当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針
当社グループは、「人と人との良いつながり」を基本理念・目標としており、経営理念として、「私たちは 独自の知恵と技術で 持続可能な地球 そして 安心・安全で豊かな社会を創るために 貢献してまいります」を掲げ事業運営をしております。
この経営理念に基づき、「ソーシャルインフラ事業」では、独自の技術力と開発力により、災害が起きてもその被害を最小限にすることで、「誰もが安心して暮らせる環境」「誰にとっても安全な環境」そして「全ての生物にとって豊かな自然環境」の創造に貢献してまいります。また、不織布関連においては、豊富な経験と確かな技術力、多彩な製品ラインナップでお客様のご要望にお応えするとともに、「社会の皆様が安心して利用できる素材」「社会の皆様の生活に安全・快適な資材」の提供を積極的に進めてまいります。
「インダストリーインフラ事業」では、アルミ鍛造ホイール分野において、世界最高レベルの鍛造技術により、妥協なき品質を求めるとともに、より究極的な性能と美しさをもつホイールとして、多くの「人」に支えられるBBS鍛造ホイールを目指してまいります。また、産業資材分野においては、これまで培ってきたカット技術と超純水洗浄技術を活かし、高品質・高付加価値な製品を提供いたします。これらの事業を通じて、社会の皆様の「豊かな暮らし」の実現に貢献してまいります。
○ 企業メッセージ
当社グループは、成長戦略の柱であるM&Aや海外事業、人材育成を積極的に推進するため、企業メッセージを掲げております。当社グループは、この企業メッセージを基に、社員一丸となって全員を戦力化することで、企業価値の最大化を目指してまいります。
前田工繊は
混ぜる会社です
人と技術を混ぜる会社です
混ざると 化学反応が 起きるのです
イノベーションは化学反応の果実
世界一のイノベーターを目指し
社会のあるべき姿 人間のあるべき姿を
追い求めていきます。
(2) 経営戦略等
当社グループは、M&A、海外事業の展開、人材育成の3つの柱を経営戦略として掲げております。
まず、M&Aについては、国内外で独自の技術・ノウハウを有する企業を対象に積極展開してまいります。当社グループはこれまで「繊維」・「土木」という異なる技術領域を融合し、創業当時からのDNAである「独自の知恵と技術」を駆使し、多種多様な高付加価値製品を生み出してきました。今後も、既存製品の更なる改善・改良だけでなく、事業領域の異なる多様な製商品を組み合わせることで、モノづくりの本質である「イノベーション」を追求し、新しい市場を創出していきます。
次に、海外事業については、子会社のMAEDA KOSEN VIETNAM CO., LTD.において工場増設など生産体制を増強することにより、ASEAN地域を中心に事業拡大を目指します。また、外国籍企業との業務提携を積極的に推進することで、海外販売網の拡大を図ってまいります。
最後に、人材育成については、当社グループでは、組織の活性化を図り、全員を戦力化させるため、人事評価制度を進化させ、従来の年功序列から成果主義への転換を進めているほか、人材育成の場として「土木の寺子屋」を開催しております。また、人材開発面においては、M&Aの実践による事業領域の拡大や海外事業の進展に対応するため、グローバルな人材の発掘を行うことで、組織のパフォーマンスを向上させてまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、主に、営業利益、営業利益率、EBITDA、ROE(自己資本利益率)及びROIC(投下資本利益率)を用いております。
(4) 経営環境
当社グループは、ソーシャルインフラ事業及びインダストリーインフラ事業に分類されます。このうち主たる事業であるソーシャルインフラ事業につきましては、公共事業における土木資材の製造販売の比率が高いことから、その業績は公共事業の予算規模や執行時期に左右される場合があります。また、インダストリーインフラ事業では、自動車用軽合金鍛造ホイールにおいて、自動車の販売及びアフターマーケット市場からの需要に大きく影響を受けます。加工糸やワイピングクロスにおいては、家電、精密機械及び自動車の民需向けで使用されるため、一層のコスト削減が求められ、海外廉価品との競合が激しくなっております。従いまして、ソーシャルインフラ事業におきましては、公共事業のさらなる縮小があった場合、インダストリーインフラ事業におきましては、原材料価格の高騰による販売価格転嫁ができない場合または市場や顧客からの支持を獲得できる新製品を提供できなかった場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、厳しい企業間競争が続くなかにあっても、国内外の需要環境の変化に敏感に対応できる開発・生産・販売体制の構築を目指しております。また、当社グループでは、M&Aと海外事業の展開、人材育成を成長戦略の最重要施策として掲げております。
これらを実現させるために、次に掲げる項目が重要であると考えております。
① 研究開発体制の強化
当社グループが提供する製品・サービスに対するユーザーの要求に終わりはなく、ユーザーのニーズを的確に先取りし、製品・サービスに反映させていくことが最優先と考えます。このため、販売部門と研究開発部門の連携を密にして、コストパフォーマンスに優れた独自の製品・サービスをよりスピーディーに実現することを目指します。
なお、当社グループのソーシャルインフラ事業においては、昨今の国土交通省の重点政策であります『安全・安心の確保』と方向性をそろえ、防災・減災対策や社会資本の老朽化対策という観点での研究開発をさらに進めてまいります。
② 品質の向上
当社グループの製品が使用現場で安定した性能を維持するためには、使用原材料及び製造工程の品質管理が重要であると考えます。このため、当社グループ各社の品質保証部門を強化し、設計・開発段階における品質向上や、耐久性試験等による品質確認を徹底することで、製品クレームの低減と顧客サービスの向上に努めております。
③ 購買部門の強化
当社グループでは、各種原材料の仕入価格の変動が収益に大きな影響を与え、また国内外を問わず自然災害によるサプライチェーンの寸断が生産活動に影響を与えると認識しております。このため、購買部門を強化し、高い品質を維持しながら、最適な原材料の調達ルートをグローバルに開拓することにより、その影響が最小限に止まるよう最善を尽くしてまいります。また、製品改良時などには新しい原材料の調査・調達にも力を発揮するよう、購買部門の機動力を高めてまいります。
④ M&Aの活用
当社グループでは、過去14件のM&Aを実施しており、今後も効果的にM&Aを実施する方針であります。M&Aを行うに当たり、投資効果はもちろん、対象企業の取扱製品の将来性や当社グループとの相乗効果を十分に検討したうえで、事業領域の拡大と業績の向上につながるM&Aを進めてまいります。
⑤ 人材育成
当社グループでは、M&Aの実践による事業領域の拡大に対応するため、人材の確保及び育成が重要な経営課題であります。そのため、今後も即戦力を求めた少数精鋭の中途採用と、中長期的な視点で人的基盤を整備するための新規採用を継続的に行ってまいります。また、社内外の研修体系を整備し、継続的に人材育成を行うとともに、従来の年功序列から成果主義への転換を図ることで、社員全員の戦力化を目指します。
⑥ グローバル化の進展
当社グループでは、海外における製造・販売の多様化・効率化と販路の拡大を目的として、2011年12月にベトナムに海外子会社MAEDA KOSEN VIETNAM CO.,LTD.を設立いたしました。また、2013年11月1日付でドイツに海外子会社BBS Motorsport GmbHを持つBBSジャパン株式会社を子会社化いたしました。また、2016年1月に世界65ヶ国でジオシンセティックス製品(土木工事等に使用される高分子の繊維製品等の総称)の販売を行う台湾のGOLD-JOINT INDUSTRY CO., LTD.と業務提携し、さらに2020年5月に世界60ヶ国以上でジオシンセティックス製品の販売を行うHUESKER Synthetic GmbH(本社:ドイツ連邦共和国)及び同社の関連会社のHUESKER Asia Pacific Pte Ltd.(本社:シンガポール)との間においてアジア地域にて販売提携し、新たな市場開拓を推進しております。今後も、拡大が見込める海外市場を取り込むことで、当社グループの業績拡大を進めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、地球環境、社会、そして企業活動の“サステナビリティ”を追求し続けるため、次の基本方針を掲げております。当社グループが目指すサステナビリティ経営とは、当社グループの特色を生かしたビジネスモデルに基づく事業活動と、ステークホルダーとの対話を通じた価値創造プロセスの継続的な改善によって、経済価値と社会価値を両立しながら、持続可能な社会の実現に貢献していく取り組みを指します。
〇 前田工繊グループサステナビリティ基本方針
「前田工繊グループは、人と技術を”混ぜる”ことで新たな価値を創造し、社会課題の解決と持続可能な社会を実現します。」
1.当社グループは、事業分野における重要な社会課題を把握し、事業活動に持続可能な社会の実現に向けた視点を組み込むことで、お客様の有形・無形の価値を高める適切なソリューションを提供し、誠実かつ公正な事業活動に取り組みます。
2.当社グループは、地域社会とのパートナーシップを重視し、自治体、大学やその他事業会社等とも連携した事業活動や社会貢献活動を通じて、地域の自立的な発展に貢献します。
3.当社グループは、従業員一人ひとりの能力開発やモチベーション向上に取り組み、成長を促進するとともに、心身の健康保持・増進に努めます。また、性別、年齢、国籍、障がいの有無等に関わらず多様な人材が能力や専門性を最大限に発揮できる風土をつくるとともに、その基盤として働きやすさに配慮した良好な職場環境作りを推進します。
4.当社グループは、法令遵守を徹底し、公正かつ透明性の高いガバナンスを実現するとともに、適切な情報開示と対話を通じて、すべてのステークホルダーとの良好な関係を構築します。
(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
① ガバナンス
当社は、持続可能な社会の実現に向けて、サステナビリティに関する基本方針の立案、サステナビリティ課題の認識、取組目標の立案、進捗確認・評価を行うサステナビリティ委員会(委員長:代表取締役社長)を取締役会の下に設置しています。サステナビリティ委員会では、気候変動への対応を含む事業戦略やリスクと機会に関する取り組みの状況について審議し、その結果を取締役会に報告し、取締役会による監督を受ける体制となっています。
当社の気候変動対応に関する最高責任者は、代表取締役社長であり、気候関連リスクと機会への対応やTCFD提言に沿った開示対応等を推進しています。また、当社のリスク全般を管理するリスク管理委員会を代表取締役社長が主管し、サステナビリティ委員会とリスク管理委員会が相互に情報共有を行うことで、リスク管理においても気候関連リスクの観点を反映しています。
② リスク管理
気候関連問題については、サステナビリティ委員会で、TCFD提言のリスク項目を参考にリスクを洗い出し、当社の事業活動、顧客、サプライヤー等への影響を参考に「発生可能性」と「影響の大きさ」の2軸からリスク重要度を検討しています。重要度が高いと判断したリスク及び機会については、サステナビリティ委員会で対応策を協議・決定し、取締役会に報告しています。
また、サステナビリティ委員会で検討した内容は、全社的な経営リスクに対応するために組成されたリスク管理委員会に共有しています。
リスク管理委員会では、リスクマネジメントの構築、維持、改善推進を行うとともに、リスク発生時には対策本部を必要に応じて設置し、迅速な対応を図っています。また、個別のリスク分類やリスクに対する対応等については、毎期「リスクアセスメント」を実施し、定期的なリスクの洗い直しや、重大な損失や危険の発生を未然に防止するための指導等を推進しています。
また、当社は、社会に存在するさまざまな課題の中から、当社グループが優先して取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を2023年に特定しました。
(2) 重要なサステナビリティ項目
① 気候変動
a.戦略
時間軸は短期を現在~3年以内、中期を2030年まで、長期を2050年(2050年カーボンニュートラル)頃までと設定しています。
リスク評価は、TCFD提言のフレームワークに基づき、当社にとっての移行リスク及び物理的リスクを特定しています。当該方法で特定したリスクと機会を一般的に認識されている気候関連リスクや当社の財務情報及び他社事例等を参考に「発生可能性」と「影響の大きさ」の2軸で位置付けることで、重要度を低・中・高で定性評価しました。重要度「高」と判断した項目については、気候関連リスクのうち、重大な財務上または戦略上の影響があるものと判断し、優先的な対応が必要であると認識しています。
b.指標及び目標
当社は、事業活動におけるCO₂排出削減の取り組みを推進するため、2021年度の排出量(40,132t-CO₂)を基準に、2030年度までに49%削減することを目標に掲げております。今後も、より早期に目標を達成するため短中期のCO₂削減目標の見直しを行います。
当社グループ(国内)のCO₂排出量
区分 |
2023年度実績 |
Scope1&2 |
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(注)現在のCO₂排出量は、国内の電気及び燃料使用に伴う排出のみを対象に算定しています。算定範囲は、順次拡大していきます。また、海外グループ会社の算定は未実施のため、算定範囲の展開を図りたいと考えております。
② 人的資本
a.戦略
当社は、進行する労働人口の減少に対応すべく、在籍中の社員も新たに採用される社員も、すべての社員が戦力となり、持てる能力を十分に発揮し、成長できる職場の整備に努めております。そのためには、研修制度の充実化と、ハラスメントのない社内環境整備が重要と考えております。
人材育成方針として、当社グループのすべての社員への教育機会の提供のため、階層別・部門別・テーマ別の項目毎に研修項目を用意し、入社内定時から定年まですべての社員が当社の一員として継続的な成長を期待できる仕組みを準備しております。
また、社員が安心して自身の能力を発揮するための社内環境整備方針として、働く人々の人権や人格が侵害されない、それぞれが互いに尊重し合える職場であることが重要であると考えております。そのために、ハラスメント防止対策を強化し、安心・安全な職場環境の整備を目指しております。さらに、女性特有の健康課題に関する研修の実施など、女性を含む多様な人材が個性を尊重され活躍することができる企業文化の醸成に努めてまいります。
b.指標及び目標
1)研修と教育
業務関連の研修受講については全額補助、自己啓発目的の研修受講についても補助額拡充を図っております。2025年6月期の目標として、従業員一人あたりの年間平均研修時間を7.6時間(2024年6月期実績:2.7時間)、従業員一人あたりの年間平均研修費用を42,000円(2024年6月期実績:18,217円)としていくことを掲げております。
2)ワークエンゲージメントの向上
働きやすい職場づくりにおける社員のエンゲージメントを測定するために、2024年6月期に当社初となる全従業員を対象としたエンゲージメント調査を実施しました。本エンゲージメント調査での「総合満足度」をKPIとし、2027年6月期までに70.0点を達成することを目標として、既に職場改善を目的とした取組みの実施を進めております。また、本エンゲージメント調査にて、当社の課題として挙げられた「評価・処遇」と「能力開発」についても重点項目としてモニタリングを行い、社員の労働環境の整備や研修制度の見直しを実施し取組んでおります。
指標 |
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2024年6月期実績(単体) |
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3)健康経営の実施
当社グループでは、健康経営を行うにあたり、従業員に対し効果測定のためのアンケートを毎年実施しております。また、アブセンティーイズム及びプレゼンティーイズムをKPIとして設定し、施策の企画立案・実行に取り組んでおります。
指標 |
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2024年度6月期実績(単体) |
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(注)1.従業員アンケートにより算出された、過去1年以内の病気やケガなどの体調不良による平均休業日数
2.東大1項目版にて測定した損失割合
4)Job Trial、Job Challenge制度
人材育成の取り組みとして、社員が現担当部署から離れ他部署での業務体験及び就業体験をする機会を提供しております。また、「公募制」による社員本人の意思の反映と、「推薦制」による所属長の期待の反映により、幅広い人材育成の機会提供と部署間の人材交流の活性化を図っております。
本制度の年間利用者数の合計が10名以上を毎年継続していくことを目標として掲げております。
① 「Job Trial(他部署での業務体験)」
公募により、希望する部署で2日間の業務体験を実施します。業務内容や社員について相互の理解を深めるほか、新しい発見や自己の成長につながることを期待しています。
② 「Job Challenge(他部署での就業体験)」
所属長の推薦で、他部署(海外拠点やグループ会社含む。)での人事異動を伴う1年超の長期就業体験を行います。これにより、個人のスキルアップを図り、中長期的なキャリア形成に繋げていきます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 売上高の公共事業比率が高いことについて
当社グループは、売上高の約6割をソーシャルインフラ事業が占めており、その製品の需要先は公共事業を施工するゼネコン等となっております。これら公共事業は減少傾向にあり、新規物件のコスト縮減策の推進から同業者間の競争はますます激しくなっております。このような事業環境のなか、公共事業の更なる縮小、取引先の業績悪化などがあった場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、当社グループでは、製品ラインアップの充実及び組織力を駆使した複合提案により、防災・減災及び老朽化対策ニーズへの迅速かつ的確な対応を行うほか、民間需要に対する営業力も高めてまいります。
② 原材料について
当社グループの主力製品である土木資材は、合成樹脂、合成繊維を主な原材料としております。その原材料の主成分である原油価格の上昇により、原材料価格が高騰し、その上昇分を販売価格に転嫁できない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、当社グループでは、販売価格への転嫁や製造コストの低減を速やかに実現できるよう努めているほか、海外を含めた産地や仕入先の分散による複数社購買を推進しております。
③ 知的財産等について
当社グループは、新製品・工法等について特許権等の知的財産の登録を行い、権利保護に努めておりますが、国内外において当社グループの権利が侵害される可能性があります。
また、当社グループは、第三者の知的財産を侵害しないように注意を払っておりますが、当社グループが認識していない範囲で第三者の知的財産を侵害する可能性があります。当社グループが仮に侵害し、第三者と知的財産権をめぐって損害賠償、対価の支払い等を請求された場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、当社グループでは、知的財産権の取得を積極的に推進するほか、新製品開発における侵害調査、当社グループ社員に対する知的財産権に関する教育を実施し、侵害防止に努めております。
④ 訴訟・クレーム問題について
当社グループが製造する土木資材、農業資材、自動車用鍛造ホイール、産業資材等の製品欠陥が原因で生命、身体又は財産に損害を及ぼした場合は、訴訟・紛争等の対象となる恐れがあります。現在において当社グループの事業に重大な影響を及ぼす訴訟等は提起されておらず、このような事故の防止対策には万全を期しておりますが、万一製品に瑕疵があり、具体的な損害が顕在化した場合、当社グループの信用力低下に繋がる恐れがあり、また補償の負担割合等によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、当社グループでは、設計・開発段階における品質向上や、耐久性試験等による品質確認を徹底しております。また、製品の使用可能領域や安全な施工方法について取引先と十分な事前打合せを行うことで、双方の認識の相違による事故の発生防止に努めております。
⑤ 自然災害について
当社グループの主要な製品の製造拠点は、北陸圏内に集中しております。そのため、局地的な水害、冬季間の雪害、地震等により物流が滞り、原材料の入荷の遅延による生産不能又は生産能力の低下が発生した場合には、製品供給が滞る可能性があります。また、北陸圏内に限らず当社グループの製造拠点、仕入先等において、自然災害により物流の滞りや操業停止等が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、当社グループでは、調達による操業停止リスクへの対応として、複数社購買を推進しております。また、生産拠点の複数化や、主要拠点における重要商材の在庫の確保により、生産・出荷に関するリスクにも対応を進めております。
⑥ 人材の確保について
当社グループの成長は、研究開発部門の優秀な技術者や製造部門の高度な熟練技能者によって支えられており、当社グループが今後も高い競争力を維持していく上でこれらの人材の確保はますます重要となっております。また、技術面のみならず、当社グループの成長過程においては、経営管理面の優秀な人材確保も一層重要になっております。一方、こうした人材への需要は大きく、企業間における人材の獲得競争は激しいものとなっております。これらの有能な人材の確保及び雇用の維持が困難な場合には、当社グループの成長に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、当社グループでは、地域や学校等との連携を強め、交流・情報交換に努めるほか、通年採用の実施により、新卒者に限らず、第2新卒、キャリア採用を含めた幅広い人材との接触機会を増やすことで、優秀な人材の獲得を目指します。また、人材育成においても、研修専任者がきめ細かな育成計画を設定し、より実効性のある育成計画を作成・実施してまいります。
⑦ 為替相場の変動について
当社グループは、国内を中心に事業活動を展開しておりますが、原材料・商品の一部を輸入品により調達しております。大幅な為替相場の変動が起こった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループでは一部でデリバティブ取引を行い、当該リスクの軽減に努めておりますが、一方で本来得られた利益を逸失する可能性があります。
これらに対し、当社グループでは、グループ全体としての通貨別資金ポジションを現在及び将来計画まで含め可視化するとともに、為替予約の利用などを通じて大幅な偏りを回避いたします。
⑧ 自動車用軽合金鍛造ホイールの販売について
当社グループにおいて、連結子会社であるBBSジャパン株式会社及びBBS Motorsport GmbHの営業収入は、同社が製造販売する自動車用鍛造ホイールを装着した自動車の販売及びアフターマーケット市場からの需要に大きく影響を受け、これらを販売している国又は地域の経済状況の影響を受けます。したがって、主要市場における景気後退及びそれに伴う需要縮小のほか、自動車部品・原材料のサプライチェーンが停滞した場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、他社との競争環境の中で、技術面やデザイン面において、高度化する自動車メーカーやコアユーザーのニーズに的確に対応していかなくてはなりません。同社が市場や顧客からの支持を獲得できる新製品を提供できなければ需要が縮小し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、同社では、将来の受注見込みの見える化を行いながら増産体制を整えるとともに、販売先、適用車種の偏りによる業績への影響を和らげるため、受注先の分散化を図っております。また、新しいモノづくりとして、軽量化・高剛性化・高強度化を追求しつつ、デザイン性のさらなる向上や製造コスト削減にも取り組んでおります。
⑨ 企業買収等について
当社グループは、企業買収及び資本参加を含む投資による事業の拡大を企画することがあります。これらの投資に当たり、当社グループは、当該企業の財務内容や契約内容などについてデューデリジェンスを行い、事前にリスク回避するように努めておりますが、期待した利益やシナジー効果をあげられる保証はありません。事業環境の急激な変化など、不測の事態が生じる場合、当社グループの事業展開、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、当社グループでは、M&Aに関する社内ガイドラインをより具体的な内容に改善し、過大投資や低収益事業の買収の回避に努めてまいります。なお、投資の判断にあたっては、外部専門家と連携し、多方面からの分析を実施しております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、経済社会活動が正常化に向かい、個人消費やインバウンド需要の回復により企業収益が改善し、緩やかな景気回復が続きました。一方で、ウクライナ・中東情勢の地政学リスクに伴う原材料・エネルギー価格の高騰や、米国におけるインフレに伴うFRBの利上げなど、世界的な金融引き締めに伴う急激な為替変動や物価高騰等を背景に、国内景気は不安定な状態が続いております。
このような状況のなか、当社グループでは、2018年の創業100周年を機に、企業メッセージ「前田工繊は混ぜる会社です」を掲げております。このメッセージには、当社グループが持続的成長を遂げるための強い思いを込めており、グループの持つあらゆる経営資源を「混ぜる」ことで、成長戦略である「M&A」、「海外事業の展開」、「人材育成」を積極的に推進するための原動力になると考えております。
M&A戦略においては、当社グループがこれまで培ってきた繊維・樹脂の加工技術に捉われず、異分野がもつ様々な技術やノウハウを「混ぜる」ことで、新製品や新技術を創出してまいります。海外事業においては、海外拠点の生産能力を拡充するとともに、外国籍企業との業務提携等を通じて国内外の技術や販売ネットワークを活用することで、当社グループ製品の市場拡大を目指してまいります。
人材育成においては、当社グループ社員全員を戦力化するほか、多様な人材を採用・育成し、それらの能力・経験から生まれる人的資源を「混ぜる」ことで、イノベーティブな組織風土を築いてまいります。また、当社グループでは、「従業員の健康が会社の未来を決める」との考え方のもと、すべての従業員の心と体の健康づくりに深く関わっていくことを決意し、「健康宣言」を行っております。今後も健康で働きがいのある職場づくりに向けた様々な施策に取り組んでまいります。
当社グループでは、上記成長戦略の具現化に向け、新たな中期経営計画となるグローバルビジョン∞「PARTⅡ」(2024年度~2027年度)を策定しております。
(単位:百万円)
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2023年6月期 (実績) |
2024年6月期 (実績) |
2025年6月期 (計画) |
2027年6月期 (計画) |
売上高 |
50,204 |
55,833 |
60,000 |
70,000 |
営業利益 |
8,493 |
10,736 |
11,200 |
12,000 |
EBITDA |
11,682 |
14,106 |
14,500 |
15,000 |
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
5,258 |
7,979 |
7,700 |
8,000 |
PARTⅡでは、当社グループ事業における成長分野への投資として、4か年で約150億円の設備投資を計画しており、旺盛な需要に対応した生産能力の増強や、生産ラインの自動化・省力化を進めてまいります。また、M&Aについては、4か年で約200億円の投資枠を設定し、既存事業とのシナジーや事業領域の拡大を狙った案件をターゲットに成長を加速させてまいります。さらに、当社グループ事業のグローバル展開として、2027年6月期の当社グループにおける海外売上比率を30%まで引き上げることを目標としております。
なお、当社グループの人材育成に関する施策については、当社ホームページをご参照ください。
https://www.maedakosen.jp/sustainability/esh/
このように、当社グループは、モノづくりを通じて、「私たちは 独自の知恵と技術で 持続可能な地球 そして安心・安全で豊かな社会を創るために 貢献してまいります。」という経営理念を実践し、さらに世の中から必要とされる企業となるよう努力してまいります。
当連結会計年度の売上高は55,833百万円(前年同期比11.2%増)となりました。利益面におきましては、営業利益は10,736百万円(同26.4%増)、経常利益は11,236百万円(同29.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は7,979百万円(同51.8%増)となりました。
なお、財政状態につきましては、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載のとおりであります。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(ソーシャルインフラ事業)
当社の公共工事事業は、盛土補強材において一部案件の納入遅れが生じた一方で、河川護岸材、海洋土木品、斜面緑化製品、コンクリート構造物の補修・補強用資材の販売が堅調に推移しました。利益面においては、製造原価の削減を進めたことに加え、原材料価格の高騰に対応した販売価格への転嫁も徐々に進んだことから、好調に推移しました。不織布関連の製品は、スパンボンド(連続長繊維不織布)の産業資材・自動車資材向け販売が伸び悩んだほか、マスク等の医療・衛生資材の受注が落ち込んだ結果、売上・利益とも計画に対して厳しい結果となりました。
獣害対策製品、園芸用ハウス、農業資材を取り扱う子会社の未来のアグリ株式会社においては、獣害対策製品の受注は堅調に推移したものの、園芸用ハウスや酪農用製品などの農業資材の受注が伸び悩んだことにより、売上・利益とも低調に推移しました。また、天幕や帆布生地製品を取り扱う子会社の未来テクノ株式会社では、防衛省向け製品の販売が順調に回復したほか、一部大型案件の受注や海洋土木製品の販売拡大が奏功したことから、好調な結果となりました。海外子会社であるMAEDA KOSEN VIETNAM CO., LTD.においては、下期に製品の販売量が減少したものの、製造原価の削減効果により、利益は計画に対して順調に推移しました。
以上の結果、当事業の売上高は31,687百万円(前年同期比5.1%増)、営業利益は6,755百万円(同4.9%増)となりました。
(インダストリーインフラ事業)
自動車ホイール事業については、鍛造ホイールを製造・販売する子会社のBBSジャパン株式会社において、自動車メーカー向けOEM供給やアフター市場向け製品が好調に推移したほか、同社のドイツ子会社BBS Motorsport GmbHの業績が大きく伸長した結果、前年同期と比べ売上が伸長し、利益は大幅に上回る結果となりました。
精密機器製造用ワイピングクロス、衣料・各種産業資材用の丸編製品を製造・加工・販売する子会社の未来コーセン株式会社においては、電力料や仕入れ価格の高騰によるコスト増加の影響があったものの、ワイピングクロスの売上が回復傾向にあることから、売上・利益とも堅調に推移しました。
以上の結果、当事業の売上高は24,145百万円(前年同期比20.4%増)、営業利益は5,101百万円(同64.6%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ6,854百万円増加(前期比47.1%増)し、21,421百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られたキャッシュ・フローは、12,024百万円(前期は8,131百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益11,207百万円、減価償却費3,370百万円等の収入と、法人税等の支払額3,204百万円等の支出によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用したキャッシュ・フローは、423百万円(前期は4,375百万円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の売却2,150百万円等による収入と、有形固定資産の取得2,789百万円等の支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用したキャッシュ・フローは、5,196百万円(前期は2,308百万円の支出)となりました。これは主に、短期借入金の純減少額2,379百万円、長期借入金の返済1,163百万円、配当金の支払額1,032百万円、リース債務の返済624百万円等の支出によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
前年同期比(%) |
ソーシャルインフラ事業(百万円) |
16,208 |
102.1 |
インダストリーインフラ事業(百万円) |
17,900 |
119.1 |
合計(百万円) |
34,109 |
110.3 |
b.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
前年同期比(%) |
ソーシャルインフラ事業(百万円) |
5,828 |
120.6 |
インダストリーインフラ事業(百万円) |
119 |
98.2 |
合計(百万円) |
5,948 |
120.0 |
c.受注実績
当社グループは、大部分の品目が見込生産であり、受注残高も僅少であることから記載を省略しております。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
前年同期比(%) |
ソーシャルインフラ事業(百万円) |
31,687 |
105.1 |
インダストリーインフラ事業(百万円) |
24,145 |
120.4 |
合計(百万円) |
55,833 |
111.2 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年7月1日 至 2023年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
Dr.ing.h.c.F.Porsche Aktiengesellsc |
- |
- |
7,198 |
12.9 |
3.前連結会計年度につきましては、総販売実績に対する割合が10%以上に該当する相手先がないため、記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ5,421百万円増加し80,243百万円となりました。流動資産は、前連結会計年度末に比べて8,026百万円増加いたしました。これは主に、原材料及び貯蔵品が778百万円減少したものの、現金及び預金が6,854百万円、商品及び製品が1,002百万円、電子記録債権が827百万円それぞれ増加したことによるものであります。固定資産は、前連結会計年度末に比べて2,604百万円減少いたしました。これは主に、有形固定資産が234百万円増加したものの、投資その他の資産が2,840百万円減少したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ13,671百万円減少し17,720百万円となりました。流動負債は、前連結会計年度末に比べて12,987百万円減少いたしました。これは主に、流動負債のその他が1,106百万円増加したものの、1年内償還予定の新株予約権付社債が12,010百万円、短期借入金が2,379百万円それぞれ減少したことによるものであります。固定負債は、前連結会計年度末に比べて683百万円減少いたしました。これは主に、長期借入金が308百万円、リース債務が306百万円それぞれ減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ19,092百万円増加し62,522百万円となりました。これは主に、転換社債型新株予約権付社債の権利行使等により、自己株式が4,858百万円減少し、資本金が2,950百万円、資本剰余金が4,250百万円それぞれ増加したほか、利益剰余金が6,947百万円増加したこと等によるものであります。
b.経営成績
(売上高)
当連結会計年度の売上高は、55,833百万円(前年同期比11.2%増)となりました。
当社グループの主事業であるソーシャルインフラ事業では、盛土補強材において一部案件の納入遅れが生じた一方で、河川護岸材、海洋土木品、斜面緑化製品、コンクリート構造物の補修・補強用資材の販売が堅調に推移した結果、売上高は31,687百万円(同5.1%増)となりました。
インダストリーインフラ事業では、BBSジャパン株式会社において、自動車メーカー向けOEM供給やアフター市場向け製品が好調に推移したほか、同社のドイツ子会社BBS Motorsport GmbHの業績が大きく伸長した結果、売上高は24,145百万円(同20.4%増)となりました。
(営業損益)
当連結会計年度の売上原価は35,110百万円(前年同期比9.3%増)、販売費及び一般管理費は9,986百万円(同4.2%増)となりました。
この結果、営業利益は10,736百万円(同26.4%増)となり、売上高営業利益率は19.2%(同2.3ポイント増)となりました。
(経常損益)
当連結会計年度において営業外収益は818百万円(前年同期比51.5%増)、営業外費用は317百万円(同7.5%減)となりました。
この結果、経常利益は11,236百万円(同29.3%増)となり、売上高経常利益率は20.1%(同2.8ポイント増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純損益)
当連結会計年度において特別損失は29百万円(前年同期比97.2%減)となりました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は7,979百万円(同51.8%増)となり、売上高当期純利益率は14.3%(同3.8ポイント増)となりました。
c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当連結会計年度における営業利益は10,736百万円、営業利益率は19.2%、EBITDAは14,106百万円、ROE(自己資本利益率)は15.1%でした。引き続きこれらの指標について、改善されるよう取り組んでまいります。
各種指標の推移は以下のとおりです。
|
第47期 |
第48期 |
第49期 |
第50期 |
第51期 |
第52期 |
営業利益(百万円) |
5,344 |
4,517 |
6,462 |
4,220 |
8,493 |
10,736 |
営業利益率(%) |
14.1 |
11.5 |
14.9 |
11.4 |
16.9 |
19.2 |
EBITDA(百万円) |
7,145 |
7,189 |
9,616 |
7,024 |
11,682 |
14,106 |
ROE(自己資本利益率)(%) |
13.4 |
9.6 |
12.9 |
8.8 |
12.4 |
15.1 |
(注)1.各指標はいずれも連結ベースの財務数値を用いて算出しております。
2.決算期変更の経過期間となる第50期連結会計年度は、2021年9月21日から2022年6月30日までの9か月10日間となっております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの主な資金需要は、営業活動のための原材料・商品の仕入費用及び人件費、生産設備の能力増強・合理化、品質向上及び業務効率化のための設備投資、事業領域の拡大と業績の向上につながるM&Aのための資金等です。これらの資金については、主として自己資金により充当し、必要に応じて借入又は社債の発行等による資金調達を実施することを基本方針としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は4,902百万円、現金及び現金同等物の残高は21,421百万円であります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、会計上の見積りを行う必要がありますが、その見積りや当該見積りに用いた仮定は予測不能な事象の発生等により実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表作成にあたっての重要な会計方針等は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
(技術援助等を受けている契約)
契約会社名 |
相手方の名称 |
主な契約内容 |
契約期間 |
前田工繊株式会社 |
帝人株式会社 |
コンクリート構造物の維持補修・補強分野におけるアラミドシートの事業展開 |
2003年10月1日から 2006年9月30日まで 以後1年ごとの自動更新 |
(株式譲渡契約)
当社は、2022年10月13日開催の取締役会において、当社が保有するM.A. Med Alliance SA(以下「Med Alliance社」)の全株式をBayou Holdings Parent, L.P.に譲渡することを決議し、2022年10月28日付で同社との間で株式譲渡契約を締結いたしました。
(1) 株式譲渡の概要及び理由
当社が株式を保有するMed Alliance社がBayou Holdings Parent, L.P.に買収されることに伴い、当社が保有するMed Alliance社の全株式をBayou Holdings Parent, L.P.に譲渡する株式譲渡契約を2022年10月28日に締結しました。
(2) 譲渡する相手会社の名称
Bayou Holdings Parent, L.P.
(3) 譲渡完了時期
2023年10月
(4) 譲渡価額
Med Alliance社の株主は、一定の法律上、規制上のクロージング条件を満たした場合、譲渡が完了し一時金として2億ドルを受領する権利があります。さらに、2029年までに、製品開発に関連する規制手続を完了した場合で最大1億2,500万ドル、売上目標達成で最大7億7,500万ドルを受領する権利があります。当社はMed Alliance社の株式の約9%を保有しているため、上記一時金等について持株比率に応じた金額を受領する権利があります。
(株式取得に関する契約)
当社は、2024年6月26日開催の取締役会において、三井化学株式会社から同社の完全子会社である三井化学産資株式会社(以下「三井化学産資」という。)の全株式を取得(以下「本株式取得」という。)することを決議し、株式譲渡契約を締結いたしました。
なお、本株式取得の実行は、独占禁止法に基づく規制当局の承認その他クロージング条件の充足を前提条件としております。
(1) 株式取得の目的
当社グループは、中期経営計画(2024年度~2027年度)において、設備投資の実行及びM&Aの活用により、既存事業の強化及び事業領域の拡大に取り組んでおります。
三井化学産資は、1964年に設立され、日本のインフラを支える産業資材に関する幅広い品揃えと高い技術力を有しております。建築・土木資材及び配管資材において、高いシェアを有する製品を保有し、産業資材メーカーとして確固たる地位を築いてまいりました。三井化学産資の事業と当社のソーシャルインフラ事業はともにインフラの整備・維持に携わる事業であり、親和性が高いと考えております。
当社は、本株式取得により、土木資材分野における製品ラインアップの拡充及び事業規模の拡大を図ることで、既存事業の強化が可能となります。また、建築資材分野において点字タイルなどの新たな製品を獲得するほか、新規事業領域として配管資材分野に取り組むことにより、事業領域の拡大が可能となります。さらに、三井化学産資は、樹脂加工の高い技術を有しており、当社の繊維・樹脂加工技術とのシナジーを発揮することで、新たな価値を生み出し、当社グループの更なる企業価値向上が期待できると考えております。
(2) 株式取得の相手先
三井化学株式会社
(3) 取得する会社の概要
名称 三井化学産資株式会社
事業の内容 合成樹脂製品、土木資材、建築資材及び配管資材の製造・加工・販売
(4) 株式取得の時期
2025年4月1日(予定)
(5) 取得株式数、取得価額及び取得前後の所有株式の状況
① 取得株式数
311株(議決権の数:311個)
② 取得価額
三井化学産資の普通株式 5,500百万円
アドバイザリー費用等(概算額) 110百万円
合計(概算額) 5,610百万円
※ 株式譲渡契約に基づく価格調整が完了しておらず、現時点では取得価額は確定しておりません。
③ 異動後の議決権所有割合
100%
当社グループの研究開発活動は、外部環境の変化と多様化する顧客ニーズに対応できる新しい製品をスピーディに市場に提供することを基本方針としております。
主な研究開発活動として、新製品・新技術の開発と既存製品の改良・改善及び応用を行っております。特にソーシャルインフラ事業においては、顧客ニーズ等の情報収集や分析、その結果に基づく新製品開発及び改良・改善の企画立案は、開発技術部門だけではなく各分野を担当する推進部が中心となって行い、テーマごとに組織横断的なプロジェクトチームを編成し活動しております。
また、外部環境や顧客ニーズの変化に速やかに対応できるよう、大学や研究機関と連携し共同研究などを行うほか、顧客ニーズを具体化するために同行営業なども実施し、技術確立・製品化・事業化を加速する体制にしております。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、
セグメント別の研究開発活動は次のとおりであります。
<ソーシャルインフラ事業>
ソーシャルインフラ事業では、土木建設関連分野において繊維や樹脂などを素材とした資材とコンクリート構造物の補修・補強用資材及びそれらを利用した工法の開発に取り組んでおります。
特に「防災・安心・安全」をキーワードとして、情報収集、研究開発を行っております。
土木建設関連分野の研究開発においては、行政の方向性と一致して進むことも重要であり、昨今の国土交通省の重点政策の中でも、特に、地震、台風、豪雨などの自然災害からの復興整備及びインフラ長寿命化・老朽化対策に関連した開発テーマについて重点的に取り組んでおります。
また、不織布分野においては新たに三層構造不織布製造設備を導入し、高品質な製品展開を図ります。従来の単層構造製品と比較して均一なシートを作ることが可能となり、目付の低減にも効果を発揮します。機能を繊維に錬り込む当社の技術を生かし、様々な機能を付した製品開発を行ってまいります。さらに、自動車マーケットの大変革を受け、電気自動車用吸音材に使用できる不織布を開発いたしました。今後拡大する電気自動車分野にも積極的に参入してまいります。
<インダストリーインフラ事業>
インダストリーインフラ事業では、アルミ鍛造ホイール分野において、マーケットのニーズを先取りした新しいモノづくりに積極的に取り組んでおります。軽量化・高剛性化・高強度化を追求しつつ、デザイン性のさらなる向上や製造コスト削減にも取り組むことで、多様化するマーケットニーズに対応した商品を提供できるよう、研究開発を進めております。
また、産業資材分野においては、異形特殊繊維を用いたストレッチ加工製品の開発、主力のワイピングクロスの機能向上に向けた製品開発及び産業用途に応じた清掃器材の新規開発に取り組んでおります。