
具体的には、若手活躍を後押しする信賞必罰人事制度の進化、人材獲得力のある勤務処遇制度の構築、人材の成長を支援する仕組みの充実、組織の若返り、意思決定スピードの向上等に取り組み、“若くて活気溢れる企業風土”の醸成、すなわち、社員一人ひとりが失敗を恐れず、積極果敢に変革に挑戦していく会社を目指しています。
② 人材育成及び社内環境整備に関する方針
a. 若手活躍を後押しする信賞必罰の人事制度
当社は、年齢や性別、国籍に関係なく、成果を上げた人に報いる信賞必罰の人事制度により、優秀人材の抜擢、登用を進めています。
イ)等級制度
仕事の内容や役割、責任の大きさに応じて等級・処遇を決定する「役割等級制度」を導入しています。役割や成果に応じてスピーディに昇級できる制度設計とし、優秀な若手人材を早期に責任のあるポジションに登用しています。
ロ)人事評価制度と処遇
“信賞必罰”の考え方のもと、会社業績と個人評価に連動した賞与/昇給制度により、成果を上げた従業員に報いる仕組みとしています。公正な評価を実現するために、期初・期中・期末の節目ごとに上司との評価面談を実施し、目標の進捗や貢献度・成果などについて互いに確認しています。評価結果は、半期ごとに評価理由とともに本人へフィードバックすることで、次への成長につなげています。
b. 人材獲得力のある勤務処遇制度
当社グループが事業を推進し、持続的に成長していくためには、技術及びマネジメント分野において優秀な人材を確保することが必要であるとの考え方のもと、新たな人材獲得のために新卒採用を推進しています。また新規ビジネスを狙えるコア人材を確保するために、キャリア採用を推進しています。そして多様な人材がその能力を最大限に発揮できるよう勤務処遇制度の整備を行い、多くの人材にとって魅力ある企業となるよう努めています。
イ)若手社員の報酬引き上げ
会社の業績向上や持続的成長に必要な優秀人材の獲得・確保に向けて、当社で働く社員の給与水準や新卒採用者の初任給については、労働市場での競争力を考慮のうえ適宜見直しを行っています。
ロ)ダイバーシティ推進
当社のダイバーシティの考え方は、1973年に制定された経営理念の中で、「会社に働く人々の能力開発と生活福祉の向上に努め、会社の発展と一人一人の幸せとの一致をはかる」として明示され、従業員一人ひとりが互いの個性を尊重し合うことでイノベーションを生み出し、当社ならではの革新技術の開発やサービス提供など、新しい価値の提案につなげることを目指しています。ダイバーシティ・マネジメントは「多様な人材を活かす戦略」であり「経営戦略」そのものと捉えています。
■ダイバーシティ推進の状況
女性社員 |
当社は「女性活躍推進法」に基づく行動計画において、2024年度末までに「管理職の女性比率5%以上」との目標を定め、女性社員のさらなる活躍推進に積極的に取り組んでおります。2024年3月31日時点の当社の女性管理職率は、女性管理職登用プログラムを開始した2005年の0.6%から5.0%に増加しています。 |
障がい者 |
法定雇用率の維持・向上に取り組んでおり、当社、特例子会社※1、グループ適用会社※2合計の障がい者数は2023年6月現在約330名、障がい者雇用率は「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づく法定雇用率を上回る2.58%となっております。 |
外国人社員 |
当社は国籍に関係なく能力や適性に応じた採用、登用を行っていることから、数値目標は設定しておりません。当社では2024年4月現在13か国、約140名が在籍し、様々な部門・職種で活躍しております。 |
中途採用社員 |
日本国内においては、当社グループ全体※3で採用者のうち3割程度を中途採用することを目標にしており、2022年度は29%、2023年度は33%となっております。 |
※1 障がい者の雇用の促進および安定を図るため、事業主が障がい者の雇用に特別の配慮をして設立した子会社
※2 障がい者雇用率の算定に当たって、公共職業安定所長より認定を受けた特例子会社以外のシャープグループの子会社
※3 シャープ株式会社及び国内連結子会社
ハ)ワーク・ライフ・バランスの取り組み
従業員のワーク・ライフ・バランス(仕事と家庭生活の調和)を実現できるよう、育児・介護・治療と仕事との両立を支援する制度の拡充や制度利用の促進を行っています。育児支援については、ガイドブックの配付や個別の制度周知などを行っており、多くの従業員が育児のための休職や休暇等の制度を利用しています。また、全従業員が効率的でメリハリのあるワーク・スタイルを確立するため「ノー残業デー」の設定や年次有給休暇の計画的取得推進などの施策を行っています。在宅勤務制度について、2023年からは生産性の維持・向上が可能であることを前提に適用事由の要件を撤廃するとともに、1週間当たりの利用可能日数を拡大しました。併せて、フレックスタイム制においてフレキシブルタイムを拡大することで、これまでより場所と時間について柔軟に働ける環境を整備しました。
c. 人材の成長を支援する仕組みの充実
シャープ行動規範において、「採用や報酬、昇進、研修の機会等の雇用慣行を含むあらゆる企業活動において、差別を禁止」すること、また、「多様な属性をもつ従業員が十分に能力を発揮できる職場環境の整備」および「各種の研修や人材育成制度の積極的活用により、業務推進能力の向上に継続的に努めること」を定めています。
この考えに則り、企業としての総合力を高めるための取り組みの一環として、各種の人材育成プログラムを準備し従業員に提供しています。従業員一人ひとりの能力の「質の向上」や「幅の拡大」を狙いとした育成プログラムにより、若手社員から次世代リーダーの育成等の取組を行っています。
■人材育成プログラム
また「強い個を育てる」という考え方のもと、ビジネスを行う上での基本的な知識や専門性を学ぶための環境づくりに取り組んでいます。「個々人がいつでも、どこでも、主体的に学ぶ」ことを通じて、事業に精通したプロフェッショナル人材の育成を図っています。これらについては、従業員が自宅のパソコンや自身のスマートフォンを使って、いつでもどこでも簡単に学習ができるEラーニング環境を整えており、自己啓発による従業員の能力向上を積極的にサポートしています。
d. 組織の若返り/意思決定スピードの向上
20代/30代の採用の強化、及びミドルマネジメント層の育成強化により、均衡のとれた人員構成を目指すと共に、組織の若返り・活性化を図っています。また、業務執行にあたっては、執行役員制度の導入により、監督/意思決定機能と業務執行機能を分離することで、迅速かつ効率的な業務執行を着実に遂行できる体制を構築しています。
e. 従業員エンゲージメントの向上
「中期経営方針」の実現に向け、人への投資を拡大すると共に従業員エンゲージメントを高め、多様な人材が働きがいを持って主体的に業務に取り組むことができる職場環境を目指します。
2024年4月~5月に当社及び国内連結子会社等の全ての従業員を対象に従業員エンゲージメント調査を実施しました。
③ 指標及び目標・実績
当社の人的資本に関する2023年度の指標及び目標・実績は以下の通りです。
なお、人的資本の取り組みは当社グループに属する全ての会社が一律に推進しているものではないため、次の指標及び目標・実績は、特に記載が無い限り提出会社について記載しています。
指標 |
目標 |
2023年度実績 |
|
|
|
|
日本国内において3割程度を中途採用とする。※1 |
|
|
|
|
※1 シャープ株式会社及び国内連結子会社
※2 育児・介護休業法の公表基準に沿って算出した育児休業等及び育児目的休暇の取得割合
当社グループは、電気通信機器・電気機器及び電子応用機器全般並びに電子部品の製造・販売を主な事業内容として活動を行っております。その範囲は電子・電気機械器具のほとんどすべてにわたっており、ユーザーも国内外の一般消費者、事業会社から官公庁に至るまで多岐にわたり、また地域的にもグローバルな事業展開を行っております。従って、当社グループの業績は、多様な変動要因による影響を受ける可能性があります。
当社グループは、巣ごもり特需の反動減やエネルギーコストの上昇、インフレの加速、急激な円安等の厳しい事業環境下、将来に亘って成長し続けるために、デバイス事業ではアセットライト化、ディスプレイデバイスの抜本的な収益改善を進めるとともに、ブランド事業に集中した事業構造の構築、新たな成長モデルの確立に取り組んでおります。これらの取り組みを進めるなかで想定される「第2 事業の状況」、「第5 経理の状況」等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある主なリスクと、それに対する対応策は以下のとおりであります。
なお、本文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在(ただし、必要に応じて有価証券報告書提出日現在)において、当社グループが判断したものであります。
① 世界市場の動向・海外事業について |
(リスク) 当社グループは、日本だけではなく、世界の各地域で事業活動を行っており、日本を含む世界各地域における景気の動向(特に個人消費及び企業による設備投資の動向)、他社との競合、製品の需要動向や原材料の供給状況、価格変動などは、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、世界的なインフレによる物価高、欧米における金融引締めの長期化から耐久消費財の需要を下押しする可能性、中国の不動産市場の停滞に起因する中国の個人消費の伸び悩み等が、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
(対応策) 世界市場の動向等の当社グループの事業に関わるリスク・情報は、当社の海外子会社を管掌する事業本部が現地と連携して収集し、必要な事業上の判断を行っています。また、経営幹部に対し定期的に、海外拠点や事業本部の業績報告を行い、最新の状況を分析することによりその都度必要なリスク対応を決定しております。 |
|
② 為替変動の影響について |
(リスク) 当社グループの連結売上高に占める海外売上高の割合は、2023年3月期68.6%、2024年3月期66.7%であります。当社グループは、海外で製造した製品を国内においても販売する等、製造された国以外の国においても当社グループ製品を販売しています。このため、当社グループの業績は為替変動の影響を受ける可能性があります。 |
(対応策) 当社グループは、為替予約及び最適地生産の拡充・強化等によるリスクヘッジを行っております。 |
|
③ 特定の事業・製品・顧客に対する依存について |
(リスク) 当社グループのデバイス事業の売上高は当社グループの売上高の半分程度を占めているため、関連製品に対する顧客の需要の減少、製品価格の下落、代替性若しくは競争力のある他社製品の出現又は新規企業の参入による競争の激化等により当社グループの業績は悪影響を受ける可能性があります。 また、当社グループのデバイス事業の一部の製品については、少数の特定顧客に対する売上依存度が高く、こうした重要な顧客向けの販売は、当社グループ製品の問題だけでなく、当該顧客の製品に係る需要の減少や仕様の変更、当該顧客の営業戦略の変更等を理由として落ち込む可能性があり、そのような場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
(対応策) 当社グループでは、従来のハードウエア事業の拡大による既存事業分野の維持・拡大に加え、より高付加価値となる新規サービス・ソリューションの立上げによるビジネスモデルの転換推進、グローバル事業拡大の加速、及びB2C・B2B市場の両面展開等により、競争優位を目指してまいります。 |
④ 戦略的提携・協業等について |
(リスク) 当社グループはこれまでにも、企業競争力強化と収益性向上及び各事業分野における新技術や新製品の開発強化のため、外部企業との間で戦略的提携・協業を推進してきましたが、かかる戦略的パートナーとの間における戦略上の問題やその他の事業上等の問題の発生及び目標変更等により、提携・協業関係を維持できなくなった場合や、提携・協業関係から十分な成果が得られない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
(対応策) 当社グループにおいては、戦略的提携・協業の重要性がますます高まっていくものと考えております。これらを成功に導くべく、戦略的提携・協業の実行段階においては、事前に事業戦略上の必要性、収益性や財務的な妥当性等を十分に検証し、経営戦略会議や取締役会での審議のうえで意思決定を行っております。 また、実行後においても、関係する各事業本部との緊密な連携のもと、提携や協業の進捗をモニタリングし、想定通りの成果が得られないことが見込まれる場合には、早期に経営陣にも報告することにより、それらが当社グループの業績および財政状態に与える影響を最小限に留める対策を講じることができるように取り組んでおります。 |
|
⑤ 親会社グループとの関係について |
(リスク) 親会社グループ(鴻海精密工業、及びその子会社・関連会社を含みます。)からの出資により、成長投資の実行、親会社グループの技術力・生産性・コスト力を活かした事業シナジーの追求が可能となりましたが、当社グループが親会社グループとの間の事業シナジーを想定通りに実現できる保証はありません。 親会社グループの戦略に変更が生じた場合や将来的に親会社グループとの間で何らかの競合関係が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。 当社グループの経営方針、事業展開等の重要事項の意思決定において、親会社グループからの影響を受け、当社グループの独立性・自律性が保たれない可能性があります。 |
(対応策) 当社グループは、親会社グループとの間で相互に独立性・自律性を十分に尊重しつつ、緊密な連携を行っており、親会社グループとの事業シナジーを最大限に活かした事業運営に取り組んでおります。当社グループでは、親会社グループとの間で当社グループの業務効率化や売上・利益の拡大等につながるシナジー創出が見込まれる領域を見極め、その領域においては、親会社グループとの連携のもとで、想定されるシナジーを適切に検証しその実現に向けて取り組んでおります。 親会社グループでは電子機器受託生産サービスを中心とした事業展開を行っており、当社グループの電気通信機器・電気機器及び電子応用機器全般の製造・販売事業においては、「シャープ」等のブランドビジネスを行っていることから、親会社グループ内において当社グループの当該事業に影響を与える競合は生じていないものと考えております。 当社は、親会社グループとの間で相互に独立性・自律性を十分に尊重しつつ、綿密な連携を保ちながら成長・発展、業績の向上に努めております。親会社グループと綿密に連携して当社業務の効率化や売上・利益の拡大等を図ることは、非支配株主の利益につながるものと認識しております。 |
⑥ 調達先との取引について |
(リスク) 当社グループは、多くの取引先から資材の調達やサービスなどの提供を受けておりますが、需要の低迷や価格の大幅な下落等による取引先の業績の悪化、突発的なM&Aの発生、自然災害や事故の発生、また、米中対立やウクライナ情勢などの世界情勢、労務費、原材料やエネルギー価格の上昇による影響及びサプライチェーンにおける「紛争鉱物問題」をはじめとする人権・環境問題等や法的規制の影響、さらに、一部の部材等において供給業者が限られていること等により、調達先から部材等が十分に供給されないことが考えられます。 そのような場合には、代替調達先との間で現在の取引条件よりも不利な条件での取引を余儀なくされる可能性があり、また代替する調達先を適時に見いだせない可能性があります。これらにより、当社グループ製品のコスト増加、顧客への納期の遅延等が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
(対応策) 調達先については、十分な信用調査のうえ取引を行っています。また、サプライチェーンにおけるリスク対応のため、サプライチェーンCSR管理システムを導入し、国内・海外生産拠点のサプライヤーの評価を定期的に実施しており、教育徹底や指導等を継続して行っています。さらに、部材等の安定確保及び調達価格の適正化のため、部材の長期枠取りなどサプライヤーとのパートナーシップを強化するとともに、複数社購買を推進しております。 |
⑦ 財務状態に及ぼす影響について |
(リスク) 当社グループは、事業資金を銀行等の金融機関からの借入等により調達しており、総資産に対する借入金の割合は、当連結会計年度末では36.1%となっております。当社グループは、借入金等の返済のため、キャッシュ・フローの使途に制限を受け、また、金利水準が上昇した場合に費用の増加を招く可能性があります。既存債務のリファイナンスも含め、必要な資金を必要な時期に適当と考える条件で調達できない等、資金調達が制約されるとともに、資金調達コストが増加する可能性があることから、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。 当社グループが複数の金融機関との間で締結している借入金に係る契約には財務制限条項が定められているものもあり、今後、当社グループの連結純資産が財務制限条項に定める水準を下回ることとなった場合、又は連結の営業利益及び親会社株主に帰属する当期純利益が一定の水準を下回った際に当社が誠実に協議しなかったような場合、さらには、連結経常利益を一定の水準に保てなかった場合や、当社ないし連結子会社が債務超過となった場合等、借入先金融機関の請求により、当該借入金について期限の利益を喪失する可能性があります。 こうした当社グループの借入金等への依存及びこれに関連した信用格付けの低下、又は当社グループの財政状態の悪化は、財務状態の強固な競業他社との競争において不利に働く可能性があり、また、借入先又は取引先との契約関係上の問題を生じさせる可能性もあります。 |
(対応策) ㈱みずほ銀行、㈱三菱UFJ銀行は、当社の主たる金融機関であり、必要に応じて両行に対して財政状態の改善策等に関する相談も行っております。また、その他の借入金に係る契約を締結している金融機関とも同様に経営状況につき情報の共有を図っております。必要に応じて都度対応を協議できる体制を構築しており、取引金融機関との良好な関係を保ち、借入金の維持・継続を図っております。 なお、安定した資金調達のため、当社グループの主要な借入契約である当社のシンジケートローン契約は、2026年4月までの長期借入契約となっており、主力2行との間で借入総額200,000百万円のコミットメントライン契約も締結しております。 |
(継続企業の前提に関する重要事象等) PC・タブレット向け中小型液晶の需要回復の遅れなどディスプレイデバイスの不振により、当連結会計年度において減損損失122,332百万円などを計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は149,980百万円となり、連結純資産は157,424百万円(前期比△29.2%)まで減少しました。また、当社グループの連結純資産及び連結経常利益が一定水準を下回り、当連結会計年度末において当社及び一部の連結子会社が債務超過になったことは、借入契約の財務制限条項に抵触いたしましたが、借入先金融機関からは、期限の利益喪失の請求は行わない旨の承諾を得られており、従来通り良好な取引関係を継続できる見通しです。 また、事業面においては、赤字の要因となった大型ディスプレイ事業(堺ディスプレイプロダクト㈱)の生産停止や中小型ディスプレイ事業の生産能力縮小及び人員適正化などの構造改革を断行するとともに、ブランド事業における特長商品/新規カテゴリー商材の創出、海外事業の強化など収益力向上に引き続き取り組んでまいります。 減損損失は資金流出を伴う損失ではないこと、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを足し合わせたフリー・キャッシュ・フローは135,371百万円のプラスを確保できていることから、当面の運転資金及び投資資金において、資金繰りに重要な懸念はないと判断しております。したがって、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象又は状況は存在するものの、重要な不確実性は認められないことから「継続企業の前提に関する注記」には該当しておりません。 |
⑧ 技術革新について |
(リスク) 当社グループの事業領域における急速な技術の進化、変化への適切な対応は、当社グループの製品・サービスの競争力を向上させる反面、以下の項目等への対応が不十分な場合には、成長性や業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。 ・技術の進化や盛衰及びその社会的意義の予測と対応 ・研究開発における選択と集中、適切な資源の投下 ・新領域に対する技術力強化 ・社外と連携した研究開発の加速 加えて、国際的な安全保障の観点から先端技術の輸出管理を強化する動きがあり、対象となる技術の付加価値が一定以上含まれた製品の輸出制限により、事業に間接的な影響を与える可能性があります。 |
(対応策) 当社グループにおける研究や開発は、単なる技術水準の向上に留まらず、社会の急激な変化に伴う課題の解決に向けた技術創出に取り組んでおり、特にエッジAI技術の応用展開を核に、カーボンニュートラル、インダストリーDX、デジタルヘルスケア等の成長分野に注力しています。また、必要な技術をいち早く社会実装していくため、これまで構築してきた事業基盤を有効に活用し新たなサービスやソリューションの創出を進めるとともに、積極的な社外連携により技術力の強化・開発加速を進めています。こうした取り組みを通じ、社会変化及び技術革新に伴うリスクを軽減させ、技術進化により持続的に成長し続けるブランド企業を目指してまいります。 事業活動における輸出入管理での法令遵守に加え、世界的なインフラ・防衛・セキュリティ等の社会基盤に係る新興技術の管理強化の動きの中で、研究開発においても各国・地域での法令、規制状況に対応した輸出入管理を推進しております。 |
⑨ 知的財産権について |
(リスク) 当社グループは、独自開発した技術等について、国内外で知的財産権を取得することにより、若しくは他社と契約を締結することにより、その保護に努めております。しかしながら、当社グループの特許出願等に対して権利が付与されない場合や、第三者からの無効請求等により、十分な権利保護が受けられない可能性があります。 また、当社グループが第三者から知的財産権の侵害を主張され、その解決のために多額の費用を費やす可能性や、その主張が認められた場合に多額の対価の支払いや当該技術の使用差し止めなどの損害が発生する可能性があります。 さらに、当社グループが保有する知的財産権を第三者が不正に使用する等、当社グループが保有する知的財産権が競争上の優位性をもたらさない、又はその知的財産権を有効に活用できない可能性があります。 以上のような知的財産権に関する問題が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
(対応策) 当社グループでは、知的財産権は企業の重要な財産であるとの認識のもと、積極的に知的財産の創出に努めており、知的財産権の出願・権利化の責任部門であるシャープIPインフィニティ㈱を中心に強い権利の取得に取り組んでいます。 また、当社グループでは、自社製品発売前に第三者の知的財産権のチェックを徹底して実施することで、知的財産権のクリアランス状況を確認しているとともに、クリアランスプロセスの標準化によるクリアランス確度の向上にも取り組んでおり、第三者の知的財産権を侵害するリスクに対する対策をとっています。 さらに、当社グループでは、知的財産権を事業戦略・研究開発戦略と連動させながら最大限に活用するとともに、自社の知的財産権を保護し、第三者の知的財産権を尊重する姿勢を堅持しています。不当な権利侵害等に対しては話し合いで解決することを基本としながらも、当社グループの知的財産権を尊重していただけない場合は、裁判所など第三者の判断を仰ぐことも辞さない毅然とした姿勢を貫く方針をとっています。 |
⑩ 製造物責任について |
(リスク) 当社グループの製品には、消費者向けのものが多く、また、革新的な技術を利用したものも含まれており、これらの製品に欠陥等が存した場合には製造物責任その他の責任を負う可能性があります。 予期せぬ事情による大規模なリコールや訴訟の発生が、ブランドイメージの低下や、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
(対応策) 当社グループでは、製品の安全性確保のため、各国の公的安全基準の遵守にとどまらず、リスクアセスメントの考えと独自の安全基準を組み合わせ安全性向上に取り組んでいます。この独自基準では、想定外の不具合が生じた場合にも安全を確保するため、特に難燃構造や異常動作試験等に関して基準を定めており、より高い安全レベルをめざし、都度改定し、社内関係者への研修も行い、設計部門、品質部門へ安全基準の理解と浸透を図っています。不具合発生時に迅速かつ適切に緊急対応が取れるよう安全確保推進体制を構築しています。万一、製品の欠陥等が発生した場合のメーカー責任を果たすために、製造物責任に基づく賠償に備え保険に加入しております。 |
⑪ 有能な人材確保における競争について |
(リスク) 技術及びマネジメント分野における優秀な人材が確保できない場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
(対応策) 技術及びマネジメント分野における優秀な人材の確保のため、以下の施策を行っています。 事業方針に沿った新たな人材獲得の為に新卒採用を推進しています。また、新規ビジネスを担えるコア人材を確保するためにキャリア採用を推進しています。 ビジネスを行う上で基本的な知識や専門性について、個々人が主体的に学べる教育・研修制度を設け、事業に精通したプロフェッショナル人材の育成を図っています。 多様な人材が安心して働ける基盤として、育児・介護・治療と仕事の両立を支援する各種制度を整備する等、従業員のワーク・ライフ・バランスに配慮した取り組みを推進しています。 |
⑫ 気候変動の影響について |
(リスク) 温室効果ガス排出規制の強化や炭素税導入に伴うエネルギーコストの増加、温室効果ガス削減施策の強化等により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。また、気候変動による台風の大型化や降水量の増加がもたらす災害は、当社の生産拠点の稼働停止や部品供給途絶等を引き起こす可能性があります。 |
(対応策) 既存の規制や基準の遵守を徹底するとともに、常に法規制動向の把握に努め、政策立案の機会などにも参画しています。また、生産の効率化や省エネルギー化を進めることで、コスト負担の軽減や最小化を図っています。さらに、自然災害などで生産拠点や従業員などが被災した場合に備えて事業継続計画を策定し、定期的な見直しや訓練によって組織の事業継続能力の維持・改善を図っています。 |
上記リスクのほかにも、多数の販売先との取引リスク、設備投資リスク、法的規制リスク、大規模自然災害リスク等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼすリスクは様々なものが想定され、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。
(リスク管理体制)
当社グループでは、リスクマネジメントを「事業を継続的に発展させステークホルダーの期待に沿うことで社会的責任を果たす重要な活動の一つ」と位置付けて取り組んでいます。具体的には、リスクマネジメントの基本的なルールとして「ビジネスリスクマネジメント規程」を制定し、全社的なリスク管理体制を構築したうえで、経営への影響が特に大きいリスクを「特定リスク」として選定・管理しています。
経営環境・市場の変化に対応するため、すべての特定リスクについて、年度ごとに特定リスクの追加・変更を検討したうえで追加・変更後の特定リスクの評価を見直しています。全社を横断的に管理する機能部門は、自らの事業領域における管理を担当する事業部門と連携し、リスクの最小化・適正化や、未然防止に必要な施策等を実施しています。また、重大なリスク事案が発生した場合の対応策として、当該事案が発生した部門からリスクマネジメント事務局である内部統制部および経営幹部へ事案内容を報告し、関係部門と連携して当該事案への対応を行い、必要に応じて全社的な改善策を検討し再発防止に繋げることとしています。
(1) 経営成績等の状況及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は、次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
(経営成績)
当連結会計年度における世界経済は、これまで経済活動を抑制していたコロナ禍は収束したものの、ウクライナ情勢や中東地域をめぐる情勢などの地政学問題、エネルギーコストの高止まりや根強いインフレなど、厳しい状況が続きました。
こうした中、当社グループは、前連結会計年度に大幅な赤字を計上するに至ったことから、当連結会計年度は赤字事業の抜本的な見直しを行うとともに、高付加価値商材/サービスの展開や新規商材の創出、海外事業の強化に取り組むなど、通期での黒字化に取り組みました。
しかしながら、中小型ディスプレイの需要が急激に悪化したことにより、非常に厳しい状況となりました。また、巣ごもり需要の反動により、個人消費が旅行や外食へシフトし、家電などの需要が低調に推移したほか、円安により、海外工場で生産した商品を国内で輸入販売するブランド事業が影響を受けました。
当連結会計年度の業績は、スマートオフィスの売上が伸長したものの、スマートライフ&エナジー、ユニバーサルネットワーク、ディスプレイデバイス、エレクトロニックデバイスの4セグメントの売上が減少し、売上高が2,321,921百万円(前年度比91.1%)となりました。
営業損益は、20,343百万円の営業損失(前年度は25,719百万円の営業損失)となり、赤字幅は縮小しました。ディスプレイデバイスが中小型ディスプレイ需要の急激な悪化により大幅に赤字が拡大したほか、スマートライフ&エナジー、エレクトロニックデバイスが減益となりましたが、スマートオフィス、ユニバーサルネットワークが大幅な増益となりました。
経常損益は、7,084百万円の経常損失(前年度は30,487百万円の経常損失)となりました。
親会社株主に帰属する当期純損益は、149,980百万円の親会社株主に帰属する当期純損失(前年度は260,840百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
営業外収益として為替差益13,365百万円や持分法による投資利益8,359百万円を計上したほか、堺ディスプレイプロダクト㈱の持分法適用会社である超視界顕示技術有限公司の持分比率が減少したことに伴い、特別利益として持分変動利益4,203百万円及び債務取崩益4,863百万円を計上しましたが、特別損失としてディスプレイデバイスに関連する減損損失122,332百万円や、事業構造改革費用11,777百万円を計上したことなどによるものです。
(セグメント業績)
セグメントの業績は、概ね次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しております。以下の前連結会計年度との比較については、前連結会計年度の数値を変更後の区分に組替えた数値で比較しております。報告セグメントの変更については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」に詳細を記載しております。
<ブランド事業>
①スマートライフ&エナジー
売上高は441,315百万円(前年度比 92.6%)となりました。白物家電事業は減収となりました。エアコンがインドネシア新工場の立上げ効果により海外で売上を伸ばしたことから増収となりましたが、調理家電や掃除機、洗濯機などが、市況の低迷もあり、減収となりました。エネルギーソリューション事業は減収となりました。国内の住宅向けが需要を着実に取り込み伸長したものの、EPC事業が市況の影響を受けて減収となりました。
セグメント利益は27,373百万円(前年度比 93.2%)となりました。白物家電事業、エネルギーソリューション事業とも減益となりました。コストダウンや経費削減に取り組むとともに、高付加価値化を進めましたが、減収となったことや円安の影響が大きかったことなどによるものです。
②スマートオフィス
売上高は582,003百万円(前年度比 103.6%)となりました。ビジネスソリューション事業は増収となりました。インフォメーションディスプレイが流通在庫の抑制に取り組んだことなどから減収となりましたが、MFP事業やオフィスソリューション事業が、オフィス需要の回復もあり、欧米を中心に大きく伸長しました。PC事業も増収となりました。市況が低迷しましたが、プレミアムモデルの販売が好調で、国内の法人向け・官公庁向けのシェアが拡大しました。
セグメント利益は29,674百万円(前年度比 204.3%)となりました。ビジネスソリューション事業、PC事業とも増益となりました。これは、構造改革の効果が着実に出たことに加え、PC事業やオフィスソリューション事業で高付加価値化が進んだこと、MFP事業やオフィスソリューション事業が増収となったことなどによるものです。
③ユニバーサルネットワーク
売上高は311,891百万円(前年度比 93.3%)となりました。テレビ事業は減収となりました。高付加価値モデルの販売が進展したものの、国内で市況低迷の影響を受けたことや、アジアで価格競争の影響を受けたこと、中国で市況影響のあるなか、採算を重視した絞り込みを実施したことから、減収となりました。通信事業は減収となりました。国内市況が低迷した影響を受けました。
セグメント利益は8,880百万円(前年度は7,807百万円のセグメント損失)となりました。テレビ事業、通信事業とも増益となりました。減収となったものの、構造改革の効果が出たことに加え、高付加価値化が進展したこと、通信事業で一過性の収益を計上したことなどによるものです。
<デバイス事業>
④ディスプレイデバイス
売上高は614,950百万円(前年度比 80.9%)となりました。大型ディスプレイは需要が改善したことから増収となりました。一方、中小型ディスプレイは、車載向けパネルの販売は伸長したものの、市況回復の遅れなどにより、スマートフォン向けやPC・タブレット向けの販売が減少し、減収となりました。
セグメント損失は83,290百万円(前年度は66,482百万円のセグメント損失)となりました。大型ディスプレイ事業の収益が改善したものの、減収となった中小型ディスプレイ事業が減益となったことなどによるものです。
⑤エレクトロニックデバイス
売上高は416,981百万円(前年度比 87.7%)となりました。一部のデバイスで顧客需要が変動した影響があったことや、LCDドライバがディスプレイ需要の低迷により減少したことなどから、減収となりました。
セグメント利益は13,583百万円(前年度比 91.8%)となりました。経費削減に取り組んだものの、販売が減少したことなどによるものです。
生産、受注及び販売の実績は以下のとおりです。
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
スマートライフ&エナジー |
429,188 |
△9.6 |
スマートオフィス |
571,441 |
+4.0 |
ユニバーサルネットワーク |
304,824 |
△5.5 |
ディスプレイデバイス |
572,083 |
△21.1 |
エレクトロニックデバイス |
388,826 |
△13.3 |
合計 |
2,266,363 |
△10.1 |
(注)1 金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記の金額には、外注製品仕入高等を含んでおります。
3 組織変更に伴い、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しております。
b.受注実績
当社グループは原則として見込生産を行っております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
スマートライフ&エナジー |
440,198 |
△7.3 |
スマートオフィス |
580,047 |
+4.3 |
ユニバーサルネットワーク |
311,485 |
△6.7 |
ディスプレイデバイス |
595,293 |
△19.1 |
エレクトロニックデバイス |
394,895 |
△11.6 |
合計 |
2,321,921 |
△8.9 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度におけるGeneral Interface Solution Limitedに対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
APPLE INC. |
509,959 |
20.0 |
430,294 |
18.5 |
General Interface Solution Limited |
315,668 |
12.4 |
- |
- |
(財政状態)
当連結会計年度末の財政状態については、資産合計は、棚卸資産の減少、固定資産の減損などにより、前連結会計年度末に比べ182,928百万円減少の1,590,032百万円となりました。負債合計は、借入金の返済などにより、前連結会計年度末に比べ117,990百万円減少の1,432,607百万円となりました。また、純資産合計は、為替換算調整勘定が円安影響により増加した一方で、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことなどにより、前連結会計年度末に比べ64,937百万円減少し、157,424百万円となりました。
(棚卸資産)
当連結会計年度末の棚卸資産残高は269,584百万円、月商比で1.39ヶ月となりました。今後とも状況の変化を注視し、適正な在庫の管理に努めてまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ12,515百万円増加し、219,128百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(単位:百万円) |
|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
増減 |
営業活動によるキャッシュ・フロー |
14,746 |
124,495 |
109,749 |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△40,967 |
10,875 |
51,843 |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△18,483 |
△149,668 |
△131,184 |
現金及び現金同等物の期末残高 |
206,612 |
219,128 |
12,515 |
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当社グループは当連結会計年度において税金等調整前当期純損失137,563百万円(前連結会計年度は239,043百万円の損失)を計上いたしましたが、資金の支出を伴わない減損損失122,332百万円(前連結会計年度は220,553百万円)の計上などが主因であり、仕入債務の増減による資金の増加41,628百万円や、売上債権及び契約資産の増減による資金の増加15,243百万円などもあったことから、当連結会計年度における営業活動による資金の収入は124,495百万円となりました(前連結会計年度に比べ109,749百万円増加)。
(投資活動によるキャッシュ・フロー及び財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の収入は10,875百万円(前連結会計年度は40,967百万円の支出)、財務活動による資金の支出は149,668百万円(前連結会計年度に比べ131,184百万円増加)となりました。営業活動や定期預金の払戻などによる資金で長期借入金の返済を行い、有利子負債を削減したことなどによるものです。
b. 資本の財源及び資金の流動性についての分析
(財務戦略の基本的な考え方)
当社グループが今後も持続的に成長していくためには、より強固な財務基盤を構築することが不可欠であり、現在、「運転資金の圧縮」により営業キャッシュ・フローの最大化を図るとともに、安定した収益が見込める「ブランド事業への投資拡大」、「デバイス事業におけるアセットライト化」など、投資効率の向上に向けた取り組みを加速しています。
このような取り組みを通じて、毎期、安定的にフリー・キャッシュ・フローを創出し、有利子負債の削減など、財務体質の改善を進めていきます。また、将来の社債市場への復帰に道筋をつけるなど、安定的な資金調達に向けた取り組みを進めてまいります。
(資金のキャッシュ・フロー及び流動性の状況)
2023年度においては、中小型ディスプレイの需要が急激に悪化したことにより厳しい事業環境となりましたが、運転資金の圧縮に取り組んだこと等により、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フロー+投資活動によるキャッシュ・フロー)は、135,371百万円の収入となりました。今後、在庫管理の適正化等により運転資金の圧縮に努め、手元流動性を確保しつつ、有利子負債の削減等財務体質の改善を図ってまいります。
(資金調達)
当社グループは、資金の支出効果の見極めを十分行いながら、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉の安定的確保を図る趣旨の下、短期運転資金を自己資金及び短期借入で、設備投資や長期運転資金の調達については長期借入で賄うことを基本原則としております。総資産に対する借入金の割合は当連結会計年度末現在36.1%となっており、このうち当該借入金に対する短期借入金の占める割合は20.2%となりました。
主要な取引先金融機関とは良好な関係を維持しており、流動性確保のため、200,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。
安定的な外部資金の調達は、重要な経営課題と認識しており、財務内容の改善、投資適格への格付向上を図ってまいります。
格付の状況
(提出日現在) |
||
格付機関 |
長期格付 |
短期格付 |
S&P Global |
B- |
B |
格付投資情報センター |
B- |
b |
日本格付研究所 |
BB- |
- |
(2) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成にあたり必要となる見積りについては、過去の実績や第三者による評価等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性のため、実際の結果は見積りと異なる場合があります。
当社の連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(1) 重要な子会社の譲渡
当社は、2023年11月14日に連結子会社であるカンタツ㈱を㈱永輝商事に譲渡することを決定しました。同日、株式譲渡契約を締結し、2023年11月30日に譲渡を完了しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
(2) その他の契約
相手先 |
国名 又は 地域 |
契約内容 |
㈱みずほ銀行 ㈱三菱UFJ銀行 |
日本 日本 |
2023年8月、㈱みずほ銀行及び㈱三菱UFJ銀行との間で、コミットメントライン契約を締結(更改)いたしました。借入可能期間を1年延長するものであります。 |
(注)上記は当社との契約であります。
当社グループは、独自技術の開発を経営理念に掲げ、製品はもとより新規デバイスや新材料開発に至るまで、積極的な研究開発活動を行っております。
研究開発体制としては、基礎・応用研究開発を担う研究開発本部、事業本部や関係会社の傘下にある目的別開発センター(開発部門)、具体的な製品設計を担当する事業部技術部を設置しております。
全社方針である「ESGに重点を置いた経営」の実践に向けて、One Sharpの密接な連携・協力関係によりカーボンニュートラルへの貢献に向けた取り組みの強化や、生活環境を最適化する成長分野における新たな事業展開の加速、特に技術革新が進むAI技術の更なる応用展開を核に、AIoT家電の進化やIndustry DXソリューションの拡大等、世の中を変える革新的なサービス/ソリューションの創出に取り組んでおります。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
なお、セグメントごとの主な研究成果は、次のとおりであります。
(1) スマートライフ&エナジー
2027年度省エネ目標新基準値の達成に加え、業界初、太陽光発電システムと連携し、AIが予測した余剰電力量に応じ賢く制御する<プラズマクラスターエアコンXシリーズ>を発売、当社独自のハイブリッド乾燥技術と業界最高水準の省エネ性能、低騒音を実現した<プラズマクラスタードラム式洗濯乾燥機>は、2023年度省エネ大賞を受賞しました。また、当社独自の非接触ヘルスケアセンシング技術を活用し、顔認証と同時に「血管情報」「心拍情報」「温度」の一括測定ができる法人向け見守り/運動管理ソリューション<i-wellebe>を提供開始するなど、クオリティ・オブ・ライフ向上に貢献しています。生物の優れた身体構造を応用した独自技術ネイチャーテクノロジーの研究開発から生まれたヒーリングファン<はねやすめ>は、展示会やショールームなどで注目を集めました。
太陽電池分野において、2024年1月、シャープ製<薄膜化合物太陽電池>を搭載したJAXAの小型月着陸実証機「SLIM」が月面への高精度着陸に成功、移動体用<化合物・シリコン積層型太陽電池モジュール>は、世界最高の変換効率33.66%を達成しました。太陽光で発電した電気を有効活用する住宅用エネルギーソリューション<Eeeコネクト>システムの提供を開始、当社独自のAI制御によりさまざまな家電・住設機器で発電した電気を賢く使う「Zero Energy Home」の実現を目指します。
(2) スマートオフィス
高性能タッチパネルによる快適な書き心地を実現し、セキュリティ対策と省エネ性能も追求した4Kタッチディスプレイ<BIG PAD>のフラッグシップモデルを発売しました。また、多彩なインターフェースの搭載により、導入環境に適した検査システムを柔軟に構築できる<画像センサコントローラ>、2023年12月からのアルコール検知器使用義務化に伴い、AI顔認証、検知器管理、免許読み取りなどの機能を大幅に強化したアルコールチェック管理サービス<スリーゼロ>、業界初となる固定カメラ・スマホカメラをハイブリッドで利用できるメーターのAI読取遠隔監視サービス<WIZIoT>を提供開始し、工場設備の遠隔監視サービス市場に本格参入しました。さらに、倉庫の収納力拡大とピッキング作業の効率化を実現した倉庫向け<ロボットストレージシステム>、大規模倉庫における量子アニーリング※を応用した<自動搬送ロボットの多台数同時制御>に関する研究を開始するなど、深刻化する物流業界の課題解決に資する新たな提案を行いました。
Dynabook㈱においては、独自技術「エンパワーテクノロジー」適用により快適なエッジAI処理を実現する高性能モバイルノートPC<dynabook R9>を発売しました。また、XRグラスを活用しXR空間での可視化や、生成AI技術を組み合わせビジュアル化する新たなソリューションを提案、リアルとバーチャルを融合した新しい体験の創出を加速してまいります。
※ 量子コンピューティング技術により、膨大な選択肢から最適解を選び出す「組み合わせ最適化問題」を汎用コンピュータと比較して
超高速で処理可能な計算技術
(3) ユニバーサルネットワーク
スマートフォンでは、ライカカメラ社監修のカメラの表現力がさらに進化し、自然な色合いに補正する14chスペクトラルセンサーを新搭載したスマートフォンのフラッグシップモデル<AQUOS R8 Pro>、量子ドット有機EL(QD-OLED)パネルを新たに採用し、明暗豊かな映像と迫力の立体音響により臨場感を高める4K有機ELテレビ<AQUOS QD-OLED><AQUOS OLED>を発売、トヨタ自動車の新型車向けに各種設備を後部座席から操作することができる<リヤマルチオペレーションパネル>を製品化しました。
通信技術分野では、屋内外の様々な場所に高速・大容量の無線通信環境を構築できる<ローカル5Gシステム>を開発、加えて災害現場などを想定し、システム機器一式を防水キャリーバックに収納した可搬型ローカル5Gシステム<Instant 5G Network>を発表しました。また、産学連携による研究開発において、5Gの機能拡張・性能改善を目的とした5G-Advancedの国際標準仕様の策定に貢献しました。
当社は世界50か国以上で合計6,000件以上の通信規格特許を保有しており、これまで多数の通信機器および自動車業界のリーディングカンパニーと無線通信規格特許のライセンス契約を締結しております。
(4) ディスプレイデバイス
ディスプレイ液晶(LCD)技術を軸に、スマートフォン等のモバイル端末から、ノートPC、車載用ディスプレイモニター、VR、テレビ向けなど用途多様なディスプレイにおいて、表示性能の向上や省電力化、タッチ機能などの付加価値向上となる基幹技術を開発しております。
また、電子ペーパー分野の最大手であるE Ink Holdings Inc.の協力のもと開発した、IGZOバックプレーン搭載のカラー電子ぺーパーディスプレイ<ePoster>、色素増感太陽電池と液晶ディスプレイ技術を融合した屋内光発電デバイス<LC-LH>など、環境配慮型商品の創出に貢献し、更なるアプリケーションの拡大を目指しています。
将来の自発光ディスプレイ技術としては、低消費電力、広色域、高輝度と低コストを高次元で両立することを目的とし、発光層に量子ドット材料(QD)を用いた自発光ディスプレイ<nano LED>の開発を推進しており、フォトリソグラフィーを始めとする液晶工場設備にて、CdフリーQD材料を用いたRGB 3色塗分けのパネル試作に成功しました。また、AIの活用とディスプレイ基盤技術を応用し、画像認識センサによりにおいを判別する<AI Olfactory Sensor(AIにおいセンサ)>を開発しました。
(5) エレクトロニックデバイス
カメラモジュール分野においては、XR向けとして一般的なカメラよりもすばやいピント合わせと映像酔いしにくい快適性を実現するPolymer Lensを用いた超高速オートフォーカスカメラモジュールやアイトラッキングなどのセンシング用途に活用可能な超小型カメラモジュール、車載向けとして液晶ディスプレイに搭載する運転者監視用カメラモジュールを開発しております。
電子デバイス分野では、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)より委託研究の採択を受け、2021年から<Beyond 5G向けIoTソリューション構築プラットフォーム>の研究開発を開始、Beyond 5Gの用途拡大・普及とともに国際競争力の獲得を目指し2025年まで継続して取り組んでまいります。
さらに、柔軟性のある通信アーキテクチャ実現のため、総務省より<Beyond 5G/6G時代に向けた柔軟性のある通信端末アーキテクチャのインドにおける導入可能性に関する調査研究>の委託調査に採択され、海外展開も視野に取り組んでまいります。
半導体レーザーにおいては、レーザーダイレクトイメージング加工用途に対応する<395nm 0.3W/380nm 0.2W>、レーザーマーキング用途へ対応する青色レーザー<430nm 6W/435nm 7W>、および、レーザー加工・レーザー照明向けに青色レーザー<450nm 5W>の量産を開始しました。レーザー加工・照明に関連する多様なニーズへ対応するため、低出力から高出力化まで幅広いラインナップの拡充に取り組んでおります。