第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループは「Bright Valueの実現~記録に埋もれたリスクとチャンスを見逃さないソリューションを提供し、情報社会のフェアネスを実現する~」という企業理念のもと、自社開発の特化型AI「KIBIT」の提供を通じて、日夜社会課題と向き合う専門家の判断を支援し、イノベーションの起点を創造し、祖業である国際訴訟支援、不正調査から製造、金融、小売、流通、そして医療分野といった様々なフィールドで、必要かつ適切な情報に出会えるフェアな世界の実現及び社会課題の解決に貢献しております。

 

2024年3月期は、ライフサイエンスAI分野におけるAI医療機器、AI創薬や経済安全保障分野のビジネスモデル確立において確信を持つことができ、ビジネスインテリジェンス分野と合わせて今後の成長事業として位置づけております。一方、リーガルテックAI事業に関しては、全社的なコスト構造改革により、第4四半期連結会計期間から利益貢献には転じたものの、収益の回復には一定の時間を要しております。これら複数の事業において、成長種別(リニア/非連続)、成長因子を明確にし、さらなる経営資源の選択と集中を通じた事業運営を徹底してまいります。

 

AIソリューション事業

ライフサイエンスAI分野

ライフサイエンスAI分野では、自社開発の特化型AI「KIBIT」を中核として、AI創薬とAI医療機器の2つの領域において、さらなる事業拡大を進めてまいります。

AI創薬領域においては、DD-AIFを通じた創薬標的探索をはじめ、ドラッグリポジショニングにおける案件を複数受注し、着実に実績を積み重ね当社の優位性の検証が完了しております。その中で、当社の創薬研究者が提案する成果物に加えて、両社の研究者間で協議しながら最終成果物を創造する「共創プロジェクト型」*1のニーズが拡大しているため、これらの早期収益化を目指してまいります。

AI医療機器領域では、2024年2月に塩野義製薬株式会社(以下、塩野義製薬)と「認知症・うつ病の診断支援AIプログラム事業に関する戦略的業務提携契約」を締結したことにより、契約一時金に加え、開発の進展などに応じたマイルストーンフィー、並びに製品上市後の販売額に応じたロイヤリティフィー等を受領する予定となっており、中長期的な収益基盤を構築しております。引き続き、世界初の自然言語処理AIを用いた医療機器及び非医療機器の共同開発、事業化、早期市場浸透を通じた社会実装を目指してまいります。また、海外市場への進出や、医療の安全推進と質の向上、患者のQOL向上のため「会話型 統合失調症診断支援AIプログラム」や「会話型 ADHD診断支援AIプログラム」等の他疾患を対象とした医療機器開発においても、新規アライアンスを視野に入れ、パイプラインの拡充を行い非連続的な成長を目指してまいります。

*1 共創プロジェクト型とは、製薬企業と当社の研究チームが協調し、検証済標的の獲得までを目指す形態。

 

ビジネスインテリジェンス分野

ビジネスインテリジェンス分野では、企業のDX推進や不正リスクの未然防止に関する社会的な要請の強まりにより企業の投資需要は引き続き旺盛であることから、今後もさらなる事業の成長を見込んでおります。大手顧客に対する取引拡大を軸とした活動により、さらなるリカーリング収益の拡大を通じて、当社グループの収益基盤の安定化とリニアな成長を目指してまいります。また、「KIBIT Eye」に加え、「KIBIT Knowledge Probe」、「KIBIT WordSonar for AccidentView」、「KIBIT WordSonar for VoiceView」並びに「匠KIBIT零(タクミキビットゼロ)」を製品ラインナップの中心として位置づけ、今後も、多様化する企業ニーズを的確に捉えた開発、徹底的な内部稼働率管理を通じた生産性の向上を図ってまいります。

 

経済安全保障分野

経済安全保障分野では、昨今の地政学リスクを背景に、調達リスクや各国の規制による制裁リスクが一層高まっております。足元では、企業におけるリスク対策だけでなく対応の遅れによる機会損失も懸念されるようになっており、政府、官公庁や大手企業において、一定規模の投資予算が確保される傾向にあります。

このような状況下、当社の「KIBIT Seizu Analysis」を活用することで、政府、官公庁及び企業は自社を取り巻く環境を可視化し、最適な戦略を策定することが可能となるため、当社に対する需要は拡大することを見込んでおります。今後も、市場環境の追い風を背景として、「KIBIT Seizu Analysis」を活用した、サプライチェーン解析ソリューション、株主支配ネットワーク解析ソリューション、最先端技術・研究者ネットワーク解析ソリューションの提供を通じてリカーリング収益の拡大を基盤としつつ、リニア且つ非連続的な成長を目指してまいります。

 

リーガルテックAI事業

リーガルテックAI事業では、当社ポータルサイト「FRONTEO Legal Link Portal」を利用したマーケティング活動及び営業活動の積極化を通じ、顧客基盤の強化・拡大を進め、収益相関性の高い事業運営を継続してまいります。また、当事業において2023年度に実施したコスト構造の改善効果と顧客関連資産及びのれんの全額減損による償却費負担の減少により、2025年3月期においては通期で黒字化を見込んでおります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、企業理念である「Bright Valueの実現~記録に埋もれたリスクとチャンスを見逃さないソリューションを提供し、情報社会のフェアネスを実現する~」に基づき、社会課題の解決に貢献することであると考えております。

当社グループは事業活動を通じて、社会の持続的かつフェアな発展につながる世界を目指しております。その実現に向けて、お客様、取引先、株主、社員はもちろん、環境や社会とのエンゲージメントが非常に重要であると考え、あらゆるステークホルダーとのリレーションを重視することが当社にとってのサステナビリティの取り組みにつながると考えております。

環境関連では、企業の社会的な責任を自覚し、持続可能な社会の発展に貢献してまいります。特に自社開発の特化型AI「KIBIT」は、教師データの量およびコンピューティングパワーに依存することなく、省エネルギーで高速かつ高精度での解析を実現する「Green micro AI」を社会に提供することにより、CO2の低減に寄与し、循環型社会の実現に貢献します。

 

(1) ESG

① ガバナンス

当社では、経営の最高意思決定機関となる取締役会および事業のスピーディーな決定と柔軟な組織対応をおこなうための経営会議を毎月開催し、経営計画の進捗と重要性の高い事項について個別に議論を行っております。サステナビリティの対応についても、毎年、定期的に関連事業部門にヒアリングし、サステナビリティに係るリスクの抽出と、その影響の範囲、発生の可能性について協議し、重要性を評価しています。

また、社外役員を含む取締役、監査役を構成員とするリスク管理委員会において、リスクの内容、評価、並びに防止・軽減対策について審議をしています。

 

② 戦略

低炭素社会の実現を目指し、環境パフォーマンスを向上させるため、TCFD提言によるシナリオ分析ならびに検証に取り組んでまいります。気候変動による物理的リスク、移行リスクが及ぼす影響や機会を認識し、今後、気候関連の観点に基づく情報開示の充実に努めてまいります。当社では気候変動に関する重要な物理的リスク、移行リスク、機会として、下表のとおり想定しております。具体的な影響に関しては、今後検討と開示を進めてまいります。

 

リスク・機会

種類

項目

移行リスク

政策・法規制リスク

規制対応コストの増加

規制の影響によるビジネス進捗の遅れ

技術リスク

環境配慮技術開発の遅れ

環境配慮技術に対する投資・研究開発コストの増加

市場リスク

省エネ対応要請の想定以上の高まり

原材料や燃料コストの急騰による調達コスト、部材価格の上昇

評判リスク

対応の遅れによる企業ブランドの低下

情報開示の不足による外部評価の低下

物理リスク

急性リスク

災害による自社拠点や人材の不稼働

データセンターなど委託施設での事故や被災によるサービス提供の停滞

慢性リスク

気温上昇による従業員の健康影響と生産性の低下

資源や電力、食料等の供給不安定化

機会

製品・サービス

環境配慮技術(省電力、業務効率化など)の開発先行による事業機会の獲得

リスク予測や行動支援AIの社会実装の推進や人的資源の有効活用に対する需要の増加

市場

情報の開示促進による企業イメージの向上

省エネルギーで解析するAIの需要増加

 

 

③ リスク管理

気候問題の様々な状況や人々の働く環境、人権、地政学的リスクに関連した問題が事業活動に与える影響について個別に問題提起し、対策を立てて対処しております。リスク管理はコンプライアンスやリスク要素の運用や管理と連動する形で分析と評価を行い、リスク管理委員会にて協議の上、取締役会で承認しております。

 

④ 指標と目標

当社では、現時点においてScope1・Scope2に該当する温室効果ガス排出量の計量等を行っておりませんが、今後、当社が提供する「Green micro AI」による環境負荷の低減をはじめ、環境に配慮した技術やシステムの導入などによる効果測定を行いながら、現状の把握、進捗管理ならびに環境コミュニケーションの推進に努めてまいります。

 

(2) 人的資本

① 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社は、市場環境の変化に迅速かつ効果的に対応するため、人的資本の強化に注力しています。性別や国籍、経験にとらわれず、多様な人材を積極的に採用し、適材適所の役職に任用しています。

個々の個性や能力を最大限に発揮できるような環境づくりや、人材育成に対する積極的な投資を行っています。また、多様性を受け入れることで、イノベーションと変革を促進し、事業の成長を実現していきます。

 

② 指標と目標

(a) 女性の管理職登用

2024年3月31日時点で、全従業員のうち女性社員の割合は29.2%、管理職に占める女性社員の割合は7.9%となっております。当社は、全社員が働きやすい環境づくりの一環として女性活躍推進に積極的に取り組んでおります。その結果、女性活躍推進法に基づく取り組みが評価され、2016年に「えるぼし」の最高位認定を受けております。

 

(b) 外国籍従業員の採用

当社は、事業の多様化とグローバル展開を支えるため、国籍を問わず優秀な人材の積極的な採用を目指しています。2024年3月31日時点で、当社の外国籍従業員は13名であり、全従業員に占める割合は7.6%に上ります。

特に外国籍従業員の多様なバックグラウンドや経験は、当社のグローバルな視点を強化し、持続可能な成長に貢献するものと期待しています。

 

(c) キャリア採用者の管理職登用

当社は、積極的なキャリア採用を行っており、2024年3月31日現在、正社員の96.8%がキャリア採用者となっております。また、その中でも42.9%が課長職以上の管理職に登用されています。

当社は、今後も職務の多様化や高度化に対応するため、さまざまな経歴やスキルを持つ優れた人材の採用に注力していき、さらに、管理職としての適性を持つ候補者に対しては、積極的に登用する方針を継続しております。

これにより、当社は常に変化するビジネス環境に適応し、持続可能な成長を実現できる組織体制を構築していくことを目指しています。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、本項における将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業計画について

当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指し、AIを主体としたビジネスモデルへのポートフォリオ・トランスフォーメーションをさらに加速させるべく、技術開発及び人材投資を進めてまいりました。事業計画の策定に際しては、当社グループが入手可能な情報や一定の前提に基づいているため、以下に掲げる各リスク等を含む様々な要因により、当社グループの事業及び経営成績が想定した目標を達成できない可能性があります。

当社グループは事業計画、研究開発の進捗、市場環境の変化、内部リソースの状況などを随時レビューしており、重要事項については取締役会、経営会議で適切にモニタリングし、管理をしていきます。

 

(2) 技術革新について

当社グループは、他社に先駆けてユーザーのビジネスにAIを実装してきたフロントランナーであります。近年、当社グループが属する市場においては、急速な技術変化とサービス水準の向上が進んでおり、これに伴いクライアントのニーズも著しく変化しております。今後、クライアントのニーズの変化及び技術革新への対応が遅れた場合、当社グループの事業並びに経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

一方で、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する投資が加速され、人が行う作業をデジタル化することで業務を効率化、高度化することができるAI製品の需要が増加いたしました。当社グループは、AIを主体としたビジネスモデルへのポートフォリオ・トランスフォーメーションを進めておりますが、これをさらに加速させ、AIソリューションを展開している各分野において事業領域の拡大・開拓、業務提携先との共同開発を積極的に推進しております。

 

(3) 情報の管理について

当社グループの事業では、事業の特性上、ITシステムを使った調査の際に顧客企業の重要な情報を保有することとなるため、高度な情報の管理が求められておりますが、災害、機器・ソフトウェアの欠陥などに乗じた外部からの不正アクセス、社員の不正等により、機密情報の喪失、個人情報の漏洩などが発生する可能性があります。

このような予期せぬリスクが顕在化した場合、事業の中断や損害賠償請求、信用の低下等により、当社グループの事業及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。AIソリューション事業のライフサイエンスAI分野では、医療機器の製造販売承認申請のための治験を進めており、診断に関わる医療情報、創薬に関わる製薬企業の重要機密情報を取り扱っております。またビジネスインテリジェンス分野では、金融や知財、サプライチェーンなどの機密性の高い情報を取り扱っており、同様に高度な情報の管理が求められております。

当社グループでは、データ処理センターを分散配置し、静脈認証や入退室管理の徹底、耐火金庫による調査データの保管、外部と隔絶されたネットワークの構築等により安全な作業環境の確保に努めております。また、そのサービス運用において、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際標準規格である「ISO27001」、並びに国内規格である「JISQ27001」の認証を取得し、認証に基づく規定類により各種オペレーションを管理するとともに、社員教育及び継続的な情報セキュリティ改善活動を実施し、リスクを未然に防ぐよう取り組んでおります。

なお、米国子会社のFRONTEO USA,Inc.において、2022年5月にサイバー攻撃による不正アクセスが発覚しております。当社では再発防止・改善のため、セキュリティシステムを全面的に見直し、外部の専門機関の協力も得ながら①侵入防止、②侵入時の早期検知、③侵入された場合の被害の最小化対策を講じております。

 

(4) 人材の確保について

当社グループでの事業展開においては、専門的な情報技術や業務知識を有する有能な人材を確保する事が重要であります。しかしながら、人材需要が旺盛なAIソリューション事業及びリーガルテックAI事業を対象とした、専門性を有する人材は限られております。

そのため、日本国内での少子高齢化による労働人口減少、AIソリューション事業及びリーガルテックAI事業における人材需要の増加及び要求されるスキルレベルの高度化により、有能な経営幹部並びに一般社員の必要数を確保できない場合、または既存の有能な人材が社外に流出した場合には、当社グループの経営活動に支障が生じ、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、積極的な採用活動を継続して行っており、これを更に強化いたします。加えて、開発、営業推進、サービスの実装というユーザーのニーズや導入フェーズに合わせて必要となる人材の育成を進めてまいります。また、当社独自の技術と実績をアピールすることで、認知向上と人材の確保に取り組んでまいります。

 

(5) 継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは、単体及び連結損益計算書において2期連続経常損失を計上しております。

また、米国子会社に関する顧客関連資産及びのれんの減損による特別損失2,475,459千円を計上したことに伴い、当社が保有する当該米国子会社株式の評価損6,895,040千円を計上した結果、単体及び連結の株主資本または純資産の合計額が低下いたしました。

このことから、取引金融機関との間で締結しているタームローン契約並びにコミットメントライン契約の財務制限条項に抵触し、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。

しかしながら、該当するすべての取引金融機関とは緊密な関係を維持しており、当該抵触を理由とする期限の利益喪失請求を行わないことについて、該当する全ての金融機関よりこれを認める方針である旨の回答を得ていること、また営業キャッシュ・フローの改善により現金及び預金が前連結会計年度比、1,568,090千円増加し、当連結会計年度末に3,043,671千円となったことから、事業運営に必要な資金は十分に確保されており、資金繰りに懸念はありません。

また、翌連結会計年度において、AIソリューション事業のライフサイエンスAI分野では、塩野義製薬との業務提携契約による中長期的な収益基盤の確立に加え、他疾患を対象とした新規アライアンスによる非連続な成長を目指してまいります。

ビジネスインテリジェンス分野では、「KIBIT Eye」を基幹サービスとして、リカーリング収益が積みあがっており、翌期以降の収益の安定性とリニアな成長に貢献する見込みであります。

経済安全保障分野では、「KIBIT Seizu Analysis」を中心としたリカーリング収益の拡大によるリニアな成長と、官公庁や企業の意識の高まりによる、経済安全保障関連投資予算の拡大を背景に、包括契約等による非連続な成長を目指します。

リーガルテックAI事業においては、当期に実施したコスト構造改革及び減損による償却費の減少の効果により大幅な収益改善が見込まれます。

以上のことから、AIソリューション事業の成長とリーガルテックAI事業の収支改善による収益貢献が引き続き見込まれること、且つ事業運営に十分な資金が既に確保されていることから、当社グループには継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。

 

(6) その他

① 法的規制について

AIソリューション事業におけるライフサイエンスAI分野では医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に準拠する必要があります。今後、他分野においても、新たに法律や規制が制定された場合や、業界内で自主規制が求められた場合には、当社グループの事業上の計画等の見直しが必要となる可能性があります。その結果、これらに対応するための支出が増加する等、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 リーガルテックAI事業において、当社グループは米国における訴訟制度に基づくディスカバリ(証拠開示)支援サービスを行っておりますが、現在のところ、当社グループが事業を展開するにあたり、法的な制約は受けておりません。しかしながら、今後、米国における訴訟関係の法律、法令が変更された場合、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、日本国内において新たな法規制が制定された場合にも、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

② 知的財産等について

当社グループによる第三者の知的財産権侵害の可能性については、調査可能な範囲で対応を行っておりますが、当社グループの事業領域に対する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社グループが認識をせずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できません。この場合、ロイヤリティの支払や損害賠償請求等により、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

③ 為替相場の変動について

当社は、日本円を価格決定のベースとした外貨建て(米ドル)の取引を継続する予定であります。このため、為替相場の変動は外貨取引の収益や財務諸表の円貨換算額に影響を与えます。また、為替相場の変動は、海外の連結子会社の収益や財務諸表の円貨換算額に影響を与える可能性があります。

当社では、為替変動リスクの主な要因である親子会社間の債権債務の減少、債権回収の早期化により、リスクを低下させる方針を取っております。また、並行して為替動向を注視し、必要に応じて為替予約等により、リスクを最小化しております。

 

④ 感染症、自然災害等について

新型インフルエンザ、新型コロナウイルス等の感染症の世界的拡大、地震や風水害などの大規模災害が発生した場合、当社グループでは、事業継続計画に基づき、速やかにかつ適切に全社的対応を行うよう努めてまいりますが、事前の想定をはるかに越えた規模に影響を与える事象により、事故発生後の業務継続、復旧がうまくいかなかった場合、当社グループの事業及び業績に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 気候変動について

気候変動に伴う自然災害や異常気象等によって当社関連施設等に物理的な被害を被った場合、または、当社の気候変動への対応が不十分と評価された場合には、当社グループの事業、経営成績、財政状態に影響が現れる可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容)

(1) 経営成績

 (AIソリューション事業)

ライフサイエンスAI分野 AI創薬領域

ライフサイエンスAI分野のAI創薬領域であるDD-AIFは、創薬標的探索をはじめ、ドラッグリポジショニングにおける案件を複数受託し、実績を積み重ねております。その中で、当社の創薬研究者が提案する成果物に加え、製薬企業と当社の研究者間で協調しながら最終成果物を創造する「共創プロジェクト型」の要望が多く寄せられております。こうした顧客ニーズに応えるために、共創プロジェクトの提案を開始しております。

当社は2024年1月30日にSpringer Nature(以下、シュプリンガーネイチャー社)と業務提携契約を締結し、同社が出版するジャーナルの掲載論文などのデータを「KIBIT」で解析する新たなサービスを開始いたしました。本業務提携契約により、最先端の論文のフルテキストデータを解析に用いることができ、情報量の大幅な増加や求める情報に到達するスピード・質の向上など、DD-AIFの機能が強化されます。この新たなアプローチにより、DD-AIFにおいて、従前より早い段階で、多数の標的遺伝子・分子などを捉えることが可能となり、また、極めて高い網羅性を強みとして、新規性の高い標的分子や適応症などとその根拠となる仮説の提案を通して、顧客ニーズに応えてまいります。

 

ライフサイエンスAI分野 AI医療機器領域

AI医療機器領域では、2024年2月14日に塩野義製薬と「認知症・うつ病の診断支援AIプログラム事業に関する戦略的業務提携契約」を締結し、ライフサイエンスAI分野における中長期的な収益基盤の構築を開始いたしました。この契約により、契約一時金に加え、開発の進展などに応じたマイルストーンフィー、並びに製品上市後の販売額に応じたロイヤリティフィー等を受領する予定です。引き続き両社は、世界に先駆けた自然言語処理AIを用いた医療機器として、「会話型 認知症診断支援AIプログラム」の日本での製造販売承認取得の早期化及び社会実装を目指してまいります。

また、当社はその他の精神神経疾患として、統合失調症やADHDを対象とするAI医療機器の開発についても、協業・アライアンスの検討を開始しており、世界に先駆けた自然言語処理AIを用いた医療機器として、日本での製造販売承認取得の早期化を目指してまいります。

 

ビジネスインテリジェンス分野

ビジネスインテリジェンス分野においては、企業のDX推進や不正リスクの未然防止に関する社会的な要請の強まりによる旺盛な需要により、売上高は堅調に推移しております。当連結会計年度においては、株式会社三菱UFJ銀行(以下、三菱UFJ銀行)に「KIBIT」を搭載したAIソリューションが導入されるなど、同分野における当社のプレゼンスが向上しております。また、森永製菓株式会社に技能伝承を支援する「匠KIBIT(タクミキビット)」を導入するなど、大手金融機関だけでなく大手製造業や様々な業種においても当社のソリューションの導入が進んでおります。これらは継続的な取引を前提とした契約であり、導入企業数の増加に応じて収益が積み上がる、いわゆるリカーリング/ストックビジネスであり、当連結会計年度は同分野において、収益の約60%まで積み上がり、当社グループの収益基盤の安定化と継続的な拡大に大きく貢献しております。

また、不正検知システム「KIBIT Eye」の機能向上や企業の技能伝承を支援する「匠KIBIT零」を開発するなど、AIを含む先端技術を必要とする多様な顧客のニーズに応じた開発にも注力しております。

不正リスクの未然防止に関する顧客認識は、当社が開催している不正対策勉強会においても、申込者数が過去最 高を更新するなど、各社において、取り組みを強化する姿勢・ニーズが確認されており、社会的な要請も強まることが予想されることから、当該市場は今後も拡大するものと見込んでおります。当社は、「KIBIT Eye」の提供を通じて、網羅的かつ最適な監査を支援・実現させることを目的として、引き続きパイプラインの拡大に努めてまいります。

 

経済安全保障分野

経済安全保障分野においては、昨今の地政学リスクを背景に、企業の調達リスクや各国の規制による制裁リスクが一層高まっております。

当連結会計年度においては、これらのリスク対策だけでなく、対応の遅れによる機会損失も懸念される中、民間企業のサプライチェーンリスクの可視化ニーズが拡大するなど、官公庁や大手企業において、一定規模の投資予算が確保される傾向にあります。米国の税関・国境取締局による輸入差し止めを回避するための対策や、海外からの調達を安定化させる支援を「KIBIT Seizu Analysis」による解析を用いて実施しております。また、官公庁やシンクタンクにおいても当社の独自技術が活用され、多面的な解析やサプライチェーン及び株主支配ネットワークの可視化を通じて、最適な経済安全保障対策の支援を行っております。引き続き、変容する社会情勢を注視しながら研究開発を進め、最適なソリューションを提供することで事業の拡大に努めてまいります。

 

 (リーガルテックAI事業)

リーガルテックAI事業は、当社ポータルサイト「FRONTEO Legal Link Portal」、勉強会、ウェビナーなどのマーケティング活動を積極的に推進しております。それらの活動により、顧客である弁護士事務所や企業からの問い合わせ数、受注数は着実に増加し四半期毎に売上回復基調は継続しておりますが、期初計画からは遅れており、売上高、営業利益ともに軟調に推移しております。一方で全社的なコスト構造の改善効果により、当第4四半期連結会計期間におけるセグメント営業利益は黒字化し、今後も同事業における収益性は改善基調を見込んでおります。引き続き、マーケティングや営業の活動量を高め、収益の回復に努めてまいります。

 

各事業の当連結会計年度の概況は以下のとおりです。

なお、第1四半期連結会計期間より、ライフサイエンスAI分野の売上高の一部をビジネスインテリジェンス分野に移管したことに伴い、前年同期の数値を移管後の数値に組替えて比較しております。

 また、第1四半期連結会計期間より、報告セグメントごとの業績をより適切に反映させるため、全社費用の配分基準の見直しを行ったことに伴い、前年同期の数値を変更後の数値に組替えて比較しております。

 

 (AIソリューション事業)

ライフサイエンスAI分野につきましては、当連結会計年度において塩野義製薬と業務提携契約を締結し契約一時金の一部を収益認識したこと、AI創薬の解析案件及びDD-AIFの実証実験を受託したこと等により、売上高は620,523千円(前年同期比147.4%増)となり、期初計画を上回る結果となりました。

ビジネスインテリジェンス分野につきましては、前期に取り組んだ営業体制強化の効果等により売上パイプラインが堅調に積み上がったことに加えて、当連結会計年度において三菱UFJ銀行で「KIBIT」を搭載したAIソリューションが導入されたことなどにより、売上高は1,861,313千円(前年同期比19.3%増)となりました。

経済安全保障分野につきましては、三菱電機株式会社をはじめ、官民複数の企業・官公庁への導入が進み本格的な事業化に向け着実に進捗しており、売上高は316,008千円(前年同期比707.6%増)となり、期初計画を大幅に上回る結果となりました。

その結果、AIソリューション事業全体の売上高は2,797,845千円(前年同期比51.2%増)と期初計画を上回る結果となりました。また、営業損益につきましては、売上増加による利益の増加の一方で、前期下期より実施したビジネスインテリジェンス分野における営業体制の強化、経済安全保障分野の組織体制の構築等によるコスト増加により、162,254千円の営業利益(前年同期は319,913千円の営業損失)となりました。

 

 (リーガルテックAI事業)

リーガルテックAI事業につきましては、顧客基盤の構築に向けた各種施策に対する効果により問い合わせ数が増加し、回復基調を維持しているものの売上高は4,577,427千円(前年同期比14.7%減)となりました。また、営業損益につきましては、全社的なコスト構造の改善により347,583千円の営業損失(前年同期は1,042,077千円の営業損失)となりました。

 

 

以上の結果、当連結会計年度の連結業績は、売上高7,375,273千円(前年同期比2.2%増)、営業損失185,329千円(前年同期は1,361,990千円の営業損失)、経常損失168,112千円(前年同期は1,292,518千円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失2,843,119千円(前年同期は1,701,317千円の親会社株主に帰属する当期純損失)という結果となりました。

なお、米国子会社において、主要顧客の案件終了に伴い米国子会社の事業計画を見直した結果、株式取得時に見込んでいた将来の成長及び事業計画の実現が困難であると判断し、米国子会社の株式取得時に発生した、顧客関連資産及びのれんにかかる減損損失を2,475,459千円計上、台湾子会社において、今後の収益性が低下したことから台湾子会社に関する固定資産に係る減損損失を17,769千円計上しております。

また、リーガルテックAI事業の自社利用ソフトウエアの一部について今後の利用停止を決定したこと等により減損損失を98,660千円計上、コスト構造の最適化を目的とした構造改革費用85,757千円を特別損失として計上しております。

 

(2) 財政状態

(資産)

総資産は、前連結会計年度末と比べて1,622,364千円減少し、7,522,865千円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末と比べて1,320,707千円増加し、4,964,657千円となりました。これは主に、塩野義製薬との業務提携契約に伴い契約一時金を受領したこと等により、現金及び預金が1,568,090千円増加したことによるものです。

固定資産は、前連結会計年度末と比べて2,943,072千円減少し、2,558,207千円となりました。これは主に、通常の償却と減損処理等によりのれんが1,345,594千円減少、顧客関連資産が1,218,755千円減少したことによるものです。

 

(負債)

負債合計は、前連結会計年度末と比べて588,126千円増加し、4,683,305千円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末と比べて1,213,692千円増加し、3,422,866千円となりました。これは主に、借入実行により短期借入金が700,000千円増加、前受金が506,750千円増加したことによるものです。

固定負債は、前連結会計年度末と比べて625,566千円減少し、1,260,438千円となりました。これは主に、長期借入金を流動負債に振り替えたことにより707,455千円減少したことによるものです。

 

(純資産)

純資産合計は、前連結会計年度末と比べて2,210,491千円減少し、2,839,559千円となりました。これは主に円安の影響により為替換算調整勘定が393,703千円増加した一方で、のれん等の減損による特別損失を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことにより利益剰余金が2,843,119千円減少したことによるものです。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、3,039,480千円となりました。

 

当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況と、その主な要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー) 

営業活動により支出した資金は1,710,181千円(前年同期比2,624,797千円の収入の増加)となりました。これは主に、塩野義製薬との業務提携契約に伴う契約一時金の入金やその他未収入金の回収等1,655,981千円によるものです。税金等調整前当期純損失2,837,347千円を計上しましたが、損失の大半は減価償却費680,594千円及びのれん償却額200,454千円、減損損失2,591,889千円の非資金項目によるものです。

 

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー) 

投資活動により支出した資金は181,862千円(前年同期比443,197千円の支出の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出210,252千円、無形固定資産の取得による支出269,867千円、無形固定資産の売却による収入280,351千円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により支出した資金は34,354千円(前年同期比571,970千円の支出の減少)となりました。これは主に、短期借入れによる収入700,000千円、長期借入金の返済による支出729,815千円によるものです。

 

(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2020年3月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

自己資本比率

29.1

37.5

53.3

53.2

34.7

時価ベースの自己資本比率

71.5

267.2

675.6

341.9

354.2

キャッシュ・フロー対有利子
負債比率

△23.6

2.8

1.6

△3.4

1.7

インタレスト・カバレッジ・
レシオ

△7.0

58.3

94.1

△31.5

75.7

 

自己資本比率:自己資本/総資産 

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産 

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー 

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(注)1 いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

   2 キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。

   3 有利子負債は貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。

 

(4)生産、受注及び販売の状況

① 生産実績

当社グループの事業内容は提供するサービスの関係上、生産実績の記載に馴染まないため記載しておりません。

 

② 商品仕入実績

当連結会計年度の商品仕入実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

AIソリューション事業

△100.0

リーガルテックAI事業

3,266

△48.3

合計

3,266

△48.5

 

(注)  上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

③ 受注状況

当社グループは、受注生産を行っていないため、該当事項はありません。

 

 

④ 販売実績

当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。

事 業 部 門 別

売上高(千円)

前期比(%)

AIソリューション事業

ライフサイエンスAI

620,523

147.4

ビジネスインテリジェンス

1,861,313

19.3

経済安全保障

316,008

707.6

AIソリューション事業売上高 計

2,797,845

51.2

リーガルテックAI事業

eディスカバリサービス

Review

1,374,791

10.1

Collection, Process

397,165

△28.4

Hosting

1,921,097

△28.2

3,693,054

△17.6

フォレンジックサービス

884,373

△0.1

リーガルテックAI事業売上高 計

4,577,427

△14.7

合               計

7,375,273

2.2

 

(注)1  上記金額には、消費税等は含まれておりません。

2  最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

     前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)

大手国内製造企業  757,952千円 10.50%

大手米国企業    749,734千円 10.39%

訴訟や公的機関が関係する取引であり先方のビジネスへの影響が懸念されるため、主な販売先の社名の公表は控えさせていただきます。

 

     当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

大手国内製造企業  770,241千円 10.44%

大手米国企業   1,004,837千円 13.62%

訴訟や公的機関が関係する取引であり先方のビジネスへの影響が懸念されるため、主な販売先の社名の公表は控えさせていただきます。

 3  AIソリューション事業については、経済安全保障の重要性が増したため、当連結会計年度より組み替えて表示しております。この表示方法の変更を反映させるため、前連結会計年度の販売実績の組替えを行っております。

 

(5) 当社グループの資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループは、主に営業活動から得られる自己資金及び金融機関からの借入を資金の源泉としております。設備投資並びに研究開発等の事業投資の長期資金需要につきましては、資金需要が発生した時点で、自己資金又は、金融機関からの長期借入金、増資等、資金調達コストの最小化を図れるような調達方法を検討し対応しております。また、運転資金需要につきましては、営業活動から得られる自己資金と金融機関からの借入金等により賄っております。

なお、当連結会計年度におけるシンジケートローン契約締結については、「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」、重要な設備の新設等の計画については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」、配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しております。

当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は2,926,294千円となっており、借入金については主に運転資金や過年度におけるM&A等のための資金で、全て金融機関からの借入となっております。当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は3,039,480千円であります。

 

 

(6) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(7) 長期的な会社の経営戦略

当社グループは「Bright Valueの実現~記録に埋もれたリスクとチャンスを見逃さないソリューションを提供し、情報社会のフェアネスを実現する~」という企業理念のもと、自社開発の特化型AI「KIBIT」の提供を通じて、日夜、社会課題と向き合う専門家の判断を支援し、イノベーションの起点を創造することで、祖業である国際訴訟支援、不正調査から製造、金融、小売、流通、そして医療分野といった様々なフィールドで、必要かつ適切な情報に出会えるフェアな世界の実現及び社会課題の解決に貢献しております。

ライフサイエンス、ビジネスインテリジェンス、経済安全保障の各分野でAIソリューションを提供する「AIソリューション事業」を成長事業と明確に位置づけ、それぞれの分野における成長種別 (リニア/非連続)とその因子を明確にし、経営資源の選択と集中を徹底することで、2029年3月期での中期戦略「ステージ4」の達成を目指してまいります。

 

■AIソリューション事業

(ライフサイエンスAI分野)

AI創薬領域では、2023年7月にDD-AIFを立ち上げ以降、創薬プロセスの最上流工程である創薬標的探索をはじめ、ドラッグリポジショニングにおける案件を複数受託し、着実に実績を積み重ね当社の優位性の検証が完了しております。創薬の開発には長い期間と多額の投資が必要となる一方、上市への成功率の低さや研究開発の難化に伴うコストの高騰が課題となっております。創薬の早期化や成功率の向上には、創薬プロセスの最上流工程である標的探索・選定プロセスと、研究開発の道筋を決める仮説の生成が不可欠ですが、当社はこの課題に対して、自社開発した特化型AI「KIBIT」を駆使した高度な解析・エビデンスに基づき、仮説生成の効率化・高精度化を通じて顧客の創薬の効率化及び成功確率の向上に資する提案を継続的に行っております。これらの実績が認められ、当社の創薬研究者が提案する成果物に加え、製薬企業と当社の研究者間で協調しながら最終成果物を創造する「共創プロジェクト型」の要望が多く寄せられており、当社の中長期的な中核ビジネスに成長させることを目指しております。

また、シュプリンガーネイチャー社との業務提携契約の締結により、同社が出版するジャーナルの掲載論文などのデータを「KIBIT」で解析するサービスを開始し、情報量の大幅な増加や求める情報に到達するスピード・質の向上など、DD-AIFの機能強化も行っております。

当社はこの市場において、自社開発の特化型AI「KIBIT」を用いた仮設生成に特化したAI創薬サービスを提供できる技術力を持つ唯一の企業であると考えております。その優位性は世界でも通用するものであり、海外を含めた創薬力向上に貢献できると考えております。AI創薬ビジネスは当社グループの中長期的な成長の柱と位置付け、早期の収益化を図り、医薬品開発における、効率化、最適化に必要不可欠なイノベーション企業を目指します。

 

AI医療機器領域では、塩野義製薬と「認知症・うつ病の診断支援AIプログラム事業に関する戦略的業務提携契約」を締結し、両社で世界初となる言語系AI医療機器の開発に着手し、早期の薬事承認申請に向け開発を進捗させております。この契約により開発の進捗に応じたマイルストーンフィーや上市後の販売額に応じたロイヤリティフィーの受領等を含めた中長期的な収益基盤を確保しております。また、「会話型 統合失調症診断支援AIプログラム」や 「会話型 ADHD診断支援AIプログラム」等の他疾患を対象とした複数の医療機器開発パイプラインに対してもアライアンス戦略を推進することで、非連続な成長を目指してまいります。

さらに、非医療機器製品向けには会話型ソリューションという特性を生かし、「銀行」「保険」「通信」「自動車」等の他産業との横断アライアンスによる社会実装や、海外展開も視野に入れ、飛躍的な事業拡大を目指しております。

 

(ビジネスインテリジェンス)

企業のDXへの投資や不正リスクの未然防止に関する意欲は、社会的な要請を背景として、引き続き旺盛であることが見込まれるため、当社のAIソリューションに対する需要は拡大基調を継続すると考えています。

基幹サービスの不正検知システム「KIBIT Eye」の大手金融機関への導入が加速するなど、当社ソリューションの対象市場におけるプレゼンス向上を背景に、既存顧客との取引深耕に加え、大手企業・準大手企業をターゲットとした大規模プロジェクトの獲得を視野に入れ、リカーリング収益の伸長による安定的な収益基盤とともに、同分野の中長期的なリニア成長を目指してまいります。

 

(経済安全保障分野)

経済安全保障分野においては、2022年5月に経済安全保障推進法が成立して以降、昨今の国際情勢による地政学リスクの高まりを背景に、官公庁と民間企業双方での経済安全保障への取り組みが進行しており、当社への経済安全保障関連の問い合わせは増加しております。

当社独自のAIシステム「KIBIT Seizu Analysis」は、公開情報を収集・分析し、政府及び企業を取り巻く膨大な情報と見えないネットワークに潜むリスクを可視化する事でチョークポイント(戦略的に重要な意味を持つポイント)を見つけ出す事が可能になり、トップマネジメント層の経営戦略立案及び最適な戦略の選択・実行を支援しています。

グローバルサプライチェーンを有する企業において、経済安全保障リスクは今後も対応が必須な経営課題であることから、当社を取り巻く市場環境は追い風になると見込んでおります。

アーリーアダプターへの訴求を継続し、包括契約(ライセンス、伴走支援の組み合わせ)を前提とした導入先企業拡大による非連続な成長と、その後のリカーリング収益の拡大を基盤とし、連結業績にも大きく貢献することを目指してまいります。

 

  ■リーガルテックAI事業

当社は、2003年の創業時から国際訴訟、不正調査の日本におけるパイオニアとして取り組んできた実績と高い信頼性に加え、調査プロセスをAIによって効率化するAIレビューツール「KIBIT Automator」等の技術力により、平時から有事までの一貫した対応を支援しています。

引き続き、当社ポータルサイト「FRONTEO Legal Link Portal」を活用したマーケティング活動、勉強会、ウェビナーなどを継続的に実施し、顧客基盤の強化・拡大を進め、収益相関性の高い組織・オペレーションを維持することにより、堅実な事業運営を推進してまいります。

 

(8) 経営者の問題認識と今後の方針について

経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「第一部  企業情報  第2  事業の状況  1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(業務提携)

 当社は2024年2月14日開催の取締役会において、塩野義製薬との間で認知症・うつ病の診断支援AIプログラム事業に関する戦略的業務提携契約(以下「本契約」)を締結することを決議し、2024年2月14日付で本契約を締結いたしました。

 

(1) 契約の目的

 認知症やうつ病などの精神神経疾患は、国内外において重要な健康課題と位置付けられており、これらの疾患の早期診断と治療の重要性が高まっております。特に専門医や専門機関に依存しない診断方法や、非医療機器では科学的根拠に基づいた自己診断方法の開発が急務となっております。

 当社が自社開発した自然言語処理AI技術を活用し、両社で高性能な診断支援AIプログラムおよび医療機器・非医療機器の開発と社会実装を目指してまいります。また、この技術を用いて、精神神経疾患における診断を効率化し、患者さまのQOL(Quality of Life)向上と医療関係者の負担軽減、医療資源の有効活用に貢献してまいります。

 

(2) 契約の内容

 両社は、自社開発の特化型AI「KIBIT」を活用し、当社が慶応義塾大学と共同で取得した、「認知症状判定装置等に係る発明」および「うつ症状判定装置等に係る発明」をベースに、認知症診断支援AIモデルおよびうつ病診断支援AIモデルとそれらの医療機器・非医療機器の共同開発、薬事承認の取得、事業化、早期市場浸透・市場拡大を目指してまいります。

 当社は、特許技術を用いたAIモデル及び医療機器・非医療機器の開発をはじめ、プログラム運用に関わる業務を担ってまいります。

 塩野義製薬は、臨床開発等を主体的に担い、販売においては医療分野における知識・経験・ネットワーク等をベースに、効率的な事業構築を目指してまいります。また、本契約締結により、塩野義製薬は、本製品の日本における独占的販売権を獲得いたします。

 

(3) 契約の相手先の名称

 塩野義製薬株式会社

 

(4) 契約の締結日

 2024年2月14日

 

(5) 契約の締結が営業活動等へ及ぼす重要な影響

 当社は、塩野義製薬から、契約一時金、今後の開発の進展などに応じたマイルストーンフィー、ならびに製品上市後の販売額に応じたロイヤリティなどを受領する予定です。当事業年度に契約一時金の一部を売上高に計上いたしました。翌事業年度以降もプロジェクト進捗に応じて収益を認識していく予定であるため、当社の中長期的な安定成長に寄与いたします。

 

(財務制限条項)

 当社は、2020年12月21日にタームローン契約、2022年1月24日及び2022年3月11日にコミットメントライン契約を締結しておりますが、それぞれの契約に財務制限条項が付されております。

 詳細は、「第5 経理の状況 注記事項(連結貸借対照表関係)」に記載しております。

 

6 【研究開発活動】

当社は、自社開発の特化型AI「KIBIT」について創薬支援、診断支援、経済安全保障、金融、人事・営業支援等さまざまなフィールドでの利便性をさらに向上させるため、新たなソリューションの拡充、製品の開発を行っております。当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は174,799千円であります。