第2【事業の状況】

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営ビジョン

 当社グループは社是である「信頼」を基に、グローバル企業として世界中の人々に信頼される企業グループであり続けたいと考えています。この「信頼」を合言葉とし、「人と人のつながり」を大切にする精神をもとに、社員全員の瞳が輝く企業を目指してまいります。

 

(2) 経営戦略等

 2019年11月の創業60周年を機に、当社初となる「10年長期経営計画」を策定しました。長期経営計画は、7つの基本戦略「OCEAN+2戦略」を掲げ、高い技術力と強い企業力によりお客様に必要とされ続けるリーディング企業を目指しています。

<10年長期経営計画>

「OCEAN+2戦略」の7つの基本戦略

One

キープロダクトのArkhシリーズを軸にIC内蔵などの一社供給

Cost

直材費の低減が可能なArkhシリーズによる低コスト域への挑戦

Element

コアテクノロジーである人工水晶の大型化/水晶ウエハの大判化と切断/研磨技術で唯一無二の競争優位性

Alliance

価値創造を加速させるオープンイノベーション/コラボレーションでの共創

Niche

ニッチ市場における安定的な残存者利益の創出

+1

これまで培った育成技術をベースにさまざまな結晶へのチャレンジ

+2

新しい要素技術とともに新たな価値を創造するデバイスの開発

 

 長期経営計画は3つのフェーズに分け、それぞれマイルストーンを設定しています。策定2年目となる2021年4月からスタートした第一中期経営計画「基盤整備フェーズ」が終了しました。第一中期経営計画を振り返りますと、新型コロナウイルスによる混乱があったものの、水晶デバイスの旺盛な需要に加え、品薄感に端を発する価格是正の効果も作用し、1年目には中期経営計画を前倒しする形で過去最高益を達成できました。その後、巣ごもり特需の一巡やエネルギーコストの上昇、半導体不足による稼働低下などが業績に影響を与え、2年目、3年目は減速する形となりました。一方、今後の水晶デバイスマーケットに目を向けますと、半導体の動きに牽引される形で拡大することに疑いの余地はありません。拡大するマーケットへの対応と「OCEAN+2戦略」による当社オリジナルの取り組みを合わせ、2027年3月期の最終年度に過去最高益(営業利益ベース)を目標とする「第二中期経営計画 基盤確立」を4月よりスタートさせました。また、東京証券取引所が公表した「資本コストや株価を意識した経営」についての要請も踏まえ、競争優位性により稼ぐ力を高めることをベースとした経営計画を実行し、企業価値向上を目指してまいります。現状の資本コストは8~10%と試算しており、2027年3月期の最終年にはROE:8%以上を目標とすることでPBR:1倍を達成してまいります。

<中期経営計画>

第一中期 2022-2024年3月期 基盤整備フェーズ

第二中期 2025-2027年3月期 基盤確立フェーズ

第三中期 2028-2030年3月期 成長発展フェーズ

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 今後の経済環境におきましては、各国のインフレに対する金融政策動向やその他地政学リスクなどが懸念され、依然として経済活動の安定化には時間を要すると思われます。当社グループを取り巻く環境としては、設備投資が低調であることから産業市場の動きは鈍化していますが、スマホや無線通信モジュールなどの通信市場やPC/周辺機器などの民生市場においては緩やかな回復傾向が継続しており、車載市場におきましてはADAS(先進運転支援システム)や電装化のさらなる進展により堅調に推移する見込みです。

 当社におきましては、世界最大となる6インチウエハ用人工水晶の量産化や当社オリジナル製品であるArkhシリーズ、モールドタイプ発振器のラインアップ拡充など第二中期経営計画に向けた「製品を変える」準備を粛々と進めてまいりました。Arkhシリーズにおいては当社オリジナルの生産方式により、単位面積当たりのアウトプット最大化を目指すとともに設備投資の抑制にも繋げてまいります。さらに、2024年8月には本社工場が竣工予定であり、次世代フルオート生産のパイロットラインを導入することで新たな価値を生み出す拠点として、当社における真のマザー工場を目指してまいります。加えて、執務エリアにおいてはDXへの取り組みを加速させ、AI活用などにより間接業務の生産性を向上させるなど、一人当たりアウトプットの最大化を目指してまいります。

 また、中国エリアへの偏りが業績変動リスクとなっていることからマーケットポートフォリオの見直しや価格競争力の高い製品への投資などにより、中国マーケットへの偏りを解消し業績変動リスクを抑えたいと考えています。長期的には、自動運転を含め無線通信が必要不可欠な「IoT」を中心にタイミングデバイスは増加するため、今後も「つながる社会」に必要不可欠なタイミングデバイスを安定して供給できる体制作りを構築してまいります。さらに、生産数量に比例し増加するCO2排出量の抑制から、回収/分離といったカーボンニュートラルに向けた新たな取り組みにチャレンジし、重要課題と考えている「安定供給」と「環境対応」の実現に努めます。そして、当社オリジナルの新たな価値を創造し、成長に繋げてまいります。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、収益力の強化、経営資源の有効利用、財務戦略による有利子負債の削減を進めるとともに、経営環境の変化に柔軟に対応できる経営基盤の確立と業績の向上に努めてまいります。また引き続きキャッシュ・フローを重視した経営を推進し、更なる財務体質の改善、バランスシートの健全化を目指していきます。2027年3月期にROE:8%以上、ROIC:4.5%以上を目標値としております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

 なお文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります

 

(1)気候変動に対する当社グループの取組み

 当社グループは気候変動がビジネス及び社会に及ぼす影響を理解し、TCFD(*)提言に賛同するとともに、気候変動に関する財務情報の開示と管理の向上に取り組み、温室効果ガスの排出削減目標の設定や、定期的な気候変動リスク評価と適切な管理を通じて、新たな価値創造に取り組んでおります。

(*) Task Force on Climate-related Financial Disclosures 「気候関連財務情報開示タスクフォース」の略称

 重要課題(マテリアリティ)である事業領域における「安定供給」と、環境領域における「環境対応」の両立を目指します。デバイスを構成する部品点数が少ない電子部品において、CO2排出抑制などの環境対応には製品設計と生産方式が重要であり、以下のように考えています。

・製品サイズを小さく/軽くする

・単位面積当たりアウトプット最大化

・一人当たりアウトプット最大化

・外部からの部品調達比率を抑える

 私たちはこれら理想的な生産方式と製品を中心とする当社オリジナルの取り組みにより、つながる社会に貢献できる企業として成長し続けます。

 

①ガバナンス

 当社グループは、取締役会が気候変動課題について方針・戦略の決定と監督を行っています。効率的な監督のため、取締役会TCFD委員会を設置し、代表取締役社長を委員長に、取締役、執行役員などで構成しています。

 TCFD委員会は年4回開催され、気候変動の取組みを監督し、取締役会に報告します。主な決議事項は以下のとおりです。

・気候変動対策の基本方針

・環境負荷削減と気候変動対策

・対策の進捗確認

・活動内容の開示

 

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 また、全社環境管理委員会も年4回開催し、気候関連リスクと機会について実効性評価と見直しを行っています。この体制のもと、当社グループでは気候関連リスクにおける移行リスクに着目し、CO2削減に対する取り組みを強化する目的で、「2030年 チャレンジ カーボンニュートラル "Scope1+2"」を気候変動に関連する共通方針として掲げています。

 

②戦略

 当社はTCFD提言に基づいたフレームワークを参考に、2030年時点の外部環境の変化と気候変動が当社に及ぼす影響を分析しています。リスクと機会の分析において、気候変動の緩和に向けた移行リスクについては、政策や市場の変化を考慮し、物理的リスクに関しては、気候変動による自然災害の頻度と影響を考慮しています。

 特定されたリスクと機会に対応するため、10年長期経営計画「OCEAN+2 戦略」に基づき、社会課題の解決に取り組みます。現時点では、影響が大きい要素について分析を行っていますが、今後は自社への財務的な影響についても引き続き分析を進める予定です。

気候変動に関連する主要なリスクと機会

気候関連リスク/機会

事業活動に与える影響

大真空グループの主な対応

移行リスク

政策/規制

▶カーボンプライシング

CO2排出規制の強化や排出権取引によるコスト増加

▶単位面積当たりアウトプット最大化

- ウエハ大判化によるチップ取れ数UP

- ウエハレベルパッケージ技術により

設備の設置面積最小化

- 生産性向上&CO2排出抑制

▶人工水晶の育成数短縮と育成炉の省エネ化により、エネルギー消費量を削減

▶燃料転換によるCO2排出抑制

ボイラー等の電気化転換

市場

▶顧客行動の変化

製品に対する省エネ、小型軽量化などの低炭素対応を顧客から求められる

▶小型/軽量製品によるCO2排出量削減

物理的リスク

急性

▶気候変動により台風・集中豪雨が増加し、事業場の浸水及び周辺道路の冠水など風水害が発生

▶BCP対応の一環として、複数の拠点で生産対応できる体制を整える

機会

製品及び

サービス

▶低排出量製品の売上伸長

▶低排出量デバイスArkhシリーズの開発

エネルギー源

▶小型/低消費電力を実現した製品によりCO2排出量を削減

▶小型/軽量の水晶デバイスの開発

▶低消費電力の水晶デバイスの開発

レジリエンス

▶サプライチェーンにおける風水害に対するレジリエンスの強化

▶外部調達比率を低減し、サプライチェーンの混乱に左右されないプロダクトを提案

▶樹脂モールド化

Arkhシリーズを内蔵することで、需要の増加に伴うパッケージ材料の供給懸念を解決

 

③リスク管理

 当社グループでは、リスク予防に重点をおいた全社リスクマネジメント体制を構築/推進しています。取締役及び執行役員から責任者を選任しており、事業の継続・安定的発展を確保するために気候関連リスクだけでなく、さまざまなリスクの識別/把握を行っています。リスクへの対応に関して、私たちはサステナブル企業として持続的に成長するために、大真空の強みを最大限に活かし、重要課題(マテリアリティ)である事業領域における「安定供給」と環境領域における「環境対応」を解決し、両立させていくことを目指します。

 

④目標と指標

 当社グループは地球環境との調和を常に意識した活動を通じ、新たな価値を生み出し続け、エレクトロニクス社会の発展とサステナブル社会の実現に貢献します。

1.2030年度目標/目標値

2030年 チャレンジ カーボンニュートラル "Scope1+2"

環境に配慮した製品を安定的に供給し続け、CO2排出削減に取り組みます。

2.2050年度目標/目標値

2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指します。

3.具体的な削減施策

i.環境負荷低減製品の開発

当社オリジナル製品Arkhシリーズの開発小型CO2回収モジュールの開発

ii.製造プロセスの見直し

水晶ウエハの大判化、次世代フルオート生産人工水晶の育成日数の短縮

iii.再生可能エネルギーの導入

環境価値電力の調達太陽光パネルの設置

iv.環境負荷の少ない先進設備の導入

産業用ヒートポンプの設置(燃料転換によるCO2排出抑制)

v.その他

省エネ活動

 

(2)人的資本経営に対する当社の取組み

 当社グループは、主たる取り組みとして、2024年度より新たな人事戦略を策定し、「所得向上」「やりがい」「余裕」を軸とした人財教育をスタートさせております。

 具体的な活動内容並びに指標、目標につきましては以下のとおりであります。

 

①戦略

■当社グループの人財の育成について

 人には様々な個性があり、それぞれ強みがあります。自己の強みとは何か、やりたいことは何か、それらを会社の中でどうやって活かすことができるのか。人的資本を最大化する為には、働きがいの向上が大切であると考えています。しかし、当然のことながら全員が全員得意分野の仕事をしているだけでは、組織としてやらなければならない仕事(Must)を達成できるわけではありません。社員の得意分野を組み合わせても埋まらないピースもあります。「得意な人がいないなら自分がやろう」、「今はできないけど、こんなこともできるようになりたい」、「この人にはこんなこともできるよう育成したい」。このように組織/チームのために行動できる誠実さや真摯さ「インテグリティ」の向上と、得意分野(Will、Can)を広げていく「チャレンジ」する風土づくりに注力しております。

 

■当社グループの環境整備について

 人的資本を最大化する為には、働きがいの向上とともに、安心して働ける環境や働きやすさが必要であり、様々な制度拡充や安全衛生等の取り組みによる環境改善を行っています。

 また、当社は、グローバル企業として、多様な人財がそれぞれの強みを活かし活躍するからこそ、強い企業になると考えています。その施策の一環として、女性の活躍推進を図るために女性が働きやすい職場作りに取り組んでいます。

 社員全員が安心/安全に働ける環境づくりに今後も取り組みます。

 

■具体的取り組み内容

(人財育成)

・管理職を4タイプに分類したタイプ別研修

 管理職の資質を底上げする教育として、管理職のタイプを4つに分類し、それぞれの特徴ごとに研修プログラムを計画しております。

 “実践/定着”をキーワードに、研修後に学び/気づいた知識を実践で活かせる独自のアウトプットを作成することで、習得向上を目指します。

・専門職のレベルを底上げする大真空学校

 当社独自での専門スキル育成のための専門コースを開設し、計画的な高度専門スキル人財の育成強化を2023年度より実施しております。

 まずは設備メンテナンス・営業技術の育成コースをスタートしておりますが、今後も育成内容の充実を図り、組織としてのレベル向上に繋げてまいります。

 

(働きがいの向上)

・主体的にチャレンジする風土づくり

 2023年度より、エンゲージメントサーベイを導入し、その結果(スコア)により、課題抽出⇒原因分析⇒改善活動に結び付けた取り組みを推進してまいります。中でも、「いきいき働いているかどうか」の指標を重要項目として位置づけ、管理者への教育やチーム力強化の取り組みによりスコアアップを図り、当社の経営ビジョンである「社員全員の瞳が輝く企業」を目指してまいります。

・評価制度の見直し、地域職の管理職登用制度の新設

 賞与の評価においては、従来成果重視の仕組みとなっておりますが、2024年度よりさらに適正な評価ができる仕組みに見直しを行っております。また、従来は総合職社員のみ対象であった管理職への登用について、地域職社員(転居を伴う転勤がない社員区分)も登用対象にすることで、チャレンジへのモチベーションを引き上げる取り組みを行っております。これらの施策を推進することで、女性管理職比率向上にもつながると考えております。

(働きやすさの向上)

・育児休業制度

 取得可能期間、分割取得等法律を上回る制度を整備し、また休業中の自己啓発については会社が全額費用負担(※従来は会社負担50%)する等、家庭と仕事の両立を支援しています。

 育児休業後の復帰率は2013年以降100%を達成しており、引き続き100%の維持を目指します。

 男性の育休実績も増加傾向で推移しており、引き続き取得促進を図ります。

・安全で衛生的な職場環境構築

 2023年度より、安全管理部を発足させ、「労災ゼロが当たり前の会社」になれるよう安全衛生の取り組みを強化しました。

 安全朝礼の実施、3S活動の強化、ヒヤリハット情報の収集・改善の取り組み等全社一丸となって安全衛生活動を推進しています。

 

■取り組み実績

(育児休業取得実績)

(単位:人)

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

男性

0

0

1

3

5

女性

3

4

5

4

6

3

4

6

7

11

 

(女性活躍推進)

 

 

管理職

職位者

男性

(人)

女性

(人)

(人)

女性比率

(%)

男性

(人)

女性

(人)

(人)

女性比率

(%)

2020年度

84

3

87

3.4

92

2

94

2.1

2021年度

94

3

97

3.1

95

4

99

4.0

2022年度

93

3

96

3.1

98

7

105

6.7

2023年度

95

4

99

4.0

96

8

104

7.7

 

②指標及び目標

 当社グループは、人的資本に関わる非財務指標として、以下を設定しております。

 

 

目標

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

女性管理職比率)

7.0

3.4

3.1

3.1

4.0

女性職位者比率

10.0

2.1

4.0

6.7

7.7

 

(注)連結グループ会社において、それぞれ要件や基準が異なることにより記載が困難であるため、単体の指標のみの開示としております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営成績の変動要因について

 当社グループは、水晶業界に属し音叉型水晶振動子、一般水晶振動子、水晶応用製品等、電子部品の重要パーツを生産しておりますが、顧客であるスマートフォン、パソコンや薄型TV等のデジタル家電、カーエレクトロニクス業界における競争の激化や市場環境の変動により価格や需要動向が業績の変動要因となり、その影響を受けることがあります。水晶業界の構造的な問題に対しては、10年長期経営計画を完遂させることが対策となります。また、品質管理には万全を期しておりますが、製造物責任による損害賠償が発生した場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。その対応については、当社グループが掲げる品質目標であるゼロディフェクトの実現に努めております。なお、当社グループは将来を見据え抜本的な経営改革を行い、コスト構造の変革を推進し、関係会社の再編など、グループ全体での業績向上活動を遂行していく過程におきまして、単年度の業績が少なからず変動する可能性がありますが、長期経営計画などにより将来の業績向上を示すことで理解いただけると考えます。

 

(2) 貸倒リスクについて

 当社グループでは、貸倒による損益の状況を最小限にとどめるために、与信管理を徹底する一方、金銭債権に対し貸倒引当金を充分に見積もっておりますが、市場環境の悪化等によりさらに貸倒が発生した際に損失による利益の影響が出てくる場合があります。取り組みとしてグループ全体で与信管理を徹底、また新規及び回収遅延顧客については信用調査を必ず行うなど顧客管理の強化に努めています。

 

(3) 為替変動の要因について

 当社グループは、アジア、アメリカ、ヨーロッパといった海外での事業が多く、連結売上高に占める海外売上高の割合は2024年3月期において87.2%となっております。また、海外販売や海外子会社からの仕入れに対して大半が米ドル取引となっており、事業上の取引やその決済時の収支において為替変動による影響を直接的に受けることはありませんが、決算上の外貨建資産・負債・収益・費用及び海外子会社における現地通貨を円貨に換算する割合が大きいために、為替相場の変動が連結決算において換算額に影響を与える可能性があります。対応として債権債務の差額減少、為替予約等によりリスクヘッジに努めております。

 

(4) 金利変動について

 当社グループの借入金残高は、2024年3月31日末現在で33,782百万円(総資産の37.1%)であり、今後の市場金利の動向によっては、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。ただし、有利子負債残高の大半は長期借入金等であり、そのほとんどは固定金利にて調達したものであります。また、財務体質強化目的により有利子負債残高の削減にも取り組んでおります。

 

(5) 株価の変動リスクについて

 当社グループは2024年3月31日末時点で、取引先や金融機関等の株式を中心に約2,918百万円の市場性のある株式を保有しており、これらの株価変動リスクを負っております。当社グループは、対象株式を取得することで得られる効果を定量的、定性的に測定し、当社の資金使途として適切かどうか検討した上で、毎年、取締役会において合理性を確認し、保有継続の可否及び株式数の見直しを実施しております。検証の結果、初期の保有目的を達成したものや保有効果が薄れたと判断されたものについては、売却等を検討いたします。

 

(6) 特定の原材料及び部品の外部業者への依存について

 当社グループは、多数の外部の取引先より原材料及び部品を購入しておりますが、製品の製造において使用するいくつかの部品・原材料につきましては、一部の取引先に依存しております。効率的に、かつ安いコストで供給を受け続けられるかどうかは、当社グループがコントロール出来ないものも含めて、多くの要因に影響を受けます。それらの要因の中には、取引先が継続的に原材料及び部品を確保できるかどうか、また、供給を受けるにあたって当社グループがその他の需要者に対してどれだけ競争力があるか等が含まれます。主要な取引先を失うことにより、当社グループの生産に影響し、コストを増加させる可能性があります。

 

 外部の取引先に対して事業継続計画(BCP)をより実績的・効果的にするためにアンケートの実施や事業説明会を開催し、継続して改善を進めると共にリスクを考慮した安定在庫の確保・複数社の認定・共通部品化を進め、リスク低減に努めております。

 

(7) 新製品の開発について

 当社グループは水晶振動子の小型化や高機能化の需要に対応するべく、積極的な研究開発を行っておりますが、その全てが今後順調に研究・開発が進み販売が出来るとは限らず、途中で開発を断念したり、新製品や新技術の商品化が遅れること等により市場の需要に対応できなくなる可能性があります。

 また、当社が開発しました新製品・新技術が、独自の知的財産としまして保護される保障はありません。

 なお、当社グループにおきまして、研究開発上様々な知的所有権を使用しており、それらは当社所有のものであるか、あるいは適法に使用承諾を受けたものであると認識しておりますが、当社の認識の範囲外で第三者の知的所有権を侵害する可能性があります。

 当社が、第三者より知的所有権に関する侵害訴訟等を提訴され、係争が生じた場合には当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 上記リスクを含め、当社グループにおいて業界及び市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合には、将来の成長と収益性を低下させ、業績及び財務状況等に影響をおよぼす可能性があります。それらの対応として、開発テーマに関しては市場動向を見ながら四半期ごとに見直し、優先度を決めて市場需要に合致した開発を行っております。また、市場要求に照らし合わせ中期経営計画を立案し開発テーマに基づき開発を行っております。知的所有権に関しては、開発初期段階で関連技術分野の知的財産権を調査し、第三者の知的財産権を侵害しないようにしております。また、その後も定期的に発行される第三者の特許公報の内容を、分野ごとに決められた担当者がチェックする仕組みを運用しており、必要に応じて設計変更やライセンス契約の検討を行っております。

 

(8) 環境問題について

 当社グループでは環境保全活動を重要な経営方針の一つとして掲げ、社会的責任という観点に立って活動し、これまで当社グループは重大な環境問題を発生させたことはありません。しかし、あらたな環境規制によっては対策費用等が発生する可能性があります。環境規制の変化点の情報収集に努め、早期かつ適切に対応いたします。

 

(9) 不測の事故、自然災害(BCP)、感染症等について

 当社グループは、地震や風水害等の自然災害や火災等の事故災害などの発生を想定し、安全対策や事業継続・早期復旧のための対策を講じておりますが、発生するリスクを全て回避するのは困難であり、当社グループの生産体制や事業活動に多大な影響を及ぼす可能性があります。またテロや戦争による社会的混乱の発生、その国における政情の悪化等により当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性があります。対応マニュアルの整備に努めるとともに、自然災害等に対応できる体制を強化してまいります。

 感染症の拡大によるパンデミック等が発生した場合、その影響を最小限に抑えるため、当社グループの事業拠点では安全衛生対策を徹底して行っております。しかしながら、感染拡大やそれを受けた各国における経済活動抑制の方針が当社製品に対する需要の大幅な減少や当社事業拠点を含むサプライチェーンに損害を生じさせた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 情報管理(情報セキュリティ)について

 当社グループでは信頼される企業であり続けるために、情報資産の保護を目的とした各種社内規程を定め、情報の適切な取り扱いに向けたルールやシステムの整備と改善に取り組んでいます。しかし、サイバー攻撃の手口は常に巧妙化しており、情報セキュリティは常に脅威にさらされています。巧妙化するサイバー攻撃に対し、最新のセキュリティ動向によるセキュリティマップを作成し、ツールによる対策強化と教育による社員のセキュリティに対する意識向上を継続的に取り組んでまいります。

 

(11) 競合の激化について

 当社グループが属する水晶業界は日系企業との競争に加え、中国/台湾など海外メーカーが台頭しコモディティ化が加速するなど、競争激化による価格変動が収益に影響を及ぼす可能性があります。これらの対応として「新たなマーケットの創造」と「特定マーケットへの特化」を推進し、高付加価値な差別化商品の投入や、低価格マーケットでも利益を確保できる新しい技術を使った製品を投入してまいります。また、今後の水晶デバイスの核となるフォトリソ技術に必要不可欠となるであろう大型ウェハを製造するため、人工水晶育成から加工までの前工程の技術をさらに進化させることで参入障壁を高めるとともにウェハの外部への販売も計画しております。

 

(12) 設備投資のリスクについて

 当社グループでは、事業の維持・成長等のために、継続的な設備投資を必要としていますが、需要予測に大きな変動が生じた場合や設備納期リードタイムの長期化など外部環境の変化等により、計画どおりの収益が得られない可能性があります。上記変化などあらゆる条件を考慮する高いマーケティング能力を備え、早期の経営判断等によりリスク軽減に努めてまいります。

 

(13) 人材(人財)確保について

 サステナブル経営を推進し継続的に発展させていくため、適切な人財確保が必要であると考えております。しかしながら、少子高齢化社会の進行などに伴い、人財の確保が困難となる場合や、人財の育成が順調に進まない場合、当社グループの業績及び財務状況等に影響を与える可能性があります。新卒、キャリア採用を積極的に推進することで若手・優秀人財の確保に努めております。また人財の定着化施策として賃金・評価制度、教育制度の見直しを図り、さらにエンゲージメントサーベイを導入し、会社と社員のつながりを強化することに努めております。

 

(14) コンプライアンスに関するリスクについて

 当社グループは、コンプライアンス経営の確立に努めるとともに全社員への研修など取り組み強化を進め、法規制を遵守しております。しかしながら、予期せぬ法令・諸規則の改正もしくは新設により、その遵守のための対策費用の発生や法規制違反による課徴金等の行政処分など、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。コンプライアンス体制の基礎として、企業理念及び行動基準並びにCSR行動規範を定め、周知徹底を図るとともに、当社グループ内で展開しております。また、全社員を対象としたコンプライアンス教育を定期的に実施し、社員のコンプライアンス意識の向上に努めております。企業経営に深く関わる法規制については、適宜モニタリングも行い、法令遵守に努めております。

 

(15) ITシステムのBCP対策について

 ハードウェアや人的ミスによる障害、サイバー攻撃などによるウイルス感染に加え、災害などによりITシステムに障害が発生した場合、システムダウンにより事業継続が困難になる可能性や、お客様に損害を与えることにより、賠償責任を負うリスクも発生いたします。当社グループではサーバーの定期的なバックアップ実施だけでなく、バックアップデータの遠隔地保管を実施しており、また、一部のサーバーに関しては堅牢なデータセンターでの運用も開始しており、情報資産の保護やBCPへの取り組みの一環として取り組んでおります。

 

(16) 労働安全衛生についてのリスク

 当社グループにおいては、高所作業、高温作業、重量物の運搬作業など災害の発生リスクが比較的高い作業を行う職場があります。当社グループでは、社員が災害を被ることなく安心して働ける職場環境の整備を進めておりますが、万が一生産設備等に関わる重大事故や労働災害が発生した場合には、事業活動が制約を受け、当社グループの業績などに影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループでは、社長を最高責任者とした全社労働安全衛生会議を設置し、その傘下に全社労働安全衛生連絡会、事業会社・事業場の安全衛生委員会を設置し、労働安全衛生管理に係る重要な方針や政策を審議・決定し、活動やモニタリングを実施しています。

 また、各種法令や当社の労働安全衛生方針に基づき、安全衛生管理規程を制定し、従業員の安全と衛生の確保、快適な職場環境の実現と労働災害、通勤災害、重大事故撲滅に向けて、安全衛生活動を展開しています。

 

(17) 資金調達環境の変化におけるリスクについて

 当社グループは、事業資金を銀行借入などで調達していますが、国際的な政情不安などの外的要因により金融市場が不安定になり、悪化した場合、資金調達が困難になったり、資金調達コストが増加する可能性があります。これにより、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対して、当社グループでは、自己資本比率の改善、効率化を図るなど財務健全性を向上させる取り組みを行うとともに、保有資産の見直しなどを含むキャッシュ・フロー創出力向上等に努めています。また、金融機関との間でコミットメントライン契約を締結しており、現金及び現金同等物の残高とあわせて十分な流動性を確保することで経営への影響の軽減を図っています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における世界経済は、インフレによる物価高騰や政策金利上昇などにより景気回復が鈍化傾向となりました。製造業を中心に設備投資は低迷しており、地政学リスクも依然として高く、先行き不透明な状況が継続しています。

 当社グループを取り巻く環境としては、産業分野は設備投資の低迷による調整が顕在化し、民生分野はPC向けを中心に回復基調にあるものの低調に推移しました。一方、通信分野は中国スマホ向けが回復傾向となりました。また、車載分野は半導体不足の解消により自動車の生産台数が回復し、堅調に推移しました。

 このような状況下におきまして、当社グループでは今後の成長を担うフォトリソ製品を中心とする生産設備の増強や基幹システムの刷新など引き続き成長に向けた投資を行いました。さらに、中国で開催された「electronica China 2023」に出展し、コアテクノロジーである人工水晶大型化/水晶ウエハ大判化の取り組みや、オリジナル製品である「Arkh(アーク)シリーズ」、「モールドタイプ水晶発振器」を紹介し、多方面から注目を集めました。

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ7,442百万円増加し、91,064百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ3,576百万円増加し、44,016百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ3,865百万円増加し、47,048百万円となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、売上高は39,343百万円(前年同期比2.4%増)、営業利益は2,135百万円(前年同期比49.3%減)、経常利益は3,192百万円(前年同期比37.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,876百万円(前年同期比41.5%減)となりました。

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
 日本は、売上高は7,781百万円(前年同期比4.3%減)、セグメント利益は116百万円(前年同期比95.8%減)となりました。

 北米は、売上高は2,405百万円(前年同期比37.0%増)、セグメント利益は16百万円(前年同期比632.7%増)となりました。

 欧州は、売上高は3,833百万円(前年同期比4.9%増)、セグメント利益は20百万円(前年同期比60.5%減)となりました。

 中国は、売上高は12,300百万円(前年同期比5.7%減)、セグメント損失は55百万円(前年同期はセグメント利益538百万円)となりました。

 台湾は、売上高は10,342百万円(前年同期比14.1%増)、セグメント利益は1,086百万円(前年同期比64.9%増)となりました。

 アジアは、売上高は2,680百万円(前年同期比3.5%減)、セグメント利益は493百万円(前年同期比123.5%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、税金等調整前当期純利益などがあったことにより、前連結会計年度末に比べ5,917百万円増加し、当連結会計年度末には24,355百万円となりました。
 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の営業活動の結果得られた資金は8,243百万円(前期比2,383百万円増加)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益4,123百万円などによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の投資活動の結果使用した資金は3,994百万円(前期比2,530百万円減少)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出4,498百万円などによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の財務活動の結果得られた資金は1,104百万円(前期比194百万円減少)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出10,085百万円、長期借入れによる収入12,880百万円などによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年 4月 1日

至 2024年 3月31日)

前年同期比(%)

日本(千円)

14,351,266

△13.0

中国(千円)

4,915,603

△11.5

台湾(千円)

9,713,281

23.2

アジア(千円)

8,411,713

8.2

合計(千円)

37,391,865

△0.9

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

日本

7,429,934

3.6

1,453,542

△19.2

北米

2,380,056

40.6

431,253

1.7

欧州

3,611,623

18.7

483,586

△23.6

中国

12,373,337

25.5

2,371,508

8.0

台湾

11,756,543

22.6

4,791,486

50.9

アジア

2,427,470

3.1

724,748

△18.0

合計

39,978,965

18.6

10,256,126

12.6

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年 4月 1日

至 2024年 3月31日)

前年同期比(%)

日本(千円)

7,781,320

△4.3

北米(千円)

2,405,202

37.0

欧州(千円)

3,833,725

4.9

中国(千円)

12,300,895

△5.7

台湾(千円)

10,342,263

14.1

アジア(千円)

2,680,269

△3.5

合計(千円)

39,343,676

2.4

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、下記のとおりです。

a.財政状態

(資産)

 当連結会計年度末における資産は91,064百万円であり、前連結会計年度末と比較して7,442百万円増加しております。これは現金及び預金の増加などによるものであります。

(負債)

 当連結会計年度末における負債は44,016百万円であり、前連結会計年度末と比較して3,576百万円増加しております。これは主に借入金の増加などによるものであります。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は47,048百万円であり、前連結会計年度末と比較して3,865百万円増加しております。これは主に利益剰余金及び為替換算調整勘定の増加などによるものであります。

 これらにより自己資本比率は0.4ポイント減少して、42.5%となりました。

 

b.経営成績

(売上高)

 産業分野は設備投資の低迷による調整が顕在化しましたが、民生分野はPC向けを中心に回復基調にあるものの低調に推移しました。一方、通信分野は中国スマホ向けが回復傾向となりました。また、車載分野は半導体不足の解消により自動車の生産台数が回復し、堅調に推移したことから、売上高は前連結会計年度に比べ2.4%増加の39,343百万円となりました。そのうち、国内売上高は5,045百万円、海外売上高は34,298百万円となりました。

 

(売上原価、販売費及び一般管理費)

 売上原価は、売上高が増加したことなどの影響により、前連結会計年度に比べ10.3%増加の29,554百万円となりました。

 販売費及び一般管理費は、給与の増加などにより前連結会計年度に比べ3.0%増加の7,653百万円となりました。

 

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 親会社株主に帰属する当期純利益は、為替差益1,295百万円を営業外収益に計上し、投資有価証券売却益988百万円を特別利益に計上したことなどにより1,876百万円(前年同期比41.5%減)となりました。

 

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、水晶製品事業における価格競争は引き続き厳しいものとなっており、当社グループが属する製品市場における市場価格についても顧客製品の価格動向によっては競争の激化に直面すると思われます。また、為替につきましても、為替相場の変動によっては業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

c.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 

(日本)

 日本国内におきましては、産業向けなどが前年を下回り、売上高は7,781百万円と前年同期と比べ353百万円(4.3%減)の減収となりました。また、減収に加え、価格変動や稼動低下などにより、セグメント利益(営業利益)は116百万円と前年同期と比べ2,664百万円(95.8%減)の減益となりました。

 

(北米)

 北米におきましては、車載、産業向けなどの販売が増加し、売上高は2,405百万円と前年同期と比べ649百万円(37.0%増)の増収となり、セグメント利益(営業利益)は16百万円と前年同期と比べ14百万円(632.7%増)の増益となりました。

 

(欧州)

 欧州におきましては、車載向けなどが前年を上回った結果、売上高は3,833百万円と前年同期と比べ179百万円(4.9%増)の増収となりましたが、人員増などにより固定費が増加し、セグメント利益(営業利益)は20百万円と前年同期と比べ31百万円(60.5%減)の減益となりました。

 

(中国)

 中国におきましては、民生、産業向けなどが前年を下回り、売上高は12,300百万円と前年同期と比べ741百万円(5.7%減)の減収となりました。また、減収に加え価格変動や稼動低下などにより、セグメント損失(営業損失)は55百万円と前年同期と比べ594百万円(前年同期はセグメント利益538百万円)の減益となりました。

 

(台湾)

 台湾におきましては、通信向けなどの販売が増加し、売上高は10,342百万円と前年同期と比べ1,276百万円(14.1%増)の増収となり、セグメント利益(営業利益)は1,086百万円と前年同期と比べ427百万円(64.9%増)の増益となりました。

 

(アジア)

 その他アジアにおきましては、民生、通信向けなどの販売が減少し、売上高は2,680百万円と前年同期と比べ96百万円(3.5%減)の減収となりましたが、高付加価値製品の増産などにより、セグメント利益(営業利益)は493百万円と前年同期と比べ272百万円(123.5%増)の増益となりました。

 

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

当社グループの資本の財源及び資本の流動性については、下記のとおりです。

a.財務戦略の基本的な考え方

 当社グループは、財務の健全性・資本効率・株主還元の観点からバランスのとれた最適な資本構成のもと、継続的に企業価値を向上させることを基本としております。財務の健全性については「負債資本倍率(DEレシオ)」や「自己資本比率」の改善を図り、資本効率については「株主資本利益率(ROE)」を、企業価値を高める目的として「投下資本利益率(ROIC)」を向上させることを目指してまいります。また、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の改善をさらに推進するとともに手元資金の活用などによりキャッシュ・フローの最大化と資金効率の改善を強化いたします。

 

b.資金需要

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、設備資金需要につきましては、当社グループの製品製造のための生産設備及び建物の購入等になります。

 

c.資金調達

 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入により資金調達を行っております。設備投資に必要な資金は、事業が生み出す営業キャッシュ・フロー及び手元流動性資金で賄うことを基本とし、また、長期経営計画の基盤確立となる第二中期経営計画の実現を可能にするための成長投資実行については、銀行借入又は資本市場からの調達も検討し、堅実かつ柔軟な資金調達を行うものとしています。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

パートナーシップに関する契約

(製品の販売に関する契約)

契約書名

パートナーシップ契約

契約会社名

SiTime Corporation

契約締結日

2015年10月27日

契約期間

2015年10月27日から2025年10月26日まで(期間満了の1年前までに契約終了の意思表示がない場合、更に自動更新されるものとする。)

主な契約内容

新市場でのシェア確保及び販売金額増加を目的としパートナーシップ契約を締結

・MEMS Timing DeviceのKDSブランド販売

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループは水晶を利用した電子デバイスの専業メーカーとして、新製品並びに新技術の研究開発に鋭意努力しております。当社グループにおける新製品・新技術の開発活動は、高度化する社会のニーズに応える水晶デバイスを、蓄積された要素技術により積極的に提案することを目的とし現在92名の従業員が当社グループの研究開発に従事しております。

 当連結会計年度における研究開発費は2,170百万円でありました。5G対応スマートフォンの拡大やADAS(先進運転支援システム)の普及や電装化の進展により、カーエレクトロニクス用機器にも活発な動きがありました。それらの製品が市場に普及する中で水晶デバイスに求められるニーズを的確にとらえ、当社技術部門は小型・低背化、高周波化、高精度化、高機能化のほか、低消費電力化、耐環境性能の向上、環境配慮製品の創出など積極的な活動を展開しました。特にArkh.3Gでは小型、薄型化の特徴を生かして、高速小型光トランシーバ、IC内蔵、SIPモジュール向け顧客ニーズに的確にお応えいたします。また、ウエハレベルパッケージ工法(WLP)による高い生産性によって、安定供給と環境対応の達成を実現します。さらに今後は他製品への応用をすすめ、新製品の開発と拡充を図ってまいります。

 

(1) Arkhシリーズ関係

① Arkh.3G  水晶振動子の製造コスト削減に取り組んでおります。使用する水晶ウエハを大判化することで生産能力を向上させるとともに、歩留の改善と安定的な製造を実現するために必要な製造技術の開発を進めます。将来的には6インチの水晶ウエハを使用して更なる低コスト化を図ります。

② Arkh.2G  Arkh.3Gを内蔵したセラミックパッケージ水晶発振器を開発中です。購入材料がコストアップする状況でも、内部の水晶ブランクの代わりに完成したArkh.3Gを使用することで組み立て歩留を向上させICやセラミックパッケージの材料費を削減することが可能です。またArkh.3Gへ投資した資産がセラミックパッケージの新製品に使用することが可能となり、投資効率の向上につながります。今後、Arkh.2GはCMOS出力水晶発振器、差動出力水晶発振器、温度補償型水晶発振器などラインナップを充実させ、顧客のニーズにお応えします。

③ Arkh.6G Arkhタイプの高周波水晶振動子を開発中です。高周波化によって水晶片はますます薄くなり、組み立てには高度な技術が必要です。WLP工法であるArkhタイプの水晶振動子であれば、ウエハの状態で水晶片を製造しそのまま組み立てることができるため、高周波化に適した製造が可能です。Arkh.6GはKDSの独自技術を生かした製品として開発を進めております。

 

(2) 水晶振動子、水晶発振器関係

① 樹脂モールド型リアルタイムクロックDD3225TR型(外形寸法:3.2×2.5×1.1mmH)を開発しました。昨年開発した温度補償タイプに次いで、温度補償をせずアラームの追加など高機能化したリアルタイムクロックです。当社の音叉型水晶振動子を樹脂モールドパッケージに内蔵し、生産性向上と安定供給を図ります。2024年度上半期より量産開始予定です。さらに温度補償タイプで高機能化したリアルタイムクロックDD3225TQ型を開発中です。2025年度上半期より量産開始予定です。

② 小型低電圧対応TCXO DSB1612SLD型TCXO(外形寸法:1.6×1.2×0.55mmH)を開発しました。小型高精度対応技術を採用した超小型1.2V対応のTCXOで、スマートウォッチなどのウエアラブルデバイス等でバッテリーサイズに制限のあるデバイスでも安定したクロック源を提供します。2024年度下半期より量産開始予定です。

③ 小型高周波対応低位相ノイズTCXO DSB1612SEB型(外形寸法:1.6×1.2×0.55mmH)を開発しました。5Gなどの高速モバイル通信、Wi-Fi等の次世代無線規格で要求される高周波、低位相ノイズへ対応可能です。また、低高調波、105℃まで対応可能であり高度化する車載通信向けに最適な性能を有しております。2024年度下半期より量産開始予定です。

④ 樹脂モールド型差動出力水晶発振器(外形寸法:2.0×1.6×1.64mmH)を開発中です。当社のArkh.3G小型振動子を樹脂モールドパッケージに内蔵することで小型化に成功しました。また、サーバー向けに外形寸法:3.0×2.5×1.20mmHを開発中です。当社のモールド技術を生かし大量生産を行うことで、差動出力水晶発振器市場のシェアを拡大します。いずれも、2025年度上半期より量産開始予定です。

⑤ 樹脂モールド型水晶発振器(外形寸法:3.0×2.5×1.20mmH、5.0×3.2×1.20mmH、外形寸法:7.3×4.9×1.70mmH、)を開発中です。供給が難しくなっている大型のSPXOを効率的に生産可能な樹脂モールド構造を採用することで、安定供給を図り顧客ニーズにお応えします。2025年度上半期より量産開始予定です。