文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。
当社は、“「がん」だけを見ることなく、「がん患者」の全体を診ることにより、安心して家族のがん患者に勧められる治療法を提供すること”を企業理念としております。
この企業理念の実現のため、当社は、独自の「モジュール創薬」に基づく、抗がん剤の研究開発を行います。モジュール創薬は、既存の抗がん剤等を「モジュール」(構成単位)として利用し、創意工夫(用法用量・結合様式等)を加えて「アセンブリ」(組み立て)することで臨床上の有効性と安全性のバランスを向上させた新規抗がん剤を創製する方法です。
当社は、「モジュール創薬」に基づき創製した新規抗がん剤の上市により、がん患者のQOL(Quality Of Life)向上に寄与することを目指しております。
当社は、新規抗がん剤の上市を目指して研究開発を先行して行う創薬ベンチャー企業であり、現時点における主な収入はライセンス契約締結による契約一時金やマイルストーンによるものであり、製品売上により利益を安定的に計上するステージにはありません。
当面の経営管理上の課題は、抗がん剤の早期上市に向けて、開発パイプラインを計画とおり推進すること、新規開発化合物の探索により開発パイプラインを充実すること、そして保有する各パイプラインについて提携パートナーを開拓してライセンス契約を締結することです。
従いまして、当社は、ROAやROEといった経営指標を目標とはせず、開発パイプラインの進捗に応じた収入に目標をおいて事業活動を推進しております。
当社の中長期における最重要課題は、新規抗がん剤の研究開発を着実に推進すると共に、提携パートナーを開拓してライセンス契約を締結し、承認を取得して製品販売による安定的な収益源を確保することです。
当社の開発パイプラインは、DFP-10917、DFP-14323、DFP-17729及びDFP-14927が臨床試験段階にあり、また、DFP-11207は臨床第2相試験に向けた準備を進め、DFP-10825も臨床試験に向けた準備の検討を進めておりますので、日本国内やアジア、欧米などの各地域での提携パートナーとライセンス契約を締結し、それぞれの地域において承認を取得していく予定です。世界的な情勢不安や地政学的リスクの長期化など、日米で進行及び計画中の臨床試験に影響が及ぶ場合は、日米における治験施設の状況を踏まえ、実行可能性の高い地域での臨床試験を検討して対応してまいります。また、開発パイプラインの充実に向けた探索研究も継続的に実施してまいります。創薬ベンチャーである当社にとっては、これらの研究開発を並行して行っていくために、研究開発体制の強化と研究開発資金の調達が不可欠であります。
従いまして、当社は、日本の提携先に留まらず、グローバルの製薬会社等とのライセンス契約締結による契約一時金及びマイルストーンによる収入とともに、必要に応じて、株式市場等からの資金調達を行いながら、研究開発を推進していく方針です。
当社は、「モジュール創薬」により、安心して家族のがん患者に勧められる治療法を提供することを目指しています。このような背景の下で、当社は、次の対処すべき課題に取り組んでまいります。
再発・難治性急性骨髄性白血病治療剤のDFP-10917は、米国における臨床第3相試験の症例登録を2023年5月中旬に中間解析目標の150症例の登録が完了し、中間解析データの集計・解析や長期生存患者のフォローアップを継続しています。また、新たにベネトクラクス治療前歴のある急性骨髄性白血病の患者を対象に、米国においてDFP-10917とベネトクラクスの併用療法の臨床第1/2相試験を開始する予定です。日本における独占的開発及び販売のライセンス契約を締結している日本新薬㈱に対しては、国内での臨床第1相試験が円滑に進むように、継続して支援してまいります。なお、日本以外のテリトリーについては、米欧並びにアジアの提携パートナーと協議を進めており、再発・難治性急性骨髄性白血病の治療においてグローバル展開を目指してまいります。
がん免疫機能調整剤のDFP-14323は、日本国内における臨床第2相試験の症例登録を完了し、無増悪生存期間や全生存期間を明らかにするための経過観察を終了しました。この臨床試験データに基づいて、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)への医薬品相談を進めた結果、臨床第3相試験(大規模比較試験)を進めるとともに、日本における独占的販売のライセンス契約を締結している日本ケミファ㈱やこのデータに高い関心を示している海外の製薬企業の協力とともに、臨床第3相試験の加速を目指してまいります。
がん微小環境改善剤のDFP-17729は、国内における臨床第1/2相試験を開始し、第2相試験部分の症例登録の完了まで進めました。その結果に基づいて効果と安全性の評価を検証しております。日本における独占的販売のライセンス契約を締結している日本ケミファ㈱からの協力を得て、次試験への移行や、その後の医薬品医療機器総合機構(PMDA)への承認申請などの可能性についても検討してまいります。
当社は、DFP-11207、DFP-14927及びDFP-10825などの複数の開発品を保有しています。
がん細胞代謝調節剤のDFP-11207については、日本での臨床第2相試験の実施に向けて検討を継続しており、日米欧並びにアジアにおける提携パートナーの確保を目指してまいります。
抗がん剤高分子デリバリーのDFP-14927については、米国において臨床第1相試験における推奨投与量を確定しました。前期第2相試験に相当する臨床第1相試験の拡大試験を推進してまいります。
核酸医薬デリバリーのDFP-10825については前臨床試験を完了し、臨床第1相試験の開始に向けた検討・準備を進め、国内外の会社から支援を受けながら、さらに開発を進めてまいります。
これら複数の開発品を世界の主要国において承認を取得するためには、臨床試験を実施するための開発体制の強化と開発資金の確保が課題となります。このため、当社は提携パートナーの獲得を目指しながら、公募増資や新株予約権の行使で調達した資金を計画的に投入して開発の推進を図ってまいります。
当社は、「モジュール創薬」により新しい抗がん剤候補化合物の探索研究を行っており、これらの候補化合物を開発パイプラインに載せられる段階まで推進するためには、開発資金の確保が課題となります。
当社は、多額の研究開発費用が先行して必要となるため、継続的な営業損失が発生するとともに営業キャッシュ・フローもマイナスとなる傾向があり、そのため、財務体質の強化が課題となります。今後は、ライセンス契約の締結を始めとした国内外のパートナーとの提携、研究開発活動の適切なコントロールに加え、株式市場や金融機関からの資金調達等により、更なる財務体質の強化に努める方針です。
当社は、研究開発のマネジメント業務に特化し、外部の人材紹介企業を有効活用することにより、小規模な組織で効率的な運営を行っております。しかしながら、上記のとおり、今後開発品の増加が見込まれるため、適切な人材確保を図っていく方針です。
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。
当社は、“「がん」だけを見ることなく、「がん患者」の全体を診ることにより、安心して家族のがん患者に勧められる治療法を提供すること”を通じて持続可能で豊かな社会の実現に貢献するという経営基本方針に基づき、サステナビリティに関する諸課題に対処してまいります。この経営基本方針の実現のため、当社は、独自の「モジュール創薬」に基づく、抗がん剤の研究開発を行い、新規抗がん剤の上市により、がん患者のQOL(Quality Of Life)向上に寄与することをマテリアリティ(重要課題)として認識しております。また、経営基本方針に示されるとおり、ステークホルダーの皆様から信頼される企業として、私たちの事業活動を通じ様々な社会の課題解決に努めてまいります。
私たちがめざす持続可能で豊かな社会とは、当社が提供する新規抗がん剤をとおして一人でも多くの人が「楽しく」、「安心して」、「健康的な」生活を営むことができる社会であります。当社は、この考え方に基づいて、これからも地球環境、社会貢献、ガバナンス等に真摯に取り組んでまいります。
(1)ガバナンス
当社では、サステナビリティに関する活動を取締役会が全社的な視点から統括し、サステナビリティを巡る課題に取り組む体制としております。取締役会において、地域社会・環境問題に関する対応方針や諸施策の立案、各種施策の進捗・実績管理等のリスクマネジメントと情報開示などについて検討・協議・報告をしております。また、取締役会は報告・提案された内容について審議・監督を行っております。
上記の詳細は、「
当社における特定したマテリアリティ(重要課題)は、以下のとおりです。
≪事業活動に関する方針≫
社会の動向や当社にとって関係の深い社会的課題を「当社にとっての影響度」「ステークホルダーにとっての影響度」の2つの視点で評価し、重要度の高い課題を抽出することにしております。それらの課題について取締役会を含む社内会議で討議を行い、特に重要度の高い課題をマテリアリティとして特定し、解決策を実行し、当社が目指す持続可能な社会の実現と企業価値の向上に取り組んでおります。
≪人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略≫
当社は、全ての従業員が持てる力を発揮することができるとともに、多様な人材が活躍し、従業員がやりがいを持って働くことのできる会社をめざしております。
①採用方針
当社の経営方針を共有できる有能な人材確保のため、国内外に関わらず研究開発のマネジメントなど様々な経験・スキル等を有し、即戦力となる中途採用を中心に行い、多様性のある小規模な組織集団を目指しております。
②多様性の確保についての考え方
当社は、国籍、年齢、性別等の多様性が確保され、全ての従業員が持つ能力・知識が発揮できる環境を備えた会社の実現を目指し取り組んでおります。また、即戦力となる中途人材の採用については、積極的に実施しております。具体的には、国内外に拘わらず製薬企業での研究開発、事業開発等の経験者、薬剤師等の資格取得者等の専門能力を有する多様な人材を、年齢、性別等に関係なく採用しております。また、勤務開始時間の選択制度などの従業員がワークライフバランスを実現しやすい制度やインセンティブ制度等の人材確保のための各種制度の整備並びに社内外の機会を捉えた社員教育を行っております。
今後も人材の育成に努めるとともに、より働きやすい環境の実現や社内制度の改善に向けての取り組みも推進してまいります。
③社内環境整備
当社は、国籍、年齢、性別の有無等に関係なく、全ての従業員が持てる能力を発揮し、活躍できる職場環境の構築を目指しております。従業員の健康を重要な経営資源と捉え、健康管理、安全管理に重点を置いた取り組みを推進し、健康維持増進につなげます。具体的には、定期健診でのストレスチェックの実施による体調管理、メンタル不調の未然防止、国内・海外の従業員がどこでも仕事ができるテレワーク環境の提供などを進めております。
(3)リスク管理
当社では取締役会において、リスクマネジメントを行っております。各部門が各種リスクに関する情報・データを収集し、事業活動項目に伴うリスクを抽出しており、取締役会において抽出したリスクの中から、当社にとって重要なリスクを特定し、主に「発生可能性」と、「財務への影響度」の2つの評価軸を中心に、その重要性を評価します。なお、当社におけるリスクマネジメントの取組み内容については「
①事業活動に関する方針に係る指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績
当社では、現時点における主な収入の源泉はライセンス契約締結による契約一時金やマイルストーンによるものであり、製品売上により利益を安定的に計上するステージにはありません。当面の経営管理上の課題は、抗がん剤の早期上市に向けて、開発パイプラインを計画とおり推進すること、新規開発化合物の探索により開発パイプラインを充実すること、そして保有する各パイプラインについて提携パートナーを開拓してライセンス契約を締結することを目標としております。今後、達成に向けて進捗を注視していくとともに、指標や目標の設定要否についても引き続き検討する予定です。
②人材の育成及び社内環境整備に関する方針に係る指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績
当社では、多様な人材の確保及び育成並びに社内環境整備について、現時点では定量的な指標や目標は設定しておりません。今後、達成に向けて進捗を注視していくとともに、指標や目標の設定要否についても引き続き検討する予定です。
また、当社は、部門担当役員が従業員と定期的に面接を実施し、各社員が日常業務の中で感じていることのヒアリングを行うとともに、人材獲得、育成方針、労働環境等について意見交換を実施し、より働きやすい環境の実現や社内制度の改善に向けての取り組みも推進しております。
事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社はこれらのリスクの発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の事項及び本項以外の記載も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。また、これらは投資判断のためのリスクを全て網羅したものではなく、更にこれら以外にも様々なリスクを伴っていることにご留意頂く必要があると考えます。
当社は、医薬品等の開発を行っていますが、医薬品等の開発には長い期間と多額の研究開発費を要し、全ての開発が成功するとは限りません。特に販売開始前の研究開発段階のパイプラインを有する製造開発型バイオベンチャー企業は、事業のステージや状況によっては、一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられており、当社への投資はこれに該当します。
なお、文中の将来に関する記載は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。
医療用医薬品の開発には多額の研究開発投資と長い期間を要し、臨床試験で有用な効果を確認できないこと等により研究開発が予定とおりに進行しないため、開発の延長や中止の判断を行うことなど、以下のような不確実性を認識しています。
① 世界の主要国において新薬を製造及び販売するためには、各国の薬事関連法規等の法的規制の下、各国別に厳格な審査を受ける必要があります。この審査に耐えうる有効性、安全性、及び品質等に関する十分なデータが得られない場合は追加試験等が必要となり、予定していた時期に上市ができず延期になる、または上市を断念する可能性があります。
② 当社が権利を保有する新薬候補化合物の開発が遅れた場合や追加試験が必要となる場合は、計画外の追加資金が必要となります。そのような場合には、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となる可能性があります。
③ 提携パートナーとのライセンス契約には、契約の存続期間が特許権の有効期間が終了するまでの期間とされているため、ライセンス契約中にマイルストーンが達成できずに、当初想定した投資回収額を回収できない可能性があります。
④ 新薬の承認申請が世界の主要国規制当局から承認されなかった場合には、当初想定していた投資回収額を回収できなくなり、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
医薬品には、臨床試験段階から更には上市後以降において、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。当社は、こうした事態に備えて、製造物責任を含めた各種賠償責任に対応するための適切な保険に加入しておりますが、最終的に当社が負担する賠償額の全てに相当する保険金が支払われる保証はありません。また、当社に対する損害賠償の請求が認められなかったとしても、製造物責任の請求等がなされたこと自体によるネガティブ・イメージにより、当社及び当社の製品に対する信頼に悪影響が生じる可能性があります。この結果、当社の業績及び財政状態に重大な影響が及ぶ可能性があります。
医薬品の研究開発は、国内外の製薬会社や創薬ベンチャー企業により、激しい競争環境の下で行われており、以下のような不確実性を認識しております。
① 当社開発品と同じ疾患領域において、競合他社が早期に医薬品を市場導入したり、当社開発品と同じ疾患領域で優位性を持つ医薬品の開発に成功したりした場合には、当社の事業の優位性は低下する可能性があります。
② 新規の競合品の登場により、当社開発品の臨床試験が被験者登録の遅延や目標被験者数の未達となる可能性があり、その場合には当初の計画以上の開発資金が必要になったり、または開発中止に追い込まれたりして、当社の事業計画や経営等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。
③ 新規の競合品の開発が先行、または上市した場合は、ライセンスを提携している製薬企業が、事業を毀損すると判断してライセンス契約を解消する可能性があります。
④ 当社開発品が上市に至った場合でも、他社が当社の製品よりも有意差のある有効性と安全性の製品を販売すると、想定したロイヤリティが得られない等により、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社はパイプラインの開発段階に応じて、国内外の製薬会社とライセンス契約を締結して「契約一時金」、「マイルストーン」及び「開発協力金」を受け取りますが、ライセンス契約の締結には、相手先の抗がん剤候補化合物に対する評価や経営判断などを伴うことから、当社が想定するタイミングで提携できない可能性があり、ライセンス契約の締結に至らない場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社は研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事関連法規、医療保険制度及びその他関係法令等により、様々な規制を受けております。
医薬品の開発には、多大な開発コストと長い年月を必要としますが、規制当局が当社開発品の有用性を認めない場合には、承認を計画とおり取得できずに上市が困難になる可能性があります。
また、当社が臨床試験を実施している米国において、2010年3月に改定された医療保険改革法案等による先発医薬品への価格引下げ圧力のほか、低価格の後発医薬品の使用促進が進められています。また、日本国内においても、政府は医療費抑制のため定期的に薬価引き下げや後発医薬品の使用促進策の導入、更に高額な新薬に対しては市場拡大再算定による特例的な薬価引き下げが実施されております。今後の薬事関連法規、医療保険制度及びその他関係法令等の動向が、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社は、DFP-10917に関して日本新薬㈱との間で、DFP-17729及びDFP-14323に関しては日本ケミファ㈱との間で、日本国内の独占的ライセンス契約を締結しております。これらの提携契約に基づく収益のマイルストーンは、開発の進捗に依存したものであり、開発の遅延が生じた場合や、提携先の経営方針の変更など当社が制御し得ない要因により開発を中断あるいは中止した場合、または提携先が契約条件の履行や各種規制等の遵守をできない場合は、提携契約の解除・終了や契約条件の変更等が生じ、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社では今後、国内外の製薬企業との新しいライセンス契約により、現状の提携契約に基づく収益への依存度を低減していく方針ですが、ライセンス契約の締結には、提携パートナー候補の抗がん剤候補化合物に対する評価や経営判断などを伴うことから、当社が想定するタイミングで提携できない可能性があり、ライセンス契約の締結に至らない場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
更に、当社ではパイプラインの増加を図り、特定の提携パートナーへの依存度を低減させていく方針ですが、新たなライセンス契約を締結するまでには長期間を要するため、当面の事業収益が特定の提携先に大きく依存する状況にあり、また、新たな提携パートナーとのライセンス契約を締結できる保証もない状況にあります。
当社では研究開発をはじめとする事業展開において様々な知的財産権を使用しており、これらは当社所有の権利であるか、あるいは適法に使用許諾を受けた権利であるものと認識しております。
下表に臨床試験段階にある当社の抗がん剤候補化合物に関する重要な特許の状況について記載します。
<開発パイプライン(臨床試験段階)に関連する主な特許の状況>
なお、当社が保有している現在出願中の特許が全て成立する保証はありません。また、特許が成立した場合でも、当社の研究開発を超える優れた研究開発により、当社の特許に含まれる技術が淘汰される可能性は常に存在しています。当社の特許権の権利範囲に含まれない優れた技術が開発された場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
一方、特許の出願は、特許の内容、対象国などについて費用対効果を考慮して行っていますが、出願費用や維持費用等の経費を回収できない可能性があります。
また、当社では他社の特許権の侵害を未然に防止するため特許の調査を実施しており、これまでに、当社の開発パイプラインに関する特許権等の知的財産権について第三者との間で訴訟が発生した事実はありません。しかし、当社のような研究開発型企業にとって知的財産権侵害の問題を完全に回避することは困難です。また、当社が譲り受けた特許に係る関連化合物及び製剤の開発等に関し、第三者が権利主張や異議を述べてくる可能性も否定できません。これらに関し、第三者との間で知的財産権に関する紛争が生じた場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
更に、職務発明について、役員や従業員等の発明者から特許等を譲り受ける場合、当社は特許法に基づき相当の対価を支払わなければなりません。当社では社内ルールを設けておりますが、これまで発明者との間で問題は生じておりません。しかしながら、将来、発明者との間で対価の支払請求等について問題が起こらない保証はなく、紛争が生じた場合には、当社の業績及び財務状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
各開発品は、前述の「医薬品の研究開発、医薬品業界に関するリスク」を伴いますが、ここでは各開発品に特異な業務遂行上のリスク要因を挙げます。
DFP-10917は日本新薬㈱に対して日本のテリトリーをライセンスアウトしており、日本国内における臨床試験は同社により行われ、現在、臨床第1相試験が実施されておりますが、日本新薬㈱の経営方針の変更等により、臨床試験が中止される可能性があります。
一方で、研究開発が先行している米国において臨床第3相比較試験を実施しております。グローバルの提携先確保のためにライセンス活動を推進しており、臨床第3相比較試験の経過観察については、新株予約権の権利行使資金で開発を進める方針です。現状、グローバルのライセンスの提携先は未確定であり、ライセンス契約の締結には、相手先の抗がん剤候補化合物に対する評価や経営判断などが伴うことから、当社が想定するタイミングで提携できない可能性があり、ライセンス契約の締結に至らない場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、臨床第3相比較試験において、競合する新薬の臨床試験により被験者が獲得できない場合、DFP-10917の安全性等に起因して規制当局から試験の中断や中止命令が出された場合は、臨床試験が計画とおりに進められない可能性があります。臨床試験の遅延は想定以上の研究開発費を必要とするため、開発資金が不足すると判断した場合には、一時的に臨床試験を中断するなどの対応を迫られる可能性があり、この場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
DFP-14323は日本国内の臨床第3相比較試験は日本で開始する予定であり、この費用は新株予約権の権利行使で確保した自己資金や日本国内においては日本ケミファ㈱とのライセンス契約に基づくことから、ライセンス契約の締結可否や契約締結後の不履行などにより資金が確保できなくなることもあり、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、次の臨床試験は医療機関が未確定であり、臨床試験への取り組み方に医療機関または医師個人で違いがあるなど、計画とおりに進まない可能性があります。
DFP-11207は臨床第2相試験の準備を進めるとともに、国内外で提携先確保のためにライセンス活動を推進しておりますが、次の臨床第2相試験及びその次の臨床第3相比較試験については、提携先とのライセンス契約を前提に開始する方針です。現状、ライセンスの提携先は未確定であり、ライセンス契約の締結には、相手先の抗がん剤候補化合物に対する評価や経営判断などが伴うことから、当社が想定するタイミングで提携できない可能性があり、ライセンス契約の締結に至らない場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
DFP-14927については、三洋化成工業㈱との共同開発契約に基づき、米国で臨床第1相試験を完了し、臨床第1相試験の拡大試験を開始しましたが、その結果に基づき、新たな提携先確保のためにライセンス活動を進める予定です。現状、ライセンスの提携先は未確定であり、次の臨床試験の開始前までに提携できない場合は、開発が計画とおりに進まない可能性があります。
DFP-17729については、日本ケミファ㈱とのライセンス契約に基づき、国内での臨床第1/2相試験の症例登録完了・解析を進めております。この費用は新株予約権の権利行使で確保した自己資金や日本ケミファ㈱とのライセンス契約による契約一時金及びマイルストーンによる収入で進める方針ですが、ライセンス契約の不履行などにより資金が確保できなくなることもあり、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
DFP-10825は臨床試験に向けた前臨床を完了しておりますが、現状、ライセンスの提携パートナーは未確定であり、次の臨床試験の開始前までに提携できない場合は、開発が計画とおりに進まない可能性があります。
当社は、経営の機動性・効率性の観点、経費の低減や高い専門性の分野における協業などの観点から、全ての開発品を以下の業務の一部を専門機関に委託しております。
・原薬・製剤(治験薬)の製造・評価試験
・薬理効果試験・毒性試験等の前臨床試験
・臨床試験のモニタリング・データマネジメント・統計解析
その中でも、特に治験に関する業務の委託は重要性が高いものとなっております。当社は、治験等の業務委託先の選定及び業務委託先との関係の構築について慎重に対応しておりますが、不測の理由により、治験等の重要な業務の委託先との契約が終了したり、業務委託先での業務の遂行に支障が生じたりした場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
上記の委託先及び上記以外の業務に関する委託において、当社にとって不利な契約改定が行われた場合、または予期せぬ事情により契約が終了した場合は、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
委託先とは、今後も継続して委託をしていきますが、委託先における地震、水害等の自然災害・治安不安などの不測の事態等により、設備・インフラ・従業員などに支障をきたし、稼働できない状況などが一時的に発生し、または長期間業務が停止し、適時なサービス業務を受けられなくなる可能性がないとは言えません。この場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、外部委託先は、国内外の企業・医療機関に委託しておりますが、今後も国内外を問わず、開発に対して最善の企業・医療機関等に業務の委託を行う予定です。
当社の経営上の重要な契約等は、「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」に記載のとおりです。事業環境の変化、契約の相手方の方針の変更その他、不測の理由で契約が終了したり、契約の履行に支障が生じたりした場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社は常に優秀な人材の確保と育成に努めておりますが、人材確保及び育成が順調に進まない場合、並びに人材の流出が生じた場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社は、研究開発費の負担により長期に亘って先行投資の期間が続きます。この先行投資期間においては、継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローもマイナスとなる傾向があります。
このため、当社製品が上市され、安定的な収益源が確保されるまでの期間においては、必要に応じて適切な時期に資金調達等を実施し、財務基盤の強化を図る方針ですが、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合は、当社事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。
当社の事業収益は、開発品に対するライセンス契約等に基づく契約一時金、開発進捗に伴うマイルストーン及び開発協力金に依存しているため、過年度の事業収益、当期純利益(損失)は不安定に推移しています。また、当社は、医薬品の研究開発を行う創薬系バイオベンチャー企業です。医薬品の研究開発には多額の先行投資を要し、その投資回収にかかる期間も他産業と比較して相対的に長期に及ぶため、創薬系バイオベンチャー企業が当該事業に取り組む場合は、一般的に期間損益のマイナスが先行する傾向にあります。この傾向は、当社の開発品が上市され安定的な収益基盤が確立するまで続くと見込まれます。
当社は医薬品の研究開発型企業であり、将来の研究開発活動の拡大に伴い、増資等の新株発行を伴う資金調達を機動的に実施していく可能性があります。その場合には、当社の発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
医薬品の研究開発には多額の先行投資が必要であり、その投資回収までの期間も長期に及ぶ傾向にあり、創業以来、繰越利益剰余金がマイナスとなっています。このような状況下においては、積極的な開発推進によって企業価値を高めることこそが、株主利益の最大化に繋がると考えています。
当事業年度においては、会社法の規定上、配当可能な財政状態にはありませんが、株主への利益還元については重要な経営課題と認識しており、将来、現在開発中の新薬が上市され、その販売によって当期純利益が計上される時期においては、経営成績及び財政状態を勘案しながら、配当による利益還元の実施を検討したいと考えております。
医薬品の研究開発においては海外の委託先を使用しており、外貨建の取引を行っていること等、当社の取引には、為替変動リスクにさらされているものが存在します。そのため、当社の想定以上に為替相場の変動が生じた場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は、次のとおりであります。
当事業年度におけるわが国経済は、コロナ禍を脱し社会経済活動の正常化が進み、国内の行動制限解除による経済活動の改善、インバウンド消費の拡大や大手企業を中心とした賃上げをはじめとした雇用、所得環境の改善や日経平均株価も34年ぶりの最高値を更新するなど、回復傾向がみられました。しかし、ロシア・ウクライナや中東地域をめぐる情勢不安、国内における円安によるコスト負担増加や能登半島地震等の自然災害の影響もあり、地政学的リスクの長期化、インフレ抑制に向けた各国での金融引き締めの影響等により、依然として先行きが不透明な状況が続いております。
当社では、がん患者の高齢化による治療への懸念や新薬の高額化による費用負担増加への不安が進む中、経済的にも安心して家族のがん患者にも勧められる治療法を提供することを目指して、「モジュール創薬」に基づく研究開発に取り組み、各パイプラインの臨床開発を前進させました。
抗がん剤候補化合物DFP-10917は、米国における臨床第3相試験の症例登録を2023年5月中旬に中間解析目標の150症例の登録が完了し、中間解析データの集計・解析や長期生存患者のフォローアップを継続しています。また、日本におけるライセンスパートナーの日本新薬㈱が国内の臨床第1相試験の症例登録を進めています。抗がん剤候補化合物DFP-14323は国内における臨床第3相試験を開始すべく準備を進めております。抗がん剤候補化合物DFP-17729は国内における臨床第1/2相試験の解析を進め、次試験の検討・準備をしております。抗がん剤候補化合物DFP-11207は治験薬の製造を行い、次試験の開始に向けて日本での実施の検討を継続しております。抗がん剤候補化合物DFP-14927は、米国において臨床第1相試験を継続しており、次段階へ進める準備をしております。また、抗がん剤候補化合物DFP-10825は前臨床試験を完了し、臨床第1相試験の開始に向けた検討・準備をしております。
以上の結果、当事業年度におけるマイルストーン収入等はなく、事業収益はありませんでした(前事業年度もなし)。事業費用につきましては、開発パイプラインの臨床試験における医療機関並びに症例数の増加、次試験に向けた治験薬となる原薬や製剤の製造などを進めたことなどに伴い、1,403百万円(前事業年度比6.7%増)となりました。この結果、営業損失は1,403百万円(前事業年度は1,315百万円の損失)、経常損失は1,426百万円(前事業年度は1,325百万円の損失)、当期純損失は1,429百万円(前事業年度は1,328百万円の損失)となりました。
なお、当社は医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の経営成績を記載しておりません。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、新株予約権の行使による株式の発行による収入等により、前事業年度末比572百万円増加し、1,417百万円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動に使用した資金は1,279百万円(前事業年度は1,303百万円の支出)となりました。これは主に、税引前当期純損失1,426百万円の計上によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動に得られた資金は0百万円(前事業年度は0百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動の結果得られた資金は1,853百万円(前事業年度は882百万円の収入)となりました。これは主に、第三者割当による株式の発行による収入498百万円及び新株予約権の行使による株式の発行による収入1,350百万円によるものであります。
該当事項はありません。
該当事項はありません。
該当事項はありません。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
当社の財政状態は、以下のとおりであります。
a.資産
当事業年度末の資産合計は、前事業年度末比567百万円増加し、1,474百万円となりました。これは主に、現金及び預金が572百万円増加したことによるものであります。
b.負債
当事業年度末の負債合計は、前事業年度末比125百万円増加し、241百万円となりました。これは主に、未払金が117百万円増加したことによるものであります。
c.純資産
当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末比441百万円増加し、1,232百万円となりました。これは主に、第三者割当による新株式発行で資本金及び資本剰余金がそれぞれ250百万円、新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金がそれぞれ686百万円増加したものの、当期純損失の計上により利益剰余金が1,429百万円減少したことによるものであります。
当社の経営成績は、以下のとおりであります。
a.事業収益
当事業年度におけるマイルストーン収入等はなく、事業収益はありませんでした(前事業年度比-%)。
b.事業費用、営業損益
当事業年度における事業費用は1,403百万円(前事業年度比6.7%増)となりました。これは主に、開発パイプラインの臨床試験における医療機関並びに症例数の増加、次試験に向けた治験薬となる原薬や製剤の製造などを進めたことなどに伴い、研究開発費が1,118百万円(前事業年度比10.6%増)となったことによるものであります。
この結果、営業損失は1,403百万円(前事業年度は営業損失1,315百万円)となりました。
c.経常損益
主に為替差損5百万円及び株式交付費17百万円を計上したことにより、当事業年度における経常損失は1,426百万円(前事業年度は経常損失1,325百万円)となりました。
d.当期純損益
当事業年度における当期純損失は1,429百万円(前事業年度は当期純損失1,328百万円)となりました。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。
キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
当事業年度末における現金及び現金同等物は1,417百万円であり、当社の運転資金については、主に自己資金及び新株予約権の発行による資金調達により充当しています。
当社の中長期における最重要課題は、新規抗がん剤の研究開発を着実に推進すると共に、新たな提携パートナーを開拓してライセンス契約を締結し、承認を取得して製品販売による安定的な収益源を確保することです。当事業年度では、DFP-10917、DFP-14323、DFP-17729及びDFP-14927の臨床試験が概ね順調に進んでおります。DFP-11207は臨床第2相試験の準備を進め、DFP-10825も臨床試験の開始に向けた準備を進めてまいります。今後も開発パイプラインを着実に進捗させ、抗がん剤の早期上市を実現できるよう、当社は提携パートナーの製薬会社との連携を模索しながら、経営資源を結集して開発に取り組んでまいります。
経営者の問題意識と今後の方針は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
当社は、抗がん剤開発経験が豊富な少人数の専門家集団であり、研究開発のマネジメント機能に特化しております。当社は、研究所や製造施設を保有せず、研究開発受託企業及び製造受託企業を積極的に活用し、効率的な研究開発体制を構築しております。
開発品に関する詳細は、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載していますのでご参照ください。
当事業年度における当社の研究開発費の総額は
研究開発費の主な内容は、開発品の臨床試験費用及び前臨床試験費用に関わる外部委託費であります。
当事業年度は、DFP-10917の米国での臨床第3相比較試験、DFP-14927の米国での臨床第1相試験、DFP-14323の日本国内での臨床第3相比較試験へ向けた検討・準備、DFP-17729の日本国内での臨床第1/2相試験後のデータ解析を進めております。また、DFP-11207については臨床第2相試験の準備を継続し、DFP-10825については、臨床試験の開始に向けた検討を進めました。