文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
メルカリはCtoCマーケットプレイス「メルカリ」から始まり、「あんしんで頼れる」「誰でもカンタン」「使うほどワクワク」「ちょっといいことしてる気分の良さ」をお客さま体験として追求してきました。そこから生まれたお客さま同士の強固なネットワークを基盤として、物理的なモノだけでなく、信用やデジタルアセット、時間やスキルなど価値循環の対象を拡大し、お客さま体験を進化させ続けております。
よりサステナブルな社会への移行が求められる中、メルカリの事業が社会にもたらすポジティブインパクトは定量的にも示されております。メルカリが事業成長することがそのまま、サーキュラーエコノミーの体現であるともいえます。
私たちはこれからも、世界中のモノやコト、そして人の「まだ見出されていない価値」を引き出し、その価値を必要としている人へつなげていきます。有形・無形に限らずあらゆる価値が循環する「エコシステム」を通じて、世界中の人々の可能性を広げる(=Unleashする)存在でありたいと考えております。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、日本及び米国で事業展開をしており、各地域によって成長ステージが異なりますが、GMV(流通取引総額)及び売上収益の成長、また、コア営業利益(注)などの指標を通じて、企業価値の向上を図って参ります。
(注)営業利益からその他の収益/その他の費用等を控除した利益
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、以下の強みを背景に中長期的な経営戦略を立案しております。
当社グループの強み
① 中古品市場の拡大をけん引するCtoCマーケットプレイスのパイオニア
当社グループは、使いやすく楽しく、かつ安心・安全なCtoCマーケットプレイスの提供を通じて、フリマアプリ市場を作り上げ、オフライン店舗やインターネットオークションに限定されない日本の中古品市場全体の拡大をけん引して参りました。2023年に実施した当社調査によると、フリマアプリ及びオークションサイトの利用経験者のうち当社サービスの利用者数が最も多く、他社のサービスを上回る支持を獲得しております。当社グループは、CtoCマーケットプレイスのパイオニアとしての圧倒的なポジショニングを活用することで、上記の中古品市場の高い市場成長を享受できる立場にあると自負しております。
更に、米国をはじめとする海外においても、個人による中古品売買のニーズは高く、「メルカリ」を通じて中古品市場の成長に貢献して参ります。
② エンゲージメントの高いユーザ基盤及びこれを通じて得られる高付加価値のデータ活用
出品者・購入者双方にとって簡単で使いやすく、楽しく夢中になれるユーザ体験を提供することで、「メルカリ」は高いユーザエンゲージメントを実現しております。「メルカリ」のMAUは2024年6月期第4四半期において約2,200万人であり、ユーザの取引情報やユーザ間における取引評価情報等、利用価値の高いデータを大量に収集することができます。これらのデータと当社が注力して取り組むAIをはじめとするテクノロジーの活用により、購入者の嗜好にあわせた商品提案等による購入転換率の向上や、売れやすい出品価格提案等による出品転換率の向上、カスタマーサポートの効率化等に取り組んでいます。
また、スマホ決済サービス「メルペイ」で提供するCreditサービスにおいて、「メルカリ」の利用実績に基づいた与信を提供するなど、既存のサービスにおけるユーザ体験の向上に加え、グループとしての成長に資する新規サービスの開発にもつなげております。
③ CtoC特有のネットワーク効果による高いロイヤルティの獲得
CtoCマーケットプレイスである「メルカリ」は、ネットワーク効果が強く働くサービスです。出品者・出品数の増加に伴い、購入したい商品が増えることで購入者・購入数が増加し、これにより商品の流動性が高まり、更に出品者・出品数が増加していきます。更に多くの出品者・購入者が高い頻度で「メルカリ」を利用しており、ネットワーク効果による自走的成長が促進されております。このようなネットワーク効果による出品者や購入者からの高いロイヤルティ獲得につながり、リピートユーザによる継続的な取引への参加が流通取引総額の成長に大きく貢献しております。また、ユーザの過去の取引評価の蓄積により、他のユーザが安心して取引を行うことができるとともに、ユーザ獲得競争において他の競合サービスへの流出を抑制する効果を有しております。更に、クレジットカード機能を有する「メルカード」の利用に伴うロイヤルティプログラムを開始するなど、ユーザ体験の向上に伴う高いロイヤルティの獲得に注力しております。
④ 高い収益性を実現するビジネスモデル
当社グループは、Marketplaceにおいて既に高い収益性を実現しております。この背景は、一定の事業規模に達するとその後の更なる事業規模拡大に際してコストを適切に管理できるというビジネスモデルにあります。具体的には、当社のコスト構造の相当の割合は広告宣伝費により構成されていますが、一般的にモバイルアプリの初期成長段階では売上高に占める広告宣伝費の割合は高くなるものの、ユーザ基盤が拡大し安定するにつれて広告宣伝費の比率を抑えることが可能になります。その結果高い収益性を実現することが可能となります。
更に、FintechにおいてCreditサービスの成長に伴い収益基盤が強化されるなど、メルカリグループにおける第2の収益の柱としての確立に向けた取り組みも進捗しております。
⑤ 価値創造を支える組織・企業文化
当社グループが掲げるミッション「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」の達成に向けて、世界中の多様なタレントが活躍できるボーダーレスな組織づくりを重要視しております。様々なバックグラウンドを持つ多様な人材が価値創造の源泉であると考え、「世界中の多様なタレントの可能性を解き放つ組織を体現」を大方針に据え、I&Dを推進しております。2024年6月末時点において、約55ヶ国の優秀なメンバーが在籍し、特にエンジニア組織では約50%以上が外国籍であり、多様なタレントが活躍しております。
また、ミッションを達成するための行動指針として「Go Bold」、「All for One」、「Be a Pro」の3つを策定しており、経営判断から日々の業務まで、メルカリに関わるすべての意思決定を、本バリューに基づき行っております。
当社の具体的な経営戦略
2024年6月期は、成長と収益のバランスを意識した経営を推進しながら、次の10年を見据えた既存事業の成長加速と新規事業創出に取り組んで参りました。その結果、連結で過去最高の売上収益とコア営業利益を達成するとともに、新規事業では、2024年3月に空き時間おしごとサービス「メルカリ ハロ」を開始、2022年11月に提供を開始した「メルカード」発行枚数が340万枚を突破するなど、各々のサービスが大きく成長いたしました。組織面においても、指名委員会等設置会社への移行に伴い、モニタリング型取締役会として実効性が一層向上し、また、指名委員会を通じたサクセッションプランの策定にも取り組むなど、グローバルな組織基盤の構築やガバナンス強化が進捗した一年となりました。
2025年6月期は、原則として、増益を伴うトップラインの成長を実現することを掲げ、グループシナジーを中心とした事業拡大を推進して参ります。各事業の成長に伴い、連結売上収益2,000-2,100億円、連結コア営業利益220-250億円の達成を目指します。
① Marketplace:CtoCの安定成長に加え、越境取引やBtoC等の高い成長により、GMV成長率 YoY +10%前後に挑戦し、調整後コア営業利益率は37-42%を目指す
・主な施策
MarketplaceのGMVは1兆円を超える規模に到達しておりますが、潜在的な市場規模は大きく、更なる事業拡大が可能と考えております。2025年6月期は、目標の達成に向けて、AI/LLMの実装を通じたUI/UXの改善を推進するとともに、高価格帯カテゴリーの強化を通じた取引活性化に取り組んで参ります。また、高成長が期待できる越境取引やBtoCを一層強化することで、MarketplaceのGMV貢献を加速して参ります。
2024年3月より提供開始したスポットワーク事業においては、求人情報を提供する事業者の獲得や、「メルカリ」のユーザ基盤を活かしたワーカー獲得を推進して参ります。これにより、全国で利用できる環境を構築するとともに、UI/UXの継続的な改善を通じたサービスの利用拡大を目指します。
② Fintech:債権残高の着実な積み上がりを通じた継続的な「増益」フェーズへ移行し、コア営業利益30億円以上を目指す
・主な施策
「メルカード」ユーザ獲得を推進しつつ、支払い手段やロイヤルティプログラムの拡充等のUX向上によって利用を促すことで、Fintechの柱であるCreditの更なる成長を目指します。利用拡大に伴う債権残高の積み上がりと、高い債権回収率の維持・向上を両立することで、健全な事業成長を実現して参ります。
また、暗号資産取引における積立機能追加を行う等、資産形成をより身近なものとする取り組みも推進して参ります。
③ US:ブレイクイーブンにコミットしつつ、成長軌道への復帰を目指す
・主な施策
2024年6月期第4四半期に行った人員削減を含む組織再編に伴い、より筋肉質な経営基盤を整えて参りました。2025年6月期は、長引くインフレをはじめとする厳しい外部環境の中、ユーザによる購入機会を創出すべく、日本「メルカリ」との越境取引を開始し、取引活性化を推進して参ります。更に、2024年3月より開始した新たな手数料モデルにおける、AI/機械学習を活用した継続的な精度向上を通じて、ブレイクイーブンにコミットしながら、成長軌道への復帰を目指して参ります。
また、中期においても、原則として、増益を伴うトップラインの成長に取り組んで参ります。MarketplaceにおけるCtoCの安定成長と高い収益性の継続に加え、高成長が期待できる越境取引やBtoC、Fintech、USにおいて規律のある投資を行うことで、2027年6月期に向けた連結目標として、売上収益CAGR2桁成長、コア営業利益CAGR+25%以上の達成を目指します。事業成長を通じたミッションの達成に向けて、「メルカリ」の事業基盤を活用したグループシナジーの創出を強化することで、非連続な成長を実現して参ります。
(4)会社の課題
① サービスの安全性及び健全性の確保
Eコマースサービスやソーシャルメディア等の普及と、それに伴う不正利用の巧妙化の流れを受け、インターネット上のサービスの安全性維持に対する社会的要請は一層高まりを見せております。当社グループは、安心・安全な取引の場を提供するため、サービスの安全性・健全性確保を最重要課題として、個人情報保護や知的財産権侵害品対策等に継続的に取り組んで参ります。
② 人材の育成
企業として持続的成長を続けるために、多様な視点とスキルを持つ人材が共に働きやすい環境を整え、イノベーションを生み出す基盤を強化し続ける必要があると考えております。「I&D Statement」として当社グループの考えを社外に公開、管理職に占める女性比率を改善するなどI&Dの推進に取り組んでおります。今後も、積極的な人材の抜擢・登用を通じて、当社グループの成長を牽引する新しいリーダーの輩出に取り組んで参ります。
③ 技術力の強化
当社グループはインターネット上でサービスを提供しており、サービス提供に係るシステムを安定的に稼働させることが事業運営上重要であると認識しております。出品数の増加に伴うアクセス数の増加を考慮したサーバー設備の強化、並列処理システムの導入等による負荷分散等、継続的にシステムの安定性確保に取り組んで参ります。
また、先進技術への投資に注力し、更なるユーザ体験の向上に取り組んで参ります。例えば、過去の取引履歴や評価情報等の膨大なデータを元にしたAI/LLMや機械学習技術の活用により、サービスの利便性向上や、安全性及び健全性の維持・強化を推進して参ります。
④ 海外展開への対応
当社グループは、2014年に米国へ進出し、2019年には日本における「メルカリ」に出品された商品を海外から購入できる越境販売を開始するなど、海外展開にも着手して参りました。米国事業においては、コスト構造と事業戦略の見直しを実施し、成長軌道への復帰を目指しております。越境販売に関しては、順調に拡大を続けており、連携する越境EC事業者も拡大し、世界110ヶ国以上の国・地域のお客さまに越境販売を展開しております。今後も市場の機会を見極めながら、グローバルでの事業拡大を目指して参ります。
⑤ コーポレートガバナンスの強化
当社グループは、経営の監督機能及び内部統制機能の充実、コンプライアンス経営の徹底を通じて、企業価値の向上に努めることをコーポレートガバナンスの基本方針として定め、ステークホルダーのみなさまの信頼に応えるべく、経営の効率性、透明性を高め、企業価値の最大化と持続的な成長、発展に努めて参ります。
当社は、2023年9月28日開催の第11回定時株主総会における承認をもって指名委員会等設置会社へ移行いたしました。移行により、監督機能と執行機能の分離をより一層明確にすることによって、取締役会の監督機能の強化を実現しながら、執行機能の迅速かつ果断な意思決定と事業推進を実現する体制を構築いたします。
⑥ 内部管理体制の拡充並びにコンプライアンスの徹底
当社グループは今後もより一層の事業拡大を目指しており、社会的責任を果たし、持続的な成長と企業価値向上を図るために、当社グループの成長に見合った人材の確保、育成及びコンプライアンスの徹底を重要な課題と考えております。内部監査、法務、財務、経理、情報セキュリティ等、それぞれの分野で高い専門性や豊富な経験を有している人材を採用することに加え、社員に対する継続的な啓蒙活動及び研修活動を行うことで、更なる内部管理体制の強化を図るとともに、コンプライアンスの徹底に努めて参ります。
⑦ 財務規律の強化
当社グループが継続的に成長・拡大していくにあたっては、更なる収益基盤の強化・拡大と、それをレバレッジさせた資金調達力が必要になります。Marketplace・Fintech・USの主力3事業を、優先順位を意識した規律ある投資等の成長と収益のバランスをとった経営を行うことで、その基盤を整えて参ります。
1.サステナビリティ全般
メルカリは、事業を通じて環境や社会に貢献する「プラネット・ポジティブ」(注)を追求することで、物理的なモノやお金に限らずあらゆる価値がなめらかに循環する社会の実現を目指しています。
事業を通じて生まれた温室効果ガスの削減貢献量を算出した結果、「メルカリ」の算出対象カテゴリーで取引したことによって、2024年度は日米合計で年間推計約61万トンの温室効果ガスの排出を回避できたことがわかりました。
メルカリは、さまざまな取り組みを通じてリユースを推進し「捨てる」を減らすことで、限りある資源が大切に使われるサーキュラーエコノミーの実現に貢献します。
(注)「事業の成長を通じて地球環境に対してポジティブなインパクトを生み出し続けていく存在でありたい」というメルカリの企業姿勢を表現した、プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)という概念をベースにした当社グループの造語
(1)ガバナンス
2021年12月より設置していたESG委員会(注)の機能を、2024年7月から執行役会に統合し、マテリアリティごとの実行計画を執行役会にて毎年定めている事業計画に組み込み、事業戦略とマテリアリティへの取り組みをより一体的に推進する体制に移行しました。
マテリアリティごとの進捗状況のモニタリングは、事業計画の進捗と併せて執行役会にて四半期ごとに行われ、取締役会へ報告されます。本体制とプロセスを通じて、ESGの更なる推進を目指します。
(注)2021年12月より設置しているESG委員会の分科会として実施していた「I&D Council」並びに「マーケットプレイスのあり方に関するアドバイザリーボード」は、各マテリアリティを推進する会議体として、引き続き定期的に開催
(2)戦略
メルカリは、事業を通じて社会・環境課題の解決に貢献していく価値創造に関わるものと、持続的な成長のために必要な経営基盤に関わるものの両方の観点から、マテリアリティを定義しています。
メルカリグループのマテリアリティ
①個人と社会のエンパワーメント
誰もがやりたいことを実現し、人や社会に貢献するための選択肢を増やすことで、あらゆる人の可能性が発揮される世界を実現します。
②あらゆる価値が循環する社会の実現
事業を通じて環境や社会に貢献する「プラネット・ポジティブ」な企業を追求することで、物理的なモノやお金に限らずあらゆる価値がなめらかに循環する社会を実現します。
③テクノロジーを活用した新しいお客さま体験の創造
データ・AIなど、革新し続けるテクノロジーも活用しながら常にプロダクトを進化させ、なめらかな価値交換による新しいお客さま体験を創造していきます。
④中長期にわたる社会的な信頼の構築
コーポレートガバナンスの実効性向上とコンプライアンスの徹底による健全で透明性の高い意思決定プロセスを構築することで、社会の公器としての責任を果たし信頼を構築します。
安心・安全で公正な取引環境を実現し、更に業界全体での啓発・情報共有を行うことで、世界の健全なインターネットサービス環境の実現に寄与していきます。
⑤世界中の多様なタレントの可能性を解き放つ組織の体現
世界中の多様なバックグラウンドを持つ人材がポテンシャルを最大限に発揮して働ける環境を整えることで、持続的に成長できる企業としてあり続けます。
(3)リスク管理
特定したリスクと機会は、ESG推進体制において管理しております。案件に応じて、取締役会に報告・提言を行うフローも構築しております。リスク管理の詳細は
(4)指標及び目標
特定したマテリアリティごとのサマリ及び重点領域方針は以下のとおりです。
マテリアリティ |
2024年6月期 方針 |
2024年6月期 サマリ |
2025年6月期 重点領域 |
①個人と社会のエンパワーメント |
・あらゆる人の可能性が発揮される世界の実現 |
空き時間お仕事サービス「メルカリハロ」を提供開始し、登録者数500万人を突破。 時間やスキルを新たな価値として提供することが可能になり、個人のエンパワーメントにつながった。 更にお客さまの売上金の使い道として新たな選択肢を提供し続けてきた「メルカリ寄付」が、累計寄付額2億円に達するなど、社会のエンパワーメントにも寄与。 |
・あらゆる人の可能性が発揮される世界の実現 |
②あらゆる価値が循環する社会の実現 |
CtoC市場でのマーケットシェアをより強固なものにするべく、グループ横断でMarketplace GMVの最大化を推進、更に越境取引とBtoCの拡大と外部パートナーとの連携を推進。 |
日本国内のMarketplace取引拡大によりポジティブインパクト(削減貢献量)も拡大。更に、配送に関わるCO2排出量の開示と目標設定を行い、環境負荷の低減に向けたコミットメントを強化。また、モノに限らない価値循環の形として空き時間お仕事サービス「メルカリハロ」を提供開始した他、BtoC「メルカリShops」や越境取引も大きく拡大。 |
・事業成長に伴うポジティブインパクトの拡大 ・グローバルでの価値循環の拡大 |
③テクノロジーを活用した新しいお客さま体験の創造 |
・Marketplace:規律ある投資を継続しつつ、マーケティング投資とプロダクトの進化に加え、強化領域への注力を通じたGMV成長にフォーカス ・Fintech:「メルカード」会員獲得を通じたグループシナジーの創出、「メルカリ」内でビットコイン決済を可能にするなどのUX強化 |
「メルカード」の拡大やビットコイン決済導入で新しい「払う」体験を提供し、「循環型金融」を拡大。暗号資産口座数も220万口座に到達し、イーサリアムの取り扱いも開始するなどテクノロジーを活用した多様な価値循環を提供。 |
・データ/AIによる機能革新 ・お客さま基盤を活用したイノベーションの創出 |
④中長期にわたる社会的な信頼の構築 |
・指名委員会等設置会社への移行に向けた内部監査体制の強化 ・データ&プライバシーガバナンス、サイバーセキュリティの体制強化 ・外部パートナー(自治体、一次流通事業者、大学や非営利組織)との連携強化 |
指名委員会等設置会社の移行によりガバナンス体制を強化。 メルコインにおけるフィッシング件数ゼロを継続するなど安心・安全な取引環境の実現に向けた取組を推進。 更にメルカリでの粗大ごみの販売や全国初のリユース推進実証実験など自治体との取り組みを中心にステークホルダーとの信頼の獲得も進捗。
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・安心・安全で公正な取引環境の実現 ・お客さま、ステークホルダー(社会、投資家、メディア等)からの信頼獲得 |
⑤世界中の多様なタレントの可能性を解き放つ組織の体現 |
・インクルージョン強化に向けたI&D方針のアップデートと施策展開 ・多様な人材確保に向けた新卒採用の強化 ・インド拠点拡大に向けた業務環境の構築・報酬制度の整備 ・メンバーのバリュー発揮を促すカルチャーアップデートと社内浸透 |
属性に関わらない、競争力のある報酬を実現するための仕組みとしてカルチャーやグレード定義を刷新。サクセッションプランニングにより内部制度によるVP登用が進展。インクルーシブな環境づくりに向けたコミットメントをまとめた「I&D Statement」を公開。管理職に占める女性比率も改善し、多様な人材確保に向けた新卒採用の割合も大幅向上。 |
・多様なタレントの育成と抜擢 ・インクルージョン&ダイバーシティの体現 ・大胆な挑戦に向けた生産的な組織環境の構築 |
詳細はサステナビリティサイト及びインパクトレポートで開示しています。以下サイトよりご覧ください。
2.TCFDに基づく開示
当社グループでは、気候変動問題を事業に影響をもたらす重要課題の一つと捉え、経営戦略に取り入れ、グループ全体で気候変動対策に積極的に取り組んでいます。このような背景から、2021年6月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明しました。
TCFD提言は、すべての企業に対し、「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標と目標」の4つの項目に基づく情報の開示を推奨しています。当社グループは、TCFD提言の4つの開示項目に沿って、気候関連情報を開示しております。
(1)ガバナンス
気候変動の影響等のESGの観点は、執行役会の重要アジェンダの1つとして十分な議論の時間を定期的に確保し、経営の意思決定及び業務の執行プロセスに組み込む体制を構築しています。マテリアリティごとの進捗状況のモニタリングは、事業計画の進捗と併せて執行役会にて四半期ごとに行われ、取締役会へ報告されます。本体制とプロセスを通じて、ESG推進を行って参ります。
(2)戦略
本年度も当社グループ全体を対象として、気候変動に関連する「移行リスク」「物理的リスク」「機会」を特定するためにシナリオ分析を実施しました。
シナリオ分析では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)等の科学的根拠等に基づき2つのシナリオ(1.5℃/2℃シナリオ、4℃シナリオ)を設定し、当社グループの2030年以降の社会を考察しております。
シナリオ分析に基づく、気候変動に関連する主なリスクと機会は以下のとおりです。
区分 |
気候変動が当社グループに及ぼす影響 |
顕在時期 |
事業インパクト |
当社の対応策 |
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リスク |
物理的リスク |
急性 |
自然災害の激甚化によるデータセンター等のダウン
自然災害の激甚化により、データセンターや電力会社が被災した場合、電気及びネットワークの中断、データーセンターのダウン等を引き起こし、顧客(売り手・買い手)がオンラインで販売及び購入できなくなる |
中~長期 |
中 |
・操業停止期間を減少させるBCPの構築 ・災害復旧計画の検討 |
移行リスク |
政策 ・ 法規制 |
各種規制や燃料価格上昇による商品の配送コストの増加
カーボンプライシングの導入、燃料価格上昇、クリーエネルギー規制や、燃費規制、配送人件費の増加等による商品の配送コストの増加は、顧客(売り手・買い手)に影響を与え、マーケットプレイスで販売される商品の需要に影響する |
中~長期 |
小 |
・サプライヤーエンゲージメントの強化 ・環境負荷の少ない配送手段の拡大 |
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移行リスク |
評判 |
気候変動対応が不十分なことによる金融機関・投資家からの評判低下
投資家や金融機関から気候変動関連の対応や情報開示への要請が高まる中、暗号資産事業や越境取引の拡大等に対して対応が不十分であった場合、資金調達への影響が想定される |
中~長期 |
中 |
・情報開示の充実化 ・2030年までのScope1+2 100%削減 ・Scope 3における削減(SBT認定取得) ・配送事業者等とのサプライヤーエンゲージメントの強化 ・暗号資産事業の取引規模に応じたカーボン・オフセットの実施 |
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物理的リスク |
慢性 |
温暖化による冬物衣料の需要低下
温暖化により、マーケットプレイスで販売される冬物衣料の需要が低下することで売上に影響する |
中~長期 |
中 |
・他カテゴリーの需要強化 ・越境取引、BtoC取引等市場の拡大 |
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機会 |
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評判 |
環境意識の高まりによる、消費者選好の変化における競争力の強化
サステナブルな消費者行動の浸透に伴うメルカリ利用者の増加と、メルカリを利用する新たな動機(環境貢献)を創出 |
短~中期 |
大 |
・「捨てるをへらす」サステナブルな消費者行動の促進 |
事業/財務的影響評価
・大(30億円以上):事業戦略への影響または財務的影響が大きいことが想定される
・中(1億円以上、30億円未満):事業戦略への影響または財務的影響が中程度と想定される
・小(1億円未満):事業戦略への影響または財務的影響が小さいことが想定される
上記のとおり、当社グループの事業活動にとっては、気候変動に伴う環境意識の高まりや消費者行動の変化によって創出される市場機会の方が気候変動リスクがもたらす影響よりも大きいと評価しております。また、「環境意識の高まりによる、消費者選好の変化における競争力の強化」に関しては、サステナブルな消費者行動の浸透に伴うメルカリ利用者の増加と、メルカリを利用する新たな動機(環境貢献)を創出しうる機会と捉えております。
(3)リスク管理
当社グループでは、事業が気候変動によって受ける影響を把握し評価するため、シナリオの分析を行い、気候変動リスク・機会を特定しています。特定したリスクと機会は、ESGのガバナンス推進体制において管理しております。案件に応じて、取締役会に報告・提言を行うフローも構築しております。
(4)指標と目標
事業を通じて排出するGHGの2023年6月期以降の排出量算定結果について、弊社が影響を与える影響度を踏まえ、新たにScope3カテゴリー9(下流の輸送・流通)を算定対象に含めるなど算定範囲を拡大しました。算定範囲の見直しの結果、削減目標についても一部変更しております。
(変更前)
Scope1+2:2021年を基準年とし、2030年までに100%削減
Scope3:2021年を基準年とし、2030年までに付加価値あたりの排出量(原単位)51.6%削減(カテゴリー1が対象)
(変更後)
Scope1+2:2021年を基準年とし、2030年までに100%削減
Scope3:2023年を基準年とし、2030年までに付加価値あたりの排出量(原単位)51.6%削減(カテゴリー9が対象)
2024年6月期(2023年7月〜2024年6月) GHG排出量実績
2024年6月期の当社グループ全体のGHG排出量は約29万トンで以下の結果となりました。Scope2は主にオフィス電力に伴う排出ですが、再生可能エネルギー導入に取り組み、そのうえで削減しきれない排出量については、再エネ証書及び非化石証書を活用し、排出量0としております。
基準年(2021年6月期)と比較して、Scope1+2は55%削減しております。またScope3 カテゴリー9は原単位ベースで基準年(2023年6月期)と比較し3.4%削減しました。
2030年の目標達成に向け、引き続きアクションを実施して参ります。
Scope1 |
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Scope2 |
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Scope3 |
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合計 |
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今年度の算定において、上記の通り、算定範囲を拡大した結果、昨年度の算定結果についても以下のように見直しております。
・2023年6月期
Scope3
見直し前:41,802トン
見直し後:264,523トン
3.人的資本・多様性に対する取り組み
(1)戦略
メルカリは、グループミッションの達成のためにもっとも大切なことが「人」への投資だと考えています。それは、一人ひとりが成長し、バリューを最大限に発揮することこそ、ミッションを達成するための近道だと信じているからです。そしてその大方針として「世界中の多様なタレントの可能性を解き放つ組織を体現」することをマテリアリティに掲げています。
メルカリの人的資本・多様性に対する取り組みの詳細は以下の「FY2024.6 Impact Report」をご覧ください。
(2)指標と目標
メルカリでは、上記戦略において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、以下の指標を用いております。
基本情報 |
連結社員数(注1) |
2,080人 |
年齢層 |
20代:14.7% / 30代:59.3% / 40代:23.0% / 50代:2.9% / 60代:0.1% (平均年齢:36.0歳) |
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平均年間給与 |
11,668,915円 |
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多様性に関する情報 |
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全体: (うち男性:88.8% 女性:11.2%) (外国籍:56.8%) |
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東京オフィスで働く社員の国籍数 |
55ヶ国 |
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育児休業・有給休暇に関する情報 |
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育児休業等の取得割合(注2) |
男性:87.4% 女性:100.0% |
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育児休業等の取得平均日数 |
男性:95.7日 女性:265.1日 |
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(男性:49人 男性定着率:81.7%) (女性:26人 女性定着率:86.7%) |
上記の情報は、株式会社メルカリが対象
(注)1.株式会社メルカリ、株式会社メルペイ、株式会社メルコイン、株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シー、Mercari, Inc.(US)、Mercari Software Technologies India Private Limitedを含む。
2.本年度より子会社への出向者を含む株式会社メルカリ雇用の労働者を対象にしております。
<インクルージョン&ダイバーシティの体現について>
メルカリでは、ミッション達成においてInclusion & Diversityが欠かせないと考えております。世界中から集まった多様なタレントが活躍できる環境を整えることで、組織に多様な視点が備わり、「見落とし」が減少し、意思決定の質が向上すると信じております。
I&Dを推進する上で、「結果の平等ではなく、機会の平等」を最重視し、結果目標を設定せず、多様なタレントが採用や昇格において平等な機会を得られる「プロセス」にフォーカスしております。このような考え方を前提に、「インクルージョン」、「多様性」、「公平性」それぞれ3つの観点から、以下の取り組み
を実施しました。
①インクルージョンの取り組み
・「Inclusion & Diversity Statement」のアップデート
・言語学習プログラムの実施
・専任チームによる通訳・翻訳の提供
・やさしいコミュニケーション研修の実施
・無意識バイアスワークショップの実施
②多様性の取り組み
・採用・登用候補者プールにおける指標のモニタリング
(I&DプロセスKPIについて)
I&DプロセスKPI1:書類選考通過者の男女比率
I&DプロセスKPI2:マネージャー候補者の男女比・外国籍比
I&DプロセスKPI3:ハイグレード候補者の男女比・外国籍比
・半期ごとに課題を特定し、組織横断的なアクションプランを策定・実施
約2年間にわたるProcess KPIの分析から、Process KPIと採用・昇格・登用における女性比率は連動することが検証できた
・ソフトウェアエンジニア育成プログラム「Build@Mercari 2024」の実施
・若年層の女性の中から次代のリーダーを輩出することを目指し「Mercari Bold Program for Women:US Edition」の実施
・神山まるごと高専とのダイバーシティ&インクルージョン推進における学校教育パートナーシップ
③公平性にフォーカスした取り組み
・男女間賃金格差の分析・是正・開示プロセスと報酬調整の実施
・キャリア開発に重要なポジションへの平等な機会を担保するための、社内ジョブボード「Bold Choice」の運用
・男女間賃金格差の分析手法について、大阪大学ELSIセンターと共同で有識者を招いたイベントの開催
<男女間賃金格差の是正アクションについて>
メルカリでは、組織内の男性と女性の平均賃金の差のみを示す「男女間の賃金格差」のほか、より状況を正確に把握するために、役割・等級や職種などによる差に起因しない「説明できない格差」(「unexplained pay gap」)も算出しています。属性に関わらない競争力のある報酬を実現するための仕組みの一環として、重回帰分析を使用した定期的な賃金格差のモニタリングを導入しております。
①昨年の是正措置以降、年2回の定期的なモニタリングを開始。
②調査の結果、男女間賃金格差は33.32%でした。
③Unexplained Gapが約2.3%継続しており、その要因の特定ができている。
④Unexplained Gap要因となっていた入社時オファー年収決定プロセスの見直しを実施。
⑤今後も±1%以内を目標に継続的にモニタリングと必要に応じてアクションを実施。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社の財政状態、経営成績等に与える影響の内容につきましては、合理的に予見することが困難であるものについては具体的には記載しておりません。なお、当社はリスク管理(リスクの特定、評価、対応策の策定)の実施により、以下のリスクに対してその発生可能性を一定水準まで低減していると考えております。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1)事業環境に関するリスク
① 業界の成長性について
当社グループは、個人間で簡単かつ安全に不要品を売買できるCtoCマーケットプレイス「メルカリ」を展開しております。近年の中古品市場の世界的な広がり、また、スマートフォンの高機能化及び普及拡大、Eコマース市場の拡大等を背景として、「メルカリ」の流通取引総額、ユーザ数等は順調に拡大を続けており、今後もこの傾向は継続するものと認識しております。また、2024年3月6日には、ユーザがスキマ時間を活用して働ける求人プラットフォーム「メルカリ ハロ」の提供を開始し、スポットワーク雇用仲介事業に参入しました。構造的な人手不足への対応策として、多様な働き方の推進が急務となっている中、スポットワーク業界全体も拡大傾向にあり、「メルカリ ハロ」の登録者数は順調に増加しています。
株式会社メルペイでは「メルカリ」アプリを通じてスマホ決済サービス「メルペイ」及びクレジットカードサービス「メルカード」を提供しております。キャッシュレス決済市場の拡大を追い風に利便性の強化に取り組んでおり、決済分野における「メルペイ」の決済総額、利用者数は順調に拡大し、注力している与信分野においても「メルペイスマート払い(翌月払い・定額払い)」の利用者数や利用残高、そして「メルカード」の発行枚数について順調に拡大しています。
更に、株式会社メルコインでは「メルカリ」アプリを通じて暗号資産取引サービスを提供しております。「メルカリ」で使わなくなったものを売って得た売上金・ポイントを使って、かんたんに暗号資産取引を始められることから、「メルカリ」の暗号資産取引口座開設数は順調に拡大しております。
しかしながら、中古品市場やEコマースを制限するような法規制、景気動向、個人の嗜好等の変化等により、当該市場の成長が鈍化し、それに伴い当社グループの売上の大部分を占めるCtoCマーケットプレイス「メルカリ」全体の流通取引総額や注力する商品カテゴリーの流通総額が順調に拡大しない場合や、これらの要因によりユーザ離れが生じ、当社グループのビジネスモデルを長期的に維持できない場合、又は「メルカリ ハロ」等の当社グループが提供する「メルカリ」以外のサービスが順調に成長しない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 競合について
現在、多くの企業がスマートフォンを利用したCtoCサービスに参入しており、商品カテゴリーやサービス形態も多岐に渡っております。また、インターネットオークションやリサイクルショップも存在しており、中古品市場の競争環境は厳しさを増しております。更に、決済・金融関連事業についても、電子決済サービス、及びクレジットカードサービス、そしてそれらに関連するサービスを提供する複数の競合他社が存在しております。2024年3月に新規参入したスポットワーク市場は、近年急成長を続けており、市場の拡大に伴い競争環境も激化しています。
当社グループは、今後とも顧客ニーズへの対応を図り、サービスの充実に結び付けていく方針ではありますが、これらの取り組みが予測どおりの成果をあげられない場合や、より魅力的・画期的なサービスやより競争力のある条件でサービスを提供する競合他社の出現等が、当社グループが提供するサービスからのユーザ離れ、出品の減少、手数料水準の低下等につながる場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 法的規制について
当社グループが展開するCtoCマーケットプレイス「メルカリ」においては、出品者が商品を販売して得られる売上金でポイントを購入し、当該ポイントで商品を購入することを可能としています。そのため、株式会社メルペイは、資金決済に関する法律(以下、「資金決済法」という。)の第三者型前払式支払手段の発行者及び資金移動業者として登録を受けており、関連法、関連政令、内閣府令等の関連法令を遵守して業務を行っております。なお、現状において取消事由となるような事象は発生しておりません。
また、クレジットカードサービス「メルカード」の提供に加え、スマホ決済サービス「メルペイ」においては購入者にマンスリークリア取引及び分割払取引である「メルペイスマート払い(翌月払い・定額払い)」や、少額融資サービス「メルペイスマートマネー」を提供しています。そのため、株式会社メルペイでは割賦販売法(以下、「割販法」という。)のクレジットカード番号等取扱契約締結事業者及び包括信用購入あっせん業者(認定包括信用購入あっせん業者としての認定を含む)並びに貸金業者としての登録を行っており、関連法、関連政令・省令等の関連法令を遵守して業務を行っております。株式会社メルコインにおいては、ビットコイン取引サービスの提供にあたり資金決済法に基づく暗号資産交換業者の登録を行っており、関連法、関連政令・省令等の関連法令の適用を受けています。なお、現状においていずれも取消事由となるような事象は発生しておりません。
求人プラットフォーム「メルカリ ハロ」においては、職業安定法の有料職業紹介事業者としての許可を得ており、同法のほか、労働基準法、最低賃金法、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、個人情報の保護に関する法律等の関連する法令を遵守して業務を行っております。また、求人企業(パートナー)による遵守の支援にも努めております。なお、現状において取消事由となるような事象は発生しておりません。
米国においては、決済関連の規制対応のため、必要とされる州においてMoney Transmitter Licenseの申請を行っており、全ての州において既に取得が完了しております。
当社グループは、税務当局を含む規制当局の動向及び既存の法規制の改正動向等を踏まえ、適切に対応しておりますが、かかる動向をすべて事前に正確に予測することは不可能又は著しく困難な場合もあり、これに適時かつ適切に対応できない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループが、これらの法規制等に抵触しているとして何らかの行政処分を受けた場合、及び新たな法規制の適用又は規制当局の対応の重要な変更等により、「メルカリ」の運営又はその他の既存若しくは新規の事業展開に何らかの制約が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 自然災害等について
大地震、台風等の自然災害及び事故、火災等により、開発・運用業務の停止、設備の損壊や電力供給の制限、配送網の分断、混乱等の不測の事態が発生した場合には、当社グループによるサービス提供に支障が生じる可能性があり、ひいては当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。その他、気候変動に係るリスクについては、「サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
(2)事業に関するリスク
① サービスの健全性の維持について
当社グループが展開するサービスは、取引の場であるプラットフォームを提供することをその基本的性質としております。プラットフォームの健全性確保のため、当社グループでは、サービス内における禁止事項を明記するとともに、監視・通報制度の整備やブランド等の権利者との連携等により、偽造品その他の出品禁止物の排除に努めております。また、当社グループは、ユーザ間の取引において売買契約、役務提供契約又は雇用契約の当事者とはならず、また、サービスの利用規約においても、ユーザ間で生じたトラブルについて、当社グループは責任を負わず、当事者間で解決すべきことを定めております。
しかしながら、当社グループのサービスにおいて、第三者の知的財産権、名誉、プライバシーその他の権利を侵害する行為、詐欺その他の法令違反行為等が行われた場合や、サービス内の不適切な行為を取り締まることができないことにより、プラットフォームの安全性及び健全性が確保できない場合には、当社グループ又は当社グループが提供するサービスに対する信頼性が低下し、ユーザ離れにつながる可能性があります。更に、問題となる行為を行った当事者だけでなく、当社グループもプラットフォームを提供する者としての責任を問われた場合、当社グループの企業イメージ、信頼性の毀損、ひいては当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 不正利用に関するリスクについて
当社グループが展開するCtoCマーケットプレイス「メルカリ」では、プラットフォーム上の取引においてクレジットカード決済による決済手段を提供しております。フィッシング詐欺といった不正なアカウント乗っ取りを防止するため、プラットフォームへのログイン時には多要素認証等により第三者による不正ログイン対策を強化しております。また、購入者による第三者のクレジットカード不正利用を防止するために本人認証サービス(EMV-3Dセキュア)の導入や、取引状況の人的監視およびシステム監視を行うことで総合的にリスクを判定し不正利用を防止しております。
しかしながら、プラットフォーム上における不正取引を防止できなかった場合、不正取引に関するユーザへの補填、当社グループの信用の下落等による損害が発生し、万が一損害が拡大した場合、業績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
③ 海外展開に関するリスク
当社グループは、収益機会の拡大に向けて米国でも簡単で安全に様々なモノが売れるマーケットプレイス「Mercari」を展開しており、今後とも海外展開の強化を図っていく予定であります。
なお、海外展開にあたっては、広告宣伝費や人件費等の投資を今後も相当規模で行う可能性があります。また、言語、地理的要因、法制・税制を含む各種規制、経済的・政治的不安、文化・ユーザの嗜好・商慣習の違い、為替変動等の様々な潜在的リスク、事業展開に必要な人材の確保の困難性、及び展開国において競争力を有する競合他社との競争リスクが存在します。当社グループがこのようなリスクに対処できない場合、当社グループの海外展開に影響を及ぼす可能性があります。
④ システムについて
当社グループが展開するCtoCマーケットプレイス「メルカリ」及びその他のサービスの利用に際しては、ユーザのインターネット及びモバイルネットワークへのアクセス環境が不可欠であると共に、当社グループのITシステムも重要となります。
当社グループは、システムトラブルの発生可能性を低減するために、安定的運用のためのシステム強化、セキュリティ強化を徹底しており、万が一トラブルが発生した場合においても短時間で復旧できる体制を整えております。また、当社の財務諸表における様々な財務数値は当社のITシステムから取得されており、これらは自社開発の複数の業務処理システムから構成されております。これらのシステム処理の適切性を担保するために適切な業務処理統制を整備・運用しております。
しかしながら、システムへの一時的な過負荷や電力供給の停止、ソフトウエアの不具合、コンピューターウィルスや外部からの不正な手段によるコンピューターへの侵入、自然災害、事故等、当社グループの予測不可能な要因によってシステムがダウンした場合や、当社グループのシステム外でユーザのアクセス環境に悪影響を及ぼす事象が発生した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態、適正な財務報告体制等に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、サービスの安定稼働及び事業成長のために、継続的にシステムインフラ等への設備投資が必要となります。当社グループの想定を上回る急激なユーザ又はトラフィックの拡大や、セキュリティ強化その他の要因によるシステム対応強化が必要となった場合、追加投資等を行う可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 訴訟等の可能性について
ユーザによる違法行為やトラブル、第三者の権利侵害があった場合等には、当社グループに対してユーザその他の第三者から訴訟その他の請求を提起される可能性があります。
一方、当社グループが第三者に何らかの権利を侵害され、又は損害を被った場合には、訴訟等による当社グループの権利保護のために多大な費用を要する可能性もあります。
このような場合には、その訴訟等の内容又は請求額によっては、当社グループの事業、業績、財政状態並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 知的財産権に関するリスク
当社グループは、当社グループが運営する事業に関する知的財産権の取得に努め、当社グループが使用する商標・技術・コンテンツ等についての知的財産権による保護を図っておりますが、当社グループの知的財産権が第三者の侵害から保護されない場合、又は知的財産権の保護のために多額の費用が発生する場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが使用する技術・コンテンツについて、第三者から知的財産権の侵害を主張され、当該主張に対する防御又は紛争の解決のための費用又は損失が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 事業基盤の拡充について
当社グループは、事業規模の拡大と収益源の多様化を実現するため、メルカリIDにより統合された当社グループのエコシステムの構築を含め、事業基盤の拡充や新規事業に取り組んでいく方針であります。今後も新規サービスの開始や第三者のサービスの導入等を行う可能性がありますが、エコシステムの構想はいまだ初期段階であり、競合するサービスとの競争、収益性、規制上のリスク、オペレーションへの負荷、レピュテーションへの影響等、不確定要素が多く存在するため、当社グループの想定どおりにエコシステム構築が進捗しない可能性や、当社グループがエコシステムを構築した場合にもエコシステムから十分な利益を得ることができない可能性があります。
また、求人プラットフォーム「メルカリ ハロ」においては有料職業紹介事業者の許可を取得している他、株式会社メルペイでは前払式支払手段(第三者型)発行者登録、資金移動業者登録、クレジットカード番号等取扱契約締結事業者登録、包括信用購入あっせん業者登録(認定包括信用購入あっせん業者としての認定を含む)、貸金業者登録、株式会社メルコインでは暗号資産交換業者の登録を行っておりますが、今後提供するサービスの内容や性質等に応じたリスクが発生する可能性があります。
事業基盤の拡充や新規事業展開については、既存サービスとのシナジーやリスク等について企画及び開発段階において十分な検討を行うことによりリスク低減を図る方針であります。また、これら事業基盤の拡充及び新規事業展開に際しては、M&A、ジョイント・ベンチャー、資本業務提携及び投資活動も有効な手段であるものと認識しており、今後も検討を実施していく方針であります。
一方、事業基盤の拡充や新規事業展開においては、不確定要素が多く存在することから、当社グループがこれらを実施する場合には、当社グループの想定どおりに進捗しない、期待するシナジーが得られない又は法的若しくは事業上の新たなリスク要因が発生するなどの可能性があります。また、想定外の費用・のれんの減損等の負担や損失計上が発生し又はこれらの取り組みに付随した追加投資が必要となる可能性があります。更に、M&A等については、デュー・ディリジェンスの限界等から想定外の事象が発生するリスクを有しており、これらに起因して当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 第三者への依存について
当社グループは、ユーザにスマートフォン向けアプリを提供していることから、Apple Inc.及びGoogle LLCが運営するプラットフォームを通じてアプリを提供することが現段階の当社グループの事業にとって重要な前提条件となっております。また、当社グループは、ユーザの決済手段として、クレジットカード決済、コンビニ決済、ATM決済等の外部の事業者が提供するサービスを導入しています。したがって、これらの事業者の動向、事業戦略及び当社グループとの関係等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、ユーザ情報(個人情報等含む)については、第三者が管理するデータセンターのサーバーで保管しています。このため、データセンターで有事が発生した場合、ユーザ情報が一部又は全体的に失われるリスクがあります。その結果、当社グループは法的責任やブランドイメージの低下を招く可能性があります。
配送については、ヤマト運輸株式会社や日本郵便株式会社等の配送業者に依存していることから、今後これらの配送業者について取引条件の変更、事業方針等の見直し及び配送状況の変化等があった場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは社内メールおよび資料の管理にGoogle LLCが提供するGoogle Cloudを利用していることから、Google Cloudのサービスが何らかの理由で停止又は障害が発生した場合、当社グループの業務に支障をきたす可能性があります。さらに、Google LLCのサービス利用に関する利用規約や方針の変更、セキュリティ上の脅威、データの漏洩や不正アクセスなどのリスクも考慮する必要があります。これらの要因が、当社グループの業務運営や情報管理に影響を与える可能性があります。
⑨ 決済・金融関連事業について
決済・金融関連事業について、今後、規制要件等の遵守のために多額の費用を要する、又は規制要件の追加等により当社グループ事業に影響を及ぼすリスクが生じる可能性があります。
当社グループは、サービスや決済・金融関連事業が発展する過程で日本国内外において、送金、決済、電子商取引、マネーロンダリング、本人確認及びテロファイナンス防止、割賦販売、貸金、暗号資産交換等の様々な法令の対象となる可能性があります。社内体制整備がサービスの成長速度に追いつかない等の理由により、万一、そうした法律又は規制上の義務に違反していることが判明した場合、罰金その他処罰又は業務停止命令等の制裁を受けたり、サービス変更を余儀なくされたりする可能性があり、いずれの場合にも当社グループの事業、財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
さらに、スマホ決済サービスやその他の決済・金融関連事業に関して、以下を含む様々な追加リスクが生じる可能性があります。
a.不正取引や取引の失敗への対応・顧客対応・委託先管理等に係る運用費・管理コストの増加
b.既存の決済処理サービス提供会社との関係に与える影響
c.インフラ構築に伴う資本コストの増加
d.ユーザ、プラットフォーム提携先、従業員又は第三者による潜在的な不正や違法行為
e.顧客の個人情報の漏洩、収集した情報の利用及び安全性に関する懸念
f.決済処理のための顧客資金の入金額に対する制限
g.開示・報告義務の追加
⑩ 暗号資産交換業について
当社グループが顧客から預託を受けている暗号資産は、株式会社メルコインが管理するウォレット内に保管されており、外部の第三者による不正アクセスにより当該暗号資産が流出するリスク等に備えるため、秘密鍵管理体制やウォレット構造の構築において様々な対策を講じておりますが、仮に不正アクセスにより暗号資産が流出した場合、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
⑪ スポットワーク雇用仲介事業について
スポットワーク雇用仲介事業では、履歴書の提出や面接の実施等一般的な選考過程を経ずに就労することから、クルー(求職者)の適切な本人確認及びパートナー(求人企業)の信用に関わる情報の適切な確認を徹底することが求められます。適切な情報の確認及び管理体制を構築しておりますが、仮にオペレーションミスによる個人情報の流出や、クルー・パートナー間の連携にトラブルが生じた場合、当社グループの事業、業績、並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
(3)会社組織に関するリスク
① 人材に関するリスク
当社グループは、当社グループ全体の事業戦略の立案及び実行について、当社グループの経営陣に相当程度依存しており、かかる経営陣が欠けた場合には当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが今後とも企業規模を拡大し社会に求められるサービスを提供していくためには、スマートフォンのアプリ開発、設計等に関する技術的な専門性を有する人材をはじめ、セキュリティ部門、コーポレート部門やカスタマーサポート部門においても、当社グループの理念に共感し高い意欲を持った優秀な人材を確保することが必要不可欠であります。また、海外展開においては、現地の市場動向・ビジネスに精通した人材を確保していく必要があります。
当社グループは、規模拡大やサービス向上に必要な優秀な人材の確保のため、今後も必要に応じて採用活動を行っていく予定ではありますが、人材獲得競争の激化や市場ニーズの変化等により、想定どおりの採用が進まない等優秀な人材の獲得が困難となる場合や、現在在職する人材の社外への流出が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 事業体制及び内部管理体制について
当社は2013年2月に設立され、未だ成長途上にあり、今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、当社グループの事業体制及び内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しております。事業規模に適した事業体制及び内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、内部統制システムに本質的に内在する固有の限界があるため、今後、当社グループの財務報告に係る内部統制システムが有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制システムに重大な不備が発生した場合には、当社グループの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。
③ 個人情報の管理について
当社グループはCtoCマーケットプレイス「メルカリ」をはじめとする様々なサービス展開にあたって、住所、氏名、電話番号等の利用者個人を特定できる情報を取得しております。これらの個人情報については、個人情報保護方針に基づき適切に管理するとともに、社内規程として個人情報保護規程を定め、社内教育の徹底と管理体制の構築及び改善を行っております。
当社グループは、利用者のプライバシー及び個人情報の保護に最大限の注意を払い、適切な情報管理を行っておりますが、何らかの理由で利用者のプライバシー又は個人情報が漏えいする可能性や不正アクセス等による情報の外部への漏えい又はこれらに伴う悪用等の可能性は皆無とは言えず、そのような事態が発生した場合には、当社グループの事業、業績、財政状態並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが事業を運営する各法域における利用者のプライバシー及び個人情報の保護に係る法規制に改正等があった場合にも、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4)経営成績及び財政状態等について
① 経営成績について
当社は2013年2月に設立され、未だ歴史も浅く発展途上にあります。過年度の連結業績については、CtoCマーケットプレイス「メルカリ」の立ち上げ段階であったことや米国における「Mercari」や国内におけるスマホ決済サービス「メルペイ」を中心とする新規事業への投資等により、長らく親会社株主に帰属する当期純損失を計上しておりました。2022年6月期下期より、成長と収益のバランスを意識した経営方針へ変更したことに伴い、前期、及び、当連結会計年度は、親会社株主に帰属する当期純利益を計上いたしました。当社グループは、事業規模の拡大と収益源の多様化を図り、グループの将来利益の最大化につながる投資を行っており、今後も継続的に利益拡大していくことを企図しますが、経済の状況・当社グループをとりまく事業環境の状況等により、当社グループの業績計画及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは急速な成長過程にあるため、過年度の経営成績は期間業績比較を行うための十分な材料とはならない可能性があります。
流通取引総額、MAU(注)その他の指標については、当社グループ内において合理的と考える方法により算定したものであり、他社との比較可能性が必ずしもあるとは限らないことに加えて、上記のような事情から過去の数値が今後の動向を判断する十分な材料とはならない可能性があります。
(注)MAUは「Monthly Active Users」の略。1ヶ月に1回以上アプリ又はWEBサイトをブラウジングした登録ユーザの四半期平均の人数。
② 継続的な投資について
当社グループは、継続的な成長のため、認知度、信頼度を向上させることにより、より多くのユーザを獲得するとともに、既存のユーザを維持していくことが必要であると考え、会社設立以降積極的にプロダクトの改善や新規サービス開発のための人材確保や育成、マーケティング施策等に投資を行って参りました。今後も、規律を保ちながら、成長につながる投資を継続する方針であります。
しかしながら、事業環境の変化や広告宣伝効果が十分に得られない場合、コスト上昇等が生じた場合、投資が想定よりも長期に及ぶことにより計画どおりの収益が得られない場合等には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 海外連結子会社の業績について
当社グループは、2014年1月に米国にて連結子会社であるMercari, Inc.を設立し、簡単で安全に様々なモノが売れるマーケットプレイス「Mercari」を運営しております。2014年9月にサービスを開始し、2016年10月より商品の購入代金に応じた販売手数料、2020年10月より決済手数料の徴収を開始いたしました。また、2024年3月には、商品代金に応じた販売手数料の徴収を撤廃し、購入者から手数料を徴収するモデルに変更しております。
これまで、サービスの更なる発展やユーザ層拡大に向けた投資に伴い、継続的な広告宣伝費用や追加投資等その他の負担により損失計上が長期に及んでおりました。当社グループに占める業績及び財政状態へのインパクトは徐々に減少してきておりますが、今後の事業計画によっては短期的な連結業績における損失計上額が拡大する可能性があります。
④ 配当政策について
現在、当社グループは、成長過程にあるため、事業の拡大と効率化に伴う中長期的な企業価値の向上が株主のみなさまに対する最大の利益還元につながると考えております。そのため、当面は、成長投資と内部留保による財務基盤の強化を優先し、現時点において配当の予定はありません。内部留保資金につきましては、経営基盤の長期安定に向けた財務体質の強化及び事業の継続的な拡大発展を実現させるための資金として、有効に活用していく所存であります。
(5)その他
株式の追加発行等による株式価値の希薄化について
当社グループは取締役、監査役及び従業員に対し、中長期的な企業価値向上に対するインセンティブとして新株予約権及び譲渡制限株式ユニット(RSU)の付与を行っております。また、上記の制度は、優秀な人材を採用するために利用する可能性があります。加えて、当社は取得条項付転換社債型新株予約権付社債の発行をしております。これらの新株予約権の権利行使及び譲渡制限株式ユニット(RSU)に係る新株式の発行並びに当該取得条項付転換社債型新株予約権付社債が株式に転換された場合には、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。
当社グループは、当連結会計年度よりIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値もIFRSに組み替えて比較分析を行っております。
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績等の状況
当連結会計年度は、グループミッション「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」の達成に向け、既存事業の成長の加速及び新規事業の創出に取り組んで参りました。その結果、連結で過去最高の売上収益と営業利益を達成しています。新規事業においても、2024年3月に空き時間おしごとサービス「メルカリ ハロ」を開始、2022年11月に提供を開始した「メルカード」発行枚数が340万枚を突破するなど、各々のサービスが大きく成長した一年となりました。
Marketplaceでは、規律ある投資を継続しつつ、トップラインの成長にフォーカスすることを今期の事業方針として取り組みました。越境取引やBtoC等の注力領域の伸長や、ロイヤルティプログラム(注1)がトップラインの成長に寄与しましたが、成長の加速には至らず、通期GMV(注2)は前連結会計年度比9%増加の1兆727億円となりました。一方、調整後コア営業利益率(注3)は「メルカリ ハロ」への投資を含め40%と、高い収益性を実現しております。2024年3月に開始した「メルカリ ハロ」の登録ユーザ数が開始3か月弱で500万人を突破、パートナー拠点数は全国5万店舗に達するなど、順調なスタートとなりました。
Fintechでは、「メルカード」ユーザ獲得に注力し、グループシナジーの強化を図ることを今期の事業方針として取り組みました。カード発行枚数が順調に拡大し、「メルカード」保有に伴うメルカリ内ARPUが50%向上するなど、グループシナジー創出が着実に進捗いたしました。また、「メルカード」を中心とするCreditサービスも好調に伸長したことで収益力が向上し、通期売上収益(注3)はYoY+51%と高成長を継続いたしました。Creditサービスの成長がけん引し債権残高(注4)が1,872億円まで伸長する中、独自のAI与信を活かした厳格な与信コントロール等により債権回収率(注5)も99.2%に向上し、健全な成長を実現しています。
以上の結果、Japan Regionの当連結会計年度の業績は、売上収益138,108百万円(前連結会計年度比13.0%増)、セグメント利益30,649百万円(前連結会計年度比10.4%減)となりました。
USでは、既存ユーザのリテンション強化に向けたプロダクトの磨き込みを通じて成長軌道への復帰を目指すとともに、将来成長に向けたZ世代の巻き込みにも注力することを今期の事業方針として取り組みました。Z世代獲得に向けたリブランディング等のプロダクトのアップデートや、米国マーケットプレイスで初めて出品手数料を無料化するなど、大胆な挑戦を推進しましたが、想定以上のインフレの長期化をはじめとする外部環境の影響が大きく、成長軌道への復帰には至りませんでした。この結果、当連結会計年度における「Mercari」の通期GMVは前連結会計年度比10%減少の913百万米ドル(1,361億円。月次平均為替レート換算での積み上げ)、売上収益は43,653百万円(前連結会計年度比1.8%減)となりました。このような状況を踏まえて、マーケティング費用の見直しと組織再編を実施したことで、セグメント損失は5,293百万円(前連結会計年度は8,758百万円の損失)と大きく改善いたしました。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上収益187,407百万円(前連結会計年度比9.0%増)、営業利益17,486百万円(前連結会計年度比6.7%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益13,461百万円(前連結会計年度比2.7%増)となりました。
(注)1.「メルカード」の利用状況に応じたポイント還元プログラム。常時1%ポイント還元、メルカリ内利用はPay, Buy, Sellのクロスユース等に応じて最大4%ポイント還元。
2.「Gross Merchandise Value」の略。流通取引総額のことを指す。
3.Marketplace・Fintech間の内部取引(決済業務委託に関わる手数料)を控除した数値を指す。
4.当期末時点における「メルペイスマート払い(翌月払い・定額払い)」と「メルペイスマートマネー」の債権残高(破産更生債権等を除く)。
5.11ヶ月前に請求を行った「メルペイスマート払い(翌月払い・定額払い)」と「メルペイスマートマネー」の金額に対して11ヶ月以内に回収を完了した四半期累計の加重平均割合(破産更生債権等を除く)。
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産につきましては、前連結会計年度末に比べ83,423百万円増加し、501,773百万円となりました。
主な増減理由は以下のとおりです。
・現金及び現金同等物の主な増減理由は「キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
・営業債権及びその他の債権は、主に「メルペイスマート払い(翌月払い・定額払い)」の利用増加に伴い、前連結会計年度末に比べ68,685百万円増加しております。
・差入保証金は、主に「メルカリ」及び「メルペイ」の利用金額の増加に伴い、法令に基づいた供託を実施したことにより、前連結会計年度末に比べ20,004百万円増加しております。
(負債)
当連結会計年度末における負債につきましては、前連結会計年度末に比べ66,937百万円増加し、429,627百万円となりました。
主な増減理由は以下のとおりです。
・借入金(流動負債)は、主に翌月払い及び定額払い債権の流動化の変動により、前連結会計年度末に比べ6,166百万円減少しております。
・社債及び借入金(非流動負債)は、主に定額払い債権の流動化を実施したことにより、前連結会計年度末に比べ39,730百万円増加しております。
・預り金は、主に「メルカリ」及び「メルペイ」の利用金額の増加に伴い、前連結会計年度末に比べ37,409百万円増加しております。
・未払法人所得税等は、主に法人所得税の支払に伴い、前連結会計年度末に比べ5,084百万円減少しております。
(資本)
当連結会計年度末における資本につきましては、前連結会計年度末に比べ16,486百万円増加し、72,145百万円となりました。
主な増減理由は以下のとおりです。
・資本金は、新株発行に伴い、前連結会計年度末と比べ1,752百万円増加しております。
・資本剰余金は、新株発行及び株式報酬取引等に伴い、前連結会計年度末と比べ485百万円増加しております。
・利益剰余金は、主に親会社の所有者に帰属する当期利益の計上に伴い、前連結会計年度末に比べ13,652百万円増加しております。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ9,823百万円減少し、当連結会計年度末には191,998百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は、43,337百万円(前連結会計年度は35,820百万円の使用)となりました。これは主に、税引前利益17,889百万円、営業債権及びその他の債権の増加額68,635百万円、預り金の増加額35,887百万円、差入保証金の増加額20,000百万円、法人所得税の支払額10,274百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、877百万円(前連結会計年度は601百万円の使用)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出1,526百万円、敷金及び保証金の回収による収入531百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は、32,091百万円(前連結会計年度は25,167百万円の獲得)となりました。これは主に、短期借入金の純増減額△15,835百万円、社債の発行及び長期借入れによる収入51,000百万円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
b. 受注実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性質上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年7月 1日 至 2024年6月30日) |
|
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
Japan Region |
138,108 |
113.0 |
US |
43,653 |
98.2 |
報告セグメント計 |
181,762 |
109.1 |
その他 |
5,645 |
106.0 |
合計 |
187,407 |
109.0 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載のとおりです。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績等の状況及び② 財政状態の状況」に記載したとおりであります。
③ キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載したとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループは、継続的な成長のため、認知度、信頼度を向上させることにより、より多くのユーザを獲得 し、また既存のユーザを維持していくことが必要であると考え、会社設立以降積極的に広告宣伝等にコストを投 下しており、今後も継続して国内外における広告宣伝等を進めていく方針であります。当社グループの運転資金 需要のうち主なものは、当社グループのサービスを効果的に拡大していくための広告宣伝費及び開発に係る人件 費であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。当社グループは、必要な資金 を主に自己資金及び金融機関からの借入、社債の発行、債権流動化で賄っております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループは、前記「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、サービスの性質、国際事業展開、コンプライアンス等、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行って参ります。
(3)並行開示情報
連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した要約連結財務諸表は、以下のとおりであります。
なお、日本基準により作成した当連結会計年度の要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けておりません。
① 要約連結貸借対照表(日本基準)
(単位:百万円) |
|
前連結会計年度 (2023年6月30日) |
当連結会計年度 (2024年6月30日) |
資産の部 |
|
|
流動資産 |
340,644 |
415,760 |
固定資産 |
|
|
有形固定資産 |
2,781 |
2,206 |
無形固定資産 |
584 |
501 |
投資その他の資産 |
71,282 |
93,753 |
固定資産合計 |
74,648 |
96,461 |
資産合計 |
415,292 |
512,222 |
|
|
|
負債の部 |
|
|
流動負債 |
273,608 |
313,575 |
固定負債 |
86,454 |
125,659 |
負債合計 |
360,063 |
439,235 |
|
|
|
純資産の部 |
|
|
株主資本 |
51,370 |
68,317 |
その他の包括利益累計額 |
2,211 |
3,254 |
新株予約権 |
1,092 |
943 |
非支配株主持分 |
554 |
471 |
純資産合計 |
55,228 |
72,987 |
負債純資産合計 |
415,292 |
512,222 |
② 要約連結損益計算書及び要約連結包括利益計算書(日本基準)
要約連結損益計算書
(単位:百万円) |
|
前連結会計年度 (自 2022年7月 1日 至 2023年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2023年7月 1日 至 2024年6月30日) |
売上高 |
172,064 |
187,462 |
売上原価 |
57,639 |
56,904 |
売上総利益 |
114,425 |
130,557 |
販売費及び一般管理費 |
97,401 |
112,278 |
営業利益 |
17,023 |
18,278 |
営業外収益 |
716 |
1,016 |
営業外費用 |
290 |
1,077 |
経常利益 |
17,449 |
18,217 |
特別利益 |
2 |
201 |
特別損失 |
1,063 |
847 |
税金等調整前当期純利益 |
16,389 |
17,571 |
法人税等合計 |
3,474 |
3,301 |
当期純利益 |
12,914 |
14,269 |
非支配株主に帰属する当期純損失(△) |
△155 |
△84 |
親会社株主に帰属する当期純利益 |
13,070 |
14,353 |
要約連結包括利益計算書
(単位:百万円) |
|
前連結会計年度 (自 2022年7月 1日 至 2023年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2023年7月 1日 至 2024年6月30日) |
当期純利益 |
12,914 |
14,269 |
その他の包括利益合計 |
908 |
1,043 |
包括利益 |
13,823 |
15,313 |
(内訳) |
|
|
親会社株主に係る包括利益 |
13,978 |
15,397 |
非支配株主に係る包括利益 |
△155 |
△84 |
③ 要約連結株主資本等変動計算書(日本基準)
前連結会計年度(自 2022年7月1日 至 2023年6月30日)
(単位:百万円) |
|
株主資本 |
その他の包括 利益累計額 |
新株予約権 |
非支配株主持分 |
純資産合計 |
当期首残高 |
35,453 |
1,303 |
926 |
314 |
37,998 |
当期変動額 |
15,917 |
907 |
165 |
240 |
17,230 |
当期末残高 |
51,370 |
2,211 |
1,092 |
554 |
55,228 |
当連結会計年度(自 2023年7月1日 至 2024年6月30日)
(単位:百万円) |
|
株主資本 |
その他の包括 利益累計額 |
新株予約権 |
非支配株主持分 |
純資産合計 |
当期首残高 |
51,370 |
2,211 |
1,092 |
554 |
55,228 |
当期変動額 |
16,946 |
1,043 |
△148 |
△83 |
17,758 |
当期末残高 |
68,317 |
3,254 |
943 |
471 |
72,987 |
④ 要約連結キャッシュ・フロー計算書(日本基準)
(単位:百万円) |
|
前連結会計年度 (自 2022年7月 1日 至 2023年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2023年7月 1日 至 2024年6月30日) |
営業活動によるキャッシュ・フロー |
△36,883 |
△44,761 |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△632 |
△877 |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
26,839 |
33,404 |
現金及び現金同等物に係る換算差額 |
1,317 |
2,299 |
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) |
△9,359 |
△9,933 |
現金及び現金同等物の期首残高 |
211,406 |
202,047 |
現金及び現金同等物の期末残高 |
202,047 |
192,113 |
⑤ 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更(日本基準)
前連結会計年度(自 2022年7月1日 至 2023年6月30日)
該当事項はありません。
当連結会計年度(自 2023年7月1日 至 2024年6月30日)
該当事項はありません。
(4)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。
前連結会計年度(自 2022年7月1日 至 2023年6月30日)
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 34.初度適用」に記載のとおりであります。
当連結会計年度(自 2023年7月1日 至 2024年6月30日)
(リース)
日本基準ではオペレーティング・リース取引については、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理しておりましたが、IFRSでは「使用権資産」及び「リース負債」を計上しております。
この結果、IFRSでは日本基準に比べて、使用権資産及びリース負債がそれぞれ3,309百万円及び3,206百万円増加しております。
(契約獲得コスト)
顧客との契約獲得のための増分コストについて、日本基準では一括費用処理しておりましたが、IFRSでは回収可能であると見込まれる部分について、資産として認識しております。
この結果、IFRSでは日本基準に比べて、資産合計が1,288百万円増加しております。
(株式報酬費用)
日本基準では段階的に権利行使が可能となるストック・オプション等について、付与された単位でまとめて会計処理を行っておりましたが、IFRSでは権利確定期間ごとにそれぞれ別個のストック・オプション等として会計処理を行っております。
この結果、IFRSでは日本基準に比べて、売上原価が557百万円増加しております。また販売費及び一般管理費が729百万円減少しております。
(未払有給休暇)
日本基準では会計処理が求められていなかった未消化の有給休暇について、IFRSでは「その他の流動負債」を計上しております。
この結果、IFRSでは日本基準に比べて、その他の流動負債が1,757百万円増加しております。
(在外子会社に係る累積換算差額の振替)
初度適用に際して、IFRS第1号に規定されている免除規定を選択し、移行日における累積換算差額を全て利益剰余金に振替えております。
この結果、IFRSでは日本基準に比べて、その他の包括利益累計が1,303百万円減少しております。
(法人所得税費用及び税効果に関する調整)
日本基準では住民税均等割について「法人税等」に含めて表示しておりましたが、IFRSでは「販売費及び一般管理費」に含めて表示し、事業税の外形標準課税の付加価値割については、日本基準では「販売費及び一般管理費」に含めて表示しておりましたが、IFRSでは「法人所得税費用」に含めて表示しております。また、日本基準では「法人税、住民税及び事業税」、「法人税等調整額」を区分掲記しておりましたが、IFRSでは「法人所得税費用」として一括して表示しております。
日本基準からIFRSへの調整に伴い一時差異が発生したこと、また、IFRSの適用に伴い、全ての繰延税金資産の回収可能性を再検討したことにより「法人所得税費用」の金額を調整しております。
この結果、IFRSでは日本基準に比べて、法人所得税費用が1,132百万円増加しております。
該当事項はありません。
当社は2017年12月に、社会実装を目的として、研究開発組織であるmercari R4Dを設立いたしました。mercari R4Dでは、あらゆる価値の循環によって人やモノの持つ可能性がより発揮される社会の実現のために、既存の在り方に囚われず、科学技術の力で価値交換システムだけでなく社会基盤をもアップデートしていくことを目指しています。研究領域として、現在は、量子情報技術、Accessibility、Blockchain、Mobilityといった自然科学系のみならず、ELSI(Ethical, Legal and Social Issues)やコミュニケーション・言語学といった人文社会学系の研究にも取り組んでいます。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は
なお、当連結会計年度に実施した研究開発活動は、特定のセグメントに関連付けることができないため、セグメント別の記載を省略しております。