文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び当社の関係会社、以下同じ)が判断したものであります。なお、業績見通し等の将来に関する記述は、当社グループが現時点で入手している情報や合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、経営理念の核である「新しい発想でお客様の価値創造に貢献します。」というミッションのもと、ESG(環境・社会・ガバナンス)を経営の中心に据えて、事業を通じた社会課題の解決に努め、持続可能な未来を実現するために、地球環境と社会に貢献しながら成長し続ける企業グループを目指します。
当社グループには、これまでの歴史で培ってきた基幹技術、多様な事業領域や強い知的財産、さらには幅広い業界における顧客基盤といった強みがあります。これらの強みを結集し、当社グループ独自のマーケティング活動である「三新活動」※1と「ニッチトップ戦略」※2で、イノベーションを加速させ、地球環境や社会に貢献できる製品やソリューションを創出していきます。
当社グループは、ESGを経営の中心に置き、地球環境や人類・社会、世の中にとって「なくてはならない」存在となり、持続的な成長をさらに加速させるために、当連結会計年度においてサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を見直しました。当社グループは、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)領域に対して定めた10のマテリアリティに取り組むことで、社会課題の解決と経済価値の創造の両立を実現し、企業価値向上を図ります。
領域 |
ありたい姿 |
マテリアリティ |
E (環境) |
未来の地球を守る |
脱炭素社会の実現 |
循環型社会の実現 |
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生物多様性の保全 |
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PlanetFlagsTMの創出 |
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S (社会) |
人と社会を豊かにする |
安全なモノづくり |
多様な人財の活躍 |
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人権の支持と尊重 |
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サプライチェーンの強靭化 |
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HumanFlagsTMの創出 |
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G (ガバナンス) |
ステークホルダーの 期待と信頼に応える |
経営の安全性向上 |
サステナビリティに関する考え方及び取組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
※1.三新活動とは、新用途開拓と新製品開発に取り組むことで、新しい需要を創造する活動です。
※2.ニッチトップ戦略とは、変化しながら成長するマーケットを見極め、その中のニッチな領域を対象に、当社グループ固有の技術・知見の融合と、ステークホルダーとの共創によりなくてはならない「製品」「機能」「ビジネスモデル」を継続的に生み出し、シェアNo.1を狙う、当社グループ独自の差別化戦略です。
(2)中長期的な会社の経営戦略
① 2030年ありたい姿と中期経営計画「Nitto for Everyone 2025」
当社グループは、2030年ありたい姿として、“ニッチトップクリエーターとして驚きと感動を与え続ける「なくてはならないESGトップ企業」”を掲げています。「Nittoらしさ」である、「チャレンジを楽しむ」社風・文化を土壌に、「環境・人類に貢献するニッチトップ」を創出し、お客様に最高の「驚きと感動」を提供することで、豊かな未来に貢献します。当社グループは、お客様やパートナーと共創イノベーションで新たな価値を生み出し、持続可能な地球環境・人類社会になくてはならない存在として、ステークホルダーからの信頼と期待に応えてまいります。
2023年度から2025年度までを実行期間とする中期経営計画「Nitto for Everyone 2025」では、「ニッチトップ戦略×Nitto流ESG戦略」の実践をスローガンに掲げ、「環境・人類に貢献する事業ポートフォリオ変革」、「ニッチトップを生み出すイノベーションモデルの進化」、「人財・チームの挑戦を加速する組織文化の改革」、「変化を先取る経営インフラへの変革」の4つの重点項目に取り組んでいます。2030年ありたい姿「なくてはならないESGトップ企業」を実現するために、中期経営計画の確実な遂行を進めていきます。
② 中期経営計画「Nitto for Everyone 2025」の重点項目と進捗
a.環境・人類に貢献する事業ポートフォリオ変革
経済価値と社会価値の両軸で見極めた“伸ばすもの”に対しては重点投資を進める一方で、将来の成長が見込まれない、環境化学物質規制で製造できなくなる可能性があるなど、“残さないもの”に対しては、撤退・売却も含めた打ち手で構造改革を進めます。M&Aやスタートアップ企業への出資を含む戦略的アライアンスを積極的に活用し、新規領域では、環境ビジネス・ソリューションビジネス創出にもチャレンジすることで、事業ポートフォリオの変革を進めます。
当連結会計年度は、希少疾患からより多くの患者を対象とした治療薬の商用化が進むと見込まれる核酸医薬市場での受託製造事業の需要に対して、米国及び国内で総額300億円超の設備投資を実施し、商用化対応の製造能力を持つ新工場が稼働しました。
新規領域では、環境ビジネスとして、脱溶剤化などによる消費エネルギー削減に加え、製造工程での排出が避けられないCO2の回収などのネガティブエミッション技術(大気中のCO2を回収・吸収し、貯蓄・固定することで大気中のCO2を除去する技術)の開発を加速させ、CO2削減のためのトータルソリューションとしての提案に向けて取り組んでいくネガティブエミッションファクトリー構想を推進しています。
b.ニッチトップを生み出すイノベーションモデルの進化
当社グループは、社会課題に対してなくてはならないニッチトップソリューションを提供する差別化技術を磨き、PlanetFlagsTM/HumanFlagsTMを生み出すこと、マーケティング力の強化で事業開発力を高めること、お客様やパートナーとの共創による事業化の加速を進めることで、これまで当社グループが培ってきた勝ち方に加えて、新しい勝ち方の確立を進めていきます。
当連結会計年度においては、新たに14製品(累計24製品)をPlanetFlagsTM/HumanFlagsTMとして認定いたしました。これらの製品をGlobal Niche TopTM製品※/Area Niche TopTM製品※へ育ててまいります。
環境貢献分野において、当連結会計年度では、エア・ウォーター株式会社との協業により、家畜ふん尿バイオマス由来のCO2から牧草の保存に使用されるギ酸(乳牛の飼料である牧草サイレージを生産する際に、劣化を防ぐために使用される添加剤)を製造する取組みを開始しました。ステークホルダーとの共創を通じ、CO2の有効利用による社会課題の解決と経済価値の創造の両立に貢献してまいります。また、バイオ材料開発の米国スタートアップであるCrysalis Biosciences社との共同開発により、核酸製造の重要な原材料のひとつであるアセトニトリル(溶剤)のバイオ化を推進しています。社会課題にフォーカスした次世代の環境技術を創出し、脱炭素化の加速と環境貢献分野での新規事業機会の獲得を目指します。
※「Global Niche Top」「Area Niche Top」は当社の登録商標です。
c.人財・チームの挑戦を加速する組織文化の改革
当社グループは、「人財は最も重要な財産」と位置付けています。持続的な成長に必要となる新しいイノベーションを生み出すために、チャレンジする機会の拡充と人事・育成制度の変革を行います。また、多様な事業展開や新たな勝ち方の構築を加速するために、事業開発人財の育成や異業種人財の獲得を強化し、個々の活躍を支えるインクルージョン施策に取り組みます。全ての従業員が活き活きと働く会社を目指し、「Nittoらしい」人的資本経営を進めてまいります。
従業員の声を集め、会社としての課題、各部署の課題を考え、一人ひとりが活き活きと働ける組織づくりにつなげるため、隔年でグローバルエンゲージメントサーベイを実施しています。2023年度のサーベイ(回答率94%、回答者数23,776人)は、エンゲージメントスコアが前回比7pt上昇の81になり、各社・各拠点の活動の成果が表れる結果となりました。
また、専門性と多様性を拡充するため、当社において、2021年度よりキャリア人財の採用を強化しています。当連結会計年度においては、新卒人財とほぼ同数のキャリア人財を採用しました。
上記を含む様々な取組みの推進、積極的な情報発信を行ったことで、「人的資本調査2023」における「人的資本リーダーズ2023」及び「人的資本経営品質(ゴールド)」を受賞、また、「D&I AWARD 2023」において、最高評価の「BEST WORKPLACE」に認定されました。
d.変化を先取る経営インフラへの変革
当社グループが目指す「ニッチトップ戦略×Nitto流ESG戦略」の実践には、取り巻く事業環境の変化を先取りすることが必要です。地政学リスクをはじめとしたサプライチェーンリスクへの先見力と対応力の向上や、デジタル活用によるデータドリブン経営の実践、資本効率性が高い、強靭な財務体質の維持・向上など、「なくてはならないESGトップ企業」を支える強靭な経営インフラへ、変革を進めます。
当連結会計年度においては、強靭なサプライチェーンを構築するために設立したサプライチェーンコミッティ活動の中で、地政学リスクや化学物質規制リスクなどのリスク対応や、未財務目標のひとつであるサステナブル材料使用率を高める取組みを推進しました。また、資本効率性が高い、強靭な財務体質を維持・向上するため、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を明確にしました。当社グループは、ROE(財務領域)とPER(未財務領域)双方の観点からPBR向上を目指す考え方のもと、ROEを主たる経営指標の一つとして位置づけ、当期利益率と資産回転率に主眼を置き、三新活動、ニッチトップ戦略、成長戦略と構造改革の遂行、ビジネスモデルの変革を進めてまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「Nitto for Everyone 2025」において、2025年度末における経営上の目標を、営業利益1,700億円、営業利益率17%及びROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)15%と定めました。
また、当社グループでは、現時点では未だ財務には至っていないが将来的に財務となり得る要素、あるいは財務に転換していく要素を“未財務”と呼び、9つの未財務指標を設定しています。これら未財務指標の目標達成に向けた活動を推進することで変革を加速し、企業価値向上を図ります。
なお、環境系未財務指標のひとつであるCO2排出量は、「Nittoグループ カーボンニュートラル2050」の達成に向け、Scope1+2をターゲットに目標を設定しており、2023年度のCO2排出量は目標値を大幅に達成する見込みです。今後は、さらなる気候変動への対応を加速すべく、脱溶剤化や再生可能エネルギーの推進※1などに取り組み、2030年度目標を470kton/年からSBT※2に基づく400kton/年へと上方修正しています。
※1.当社グループは、使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指していることから、RE100(企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ)への加盟を申請中です(2024年4月末現在)。
※2.SBTとは、Science Based Targetsの略で、パリ協定で採択された科学的根拠に基づく目標(産業革命前比で気温上昇を1.5℃未満に抑える目標)と整合した、企業が設定する「温室効果ガス排出削減目標」を指します。当社グループは現在SBT申請中です(2024年4月末現在)。
未財務指標 |
2023年度 |
2025年度 |
2030年度 |
関連する マテリアリティ |
|
製 品 系 |
新製品比率(1) |
41% |
35%以上 |
35%以上 |
- |
ニッチトップ売上収益比率(2) |
44% |
50% |
50%以上 |
- |
|
PlanetFlagsTM/HumanFlagsTM |
36% ※貢献製品認定品 |
40% |
50%以上 |
PlanetFlagsTMの創出 HumanFlagsTMの創出 |
|
環 境 系 |
CO₂排出量(4) |
525kton/年 |
550kton/年 |
400kton/年 |
脱炭素社会の実現 |
廃プラスチック |
47% |
50% |
60% |
循環型社会の実現 |
|
サステナブル材料使用率(6) |
16% ※国内(単体) |
20% |
30% |
||
人 財 系 |
女性リーダー比率(7) |
20% |
24% |
30% |
多様な人財の活躍 |
エンゲージメントスコア(8) |
81 |
78 |
85 |
||
チャレンジ比率(9) |
37% |
70% |
85% |
(1)当社グループの競争力の源泉である新製品の創出度合を計る指標
(2)なくてはならないNitto製品の拡大を計る指標
(3)Nitto流ESG経営の根幹であるPlanetFlagsTM/HumanFlagsTM製品の拡大を計る指標
(4)「Nittoグループカーボンニュートラル2050」に向けた取組みの進捗を計る指標
(5)サーキュラーエコノミーに対する取組みの進捗を計る指標
(6)環境やサプライチェーンの人権を考慮したサステナブルな材料の調達度合を計る指標
(7)組織を牽引する女性リーダー増加によるダイバーシティの促進を計る指標
(8)組織の業績成長との関係性が強い、従業員の「帰属意識・貢献意欲」「生産的な職場環境」「心身の健康・活力」の3要素を計る指標
(9)新たな価値創造に向けて自分の経験や可能性を拡げるチャレンジをした従業員の割合を計る指標
(注)CO2排出量及び廃プラスチックリサイクル率の2023年度実績数値については、提出日時点の集計値であり、第三者保証を取得した数値については、Nittoグループ サステナビリティデータブック 2024にて開示いたします。
(4)各報告セグメントの戦略と取組み
各報告セグメントにおける主な戦略と取組みは、次のとおりであります。
・インダストリアルテープ
インダストリアルテープは、生成AIの普及や先進運転支援システムの技術進歩を背景に、半導体やセラミックコンデンサー向け工程用材料の需要が増加することが見込まれます。自動車材料は、モーターやバッテリーの周辺部材である絶縁材料やサブガスケット材の拡販とEVの性能向上に資する熱マネジメント材料の開発に取り組みます。また、急速に高まっている電子機器における修理する権利(Right to Repair)の機運に対し、当社グループの剥離技術を活用した新製品を投入し、事業拡大を図ります。これらの取組みを通じて、インダストリアルテープ全体として安定的に高い利益率を生み出せる事業基盤の構築を目指します。
・オプトロニクス
オプトロニクスにおける情報機能材料は、ディスプレイ市場が成熟化する中、フォルダブルスマートフォンなどのハイエンド製品向けに注力します。また、光学フィルムとその他周辺部材を合わせたトータルソリューションで、顧客の生産性向上や環境負荷低減に貢献します。当社グループの強みである耐久性に優れた車載向け光学フィルムは、1台当たりのディスプレイ搭載数の増加や面積拡大により需要は堅調に推移すると見込まれます。
なお、英国の拡張現実(AR)グラス開発企業TruLife Optics社の株式を一部取得することを決定しました。ARグラスの性能や快適さを向上させるために、当社グループの強みである光学設計技術や薄膜・多層塗工などの粘接着技術を活かした材料開発に注力していきます。
回路材料は、HDD市場の在庫調整が一巡し、需要が再び増加することが見込まれます。さらにデータセンター向けHDD市場において、新たな技術が実用化されるなど、HDDの高容量化が一段と進むことが想定されます。これらの需要に対し、ベトナム拠点に新工場を建設し、生産能力を増強する予定です。ハイエンドスマートフォン向け高精度基板は、顧客との関係を深め、将来の成長に資する製品の開発に取り組みます。
・ヒューマンライフ
ヒューマンライフにおけるライフサイエンスは、核酸医薬の受託製造事業において、希少疾患からより多くの患者を対象とした治療薬の商用化への移行が期待されており、市場は中長期的に成長することが想定されます。また、核酸医薬市場の拡大を背景に、その製造に使用される合成材料(NittoPhaseTM)の需要増加が見込まれます。これらの成長市場に対して、生産能力の増強や生産性向上を図ります。核酸創薬においては、核酸DDS(Drug Delivery System)設計技術の開発とライセンス契約締結に注力していきます。なお、難治性の癌治療薬の開発は、臨床第1相試験が完了の見込みです。
メンブレンは、海水淡水化向けを戦略的に縮小する一方で、各国における排水規制強化に対して、排水・廃液のゼロ化に貢献する製品の需要が増加すると見込んでいます。
パーソナルケア材料は、おむつ向け衛生材料の新製品と生分解性技術を用いた環境貢献型製品の拡販により、収益性の改善を図ります。
・その他
その他における新規事業では、PlanetFlagsTM/HumanFlagsTMの候補となるテーマに経営資源を集中的に投入し、早期の事業化を目指します。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般
①ガバナンス
当社グループは、持続可能な社会を実現するために、ESG(環境・社会・ガバナンス)を経営の中心に置き、社会課題の解決と経済価値の創造の両立を目指すESG経営の推進を経営上の重要課題と認識しています。このESG経営を機能させるために、ガバナンス体制の構築に取り組み、中長期的な企業価値向上を目指しています。
サステナビリティに関する課題を解決するために、取締役社長兼CEOを最高責任者とし、取締役会の指示・監督の下、経営戦略会議を中心としたガバナンス体制を構築し、短中期及び長期的な戦略策定・推進を図っています。
当社グループは、一般的なサステナビリティ委員会やESG委員会といった機能を経営戦略会議に統合し、気候変動に関する重要な課題は取締役社長兼CEOが業務執行責任を負う体制としています。これにより、ESGを迅速かつ適正に経営へ組み込むことが可能となり、企業の持続可能性と成長戦略が一体化することでより高い実行性を確保するガバナンスを実現しています。
②戦略
当社グループは、社会課題の解決と経済価値創造の両立を実現させるため、サステナビリティ基本方針に基づく具体的な活動として、サステナビリティ重要課題を特定しています。ESGを経営の中心に置き、地球環境や人類・社会、世の中にとって「なくてはならない」存在となり、持続的な成長をさらに加速させるために、2024年にサステナビリティ重要課題を見直しました。マテリアリティは、自社及びステークホルダー(環境・社会)に影響する長期的な課題から重要性が高い項目を抽出・特定しています。取組みにあたっては、それぞれの課題におけるリスクと機会を認識し、事業計画へ反映しています。
※GHG(Greenhouse Gas)=温室効果ガス
③リスク管理
当社グループは、事業活動に重要な影響を及ぼす可能性があると経営者が認識したサステナビリティに関する主要なリスク・機会について、適切に管理しています。サステナビリティに関する主要なリスク・機会は、自社及びステークホルダー(環境・社会)に影響する長期的な課題を把握し、インシデントが発生した場合の事業への「影響度」、実際に発生する「発生可能性」から相対的な重要度評価・特定(選定)を行うとともに、リスク・機会の優先順位を決定しています。
サステナビリティに関するリスク・機会は、ESG経営を推進する担当部署が管理責任を負い、環境担当部署、安全担当部署、人財担当部署、コンプライアンス担当部署等の関連部署と連携を行います。
モニタリングしたリスク・機会に関する情報は、取締役、執行役員によって構成される経営戦略会議にて毎月報告・審議されます。審議結果は直ちに関係部署に展開され、リスク・機会への対策を速やかに実行し、統制の強化を図ります。実行内容や改善状況は、再び経営戦略会議において、報告・確認し、グループのマネジメントの実効性を高めています。
リスクの詳細については、「
④指標及び目標
当社グループは、2030年ありたい姿の実現に向け、サステナビリティ重要課題に対する指標と目標を設定するとともに、確実な実行のための適正な進捗管理を行っています。
詳細については、「
(2)気候変動
①ガバナンス
当社グループは、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)の一つとして「脱炭素社会の実現」を挙げ、気候変動への取組みを強化しています。
気候変動に関する課題を解決するために、取締役社長兼CEOを最高責任者とし、取締役会の指示・監督の下、経営戦略会議を中心としたガバナンス体制を構築し、短中期及び長期的な戦略策定・推進を図っています。
また、気候変動に関する取組みの実行性を高めるために、気候変動関連課題を推進する担当役員を責任者とする「Global Green Committee」を設置し、組織横断的な連携を強化するとともに、戦略検討、課題への対応策の実行・推進を行っています。
②戦略
当社グループは、2015年パリ協定締結や日本政府のカーボンニュートラル宣言など、社外動向に沿う形で、自社のみならずサプライヤーから顧客までバリューチェーン全体において、気候変動により想定される移行及び物理的なリスク・機会について、シナリオ分析を行いました。このシナリオ分析結果は、「Nittoグループカーボンニュートラル2050」を含む2030年経営指標や中期経営計画「Nitto for Everyone 2025」に組み込まれており、戦略の有用性を確認することができました。一方、2030年経営目標であるCO2排出量について、科学的根拠に基づき1.5℃に沿ったより高い目標とすべく470ktonから400ktonへ見直しを行いました。目標達成に向け、脱溶剤化や省エネルギー化、再生可能エネルギーの利用、環境貢献製品の創出に取り組み、リスクの最小化及び機会の最大化を図ります。
今後も、「脱炭素社会の実現」を目指し気候変動に係る対応を経営上の重要課題と認識し、戦略的に経営への組込みを行います。
③リスク管理
当社グループは、事業活動に重要な影響を及ぼす可能性があると経営者が認識した気候変動に関する主要なリスク・機会について、適切に管理するとともに、事業活動に重要な影響を与えるその他の主要なリスクと統合させることで、グループ全体としても包括的に管理しています。
気候変動に関する主要なリスク・機会については、社内外環境変化に伴う自社への影響を把握し、インシデントが発生した場合の事業への「影響度」、実際に発生する「発生可能性」から相対的な重要度評価・選定(特定)を行うとともに、リスク・機会の優先順位を決定しています。
気候変動に関するリスク・機会は、事業執行部署、エリア統括が連携してモニタリングを行うとともに、その管理責任を環境担当部署が負います。モニタリングしたリスク・機会に関する情報は、その他専門機能部署で管理されている情報とともに取締役、執行役員によって構成される経営戦略会議にて毎月報告・審議されます。審議結果は直ちに関係部署に展開され、リスク・機会への対策を速やかに実行し、統制の強化を図ります。実行内容や改善状況は再び経営戦略会議において報告・確認し、グループのマネジメントの実効性を高めています。
④指標及び目標
当社グループは、サステナビリティ重要課題の一つとして「脱炭素社会の実現」を掲げており、地球温暖化の原因であるCO2排出を削減することは、持続的成長と持続可能な環境・ 社会の実現に不可欠であり、重要な社会的責務と考えています。
そこで、リスクの最小化や機会の最大化を図るべく、対応策を確実に実行し、またその対応状況を定期的に把握・管理するために、2030年指標及び目標を設定しています。「CO2排出量(Scope1+2)」「廃プラスチックリサイクル率」「サステナブル材料使用率」「PlanetFlagsTM・HumanFlagsTMカテゴリ売上収益比率」など主要な指標・目標については、2030年経営目標としても掲げ、Nittoグループ全体での管理を行っています。
また、2050年にはCO2排出量(Scope1+2)実質ゼロを掲げ、「Nittoグループカーボンニュートラル2050」宣言を行っています。
詳細については、「
気候変動に関する詳細な情報については、当社ウェブサイト(https://www.nitto.com/jp/ja/sustainability/infocus/TCFD/)に公表されている「TCFD提言に基づく情報開示」をご参照ください。
(3)人的資本
①ガバナンス
当社グループは、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)の一つとして「多様な人財の活躍」を挙げ、チャレンジする人財の獲得・育成及びDE&Iの推進への取組みを強化しています。
人財に関する課題を解決させるために、取締役社長兼CEOを最高責任者とし、取締役会の指示・監督の下、経営戦略会議を中心としたガバナンス体制を構築し、短中期及び長期的な戦略策定・推進を図っています。
また、人財マネジメントに関する重要な方針・戦略・課題・施策を社内基準に基づき、各会議体で報告・決議しています。そこで意思決定された活動をグループ本社の人財本部が中心となり、国内の各事業部門や各拠点、国内外のグループ会社と密に連携し取組みを進めています。
各会議体と各人事機能の業務執行により、人財戦略に基づく適切な人財マネジメントの管理体制を構築しています。
[人財マネジメント体制]
②戦略
当社グループは、「人財は最も重要な財産」と位置づけ、The Nitto Wayを実践できるNitto Personをグローバルで育成しています。
そのために、経営理念を人財面で具現化するものとして「人財マネジメント基本方針」を策定し、Nitto Personの目指す姿を明文化し、個別施策の強力な推進に繋げています。
●国籍・性別・年齢・職歴・障がいなどの多様性を理解・尊重し、誠実に行動できる人財を育成・活用します。
●従業員を個人として尊重し、自律的なキャリア形成のため、適材適所による成長機会を提供します。
●多様な働き方の推進とオープンな組織風土の下、働きがいのある安全・安心・健康な職場環境を築きます。
●失敗を恐れずチャレンジした成果をフェアに評価し、従業員がベストを尽くせる公正な処遇を実現します。
●優秀な人財をグローバルで発掘・育成し、変化を先取りし実現力を発揮できるリーダーを養成します。
当社グループは、これまで「グローバルニッチトップ戦略」、「三新活動」、「顧客密着」でお客様に驚きと感動をもたらすことを価値とする独自のカルチャーを育んできました。このカルチャーのもと、数々のイノベーションが生み出されました。その源流は、ゼロからイチを生み出す技術や、他ではできない技術を磨くことを追求する当社グループのカルチャーと人財力にあります。
私たちは、当社グループの強みを維持し、発展させるために、多様性を尊重し、従業員のエンゲージメントを高め、チャレンジを楽しむ風土を醸成しています。また、当社グループのビジョンであるCreating Wondersを実現するために、誰もが成長できる環境を整え、各自の強みを活かしてチームワークで乗り越える組織を構築しています。
今後も、「グローバルニッチトップ戦略」をより一層発展させるために、私たちはDE&Iを不可欠な要素と捉え、その推進に向けた取組みを積極的に展開していきます。
上記の戦略を基に、当社グループでは、グローバルで一貫したタレントマネジメントを実施しており、多種多様な取組みを展開し、誰もが活き活きとやりがいをもって活躍できる環境の構築を図っています。
―女性リーダー育成
2030年経営目標「女性リーダー比率30%」の実現に向けて、2022年4月より日本国内の女性リーダー育成のための施策の一つとして「Female Leaders Ownership Empowermentプログラム(FLOWERプログラム)」を実施しています。このプログラムでは、単なる「管理職」ではなく、組織やチームをけん引できる人財を育成することを目的としています。
幹部による講演会やメンター制度、マネジメント能力育成研修などのプログラムを実施し、リーダーに向けてのマインドセットとマネジメントに関するビジネススキルの向上する内容となっています。また、社外の有識者を招きリーダー像についての講演会を実施するなど内容を充実化させており非常に満足度の高い研修となっています。
2023年度の女性リーダー比率は20%となっておりますが、今後も継続して組織をけん引できるリーダーを多く育成することで価値創造を加速させる風土を醸成することを目指しています。
―エンゲージメント活動
当社グループでは2年に1度エンゲージメントサーベイを行っており、2023年度はグローバルで実施しました。2030年経営目標に「エンゲージメントスコア」を掲げておりますが、各社・各拠点での地道な活動の成果により、「持続可能なエンゲージメント」のスコアが2021年度は74でしたが、2023年度は81となり大きくスコアアップとなりました。
中でも、「安全」、「経営理念」に関する設問では、前回同様に高いスコアとなり、グループとしての強みであることを改めて確認できました。一方、「タレントマネジメント」、「リーダーシップ」、「業務効率性」などは今後も取組みが必要な課題となっています。
当社グループが「なくてはならないESGトップ企業」を実現するためにも、一人ひとりがエンゲージメントを高く保ち、各自の強みを活かしながらチャレンジ・活躍できる基盤づくりに引き続き取り組んでいきます。
―チャレンジを楽しむ風土づくり
当社グループではチャレンジを応援する文化が根付いていますが、価値創造を加速させるために、国境を越えて多くの従業員が「チャレンジを応援する文化」から「チャレンジを楽しむ文化」に昇華できる環境をつくることを推進しています。
2023年度より、当社グループ独自指標である「チャレンジ比率」として、「会社の価値創造に貢献するテーマ」をチャレンジした人をカウントし2030年経営目標に掲げています。具体的には、小集団活動に参加した人、新規事業創出のアイデアを出した人、自己啓発に取り組んだ人、海外トレーニーに挑戦した人などをカウントしています。今後も、日常業務を超えてチャレンジすることを楽しめる施策を増やしていきます。
―健康経営
当社グループでは従業員の健康に対する投資を行うことが、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や企業としての価値向上に繋がると考え、グループ全社で健康増進活動に取り組んでいます。
当社グループの健康経営推進体制は代表取締役社長のもと人財本部長を責任者に置いた運営体制を組織しており、本社の人財本部に健康増進事務局を設置し、各事業所の人事総務部門や産業保健スタッフ、健康保険組合、労働組合と連携を取りながら活動を行っています。各事業所においては、安全衛生委員会等の会議体を通して、人事総務部門と産業保健スタッフ、労働組合が定期的に議論を重ね、全社の健康課題のみならず、事業所個別の健康課題に対しても取組みを行っています。
なお、当社グループでは、喫煙対策・メンタルヘルス疾患予防・生活習慣病予防の3点を重点課題と捉えて、禁煙希望者への卒煙サポート費用の会社補助、メンタルヘルスセミナー実施による従業員のヘルスリテラシー向上、若年肥満者面談の実施等、さまざまな取組みを実施し従業員の意識改善・行動変容を促しています。
③リスク管理
当社グループは、事業活動に重要な影響を及ぼす可能性があると経営者が認識した人財に関する主要なリスク・機会について、適切に管理するとともに、事業活動に重要な影響を与えるその他の主要なリスクと統合させることで、グループ全体としても包括的に管理しています。
人財に関するリスク・機会は、事業執行部署、エリア統括が連携してモニタリングを行うとともに、その管理責任を人財担当部署が負います。モニタリングしたリスク・機会に関する情報は、その他専門機能部署で管理されている情報とともに取締役、執行役員によって構成される経営戦略会議にて毎月報告・審議されます。審議結果は直ちに関係部署に展開され、リスク・機会への対策を速やかに実行し、統制の強化を図ります。実行内容や改善状況は再び経営戦略会議において報告・確認し、グループのマネジメントの実効性を高めています。
④指標及び目標
当社グループでは、従業員一人ひとりが働きがいをもってチャレンジする組織風土の醸成が重要と考え、下記指標を2030年経営目標と定めました。
・女性リーダー比率
・エンゲージメントスコア
・チャレンジ比率
詳細については、「
(1)基本的な考え方
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識した主要なリスクについて、事業に関わるリスクを「事業リスク」とし、その他当社グループ全般に及ぼすリスクを「業務リスク」として以下に記載しています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(2)リスクマネジメント体制
当社グループでは、主要なリスクについて、「内部統制基本方針」に定めたリスクマネジメント体制にて、リスクマネジメントを推進しています。
事業執行部署が「事業リスク」を、専門機能部署が「業務リスク」を管理しています。またグローバルなリスクモニタリングを実現するため、海外主要地域にエリア統括を配置し、エリアごとのモニタリングを実施します。
各責任部署が管理するリスク情報については、取締役、執行役員が出席する経営戦略会議で毎月報告され、審議されます。ここでの審議結果は直ちに各責任部署に指示され、対策の実施、統制の強化を速やかに実行し、実行内容、改善状況は再び経営戦略会議に報告されることでグループのリスクマネジメントについて実効性を高めています。
[リスクマネジメント体制図]
(3)リスクの選定と管理の状況
当連結会計年度の主要なリスクについては、前連結会計年度から継続するリスクに加え、リスクマネジメント担当役員及び担当部署によって、取締役及び各責任部署、監査法人等からの意見聴取、取締役会及び経営戦略会議での議題、審議内容を分析の上、経営戦略会議での審議を経て選定されます。
これらリスクについては、実際に発生・顕在化した場合の事業への「影響度」を縦軸に、実際に起こる「発生可能性」を横軸として、二軸での分析を行い、リスクの重要性を以下のように分類し、各リスクの相対的な重要性を認識しています。
[当連結会計年度末のリスクマップ]
当連結会計年度末において、これら主要なリスク(事業リスク・業務リスク)の管理体制、統制・対策の実行、インシデントの発生と対応などについては、責任部署が自己評価したものをリスクマネジメント担当部署及びリスクマネジメント担当役員が評価基準に基づき独立的に評価し、経営戦略会議及び取締役会に報告します。
当連結会計年度末の各リスクの評価結果は以下のとおりであります。各リスクの評価は期初からリスクが増加したか否かを示しています。
[各リスクの当連結会計年度評価]
※矢印の向きは期初からのリスクの増減を表す(↗:リスク増加、→:増減なし、↘:リスク減少)
[各リスクの当連結会計年度末の状況]
(1)事業リスク
[海外取引・為替リスク] |
[関連するマテリアリティ] サプライチェーンの強靭化 |
当社グループは、グローバルな事業展開を行っており、海外売上収益比率は8割を超えており、約40社の関係会社が貿易取引を行っています。 進出国において電力供給や輸送の停止、人件費の上昇、雇用関係の悪化や労働争議、サイバーテロ、環境影響によるリードタイム長期化などのリスクがあります。また、紛争、感染症の発生などによる世界経済の急変は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 さらに、想定を超えた為替レート、株式や金利などの市場変動や金融システム不安、保護主義の台頭や安全保障上の貿易規制も、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループではサプライチェーンにおけるリスクの可視化、物流BCP(事業継続計画)の構築により物流を管理し、サプライチェーンの強靭化を図っています。また、グループ内資金残高、資金繰り、通貨別の資産負債の状況などをタイムリーに把握するとともに、各エリアに資金統括拠点を設置して資金集約や為替リスクヘッジなどに取り組んでいます。 |
[顧客の財務状況] |
[関連するマテリアリティ] 経営の安全性向上 |
当社グループが、売上債権を有するお客様において、事業環境の大きな変化により財務上重大な問題が発生する可能性があります。 特に、変化の激しいエレクトロニクスやライフサイエンス分野における債権の大きいお客様で貸倒れが発生した場合、回収不能額が多額となり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、債権管理部署を設け、お客様について十分な信用調査のうえ、取引を行うほか、取引信用保険の付保などによるリスクの軽減も行っています。 |
[原材料確保] |
[関連するマテリアリティ] サプライチェーンの強靭化 |
当社グループは、一部の原材料を特定の購入先に依存しています。 その購入先が自然災害や事故、倒産などの止むを得ない事情により、原材料供給を縮小したり停止した場合、需給バランスがくずれ、必要な原材料の確保ができなかったり、コストの上昇などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、原材料調達先を複数にする、一定期間分の在庫を決めて管理するなど、主要原材料の確保におけるリスクを低減するよう取り組んでいます。また、前年度からサプライチェーンにおける持続可能な調達を目指して複数部署を横断したチーム編成でサプライチェーンコミッティを発足させ、近年高まりつつある地政学リスクや化学物質規制リスクなどを可視化し、サプライチェーン上流へのリスク対策を講じてきました。当連結会計年度からは、今後起こりうる潜在リスクに先回りして対策を講じる新たな仕組みと体制を確立し、サプライチェーンの強靭化を図る活動を行っています。 |
[研究開発] |
[関連するマテリアリティ] PlanetFlagsTMの創出・HumanFlagsTMの創出 |
当社グループが事業展開する業界は市場変化が激しく、その変化の予測は容易ではありません。 他社の新技術や新製品により、当社グループ製品が突然予期せぬ陳腐化を起こすこともあります。このような状況が生じた場合、将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、特定の事業の動向に左右されないよう「三新活動」を起点とした新技術・新製品の研究開発や、その設備への投資に取り組んでいます。さらに、ESGを経営の中心に置くとのグループ方針に従い、独自に制定した「PlanetFlagsTM/HumanFlagsTM」の候補となるテーマにリソースを集中的に投入しています。こうして得た製品を、知的財産マネジメントの強化を図り、参入障壁を創り守っています。 |
[知的財産権] |
[関連するマテリアリティ] PlanetFlagsTMの創出・HumanFlagsTMの創出 |
当社グループは、市場競争力を高める目的から多くの知的財産権を保有し、維持、管理しています。 しかし、第三者から無効を主張される可能性、特定の地域で十分な保護が得られない可能性、模倣される可能性、訴訟を受ける可能性などがあり、知的財産権による保護が大きく損なわれた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは技術知財戦略本部と事業部が一体となり、他社の知的財産権に抵触していないか注意を払う一方で、当社グループの知的財産権に抵触する製品が市場に出回っている場合には摘発する活動を進めています。 |
各セグメントの事業リスクは、次のとおりであります。
[インダストリアルテープ事業] |
[関連するマテリアリティ] マテリアリティ全般 |
基盤機能材料は、重点三分野であるパワー&モビリティ、デジタルインターフェース、ヒューマンライフを含む幅広い業界に向けて、多種多様な製品をグローバルに提供しています。現在、各分野でお客様から付加価値の高い製品を要望されることが増えています。 パワー&モビリティ分野では、自動車の構造接着材料や気密、防水用途のシーリング材料を、グローバル市場に提供しており、自動車生産台数の変動が業績に影響を与える可能性を含んでいます。 EV(電気自動車)やCASE(コネクティッド・自動化・シェアリング・電動化)等の成長領域への取組みを進め、既存ビジネスに付加して成長分野でのビジネスを取り込むことで、市場の影響を受け難い体質作りを進めています。成長領域の取組みにおいてはグループ企業間のコラボレーションを強化し、幅広い製品群での対応を推し進めています。 デジタルインターフェース分野では、エレクトロニクス製品や半導体の市況により、業績が変動する可能性を含んでいます。「ニッチトップ戦略」と「三新活動」による「Global Niche TopTM」製品・「Area Niche TopTM」製品創出の取組みの中で「PlanetFlagsTM/HumanFlagsTM」製品を新たな成長の軸とすることで、市場の影響を受け難い体質作りを進めています。さらに、お客様のプロセスを理解し、ニーズに合ったラインナップを揃えることで、材料と設備を合わせた提案を行い、お客様の生産性向上にも貢献します。 ヒューマンライフ分野では防塵性、耐薬品性などの特徴を持つ特殊エンジニアリングプラスチックを精密加工した機能性フィルムや多孔質材料を展開しています。その中で素材に対する化学物質規制強化という外部環境の変化に追従し、規制に影響されない素材の提案を継続します。 なお、インダストリアルテープ事業が対応している市場では、自動車産業やエレクトロニクス産業を始め環境貢献に注力されるお客様が増えています。このため、インダストリアルテープにおいても、環境負荷の少ない「PlanetFlagsTM」製品の開発とモノづくりに取り組むと同時に、お客様で廃棄される材料の回収・リサイクルを推進することで、サプライチェーン全体におけるCO2削減を推進し、環境配慮型製品として付加価値の提供も行っています。 |
[オプトロニクス事業] |
[関連するマテリアリティ] マテリアリティ全般 |
情報機能材料の主要市場であるディスプレイ業界は、市場の変化が早く、競合との厳しい競争に晒されています。また、当社グループの部材が組み込まれた製品や技術の汎用化、市場の成熟による売上収益の低下、競合の参入による収益性の圧迫などが、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。地政学リスクや環境規制などが、材料価格高騰、安定供給に影響を及ぼす場合、当社グループの生産や製品供給に影響を与える可能性があります。 ディスプレイ業界をリードするお客様の新たなニーズを早期に把握し、技術力を基に新製品の開発、市場投入を継続するとともに、非ディスプレイ市場への製品投入を加速し、自社製品の対象市場を拡大します。また様々な外部環境の変化に対応すべく、安定的な調達先を確保する、生産拠点を分散させる、DX化を進めデータドリブン経営を推進するなど、事業のBCP対策を取っています。 回路材料は、データ社会/スマート社会を支える成長が期待される市場や製品に集中して対応し、高シェア製品を供給しています。世界的なインフレ継続による材料価格/動力費の高騰、データセンター投資動向の変動が、一時的に業績に影響を及ぼす可能性があります。長期的に市場の成長が維持された場合、需要動向に対応した製品供給責任が、今後業績に影響を及ぼす可能性があります。その対応として、複数拠点での生産バックアップ体制及び材料調達のBCP、人に依存しない生産性改革など、需要変動に対応した生産能力の確保を進めています。 |
[ヒューマンライフ事業] |
[関連するマテリアリティ] マテリアリティ全般 |
ヒューマンライフは、ライフサイエンス事業、メンブレン事業、及びパーソナルケア材料事業から構成されます。 ライフサイエンス事業は、核酸医薬関連事業を中心に当社グループの新たな事業分野として取組みを強化しています。核酸医薬市場は、後期臨床テーマや新薬承認の増加が見込まれ、今後の拡大が見込まれている市場です。当事業における核酸医薬の受託製造は、お客様が進めている研究開発活動や臨床試験の進捗により需要が変動するため、科学的根拠に基づいてお客様の臨床試験が中断又は中止された場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当事業における核酸医薬の創薬は、当社グループで研究開発を進めた後に製薬業界のお客様へ技術を提供するため、お客様への価値提供に繋がる、競争優位性を持った技術の研究開発の進捗状況によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、お客様の研究開発活動や臨床試験の案件を幅広く受託することで、需要の変動による影響を緩和することに努めています。 一方、核酸医薬の創薬においては、外部機関との連携を含め、安全性と有効性を確保するために、着実に研究開発活動を進めています。 メンブレン事業は、エネルギー分野の水処理や海水淡水化プラント、各産業における水処理装置向けに部材を供給しています。資材の価格高騰や供給不足の影響で、プラントの建築やお客様の部材調達の計画が遅延する場合、もしくは原材料価格の高騰により原材料の入手が制限される場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。 市場の影響を受けにくい体質を作るために、新規市場開拓の強化や新製品の早期投入を進めます。原材料調達においては、調達先を複数にするよう努めるとともに、販売価格の見直しを行っていきます。 パーソナルケア材料事業は、主におむつ部材を中心に衛生材料を提供しています。主要市場は衛生材料・日用品向けであり、需要は比較的安定していますが、一方でコモディティー市場であるがゆえに、競合参入しやすい環境から販売価格の低下が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、エネルギーコストの上昇やインフレによる物価高(原材料費高騰)及び人件費高騰が業績に影響を及ぼす可能性があります。 製造力の強化に注力して、原価低減活動を推し進めることで、影響の緩和に努めております。また、デジタライゼーションへの投資で、人に依存しない生産性改革により人員の最適化を実行します。一方で、高付加価値品の拡販や環境対応製品の展開に努め、さらなる収益性の改善を図っています。 |
[その他] |
[関連するマテリアリティ] マテリアリティ全般 |
新規事業が計画通りに立ち上がらない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、定期的に当該市場やお客様の状況と当社グループの状況の整合を図りながら、適切な事業推進に努めています。 |
[その他・補足事項: M&A] |
[関連するマテリアリティ] マテリアリティ全般 |
当社グループは、企業価値向上に向けた技術の獲得や新たな事業領域への進出、事業の成長を加速させる上で有効な手段となる場合は、必要に応じて、M&Aや業務提携、戦略的投資を実施しております。 しかしながら、市場環境や競争環境の著しい変化などにより、当初想定していた成果やシナジーが得られない、買収した事業が計画通りの収益を確保することができない場合、のれんや固定資産の減損により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、他社との協業に際し、市場動向やお客様のニーズ、相手先企業の経営状況、市場での優位性などを十分に考慮し、判断を行っております。 |
(2)業務リスク
[製品安全] |
[関連するマテリアリティ] 安全なモノづくり |
当社グループは、安全なモノづくりを目標に、厳しい品質管理基準に従い中間材料又は製品を製造し、お客様に納入しています。加えて近年はフッ素化合物等の化学物質に関する規制強化も求められています。 製品に対し品質不具合等の欠陥や化学物質に関して法令等の違反が生じた場合、同欠陥に対する賠償責任や法令等の違反に対する罰則等を負うことにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、業界に準じた厳しい国際的な品質マネジメントシステムを認証取得し継続的改善に努めています。 加えて、規制の強化が予想されるPFASの代替製品検討やビスフェノール類・塩化ビニルなどの管理体制の強化に取り組んでいます。 化学物質関連の規制に対しては先取り対応の一環として特定の業界団体に所属し、審議段階から規制情報を入手して業界団体全体で順法対応を推進するなど、取組みを強化しています。 |
[環境(CO2排出)] |
[関連するマテリアリティ] 脱炭素社会の実現 |
当社グループは、気候変動や自然災害が深刻化する中、脱炭素社会の実現のため、サプライチェーン全体での脱炭素を目指しています。 再生可能エネルギーの価格高騰、炭素税の賦課、排出権取引価格の高騰などが生じた場合、製造コストの上昇が避けられず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、厳格化される関連法令・規則を遵守するとともに、CO2排出に対する社会的要求を満たすべく製造工程における省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入を図っているほか、製品やソリューションを通じてお客様のCO2排出量削減にも取り組んでいます。 |
[環境(省資源・資源循環)] |
[関連するマテリアリティ] 循環型社会の実現 |
当社グループは、資源の枯渇やプラスチックによる海洋汚染など、地球環境が危機的状況にある中、主に製造工程で使用しているプラスチックや有機溶剤などの廃棄物の削減、循環型社会の実現を目指しています。 プラスチックや有機溶剤などの廃棄物の引き取り拒否や引き取り価格の高騰により、廃棄物の処理が困難となり生産活動が停滞し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、製品や廃棄物などが不適切に処理された場合、社会的信用の失墜やブランドイメージの低下により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、関連法令・規則を遵守するとともに、資源の有効活用やサプライチェーン全体のリサイクル促進を図り、資源循環型社会の構築に取り組んでいます。 |
[環境(汚染・有害物質の排出)] |
[関連するマテリアリティ] 生物多様性の保全 |
当社グループは、生態系の破壊予防など生物多様性を保全していくため、製造工程で使用している汚染・有害物質の排出削減を目指しています。 設備故障などの原因により、揮発性有機化合物が大気や河川などに排出された場合、地域環境汚染が生じ、社会的信用の失墜やブランドイメージの低下により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、関連法令・規則を遵守するとともに、独自により厳しい管理基準を設け汚染・有害物質を管理するとともに、使用量の削減にも取り組んでいます。 |
[情報セキュリティ] |
[関連するマテリアリティ] 経営の安全性向上 |
当社グループにとって、情報システムは事業活動のあらゆる側面において非常に重要な役割を担っております。一方、サイバー攻撃の巧妙化や、内部不正・過失など人為的リスクも高まっています。 当社グループで情報システムに障害が発生した場合や、過失、故意を問わず、技術情報、お客様情報、取引情報、個人情報などの情報流出や不正使用が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、サイバー攻撃に対する、多層防御、早期検知・対応体制「CSIRT」整備などのハード・ソフト両面で様々な情報セキュリティ対策を実施しています。また、情報流出や不正使用などの過失防止のため、役員・従業員への情報セキュリティの重要性を説く教育や標的型メール訓練を実施し、経営の安全性向上を図っています。 |
[法規制の変化とコンプライアンス] |
[関連するマテリアリティ] 経営の安全性向上 |
当社グループでは、法規制や社内ルールを遵守することのみならず、社会規範や倫理への適合も含めて、コンプライアンスを推進しています。一方、当社グループは28の国と地域で事業展開を行っており、それぞれの法規制、社会規範や倫理観などに対応するため、コンプライアンスの対象が多面化しています。 企業によるコンプライアンス違反は、企業価値に影響を与えるだけではなく、お客様の調達や消費、サプライヤーの生産、地域住民の日常生活などステークホルダーへも影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、コンプライアンスの基礎と位置付けている、「Nittoグループビジネス行動ガイドライン」を18言語に翻訳し、グループ全役員・従業員へ周知しています。また、当社グループでは内部通報制度を全エリアで運用することにより、法令違反や倫理違反の早期発見に努めています。2023年度は一部エリアでサプライヤーからの通報に関する社外受付窓口の設置を完了し、今後の全エリアでの設置完了に向けて準備を進めています。 |
[グループ会社のガバナンス] |
[関連するマテリアリティ] 経営の安全性向上 |
当社グループは、世界28の国と地域で当社、子会社88社及び関連会社4社により、グローバルに幅広い分野で事業展開を行っています。 これら関係会社のガバナンスや内部統制が機能せず、役員・従業員による不正行為、経営方針に従わない取引や判断が行われた場合、当社グループに損失を与え、業績に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは基盤機能材料、情報機能材料、回路材料、ライフサイエンス、メンブレン、パーソナルケア材料などによる事業軸、海外を7つの地域に分けたエリア軸、人事、経理などの専門機能部署による機能軸という、3つの軸が互いに補完、協力して経営を行う、3軸経営を推進しています。事業軸はガバナンスと内部統制体制を構築し、エリア軸と機能軸は、その状況を地域レベル、業務レベルで適切に監査・モニタリングしています。業務上のリスクや課題を発見・指摘し、これらの改善を実施することで緊密なガバナンス、内部統制強化を図っています。 |
[自然災害・気候変動] |
[関連するマテリアリティ] 経営の安全性向上 |
当社グループは、グローバルな事業展開を行っており、日本国内及び海外に複数の生産拠点及び販売拠点を有しています。 国内外で発生する、気候変動により激甚化する台風や、地震などの自然災害により、当社グループの従業員、拠点や施設が被災する可能性があります。これに加えて、電力・ガスなどのインフラに被害が発生し、その結果広範囲にわたるサプライチェーンの分断が起これば、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、お客様、サプライヤーに大きな被害が生じ、受注や供給が長期間にわたって滞り、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、「安全をすべてに優先する」方針のもと、事故や災害に備えた、各拠点での避難訓練や災害対策本部設立時の意思決定訓練を実施しているほか、事業機能停止を防止する対策として、BCP(事業継続計画)を策定して経営の安全性向上を図っています。 |
[人財確保] |
[関連するマテリアリティ] 多様な人財の活躍 |
当社グループが事業活動を推進し将来にわたって発展するためには、研究開発・製造・販売・管理など様々な分野において人財の確保と育成が必要です。従業員一人ひとりが働きがいをもってチャレンジを楽しむ組織風土の醸成が重要であり、併せて社会環境の変化に合致した労働環境を構築するためにDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進が必要です。加えて、国内の少子高齢化に伴う労働人口減少をはじめグローバルでの人財獲得・競争が激化する中、働き方・キャリアに関する価値観が多様化して人財の流動性が高まっているため、人財の定着に向けた人事制度や処遇水準の見直しが継続的な課題となっています。 人財の継続的な獲得と流出の防止ができない場合、当社グループの将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。 このように人的資本経営の重要性が高まる中、当社グループでは、従業員のエンゲージメント向上に取り組むとともに、海外トレーニーやジョブポスティングなど様々な分野でチャレンジできる環境整備と、採用ブランディングの向上やインターンシップの取組みの強化などの採用力強化により、多様な人財の採用と育成に取り組んでいます。また、育児・介護等との両立支援やテレワーク勤務制度など多様な人財が働きやすい職場環境づくり、競争力のある報酬水準となるように賃金の引上げ等を実施し、人財の定着と動機付けを図っています。 |
[労働安全衛生] |
[関連するマテリアリティ] 安全なモノづくり |
当社グループは、安全な社会の実現を目指し、「あらゆる事故災害ゼロ」をスローガンに、安全をすべてに優先したモノづくりを行っています。 死亡・後遺症が残る又はそれらに準じる怪我や疾病など人的被害が発生した場合や、生産に影響が出る火災が発生した場合には、社会的な信用が低下するとともに、操業やお客様との取引が停止することにより、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、怪我や疾病につながるリスクや火災につながるリスクの低減に向け、予見可能なリスクを漏れなく抽出し、リスクの低減策に努めるとともに、ルール順守など維持管理策にも取り組んでいます。 |
[人権] |
[関連するマテリアリティ] 人権の支持と尊重 |
昨今、企業の人権に対する取組みは、ステークホルダーにおいて関心が高まっています。2011年に国連人権理事会で承認された、「ビジネスと人権に関する指導原則」では、人権尊重に関するコミットメント、救済・是正への取組みが企業の責任として定められています。また、企業の責任範疇は自社内だけではなく自社のサプライチェーン全体に及んでいます。 企業が児童労働、強制労働、外国人労働者への差別など、種々の人権に係る課題をマネジメントする仕組みを構築していない場合、お客様やサプライヤーは取引の継続を控え、株式市場では投資を見送る傾向が高まっています。 当社グループでは、Nittoグループ人権基本方針を10言語で公開し、人権尊重に関する方針をステークホルダーへ伝えております。また、コンプライアンスマネジメントシステムの取組みの1つとしてコンプライアンスサーベイを実施し、各拠点のリスク度の可視化と低減活動に取り組んでいます。 一方、グローバルでパートナーシップミーティングを開催し、主要サプライヤーへ当社グループのCSR調達方針や活動内容を周知しています。また、人権・労働の尊重など順守すべきルールを示した「CSR調達ガイドライン」に基づいて、年1回「CSR調達アンケート」を実施しています。アンケート実施後にはリスク評価を行い、ハイリスクと判断したサプライヤーに対しては、改善提案を実施し、その後に改善状況を確認しています。また、評価の客観性・妥当性を確保すべく、新たに第三者による評価としてEcoVadisによるCSR評価を日本、中国で導入しました。当連結会計年度からは、南アジア、欧米エリア含めグローバル展開を進めます。人権リスクの高い原材料を扱うサプライヤーに対しては、原産地調査と人権ポリシーに関するアンケートへの回答を依頼し、原材料調達における人権配慮への理解・協力を仰いでいます。 |
[確定給付負債] |
[関連するマテリアリティ] 経営の安全性向上 |
当社グループの確定給付負債は、年金数理計算上使用される各種の基礎率と年金資産の運用利回りなどに基づき計算されており、年金資産の時価の変動、金利動向、退職金や年金制度の変更などにより、認識及び計上される債務に影響を及ぼし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、市場変動の影響を受ける年金資産の運用は、年金ALM(アセットライアビリティマネジメント)分析なども踏まえた長期的な政策的資産構成割合を定め資産の分散投資を行う事に加え、下方リスクも考慮した安定的なリターン獲得を目指しています。その執行には、財務、人事担当責任者及び資産運用経験者を基金理事として任用し、外部コンサルタントも起用することで、適切な運用及び管理体制を構築しています。また、一部で確定拠出年金を導入することで追加拠出リスクを低減するなど、退職金や年金制度変更の検討においては、退職給付債務への影響を十分に考慮して行っています。 |
経営成績等の状況の概要
(1)財政状態
当連結会計年度末(以下「当期末」という。)の資産合計は、前連結会計年度末(以下「前期末」という。)に比べ97,440百万円増加し、1,251,087百万円となりました。流動資産は40,767百万円増加の717,957百万円、非流動資産は56,672百万円増加の533,130百万円となりました。
流動資産の増加は、現金及び現金同等物が12,302百万円増加したこと、売上債権及びその他の債権が30,952百万円増加したこと、棚卸資産が4,296百万円減少したこと、その他の金融資産が3,079百万円増加したこと、その他の流動資産が3,962百万円増加したこと、売却目的で保有する資産が5,232百万円減少したことによるものであります。
非流動資産の増加は、有形固定資産が45,432百万円増加したこと、使用権資産が6,361百万円増加したこと、のれんが7,234百万円増加したこと、繰延税金資産が2,435百万円減少したこと等によるものであります。
当期末の負債合計は、前期末に比べ15,586百万円増加し、266,038百万円となりました。流動負債は18,608百万円増加の206,856百万円、非流動負債は3,022百万円減少の59,182百万円となりました。
流動負債の増加は、仕入債務及びその他の債務が7,131百万円増加したこと、未払法人所得税等が5,086百万円減少したこと、その他の金融負債が16,234百万円増加したこと、その他の流動負債が1,693百万円増加したこと、売却目的で保有する資産に直接関連する負債が1,436百万円減少したこと等によるものであります。
非流動負債の減少は、その他の金融負債が5,114百万円増加したこと、確定給付負債が6,884百万円減少したこと等によるものであります。
当期末の資本合計は、前期末に比べ81,853百万円増加し、985,048百万円となりました。
これは、利益剰余金が、親会社の所有者に帰属する当期利益、配当金、自己株式の消却等により前期末に比べ21,792百万円増加したこと、自己株式が4,333百万円減少したこと、その他の資本の構成要素が55,802百万円増加したこと等によるものであります。
(2)経営成績
当連結会計年度における経済環境は、インフレに伴う金融引締めの継続やロシア・ウクライナ戦争に加え、中東での紛争勃発による地政学リスクの高まりで、地域間の強弱があるものの、世界的に景気は減速しました。米国では、利上げの効果がみられる一方で、人手不足を背景としたサービス価格の高止まりなどの根強いインフレが残っていることから、連邦準備制度理事会(FRB)は、5会合連続で金利を据え置きました。中国では、長引く不動産不況が影響し、個人消費が低調に推移しました。また、米中貿易摩擦による輸出入の制約やサプライチェーンの見直しを背景とした対中投資の減少が景気回復の重石になっています。日本では、インバウンド需要や企業の設備投資が堅調に推移し、景気が緩やかに回復しました。なお、為替相場は、日銀によるマイナス金利政策の解除後も、依然として日米の金利差に乖離があり、円安の流れが継続しました。
このような中、当社グループの主要な市場においては、ハイエンドスマートフォン向けに光学フィルムや透明粘着シート、工程保護フィルムの需要が増加しました。また、車載ディスプレイや新たな市場として、仮想現実(VR)向け光学フィルムの需要が増加しました。自動車材料は半導体不足の影響が緩和し需要が回復しました。半導体や電子機器の生産に使用される製品は、在庫調整が一巡し需要が緩やかに回復しました。一方、ハイエンドノートパソコン、タブレット端末用光学フィルム及びデータセンター向け製品は市況の悪化により需要が減少しました。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン向け核酸アジュバント(核酸免疫補強剤)は当連結会計年度において売上収益を計上しておりません。
なお、当連結会計年度の対米ドル為替レートは、前連結会計年度と比較し6.8%円安の1ドル143.9円となり、円安による影響は、営業利益で240億円の増益要因となりました。
以上の結果、売上収益は前連結会計年度と比較し、1.5%減(以下の比較はこれに同じ)の915,139百万円となりました。また、営業利益は5.5%減の139,132百万円、税引前当期利益は5.4%減の138,901百万円、当期利益は6.0%減の102,755百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は5.9%減の102,679百万円となりました。
セグメント別の経営成績
① インダストリアルテープ
基盤機能材料は、前連結会計年度に対して売上収益が伸長しました。ハイエンドスマートフォン向け組み立て用部材は、新製品の投入により需要が増加しました。また、自動車材料は、第1四半期連結会計期間に譲渡したNVH(Noise, Vibration, Harshness)事業を除くと、国内や欧州を中心に自動車生産が回復し、需要が増加しました。半導体メモリやセラミックコンデンサーの生産に使用される工程用材料は、前第4四半期連結会計期間を底に緩やかに回復基調となり、需要が増加しました。
以上の結果、売上収益は352,158百万円(2.7%増)、営業利益は39,281百万円(44.3%増)となりました。
② オプトロニクス
情報機能材料は、売上収益が前連結会計年度に及びませんでした。ハイエンドノートパソコンやタブレット端末の巣籠り需要が一巡し、光学フィルムや透明導電性フィルムの需要が減少しました。一方、ハイエンドスマートフォン向けでは光学フィルムに加えて透明粘着シートや工程保護フィルムの需要が堅調に推移しました。また、VR向け光学フィルムは新たな生産ラインで量産を開始しました。
回路材料は、売上収益が前連結会計年度に及びませんでした。CIS(Circuit Integrated Suspension)は、データセンターでの高容量ハードディスクドライブ(HDD)の需要が減少し、業務効率化などによるコスト抑制を進めました。ハイエンドスマートフォン向け高精度基板は、前連結会計年度比で搭載機種が増加しました。
以上の結果、売上収益は469,909百万円(2.6%減)、営業利益は123,971百万円(2.7%減)となりました。
③ ヒューマンライフ
ライフサイエンスは、売上収益が前連結会計年度に及びませんでした。核酸受託製造は、COVID-19の収束に伴い、ワクチン向け核酸アジュバントの需要が減少しました。一方、核酸医薬市場は、大型疾患向けの商用化が見込まれており、今後の需要拡大への対応として米国マサチューセッツ州の拠点に新設した工場で、試作生産を開始しました。核酸医薬の創薬は、肺線維症治療薬の臨床第2相試験の結果を受けて、ブリストルマイヤーズ スクイブ社より追加インライセンスのオプション権を行使しないとの通知を第2四半期連結会計期間に受領しました。また、同社より、当社との肝線維症・肝硬変に関する製剤の独占ライセンス契約に基づく、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療を対象とした臨床第2相試験についても中止するとの通知を受領しました。なお、難治性の癌治療薬は、ライセンスアウトに向けて、引き続き治験に取り組んでおります。医療関連材料は、経皮吸収薬の需要が通院患者の増加に伴い回復しました。
メンブレン(高分子分離膜)は、売上収益が前連結会計年度に及びませんでした。各種産業用途向け高分子分離膜の需要が中国を中心に減少しました。
パーソナルケア材料は、2022年6月に買収したMondi社のパーソナルケア事業が通年で寄与したことにより、前連結会計年度に対して売上収益が伸長しました。主力であるおむつ向け製品に加え、コア材料である機能性フィルムの特性を活かした新たな用途展開を進めるとともに、生分解性技術を用いた環境貢献型の新製品開発に取り組んでおります。
以上の結果、売上収益は124,501百万円(3.2%減)、営業損失は9,490百万円(前年同期は営業利益519百万円)となりました。
④ その他
当セグメントには未だ十分な売上収益を伴っていないその他製品が含まれております。主として、開発者向けにフレキシブルセンサのキット販売を行っております。
以上の結果、売上収益は12百万円(7.0%減)、営業損失は5,661百万円(前年同期は営業損失3,892百万円)となりました。
当連結会計年度において、報告セグメントの分類に一部変更があります。変更点は以下のとおりであります。
1.従来の「プリント回路」の名称を「回路材料」へ変更しました。
2.「その他」のプラスチック光ファイバー・ケーブル事業を「オプトロニクス」の「回路材料」へ移管しました。
3.「ヒューマンライフ」の「パーソナルケア材料」の一部関連事業を「インダストリアルテープ」へ移管しました。
4.「調整額」に含まれる一部事業を「その他」へ移管しました。
当該変更を反映した組替後の数値で前連結会計年度との比較を行っております。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は342,269百万円となり、前連結会計年度末より12,302百万円増加しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、増加した資金は155,521百万円(前連結会計年度は181,702百万円の増加)となりました。
これは主に、税引前当期利益138,901百万円、減価償却費及び償却費60,811百万円、減損損失1,651百万円、確定給付負債の増減額1,371百万円、棚卸資産の増減額11,769百万円、仕入債務及びその他の債務の増減額3,804百万円、利息及び配当金の受入額2,065百万円による増加、売上債権及びその他の債権の増減額19,033百万円、前受金の増減額1,312百万円、法人税等の支払額又は還付額41,030百万円による減少の結果であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、減少した資金は67,927百万円(前連結会計年度は159,906百万円の減少)となりました。
これは主に、有形固定資産及び無形資産の取得による支出67,774百万円、定期預金の増減額2,465百万円による減少、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入1,871百万円による増加の結果であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、減少した資金は90,784百万円(前連結会計年度は57,627百万円の減少)となりました。
これは主に、リース負債の返済による支出7,631百万円、自己株式の増減額47,167百万円、配当金の支払額36,041百万円による減少の結果であります。
なお当社グループのキャッシュ・フロー指標の推移は以下のとおりであります。
|
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
親会社所有者帰属持分比率(%) |
74.1 |
75.0 |
78.2 |
78.7 |
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率(%) |
144.9 |
119.3 |
108.1 |
155.8 |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
0.2 |
0.2 |
0.1 |
0.2 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
188.3 |
269.8 |
337.4 |
255.0 |
(注)1 各指標はいずれも連結ベースの財務数値を用いて、以下の計算式により算出しております。
親会社所有者帰属持分比率(%) 親会社所有者帰属持分÷総資産
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率(%) 株式時価総額÷総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) 有利子負債÷キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) キャッシュ・フロー÷利払い
2 株式時価総額は、期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数により算出しております。
3 キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
4 有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。
生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
インダストリアルテープ |
210,257 |
100.1 |
オプトロニクス |
527,879 |
103.7 |
ヒューマンライフ |
112,860 |
96.8 |
その他 |
3 |
41.3 |
合計 |
850,999 |
101.9 |
(注)1 金額は、売価換算値によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 当連結会計年度において、報告セグメントの分類に一部変更があります。前年同期比は、当該変更を反映した前連結会計年度の数値に基づき算定しております。
(2)受注実績
当社グループは、おおむね需要動向から見た見込み生産を行い、それ以外の製品については一部受注生産を行っておりますが、受注生産高の売上高に占める割合の重要性が乏しいため、記載を省略しております。
(3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
インダストリアルテープ |
347,206 |
102.7 |
オプトロニクス |
449,966 |
95.9 |
ヒューマンライフ |
116,629 |
96.9 |
その他 |
1,336 |
104.9 |
合計 |
915,139 |
98.5 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対応する割合は、販売実績が総販売実績の100分の10以上の相手が無いため記載を省略しております。
3 当連結会計年度において、報告セグメントの分類に一部変更があります。前年同期比は、当該変更を反映した前連結会計年度の数値に基づき算定しております。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当連結会計年度(以下「当期」という。)は、売上収益は前連結会計年度(以下「前期」という。)と比べて1.5%減の915,139百万円となりました。これはライフサイエンスの売上収益が減少したこと等によるものです。
売上原価は、前期比1.2%減の584,280百万円となりました。売上収益に対する売上原価の比率は、前期比0.1ポイント増の63.8%となりました。
販売費及び一般管理費は、前期比0.5%増の146,143百万円となりました。売上収益に対する販売費及び一般管理費の比率は、前期比0.3ポイント増の16.0%となりました。研究開発費は、前期比8.2%増の43,485百万円となりました。売上収益に対する研究開発費の比率は、前期より0.5ポイント増加し4.8%となりました。
以上の結果、営業利益は前期比5.5%減の139,132百万円となりました。
税引前当期利益は前期比5.4%減の138,901百万円となりました。
法人所得税費用は、前期の37,576百万円から、当期は36,146百万円となり、税効果会計適用後の法人税等の負担率は26.0%(前期は25.6%)となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期比5.9%減の102,679百万円となりました。基本的1株当たり当期利益は、前期比2.6%減の719円57銭となりました。
なお、経営成績の概況及びセグメント別の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 経営成績等の状況の概要」に記載しております。
資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、変化の激しい事業環境下においても継続的に企業価値を向上させていくために、資金の使途を①設備投資、②配当、③M&A、④自己株式取得と順位付けし、経営の目安としています。
当社グループの資金の源泉は、主として自己資金であり、トレジャリーマネジメントシステムを活用し、グループ内資金をタイムリーに漏れなく把握するとともに、各エリアに設置した資金統括拠点へ配当やキャッシュ・プーリングを活用して集約し、資金効率の向上に努めています。
なお、当連結会計年度末の連結借入金総額は前連結会計年度末に比べ72百万円増加し、345百万円となりました。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は342,269百万円となっております。
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針の要約 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。
当社グループにおける研究開発は、「イノベーションによる社会課題の解決」を基本方針に掲げ、地球の環境保全・改善や、人々の生活の質の向上のための新製品や新サービス、新規事業を創造することを目指しています。「粘接着」「光学設計」「回路形成」「薄膜形成」「多孔」「分離」「核酸合成」「ドラッグデリバリーシステム」の8つの基幹技術をベースに様々な技術を組み合わせて新たな価値を提供しています。
全社技術部門は、研究開発本部、新規事業本部、核酸医薬開発本部の3つの部署と技術知財戦略本部が密接に連携し、将来の事業とそれを支える技術を育成しています。研究開発拠点として、2016年3月に大阪府茨木市に開設した“inovas”(イノヴァス)を中核に、海外にNitto Denko Technical Corporation(U.S.A.-Oceanside)、Nitto BioPharma, Inc.(U.S.A.-San Diego)、Nitto Bend Technologies, Inc.(U.S.A.-Farmington)、Nitto Denko Asia Technical Centre Pte. Ltd.(Singapore)を配置しています。
全社技術部門では、溶剤を使わない製造プロセスの開発に加え、工場から出るCO2を分離して回収する技術の開発を加速させています。その一環として、当連結会計年度、自社の分離膜技術を用いたボイラー排気ガスからのCO2を分離・回収する装置を滋賀事業所に設置し、実証試験を開始しました。今後は、空気中のCO2を捕らえたり、CO2を別の物質に変換したりする技術の構築を進め、CO2削減のトータルソリューションを新たなビジネスチャンスに繋げます。
また、当社グループでは特許戦略を重視して研究開発を進めており、研究開発で確立した技術を戦略的な特許出願で支えながら着実に事業につなげています。この活動の結果として、当連結会計年度「クラリベイト Top 100 グローバル・イノベーター2024」に選出されました。これは、クラリベイト・アナリティクス社が「数量」「影響力」「成功率」「グローバル性」「希少性」の5つの基準から優れた研究開発活動、知的財産管理を行っている企業や研究機関100社を選出したもので、2012年の開始からNittoは11度目の受賞となります。
当連結会計年度の研究開発部門の人員は、当社単体で1,079名、グループ全体で1,711名です。また、当社グループの研究開発費の総額は
セグメント別の研究開発活動成果は下記のとおりであります。
(1)インダストリアルテープ
当社グループの持続的成長と持続可能な環境・社会の実現にCO2排出削減は不可欠です。そのため、有機溶剤を使用しない新製品の開発を拡大して生産活動におけるCO2排出削減に取り組んでいます。また、サプライチェーン全体のCO2削減にもつながるようバイオマス粘着剤や資源循環によるリサイクル材料の活用や、当社グループの剝離技術を用いてリワーク・リサイクルを実現可能にする製品開発に取り組んでいます。
新製品開発はデジタルデバイス、半導体、水素・電池の3つを重点分野と定め、お客様のご要望に応える新製品開発、そして製品ラインアップの拡充を進めています。
デジタルデバイス分野では従来テープに求められる接着性や衝撃吸収性だけでなく、循環社会を目指し、再剝離性の付与、リサイクル材使用によるサステナビリティ向上にも貢献してまいります。
半導体分野では半導体の製造工程、特に先端半導体向け製造工程などでご使用いただくプロセステープの開発を進め、高品質を追求し続けるお客様の製造工程において生産性向上に貢献してまいります。
また、水素・電池分野では新規用途のマーケティング・開発活動を進め、安心・クリーンな社会実現に向けて貢献してまいります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
(2)オプトロニクス
ディスプレイ業界では、スマートフォンを中心に有機ELディスプレイ(OLED)が拡がり、今後、タブレットPC、Lap Top PC等家電製品、及び車載ディスプレイへ採用拡大が期待されています。ディスプレイとしての表示品位等の基本特性の向上に加え、デバイス特有の屈曲性、高信頼性、曲面追従性等、様々なご要望を頂いております。偏光フィルム、位相差フィルム、粘着剤に機能を付与するとともにトータルでの設計を最適化しお客様のご要望にお応えしていきます。また、お客様の生産工程の生産性向上に貢献できる製品開発にも注力しています。
新規デバイスとして注目を集めているVRデバイス向けの製品開発も行っています。VRゴーグルに映し出される仮想空間のリアリティ向上が求められており、超高品質光学フィルムの製品開発を行っています。
ディスプレイ以外では、ITOフィルム製膜に用いているスパッタ技術を活用し、タッチセンサ用途だけでなく、自動車の調光ルーフ用等、様々なセンサ向けの電極フィルムの製品開発も行っています。
上記の開発活動において、リサイクル材料やバイオベース材料の採用、粘着剤の無溶剤化等、環境技術と融合することでお客様、社会への価値提供も加速させています。
回路材料関連では、データセンターで使用されるハードディスク(HDD)向け回路基板を提供しています。2023年度はストレージ市場全体が冷え込みましたが、AI技術の普及に伴い再度成長が期待されています。HDDの記録密度を大幅に向上させる新技術向け回路基板も立ち上がり、業界の継続成長に貢献してまいります。また、HDD向け回路基板を応用したスマートフォン向け「高精度基板」を展開しており、プリント回路基板における生産能力拡大を進めています。
新しい市場への挑戦では、当社グループ独自の多孔化技術を用いた低誘電基板を開発し、高速信号伝送向けのフレキシブル回路基板の上市に向けて活動中です。
情報通信領域においては、高速大容量通信を変革するプラスチック光ファイバーケーブルを開発し、量産体制を整えVRゴーグル用途向けに出荷を開始しました。
環境配慮に対する取組みでは、回路基板製造時の環境負荷低減を可能にする新たな廃液処理技術を開発し、自社製品への適用を推進してまいります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
(3)ヒューマンライフ
ライフサイエンス関連では、東北事業所での2024年度新工場立上げに向け、核酸プロセス材料の製造能力増強を目的としたプロセス開発を実施しています。一方、製薬企業様からの環境負荷低減の要望が本格化しました。以前から溶剤削減の取組みを行っていましたが、核酸プロセス材料に加え核酸医薬品原薬の製造プロセスにおける環境負荷物質を減らす、代える、無くす技術開発テーマを実装に向けて加速します。品質向上、コスト低減と併せ、競合との差別化を図っていきます。
医療材事業でも環境負荷物質を低減した製品の上市を図るとともに、予防・早期治療につながる技術開発の取組みを引続き、推進していきます。
分離膜・メンブレン関連では、滋賀事業所において生産工程で使用される有機溶剤のDMF(ジメチルホルムアミド)の回収再利用を進めています。2023年度には工場で使用するDMFの約80%を、RO膜と蒸留操作により再生し再利用できるまでに至りました。さらに、2022年度からは神戸大学とのNEDOエネルギー・環境新技術先導研究プログラム「産業廃水からの革新膜による有機資源回収」において、当社グループRO膜と神戸大学の革新膜を用いた新しいシステムにより、エネルギー消費を従来の蒸留法に比べ約1/50に低減できる画期的なシステム開発にも取り組んでいます。
今後も社会的ニーズにあわせた製品開発を進めるとともに環境に優しい分離技術で水資源の循環、お客様の生産工程での省エネ、CO2排出量削減に貢献してまいります。
パーソナルケア材料関連では、フィルム技術と不織布技術をコア技術とし、おむつ部材などの衛生材料製品の開発を行っています。地球環境に貢献できる完全無溶剤の接着・ラミネーションや加工技術・バイオマスや生分解性材料を用いた製品創出で、消費者様がより快適に、より安全にお使いいただける衛生材料のイノベーションに寄与できるよう、市場の最先端で挑戦してまいります。
また、機能性フィルム・不織布の製造技術を社内外へ用途展開することで、衛生材料以外の事業展開を積極的に促進いたします。製品設計活動を社内で密接かつ迅速におこなえることから、新事業の開拓並びに事業成長のシナジー活動に注力してまいります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
(4)その他
新規事業関連では、デジタルヘルス領域や次世代半導体領域など新しい領域に向けて様々な製品を開発しています。当連結会計年度、デジタルヘルス領域において、使い切り仕様ホルター心電計のパイロット販売を継続しています。
当連結会計年度における研究開発費の金額は4,022百万円です。