(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、創業以来「社会の問題点を解決する」という明確な企業理念のもと、ダイバーシティを推進し、誰もが自由に好きな仕事を選択でき、働く機会を得られることを目指して、様々な社会インフラを構築してきました。
パソナグループの仕事は「人を活かす」こと。すなわち、人々の心豊かな生活を創造する「ライフプロデュース」です。そして「常に高い志をもって、社会復帰を望む人、新しい人生にチャレンジする人、人生の目標に果敢に挑戦する人、誰もがそれぞれのライフスタイルにあわせた働き方で、豊かな人生設計を描ける社会を創ること」これこそが、当社グループの社会的責任(CSR)だと考えます。
私たちは、その社会的責任を果たすため、「パソナグループ 企業行動憲章」を定め、当社グループの経営トップ以下、全役員・従業員が行動指針として正しく理解し、世界中のPASONAで共有しています。あらゆるステークホルダーの皆様に対して、「Pasona Way」に掲げたそれぞれの役割を果たし、時代とともに変化する社会問題に果敢に挑み、当社グループの目指すSDGsへの取り組みを通して、更なる企業価値の向上を実現します。
これからも、ソーシャルソリューションカンパニーとして、社会的良識をもって健全な企業活動を展開し、人々の心豊かな生活を創造する『NATUREVERSE』な社会の実現を目指してまいります。
(2)経営戦略
全世界で拡大した新型コロナウイルス感染症が収束し、私たちを取り巻く社会環境は大きく変化しました。生成AIなどの新たなデジタルテクノロジーは、ビジネスのみならず日常の生活にもその活用が広がっています。また、国内では少子高齢化の加速による人口減少問題が深刻化し、将来の人手不足が懸念される一方で、テレワークや時短勤務などの多様な働き方はますます拡大しています。そして、人生100年時代の到来により、一人ひとりのライフスタイルやキャリアプランが一層多様化する中で、健康寿命の延伸に対する重要性は急激に高まっています。
当社を取り巻く環境が大きく変化する中、当社は1976年の創業からまもなく50年の節目を迎えるにあたり、「社会の問題点を解決する」という不変の企業理念のもと、次の50年を見据えた成長戦略の議論を進めております。
2025年5月期においては、世界的な金融引締めや物価上昇等によって景気の先行きは不透明な状態が継続するものの、我が国においては、AI等のデジタルテクノロジーの更なる進化や人手不足を背景に、業務の効率化や迅速な事業の立ち上げを支援するBPOサービスへの需要が引き続き堅調に推移すると見込んでいます。そして2025年4月から大阪・関西万博が開催されることから、関西圏を中心にインバウンドを含む観光客が増加すると想定しております。
2025年5月期の重点戦略として、①X-TECH BPOの進化とBPO専門領域の事業拡大、②地方創生事業の収益改善、 ③新規事業の創造、を掲げることで既存事業の生産性及び収益性を高めるとともに、中長期的な事業の柱となる新規事業の創造にも着手してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります 。
当社グループは「社会の問題点を解決する」を企業理念に、サステナブルな社会の実現を目指して事業活動に取り組むとともに、当社グループの持続的な成長に向けてサステナビリティ経営を推進しております。サステナビリティに取り組む意義や目指す未来の姿を明確化するために「Sustainability Policy ~持続可能な社会を目指して~」として明文化し、グループの共通認識としております。ESG・サステナビリティに関する取り組み詳細については、
当社グループでは、社内の各種会議・委員会・部門がサステナビリティ経営を推進する役割を担っております。気候変動課題については、「環境経営戦略会議」において当社グループの環境経営及び気候変動対応における戦略・方針・目標を策定し、当該方針をもとに「環境マネジメント推進委員会」が各部門・各グループに対して実効的なアクションプランを推進しております。人的資本については、グループ人事部門にてグループ全体の人事領域における重要課題に関する議論と取り組みの推進を行っております。サステナビリティに関する重要な事項については、各会議・委員会が取締役会または経営会議に報告し、必要に応じてそれぞれが適切な助言を行うことで、モニタリングを実施しております。
当社グループでは、気候変動によるリスクのほか、経営に重大な影響を及ぼす危機を未然に防止し、万一発生した場合には損失の極小化を図るため、リスクマネジメント規程を定め、リスクに関する統括組織としてリスクマネジメント委員会を設置しております。
サステナビリティ全般における各種リスクは社内の各種会議・委員会において、関連する法規制や事業に影響を及ぼす事案を特定し、その対応を議論したうえで、リスクマネジメント委員会で全体のリスクマネジメントプロセスに統合しております。また、その内容については定期的に取締役会に報告することで、取締役会が当社グループの状況や対応を適切にモニタリングできる体制を整えております。
(2) ESG・サステナビリティ経営
① 持続可能な地球環境への取り組み
当社グループは、政府主導の「チーム・マイナス6%」プロジェクトが開始された2005年より、グループ各社の役職員で構成する「環境委員会」を設置いたしました。以来、将来を担う次の世代に健全で美しい地球環境を残すため、あらゆる場面で限りある資源を大切にし、企業活動を通して環境保全活動に努めてまいりました。
近年、世界レベルでの環境破壊や地球温暖化、異常気象、生態系の破壊などが深刻化する中、ソーシャルソリューションカンパニーとして、当社グループが目指すサステナブル経営のあり方を発信し、社会から信頼されるロングセラーカンパニーであり続けるために、2021年に「パソナグループ環境イノベーション戦略」を策定し、同年に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」への賛同を表明いたしました。さらに「環境マネジメント推進委員会」も発足し、気候変動シナリオ分析及び気候変動によるリスクと機会における事業インパクトの明確化を実施いたしました。また、2023年には「環境経営戦略会議」を発足し、環境経営及び気候変動対応における戦略・方針・目標を策定しております。
a. CO2排出削減に向けた主な取り組み
グループ全体でCO2排出削減に向けて、積極的な省エネ活動を推進しております。社有車は電気自動車やハイブリッド自動車へ切り替えを行っているほか、デジタル化推進によるペーパレス化に取り組んでおります。また、当社グループが兵庫県淡路島で展開する飲食・観光施設 19施設(レストラン、カフェ、商業施設、宿泊施設、アニメパーク等)において、使用する電力の全てを再生可能エネルギー由来の電力へ転換いたしました。さらに、サトウキビ原料のバガス容器の利用や飲食施設等から出る食品残渣の一部を堆肥化し、当社グループで運営する自然栽培農場で活用するなど、資源循環の取り組みを推進しております。
b. 環境への取り組み
グループ全体の環境問題への意識の向上と行動変容を促すことを目的に、社内外の専門家を招いた勉強会を開催し、2023年度は全国の役職員2,200名が参加いたしました。また、環境保全に対する取り組みとして、全国各地域において植樹・育樹を通じた里山保全活動や、国連で採択されたアースデー(4月)とWorld Clean Up Day(9月)に合わせて国内外70拠点での環境美化活動等を推進しております。こうした海や山での活動を2024年度は国内外で293件実施し、4,960名の従業員が参加いたしました。
また、2024年4月に株式会社パソナの本社オフィスにおいて、環境マネジメントシステムの国際規格「ISO 14001:2015」認証を取得し、自主的な環境保全への取り組みを促進しています。
c. 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応
〇ガバナンス
環境経営戦略会議は、当社グループの環境経営及び気候変動対応における戦略・方針・目標を策定いたします。当該方針をもとに、環境マネジメント推進委員会が各部門・各グループ会社に対して実効的なアクションプランを推進するとともに、社員一人ひとりの環境に対する意識醸成を図るための環境教育を実施しております。環境委員会では、自然との共生を体験する、地域と協働した環境活動を全国で展開しております。リスクマネジメント委員会では、気候変動のリスクマネジメントに関する事項についての審議を行い、内部監査部門は各部門や関係会社に対する環境監査を実施しております。取締役会は、気候変動に関する重要な事項について、環境経営戦略会議から報告を受け適切な助言を行うことで、モニタリングを行っております。
〇戦略
当社グループでは、複数の気候変動シナリオ(1.5~2℃と4℃)に基づき、2030年におけるリスクと機会を分析しました。シナリオ分析においては、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)や国際エネルギー機関IEA(International Energy Agency)、環境省等が発行するレポートを参照しています。シナリオ分析における分析プロセスと特定した主要なリスク・機会は以下のとおりです。
特定したリスク・機会について、具体的なシナリオを描き、事業への財務的影響を定量的かつ定性的に検証した結果、当社グループが、今回のシナリオ分析を経て特定した主要なリスク・機会とその対応方針は以下のとおりで、事業に影響を及ぼす重大なリスクは特定されませんでした。今後も継続的に評価の見直しと情報開示の充実を進めてまいります。
〇戦略(機会)
国内外において脱炭素に向けた動きが加速し、特に上場企業においては、気候関連財務情報の開示や、サプライチェーンも含めたカーボンニュートラルの実現を目指した対応が求められています。しかしながら、多くの企業ではCO2排出量可視化のノウハウはもとより、それに伴う煩雑な作業を行うリソースが不足しているのが現状です。また、従業員へのSDGs教育も課題のひとつとなっています。当社グループ各社において、企業のサステナビリティ経営を環境の側面から支援するサービスを提供しております。
CO2排出量の可視化、サステナビリティ人材の育成
株式会社パソナHRソリューションの「CO2排出量可視化BPOサービス」では、GHG(温室効果ガス)の排出量算定・可視化クラウドサービスのほか、当社グループの有するBPOサービスのノウハウを活用し、CO2排出量の可視化をシステムとオペレーションの両面から支援しております。また、BSIジャパンと協業し、サステナビリティ人材を育成する研修プログラム「パソナESGアカデミー」を開講し、パソナHRソリューションの研修ノウハウと、BSIジャパンの持つコンテンツを融合し、ESG分野におけるグローバルスタンダードに基づくサステナビリティ人材を育成しております。
プロフェッショナル人材によるサステナブル経営支援
株式会社パソナJOB HUBの「サステナブル経営支援サービス」では、各領域に精通したプロフェッショナルな顧問人材が、サステナブル経営を推進するためのSDGs・ESG経営戦略の策定、サーキュラーエコノミー事業戦略の立案、循環型サプライチェーン・ビジネスモデル構築などを支援いたします。
省エネ化を推進する省エネコンサルティングサービス
株式会社パソナ日本総務部の「省エネコンサルティングサービス」では、企業の環境課題の解決に向けて、施設管理の専門知識を活かし、CO2排出量の見える化から脱炭素に向けた取り組みまでトータルにサポートいたします。省エネ簡易診断の結果をもとに詳細な分析を行い、改善対策を立案及びその効果を試算するとともに、課題の解決に向けた施策の実行を支援いたします。
共創・循環・多様性を学ぶサステナブル研修プログラム
株式会社パソナ農援隊では、企業・団体・学校法人に向けて、食の安全や自然環境など「SDGs」について学べる研修プログラムを兵庫県淡路島で開講しております。土づくり、食の安全性や生産過程を学ぶ農業体験や、耕作放棄地の課題や脱プラスチック素材を学ぶ座学研修を実施し、2024年5月期は約7,500名が参加しております。
〇リスク管理
当社グループでは、経営に重大な影響を及ぼす危機を未然に防止し、万一発生した場合には損失の極小化を図るため、リスクマネジメント規程を定め、リスクに関する統括組織としてリスクマネジメント委員会を設置しております。
気候変動によるリスクは、環境経営戦略会議において、関連する法規制や事業に影響を及ぼす自然災害を特定し、気候変動への対応を議論したうえで、リスクマネジメント委員会で全体のリスクマネジメントプロセスに統合しております。また、その内容については定期的に取締役会に報告し、対応状況の把握と進捗の管理、見直しを実施することで、気候変動リスクに対するマネジメント体制を構築しております。
〇指標及び目標
当社グループは、事業活動に伴う温室効果ガスの排出量を算出・測定するとともに、削減目標として「2030年度 カーボンニュートラル達成(※)」を設定しております。当社グループのオフィス及び運営する施設においては、再生可能性エネルギー由来の電力を積極的に利用しているほか、社用車においても電気自動車やハイブリッド自動車への切り換えを行っております。
(※)当社グループの事業活動に伴う温室効果ガス排出量の「スコープ1」「スコープ2」が対象
事業活動に伴う温室効果ガスの排出実績は以下のとおりです。
(注) 1 当社グループの範囲は、当社単体の実績及び連結売上高に占める割合の大きい連結会社9社の実績
2 スコープ3は、カテゴリ1、3、4、5、6、7における排出量
3 集計方法の精緻化に伴い、実績値は変動する可能性があります
②人的資本への取り組み
当社グループは1976年の創業以来、年齢・性別・国籍・障害の有無に関わらず、誰もが夢や誇りをもって、自由に才能を生かして活躍できる社会の実現に向けて取り組んでまいりました。社内においても、従業員一人ひとりの能力を最大化する多様な働き方の提案やキャリア構築の支援をはじめ、安心して働くことのできる職場環境づくりを推進することで、当社グループの持続的な発展・価値向上につなげております。
<人材育成方針 及び 社内環境整備方針、指標及び目標>
当社グループの仕事は「人を活かす」こと。すなわち、人々の心豊かな生活の創造「ライフプロデュース」です。その役割を果たすため、「自分の未来は自分で創る」という人材育成方針のもと、従業員一人ひとりが高い志と使命感を持ち、果敢に挑戦し続けることができるよう、才能・能力の発揮を後押しする多様な人事制度・施策を整備し、従業員の自律的なキャリア構築を支援しております。
人材戦略として以下の3つの柱「Diversity & Inclusion/誰もが活躍できる仕組みづくり」「Sustainable/自律的なキャリア形成」「Well-being/真に豊かな生き方・働き方」を掲げ、従業員の成長を後押しすることで、当社グループの成長はもちろんのこと、持続可能な社会の実現に貢献できる人材の育成を推進しております。
また、創業以来変わらぬ企業理念のもと、パソナグループの芯を示す「Pasona Way」を行動指針として、創業の精神を継承し、常にぶれない判断の軸としています。毎年、「Pasona Way Week」として創業記念日の2月16日から2ヶ月間を強化月間として、パソナグループの果たす役割とは何か、当社グループの事業の歴史を振り返るとともに、フィロソフィをテーマにディスカッションや一人ひとりの行動目標設定を行うなど、全役職員がフィロソフィを共有しております。
a. Diversity & Inclusion/ 誰もが活躍できる仕組みづくり
年齢や性別、国籍、障害の有無に関わらず、全従業員がパソナグループというステージを通して才能・能力を活かしてイキイキと活躍し、豊かな人生設計を描くことのできる環境を整備することが、中長期的な企業成長につながると考え、多様な人材の活躍を推進しております。
〇女性活躍推進
「家庭の主婦の再就職を応援したい」という想いから創業した当社グループでは、性別による格差のない社会の実現を目指して、創業当時より全員が総合職として入社し、男女の隔たりのない人材育成や適材適所配置を実践してまいりました。出産、子育て、介護などのライフステージの節目においても従業員が活躍できるよう、1990年代より「在宅勤務」「短時間勤務」「フレックスタイム」などの柔軟な勤務制度を整備、現在、南青山オフィス内に事業所内保育所を設置し、兵庫県淡路島のパソナファミリーオフィスでは従業員が子供と同じ空間で働ける環境を整備しております。女性の人材育成・キャリア形成支援においては、2014年にスタートした次世代女性リーダー育成プログラム「ワンダーウーマン研修」の修了者のうち2名がグループ会社の社長、22名が執行役員、11名が副役員、42名が上位責任者に昇格するなど成果を上げております。
これらの活動により、従業員全体に占める女性の割合は54.4%、全管理職に占める女性の管理職の割合は47.8%、取締役及び執行役員に占める女性の割合は28.0%と、多数の女性管理職・女性役員を輩出しております。
当社グループで培ったノウハウを生かし、2021年からは企業の経営幹部に求められる第一線のビジネス力、プレゼンス力を学び、自社だけでなく、社会に貢献できる女性幹部候補を育成するプログラム「Women’s Advanced Program」の企業へのサービス提供を開始しており、これまでに50社97名の女性幹部候補生を育成いたしました。
〇多様な国籍の人材の活躍
当社グループでは、国内外47カ国、約1,000名の外国籍の従業員が活躍しており、国内連結子会社の従業員における外国籍人材の割合は2.7%(海外連結子会社を含む場合は10.6%)、事業運営の中核である管理職における外国籍人材の割合は0.6%(海外連結子会社を含む場合は7.6%)となっております。多様な価値観をもつ多様な国籍の人材が交流し、適材適所に配属、登用され活躍することで、事業における変化への対応力、新たな発想に繋がっております。
また2017年から開始した、新たな産業の創造や地方創生の実現を目指す人材育成プログラム「Awaji Youth Federation」ではこれまで、世界46カ国・地域から109名の優秀な若者や社会起業家を受入れており、多様な価値観と知識・経験をもったグローバル人材がプログラム修了後も淡路島において、地域課題解決のための新たなイノベーション創出に取り組んでおります。
2024年5月期は、各国の政府や国連・大学等教育機関10団体とMOU(Memorandum of Understanding)を締結、就労支援や人財育成、研究支援等を実現してまいります。
〇アスリートの競技と仕事の両立支援
現役及び引退後のアスリートやコーチ等を対象に、競技活動と仕事を両立するハイブリッドキャリアや、セカンドキャリアの実現を支援するため、全国の拠点で就労機会を提供するとともに、一人ひとりの長期的なキャリア形成をサポートしており、現在24名のアスリートが活躍しております。
〇ミドル・シニア人材の活躍推進
当社グループでは、1980年代から豊富な経験や能力を持つシニア層に向けて、新たな雇用インフラの創造や能力開発支援を推進してまいりました。現在、当社グループでは60歳定年からの再雇用率は100%、60歳以上の従業員はグループ全体の約1割(1,000名以上)、うち65歳以上の社員は約500名と、多くのシニア人材が活躍しております。
シニア人材が長くイキイキと活躍できる環境づくりを推進することが、企業の更なる成長につながると考え、40代・50代の従業員を対象に、自身の価値観や可能性を再認識し、今後のキャリアや生き方についてデザインする「キャリアディスカバリープログラム」を実施するなど、総合的かつ継続的なキャリア形成に向けて支援しています。さらに人生100年時代の到来で長期化する職業人生をより豊かにしていくため、従業員がキャリアの棚卸をする中でリカレント教育が必要な場合、費用補助や休職取得が受けられる福利厚生制度も整備しております。
対外的には、これまでのノウハウを活かし、2021年よりミドル・シニアを含めあらゆる世代の自律的なキャリア形成支援を行う「セーフプレースメント・トータルサービス」(導入企業 約840社)を、また2022年より個人のキャリア・ライフプランに合った学びの場を提供するリスキリングプログラム「パソナリカレント」を提供しております(講座数 2,000講座、受講者 3,000名)。
〇‟複線的なキャリア構築”を支援する「ハイブリッドキャリアプログラム」
社会の環境変化に臨機応変に対応できる人間力を身に付け、社会に貢献できる人材を育成するため、2022年4月入社の新卒採用から「ハイブリッドキャリアプログラム」を開始しております。
新入社員が週に1日、「営業×農業」「人事×新規事業立ち上げ」「経営企画×起業家」等、配属先の業務とは異なる業務に挑戦できる環境を整備し、これまで527名がハイブリッドキャリアを実践しております。配属先の業務では得ることができない新たな視点や社内外ネットワークを得る機会につながり、全体の約8割が「ハイブリッドワークでの経験が業務に活かせた」と回答、全体の約9割が「大変満足・満足した」と評価しております。
新入社員のみならず、入社4・5年目社員 約180名にも1年間の研修(デジタルコース・英語コース)を実施しているほか、グループ内兼務や社内兼務など、複線的なキャリアを構築できる環境を整えています。
〇従業員のキャリアチャレンジを応援
社内公募されたポジションに自ら手を挙げチャレンジできる「オープンポジション制度」を1989年より実施しております。2024年5月期は、71名が本制度を活用し新たなキャリアチャレンジを行いました。また、従業員自らが考えるキャリアプランを毎年直接人事部門に申告できる「マイキャリアバンク」を1993年から実施しており、従業員の自律的なキャリア形成を支援しております。
〇人権方針 基本的な考え方
当社グループは、「パソナグループ行動規範」 において人権の尊重を定めております。人権に関しては、国際人権章典や国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する国際労働機関宣言」、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、OECD多国籍企業行動指針等の人権に関する国際規範を尊重し、事業活動を遂行しております。当社グループは、各国の法令を遵守することは当然として、国際的に認められた人権を可能な限り最大限尊重する方法を追求いたします。人権方針については、以下の当社ホームページをご参照ください。
(URL https://www.pasonagroup.co.jp/ir/esg/humanrights.html)
b. Sustainable/ 自律的なキャリア形成
当社グループは、これまでの企業依存社会から、誰もが才能と能力を活かして活躍できる個人自立社会への転換に向け、従業員の自律的な成長はもとより、エキスパートスタッフ(派遣スタッフ)の方々、そして働きたいと願う方々に向けたキャリア開発支援に取り組んでおります。また、雇用をテーマに「社会の問題点を解決する」新たな事業創造をし続けることが、当社グループの成長の源泉であるという考えのもと、社会の環境変化に臨機応変に対応できる強い個を育成し、新しい発想で社会課題を解決することのできる人材育成に取り組んでおります。
※1 人件費・光熱費・交通費等、研修実施に関わる費用含む
※2 算出対象:当社及び国内連結子会社28社
〇企業内大学「パソナ“こころざし”ユニバーシティ」
当社グループ全従業員を対象とした研修教育プログラムを企業内大学「パソナ“こころざし”ユニバーシティ」として体系化し、実施しております。各年次、職位、職能ごとに求められる能力・専門知識の習得をはじめ、一人ひとりの才能や可能性を最大限に活かす選抜研修、デジタルスキルを身につける多様な研修、グループの次世代を担う経営人材の育成など、従業員一人ひとりの自律的なキャリア構築を支援する多彩な教育研修制度を実施しております。
〇新たな付加価値を生む「DX人材」の育成
デジタル技術を活用した新たなソリューション事業を開発し、重点戦略である「X-TECH BPOへの進化とBPO専門領域の事業拡大」を実現するため、デジタルトランスフォーメーション(DX)をけん引する人材の育成に注力しております。2024年5月期は、階層別のDX研修等による内部人材の育成をはじめ、社内での育成実績を元に顧客向けプログラムの提供も開始し、社内外で約1,500名のDX人材を育成いたしました。今後も、全従業員のリスキリングを実施するとともに、DX専門職種の導入により、2026年5月末までに社内で3,000名を採用・育成し、社内外で10,000名の育成を目指すことで、経営基盤の強化とサービスの新たな付加価値創出を実現してまいります。また、株式会社パソナはMicrosoft社と「Code; Without Barriers in Japan」の提供を開始し、派遣スタッフ1万人を対象にデジタル人材の育成に取り組むなど、事業基盤の強化を図っています。
・1級キャリアコンサルティング技能士 16名 ・国家資格キャリアコンサルタント 553名
・2級キャリアコンサルティング技能士 404名
・産業カウンセラー等その他キャリアコンサルティング関連資格 542名
・ワーク ライフ ファシリテーター 養成講座 受講者 292名 資格認定者 210名
〇次世代リーダーの育成
当社では、人材育成や人材発掘のために、1993年より次期上級管理職育成プログラム「ジュニアボード制度」を開始するなど、様々な人材教育・抜擢制度を有しています。グループ各社における執行役員候補育成のための「副役員制度」、女性幹部候補生を育成する「ワンダーウーマン研修」、グループ全体の事業を推進し横串を指す「CBOボード制度」、新入社員教育にあたる「インストラクター制度」等、次世代リーダーを抜擢するための計8つの選抜制度を有しています。
〇社内ベンチャー制度「チャレンジの日」
創業以来、「社会の問題点を解決する」を企業理念に、事業活動を通じて社会課題の解決に取り組んできた創業の精神を継承するため、1995年から創業記念日である2月16日を「チャレンジの日」として制定し、全従業員から新規事業や業務改善提案を募集しております。応募案の中から優れた企画は事業化を支援し、新たな新規事業を創造しております。全ての従業員が創業の精神に立ち返り、従業員一人ひとりの「夢」や「志」を実現する機会を提供するとともに、イノベーション創出に向けた自律的な組織作りを推進しております。2024年5月期は、新入社員から海外現地法人の従業員まで、約1,700件の応募がありました。
〇社会課題解決に向けた企業文化の醸成「パソナ・シャドーキャビネット」
当社グループの役職員が、入社年次に関わらず「社会の問題点」を議論し、具体的な方策を社会に提言することを目指す社内組織として2007年に発足いたしました。時代によって変化する様々な社会課題について議論を深め、法案(新規事業提案、社会提言等)として参加する従業員が採決をいたします。2024年5月期は淡路島ファンコミュニティ「e-Awaji Islander」が誕生しております。
c. Well-being/ 真に豊かな生き方・働き方
「人を活かす」ことを使命とする当社グループは、働く人々がイキイキと活躍するための各種支援サービスを展開しております。サービス提供者である従業員が、心身の健康に加えて、働くことを楽しみ、心豊かな人生を送り、社会に貢献しているという実感をもつことが、一人ひとりの幸福感(Well-being)を高め、よりよいサービス提供につながると考え、従業員の健康増進・働く環境づくりに積極的に取り組んでおります。
〇健康経営推進体制
当社グループでは、経営トップの健康経営に対する方針のもと、産業医、健康推進室、人事部門などが、定期健康診断データやライフスタイル調査にもとづいて、従業員がイキイキと活躍することができる健康経営を推進しております。また、保健師や管理栄養士、スポーツトレーナーなどの専門スタッフとともに、従業員の心身の健康を支援する独自のプログラムを開発するほか、全国の拠点及びエリアに配置された衛生委員が中心となり、各地域の職場環境の声を収集して、各施策の立案に活かしております。
〇健康経営の取り組み方針
当社グループの健康づくりに関する方針を「パソナグループ健康宣言」として定めております。健康経営の取り組み方針として、「健康行動促進」「性差の共通理解の醸成」「ハイリスク者向け健康サポート」「メンタルヘルス対策」「ソーシャルワークライフバランスの推進」の5つを掲げ、各種施策を推進しております。
また、健康経営における「戦略マップ」を策定し、具体的な取り組みや期待する効果と、解決したい経営上の課題のつながりを整理・把握し、健康経営を推進しております。詳細については、当社ホームページ(URL https://www.pasonagroup.co.jp/company/health.html)をご参照ください。
〇ライフスタイル調査の実施
定期健康診断、ストレスチェックのほかに、全従業員を対象に独自の「ライフスタイル調査」を実施し、運動・食事・睡眠・嗜好(飲酒・間食・喫煙)のカテゴリで生活習慣をスコア化しております。個人の結果及び全社における自身の健康の位置付けをフィードバックすることで、生活習慣の見直しに役立て、従業員一人ひとりの健康リテラシー向上につなげております。2023年はグループ29社7,650名がライフスタイル調査に回答いたしました。
〇健康の性差に関する相互理解促進
社内で実施した「女性の健康に関するアンケート」では、元気に出勤している女性従業員の80%近くが女性特有の健康課題を抱えており、乳がん・子宮がん検診全額費用補助を約半数しか利用していない状況でした。そこで、女性従業員の健康リテラシーの向上とともに、気軽に相談しやすい環境を整備するため、女性だけでなく男性も含めた全従業員を対象に産婦人科医師による女性の健康講座(参加者延べ3,212名)や、動画による理解促進を実施するなど(視聴回数延べ2万回超)、女性の健康づくりへの職場の共通理解を育んでおります。
〇真に豊かな生き方・働き方の実現を目指す「本社・本部機能の一部移転」
〇全国の従業員が参加する社会貢献活動
当社グループの企業姿勢を明確にするため、2005年に「社会貢献室」を設置いたしました。グループの社会貢献活動のリーダーシップを担う存在として、国内外のグループ各社から約40名の「社会貢献委員」を任命し、国内外で活動を行っております。現在は、持続可能な地域社会づくりに貢献するため、6つの重点テーマ「食品ロス」「環境保全」「地域貢献(復興)」「スポーツ・健康」「ダイバーシティ」「パートナーシップ」を定めております。2024年5月期は、延べ17,400名の従業員が各地の活動に参加いたしました。
(1)当社グループのリスクマネジメント体制
当社グループは経営に重大な影響を及ぼす危機を未然に防止し、万一発生した場合には損失の極小化を図るため、リスクマネジメント規程を定め、リスクに関する統括組織としてリスクマネジメント委員会を設置しております。同委員会では、想定される重大リスクごとに担当部を定めたうえ、平時の継続的な監視により新たなリスクを含めた危機の事前予知に務め、危機管理マニュアルに基づいて日常の対策及び緊急時に適切な対応を行う体制を整備するとともに、委員会の主要な活動状況について平時においては定期的に取締役会へ報告することで、取締役会が当社グループの状況や対応を適切にモニタリングできる体制を整えております。また、事業運営上生じる日常的なリスクについては、コンプライアンス担当部内で適正に対応し、適宜経営会議等で報告するほか、監査室及びグループ内部監査室による内部監査を通じて各部署の日常的なリスク管理状況を監視しております。
このようなリスクマネジメントを行うなかで、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、重要と識別された主要な危機・脅威のほか、経営戦略の実現に関連する不確実性としてのリスク及び当社グループの事業活動・経営方針を理解するうえで重要と考えられる事項についても記載しています。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載のない限り当連結会計年度末現在において判断したものであり、当社株式への投資に関連する全てのリスクを網羅するものではありません。
(2)当社グループの経営成績等に影響を与える可能性のある主要なリスク
①景気動向等のマクロ環境の影響
当社グループの事業は、企業や組織の人材活用や生産性向上に貢献する様々なソリューションサービスを提供するとともに、個人に対してはそれぞれのライフスタイルに合わせた働き方を支援する就労インフラを提供しています。こうしたサービスは、国内外の景気変動や技術革新等のビジネス環境の変化、労働関連法令における規制等の影響を受けます。
当社グループは、BPOソリューション(委託・請負)、エキスパートソリューション(人材派遣)、キャリアソリューション(人材紹介、再就職支援)、グローバルソリューション、ライフソリューション(保育・介護)、地方創生・観光ソリューション(地方創生)などの事業を総合的に展開し特定の領域に偏らない事業ポートフォリオの構築を進め、常に新しい働き方やワークライフバランスに関する情報発信や提案、啓蒙活動にも積極的に取り組んでおります。しかし今後様々な要因により、市場環境や雇用情勢、顧客需要が急激に変化した場合、各事業の業績や当社グループの収益構造に影響を受ける可能性があります。
また今後、長期的には国内の人口推移により更なる人手不足あるいは市場縮小等が起きることも想定されます。当社グループは持続的成長に向けた取組みとして、常に社会の変化の兆しを捉え、コントロールし得るリスクテイクもしたうえ、引き続き、企業理念である「社会の問題点を解決する」ことをテーマとした様々な新規事業・サービスを開発・拡充することでリスク分散を図ってまいります。
②官公庁等との事業認可、契約関係の対応及び労働関係諸法令への対応
当社グループのBPOソリューションの委託・請負事業は、民間企業のほか官公庁や地方自治体、各種団体など様々な取引先から、総務・庶務、経理・財務、受付、営業事務・受発注、人事・労務などの業務を受託しサービスを提供しています。特に官公庁・地方自治体から受託した事業の遂行にあたっては、委託元の指示に沿って適正な業務運営を行う必要がありますが、近年これら事業が大型化かつ複雑化しており、当社グループのみならず再委託先と共同で取り組む事業も増加しております。当社グループにおいては関連法規の遵守や社員教育の徹底、また再委託先選定に関わる調査の実施などのガイドラインに則り、適正な業務運営に努めておりますが、当社グループまたは再委託先において、関連法規違反、重大な過誤その他不適正な運営が生じた場合は当社グループの信頼性の低下や社会的な信用が毀損されるほか、委託元の規程により入札停止などの処分を受けることで業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、エキスパートソリューションの人材派遣事業は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(以下、「労働者派遣法」)に基づき、主として労働者派遣事業として厚生労働大臣の許可を取得して行っている事業であります。労働者派遣法は、労働者派遣事業の適正な運営を確保するために、派遣事業を行う者(派遣元事業主)が、派遣元事業主としての欠格事由に該当したり法令に違反した場合には、事業の許可を取り消し、または事業の停止を命じる旨を定めております。当社グループでは株式会社パソナグループのコーポレートガバナンス本部が主導して適正な派遣取引のためのガイドラインを作成し、徹底して社員教育に努めるとともに、内部監査等により関連法規の遵守状況を日頃より監視し、法令違反等の防止に努めております。しかしながら、万一当社グループ各社及び役職員による重大な法令違反等が発生し、事業許可の取消しまたは事業停止を命じられるようなことがあれば、労働者派遣事業を行えなくなることが考えられます。
キャリアソリューションの人材紹介事業は、職業安定法に基づき、有料職業紹介事業として厚生労働大臣の許可を受けて行っている事業であります。人材紹介事業についても、人材派遣事業と同様に、一定の要件を満たさない場合には事業許可の取消し、事業の停止といった措置が規定されていることから、同様のリスクが想定されます。
同じくキャリアソリューションの再就職支援事業は、職業安定法に基づき、有料職業紹介事業として厚生労働大臣の許可を受けて行っている事業であります。収益構造やビジネスモデルは人材紹介事業とは異なりますが、求職者を求人企業に紹介するという点において前述の人材紹介事業と同様の規制、指導及び監督を受けることから、同様のリスクが想定されます。
さらに、関係諸法令は、労働市場を取り巻く状況の変化等に応じて改正されることから、当社グループにおいては改正に応じてその都度、適宜対応し、適切な事業運営ができる諸施策を講じていますが、今後の更なる改正によっては、当社グループの事業運営ならびに業績に影響が生じる可能性があります。
③個人情報及び機密情報の管理について
当社グループは各事業の運営に際し、派遣スタッフ、求職者、各サービス利用者、顧客企業、従業員、その他関係者等の個人情報及び機密情報を大量に保有しております。当社グループによる個人情報の取扱いについては、日本における「個人情報の保護に関する法律」だけでなく、2018年5月に施行された「欧州連合一般データ保護規則(GDPR)」をはじめ当該国の個人情報に関する法律が適用されます。これらの法規制は、国境を越えて適用される傾向にあり、その遵守や事業運営における費用が増加する可能性があります。
当社グループではGDPRにも対応した個人情報保護方針等を策定して個人情報の適正な取得・利用・提供等を行うとともに、個人情報の漏洩や滅失を防止するために技術面及び組織面における必要かつ適切な安全管理措置を講じ、全役職員に個人情報保護管理に関する教育を徹底しております。
また、当社グループ及び取引先に関する営業秘密・重要情報の漏洩を防止すべき情報管理体制・管理手法を定め、その周知と実施の徹底に努めております。具体的には、前述した様々な秘密保持義務については、各就業規則、秘密情報保持規程において定めるとともに、ランサムウェアや標的型攻撃といった情報セキュリティ脅威への防御のための技術的対策、社員に対する定期的な研修や訓練等を実施しております。
こうした当社グループの取組みにも関わらず、従業員等の故意または過失、不測の事態等により個人情報及び機密情報が外部に漏洩した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜等により、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
④システム障害及びサイバー攻撃に対するリスク
当社グループの事業は、国内外を問わず、コンピュータシステム及びその通信ネットワークに多くを依存していることに加え、近年の当社グループにおけるリモートワーク拡大により、当該リスクの重要性は一段と高いものとして認識しております。またシステムインフラ及びそのメンテナンス等の一部は、クラウドシステム業者を含む外部業者に委託しております。こういったシステムの利用範囲の拡大や運用形態の多様化に伴い、不測の事態への備えとして、障害発生時の体制整備、システムセキュリティの強化、通信回線やハードウェアの増強等、様々な対策を講じております。特に、近年より高度かつ複雑化するサイバー攻撃への対応については、より一層の全社的な情報セキュリティ体制の強化を目的に、経済産業省が定めるサイバーセキュリティガイドラインに沿ってPASONA-CSIRT(パソナ シーサート)を策定し、ランサムウェアや標的型攻撃といった情報セキュリティ脅威への防御のための技術的対策、及び社員に対する定期的な研修や訓練等を実施しております。これらの対策にも関わらず、人為的過誤、サイバー攻撃、広範な自然災害や外部業者のトラブル等により、コンピュータシステムや通信ネットワークが利用できなくなることにより、当社グループの業務や提供するサービスが停止する可能性があり、かかる状況が長期にわたる場合、当社グループに対する信頼性の低下や、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤事業投資について
当社は、1976年の創業から間もなく50年の節目を迎えるにあたり、「社会の問題点を解決する」という不変の企業理念のもと、次の50年を見据えた成長戦略の議論を進めております。また当社は、2024年5月期において事業ポートフォリオの見直しにより、連結子会社であった株式会社ベネフィット・ワンの株式を売却いたしました。売却により得た資金については、当社の中長期的な企業価値の向上を目的に、新規事業投資や設備投資、M&A投資など成長のための投資や、経営基盤の強化に充当する方針です。こうした成長戦略に伴う各種の事業投資を行う中で以下のようなリスクが生じます。
a.減損会計について
当社グループは、地方創生事業に係る商業施設を含めた事業用の不動産や、のれん、ソフトウエア等の有形・無形固定資産を所有し、連結貸借対照表に計上しております。こうした資産は、当該資産が生み出す将来キャッシュ・フローの状況により減損会計の適用を受ける場合があり、当連結会計年度において2024年7月12日に公表したとおり、固定資産に係る減損損失10,811百万円を計上しております。固定資産減損の認識判定における将来キャッシュ・フローは、資金生成単位ごとの事業計画を基礎として行っておりますが、これらの将来予測には不確実性が伴うため、事業が想定通り進捗しない場合、固定資産の減損損失の計上により、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
b.地方創生事業に係る商業施設について
当社グループの地方創生事業においては、地方の活性化と人材育成及び雇用創造の拠点として複数の商業施設を運営しており、以下のような固有のリスクが想定されます。現在、地方創生・観光ソリューションセグメントでは営業損失が継続しております。
・商業施設の新規開設については、施設規模の大きいものは多額の資金負担が生じます。人件費等の固定的な費用も多く、開設後に利用者数が一定水準に至るまでの期間において費用負担が先行する傾向があり、短期的には当社グループの利益を圧迫する場合があります。
・天候、災害、パンデミック等の影響により利用者の減少や営業休止を余儀なくされる可能性があります。また、利用者への訴求力増加施策が不十分であったり利用者の高い満足度を得られず利用者数が計画に届かない場合、収益が計画を下回ったり、追加投資が必要になる可能性があります。
・施設におけるアトラクション等の安全管理、食事の提供や食品の販売における品質管理や食品衛生には十分注意しておりますが、万一事故が発生した場合、当社グループの信頼性の低下や訴訟などが発生し、または営業休止を余儀なくされる可能性があります。
c.企業買収について
当社グループは、事業の強化補強を図る有効な手段として、企業買収を行う場合があります。こうした企業買収に伴い、多額の資金需要及びのれんの償却等が発生する可能性があります。また企業買収にあたっては市場動向や顧客のニーズ、相手先企業の業績及び財政状況などを考慮し進めておりますが、これらの買収が必ずしも当社グループの見込みどおりに連結収益に貢献したり、シナジー効果を生むとは限らず、経営環境や事業の状況の著しい変化等によりそれぞれの経営成績が想定どおり進捗しない場合、のれんの減損損失や株式の評価損が生じるなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
d.子会社・関連会社への投資
当社グループは、企業や就労者の多様なニーズに応じたサービス領域の拡大、また次の50年を見据えた成長戦略の実現に向けて、社会の問題点の解決につながる新規事業投資を積極的に行っていく考えであります。新規事業投資については、多額の資金需要が発生する可能性があるほか、収益が必ずしも当初の計画通りに推移する保証はなく、想定した収益規模が確保できない可能性があります。事業の進捗状況を適時に把握し、既存の事業インフラや営業網も活用しながら、早期育成に取り組みますが、こうした取組みにもかかわらず期待した収益を生まない場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
こうした事業投資を、子会社・関連会社への出資等を通じて行う場合がありますが、当社が保有する関係会社株式は、市場動向や経営環境及び業績動向によっては実質価額の著しい下落による評価損の計上により、当社の個別財務諸表における業績や資産の額に影響を与える可能性があります。また、これに伴い当該会社への貸付を含めた債権及び債務保証に係る損失やこれらを超えて当該会社で発生する損失の負担に備えるため、損失見込額に対する引当金の計上が必要になるなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥投資有価証券の保有について
当社グループは、中長期的な視点で企業価値を高めるために、お客様及び取引先との信頼関係の強化や維持、取引の拡大、協業や事業シナジーの創出等を目的に、上場及び非上場の株式等の投資有価証券を保有しております。市場価格等の時価を把握できる有価証券については株式市況及び債券市況等の動向により、また、市場価格のない有価証券については投資先の財政状態や業績動向等により、実質価額の著しい下落による評価損を計上するなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦関係会社株式の売却に伴う事業ポートフォリオの変更
当社は、2024年5月期に連結子会社であった株式会社ベネフィット・ワンの株式を売却したことから、2025年5月期において事業ポートフォリオ及び収益構造が変化しております。売却資金については、当社の中長期的な企業価値の向上を目的に、新規事業投資や設備投資、M&A投資など成長のための投資に充当するとともに、経営基盤の強化及び株主還元を実施する計画です。また当社は創業からまもなく50年の節目を迎えるにあたり、次の50年を見据えた成長戦略の議論を進めております。しかしながら、こうした成長戦略の事業計画は必ずしも当初の計画通りに推移する保証はなく、想定した収益規模が確保できない可能性があります。期待した収益を生まない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧人材の確保について
当社グループは1976年の創業以来、年齢・性別・国籍・障害の有無に関わらず、誰もが夢や誇りをもって、自由 に才能を生かして活躍できる社会の実現を目指し、様々な事業に取組んでまいりました。事業環境の変化に対応し、持続的な成長を実現するためには、未来を創造する人材を確保・育成し続ける必要があります。
そのため、当社グループが必要な人材を適時十分に確保できない場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応方針・施策等、人的資本経営に関する詳細は、15ページ「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)ESG・サステナビリティ経営」をご参照ください。
⑨資金調達について
当社グループは、事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金及び外部資金を有効に活用しております。グループ資金については、グループCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、グループ各社間の資金の有効活用と資金調達の一元化を図っております。また、金融機関とは、主に短期的な運転資金需要に対応するためにコミットメントラインを設定しているほか、長期借入や社債等により長期運転資金や設備投資資金等を調達しておりますが、今後の経営状況や信用収縮、金利上昇等の金融情勢の変化などにより、必要な資金調達ができない場合や調達コストの増加が生じた場合、当社グループの事業遂行や業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑩自然災害及びパンデミック等による事業継続リスク
当社グループは、全国にグループ会社及び営業拠点を有しており、地震や水害など大規模な自然災害、パンデミック、事件・事故、その他企業存続を脅かす事象(以下「自然災害等」という。)が発生した場合に備えて、従業員及び派遣スタッフの安否を確認し、安全を確保するための対策を危機管理マニュアルに定めております。また、事業継続のための施策としてBCPマニュアルの策定、事業拠点や情報システムの機能分散なども講じております。また、また2020年9月からは感染症への対策に加え、自然災害等のリスクにも対応するBCP対策の一環として、当社グループは本社・本部機能の分散と兵庫県淡路島への移転を段階的に実施しました。危機発生時は迅速かつ適切な対応をとる所存でありますが、想定を大きく上回る規模で自然災害等が発生した場合、当社グループの事業運営、財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑪気候変動リスク
世界規模で気候変動をはじめとする環境問題が深刻化しています。当社グループは、2005年にグループ各社の役職員で構成する「環境委員会」を設置し、持続可能な社会の実現を目指し、将来を担う次の世代に健全で美しい地球環境を残すため、あらゆる場面で限りある資源を大切にし、企業活動を通して環境保全活動に努めております。2021年には当社グループが目指すサステナブル経営のあり方を発信し、社会から信頼されるロングセラーカンパニーであり続けるために「パソナグループ環境イノベーション戦略」を策定し、同年に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」への賛同を表明いたしました。また、環境経営戦略会議は当社グループの環境経営及び気候変動対応における戦略・方針・目標を策定しております。当該方針をもとに、環境マネジメント推進委員会が各部門・各グループ会社に対して実効的なアクションプランを推進するとともに、社員一人ひとりの環境に対する意識醸成を図るための環境教育を実施しております。環境委員会では、自然との共生を体験する、地域と協働した環境活動を全国で展開しております。リスクマネジメント委員会では、気候変動のリスクマネジメントに関する事項についての審議を行い、内部監査部門は各部門や関係会社に対する環境監査を実施しております。取締役会は、気候変動に関する重要な事項について、環境経営戦略会議から報告を受け適切な助言を行うことで、モニタリングを行っております。
気候変動に伴う事業等のリスクへの対応については、15ページ「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)ESG・サステナビリティ経営」をご参照ください。
⑫保育・介護事業におけるリスク
当社グループは地域での保育施設や企業内保育施設、学童クラブの運営など子育てに関する施設の運営と居宅介護(デイサービス)や訪問介護などの介護事業を行っています。施設及び事業の運営にあたっては安全管理に万全の配慮をしておりますが、事業特有の予期しない事故が発生する可能性があります。万が一事故が発生した場合、当社グループの信頼性の低下や業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑬訴訟・不祥事及びレピュテーションリスク
当社グループは法令遵守を重視した事業活動を行っておりますが、各種訴訟、係争、損害賠償請求の当事者となる可能性や不祥事、誹謗中傷等のリスクを排除できない場合があります。これらの発生に起因し、当社グループの社会的信用や企業イメージが低下し、売上の減少などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、社会経済活動が正常化に向かったことから、個人消費や雇用情勢は改善したものの、期末にかけては足踏みがみられるようになりました。また、世界的な金融引締めや物価上昇等によって景気の先行きは不透明な状態が続いています。
当社事業の環境としては、企業の業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、BPOサービスの需要が底堅く推移しました。また景気回復を背景に人材需要は堅調に推移したほか、アフターコロナへと社会環境が移行する中で、インバウンドを含む観光客数が増加し観光需要も回復が続きました。
こうした中、当社グループにおいては、前期の新型コロナウイルス感染症の対策に係る特需が減少した結果、エキスパートサービス、アウトソーシング、またライフソリューションの一部でそれぞれマイナス影響を受け、売上高が減少しました。BPOサービスについては新規受託の積み上げにより減収を吸収し、売上高は前期より増加しました。
これらの結果、当連結会計年度の連結売上高は356,733百万円(前期比4.3%減)となり、売上総利益は84,825百万円(前期比7.3%減)となりました。販管費は、成長分野での人員強化や先行投資等で人件費が増加したことから78,030百万円(前期比1.1%増)と増加し、結果、営業利益は6,794百万円(前期比52.7%減)、経常利益は7,152百万円(前期比53.5%減)となりました。
また、当期に連結子会社であった株式会社ベネフィット・ワンの株式を売却したことから、連結決算においては112,040百万円の関係会社株式売却益を特別利益として計上し、株式売却に係る一連の取引に必要となった関係会社株式売却関連費用1,164百万円を特別損失として計上しております。一方、主に地方創生ソリューションセグメントに属する商業施設等において、事業環境や足もとの業績動向を踏まえて、今後の事業計画を見直した結果、一部の固定資産について回収可能価額が帳簿価額を下回ったため、当第4四半期連結会計期間において固定資産に係る減損損失10,811百万円を計上いたしました。あわせて、将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性について検討した結果、当連結会計年度に法人税等調整額1,886百万円を計上いたしました。以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は95,891百万円(前期比1,472.1%増)となりました。
■連結業績
②事業別の状況(セグメント間取引消去前)
※当連結会計年度における子会社再編に伴い、「BPOサービス」及び「HRコンサルティング、教育・研修、その他」に該当する一部事業を見直し、セグメント区分を変更しております。また、前連結会計年度の数値は、変更後の区分に組み替えた数値で比較しております。
HRソリューション
エキスパートサービス(人材派遣)、BPOサービス(委託・請負)他
売上高 297,085百万円 営業利益 11,770百万円
〔エキスパートサービス〕 売上高 134,534百万円
当該事業では、オフィスワークを中心に事務職から高度な専門スキルを備えた人材やエンジニア、営業・販売職、また若年層からシニアまで幅広い世代、職種のエキスパートサービス(人材派遣)を展開しています。
当期においては、前期に全国で対応した新型コロナウイルス感染症に係る業務が概ね終了したことにより、稼働者数は年間を通じて減少が続きました。一方で、派遣料金の料金改定により派遣単価は上昇し、派遣スタッフへの処遇改善も進めました。しかしながら、特需のマイナスは埋めきれず、売上高は134,534百万円(前期比8.6%減)となりました。次期に向けて、高度事務職の受注拡大及び人材育成を目的に、株式会社パソナはMicrosoft社と「Code; Without Barriers in Japan」の提供を開始し、派遣スタッフ1万人を対象にデジタル人材の育成に取り組むなど事業基盤の強化を図っています。
〔BPOサービス〕 売上高 142,854百万円
当該事業では、顧客から煩雑な事務作業を集約し効率化する総務・庶務や繁閑に応じた経費精算等に対応する経理・財務をはじめ、受付、営業事務・受発注、人事・労務・給与計算などの業務を当社グループが受託しBPOサービスを提供しています。
当期は、前期までの特需案件が減少したものの、民間企業及びパブリックセクターともに新たな需要を獲得しました。民間企業からは、人事や経理、総務領域でコア業務への集中化支援や、生産性向上に向けたRPA導入・運用支援が増加したほか、新型コロナウイルス感染症の収束に伴って企業の海外展開が活発化したことから海外人事支援などのニーズも拡大しました。パブリックセクターからは、リスキリングや行政事務代行の受託が広がりました。また戦略的に取り組んでいる「X-TECH BPO」においては、民間、パブリック共にDX人材育成に向けた内製化支援や、従業員のオンライン健康増進支援なども拡大しました。
個社別では、自社開発のクラウド型PBX「Omnia LINK」等のデジタル技術を活用したコンタクトセンター・BPOサービスを提供するビーウィズ株式会社及び総務領域に特化したBPOサービスを提供する株式会社パソナ日本総務部(2024年4月1日社名変更、旧:パソナ・パナソニック ビジネスサービス株式会社)において、堅調に新規案件の獲得が進みました。
これらの結果、新型コロナウイルス感染症の対策に係る特需の減収を吸収し、売上高は142,854百万円(前期比0.4%増)となりました。
〔HRコンサルティング、教育・研修、その他〕 売上高 8,673百万円
当該事業では、フリーランスや上場企業の元役員などのプロフェッショナル人材によるコンサルティングや経営支援を行う顧問コンサルティング事業のほか、企業やパブリックセクターから受託している教育・研修事業を行っています。
顧問コンサルティング事業では、人的資本経営や統合報告書の作成に係る専門領域でのプロフェッショナル人材の需要が増加したほか、女性取締役を求める企業から採用需要が増加しました。リクルーティング事業は、人材需要が堅調に推移する中で、最適な人材を確保するため、採用コンサルティングの需要がさらに拡大しました。教育・研修事業では、女性社員の活躍を推進する企業から専門研修等のニーズが増加、新入社員研修では対面型の研修が大半となり前期からは需要が拡大しました。
これらの結果、売上高は8,673百万円(前期比4.0%増)となりました。
〔グローバルソーシング〕 売上高 11,024百万円 営業利益 270百万円
当該事業では、海外において、人材紹介、人材派遣・請負、給与計算、教育・研修などのフルラインの人材関連サービスを提供しています。
アジア地域においては、台湾では半導体や製造業からの人材需要が増加したほか、ベトナムでは日系企業からのIT分野の開発業務の受託が拡大しました。また、経済成長が続くインドネシアでも人材サービスが拡大し、東南アジア各国は増収となりました。北米地域では、労働市場がひっ迫したことから人材紹介は拡大したものの、企業による直接雇用が増加したため人材派遣は減収となりました。また費用面では、米国を中心に多くの拠点で人員強化のための採用や処遇改善を先行して行ったことに加え、研修や出張等の実施も活発であったことから販管費が増加しました。
これらの結果、円安進行による為替影響もあり、売上高は11,024百万円(前期比12.1%増)、営業利益は270百万円(前期比56.2%減)となりました。
以上の事業から構成されるセグメントの売上高は297,085百万円(前期比3.4%減)となりました。利益面では、主にエキスパートサービスにおいて、稼働者数が減少したことによる売上高の減少に加え、新型コロナウイルス感染症の収束に伴い医療専門職種の派遣が減少したことから粗利率も低下しました。これらの結果、営業利益は11,770百万円(前期比22.2%減)となりました。
キャリアソリューション(人材紹介、再就職支援) 売上高 13,054百万円 営業利益 4,042百万円
当該事業は、企業の中途採用活動を支援し、転職希望者とのマッチングを行う人材紹介事業と、企業の人事戦略にもとづいて転身を支援する再就職支援事業を行っています。
人材紹介事業では、一部の業界で採用意欲の減少が見られたものの当社グループが戦略的に注力するハイキャリア領域では安定した需要が継続し、期初からは成約単価も上昇しました。一方で、転職希望者の退職慰留が増加したことから成約数は前期と比べ減少しました。
再就職支援事業では、当期は国内企業の早期・希望退職者の募集人数が過去十数年間で最小規模になったことから、期初から需要の減少が続きました。しかしながら、足もとでは、ビジネス環境の変化や企業の構造改革の動きから早期・希望退職者の募集をする企業が増加しています。また、ベテラン人材へのリスキリングや企業の人的資本経営の高まりから、従業員の自律的なキャリア形成を支援する「セーフプレースメント・トータルサービス」が順調に拡大しました。
これらの結果、売上高は13,054百万円(前期比6.2%減)、人員配置を中心に見直しを行い販管費の抑制に努めるも売上減少分を埋めるには至らず、営業利益は4,042百万円(前期比1.1%減)となりました。
アウトソーシング 売上高 38,962百万円 営業利益 7,615百万円
当該事業は、当社連結子会社であった株式会社ベネフィット・ワンが提供していた、企業や官公庁・自治体の福利厚生業務を中心にしたアウトソーシングサービスが計上されています。
福利厚生事業では、売上高の大半を占める会費収入は前期比で増加した一方、旧JTBベネフィット特有の取引などが減少しました。経費面では、中長期成長に向けた人材やシステムへの投資による費用が前期比で増加しましたが、旧JTBベネフィットのサービス統合による重複コスト削減効果などもあり、収益性が改善しました。
ヘルスケア事業のうちコロナワクチン接種支援事業の売上高は業務の縮小により前期比で減収となりました。保健指導事業は新規受注獲得に遅れがあったものの、前期比で増収増益となりました。健診事業は概ね計画どおりに進捗しました。
これらの結果、売上高は38,962百万円(前期比8.1%減)となり、販管費率は前年同水準であったものの、期末にかけて福利厚生サービスの利用増加により補助金支出が増加したことや、システム関連費用の償却等が増えたため粗利率が低下し、営業利益は7,615百万円(前期比27.4%減)となりました。
ライフソリューション 売上高 7,792百万円 営業利益 128百万円
当該事業では、認可・認証保育所、企業内保育施設、学童保育施設の運営、児童教育などの子育て支援事業、デイサービス、訪問介護などを行う介護事業、家事代行などのライフサポート事業を行っています。
保育事業では、認可保育園や学童クラブの新規開設をはじめ、既存保育施設の受入れ児童数も前期からは増加したものの、新規開設の費用先行や人件費などの運営費等の増加により売上総利益は減少しました。
ライフサポート事業では、前期まで新型コロナウイルス感染症の拡大対策として病院や宿泊施設から受託していた除菌消毒サービスが減少したほか、感染者療養施設への介護人材の派遣需要が減少しました。また、子育て家庭を対象にした家事代行サービスなどの自治体からの受託事業が順調に拡大したものの、複数地域に分散したため人件費を中心に販管費が増加しました。
これらの結果、売上高は7,792百万円(前期比5.0%減)、営業利益は128百万円(前期比64.8%減)となりました。
地方創生ソリューション 売上高 6,223百万円 営業利益 △2,588百万円
当該事業では、地域住民や地域企業、地方自治体と協力、連携しながら、地方に新たな産業と雇用を創出する地方創生事業に取り組んでいます。
兵庫県立淡路島公園アニメパーク「ニジゲンノモリ」では、海外でも人気が高い「NARUTO」のアトラクション「NARUTO&BORUTO 忍里」をはじめ、2024年アカデミー賞の受賞により国内外で関心が高まったゴジラのアトラクション「ゴジラ迎撃作戦」にはインバウンドの来場者が大きく増加しました。また、淡路島の地元食材を使った地産地消の料理を提供する畑の中のレストラン「陽・燦燦(はる・さんさん)」は、大自然の魅力を存分に楽しむことができる施設として多くの方々にお越しいただきました。
一方、当期は夏季の猛暑や週末の悪天候による影響を受けたほか、国内では観光地の分散化の影響もあり、来場者数が期初予想に至らない施設もありました。また、レストランなどの飲食事業を提供する施設では、原材料の高騰によって原価率が上昇し、処遇改善により人件費も増加しました。これらの事業環境や足もとの業績動向を踏まえて、今後の事業計画を見直した結果、一部の商業施設等の固定資産について回収可能価額が帳簿価額を下回ったため、当第4四半期連結会計期間において固定資産に係る減損損失を計上いたしました。
これらの結果、売上高は6,223百万円(前期比10.2%減)となり、赤字幅はやや改善したものの、営業利益は△2,588百万円(前期は営業利益△2,877百万円)となりました。なお、前期においては、一部子会社で決算期を3月から5月に変更したため14ヶ月決算となっており、そのテクニカルな影響を除くと売上は前期よりも増加しています。
消去又は全社 売上高 △6,385百万円 営業利益 △14,174百万円
グループ間取引消去とグループシナジーの最大化のためのコストや新規事業のインキュベーションコスト、持株会社としての管理コストが含まれています。
当期は、人件費やDXを推進するIT関連費用が増加したほか、2025年大阪・関西万博に出展するパビリオン関連費用が一部発生しています。これらの結果、グループ間取引消去の売上高は△6,385百万円(前期は△6,539百万円)、営業利益は△14,174百万円(前期は△12,819百万円)となりました。
■セグメント別業績
※当連結会計年度における子会社再編に伴い、「BPOサービス」及び「HRコンサルティング、教育・研修、その他」に該当する一部事業を見直し、セグメント区分を変更しております。また、前連結会計年度の数値は、変更後の区分に組み替えた数値で比較しております。
(2)生産、受注及び販売の実績
当社グループは、人材派遣、委託・請負、人材紹介、再就職支援、アウトソーシング、保育・介護、地方創生などの事業を行っており、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載しておりません。
生産実績と同様の理由により、記載しておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりとなります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
上記に記載した当連結会計年度における売上高を地域別に示すと、次のとおりとなります。
(3)財政状態
資産、負債及び純資産の状況
当連結会計年度末の資産及び負債には、当社グループによる使用が制限されている受託案件に係る顧客からの一時的な「預り金」とそれに見合う「現金及び預金」が54,975百万円(前連結会計年度末74,869百万円)計上されております。
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べて25,585百万円増加(9.3%増)し、301,090百万円となりました。上記の「預り金」の減少、固定資産の取得及び長期借入金の返済などもありましたが、当社連結子会社であった株式会社ベネフィット・ワン(以下「ベネフィット・ワン」という。)の株式売却等により現金及び預金が69,214百万円増加、地方創生事業等の建設仮勘定が11,977百万円増加した一方で、ベネフィット・ワンの連結除外等により売掛金が7,379百万円減少、その他流動資産が7,692百万円減少、無形固定資産が21,570百万円減少したことなどによるものであります。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べて57,451百万円減少(28.2%減)し、146,428百万円となりました。上記の受託案件等により預り金が22,316百万円減少、借入金の返済により長期借入金が14,077百万円減少、ベネフィット・ワンの連結除外等により契約負債が5,377百万円減少、買掛金が4,003百万円減少したことなどによるものであります。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べて83,037百万円増加(115.9%増)し、154,661百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益が95,891百万円となったことにより利益剰余金が94,507百万円増加、ベネフィット・ワンの連結除外等により、非支配株主持分が11,451百万円減少したことなどによるものであります。
以上の結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、49.3%(前連結会計年度末19.6%)となりました。なお、受託案件に係る「預り金」に伴う「現金及び預金」を控除した総資産は、246,115百万円(同200,634百万円)であり、自己資本比率は60.3%(同26.9%)となります。
(4)キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて、89,127百万円増加し、137,047百万円となりました。なお、「資金」には、受託案件に係る顧客からの一時的な「預り金」に見合う「現金及び預金」は含まれておりません。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、7,397百万円(前連結会計年度5,961百万円の増加)となり、前連結会計年度より1,435百万円の増加となりました。
資金増加の主な内訳は、税金等調整前当期純利益106,251百万円(同16,766百万円)、減価償却費5,569百万円(同5,126百万円)、減損損失10,811百万円(前連結会計年度は発生なし)等によるものであります。
なお、株式会社ベネフィット・ワンの株式売却によるキャッシュ・フローについては、投資活動によるキャッシュ・フローに計上するため、営業活動によるキャッシュ・フローから関係会社株式売却益112,040百万円を控除しております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は、94,252百万円(前連結会計年度12,502百万円の減少)となり、前連結会計年度より106,754百万円の増加となりました。
資金増加の主な内訳は、株式会社ベネフィット・ワンの株式売却による、連結範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入115,228百万円(前連結会計年度は発生なし)等によるものであります。
資金減少の主な内訳は、淡路島の地方創生事業における商業施設や全社セグメントでの事業用施設の新設に伴う有形固定資産の取得による支出15,244百万円(同9,029百万円)、システム投資に伴う無形固定資産の取得による支出4,905百万円(同4,591百万円)等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、12,879百万円(前連結会計年度2,292百万円の減少)となり、前連結会計年度より10,586百万円の増加となりました。
資金増加の主な内訳は、長期運転資金の確保を目的とした、長期借入れによる収入2,500百万円(同15,727百万円)等によるものであります。
資金減少の主な内訳は、長期借入金の返済による支出10,325百万円(同10,339百万円)、配当金の支払4,568百万円(同5,169百万円)等によるものであります。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
(注)1 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
2 いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
3 株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
4 キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
5 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
6 当社グループによる使用が制限されている受託案件に係る顧客からの一時的な「預り金」とそれに見合う「現金及び預金」を控除した自己資本比率は、前項「(3) 財政状態 資産、負債及び純資産の状況」に記載のとおりであり、また、時価ベースの自己資本比率は、34.8%(前連結会計年度末33.9%)となります。
(5)資本の財源及び資金の流動性
①財務戦略の考え方
当社グループは、財務体質の強化と資金効率の向上を両立しつつ、企業価値の向上のために資金を適切に調達・配分することを財務戦略の基本方針としております。HRソリューション領域における業務プロセス最適化のためのIT関連投資、地方創生・観光ソリューションの収益力向上に資する設備投資、DX人材の育成等の人的資本投資など、当社グループの成長、企業価値の向上に必要な資金及び経常の運転資金を効率的に確保しております。さらに、グループ会社との間ではCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、グループ各社における余剰資金の有効活用に努めております。
②資金調達の基本方針
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的、かつ機動的に確保するため、内部資金及び外部資金の有効活用に努めております。月中の短期運転資金需要に対しては、金融機関との間に設定しているコミットメントラインや当座借越枠を機動的に活用しています。長期借入については、約定返済額や投資計画等を勘案しながら、年度の資金調達計画を策定し、取引金融機関からの調達を実施しています。資金調達にあたっては、財務体質や資本コストにも留意しながら、その可否を判断しています。自己資本比率やEBITDA有利子負債倍率等を見据えつつ、銀行借入、社債をはじめとした負債を有効に活用することで、資本コストの低減及び資本効率の向上に努めております。
③資金配分についての考え方
当社グループ全体として得られた資金は、成長投資、株主還元、手元資金に振り分けています。成長投資については、経営戦略を踏まえたグループとしての投資意義や、投資資金の回収可能性や期待されるリターン等を吟味し、投資の可否を判断しています。また、業績に応じた株主還元を実施することを基本方針に、配当政策については、これまで連結配当性向30%を目途としておりましたが、株主への還元をさらに充実させるため、2025年5月期より連結配当性向を40%に引き上げて、継続的かつ安定的な配当の維持に努めてまいります。手元資金については、金融機関との間に設定しているコミットメントライン等を活用することで、グループ全体の資金効率を高めていくよう努めております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっての会計方針は、80ページ「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりです。
また、この連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りや判断を行う必要があります。過去の実績や現在の状況に応じ、合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表を作成するにあたって、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、83ページ「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(株式会社ベネフィット・ワンに関する第一生命ホールディングス株式会社との合意書)
当社は、2024年2月8日に、第一生命ホールディングス株式会社(以下「公開買付者」という。)との間で、当該日時点で当社の連結子会社であった株式会社ベネフィット・ワン(以下「対象者」という。)の普通株式に対して、公開買付者が実施する公開買付け(以下「本公開買付け」という。)に対し、当社が保有する対象者株式の全てを応募しないこと、並びに、本公開買付け成立後に、対象者が、その株主を公開買付者及び当社のみとする株式併合(以下「本株式併合」という。)を行ったうえで実施する自己株式取得(以下「本自己株式取得」という。)により、その時点で当社が保有する対象者株式の全てを売却すること等を定めた合意書(以下「本合意書」という。)を締結しました。詳細につきましては、2024年2月8日に公表した「子会社株式に対する合意書の締結及び特別利益・特別損失の計上見込み並びに2024年5月期通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」をご参照ください。
なお、2024年3月11日をもって本公開買付けが成立し、本合意書に基づき当社は、対象者の株主総会において、(i)本株式併合に関する議案、(ii)本株式併合の効力発生後に実施される公開買付者を引受人とする第三者割当増資並びに資本金及び準備金の額の減少(以下「本増減資」という。)に関する各議案、並びに(iii)本増減資の効力発生後に実施される本自己株式取得に関する議案等に賛成する議決権の行使を行い、5月23日をもって当社が保有する対象者の普通株式の全てを対象者に売却し、対象者は公開買付者の完全子会社になり、全ての手続きが終了しております。
(株式会社大林組との工事請負契約)
当社は、2023年1月26日開催の取締役会にて決議の上、同日公表した「淡路島 岩屋エリア ホテル開発プロジェクト」(工事総額130億円から140億円)について、2024年3月27日開催の取締役会にて、当社と株式会社大林組の間で工事請負契約を締結することを決議し、2024年5月29日開催の取締役会にて、工事内容の詳細及び請負代金額を133億円とすることを決議し、2024年5月31日付で契約締結いたしました。
当連結会計年度において、特記すべき重要な事項はありません。