第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、情報サービス産業において、歴史ある企業として業績の向上に努め、一定の成果をあげるとともに、それに基づくステークホルダーへの利益還元を実施し、中長期的な企業価値の増大を図ることが最も重要であると考えています。加えて、「人々の喜びや社会の豊かさを生み出す力」を「技術」と捉え、「技術をもって顧客の信頼を築く 技術をもって企業価値を増大する 技術をもって社員生活の向上を図る 技術をもって社会に貢献する」という企業理念に基づき、すべてのステークホルダーから信頼され、安心感を与える企業を目指すとともに、情報サービス業界を常にリードする独立系総合情報サービス企業として業界内での存在感を高めることを目標とし、ゆるぎない経営基盤を確立することにより一層の発展を目指していきます。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題

当社グループを取り巻く環境は大きく変化していくことが予想されています。

当社グループは、IT市場や技術、ESG等の環境変化を捉え、既存SIビジネスモデルの進化に加えてデジタル、ソリューションおよびサービスビジネスや、それらを実現する人材などへの積極的な投資により、新たな成長モデルを構築し、社会的価値・経済的価値の創出という両輪でさらなる企業価値の向上を目指すため、Vision2030を策定しています。

これらの実現に向け、「提案価値の向上」、「SI×デジタルのコンビネーション」、「新規領域・グローバルへの進出」、「ESGへの取り組み強化」、「自社経営基盤の改革」を重要課題に設定し、取り組みを進めていきます。

 

(3) 特別調査委員会による調査結果を踏まえた今後の課題

当社の特定の海外子会社において、取引先に対し不適切な支払いがなされ、それらが現地の汚職防止法等の法令違反となる可能性が認識されたため、2024年5月24日に特別調査委員会を設置し、調査を行なってきました。

当社は、特別調査委員会から2024年8月2日に調査報告書を受領し、当該海外子会社において案件を受注する等の目的から、特定事業の複数顧客の要職者等に対し不適切な支払いが長期間にわたり継続して行われていたこと、また、これらは当社が当該海外子会社を買収する以前から経営陣による承認の下、組織的に行われていたことが報告されています。さらにこれら不適切な支払いは、現地の汚職防止法違反その他各種法令の法令違反や顧客との契約違反を構成する可能性がある旨の指摘を受けています。

当社は、上記不適切な支払い及び実態のない費用計上が組織的かつ長期的に行われていた原因として、当該子会社における歴代経営トップのコンプライアンス意識の問題とこれら経営トップを監督する取締役会や内部監査といったガバナンスが機能していなかったこと、当該子会社にはコンプライアンスを所管する部署がなく、贈賄リスクへの対応や社員への教育が不十分であった点を認識しています。

また、上記不備をこれまで検出できなかった親会社としての当社側の原因として、グローバル戦略を推進する知見や体制が不十分であったことにより、当該子会社に対する出資前及び出資後における贈賄リスク評価とその対応が十分ではなかったこと、当該子会社の非常勤取締役が贈賄に関する情報を得ていたにもかかわらず、その情報が当社に適切に伝達されなかったことからリスク是正に向けた対応が適時に行えなかった点を認識しています。

さらに、2024年3月期有価証券報告書の提出が遅れた原因として、当該子会社における非常勤取締役が本件調査の初期段階で、これら不適切な支払いが汚職防止法等の法令違反となる可能性についての情報を得ていたが、贈賄リスクへの感度が低かったことからその情報を適時に当社側に伝達していなかった点を認識しています。

当社は、財務報告に係る内部統制の重要性を認識しており、これらの開示すべき重要な不備を是正するために、特別調査委員会からの指摘・提言も踏まえ、以下の改善策を講じて適正な内部統制の整備及び運用を図っていきます。

 

(当社における再発防止策)

(1) グローバル戦略の明確化

(2) グローバルなコンプライアンスリスク対応の強化

① 贈賄リスクに対する感度の引き上げ

② 海外グループの管理業務の評価と再定義

③ 管理体制の強化

(3) 監査室の体制・監査項目等の見直し

① 監査体制の強化

② 海外グループにおける外部監査機関を活用した監査の実施

(4) 有事対応における多角的な検討と情報共有の改善

① 緊急時連絡体制の強化

② コンプライアンス教育の強化、徹底

 

(当該海外子会社における再発防止策)

(1) ガバナンス体制強化

① 経営体制の刷新

② 監査委員会体制の再構築

③ 監査委員会による監査範囲の見直し

④ 内部監査によるモニタリングの改善

(2) コンプライアンス体制強化

① 経営トップからのコンプライアンス最優先のメッセージ発信

② コンプライアンス体制の構築

③ 社内規程類の見直しと教育・研修の実施

(3) グローバル・ホットラインの改善

(4) 調達プロセス等の内部統制の改善

 

 

(4) 目標とする経営指標

Vision2030の1st STAGEとなる中期経営計画(2022年4月~2025年3月)では、事業および経営基盤の両面において重要課題を設定し、それを実現するため以下のとおり定めています。

 

<2025年3月期 財務目標>

事業収益

連結売上高

1,100億円以上

EBITDA(※1)

130億円以上

EBITDAマージン

12%程度

投資

投資枠(3年間累計)

250億円

経営効率

ROE

13%以上

株主還元

配当性向

50%以上

総還元性向

70%以上

 

(※1) 営業利益120億円以上(参考値)

 

<2025年3月期 非財務目標>

注力領域

フォーカスビジネス(※2)売上高

40%以上

ESG

CO2排出量削減(2013年度比)

50%以上

SDGs関連売上高(※3)

40%以上

女性管理職比率

6%以上

女性取締役比率

10%以上

独立社外取締役

過半数

 

(※2) デジタルBiz・ソリューションBiz・サービスBizの3つの成長エンジンで構成される、今後注力していくビジネス領域

(※3) SDGsゴール(17項目)に適応するプロジェクトの売上高

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社グループは、企業を取り巻く環境が大きく変化する中、持続可能な社会の実現と企業の持続的成長を両立していくことが重要な経営課題であるとの認識に立ち、当社グループの環境・社会への取り組みをより一層強化するため、「サステナビリティ委員会」を設置しています。「サステナビリティ委員会」は、取締役会による監督のもと、代表取締役社長を委員長とし、取締役および執行役員を中心に構成されています。「サステナビリティ委員会」では、環境や人材といった社会課題への取り組みについて、方針や目標、活動計画の策定、目標に対する推進管理や評価、個別施策の審議を行い、定期的に取締役会に報告や提言を行っています。

また、当社グループの経営成績、財務状況などに影響を及ぼす可能性があるリスクについてはリスク項目を設定し、そのリスクを軽減するための体制整備や対応策などを適切に管理するため「リスクマネジメント委員会」を設置しています。「リスクマネジメント委員会」は、リスク評価と問題点の把握を行うとともに、インシデント発生の有無についても監視を行い、取締役会への報告を定期的に実施しています。

 

(2) 重要なサステナビリティ項目

上記、ガバナンスおよびリスク管理をとおして識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりです。

・気候変動

・人的資本

それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは次のとおりです。

 

① 気候変動

・ガバナンス

気候変動におけるリスクと機会に関する目標・計画に対して、当社の取締役会は監督機関として機能しており、環境負荷低減目標に対しては、四半期ごとのモニタリングを行っています。

また、代表取締役社長を委員長とし、取締役および執行役員を中心に構成されるサステナビリティ委員会においては、定期的にリスク評価と問題点の把握を行うとともに、カーボンニュートラル実現のロードマップや脱炭素経営の推進計画など、気候変動に関する主要な戦略について検討され、その進捗状況については、適宜取締役会に報告しています。

 

・戦略

気候関連のリスクと機会が当社グループの事業、戦略、財務計画に及ぼす実際および潜在的な影響について分析し、財務影響の程度、影響を受ける期間などを開示しています。

また、脱炭素社会への移行に伴い不確実性の高い将来を見据え、どのようなビジネス上の課題が顕在しうるかについて、1.5℃と4℃のそれぞれにおいてTCFDが提言するシナリオ分析を行いました。脱炭素化による持続可能な1.5℃の世界、あるいは化石燃料依存による高度な経済発展が見込まれる4℃の世界のいずれにおいても、当社のIT関連技術によるDX対応やIoT、AIの新技術領域は、幅広い業種のお客様によるニーズがあり、気候変動に関するビジネス拡大の機会があることが分かりました。とりわけ、1.5℃の世界においては、当社の基盤事業である保守運用サービスが堅調に売上を維持拡大していくことが定量分析結果から得られたことで、当社では、CO2排出量を「2030年ネットゼロ」とする目標の達成が非常に重要な意味を持つということを、あらためて確認することができました。したがって、気候関連問題および脱炭素社会への移行は当社の発展に大きくつながりのあるものであるとの認識を強めました。

 

 

・リスク管理

 当社のリスク管理について定めた「リスク管理規程」においては、気候関連リスクをサステナビリティリスクと区分し、事業に関わるリスクの一つとしてリスクマネジメント委員会で統括管理しています。

 気候関連リスク・機会に関しては、サステナビリティ委員会において特定し、「発生可能性」と顕在化した場合の「量的影響度」「質的影響度」の3つの尺度で評価するとともに、当社グループの戦略に大きな影響を及ぼす気候関連リスク・機会については、定期的にモニタリングを行っています。

 

・指標と目標

 当社グループは、世界全体の気温上昇を1.5℃未満とする目標を達成するため、長期的な温室効果ガス排出量の削減目標を設定しています。2024年2月には、Scope1,2,3の排出量削減目標に対して、SBT(Science Based Targets)の認定を取得しました。長期展望「Vision2030」のもと、Scope1,2 における2030年CO2排出量ネットゼロを掲げ、Scope3についても野心的な目標を設定し、カーボンニュートラルの実現を目指していきます。

 

② 人的資本

・人材戦略

当社グループは、高い技術力や専門性を有する人材の確保および育成を持続的成長に不可欠な要素の一つとして認識し、下記の基本方針を定めています。

 

<基本方針>

「各人に求められる役割の大きさで等級格付けを行い、役割と成果に応じたメリハリのある処遇ならびに組織と人の変革を実現する」という方針のもと、さまざまな人事制度を制定し運用しています。また、オープンかつ公正な評価制度を整備するとともに、多様な学習機会を提供しています。

・等級制度:自分のがんばる目標が見える等級格付がある

・評価制度:役割に基づく行動や結果に対して明確・公正な評価がある

・報酬制度:役割に応じた行動と結果に報いる給与・賞与がある

 

・女性活躍推進

当社または当社グループは、女性活躍推進に関する優良な取り組み実績が認められ、厚生労働省が推進する「えるぼし」の2段階目の認定を2019年10月に取得しました。当社は、えるぼし認定の5つの評価項目のうち、「1.採用」「2.継続就業」「3.労働時間等の働き方」「5.多様なキャリアコース」の4つが評価されました。

中期経営計画においては、2025年3月期における女性取締役比率および女性管理職比率の達成目標を掲げるとともに、女性活躍推進法に基づく行動計画においては、そのマイルストーンとして、女性社員比率の向上、女性管理職候補および女性管理職の育成を目標に女性活躍を推進しています。なお、女性取締役比率については2024年3月31日時点で18.2%と2025年3月期目標である10.0%以上を達成しています。女性管理職比率については2025年3月期までに6.0%以上とする目標に対し、2024年3月31日時点で4.1%でした。

 

・出産・育児・介護等支援

当社は、育児と仕事の両立に関する「育児関連制度のより利用しやすい制度・仕組みへの改善」、「早期復職および子育て中のキャリアアップに関する支援」等の優良な取り組み実績が認められ、厚生労働省が推進する「くるみん認定」を2022年11月に取得しました。

2024年3月期は、男性社員の育児休業の利用促進に取り組み、男性社員の育児休業取得事例について、育児休業取得者だけではなく、取得者の上長の声を紹介するなど、男女の育児休業取得率の格差解消に向け育児と仕事の両立を支援しています。また、全社員を対象とした「ダイバーシティ&インクルージョン研修」を実施し、当社におけるダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の取り組みや当社社員として求められるD&Iに対する意識と行動について、当事者だけでなく周囲も含めて社員一人ひとりが理解を深め、互いに尊重し支え合い高め合える風土づくりを推進しています。

 

・健康経営の推進

当社グループは、行動規範の一つである「人権の尊重・働き甲斐のある職場づくり」に基づき、すべての社員が心身ともに健康で活き活きと働き、その能力を発揮することにより、個人も会社も成長し続けることを目指しています。

当社は、2018年11月に社会に対して「健康企業宣言」を行い、健康増進活動の促進に取り組みはじめました。この結果、2020年9月に健康優良企業認定(金の認定)を取得、その後も4年連続で更新を続けています。また、2024年3月には「健康経営銘柄2024」に2度目の選定、「健康経営優良法人(ホワイト500)2024」に3年連続の認定を取得しました。

 

・チャレンジする多様な人材づくり

既存SIのビジネスモデルをトータルSIに進化させ、新規ソリューション/サービス創出で事業領域を拡大していくには、果敢にリスクテイクし、新しいことにチャレンジできる人材が必要不可欠であり、常に変化を楽しめる人材が活躍する文化・風土づくりが重要な課題です。失敗を恐れず将来の成長に向けた新たな技術やソリューションにチャレンジする人材が活躍できる環境を整え、仕事の難易度や新規性などのチャレンジを重視する評価の仕組みとしています。

 

・社員エンゲージメント

社員一人ひとりの意欲を高め、組織としての力につなげていくことを目指し、社員エンゲージメントサーベイを実施しています。この結果は経営戦略・人材戦略を推進するための重要な経営データとして活用し、社内イントラネットを通じて社員にも公開し各組織の課題に応じた改善活動を推進しています。また、会社との一体感とともに、自らの会社であるとのオーナーシップ意識を醸成することを目的に、社員向け譲渡制限付株式交付制度を導入し、エンゲージメントの向上に取り組んでいます。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、財務状況などに影響を及ぼす可能性があるリスクには以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループ(当社および連結子会社)が判断したものです。

 

(1) 事業環境の変動について

情報サービス産業においては、デジタルビジネスの拡大などにより、あらゆる産業からの堅調なIT投資を見込んでいるものの、社会や経済情勢の変動などにより顧客のIT投資動向が変化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 価格競争について

当社グループが属する情報サービス産業においては、顧客からの情報化投資に対する要求はますます厳しさを増しており、価格面、サービス面の双方から常に同業他社と比較評価されています。

特に、他業種からの新規参入、海外企業の国内参入やソフトウェアパッケージの拡大などにより、価格面での競争激化を見込んでいます。

当社の見込みを超えた何らかの外的要因による価格低下圧力を受けた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 海外事業について

当社グループは事業戦略の一環として、海外取引の拡大、海外現地法人の設立や資本提携を推進するなど、海外事業の拡大を進めるとともにガバナンス強化を図ります。

海外事業においては、海外取引における輸出管理法などの内国法および現地法・商慣習の知識・調査不足や相違によるトラブル、海外現地法人の設立、株式取得や運営における現地の法律・会計処理・労務管理・契約・プロジェクト管理などに適切に対応できず、各種訴訟リスク、および損害賠償責任を負うなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) ビジネスモデル、技術革新について

当社グループを取り巻く環境は大きく変化していくことが予想されており、急速な顧客ニーズの変化、技術革新に対する当社グループの適応が遅れた場合、当社グループの業績に影響を及ぼすおそれがあります。

 

(5) М&Aの投資について

当社グループは、新技術やソリューション、開発リソースの獲得および新たなビジネス領域の拡張等、当社グループの事業戦略を補完できる会社であることを前提とし、シナジー効果の創出および投資に対する将来のリターン等が見込める場合に、国内外の企業への投資を実施しています。このような投資において、回収不可能な金額の資本を投下したり、投資実施後に当社グループが認識していない問題が明らかとなった場合、もしくは適切なコントロールが及ばずに円滑な事業運営が困難となった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 法的規制について

当社グループは、会社法、金融商品取引法、個人情報保護法などの法令等の遵守を最優先に事業を推進しているものの、重大なコンプライアンス違反や法令等に抵触する事態が発生した場合、当社グループの社会的信用の低下や業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 訴訟等について

現在、当社グループの財政状態および経営成績等に影響を及ぼす可能性のある訴訟は提起されていませんが、当社グループが提供するサービスの不具合、瑕疵や納期遅延、第三者の権利侵害、個人情報を含む顧客情報の漏えいもしくは毀損、不適切な人事労務管理等に関連して、損害賠償請求等の訴訟を起こされる可能性があります。これらの訴訟等の内容および結果によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(8) 知的財産権等について

当社グループは事業活動において、第三者の特許・商標・著作権等の知的財産権を侵害することのないよう常に留意しています。しかし、当社グループの事業が他社の知的財産権を侵害したとして、損害賠償請求を受ける可能性や、第三者により当社グループの知的財産権が侵害される可能性があり、いずれの場合も、当社グループの事業および業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 人材等について

当社グループの持続的成長に不可欠な要素の一つとして、高い技術力や専門性を有する人材の確保および育成があげられます。しかし、人材確保が想定どおりに進まない場合、あるいは労働環境の悪化により人材流出や生産性が低下した場合、当社グループの業績や事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) ソフトウェア開発のプロジェクト管理について

顧客自らの競争優位性を確保することを目的としたシステム開発期間の短縮、いわゆる短納期化に対する要求はますます厳しさを増しており、プロジェクト管理および品質管理の重要性はこれまで以上に高まっています。不測の事態が発生した場合、採算の悪化するプロジェクトが発生する可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) セキュリティについて

当社グループの主力の事業である情報サービス事業は、業務の性質上、多くの顧客の重要な情報に接することになり、セキュリティ管理が経営上の重要課題となっています。しかし、万が一にも重大な情報漏洩が発生した場合には、当社が損害賠償責任を負う可能性があるとともに、顧客からの信頼失墜を原因とする契約解消などが発生する可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 事業継続について

当社グループは、本社を含めた多くの拠点が国内の大都市圏に集中しており、大規模な自然災害や伝染病の流行などの想定を超える事象が発生した場合、復旧にかかるサービス提供の遅延など、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社および連結子会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものです。

 

当連結会計年度におけるわが国経済は、緩やかに回復しているものの、先行きについては世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクとなっており、このところ足踏みもみられます。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。

 

このような状況下において当社グループは、2030年に向けた経営ビジョン「Vision2030」を策定しています。

IT市場や技術、ESG等の環境変化を捉え、既存SIビジネスモデルの進化に加えてデジタル、ソリューションおよびサービスビジネスやそれらを実現する人材などへの積極的な投資により、新たな成長モデルを構築し、社会的価値・経済的価値の創出という両輪でさらなる企業価値の向上を目指します。

その実現に向け、「提案価値の向上」、「SI×デジタルのコンビネーション」、「新規領域・グローバルへの進出」、「ESGへの取り組み強化」、「自社経営基盤の改革」を重要課題に設定し、取り組んでいます。

当期の売上高は、1,157億27百万円(前年同期比9.0%増)、営業利益は14期連続増益、10期連続過去最高の125億8百万円(前年同期比7.0%増)、ならびにEBITDAは135億87百万円(前年同期比9.3%増)となり、中期経営計画の目標を1年前倒しで達成しました。

 

■「提案価値の向上」「SI×デジタルのコンビネーション」

「フォーカスビジネス」(注1)を、当社グループの成長領域として取り組みを強化しており、中期経営計画では、2025年3月期までに売上高に占めるフォーカスビジネス売上高の比率40%を目標として推進しています。当連結会計年度のフォーカスビジネス売上高比率は48.0%となり順調に推移しています。

2023年5月、安心計画株式会社の全株式を取得しました。当社開発の3次元CAD(3DCAD)による住空間提案システムである「Walk in home」の開発ノウハウと、安心計画株式会社の「Walk in home」における長年の販売で積み上げた営業ノウハウ、営業基盤、運用保守ノウハウを組み合わせることで、ハウジングソリューションビジネスにおける提案価値の高度化に取り組んでいきます。

 

(注1) フォーカスビジネス

デジタルBiz・ソリューションBiz・サービスBizの3つの成長エンジンで構成される、今後注力していくビジネス領域。

 

■「ESGへの取り組み強化」

当社社員の財産形成の一助とすることに加えて、企業価値の持続的な向上を図るインセンティブを与えるとともに、当社社員が株主との一層の価値共有を進めるため、新設した社員向け譲渡制限付株式交付制度に基づき、2023年8月に株式を交付しました。

また、社員一人ひとりが社会貢献への意識を高め、行動していく事が重要と考え、積極的に社会貢献活動を推進しています。

当社グループは、ワインを核とした新たなまちづくりを目指す一般社団法人とみおかワインドメーヌのブドウ園において、東日本大震災復興支援ボランティア活動を実施しています。当期においては、グループ社員約50名が参加し、醸造用ぶどうの苗木を保護するカバーの整備や除草作業などの支援を行いました。

2023年6月、IT分野における教育・研修サービス等を提供する株式会社MIRUCA(ミルカ)で当社グループ初となる女性の代表取締役社長が就任しました。

2023年8月、2023年度(2023年8月31日から2024年8月29日)の「JPX 日経インデックス400」(注1)の構成銘柄に2年連続で選定されました。

さらに、健康経営の取り組みでは、その成果が認められ、経済産業省と東京証券取引所によって「健康経営銘柄2024」に選定されました。あわせて、経済産業省と日本健康会議から「健康経営優良法人(ホワイト500)」の認定を3年連続で受けました。また、「健康優良企業・金の認定」を4年連続で更新することができました。

また、コーポレート・ガバナンスに関するESGへの取り組みでは、役員報酬の指標についての開示など、ガバナンス体制の強化を図りました。

環境への取り組みにおいては、環境情報開示に取り組む国際的な非営利団体CDPによる2023年の気候変動レポートにおいて、リーダーシップレベルに位置する「A-」の評価を獲得しました。

以上のような取り組みが評価され、米国のモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社(以下、MSCI)が世界の企業を対象にESGへの取り組みや情報開示の観点で格付けする「MSCI ESGレーティング」において、「A」評価を獲得しました。
 

(注1) JPX 日経インデックス400

資本の効率的活用に加えてコーポレート・ガバナンス強化の取り組みなど、グローバルな投資基準に求められる諸要件を満たした、「投資者にとって投資魅力の高い会社」で構成される株価指数。

 

■「自社経営基盤の改革」

Vision2030および中期経営計画の2年目をスタートするにあたり、各セグメントの成長戦略を着実に実施していくため、セグメントを軸とした事業運営体制に移行しました。具体的には、ミッション明確化・アジリティ向上・機動的な資源配分・グループ間連携強化などの観点から、各セグメント所属組織を統括する組織、および中長期的な計画策定、実行管理を担う推進部を設置しました。

また、システム基盤関連ビジネスのさらなる強化・拡大および経営資源の有効活用・事業運営の効率化を目的に、当社の完全子会社であるデジタルテクノロジー株式会社およびアイ・ネット・リリー・コーポレーション株式会社は2024年4月1日に合併しました。

さらに、国内のシステム開発体制の強化、お客様のデジタル領域での対応力強化、および新規顧客の拡大を図るため、株式会社アヴァンザおよび株式会社東北システムズ・サポートの全株式を取得し子会社化しました。

 

■「株主還元」

成長投資の機会、資本の状況などを総合的に勘案し、資本効率の向上ならびに株主への一層の利益還元を図るため、2023年5月から10月に約16億円の自己株式取得、およびその消却を2023年11月に実施しました。さらに、2024年2月から3月に約10億円の自己株式の取得、およびその消却を2024年3月に実施しました。

 

 

以上の結果、当連結会計年度の売上高は、1,157億27百万円(前年同期比9.0%増)となりました。

売上総利益は、売上高の増加により248億76百万円(前年同期比19.7%増)となりました。

販売費及び一般管理費は、123億67百万円(前年同期比36.0%増)となりました。売上総利益が増加し、営業利益は、125億8百万円(前年同期比7.0%増)、経常利益は、128億31百万円(前年同期比7.5%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、減損損失の増加などにより、72億93百万円(前年同期比8.8%減)となりました。

 

 

(単位:百万円)

 

連結

 

対前年同期増減率

売上高

115,727

9.0

営業利益

12,508

7.0

経常利益

12,831

7.5

親会社株主に帰属する当期純利益

7,293

△8.8

 

 

<売上高の内訳>

 

 

(単位:百万円)

 

連結

 

対前年同期増減率

業務&ソリューション

43,663

7.5

テクノロジー&ソリューション

42,214

22.7

プラットフォーム&サービス

29,849

△4.0

合計

115,727

9.0

 

 

各セグメントにおける営業概況は、次のとおりです。

 

業務&ソリューションセグメント

銀行業や官公庁のシステム開発などが順調に推移し、売上高は436億63百万円(前年同期比7.5%増)となりました。

フォーカスビジネスへの取り組みでは、「クラウドアーキテクチャーベースでのAP開発力強化」、「アジャイル/ローコード開発への対応力強化」および「業界特化ソリューション・サービス拡大・さらなる創出」などに努めています。

金融庁および経済産業省の「クレジットカード業におけるマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」に準拠したマネー・ローンダリング対策システム「AMLion(アムリオン)」をクレジットカード業界向けに提供を開始しました。「AMLion(アムリオン)」は国際基準に準拠したマネー・ローンダリング対策システムで、業界特化ソリューション・サービスとして、これまで証券会社などに提供してきました。

また、これまでの銀行システムの開発経験や金融犯罪対策領域における業務実績を活用して開発した「振り込め詐欺救済法対応ソリューション」の提供を開始しました。

さらに、デジタル不正検知を強化したサイバーセキュリティ・ソリューションを提供する戦略的パートナーシップをMastercardと締結しました。その戦略的パートナーシップに基づき、2023年12月、ウェブサイトやSNSなどを持つ企業のサイバーセキュリティリスク評価ソリューション「RiskRecon(リスクリコン)」の提供を開始しました。

今後も金融犯罪対策業務の高度化・効率化に貢献していきます。

 

また、株式会社DTS WESTでは、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)様のLGWAN(エルジーワン)(注1)環境でのAIチャットボットサービスの提供業務に、AIを活用したFAQソリューション「kotosora(コトソラ)」(注2)が採用されました。

 

(注1) LGWAN

Local Government Wide Area Network(総合行政ネットワーク)の略称。地方公共団体の組織内ネットワーク(庁内 LAN)を相互に接続し高度なセキュリティを維持した行政専用の通信ネットワーク。

 

(注2) kotosora

自然言語処理を行うAI(人工知能)を活用し、よくある質問(FAQ)の回答をチャットでの会話形式で提供する、WEB ブラウザ上で動作するサービス。

 

テクノロジー&ソリューションセグメント

生産管理システムなどのパッケージソリューションや新規連結などにより好調に推移し、売上高は422億14百万円(前年同期比22.7%増)となりました。

フォーカスビジネスへの取り組みでは、クラウドビジネス技術の強化およびビジネスモデルの変革、パッケージ販売拡大に向けた機能強化、ERPビジネス拡大強化、およびエッジAIとサイバーセキュリティ技術の確立などに努めています。

アプリケーション開発を中心とした既存SIのビジネスモデルから進化させ、新規ソリューション・サービスの創出による事業領域の拡大を目指して、「ServiceNow®(サービスナウ)」を注力分野の1つに位置づけています。人材育成プログラムを整備し、短期間で市場が求めるデジタル人材や高付加価値人材を育成していきます。

2023年11月、住宅建設事業のさまざまな業務システムを一元的に管理し効率化できる住宅建設業界向け基幹システムの「HOUSING CORE(ハウジング コア)」では、施工管理モバイルアプリと業者サポート機能の拡張などを実施した「HOUSING CORE Ver.3」の販売を開始しました。

また、外皮計算(注1)の自動生成などの設計機能の強化と見積りの精度向上を実現した「Walk in home 2023(ウォークインホーム)」の販売を開始しました。

さらに、当社グループ会社の安心計画株式会社は、住宅購入を検討する方が事前に間取りの動線の良し悪しをゲーム感覚で確認できるアプリ「My Room tour(マイルームツアー)」の提供を開始しました。

また、ビジネス・インテリジェンスソリューション「Geminiot(ジェミニオ)」および製造業データ活用ソリューション「Pasteriot.mi(パステリオ エムアイ)」に搭載したAIの自動分析機能において、IBM i(注2)への対応を開始しました。IBM iのデータから自動で業務上の問題を検出・フィードバックすることで、業務の「自律的なカイゼン」を実現します。
  さらに、SAPジャパン株式会社の人材マネジメントソリューション分野でSAP AWARD OF EXCELLENCE 2024のSAP® Human Experience Managementアワードを受賞しました。様々なお客様要望に対し、数多くの導入案件で培ったノウハウを生かしたシステム導入において高い評価を受けています。
 

(注1) 外皮計算

建物の外壁、窓、床、屋根、天井など、室内と室外を分け隔てる部分から逃げる熱量を計算して、より断熱度が高く、室内環境が安定に保った家を作るために行う計算。

 

(注2) IBM i

企業の基幹システムに多く採用されているプラットフォーム用のオペレーティング・システム。
 

 

プラットフォーム&サービスセグメント

運用、基盤構築案件は拡大したものの、前年同期のハードウエア販売が一時的に増加した反動により、売上高は298億49百万円(前年同期比4.0%減)となりました。

フォーカスビジネスへの取り組みでは、当社のReSM/ReSMplusを中心とした運用サービスメニューの拡大、HybridCloud、Data Management等の強化・拡販、およびネットワークインテグレーションビジネスの推進などに努めます。

2023年4月、オンライン上で完結できる本人確認の仕組み(電子本人確認、electronic Know Your Customer:eKYC(注1))と当社の業務代行(BPO)サービスを組み合わせた「DTS eKYC サービス」の提供を開始しました。

また、企業におけるITサービス管理の効率化と高度化を支援するため、当社の豊富なシステム運用のノウハウを活用し、Atlassian Pty Ltdの提供するJira Service Managementを軸としたAtlassian製品の導入コンサルティングと活用支援サービスの提供を開始しました。

2023年10月、Google Cloudを専門としたシステムインテグレーターであるクラウドエース株式会社様にJira Service ManagementをはじめとしたAtlassian製品を導入し、同社のITサービスマネジメントシステムを整備しました。

 

(注1) eKYC

口座開設やサービス利用開始時に必要な本人確認をオンラインで完結するサービス。AI(顔認証等)を活用することで、書類のやり取り等の手間を省き、短時間での本人確認を実現し、本人確認に要する工程をオンライン化する事で、企業側も事務処理の簡略化を実現するもの。

 

財政状態としては、総資産は848億82百万円となりました。現金及び預金が46億92百万円減少しましたが、のれんが42億62百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が13億11百万円、投資有価証券が12億80百万円、投資その他の資産のその他に含まれる長期前払費用が4億23百万円、建物及び構築物(純額)が4億2百万円、投資その他の資産のその他に含まれる敷金及び保証金が3億49百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ総資産が42億5百万円増加しました。

負債は214億79百万円となりました。賞与引当金が6億91百万円、未払金が6億82百万円、流動負債のその他に含まれる預り金が4億39百万円、未払法人税等が3億51百万円、固定負債のその他に含まれる長期未払金が3億1百万円、同じく固定負債のその他に含まれる長期借入金が2億99百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ負債が31億80百万円増加しました。

純資産は634億2百万円となりました。剰余金の配当50億円、自己株式の取得26億円を行った一方で、親会社株主に帰属する当期純利益が72億93百万円、その他有価証券評価差額金が6億37百万円、退職給付に係る調整累計額が2億28百万円、非支配株主持分が1億75百万円、為替換算調整勘定が1億58百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ純資産が10億25百万円増加しました。なお、自己株式の消却により、自己株式が15億33百万円、利益剰余金が14億74百万円それぞれ減少しています。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末の残高である433億64百万円に比べ58億6百万円減少し、375億57百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況についての前連結会計年度との比較は次のとおりです。

営業活動によるキャッシュ・フローは104億10百万円となり、前連結会計年度に比べ得られた資金が27億67百万円増加しました。主な要因は、売上債権及び契約資産の増減額が減少したことにより26億48百万円の収入が増加したことなどによるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローは△85億16百万円となり、前連結会計年度に比べ使用した資金が75億85百万円増加しました。主な要因は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が49億49百万円増加したこと、定期預金の預入による支出が10億67百万円増加したこと、有価証券の償還による収入が5億円減少したことなどによるものです。

財務活動によるキャッシュ・フローは△78億17百万円となり、前連結会計年度に比べ使用した資金が12億78百万円減少しました。主な要因は、自己株式の取得による支出が24億1百万円減少した一方で、配当金の支払額が10億21百万円増加したことなどによるものです。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当連結会計年度より、従来「業務&ソリューション」事業に区分していたDTS America CorporationおよびDTS SOFTWARE VIETNAM CO.,LTD.について、「テクノロジー&ソリューション」事業へ報告セグメントの区分を変更し、以下、対前年同期増減率については、変更後の区分方法に基づき作成した前年同期の数値を用いています。

 

イ.生産実績

当連結会計年度における生産実績は、以下のとおりです。

セグメントの名称

生産高(百万円)

対前年同期増減率(%)

業務&ソリューション

43,663

7.5

テクノロジー&ソリューション

42,214

22.7

プラットフォーム&サービス

29,849

△4.0

合計

115,727

9.0

 

(注) セグメント間の取引は、相殺消去しています。

 

ロ.受注実績

当連結会計年度における受注実績は、以下のとおりです。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

対前年同期

増減率(%)

受注残高

(百万円)

対前年同期

増減率(%)

業務&ソリューション

45,040

9.1

12,432

14.0

テクノロジー&ソリューション

40,788

15.9

10,445

△14.4

プラットフォーム&サービス

28,642

△13.9

9,038

△18.7

合計

114,471

4.3

31,916

△6.8

 

(注) セグメント間の取引は、相殺消去しています。

 

ハ.販売実績

当連結会計年度における販売実績は、以下のとおりです。

セグメントの名称

販売高(百万円)

対前年同期増減率(%)

業務&ソリューション

43,663

7.5

テクノロジー&ソリューション

42,214

22.7

プラットフォーム&サービス

29,849

△4.0

合計

115,727

9.0

 

(注) 1.セグメント間の取引は、相殺消去しています。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。なお、当連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため、記載を省略しています。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

株式会社
エヌ・ティ・ティ・データ

11,092

10.5

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社および連結子会社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当期の売上高は、1,157億27百万円(前年同期比9.0%増)、営業利益は14期連続増益、10期連続過去最高の125億8百万円(前年同期比7.0%増)、ならびにEBITDAは135億87百万円(前年同期比9.3%増)となりました。

 

② 経営成績に重要な影響を与える要因に関するリスク軽減策
イ.事業環境の変動について

当社グループの事業においては、業務知識と情報技術に基づいた品質をベースに幅広い業種・業態の顧客ニーズに応えITサービスを提供しているため、特定産業における投資動向の影響を受けにくい構造となっており、今後も事業環境の変動を注視していきます。

 

ロ.価格競争について

当社においては、プロジェクトの採算管理を徹底し、生産性の向上を図り、DX人材の育成に取り組むとともに、新技術を活用した高付加価値なサービスを提供することにより、単なるコストダウンのみの価格競争の影響を最小限にとどめるように努めています。

 

ハ.海外事業について

当社グループにおいては、海外取引における輸出管理法などの内国法および現地法・商慣習の知識・調査不足や相違によるトラブル、海外現地法人の設立、株式取得や運営における現地の法律・会計処理・労務管理・契約などに適切に対応できないなど、さまざまなリスクが想定されます。当社グループではこれらのリスクを認識するとともに、担当部署を定めてリスク管理の強化を進めています。

 

ニ.ビジネスモデル、技術革新について

当社グループは、IT市場や技術、ESG等の環境変化を捉え、既存SIビジネスモデルの進化に加えてデジタル、ソリューションおよびサービスビジネスや、それらを実現する人材などへの積極的な投資により、新たな成長モデルを構築し、社会的価値・経済的価値の創出という両輪でさらなる企業価値の向上を目指すため、Vision2030を策定しています。

これらの実現に向け、「提案価値の向上」、「SI×デジタルのコンビネーション」、「新規領域・グローバルへの進出」、「ESGへの取り組み強化」、「自社経営基盤の改革」を重要課題に設定し、取り組みを進めていきます。

 

ホ.М&Aの投資について

М&Aの投資の意思決定時は、投資対効果の評価や第三者によるDCF法やマルチプル法を使った価値算定結果を判断要素としています。

また、ファイナンシャルアドバイザーや公認会計士、弁護士等の外部有識者によるデューデリジェンスの実施を必須とし、発見された各リスクの検証、対応策等も勘案して経営会議において審議を行い、最終的に取締役会において決議・承認を実施しています。さらに、М&A実施後の統合プロセス(PMI)計画を作成し、М&A効果の最大化に向けた統合プロセスを早期から実施することにより、リスクの低減に努めています。

 

ヘ.法的規制について

当社グループでは、グループのコンプライアンス基本原則や行動規範等を制定するとともに、役員・社員およびパートナー企業社員へのコンプライアンス教育、啓蒙活動を実施し、法令遵守に取り組んでいます。

 

 

ト.訴訟等について

当社グループは、コーポレート・ガバナンスの強化・充実を経営上の重要課題として認識し、コンプライアンス、情報セキュリティ、品質管理等の必要な体制を備えており、現時点において、財政状態および経営成績等に影響を及ぼす可能性のある訴訟は提起されていません。

 

チ.知的財産権等について

当社グループは事業活動において、第三者の特許・商標・著作権等の知的財産権を侵害することのないよう常に留意するとともに、研修等を通じて知的財産権に対する社員の意識向上に努め、必要となる技術やビジネスモデルについては、各種特許や商標を出願・登録しています。

 

リ.人材等について

当社グループにおいては、多様性を尊重し、その活躍を促進するための環境を整備するとともに、従業員エンゲージメントサーベイの定期的な実施とその分析・対応を推進していきます。

また、人材確保については、中長期的視点での新卒採用や、優れた専門性を有したキャリア人材の採用を実施するとともに、DX領域の新技術習得や専門資格支援など、人材の育成にも注力しています。

 

ヌ.ソフトウェア開発のプロジェクト管理について

当社においては、独自の開発標準の浸透に努めています。また、受注金額が一定以上または必要と認めたプロジェクトの受注可否を審議することやプロジェクトの進捗状況を定期的にモニタリングすることを目的としたプロジェクト推進会議を設置することにより、プロジェクトの状況を把握することで不採算案件の抑止に取り組んでおり、現時点では当社グループに大きな影響を与えるおそれのある不採算はありません。

 

ル.セキュリティについて

当社においては、情報の取り扱いと管理についての社内規程を整備するとともに、セキュリティ上の脆弱性がないか社内ネットワークや主要システムの診断を行い、ゼロトラストを含む必要な対策強化についての検討・対応を行っています。

また、個人情報保護活動の一つとしてプライバシーマークを取得し、社員および協力会社社員に向け、情報の取り扱いについて意識向上のための啓発教育を実施しています。さらに、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の認証取得を受け、セキュリティ管理体制のさらなる強化を図るとともに、国内外グループ共通のコンプライアンスガイドを制定し、グループ各社の社内規程の整備や社員のセキュリティ情報の取り扱いに対する意識向上などに取り組んでいます。

 

ヲ.事業継続について

当社では、テレワークや時差勤務などの就労制度を活用し、社員の安心・安全を最優先としつつ、顧客の意向を汲み取りながら業務の継続に取り組んでいます。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの主たる財源は、好調な業績に基づく営業キャッシュ・フローであり、当期末において適切な事業活動のための資金の流動性は十分に確保されています。

今後の事業拡大に向け、人材投資、研究開発投資、設備投資およびM&Aに資金を活用していく方針です。

 

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」を参照ください。

 

⑤ 経営方針・経営戦略、経営上の達成状況を判断するための客観的な指標等

社会的価値・経済的価値の創出という両輪でさらなる企業価値の向上を目指すため、Vision2030を策定しています。Vision2030の1st Stageとなる中期経営計画(2022年4月~2025年3月)では、事業および経営基盤の両面において重要課題を設定しています。中期経営計画2年目の実績は以下のとおりです。

 

<財務目標と実績>

項目

2025年3月期目標

2024年3月期実績

事業収益

連結売上高

1,100億円以上

1,157億円

EBITDA(※1)

130億円以上

135億円

EBITDAマージン

12%程度

11.7%

投資

投資枠(3年間累計)

250億円

195億円

経営効率

ROE

13%以上

11.8%

株主還元

配当性向

50%以上

61.1%

総還元性向

70%以上

96.5%

 

(※1) 営業利益120億円以上(参考値)

 

<非財務目標と実績>

項目

2025年3月期目標

2024年3月期実績

注力領域

フォーカスビジネス(※2)売上高

40%以上

48.0%

ESG

CO2排出量削減(2013年度比)

50%以上

49.6%

SDGs関連売上高(※3)

40%以上

41.7%

女性管理職比率

6%以上

4.1%

女性取締役比率

10%以上

18.2%

独立社外取締役

過半数

54.5%

 

(※2) デジタルBiz・ソリューションBiz・サービスBizの3つの成長エンジンで構成される、今後注力していくビジネス領域

(※3) SDGsゴール(17項目)に適応するプロジェクトの売上高

 

 

⑥ セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

業務&ソリューションセグメント

銀行業や官公庁のシステム開発などが順調に推移し、売上高は436億63百万円(前年同期比7.5%増、業績予想比4.0%増)となりました。

 

テクノロジー&ソリューションセグメント

生産管理システムなどのパッケージソリューションや新規連結などにより好調に推移し、売上高は422億14百万円(前年同期比22.7%増、業績予想比2.0%増)となりました。

 

プラットフォーム&サービスセグメント

運用、基盤構築案件は拡大したものの、前年同期のハードウエア販売が一時的に増加した反動により、売上高は298億49百万円(前年同期比4.0%減、業績予想比5.5%減)となりました。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) 当社は、2023年12月22日開催の取締役会において、株式会社アヴァンザの株式を取得することを決議し、2023年12月27日に株式譲渡契約を締結しました。また、当該株式譲渡契約に基づき、2024年1月22日に同社の株式を100%取得しました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」を参照ください。

 

(2) 当社は、2024年2月1日開催の取締役会において、株式会社東北システムズ・サポートの株式を取得することを決議し、株式譲渡契約を締結しました。また、当該株式譲渡契約に基づき、2024年3月1日に同社の株式を100%取得しました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」を参照ください。

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度における研究開発費の総額は184百万円であり、セグメント別の主な研究開発活動につきましては、次のとおりです。

 

(1) 業務&ソリューション(研究開発費:44百万円)

生産管理パッケージ開発

これまで培ってきた生産管理・販売管理の業務ノウハウをもとに、既存のパッケージでは規模感やスピード感が合わない顧客をターゲットに、スモールスタート・スケールアップが容易な生産管理パッケージを開発しています。

 

(2) テクノロジー&ソリューション(研究開発費:139百万円)

① ゼロトラストセキュリティ新規事業に向けた技術検証

クラウド化や働き方改革の潮流においてセキュリティの重要度が増しており、より厳格なセキュリティ対策を講じる「ゼロトラストセキュリティ」関連の市場規模は高い成長率で推移しています。そのゼロトラストセキュリティと周辺ソリューションとを組み合わせたトータルセキュリティソリューションをワンストップで提供するビジネスモデルの構築に向け、技術検証等を実施しています。

 

② 建設業界向けIoTプラットフォーム開発

働き方改革を背景にDX需要が高まっている建設業界をターゲットとして、建設現場の管理負担を軽減し「現場に行かなくてもわかる」を実現するため、現場に設置したカメラ画像や各種データ・時間を同期し、ダッシュボードでの一元管理を可能とするIoTプラットフォームのプロトタイプを開発しています。

 

③ マスター統合監視システム SDIoverIP対応

地上波放送や衛星放送を行う放送局内には、映像・音声以外にも多くのデータをプログラム通りに送信所に送り出す機能を担うマスターシステムがあり、その伝送システム(HD-SDI信号部分)のIPネットワークへの置き換えが検討されています。当社グループでは、放送法に則した信号品質の監視や録画期間を満たすマスター統合監視システム製品を開発・販売しており、そのIP化対応としてハードウェアおよびソフトウェアを開発しています。