第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは「“水”を究め、自然と人間が調和した豊かな環境を創造する」を企業理念とし、本年度新たに企業ビジョン「持続可能な社会の実現に貢献する「水の新たな価値」の開拓者」を定めました。また、当社グループの経営の中核的概念を、現行の「CSR」から「サステナビリティ」に広げ、企業活動と自然環境や社会システムが相互に影響し合った持続的な成長を指向し、サステナビリティを標榜した「企業ビジョン」の実現に向けた当社グループの重要課題を「クリタグループのマテリアリティ」として定めました。

当社グループは、企業価値の向上と競争優位の創出に邁進し、株主・投資家をはじめとするすべてのステークホルダーの皆様に対する適正かつ迅速な情報開示を通じ、より透明性の高い経営の実現を目指しております。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標

①中期経営計画

当社グループは、2018年4月より5カ年の中期経営計画「MVP-22」(Maximize Value Proposition 2022)において、CSRを経営の中核に位置付け、「既成概念を壊し、仕事の品質とスピードを飛躍的に高め、顧客親密性を最大化する」を基本方針に掲げ、収益性の向上を目指して取り組んできました。価値創造ストーリーの実現に向け、激変する事業環境下でも価値創造の源泉となる人材の重要性を強く認識し、育成や活躍推進に注力しています。海外事業では世界四極体制の基盤を確立し、グローバルにグループ連携が進みつつあります。

しかしながら、ビジネスモデルの変容は道半ばであり、既存ビジネスの中には収益性や強靭性に課題を残すものもあり、新たな収益の柱となる新規事業の創出には至りませんでした。地域特性・市場特性に合わせた製品・サービスの展開を加速させていく必要があります。

これらを踏まえ、2023年度より新中期経営計画「PSV-27」(Pioneering Shared Value 2027)をスタートさせました。PSV-27 計画最終年度(2027年度)の業績目標は次の通りです。

 

売上高                                 4,500億円

売上高事業利益率                       16%

親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)  12%以上

投下資本利益率(ROIC)                 10%以上

 

※事業利益は、売上高から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した恒常的な事業の業績を測る当社グループ独自の指標であります。

 

「PSV-27」では「人材・技術・しくみを磨き上げ、圧倒的なスピードと課題解決力で、期待を超える価値を切り拓く」を基本方針とし、次の重点施策に取組んでいきます。

 

(重点施策)

・電子産業への重点化

超純水供給事業で蓄積した「水に関する知」をバリューチェーン全体で活用し、併せて営業・設計・調達の変革を実現することにより、圧倒的なスピードで深い顧客理解に基づくソリューションを提供し、世界の電子産業市場に対する事業展開を加速していきます。

・多様な産業を通じた社会との共通価値の創出とグローバル展開

各国・地域の顧客動向やニーズを一元的に把握し、CSVビジネスをはじめとした社会との共通価値を創出するソリューションをグローバルに展開します。また、サーキュラーエコノミーの視点で、企業と企業、企業と地域をつなげるソリューションを開発し提供していきます。

・社会課題を解決するイノベーションの推進

CO₂排出削減、節水、資源循環などで社会に貢献する新たな領域の開発に中長期的な視点で取り組みます。また、外部機関との協業を推進し、新たな領域で確固たる競争優位性を確立していきます。

・技術立社としての基盤強化

技術立社を支える多様な分野の人材の獲得と育成を強化するとともに、世界の知財のビッグデータを駆使し、イノベーションや事業の方向付けを行います。また、デジタル技術を駆使した「水に関する知」の蓄積と利活用を進めていきます。

 

・グループ経営基盤のさらなる強化

当社の経営体制を変革し、コーポレートガバナンスの水準を一層高めていきます。また、多様な人材の育成

と活躍の支援によるエンゲージメントの向上、生産プロセスの変革とサプライヤーとの共存共栄に基づく強固

なサプライチェーンの構築、デジタル技術の早期確立と業務プロセスの変革によるデータドリブンな経営に取り組んでいきます。

 

②価値創造ストーリー

当社グループは、企業理念の実現に向け社会と共に持続的、長期的に成長していくための道筋をクリタグル

ープの価値創造ストーリーとして言語化しました。当社グループの一人ひとりが価値創造ストーリーの担い手となることで、企業理念の実現を目指してまいります。

 

(クリタグループの価値創造ストーリー)

私たちクリタグループは、世界の様々な現場で日々変化する水の課題に対しソリューションを提供しております。

現場から得られる水に関する課題や情報は、私たちの知として集約、蓄積されます。私たちはこの知の活用により、お客様の真の課題を理解し、お客様と共有できる形での価値の予測とともに最適なソリューションを提供します。

私たちは、予測した価値の実現により、お客様と社会との共通価値を創造(Creating Shared Value:CSV)し、社会と産業を変えていきます。そして、創造した価値にふさわしい収益を得るとともに、お客様と社会からの信頼を基に更なる現場と新たな知を獲得していきます。

 

(3) 会社の対処すべき課題

当社グループは、2018年4月より5カ年の中期経営計画「MVP-22」に取り組み、品質とスピードを飛躍的に高めた新しいビジネスプロセスの変革と、顧客価値および社会との共通価値を創造・提供するビジネスモデルへの変容を加速することで、高い収益性と成長力ならびに社会課題の解決力を備えたグループになることを目指してきました。この結果、買収効果も併せ海外を中心に売上高は伸長しました。利益面では、目標としていた売上高事業利益率15%は未達となったものの、サービス契約型ビジネスの拡大や低収益事業からの撤退等により収益性は着実に改善しました。一方でビジネスモデルの変容については、全ての事業において従来のモノ売りから価値提供型のサービスへの転換を進め、サービス契約型ビジネスの拡大は着実に進展したものの、市場特性を踏まえた柱となる新たなビジネスモデルの創出・提供には至らずに課題を残しました。

これらを踏まえて、2023年度からスタートした新中期経営計画「PSV-27」(Pioneering Shared Value 2027)の

策定にあたっては、企業ビジョンを「持続可能な社会の実現に貢献する『水の新たな価値』の開拓者」に改め、経営戦略の中核を、これまでの「CSR(Corporate Social Responsibility)」から「サステナビリティ」へと拡大し、企業活動と自然環境や社会システムが相互に影響し合った持続的な成長を指向しました。本計画では、顧客を取り巻く事業環境や顧客にとっての競争優位性など、市場特性を一層深く考察したうえで、市場ごとに付加価値の高い製品・サービスをスピード感をもって展開していきます。また、ビジネスモデルの変容・ビジネスプロセスの変革によるサービス事業の多様化と深化、社会価値起点のビジネスを強化することで、顧客層や既存顧客との現場接点を拡大し、収益性の向上を目指します。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、特に断りのない限り、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)クリタグループのサステナビリティへの取組

 当社グループはサステナビリティを、自然環境や社会システムの中に企業活動を位置づけそれらとの相互影響を踏まえて持続的な成長を図ることであると捉え、サステナビリティを経営の中核に据えて取組んでおります。

 

①ガバナンス

 当社グループは、企業ビジョン実現に向けた重要課題を、サステナビリティに関するグローバルな課題を踏まえ中期経営計画ごとに特定し「クリタグループのマテリアリティ」として定めたうえで、指標及び目標を設定してこれに取組むこととしております。指標ごとに定めた活動所管部署は目標の達成に向けて活動を実行し、当社の執行役員であるサステナビリティ推進本部長を委員長とするサステナビリティ推進委員会は活動所管部署から活動状況の報告を受け、マテリアリティへの取組を統合して管理、推進するとともにその状況を原則年2回経営会議へ付議または報告することとしております。また、経営会議はマテリアリティへの取組状況を取締役会へ報告します。なお、取締役のインセンティブ報酬のうち、業績連動報酬である短期インセンティブ報酬算定の一部には、マテリアリティに紐づく一部の指標及び目標の達成度を評価する環境貢献係数が用いられます。

 

 

0102010_001.png

 

②戦略

 当社グループは、中期経営計画PSV-27において「持続可能な社会の実現に貢献する『水の新たな価値』の開拓者」を企業ビジョンに掲げ、この実現に向けた当社グループの重要課題を「クリタグループのマテリアリティ」として定め、指標及び目標を設定してこれに取組んでおります。現中期経営計画におけるマテリアリティは以下のステップにより特定しました。

 

<Step1:サステナビリティ課題の抽出>

 国際規範※1、法令と情報開示基準※2、および過去のステークホルダーエンゲージメント※3より得られた課題から、マテリアリティ候補となるサステナビリティ課題37テーマを網羅的に抽出しました。

※1 SDGs、UNGC10原則、OECD多国籍企業行動指針、WEFグローバルリスク報告書。

※2 GRIスタンダード、GHGプロトコル、SASBスタンダード、EUタクソノミー、SFDR、CSRD、TCFD、TNFDなど。

※3 顧客からのCSR調達アンケートへの回答、取引先アンケート結果、従業員エンゲージメント調査結果、株主・投資家への説明会、ESG評価機関からの調査への回答、社会貢献活動など。

 

<Step2:マテリアリティ・マトリクスの作成>

 E&S委員会※4委員、社外取締役、監査役、E&S委員会※4事務局にアンケートを実施し、以下の2側面につきポジティブ側面・ネガティブ側面での影響度(発生可能性と影響の大きさ)評価を行いました。

(i) サステナビリティ課題がクリタグループの企業価値に与える影響

(ⅱ)クリタグループがサステナビリティ課題に取組むことで社会・環境に与える影響

 評価結果を、上記(i)(X軸/横軸)および(ⅱ)(Y軸/縦軸)の2軸のマトリクスで整理し、X軸・Y軸ともに影響度の大きいテーマをマテリアリティ候補とし、7つのマテリアリティと複数のマテリアリティに共通する5つのサブテーマに絞り込みました。

※4 E&S委員会は現サステナビリティ推進委員会の旧称。

 

<Step3:妥当性の確認とマテリアリティの特定>

 Step2で絞り込んだマテリアリティ候補を経営会議および取締役会へそれぞれ報告し意見を得た後、経営会議メンバーを中心とする新中期経営計画の検討を担う委員会で中期経営計画の検討と並行してマテリアリティの妥当性を確認し、最終的に8つのマテリアリティを、経営・事業活動の基礎とすべき「基礎テーマ」と、社会との共通価値創造に繋がる「共通価値テーマ」に分類し、特定しました。その後、取締役会にてこれを決議し「クリタグループのマテリアリティ」として従来の「CSRに関する方針」から変更しました。

 

 また当社グループは、顧客、取引先、従業員、株主・投資家および地域社会といったステークホルダーとのエンゲージメントに取組み、エンゲージメントを通して把握した期待や懸念、評価を、「クリタグループのマテリアリティ」ならびにその指標及び目標の妥当性の検証や目標達成に向けた諸活動に生かしていくこととしております。サステナビリティ推進委員会は、エンゲージメントごとに定める関連部署よりエンゲージメント状況を集約し、これらの取組に反映します。

 

ステークホルダー

エンゲージメントの方法

顧客

・ 顧客・サプライヤー評価機関からのCSR調査への対応。

・ 製品・技術・ビジネスモデルの開発段階におけるヒアリング。

・ 顧客調査や提案活動によるコミュニケーション。

取引先

・ 取引先アンケートの実施やサプライヤー評価機関を通した調査の実施。

・ 取引先ヘルプラインを通じた、匿名の相談・通報窓口の確保。

・ 人権デューデリジェンスの実施を通した潜在的人権リスクの調査・是正。

従業員

・ 従業員エンゲージメント調査の実施。

・ 自己申告制度等を活用した従業員との対話。

・ コンプライアンス相談窓口、公益通報窓口の設置による、匿名の相談・

  通報窓口の確保。

株主・投資家

・ 各種説明会の開催、カンファレンスへの参加、およびロードショーの実施

  による株主・投資家との対話。面談や電話会議による証券アナリストや

  機関投資家との個別対話。

・ ESG評価機関等からの調査への対応。

地域社会

・ 事業拠点へ寄せられた苦情や謝意の確認。

・ 公益財団法人クリタ水・環境科学振興財団への出捐を通した水と環境に

  関する科学技術の振興への貢献。

・ WRC※5活動をはじめとする水資源および公衆衛生の問題改善や次世代の

  育成等の社会貢献活動を通した社外組織・団体との連携。

・ 事業拠点がある地域における自然保全、福祉、防災などに関する活動や、

  災害・紛争発生時の被災地支援。

※5 Water Resilience Coalition、国連グローバル・コンパクトのイニシアチブの一つであるThe CEO Water Mandateが新たに設立した、世界各地域における水資源の問題が深刻な流域において産業界主導で水資源の保全・回復に取組む団体。当社は2020年7月に設立会員となりました。

 

③リスク管理

 当社グループに関わるリスクの監視およびマネジメントは、経営管理本部長が推進しています。経営管理本部長は、「全社リスクマップ」に基づき、当社グループのリスクの分析・評価を定期的に行うとともに、継続的にリスクの監視を行うことで、その発生防止に努めております。

 経営に重大な影響を及ぼすリスクが顕在化した場合は、経営管理本部長が対応の責任者と体制を立案し、代表執行役社長の承認を得て直ちに発令します。当該責任者は、速やかに対策を実行するとともに、リスクによる影響、是正状況および再発防止策について、代表執行役社長、経営管理本部長および取締役会または監査委員会に報告することとしております。

 重大なリスクのうち、コンプライアンスや人権、気候変動等に関するものはサステナビリティ推進委員会委員長を、安全衛生に関するものは本部安全衛生委員会委員長を責任者としています。また、日常的な事業活動に直結したリスクへの対応は、各本部長・事業部長を責任者として実施しており、各本部・事業部は主管する業務およびグループ会社に関するリスクの特定・評価を行っております。その他、品質、災害、交通事故、環境、情報セキュリティおよび輸出規制等のリスクへの対応は、各担当部署が実施しております。経営管理本部長、各委員会委員長、各本部長・事業部長は、リスクマネジメントの推進状況を定期的に取締役会に報告しております。なお、リスクマネジメントの実施状況や改善状況のモニタリングは、監査室を責任部署として実施しております。

 

0102010_002.png

 

 

④指標及び目標

 現中期経営計画における「クリタグループのマテリアリティ」の指標及び目標は、マテリアリティごとに定めた活動所管部署が策定の上、E&S委員会および新中期経営計画の検討を担う委員会での討議を経て、取締役会にてこれを決議しました。

 

 

マテリア

リティ

意味するところ、

取組みの方向性

指標

目標(年度)

2023

2025

2027

2030

2050

1.水資源

 の問題

 解決

水に関する知を生かしたソリューションの提供と様々な組織との協働により水量、水質、水へのアクセスの側面から水資源の問題解決に取組むとともに、生態系サービスとしての水の適切な循環を維持する。

コレクティブアクションを実施する延べ流域数と活動流域の延べ人口

3流域・

130百万人

4流域・

160百万人

5流域・

600百万人

7流域・

700百万人

 

CSVビジネスによる節水貢献量

125百万m3

200百万m3

300百万m3

 

GHG排出量・節水貢献量比※1の削減割合(2022年度比)

5%

35%

50%

取水量原単位(連結売上高比)の削減割合(2022年度比、超純水供給事業を除く)

7%

12%

20%

水資源に関する関心向上のためにエンゲージした個人・組織・団体の数

前年度

以上

前年度

以上

前年度

以上

2.脱炭素

 社会実現

 への貢献

産業・社会における温室効果ガスの削減に資するソリューションの開発・提供、低炭素な事業活動の実践により、サプライチェーン全体で脱炭素社会の実現に貢献する。

Scope1+2の削減割合(2019年度比)

17%

52%

73%

100%

Net-Zero

Scope3の削減減割合(2019年度比)

11%

17%

22%

30%

Net-Zero

CSVビジネスによるGHG削減貢献量

630千t

1,000千t

1,500千t

 

 

3.循環型

 経済社会

 構築への

 貢献

限りある資源、再生可能な資源を最適な方法で有効活用・再利用する製品・サービスの開発・提供により、持続可能な産業・社会の構築と自然の喪失防止・回復に貢献する。

CSVビジネスによる資源化貢献量・資源投入削減貢献量の増加割合(2022年度比)

30%

100%

300%

自社廃棄物のリサイクル化率

前年度

以上

前年度

以上

前年度

以上

4.革新的な

 製品・

 技術・

 ビジネス

 モデルの

 開発と

 普及

グループ内外の様々な人・組織の協働を通し、社会課題の解決に資する革新的な製品・技術・ビジネスモデルの開発と普及に努め、持続可能な社会の発展に寄与する。

革新領域※2への投資割合

15%

25%

30%

 

 

革新領域※2のテーマ件数割合

20%

30%

30%

革新領域※2に関するステークホルダーエンゲージメント件数

前年度

以上

前年度

以上

前年度

以上

5.戦略的な

 人材育成

 と活用

企業理念に共感する多様な人材の育成を含めた確保と活用を通し、一人ひとりが能力を発揮し、顧客価値の最大化と社会との共通価値の創造に取組む企業グループであり続ける。

エンゲージメントスコア(a.全業種平均を上回る会社の割合、b.調査した会社全体でのスコア)

a.50%

b.前回調査以上

a.65%

b.前回調査以上

a.75%

b.前回調査以上

栗田工業の業務執行に係る経営層に占める[女性、外国人、経験者採用者]の割合

30%

35%

40%

開発人材、デジタル人材、知財人材の充足度

65%

75%

80%

6.高い品質

 と安全性

 の製品・

 サービス

 の提供

多様な現場接点から得られる情報を基に、製品・サービスを生み出し、品質と安全を担保するための改善を継続し、社会からの信頼を高める。

顧客・社会に影響を与える事故の再発率の削減割合※3(前年度比)

30%

(栗田工業)

20%

(栗田工業、国内関係会社)

20%

(栗田工業、国内外関係会社)

7.人権を

 尊重した

 事業活動

人権に関する国際規範を踏まえ、企業理念が示す「自然と人間が調和した豊かな環境」における「人間」への取組みとして、すべての人の人権を尊重することを目指す。

サプライヤーへの人権デューデリジェンスの実施

実施

実施

実施

労働安全強度率※4 (栗田工業および国内関係会社)

0.005以下

0.005以下

0.005以下

人権に関する教育研修について対象者の受講率

100%

100%

100%

人権侵害に関する救済窓口(グリーバンス・メカニズム)の設置

-※5

-※5

完了

8.公正な

 事業活動

公正・透明・誠実な行動を実践し、正々堂々と業務に取組むことで、クリタグループで働く人々の自分の業務への誇りを高めるとともに、社会からの信頼を継続的に高める。

内部通報窓口に関する教育研修について対象者の受講率

100%

100%

100%

贈賄防止・競争法遵守等の法令・社内ルールに関する教育研修について対象者の受講率

100%

100%

100%

贈賄防止法および競争法に関する違反件数

0件

0件

0件

※1 クリタグループのScope3カテゴリ11および13を水処理装置のCSVビジネス(Scope3カテゴリ11および13を発生させる)による節水貢献量で除した数値。

※2 Deloitte 7 cells(Deloitte社の成長戦略策定の考え方)における「革新領域」を指す。

※3 2023年度は栗田工業、2025年度から国内関係会社、2026年度から海外関係会社にそれぞれ対象を拡大して取り組む。

※4 日本国外の指標および目標については、現地法令等を踏まえ、2025年度までに別途策定する。

※5 2027年度までの設置完了を目標とし、2023、2025年度は設置に向けた調査等を行う。設置後は周知に関する目標を設定する。

 

(2)人的資本(人材の多様性を含む)への取組

 

①ガバナンス

 当社グループは、当社の執行役員であるサステナビリティ推進本部長が人的資本に関する取組全般の推進と統括を行い、組織文化醸成に関する取組は、各本部・事業部およびグループ各社と連携し推進しております。また、人材育成や活用に関する取組は、「クリタグループのマテリアリティ」のテーマ5に定めており、サステナビリティ推進本部長を委員長とするサステナビリティ推進委員会が管理、推進するとともに、人づくり委員会やDX委員会と連携して推進しております。サステナビリティ推進本部長、サステナビリティ推進委員会、人づくり委員会ならびにDX委員会は、人的資本に関する取組状況を経営会議へ付議または報告し、経営会議はその内容を審議し必要な施策を決定します。また、経営会議は人的資本に関する取組状況を取組全般の監督を担う取締役会へ報告します。

 

0102010_003.png

 

 

②戦略

 当社グループは、企業ビジョン実現下の人材と組織の状態をD&Iビジョンとして「水と環境を大切に想う多様な人々が、互いの違いを受け入れ、相互作用することで、独創的価値を創造し続ける企業グループ」と定めております。

 

0102010_004.png

 

 また、D&Iビジョンの実現を通じ、価値創造ストーリーを具現化する組織・人材のあり方を、人材戦略として策定しております。人材戦略は、人材ポリシーとこれを支える方向性で構成されております。人材ポリシーは価値創造ストーリーの基になっている「戦略ストーリー」に描かれている組織や人材の姿から抽出して整理し、「クリタグループの人材に求める、価値観や思考・行動の基本的な考え方」を表しています。これにグループ内外の環境変化を加味し、取組の方向性を「組織に関する方向性」と「人材活用に関する方向性」に整理しています。

 

 

0102010_005.png

 

 

<人材の多様性の確保に関する方針>

 当社グループの中で多様性確保に課題の多い、当社での取組を重点的に推進しており、当社にD&Iの専任組織を設け、人事部、当社内組織ならびにグループ会社と連携し、施策を実施しております。

 

◇女性活躍

 昨年度までに実施したラウンドテーブル・個別ヒアリング・アンケート等を踏まえ、2022年度には以下の取組を実施しました。

-積極的な女性総合職の新卒・経験者採用の継続、女性管理職の登用促進

-管理職登用までの3段階で抱く不安に沿った段階別ワークショップ

-専門職志向者向けの、女性専門職系人材の経験を共有する「つながる会」の開催

 

◇経験者採用者

 2022年度はこれまでに経験者採用で入社した社員へのヒアリング結果を踏まえ、選考時の業務・キャリアパス説明の強化や経験者採用受入プログラム(約3日間)を開始しました。

 

<人材の育成に関する方針>

 2021年度のエンゲージメント調査より当社従業員から体系的なキャリア形成支援が求められていることを踏まえ、若年層のキャリア形成支援とキャリア形成を考慮した異動・配置の検討〔経験〕、部下の挑戦を潰さず支える管理職の育成〔助言〕、「実効性ある学習機会」と「自主的に学習できる環境」の提供〔研修〕の観点で、2022年度に人材育成施策の方向性を整理し、これに則した育成施策を開始しました。具体的には以下の取組を行っております。

-「専門技術者部会」による専門技術者の後継者育成、「DXマスターカレッジ」によるデジタル人材育成

-人材特性(資質)と各人の心の状態の可視化による、上司・部下間のコミュニケーションの質向上

-研修動画の拡充、人材育成コンテンツの一元化とグループへの公開

 

<人材の採用及び維持に関する方針>

 当社は、競争力の源泉の一つである結束力を継承する新卒人材を一定数確保しつつ、専門性や多様性を拡充する人材である経験者採用を推進し、また、豊富な経験、スキル、実績を有するベテラン層の活躍機会の拡大を図ることを通して、人材の採用および維持を進めてまいります。

 

③リスク管理

 当社グループに関わるリスクの監視およびマネジメントは、経営管理本部長が推進しております。経営管理本部長は「全社リスクマップ」に基づき、グループのリスクの分析・評価を定期的に行うとともに、継続的にリスクの監視を行うことで、その発生防止に努めております。人的資本に関連するリスクは全社リスクマップに統合され、サステナビリティ推進本部長を責任者として、(1)③リスク管理に記載の全社のリスク管理体制に基づきリスクの低減を推進しております。

 

④指標及び目標

 当社で人材戦略の進捗を定量的に把握しながら施策を実行するため、2022年度に設定したKPIとKGIは、以下のとおりであります。この中で、エンゲージメント調査(2年毎に実施予定)から導く当社独自の指標として、「D&I実行度」(当社グループで定めた「D&Iビジョン実現のための推奨行動」の実行度を表す)や、「人事制度運用度」(人事制度の効果的な運用状況を表す)を定めており、これらの計測を通して人材戦略の実効性を高めてまいります。

 

 

方向性等

指標

分類※1

現状※2

目標/水準

2023年度

2025年度

2027年度

2030年度

 

Outcome (価値創造ストーリーを実現する人材、組織)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

KGI

エンゲージメントスコア(a.全業種平均を上回る会社の割合、b.調査した会社全体でのスコア)

MA

a. 50%
b. 38%

(4社※5)

a. 50%
b. 前回調

 査以上

a. 65%
b. 前回調

 査以上

a. 75%
b. 前回調

 査以上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Input/Output (人的資本拡充/活用)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

KPI

組織文化

当社の業務執行に係る経営層に占める[女性、外国人、経験者採用者]の割合

MA

27%

30%

35%

40%

当社管理職の女性割合

T

4.1%

10%程度

当社総合職採用の女性割合

T

29%

3割から

4割程度

当社の経験者採用社員割合

T

10.6%

30%程度

当社の男性育児休業等取得率

T

68%

8~9割

程度

当社の男性育児休業等取得期間

T

23日

2~8週間程度

D&I実行度

MO

51%

(4社※5)

前回調査

以上

組織体制

海外子会社幹部の現地社員割合※3

MO

73%

8割程度

当社の本社機能の管理職相当※4におけるグローバル人材割合

MO

32%

50%程度

人材の確保・活用

開発人材、デジタル人材、知財人材の充足度

MA

59%

65%

75%

80%

人事制度

人事制度運用度

MO

43%

(4社※5)

前回調査

以上

※1 MA:マテリアリティとして重視する、T:達成目標を設定する、MO:中期的に傾向をモニタリングする指標を表します。

※2 2022年度の情報を中心に、一部は2021年度の情報を含みます。

※3 海外事業を展開する主な子会社における代表者とその直下の人材に占める現地社員割合を表します。

※4 管理職を含む、専門職・経営補佐職・特別専門職。

※5 調査実施会社数を表します。

 

当社グループの中で多様性確保に課題の多い当社を中心とした多様性に関する指標の推移は、以下のとおりであります。

①女性

2018年度

2020年度

2022年度

 

2027年度

2030年度

 

実績

実績

実績

 

目標

目標

当社

女性管理職割合

12月1日時

1.1%

2.4%

4.1%

 

10%程度

('28年4月)

 

総合職採用の

女性割合

(新卒)

4月入社時

21%

33%

31%

 

 

(新卒・経験者)

通年

通年

12月末

累計

 

27年度

通年

 

 

 

 

15%

33%

29%

 

3割から

4割程度

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<参考>各年度の12月1日時データ

2018年度

2020年度

2022年度

 

 

 

〇女性管理職割合

当社(a)

1.1%

2.4%

4.1%

 

 

 

国内連結子会社(b)

4.4%

5.5%

5.1%

 

 

 

海外連結子会社(c)

17.2%

19.0%

21.9%

 

 

 

 

合計(a+b+c)

8.5%

11.5%

13.2%

 

 

 

〇全従業員の女性割合

当社グループ

24.1%

24.5%

25.3%

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

②経験者採用

 

 

 

 

2022年12月

 

 

2031年4月

当社

経験者採用社員割合

10.6%

 

 

30%程度

 

管理職相当※1に占める経験者採用社員割合

12.5%

 

 

※1 管理職を含む、専門職・経営補佐職・特別専門職。

 

(3)気候変動問題への取組

 当社グループは、気候変動問題を世界共通で取組むべき喫緊の課題と捉えており、TCFD提言に基づき、事業活動に伴って発生する温室効果ガス(GHG)の排出の継続的な削減と、事業を通したお客様におけるGHG排出削減に取組んでおります。

 

①ガバナンス

 当社グループは、当社の執行役員であるサステナビリティ推進本部長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、グループにおける気候変動問題への取組を統括、推進しています。サステナビリティ推進委員会は、気候変動問題への取組状況を原則年2回経営会議へ付議または報告することとしており、経営会議はその内容を審議し必要な施策を決定します。また、経営会議は気候変動問題への取組状況を取組全般の監督を担う取締役会へ報告します。

 

 

0102010_006.png

 

 

②戦略

 当社グループは、IPCC SR1.5およびIPCC RCP8.5などで描かれる2種類のシナリオ(1.5℃および4℃)※1に基づき、「発生可能性」と「影響度」の2軸で短期・中期・長期※2のリスクと機会を特定し、クリタグループの施策を策定するとともに一部のリスクと機会については事業への財務影響を評価しています。

 

分類

リスク・機会の内容

時間軸

事業への財務影響・施策

政策と法

リスク

炭素税の導入や増加

中~長期

<事業への財務影響(2050年度時点)>

・1.5℃:22億円*3

・4℃:なし

<施策>

・Scope1+2:2030年度までに推定で約11億円の費用を投じ、電気自動車の導入や再生可能エネルギーの採用などにより100%削減。

・Scope3:2030年度までにCSVビジネス※4の推進に加え、低炭素原料の調達などにより基準年比30%削減。

リスク

GHG排出量の多い製品やサービスへの規制

中~長期

<施策>

・デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化。

・電気自動車の導入や再生可能エネルギーの採用などによるScope1および2の削減。

・バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大。

機会

GHG排出量の少ないエネルギーへの転換を支援する政策インセンティブの普及

中~長期

テクノ

ロジー

リスク/

機会

GHG排出量の少ない製品やサービスへの転換が進む

短~長期

市場

リスク

化石燃料関連セクターからの需要減少

中~長期

<施策>

・デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化や、バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大による事業のシフト。

リスク

原料、エネルギーコストの高騰

中~長期

<施策>

・デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化。

・電気自動車の導入や再生可能エネルギーの採用などによるScope1および2の削減。

・バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大。

機会

DXの加速による電子産業の需要増加

中~長期

物理的な影響

リスク

サイクロンや洪水などによる工場停止や工期遅延の増加

短~長期

<事業への財務影響(2020年度以降)>

・1.5℃と4℃共通:リスクがあると特定した国内生産拠点で約157億円/年

<施策>

・約14百万円を投じ、1拠点で止水板を設置済。

・水害対策など、自然災害に備えた事業継続体制の継続的強化。

機会

冷却設備の稼働率増加

短~長期

<施策>

・デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化。

・バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大。

資源効率

機会

効率的な生産や流通プロセスの普及

短~長期

機会

水使用量の削減

短~長期

エネル

ギー源

機会

GHG排出量の少ないエネルギーの普及

短~長期

機会

分散型エネルギー源への転換

短~長期

 

 

製品と

サービス

機会

GHG排出量の少ない製品およびサービスの需要増加

短~長期

<事業への財務影響(2027年度以降)>

・1.5℃:約3,500億円/年*5

・4℃:なし

<施策>

・デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化。

・電気自動車の導入や再生可能エネルギーの採用などによるScope1および2の削減。

・バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大。

機会

GHG排出削減に向けた多様な技術ニーズの増加

短~長期

レジリエンス

リスク/

機会

燃料、水資源などの代替や多様化

短~長期

<施策>

・デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化。

・電気自動車の導入や再生可能エネルギーの採用などによるScope1および2の削減。

・バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大。

※1 気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)が予測する、工業化以前の水準からの気温上昇が1.5℃となるシナリオおよび最も気温上昇が高いシナリオ。

※2 短期(1~3年)、中期(3~5年)、長期(5~20年)と設定。

※3 (事業展開地域のScope1および2排出量+Scope3カテゴリ1排出量)×(事業展開地域の炭素価格)の2050年度予測に基づく試算。

※4 従来に比べ節水・GHG排出削減・廃棄物の資源化および資源投入量の削減に大きく貢献する製品・技術・ビジネスモデル。

※5 GHG削減に寄与する新規のCSVビジネスのSAM(Serviceable Available Market)を試算。

 

③リスク管理

 当社グループに関わるリスクの監視およびマネジメントは、経営管理本部長が推進しております。経営管理本部長は「全社リスクマップ」に基づき、グループのリスクの分析・評価を定期的に行うとともに、継続的にリスクの監視を行うことで、その発生防止に努めております。気候変動に関連するリスクは全社リスクマップに統合され、サステナビリティ推進本部長であるサステナビリティ推進委員会委員長を責任者として、(1)③リスク管理に記載の全社のリスク管理体制に基づきリスクの低減を推進しております。

 

④指標及び目標

 当社グループは、気候変動問題への取組を「クリタグループのマテリアリティ」のテーマ2に定めております。2023年度には、SBTi※6が示す手法に沿い、「Net-Zero」へと長期目標を改定し、Scope1、2およびScope3の削減に取組んでおります。さらに、CSVビジネスによるGHG削減貢献量の中期目標も新たに設定し、産業・社会におけるGHGの削減に資するソリューションの開発・提供、および低炭素な事業活動の実践により、サプライチェーン全体で脱炭素社会の実現に貢献してまいります。

 基準年となる2019年度における当社グループのCO2排出量は、Scope1+2が約2%、Scope3が約98%でした。Scope1+2は、その大半はScope2の電力由来のCO₂排出であるため、再生可能エネルギーの採用を進めると共に、ガソリン車から電気自動車に順次切り替えていきます。Scope3は、約70%はカテゴリ11「販売した製品の使用」(主に水を送るために用いられるポンプなどの回転機)によるCO2排出であり、当社グループの競争優位性向上との両立を図るため、CSVビジネスの仕組みを活用してお客様に提供するソリューションの低炭素化を推進してまいります。

 有価証券報告書提出時点で最新の実績を確認できる年度である2021年度は、Scope1+2は顧客需要の回復に伴う生産拠点の稼働率の上昇により前年比で微増となりました。一方で、Scope3は主要排出源となっているポンプ類の調達実績の減少により前年比で減少しました。2022年度は、Scope1+2は上記施策の実施により前年比で減少し、Scope3は受注増による増加が低炭素化による削減を上回るため前年度より増加する見通しです。

 

 

 

 

マテリアリティ

指標

中・長期目標※7

実績※7

2027年度

2030年度

2050年度

2019年度

2020年度

2021年度

2.脱炭素社会

実現への貢献

Scope1+2

73%

100%

Net-Zero

(44千t-CO2)

7%

(41千t-CO2)

5%

(42千t-CO2)

Scope3

22%

30%

Net-Zero

(2,584千t-CO2)

6%

(2,440千t-CO2)

22%

(2,027千t-CO2)

CSVビジネスによるGHG削減貢献量

1,500

千t-CO2

279

千t-CO2

294

千t-CO2

367

千t-CO2

※6 企業に対し、気候変動による世界の平均気温の上昇を、工業化以前と比べ1.5℃に抑えるという目標に向けて、科学的知見と整合した削減目標を設定することを推進するイニシアチブ。

※7 Scope1+2および3は2019年度(基準年)からの削減割合。

 

3【事業等のリスク】

当社グループに係るリスクについては、経営管理本部長をリスク管理およびリスクマネジメント推進の担当役員として定め、当社およびグループ会社のリスクの分析・評価を定期的に行うとともに監視を継続し、その発生防止に努めています。なお、気候変動を含むサステナビリティに関するリスクはサステナビリティ推進本部長が担当しています。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済、市場の状況

当社グループは事業活動を行っている国内および海外の国・地域の経済状況の影響を受けております。電子市場、一般水処理市場ともに工場操業度、設備投資の動向により需要が変動し、経営成績に影響を与える可能性があります。電子市場では超純水供給契約を締結する顧客の経営状況により需要が変動し、経営成績に影響を与える可能性があります。さらに米中貿易摩擦の加速により輸出規制や制裁関税措置等が強化された場合は、関係する当社顧客の経営状況に影響し、間接的に当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。気候変動問題対応による顧客の化石燃料関連事業の縮小・撤退、燃料や水資源等の代替、当社設備および当社製品等から排出されるCO2に対する炭素税の導入や増加などにより経営成績に影響を与える可能性があります。なお、当社グループは、水と環境に関わる課題にソリューションを幅広い業種の顧客に提供しており、またサービスビジネスへの転換を推進し、安定した収益の確保に努めております。さらに、当社は、関係会社の月次・四半期での業績や方針・施策の展開状況の確認、および内部監査や財務報告に係る内部統制のモニタリングを行うとともに、当社の決裁・審査規程に基づき関係会社における重要事項を当社が決定するなど、関係会社の事業管理に努めております。また、当社グループの事業分野における競合相手との競争激化による商品やサービスの価格下落等により、当社グループの収益性が低下する可能性がありますが、当社グループは(3)に記載のとおり競争優位性の確保に努めております。

 

(2) 資材調達に関する影響、原材料・資材・エネルギーコストの高騰およびサプライチェーンの混乱

当社グループは製品の製造や製作・建設等のために使用する原材料や部品を当社グループ外から調達しております。また、様々な業務を行ううえで必要な役務サービスを当社グループ外から調達しております。これら調達については、クリタグループ行動準則に基づく人権への配慮に加え、クリタグループ調達方針を定め、法令を遵守し、経済・社会・環境に配慮した調達活動を行っておりますが、市況の変化により原材料、部品および役務の価格は変動し、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。なお、新型コロナウイルス感染の再拡大やロシアのウクライナ侵攻により、水処理薬品の原材料や水処理装置の資材の高騰、エネルギーコスト高騰による物流コストの増加、サプライチェーンの混乱が再燃する可能性がありますが、その場合には販売価格への転嫁、在庫の確保などの対策を講じます。

 

(3) 新技術・新商品・新サービスの開発、ビジネスプロセスの変革

当社グループは、従来に比べCO2排出削減、節水、廃棄物削減に大きく貢献するCSVビジネスをはじめ、新技術・新商品・新サービス等の開発により、薬品、装置、メンテナンスの技術・商品・サービスを駆使した総合ソリューションの拡充に取り組んでおります。また近年ではデジタル戦略本部を設置し、新商品・新サービスへのIoTやAIの活用、ビジネスプロセスのデジタル化などデジタルトランスフォーメーションに積極的に取り組んでおります。これらの開発・変革は不確実なものであり、顧客ニーズに合致した技術や優位性のある商品・サービス・ソリューションモデルをタイムリーに提案できない可能性や、技術革新や顧客ニーズの変化、デジタル技術の進化に追随できない可能性があります。優位性のある新商品・サービス・ソリューションモデルを開発できない場合やデジタルトランスフォーメーションの取り組みが遅延した場合、そして事業を通した顧客における温室効果ガス排出削減の取り組みが停滞した場合は、将来の成長と収益性を低下させる等、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 

(4) 海外事業展開に係るリスク

当社グループは海外市場における事業拡大を図っております。これらの海外市場への事業展開にあたっては、国内とは異なる、予期しない法律又は規制の変更、政治・経済の混乱、紛争・テロ等のリスクが内在しており、これらの事態が発生した場合は、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。なお、当社グループの事業展開地域においては、外務省やコンサルタントからの治安等の情報入手、現地の弁護士、公認会計士等の専門家の活用による法律・規制に関する確認等を実施しております。また、海外への出張者に対しては海外出張ガイドブックによる安全管理教育を実施し、海外駐在員に対しては医療・トラブル時の支援サービス、安全に関する情報を提供し役員・従業員の安全確保に努めております。また、ロシアのウクライナ侵攻、台湾や朝鮮半島の情勢による規制・制裁強化の影響やそれに伴う景気悪化等の間接的な影響も考えられます。

 

(5) 大規模自然災害等

大規模自然災害等により当社グループの事業遂行に直接的または間接的な混乱が生じた場合は、当社グループの事業活動、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、当社グループでは、地震、台風、集中豪雨等大規模な自然災害その他の事象を想定したクリタグループBCM(事業継続マネジメント)方針を定め、事業継続計画の策定、当社グループの各拠点および役員・従業員の自宅の水害リスク調査と対策実施、安否確認システムの構築、建物の耐震化、防災用物資の備蓄、役員および従業員を対象とした災害対応訓練等を行っております。

 

(6) 為替変動

当社グループは、海外での企業買収などにより海外売上比率は48.9%になっております。

各海外子会社の現地通貨建の財務諸表は、円換算後に連結財務諸表に反映されております。従って、現地通貨と日本円との為替レートの変動が当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。なお、当社グループは、為替リスクをヘッジする目的で為替予約、通貨スワップ契約等のデリバティブを利用することがあります。

 

(7) 不採算工事発生によるリスク

水処理装置事業における水処理設備において、顧客との契約時に設定する原水条件等の当社グループ側での不備や、設計・施工における過失等に起因する製品・サービスの欠陥や事故による追加原価の発生、またはそれにより顧客へ損害が生じた場合の損害補償の発生の可能性があります。当社グループでは、設計・施工要領書に基づく設計・施工の徹底をしており、工事予算交付前にエンジニアリングレビューという会議体を設置し、その場にて工事単位ごとに品質・コスト・納期・安全・環境等に関する設計の妥当性を確認しております。また受注後から引渡しまで毎月ビジネスプロセスレビューという会議体において、工事進捗度の確認、工事単位ごとの収支管理を行い、工事原価総額の見積りにおいても最新の情報に基づいた見積りを行っております。海外のグループ会社でも同様の取組みを実施しており、大型工事については当社より設計や工程管理に関する支援を行っております。このように、問題情報データの共有等により不適合の未然防止を図っております。

 

(8) 固定資産の減損損失

①のれん及び無形資産の減損損失

当社グループは、海外事業の基盤獲得や競争力のある技術や事業モデル獲得のため、企業買収を実施し、結果として「のれん」の残高は60,413百万円(連結総資産の12.0%)となっております。「のれん」は償却を行わず、毎年又は減損の兆候が存在する場合はその都度、減損テストを実施しております。事業環境の変化等により買収が期待どおりの効果を得られない場合や減損テストにおける将来キャッシュ・フローの見積りと実績に差異が発生した場合は、「のれん」等の減損損失が発生します。減損テストを実施するにあたり、回収可能価額は使用価値により測定しております。使用価値は将来キャッシュ・フローを資金生成単位の加重平均資本コストを参考に決定した割引率で割り引いて算定しております。将来キャッシュ・フローの予測期間は5年であり、過去の経験と外部の情報を反映して作成され、経営陣によって承認された事業計画を基礎としております。5年を超える期間については、資金生成単位が属する市場の状況を勘案して決定した長期平均成長率をもとに算定しております。5年のキャッシュ・フロー見積額、その後の期間の成長率および割引率を主要な仮定として使用しており、これら仮定の変動により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、当社は、当社グループの投融資に関する審査機能を強化するため、経営管理本部副本部長を委員長とする投資委員会を設置しております。同委員会は取締役会や経営会議に付議する投融資案件について、事業計画・投資金額・リスク評価の妥当性、採算性、競争優位性、適法性などの観点から審査を実施し、審査結果や主要論点を取締役会および経営会議に報告することで、当社は十分な検討、議論を経て企業買収の実施を決定しております。また、買収後は(1)に記載の関係会社の事業管理を行っております。

 

②有形固定資産の減損損失

当社グループは、主に超純水供給事業等で顧客工場に事業用設備を設置しております。顧客の事業撤退や工場の休止に伴い固定資産の減損損失が発生する場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、これらの投資決定にあたっては、顧客の事業状況、顧客との契約条件および投資対効果などを慎重に検討しております。

 

(9) 情報システムのセキュリティ

当社グループの事業活動において、情報システムの利用とその重要性は増大しており、コンピュータウイルスその他の要因によってかかる情報システムの機能に支障が生じた場合は、当社グループの事業活動、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、当社グループは情報システム管理方針を定め、ウイルスチェックソフト導入、標的型攻撃メール訓練等の役員・従業員への情報セキュリティ教育や啓発の実施によりコンピュータウイルス対策を強化しております。またセキュリティ事故が発生した際の機会損失を最小限に抑えるため、緊急対応を実行する組織を設置しております。

 

(10)法令・コンプライアンス

当社グループの役員・従業員が法令を遵守できなかった場合や社会倫理に反する行動を起こした場合は、事業活動の制約、罰金、社会的信用の失墜等により当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。なお、当社グループは、サステナビリティ推進本部長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、コンプライアンス活動を単に遵法活動と捉えるのではなく、社会倫理に基づいた行動を全ての企業活動の前提として徹底していくための活動として位置付け、推進しております。

 

(11)製品・サービスの品質および水処理設備のオペレーションエラー

顧客または当社グループの水処理設備のオペレーションにおける人為的なエラー等により基準に満たない処理水を供給または排出することで損害賠償の発生や社会的信用の失墜につながる可能性があります。賠償責任保険の適用を超えるような責任が発生した場合や社会的信用が失墜した場合は、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。なお、当社グループは(7)で記載したように品質マネジメントシステムを構築し、顧客満足向上のため、継続的な改善活動に取り組んでおります。

 

(12)知的財産権

広範囲に事業を展開する中で、当社グループの知的財産権が侵害される可能性や第三者が保有する知的財産権を侵害する可能性があり、こうした場合は、当社グループの経営成績に影響を与える可能性がありますが、当社グループは知的財産権の重要性を認識し、国内および海外において、知的財産の権利化、第三者が保有する知的財産権の侵害防止に継続して取り組んでおります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「3.重要な会計方針」、「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。

 

(2) 経営成績

当期における世界経済は、ウクライナ情勢の長期化や新型コロナウイルスの感染再拡大などにより、サプライチェーンの混乱とともに原材料やエネルギー価格が高騰し、先行きの不透明感が高まりましたが、緩やかな回復が継続しました。

当社グループを取り巻く市場環境は、国内においては、年度前半における半導体不足や原材料の供給不足などにより、製造業の生産活動の一部に弱さが見られたものの、設備投資は持ち直しの動きが継続しました。海外においては、米国・欧州および中国を除くアジア諸国の景気には回復の動きが見られましたが、中国では新型コロナウイルス感染拡大防止のための都市封鎖や行動制限の影響が残り、景気が減速しました。

このような中、当社グループは、中期経営計画「MVP-22」(Maximize Value Proposition 2022)の最終年度となる当期において、社会やお客様への提供価値を起点とした確固たる収益基盤の確立を目指し、節水やCO₂排出削減、廃棄物削減といった環境負荷低減に寄与するCSVビジネスの拡大や、生産性の向上をはじめとするお客様の課題解決に貢献する総合ソリューションの提案に向けた取り組みを強化しました。また、成長基盤の構築に向け、当社グループ内で展開しているサービス契約型ビジネスのベストプラクティスを水平展開するとともに、より幅広いお客様の多様なニーズに対応すべく、本ビジネスのラインナップ拡充にも努めました。コスト構造改善についてはサプライチェーンの最適化に向けた体制の整備を進めるとともに、原材料や物流コスト上昇への対策を進めました。

これらの結果、当連結会計年度の受注高は374,268百万円(前年同期比18.7%増)、売上高は344,608百万円(前年同期比19.6%増)となりました。利益につきましては、事業利益は38,589百万円(前年同期比17.1%増)、営業利益は29,058百万円(前年同期比18.7%減)、税引前利益は30,151百万円(前年同期比0.2%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は20,134百万円(前年同期比9.0%増)となりました。

当連結会計年度においては、その他の収益1,564百万円、その他の費用11,095百万円を計上しております。その他の収益は、前連結会計年度に不動産売却に伴う一時的な利益(固定資産売却益)を計上していたため、前年同期比で4,555百万円減少しております。その他の費用には、クリタ・アメリカ, Inc.(水処理薬品事業)ののれんの減損損失7,646百万円が含まれています。同社ののれんの減損損失は、新型コロナウイルス感染拡大後の水処理薬品市場の変動、物流混乱や物価高騰の影響等を勘案し事業計画を下方修正したこと、および米国におけるインフレ抑制のための政策金利の引き上げに伴う回収可能価額算定に使用する割引率の上昇により影響を受けた結果、回収可能価額が会計上の簿価を下回ったため生じたものです。

また、当連結会計年度において、米国子会社ペンタゴン・テクノロジーズ・グループ,Inc.(水処理装置事業)の株式を追加取得(100%子会社化)するため、当社は、クリタ・アメリカ・ホールディングス,Inc.の増資を引き受け、払い込みを完了しております。この増資決定後に設定した為替予約によるデリバティブ取引差益を金融収益へ計上したことや、前連結会計年度において計上したペンタゴン・テクノロジーズ・グループ,Inc.(水処理装置事業)の非支配株主と締結した株式の先渡契約に係る負債の事後測定による金融費用がなくなったことから、税引前利益および親会社の所有者に帰属する当期利益は増益となりました。

 

(水処理薬品事業)

国内では、半導体不足などの原材料の供給制約により一部顧客の工場稼働に影響があったものの、値上げの取り組みに加え、顧客の環境負荷やコスト低減に効果のあるサービス契約型案件の提案活動などに注力した結果、受注高・売上高は、ともに前年同期と比べ増加しました。海外では、CSVビジネス等の付加価値の高いサービスの展開による成果に加え、原材料価格や物流コストの上昇を受けた値上げの取り組み、円安が進んだことに伴う海外子会社の円換算額の増加もあり、受注高・売上高は、ともに増加しました。この結果、当社グループの水処理薬品事業全体の受注高は136,863百万円(前年同期比15.6%増)、売上高は136,139百万円(前年同期比15.7%増)となりました。

利益につきましては、主に増収効果が原材料価格や物流コストの上昇などによる費用増加を吸収したことから、事業利益は16,286百万円(前年同期比19.8%増)となりましたが、営業利益は、クリタ・アメリカ, Inc.ののれんの減損損失7,646百万円の計上があり、7,606百万円(前年同期比47.8%減)となりました。

 

(水処理装置事業)

国内では、電子産業分野向けの水処理装置の受注高は、前連結会計年度の大型案件の受注計上の反動で大幅な減少となったものの、高い水準での受注計上となりました。売上高は、受注残からの売上計上などにより大幅に増加しました。同分野向けのメンテナンス・サービスの受注高・売上高は、顧客の工場稼働率が堅調に推移したことを背景とした、増設および消耗品交換などの修繕案件の受注・売上計上により、ともに増加しました。一般産業分野向けの水処理装置の受注高は、前連結会計年度の大型案件の受注取消があったことにより増加しましたが、売上高は減少しました。同分野向けのメンテナンス・サービスは、メンテナンス需要回復により、受注高・売上高ともに増加しました。電力分野向け水処理装置の受注高・売上高は、減少しました。土壌浄化の受注高は減少しましたが、売上高は中小規模の案件の需要を取り込み、増加しました。海外では、円安が進んだことに伴う海外子会社の円換算額の増加に加え、東アジアの電子産業向けの水処理装置の大型案件の受注・売上計上により、受注高・売上高ともに増加しました。なお、超純水供給事業の国内および海外を合わせた売上高は、当連結会計年度に開始した契約案件の売上貢献もあり、増収となりました。

これらの結果、当社グループの水処理装置事業全体の受注高は237,404百万円(前年同期比20.6%増)、売上高は208,468百万円(前年同期比22.2%増)となりました。利益につきましては、主に、売上高の増加が材料・部品調達に係る費用増加などを吸収し、事業利益は22,378百万円(前年同期比15.4%増)となり、営業利益は21,526百万円(前年同期比1.7%増)となりました。

 

生産、受注および販売の実績は、以下のとおりであります。

①生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

 前年同期比(%)

水処理薬品事業(百万円)

137,300

114.5

水処理装置事業(百万円)

210,223

123.1

合計(百万円)

347,524

119.5

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

②受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

水処理薬品事業

136,863

115.6

6,284

115.1

水処理装置事業

237,404

120.6

112,478

134.6

合計

374,268

118.7

118,762

133.4

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

③販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

 前年同期比(%)

水処理薬品事業(百万円)

136,139

115.7

水処理装置事業(百万円)

208,468

122.2

合計(百万円)

344,608

119.6

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(3) 財政状態

①資産合計  501,538百万円(前連結会計年度末比31,557百万円増加)

流動資産は196,416百万円となり、前連結会計年度末に比べ18,020百万円増加しました。これは主に増収影響により営業債権及びその他の債権が11,407百万円増加したことに加え、現金及び現金同等物、棚卸資産がそれぞれ4,737百万円、3,715百万円増加したためであります。

非流動資産は305,121百万円となり、前連結会計年度末に比べ13,536百万円増加しました。有形固定資産の増加17,703百万円は、主に超純水供給事業(水処理装置事業)に係る設備の新規取得によるものであります。その他の金融資産の減少7,578百万円および繰延税金資産の増加3,913百万円は、主に政策保有株式の一部を売却したためであります。

 

②負債合計  205,778百万円(前連結会計年度末比13,659百万円増加)

流動負債は109,468百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,459百万円減少しました。これは主に、コマーシャル・ペーパーの発行と新規の借入を実施したことにより社債及び借入金が20,818百万円増加したものの、その他の金融負債が主に米国のペンタゴン・テクノロジーズ・グループ,Inc.(水処理装置事業)の非支配株主と締結した先渡契約を履行したことで19,610百万円減少したことに加え、営業債務及びその他の債務が6,502百万円減少したためであります。

非流動負債は96,310百万円となり、前連結会計年度末に比べ18,119百万円増加しました。これは主に第2回無担保社債10,000百万円の発行と新規の借入を実施したことにより社債及び借入金が17,805百万円増加したためであります。

 

③資本合計  295,759百万円(前連結会計年度末比17,897百万円増加)

主に親会社の所有者に帰属する当期利益の計上などにより利益剰余金が17,566百万円増加したためであります。

 

当連結会計年度末における資産をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

報告セグメント

調整額

(注)

連結財務諸表

計上額

水処理薬品事業

水処理装置事業

セグメント資産

144,467

303,233

447,701

53,836

501,538

(注)主なものは各報告セグメントに配分していない全社資産であります。

 

(4) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は50,468百万円(前連結会計年度末比4,737百万円増加)となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は48,631百万円(前年同期比19,894百万円増加)となりました。これは主に税引前利益30,151百万円、減価償却費、償却費及び減損損失37,276百万円などで資金が増加したものの、法人所得税の支払額17,094百万円、営業債権及びその他の債権の増減額(△は増加)10,172百万円などで資金が減少したためであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動で使用した資金は46,274百万円(前年同期比6,345百万円増加)となりました。これは主に投資有価証券の売却による収入8,854百万円で資金を得た一方で、有形固定資産の取得による支出53,384百万円などで資金を使用したためであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動で得られた資金は1,101百万円(前年同期比9,028百万円増加)となりました。これは主に連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出23,272百万円、配当金の支払額8,699百万円などで資金を使用したものの、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの純増減額(△は減少)18,722百万円、長期借入れによる収入9,988百万円、社債の発行による収入9,955百万円などで資金を調達したためであります。

 

当社グループは事業運営上必要な流動性確保と安定した資金調達体制の確立を基本方針としております。短期運転資金、設備投資やその他成長分野への投資資金は自己資金を基本としつつも、必要に応じて債券市場での調達や銀行借入を実施しております。なお、当連結会計年度末において、当社は取引金融機関2社とコミットメント・ライン契約を締結しております(借入実行残高 -百万円、借入未実行残高 20,000百万円)。

 

(5) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

中期経営計画「MVP-22」に対する達成状況については、以下のとおりであります。

 

2023年3月期実績

2023年3月期目標

売上高年平均成長率

(M&A等による上積みを除いた自律的成長分)

3.7%

3%以上

売上高事業利益率

11.2%

15%

親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)

7.1%

10%以上

 

 

5【経営上の重要な契約等】

(1) 株式取得による子会社化

当社は、2023年4月27日開催の取締役会において、当社連結子会社であるクリタ・ヨーロッパGmbHを通じて、欧州の水処理装置の製造・販売会社であるArcade Engineering GmbH、Arcade Industrie SAS及びArcade Engineering AGの発行済株式の全てを取得し、子会社化することを決議し、2023年5月2日に株式譲渡契約を締結いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「39.重要な後発事象」に記載のとおりであります。

 

(2) 会社分割による事業承継

当社は、2023年1月31日開催の取締役会において、当社の土壌・地下水浄化事業を、当社の完全子会社であるランドソリューション株式会社に承継させることを決議し、同社との間で2023年4月1日を効力発生日とする吸収分割契約を締結いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 2 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項」の(重要な後発事象)に記載のとおりであります。

 

 

6【研究開発活動】

当社グループは、社会的課題の解決と顧客の企業価値・競争力向上に貢献する独創的なソリューションの提供に必要な商品・技術の開発に重点的に取り組んでいます。また、ビジネスモデルのデジタルトランスフォーメーションに必要なセンシング技術、データ解析技術、最適制御技術の開発、水処理技術の数理モデル化、および当社商品技術を支える水処理の作用・障害の機構解明にも注力して取り組んでおります。

今後も、永年培ってきた“水”の技術にさらに磨きをかけるとともに、企業ビジョン「持続可能な社会の実現に貢献する『水の新たな価値』の開拓者」の実現に向けて、日本、ドイツ、シンガポール、北米等の開発拠点が連携して、社会と産業のニーズに幅広く対応する商品・技術の開発を積極的に進めてまいります。

研究開発は、主に当社のイノベーション本部により推進されており、研究開発スタッフはグループ全体で約214名にのぼり、これは従業員総数の2.7%に当たっております。当連結会計年度の研究開発費の総額は6,344百万円(売上高比1.8%)であります。

当連結会計年度におけるセグメント別の研究開発概要と主な成果および研究開発費は、以下のとおりです。

 

(1) 水処理薬品事業

顧客の節水・CO₂排出量削減・廃棄物削減や、生産性向上・環境負荷低減に貢献する水処理薬品の開発を推進しています。また、センシング技術やデータ解析技術による薬品処理効果の診断や自動最適制御などの技術開発にも取り組んでいます。当該連結会計年度における主な成果は次のとおりです。

・製鉄所の原料ヤードにおける降雨時に原料の一つである石炭内部への水分上昇を防止する薬品を開発しました。昨年度開発した原料パイルの水分量監視・予測や高遮水性防塵剤からなる鉄鋼原料ヤード監視システムに本薬品を付加し、鉄鋼原料の水分上昇に伴う移送ラインの閉塞や燃料使用量アップを抑制するソリューションを提供します。

・製紙工場の抄紙工程において、生産効率に影響を与える水中の微細気泡を測定できるセンサー、および製品品質に影響を与える抄紙原料スラリーの凝集状態を検知するセンサーを開発しました。これらセンサーによる水質データと顧客操業状況との相関性を明確にし、適切な薬品注入制御により、生産性向上・環境負荷低減に寄与するサービスの提供を目指します。

・EUでのりんおよび重金属の今後の排出規制強化への対応として、炭素鋼熱交換器に対応した冷却水向け非りん非金属防食剤を開発しました。本年度にEUの実冷却水系での性能評価を実施し、市場展開するとともに、EU以外の地域への適用拡大を目指します。

なお、当事業に係る研究開発費は1,828百万円です。

 

(2) 水処理装置事業

排水の回収・再利用、廃棄物の削減・リサイクルや、再生可能エネルギー創出などの循環型社会実現に向けた技術開発に取り組んでいます。また、排水処理システムや半導体など電子産業の生産性向上に寄与する超純水製造システムの省エネルギー化や運転管理の省力化・最適化技術の開発などを推進しています。当該連結会計年度における主な成果は次のとおりです。

・技術的に成熟した現行の超純水設備(RO+イオン交換処理)のCO₂排出量やオペレーションコストを大幅に削減するRO膜の低圧化や、顧客の使用量に合わせて造水することにより、過剰な水の移動による動力費の削減、節水が可能な流量可変型一次純水システムおよび運転技術を開発しました。

・大規模水処理設備の巡回点検、異常監視などのオペレータ業務の支援・省力化技術として、回転機器の振動を感知するセンシングと異常判定モデル、監視閾値超過による警報発生時の状況診断支援システムを開発しました。また、水処理設備の運転状況に応じた自動制御・シミュレーション技術として、好気生物処理において原水負荷と生物処理性能データに基づいたAIによる最適な曝気量制御技術を開発しました。

なお、当事業に係る研究開発費は4,515百万円です。